明 細 書
金属二層構造体及びその製造方法並びにこの方法を用いたスパッタリン グターゲットの再生方法
技術分野
[0001] この発明は、プレート材に重ね合わせた平板状の金属部材の表面から回転工具を 挿入して摩擦攪拌することにより、金属部材とプレート材とを接合すると共に、金属部 材を改質して改質金属部材を得る、改質金属部材とプレート材の金属二層構造体の 製造方法、及びこの方法を用いて製造した金属二層構造体、並びにこの方法を用い て使用済みスパッタリングターゲットを再利用することで、新たなスパッタリングターゲ ットを得るスパッタリングターゲットの再生方法に関する。
背景技術
[0002] スパッタリングによる成膜は、半導体デバイス、磁気ディスク、光学ディスク、液晶や プラズマディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイ等の各種製品の製造に おいて幅広く用いられている。このようなスパッタリングによる成膜を行うには、薄膜の 原料となるターゲット材の裏面に冷却手段等を備えて支持体とされるバッキングプレ ートが接合されたスパッタリングターゲットと称するものが使用される。
[0003] このうち、ターゲット材については、スパッタリングにより膜厚や成分が均一である高 品質の膜を形成することができるように、成分組成や金属組織等が均一であることが 求められる。例えば、大きな結晶粒を内部組織に含有するターゲット材ではスパッタリ ングの際にパーティクルゃスプラッシュの発生が多くなつてしまう現象に着目して、結 晶組織内に平均粒径が 20 μ m以下の結晶粒を形成させてなるターゲット材が報告さ れている(特許文献 1参照)。このようなターゲット材を用いれば、パーティクル等の発 生が少なくなり、巨大粒子が飛散して薄膜に突起部が形成されることによる薄膜回路 での短絡や異常放電等を防止して高品質の膜を形成することができる。また、パーテ イクルゃスプラッシュの発生を防ぐために、ターゲット材を形成する結晶の粒径を小さ くすると共に薄膜の低電気抵抗ィ匕を図る目的で合金元素を添加したターゲット材が 報告されて ヽる (特許文献 2参照)。
[0004] し力しながら、上記特許文献 1に係るターゲット材を得るためには、スラブ又はビレツ ト等の铸造材に均質化処理等の熱処理を行 ヽ、更に適切な温度で熱間圧延等を施 して高 ヽ塑性加工を行って微細な再結晶を形成させる必要があり、工程が複雑であ つてコストがかかるほか、铸造材自体の金属凝固組織の成分偏析を完全には解消す ることが困難であるといった問題がある。また、特許文献 2に係るターゲット材を得るた めには、合金元素を含む成分組成を均一とするためにスプレーフォーミング法ゃ粉 末法等を用いてターゲット材を製造する必要があり、これらの方法では HIP処理や押 出等を行ってターゲット材の緻密化を図らなければならな 、ことから、成形できるター ゲット材の大きさに限界があり、特に、後述するようにスパッタリングターゲットの大型 ィ匕が進む中では、コストアップの要因となる。
[0005] 一方、ターゲット材とバッキングプレートとは、一般に、はんだ等を用いて接合される
1S 近年、スパッタ処理設備等が大型化されて、スパッタリングターゲット自体にかか る温度が上昇する傾向にある。このようにスパッタリングターゲットにかかる温度が上 昇すると、はんだによる接合部分が溶融してバッキングプレートからターゲット材が剥 がれるおそれがある。そこで、ターゲット材とバッキングプレートとの間にインジウムか らなるインサート材を介して接合する技術 (特許文献 3参照)や、ノ ッキングプレートの 接合側表面にチタン層及びアルミニウム一マグネシウム系合金カゝらなる介在層を設 けて、このノ ッキングプレートとターゲット材とを熱間静水圧プレスにより接合する技術 が報告されて ヽる (特許文献 4参照)。
[0006] し力しながら、インサート材に高価なインジウムを用いる接合技術ではコスト面で問 題があり、特に、大型のスパッタリングターゲットを製造する上ではこの問題は顕著と なる。一方、特許文献 4に係る技術では、チタン層や介在層を設ける工程数が増えて コスト面で問題があるほか、高圧の HIP処理を可能とする装置は高価でありかつ接合 面積を大きくできず、ターゲット材の大型化には対応できない。
[0007] 上記でも触れたように、液晶等のフラットパネルディスプレイの大型化と低コストィ匕が 進むに伴い、 lm2を超えるようなガラス基板等を処理する必要があることから、大型の スパッタリングターゲットの開発が望まれている。ところが、上記のような lm2を超える ガラス基板に膜厚や成分が均一であるような膜の形成が可能な大型の 1枚もののタ
ーゲット材を得ることは技術的にも困難である。例えば、上述した特許文献 1及び 2に 係る技術においては、ターゲット材を製造する上で装置の制約を受け、し力も大型装 置を用いて製造する場合には得られるターゲット材の組織が微細かつ均一にならな いといった問題がある。そこで、例えば、複数のターゲット材を用意し、これらの端面 同士を固相拡散接合して表面積が lm2を超えるターゲット材を得る技術 (特許文献 5 参照)や、複数のターゲット材をバッキングプレート上に接合した多分割スパッタリン グターゲット (特許文献 6及び 7参照)等が提案されている。すなわち、スパッタリング ターゲットの大型化は、近時の重要な課題のひとつである。
[0008] 一方、スパッタリング装置でスパッタリングターゲットを使用すると、ターゲット材の表 面が消耗し、次第にターゲット材の表面に凹凸が形成されてくる。このような凹凸は異 常放電等を引き起こしたり、得られる膜の膜厚を不均一にしたりするおそれがある。こ のような状態で更に使用を続けると、ターゲット材とバッキングプレートとの接合面が 露出して、得られる膜に不純物が混入する問題も生じる。そこで、これらの問題を引き 起こす前に、ある程度の余裕を見て、所定の積算時間を目安にして、スパッタリングタ 一ゲットは新たなものに交換される。その際、使用済みのスパッタリングターゲットに つ!、ては、消耗したターゲット材をバッキングプレートから化学的ある 、は機械的な 手段によって剥がし取り、洗浄や研磨等の所定の処理を行った後、新たなターゲット 材をはんだ接合等によって接合することで再度利用することも可能であるが、再利用 するためにはこのような手間やコストがかかることから、破棄してしまう場合も多ぐ残 存するターゲット材ゃ、まだ良好な状態であるバッキングプレートを全て無駄にしてし まうといった別の問題もある。
[0009] ところで、本発明者らは、先の出願において、铸物の表層付近に存在する微細な 空隙ゃ铸物表面の铸物肌に存在する微細な凹凸を除去する方法として、铸物の表 面を摩擦攪拌接合に用いられる回転工具で攪拌する方法 (特許文献 8参照)を提案 しているが、この方法は、铸物の表面における微細空隙を除去する方法である。また 、同じく本発明者らは、先に出願において、融点が互いに異なる金属部材同士を重 ね合わせ、融点の低!、方の金属部材の表面に回転工具を挿入して金属部材を摩擦 攪拌接合する方法 (特許文献 9参照)を提案しているが、この方法は単に金属部材同
士を接合することを課題とするものである。
特許文献 1:特開平 10— 330927号公報
特許文献 2:特開 2000 - 199054号公報
