明 細 書
近赤外線吸収フィルム及びこれを用いたプラズマディスプレイパネル用光 学フイノレタ
技術分野
[0001] 本発明は近赤外線領域における波長の光を幅広く吸収し、耐熱性、耐湿熱性及び 溶剤溶解性等に優れるジィモニゥム化合物を用いた近赤外線吸収フィルム及びそれ を用いたプラズマディスプレイパネル (以下、 PDPと記す)用光学フィルタに関する。 背景技術
[0002] 近赤外線は電気機器類を遠隔操作するときのビームとして使用されるため、近赤外 線を放出する機器類は周辺に設置されている電気機器類を誤作動させてしまう恐れ があり、そのような機器類 (例えば PDP)の前面には近赤外線を遮蔽する機能を有す る光学フィルタ等を設置する必要がある。
[0003] PDPの原理は 2枚の板状ガラスで挟まれたセルに封入された希ガス(ネオン、キセ ノン等)に電圧をかけ、プラズマ状態になった希ガスが発する紫外線がセル壁面に塗 布された発光体に当たることにより、映像に必要な可視光線を発生させるものである が、可視光線と同時に近赤外線、電磁波、ネオンガスに起因し赤色光の色純度を下 げる波長 595nm近辺の橙色光線(以下、ネオン光と記す)等の人、電気機器等に有 害な電磁波も一緒に放出するため、有益な可視光線は透過するが、近赤外線をはじ めとする有害な電磁波は遮蔽する必要があり、 PDPにはそのための光学フィルタ等 が必要とされる。
[0004] 光学フィルタに使用される近赤外線吸収フィルムは近赤外線を遮蔽する目的で使 用され、これには近赤外線を吸収する機能のある化合物(近赤外線吸収性化合物) が使用される。即ち、これらの近赤外線吸収性化合物を透明支持フィルム (透明基材 フィルム及び減反射性フィルム又は人体に有害とされる電磁波を遮蔽するフィルム( 以下、電磁波遮蔽フィルムと記す)等の透明な機能性フィルム)表面に設けられる層 に含有させることにより、近赤外線吸収フィルムが作製される。ここで使用される近赤 外線吸収性化合物としては、レ、くつかの種類がある力 近赤外線の吸収波長域が比
較的広いジィモニゥム化合物を単独で、或いはこれをベースとして他の一種類以上 の近赤外線吸収化合物と組み合わされて多用されている。しかし、近赤外線吸収性 を有する化合物は耐熱安定性や耐湿熱安定性 (以下、両者を併せて単に「熱安定 性」と記す)が不十分なものが多ぐジィモニゥム化合物においても同様のことが言え る。また、ジィモニゥム化合物としては一般的に六フッ化アンチモン酸イオンを有する ジィモニゥム化合物が使用されてきたが、この化合物は、劇物に該当すること、環境 問題から重金属等の使用規制が厳しくなりつつあることなどから、より安全なジィモ二 ゥム化合物が望まれていた。これを解決する手段として、ナフタレンジスルホン酸等 の有機対イオンを使用した化合物(特許文献 1 )やトリフルォロメタンスルホン酸イオン 等を用いた化合物(特許文献 2)が開示されているが、「熱安定性」が未だ不十分で、 特にこれらの化合物を粘着層に含有させた近赤外線吸収フィルムの場合、これらの 化合物を含有する層が変色したり、近赤外線の吸収性が劣化したりするという難点が ある。
[0005] 透明支持フィルム上に近赤外線吸収性化合物を保持させる主な具体的方法として は、溶剤中にバインダー樹脂と共に溶解及び/又は分散させて透明樹脂フィルム上 に塗工し、高分子樹脂層を形成する方法、粘着層に含有させる方法の 2つが挙げら れる力 前者の場合は、「熱安定性」が使用したバインダー樹脂のガラス転移温度や 樹脂層の残留溶剤量の影響を受けやすいという特徴があり、他方後者の方法では、 「熱安定性」が低下しやすい、透明性の一つの基準であるヘーズ値や可視光線の透 過度に悪い影響を与える等の懸念があるという特徴がある。
[0006] 透明支持フィルム上に設けられる層(オーバーコート層、粘着層、処理層等高分子 樹脂類を用いて設けられた層)中のジィモニゥム化合物を安定化する技術としては、 特許文献 3に透明支持フィルム上に設けられる層中に残存する溶剤量を一定割合以 下に制御した状態でジィモニゥム化合物を含有させたり、ガラス転移温度の高いバイ ンダ一樹脂を使用することにより安定化できることが開示されているが、残存溶剤量 をコントロールする手間が必要であり、又使用するバインダー樹脂に制限がある等、 簡便な方法とは言い難い。又、ジィモニゥム化合物を透明支持フィルム上に設けられ る粘着層に含有させる場合のヘーズ値や可視光線透過度への悪影響を有効に防ぐ
方法は報告されていない。
いずれにしても近赤外線吸収能に比較的優れたジィモニゥム化合物を用いて、近 赤外線に対する吸収能力、その「熱安定性」を損なうことなぐ且つ使用されるバイン ダー樹脂の制限がなぐ光学フィルタとしての性能に優れた近赤外線吸収フィルムの 簡便な製造技術の確立が要望されてレ、た。
文献リスト
特許文献 1 :特開平 10— 316633号公報 (第 5頁)
特許文献 2:特公平 7— 51555号公報 (第 2頁)
特許文献 3 :特開 2000— 227515号公報
特許文献 4:特公昭 43— 25335号公報(第 7_ 14頁)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 近赤外線領域における吸収波長域が比較的広いジィモニゥム化合物において、溶 剤溶解性が良いことにより取り扱い易ぐ使用できるバインダー樹脂のガラス転移温 度 (以下、 Tgと記す)の幅が広ぐまた、粘着層に含有させた場合でも優れた「熱安定 性」を保持でき、効率よく近赤外線を吸収でき、ヘーズ値をより低く保て、低コストで 合成できるジィモニゥム化合物を見出すこと、これを用いた優れた性能を有する光学 フィルタを提供することが本発明の課題である。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、前記課題を解決すベぐ鋭意検討の結果、カチオン側に特定の置 換基を有し、かつ、ァニオンとして特定のものを選択したジィモニゥム化合物の混合 物が上記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
[0009] すなわち、本発明は
