WO2017073148A1

WO2017073148A1 - 壁の亀裂補修装置

Info

Publication number: WO2017073148A1
Application number: PCT/JP2016/074522
Authority: WO
Inventors: 孝彦佐々木; 栄洋佐々木
Original assignee: 株式会社栄組
Priority date: 2015-10-29
Filing date: 2016-08-23
Publication date: 2017-05-04
Also published as: US20180251990A1; JP2017082497A; JP6654401B2; US10364582B2; BR112018005253B1

Abstract

本発明は、注入ノズルと当接部材との壁面に対する当接バランスが多少悪くなっても、アームを左右に傾きにくくし、注入ノズルの亀裂からの浮き上がりや離脱を防止して、充填剤を確実に亀裂に充填できる壁の亀裂補修装置を提供する。壁Ｗの亀裂Ｋに先端が配置され、亀裂Ｋに充填剤を注入する注入ノズル１と、空気を吸引する吸引通路２１が形成された支持軸２２に固定され、吸引通路２１を通しての空気の吸引により壁面Ｗａに吸着し、吸引解除により壁面Ｗａから離脱可能な吸着盤１０と、軸線方向に先端部と後端部とを有し、軸線方向の途中において、支持軸２２よって第１ユニバーサルジョイントＪＡを介して支持され、かつ、先端部において、第２ユニバーサルジョイントＪＢを介して、注入ノズル１の流入管３を支持するアーム３０と、アーム３０の後端部に取付けられ、壁面Ｗａに先端が当接し、注入ノズル１による充填剤の充填時に、アーム３０に生じるモーメント荷重を受ける複数の当接部材５０とを備え、複数の当接部材５０は、アーム３０の軸線Ｐ方向と直交する方向に設けられている。

Description

壁の亀裂補修装置

　本発明は、コンクリート製やモルタル製等の壁に生じた亀裂に充填剤を充填して補修するための壁の亀裂補修装置に関する。

　従来、この種の壁の亀裂補修装置としては、例えば、本願の出願人が先に提案した特許第４３５１７１２号公報（特許文献１）に記載されたものが知られている。
　図１１に示すように、この亀裂補修装置Ｓａは、壁Ｗの亀裂Ｋに先端が配置され亀裂Ｋに充填剤を注入するノズル部１０１、及びノズル部１０１に連設されノズル部１０１に充填剤を流入させる流入管１０２を有する注入ノズル１００と、空気を吸引する吸引通路１００３が形成された支持軸１０４に固定されるとともに支持軸１０４の吸引通路１０３を通しての空気の吸引により壁面Ｗａに吸着させられ吸引解除により壁面Ｗａから離脱可能な吸着盤１０５と、中間部において第１ユニバーサルジョイント１０６を介して支持軸１０５に支持されるとともに、先端部において第２ユニバーサルジョイント１０７を介して注入ノズル１００の流入管１０２を支持するアーム１０８と、アーム１０８の後端部に第３ユニバーサルジョイント１０９を介して取付けられ、壁面Ｗａに先端が当接し、注入ノズル１００による充填剤の充填時にアーム１０８に生じるモーメント荷重を受ける当接部材１１０とを備える。当接部材１１０は、アーム１０８の後端部に進退動可能に設けられ、コイルスプリング１１１によって進出方向に常時付勢されている。

　亀裂補修装置Ｓａにより、壁Ｗの亀裂Ｋに充填剤を充填するときは、補修すべき壁面Ｗａの亀裂Ｋの状態によって、注入ノズル１００の最適な位置が選択される。そして、選択された位置の近傍の、亀裂Ｋの入っていない位置に、吸着盤１０５が配置される。吸着盤１０５は、壁面Ｗａに吸着して固定され、注入ノズル１００は、選択した位置に位置決めされる。この状態で、注入ノズル１００から吐出された充填剤は、亀裂Ｋ内へ充填される。このとき、注入ノズル１００に、充填剤の圧送による高圧が作用して反力が生じて、アーム１０８に、その軸線Ｐ方向に直交する水平軸Ｑ回りのモーメントが生じるため、アーム１０８が、この水平軸Ｑを中心に回動しようとする。しかし、アーム１０８の後端部に取付けられた当接部材１１０が、壁面Ｗａに当接して、アーム１０８に生じたモーメント荷重を受け止めるため、吸着盤１０５が、壁面Ｗａから剥がされにくくなる。このため、注入ノズル１００から高圧で充填剤を圧送して、充填剤を補修すべき亀裂Ｋに確実に充填することができる。また、当接部材１１０が、コイルスプリング１１１によって進出方向に付勢されているため、当接部材１１０は、壁面Ｗａに弾接し、壁面Ｗａの凹凸に良好に追従する。

特許第４３５１７１２号公報

　上記の従来の壁の亀裂補修装置Ｓａでは、当接部材１１０は、壁面Ｗａに弾接して、壁面Ｗａの凹凸に良好に追従する。しかし、アーム１０８が、注入ノズル１００と当接部材１１０との、２点で支持されているため、壁面Ｗａの凹凸の具合や、吸着盤１０５の吸着の具合により、壁面Ｗａに対する、注入ノズル１００及び当接部材１１０の当接バランスが悪くなることがあった。その場合、アーム１０８がぐらついて横方向に傾き、注入ノズル１００のノズル部１０１が亀裂Ｋから浮き上がったり、亀裂Ｋから離脱したりしてしまうことがあるという問題があった。この場合には、充填剤の漏れが生じて充填不良を引き起こしたり、実質的に充填ができなったりすることがある。

　本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、壁面の凹凸の具合や、吸着盤の吸着の具合等により、壁面に対する注入ノズル及び当接部材の当接バランスが多少悪くなっても、アームを横方向に傾きにくくし、注入ノズルの亀裂からの浮き上がり及び離脱を防止して、充填剤を亀裂に確実に充填することができる、壁の亀裂補修装置を提供することを目的とする。

　上記の目的を達成するため、本発明の壁の亀裂補修装置は、壁の亀裂に先端が配置され、該亀裂に充填剤を注入するノズル部、及び該ノズル部に連設され、該ノズル部に充填剤を流入させる流入管を有する注入ノズルと、空気を吸引する吸引通路が形成された支持軸に固定され、上記吸引通路を通しての空気の吸引により壁面に吸着し、吸引解除により壁面から離脱可能な吸着盤と、軸線方向に先端部と後端部とを有し、上記軸線方向の途中において、第１ユニバーサルジョイントを介して上記支持軸によって支持され、かつ、上記先端部において、第２ユニバーサルジョイントを介して、上記注入ノズルの流入管を支持するアームと、該アームの上記後端部に取付けられ、上記壁面に先端が当接し、上記注入ノズルによる充填剤の充填時に、当該アームに生じるモーメント荷重を受ける複数の当接部材とを備え、上記複数の当接部材は、上記アームの上記軸線方向と直交する方向に設けられたことを特徴としている。当接部材は、壁面に弾接させるように構成してもよいし、弾接することなく当接させるように構成してもよい。

　これにより、壁の亀裂に充填剤を充填するときは、補修すべき壁面の亀裂の状態に応じて、注入ノズルの最適な位置が選択される。この位置の近傍の亀裂の入っていない位置に、吸着盤が配置され、吸着盤は壁面に吸着して固定される。注入ノズルは、選択した亀裂の位置に位置決めされる。この状態で、注入ノズルから充填剤を吐出すると、充填剤が亀裂内へ充填される。このとき、注入ノズルに、充填剤の圧送により高圧が作用して反力が生じて、アームに、その軸線方向に直交する水平軸回りのモーメントが生じるため、アームは、この水平軸を中心に回動しようとする。しかし、アームの後端部に取付けた当接部材が、壁面に当接して、アームに生じたモーメント荷重を受け止めるため、吸着盤が、壁面から剥がされにくくなる。このため、注入ノズルから高圧で充填剤を圧送して、充填剤を補修すべき亀裂に確実に充填することができる。

　アームは、その軸線方向の途中を中心として、前側が注入ノズルで支持され、かつ、後側が複数の当接部材に支持される。すなわち、アームは、前後３点以上で支持される。このため、壁面の凹凸の具合や吸着盤の吸着の具合等により、アームが横方向に傾こうとしても、アームが横方向に傾くことが防止される。その結果、注入ノズルの、亀裂からの浮き上がりや離脱が防止され、充填剤が亀裂に確実に充填される。また、充填剤の注入の信頼性の向上を図ることができる。

　また、好ましくは、上記複数の当接部材の各々は、上記アームの上記後端部に進退可能に設けられた軸体で構成され、上記複数の当接部材の各々を所望の進退動位置でそれぞれロックするロック機構を備える。
　複数の当接部材の各々を所望の進退動位置でロックすることができるため、複数の当接部材の互いのバランスを調整することができる。その結果、アームの支持をより一層安定化することができる。

