以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、閉鎖型クランクケース換気システム1(以下、換気システム1という。)を例に挙げて説明する。
図1に示すように、換気システム1は、オイルセパレータ2とブリーザーパイプ3とを有する。オイルセパレータ2は、エンジン4から排出されたブローバイガス(クランクケースガス,ミスト状オイルを含有する処理対象ガスに相当する。)を処理し、ミスト状オイルを分離する。本実施形態において、オイルセパレータ2はエンジン4の側面に取り付けられている。ブリーザーパイプ3は、オイルセパレータ2から排出された処理後のブローバイガスを、エンジン4の吸気側流路に還元するための流路を区画する。
この換気システム1において、ブローバイガスは、ガス導出管5を通じてエンジン4から導出され、オイルセパレータ2へと導入される。そして、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルは、オイルセパレータ2の内部でエンジン4から供給されたオイルに取り込まれ、このオイルと共にエンジン4へと戻される。一方、ミスト状オイルが除去された処理後のブローバイガスは、オイルセパレータ2から排出された後、ブリーザーパイプ3を通じて吸気側流路6に還元される。具体的には、吸気側流路6におけるエアフィルタ7とターボチャージャー8とを接続する部分に還元される。還元されたブローバイガスは、エアフィルタ7からの新鮮な空気と混合され、ターボチャージャー8で圧縮される。その後、ブローバイガスは、チャージクーラー9で冷却されて、エンジン4に供給される。
次に、オイルセパレータ2について説明する。図2及び図3に示すように、このオイルセパレータ2では、下側ケース12と上側ケース13を備えるハウジング11を有している。そして、ハウジング11の内部空間に、ローターユニット、区画部材、PCVバルブ(何れも後述する)等が配置されている。
図2に示すように、下側ケース12は、ハウジング11における下側部分を区画する部分であり、上面が開放された有底の箱状部材によって構成されている。そして、下側ケース12の上端部には円形の嵌合部14が設けられており、上側ケース13の下端部15と嵌め合わされる。これにより、下側ケース12と上側ケース13が気密状態で接続される。図4に示すように、下側ケース12の背面には連通筒部16が後方に向けて設けられている。この連通筒部16は、オイルセパレータ2で使用されたオイルの出口となる筒状部材である。このため、連通筒部16の内部空間は、エンジン4の内部空間に連通されている。図2及び図3に示すように、連通筒部16の先端部には、エンジン4の側面に結合されるフランジ17が設けられている。下側ケース12の左側上部には、左側方に向けて吸入パイプ18が突設されている。
この吸入パイプ18にはガス導出管5が接続されている。エンジン4からのブローバイガスは、エンジン4の吸気圧力やクランクケース側の圧力により、ガス導出管5から吸入パイプ18を通ってオイルセパレータ2の内部に導入される。このとき、PCVバルブにより、エンジン4の吸気圧力やクランクケース側の圧力が適切に調整される。そして、吸入パイプ18はガス導入部として機能する。
図2及び図4に示すように、下側ケース12の底面には、オイル案内パイプ19のジョイント部20が臨んでいる。このジョイント部20は、図1に示すオイル供給パイプ21の一端に接続されている。オイル供給パイプ21は、エンジン4から送出されたオイルをオイル案内パイプ19へ供給するためのものである。オイル案内パイプ19へ供給されたオイルは、後述するように、ローターユニットが有するノズルから噴射され、ローターユニットを回転させるための動力として用いられる。便宜上、以下の説明において、ノズルから噴射されたオイルのことを動力用オイルともいう。この動力用オイルは、エンジン4で用いられている潤滑オイルの一部であることから、80~110℃位の温度になっている。
図2に示すように、上側ケース13は、下側ケース12に上方から取り付けられる部材である。この上側ケース13は、天井部分を有する円筒状の本体カバー22と円盤状の上面カバー23とを有している。本体カバー22は下側ケース12に対して気密状態で取り付けられている。上面カバー23は、本体カバー22の上端部に気密状態で取り付けられている。また、図3にも示すように、上面カバー23の中心部には、円筒状のガス排出部24が上方に向けて突設されている。ガス排出部24は、処理後のブローバイガスを排出する部分である。このガス排出部24には、L字状に屈曲された出口パイプ25を介して、前述したブリーザーパイプ3が接続される。