(1)下記式(1)で表され、 nが異なる 2種以上のジィモニゥム化合物の混合物が透明 支持フィルム上に形成された層に含有されることを特徴とする近赤外線吸収フィルム
[0010] [化 1]
2 C(S0
2CF
3)
3 )
(式(1)中、 n_Prはノルマルプロピル基を、 iso_Buはイソブチル基をそれぞれ表し 、 nは 0〜8の整数を表す。)
(2)式(1)の nが異なる 2種以上のジィモニゥム化合物の混合物力 式(1)における n 力 ¾〜6のジィモニゥム化合物を 70% (マススペクトルより算出)以上 98%以下含有 するものである(1)に記載の近赤外線吸収フィルム、
(3)透明支持フィルム上に形成された層が粘着層である(1)又は(2)に記載の近赤 外線吸収フィルム、
(4)透明支持フィルム上に形成された層に、式(1)の nが異なる 2種以上のジィモユウ ム化合物の混合物及び波長 550〜620nmに極大吸収を有する化合物が含有され る(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルム、
(5)透明支持フィルムが減反射機能又は電磁波遮蔽機能を有するフィルムである(1 )乃至(4)のレ、ずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルム、
(6) (1)乃至(5)のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルムを含むプラズマデ イスプレイパネル用光学フィルタ、
(7) (1)乃至(5)のいずれか一項に記載の近赤外線吸収フィルムと、電磁波遮蔽能 を有するフィルム及び/又は減反射機能を有するフィルムを含む(6)に記載のプラズ マディスプレイパネル用光学フィルタ、
(8)式(1)で表され、 nが異なる 2種以上のジィモニゥム化合物の混合物
[化 2]
)
3
(式(1)中、 n—Prはノルマルプロピル基を、 iso— Buはイソブチル基をそれぞれ表し 、 nは 0〜8の整数を表す)
に関する。
発明の効果
[0012] 本発明に使用するジィモニゥム化合物の混合物は、簡便な方法で安価に合成でき 、アンチモン等の重金属を含まないため、劇物に該当せず、溶剤溶解性が良いため 、取り扱いやすぐこれを用いて得られた近赤外線吸収フィルムは 800〜: l lOOnmの 波長域の近赤外線を良好に吸収し、さらにこれを粘着層に含有させた場合でも優れ たヘーズ値及び「熱安定性」を示し、近赤外線吸収性の劣化、層の変色及び面質の 劣化などもなぐこの近赤外線吸収フィルムと他の機能性フィルムとを複合した PDP 用光学フィルタは優れた性能を示し、前記課題に充分対応できるものである。
発明を実施するための最良の形態
[0013] 以下本発明を詳細に説明する。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、前記式(1)で表されるジィモニゥム化合物の置 換基であるノルマルプロピル基とイソブチル基の数が異なる 2種類以上のジィモユウ ム化合物の混合物(以下、「本ジィモニゥム混合物」とも記す)を透明支持フィルム上 に設けられるバインダー樹脂層又は粘着層に含有させた近赤外線吸収フィルムであ り、光学フィルムとしての諸物性がよぐ 800〜: 11 OOnmの波長域の近赤外線を良好 に吸収する。
[0014] 「本ジィモニゥム混合物」を含有する層を有する近赤外線吸収フィルムは近赤外線 吸収性が良ぐ「熱安定性」にも優れており、粘着層に含有させた場合、式(1)の置 換基の全て力 Sイソブチル基 (n=0)であるジィモニゥム化合物より、近赤外線吸収能 力に優れ、ヘーズ値が低いことが特徴であり、又、式(1)の置換基の全てがノルマル プロピル基の(n=8)ジィモニゥム化合物より溶剤溶解性が良ぐ塗工し易いことが分 力 た。又、「本ジィモニゥム混合物」は製造が容易で、以下に述べるように前駆体の 製造工程で添加するアルキル化剤量の割合を調整することにより従来公知の方法に より容易に製造が可能である。
[0015] 本発明において「本ジィモニゥム混合物」は、例えば、特許文献 4に記載された方
法に準じて得ることができる。即ち、ウルマン反応及び還元反応で得られる下記式(2 )で表されるアミノ体を有機溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチ ルイミダゾリジノン(DMI)、 N—メチルピロリドン(NMP)等の水溶性極性溶媒中、 30 〜160°C、好ましくは 50〜140°Cでハロゲン化されたノルマルプロピル化合物及びィ ソブチル化合物を任意の割合で混合し、反応させ式(3)で表される化合物の混合物 を得ること力 Sできる。尚、ノルマルプロピル基とイソブチル基の比をコントロールする為 に、先にノルマルプロピル基(或いはイソブチル基)に対応する化合物を反応させて おき、後でイソブチル基(或いはノルマルプロピル基)に対応する化合物を反応させ て一定の割合の化合物の混合物を合成することも可能である。
[0016] [化 3]
[0017] (式(3)において、 nは前記式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
上記で合成した式(3)の混合物を、有機溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド( DMF)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、 N_メチルピロリドン(NMP)等の水溶性 極性溶媒中、 0〜: 100°C、好ましくは 5〜70。Cでトリス(トリフルォロメチルスルホニル) カルボ二ゥム酸を 2当量添加して酸化反応を行レ、、本発明で使用される「本ジィモ二 ゥム混合物」を得る。
[0018] 次に「本ジィモニゥム混合物」中の各ジィモニゥム化合物の組成割合の求め方につ いて述べる。