特許文献 3:特開 2001— 262332号公報
特許文献 4:特開 2002— 294440号公報
特許文献 5:特開 2004 - 204253号公報
特許文献 6:特開 2000— 204468号公報
特許文献 7:特開 2000— 328241号公報
特許文献 8:特許第 3346380号公報
特許文献 9:特開 2002— 79383号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] そこで、本発明者らは、スパッタリングにより高品質な膜を形成できるターゲット材を 得ることができ、かつ、ターゲット材とバッキングプレートとの接合の信頼性に優れ、し 力もスパッタリングターゲットの大型化の要請にも対応可能なスパッタリングターゲット の製造方法にっ 、て鋭意検討した結果、ノ ッキングプレートに重ね合わせた金属部 材の表面から回転工具を挿入して摩擦熱を発生させて攪拌することで、金属部材と バッキングプレートとが確実に接合されると共に、金属部材が改質されて微細な結晶 粒径を有するターゲット材を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
[0011] 上記方法を用いれば、微細な結晶粒径の結晶組織を有する改質金属部材がプレ 一ト材に貼り合わされるように接合された金属二層構造体を得ることができ、上述した ようなスパッタリングターゲットを含む各種半導体電子材料用部材のほか、この金属 二層構造体は、改質金属部材を微細結晶粒組織に起因する表面処理を施した高耐 食性部材として使用する建材用パネルや輸送機器用外板、あるいは、改質金属部 材を微細結晶粒組織に起因する高延性部材として使用する高成形板材等としても利 用できる。
[0012] したがって、本発明の目的は、微細結晶粒径を有した改質金属部材がプレート材 に信頼性良く接合されてなり、特に、高品質の膜を形成するのに適したターゲット材
力 Sバッキングプレートに信頼性良く接合されてスパッタリングターゲットとして好適な金 属ニ層構造体の製造方法を提供することにある。
[0013] また、本発明の別の目的は、微細な結晶粒径を有した改質金属部材がプレート材 に信頼性良く接合されてなり、特に、高品質の膜を形成するのに適したターゲット材 力 Sバッキングプレートに信頼性良く接合されてスパッタリングターゲットとして好適な金 属ニ層構造体を提供することにある。
[0014] 更に、本発明の別の目的は、上記金属二層構造体の製造方法を用いて、使用済 みのスパッタリングターゲットを有効利用して、簡便に、かつ、良質なターゲット材を備 えたスパッタリングターゲットに再生することができるスパッタリングターゲットの再生方 法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0015] すなわち、本発明は、平板状の金属部材が改質されてなる改質金属部材がプレー ト材に貼り合わされるように接合された金属二層構造体の製造方法であって、プレー ト材と金属部材とを重ね合わせ、回転子とこの回転子の底面力 突出したプローブと を有する回転工具を、回転させながら金属部材の表面力 挿入し、金属部材とプレ ート材との重ね合わせ面付近に上記プローブの先端を到達させて摩擦熱を発生させ 攪拌すると共に、金属部材の表面に互いに隣接した移動軌跡を形成するように回転 工具を移動させて、上記重ね合わせ面に沿って攪拌域を形成して金属部材とプレー ト材とを接合させると共に、金属部材を改質金属部材に改質することを特徴とする金 属ニ層構造体の製造方法である。
[0016] また、本発明は、平板状の金属部材が改質されてなる改質金属部材がプレート材 に貼り合わされるように接合された金属二層構造体であって、プレート材と金属部材 とを重ね合わせ、回転子とこの回転子の底面力 突出したプローブとを有する回転ェ 具を、回転させながら金属部材の表面力 挿入し、金属部材とプレート材との重ね合 わせ面付近に上記プローブの先端が到達させて摩擦熱を発生させ攪拌すると共に、 金属部材の表面に互いに隣接した移動軌跡を形成するように回転工具を移動させ て、上記重ね合わせ面に沿って攪拌域を形成して金属部材とプレート材とが接合さ れると共に、金属部材が改質金属部材に改質されたものであることを特徴とする金属
二層構造体である。
[0017] 更に、本発明は、使用済みスパッタリングターゲットに平板状の金属部材を改質し て得た改質金属部材力 なるターゲット材を貼り合わせるように接合してスパッタリン グターゲットを再生する方法であって、使用済みスパッタリングターゲットの表面を切 削又は研磨して再生基準面を形成し、この再生基準面に金属部材を重ね合わせ、 回転子とこの回転子の底面力 突出したプローブとを有する回転工具を回転させな がら金属部材の表面から挿入し、上記再生基準面付近に上記プローブの先端を到 達させて摩擦熱を発生させ攪拌すると共に、金属部材の表面に互いに隣接した移動 軌跡を形成するように回転工具を移動させて、上記再生基準面に沿って攪拌域を形 成して金属部材を再生基準面に接合させると共に、金属部材を改質金属部材に改 質することを特徴とするスパッタリングターゲットの再生方法である。
[0018] 以下、本発明における金属二層構造体の好適な例であるスパッタリングターゲット、 すなわち、改質金属部材力 なるターゲット材がバッキングプレート (プレート材)に貼 り合わされるように接合されてなるスパッタリングターゲットを製造する場合を例にして 説明する。尚、本発明の金属二層構造体は、スパッタリングターゲット以外の用途に も適用できるため、これに限定されるものではない。
[0019] 本発明において、回転子とこの回転子の底面力 突出したプローブとを有する回転 工具を回転させながら金属部材の表面力も挿入して金属部材とバッキングプレートと の重ね合わせ面付近に上記プローブの先端を到達させることで、この回転工具の運 動により摩擦熱が発生して金属部材が軟化し、摩擦攪拌によって攪拌域が形成され る。そして、この回転工具を回転させた状態のまま、金属部材の表面における所定の 平面領域内で互いに隣接した移動軌跡を形成するように移動させる。これにより、金 属部材とバッキングプレートとの重ね合わせ面に沿って攪拌域が形成され、この攪拌 域による固相接合によって金属部材とバッキングプレートとが接合されると共に、金属 部材の攪拌域が改質されて改質金属部材が得られる。回転工具の移動軌跡が金属 部材の表面にぉ 、て所定の平面領域内で互いに隣接するように回転工具を移動さ せれば、回転工具の移動軌跡を追従するようにその軌跡に沿って形成された攪拌域 が互いに隣接した状態で得られることから、金属部材とバッキングプレートとが確実に
接合されると共に、金属部材の改質を金属部材の所定の平面領域内で確実に行うこ とができる。この金属部材とバッキングプレートとの接合は、回転工具によって形成さ れた攪拌域による固相接合によるものであるため、接合部分は加工組織となり、引け 、ブローホールといった溶融溶接特有の欠陥等を生じることない。また、金属部材と ノ ッキングプレートとが直接接合するため、はんだ接合のように接合面に低融点層を 形成する必要がないことから、温度上昇によって金属部材とバッキングプレートとがは がれるようなおそれがなぐまた、金属部材とバッキングプレートとの熱伝導性が阻害 されるおそれもない。
