明 細 書
受容体リガンド
技術分野
[0001] 本発明は Gタンパク質結合受容体 (GPCR): GPR92/93の新規用途及びそのリガン ド等に関する。より詳細には、 GPR92/93のァゴニストリガンドを同定したこと、及び当 該ァゴニストリガンドのインスリン分泌促進薬としての医薬用途を見出したことに基づ
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背景技術
[0002] 糖尿病はその病態から 1型と 2型に分類される。すなわち、 1型は脾臓におけるイン スリン分泌機能不全に基づく病態であり、 2型はインスリン感受性組織におけるインス リン抵抗性と脾臓におけるインスリン分泌異常が主たる病態である。近年、食生活の 西洋化や社会的ストレスの増加等により、肥満とそれに付随する生活習慣病、特に 2 型糖尿病患者の増加が著し 、。
[0003] 血糖調節において脾臓は中心的役割をはたすと考えられている。主要な血糖調節 ホルモンであるインスリンは脾臓のランゲルノヽンス島の β細胞から分泌される。 β細 胞は食後などに一過的に上昇する血糖に応答して迅速に必要量のインスリンを分泌 する。筋肉、脂肪等の末梢組織では脾臓カゝら分泌されたインスリンに応答して糖を取 り込むことにより、上昇した血糖の調節を行っている。さらに、肝臓ではインスリンに応 答して糖新生が抑制され、血糖の調節が行われている。このようなサイクルに破綻が 生じることにより糖尿病が発症すると考えられている。事実、 1型糖尿病の多くは、脾 臓が自己免疫的に破壊されインスリン分泌不全になることにより血糖コントロールが 不能になるものであり、 2型糖尿病ではインスリン分泌における第一相の分泌不良が 高血糖を招来することが知られて 、る。
[0004] 上述のような観点から、脾臓におけるインスリン分泌の促進は糖尿病病態の改善効 果に大きく貢献すると考えられる。このような作用機序を持つ薬剤としては、現在のと ころスルホ -ルゥレア剤などが上巿されて ヽるが、血糖値に応じたインスリン分泌調 節作用がないため、血糖が低下してもなおインスリン分泌促進効果が持続して低血
糖に陥り、昏睡、さらには死亡を招く危険性がある。現在、血糖値に応じたインスリン 分泌促進効果が得られると ヽうような特徴をもつ安全な薬剤は上巿されておらず、こ のような薬剤の開発が望まれている。
[0005] ところで、 GPR92/93は、生体内におけるリガンドが不明の、ォーファン Gタンパク質 結合受容体(G protein coupled receptor; GPCR)として知られている(非特許文献 1 を参照)。 GPR92/93は脳をはじめとする組織に発現して 、ることが報告されて ヽた( 非特許文献 2を参照)が、その機能は知られていない。
一方リゾホスファチジン酸 (LPA)はリン脂質の一種であり、リン脂質の生合成中間体 として知られて ヽたが、その後様々な生体反応の細胞外シグナル伝達分子であるこ とがわ力 てきた。当該生体反応としては、細胞***促進、アポトーシス抑制、ァクチ ン細胞骨格再構築や細胞の形態変化の誘導、腫瘍細胞浸潤等が挙げられる (非特 許文献 3を参照)。しかしながら、 LPAのインスリン分泌促進作用については、知られ ていなかった。
非特許文献 1 : Lee, D. K.ら、 Gene, 2001 Sep 5; 275(1):83- 91.
非特許文献 2 : Demetrios, K. Vassilatisら、 Proc. Nat. Acad. Science, USA, 2003 Ap ril 15; 100(8):4903-4908.
非特許文献 3 :Yoh Takuwaら、 J. Biochem., 767-771(2002)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 本発明が解決しょうとする課題は、 Gタンパク質結合受容体 (GPCR): GPR92/93作 動薬となり得るァゴ-ストリガンド、 GPR92/93作動薬を有効成分として含有する医薬、 具体的にはインスリン分泌促進薬、 GPR92/93作動薬もしくは拮抗薬をスクリーニング する方法、及びインスリン分泌促進薬のスクリーニング方法等を提供することにある。 課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討を行 ヽ、正常人の脾臓ランゲルノヽンス氏 島において発現局在する因子を同定した。すなわち、本発明者らは正常人の脾臓ラ ンゲルハンス氏島に発現する遺伝子と正常状態のその他の諸組織に発現する遺伝 子を比較することにより、正常人の脾臓ランゲルノ、ンス氏島において発現局在する遺
伝子を同定した。次に、該遺伝子がコードする蛋白質を調べたところ、ォーファン GP CRである、 GPR92/93であることがわかった。
[0008] 本発明者らは、次に、 GPR92/93を介したシグナル伝達を生じさせるリガンドとなる 物質を探索した。その結果、生体内脂質の一種である、リゾホスファチジン酸 (以下 L PAと略す場合がある)及びその誘導体力GPR92/93のリガンドであることがわ力つた。 更に、リゾホスファチジン酸が脾臓細胞におけるインスリン分泌促進作用を有すること がわかった。すなわち、 GPR92/93はインスリン分泌調節作用を有する GPCRであり、 そのァゴニストリガンドカ SLPAであることを見出した。
本発明は、上記の知見を元に完成するに至ったものである。
[0009] すなわち本発明は、 GPR92/93作動薬の医薬用途等に関する:
〔1〕 GPR92/93作動薬を有効成分として含有する、インスリン分泌促進薬;
〔2〕 GPR92/93作動薬がリゾホスファチジン酸、その誘導体、 L-NASPA又はそれら の薬学上許容される塩である、〔1〕に記載のインスリン分泌促進薬;
〔3〕 リゾホスファチジン酸又はその誘導体力 式(1):
[0010] [化 1]
〔式中、 R1は、水素原子、炭素数 8〜22のァシル基又は炭素数 8〜22の 1ーァルケ 二ノレ基を表し、
R2は水素原子、 myo イノシトール 1ーィル基、 2—アンモ-ォェチル基又はホスホ ノ基を表し、
R3は水素原子又は炭素数 2〜22のァシル基を表し、 R1及び R3の少なくとも一方は炭 素数 8〜22のァシル基もしくは炭素数 8〜22の 1ーァルケ-ル基を表す。〕 で表される化合物である、〔2〕に記載のインスリン分泌促進薬;
〔4〕 式(1)で表される化合物力 リゾホスファチジン酸、 1-Acy卜 PAF又はそれらの薬 学上許容される塩である、〔3〕に記載のインスリン分泌促進薬;
〔5〕 式(1)において、 R^ R2及び R3が以下の組み合わせを表すことを特徴とする、〔 3〕に記載のインスリン分泌促進薬:
1) R1がォレオイル基を表し、 R2及び R3が水素原子を表す;
2) R1がパルミトイル基を表し、 R2がァセチル基を表し、 R3が 2—アンモ-ォェチル基 を表す;
3) R1がドコサへキサエノィル基を表し、 R2及び R3が水素原子を表す;
4) R3がドコサへキサエノィル基を表し、 R2及び R1が水素原子を表す;
5) R1がステアロイル基を表し、 R3が水素原子を表し、 R2が、 myo—イノシトール— 1— ィル基を表す;
6) R3がステアロイル基を表し、 R1が水素原子を表し、 R2が、 myo—イノシトール— 1— ィル基を表す;又は
7) R2がホスホノ基を表し、 R1及び R3がオタタノィル基を表す;
〔6〕 血糖調節薬であることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のインスリン 分泌促進薬;
〔7〕 耐糖能異常改善薬であることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のィ ンスリン分泌促進薬;
〔8〕 生活習慣病治療薬であることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のィ ンスリン分泌促進薬;
〔9〕 糖尿病治療薬であることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のインスリ ン分泌促進薬;
〔10〕 リゾホスファチジン酸、その誘導体、 L-NASPA又はそれらの薬学上許容される 塩を有効成分として含有する、 GPR92/93作動薬;
〔11〕 リゾホスファチジン酸又はその誘導体力 式(1):
[化 2]
〔式中、 R
1は、水素原子、炭素数 8〜22のァシル基又は炭素数 8〜22の 1ーァルケ 二ノレ基を表し、
R2は水素原子、 myo イノシトール 1ーィル基、 2—アンモ-ォェチル基又はホスホ ノ基を表し、
R3は水素原子又は炭素数 2〜22のァシル基を表し、 R1及び R3の少なくとも一方は炭 素数 8〜22のァシル基もしくは炭素数 8〜22の 1ーァルケ-ル基を表す。〕 で表される化合物である、〔10〕に記載の GPR92/93作動薬;
〔12〕 式(1)で表される化合物力 リゾホスファチジン酸、 1-Acy卜 PAF又はそれらの 薬学上許容される塩である、〔11〕に記載のインスリン分泌促進薬;
〔13〕 式(1)において、
R
2及び R
3が以下の組み合わせを表すことを特徴とする、 〔11〕に記載の GPR92/93作動薬:
1) R1がォレオイル基を表し、 R2及び R3が水素原子を表す;
2) R1がパルミトイル基を表し、 R2がァセチル基を表し、 R3が 2—アンモ-ォェチル基 を表す;
3) R1がドコサへキサエノィル基を表し、 R2及び R3が水素原子を表す;
4) R3がドコサへキサエノィル基を表し、 R2及び R1が水素原子を表す;
5) R1がステアロイル基を表し、 R3が水素原子を表し、 R2が、 myo—イノシトール— 1— ィル基を表す;
6) R3がステアロイル基を表し、 R1が水素原子を表し、 R2が、 myo—イノシトール— 1— ィル基を表す;又は
7) R2がホスホノ基を表し、 R1及び R3がオタタノィル基を表す;
〔14〕 GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに、被験物質及び Z又は リゾホスファチジン酸、その誘導体及びそれらの薬学上許容される塩から選択される 基準物質を接触させ、該 GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに対す る結合活性が、前記基準物質よりも高い化合物を選択することを含む、 GPR92/93リ ガンドのスクリーニング方法;
〔15〕 以下の(a)〜(d)の工程:
(a) 被験物質と、 GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントを接触させる
工程、
(b) (a)における被験物質と GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに 対する結合活性を測定する工程、
(c) 前記 (b)の測定値を、被験物質として基準物質を用いた場合の測定値と比較 する工程、及び