　また、好ましくは、上記軸体は、上記壁面に当接する当接頭と、該当接頭から延び、該当接頭より小径の雄ネジ杆とを有し、上記アームの上記後端部に、上記複数の当接部材の上記雄ネジ杆が挿通する複数の挿通孔が形成された後端部材が設けられ、上記ロック機構は、上記後端部材の下面と上記雄ネジ杆の上記当接頭との間で、圧縮状態で、該雄ネジ杆に遊嵌された押圧コイルスプリングと、上記後端部材の上面側において上記雄ネジ杆と螺合するロックナットとを備える。
　これにより、軸体を挿通孔に対して進退動させ、ロックナットでロックするだけで、軸体を位置決めでき、容易に調整することができる。また、使用時には、押圧コイルスプリングによって、雄ネジ杆の当接頭が壁面に弾接されるから、壁面が平坦ではなく凸凹していても、当接頭が壁面に追従し、支持が安定化する。

　また、好ましくは、上記軸体は、上記壁面に当接する上記当接頭と、該当接頭から延び、該当接頭より小径の雄ネジ杆とを有し、上記アームの後端部に、上記複数の当接部材の雄ネジ杆を挿通するための複数の挿通孔が形成された後端部材が設けられ、上記ロック機構は、上記後端部材の下面側及び上面側において、それぞれ上記雄ネジ杆と螺合するロックナットで構成される。
　これにより、軸体を挿通孔に対して進退動させ、ロックナットでロックするだけの簡易な機構なので、軸体を容易に調整することができる。

　また、好ましくは、上記支持軸の中心軸と上記注入ノズルの中心軸との間隔Ｌ１は、上記支持軸の中心軸と上記当接部材の中心軸との間隔Ｌ２よりも短い。より好ましくは、２Ｌ１≦Ｌ２である。
　注入ノズルから充填剤が吐出する際にアームに生じるモーメント荷重は、当接部材によって受け止められる。Ｌ１＜Ｌ２として、注入ノズル側のアームの長さよりも、当接部材側のアームの長さを長くしたので、アームに生じるモーメント荷重が当接部材によって確実に受け止められる。

　また、好ましくは、上記第１ユニバーサルジョイントは、上記支持軸を挿通するための貫通孔を有する球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備え、上記支持軸の外周に雄ネジが形成され、上記支持軸に、上記吸着盤の上面と上記アームの下面間に圧縮状態で、遊嵌された押さえコイルスプリングが設けられ、上記アームの上面側において上記支持軸の上記雄ネジと螺合し、上方への上記アームの移動を規制する規制ナット部が設けられている。

　規制ナット部を締め付けると、アームが上側へ移動することが規制され、吸着盤は、押さえコイルスプリングにより常時壁面側に付勢される。そのため、吸着盤は、ガタツキなく、壁面へ確実に装着される。特に、吸着盤の天井への吸着において有効である。また、吸着盤の吸着力によって、押さえコイルスプリングの付勢力に抗して、アーム自体が吸着盤側に引っ張られるため、注入ノズル及び当接部材が壁面に良好に押し付けられる。かくして、注入ノズルの、亀裂からの浮き上がり及び離脱が防止され、充填剤が亀裂に確実に充填される。

　また、好ましくは、上記規制ナット部は、上記支持軸の雄ネジと螺合する雌ネジを有するナット本体と、把持されて該ナット本体を手動の操作で回転させるために、該ナット本体の外周に該ナット本体と一体に形成された操作フランジとを備える。ナット本体を操作フランジの手動操作で回転させることによって、押さえコイルスプリングの付勢力が容易に調整されるため、吸着盤の壁面への装着具合や、注入ノズルと当接部材の壁面に対する押し付け具合を容易かつ適正に調整することができ、操作性が向上する。

　また、好ましくは、上記規制ナット部は、第１ナットと、上記第１ナットの一端側に設けられた第２ナットとの組で構成され、上記第１ナットの内周には、上記支持軸の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、上記第１ナットは、上記一端側の一部に、雌ネジが形成された内周に沿って延び、外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ形状を有するテーパ管を有し、上記第２ナットの内周には、上記支持軸の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、上記第２ナットは、その一端側の一部に、第１ナットのテーパ管の外周に接合するテーパ面を有するテーパ凹部を有する。
　第１ナットに対して第２ナットを締め付けると、第２ナットのテーパ凹部によって、第１ナットのテーパ管が押圧され、テーパ管が縮径する。その結果、第１ナットの雌ネジが支持軸の雄ネジに圧接されて、規制ナット部が支持軸に対して容易に動かなくなり、アームが確実に規制される。そのため、繰り返し使用時に、規制ナット部の緩みによるアームの移動が防止されるため、注入ノズルの壁面への押し付け力の変動が抑制され、充填剤が亀裂により確実に充填される。

　また、好ましくは、上記第２ユニバーサルジョイントは、上記流入管が挿通するための貫通孔を有する球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備え、上記流入管の外周に、雄ネジが形成され、上記アームの上面側及び下面側においてそれぞれ上記流入管の雄ネジと螺合して流入管をロックする一対のロックナット部が設けられ、該一対のロックナット部の各々は、上記流入管の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されたナット本体と、把持されて該ナット本体を手動の操作で回転させるために、該ナット本体の外周に一体に形成された操作フランジとを備える。
　一対のロックナット部を互いに締め付けると、流入管が固定されて容易に動きにくくなる。その結果、注入ノズルが確実に位置決めされる。ナット本体は、操作フランジの手動操作によって回転されるため、ロックナット部の操作性が向上する。

　また、好ましくは、上記第２ユニバーサルジョイントは、上記流入管を挿通するための貫通孔を有する球形の回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングとを備え、上記流入管の外周に、雄ネジが形成され、上記アームの上面側及び下面側においてそれぞれ上記流入管の雄ネジと螺合して流入管をロックする一対のロックナット部が設けられ、該一対のロックナット部の少なくとも下面側のロックナット部は、第１ナットと、上記第１ナットの一端側に設けられた第２ナットとの組で構成され、上記第１ナットの内周には、上記流入管の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、上記第１ナットは、上記一端側の一部に、雌ネジが形成された内周に沿って延び、外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ形状を有するテーパ管を有し、上記第２ナットの内周には、上記流入管の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、上記第２ナットは、その一端側の一部に、テーパ凹部を有し、該テーパ凹部は、第１ナットのテーパ管の外周に接合するテーパ面を有し、上記第２ナットの上記第１ナット側への締め付けによって、上記テーパ管を縮径させて、該テーパ管を上記流入管の雄ネジに押圧する。

　第１ナットに対して第２ナットを締め付けると、第２ナットのテーパ凹部によって第１ナットのテーパ管が押圧されて、テーパ管が縮径する。その結果、第２ナットの雌ネジが流入管の雄ネジに圧接され、ロックナット部が支持軸に対して容易に動かなくなり、壁面に装着時に、注入ノズルが確実に位置決めされる。そのため、繰り返し使用時に、ロックナット部の緩みによる注入ノズルの上方への移動が防止されて、注入ノズルの壁面への押し付け力の変動が抑制され、充填剤が亀裂により確実に充填される。一対のロックナット部の両方が、それぞれ第１ナットと第２ナットとの組で構成された場合には、注入ノズルがより一層確実に位置決めされ、ガタツキが防止される。

　また、好ましくは、上記吸着盤は、上記支持軸に固定される吸着本体と、該吸着本体に、突出して設けられ、内側に上記支持軸の吸引通路に連通し、壁面側に対向する凹所を形成するとともに壁面に弾接する樹脂製のリング状パッキンとを備え、上記吸着本体は、透明な樹脂で形成されている。
　吸着盤を壁面に装着するときに、吸着盤はバキュームポンプで吸引される。壁面上の吸着盤が配置された部位に亀裂があると、その亀裂から充填剤が吸着盤内へ吸引される。その結果、充填剤が吸着盤からバキュームポンプに到達して、バキュームポンプが損傷するおそれがある。しかし、吸着盤の本体を透明にしたので、亀裂から吸着盤に吸引された充填剤の吸引が視認される。この場合、吸引を停止し、吸着盤を別の場所に移動させることによって、充填剤がバキュームポンプに吸引されることを防止して、安全を図ることができる。

　また、好ましくは、上記ノズル部は、上記流入管に連設され、漸次拡開するフレア形状の吐出口を有するノズル本体と、該ノズル本体の開口縁部に設けられ、壁面に弾接する樹脂製のクッション部材とを備える。
　ノズル本体の吐出口が、漸次拡開するフレア形状を有し、広い開口を有するから、吐出口を亀裂の線上に容易に合わせることができ、また、充填剤を確実に吐出することができる。