[0020] 金属部材とバッキングプレートとの重ね合わせ面に沿って形成される攪拌域につい ては、重ね合わせ面を挟んで金属部材側とバッキングプレート側の両方にまたがるよ うに形成して、摩擦攪拌接合によって金属部材とバッキングプレートとを接合してもよ ぐまた、改質金属部材にバッキングプレートの成分が混入することを防ぐ観点から、 金属部材側のみに攪拌域を形成して、この攪拌域が重ね合わせ面に達するようにし て接合してもよい。
[0021] 回転工具の移動については、金属部材の表面の所定の平面領域内で互いに隣接 した移動軌跡が形成されるようにするものであればよぐ例えば直線移動を幾度カゝ繰 り返すようにして移動軌跡を形成してもよ 、が、好ましくは所定の平面領域内で Uタ ーンや、直角又は任意の角度のターンを含みつつ移動軌跡が互いに隣接するように 回転工具を連続移動させるのがよい。このような連続移動によれば、回転工具の抜き 差しの回数を最小限にして、金属部材の改質をより均一に行うことができると共に、金 属部材の表面に形成される回転工具の抜き穴の数をできるだけ少なくさせることがで きる。また、隣接する回転工具の移動軌跡については、金属部材の改質をより確実 に行うことができる観点から、好ましくは互いに重複する部分を有するようにするのが よぐ更に好ましくは、プローブの先端部分における重なりが 0. 5mn!〜 2. Ommとな るようにして移動軌跡を形成するのがよ 、。
[0022] 本発明において、回転工具により形成される攪拌域は塑性流動によって形成され るものであり、回転工具による攪拌の際には動的再結晶が起こり、また、回転工具が 移動した後にはその余熱によって静的再結晶が起こると考えられる。そのため、回転
工具によって攪拌域を形成した金属部材は、微細な結晶粒径を有する微細結晶組 織となって改質され、改質金属部材を得ることができる。このようにして得た改質金属 部材をターゲット材として用いてスパッタリングを行えば、パーティクルゃスプラッシュ の発生を防止することができる。また、金属部材が铸造材ゃ圧延材であった場合に 含まれる成分偏析についても、上記のような塑性流動によって解消することができる ため、成分組成や金属組織が均一な改質金属部材を得ることができ、スパッタリング により均一な成分を有する膜を形成することができる。更には、上記塑性流動によつ て微細結晶組織の再結晶粒がランダムな方位を持つようになるため、金属部材の結 晶の異方性が解消されて、スパッタリングにより均一な膜厚を有する膜を形成すること ができる。これらの効果をより一層向上させる観点から、好ましくは、 20 m以下の結 晶粒径を有する微細結晶組織力もなる改質金属部材を得るようにするのがよ 、。尚、 改質金属部材の粒径を確認する方法としては、例えば実施例にて説明するクロス力 ット法を挙げることができる。
[0023] 本発明にお ヽて、平板状の金属部材としては铸造材、圧延材、鍛造材、押出材等 力もなるものを用いることができ、これら金属部材の材質としてはアルミニウム、チタン 、銀及びそれらの合金力もなるもの等を挙げることができ、好ましくはアルミニウム又 はアルミニウム合金であるのがよ 、。アルミニウム又はアルミニウム合金は電気伝導 度が高いことから、高電気伝導性が求められる膜の材料として好適であり、また、融 点が比較的低 、ことから、 300〜500°C程度の軟ィ匕温度で金属部材とバッキングプ レートとを接合することができると共に、改質金属部材を得ることができる。
[0024] また、バッキングプレートについては、一般にスパッタリングターゲットを形成するバ ッキングターゲットを用いることができ、通常のバッキングプレートと同様に、熱媒体を 流すための管路ゃスパッタリング装置に取り付けるためのねじ穴、フランジ等を備え ていてもよい。このバッキングプレートの材質については、熱伝導が良好であることか ら銅、アルミニウム又はアルミニウム合金であるのが好まし!/、。
[0025] 本発明において使用する回転工具については、摩擦攪拌接合で一般的に用いら れるものを使用することができる。具体的には、回転子とこの回転子の底面の中心か ら突出したプローブとを有するような回転工具であるのが好ましい。このプローブにつ
いては、その外周側面に沿ってねじ山や凹凸等を設けるようにしてもよぐまた、プロ ーブの先端については、凹凸を設けたり格子状にしたりしてもよぐ先端の平面形状 を円形や四角形、五角形、六角形等の多角形にしてもよい。一方、回転子の形状に ついては例えば円柱状、円錐状等であってもよぐまた、その底面の周縁からプロ一 ブの基端部に向けて渦巻き状の凸条部を設けるようにしてもよい。
[0026] このような回転工具を金属部材の表面力 挿入する際には、回転子の底面が金属 部材の表面に接するように、すなわち、回転子の底面を金属部材に当接するように するのが好ましぐ更に好ましくは回転子の底面が金属部材の表面に 0. 5〜: Lmm程 度埋め込まれるようにするのがよ 、。回転子の底面が金属部材の表面に接するように して回転させることで、金属部材の表面に確実に攪拌域を形成することができる。ま た、金属部材とバッキングプレートとの重ね合わせ面付近に到達させるプローブの先 端については、この重ね合わせ面を境に ± 1. Omm程度の位置に達するようにする のがよい。攪拌域を形成する際にバッキングプレートの成分が改質金属部材側に混 入してターゲット材に不純物が含まれるおそれを防止する観点から、好ましくは重ね 合わせ面との間に所定の間隔を有するように挿入するのがよぐ更に好ましくは、金 属部材やバッキングプレートの材質によっても異なる力 プローブの先端と重ね合わ せ面との間隔が 0. 1〜0. 5mm程度とするのがよい。
[0027] プローブの長さと金属部材の厚みとの関係については、金属部材の材質によって も異なるが、一般的には、プローブの長さが金属部材の厚みより 0. 5〜: Lmm程度短 くするのがよい。通常、回転工具は金属部材の表面に 0. 5mm程度は埋め込まれる ようにすることから、プローブの長さと金属部材の厚みとの差が 0. 5mmより少ないと、 プローブの先端力 Sバッキングプレート側に達して回転工具による攪拌作用に差が生 じてしまうおそれがあり、また、改質金属部材にバッキングプレートの成分が混入する おそれもある。
[0028] また、上記回転工具の回転速度や移動速度については、金属部材の材質によって も異なるが、例えば金属部材がアルミニウム又はアルミニウム合金力 なる場合、好ま しくは回転工具の移動速度 Aに対する回転子の底面の周速 Bの比(BZA)が 70〜3 70の範囲であるのがよぐまた、好ましくは回転工具の移動速度 Aに対するプローブ
の周速 Cの比(C/A)が 30〜90の範囲であるのがよい。上記 BZAが 70より小さぐ 又は CZAが 30より小さい場合には、回転工具の移動速度の方が回転工具の回転 速度より速くなりすぎて回転工具の周囲の軟ィ匕が遅れてしまうと共に、トルクが増大し て回転工具に負荷がかかり、加工ムラによって攪拌域にトンネル欠陥等が生じるおそ れがあり、場合によっては回転工具が停止してしまう。反対に、上記 BZAが 370より 大きぐ又は CZAが 90より大きい場合には、回転工具の移動速度が遅くなり、攪拌 域の温度が上昇し過ぎてバリが発生するおそれがある。