次に、図4を参照し、オイルセパレータ2の内部構造について説明する。なお、図4において、左側はオイルセパレータ2の前側に相当し、同じく右側はオイルセパレータ2の後側に相当する。図4に示すように、ハウジング11の内部には、PCVバルブ26、ローターユニット27、及び区画部材28が配設されている。そして、PCVバルブ26は、ハウジング11における上部に配設されている。具体的には、PCVバルブ26は、本体カバー22と上面カバー23の間に、上面カバー23に覆われた状態で取り付けられている。ローターユニット27は、ハウジング11における上下方向の中間部分に配設されている。具体的には、ローターユニット27は、本体カバー22によって区画される内部空間に、回転可能な状態で配設されている。区画部材28は、ローターユニット27を構成するローター31の直下に配設されている。この区画部材28は、鍔部44が上側ケース13の下端部15と下側ケース12の嵌合部14に挟持された状態で位置決めされている。
次に、図5を参照し、下側ケース12の内部構造について説明する。なお、図5においても、左側はオイルセパレータ2の前側に相当し、右側はオイルセパレータ2の後側に相当する。図5に示すように、下側ケース12の後部には連通筒部16が一体に設けられており、下側ケース12の内部空間と連通筒部16の内部空間とが連通されている。下側ケース12の底面は、連通筒部16に向かって下り傾斜されている。そして、下側ケース12の底面から上方に向かって円筒状のオイル案内パイプ19が設けられている。オイル案内パイプ19の下端にはジョイント部20が設けられており、オイル案内パイプ19の上端は固定フレーム29によって固定されている。固定フレーム29は、嵌合部14の内周側に取り付けられた枠体であり、嵌合部14の内周面に沿った形状の枠部と、枠部の内側に十字状に設けられた十字部とを有している。そして、オイル案内パイプ19の上端は、十字部における交差部分に空けられた貫通孔29aに挿入されている。
なお、図5には描かれていないが、吸入パイプ18は、嵌合部14の直下の高さで下側ケース12の左側面に設けられている。そして、下側ケース12の内部空間と吸入パイプ18の内部空間とが連通されている。このため、ブローバイガスは、エンジン4から下側ケース12の内部空間へ吸入される。また、ノズル38から噴射された動力用オイルは、区画部材28が有するテーパー部45の内壁面に吹き付けられる。この動力用オイルは、テーパー部45の内壁面や下側ケース12の内壁面に沿って流下する。その際、動力用オイルは、下側ケース12の内部空間に吸入されたブローバイガスと接触する。動力用オイルとの接触により、ブローバイガスに含まれているオイルミストの一部は、ブローバイガスから動力用オイルへと取り込まれる。その結果、ブローバイガスに含まれるオイルミストが減少する。
従って、下側ケース12の内部空間は、ノズル38から噴射された動力用オイルが流下されると共にエンジン4からのブローバイガスが導入され、ブローバイガスと動力用オイルとを接触させることで、オイルミストをブローバイガスから一次分離する一次分離室(第3空間SP3)に相当する。
また、ノズル38から噴射された動力用オイルは、その温度が80~110℃と高くなるため、オイルセパレータ2を下側ケース12の側から加温する。これにより、寒冷地での使用であっても、凍結等によるオイルセパレータ2の動作不具合の発生を抑えることができる。
次に、図6及び図7を参照し、ローターユニット27について説明する。このローターユニット27は、ブローバイガスに含まれるミスト状オイルを分離するための機構であり、ローター31、スピンドル32、及びスピンドルシャフト33を有している。
図6に示すように、ローター31は、ブローバイガスからオイルミストを分離する部分であり、複数枚の分離ディスク34、上部ホルダ35、及び下部ホルダ36を有している。分離ディスク34は、外周側部分が外周へ向かうに連れて下り傾斜された、平面視円形状若しくは多角形状の板材である。言い換えれば、分離ディスク34は、円錐台形状若しくは角錐台形状に加工された板材である。
本実施形態の分離ディスク34は、直径が80~120mm、厚みが0.3~0.4mmであって平面視円形状であり、樹脂の成型によって作製されている。これらの分離ディスク34は、スピンドル32の軸線方向に積層されて分離ディスク群を構成している。なお、説明の都合上、分離ディスク34同士の間隔を空けて描いているが実際の間隔は極めて狭く、例えば1mm以下に定められている。