(d) 前記 (c)の結果に基づき、前記 (b)の測定値が前記 (c)の測定値と同等以上で ある被験物質を GPR92/93リガンドとして選択する工程、
を含む、〔14〕に記載のスクリーニング方法;
〔16〕 以下の(a)〜(c)の工程:
(a) 被験物質の存在下及び非存在下で、基準物質、及び GPR92/93又はリガンドが 結合し得るそのフラグメントを接触させる工程、
(b) (a)における基準物質と GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに 対する結合活性を測定し、被験物質存在下における測定値と被験物質非存在下に おける測定値とを比較する工程、及び
(c) 被験物質存在下における前記 (b)の測定値が、被験物質非存在下における前 記 (b)の測定値よりも大きい被験物質を、 GPR92/93リガンドとして選択する工程、 を含む、〔14〕に記載のスクリーニング方法;
〔 17] GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR92/93に共役し得る G蛋白質の αサブ ユニットを含んでなる反応系にお 、て、被験物質及び Ζ又はリゾホスファチジン酸、 その誘導体及びそれらの薬学上許容される塩から選択される基準物質を接触させ、 該サブユニットの GDP'GTP交換反応又は該 G蛋白質の細胞刺激活性力 前記基 準物質よりも高 、化合物を選択することを含む、 GPR92/93リガンドのスクリーニング 方法;
〔18〕 反応系が、
(0 GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターをトランスフエタトした宿主真核 生物細胞、 GO GPR92/93の C末端側に GPR92/93に共役し得る G蛋白質の αサブュ ニットが融合したポリペプチドをコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタト した宿主真核生物細胞、 Gii) GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターでトラ
ンスフ タトした、 GPR92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する宿主動物細 胞、又は Gv) GPR92/93及び GPR92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する動 物細胞、それらの細胞のホモジネート又はそれらの細胞由来の膜画分である、〔17〕 に記載のスクリーニング方法;
〔19〕 以下の(a)〜(d)の工程:
(a) 被験物質と、 GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR92/93に共役し得る Gタン パク質の OCサブユニットを含んでなる反応系を接触させる工程、
(b) (a)における該サブユニットの GDP · GTP交換反応又は該 Gタンパク質の細胞 刺激活性を測定する工程、
(c) 前記 (b)の測定値を、被験物質としてリゾホスファチジン酸、その誘導体及びそ れらの薬学上許容される塩から選択される基準物質を用いた場合の測定値と比較す る工程、及び
(d) 前記 (c)の結果に基づき、前記 (b)の測定値が前記 (c)の測定値と同等以上で ある被験物質を GPR92/93作動薬として選択する工程、
を含む、〔17〕又は〔18〕に記載のスクリーニング方法;
〔20〕 以下の(a)〜(c)の工程:
(a) 被験物質の存在下及び非存在下で、リゾホスファチジン酸、その誘導体及びそ れらの薬学上許容される塩から選択される基準物質、及び GPR92/93を含む脂質二 重層及び GPR92/93に共役し得る Gタンパク質の αサブユニットを含んでなる反応系 を接触させる工程、
(b) (a)における該サブユニットの GDP · GTP交換反応又は該 Gタンパク質の細胞 刺激活性を測定し、被験物質存在下における測定値と被験物質非存在下における 測定値とを比較する工程、及び
(c) 被験物質存在下における前記 (b)の測定値が、被験物質非存在下における前 記 (b)の測定値よりも小さ!/、被験物質を、 GPR92/93拮抗薬として選択する工程、 を含む、〔17〕又は〔18〕に記載のスクリーニング方法;
〔21〕 リゾホスファチジン酸又はその誘導体力 式(1):
〔式中、 R1は、水素原子、炭素数 8〜22のァシル基又は炭素数 8〜22の 1ーァルケ 二ノレ基を表し、
R2は水素原子、 myo イノシトール 1ーィル基、 2—アンモ-ォェチル基又はホスホ ノ基を表し、
R3は水素原子又は炭素数 2〜22のァシル基を表し、 R1及び R3の少なくとも一方は炭 素数 8〜22のァシル基もしくは炭素数 8〜22の 1ーァルケ-ル基を表す。〕 で表される化合物である、〔17〕〜〔20〕に記載のスクリーニング方法;
[22] 式(1)で表される化合物力 リゾホスファチジン酸、 1-Acy卜 PAF又はそれらの 薬学上許容される塩である、〔21〕に記載のスクリーニング方法;
〔23〕 式(1)において、
R
2及び R
3が以下の組み合わせを表すことを特徴とする、
〔21〕に記載のインスリン分泌促進薬:
1) R1がォレオイル基を表し、 R2及び R3が水素原子を表す;
2) R1がパルミトイル基を表し、 R2がァセチル基を表し、 R3が 2—アンモ-ォェチル基 を表す;
3) R1がドコサへキサエノィル基を表し、 R2及び R3が水素原子を表す;
4) R3がドコサへキサエノィル基を表し、 R2及び R1が水素原子を表す;
5) R1がステアロイル基を表し、 R3が水素原子を表し、 R2が、 myo—イノシトール— 1— ィル基を表す;
6) R3がステアロイル基を表し、 R1が水素原子を表し、 R2が、 myo—イノシトール— 1— ィル基を表す;又は
7) R2がホスホノ基を表し、 R1及び R3がオタタノィル基を表す;
〔24〕 被験物質が GPR92/93作動薬であることを指標として化合物を選択することを 含む、インスリン分泌促進薬のスクリーニング方法;
〔25〕 GPR92/93,又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに被験物質を接触させ
、該 GPR92/93又は該フラグメントに結合する化合物を選択することを特徴とする、 [2 4〕に記載の方法;
〔26〕 GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR92/93に共役し得る G蛋白質の αサブ ユニットを含んでなる反応系にお 、て、該サブユニットの GDP · GTP交換反応又は 該 G蛋白質の細胞刺激活性を、被験物質の存在下と非存在下で比較する工程を含 む、〔24〕に記載の方法;
[27] 反応系が、
(0 GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターをトランスフエタトした宿主真核 生物細胞、 GO GPR92/93の C末端側に GPR92/93に共役し得る G蛋白質の αサブュ ニットが融合したポリペプチドをコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタト した宿主真核生物細胞、 Gii) GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターでトラ ンスフ タトした、 GPR92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する宿主動物細 胞、又は Gv) GPR92/93及び GPR92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する動 物細胞、それらの細胞のホモジネート又はそれらの細胞由来の膜画分である、〔26〕 に記載のスクリーニング方法;
〔28〕 以下の(a)〜(d)の工程:
(a) 被験物質と、 GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR92/93に共役し得る Gタン パク質の OCサブユニットを含んでなる反応系を接触させる工程、
(b) (a)における該サブユニットの GDP · GTP交換反応又は該 Gタンパク質の細胞 刺激活性を測定する工程、及び
(c) (b)の結果に基づき、細胞刺激活性を有する被験物質を GPR92/93作動薬とし て選択する工程、
を含む、〔26〕又は〔27〕に記載のスクリーニング方法;
〔29〕 〔14〕〜〔19〕のいずれかに記載の方法で、被験物質が GPR92/93作動薬であ るか否かを評価することを含む、〔24〕に記載の方法;
〔30〕 インスリン分泌促進薬が血糖調節薬である、〔24〕〜〔29〕のいずれかに記載 のスクリーニング方法;
〔31〕 インスリン分泌促進薬が耐糖能異常改善薬である、〔24〕〜〔29〕のいずれか
に記載のスクリーニング方法;
〔32〕 インスリン分泌促進薬が糖尿病治療薬である、〔24〕〜〔29〕のいずれかに記 載のスクリーニング方法;
〔33〕 〔24〕〜〔29〕の 、ずれかに記載の方法により得られるインスリン分泌促進薬; 〔34〕 血糖調節薬であることを特徴とする、〔33〕に記載のインスリン分泌促進薬; 〔35〕 耐糖能異常改善薬であることを特徴とする、〔33〕に記載のインスリン分泌促 進薬;
〔36〕 生活習慣病治療薬であることを特徴とする、〔33〕に記載のインスリン分泌促 進薬;
〔37〕 糖尿病治療薬であるであることを特徴とする、〔33〕に記載のインスリン分泌促 進薬;
〔38〕 GPR92/93拮抗薬を有効成分として含有する、脂肪蓄積抑制薬;
〔39〕 抗肥満薬であることを特徴とする、〔38〕に記載の脂肪蓄積抑制薬;
〔40〕 被験物質が GPR92/93拮抗薬であることを指標として化合物を選択することを 含む、脂肪蓄積抑制薬のスクリーニング方法;
〔41〕 被験物質の存在下又は非存在下で、 GPR92/93又はリガンドが結合し得るそ のフラグメントに、リゾホスファチジン酸、その誘導体及びそれらの薬学上許容される 塩から選択される基準物質を接触させ、基準物質と該 GPR92/93又は該フラグメント の結合を阻害する化合物を選択することを特徴とする、〔40〕に記載の方法; 〔42〕 被験物質の存在下又は非存在下で、 GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR 92/93に共役し得る G蛋白質の αサブユニットを含んでなる反応系にリゾホスファチジ ン酸、その誘導体及びそれらの薬学上許容される塩から選択される基準物質を接触 させ、当該基準物質の該サブユニットの GDP'GTP交換反応又は該 G蛋白質の細 胞刺激活性を阻害する化合物を選択することを特徴とする、〔40〕に記載の方法; 〔43〕 反応系が、
(0 GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターをトランスフエタトした宿主真核 生物細胞、 GO GPR92/93の C末端側に GPR92/93に共役し得る G蛋白質の αサブュ ニットが融合したポリペプチドをコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタト
した宿主真核生物細胞、 Gii) GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターでトラ ンスフ タトした、 GPR92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する宿主動物細 胞、又は Gv) GPR92/93及び GPR92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する動 物細胞、それらの細胞のホモジネート又はそれらの細胞由来の膜画分である、〔42〕 に記載のスクリーニング方法;
〔44〕 脂肪蓄積抑制薬が抗肥満薬である、〔40〕〜〔43〕のいずれかに記載のスクリ 一二ング方法;
〔45〕 〔40〕〜〔43〕の 、ずれかに記載の方法により得られる脂肪蓄積抑制薬; 〔46〕 抗肥満薬であることを特徴とする、〔45〕に記載の脂肪蓄積抑制薬; 〔47〕 以下の工程を含むことを特徴とする生体由来脂肪酸誘導体の製造方法:
(a)固相抽出樹脂と生体由来サンプルを接触させ、生体由来脂肪酸誘導体および 低分子成分を吸着させる工程、及び
(b) 10%〜95%の親水性有機溶媒を含む水溶液により、生体由来脂肪酸誘導体含 有画分および低分子成分を溶出する工程。
本発明のさらなる特徴及び本発明の利点について、以下により詳細に説明する。 発明の効果
[0013] 本発明により、ォーファン Gタンパク質結合受容体(GPCR): GPR92/93のァゴ-スト リガンド、当該リガンドを用いて GPR92/93作動薬もしくは拮抗薬をスクリーニングする 方法等を提供することが可能になった。また、本発明の GPR92/93作動薬は、インスリ ン分泌促進活性を示し、耐糖能異常改善薬、糖尿病治療薬となり得る。
発明を実施するための最良の形態
[0014] 本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による 表示は、 IUPAC— IUBの規定〔IUPAC- IUB Communication on Biological Nomencl ature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書 等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用 記号に従う。
[0015] 本明細書において、「GPR92/93」とは、 GPCRの一種として知られているタンパク質 であり、具体的には配列番号 2で表されるタンパク質 (ヒト GPR92/93)を例示すること
ができる〔Genbank Acc. No. NM_020400 ; Gene, 275(1), p83- 91(2001)を参照〕。 また、本明細書において、 GPR92/93には、同族体 (ホモログ)および変異体等が包 含される。例えば、同族体 (ホモログ)としては、ヒトのタンパク質に対応するマウスなど 他生物種のタンパク質が例示でき、これらは HomoloGene (http: //www.ncbi.nlm.nih. gov/HomoloGene/)により同定された遺伝子の塩基配列力 演繹的に同定すること ができる。具体的には、配列番号 4もしくは 10で表されるマウス GPR92/93 (Genbank Acc. No. XM_355812)を挙げることができる。
また変異体としては、天然に存在するアレル変異体及び天然に存在しな 、変異体 が挙げられ、具体的には(a)配列番号 2に記載のアミノ酸配列において 1もしくは複 数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列力もなり、 GPCRの機能を 保持するタンパク質、(b)配列番号 2に記載のアミノ酸配列と 80%以上の配列同一 性を有するアミノ酸配列力もなり、 GPCRの機能を保持するタンパク質、(c)配列番号 1に記載の塩基配列からなる DNAと相補的な塩基配列力 なる DNAと、ストリンジ ントな条件下でノヽイブリダィズする DNAによりコードされるアミノ酸配列カゝらなり、 GPC Rの機能を保持するタンパク質が挙げられる。
ここで、 「GPCRの機能を保持する」とは、具体的には配列番号 2で表される天然のヒ ト GPR92/93と同じリガンド—レセプター相互作用を示し、且つ共役する G aを活性化 して該 G aの GDP · GTP交換反応を促進する活性を有するタンパク質を ヽぅ。
また、前記 (a)における、アミノ酸の「欠失、付加もしくは置換」や前記 (d)における「 80%以上の配列同一性」には、例えば、配列番号 2で表されるアミノ酸配列を有する 蛋白質が細胞内で受けるプロセシング、該蛋白質が由来する生物の種差、個体差、 組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。 前記 (b)におけるアミノ酸の「欠失、付加もしくは置換」(以下、総じてアミノ酸の改変と 記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号 2で表され るアミノ酸配列をコードする DNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後 この DNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法と しては、例えば、アンバー変異を利用する方法 (ギャップド'デュプレックス法、 Nucleic Acids Res., 12, 9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いた PCRによる方法
等が挙げられる。前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも 1残基、具体 的には 1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、 GPCRの機能を保 持することのできる範囲であれば良 、。
[0017] 前記 (b)における「配列同一性」とは、 2つの DNA又は 2つの蛋白質間における配 列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわ たって、最適な状態にアラインメントされた 2つの配列を比較することにより決定される 。ここで、比較対象の DNA又は蛋白質は、 2つの配列の最適なアラインメントにおい て、付加又は欠失 (例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に 関しては、例えば、 Vector NTIを用いて、 ClustalWアルゴリズム (Nucleic Acid Res., 2 2(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することが できる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的には Vector NTI、 GENETYX- M ACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共 データベースは、 f列えば、ホームページアドレス http://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて 一般的に利用可能である。本発明における配列同一性は、 80%以上であればよい 力 好ましくは 90%以上、より好ましくは 95%以上、さらにより好ましくは 97%である。
[0018] また、前記 (c)における「ストリンジヱントな条件」に関して、ここで使用されるハイプリ ダイゼーシヨンは、例えば、 Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラーク ローニング第 2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法 に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、 6xSSC (l . 5 M NaCl、0. 15M クェン酸三ナトリウムを含む溶液を lOxSSCとする)、 50%フオルム アミドを含む溶液中で 45°Cにてハイブリッドを形成させた後、 2xSSCで 50°Cにて洗浄 するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1- 6.3.6)等 を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、 2xSSCで 50°Cの条 件(低ストリンジエンシーな条件)力ら 0. 2xSSCで 50°Cまでの条件(高ストリンジェンシ 一な条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温( 低ストリンジエンシーな条件)から 65°C (高ストリンジエンシーな条件)までの温度から 選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
前記 (c)における「相補的な塩基配列」とは、 GPR92/93をコードする DNAの塩基 配列に対して、 A:Tおよび G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な 関係にあるポリヌクレオチドを意味するものである。
本明細書において、 GPR92/93には、前記 GPR92/93をコードする DNAを含む組換 え細胞力 製造される組換え GPR92/93、それらの機能的フラグメントの全てを包含 する意味で使用される。
[0019] 「GPR92/93をコードする塩基配列からなる DNA」は、前記 GPR92/93のアミノ酸配 列をコードする DNAを表し、ヒト及び他の哺乳動物由来の GPR92/93、あるいは該 GP R92/93のアミノ酸配列において、 1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付カロ または修飾されたアミノ酸配列力 なり、天然 GPR92/93と同じリガンドーレセプター相 互作用を示し、且つ共役する G aを活性ィ匕して該サブユニットの GDP ' GTP交換反 応を促進する活性を有するポリペプチドをコードする DNAであれば特に制限はない 。ヒト GPR92/93 cDNAのコーディング領域の他、ゥシ、ブタ、サル、マウス、ラット等の ヒト以外の哺乳動物由来の GPR92/93をコードする DNA等が例示され、これらは、哺 乳動物の脾臓、もしくは腎臓、肺の細胞由来の cDNAライブラリーもしくはゲノミツクラ イブラリーから、ヒト GPR92/93の cDNAクローンをプローブとして単離され得る。また、 GPR92/93は、ヒト GPR92/93の cDNAクローンを基に、部位特異的変異誘発等の人 為的処理により一部に変異を導入したものであってもよい。