[0029] 本発明によって得た、ノ ッキングプレートに改質金属部材カもなるターゲット材が接 合されたスパッタリングターゲットにつ 、ては、好ましくは金属部材を改質して改質金 属部材を得た後に焼鈍を行うのがよい。金属部材とバッキングプレートとを上記のよう な方法で接合して得たスパッタリングターゲットには、回転工具の摩擦攪拌による加 熱や冷却による残留応力が存在している可能性もある。このような応力が残っている と、スパッタリングによる成膜の際の加熱により、スパッタリングターゲットに歪が生じる ことも考えられ得る。そこで、この残留応力を緩和させる目的で、得られたスパッタリン グターゲットを焼鈍するのが好ましい。また、回転工具により形成される攪拌域では塑 性流動により結晶配向が変化するため、得られた改質金属部材の表面には、回転ェ 具の移動軌跡に沿って攪拌痕が形成される。そこで、上記のような焼鈍を行うこと〖こ よって、再結晶化を促進させ結晶配向を一部緩和されて攪拌痕を消去することもでき る。このような焼鈍の条件については、金属部材の材質等にもよるが、金属部材がァ ルミ-ゥム又はアルミニウム合金力もなる場合には、温度 150〜350°C、及び時間 lh 〜4hの条件で行なうのがよ!/、。
[0030] また、上記スパッタリングターゲットの製造方法を利用して、使用済みスパッタリング ターゲットを再利用して新たなスパッタリングターゲットを得ることができる。ここで、使 用済みスパッタリングターゲットとは、スパッタリング装置において使用されて、交換時 期の目安とされる所定の積算時間に達して、当初の使用予定時間まで使用続けたも ののほか、使用の途中に何らかの原因でターゲット材の表面に傷を付けてしまい、そ のままの状態では使用できなくなってしまったもの、あるいは、スパッタリングターゲッ トを製造した際にターゲット材が規格寸法を満たさず不良品として判断されたもの等
の全てを含めて呼ぶものとする。
[0031] 本発明における再生方法では、上記のような使用済みスパッタリングターゲットの表 面を機械加工による切削や研磨等によって平坦にして再生基準面を形成し、この再 生基準面に上記で説明したような金属部材を重ね合わせる。そして、上記で説明し たように、回転子とこの回転子の底面力 突出したプローブとを有する回転工具を金 属部材の表面力 挿入し、再生基準面付近に上記プローブの先端を到達させて摩 擦熱を発生させ攪拌すると共に、この回転工具を金属部材の所定の平面領域内で 互いに隣接した移動軌跡を形成するように移動させ、再生基準面に沿って攪拌域を 形成して金属部材を再生基準面に接合させると共に、金属部材を改質して改質金属 部材を得る。このようにして得られた改質金属部材は、上記で説明したものと同様に 、良質な膜を形成することができるターゲット材として使用でき、また、再生基準面に 対して確実に接合されることから、新たにスパッタリングターゲットとして再び使用する ことができる。
[0032] 上記再生基準面が、使用済みスパッタリングターゲットが予め備えていた使用済み ターゲット材の一部によって形成される場合、すなわち、再生する使用済みスパッタリ ングターゲットには、予め備えられていた使用済みターゲット材がある程度の厚みで 残っており、その表面を切削又は研磨した後にも元のターゲット材 (使用済みターゲ ット材)が残存して再生基準面を形成する場合には、攪拌域が再生基準面を挟んで 金属部材と使用済みターゲット材との両方にまたがり形成されるようにするのが好まし い。攪拌域が再生基準面をまたがり両方に形成されることにより、金属部材が再生基 準面に対してより確実に接合されると共に、研磨によって形成された再生基準面に存 在するおそれのある微小空隙や酸ィ匕皮膜を、塑性流動により消滅させることができる 。この際に使用する金属部材については、使用済みスパッタリングターゲットの元のタ ーゲット材と同じ材質のものを選択すれば、再生前後でのターゲット材の品質差を最 小限にすることができる。
ここで、回転工具を挿入する際には、回転子の底面が金属部材の表面に接すると 共に、プローブの先端が使用済みターゲット材に直接接触するように挿入するのが 好ましい。
[0033] 本発明における金属二層構造体は、上述したようなスパッタリングターゲットを含む 各種半導体電子材料用部材のほか、改質金属部材を均質な微細結晶粒組織に起 因する表面処理を施した高耐食性部材として使用し、この高耐食性部材がプレート 材 (高強度材料や優れた強度を有した材料)に接合されてなる高耐食性の建材用パ ネルや輸送機器用外板、あるいは、改質金属部材を微細結晶粒組織に起因する高 延性部材として使用し、この高延性部材がプレート材に接合されてなる高成形性板 材等の用途で使用することができる。このうち、建材用パネルや輸送機器用外板の 場合には、金属部材として、上記スパッタリングターゲットの場合で説明した以外に鉄 、銅等を用いることができ、好ましくは表面処理性の観点力もアルミニウム又はアルミ -ゥム合金であるのがよい。また、プレート材については、同様に、建材用パネルや 輸送機器用外板の場合には、上述した以外に鉄、チタン等を用いることもできる。一 方、高成形性板材の場合には、金属部材として上述した種々の材料を用いることが でき、プレート材についても上述した種々の材料を用いることができる。
発明の効果
[0034] 本発明によれば、金属部材をプレート材に接合すると共に、この金属部材を改質し てスパッタリングターゲットのターゲット材等として好適な改質金属部材を得ることがで きること力ら、例えば、スパッタリングターゲットの製造工程が従来の方法と比べて格 段に簡略化でき、コストを抑えてスパッタリングターゲットを製造することができる。特 に、この製造方法によれば、回転工具を用いてプレート材に金属部材を接合しなが ら、金属部材を改質金属部材に改質するため、これまでの装置上の制約や金属組織 等が均一にならないといったターゲット材の大型化が困難であった理由を解消するこ とができ、大型のスパッタリングターゲットを製造するのにも好適である。
[0035] また、本発明の製造方法によって得られた金属二層構造体は、微細な結晶粒を有 する微細結晶組織からなる改質金属部材が形成されて ヽるため、例えばスパッタリン グターゲットとして用いてガラス基板等に成膜をしても、パーティクルの発生やスプラ ッシュ現象を防止することができ、しかも、この改質金属部材は、金属部材が有する 成分偏祈が解消されて均一な成分組成や金属組織を有することから、得られる膜の 成分も均一となり、更には、金属部材の結晶の異方性が解消されて微細結晶組織の
再結晶粒がランダムな方位を有して ヽることから、均一な膜厚の膜を形成することが できる。また、この金属二層構造体は、改質金属部材とプレート材とが直接接合して いるため、例えばスパッタリングターゲットとして用いてそれ自体が加熱されても、歪 みを生じて改質金属部材が剥がれ落ちるおそれがなぐ更には改質金属部材とプレ ート材との熱伝導性も良好な状態で維持できる。
[0036] 更には、上記製造方法を用いれば、簡便な方法かつ低コストで使用済みスパッタリ ングターゲットを新たなスパッタリングターゲットに再生することができ、し力も、再生し たスパッタリングターゲットは、スパッタリングにより高品質の膜を形成することができる ため、これまで健全な状態で廃棄されて 、たバッキングプレートや完全に使 、切らな V、で廃棄されて!ヽたターゲット材を有効利用することができ、リサイクルの観点からも 有益な再生方法である。
