明 細 書 活性物質 K 03 - 0 1 32及びその製造法 技術分野
本発明は、 ァゾール系抗真菌剤の活性増強作用を有する活性物質 Κ 03 - 0 1 32及びその製造法に関する。 本活性物質 Κ 03 - 0 1 32は活性物質 Κ 03 - 0 1 32 Α及びノ又は活性物質 Κ 03 - 0 1 32 Bを総称したものである。 背景技術
真菌感染症、 特に深在性真菌症の治療に用いられるァゾール系化合物として は、 例えば 1— [2— (2, 4-d i ch l o r ob en zy l oxy) - 2 - (2, 4-d i ch l o r ophe ny l) e t hy l] imi da z o l e ( 一般名 : ミコナゾール、 シグマ社製、 米国) 、 2, 4— d i f l u o r o—ひ, α - b i s ( 1 H - 1 , 2, 4— t r i a z o l— l _y lme t hy l) b e n z y 1 a l c oho l (一般名 : フルコナゾ一ル、 アイシーェヌファーマス —ティカルズ社製、 米国) 、 および (土) — 1— s e c— bu t y l— 4— [p 一 [4— [p - [ [ (2R, 4 S) - 2 - (2, 4-d i ch l o r oph en y 1 ) - 2 - ( 1 H- 1 , 2, 4— t r i a z o 1— 1— y 1 m e t h y 1 ) - 1, 3-d i oxo l an-4-y l] me t hoxy] phen l] — 1— p i p e r a z i ny l] pheny l] —厶 2 — 1, 2, 4— t r i a z o l i η- 5-on e (一般名 :ィトラコナゾール、 協和発酵社製、 日本国) 等が知 られていた。
これらのァゾール系化合物ミコナゾール、 フルコナゾ一ルおよびイトラコナ ゾールは、 同疾患に用いられるポリェン系のアムホテリシン B等と比較して安全 性が高く (An a i s s i e E. 5, クリニカル インフエクシァス デイジ ーズ, 23巻、 964— 972、 1 996年) 、 最も高頻度に使用されている薬 剤である。 しかしながら最近、 これらァゾール系抗菌剤の長期間または反復投与 による耐性菌の出現が問題となっており、 安全性が高く、 耐性菌の出現頻度の低
レ、薬剤の開発が社会的急務とされている。
発明の開示
H I V感染や血液疾患など、 免疫力の低下を伴う疾患では易感染状態が惹起 され、 日和見感染症として真菌感染症の発生頻度が増加する。 またこれら免疫力 低下を伴う疾患の多くは重篤で治療期間も長期にわたる。 このため、 真菌感染症 の化学療法も長期間におよぶ場合が多く、 現在最も高頻度に使用されているァゾ ール系抗真菌剤は薬剤耐性の誘導が極めて起こりやすい状態と考えられる。
ァゾ一ル系抗真菌剤に対する耐性機構としては、 Cand i da a 1 b i c an sにおいて標的酵素である P— 450 1 4— —デメチラ一ゼの過剰発 現ゃァミノ酸変異による薬剤との親和性の低下 (Vand en Bo s s che H. ら、 アンチミクロビアル ·ェイジェント アンド ケモセラピー、 36巻 、 2602— 26 1 0頁、 1 992年; Sang l a r d D. ら、 アンチミク 口ビアル,ェイジェント アンド ケモセラピ一、 42巻、 24 1— 253頁、 1 998年) 、 MSF (Ma j o r Fa c i l i a t o r Sup e r f am i 1 y) や ABC (ATP B i nd i ng Ca s s e t t e) などの多剤排 出トランスポー夕による細胞内薬剤濃度の低下 (F i ng M. F. ら、 Mo l Gen Ge n e t、 227巻、 3 1 8— 329頁、 1 995年; Sang l a r d D. ら、 ミクロビオロジ一、 1 4巻、 405— 4 1 6、 1 997年) が 、 Sa c c ha r omyc e s c e r ev i s i a eでは、 MD R (Ma丄 t i p 1 e Dr ug R e s i s t a n t ) 遺伝子である P D R 1 6、 P D R 1 7により脂質代謝を変化させ、 ァゾール系化合物に対する耐性を獲得しているこ とが報告されている (H. Ba r t van d en Ha z e lら、 ジャーナ ル 'ォブ ·バイオロジカルケミストリー、 274巻、 1 934— 1 94 1、 1 9 9 9年) 。