具体的には、配列番号 1で表されるヒト由来の GPR92/93をコードする DNA、配列番 号 3もしくは 9で表されるマウス由来の GPR92/93をコードする DNA等が挙げられる。
[0020] GPR92/93は、 GPR92/93又はそのフラグメントをコードする DNAを含む発現べクタ 一でトランスフエタトされた細胞の膜含有画分から、抗 GPR92/93抗体を用いたァフィ 二ティークロマトグラフィーにより単離することができる。あるいは、当該細胞由来の c
DNAライブラリーもしくはゲノミックライブラリーから、 GPR92/93の cDNAクローンをプ ローブとして単離される DNAクローンを適当な発現ベクター中にクローユングし、宿 主細胞に導入して発現させ、細胞培養物の膜含有画分から抗 GPR92/93抗体や、 Hi s-tag、 GST-tag等を用いたァフィユティークロマトグラフィーにより精製することもでき る。また、 GFP等の蛍光物質と GPR92/93の融合タンパク質を発現させることにより、 G
FP陽性細胞、すなわち GPR92/93がトランスフエタトされた細胞のみを選択してスクリ 一ユングに用いることも可能である(Xu et al., Nat. Cell Biol, 2, 261-267 (2000) )。 また、 GPR92/93の cDNAクローンを基に、部位特異的変異誘発等の人為的処理に より一部に変異を導入したものであってもよい。しかしながら、リガンド結合ドメインは 高度に保存されている必要があるので、このような領域には変異を導入しないことが 望ましい。保存的アミノ酸置換は周知であり、当業者は GPR92/93の特性を変化させ な!、範囲で、 GPR92/93に適宜変異を導入することができる。
[0021] 「GPR92/93リガンド」とは、特にことわらない限り、後述するリゾホスファチジン酸及 びその誘導体だけでなぐァゴ-スト (即ち、レセプターの生理的リガンド結合部位に 結合して、リガンド様の活性を示す物質)やアンタゴ-スト(レセプターの生理的リガン ド結合部位に結合するが、リガンド様の活性を示さな 、物質)及びインバースァゴ- スト(レセプターのいずれかの部位に結合してそのコンフオメーシヨンを変化させ、レ セプターを不活性ィ匕する物質)をも包含するものとする。
[0022] 本明細書において、「GPR92/93作動薬」とは、 GPR92/93に結合して該レセプター の活性を促進する物質の総称として用いられ、後述するリゾホスファチジン酸に代表 されるリゾホスファチジン酸誘導体等の他、 GPR92/93に対するァゴニスト活性を有す るあらゆる化合物を包含する。
本明細書において、「GPR92/93拮抗薬」とは、 GPR92/93に結合して該レセプター のシグナル伝達活性を阻害する物質の総称として用いられ、前記の GPR92/93アンタ ゴ-スト及び GPR92/93インバースァゴ-ストに相当する。
[0023] (D GPR92/93作動薬
本発明の第一の態様は、リゾホスファチジン酸、その誘導体又はそれらの薬学上許 容される塩を有効成分とする GPR92/93作動薬、及び GPR92/93作動薬からなるイン スリン分泌促進薬等に関する。
本明細書において、リゾホスファチジン酸 (以下 LPAと略する場合がある)とは、 1 アシノレ sn グリセ口一ノレ—3—ホスフェート ( 1— Acy卜 sn— glycero卜 3— phosphate)を 表す。ここで「ァシル」は、炭素数 14〜22であり、 0〜6の二重結合を有する直鎖のァ シル基を表す。具体的には、式(2):
[0024] [化 4]
で表される LPA (18:1)、式(3):
で表される LPA (22:6)が挙げられる。
[0026] 本明細書にぉ 、て、リゾホスファチジン酸誘導体(LPA誘導体)とは、 LPAにお!/ヽて 、以下の (i)〜(vii)の 1又は複数の改変が施されたィ匕合物等が挙げられる:
(01位ァシルォキシ基を水酸基、メルカプト基、アミノ基、炭素数 1〜4のアルコキシ基 、炭素数 1〜4のアルキルチオ基、炭素数 1〜4のアルキルアミノ基又は炭素数 1〜4 のジアルキルアミノ基に変換する改変、
(ii) l位炭素原子を、カルボ-ル基もしくはチォカルボ-ル基に変換する改変、
(iii) 1位ァシルォキシ基におけるエステルをアミドもしくはチォエステルに変換する改 変、
(iv) 2位水酸基をァシルォキシ基、メルカプト基、アミノ基、炭素数 1〜4のアルコキシ 基、炭素数 1〜4のアルキルチオ基、炭素数 1〜4のアルキルアミノ基又は炭素数 1〜 4のジアルキルアミノ基に変換する改変、
(v) 2位水酸基がァシルイ匕されたィ匕合物において、エステルをアミドもしくはチォエステ ルに変換する改変、
(vi) 3位リン酸基とコリン、リン酸もしくはイノシトールを縮合させる改変、又は
(vii) l位ァシルォキシ基におけるエステル結合部分力 ビュルエーテル結合に変換さ れたプラズマローゲン (plasmalogen)への改変。
[0027] LPA又は LPA誘導体として具体的には、以下の式(1):
〔式中、 R1は、水素原子、炭素数 8〜22のァシル基又は炭素数 8〜22の 1ーァルケ 二ノレ基を表し、
R2は水素原子、 myo イノシトール 1ーィル基、 2—アンモ-ォェチル基又はホスホ ノ基を表し、
R3は水素原子又は炭素数 2〜22のァシル基を表し、 R1及び R3の少なくとも一方は炭 素数 8〜22のァシル基もしくは炭素数 8〜22の 1ーァルケ-ル基を表す。〕で表され る化合物が挙げられる。
ここで炭素数 8〜22のァシル基としては 0〜6の二重結合を有して!/、てもよ!/、直鎖 のァシル基が挙げられる。炭素数 2〜22のァシル基としては、 0〜6の二重結合を有 して 、てもよ 、直鎖のァシル基が挙げられる。
また、炭素数 8〜22の 1—アルケニル基としては、前記ァシル基のエステル部分構 造力 ビニルエーテルに改変された基が挙げられる。即ち、 R1が 1—アルケニル基を 表す式(1)の化合物としては、 Plasmalogenが挙げられる。
式(1)で表される化合物としては、上述の LPAの他、式(5):
[化 7]
で表される 1 - O-パルミトイル 2— 0-ァセチル sn グリセリル 3 ホスホリルコ リン ( 1 -O-palmitoyl-2-O-acetyl-sn-glyceryl- j-phosphorylcnoline; 1 -Acyl-PAF) ^ 式 (6) :
で表される 1-リゾホスファチジル -sn-グリセ口- 3-ホスホノ -(1-D-myo-イノシトール)(以 下 LPI (18 : 0)と略する場合がある)、式(7):
[0031] [化 9]
で表されるジァシルグリセロールピロホスフェート〔Diacylglycero卜 pyrophosphate; DG PP(8:0)と称する場合がある〕、ホスファチジン酸(Phosphatidic acid ; PA)、又はリゾホ スファチジルコリン(Lysophosphatidylcholine ; LPC)等が挙げられる。ここで、 PAとし ては、 1,2-ジ(シス一 9—ォクタデセノィル) sn—グリセロール 3 ホスフェート ナ トリウム ¾_ (1,2— Di(cis— 9— octadecenoyl)—sn— glycerol 3-pnospnate sodium saltj等力罕 げられる。また、 LPCとしては、巿販ゥシ由来 LPC〔ゥシ脳 L- α リゾホスファチジルコ リン〕が挙げられる。
また、式(1)で表される化合物として、リゾホスファチジルコリン プラズマロゲン(Lys ◦phosphatidylcholine plasmalogen ;例えば巿販ゥシ心臓 L- a—リゾホスファチジノレコ リン プラズマロゲン)が挙げられる。
更に、上記式(5)〜式(7)で表される化合物において、グリセロール骨格の 1位ァシ ルォキシ基、 2位水酸基もしくはァシルォキシ基又は 3位リン酸基が改変された化合 物もまた LPA誘導体に含まれ、改変としては前記の (i)〜(vii)が挙げられる。
また、 LPAもしくは LPIにお 、て 1位ァシル基が 2位水酸基に転移した 2位ァシルォキ シ体もまた、本発明における LPA又は LPIの範疇である。
[0032] 又は以下の式 (4) :
[0033] [化 10]
(4)
で表される Ν—パルミトイルー L—セリンホスホリックアシッド(Ν- Palmitoy卜 L- serine- ρ hosphoric acid; L- NASPA)も又、本発明の GPR92/93作動薬に含まれる。
本発明の LPA、 LPA誘導体及び L-NASPAは、薬学上許容される塩を形成していて もよぐ具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはセシウム塩等のアルカリ金属塩、 カルシウム塩もしくはマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、亜鉛塩等の無機金属 塩、トリェチルァミン塩、トリエタノールアミン塩、トリヒドロキシメチルァミノメタン塩もしく はピリジ-ゥム塩等の有機塩、アンモ-ゥム塩等が挙げられる。
[0034] 本発明にお!/、て、 GPR92/93作動薬として具体的には、上記の LPA、 LPA誘導体又 は L-NASPAが挙げられる。すなわち上記 LPA、 LPA誘導体又は L-NASPAは、 GPR92 /93に対するァゴ-スト活性を有する化合物である。ここで GPR92/93に対するァゴ- スト活性とは、後述する GPR92/93に結合することによって GPCRの機能を生じさせる 活性を表す。
[0035] 本明細書実施例に示すとおり、 GPR92/93作動薬は脾臓ランゲルハンス氏島細胞 においてインスリン分泌促進活性を示し、耐糖能異常改善薬、糖尿病治療薬等とし て有効である。
[0036] 本発明の GPR92/93作動薬、好ましくは LPA、 LPA誘導体、 L-NASPAもしくはそれら の薬学上許容される塩、又は後述する本発明のスクリーニング方法により得られる GP R92/93作動薬もしくは拮抗薬は、医薬上許容される担体とともに経口的もしくは非経 口的投与に適した剤形に製剤化される。医薬上許容される担体としては、例えば、シ ョ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸 カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシ プロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリ コール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロ キシプロピルスターチ、ナトリウムーグリコールースターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸 カルシウム、クェン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エア口ジル、 タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クェン酸、メントール、グリシルリシン'アンモ