各ジィモニゥム化合物(式(1)において、 nが 0、 1、 2、 3、 4、 5、 6、 7又は 8である 9 種のジィモニゥム化合物)の分子イオンピーク強度を測定するための質量分析計とし て、マイクロマス社製 LCTを使用した。各ジィモニゥム化合物の組成割合を計算する ための測定用サンプルはカチオン化前の式 (3)の化合物(以下、前駆体と記す)に 依ったが、これはカチオン化後の「本ジィモニゥム混合物」の直接測定が困難で、測 定値の信頼性に欠けること及び各前駆体の組成割合がカチオン化後の各成分の組 成割合と極めて相関性が高いと判断できることによる。具体的には、測定用サンプル のエレクトロスプレー(ESI)イオン化マススペクトルを測定し、各前駆体の分子イオン ピーク強度〔M〕+を求めて組成割合を計算した。各成分の組成割合 Aは、 A(%) = 1 00 X〔M〕ソ (nが 0〜8の各前駆体の〔M〕 +の合計)、力も推定計算した。また、例 えば nが 3〜6の各成分の組成割合の和 Bは、 B (%) = 100 X (nが 3〜6の各前駆体 の〔M〕 +の和) / (nが 0〜8の各前駆体の〔M〕 +の合計)で求めた。
[0019] マススペクトルのピーク強度力ら上記により計算した n= 3〜6のジィモニゥム化合物 の組成割合の和が全体 (nが 0〜8である各ジィモニゥム化合物の合計)の 70%以上 で 98%以下になる混合物は本発明の目的の為にはより好ましい混合物である。この ような組成は、前記においてアルキル化剤の添加量、反応温度、反応時間を調整す ることにより容易に調製が可能である。
[0020] 本発明で使用される「本ジィモニゥム混合物」は単独で使用しても良いが、要望さ れる近赤外線の吸収波長域や吸収割合を調整するために、他の 1種類以上の近赤 外線吸収化合物と併用してもよぐ使用しうる他の近赤外線吸収化合物の具体例とし ては、「本ジィモニゥム混合物」以外のジィモニゥム化合物、ニトロソ化合物及びその 金属塩、シァニン系化合物、スクヮリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合 物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、トリアリルメタン系化合物、 ナフトキノン系化合物又はアントラキノン系化合物等が挙げられる。本発明では、これ らの化合物から波長 800〜: l lOOnmに極大吸収を有する化合物を選択して使用す るのが好ましい。
[0021] 以下、「本ジィモニゥム混合物」を含有する層を透明支持フィルム上に形成して近赤 外線吸収フィルムを作製する方法について説明する。尚、「本ジィモニゥム混合物」
以外の近赤外線吸収化合物を併用する場合には、「本ジィモニゥム混合物」と同じ塗 ェ液に混合して塗工する方法が有利であるが、別層として公知の方法で同じ透明支 持フィルムに保持させることもできる。
[0022] 「本ジィモニゥム混合物」を透明支持フィルム上に保持する方法としては、バインダ 一樹脂を使用して被膜層(以下、バインダー樹脂層と記す)を形成せしめ、その中に 含有せしめる方法と粘着層に含有させる方法が好ましい方法として挙げられる。
[0023] 本発明に使用される透明支持フィルムは透明性が高ぐ傷がつきにくぐ光学フィル ムとしての使用に耐えられるものであれば特に種類や厚さは限定されないが、厚さに ついては 10〜500 x mが作業性が良好で好ましぐフィルムの種類については、ポリ エステル系、ポリカーボネート系、トリアセテート系、ノルボルネン系、アクリル系、セル ロース系、ポリオレフイン系又はウレタン系等の高分子樹脂製フィルムが挙げられ、透 明性等の光学フィルムとしての物性や入手のし易さ等の点からポリエチレンテレフタ レート(以下、 PETと記す)が好ましい。外部からの紫外線を吸収して内部部材の機 能の安定化をはかるために紫外線吸収物質が含有されている透明支持フィルムを使 用することもでき、フィルムの表面には塗工膜との密着性を上げるためにコロナ放電 処理、プラズマ処理、グロ一放電処理、粗面化処理又は薬品処理やアンカーコート 剤やプライマー等のコーティングを施して易接着性を向上させたものでも良い。 また、透明支持フィルムが、例えば減反射性、防眩 '減反射性、帯電防止性、防汚 性、ネオン光吸収性、電磁波遮蔽性又は色調整などの機能を単独あるいは複数有 する機能性を持った透明支持フィルムであってもよぐ特に「本ジィモニゥム混合物」 をこれらの機能性透明支持フィルムの粘着層に含有させた場合は、これらの機能と 近赤外線吸収性を同時に保有する光学フィルムが得られるので、合理的で、優れた 形態の光学フィルタが可能となり、機能性透明支持フィルムを用いることは有利な選 択である。機能性透明支持フィルムとしては、減反射機能又は電磁波遮蔽機能を有 する透明支持フィルムが好ましレ、。
[0024] 次に、前記した好ましい機能性透明支持フィルムの例について説明するが、機能 性を有する透明支持フィルムの種類がこれらに限定されるものではない。
減反射機能を有する透明支持フィルム (減反射フィルム)は PETなどの透明支持フ
イルムの表面に、低屈折率剤をバインダー樹脂及びその他の添加剤と共にコーティ ングして外部からの光の反射を抑えたフィルム又は透明支持フィルムと低屈折率層と の間にハードコート層及び高屈折率層を施し、各層による反射光を打ち消し合うよう にコントロールして視認性を良くしたフィルムであり、防眩 '減反射フィルムは減反射 フィルムの高屈折率層やハードコート層に微細粒子を含有させて外部からの光を乱 反射させて視認性を良くしたフィルムである。これらのフィルムは、アークトップシリー ズ (旭硝子製)、カャコート ARSシリーズ(日本化薬製)、カャコート AGRSシリーズ( 日本化薬製)、リアルックシリーズ(日本油脂製)等として市場から容易に入手が可能 である。
[0025] 次に、電磁波遮蔽機能を有する透明支持フィルム(電磁波遮蔽フィルム)におレ、て 、電磁波を遮蔽する方法には銅などの金属の極細線を網目のような幾何学模様に透 明支持フィルムに保持させたメッシュタイプと、光透過性を有する範囲で金属の極薄 膜を透明基材フィルムに保持させた薄膜タイプがあるが、 PDPにおいては、薄膜タイ プを使用した場合 (一般的には近赤外線は反射されるため透過せず)、近赤外線吸 収フィルムを必要としない。従って、本発明においては、電磁波遮蔽フィルムを使用 する場合は、メッシュタイプの電磁波遮蔽フィルムを透明支持フィルムとして使用する のが好ましい。又、減反射フィルムの減反射面の反対面に導電性インキをスクリーン 印刷法等によりメッシュ状に電磁波遮蔽層を施して得た減反射性と電磁波遮蔽性を 有するフィルムを透明支持フィルムとして使用すると、 PDP用の光学フィルタを作製 する上で好都合である。