これらのことから、 ァゾ一ル系抗真菌剤の活性を上昇させる薬剤は、 ァゾ一 ル系抗真菌剤の投与量を減量し、 投与期間を短縮させることにより耐性菌出現の 頻度を低減させることが期待される。 また同時に、 骨格の異なる 2つの薬剤を併 用することにより、 ァゾ一ル系抗真菌剤に対する耐性を克服することが期待され
かかる実情において、 ァゾ一ル系抗真菌剤の活性増強作用を有する薬剤を提 供することは、 深在性真菌症をはじめとする多くの真菌感染症やァゾ一ル耐性真 菌感染症の治療上有用であると考えられる。 ,
本発明者らは、 微生物の生産する代謝産物について種々研究を続けた結果、 新たに土壌から分離した K 03— 0132菌株の培養物中に、 ァゾール系抗真菌 剤の活性増強作用を有する物質が産生されることを見い出した。 次いで、 該培養 物から活性物質を分離、 精製した結果、 後記の式 [I] 及び/又は [I] で示さ れる化学構造を有する物質を見い出した。 これらの式 [I]及び [I] で示され る物質は従来まったく知られていないことから、 本活性物質を K03— 01 32 A及び K 03 - 0132 Bと称することとし、 その総称を活性物質 K 03-01 32と称することにした。
本発明はかかる知見にもとづいて完成されたものであって、 下記式 [I]
で表される活性物質 K 03 - 01 32 Aを提供するものである。
本発明はまた下記式 [I]
で表される活性物質 K 03 - 01 32 Bを提供するものである,
本発明は更にまた下記式 [I]
で表される活性物質 K O 3— 0 1 32Α、 及び下記式 [H]
で表される活性物質 Κ 0 3— 0 1 32 Βをの組成物を提供するものである。
本発明は更にストレブトマイセス エスピーに属し、 式 [ I ] で示される活 性物質 Κ 0 3 - 0 1 3 1 Αを生産する能力を有する微生物を培地で培養し、 該培 養物中に活性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 Aを蓄積せしめ、 該培養物から活性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 Aを採取することからなる活性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 Aの製造法を 提供するものである。
本発明は更にストレブトマイセス エスピーに属し、 式 [H] で示される活 性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 Bを生産する能力を有する微生物を培地で培養し、 該培 養物中に活性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 Bを蓄積せしめ、 該培養物から活性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 Bを採取することからなる活性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 Bの製造法を 提供するものである。
本発明は更にストレブトマイセス エスピーに属し、 式 [ I ] で示される活 性物質 K 0 3 - 0 1 3 1 A及び式 [I] で示される活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2 B を生産する能力を有する微生物を培地で培養し、 培養物中に活性物質 K 0 3 - 0 1 32 及ぴ1: () 3 - 0 1 32 Bを蓄積せしめ、 該培養物から活性物質 K 0 3— 0 1 3 2 A及び K 0 3 - 0 1 3 2 Bを採取する組成物の製造法を提供するもので
ある。
本発明は更に、 ストレブトマイセス エスピーに属し、 式 [I] で示される 活性物質 K 03 - 0 1 32 A及び 又は式 [I] で示される活性物質 K 03- 0 1 32 Bを生産する能力を有する微生物がストレブトマイセス エスピー (S ΐ r ep t omy c e s s p. ) K03-0 1 32 (FERM AB P - 1 0 1 48) である活性物質 K 03 - 0 1 32の製造法を提供するものである。
本発明は更に、 ストレブトマイセス エスピー (S t r e p t omy c e s s p. ) K03- 0 1 32 (FERM ABP- 1 0 1 48) を提供するもの である。