　また、好ましくは、上記ノズル本体は、上記開口縁部の外周に、上記クッション部材の外周に食い込んで、該クッション部材と係合する係合凸部を有する。
　繰り返し使用しても、クッション部材が、ノズル本体から外れにくいため、ノズル部の耐久性が向上する。

　また、好ましくは、壁の亀裂補修装置は、上記流入管に充填剤を供給するために、該流入管に接続された供給管を備え、上記供給管は、上記流入管に接続された接続口と、該接続口に連通し、３方向に分岐した第１分岐管，第２分岐管及び第３分岐管とを有し、上記第１，第２及び第３分岐管の各々は、当該分岐管を開閉する手動の開閉弁を有する。
　これにより、第１分岐管に、ある種類の充填剤を供給する管路を接続し、第２分岐管に、別の種類の充填剤を供給する管路を接続する。残った第３分岐管は、エアによる洗浄用とする。先ず、ある種類の充填剤を注入するときは、第１分岐管の開閉弁を開にし、他を閉にする。また、別の種類の充填剤を注入するときは、第３分岐管の開閉弁を開にし、これにエアを送給して管路を洗浄する。次に、第１分岐管の開閉弁を閉にし、第３分岐管を閉にし、第２分岐管を開にして、別の充填剤を注入する。再度、ある一種の充填剤を充填するときは、同様に洗浄を行って、上記と同様にする。このように、１つの装置で、２種類の充填剤を適宜切換えて注入することができるため、２種類の充填剤を極めて作業効率が良く注入することができる。例えば、亀裂のコンクリートに充填剤を良くなじませるためのコンクリートに含浸する充填剤を注入する場合等に、極めて有用である。

　また、好ましくは、上記支持軸の吸引通路とバキュームポンプからの吸引配管との間に取り付けられた切換バルブを備え、該切換バルブは、該切換バルブを上記バキュームポンプの吸引を有効にする常態位置に付勢するスプリングと、該切換バルブを、上記吸引通路を大気開放して上記バキュームポンプの吸引を無効にする作動位置に、上記スプリングの付勢力に抗して位置させる押しボタンとを備える。

　亀裂補修装置を使用する際には、バキュームポンプを駆動させたまま、切換バルブの押しボタンを作動位置まで押して、吸引を無効にし、補修すべき壁面の亀裂に注入ノズルを位置決めし、亀裂の入っていない適宜の位置に吸着盤を位置決めする。
　次いで、切換バルブの押しボタンの押された状態を解除して、押しボタンを常態位置に位置させて、バキュームポンプの吸引を有効にする。その結果、吸着盤は、壁面に吸着されて固定される。この状態で、充填剤を注入ノズルから吐出すると、充填剤が亀裂内へ充填される。充填が終われば、切換バルブの押しボタンを押す。これにより、バキュームポンプの吸引が無効になり、吸着盤の吸着が解除される。
　次いで、亀裂補修装置を別の位置に移動し、上記と同様に、吸着盤を壁面に吸着させ、充填剤を注入ノズルから亀裂内へ充填する。この場合、切換バルブの押しボタンの押釦及び押釦解除をするだけで、吸着盤の吸着解除及び吸着を行うことができる。このため、操作が極めて簡単であり、亀裂補修装置を円滑に移動させることができるため、作業性が大幅に向上する。
　なお、亀裂補修装置の移動中に、押しボタンの押釦を解除して、吸着盤を壁面に吸着させてもよい。

　本発明によれば、アームは、その軸線方向の途中を中心として、前側が注入ノズルで支持され、かつ、後側が複数の当接部材に支持される。すなわち、アームは、前後３点以上で支持される。このため、吸着盤を壁面に吸着させて固定し、注入ノズルを選択した亀裂の位置に位置決めし、注入ノズルから充填剤を吐出する際に、壁面の凹凸の具合や吸着盤の吸着の具合等により、アームが横方向に傾こうとしても、アームが横方向に傾くことが防止される。その結果、注入ノズルの、亀裂からの浮き上がりや離脱が防止され、充填剤が亀裂に確実に充填され、充填剤の注入の信頼性の向上を図ることができる。

図１は、本発明の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の斜視図を示す。図２は、本発明の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の一部切欠き側面図を示す。図３は、図２中のＡ－Ａ線に沿った線断面図を示す。図４は、本発明の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の要部断面図を示す。図５は、本発明の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の別の要部断面図を示す。図６は、本発明の別の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の斜視図を示す。図７は、本発明の別の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の一部切欠き側面図を示す。図８は、図７中のＢ－Ｂ線に沿った断面図を示す。図９は、本発明の別の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の要部断面図を示す。図１０は、本発明の別の実施形態に係る壁の亀裂補修装置の別の要部断面図を示す。図１１は、従来の壁の亀裂補修装置の一例の斜視図を示す。

発明を実施するための、形態

　以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る壁の亀裂補修装置を詳細に説明する。
　図１～図５は、本実施形態に係る壁の亀裂補修装置Ｓを示す。図１に示すように、壁Ｗに発生した亀裂Ｋが、壁面Ｗａに表れている。壁面Ｗａの亀裂Ｋに、本実施形態に係る壁の亀裂補修装置Ｓによって、例えば、２種類の充填剤が充填される。２種類の充填剤として、例えば、亀裂Ｋのコンクリートに含浸して、これを緻密にする前処理充填剤と、亀裂Ｋを塞ぐ主充填剤とが用いられる。

　壁の亀裂補修装置Ｓは、基本的構成として、壁Ｗの亀裂Ｋに充填剤を注入する注入ノズル１と、空気の吸引により壁面Ｗａに吸着し、吸引解除により壁面Ｗａから離脱可能な吸着盤２０と、長手方向（軸線方向）に先端部と後端部とを有するアーム３０であって、その軸線方向の途中において、吸着盤２０を支持する支持軸２２に、第１ユニバーサルジョイントＪＡを介して支持され、かつ、先端部において、第２ユニバーサルジョイントＪＢを介して、注入ノズル１を支持するアーム３０と、アーム３０の後端部に取付けられ、壁面Ｗａに先端が当接し、注入ノズル１による充填剤の充填時に、アーム３０に生じるモーメント荷重を受ける複数の当接部材５０とを備える。

　図１，図２及び図５に示すように、注入ノズル１は、ノズル部２と流入管３とを有する。ノズル部２は、壁面Ｗａの亀裂Ｋに先端が配置され、亀裂Ｋに充填剤を注入する。流入管3は、ノズル部２に連設され、ノズル部２に充填剤を流入させる。図５に示すように、ノズル部２は、流入管３に連設され漸次拡開するフレア形状の吐出口４を有するノズル本体５と、ノズル本体５の開口縁部に設けられ。壁面Ｗａに弾接する樹脂製のクッション部材６とを備える。図５に示すように、クッション部材６は、シリコーン樹脂等の密着性の高い弾性樹脂からなり、中央に吐出口４に連通する孔７を有する円盤状に形成されている。ノズル本体５の開口縁部の外周には、クッション部材６の外周に食い込んで、クッション部材６と係合するリング状の係合凸部８が形成されている。

　また、図１及び図２に示すように、注入ノズル１の流入管３には、流入管３に充填剤を供給するための供給管１０が接続されている。供給管１０は、流入管３に接続された接続口１１と、接続口１１に連通し、３方向に分岐した第１分岐管１２，第２分岐管１３及び第３分岐管１４とを有する。各分岐管１２，１３，１４の各々は、当該分岐管１２，１３，１４を開閉する手動の開閉弁１５を有する。例えば、第１分岐管１２には、ある一種の充填剤として、亀裂Ｋのコンクリートに含浸させて、これを緻密にする前処理充填剤を供給する供給管路（図示せず）が接続される。第２分岐管１３には、別の充填剤として、亀裂Ｋを塞ぐ主充填剤を供給する供給管路（図示せず）が接続される。残った第３分岐管１４は、エアによる洗浄用である。第１分岐管１２及び第２分岐管１３それぞれに接続された供給管路には、個別に充填剤を供給する注入ポンプがそれぞれ設けられている。図２中に、第２分岐管１２用の注入ポンプ１６が示されている。