[0026] 本発明に使用されうる、その他の機能性を有する透明支持フィルムとしては、ネオ ン光吸収性、紫外線吸収性、帯電防止性、防汚性、色調整等の、機能を単独あるい は複数で保持させた透明支持フィルムがあるが、これらはそれらの性能を有する各化 合物を含有するバインダー樹脂組成物から成形する方法などによりそれ自体公知の 方法に準じて作製することができる。
[0027] 最初に「本ジィモニゥム混合物」を粘着層に含有させる方法について述べる。粘着 層の主体となる樹脂は「本ジィモニゥム混合物」を均一に分散でき、透明支持フィル ムの表面に透明な層を形成し、光学フィルムとしての機能を損なわないものであれば
特に限定されないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリ ォレフィン系、ポリカーボネート系、ゴム系又はシリコン系樹脂等の粘着材が挙げられ 、透明性、接着性、耐熱性等に優れている点でアクリル系樹脂粘着材が好適である 。アクリル系樹脂粘着材は、官能基(二重結合を除く)を持たないアクリル酸系アルキ ルエステルを主成分として、これに官能基を有するアクリル酸系アルキルエステルや アクリル酸系アルキルエステル以外の他の単量体成分を共重合させたものである。そ の官能基を有するアクリル酸系アルキルエステルやアクリル酸系アルキルエステル以 外の他の単量体成分の共重合割合は、官能基を持たないアクリル酸系アルキルエス テル成分 100重量部あたり 0.:!〜 20重量部、より好ましくは 1〜: 10重量部である。
[0028] 官能基を持たないアクリル酸系アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、
(メタ)アクリル酸ェチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸プチル、(メタ)ァ クリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、 (メタ)アタリ ル酸ォクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ゥン デシル又は(メタ)アクリル酸ドデシルなどの、アルキル基の炭素数が 1〜: 12であるァ クリル酸アルキルエステル乃至メタアクリル酸アルキルエステルが挙げられる力 これ らは必要に応じ 2種類以上を併用しても良い。
[0029] 官能基を有するアクリル酸系アルキルエステル又はアクリル酸系アルキルエステル 以外の単量体としては、後記する架橋剤との架橋点などとして機能するものが用いら れ、その種類について特に限定はないが、(メタ)アクリル酸 2—ヒドロキシルェチル、( メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル系単 量体、 N, N—ジメチルアミノエチルアタリレート、 N— tert—ブチルアミノエチルアタリ レート等のアミノ基含有 (メタ)アクリル酸系単量体、又はアクリル酸、マレイン酸などが 挙げられ、これらは必要に応じて 2種類以上を併用しても良い。
[0030] 粘着剤は架橋剤を配合することにより前記アクリル酸系樹脂等を架橋しうる組成で 用いるのが好ましい。架橋剤としては前記の単量体の種類に応じて適宜用いられ、 例えばへキサメチレンジイソシァネート、へキサメチレンジイソシァネートのトリメチロー ルプロパン付カ卩物などの脂肪族ジイソシァネート、トリレンジイソシァネート又はトリレ ンジイソシァネートのトリメチロールプロパン付加物等の芳香族ジイソシァネートの如
きポリイソシァネートイ匕合物、ブチルエーテル化スチロールメラミン、トリメチロールメラ ミンの如きメラミン化合物、へキサメチレンジァミン又はトリエチレンジァミン等のジアミ ン化合物、ビスフエノール A、ェピクロルヒドリン等のエポキシ樹脂系化合物、尿素榭 脂系化合物、塩化アルミニウム、塩化第二鉄又は硫酸アルミニウム等の金属塩等が 用いられ、その配合量は、通常、アクリル系樹脂粘着材 100重量部あたり 0. 005-5 重量部、好ましくは 0. 01〜3重量部である。
[0031] 上記のアクリル樹脂系粘着材は粘着力、凝集力に優れると共に、架橋後のポリマー 中には不飽和結合がないため光や酸素に対する安定性が高ぐまた、モノマーの種 類や分子量の選択の自由度が高いという理由力 も好ましぐ透明支持フィルムへの 密着性を保持するために分子量 (重合度)の高レ、もの、即ち、主ポリマーの重量平均 分子量 (Mw)は 60万〜 200万程度が好ましぐより好ましくは 80万〜 180万程度で ある。
[0032] PDPにおいて、加電圧時に発生するネオンガス等に由来する波長 550〜620nm の橙色のネオン光は、赤色光の色純度を下げるためディスプレー前面である程度力 ットする必要があるので、ネオン光吸収化合物を透明支持フィルムに保持させたネオ ン光吸収フィルタが通常使用されるが、近赤外線吸収能を有する層にネオン光吸収 能を有する化合物を含有させることにより、近赤外線とネオン光を同時に吸収できる 層を得る方法が有利である。ここで、使用しうるネオン光吸収化合物の例としては、例 えばァザポルフィリン系、シァニン系、スクァリリウム系、ァゾメチン系、キサンテン系、 ォキソノール系又はァゾ系等の化合物が挙げられる力 特に粘着層に含有させる場 合には使用される「本ジィモニゥム混合物」の「熱安定性」等にっレ、て十分配慮する 必要がある。例えばテトラァザポルフィリン系化合物は比較的安定であり、その他の 化合物でも安定化がはかれれば使用可能である。
