WO2011062144A1 - 車両用ドア駆動装置 - Google Patents

Abstract

　車両ボディに形成されたドア開口を開閉する車両ドアの内部に固定され、モータ及び該モータにより回転駆動されるドラムを有する駆動機構と、ドラムに巻回され車両ボディに連結されたロープ部材であって、ドラムの回転がロープ部材を介して車両ボディに伝達されることで車両ドアが開閉作動させられるロープ部材とを備える車両用ドア駆動装置を提供する。ドラムは、車両ドアの内部において、モータの外形によって規定される車両幅方向の寸法の空間に少なくとも部分的に重合するように配置される。駆動機構は、モータの回転軸と一体回転するように同回転軸に連結された第１小径ギヤ部と、車両幅方向に延びる軸線の周りで回転自在な伝達ギヤと、車両幅方向に延びる軸線の周りで回転自在なサンギヤと、サンギヤと同軸に配置されたリングギヤと、サンギヤ及びリングギヤと噛合する遊星ギヤを有しドラムと一体回転するように同ドラムに連結されたキャリアとを備える。

Description

車両用ドア駆動装置

　本発明は、車体に形成されたドア開口を開閉する車両ドアを駆動する、車両用ドア駆動装置に関する。

　従来では、種々の車両用ドア駆動装置が提案されている。例えば特許文献１に記載された車両用ドア駆動装置は、車両ボディに固定されたガイドレール（３）により移動可能に支持されている車両ドアと、該車両ドアに固定される駆動機構（６）と、該駆動機構により選択的に巻取り及び繰出しされるケーブル（７）とを備えている。該ケーブルの両端末は、それぞれガイドレールの前端及び後端において車両ボディに連結されている。従って、駆動機構がケーブルを選択的に巻取り及び繰出しすると、車両ドアが開閉作動する。

　特許文献２には、こうした車両用ドア駆動装置に適用可能な駆動機構について記載されている。この駆動機構は、減速機構として遊星歯車機構を備え、この遊星歯車機構は、モータの回転軸に直結されたサンギヤを駆動軸とし、ドラムに一体回転するように連結されたリングギヤを従動軸とし、キャリアを固定軸とした減速比でモータの回転を減速してドラムに伝達している。この減速機構はモータの回転軸と同一中心線上にあり、全体として軸方向における駆動機構の投影面積が縮小されている。

　特許文献３には、こうした車両用ドア駆動装置に適用可能な別の駆動機構について記載されている。この駆動機構は、減速比の高いウォームギヤを含む減速機構と、該減速機構を介したモータの回転のドラムへの伝達を接続及び遮断する電磁クラッチとを備える。なお、ドラムの外径は、モータの出力特性に対するその巻取り速度及び該巻取りの必要トルク等の関係に応じて設定され、電磁クラッチの外径は、ドラムの外径よりも小さく設定されている。この場合、電磁クラッチは、その外径を縮小したことで軸方向に大型化されているものの、ドラムの占有空間を有効利用すべくドラム内部に格納されている。このため、駆動機構の大型化が抑制されている。

特開２００３－８２９２７号公報 特表２００９－５２３９８３号公報 特開２００８－６３７６２号公報

　特許文献２の駆動機構は、軸方向にモータ及び減速機構が積み重ねられた構造を有するため、全体として軸方向に大型化している。したがって、特に配置スペースの制約された車両ドアへ該駆動機構を搭載することは困難と推定される。

　特許文献３の駆動機構は、減速機構として、モータに連結されるウォームギヤを備えているので、モータの回転軸周りの占有空間を有効利用することができない。ウォームホイール並びにドラム及び電磁クラッチがそれらの軸方向に積み重ねられるので、全体として駆動機構の当該方向への大型化が必要となる。また、ウォームギヤの伝達効率は低いので、必要なトルクを得るためにモータの大型化を余儀なくされている。

　本発明の目的は、全体として車両幅方向により小型化して車両ドア内での配置自由度を向上させつつ、モータの回転を十分に減速することができる車両用ドア駆動装置を提供することにある。

　上記の目的を達成するために、本発明に従い、車両ボディに形成されたドア開口を開閉する車両ドアの内部に固定され、モータ及び該モータにより回転駆動されるドラムを有する駆動機構と、前記ドラムに巻回され、前記車両ボディに連結されたロープ部材であって、前記ドラムの回転が前記ロープ部材を介して前記車両ボディに伝達されることで前記車両ドアが開閉作動させられる前記ロープ部材と、を備える車両用ドア駆動装置を提供する。前記ドラムは、前記車両ドアの内部において、前記モータの外形によって規定される車両幅方向の寸法の空間に少なくとも部分的に重合するように配置される。前記駆動機構は、前記モータの回転軸と一体回転するように同回転軸に連結された第１小径ギヤ部と、車両幅方向に延びる軸線の周りで回転自在な伝達ギヤであって、前記第１小径ギヤ部と噛合して該第１小径ギヤ部とともに交差軸歯車又はハイポイドギヤを構成する第１大径ギヤ部と、伝達ギヤの軸線方向において前記第１大径ギヤ部に対し前記回転軸とは反対側に配置された第２小径ギヤ部とを有する前記伝達ギヤと、車両幅方向に延びる軸線の周りで回転自在なサンギヤであって、前記第２小径ギヤ部と噛合する第２大径ギヤ部と、サンギヤの軸線方向において前記第２大径ギヤ部に対し前記回転軸と同じ側に配置されたサンギヤ部とを有する前記サンギヤと、前記サンギヤと同軸に配置され、前記サンギヤ部の径方向外側に配置された、固定軸をなすリングギヤと、前記サンギヤ部及び前記リングギヤと噛合する遊星ギヤを有し、前記ドラムと一体回転するように同ドラムに連結されたキャリアと、を備える。

本発明の一実施形態における車両用ドア駆動装置を示す模式図。 図１の２－２線に沿った断面図。 車両幅方向内側から見た図１の車両用ドア駆動装置における駆動機構を示す正面図。 図３の４－４線に沿った断面図。 図３の駆動ユニットを示す分解斜視図。 （ａ）（ｂ）は、図１の車両用ドア駆動装置におけるリングギヤ及び係脱ブロックの動作を示す図。 （ａ）（ｂ）は、図１の車両用ドア駆動装置における切替レバーの動作を示す図。 図１の車両用ドア駆動装置におけるキャンセル機構の動作を示す図。 図１の車両用ドア駆動装置の電気的構成を示すブロック図。 本発明の変形形態における切替レバーを示す正面図。

　以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
　図１に示すように、車両ボディ１０の側部にはドア開口１０ａが形成されている。ドア開口１０ａの上縁及び下縁に沿ってそれぞれアッパレール１１及びロアレール１２が設置されている。ドア開口１０ａの後方のクォータパネル１０ｂには、車両前後方向に延在するセンターレール１３が設置されている。これらレール１１，１２，１３には、各ガイドローラユニット１４を介して車両ドアとしてのスライドドア２０が車両前後方向に移動可能に支持されている。このスライドドア２０は、その車両前後方向への移動に伴ってドア開口１０ａを開閉する。なお、センターレール１３は、車両のドアベルトライン付近の高さに配置されている。クォータパネル１０ｂには、センターレール１３の下縁に沿って同センターレール１３の全長に亘り延びるように、ケーブルガイド１５が設置されている。