図面の簡単な説明
[0037] [図 1]図 1は、本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法において、バッキング プレートに重ね合わせた金属部材の表面から回転工具を挿入して移動させる様子を 示す斜視説明図である。
[図 2]図 2は、金属部材に挿入された回転工具の状態を示す断面説明図(図 1におけ る A-A'断面図)である。
[図 3]図 3 (A)は回転工具の側面説明図、図 3 (B)は回転工具の底面説明図、図 3 ( C)は )における B— B'断面説明図である。
[図 4]図 4 (A)は、本発明における金属部材の表面における回転工具の移動の一形 態を示す平面説明図であり、図 4 (B)は (A)における C— C'断面図である。
[図 5]図 5 (A)〜(D)は、金属部材の表面における回転工具の移動の異なる形態を 示す平面説明図である。
[図 6]図 6は、使用済みスパッタリングターゲットの断面説明図である。
[図 7]図 7は、使用済みターゲット材に形成した再生基準面 12に金属部材を重ね合 わせ、この金属部材の表面力 回転工具を挿入した状態を示す断面説明図である。
[図 8]図 8は、金属部材の焼鈍後の攪拌域の偏光顕微鏡写真である。図 8 (A)は回転 速度 1400rpm、移動速度 300mmZminで摩擦攪拌した直後(焼鈍無し)の攪拌域
、図 8 (B)は回転数 1400rpm、移動速度 100mmZmin、焼鈍温度 200°C、焼鈍時 間 2時間の場合、図 8 (C)は 1400rpm、 300mm/min, 200°C、 2時間の場合、図 8 (D)は 1400rpm、 600mm/min, 200。C、 2時間の場合、及び図 8 (E)は 1400r pm、 lOOmm/min, 300°C、 2時間の場合のものである。
符号の説明
[0038] 1:バッキングプレート、 2:金属部材、 3:回転工具、 4:回転子、 5:回転子の底面、 5a :凸条部、 6:プローブ、 6a:ねじ山、 7 :重ね合わせ面、 8 :攪拌域、 8a:攪拌域の重複 部、 9 :改質金属部材、 10 :使用済みスパッタリングターゲット、 11 :使用済みターゲッ ト材、 11a:表面凹凸、 12 :再生基準面
発明を実施するための最良の形態
[0039] 以下に、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。尚、以下では金属二 層構造体の好適な用途のひとつであるスノッタリングターゲットについて説明するが 、本発明はこれに限定されるものではない。
[0040] [スパッタリングターゲットの製造]
図 1は、本発明の金属二層構造体の製造方法において、ノ ッキングプレート (プレ 一ト材) 1に重ね合わせた金属部材 2の表面から回転工具 3を挿入して移動させる様 子を示す斜視説明図であり、図 2は、金属部材 2に挿入された回転工具 3の状態を示 す断面図(図 1における A-A'断面図)である。先ず、図 1に示すように、バッキングプ レート 1の所定の位置に平板状の金属部材 2を重ね合わせる。このバッキングプレー ト 1及び金属部材 2の大きさやサイズについては、膜を形成する対象の基板等の大き さや形状に応じてそれぞれ適宜設計することができる。この実施の形態では、平面が 正方形のバッキングプレート 1及び金属部材 2を記している力 例えばこれらは長方 形等の矩形、多角形、円形等の平面を有するものであってもよい。
[0041] 次に、円柱状の回転子 4とこの回転子 4の底面 5の中心から同軸心で突出するプロ ーブ 6とを有した回転工具 3を、 300〜1500rpmの回転数で回転させ、かつ、その軸 心に沿って 1. 5〜15kNの押し込み力を金属部材 2の表面に加えて、回転子 4の底 面 5が金属部材 2の表面に x=0. 5〜 1.0mm程度埋め込まれるように、バッキングプ レート 1に重ね合わせた金属部材 2の表面力 挿入する。この際、プローブ 6の先端
が金属部材 2とバッキングプレート 1との重ね合わせ面 7との間に y=0. 1〜0. 5mm 程度の間隔を有するようにする。この回転工具 3については、図示外の回転駆動部 に接続されており、回転子 4とプローブ 6とが一体となって回転することができ、また、 同じく図示外の X— Y操作軸に接続されて金属部材 2の平面領域を自由に移動させ ることができる。更に、図 3 (A)〜(C)に示すように、プローブ 6の外周側面にはねじ 山 6aが設けられていると共に、回転子 4の底面 5にはその周縁からプローブ 6の基端 部に向けた渦巻き状の凸条部 5 aが設けられて 、る。
[0042] 回転工具 3が挿入された金属部材 2は、回転工具 3の周囲が摩擦熱により軟化して 固相状態で攪拌され、塑性流動領域カゝらなる攪拌域 8が形成される。この攪拌域 8に ついては、金属部材 2及びバッキングプレート 1の材質や厚み等を考慮して回転子 4 の直径 D、プローブ 6の直径 d及び長さ Lを適宜設計し、また、回転工具 3の回転速度 や移動速度を適宜設定して、重ね合わせ面 7に接するように或 、は接する直前まで 形成する。
[0043] そして、回転工具 3を、上記の状態に保ったまま、金属部材 2の所定の平面領域内 に互いに隣接した移動軌跡を形成するように速度 200〜1000mmZminで移動さ せる。図 4 (A)は、この回転工具 3の移動の一形態を示す平面図である。図 4 (A)に 示すように、金属部材 2の正方形の平面にぉ 、て角部付近(図中では左上隅付近) に回転する回転工具 3を配置し、プローブ 6を金属部材 2の表面力 垂直に挿入する と共に、回転子 4の底面 5を金属部材 2の表面に対し押圧しつつ接触させる。この際 、上記で説明したように、回転工具 3の周囲の金属部材 2には摩擦熱が発生して攪 拌域 8が形成される。次に、この回転工具 3を時計回り方向に回転させた状態で、金 属部材 2の一辺に沿って直線移動させる(図中に記した矢印方向)。この状態で回転 工具 3が出発地点と反対側の他端付近 (図中では右上隅付近)に達したところで、こ の回転工具 3を金属部材 2の表面に対して垂直状態で時計回り方向に回転させたま ま Uターンさせる。 Uターンさせた回転工具 3は、出発地点側の金属部材 2の一端に 向けて直線移動させる。この際、 Uターンさせる直前の回転工具 3が移動した軌跡に 一部が重複するようにして、回転工具 3の移動軌跡に沿って形成される攪拌域 8を互 いに一部重複させる。回転工具 3が出発地点側の一端に近づいたところで、先ほどと
同様に Uターンさせ、直前に回転工具 3が移動してきた軌跡に一部重複させるように 回転工具 3を逆方向に向けて直線移動させる。このような直線移動と Uターンとを交 互に繰り返して、金属部材 2のほぼ全面に攪拌域 8を形成し、回転工具 3が最後の角 部付近(図中では左下隅付近)に達したところで、金属部材 2の表面から回転工具 3 を抜き取る。尚、回転工具 3を金属部材 2の表面に挿入する際には、プローブ 6の軸 心を移動方向と反対側に数 ° 傾斜させ、この状態で回転工具 3を移動させるようにし てもよい。