[0033] 「本ジィモニゥム混合物」を、粘着剤の主成分である前記粘着材、重合開始剤、架 橋剤、紫外線吸収剤、色調整色素及びその他必要とされる添加剤、例えば電磁波 遮蔽のメッシュに使用される金属との接触により変色する場合は酸化防止剤、防鲭 剤等と共にメチルェチルケトン (MEK)等の溶剤に十分に溶解又は分散させて粘着 剤液とし、透明支持フィルムの表面に、乾燥後の層厚が 5〜: 100 z m、好ましくは 10
〜50 / mになるように塗工する。その塗工方法は特に限定されず、バーコ一ター、リ バースコーター、コンマコーター又はグラビアコーター等によって塗布し、乾燥して粘 着層を密着させる方法や、剥離フィルム上に粘着剤液をバーコ一ター、リバースコー ター、コンマコーター、グラビアコーター等によって塗布し、乾燥した後、粘着層を透 明支持フィルム上に転写する方法等が挙げられる。使用する溶剤量は塗工方法によ り異なるが、主ポリマーの重量平均分子量が 100万前後のアクリル樹脂系粘着剤を 使用し、コンマコーターで塗布する場合は、粘着剤を 10〜25重量%になるように溶 剤で希釈するのが好ましい。本発明の近赤外線吸収フィルムは、波長 800〜: 1100η mの近赤外線の透過率が 10%以下になるよう設計されるのが好ましぐ「本ジィモ二 ゥム混合物」もそれに合わせた量を使用すれば良ぐ粘着層に対して概ね 1〜20重 量%になるように含有させればよい。
[0034] 「本ジィモニゥム混合物」は 2種類以上のジィモニゥム化合物の混合物である力 ノ ルマルプロピル基が 8個のジィモニゥム化合物の単一品(式(1)において n= 8)では 、塗工時の溶剤として多用される MEK等の溶剤に対する溶解性が不十分で塗工面 に凝集物が生じやすぐ近赤外線吸収性も劣る傾向にある。 nが大きいつまりノルマ ルプロピル基が多いジィモニゥム化合物の比率が高い混合物になるに従って溶剤溶 解性が劣るようになるため塗工しに《なる。また、 8個全部がイソブチル基の場合 (式 (1)において n=0)は近赤外線吸収能が「本ジィモニゥム混合物」より若干劣り、へ 一ズ値も高めで、また、「本ジィモニゥム混合物」の中でも nが小さいつまりイソブチル 基が多いジィモニゥム化合物の含有比率が高くなるに従ってヘーズ値が高くなる傾 向にある。以上のことから、「本ジィモニゥム混合物」はノルマルプロピル基が 8個、及 びイソブチル基が 8個の単一品を使用するより物性面或いは取り扱いやすさの面で 勝り、また、「本ジィモニゥム混合物」でもどちらかに偏り過ぎない化合物の混合物が より適しており、前記したマススペクトルのピーク強度から計算した nが 3〜6のジィモ ニゥム化合物の組成割合の和が全体 (nが 0〜8の組成割合の合計)の 70%以上で あり、 98%以下である混合物がより好ましい。
[0035] 次に、「本ジィモニゥム混合物」を透明支持フィルム上にバインダー樹脂層として保 持させる方法にっレ、て述べる。
「本ジィモニゥム混合物」を、バインダー樹脂と、必要に応じてネオン光吸収色素、 色調整色素、レべリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑 剤、紫外線吸収剤、その他添加剤等と共に溶剤中に溶解及び/又は分散させて塗 ェ液とし、塗工機にて塗工し、乾燥する方法が採用出来る。また、熱硬化性、活性ェ ネルギ一線硬化性などのバインダー樹脂を使用した場合は、乾燥後、硬化工程が必 要である力 S、硬化熱や活性エネルギー線で近赤外線やネオン光の吸収化合物の劣 化が生じたり、工程が増えたりするので、特別な事情がない限り、熱可塑性のバイン ダー樹脂を使用するのが望ましい。
[0036] バインダー樹脂としては塗工しやすぐ透明支持フィルムとの密着性がよぐ可視光 線透過性がよぐ面質等に問題がなければ特に限定されないが、取り扱いやすさから ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレ フィン系樹脂又はポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂から選択されるのが好 ましレ、。塗工してロール状に卷き取った後、保存中にブロッキング等の問題を起こさ ないようなガラス転移温度やその他の物性を有し、使用される「本ジィモニゥム混合 物」の「熱安定性」に悪影響を及ぼさなレ、材質の選択が好ましレ、。
[0037] 溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジアセトンアルコー ノレ、ェチルセ口ソルブ又はメチルセ口ソルブ等のアルコール類、アセトン、メチルェチ ルケトン(MEK)、シクロペンタノン又はシクロへキサノン等のケトン類、 N, N—ジメチ ルホルムアミド又は N, N—ジメチルァセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等 のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジォキサン又はエチレングリコールモノメチルェ 一テル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸ェチル又は酢酸ブチル等のエステル類、 クロロホノレム、塩化メチレン、ジクロロエチレン又はトリクロロエチレン等の脂肪族炭化 水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン又はジクロルベンゼン等 の芳香族類、又は n—へキサン、 n_ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、テトラフルォ 口プロピルアルコール又はペンタフルォロプロピルアルコール等のフッ素系溶剤等を 用いることができ、各材料に対する溶解力が高ぐ塗工、乾燥等において不都合がな く、安全性にっレ、ての問題がなレ、溶剤を選択することが好ましレ、。
[0038] 必要に応じて使用される添加剤のうち、ネオン光吸収化合物は上記の粘着層に含
有させる場合と同様の化合物が使用され、他の添加剤については使用される「本ジ ィモニゥム混合物」の「熱安定性」や要望される品質性能に配慮しながら溶液中に含 有させて使用される。