　スライドドア２０の内部後部には、前記ドアベルトライン付近の高さにおいて、例えばボルト及びナットによる締結で駆動ユニット２１が固定されている。より詳細には、図２に示したように、駆動機構２１は、ドア厚さ方向（車両幅方向）において、スライドドア２０のドア内張りを構成するドアトリム１６とドア内板を構成するドアインナパネル１７との間に挟まれる態様で該ドアインナパネル１７に固定されている。なお、スライドドア２０の内部を昇降するドアウインドガラスＤＷはドアインナパネル１７よりも外側（車両幅方向外側）に配置されている。つまり、駆動機構２１は、ドアウインドガラスＤＷと重合するような高さに配置されるものの、該ドアウインドガラスＤＷの昇降動作を妨げることはない。

　図１に示すように、この駆動機構２１は、ブラシモータからなる駆動モータ２２及び該駆動モータ２２により回転駆動されるドラム２３を有している。該ドラム２３にはロープ部材としての第１ケーブル２４及び第２ケーブル２５が巻回されている。すなわち、これら第１及び第２ケーブル２４，２５は、第１の端末がドラム２３にそれぞれ係止された状態で該ドラム２３に巻回されている。第１及び第２ケーブル２４，２５は、駆動機構２１により選択的に巻取り及び繰出しされる。また、駆動機構２１は、プーリ機構としての中間プーリ２６を更に有している。第１及び第２ケーブル２４，２５の各々は、中間プーリ２６と、センターレール１３を移動するガイドローラユニット１４に連結された案内プーリ２７とを経てスライドドア２０から車両ボディ１０へと渡され、ケーブルガイド１５に沿って車両前後方向に配索されている。なお、プーリ２６，２７は、前記ドアベルトライン付近の高さにおいて、ドラム２３より後方の位置及び更にその後方の位置にそれぞれ配置されている。第１ケーブル２４は、ケーブルガイド１５に案内されて前側に配索され、第２の端末に連結されたテンショナー２８を介して、ケーブルガイド１５の前端で車両ボディ１０に、例えばボルト及びナットによる締結で連結されている。第２ケーブル２５は、ケーブルガイド１５に案内されて後側に配索され、第２の端末に連結されたテンショナー２９を介して、ケーブルガイド１５の後端で車両ボディ１０に、例えばボルト及びナットによる締結で連結されている。

　このような構成にあって、例えば駆動機構２１が第１ケーブル２４を繰り出しつつ第２ケーブル２５を巻き取ると、スライドドア２０はドア開口１０ａを開放すべく後方に移動する。一方、駆動機構２１が第１ケーブル２４を巻き取りつつ第２ケーブル２５を繰り出すと、スライドドア２０はドア開口１０ａを閉鎖すべく前方に移動する。

　駆動機構２１の構造について更に説明する。図３及び図４に示されるように、駆動機構２１は、その外形をなすとともに各種構成部品を収容及び支持する箱状のケース３０を備える。このケース３０は、各種構成部品の収容空間を形成するハウジング３１と、該ハウジング３１において互いに相反する方向に開口する開口部をそれぞれ閉塞する第１カバー３２及び第２カバー３３（図５参照）とを備えている。駆動機構２１は、ハウジング３１がドアインナパネル１７に締結されることで、該ドアインナパネル１７に固定及び支持される。なお、ハウジング３１、第１カバー３２及び第２カバー３３は、例えば樹脂材にて成形されている。

　図５に示すように、ハウジング３１は、車両前側上縁部に配置されたモータホルダ部３１ａと、該モータホルダ部３１ａの下側に隣接配置された有底略円筒状の第１ギヤ収容部３１ｂと、該第１ギヤ収容部３１ｂの車両後側に隣接配置された有底略円筒状の第２ギヤ収容部３１ｃと、該第２ギヤ収容部３１ｃの車両後側に隣接配置された有底略扇形筒状のレバー収容部３１ｄと、第１ギヤ収容部３１ｂ及びレバー収容部３１ｄ間に延在する態様で第２ギヤ収容部３１ｃの下側に隣接配置された有蓋筒状の基板収容部３１ｅと、レバー収容部３１ｄの上側であって第２ギヤ収容部３１ｃの車両後側に上下に並設される態様で配設された対のプーリ収容部３１ｆ，３１ｇとを一体的に有する。なお、第１ギヤ収容部３１ｂ、第２ギヤ収容部３１ｃ、レバー収容部３１ｄ及びプーリ収容部３１ｆ，３１ｇは、車両幅方向内側に開口しており、基板収容部３１ｅは、逆向き、すなわち、車両幅方向外側に開口している。図３に示すように、第１ギヤ収容部３１ｂ、第２ギヤ収容部３１ｃ及びレバー収容部３１ｄは、円形の筒部の一部が重なる態様で順次連通しており、該円形の筒部の中心が一直線上に並ぶように並設されている。図４に示すように、第１及び第２ギヤ収容部３１ｂ，３１ｃの底壁と、レバー収容部３１ｄの底壁との間には、段差Ｄによる高低差が設けられている。図５に示すように、プーリ収容部３１ｆ，３１ｇは、第２ギヤ収容部３１ｃにそれぞれ連通している。

　図５に示されるように、モータホルダ部３１ａは、ホルダ本体３１ｈと略円筒状の軸挿通部３１ｉとを有する。ホルダ本体３１ｈには、前記駆動モータ２２の固定子２２ａがビスＢ１によって締結されている。軸挿通部３１ｉは、該ホルダ本体３１ｈの中央部を第１ギヤ収容部３１ｂの円形の筒部の中心に向かって貫通することによって、該第１ギヤ収容部３１ｂ内に連通している。つまり、軸挿通部３１ｉは、略車両の上下方向、すなわち、第１ギヤ収容部３１ｂ等の開口方向に対して略直交する方向に沿って、開口している。この軸挿通部３１ｉには、該軸挿通部３１ｉに沿って延びる軸線を有する前記駆動モータ２２の回転軸２２ｂが挿通されるとともに、該回転軸２２ｂに固着された第１小径ギヤ部４１が回転自在に収容されている。従って、図４に示すように、ハウジング３１（ケース３０）は、スライドドア２０の内部において、駆動モータ２２（固定子２２ａ）の外形によって規定される車両幅方向の寸法Ｌの空間に少なくとも部分的に重合するよう配置されている。なお、第１小径ギヤ部４１は、例えば傘歯車で構成されている。