前記の式 [I] で表される活性物質 K 03 - 0 1 32 A及び式 [It] で表さ れる活性物質 K 03 - 0 1 32 Bを生産する能力を有する微生物 (以下 「K 03 - 01 32物質生産菌 j と称する) は、 ストレブトマイセス属に属するが、 本発 明の物質生産能を有するものであればよく、 特に制限されることはない。
本発明の活性物質 K 03 - 0 1 32を生産するために使用される菌株の好ま しい一例としては、 本発明者らによって北海道の土壌より新たに分離されたスト レプトマイセス エスピー (S t r ep t omy c e s s p, ) K 03 - 0 1 32株が挙げられる。
本菌株の菌学的性状を示すと以下の通りである。
1. 形態的特徵
栄養菌糸は各種寒天培地上でよく発達し、 分断は観察されない。 気菌糸はィ ースト ·麦芽エキス寒天培地やスターチ■無機塩寒天培地で豊富に着生し、 茶褐 色からグレーの色調を呈する。 顕微鏡下の観察では、 気菌糸上に 20ケ以上の胞 子の連鎖が認められ、 その形態は螺旋状で、 胞子の大きさは約 0. 7 X 1. 2 mの円筒状である。 胞子の表面は平滑である。 菌核、 胞子のうおよび遊走子は見 出されない。
2. 各種培地上での性状
ィ一 · ビー - シャ一リング (E. B. S h i r 1 i n g) とデ一 ·ゴッ トリ —ブ (D. Go t t l i eb) の方法 (ィンターナショナル■ ジャーナル ·ォブ • システィマティック ■バクテリォロジ一、 1 6巻、 3 1 3頁、 1 96 6年) に
よって調べた本生産菌の培養性状を下記に示す。 色調は標準色として、 カラ一 · ハーモニー ·マニュアル第 4版 (コンテナ一 · コーポレーション ·ォブ ·ァメリ 力 · シカゴ、 1 958年) を用いて決定し、 色票名とともに括弧内にそのコ一ド を併せて記した。 以下は特記しない限り、 27で、 2週間目の各培地における観 察の結果である。
培養性状 シュ クロース,硝酸塩寒天培地
生 育 良好に生育、 パール (2 b a)
裏 面 シルバーグレー ( 3 f e)
気 菌 糸 貧弱に着生、 ベージュ (3 g e)
可溶性色素 産生しない グルコース ·ァスパラギン寒天培地
生 育 中程度に生育、 パール (2 b a)
裏 面 パール (2 b a)
気 菌 糸 着生しない
可溶性色素 産生しない ロール■ァスパラギン寒天培地 ( I SP)
生 育 良好に生育、 キャメル (3 i e)
裏 面 ァドーブブラウン (31 g)
気 菌 糸 豊富に着生、 ベージュグレー (3 i h) 可溶性色素 わずかに産生、 マスタード (21 e) チ -無機塩寒天培地 (I SP)
生 育 良好に生育、 マスタード (21 e)
裏 面 ライトマスタ一ドタン ( 2 i e)
気 菌 糸 豊富に着生、 コバルトグレー (2 f e)
可溶性色素 わずかに産生、 ライトマスタードタン (2 i e) チロシン寒天培地 ( I SP)
生 育 良好に生育、 ライトマスタードタン (2 i e) 裏 面 マスタードタン (21 g)
気 菌 糸 中程度に着生、 シルバーグレー (3 f e) 可溶性色素 わずかに産生、 ライトマスタードタン (2 i e) ォートミール寒天培地 ( I SP)
生 育 良好に生育、 マスタード (21 e)
裏 面 ダークコバルトグレー ( 2 i h)
気 菌 糸 中程度に着生、 ベージュブラウン (3 i g) 可溶性色素 産生しない イースト ·麦芽エキス寒天培地
生 育 良好に生育、 イェローメープル (3ng) 裏 面 クローブブラウン ( 3 p 1 )
気 菌 糸 豊富に着生、 ダークコバルトグレー (2 i h) 可溶性色素 わずかに産生、 ゴールデンブラウン (3pg) 栄養寒天培地
生 育 良好に生育、 クリーム ( 1 c a) 裏 面 クリーム (1 c a)
気 菌 糸 貧弱に着生、 ナチュラル (2 d c)
可溶性色素 産生しない ペプトン ·イースト ·鉄寒天培地 (I SP)
生 育 良好に生育、 バンブー (2 g c)
裏 面 ハニーゴールド (2 i c)
気 菌 糸 着生しない
可溶性色素 わずかに産生、 ハニーゴールド (2 i c) グルコース ·硝酸塩寒天培地
生 育 中程度に生育、 パール (2 b a)
裏 面 パール (2 b a)
気 菌 糸 貧弱に着生、 ベージュ (3 g e)