[0044] 図 4 (B)は、回転工具 3を移動させて金属部材 2の表面のほぼ全面に互いに隣接し た移動軌跡を形成した後の C C'断面図を示す。上記回転工具 3の移動によって、 重ね合わせ面 7に沿ってほぼ全域に攪拌域 8が形成されており、その一部は重複部 8aからなり、金属部材 2とバッキングプレート 1とが固相接合によって接合される。また 、この金属部材 2については、上記攪拌域 8が回転工具 3による攪拌によって動的再 結晶が起こると共に、回転工具 3が移動した後にはその余熱によって静的再結晶が 起こること力ら、微細な結晶粒径を有する微細結晶組織となって改質され、改質金属 部材 9となる。この改質金属部材 9についてはスパッタリングによる成膜の際のターゲ ット材となるため、金属部材 2に形成する攪拌域 8の大きさや形状については、膜を 形成する基板等のサイズや形状等に応じて適宜設計することができる。また、必要に より改質金属部材 9の表面を研磨したり、鏡面加工等を行ってもよい。
[0045] また、図 5は、回転工具 3の異なる移動パターンを示す。図 5 (A)は、金属部材 2の 表面の中央付近に回転工具 3を挿入し、これを出発点にして金属部材 2の各辺に沿 つて直線移動と直角に曲がる Lターンとを交互に繰り返して回転工具 3の移動軌跡を 略矩形にして攪拌域 8を形成し、かつ、互いに隣接する移動軌跡の一部重複させる ようにして攪拌域 8に重複部 8aを設けるようにして、金属部材 2のひとつの角部付近( 図中では左下隅付近)で回転工具 3を抜 、たものである。
図 5 (B)は、金属部材 2の表面の中央付近に回転工具 3を挿入し、これを出発点に して金属部材 2の各辺に沿って直線移動と直角に曲がる Lターンとを交互に繰り返す と共に、途中に Uターンを含めて移動させて攪拌域 8を形成し、かつ、互いに隣接す る移動軌跡の一部重複させるようにして攪拌域 8に重複部 8aを設けるようにして、金
属部材 2の角部付近(図中では左下隅付近)で回転工具 3を抜 、たものである。
[0046] 更に、図 5 (C)は、金属部材 2のひとつの角部付近(図中では左上隅付近)に回転 工具 3を挿入し、金属部材 2の一辺に沿って直線移動させて回転工具 3が出発地点 と反対側の他端付近(図中では右上隅付近)に達したところで一度この回転工具 3を 抜き取り、直前に形成した移動軌跡と一部が重複するように、上記出発地点から下が つたところに再び回転工具 3を挿入し、上記と同様に直線移動させる。このような直線 移動と回転工具 3の抜き差しを繰り返して隣接する移動軌跡の一部を重複させて、重 複部 8aを有する攪拌域 8を金属部材 2の表面のほぼ全面に形成する。
更にまた、図 5 (D)は、金属部材 2のひとつの角部付近(図中では左下隅付近)に 回転工具 3を挿入し、これを出発点として金属部材 2の中心部に向けて回転工具 3を 渦巻状に移動させ、回転工具 3の移動軌跡を同心円に近似した渦巻状にして重複 部 8aを有する攪拌域 8を形成する。
[0047] 以上のように、バッキングプレート 1に金属部材 2を重ね合わせ、回転工具 3を金属 部材 2の表面力も金属部材 2とバッキングプレート 1との重ね合わせ面 7付近まで挿入 して摩擦熱を発生させ攪拌し、この回転工具 3を金属部材 2の表面の所定の平面領 域内で互いに隣接した移動軌跡を形成するように移動させて重ね合わせ面 7に沿つ て攪拌域 8を形成することで、金属部材 2とバッキングプレート 1とが固相接合すると 共に、金属部材 2が改質されて改質金属部材 9となることから、この改質金属部材 9を ターゲット材としたスパッタリングターゲット Xを得ることができる。このスパッタリングタ 一ゲット Xは、必要により温度 150〜350°Cで 1〜4時間程度の焼鈍を行ってもよぐ また、洗浄処理等を行ってもよぐ更には、改質金属部材 9の周縁部を処理し、ター ゲット材として所定の形状となるように機械加工等を行ってもょ 、。
[0048] 上記によって得られたスパッタリングターゲット Xは、微細な結晶粒を有する微細結 晶組織力もなる改質金属部材 9がターゲット材を形成して 、ることから、スパッタリング により成膜を行ってもパーティクルの発生ゃスプラッシュ現象を防止することができ、 しかも、この改質金属部材 9は、金属部材 2が有する可能性のある成分偏析も解消さ れて均一な成分組成や金属組織を有することから、得られる膜の成分も均一となる。 更には、金属部材 2の結晶の異方性が解消されて微細結晶組織の再結晶粒がラン
ダムな方位を有していることから、均一な膜厚の膜を形成することができる。また、こ のスパッタリングターゲット Xは、改質金属部材 9をターゲット材とするため、このター ゲット材とバッキングプレート 1とが直接接合しており、スパッタリングターゲット Xをス ノ ッタリング装置で使用して加熱されても歪みを生じてターゲット材が剥がれ落ちる おそれがなぐまた、ターゲット材とバッキングプレート 1との熱伝導性においても優れ る。
[0049] [使用済みスパッタリングターゲットの再生]
図 6は、スパッタリング装置にて所定の積算時間使用して当初の使用寿命を全うし た使用済みスパッタリングターゲット 10の断面説明図を示す。この使用済みスパッタリ ングターゲット 10は使用済みターゲット材 11がバッキングプレート 1に接合されてなる 力 この使用済みターゲット材 11は消耗によって所々に凹凸が形成された表面凹凸 11aを有している。
[0050] 先ず、この使用済みターゲット材 11の表面を研磨又は機械カ卩ェにより切削し、表面 凹凸 11aを含まない位置に再生基準面 12 (図中破線で表記)を形成する。次いで、 図 7に示すように、この使用済みターゲット材 11に形成した再生基準面 12に平板状 の金属部材 2を重ね合わせる。この金属部材 2は、使用済みターゲット材 11と同じ材 質からなると共に、その大きさや平面形状は使用済みターゲット材 11と同一である。 更に、回転工具 3を、 300〜1500rpmの回転数で回転させ、かつ、その軸心に沿つ て 1. 5〜15kNの押し込み力を金属部材 2の表面にカ卩えて、回転子 4の底面 5が金 属部材 2の表面に x=0. 5〜1. Omm程度埋め込まれるように、金属部材 2の表面か ら挿入する。この際、プローブ 6の先端が使用済みターゲット材 11に直接接するよう にする。この回転工具 3が挿入された金属部材 2は、回転工具 3の周囲が摩擦熱によ り軟化して固相状態で攪拌され、塑性流動領域からなる攪拌域 8が形成される。
[0051] そして、回転工具 3を、上記の状態に保ったまま、金属部材 2の所定の平面領域内 に互いに隣接した移動軌跡を形成するように速度 200〜1000mmZminで移動さ せ、再生基準面 12に沿って攪拌域 8を形成し、金属部材 2と使用済みターゲット材 1 1とを接合させると共に、この金属部材 2を改質して改質金属部材を得る。回転工具 3 の移動パターン等については、先に説明したスパッタリングターゲット Xの製造と同様