円錐台の上底部分に相当する分離ディスク34の中心側部分には、取付開口34aが設けられている。図7に示すように、本実施形態の取付開口34aは、平面視八角形状の空部であり、上部ホルダ35が備えるディスク保持部35aが挿入される。複数枚の分離ディスク34にディスク保持部35aが挿入されると、取付開口34aにより、ローター31に中空部分(第1空間SP1)が形成される。また、外周側部分の表面には、積層された分離ディスク34同士の隙間(第2空間SP2)を確保するためのリブ34bが、放射方向に16本、等角度間隔で形成されている。このリブ34bにより、分離ディスク34同士の隙間が確実に確保され、この隙間とローター31の中空部分とが互いに連通される。
図6に示すように、上部ホルダ35は、積層された複数枚の分離ディスク34を上側から保持する部材であり、下部ホルダ36は、同じく下側から保持する部材である。そして、上部ホルダ35における回転中心部には、下方に向けてディスク保持部35aが設けられている。このディスク保持部35aは、ローター31の回転中心から放射方向に形成された8枚の板状部材35bによって構成されている。そして、各板状部材35bの側縁が、分離ディスク34に設けられた取付開口34aの各頂点に接している。下部ホルダ36の外周縁には、上部ホルダ35と連結するための連結アーム37が複数本設けられている。本実施形態では、4本の連結アーム37が周方向に90度間隔で設けられている。連結アーム37の上端を上部ホルダ35に接合することで、複数枚の分離ディスク34、上部ホルダ35、及び下部ホルダ36が一体化される。
このローター31は、円筒状の外観をしており、回転中心となる内周側が中空部分とされて上下方向に貫通している。この中空部分にはスピンドル32が挿入されており、スピンドル32とローター31とは互いに結合されている。本実施形態では、ディスク保持部35aを構成する8枚の板状部材35bがスピンドル32の周面に接合されることで、スピンドル32とローター31が結合されている。そして、ディスク保持部35aは、各分離ディスク34の取付開口34aに挿入されている。これによりローター31は、スピンドル32と共にスピンドル32の軸線を中心に回転する。
スピンドル32におけるローター31よりも下側の周面からはノズル38が突設されている。このノズル38は、スピンドルシャフト33を通じて供給されたオイルを噴射する部分であり、スピンドル32やローター31を回転させるための駆動力を発生させる。本実施形態において、ノズル38は、基端がスピンドル32に接合され、先端が塞がれた円筒状のノズル本体38aと、ノズル本体38aの先端部に設けられた噴射口38bとを有している。ノズル本体38aは、スピンドル32の軸線方向に対して下向き斜め45度の角度で取り付けられている。そして、3本のノズル本体38aが周方向に120度間隔で設けられている。また、噴射口38bは、ノズル本体38aにおける先端部の側面に設けられている。詳しくは、噴射口38bは、ノズル本体38aの軸線方向と直交する向きであって、オイルが水平方向に噴射される向きに設けられている。
スピンドルシャフト33は、スピンドル32の軸受けとなる円柱状部材であり、スピンドル32を回転可能な状態で支持する。スピンドルシャフト33の内側には、オイルを供給するための第1オイル供給路39が形成されている。また、スピンドルシャフト33の下端は、オイル案内パイプ19の上端と接合されている。前述したように、オイル案内パイプ19のジョイント部20には、オイル供給パイプ21が接続されている。このため、オイル供給パイプ21を通じて供給されたオイルは、オイル案内パイプ19を通った後に第1オイル供給路39へ流入する。
スピンドル32とスピンドルシャフト33の間には、上下を塞がれた状態で隙間が形成されている。この隙間が第2オイル供給路40となっている。第2オイル供給路40は、第1オイル供給路39やノズル38と連通されており、第1オイル供給路39から供給されたオイルで満たされる。そして、第2オイル供給路40に供給されたオイルの一部は、ノズル本体38aに流入した後、動力用オイルとして噴射口38bから噴射される。
ここで、第2オイル供給路40の下端は、筒状の下側シール部材41によってシールされている。同様に、第2オイル供給路40の上端は、筒状の上側シール部材42によってシールされている。そして、オイル圧力の上昇に伴い、これらの下側シール部材41及び上側シール部材42とスピンドル32との隙間からは、少量のオイルが漏出される。本実施形態では、約2000Gの遠心力が発生する速度でローター31を回転させた場合に、50~200mL/min程度のオイルが、スピンドル32の上端と上側シール部材42の隙間から、ローター31における内周側の空間(第1空間SP1)に導入される。便宜上、以下の説明では、第2オイル供給路40の上端からローター31における内周側の空間に導入されたオイルを、洗浄用オイルともいう。