可溶性色素 産生しない グルセロール · リンゴ酸カルシゥム寒天培地
生 育 良好に生育、 パールピンク (3 c a) 裏 面 パールピンク ( 3 c a)
気 菌 糸 着生しない
可溶性色素 産生ない グルコース ·ぺプトン寒天培地
生 育 良好に生育、 アイボリ— (2 db) 裏 面 マスタ一ド (21 e)
気 菌 糸 着生しない
可溶性色素 産生しない . 生理学的諸性質
(1) メラニン色素の生成
(ィ) チロシン寒天培地 陽性
(口) ペプトン .イースト '鉄寒天培地 陰性
(ハ) トリプトン ·ィースト液 陰性
(二) 単純ゼラチン培地 (2 1〜23°C) 陰性
( 2 ) 硝酸塩の還元 陽性
(3) ゼラチンの液化 (21〜23°C) (単純ゼラチン培地)
(4) スターチの加水分解 陽性
( 5 ) 脱脂乳の凝固 ( 3 7 °C) 陰性
(6) 脱脂乳のペプトン化 (37°C) 陰性
( 7 ) 生育温度範囲 7〜 3 8 °C
( 8 ) 炭素源の利用生 (プリ ドハム ·ゴトリーブ寒天培地)
利用する : D—グルコース、 メリビオース、 L—ラムノース やや利用する : D—キシロース、 ラフイノース、 D—フラクトース、 シュ一クロース
利用しない: L—ァラビノース、 D—マンニトール、 my 0—イノシ トール
( 9 ) セルロースの分解 陰性
4. 細胞壁組成
細胞壁のジアミノピメリン酸は LL型、 主要メナキノンは MK— 9 (Hs ) と MK— 9 (H8 ) である。
5. 結論
以上、 本菌の菌学的性状を要約すると次のとおりである。 細胞壁中のジアミ ノピメリン酸は LL型、 主要メナキノンは MK— 9 (He ) と MK— 9 (H8 ) である。 胞子連鎖の形態は螺旋状で、 長い胞子鎖を形成し、 胞子の表面は平滑で ある。 培養上の諸性質としては、 栄養菌糸は褐色の色調を呈し、 気菌糸は茶褐色 からグレー系の色調を呈する。 チロシン寒天培地でメラニン色素を産生する。
これらの結果から、 バ一ジーズ ·マニュアル 'ォブ ' システマティック ,バ クテリオ口ジ一、 4巻、 1 9 8 9年に基づくストレブトマイセス属に属する菌種 であると考えられる。
6. 微生物の国際寄託
上記 0 3 - 0 1 32株の形態的特徴、 培養性状および生理的性状に基づき 、 既知菌種との比較を試みた結果、 本菌株はストレブトマイセス属に属するー菌 株と同定し、 ストレブトマイセス エスピー (S t r e p t omy c e s s p . ) K 0 3 - 0 1 3 2と命名した。 なお、 本菌株は、 ストレブトマイセス エス ピー (S t r e p t omy c e s s p. ) K 0 3— 0 1 3 2として、 日本国茨
城県つくぱ巿東 1丁目 1番地 1 中央第 6 (郵便番号 305— 8566 ) [A I ST Ts ukub a Cen t r a l 6, 1— 1, H i ga s h i 1— c home Ts ukub a— s h i, I b a r ak i— ken, 305 - 856 6 Jap an] に所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託セン ター [I n t e rna t i ona l Pa t en t Or gan i sm D e p o s i t a r y Na t i ona l I n s t i t u t e o f A d v a n c e d I ndu s t r i a l Sc i en c e and Te chno l ogy ] に寄託した。 受託日は平成 1 6年 (04) 1 0月 21日、 受託番号は FERM ABP— 1 0 1 48である。
本発明で使用される K 03 - 0 1 32物質生産菌としては、 前述のストレブ トマイセス エスピー K 03 - 01 32菌株が挙げられるが、 菌の一般的性状と して菌学上の性状は極めて変異しやすく、 一定したものではなく、 自然的にある いは通常行われる紫外線照射、 X線照射または変異誘導体剤、 例えば N—メチル -N' —ニトロ一 N—ニトロソグァ二ジン、 2—ァミノプリンなどを用いる人工 的変異処理により取得できる人工的変異株は勿論、 細胞融合株、 遺伝子操作株を 含め、 ストレプトマイセス エスピー (S t r ep t omy c e s s p. ) に 属し、 前記式 [I] で表される活性物質 K03-0 1 32 A及び前記 [IT] で表 される活性物質 K 03 - 0 1 32 Bを生産する菌株は、 すべて本発明に使用する ことができる。