ニゥム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウ ム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クェン酸、クェン酸ナトリウム、酢 酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビュルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等 の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤 、カカオ脂、ポリエチレングリコーノレ、白灯油等のベースワックスなどが挙げられる力 それらに限定されるものではない。
[0037] 経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、オレンジジュースのような希釈液に有 効量の GPR92/93作動薬を溶解させた液剤、有効量の GPR92/93作動薬を固体ゃ顆 粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量 の GPR92/93作動薬を懸濁させた懸濁液剤、有効量の GPR92/93作動薬を溶解させ た溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。ここで「有効量」とは 、 GPR92/93作動薬を耐糖能異常患者、糖尿病患者または他の生活習慣病患者の 治療のために使用する場合にそれぞれの疾患を改善させるのに十分な量をいう。
[0038] 非経口的な投与 (例えば、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所 注入、腹腔内投与など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の 注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていて もよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可 溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。あるいは、コラーゲン 等の生体親和性の材料を用いて、徐放性製剤とすることもできる。
[0039] 当該 GPR92/93作動薬の製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは 複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、 GPR92/93作動薬、および医 薬上許容される担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または 懸濁すればよ!、状態で保存することもできる。
[0040] GPR92/93作動薬を有効成分とする本発明の製剤の投与量は、有効成分の種類、 投与経路、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、 年齢等によって異なる力 GPR92/93作動薬を、例えば、成人 1日あたり約 0. 01〜約 lOOOmg/kg,好ましくは約 0. 1〜約 500mgZkg投与することができる。
[0041] (Π)スクリーニング方法
本発明の GPR92/93作動薬はまた、以下に述べるとおり、 GPR92/93リガンド、すな わち GPR92/93作動薬もしくは GPR92/93拮抗薬をスクリーニングするためのスクリー ユングツールとして有用である。
すなわち本発明の第 2の態様は、 GPR92/93リガンド、すなわち GPR92/93作動薬又 は拮抗薬のスクリーニング方法に関する。
本発明はまた、 GPR92/93作動薬のスクリ一ユング系及びそれを用 、た当該リガンド のスクリ一二ング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法における被験物質としては、いかなる公知化合物及び 新規ィ匕合物であってもよぐ例えば、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製さ れたィ匕合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダ ムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が 挙げられる。被験物質は好ましくは分子量 200〜2000の化合物であり、更に好まし くは分子量 300〜800の化合物である。例えば、被験物質として上記 LPA誘導体な どの脂肪酸誘導体を用いることにより、効率良く GPR92/93作動薬を評価することがで きる。
(1) 結合活¾の測定によるスクリーニング
本発明のスクリーニング方法は、 LPA、 LPA誘導体、 L-NASPA及びこれらの薬学上 許容される塩から選択される基準物質の GPR92/93に対する結合活性を指標として、 当該基準物質よりも結合活性が大きい被験物質を GPR92/93リガンドとして選択する ことを特徴とする方法である。 すなわち、本発明のスクリーニング方法は、 GPR92/93 又はリガンドが結合し得るそのフラグメント(以下これらを併せて「GPR92/93等」と称す る場合がある)に、被験物質及び Z又はリゾホスファチジン酸、その誘導体及びそれ らの薬学上許容される塩から選択される基準物質を接触させ、該 GPR92/93又はリガ ンドが結合し得るそのフラグメントに対する結合活性が、前記基準物質よりも高い化 合物を選択することを含む。
具体的には、以下の(a)〜(d)の工程:
(a) 被験物質と、 GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントを接触させる 工程、
(b) (a)における被験物質と GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに 対する結合活性を測定する工程、
(c) 前記 (b)の測定値を、被験物質として基準物質を用いた場合の測定値と比較 する工程、及び
(d) 前記 (c)の結果に基づき、前記 (b)の測定値が前記 (c)の測定値と同等以上で ある被験物質を GPR92/93リガンドとして選択する工程、
を含む、スクリーニング方法が挙げられる。
この場合、被験物質と GPR92/93等との結合活性は、例えば、 GPR92/93等の細胞 膜画分をチップ上に固定し、該チップ上に被験物質溶液をロードして、表面ブラズモ ン共鳴法により被験物質の膜への結合及び解離を測定し、結合及び解離の速度あ るいは結合量から、被験物質と GPR92/93等との親和性を算出することにより導かれ る。
[0043] また、以下の(a)〜(c)の工程:
(a) 被験物質の存在下及び非存在下で、基準物質、及び GPR92/93又はリガンドが 結合し得るそのフラグメントを接触させる工程、
(b) (a)における基準物質と GPR92/93又はリガンドが結合し得るそのフラグメントに 対する結合活性を測定し、被験物質存在下における測定値と被験物質非存在下に おける測定値とを比較する工程、及び
(c) 被験物質存在下における前記 (b)の測定値が、被験物質非存在下における前 記 (b)の測定値よりも大きい被験物質を、 GPR92/93リガンドとして選択する工程、 を含む、スクリーニング方法が挙げられる。
ここで用いられる例えば LPA、 L- NASPA、 1- Acyl- PAF、 LPI、 DGPP(8:0)、 LPC、 LP C plasmalogen等の基準物質は下記に述べるように適宜放射性同位元素等で標識 することができ、標識された化合物も LPA又は LPA誘導体の概念に含まれる。
上記の方法で選択される GPR92/93リガンドカ GPR92/93作動薬である力、 GPR92 /93拮抗薬であるかについては、以下に述べる G蛋白質を用いるスクリーニング方法 等により確認することができる。
[0044] 上記の!/、ずれの態様にお 、ても、 GPR92/93又はそのフラグメントは、それらの発現
細胞、該細胞の細胞膜画分、あるいはァフィユティーカラムに結合した形態で提供さ れ得る。 GPR92/93の発現細胞としては、 GPR92/93又はそのフラグメントをコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタトされた細胞等が挙げられる。また、ァフィ ユティーカラムとしては、抗 GPR92/93抗体カラム、リガンドを用いたカラム、また、 GPR 92/93が組換えタンパク質として提供される場合、 Hisタグや GSTタグと特異的親和性 を有する金属キレートもしくはダルタチオンカラムを用いることができる。
[0045] GPR92/93またはそのフラグメントとリガンドとの結合活性の検出する方法としては、 例えば、リガンド量を検出する方法、またはリガンドを標識して、 GPR92/93またはその フラグメントに結合した標識量を測定する方法が挙げられる。
リガンドの標識方法としては、 3H、 14C、 32Pおよび 33P等の放射性同位元素で標識 する方法等が挙げられる。具体的には、脂肪酸部分の水素原子が 3Hでラベルされた LPA誘導体またはリン原子が 32Pでラベルされた LPA誘導体等を用いることができ、 例えば、 32P- labelled LPA、及び 1-ォレオイル [ォレオイル- 9,10- 3H] LPA (1- 01eoyl[ oleoyl-9, 10-JH]LPA; NEN Life Science Products市販品; Songzhu An,et al J Biol C hem, Vol. 273, Issue 14, 7906-7910, April 3, 1998)を用いることができる。
また、ァセチル基の水素原子がトリチウムでラベルされた 1-Acy卜 PAF (Registry No. : 163005-42-3の化合物)や、パルミトイル基の水素原子がトリチウムでラベルされた 1- Acyl-PAF (Registry No. :112602-69-4の化合物)、パルミトイル基のカルボ-ル基の 炭素原子が 14Cでラベルされた 1-Acy卜 PAF (Registry No.:112015-19-7の化合物) を挙げることができる [Methods in Enzymology (1987), 141(Cell. ReguL, Pt. B), 301- 13を参照]。
[0046] (2) シグナル伝達の測定によるスクリーニング