にすればよい。これにより使用済みスパッタリングターゲット 10を利用して新たな再生 スパッタリングターゲットを製造することができ、得られた再生スパッタリングターゲット については、必要により、上記と同様に、改質金属部材 9の表面研磨や鏡面加工等 を施してもよぐまた、焼鈍や洗浄処理等を行ってもよぐ更には、改質金属部材 9の 周縁部を処理し、ターゲット材として所定の形状に機械加工等を行ってもょ ヽ。
[0052] 上記再生方法によって得た再生スパッタリングターゲットは、金属部材 2を改質して 得た改質金属部材 9をターゲット材とするため、先の説明と同様に、スパッタリングに より成膜を行ってもパーティクルの発生ゃスプラッシュ現象を防止することができると 共に、得られる膜の成分や膜厚が均一な良質な膜を得ることができる。また、この再 生したスパッタリングターゲットは、改質金属部材 9が使用済みターゲット材 11と同じ 材質であるため、再生前後でのターゲット材の品質差がほとんどなぐ再生後のスパ ッタリングターゲットをスパッタリングで使用する際には、改質金属部材 9からなるター ゲット材力 使用済みターゲット材 11まで連続して使用することができる。更には、改 質金属部材 9からなるターゲット材と使用済みターゲット材 11とが直接接合しているこ とから、熱による歪の発生がなぐ熱伝導性の点でも優れる。
[0053] 以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
実施例 1
[0054] [回転工具による加工条件の選択]
99. 99%アルミニウム力もなる金属部材(厚さ 10mm、幅 100mm、長さ 300mm) の表面に表 1に示す回転工具 I及び回転工具 IIを回転させた状態で挿入し、回転ェ 具 I及び Πを長さ方向に沿って直線移動させ、摩擦攪拌を行って攪拌域を形成してこ の攪拌域について評価した。なお、回転工具を挿入する際には、その軸心に沿って 回転工具 Iでは 1. 8kN、回転工具 IIでは 7kNの押し込み力を金属部材の表面にカロ えるようにし、また、回転工具 I、 IIの回転子の底面は金属部材の表面に 0. 5mm程度 埋め込まれるようにした。上記回転工具 I及び IIは、いずれもその材質は SKD61から なる。
[0055] [表 1]
回転子底面の直径 プローブの直径 プローブの長さ 材質
D (m ) d (mm; L (mm; 回転工具 I SKD6 1 1 5 6 6 回転工具 I I SKD61 3 0 1 0 6
[0056] 回転工具 I及び IIを用い、表 2に記した回転数及び移動速度の条件でそれぞれ摩 擦攪拌して攪拌域を形成し、金属部材の表面部分に表れた攪拌域の外観を目視に て評価した。評価は、〇:外観良好、△:バリが発生している、 X:トンネル欠陥が発 生している、 X X:回転工具が停止した、の 4段階で行った。結果を表 2に示す。
[0057] [表 2]
ぐ表の見方 > 回転数と移動速度とが交わる欄について
•上段は摩擦攪拌による攪拌域の外観評価である。
〇:良好、 △:バリの発生有り、 X :欠陥発生、 X X :回転工具停止
(例えば回転工具 Iを 700回転で移動速度 100mm/minで移動させた場合は 「x」 ) ' 中段の数値は、 回転工具の移動速度 Aに対する回転子の底面の周速 Bの比 (B Z A) を表す。
(例えば回転工具 Iを 700回転で移動速度 lOOmm/minで移動させた場合は 「330」 ) -下段の数値は、 回転工具の移動速度 Aに対するプローブ周速 Cの比 (C 7A) を表 す。
(例えば回転工具 Iを 700回転で移動速度 lOOmm/minで移動させた場合は 「132」 ) 回転工具 Iと回転工具 IIによって、それぞれ良好な攪拌域が形成される回転数及び 移動速度の条件は異なるが、移動速度 Aに対する回転子の底面の周速 Bの比(BZ A)や移動速度 Aに対するプローブ周速 Cの比(CZA)を用いれば、回転工具の形 状によらず同一の指標で評価することができる。すなわち、本発明者らは、上記表 2 の結果を含め、その他多数実施した実験から、移動速度 Aに対する回転子の底面の 周速 Bの比(BZA)が 70〜370の範囲であり、又は回転工具の移動速度 Aに対する プローブ周速 Cの比(CZA)が 30〜90の範囲であれば、バリの発生やトンネル欠陥
がなぐかつ、加工ムラのない攪拌域を形成することができ、金属部材を改質して得 た改質金属部材をターゲット材として用いる上で支障がないこと見出した。
[0059] [金属部材の改質化の確認]
上記回転工具 Iを 1400rpmで回転させた場合に得られた金属部材の攪拌域にお ける結晶粒径を測定した。測定にはホウフッ酸水溶液中で上記金属部材をアルマイ ト処理し、この金属部材を偏光顕微鏡で観察して攪拌域の組織写真を得た。この得 られた写真を用いてクロスカット法により結晶粒径を求めた。結果を表 3に示す。
[0061] 上記結果によれば、いずれも 20 m以下の微細結晶粒が得られていることが確認 でき、金属部材が改質されていることが分かる。
[0062] [焼鈍による効果の確認]
上記で金属部材の改質ィ匕が確認された金属部材について、更に焼鈍を行い、その 効果を確認した。移動速度を変化させて得られた金属部材につ!ヽて熱処理炉を用 いて大気雰囲気下で温度 200°C及び 300°Cで 2時間の焼鈍を行った。図 8は、各金 属部材の焼鈍後の攪拌域を、上記金属部材の改質ィ匕の確認を行った方法と同様に して撮影した偏光顕微鏡写真である。図 8 (B)は回転数 1400rpm、移動速度 100m mZmin、焼鈍温度 200°C、焼鈍時間 2時間の場合であり、以下同様に、図 8 (C)は 1400rpm、 300mm/min, 200。C、 2時間の場合、図 8 (D)は 1400rpm、 600mm /min, 200。C、 2時間の場合、及び図 8 (E)は 1400rpm、 lOOmm/min, 300°C 、 2時間の場合のものである。また、図 8 (A)は回転速度 1400rpm、移動速度 300m mZminで摩擦攪拌した直後 (焼鈍無し)の攪拌域の偏光顕微鏡写真である。図 8 ( A)〜(E)より明らかなように、摩擦攪拌直後の結晶粒径と比べて、いずれもそれより 微細な結晶粒径が得られていることが確認できた。尚、図 8 (E)では、焼鈍温度が他 のものと比べて高いため、一部で再結晶粒の粗大化が起きたものと考えられる。 実施例 2
[0063] Cu(1020合金)製バッキングプレート 1 (厚さ 10mm、長さ 500mm、幅 100mm)に 99. 99%アルミニウム力もなるアルミニウム板 2 (厚さ 6mm、長さ 500mm、幅 100m m)を重ね合わせ、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法によりスパッタリング ターゲット Xを製造した。使用した回転工具 3は回転子 4の底面 5の直径 Dが φ 30m m、プローブ 6の直径 dが φ 12mm,プローブ 6の長さ Lが 5. 5mmであり、回転数 50 Orpm、移動速度 300mmZminとした。