本発明を実施するに当たっては、 先ずストレブトマイセス エスピーに属す る K 03— 0 1 32物質生産菌を培地に培養することにより行われる。 上記活性 物質 K 03 - 0 1 32生産に適した栄養源としては、 微生物が同化し得る炭素源 、 消化し得る窒素源、 さらには必要に応じて無機塩、 ビタミン等を含有させた栄 養培地が使用される。 上記の同化し得る炭素源としては、 グルコース、 プラクト ース、 マルト一ス、 ラクト一ス、 ガラクトース、 デキストリン、 澱粉等の糖類、 大豆油等の植物性油脂類が単独または組み合わせて用いられる。
消化し得る窒素源としては、 ペプトン、 酵母エキス、 肉エキス、 大豆粉、 綿 実粉、 コーン ·スティ一プ ' リカー、 麦芽エキス、 カゼイン、 アミノ酸、 尿素、 アンモニゥム塩類、 硝酸塩類等が単独または組み合わせて用いられる。 その他必
要に応じてリン酸塩、 マグネシウム塩、 カルシウム塩、 ナトリウム塩、 カリウム 塩などの塩類、 鉄塩、 マンガン塩、 銅塩、 コバルト塩、 亜鉛塩等の重金属塩類や ビ夕ミン類、 その他本活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2の生産に好適なものが適宜添加 される。
培養するに当たり、 発泡の激しいときには、 必要に応じて液体パラフィン、 動物油、 植物油、 シリコン等、 界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。 上記の 培養は、 上記栄養源を含有すれば、 培地は液体でも固体でもよいが、 通常は液体 培地を用い、 培養するのがよい。 少量生産の場合にはフラスコを用いる培養が好 適である。 目的物質を大量に工業生産するには、 他の発酵生産物と同様に、 通気 攪拌培養するのが好ましい。
培養を大きなタンクで行う場合は、 生産工程において、 菌の生 遅延を防止 するため、 はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養した後、 次に培養物を 大きなタンクに移して、 そこで生産培養するのが好ましい。 この場合、 前培養に 使用する培地および生産培養に使用する培地の組成は、 両者とも同一であつても よいし、 必要があれば両者を変えてもよい。
培養を通気攪拌条件で行う場合は、 例えばプロペラやその他機械による攪拌 、 ファメーターの回転または振とう、 ポンプ処理、 空気の吹き込み等、 既知の方 法が適宜使用される。 通気用の空気は滅菌したものを使用する。
培養温度は、 本 K 0 3 - 0 1 3 2物質生産菌が本活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2 を生産する範囲内で適宜変更し得るが、 通常は 2 0〜3 0 °C、 好ましくは 2 7 °C 前後で培養するのがよい。 培養 p Hは通常は 5〜8、 好ましくは 7前後で培養す るのがよい。 培養時間は培養条件によっても異なるが、 通常は 4〜7日程度であ る
このようにして得られた本活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2は、 培養菌体および培 養濾液に存在する。 培養物から目的とする活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2物質を採取 するには、 全培養物をアセトンなどの水混和性有機溶媒で抽出し、 抽出液を減圧 下有機溶媒で留去後、 続いて残渣を酢酸ェチル等の水不混和性有機溶媒で抽出す ることによって行われる。
上記の抽出法に加え、 脂溶性物質の採取に用いられる公知の方法、 例えば吸
着クロマトグラフィー、 ゲル濾過クロマトグラフィー、 薄層クロマトグラフィー 、 遠心向流分配クロマトグラフィー、 高速液体クロマトグラフィー等を適宜組み 合わせ、 あるいは繰り返すことにより、 活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2人及び1: 0 3 - 0 1 3 2 Bの各成分に分離、 精製することができる。
次に、 本発明の活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2 Aおよび K 0 3 - 0 1 3 2 Bの理 化学的性状について述べる。
活性物質 K 0 3 - 0 1 3 2 A