ローター31における内周側の空間に導入された洗浄用オイルは、この空間やスピンドル32の外表面を流下し、ディスク保持部35aの各板状部材35bの表面に沿って外周側に拡がる。外周側に拡がった洗浄用オイルは、取付開口34aの縁から分離ディスク34同士が形成する隙間(第2空間SP2)へ流入される。そして、この隙間に流入した洗浄用オイルは、分離ディスク34の表面に沿って外周側に拡がり、分離ディスク34の外周縁から外側に放出される。
このように、第2オイル供給路40の上端、詳しくは、スピンドル32の上端と上側シール部材42の隙間は、第2オイル供給路40に供給されたオイルの一部を洗浄用オイルとして導入するオイル導入部に相当する。そして、この洗浄用オイルも、その温度が80~110℃と高いので、ローター31及びその近傍を内部から加温する。これにより、寒冷地での使用であっても、凍結等によるオイルセパレータ2の動作不具合の発生を抑えることができる。
次に、区画部材28について説明する。区画部材28は、ローター31とノズル38の間に配置され、ハウジング11の内部空間を下側ケース12の内部空間(一次分離室,第3空間SP3)と上側ケース13の内部空間とに区画し、かつ、下側ケース12のブローバイガスをローター31の中空部分(第1空間SP1)へ案内する流路を形成する部材である。
この区画部材28は、外周部43と鍔部44とテーパー部45とを有している。外周部43は、円筒状をした部分であり、ローター31を囲むように形成されている。この外周部43には、斜め上下方向に細長いスリット43aが形成されている。外周部43の内壁面には、分離ディスク34の外周縁から外側に放出された洗浄用オイルが衝突される。衝突された洗浄用オイルは、内壁面に沿って拡がり旋回しながら流下する。その際、オイルの一部がスリット43aを通じて外周側の空間に排出される。これにより、外周部43とローター31との隙間にオイルが溜まり難くなり、オイルがブローバイガスの流れに乗って持ち去られてしまう不具合を抑制できる。その結果、ブローバイガスからのオイルミストの分離性能を高めることができる。
また、外周部43における高さ方向の途中には、鍔部44が側方に張り出している。前述したように、この鍔部44は、区画部材28を位置決めする部分であり、上側ケース13の下端部15と下側ケース12の嵌合部14に挟持されている。テーパー部45は、外周部43の内周側に設けられており、外周部43の下端から上方に向けて次第に縮径されたテーパー形状をしている。そして、テーパー部45の上端開口45aは、ローター31の下端における面方向中心部に対して、下側から近接して配置されている。
また、テーパー部45の内周側であって上端開口45aの下方には、スピンドル32の下端部、スピンドルシャフト33の下端部、ノズル38、及び、固定フレーム29が配置されている。前述したように、ノズル38から噴射された動力用オイルは、テーパー部45の内壁面に衝突し、この内壁面を流下した後に、下側ケース12の内部空間を流下する。この流下の過程で動力用オイルは、ブローバイガスと接触し、ブローバイガスに含まれるオイルミストが一次分離される。オイルミストが一次分離されたブローバイガスは、テーパー部45の内周側を上昇してローター31の中空部分(第1空間SP1)へ誘導される。
次に、PCVバルブ26について説明する。図8に示すように、PCVバルブ26は、ダイヤフラム46と、上側スプリング47と、下側スプリング48を備えている。
ダイヤフラム46は、円盤状の弁体であり、ゴムと樹脂を成形することで作製されている。上側スプリング47及び下側スプリング48は、ダイヤフラム46を上下方向に移動可能な状態で支持するための弾性部材である。すなわち、上側スプリング47はダイヤフラム46の上方に配置され、下側スプリング48はダイヤフラム46の下方に配置されている。そして、これらの上側スプリング47と下側スプリング48によってダイヤフラム46を挟み、移動可能な状態で支持している。
ダイヤフラム46は、エンジン4の吸気側圧力やクランクケースの内圧に応じて上下方向に移動し、ブローバイガスの流れを調整する。すなわち、ダイヤフラム46は、エンジン4の吸気圧力(負圧)が過度に大きい場合にはブローバイガスの排出側(上方)に移動し、クランクケース側の圧力が高い場合には反対側(下方)に移動する。これにより、ブローバイガスの流量が適切に調整される。また、エンジン4(クランクケース)の圧力も適切に調整される。