[0064] バッキングプレート 1に重ね合わせたアルミニウム板 2の表面のひとつの角部付近 に上記回転工具 3を配置し、その軸心に沿って 7kNの押し込み力をアルミニウム板 2 の表面に加えて回転子 4の底面 5がアルミニウム板 2の表面に x=0. 5mm程度埋め 込まれるようにして、この回転工具 3を回転(時計回り方向)させながらアルミニウム板 2の表面力 挿入した。この回転工具 3を回転させた状態で、アルミニウム板 2の一辺 に沿って直線移動させ、図 4 (A)に示したように直線移動と Uターンを繰り返して、ァ ルミ-ゥム板 2の表面 400mm X 70mmの領域内に互いに隣接した移動軌跡を形成 するように摩擦攪拌を行い、ノ ッキングプレート 1とアルミニウム板 2との重ね合わせ面 7に沿って攪拌域 8を形成した。この際、上記回転工具 3における回転子 4の底面 5の 移動軌跡が隣接するその移動軌跡と 20mmの幅で重複するようにして攪拌域の重 複部 8aを形成した (プローブ 6の先端部分における移動軌跡の重なりは 2mmとなる) 。これにより、アルミニウム板 2はバッキングプレート 1に接合されると共に、アルミ-ゥ ム板 2が改質された改質アルミニウム板 9を有するスパッタリングターゲット Xを得た。
[0065] 上記により得られた改質アルミニウム板 9の中心付近の結晶組織を偏光顕微鏡によ つて観察したところ、およそ 10 mの微細な結晶粒径を有する微細結晶組織に改質 されていることが確認できた。また、改質アルミニウム板 9とバッキングプレート 1とは重 ね合わせ面 7に沿って確実に接合され、改質アルミニウム板側には、ノ ッキングプレ ート 1の成分である Cuの混入がほとんどないことも確認された。この改質アルミニウム 板 9とバッキングプレート 1との接合面を高倍率組織観察したところ、 Al—Cu系の金 属間化合物は確認されなカゝったため、仮に A1— Cu系の金属間化合物が形成されて いたとしても、その厚みは高々数/ z m以下であったと考えられる。
[0066] したがって、上記によってアルミニウム板 2が微細な結晶粒径を有する改質アルミ-
ゥム板 9に改質され、この改質アルミニウム板 9をターゲット材として使用すればパー ティクルの発生ゃスプラッシュ現象を防止することができる。また、この改質アルミ-ゥ ム板 9では、成分偏析も解消されて均一な成分組成や金属組織を有すると共に、ァ ルミ-ゥム板 2の異方性が解消されて微細結晶組織の再結晶粒がランダムな方位を 有することから、膜厚及び成分がそれぞれ均一な膜を得ることができる。
また、このスパッタリングターゲット Xは、改質アルミニウム板 9からなるターゲット材と ノ ッキングプレート 1とが直接接合していることから、加熱による歪みが生じてターゲッ ト材が剥がれ落ちるおそれがなぐ更には、ターゲット材とバッキングプレート 1との熱 伝導性においても優れる。
実施例 3
[0067] A6061合金製バッキングプレート 1 (厚さ 10mm、長さ 500mm、幅 100mm)に 99 . 99%アルミニウムからなるアルミニウム板 2 (厚さ 6mm、長さ 500mm、幅 100mm) を重ね合わせ、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法によりスノッタリングター ゲット Xを製造した。使用した回転工具 3は回転子 4の底面 5の直径 Dが φ 30mm, プローブ 6の直径 dが φ 12mm,プローブ 6の長さ Lが 6. 5mmであるが、このプロ一 ブ 6の先端の厚さ lmmに相当する部分力 対角線 10mmの六角形平面を有する六 角柱状に加工されている。このようにプローブ 6の先端を六角柱状にしたことで、回転 による発熱量を増大させることができる。なお、このプローブ 6の先端の六角柱部分の 径(平面六角形の対角線幅 10mm)をプローブ 6におけるその他の径より小さくしたこと により、バッキングプレート 1の巻き上げが抑制できる。
[0068] 上記回転工具 3を、回転数 500rpmで時計回り方向に回転させながら、その軸心に 沿って 7kNの押し込み力をアルミニウム板 2の表面に加えて回転子 4の底面 5がアル ミニゥム板 2の表面に x=0. 5mm程度埋め込まれるようにして、アルミニウム板 2の表 面から挿入した。この際、プローブ 6の先端はバッキングプレート 1側に 1. Omm挿入 した。この回転工具 3を実施例 2と同様に移動させて、アルミニウム板 2の表面 400m m X 70mmの領域内に互いに隣接した移動軌跡を形成するように摩擦攪拌を行!ヽ、 攪拌域 8をバッキングプレート 1とアルミニウム板 2との重ね合わせ面 7に沿って攪拌 域 8を形成した。これにより、アルミニウム板 2はバッキングプレート 1に接合されると共
に、アルミニウム板 2が改質された改質アルミニウム板 9を有するスパッタリングターゲ ット Xを得た。
[0069] 上記により得られた改質アルミニウム板 9の中心付近の結晶組織を偏光顕微鏡によ つて観察したところ、およそ 10 mの微細な結晶粒径を有する微細結晶組織に改質 されていることが確認できた。また、改質アルミニウム板 9とバッキングプレート 1とは摩 擦攪拌接合によって接合されて ヽた。
したがって、この実施例 3で得たスパッタリングターゲット Xについても、実施例 2で 得られたスパッタリングターゲット Xと同様に、改質アルミニウム板 9をターゲット材とし て使用すれば、パーティクルの発生ゃスプラッシュ現象を防止することができると共に 、膜厚及び成分がそれぞれ均一な膜を得ることができる。
また、このスパッタリングターゲット Xは、改質アルミニウム板 9からなるターゲット材と ノ ッキングプレート 1とが摩擦攪拌接合していることから、加熱による歪みが生じてタ ーゲット材が剥がれ落ちるおそれがなぐ更には、ターゲット材とバッキングプレート 1 との熱伝導性にぉ ヽても優れる。 産業上の利用可能性
[0070] 本発明の金属二層構造体の製造方法によれば、金属部材をプレート材に接合しな がら、この金属部材を改質金属部材に改質するため、例えばこの改質金属部材をタ ーゲット材としたスパッタリングターゲットとして用いることができる。すなわち、本発明 によれば、半導体デバイス、磁気ディスク、光学ディスク、液晶やプラズマディスプレ ィに代表されるフラットパネルディスプレイ等の製造の際に使用するスパッタリングタ 一ゲットを低コストで簡便に製造することができる。特に、この製造方法によれば、こ れまでスパッタリングターゲットの大型化の際に障害となっていた装置上の制約や金 属組織等が均一にならないといった問題を全て解消することができるため、 lm2を超 えるようなガラス基板等を処理する必要がある液晶、プラズマパネルディスプレイ、有 機 EL、フィールドェミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造分野 等において、本発明による効果は絶大である。
また、この金属二層構造体は、スパッタリングターゲットを含む各種半導体電子材料 用部材のほか、建材用パネル、輸送機器用外板、高成形性板材等としても利用する
ことができ、同様に良好な品質のものを得ることができ、かつ、大型化の要請にも対 応可能なため、その効果は絶大である。
更に、本発明のスパッタリングターゲットの再生方法によれば、これまでコストを掛け て再生したり、場合によっては廃棄されていたような使用済みスパッタリングターゲット を、低コストでかつ簡易に再生することができるため、スパッタリングターゲットの製造 や使用をしていた現場をはじめ、リサイクル処理に係わる分野にも好適である。