[0039] 塗工液の塗工は、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、口 一ノレコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、リップコート法又はダイコータ 一法等の公知の塗工方法で、仕上がりの層厚が通常 0.:!〜 30 x m、好ましくは 0. 5 〜: 10 z mとなるように塗付され、乾燥することによって処理層が固定される。尚、別途 硬化が必要な場合は乾燥後、硬化処理を行って処理層を固定する。近赤外線の遮 蔽性としては粘着層に「本ジィモニゥム混合物」を含有させる場合と同様に、波長 80 0〜: l lOOnmの近赤外線の透過率が 10%以下になるよう設計されるのが好ましい。 使用する溶剤量は塗工方法により異なる力 主ポリマーの重量平均分子量が 30万 前後の熱可塑性アクリル樹脂系バインダーを使用し、マイクログラビアコーターで塗 布する場合は、 15〜30重量%になるように溶剤で希釈するのが好ましレ、。
[0040] ジィモニゥム化合物がバインダー樹脂層に含有される場合、最も一般的に使用され ている六フッ化アンチモン酸イオンをァニオンとするジィモニゥム化合物、例えばカャ ソルブ IRG— 022 (商品名;日本化薬社製)や多くのジィモニゥム化合物では特許文 献 3に記載のように Tgが 85°C以下と低いバインダー樹脂を使用すると「熱安定性」が 劣るが、「本ジィモニゥム混合物」では 85°C以下のバインダー樹脂を使用しても問題 なぐまた、特許文献 3に開示されているようなバインダー樹脂層中の残留溶剤量の 管理を要せず、通常の乾燥条件による乾燥でも支障なく使用可能である。また、「本 ジィモニゥム混合物」は前記式(1)において、全ての置換基がノルマルプロピル基(n = 8)の単一品と比較すると、溶剤溶解性が優れているので取り扱いやすぐ「本ジィ モニゥム混合物」はバインダー樹脂層に含有させる方法でも優れた近赤外線吸収フ イルムを得ることができる。
[0041] 次に、本発明の光学フィルタは、透明支持フィルム上に「本ジィモニゥム混合物」を 含有した層が設けられている本発明の近赤外線吸収フィルムを最低の構成要素とし てこれと下記のような機能を有する透明支持フィルムとを、積層又は貼り合わせて得 られる。これらの光学フィルタの好ましい用途は PDP用であり、本発明の光学フィルタ
はあらかじめ透明のガラス板やプラスチック板に貼合して PDPの前面に取り付けても 、 PDPの前面に直接貼合して使用してもよい。
[0042] 本発明の光学フィルタにおける各種フィルムの構成例を挙げると下記(1)〜(: 13) の例が挙げられる。
下記記載において、 NIRAは近赤外線吸収性を、 NeAはネオン光吸収性を表し、 中括弧({ })で括った部分は本発明の近赤外線吸収フィルムを、小括弧(( ))で括 つた部分は本発明以外の機能性フィルムをそれぞれ示す。これらの構成例から明ら かなように、例えば、減反射性透明支持フィルムのような機能性を有する透明支持フ イルムの粘着層に「本ジィモニゥム混合物」やネオン光吸収化合物を含有せしめるこ とにより、 2種類のフィルムを貼合するのみで、 PDP用の光学フィルタを作製すること が可能である。更に、減反射フィルムの裏面にメッシュの電磁波遮蔽を施したフィル ムを透明支持フィルムとして、そのメッシュ面に「本ジィモニゥム混合物」及びネオン光 吸収剤を含有するバイダー樹脂層や接着層を設けることにより、 1種類のフィルムで P DP用の光学フィルタを製造することも可能である。本発明の光学フィルタとしては、 本発明の近赤外線吸収フィルムと電磁波遮蔽能を有するフィルム又は減反射機能を 有するフィルムを含む態様が好ましレ、。
[0043] (1) {減反射性フィルム/ NIRA' NeA'色調整粘着層 } / (電磁波遮蔽フィルム/粘 着層)、
(2) {減反射性フィルム/ NIRA*色調整粘着層 } / (電磁波遮蔽フィルム/ NeA粘 着層)、
(3) (減反射フィルム/粘着層) / {電磁波遮蔽フィルム/ NIRA -NeA-色調整粘着 層 }、
(4) {防眩 ·減反射フィルム ZNIRA'NeA'色調整粘着層 } / (電磁波遮蔽フィルム /粘着層)、
(5) (減反射性フィルム Z粘着層) Z{NIRA'NeAバインダー樹脂層/ PET/色調 整粘着層 } / (電磁波遮蔽フィルム Z粘着層)、
(6) (減反射性フィルム Z粘着層) / { NeAフィルム/ NIRA ·色調整粘着層 } Z (電 磁波遮蔽フィルム Z粘着層)、
(7) (減反射フィルム/粘着層) / (電磁波遮蔽フィルム/粘着層) / { Ne Aフィルム /NIRA*色調整粘着層 }、
(8) (減反射フィルム/粘着層)/ (電磁波遮蔽フィルム)/ {NIRA'NeA吸収粘着 層/ PETZ色調整粘着層 }、
(9) (減反射フィルム Z粘着層) Z{NIRA'NeAバインダー樹脂層/ PET/色調整 粘着層 } / (電磁波遮蔽フィルム Z粘着層)、
(10) {減反射フィルム ZNIRA · NeAバインダー樹脂層/色調整粘着層 } / (電磁 波遮蔽フィルム Z粘着層)
(11) {減反射フィルム ZNIRA · NeAバインダー樹脂層/色調整粘着層 } / (電磁 波遮蔽フィルム Z粘着層)
(12) {減反射フィルム Z電磁波遮蔽層 ZNIRAバインダー樹脂層 /NeA粘着層 }
(13) {減反射フィルム Z電磁波遮蔽層 ZNIRA · NeA粘着層 }
実施例
[0044] 以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限 定されるものではなレ、。尚、実施例において部は重量部を、%は重量%をそれぞれ 意味する。
[0045] 合成例 1
(置換反応)
DMF100部中に N, N, N,, N,一テトラキス(ァミノフエ二ル)一 p—フエ二レンジァ ミン 7部、炭酸カリウム 27部、ヨウ化カリウム 14. 8部、イソプチルブロミド 32部、 1—ブ ロモプロパン 3部をカ卩え、 90°Cで 2時間反応、その後、 110°Cで 6時間反応させた。 冷却後析出した結晶を濾別し、得られた結晶を熱 DMFに溶解させる。不溶解分を 除去した後、溶解液にメタノールを加え、析出した結晶を濾別し、水で洗浄した後、 乾燥し、薄緑色結晶の前駆体 (前記式 (3)を参照) 6. 8部を得た。