　第１ギヤ収容部３１ｂの底壁中央からは、略円柱状の支持部３１ｊが突設されている。この支持部３１ｊには、伝達ギヤ４２が回転自在に支持されている。すなわち、伝達ギヤ４２は、支持部３１ｊと同心の略円柱状の軸部４２ａと、該軸部４２ａの支持部３１ｊに対向する先端面に凹設され該支持部３１ｊにスリーブ４３を介して回転自在に装着される円形の軸受部４２ｂとを有する。軸部４２ａの外周面には、伝達ギヤ４２の回転を許容しつつ前記駆動モータ２２の回転軸２２ｂを回転自在に、且つ、軸線方向に移動不能に支持する、周溝４２ｃが形成されている。伝達ギヤ４２は、その軸線方向に前記回転軸２２ｂよりも支持部３１ｊから離隔する位置で軸部４２ａから延出する円盤状の第１大径ギヤ部４２ｄを有する。この第１大径ギヤ部４２ｄは、前記第１小径ギヤ部４１の外径よりも大きい外径を有して前記第１小径ギヤ部４１と噛合する、例えば傘歯車で構成されている。この第１大径ギヤ部４２ｄ及び該第１小径ギヤ部４１が、交差軸歯車（いわゆるフェースギヤ）Ｇ１を構成する。従って、駆動モータ２２の回転軸２２ｂが回転すると、その回転が交差軸歯車Ｇ１において減速されて伝達ギヤ４２に伝達され、該伝達ギヤ４２が駆動モータ２２と一体回転する。なお、伝達ギヤ４２は、同伝達ギヤ４２の軸線方向において、第１大径ギヤ部４２ｄに対し前記回転軸２２ｂとは反対側に配置された第２小径ギヤ部４２ｅを有する。この第２小径ギヤ部４２ｅは、第１大径ギヤ部４２ｄの外径よりも小さい外径を有している。また、伝達ギヤ４２は、第２小径ギヤ部４２ｅの先端面に凹設された円形の軸受部４２ｆを有する。

　第２ギヤ収容部３１ｃは、第１ギヤ収容部３１ｂの内径よりも更に大きい内径を有する。第２ギヤ収容部３１ｃの底壁中央からは、略円柱状の支持部３１ｋが突設されている。この支持部３１ｋには、該支持部３１ｋと同心の段付き略円柱状の支持軸４４が回転自在に支持されている。すなわち、この支持軸４４は、支持部３１ｋに対向する先端面に凹設され該支持部３１ｋにスリーブ４５を介して回転自在に装着される円形の軸受部４４ａと、該軸受部４４ａに対応する軸線方向の位置の外周部に形成されたセレーション４４ｂとを有する。支持軸４４は、セレーション４４ｂに軸線方向に隣接配置された拡径部４４ｃと、該拡径部４４ｃに軸線方向に隣接配置された略小判形の嵌合部４４ｄと、該嵌合部４４ｄに軸線方向に隣接配置された略円柱状の軸部４４ｅとを有する。

　支持軸４４には、前記ドラム２３が支持軸４４と一体回転するように連結されている。すなわち、略円筒状のドラム２３は、前記第１カバー３２に向けて開口するとともに、その軸線方向一端に底壁を有する。その底壁中央部を貫通する孔の内周面に形成されたセレーション２３ａが前記セレーション４４ｂと係合する。ドラム２３の底壁中央部には、前記拡径部４４ｃの外径と同等の内径を有する略円筒状のボス部２３ｂが突設されている。ドラム２３は、その円筒状外周壁の内側に、円形の収容空間Ｓを形成している。

　ドラム２３には、該ドラム２３と同心のリングギヤ４６が回転自在に支持されている。リングギヤ４６は、ドラム２３の円筒状外周壁の内径よりも小さい外径を有するとともに前記収容空間Ｓに収容される円筒部を備える。円筒部の軸線方向一端には底壁が設けられ、その底壁中央部には、前記ボス部２３ｂの外径と同等の内径を有して該ボス部２３ｂを軸支する、円形の軸受孔４６ａが形成されている。リングギヤ４６の円筒部の内周面には内歯４６ｂが形成されている。リングギヤ４６はまた、収容空間Ｓから突出する円筒部の先端から径方向外側に延出してドラム２３の開口端面を覆う円環状の係合部としての大輪ギヤ４６ｃを有する。大輪ギヤ４６ｃの外周部には、複数の略直角三角形の係止歯４６ｄが等角度間隔に配設されている。なお、内歯４６ｂの内径は、前記伝達ギヤ４２の第１大径ギヤ部４２ｄの外径よりも大きい。

　リングギヤ４６等の組み付けられた支持軸４４には、キャリア４７が支持軸４４と一体回転するように連結されている。図５に示されるように、キャリア４７は、支持軸４４の軸線方向に並設された一対のプレート５１，５２と、これらプレート５１，５２の互いに対向する端部間に挟まれた一対の軸部５３と、それらの軸部５３周りに回転自在に支持された一対の遊星ギヤ５４とを有する。第１のプレート５１の中央部には、支持軸４４の嵌合部４４ｄに嵌合される略小判形の嵌合孔５１ａが形成されている。第２のプレート５２の中央部には、軸部４４ｅが遊挿される円形の挿通孔５２ａが形成されている。また、両遊星ギヤ５４は、リングギヤ４６の内歯４６ｂに噛合する態様でリングギヤ４６内に収容されており、遊星ギヤ５４は、自転しつつリングギヤ４６内を公転可能である。これにより、キャリア４７（プレート５１，５２）は、ドラム２３及び支持軸４４と一体でリングギヤ４６に対し回転可能である。

　キャリア４７等の組み付けられた支持軸４４には、更にサンギヤ４８が回転自在に支持されている。すなわち、サンギヤ４８は、前記挿通孔５２ａに遊挿されて前記軸部４４ｅを軸支するとともに前記両遊星ギヤ５４と噛合するサンギヤ部４８ａと、挿通孔５２ａから突出する該サンギヤ部４８ａの先端から径方向外側に延出してリングギヤ４６の開口端面を覆う第２大径ギヤ部４８ｂとを一体的に有する。このサンギヤ４８（サンギヤ部４８ａ）、リングギヤ４６及びキャリア４７が、遊星歯車機構Ｇ２を構成する。なお、第２大径ギヤ部４８ｂは、その外径がリングギヤ４６の内歯４６ｂの内径よりも大きく、前記伝達ギヤ４２の第１大径ギヤ部４２ｄを覆う態様で前記第２小径ギヤ部４２ｅと噛合する。

　従って、伝達ギヤ４２が回転すると、その回転が第２小径ギヤ部４２ｅ及び第２大径ギヤ部４８ｂの歯数比に応じて減速されてサンギヤ４８に伝達され、該サンギヤ４８が伝達ギヤ４２と一体回転する。そして、例えばリングギヤ４６が回転不能に係止されている状態でサンギヤ４８が回転すると、その回転は、該サンギヤ４８（サンギヤ部４８ａ）を駆動軸とし、キャリア４７を従動軸とし、リングギヤ４６を固定軸とした減速比で減速されてドラム２３に伝達される。つまり、駆動モータ２２（回転軸２２ｂ）の回転は、交差軸歯車Ｇ１、遊星歯車機構Ｇ２等を介して十分に減速されてドラム２３に伝達される。ドラム２３の回転に伴い、その回転方向に応じてスライドドア２０が開閉作動することは既述のとおりである。

　レバー収容部３１ｄは、その底壁の扇形状の中央を貫通する円形の軸受孔３１ｌと、該軸受孔３１ｌ及び前記支持部３１ｋを結ぶ直線上に延在して第２ギヤ収容部３１ｃに連通する略四角溝状のガイド溝３１ｍと、軸受孔３１ｌに対しガイド溝３１ｍの反対側で台状に***する台座部３１ｎとを有する。軸受孔３１ｌには、切替レバー５６（入力部材）が回転自在に支持されている。切替レバー５６は、軸受孔３１ｌと同心の段付き略円柱状の軸部５６ａを有している。該軸部５６ａの先端部はスリーブ５７を介して軸受孔３１ｌに軸支されている。