( 1 ) 性状 : 白色針状結晶
(2) 分子量 : 2 9 3 (高速原子衝撃質量分析による)
(3) 分子式 : C15H19N05
(4) 比旋光度: [<¾] 。 26 = + 2. 5° (c = 0. 1、 メタノール)
(5) 紫外部吸収スぺクトル: メタノール中で測定した紫外部吸収スぺクトル は、 2 1 7 ηπι (ε = 1 2 5 0 0) 、 2 6 2 ηπι (ε = 6 7 0 0) , 3 4 5 ( ε = 2 3 0 0) 付近に極大吸収を有する
( 6 ) 赤外部吸収スぺクトル:臭化力リゥム錠剤法で測定した赤外部吸収スぺ クトルは、 3 4 4 0、 3 2 1 2、 3 1 3 7、 1 7 1 2、 1 6 6 0、 1 6 3 3 cm 一1に特徴的な極大吸収を有する、
(7) プロトン核磁気共鳴スぺクトル: Va r i a n J a p a n社製、 核磁 気共鳴スぺクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スぺクトル (重ク ロロホルム中で測定) の化学シフト (p pm) は、 7. 0 9 ( 1 H, b r . s)
、 7. 4 3 ( 1 H, b r . s) 、 3. 1 2 ( 2 H, d, J= 6. 5 Hz) 、 2. 8 6 ( 1 H, d d d, J= 6. 7, 6. 7, 6. 5 Hz) 、 2. 4 5 ( 2 H, d , J= 6. 7 Hz) 、 2. 3 2 (2 H, d, J= 6. 7Hz) 、 2. 1 4 ( 3 H , s) 、 2. 2 0 ( 3 H, s) 、 5. 6 4, 6. 3 9 ( 2 H, b r . s) 、 1 2 . 3 0 ( 1 H, s)
(8) 13C核磁気共鳴スぺクトル: Va r i a n J a p a n社製、 核磁気共 鳴スぺクトロメータを用いて測定した核磁気共鳴スぺクトル (重ク π口ホルム中 で測定) の化学シフト (P pm) は、 1 5 9. 0、 1 2 7. 2、 1 3 8. 6、 1 2 7. 5、 1 2 7. 3、 1 1 8. 5、 2 0 6. 0、 4 2. 0、 2 9. 2、 3 8.
1、 1 74. 2、 39. 3、 1 74. 4、 1 5. 3、 20. 4
(9) 溶剤に対する溶解性: メタノール、 クロ口ホルム、 酢酸ェチルに可溶。 水、 へキサンに難溶
(1 0) 呈色反応: リンモリブデン酸に陽性
(1 1) 酸性、 中性、 塩基性の区別:中性物質
以上、 活性物質 K 03 - 0 1 32 Aの各種理化学的性状やスぺク トルデ一夕 を詳細に検討した結果、 本活性物質 K 03 - 0 1 32 Aは式 [ I ] で表される化 学構造であることが決定された。
活性物質 K 03 - 0 1 32 B
( 1 ) 性状 :白色針状結晶
(2) 分子量 : 292 (高速原子衝撃質量分析による) 、
(3) 分子式 : C15H16Oe
(4) 比旋光度: [ ] D 26 = - 2. 2° (c = 0. 1、 メタノール)
(5) 紫外部吸収スぺクトル: メタノール中で測定した紫外部吸収スぺクトル は、 21 7nm (£ = 8900) 、 267nm (£ = 6 1 00) 、 355 (ε = 1 900) 付近に極大吸収を有する
( 6 ) 赤外部吸収スぺクトル:臭化力リゥム錠剤法で測定した赤外部吸収スぺ クトルは、 3 1 00、 3037、 1 78 1、 1 708、 1 637 cm 1に特徴的 な極大吸収を有する、
(7) プ πトン核磁気共鳴スぺクトル: Va r i an J a p a n社製、 核磁 気共鳴スぺクトロメータを用いて測定したプロトン核磁気共鳴スぺクトル (重ク ロロホルム中で測定) の化学シフト (ppm) は、 7. 20 (1 H, b r . s)
、 7. 52 (1 H, b r . s) 、 5. 70 ( 1 H, d, J= 3. 0Hz) 、 3. 07 ( 1 H, m)、 2. 52 ( 1 H, d d, J=l . 0, 1 7. 0Hz) 、 2. 65 (1 H, d d, J = 8. 0, 1 7. 0Hz) 、 2. 3 1 ( 2 H, dd, J = 3. 5, 1 7. 5Hz) 、 2. 82 ( 2 H, dd, J= 8. 5, 1 7. 5 Hz)
、 2. 1 9 (3H, s )、 2. 25 ( 3 H, s )、 1 1. 80 ( 1 H, s)