(酸化反応)
DMF40部中に上記前駆体結晶 5部をカ卩え、 60°Cに加熱溶解した後、トリス(トリフ ルォロメタンスルホニル)カルボニゥム酸の 58%水溶液 9部を加え、次いで DMF30 部に溶解した硝酸銀 1. 9部をカ卩え、 30分間加熱撹拌した。不溶解分を濾別した後、
反応液に水を加え生成した結晶を濾過、水洗、乾燥し、ジィモニゥム化合物の混合 物 5. 2部を得た。この混合物中の各成分の組成割合の算出は前記の方法によって 行レ、、結果は表 1に記載した。この混合物の極大吸収波長は 1107nm (ジクロ口メタ ン)であった。
[0046] 合成例 2
(置換反応)
合成例 1の 1 _ブロモプロパンの 3部を 7. 3部に代える以外は合成例 1と同様の方 法で置換反応と精製を行い、薄緑色結晶の前駆体 6. 5部を得た。
(酸化反応)
合成例 1で得られた前駆体を上記の前駆体に代える以外は合成例 1と同様の方法 で酸化反応と精製を行い、ジィモニゥム化合物の混合物 4. 5部を得た。この混合物 中の各成分の組成割合の算出は前記の方法によって行レ、、結果は表 1に記載した。 この混合物の極大吸収波長は 1092nm (ジクロロメタン)であった。
[0047] 合成例 3
(置換反応)
合成例 1の 1—ブロモプロパンの 3部を 10部に代える以外は合成例 1と同様の方法 で置換反応と精製を行い、薄緑色結晶の前駆体 6. 2部を得た。
(酸化反応)
合成例 1の前駆体を上記の前駆体に代える以外は合成例 1と同様の方法で酸化反 応と精製を行い、ジィモニゥム化合物の混合物 6. 1部を得た。この混合物中の各成 分の組成割合の算出は前記の方法によって行い、結果は表 1に記載した。この混合 物の極大吸収波長は 1103nm (ジクロロメタン)であった。
[0048] 合成例 4
(置換反応)
合成例 1の 1 _ブロモプロパンの 3部を 12. 7部に代えて加える以外は合成例 1と同 様の方法で置換反応と精製を行い、薄緑色結晶の前駆体 7. 6部を得た。
(酸化反応)
合成例 1の前駆体を上記の前駆体に代える以外は合成例 1と同様の方法で酸化反
応と精製を行い、ジィモニゥム化合物の混合物 5. 4部を得た。この混合物中の各成 分の組成割合の算出は前記の方法によって行い、結果は表 1に記載した。この混合 物の極大吸収波長は 1 lOlnm (ジクロロメタン)であった。
[0049] 表 1に合成例 1〜4で得られたジィモニゥム化合物の混合物中の各成分の割合を 纏めた。
[0050] (溶剤溶解性)
合成例 1〜4で得られたジィモニゥム化合物及び下記比較例 1、 2、 3で使用したジ ィモニゥム化合物の溶剤溶解性を次のような方法で測定した。
対象ジィモニゥム化合物の 5%メチルェチルケトン溶液を室温で作製し、溶解状態 を観察した。その結果、合成例:!〜 4及び比較例 2、 3で使用したジィモニゥム化合物 は透明状態であるのに対し、比較例 1で使用したジィモニゥム化合物は完全には溶 解せず、沈降物が見られた。
[0051] [表 1]
(表 1 ) B^
(近赤外線吸収フィルム 1の調製)
下記表 2に示す各原料を均一になるように混合溶解した塗工液を、 MRF- 75 (商
品名、 PET剥離フィルム、三菱化学ポリエステルフィルム製)上にコンマコーターで 0 . 8m/分の塗工速度、乾燥温度 110°Cにより、粘着層の厚さが 18 / mになるように 塗工して粘着層を形成した。次いで、 KAYACOAT ARS -D501 (商品名、減反 射フィルム、 日本化薬製)の減反射面の反対面に、粘着層の設けられた上記 PET剥 離フィルムをロールにより加圧圧着し、減反射性を有し、ネオン光も吸収する本発明 の近赤外線吸収フィルム 1を得た。
[表 2]
(表 2 )
材 料 使用 合成例 1のジィモニゥム化合物の混合物 1 . 0 0
T A P— 2 (商品名 ネオン光吸収剤 山田化学工業製) 0 . 0 9 チヌビン 1 0 9 (商品名 紫外線吸収剤 チバガイギー製) 0 . 5 7 P T R - 1 0 4 (商品名 アクリル系樹脂 日本化薬製) 1 0 3 . 0 0 コロネー KH L (商品名 硬化剤 曰本ポリウレタン製) 0 . 0 2 3
ME K 6 4 . 0 0部
[0054] (註) TAP— 2 ;テトラァザポルフィリン系化合物、チヌビン 109 ;ベンゾトリアゾール系 化合物、コロネート HL ;イソシァネート系硬化剤
[0055] 実施例 2
(近赤外線吸収フィルム 2の調製)
実施例 1の合成例 1のジィモニゥム化合物の混合物の代わりに合成例 2のジィモ二 部 ¾部部 ¾量s ゥム化合物の混合物を使用する以外は実施例 1と同様の方法で減反射性を有し、ネ オン光を吸収する本発明の近赤外線吸収フィルム 2を得た。
(PDP用光学フィルタ 1の調製)
£3—15341101〇0— 42— 02)八(商品名、電磁波遮蔽フィルム、 日立化成工業 製)の保護フィルムを剥がし、その上に、上記近赤外線吸収フィルム 2を粘着層を介 して貼合し、本発明の PDP用光学フィルタを得た。このフィルタは PDPモジュールの 前面に直接貼っても、ガラス板 (透明板)に貼ってモジュールの前に取り付けても、 P
DP用光学フィルタとして必要な性能を十分に発揮するものであった。
[0056] 実施例 3
(近赤外線吸収フィルム 3の調製)
実施例 1の合成例 1のジィモニゥム化合物の混合物の代わりに合成例 3のジィモ二
ゥム化合物の混合物を使用する以外は実施例 1と同様の方法で減反射性を有し、ネ オン光を吸収する本発明の近赤外線吸収フィルム 3を得た。
(PDP用光学フィルタ 2の作製)
ES _ 1534U (HCD_42_02)A (商品名、電磁波遮蔽フィルム、 日立化成工業 製)の保護フィルムを剥がし、その上に、上記近赤外線吸収フィルム 3を粘着層を介 して貼合し、本発明の PDP用光学フィルタを得た。このフィルタは電磁波遮蔽フィル ムの粘着層を介して PDPモジュールの前面に直接貼っても、ガラス板に貼ってモジ ユールの前に取り付けても、 PDP用光学フィルタとして必要な性能を十分に発揮する ものであった。