　切替レバー５６は、前記大輪ギヤ４６ｃに対応する軸線方向の位置で軸部５６ａから大輪ギヤ４６ｃに向けて径方向外側に延出する扇形状のレバー部５６ｂを有する。そして、レバー部５６ｂの径方向外側端部には、周方向に延びる長孔状のカム孔５６ｃが形成されている。このカム孔５６ｃは、周方向において第１の端部と第２の端部とを有し、第１の端部より第２の端部の方が径方向において軸部５６ａの近くに配置されるように曲成されている。なお第１の端部は、図３において、時計回り方向における先行側の端部である。

　切替レバー５６は、図６（ａ）に示す電動切替位置Ｐａと図６（ｂ）に示す手動切替位置Ｐｍとの間を回動可能である。切替レバー５６には、レバー収容部３１ｄに一端の係止された付勢部としての復帰スプリング６３（図５参照）の他端が係止されている。切替レバー５６は、復帰スプリング６３によって、電動切替位置Ｐａに向かって常時付勢されている。

　前記ガイド溝３１ｍには、その延在方向に移動可能な係脱部材としての板状の係脱ブロック５８が装着されている。この係脱ブロック５８はクランク状に屈曲しており、前記カム孔５６ｃに挿通される係合ピン５８ａと、複数のギヤ側係止歯５８ｂとを有する。該ギヤ側係止歯５８ｂは、前記ガイド溝３１ｍに臨む複数の係止歯４６ｄ（大輪ギヤ４６ｃ）と噛合可能である。ギヤ側係止歯５８ｂは、略直角三角形に成形されている。図６（ａ）に示すように、切替レバー５６が前記電動切替位置Ｐａに配置されている状態では、係脱ブロック５８の係合ピン５８ａは前記カム孔５６ｃの第１の端部に配置される。切替レバー５６が電動切替位置Ｐａに向かって図６（ａ）の時計回り方向へ回動するのに伴い、係合ピン５８ａがカム孔５６ｃの内壁面に押圧されることで係脱ブロック５８が第２ギヤ収容部３１ｃに向けて押し出される。切替レバー５６が電動切替位置Ｐａに移動すると、ギヤ側係止歯５８ｂが前記リングギヤ４６の係止歯４６ｄに噛み合い、リングギヤ４６を回転不能に係止する（回転の規制状態）。一方、図６（ｂ）に示すように、切替レバー５６が前記手動切替位置Ｐｍに配置されている状態では、係合ピン５８ａは前記カム孔５６ｃの第２の端部に配置される。切替レバー５６が手動切替位置Ｐｍに向かって図６（ｂ）の反時計回り方向へ回動するのに伴い、係合ピン５８ａがカム孔５６ｃの内壁面に押圧されることで係脱ブロック５８が軸部５６ａに向けて引き戻され、リングギヤ４６の回転が許容されるようにギヤ側係止歯５８ｂと係止歯４６ｄとの噛合が解除される（回転の許容状態）。大輪ギヤ４６ｃ、切替レバー５６、係脱ブロック５８、及び復帰スプリング６３が、切替部を構成する。

　図５に示されるように、前記プーリ収容部３１ｆ，３１ｇにはそれぞれ、互いに異なる外径を有するプーリ６５，６６が回転自在に支持されている。これらプーリ６５，６６は、前記中間プーリ２６を構成する。ドラム２３から巻取り及び繰出しされるケーブル２４，２５は、それぞれプーリ６５，６６に巻き掛けられ、同プーリ６５，６６に案内されて、防塵用のケーブルグロメット６７を介して前記案内プーリ２７に渡される。

　図４に示されるように、前記第１カバー３２は、伝達ギヤ４２等の収容されたハウジング３１に取着されてその第１ギヤ収容部３１ｂ、第２ギヤ収容部３１ｃ、レバー収容部３１ｄ及び両プーリ収容部３１ｆ，３１ｇを閉塞するとともに、伝達ギヤ４２、支持軸４４及び切替レバー５６等をそれぞれ回転自在に支持する。すなわち、第１カバー３２の蓋壁からは、略円柱状の支持部３２ａが突設され、スリーブ６８を介して軸受部４２ｆを支持している。第１カバー３２の蓋壁からは、略円筒状の軸受部３２ｂが突設され、スリーブ６９を介して軸部４４ｅを支持している。第１カバー３２の蓋壁からは、略円筒状の軸受部３２ｃが突設され、該蓋壁を貫通する軸部５６ａを支持している。

　なお、軸部５６ａの先端部には、略ボタン形状の切替ノブ７０が、軸部５６ａと一体回転するように固着されている。この切替ノブ７０は、スライドドア２０の閉状態において、その先端面が前記ドアトリム１６から露出するように配置されており、該先端面には略＋形状のキー溝７０ａが形成されている。従って、前記切替レバー５６の位置は、スライドドア２０の車室内側から切替ノブ７０を通じて切替レバー５６に操作力を伝達することで、電動切替位置Ｐａ及び手動切替位置Ｐｍ間で切替可能である。切替ノブ７０、切替レバー５６、係脱ブロック５８、及び復帰スプリング６３等が、係脱部を構成する。

　なお、ハウジング３１（ケース３０）に収容される伝達ギヤ４２等は、スライドドア２０の内部において、駆動モータ２２（固定子２２ａ）の外形によって規定される前述した車両幅方向の寸法Ｌの空間に少なくとも部分的に重合するよう配置されている。

　本実施形態の動作について総括して説明する。
　まず、切替ノブ７０の操作により切替レバー５６が電動切替位置Ｐａに配置され、図６（ａ）に示されるように、係脱ブロック５８によりリングギヤ４６が回転不能に係止されている。このとき、駆動モータ２２の回転は、第１小径ギヤ部４１及び第１大径ギヤ部４２ｄ（交差軸歯車Ｇ１）を介して第１段の減速がなされて伝達ギヤ４２に伝達される。伝達ギヤ４２の回転は、第２小径ギヤ部４２ｅ及び第２大径ギヤ部４８ｂを介して更に減速されてサンギヤ４８に伝達される。サンギヤ４８（第２大径ギヤ部４８ｂ）の回転は、遊星歯車機構Ｇ２において、サンギヤ４８（サンギヤ部４８ａ）を駆動軸とし、キャリア４７を従動軸とし、リングギヤ４６を固定軸とした減速比で第２段の減速がなされてドラム２３に伝達される。従って、駆動モータ２２の回転は、交差軸歯車Ｇ１、遊星歯車機構Ｇ２等を介して十分に減速されてドラム２３に伝達される。

　この状態でスライドドア２０を手動で開閉操作する場合、仮に係脱ブロック５８によるリングギヤ４６の係止状態が維持されたとしても、スライドドア２０の開閉作動に伴うドラム２３の回転は遊星歯車機構Ｇ２、交差軸歯車Ｇ１等により、効率よく伝達される。これにより、ある程度の手動操作力で駆動モータ２２（回転軸２２ｂ）等を回転させつつスライドドア２０の開閉操作が可能となる。

　一方、切替ノブ７０の操作により切替レバー５６が手動切替位置Ｐｍに変位されると、図６（ｂ）に示されるように、係脱ブロック５８によるリングギヤ４６の係止状態は解除される。この状態でスライドドア２０を手動で開閉操作する場合、この開閉操作に伴うドラム２３（キャリア４７）の回転は、リングギヤ４６を空転させつつ許容される。このように、係脱ブロック５８等によりドラム２３からの回転トルクと駆動モータ２２の回転軸２２ｂからの駆動トルクとを切り離すことで、軽微な操作力によるスライドドア２０の開閉操作が可能となる。