　吸着盤２０は、空気を吸引する吸引通路２１が形成された支持軸２２に固定され、吸引通路２１を通しての空気の吸引により壁面Ｗａに吸着する。図２に示すように、吸着盤２０は、中心部が支持軸２２に固定された円盤状の吸着本体２３を備える。吸着本体２３は、例えば、アクリル樹脂等の硬質の透明な樹脂で形成される。
　吸着本体２３の下面には、吸着本体２３の中心部を中心としたリング状の溝２５が形成されている。リング状の溝２５には、リング状パッキン２４の嵌合し、接着剤で接着されている。リング状パッキン２４は、吸着本体２３の下面から突出して、壁面Ｗａに弾接する。リング状パッキン２４は、基端部側の弾性樹脂からなる第１部材２４ａと、第１部材２４ａに積層され、壁面Ｗａに当接する、シリコーン樹脂等の密着性の高い弾性樹脂からなる第二部材２４ｂとから構成される。
　吸着本体２３の下面のうち、リング状パッキン２４内側には、支持軸２２の吸引通路２１に連通し、壁面Ｗａに対向する凹所２６が形成されている。吸引通路２１にはバキュームポンプ２７（図２参照）が接続される。

　アーム３０は、ステンレス等の金属製であり、矩形の断面形状を有する棒状の形状を有する。アーム３０には、軽量化のために、軸線方向に沿って前後２箇所に、楕円状の貫通孔３１が形成されている。また、図２に示すように、アーム３０を側面から見て、支持軸２２の中心軸と注入ノズル１の中心軸との間隔Ｌ１は、支持軸２２の中心軸と当接部材５０の中心軸との距離Ｌ２よりも短い。望ましくは、２Ｌ１≦Ｌ２である。本実施形態では、２Ｌ１＝Ｌ２である。

　第１ユニバーサルジョイントＪＡは、支持軸２２が挿通される貫通孔を有する球形の回転部材ａと、回転部材ａを回転自在に保持するリング状の保持リングｂとを備える。図４に示すように、保持リングｂは、アーム３０の軸線方向の途中に形成された貫通凹部３２に嵌合され、一対の皿ボルト３３でアーム３０に取り付けられた押さえ板３３ａによって、抜け止め固定されている。また、吸着盤２０の上面とアーム３０の下面側の第１ユニバーサルジョイントＪＡの保持リングｂとの間には、押さえコイルスプリング３４が、圧縮状態で、支持軸２２に遊嵌されている。

　支持軸２２の外周には雄ネジ３５が形成されている。アーム３０の上面側には、支持軸２２の雄ネジと螺合し、アーム３０の上方への移動を規制する規制ナット部３６が設けられている。図４に示すように、規制ナット部３６は、支持軸２２の雄ネジ３５と螺合する雌ネジを有するナット本体３７と、ナット本体３７の外周にナット本体３７と一体に形成された操作フランジ３８とを備え、操作フランジ３８は、把持されて、ナット本体３７を手動の操作で回転させる。操作フランジ３８は、円形の外周を有し、外周面には、滑り止めのローレットが形成されている。

　また、アーム３０の先端部に、注入ノズル１の流入管３が、第２ユニバーサルジョイントＪＢを介して支持されている。第２ユニバーサルジョイントＪＢは、流入管３が挿通される貫通孔を有する球形の回転部材ａと、該回転部材ａを回転自在に保持するリング状の保持リングｂとを備える。保持リングｂは、アーム３０の先端部を構成するホルダ４０に保持されている。ホルダ４０には、突出した雄ネジ部４１が設けられている。ホルダ４０の雄ネジ部４１は、アーム３０の先端部に形成された軸方向に軸線を有する雌ネジ部４２と螺合する。雌ねじ部４２への雄ネジ部４１のネジ込み程度により、ホルダ４０の突出寸法が調整可能である。また、ホルダ４０には、回転部材ａの回転をロックするロックボルト４４が設けられている。ロックボルト４４のボルト頭４４ａは、手動の操作で回転させることのできるように、円盤状に形成されている。ボルト４４ａの外周面には、滑り止めのローレットが形成されている。

　さらに、流入管３の外周には、雄ネジ４５が形成されている。また、アーム３０の上面側及び下面側に、一対のロックナット部４６，４７が設けられている。一対のロックナット部４６，４７は、それぞれ流入管３の雄ネジ４５と螺合し、流入管３をロックする。図５に示すように、一対のロックナット部４６，４７の各々は、流入管３の雄ネジ４５と螺合する雌ネジを有するナット本体４８と、ナット本体４８の外周に、ナット本体４８と一体に形成された操作フランジ４９とを備える。操作フランジ４９は、把持されて、ナット本体４８を手動の操作で回転させる。操作フランジ４９の外周は、円形に形成されている。操作フランジ４９の外周面には、滑り止めのローレットが形成されている。

　複数の当接部材（本実施形態では一対の当接部材）５０は、アーム３０の軸線Ｐ方向と直交する方向に、軸線Ｐを跨いで並設されている。図２及び図３に示すように、より詳細には、一対の当接部材５０の各々は、アーム３０の後端部に進退可能に設けられた軸体で構成されている。各当接部材５０は、壁面Ｗａに当接する当接頭５１と、当接頭５１から延び、該当接頭５１より小径の雄ネジ杆５２とを有する。アーム３０の後端部には、各当接部材５０の雄ネジ杆５２が挿通される複数（実施形態では１対）の挿通孔５３が形成された後端部材５４が、ボルト５５で止着されている。雄ネジ杆５２の先端には、キャップナット５６が螺合されている。

　また、各当接部材５０は、それぞれ当該当接部材５０を所望の進退動位置でロックするロック機構５７を備える。ロック機構５７は、後端部材５４の下面と雄ネジ杆５２の当接頭５１との間に、圧縮状態で、雄ネジ杆５２に遊嵌された押圧コイルスプリング５９と、後端部材５４の上面側において雄ネジ杆５２と螺合するロックナット５８とを備える。ロック機構５７は、挿通孔５３に挿通された当接部材５０としての軸体を、挿通孔５３に対して進退動させ、ロックナット５８でロックするだけの簡易な機構を有するため、当接部材５０の位置を容易に調整することができる。

　さらに、図１，図２及び図４に示すように、支持軸２２の吸引通路２１には、バキュームポンプ２７からの吸引配管２７ａが接続されている。支持軸２２の上端と吸引配管２７ａとの間に、切換バルブ６０が取付けられている。切換バルブ６０は、３ポート２位置方向切換弁（ノーマルオープン，押しボタンスプリングリターン）である。切換バルブ６０は、当該切換バルブ６０を、バキュームポンプ２７の吸引を有効にする常態位置Ｅ１に付勢するスプリング６１と、当該切換バルブ６０を、吸引通路２１を大気開放してバキュームポンプ２７の吸引を無効にする作動位置Ｅ２に、スプリング６１の付勢力に抗して位置決めする押しボタン６２とを備える。

　本実施形態に係る壁Ｗの亀裂補修装置Ｓを用いて、以下のように、壁面Ｗａの亀裂Ｋに充填剤を充填する。先ず、予め、支持軸２２に対するアーム３０の上側への移動の規制位置と、注入ノズル１のノズル部２の第２ユニバーサルジョイントＪＢに対する突出位置と、当接部材５０の後端部材５４に対する進退動位置とを調整する。

　支持軸２２に対するアーム３０の上側への移動の規制位置を調整するときには、支規制ナット部３６を所望の位置に移動させて、締め付けて固定する。これにより、アーム３０の上側への移動が規制され、吸着盤２０は、押さえコイルスプリング３４によって、常時壁面Ｗａ側に付勢される。そのため、吸着盤２０は、ガタツキなく、壁面Ｗａへ確実に装着を確実される。特に、吸着盤２０の天井への吸着において有効である。この場合、ナット本体３７を操作フランジ８の手動操作で回転させることによって、押さえコイルスプリング３４の付勢力が容易に調整され、吸着盤２０の壁面Ｗａへの装着具合や、注入ノズル１と当接部材５０の壁面Ｗａに対する押し付け具合が、容易に適正に調整され、操作性が向上する。

　注入ノズル１のノズル部２の第２ユニバーサルジョイントＪＢに対する突出位置を調整するときには、注入ノズル１を所望の位置に進退動させ、一対のロックナット部４６，４７を第２ユニバーサルジョイントＪＢに対して締め付けて、注入ノズル１を固定する。一対のロックナット部４６，４７を互いに締め付けると、流入管３が固定されるため、注入ノズル１が確実に位置決めされる。この場合、ナット本体４８を操作フランジ４９の手動操作で回転させることができるので、操作性が向上する。

　当接部材５０の後端部材５４に対する進退動位置を調整するときには、一対の当接部材５０の各々を、アーム３０の後端部材５４に対して進退動させ、所望の位置でロックする。当接部材５０は、後端部材５４の上面側において、ロック機構５７のロックナット５８を後端部材５４に対して締め付けることによって、ロックされる。各当接部材５０を所望の進退動位置でロックすることができるので、一対の当接部材５０の互いのバランスを調整し、アーム３０の支持を安定化することができる。