(8) 13 C核磁気共鳴スぺクトル: Va r i an Jap an社製、 核磁気共 鳴スぺクトロメータを用いて測定した核磁気共鳴スぺクトル (重クロ口ホルム中
で測定) の化学シフト (ppm) は、 1 59. 9、 1 28. 0、 1 39. 8、 1 29. 0、 1 26. 9、 1 14. 0、 1 98. 5、 80. 7、 34. 7、 37. 0、 1 72. 2、 39. 0、 1 75. 0、 1 5. 4、 20. 4
(9) 溶剤に対する溶解性: メタノール、 クロ口ホルム、 酢酸ェチルに可溶、 水、 へキサンに難溶
(1 0) 呈色反応: リンモリブデン酸に陽性
(1 1) 酸性、 中性、 塩基性の区別:中性物質。
以上、 活性物質 K 03 - 0 1 32 Bの各種理化学的性状やスぺクトルデ一夕 を詳細に検討した結果、 本活性物質 K 03 - 0 1 32 Bは式 [H] で表される化 学構造であることが決定された。
生物学的性状
次に、 本発明の活性物質 K 03 - 0 1 32 Aおよび K 03 - 0 1 32 Bの生 物学的性状について以下に述べる。
(1) ァゾール系抗真菌剤の活性増強作用
ァゾ一ル系抗真菌剤の活性増強作用は以下のように測定した。
試験菌としては、 Cand i da a l b i c an s KF 1を用いて、 C and i d a a l b i c an s KF 1は" W aksman b r o t h (G 1 u c o s e 2. 0%、 Pep t on e 0. 5%、 Dr y y e a s t 0. 3 Me a t Ex t r a c t 0. 5 %、 N a C 1 0. 5%、 CaC03 0. 3%、 pH7. 0) で27で、 40時間種培養後、 GY寒天培地 (G 1 u c o s e 1. 0%、 Ye a s t Ex t r a c t 0. 5%、 Aga r 0. 8 %、 pH6. 0) に 0. 3%植菌し、 本プレートをプレート Aとし、 ァゾ一ル系 抗真菌剤としてミコナゾ一ル (シグマ社製、 米国) を使用し、 GY寒天培地への 添加濃度は、 試験菌の生育に影響を与えない 0. 06 / M (終濃度) としてプレ ート Bとした。 活性はペーパーディスク法 (厚手、 8mm: ADVANTEC社 製により評価し、 試験菌 27°C、 24時間培養後に阻止円を測定した。 その結果 は下記の第 1表に示した通りである。
第 1表 化合物 阻 止 円 径 mm
in g/d i s k) プレート A プレート B
K 03 - 0 1 32 A 1 0 ― ―
25 ―
50 ― 1 2
K 03 - 0 1 32 B 1 0 一 ―
25 一 1 1
50 ― 14
( 2 ) 各種試験菌に対する抗菌作用
試験菌としては、 B a c i 1 l_u s s u b t i 1 i s P C I 2 1 9、 t aphy l o c o c cu s au r eu s FDA209 P-, Mi c r o c o e c u s l u t eu s PC I 1 00 1、 My c ob a c t e r i um s m e gm a t i s ATC C 607. E s_c_h e r i c h i a c o 1 i N I H J、 P s e u d omona s a e r ug i no s a P— 3、 Xan t hom ona s o r yz a e KB 88^ Ba c t e r o i d e s f r a 1 i s ATCC 23745, Acho l ep l a sma 1 a i d 1 a i i P G 8、 Py r i c u l a r i a o r yz a e KF 1 80 As p e r g i 1 1 u s n i ge r ATCC 6275、 Mu c o r r a c emo s u s I F 0458 K C_a n d i d a a l b i c an s ATCC 64548、 Sa c cha r omy c e s c e r ev i s i a eの 1 4種類を用いた。 活性はぺー パーディスク法 (薄手, 6mm: ADVANTECH社製) により評価し、 27 °Cまたは 37°Cで 1 24時間または 48時間培養後の阻止円を測定した。 その結 果は下記の第 2表に示した通りである。
4019720 第 2表 阻 止 円 径 (mm)
試験菌 K03 - 0 1 32A K 03 - 0 1 32 B