　なお、本実施形態では、切替レバー５６を電動切替位置Ｐａ又は手動切替位置Ｐｍに保持し、且つ、切替操作時におけるクリック感（ノッチ感）を演出するための凹凸形状が設けられている。すなわち、図５及び図７に示すように、ハウジング３１の前記台座部３１ｎには、切替レバー５６の前記軸部５６ａに対向し且つ切替レバー５６の回動方向に沿って延びる段差面７１が設けられている。段差面７１は、電動切替用係合面７１ａ及び手動切替用係合面７１ｂを含み、各係合面７１ａ，７１ｂは軸部５６ａに向かって凸状に屈曲して、切替レバー５６の回動方向における中央部において頂部を形成している。切替レバー５６は、段差面７１に対向するように軸部５６ａの径方向外側に突出する尖鋭な突起部７２を有する。図７（ａ）に示すように、この突起部７２は、切替レバー５６が電動切替位置Ｐａに配置されるとき、電動切替用係合面７１ａの頂部を手動切替用係合面７１ｂから離隔する方に越えた位置に配置される。また、図７（ｂ）に示すように、突起部７２は、切替レバー５６が手動切替位置Ｐｍに配置されるとき、手動切替用係合面７１ｂの頂部を電動切替用係合面７１ａから離隔する方に越えた位置に配置される。

　従って、例えば切替レバー５６を手動切替位置Ｐｍから電動切替位置Ｐａに切り替える際には、その回動に伴い突起部７２が手動切替用係合面７１ｂの頂部を乗り越えるとともに更に電動切替用係合面７１ａの頂部を乗り越えることで、当該切替操作に節度が付与される。同様に、切替レバー５６を電動切替位置Ｐａから手動切替位置Ｐｍに切り替える際には、その回動に伴い突起部７２が電動切替用係合面７１ａの頂部を乗り越えるとともに更に手動切替用係合面７１ｂの頂部を乗り越えることで、当該切替操作に節度が付与される。なお、切替レバー５６を電動切替位置Ｐａに保持する保持力は、前記復帰スプリング６３の付勢力と、突起部７２が電動切替用係合面７１ａの頂部を乗り越えるのに必要な力とに依存しており、切替レバー５６を手動切替位置Ｐｍに保持する保持力は、突起部７２が手動切替用係合面７１ｂの頂部を乗り越えるのに必要な力に依存している。また、突起部７２が手動切替用係合面７１ｂの頂部を乗り越えるのに必要な力は、復帰スプリング６３の付勢力よりも大きく設定されており、該復帰スプリング６３の付勢力のみによって切替レバー５６が手動切替位置Ｐｍから電動切替位置Ｐａに切り替えられることはない。

　ここで、図８に示すように、切替レバー５６が電動切替位置Ｐａに配置されて係脱ブロック５８によりリングギヤ４６が係止されているとき、該リングギヤ４６から係脱ブロック５８に所定レベルを超える負荷（トルク）が加わることで、係脱ブロック５８によるリングギヤ４６の係止が解除される（キャンセル機構）。すなわち、図８に誇張して併せ示したように、切替レバー５６の前記カム孔５６ｃの第１の端部は、軸部５６ａを中心とする円弧状の溝７３を形成する。前記係合ピン５８ａは、切替レバー５６が電動切替位置Ｐａに配置されているとき、該円弧状の溝７３の周方向中間位置に配置される。リングギヤ４６の前記係止歯４６ｄと、係脱ブロック５８の前記ギヤ側係止歯５８ｂとは、いずれも略直角三角形に成形されており、互いに噛合している。前記ギヤ側係止歯５８ｂがリングギヤ４６の周方向に押圧されると、係脱ブロック５８には、係止歯４６ｄ及びギヤ側係止歯５８ｂの噛合状態を解除する方向への力が作用する。これにより、係脱ブロック５８は、リングギヤ４６の周方向に揺動し、さらに切替レバー５６を回動させつつ軸部５６ａに向けて変位して係止歯４６ｄから分離する。具体的には、切替レバー５６を電動切替位置Ｐａに保持する前述の保持力（切替レバー５６のノッチ感を演出する力や復帰スプリング６３の付勢力）により係脱ブロック５８をリングギヤ４６に押し付ける力よりも、係脱ブロック５８をリングギヤ４６から押し戻す力の方が大きいと、自動的に係脱ブロック５８によるリングギヤ４６の係止が解除される。リングギヤ４６は、ギヤ側係止歯５８ｂの歯先と干渉しつつ、その回転（空転）を許容される。以上により、係脱ブロック５８によりリングギヤ４６が係止されている状態であっても、リングギヤ４６及び係脱ブロック５８間に所定レベルを超える負荷が伝達されるとき、係脱ブロック５８によるリングギヤ４６の係止が解除されて該リングギヤ４６が回転可能となる。従って、例えば電動によるスライドドア２０の閉作動中に手動による過早な開操作が行われるなど、緊急的な逆トルクの入力時にドラム２３及びキャリア４７を介してリングギヤ４６に所定レベルを超える負荷（トルク）が伝達されたとしても、該リングギヤ４６及び係脱ブロック５８間（係止歯４６ｄ及びギヤ側係止歯５８ｂ間）に過大な負荷が加わることが回避される。なお、キャンセル機構が作動した状態では、突起部７２は未だ電動切替用係合面７１ａの頂部を乗り越えていない。したがって、リングギヤ４６から押し戻す力が減少すると、前述の力関係が逆転する、すなわち、係脱ブロック５８をリングギヤ４６から押し戻す力よりも、リングギヤ４６に押し付ける力の方が大きくなることで、自動的に係脱ブロック５８がリングギヤ４６に係止（再係止）される。

　図５に示されるように、前記基板収容部３１ｅには、その蓋壁の外形に合わせて成形された板状のＥＣＵ（ｅｌｅｃｔｒｏｎｉｃ　ｃｏｎｔｒｏｌ　ｕｎｉｔｓ）基板８０が収容されている。このＥＣＵ基板８０には、マイクロコンピュータを主体に構成されたＥＣＵ８１（図９参照）と、例えばホール素子を備えた磁気センサからなる回転センサ８２とが実装されている。回転センサ８２は、前記ドラム２３の回転位置及び回転速度等を検出する。該ドラム２３には、ドラム２３と一体回転するように、輪状のマグネットロータ８３が固定されている。回転センサ８２は、マグネットロータ８３から所定の間隔を有し、マグネットロータ８３に対向して配置される。なお、前記ハウジング３１には、モータホルダ部３１ａに保持された、駆動モータ２２の給電部を、ＥＣＵ基板８０に電気的に接続するためのバスバー（図示略）が埋設されており、駆動モータ２２及びＥＣＵ基板８０（ＥＣＵ８１）は、基本的にワイヤーハーネスを介することなく電気的に接続されている。

　ハウジング３１（ケース３０）に収容されるＥＣＵ基板８０（ＥＣＵ８１等）は、スライドドア２０の内部において、駆動モータ２２（固定子２２ａ）の外形によって規定される前述した車両幅方向の寸法Ｌの空間に少なくとも部分的に重合するよう配置されている。