　このように調整された亀裂補修装置Ｓを使用する際には、まず、バキュームポンプ２７を駆動させたまま、切換バルブ６０の押しボタン６２を押して切換バルブ６０を作動位置Ｅ２に位置させる。その結果、バキュームポンプ２７の吸引が無効になる。次いで、補修すべき壁面Ｗａの亀裂Ｋの状態に応じて注入ノズル１の最適な位置を選択し、その位置の近傍の亀裂Ｋの入っていない適宜の位置に吸着盤２０を位置させる。次いで、アーム３０を、その長手方向の途中の垂直軸回りに回転させて、壁面Ｗａの亀裂Ｋの位置に、注入ノズル１のノズル部２の先端を位置させる。そして、押しボタン６２を解除して、切換バルブ６０を常態位置Ｅ１に戻す。その結果、バキュームポンプ２７の吸引が有効になり、吸着盤２０は、壁面Ｗａに吸着して固定される。
　第２ユニバーサルジョイントＪＢにおいては、適時にロックボルト４４を締め付けて、回転部材ａをロックする。吸着盤２０は、押さえコイルスプリング３４により常時壁面Ｗａ側に付勢されているので、吸着盤２０を、ガタツキなく、壁面Ｗａに容易に装着される。特に、吸着盤の天井への吸着において有効である。なお、亀裂補修装置Ｓの移動中に押しボタン６２を解除し、吸引を有効にしたまま、吸着盤２０を壁面Ｗａに吸着させてもよい。

　また、必要な充填剤が供給されるように、亀裂補修装置Ｓの壁面Ｗａへの装着前あるいは装着後に、供給管１０の各分岐管１２，１３，１４に設けた開閉弁１５を開閉する。この状態で、注入ポンプ（例えば図２の注入ポンプ１６）を駆動する。これにより、注入ノズル１のノズル部２から充填剤が吐出され、充填剤が壁面Ｗａの亀裂Ｋ内へ充填される。注入ノズル１のノズル部２の吐出口４が、漸次拡開するフレア形状を有し、吐出口４の開口が広いから、吐出口４を亀裂Ｋの線上に容易に合わせることができ、充填剤が確実に吐出される。

　充填剤の充填時には、注入ノズル１に充填剤の圧送により、高圧が作用して反力が生じ、その結果、アーム３０に、その軸線Ｐ方向と直交する水平軸Ｑ回りのモーメントＭが生じる。しかし、アーム３０の後端部に取付けた当接部材５０が壁面Ｗａに当接し、アーム３０に生じるモーメント荷重を受け止めるので、吸着盤２０が壁面Ｗａから剥がれにくくなる。このため、注入ノズル１から充填剤を高圧で圧送しても、充填剤が、補修すべき亀裂Ｋに確実に充填される。

　また、一対の当接部材５０が、アーム３０の軸線Ｐ方向と直交する方向に設けられているため、アーム３０は、支持軸２２を中心として、前側が注入ノズル１で支持され、かつ、後側が一対の当接部材５０に支持される。すなわち、アーム３０は、前後３点で支持される。このため、壁面Ｗａの凹凸の具合や、吸着盤２０の吸着の具合等により、アーム３０が、第１ユニバーサルジョイントＪＡを介して、アーム３０の軸線Ｐ回りに回動しようとしても、アーム３０がアーム３０の軸線Ｐ回りに回動して横方向に傾くことが防止される。そのため、注入ノズル１の亀裂Ｋからの浮き上がりや離脱が防止され、充填剤が亀裂Ｋに確実に充填される。
　さらに、本実施形態では、支持軸２２から注入ノズル１までのアーム３０の長さＬ１よりも、支持軸２２から当接部材５０までのアーム３０の長さＬ２が長く、２Ｌ１≦Ｌ２である。このため、アーム３０に生じるモーメント荷重が、当接部材５０によって確実に受け止められる。

　また、押圧コイルスプリング５９によって、当接部材５０の雄ネジ杆５２の当接頭５１が壁面に弾接するから、当接部材５０は、壁面Ｗａが平坦でなく凸凹していても、壁面Ｗａに追従し、支持が安定化する。
　また、吸着盤２０の吸着力によって、押さえコイルスプリング３４の付勢力に抗して、アーム３０自体が吸着盤２０側に引っ張られるため、注入ノズル１と当接部材５０が壁面Ｗａに良好に押し付けられる。かくして、注入ノズル１の、亀裂Ｋからの浮き上がりや離脱が防止され、充填剤が亀裂Ｋに確実に充填される。

　充填終了後、切換バルブ６０の押しボタン６２を押す。これにより、切換バルブ６０が作動位置Ｅ２に位置し、バキュームポンプ２７の吸引が無効になって、吸着盤２０の吸着が解除される。そして、亀裂補修装置Ｓを別の位置に移動させ、上記と同様に、吸着盤２０を壁面Ｗａに吸着させて、注入ノズル１から充填剤を充填する。切換バルブ６０の押しボタン６２の押釦及び押釦解除をするだけで、吸着盤２０の吸着解除及び吸着を行うことができるので、操作が極めて簡単であり、亀裂補修装置Ｓを円滑に移動することができ、作業性が大幅に向上する。なお、亀裂補修装置Ｓの移動中に、押しボタン６２を解除して、吸引を有効にしながら、吸着盤２０を壁面Ｗａに吸着してもよい。

　亀裂補修装置Ｓを繰り返し使用して、順次、各亀裂Ｋに充填剤を注入する。壁面Ｗａの状態により、亀裂補修装置Ｓが不安定な場合には、規制ナット部３６の締め付けを調整し、あるいは、一対のロックナット部４６，４７の締め付けを調整するとよい。規制ナット部３６の締め付けを調整するときには、ナット本体３７が操作フランジ８の手動操作によって回転するので、操作性が向上する。また、一対のロックナット部４６，４７の締め付けを調整するときにも、ナット本体４８が操作フランジ４９の手動操作によって回転するので、操作性が向上する。そのため、吸着盤２０の壁面Ｗａへの装着具合や、注入ノズル１及び当接部材５０の壁面Ｗａに対する押し付け具合が、容易に適正に調整され、亀裂補修装置Ｓが安定化する。

　吸着盤２０を、バキュームポンプ２７で吸引して、壁面Ｗａに装着するときに、吸着盤２０が配置された部位に亀裂があると、その亀裂から充填剤が吸着盤内へ吸引される。その結果、充填剤がバキュームポンプ２７に到達して、バキュームポンプ２７が損傷するおそれがある。しかし、吸着盤２０の吸着本体２３を透明にしたので、亀裂からの吸着盤内に吸引された充填剤を視認することができ、この場合、吸引を停止し、吸着盤２０を別の場所に移動させることによって、充填剤がバキュームポンプに吸引されることを防止して、安全を図ることができる。
　また、ノズル本体５の開口縁部の外周に設けたクッション部材６は、その外周に食い込んで係合する係合凸部８によって押さえられているので、繰り返しの使用によってもノズル本体５から外れにくく、耐久性が向上する。

　注入ノズル１の流入管３に、第１分岐管１２，第２分岐管１３及び第３分岐管１４を備えた供給管１０が接続されたので、充填剤の種類を切換えて充填することができる。例えば、先ず、ある一種の充填剤を注入するときは、第１分岐管１２の開閉弁１５を開にし、他を閉にする。また、別の種類の充填剤を注入するときは、第３分岐管１４の開閉弁を開にし、これにエアを送給して管路を洗浄する。次に、第１分岐管１２の開閉弁を閉にし、第３分岐管１４を閉にし、第２分岐管１３を開にして、別の充填剤を注入する。再度、ある一種の充填剤を充填するときは、同様に洗浄を行って、上記と同様にする。このように、１つの装置で、２種類の充填剤が適宜切換えて注入されるため、２種類の充填剤が極めて作業効率が良く注入される。

　図６～図１０は、本発明の別の実施形態に係る壁の亀裂補修装置Ｓを示す。この壁の亀裂補修装置Ｓは、上記と同様に、壁Ｗの亀裂Ｋに充填剤を注入３から離脱可能な吸着盤２０と、吸着盤２０を支持する支持軸２２に、アーム３０の中間部において、第１ユニバーサルジョイントＪＡを介して支持され、かつ、先端部に、注入ノズル１を、第２ユニバーサルジョイントＪＢを介して支持するアーム３０と、アーム３０の後端部に取付けられ、壁面Ｗａに先端が当接し、注入ノズル１による充填剤の充填時にアーム３０に生じるモーメント荷重を受ける当接部材５０とを備えた基本構造を有する。