GPR92/93は、ある種の三量体 G蛋白質と共役して細胞内にシグナルを伝達する。 従って、本発明はまた、 GPR92/93を含む脂質二重層と、 GPR92/93と共役する G蛋 白質 (特に G aサブユニット)とを用いた GPR92/93リガンドのスクリーニング方法を提 供する。すなわち、本発明は GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR92/93に共役し 得る G蛋白質の aサブユニットを含んでなる反応系にお 、て、被験物質及び Z又は リゾホスファチジン酸、その誘導体、 L-NASPA及びそれらの薬学上許容される塩から
選択される基準物質を接触させ、該サブユニットの GDP'GTP交換反応又は該 G蛋 白質の細胞刺激活性が、前記基準物質よりも高い化合物を選択することを含む、 GP R92/93リガンドのスクリーニング方法を包含する。
具体的には、以下の(a)〜(d)の工程:
(a) 被験物質と、 GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR92/93に共役し得る Gタン パク質の OCサブユニットを含んでなる反応系を接触させる工程、
(b) (a)における該サブユニットの GDP · GTP交換反応又は該 Gタンパク質の細胞 刺激活性を測定する工程、
(c) 前記 (b)の測定値を、被験物質として基準物質を用いた場合の測定値と比較 する工程、及び
(d) 前記 (c)の結果に基づき、前記 (b)の測定値が前記 (c)の測定値と同等以上で ある被験物質を GPR92/93作動薬として選択する工程、
を含む、 GPR92/93作動薬のスクリーニング方法が挙げられる。
また、以下の(a)〜(c)の工程:
(a) 被験物質の存在下及び非存在下で、基準物質、及び GPR92/93を含む脂質二 重層及び GPR92/93に共役し得る Gタンパク質の αサブユニットを含んでなる反応系 を接触させる工程、
(b) (a)における該サブユニットの GDP · GTP交換反応又は該 Gタンパク質の細胞 刺激活性を測定し、被験物質存在下における測定値と被験物質非存在下における 測定値とを比較する工程、及び
(c) 被験物質存在下における前記 (b)の測定値が、被験物質非存在下における前 記 (b)の測定値よりも小さ!/、被験物質を、 GPR92/93拮抗薬として選択する工程、 を含む、 GPR92/93拮抗薬のスクリーニング方法が挙げられる。
上記において、「GPR92/93を含む脂質二重層及び GPR92/93に共役し得る G蛋白 質の αサブユニットを含んでなる反応系」として、具体的には、 (0 GPR92/93をコード する DNAを含む発現ベクターをトランスフエタトした宿主真核生物細胞、(ii) GPR92/ 93の C末端側に GPR92/93に共役し得る G蛋白質の αサブユニットが融合したポリべ プチドをコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタトした宿主真核生物細
胞、(iii) GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタトした、 GPR 92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する宿主動物細胞、又は (iv) GPR92/9 3及び GPR92/93に共役し得る G蛋白質を内因的に発現する動物細胞、それらの細 胞のホモジネート又はそれらの細胞由来の膜画分等が挙げられる。
[0048] 一般に、 GPCR作動薬のスクリーニングは、 G aにおける GTP · GDP交換反応また は共役する G蛋白質の細胞刺激活性を指標として行われる。 G蛋白質の細胞刺激活 性を指標とする場合、共役させる G aの態様に応じて、エフェクターの選択や活性測 定方法等の具体的な手順が決定されるが、通常、アデ二ル酸シクラーゼと相互作用 する領域を含む G a (具体的には Giファミリー又は Gsファミリーに属する G aのェフエ クタ一相互作用領域を含む)を用いる場合には例えば cAMP量を測定することにより 、ホスホリパーゼ C |8と相互作用する領域を含む G o; (具体的には Gqファミリーに属 する G aのエフェクター相互作用領域を含む)を用いる場合には例えば細胞内カル シゥムイオンの量を測定することにより、 GPCR作動薬をスクリーニングすることができ る。
本発明実施例が示すとおり、 GPR92/93の G o;は Gsファミリーに属すると考えられる
[0049] また、 G aの供給源として該 G aを含む三量体 G蛋白質 (G α β y )を内因的に発 現する動物細胞 (例えば、 HEK293細胞、 L1. 2細胞等)を用いる場合、 GPR92/93 によって活性化された G α j8 γは G αと G j8 γに解離する力 遊離の G β yはホスホ リパーゼ C |8に相互作用して細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ得るので、共役 する G aのファミリーに関係なく細胞内カルシウムイオンを指標にしてリガンドスタリー ニングを行うことも可能である。
[0050] 本発明のスクリーニングで用いられる GPR92/93は、 GPR92/93又はそのフラグメント をコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタトされた細胞の膜含有画分か ら、抗 GPR92/93抗体を用いたァフィユティークロマトグラフィーにより単離することが できる。あるいは、当該細胞由来の cDNAライブラリーもしくはゲノミックライブラリーか ら、 GPR92/93の cDNAクローンをプローブとして単離される DNAクローンを適当な 発現ベクター中にクロー-ングし、宿主細胞に導入して発現させ、細胞培養物の膜
含有画分から抗 GPR92/93抗体や、 His- tag、 GST- tag等を用いたァフィユティークロ マトグラフィ一により精製することもできる。また、 GFP等の蛍光物質と GPR92/93の融 合蛋白質を発現させることにより、 GFP陽性細胞、すなわち GPR92/93がトランスフエク トされた細胞のみを選択してスクリーニングに用いることも可能である(Xu et al., Nat. Cell Biol, 2, 261-267 (2000) )。また、 GPR92/93の cDNAクローンを基に、部位特 異的変異誘発等の人為的処理により一部に変異を導入したものであってもよい。し 力しながら、リガンド結合ドメインは高度に保存されている必要があるので、このような 領域には変異を導入しないことが望ましい。保存的アミノ酸置換は周知であり、当業 者は GPR92/93の特性を変化させな 、範囲で、 GPR92/93に適宜変異を導入すること ができる。
[0051] GPR92/93を保持する脂質二重層膜の由来は、当該レセプターが本来の立体構造 をとることができる限り特に制限されないが、好ましくはヒト、ゥシ、ブタ、サル、マウス、 ラット等の哺乳動物細胞の細胞膜を含有する画分、例えば、無傷細胞、細胞ホモジ ネート、あるいは該ホモジネートから遠心分離等により分画される細胞膜画分が挙げ られる。また、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、コレステロール等 の各種脂質を適当な比率、好ましくは哺乳動物細胞の細胞膜におけるそれに近い 比率で混合した溶液力ゝら常法により調製される人工脂質二重膜もまた、本発明の一 実施態様において好ましく使用され得る。
[0052] GPR92/93と共役する G aは、少なくとも該 G aの GPCRとの結合に関与する領域 及び任意の G aのグァニンヌクレオチドとの結合に関与する領域を有することが必要 である。具体的には、 GPR92/93と共役する G aは Gsファミリーに属する(Gs a )と考 えられるので、用いる G aは Gs aの GPCR結合領域を少なくとも有し、 Gs aのグァ- ンヌクレオチド結合領域もしくは他のファミリーに属する G a由来のグァニンヌクレオ チド結合領域を有するものである。 G aの X線結晶構造解析の結果等から、 GPCRと の結合には C末端の約 5アミノ酸程度の配列が重要であり、一方、グァニンヌクレオチ ド結合領域は、 ras蛋白質のヌクレオチド結合部位と相同な領域 (N末端側から、 Pボ ッタス、 G,ボックス、 Gボックス、 G"ボックスと呼ばれるアミノ酸モチーフ、並びに高度 にへリックス化したドメイン内の a Eヘリックスの先頭及び a Fヘリックスなど)であるこ
とが明らかになつている。
一方 GPCRと共役する G aが Giファミリーに属する場合 (Gi a )や、 Gqファミリーに 属する場合(Gq α )も同様に、用いる G aはそれぞれ Gi αもしくは Gq aの GPCR結 合領域を少なくとも有し、対応するファミリーに属する G aのグァニンヌクレオチド結合 領域もしくは他のファミリーに属する G a由来のグァニンヌクレオチド結合領域を有す るものである。
[0053] GPR92/93に対する生理的リガンド又はァゴニストが該レセプターに結合すると、該 レセプターの G a活性化ドメインと G aの GPCR結合領域とが相互作用して G aのコ ンフオメーシヨン変化を生じ、グァニンヌクレオチド結合領域力も GDPが解離して速 やかに GTPを結合する。一方、インバースァゴ-ストが結合すると、レセプターのコン フオメーシヨン変化により G a活性ィ匕ドメインが不活性ィ匕されるので、活性化型の G a — GTPレベルが減少する。ここで、 GTPの代わりに 35S標識した GTP y Sなどの G aの GTPase活性によって加水分解を受けな!/ヽ GTPアナログを系に添カ卩しておけば 、被験物質の存在下と非存在下での膜に結合した放射活性を測定'比較することに より、 GPR92/93のァゴ-スト又はインバースァゴ-ストをスクリーニングすることができ る。即ち、被験物質の存在下で放射活性が増加すれば、該被験物質はァゴニストで あり、放射活性が減少すればインバースァゴ-ストである。 35S標識した GTP y S (G ΤΡ [ γ 3 ] )を用いる方法については、 Heise et al., Molecular Pharmacology, 60, 11 73-1180 (2001)、又は Im et al., Molecular Pharmacology, 57, 753-759 (2000)に記載 されている。
尚、 LPA、その誘導体等の生理活性リガンドを共存させた系で、被験物質の存在下 と非存在下での膜に結合した放射活性を測定 '比較することにより、 GPR92/93のアン タゴニストをスクリーニングすることができる。即ち、被験物質の存在下で、被験物質 の非存在下よりも放射活性が減少すれば、該被験物質はアンタゴニストである。
[0054] あるいは、 G aへの GTPアナログの結合を、表面プラズモン共鳴法等を用いてモ- タリングすることによつてもスクリーニングが可能である。
[0055] 前述の細胞刺激活性は、共役する G aのエフェクターへの作用を指標として測定 することもできる。この場合、本発明のスクリーニング系は、 GPR92/93に加えて、さら