Bacillus subtilis PCI 219 ― 1 0
Staphylococcus aureus FDA 209P 一 8
Micrococcus luteus PCI 1001 ―
Mycobacterium smegmatis ATCC607 ― ―
Escherichia coli匪 J ―
Pseudomonas aeruginosa P - 3 一
Xanthomonas oryzae KB 88 ― ―
Bacteroides fraglis ATCC 23745 ― 1 3
Acholeplasma laidlawii PG 8 ― 1 2
Pyricularia oryzae KF 180 ―
Aspergillus niger ATCC 6275 ― 一
Mucor racemosus IFO 4581 ―
Candida albicans ATCC 64548 ― ―
Saccharomyces cerevisiae ― ― 発明を実施するための最良の形態
次に、 実施例を挙げて本発明を説明するが、 本発明はこれのみに限定される ものではない。
実施例
50 Om 1容三角フラスコ 1本にグルコース 0. 1 %、 スターチ 2. 4 %、 ペプトン 0. 3%、 ミートエキストラクト 0. 3 %、 イーストエキストラクト 0 . 5%、 炭酸カルシウム 0. 4% (pH7. 0に調整) を 1 00ml仕込み、 綿 栓後、 蒸気滅菌し、 寒天培地上に生育させたストレブトマイセス エスピー K 03 - 0 1 32菌株 (S t r ep t omy c e s s p. K03— 0 1 32、 F
ERM ABP— 1 0 1 4 8) を白金耳にて無菌的に接種し、 27 °Cで 9 6時間 振とう培養した。
そして、 それを種培養液として、 グルコース 0. 1 %、 スターチ 2. 4%、 ペプトン 0. 3%、 ミートエキスラク ト 0. 3%、 イーストエキストラク ト 0. 5%、 炭酸カルシウム 0. 4 %、 トレース 5m l (ρΗ 7. 0に調整) 5 0 0 m 1容三角フラスコ 1 0 0m l、 1 0本仕込み、 蒸気滅菌後、 種培養した培養液 1 m lを無菌的に移植し、 27°Cで 6日間培養した。 得られた全培養液に 1 Lのェ 夕ノールを加えよく攪拌し、 減圧濃縮し、 これを酢酸ェチルで抽出後、 減圧濃縮 して粗物質 3 6 2. l mgを得た。
次に、 この粗物質 3 6 2. 1 mgをシリカゲルを用いたカラムクロマトグラ フィ一にチャージし、 クロ口ホルムとメタノールで溶出するカラムクロマトグラ フィ一を行った。 クロ口ホルム: メタノール = 1 : 1で溶出するフラクションを 減圧乾固し粗物質 4 0. 7mg得た。 次にこの 4 0. 7mgの粗物質を高速液体 クロマトグラフィ一により分離精製した。 装置は SSC 34 6 1 (センシユウ科 学社製、 日本国) を用い、 カラムは PEGAS I L-ODS (ODS系樹脂、 セ ンシユウ科学社製、 日本国) を用い、 溶媒系は 0. 0 5 %TFA含有の 3 0分間 のァセトニトリル 1 0 %から 5 0 %のグラジェントを用い、 検出は UV 2 1 0 η m、 流速 1. 0m lノ分で行った。
その結果、 20. 0分に溶出したフラクションを減圧乾固し K 0 3— 0 1 3 2Aを 4. Omg単離した。 またクロ口ホルム: メタノール = 5 : 1で溶出する フラクションを減圧乾固し粗物質 4 1. Omg得た。 次にこの 4 1. Omgの粗 物質を高速液体クロマトグラフィーにより分離精製した。 装置は SSC 34 6 1 (センシユウ科学社製、 日本国) を用い、 カラムは PEGAS I L-ODS (0 DS系樹脂、 センシユウ科学社製、 日本国) を用い、 溶媒系は 0. 0 5 %TFA 含有の 30分間のァセトニトリル 1 0 %から 5 0 %のグラジェントを用い、 検出 は UV 2 1 0 nm、 流速 1. 0 m 1 /分で行った。 その結果、 2 8. 0分に溶出 したフラクションを減圧乾固し K 0 3— 0 1 32 Bを 4. Omg単離した。
産業上の利用分野
以上のことから、 本発明による活性物質 K 0 3 - 0 1 3?八及ぴ 又は り
3 - 0 1 3 2 Bはァゾール系抗真菌剤の活性増強作用を有することから、 深在性 真菌症をはじめとする多くの真菌感染症に対して、 低濃度、 短期間で作用し、 耐 性菌出現頻度の低減に有用である。 また耐性克服に対する有用性が期待される。