　図６，図７及び図１０に示すように、注入ノズル１は、亀裂Ｋに充填剤を注入するために、亀裂Ｋに先端が配置されたノズル部２と、ノズル部２に充填剤を流入させるために、ノズル部２に連設された流入管３とを有する。
　図１０に示すように、ノズル部２は、ノズル本体５と、クッション部材６とを備える。ノズル本体５は、漸次拡開するフレア状の吐出口４を有し、流入管３に連設されている。クッション部材６は、ノズル本体５の開口縁部に設けられ、壁面Ｗａに弾接する。クッション部材６は、シリコーン樹脂のような、密着性の高い弾性樹脂製である。

　また、図６及び図７に示すように、注入ノズル１の流入管３には、流入管３に充填剤を供給するための供給管１０が接続されている。この供給管１０は、流入管３に接続される接続口１１と、接続口１１に連通し３方向に分岐した第１分岐管１２，第２分岐管１３及び第３分岐管１４とを備える。各分岐管１２，１３，１４には、当該分岐管１２，１３，１４を開閉する手動の開閉弁１５が設けられている。第１分岐管１２には、例えば、ある一種の充填剤として、亀裂Ｋのコンクリートに含浸させてこれを緻密にする前処理充填剤が供給される供給管路（図示せず）が接続される。第２分岐管１３には、別の充填剤として、亀裂Ｋを塞ぐ主充填剤が供給される供給管路（図示せず）が接続される。残った第３分岐管１４は、エアによる洗浄用とする。第１分岐管１２及び第２分岐管１３の供給管路には、それぞれ、個別に充填剤を供給する注入ポンプが設けられている。図７に、第２分岐管１２用の注入ポンプ１６を示す。

　吸着盤２０は、空気を吸引する吸引通路２１が形成された支持軸２２に固定され、吸引通路２１を通しての空気の吸引により、壁面Ｗａに吸着する。図７に示すように、吸着盤２０は、中心部が支持軸２２に固定された円盤状の吸着本体２３を備える。吸着本体２３は、例えば、アクリル樹脂等の硬質の透明な樹脂で形成される。
　吸着本体２３の下面には、吸着本体２３の中心部を中心としたリング状の溝２５が形成されている。リング状の溝２５には、リング状パッキン２４の嵌合し、接着剤で接着されている。リング状パッキン２４は、吸着本体２３の下面から突出して、壁面Ｗａに弾接する。リング状パッキン２４は、基端部側の弾性樹脂からなる第１部材２４ａと、第１部材２４ａに積層され、壁面Ｗａに当接する、シリコーン樹脂等の密着性の高い弾性樹脂からなる第二部材２４ｂとから構成される。
　吸着本体２３の下面のうち、リング状パッキン２４内側には、支持軸２２の吸引通路２１に連通し、壁面Ｗａに対向する凹所２６が形成されている。吸引通路２１にはバキュームポンプ２７（図７参照）が接続される。

　アーム３０は、ステンレス等の金属製であり、矩形の断面形状を有する棒状の形状を有する。アーム３０には、軽量化のために、軸線方向に沿って前後２箇所に、楕円状の貫通孔３１が形成されている。
　第１ユニバーサルジョイントＪＡは、支持軸２２が挿通される貫通孔を有する球形の回転部材ａと、回転部材ａを回転自在に保持するリング状の保持リングｂとを備える。保持リングｂは、アーム３０の中間部に形成された貫通凹部５に嵌合し、上面の一対のボルト３３によって、抜け止め固定されている。
　吸着盤２０の上面と、アーム３０の下面側の第１ユニバーサルジョイントＪＡの保持リングｂとの間には、押さえコイルスプリング３４が、圧縮状態で、支持軸２２に遊嵌されている。

　支持軸２２の外周には、雄ネジ３５が形成されている。アーム３０の上面側には、支持軸２２の雄ネジと螺合する規制ナット部３６が設けられている。規制ナット部３６は、アーム３０が上方へ移動すること規制する。図９に示すように、規制ナット部３６は、第１ナットＮ１と、第１ナットＮ１の一端側に設けられた第２ナットＮ２との組で構成される。
　第１ナットＮ１の内周には、支持軸２２の雄ネジ３５と螺合する雌ネジが形成されている。第１ナットＮ１は、その一端側の一部に、雌ネジが形成された内周に沿って延びるテーパ管ｎａを有する。テーパ管ｎａは、外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ形状を有する。
　第２ナットＮ２の内周には、支持軸２２の雄ネジ３５と螺合する雌ネジが形成されている。第２ナットＮ２は、その一端側の一部に、テーパ凹部ｎｂを有する。テーパ凹部ｎｂは、第１ナットＮ１のテーパ管ｎａの外周に接合するテーパ面を有する。

　また、アーム３０は、その先端部に、注入ノズル１の流入管３を、第２ユニバーサルジョイントＪＢを介して支持する。第２ユニバーサルジョイントＪＢは、流入管３が挿通される貫通孔を有する球形の回転部材ａと、該回転部材ａを回転自在に保持するリング状の保持リングｂとを備える。保持リングｂは、アーム３０の先端部を構成するホルダ４０に保持される。ホルダ４０は、突出した雄ネジ部４１を有する。雄ネジ部４１は、アーム３０の先端部に形成された軸方向に軸線を有する雌ネジ部４２と螺合する。雌ねじ部４２に対する雄ネジ部４１のネジ込み程度により、雄ネジ部４１の突出寸法が調整可能である。ロックナット４３は、雌ネジ部４２と螺合しホルダ４０を、所望の突出位置でロックする。また、ホルダ４０は、回転部材ａの回転をロックするロックボルト４４を有する。

　流入管３の外周には、雄ネジ４５が形成されている。アーム３０の上面側及び下面側に、それぞれ流入管３の雄ネジ４５と螺合して、流入管３をロックする一対のロックナット部４６，４７が設けられている。
　図１０に示すように、上側のロックナット部４６は、１つのナットで構成される。一方、下面側のロックナット部４７は、第１ナットＮ１と、第１ナットＮ１の一端側に設けられた第２ナットＮ２との組で構成される。
　第１ナットＮ１の内周には、流入管３の雄ネジ４５と螺合する雌ネジが形成されている。第１ナットＮ１は、その一端側の一部に、雌ネジが形成された内周に沿って延び、外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ形状を有するテーパ管ｎａを有する。
　第２ナットＮ２の内周にも、流入管３の雄ネジ４５と螺合する雌ネジが形成されている。第２ナットＮ２は、その一端側の一部に、テーパ凹部ｎｂを有する。テーパ凹部ｎｂは、第１ナットＮ１のテーパ管ｎａの外周に接合するテーパ面を有する。第２ナットＮ２の第１ナットＮ１側への締め付けによって、テーパ管ｎａが、縮径して、流入管３の雄ネジ４５に押圧される。

　複数の当接部材（実施形態では一対の当接部材）５０が、アーム３０の軸線Ｐ方向と直交する方向に、軸線Ｐを跨いで、並設されている。図７及び図８に示すように、各当接部材５０は、アーム３０の後端部に、進退可能に設けられた軸体で構成される。当接部材５０の各々は、壁面Ｗａに当接する当接頭５１と、当接頭５１から延び、該当接頭５１より小径の雄ネジ杆５２とを有する。アーム３０の後端部には、各当接部材５０の雄ネジ杆５２が挿通される複数（実施形態では一対）の挿通孔５３が形成された後端部材５４が、ボルト５５で止着されている。キャップナット５６が、雄ネジ杆５２の先端に、螺合する。

　一対の当接部材５０の各々は、複数の当接部材５０の各々を所望の進退動位置でそれぞれロックするロック機構５７を備える。ロック機構５７は、後端部材５４の下面側及び上面側において、それぞれ雄ネジ杆５２と螺合するロックナット５８で構成される。当接部材５０としての軸体を挿通孔５３に対して進退動させ、ロックナット５８でロックするだけの簡易な機構なので、軸体を容易に調整することとができる。

　本実施形態に係る壁の亀裂補修装置Ｓを用いて、以下のように、壁面Ｗａの亀裂Ｋに充填剤を充填する。先ず、予め、支持軸２２に対するアーム３０の上側への移動の規制位置と、注入ノズル１のノズル部２の第２ユニバーサルジョイントＪＢに対する突出位置と、当接部材５０の後端部材５４に対する進退動位置とを調整する。

　支持軸２２に対するアーム３０の上側への移動の規制位置を調整するときには、規制ナット部３６を所望の位置に移動させて、第１ナットＮ１に対して第２ナットＮ２を締め付けて固定する。これにより、第２ナットＮ２のテーパ凹部ｎｂによって、第１ナットＮ１のテーパ管ｎａが押圧されて縮径する。その結果、第１ナットＮ１の雌ネジが、支持軸２２の雄ネジ３５に圧接し、固定される。そのため、規制ナット部３６が支持軸２２に対して動きにくくなり、アーム３０の上側への移動が確実に規制される。