[0057] 実施例 4
(近赤外線吸収フィルムの調製 4)
実施例 1の合成例 1のジィモニゥム化合物の混合物の代わりに合成例 4のジィモ二 ゥム化合物の混合物を使用する以外は実施例 1と同様の方法で減反射性を有し、ネ オン光を吸収する本発明の近赤外線吸収フィルム 4を得た。
[0058] 実施例 5
(近赤外線吸収フィルム 5の調製)
MEK40部に合成例 2のジィモニゥム化合物の混合物 0. 5部、フォレット PAN— 1 25 (商品名、 Tgが 70°Cのアクリル系バインダー樹脂、綜研化学製) 37部を溶解させ て塗工液を得た。この塗工液をコスモシャイン A4300 (商品名、厚さ 100ミクロンのポ リエステルフィルム、東洋紡績製)上にマイクログラビアコーターでマイクログラビア口 ールを用いて 10m/分のライン速度で塗工し、 70〜130°Cで乾燥して、合成例 2の ジィモ二ゥム化合物の混合物をバインダー樹脂層に含有する本発明の近赤外線吸 収フィルム 5を得た。
[0059] 比較例 1
合成例 1のイソブチルブロミド 32部と 1 _ブロモプロパン 12. 7部の代わりに 1—ブロ モプロパン 44. 7部を用いる以外は合成例 1と同様の方法で式(1)における置換基 8 個がすべてノルマルプロピル基であるジィモニゥム化合物を作製し、これを合成例 1 のジィモニゥム化合物の混合部の代わりに使用する以外は実施例 1と同様の方法で
比較用の近赤外線吸収フィルムを得た。
[0060] 比較例 2
合成例 1のイソブチルブロミド 32部と 1 ブロモプロパン 12. 7部の代わりにイソブ チルブロミド 44. 7部を用いる以外は合成例 1と同様の方法で式(1)における置換基 8個がすべてイソブチル基であるジィモニゥム化合物を作製し、これを合成例 1のジィ モニゥム化合物の混合部の代わりに使用する以外は実施例 1と同様の方法で比較用 の近赤外線吸収フィルムを得た。
[0061] 比較例 3
実施例 5の合成例 2のジィモニゥム化合物の混合物の代わりにカャソルブ IRG_ 022 (商品名、六フッ化アンチモンァニオンのジィモニゥム化合物、 日本化薬製)を同 量使用する以外は実施例 5と同様の方法でバインダー樹脂層に近赤外線吸収剤を 含有する比較用近赤外線吸収フィルムを得た。
[0062] 性能試験(1) (近赤外線吸収剤が粘着層に含有される近赤外線吸収フィルム) 実施例 1乃至 4で得られた近赤外線吸収フィルム及び各比較例 1及び 2で得られた 比較用の近赤外線吸収フィルムの各試験片を 80°Cの恒温槽中に 500時間保管した 時の、各極大吸収波長における透過率、視感透過率 (Y%)及び色度座標 (x、 y)の 変化を測定し、各試験片の耐熱性を比較した。尚、透過率は UV— 3150 (商品名、 分光光度計、島津製作所製)で測定し、視感透過率及び色度座標 (x、 y)はこの透 過率から JIS Z 8701の XYZ表色系による色の表示方法に準拠して算出した。又、 ヘーズ値は TC— H3DPK (商品名、ヘーズメーター、東京電色技術センター製)に よって測定した。更に、外観変化は肉眼によって観察した。
性能試験( 1 )の結果を表 3に纏めた。
[0063] [表 3]
(表 3 ) 性能 ¾果 ( 1 ) く耐熱性〉
[0064] (考察)前記式(1)において nが 8のジィモニゥム化合物を使用した比較例 1はヘーズ 値が高ぐ凝集物も生じた。又、前記式(1)において nが 0のジィモニゥム化合物を使 用した比較例 2はヘーズ値が劣り、近赤外線吸収率も劣った。それに比べ、本願発 明の nが異なる 2種以上のジィモニゥム化合物の混合物を用いた実施例 1〜4の近赤 外線吸収フィルムはいずれの項目も実用性がある結果であった力 殊に式(1)にお ける nが 3〜6の各成分の和が 70。/。以上のジィモニゥム化合物の混合物を粘着層に 有する実施例 2〜4の近赤外線吸収フィルムはいずれもヘーズ値、近赤外線遮蔽率 で 70%以下のもの(実施例 1)より優れていた。尚、耐湿熱性(60°C、RH90%、 500 時間)における試験結果でも、概ね上記と同様な結果であった。耐湿熱性の結果を 表 4に纏めた。
[0065] [表 4]
(表 4 ) 性能試験結果 (1 ) <耐湿熱性 >
[0066] 性能試験(2) (近赤外線吸収剤がバイダー樹脂層に含有される近赤外線吸収フィル ム)
実施例 5で得られた近赤外線吸収フィルム(本発明)及び比較例 3で得られた比較 用の近赤外線吸収フィルムの各試験片について、性能試験(1)の場合と同様な性能 試験 (耐熱性)を実施して表 5に示される結果をえた。
[0067] [表 5]
(表 5 ) 性能試験 (2 ) く耐熱性 >
(考察)耐熱性試験では、近赤外線の透過率はいずれも 10%以下であるが、比較例 3は透過率の変化が大きい。色度座標では実施例 5はバインダー樹脂の Tgが 70°C
と低いにもかかわらず変化が少なぐ外観変化もなかつたが、比較例 3は Tgに影響さ れて色度座標の yの変化が大きぐ外観が変化し、黄色味を帯びた。尚、耐湿熱性( 60°C、 RH90%、 500時間)における試験結果でも、概ね上記と同様な結果であつ た。耐湿熱性の結果を表 6に纏めた。
[表 6]
(表 6) 性能纖 (2) <β«> 保管時間 実施例 5 比較例 3
波長 950nm 0 hr 4.69
透過率(%) 500 hr 5. 13
差 0. o 12
視感透過率 0 hr 81. 09005 80. 100
Y(°/o) 500 hr 82. 090 80. 886
ο
差 0. 185 0. 786
色度座檁 0 hr 0. 319 0.寸 3寸20
X 500 hr 0. 319 0. 323
差 0.000 0.003
色度座檁 0 hr 0.338 0. 341
y 500 hr 0.339 0. 348
差 0.001 0.00フ
外観変化 500 hr 変化なし 黄色味を带びる