次に、本実施形態のオイルセパレータ2によるミスト状オイルの分離について説明する。このオイルセパレータ2では、特にローター31におけるミスト状オイルの分離に特徴を有する。このため、ローター31におけるミスト状オイルの分離を中心に説明を行う。
このオイルセパレータ2では、エンジン4から供給されたオイル(潤滑オイルの一部)を動力にしてローター31を回転させる。すなわち、オイル供給パイプ21を通じて供給されたオイルは、オイル案内パイプ19を通った後にスピンドルシャフト33の第1オイル供給路39へ流入する。その後、オイルの一部は、第2オイル供給路40を通った後、図9に符号F1の矢印で示すように、動力用オイルとしてノズル38から噴射される。また、エンジン4から供給されたオイルの他の一部は、洗浄用オイルとして、第2オイル供給路40を通った後、符号F2の矢印で示すように、第2オイル供給路40の上端(オイル導入部)からローター31における内周側の空間に導入される。
このように、このオイルセパレータ2では、エンジン4から供給されたオイルをノズル38から噴射させたり、第2オイル供給路40の上端からローター31の中空部分に導入させたりしている。前述したように、エンジン4の運転によってオイルの温度が80~110℃まで上昇するので、オイルセパレータ2の温度も上昇し、ローター31における水分の凍結も防止できる。
エンジン4からのブローバイガスは、エンジン4の吸気に伴って下側ケース12の内部空間へ導入される。一方、ノズル38から噴射された動力用オイルは、前述したように、区画部材28の内壁面に吹き付けられた後、符号F3の矢印で示すように、区画部材28の内壁面及び下側ケース12の内壁面に沿って流下する。これにより、ブローバイガスが動力用オイルに接触し、ブローバイガスに含まれているオイルミストの一部が動力用オイルへと取り込まれる。すなわち、オイルミストの一次分離が行われる。
オイルミストが一次分離されたブローバイガスは、符号F11の矢印で示すように、エンジン4の吸気に伴ってテーパー部45の内側空間を上昇し、ローター31の下端における面方向中心部に案内される。そして、ブローバイガスは、ローター31の中空部分(第1空間SP1)に流入される。この中空部分では、ローター31が高速で回転していることから、符号F4の矢印で示すように、導入された洗浄用オイルがディスク保持部35aを構成する板状部材35bの表面に沿って拡がり、取付開口34aの縁部から分離ディスク34同士の隙間(第2空間SP2)に流入される。ブローバイガスもまた、符号F12の矢印で示すように、取付開口34aの縁部から分離ディスク34同士の隙間(第2空間SP2)に流入される。
図10に示すように、分離ディスク34同士の隙間に流入された洗浄用オイルは、ローター31が高速回転されていることから、分離ディスク34の表面全体に均等に拡がる。そして、符号F13の矢印で示すように、ブローバイガスは、分離ディスク34の表面に形成されたオイル膜OFに接触しながら流れる。これにより、図11に拡大して示すように、オイル膜OFの表面に境界層BLが形成される。そして、ブローバイガスは、符号F13の矢印で示すように、境界層BLの表面側を分離ディスク34の外周縁に向かって流れるが、その際、符号F5の矢印で示すように、ブローバイガスに含まれるオイルミストが境界層BLに取り込まれる。境界層BLに取り込まれたオイルミストは、符号CFで示す遠心力によって移動し、オイル膜OFに合体する。
ここで、オイルミストは、オイル膜OF(洗浄用オイル)と同じく潤滑オイルを由来としている。このため、オイルミストは、分離ディスク34よりもオイル膜OFに対して高い親和性(ぬれ性)を有する。これにより、オイル膜OFの表面に形成される境界層BLは、分離ディスク34の表面に形成される境界層BLよりも、効率よくオイルミストを取り込むことができる。その結果、分離ディスク34を小径に構成しても高い分離効率を得ることができ、ひいてはオイルセパレータ2を小型化することができる。
また、このオイルセパレータ2では、オイルミストの分離と共に、潤滑オイルに含まれる水を揮発させることもできる。すなわち、分離ディスク34の表面に形成されたオイル膜OFに関し、洗浄用オイルの温度が80~110℃と高温であることから、オイル膜OFの温度も水分を揮発させるために十分な温度域になる。また、多数枚積層された分離ディスク34によってオイル膜OFも密に形成されていることから、オイル膜OFの温度を保持できる。さらに、オイル膜OFが分離ディスク34の表面全体に形成されていることから、水分を効率よく揮発させるために十分な面積が確保されている。これらの理由から、潤滑オイルに含まれる水を効率よく揮発させることができる。これにより、潤滑オイルにエマルジョンが生じる不具合を抑制できる。