　注入ノズル１のノズル部２の第２ユニバーサルジョイントＪＢに対する突出位置を調整するときには、注入ノズル１を所望の位置に進退動させ、一対のロックナット部４６，４７を第２ユニバーサルジョイントＪＢに対して締め付けて、注入ノズル１を固定する。下側のロックナット部４７においては、第１ナットＮ１に対して第２ナットＮ２を締め付ける。これにより、第２ナットＮ２のテーパ凹部ｎｂによって、第１ナットＮ１のテーパ管ｎａが押圧されて縮径する。その結果、第１ナットＮ１の雌ネジが、流入管３の雄ネジ４５に圧接され、固定される。そのため、ロックナット部４６，４７が支持軸２２に対して容易に動きにくくなり、注入ノズル１が確実に位置決めされる。

　当接部材５０の後端部材５４に対する進退動位置を調整するときには、一対の各当接部材５０を、後端部材５４に対して進退動させ、所望の位置で、ロック機構５７のロックナット５８でロックする。ロックナット５８を、後端部材５４の下面側及び上面側において、それぞれ後端部材５４に対して締め付ける。各当接部材５０を所望の進退動位置でロックし、一対の当接部材５０の互いのバランスを調整することによって、アーム３０の支持が安定化する。

　このように調整された亀裂補修装置Ｓを使用する際には、まず、補修すべき壁面Ｗａの亀裂Ｋの状態に応じて注入ノズル１の最適な位置を選択する。次いで、この位置の近傍の亀裂Ｋの入っていない適宜の位置に吸着盤２０を位置決めする。次いで、アーム３０を、その中間部の垂直軸回りに回転させて、壁面Ｗａの亀裂Ｋの位置に、注入ノズル１のノズル部２の先端を位置決めする。次いで、バキュームポンプ２７を駆動して、吸着盤２０の凹所２６の空気を抜き、吸着盤２０を壁面Ｗａに吸着させて固定する。
　第２ユニバーサルジョイントＪＢにおいては、適時にロックボルト４４を締め付けて、回転部材ａをロックする。吸着盤２０は、押さえコイルスプリング３４により常時壁面Ｗａ側に付勢されているので、吸着盤２０は、ガタツキがなく、壁面Ｗａに容易に装着される。特に、吸着盤の天井への吸着において有効である。

　また、必要な充填剤が供給されるように、亀裂補修装置Ｓの壁面Ｗａへの装着前あるいは装着後に、注入ノズル１に接続された供給管１０の各分岐管１２，１３，１４に設けた開閉弁１５を開閉する。この状態で、注入ポンプ（例えば図７の注入ポンプ１６）を駆動する。これにより、注入ノズル１のノズル部２から充填剤が吐出され、充填剤が壁面Ｗａの亀裂Ｋ内に充填される。注入ノズル１のノズル部２の吐出口４が、漸次拡開するフレア形状を有し、吐出口４の開口が広いから、吐出口４を亀裂Ｋの線上に容易に合わせルことができ、充填剤が確実に吐出される。

　充填剤の充填時には、注入ノズル１に充填剤の圧送により、高圧が作用して反力が生じ、その結果、アーム３０に、その軸線Ｐ方向に直交する水平軸Ｑ回りのモーメントＭが生じる。しかし、アーム３０の後端部に取付けた当接部材５０が壁面Ｗａに当接し、アーム３０に生じるモーメント荷重を受け止めるので、吸着盤２０が壁面Ｗａから剥がされにくくなる。このため、注入ノズル１から高圧で充填剤を圧送しても、充填剤が、補修すべき亀裂Ｋに確実に充填される。

　また、一対の当接部材５０が、アーム３０の軸線Ｐ方向と直交する方向に設けられているため、アーム３０は、中間部の支持軸２２を中心として、前側が注入ノズル１で支持され、かつ、後側が一対の当接部材５０に支持される。すなわち、アーム３０は、前後３点で支持される。このため、壁面Ｗａの凹凸の具合や、吸着盤２０の吸着の具合等により、アーム３０が、第１ユニバーサルジョイントＪＡを介して、アーム３０の軸線Ｐ回りに回動しようとしても、アーム３０がアーム３０の軸線Ｐ回りに回動して横方向に傾くことが防止される。そのため、注入ノズル１の亀裂Ｋからの浮き上がりや離脱が防止され、充填剤が亀裂Ｋに確実に充填される。
　また、吸着盤２０の吸着力によって、押さえコイルスプリング３４の付勢力に抗して、アーム３０自体が吸着盤２０側に引っ張られるため、注入ノズル１及び当接部材５０が壁面Ｗａに良く押し付けられる。かくして、注入ノズル１の亀裂Ｋからの浮き上がりや離脱が防止され、充填剤が亀裂Ｋに確実に充填される。

　亀裂補修装置Ｓを繰り返し使用して、順次、各亀裂Ｋに充填剤が注入される。支持軸において、規制ナット部３６が第１ナットＮ１のテーパ管ｎａを、第２ナットＮ２のテーパ凹部ｎｂで締め付けることによって、テーパ管ｎａが支持軸２２に対して容易に動きにくくなる。規制ナット部３６の緩みによるアーム３０の移動が防止されるため、繰り返し使用しても、注入ノズル１の壁面Ｗａへの押し付け力の変動が抑制され、充填剤が亀裂Ｋにより確実に充填される。

　また、注入ノズル１の流入管３において、第１ナットＮ１のテーパ管ｎａを第２ナットＮ２のテーパ凹部ｎｂで締め付けることによって、下側のロックナット部４７が、流入管３に対して動きにくくなる。そのため、繰り返し使用時に、ロックナット部４７の緩みによる注入ノズル１の移動が防止されて、注入ノズル１の壁面Ｗａへの押し付け力の変動が抑制され、充填剤が亀裂Ｋにより確実に充填される。尚、一対のロックナット部４６，４７の両方が、第１ナットＮ１と第２ナットＮ２との組で構成された場合には、注入ノズル１がより一層確実に位置決めされ、ガタツキ防止される。

　また、吸着盤２０をバキュームポンプ２７で空気を吸引して壁面Ｗａに吸着した際、壁面Ｗａ上の吸着盤２０が配置された部位に亀裂があると、その亀裂から充填剤が吸着盤２０内へ吸引される。その結果、充電材が吸着盤２０からバキュームポンプ２７に到達して、バキュームポンプ２７が損傷するおそれがある。しかし、吸着盤２０の吸着本体２３を透明にしたので、亀裂からの吸着盤２０内に吸引された充填剤が視認される。この場合、吸引を停止し、吸着盤２０を別の場所に移動させることによって、安全を図ることができる。

　また、本実施形態に係る亀裂補修装置Ｓにおいては、注入ノズル１の流入管３に、第１分岐管１２，第２分岐管１３及び第３分岐管１４を備えた供給管１０を接続したので、充填剤の種類を切換えて充填することができる。例えば、先ず、ある一種の充填剤を注入するときは、第１分岐管１２の開閉弁１５を開にし、他を閉にする。また、別の種類の充填剤を注入するときは、第３分岐管１４の開閉弁を開にし、これにエアを送給して管路を洗浄する。次に、第１分岐管１２の開閉弁を閉にし、第３分岐管１４を閉にし、第２分岐管１３を開にして、別の充填剤を注入する。再度、ある一種の充填剤を充填するときは、同様に洗浄を行って、上記と同様にする。このように、１つの装置で、２種類の充填剤を適宜切換えて注入することができるため、２種類の充填剤を極めて作業効率が良く注入することができる。

　尚、上記実施形態では、一対の当接部材５０を設けた例を説明したが、当接部材５０の数は、これに限定されず、３以上の当接部材５０を設けてもよい。また、各部材の材質や形状も、上記に限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。