　次に、本実施形態の電気的構成について更に説明する。
　図９に示されるように、ＥＣＵ８１は、前記回転センサ８２と電気的に接続されており、該回転センサ８２の検出信号に基づいて前記ドラム２３の回転位置及び回転速度等（即ちスライドドア２０の開閉位置及び開閉速度等）を検出する。ＥＣＵ８１は、スライドドア２０の開閉意思情報を取得するためのハンドルスイッチ８４と電気的に接続されている。ＥＣＵ８１は、前記切替レバー５６の回動位置（電動切替位置Ｐａ又は手動切替位置Ｐｍ）を検出するための切替検出スイッチ８５と電気的に接続されており、該切替検出スイッチ８５の検出信号に基づいて切替レバー５６の回動位置を検出する。ＥＣＵ８１は、前記駆動モータ２２と電気的に接続されている。ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を全閉状態又は全開状態で保持するラッチ機構（図示略）を解放又は係合させるためのリリース・クローズアクチュエータ８６と電気的に接続されている。ＥＣＵ８１は、ラッチ機構の作動に係るスライドドア２０の保持情報を取得するためのラッチ・ポールスイッチ８７と電気的に接続されている。なお、ラッチ機構は、スライドドア２０に設置されたドアハンドル（図示略）とケーブル等の機械的連結部材（図示略）により機械的に連係されており、該ドアハンドルの操作によっても係合状態から解放可能である。ＥＣＵ８１は、これら回転センサ８２等の検出結果に基づいて、駆動モータ２２等を駆動制御する。

　すなわち、スライドドア２０の全閉状態において、切替レバー５６が電動切替位置Ｐａにあることを切替検出スイッチ８５が検出するとき、利用者によるハンドルスイッチ８４の操作に伴い、スライドドア２０を開放する旨の情報が検出されると、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を開放可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ８６を駆動してラッチ機構による全閉状態の保持を解放する。続いて、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を開作動すべく、前述の態様で駆動モータ２２を駆動する。これにより、スライドドア２０が電動で開作動して全開位置へと移動する。これに伴い、スライドドア２０が全開位置近傍に達し、ラッチ機構により保持されると、ＥＣＵ８１は、回転センサ８２より得たドア位置情報の規定範囲内でのモータ２２の低回転を検知（規定したドア全開位置までの範囲内でスライドドア２０がこれ以上動かないことを検知）して、モータ２２の作動を停止する。

　また、スライドドア２０の全開状態において、利用者によるハンドルスイッチ８４の操作に伴い、スライドドア２０を閉鎖する旨の情報が検出されると、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を閉鎖可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ８６を駆動してラッチ機構による全開状態の保持を解放する。続いて、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を閉作動すべく、前述の態様で駆動モータ２２を駆動する。これにより、スライドドア２０が電動で閉作動して全閉位置へと移動する。これに伴い、スライドドア２０が全閉位置近傍に達してラッチ・ポールスイッチ８７がスライドドア２０の閉側での保持情報を取得すると、ＥＣＵ８１は、モータ２２の作動を停止するとともにリリース・クローズアクチュエータ８６を駆動してラッチ機構によりスライドドア２０を全閉状態で保持させる。

　なお、電動によるスライドドア２０の開閉作動に際し、利用者の操作、電力不足などにより、スライドドア２０が途中の開閉位置で停止したとする。この場合、駆動モータ２２及びドラム２３が一体回転するように連結されているため、例えば坂道での停車時など、スライドドア２０の自重が駆動モータ２２を回転させ、ドア２０は開閉作動する。従って、ＥＣＵ８１は、駆動モータ２２の駆動停止中に回転センサ８２がドラム２３の回転を検出すると、スライドドア２０を停止させるべく、モータ通電回路を閉鎖し電気的ブレーキを掛けるように設定されている。

　一方、スライドドア２０の全閉状態において、切替レバー５６が手動切替位置Ｐｍにあることを切替検出スイッチ８５が検出するとき、利用者によるハンドルスイッチ８４の操作に伴い、スライドドア２０を開放する旨の情報が検出されると、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を開放可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ８６を駆動してラッチ機構による全閉状態の保持を解放する。しかしながら、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を開作動すべく、駆動モータ２２を駆動しない。

　また、スライドドア２０の全開状態において、利用者によるハンドルスイッチ８４の操作に伴い、スライドドア２０を閉鎖する旨の情報が検出されると、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を閉鎖可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ８６を駆動してラッチ機構による全開状態の保持を解放する。しかしながら、ＥＣＵ８１は、スライドドア２０を閉作動すべく、駆動モータ２２を駆動しない。

　なお、電動又は手動によるスライドドア２０の開閉作動途中で、利用者によるハンドルスイッチ８４の操作に伴い、スライドドア２０を開放する旨の情報が検出されたとしても、ラッチ・ポールスイッチ８７により得たスライドドア２０の保持情報、回転センサ８２より得たドア位置情報及びモータ２２への通電状態に基づき、ＥＣＵ８１は、リリース・クローズアクチュエータ８６のリリース作動及びクローズ作動は不要であると判断し、ハンドルスイッチ８４の操作に関わらず、該作動を行わない。

　以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す利点が得られるようになる。
　（１）本実施形態では、駆動モータ２２の回転は、交差軸歯車Ｇ１、遊星歯車機構Ｇ２等を介して十分に減速されてドラム２３に伝達される。この場合、減速に係る交差軸歯車Ｇ１、遊星歯車機構Ｇ２等の回転方向への伝達効率は、例えばウォームギヤにおける回転方向への伝達効率に比べて大きいことから、より小型のモータで必要なトルクを得ることができる。

　また、スライドドア２０を手動で開閉操作する場合、仮にリングギヤ４６が回転の規制状態に切り替えられていたとしても、ドラム２３の回転は遊星歯車機構Ｇ２、交差軸歯車Ｇ１等により、効率よく伝達され、ある程度の操作力で駆動モータ２２（回転軸２２ｂ）等を回転させつつスライドドア２０を開閉操作することができる。従って、手動及び電動によるスライドドア２０の開閉操作を選択的に許容するために、例えば電磁クラッチを駆動モータ２２及びドラム２３間に設ける必要がなくなり、そのオン・オフ切替用のスイッチも自ずと不要になる。これにより、部品点数及びコストを削減することができ、ひいては車両用ドア駆動装置を全体としてより小型化することができる。

　さらに、第１小径ギヤ部４１及び第１大径ギヤ部４２ｄ間（交差軸歯車Ｇ１）の減速は、駆動モータ２２の回転軸２２ｂに対して伝達ギヤ４２の軸線方向にずれた位置で行われる。また、第１大径ギヤ部４２ｄ（交差軸歯車Ｇ１）及びサンギヤ部４８ａ（遊星歯車機構Ｇ２）は、減速に係る第２小径ギヤ部４２ｅ及び第２大径ギヤ部４８ｂに対し、伝達ギヤ４２及びサンギヤ４８の軸線方向において回転軸２２ｂと同じ側、即ち駆動モータ２２の外形によって規定される車両幅方向の寸法Ｌの空間内に集約して配置される。したがって、伝達ギヤ４２及びサンギヤ４８の軸線方向、即ち車両幅方向（ドア厚さ方向）への大型化を抑制することができる。特に、遊星歯車機構Ｇ２の構成要素は、伝達ギヤ４２（第２小径ギヤ部４２ｅ）と噛合する第２大径ギヤ部４８ｂを除いて、サンギヤ４８等の軸線周りに集約されているため、当該軸線周りにおける遊星歯車機構Ｇ２の大型化を抑制しつつ、所要の減速比を確保することができる。従って、駆動モータ２２がより小型化可能である。また、ドラム２３が、前記寸法Ｌの空間に少なくとも部分的に重合するよう効率的に配置されていることもあって、全体としてスライドドア２０内での配置自由度を向上させることができる。