にエフェクターを含む脂質二重層膜を構成要素として含む必要がある。また、共役す る G o;は該エフェクターと相互作用するための領域をさらに含む必要がある。当該領 域はその G α本来のエフェクター相互作用領域であってもよいし、異なるファミリーに 属する G aのエフェクター相互作用領域であってもよい。例えば Gs aに対しては異 なるファミリーに属する G aとして Gq α、 Gi α、 G12 α等が挙げられる。異なるファミリ 一に属する G o; (例えば Gqひ)のエフェクター相互作用領域を含む G o; (例えば Gs a )キメラの最も簡便な例としては、 Gq aの C末端の約 5アミノ酸程度を、 Gs aの C末 端配列で置換したもの(Gqs a )が挙げられる。
[0056] GPR92/93と共役する G aが Gs aのエフェクター相互作用領域を含む場合、ェフエ クタ一としてアデ二ル酸シクラーゼを含む脂質二重層膜が用いられる。一方、共役 G aが Gq aのエフェクター相互作用領域を含む場合は、エフェクターとしてホスホリパ ーゼ C βを含む脂質二重層膜を用いる必要がある。
尚、共役 G aが Gs aのエフェクター相互作用領域を含む場合には、エフェクターと してアデ二ル酸シクラーゼを含む脂質二重層膜が用いられ、 Gi aの場合とは逆に、 アデ二ル酸シクラーゼ活性の促進作用を指標としてリガンド活性が評価される。
[0057] エフェクターとしてアデ-ル酸シクラーゼ(以下、 ACともいう)を含むスクリーニング 系(即ち、 G aが Gs aもしくは Gi aであるか又は Gs aもしくは Gi aのエフェクター相 互作用領域を含むキメラ蛋白質 (キメラ Gs aもしくはキメラ Gi a )の場合)にお!/ヽては 、 G aのエフェクターへの作用は、 AC活性を直接測定することにより評価することが できる。 AC活性の測定には公知のいかなる手法を用いてもよぐ例えば、 ACを含む 膜画分に ATPを添カ卩し、生成する cAMP量を、抗 c AMP抗体を用いて RI ( 1251)、 酵素(アルカリホスファターゼ、ペルォキシダーゼ等)、蛍光物質 (FITC、ローダミン 等)等で標識した cAMPとの競合ィムノアッセィにより測定する方法や、 ACを含む膜 画分に [ α - 32P]ATPを添加し、生成する [32P] cAMPをアルミナカラム等で分離後 、その放射活性を測定する方法が挙げられるが、これに限定されない。 G aが Gs a の場合、被験物質の存在下及び非存在下で AC活性を測定'比較し、被験物質存在 下で AC活性が減少すれば被験物質は GPR92/93のインバースァゴ-ストであり、活 性が増加すればァゴニストである。また、 LPA等の生理活性リガンドを共存させた系
で、被験物質の存在下及び非存在下で AC活性を測定 '比較し、被験物質存在下で 被験物質非存在下よりも AC活性が減少すれば被験試料は GPR92/93のアンタゴ- ストである。
一方、 G aが Gi aの場合、被験物質の存在下及び非存在下で AC活性を測定 '比 較し、被験物質存在下で AC活性が増加すれば被験物質は GPR92/93のインバース ァゴ-ストであり、活性が減少すればァゴニストである。また、 LPA等の生理活性リガ ンドを共存させた系で、被験物質の存在下及び非存在下で AC活性を測定,比較し、 被験物質存在下で被験物質非存在下よりも AC活性が増加すれば被験試料は GPR 92/93のアンタゴニストである。
[0058] スクリーニング系として無傷真核生物細胞を用いる場合は、 G aの ACへの作用は 、細胞内の cAMP量を測定する力 あるいは細胞を [3H]アデニンで標識し、生成し た [3H] cAMPの放射活性を測定することによつても評価することができる。細胞内 c AMP量は、被験物質の存在下及び非存在下で細胞を適当な時間インキュベートし た後、細胞を破砕して得られる抽出液について、上記の競合ィムノアツセィを実施す ることにより測定することができる力 公知の他のいかなる方法も使用することができる
[0059] 別の態様として、 cAMP量を cAMP応答エレメント(CRE)の制御下にあるリボータ 一遺伝子の発現量を測定することにより、評価する方法もある。ここで使用される発現 ベクターについては後に詳述する力 概説すると、 CREを含むプロモーターの下流 にリポーター蛋白質をコードする DNAを連結した発現カセットを含むベクターを導入 された動物細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で適当な時間培養し、細胞を 破砕して得られた抽出液におけるリポーター遺伝子の発現を公知の手法を用いて測 定-比較することにより、細胞内 cAMP量を評価するというものである。
[0060] 従って、 G aが Gs aの場合、被験物質の存在下で細胞内 cAMP量 (もしくは CRE 制御下にあるリポーター遺伝子の発現量)が減少すれば、該被験物質は GPR92/93 のインバースァゴ-ストであり、増加すればァゴ-ストである。また、 LPA、その誘導体 等の生理活性リガンドを共存させた系で、被験物質の存在下と非存在下での cAMP 量を測定'比較することにより、 GPR92/93のアンタゴ-ストをスクリーニングすることが
できる。即ち、被験物質の存在下で被験物質の非存在下よりも cAMP量が減少すれ ば該被験物質はアンタゴ-ストである。
一方、 G aが Gi aの場合、被験物質の存在下で細胞内 cAMP (もしくは CRE制御 下にあるリポーター遺伝子の発現量)が増加すれば、該被験物質は GPR92/93のイン バースァゴニストであり、減少すればァゴ-ストである。また、 LPA等の生理活性リガン ドを共存させた系で、被験物質の存在下と非存在下での cAMP量を測定'比較する ことにより、 GPR92/93のアンタゴ-ストをスクリーニングすることができる。即ち、被験 物質の存在下で被験物質の非存在下よりも cAMP量が増加すれば該被験物質はァ ンタゴ二ストである。
[0061] 一方、エフェクターとしてホスホリパーゼ C β (以下、 PLC βとも!/、う)を含むスクリー ユング系(即ち、 G aが Gq aであるか又は Gq aのエフェクター相互作用領域を含む キメラ蛋白質 (キメラ Gq a )の場合)にお 、ては、該 Gq a又はキメラ Gq aのエフエタ ターへの作用は、 PLC |8活性を直接測定することにより評価することができる。 PLC j8活性は、例えば、 3H標識したホスファチジルイノシトール一 4, 5—二リン酸を PLC j8含有膜画分に添加し、生成するイノシトールリン酸量を、公知の手法を用いて測定 すること〖こより評価することができる。被験物質の存在下及び非存在下で PLC β活 性を測定'比較し、被験物質存在下で PLC β活性が増加すれば該被験物質は GPR 92/93のァゴ-ストであり、活性が減少すればインバースァゴ-ストである。また、 LPA 等の生理活性リガンドを共存させた系で、被験物質の存在下と非存在下での PLC β 活性を測定'比較することにより、 GPR92/93のアンタゴ-ストをスクリーニングすること ができる。即ち、被験物質の存在下で被験物質の非存在下よりも PLC 活性が減少 すれば該被験物質はアンタゴ-ストである。
[0062] スクリーニング系として無傷真核生物細胞を用いる場合は、 Gq a又はキメラ Gq a の PLC j8への作用は、細胞に [3H]イノシトールを添カ卩し、生成した [3H]イノシトー ルリン酸の放射活性を測定したり、細胞内の Ca2+量を測定したりすることによつても 評価することができる。細胞内 Ca2+量は、被験物質の存在下及び非存在下で細胞 を適当な時間インキュベートした後、蛍光プローブ(fora- 2、 indo- 1、 fluor- 3、 Calcium -Green I等)を用いて分光学的に測定するか、カルシウム感受性発光蛋白質である
ェクオリン等を用いて測定することができる力 公知の他のいかなる方法を使用しても よい。蛍光プローブを用いた分光学的測定に適した装置として、 FLIPR (Molecular D evices社)システムが挙げられる。
[0063] 別の態様として、 Ca2+によりアップレギュレートされる TPA (12 O—テトラデカノィ ルホルボール 13 アセテート)応答エレメント (TRE)の制御下にあるリポーター遺 伝子の発現量を測定することにより、 Ca2+量を評価する方法もある。ここで使用され る発現ベクターについては後に詳述する力 概説すると、 TREを含むプロモーター の下流にリポーター蛋白質をコードする DNAを連結した発現カセットを含むベクター を導入された真核生物細胞を、被験物質の存在下及び非存在下で適当な時間培養 し、細胞を破砕して得られた抽出液におけるリポーター遺伝子の発現を公知の手法 を用いて測定 ·比較することにより、細胞内 Ca2+量を評価するというものである。
[0064] 従って、被験物質の存在下で細胞内 Ca2+量 (もしくは TRE制御下にあるリポーター 遺伝子の発現量)が増加すれば、該被験物質は GPR92/93のァゴ-ストであり、減少 すればインバースァゴ-ストである。また、 LPA等の生理活性リガンドを共存させた系 で、被験物質の存在下と非存在下での Ca2+量 (もしくは TRE制御下にあるリポーター 遺伝子の発現量)を測定'比較することにより、 GPR92/93のアンタゴ-ストをスクリー ユングすることができる。即ち、被験物質の存在下で被験物質の非存在下よりも Ca2+ 量 (もしくは TRE制御下にあるリポーター遺伝子の発現量)が減少すれば該被験物 質はアンタゴニストである。
[0065] 上記の GPR92/93と共役 G aとを用いた GPR92/93リガンドのスクリーニング方法を、 GPR92/93に対するリガンド、例えば、 LPAの共存下で行えば、さらに GPR92/93に対 する-ユートラルアンタゴ-ストを容易に選抜することができる。
[0066] また、別の態様として、 GPR92/93依存的な種々の生理作用を指標として、 GPR92/ 93リガンドをスクリーニングすることも可能である。該生理作用としては、 MAPキナーゼ の一種である ERKの活性化が挙げられる。具体的には、 GPR92/93の存在下に、被 験物質が ERKのリン酸化を促進するか否かを、リン酸化 ERK量をウェスタンブロッティ ング等で検出することによって測定する方法(Kabarowski et al., Proc. Natl. Acad. Sc i. U.S.A., 97, 12109-12114 (2000) )が挙げられる。
[0067] また、 GPR92/93依存的な DNA合成促進活性 (細胞増殖促進活性)を測定すること によって、 GPR92/93リガンドをスクリーニングする方法が挙げられる。また、 GPR92/9 3依存的な DNA合成抑制活性 (細胞増殖抑制活性)を測定することによって、 GPR92 /93リガンドをスクリーニングする方法が挙げられる。