　この明細書に記載の文献及び本願のパリ優先の基礎となる日本出願明細書の内容を全てここに援用する。

　１　注入ノズル
　２　ノズル部
　３　流入管
　４　吐出口
　５　ノズル本体
　６　クッション部材
　７　孔
　８　係合凸部
１０　供給管
１１　接続口
１２　第１分岐管
１３　第２分岐管
１４　第３分岐管
１５　開閉弁
１６　注入ポンプ
２０　吸着盤
２１　吸引通路
２２　支持軸
２３　吸着本体
２４　パッキン
２６　凹所
２７　バキュームポンプ
３０　アーム
３４　押さえコイルスプリング
３５　雄ネジ
３６　規制ナット部
３７　ナット本体
３８　操作フランジ
４０　ホルダ
４４　ロックボルト
４４ａ　ボルト頭
４５　雄ネジ
４６，４７　ロックナット部
４８　ナット本体
４９　操作フランジ
５０　当接部材
５１　当接頭
５２　雄ネジ杆
５４　後端部材
５７　ロック機構
５８　ロックナット
５９　押圧コイルスプリング
６０　切換バルブ
６２　押しボタン
　Ｓ　亀裂補修装置
　Ｗ　壁
Ｗａ　壁面
　Ｋ　亀裂
　Ｐ　軸線
ＪＡ　第１ユニバーサルジョイント
ＪＢ　第２ユニバーサルジョイント
　ａ　回転部材
　ｂ　保持リング
Ｎ１　第１ナット
ｎａ　テーパ管
Ｎ２　第２ナット
ｎｂ　テーパ凹部

Claims

　壁の亀裂に先端が配置され、該亀裂に充填剤を注入するノズル部、及び該ノズル部に連設され、該ノズル部に充填剤を流入させる流入管を有する注入ノズルと、
　空気を吸引する吸引通路が形成された支持軸に固定され、上記吸引通路を通しての空気の吸引により壁面に吸着し、吸引解除により壁面から離脱可能な吸着盤と、
　軸線方向に先端部と後端部とを有し、上記軸線方向の途中において、第１ユニバーサルジョイントを介して上記支持軸によって支持され、かつ、上記先端部において、第２ユニバーサルジョイントを介して、上記注入ノズルの流入管を支持するアームと、
　該アームの上記後端部に取付けられ、上記壁面に先端が当接し、上記注入ノズルによる充填剤の充填時に、当該アームに生じるモーメント荷重を受ける複数の当接部材と
を備え、
　上記複数の当接部材は、上記アームの上記軸線方向と直交する方向に設けられた
ことを特徴とする、壁の亀裂補修装置。
　上記複数の当接部材の各々は、上記アームの上記後端部に進退可能に設けられた軸体で構成され、
　上記複数の当接部材の各々を所望の進退動位置でそれぞれロックするロック機構を備える
ことを特徴とする、請求項１記載の壁の亀裂補修装置。
　上記軸体は、
　上記壁面に当接する当接頭と、
　該当接頭から延び、該当接頭より小径の雄ネジ杆と
を有し、
　上記アームの上記後端部に、上記複数の当接部材の上記雄ネジ杆が挿通する複数の挿通孔が形成された後端部材が設けられ、
　上記ロック機構は、
　上記後端部材の下面と上記雄ネジ杆の上記当接頭との間で、圧縮状態で、該雄ネジ杆に遊嵌された押圧コイルスプリングと、
　上記後端部材の上面側において上記雄ネジ杆と螺合するロックナットと
を備える
ことを特徴とする、請求項２記載の壁の亀裂補修装置。
　上記軸体は、
　上記壁面に当接する上記当接頭と、
　該当接頭から延び、該当接頭より小径の雄ネジ杆と
を有し、
　上記アームの後端部に、上記複数の当接部材の雄ネジ杆を挿通するための複数の挿通孔が形成された後端部材が設けられ、
　上記ロック機構は、上記後端部材の下面側及び上面側において、それぞれ上記雄ネジ杆と螺合するロックナットで構成される
ことを特徴とする、請求項２記載の壁の亀裂補修装置。
　上記支持軸の中心軸と上記注入ノズルの中心軸との間隔Ｌ１は、上記支持軸の中心軸と上記当接部材の中心軸との間隔Ｌ２よりも短い
ことを特徴とする、請求項１乃至４の何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
　上記第１ユニバーサルジョイントは、
　上記支持軸を挿通するための貫通孔を有する球形の回転部材と、
　該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングと
を備え、
　上記支持軸の外周に雄ネジが形成され、
　上記支持軸に、上記吸着盤の上面と上記アームの下面間に圧縮状態で、遊嵌された押さえコイルスプリングが設けられ、
　上記アームの上面側において上記支持軸の上記雄ネジと螺合し、上方への上記アームの移動を規制する規制ナット部が設けられた
ことを特徴とする、請求項１乃至５何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
　上記規制ナット部は、
　上記支持軸の雄ネジと螺合する雌ネジを有するナット本体と、
　把持されて該ナット本体を手動の操作で回転させるために、該ナット本体の外周に該ナット本体と一体に形成された操作フランジと
を備える
ことを特徴とする、請求項６記載の壁の亀裂補修装置。
　上記規制ナット部は、第１ナットと、上記第１ナットの一端側に設けられた第２ナットとの組で構成され、
　上記第１ナットの内周には、上記支持軸の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、
　上記第１ナットは、上記一端側の一部に、雌ネジが形成された内周に沿って延び、外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ形状を有するテーパ管を有し、
　上記第２ナットの内周には、上記支持軸の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、
　上記第２ナットは、その一端側の一部に、第１ナットのテーパ管の外周に接合するテーパ面を有するテーパ凹部を有する
ことを特徴とする、請求項６記載の壁の亀裂補修装置。
　上記第２ユニバーサルジョイントは、
　上記流入管が挿通するための貫通孔を有する球形の回転部材と、
　該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングと
を備え、
　上記流入管の外周に、雄ネジが形成され、
　上記アームの上面側及び下面側においてそれぞれ上記流入管の雄ネジと螺合して流入管をロックする一対のロックナット部が設けられ、
　該一対のロックナット部の各々は、
　上記流入管の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されたナット本体と、
　把持されて該ナット本体を手動の操作で回転させるために、該ナット本体の外周に一体に形成された操作フランジと
を備える
ことを特徴とする請求項１乃至８何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
　上記第２ユニバーサルジョイントは、
　上記流入管を挿通するための貫通孔を有する球形の回転部材と、
　該回転部材を回転自在に保持するリング状の保持リングと
を備え、
　上記流入管の外周に、雄ネジが形成され、
　上記アームの上面側及び下面側においてそれぞれ上記流入管の雄ネジと螺合して流入管をロックする一対のロックナット部が設けられ、
　該一対のロックナット部の少なくとも下面側のロックナット部は、第１ナットと、上記第１ナットの一端側に設けられた第２ナットとの組で構成され、
　上記第１ナットの内周には、上記流入管の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、
　上記第１ナットは、上記一端側の一部に、雌ネジが形成された内周に沿って延び、外周が基端から先端に向けて細くなるテーパ形状を有するテーパ管を有し、
　上記第２ナットの内周には、上記流入管の雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、
　上記第２ナットは、その一端側の一部に、テーパ凹部を有し、
　該テーパ凹部は、第１ナットのテーパ管の外周に接合するテーパ面を有し、上記第２ナットの上記第１ナット側への締め付けによって、上記テーパ管を縮径させて、該テーパ管を上記流入管の雄ネジに押圧する
ことを特徴とする、請求項１乃至８何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
　上記吸着盤は、
　上記支持軸に固定される吸着本体と、
　該吸着本体に、突出して設けられ、内側に上記支持軸の吸引通路に連通し、壁面側に対向する凹所を形成するとともに壁面に弾接する樹脂製のリング状パッキンと
を備え、
　上記吸着本体は、透明な樹脂で形成された
ことを特徴とする、請求項１乃至１０何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
　上記ノズル部は、
　上記流入管に連設され、漸次拡開するフレア形状の吐出口を有するノズル本体と、
　該ノズル本体の開口縁部に設けられ、壁面に弾接する樹脂製のクッション部材と
を備える
ことを特徴とする、請求項１乃至１１何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
　上記ノズル本体は、上記開口縁部の外周に、上記クッション部材の外周に食い込んで、該クッション部材と係合する係合凸部を有する
ことを特徴とする請求項１２記載の壁の亀裂補修装置。
　上記流入管に充填剤を供給するために、該流入管に接続された供給管を備え、
　上記供給管は、
　上記流入管に接続された接続口と、
　該接続口に連通し、３方向に分岐した第１分岐管，第２分岐管及び第３分岐管と
を有し、
　上記第１，第２及び第３分岐管の各々は、当該分岐管を開閉する手動の開閉弁を有する
ことを特徴とする、請求項１乃至１３何れかに記載の壁の亀裂補修装置。
　上記支持軸の吸引通路とバキュームポンプからの吸引配管との間に取り付けられた切換バルブを備え、
　該切換バルブは、
　該切換バルブを上記バキュームポンプの吸引を有効にする常態位置に付勢するスプリングと、
　該切換バルブを、上記吸引通路を大気開放して上記バキュームポンプの吸引を無効にする作動位置に、上記スプリングの付勢力に抗して位置決めする押しボタンと
を備える
ことを特徴とする、請求項１乃至１４何れかに記載の壁の亀裂補修装置。