　（２）本実施形態では、ドラム２３は、リングギヤ４６の軸線方向において少なくとも部分的にリングギヤ４６に重合するように、該リングギヤ４６を径方向内側に収容している。したがって、例えばこれらドラム２３及びリングギヤ４６を軸線方向に積み重ねて配置する場合に比べて、当該軸線方向、即ち車両幅方向への駆動機構２１の大型化を抑制することができる。

　（３）本実施形態では、スライドドア２０を手動で開閉操作する場合、係脱ブロック５８等によりリングギヤ４６が回転の許容状態に切り替えられていれば、該リングギヤ４６を空転させつつドラム２３（キャリア４７）の回転が許容される。このように、係脱ブロック５８等によりドラム２３からの回転トルクと駆動モータ２２の回転軸２２ｂからの駆動トルクとを切り離すことで、軽微な操作力でスライドドア２０を開閉操作することができる。特に、係脱ブロック５８等は、前記寸法Ｌの空間に少なくとも部分的に重合するよう効率的に配置されていることで、車両幅方向（ドア厚さ方向）への駆動機構２１の大型化を抑制することができる。

　一方、係脱ブロック５８等によりリングギヤ４６が回転の規制状態に切り替えられていたとしても、スライドドア２０の開閉操作に伴いドラム２３及びキャリア４７を介してリングギヤ４６に所定レベルを超える負荷（トルク）が伝達されれば、係脱ブロック５８等によるリングギヤ４６の回転の規制状態が解除される。従って、リングギヤ４６又は係脱ブロック５８に過大な負荷（トルク）が加わることが回避される。特に、係止歯４６ｄ及びギヤ側係止歯５８ｂを左右対称の略直角三角形状にしたことで、リングギヤ４６で伝達される負荷（トルク）の方向、即ちスライドドア２０の開閉方向及び開閉位置に関係なく、該リングギヤ４６又は係脱ブロック５８に過大な負荷（トルク）が加わることが回避される。

　（４）本実施形態では、駆動機構２１は、ドラム２３、伝達ギヤ４２、リングギヤ４６、キャリア４７、サンギヤ４８、キャンセル機構を構成する切替レバー５６及び係脱ブロック５８、中間プーリ２６、並びにＥＣＵ基板８０等をケース３０に一体的に収容することによってユニット化される。したがって、駆動機構２１のスライドドア２０への組付性を向上させることができる。また、これらドラム２３等がケース３０内に集約的に配置されることで、駆動機構２１が全体として小型化される。

　（５）本実施形態では、リングギヤ４６の大輪ギヤ４６ｃとの係合及び解除に係る係脱ブロック５８の直線運動（リングギヤ４６の径方向への移動）は、該係脱ブロック５８に連係される切替レバー５６（及び切替ノブ７０）の回転運動の変換によって、極めて簡易な構造で実現される。また、切替ノブ７０が解放されると、切替レバー５６は復帰スプリング６３により付勢されて、係脱ブロック５８及び大輪ギヤ４６ｃが係合状態となる回転位置に復帰し、保持される。

　（６）本実施形態では、駆動モータ２２及びドラム２３が一体回転するように連結されている状態において、例えば坂道での停車時など、スライドドア２０が自重で開閉作動しようとすると、該スライドドア２０を停止させるべく、モータ通電回路が閉鎖されて電気的ブレーキが掛けられる。従って、このようなスライドドア２０の開閉作動を抑制するためのブレーキ（摩擦ブレーキ）として機能する電磁クラッチを設けることは不要である。

　（７）本実施形態では、切替レバー５６の電動切替位置Ｐａ及び手動切替位置Ｐｍの切替は、切替ノブ７０のキー溝７０ａと係合可能な適宜のキー（コインなど）を用いてのみ可能であるため、例えば子供などによる安易な切替を防止することができる。

　（８）本実施形態では、電動又は手動によるスライドドア２０の開閉作動途中で、利用者によるハンドルスイッチ８４の操作に伴い、スライドドア２０を開放する旨の情報が検出されたとしても、ラッチ・ポールスイッチ８７により得たスライドドア２０の保持情報、回転センサ８２より得たドア位置情報及びモータ２２への通電状態に基づき、ＥＣＵ８１は、ハンドルスイッチ８４の操作に関わらず、リリース・クローズアクチュエータ８６の不要な作動（リリース作動又はクローズ作動）を行わない。このように、リリース・クローズアクチュエータ８６の不要な電動作動を防止することができ、例えばその作動音に起因する違和感を解消することができる。

　（９）本実施形態では、電動又は手動の切替は、スライドドア２０に搭載した駆動機構２１（切替ノブ７０等）で行なわれる。このため、例えば車両幅方向両側に配設されたスライドドア２０の各々に駆動機構２１が搭載される場合、スライドドア２０ごとに個別に電動又は手動を選択することができる。従って、例えば運転席側に設けられた１つのメインスイッチの操作によって両スライドドア２０の電動又は手動の選択を一律に行う場合に比べて、使用形態の自由度を向上させることができる。また、このようなメインスイッチを割愛したことで、電気的構成を簡易化することができ、ひいてはコストを削減することができる。

　（１０）本実施形態では、駆動モータ２２を除けば、ハウジング３１の一側の開口部に伝達ギヤ４２等を順次組み付けて第１カバー３２で閉塞し、同じく他側の開口部にＥＣＵ基板８０を順次組み付けて第２カバー３３で閉塞することで駆動機構２１を組み立てることができる。このため、一方向に沿う組付けにより製造工程を簡素化することができる。

　（１１）本実施形態では、切替レバー５６は、スライドドア２０の車室内側から切替ノブ７０のキー溝７０ａを通じて操作力を伝達可能であるため、例えば子供のいたずらなどで操作されることを防止できる。特に、スライドドア２０の閉鎖中のみ車室内の乗員が切替ノブ７０を操作可能なように、例えばスライドドア２０の全開時には切替ノブ７０が隠蔽されるように配置しておくことで、スライドドア２０の開操作直前における切替状態を、基本的にスライドドア２０が閉鎖されるまで継続することができる。スライドドア２０を電動で開放したときは電動で閉鎖し、手動で開放したときは手動で閉鎖するようにその使用形態が整合することで、利便性を向上させることができる。また、車両幅方向両側にスライドドア２０を搭載する場合、スライドドア２０ごとに電動又は手動を選択できるため、その使用形態の自由度を向上させることができる。さらに、切替ノブ７０は、基本的に当該スライドドア２０を操作する乗員によって操作されるため、例えば運転者など当該スライドドア２０を操作する乗員以外に操作されて、その使用形態に混乱を来すことも回避できる。

　なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
　図１０に示されるように、左右対称のカム孔９１ａを有する切替レバー９１を採用してもよい。係脱ブロック５８によりリングギヤ４６が係止されているとき、係合ピン５８ａはカム孔９１ａの周方向中央部に配置される。この場合、切替レバー９１を付勢する復帰スプリング６３（図５参照）は、係合ピン５８ａが周方向中央部に配置されるように切替レバー９１を保持することが好ましい。また、この状態では、切替レバー９１がいずれの方向に回転しても係脱ブロック５８によるリングギヤ４６の係止が解除可能であり、切替レバー９１の手動切替位置Ｐｍとして２つの位置が設定されてもよい。

　第１小径ギヤ部４１は、平歯車であってもよい。また、交差軸歯車としては、すぐば傘歯車、まがりば傘歯車あるいはゼロール傘歯車などを採用してもよい。
　伝達ギヤ４２（第１大径ギヤ部４２ｄ）の軸線は、第１小径ギヤ部４１の軸線と交差しなくてもよい。つまり、第１小径ギヤ部４１及び第１大径ギヤ部４２ｄは、食い違い軸となるハイポイドギヤ（フェイスギヤ）を構成してもよい。

　ドラム２３から巻取り及び繰り出しされるケーブル２４，２５の延在方向が案内プーリ２７に渡される方向に一致する場合には、中間プーリ２６を割愛してもよい。
　駆動モータ２２及びドラム２３が一体回転するように連結されている状態において、例えば坂道での停車時など、スライドドア２０の自重による開閉作動を抑制するために、回転軸に機械的クラッチを備えた駆動モータを採用してもよい。この場合、逆入力トルクによる回転は減速前の小さなトルクで規制することができるため、当該クラッチは小型で十分となる。

　切替部（切替レバー５６等）の作動を電動で行うようにしてもよい。
　切替部（切替レバー５６等）を割愛して、基本的に電動のみでスライドドア２０を開閉作動させるようにしてもよい。この場合、固定軸としてのリングギヤ４６をハウジング３１に回転不能に取着すればよい。また、スライドドア２０の開閉位置は、駆動モータ２２の回転軸２２ｂの回転位置と相関するため、前記回転センサ８２により回転軸２２ｂの回転位置を検出するようにしてもよい。

　駆動機構２１を車両ボディ１０に固定してもよい。例えばクォータパネル１０ｂに駆動機構２１を搭載する場合には、該駆動機構２１にテンショナー２８，２９を繋ぐことがより好ましい。また、ドア開口１０ａにおける踏み台となるステップに駆動機構２１を搭載する場合には、ドラムとしてのベルトプーリ及びロープ部材としてのベルトを採用することがより好ましい。

　Ｇ１…交差軸歯車、Ｇ２…遊星歯車機構、１０…車両ボディ、１０ａ…ドア開口、２０…スライドドア（車両ドア）、２１…駆動機構、２２…駆動モータ（モータ）、２２ａ…固定子、２２ｂ…回転軸、２３…ドラム、２４…第１ケーブル（ロープ部材）、２５…第２ケーブル（ロープ部材）、２６…中間プーリ（プーリ機構）、３０…ケース、３１…ハウジング、３２…第１カバー、３３…第２カバー、４１…第１小径ギヤ部、４２…伝達ギヤ、４２ｄ…第１大径ギヤ部、４２ｅ…第２小径ギヤ部、４６…リングギヤ、４６ｃ…大輪ギヤ（係合部、切替部）、４６ｄ…係止歯（キャンセル機構）、４７…キャリア、４８…サンギヤ、４８ａ…サンギヤ部、４８ｂ…第２大径ギヤ部、５４…遊星ギヤ、５６，９１…切替レバー（入力部材、切替部）、５６ｃ，９１ａ…カム孔、５８…係脱ブロック（係脱部材、切替部）、５８ｂ…ギヤ側係止歯（キャンセル機構）、６３…復帰スプリング（付勢部、切替部）、７０…切替ノブ、７３…溝（キャンセル機構）。

Claims (5)

1. 　車両ボディに形成されたドア開口を開閉する車両ドアの内部に固定され、モータ及び該モータにより回転駆動されるドラムを有する駆動機構と、
   　前記ドラムに巻回され、前記車両ボディに連結されたロープ部材であって、前記ドラムの回転が前記ロープ部材を介して前記車両ボディに伝達されることで前記車両ドアが開閉作動させられる前記ロープ部材と、を備え、
   　前記ドラムは、前記車両ドアの内部において、前記モータの外形によって規定される車両幅方向の寸法の空間に少なくとも部分的に重合するように配置され、
   　前記駆動機構は、
   　　前記モータの回転軸と一体回転するように同回転軸に連結された第１小径ギヤ部と、
   　　車両幅方向に延びる軸線の周りで回転自在な伝達ギヤであって、前記第１小径ギヤ部と噛合して該第１小径ギヤ部とともに交差軸歯車又はハイポイドギヤを構成する第１大径ギヤ部と、伝達ギヤの軸線方向において前記第１大径ギヤ部に対し前記回転軸とは反対側に配置された第２小径ギヤ部とを有する前記伝達ギヤと、
   　　車両幅方向に延びる軸線の周りで回転自在なサンギヤであって、前記第２小径ギヤ部と噛合する第２大径ギヤ部と、サンギヤの軸線方向において前記第２大径ギヤ部に対し前記回転軸と同じ側に配置されたサンギヤ部とを有する前記サンギヤと、
   　　前記サンギヤと同軸に配置され、前記サンギヤ部の径方向外側に配置された、固定軸をなすリングギヤと、
   　　前記サンギヤ部及び前記リングギヤと噛合する遊星ギヤを有し、前記ドラムと一体回転するように同ドラムに連結されたキャリアと、を備える車両用ドア駆動装置。
2. 　前記ドラムは、前記リングギヤと同軸に配置されており、前記リングギヤの軸線方向において少なくとも部分的にリングギヤに重合するように、該リングギヤを径方向内側に収容する請求項１に記載の車両用ドア駆動装置。
3. 　前記モータの外形によって規定される車両幅方向の寸法の前記空間に少なくとも部分的に重合するよう配置され、前記リングギヤの回転の規制状態及び許容状態を切り替える切替部と、
   　前記切替部により前記リングギヤが回転の規制状態に切り替えられているとき、前記車両ドアの開閉操作に伴い前記ドラム及び前記キャリアを介して前記リングギヤに所定レベルを超える負荷が伝達されることによって、前記切替部による前記規制状態を解除するキャンセル機構とを備える請求項１又は２に記載の車両用ドア駆動装置。
4. 　前記ドラムから巻取り及び繰出しされる前記ロープ部材が巻き掛けられるとともに、前記車両ボディに連結されるように前記ロープ部材を案内するプーリ機構を備え、
   　前記駆動機構は、前記ドラム、前記伝達ギヤ、前記サンギヤ、前記リングギヤ、前記キャリア、前記切替部、前記キャンセル機構及び前記プーリ機構を一体的に収容するケースを備える請求項３に記載の車両用ドア駆動装置。
5. 　前記切替部は、
   　前記リングギヤの外周面に形成された係合部と、
   　前記係合部に臨むよう前記リングギヤの径方向に移動可能に設けられ、前記係合部と係合することで前記リングギヤの回転を規制する係脱部材と、
   　前記係脱部材に連係され、回転に伴い前記係合部に対する係脱部材の係合状態及び係合解除状態を切り替える入力部材と、
   　前記係脱部材が前記係合部に係合する状態となる回転位置に前記入力部材を付勢する付勢部とを備える請求項３又は４に記載の車両用ドア駆動装置。

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