図10に符号F6の矢印で示すように、オイルミストを取り込んだ洗浄用オイルは、分離ディスク34の外周縁から外側に放出される。放出された洗浄用オイルは、区画部材28の外周部43に衝突し、この外周部43の内壁面に沿って旋回しながら流下する。これにより、外周部43の内壁面にもオイル膜が形成される。そして、放出された洗浄用オイルがオイル膜に取り込まれることでも、ブローバイガスに含まれるオイルミストが捕捉され、かつ、捕捉したオイルミストの再飛散が防止される。
そして、外周部43の下端まで達すると、洗浄用オイルは、区画部材28の底部に形成されたドレン孔(図示せず)を通じ、下側ケース12の内部空間(第3空間SP3)に排出される。前述したように、下側ケース12の内部空間には動力用オイルが流れているので、洗浄用オイルは動力用オイルと混ざる。そして、動力用オイルと洗浄用オイルは、取り込んだオイルミストと一体になって連通筒部16を通ってエンジン4に戻される。
一方、オイルミストが除去された処理後のブローバイガスは、分離ディスク34の外周縁から外側に排出されると、符号F14の矢印で示すように、エンジン4からの吸気によってハウジング11の内部を上昇する。ここで、洗浄用オイルや動力用オイルによってオイルセパレータ2の内部が加温されているため、オイル膜OFから揮発した水分は結露せずにブローバイガスと共に移動する。そして、処理後のブローバイガスは、オイル膜OFから揮発した水分とともに、PCVバルブ26、ガス排出部24、及び出口パイプ25を通過してオイルセパレータ2から排出される。その後、処理後のブローバイガスは、ブリーザーパイプ3を通じて吸気側流路6に還元される。
このように、本実施形態のオイルセパレータ2によれば、洗浄用オイルによって分離ディスク34の表面にオイル膜OFを形成しているので、ブローバイガスから効率よくオイルミストを分離することができる。
そして、第1オイル供給路39や第2オイル供給路40に供給されたオイルを、スピンドル32を回転させるための動力として使用すると共にオイル膜OFの形成にも使用しているので、装置構成の簡素化が図れる。
また、ミスト状オイルがエンジン4の潤滑油を由来としており、オイル膜OFがエンジン4の潤滑油であるため、親和性がより高くなってオイルミストを一層効率よくオイル膜OFに取り込むことができる。
さらに、ブローバイガスを下側ケース12の内部空間で動力用オイルと接触させてミスト状オイルを一次分離した後、処理後のブローバイガスをローター31の内部(分離ディスク34同士の隙間)で洗浄用オイルと接触させてミスト状オイルを二次分離しているので、ミスト状オイルをより高いレベルで分離することができる。
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。例えば、次のように構成してもよい。
ローター31の中空部分に関し、本実施形態では、平面視八角形状の取付開口34aによって形成されているが、この構成に限られない。ブローバイガスが導入できる空間であればよい。
分離ディスク34に関し、円錐台に限らず、角錐台であってもよい。なお、角錐台にする場合には、四角錐以上であることが好ましく、八角錐以上であることがより好ましい。
下側ケース12、連通筒部16、吸入パイプ18、及びオイル案内パイプ19に関し、本実施形態では、鋳物で作製されているが、樹脂を成型することで作製してもよい。
洗浄用オイルの供給経路に関し、前述の実施形態では、途中まで動力用オイルと共通化されていたが、この構成に限定されない。洗浄用オイルを、動力用オイルとは別系統の経路で供給してもよい。この場合、ローター31の回転をモータで行ってもよい。すなわち、スピンドル32をモータで回転させればよい。
処理対象ガスに関し、ブローバイガスに限られない。オイルミストを含有する処理対象ガスからオイルミスト分離する装置であれば、本発明を適用できる。
処理対象ガスの導入に関し、前述の実施形態では、下側ケース12でオイルミストが一次分離された処理対象ガスをローター31の中空部分に導入していたが、この構成に限定されない。処理対象ガスを直接ローター31の中空部分に導入してもよい。
区画部材28の外周部43に関し、スリット43aが設けられたものを例示したが、スリット43aは必要に応じて設ければよい。