具体的には、 GPR92/93の存在下に、 [3H]チミジン取り込み量、もしくは MTT ((3-4、 5— dimethylthazol— 2— yl)— 2 , 5— diphenyltetrazolium bromide)の斑兀反 J心を U疋するこ とができる(J. Biol. Chem., 276(44), p41325— p41335 (2001) )。
[0068] また、血清応答エレメント (Serum-response element; SRE)の制御下にあるリボータ 一遺伝子の発現量を測定することにより、 G蛋白質の細胞刺激活性を評価する方法 もある(An et al" J. Biol, Chem., 273,7906-7910, (1999); An et al" Mol. Pharmacol. , 55, 787-794 (1999))。ここで使用される発現ベクターについては後に詳述するが、 概説すると、 SREを含むプロモーターの下流にリポーター蛋白質をコードする DNAを 連結した発現カセットを含むベクターを導入された真核生物細胞を、被験物質の存 在下及び非存在下で適当な時間培養し、細胞を破砕して得られる抽出液におけるリ ポーター遺伝子の発現を公知の方法を用 、て測定'比較することにより、細胞内 Ca2 +量を評価するというものである。従って、 SRE制御下にあるリポーター遺伝子の量が 増加すれば、該被験物質は GPR92/93のァゴ-ストであり、減少すればインバースァ ゴニストである。また、 LPA等の生理活性リガンドを共存させた系で、被験物質の存在 下と非存在下での Ca2+量 (もしくは SRE制御下にあるリポーター遺伝子の発現量)を 測定'比較することにより、 GPR92/93のアンタゴ-ストをスクリーニングすることができ る。即ち、被験物質の存在下で被験物質の非存在下よりも Ca2+量 (もしくは SRE制御 下にあるリポーター遺伝子の発現量)が減少すれば該被験物質はアンタゴ-ストであ る。
[0069] 本発明のスクリーニング法のために提供される、 GPR92/93を含む脂質二重層膜、 及び GPR92/93と共役する G aを構成要素として含有するスクリーニング系の好まし い一実施態様は、 GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターと、共役 G aの G PCRとの結合に関与する領域及び任意の G aのグァニンヌクレオチドとの結合に関 与する領域を少なくとも含むポリペプチドをコードする DNAを含む発現ベクターとで
トランスフエタトした宿主真核生物細胞、該細胞のホモジネートまたは該細胞由来の 膜画分である。
[0070] G aとしては、 GPR92/93と共役するものであれば特に制限はな!/ G aの各遺伝 子は公知であり、容易に入手可能である。 GPR92/93と共役する G αを含むポリぺプ チドをコードする DNAは、少なくとも共役 G aの GPCRとの結合に関与する領域をコ ードする配列と、任意の G aのグァニンヌクレオチドとの結合に関与する領域をコード する配列を有することが必要である。上述の通り、 G aの X線結晶構造解析の結果か ら、 GPCR結合領域及びグァニンヌクレオチド結合領域はよく知られており、当業者 は、所望により G aのコーディング配列の一部を欠失したフラグメントを容易に構築す ることがでさる。
[0071] G aのエフェクターへの作用を指標とするスクリーニング系においては、 GPR92/93 と共役する G aをコードする DNAは、所望のエフェクターと相互作用するための領域 をコードするヌクレオチド配列をさらに含む必要がある。エフェクターとしてアデ-ル 酸シクラーゼを用いる場合は、該 DNAは Giひもしくは Gs aのエフェクター相互作用 領域をコードするヌクレオチド配列を含む。一方、エフェクターとしてホスホリパーゼ C βを用いる場合には、該 DNAは Gq aのエフェクター相互作用領域をコードするヌク レオチド配列を含む。各 G o;遺伝子は公知であり、それらのエフェクター相互作用領 域もよく知られている。従って、当業者は、公知の遺伝子工学的手法を適宜組み合 わせることにより、容易にキメラ G a蛋白質をコードする DNAを構築することもできる。 当該キメラ蛋白質 (例えば、 Gqsひ)をコードする DNAの最も簡便な例としては、 Gq aの cDNAの C末端の約 5アミノ酸をコードする配列を、 PCR等の公知の手法を用い て Gs aの C末端配列をコードする DNA配列に置換したものが挙げられる。
[0072] GPR92/93をコードする DNA、及び GPR92/93と共役する G aをコードする DNAは 、宿主真核生物細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連 結されていなければならない。使用されるプロモーターは、宿主真核生物細胞内で 機能し得るものであれば特に制限はないが、例えば、 SV40由来初期プロモーター、 サイトメガロウィルス LTR、ラウス肉腫ウィルス LTR、 MoMuLV由来 LTR、アデノウ ィルス由来初期プロモーター、バキュロウィルス由来ポリへドリンプロモーター等のゥ
ィルスプロモーター、並びに j8—ァクチン遺伝子プロモーター、 PGK遺伝子プロモ 一ター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の真核生物由来細胞の構成蛋白質遺 伝子のプロモーターなどが挙げられる。使用される発現ベクターは、上記プロモータ 一に加えて、その下流に転写終結シグナル、すなわちターミネータ一領域を含有す ることが好ましぐプロモーター領域とターミネータ一領域の間にコーディング DNAを 挿入し得るように、適当な制限酵素認識部位、好ましくは該ベクターを 1箇所のみで 切断するユニークな制限酵素認識部位を有することが望ましい。さらに、該発現べク ターは、選択マーカー遺伝子 (テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ノ、イダ口 マイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤抵抗性遺伝子、栄養要求性変異相補遺伝子等
)をさらに含有していてもよい。
[0073] 本発明のスクリーニング系に使用されるベクターとしてはプラスミドベクターの他、ヒ ト等の哺乳動物での使用に好適なレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウィル ス、ヘルぺスウィルス、ワクシニアウィルス、ボックスウィルス、ポリオウイルス、シンドビ スウィルス、センダイウィルス等、あるいは昆虫細胞での使用に好適なバキュ口ウィル スベクター等も挙げられる。
[0074] GPR92/93をコードする DNAと、 GPR92/93と共役する G aをコードする DNAは、 2 つの別個の発現ベクター上に担持されて宿主細胞に共トランスフエタトされてもよいし 、あるいは、 1つのベクター上に、ジシストロニックもしくはモノシストロニックに挿入さ れて、宿主細胞内に導入されてもよい。
[0075] 宿主細胞は、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター等の哺乳動物細胞、ある ヽは昆 虫細胞であれば特に制限はない。具体的には、 COP、 L、 C127、 Sp2/0、 NS-1、 NIH3 T3、 ST2等のマウス由来細胞、ラット由来細胞、 BHK、 CHO等のハムスター由来細胞 、 COSl、 COS3、 COS7、 CV1、 Vero等のサル由来細胞、 HeLa、 HEK293、 MCFIOA等 のヒト由来細胞、および S19、 Sf21、 High Five等の昆虫由来細胞などが例示される。
[0076] 宿主細胞への遺伝子導入は、真核生物細胞の遺伝子導入に使用できる公知のい かなる方法を用いて行ってもよぐ例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、エレクトロボレ ーシヨン法、リボソーム法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。
[0077] 遺伝子を導入された宿主細胞は、例えば、約 5〜20%のゥシ胎仔血清を含む最少
必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、 Ham' s F- 12培地、 RPMI 1640培地、 199培地、 Grace' s昆虫細胞培養用培地等を用いて培養することができる 。培地の pHは約 6〜約 8であるのが好ましぐ培養温度は、通常約 27〜約 40°Cであ る。
[0078] 上記のようにして得られる、 GPR92/93をコードする DNA及び GPR92/93と共役する G aをコードする DNAを導入された真核生物細胞は、使用するスクリーニング法に 応じてそのまま無傷細胞として使用してもよ!/、し、あるいは適当な緩衝液中で該細胞 を破砕して得られる細胞ホモジネートや、該ホモジネートを適当な条件で遠心分離す るなどして (例えば、約 1 , 000 X g程度で遠心して上清を回収した後、約 100, 000 X g程度で遠心して沈渣を回収する)単離される膜画分の形態であってもよ 、。
[0079] 例えば、 GTP y S結合アツセィや、エフェクターの活性を直接測定することにより、 被験物質のリガンド特性を評価する場合には、使用するスクリーニング系は、好ましく は、上記のようにして細胞力 調製される膜画分である。一方、細胞内 cAMP量 (もし くは cAMP応答性リポーターの発現量)や細胞内 Ca2+量 (もしくは Ca2+応答性リポ 一ターの発現量)を測定することにより、被験物質のリガンド特性を評価する場合に は、使用するスクリ一ユング系は無傷真核生物細胞である。
[0080] 尚、リガンド活性の評価を、 cAMP応答性リポーター(エフェクターがアデ-ル酸シ クラーゼの場合)もしくは Ca2+応答性リポーター(エフェクターがホスホリパーゼ C β の場合)の発現量を指標として行う場合には、宿主真核生物細胞は、 cAMP応答ェ レメント(CRE)または TP A応答エレメント (TRE)を含むプロモーター領域の下流にリ ポーター蛋白質をコードする DNAが機能的に連結した発現カセットを含むベクター を導入されたものである必要がある。 CREは cAMPの存在下に遺伝子の転写を活 性化するシスエレメントであり、コンセンサス配列として TGACGTCAを含む配列が挙 げられる力 cAMP応答性を保持する限り当該配列の一部に欠失、置換、挿入また は付カ卩を含む配列であってもよい。一方、 TREは Ca2+の存在下に遺伝子の転写を 活性化するシスエレメントであり、コンセンサス配列として TGACTCAを含む配列が挙 げられる力 Ca2+応答性を保持する限り当該配列の一部に欠失、置換、挿入または 付カ卩を含む配列であってもよ 、。 CRE又は TREを含むプロモーター配列としては、
上記のようなウィルスプロモーターや哺乳動物の構成蛋白質遺伝子プロモーターが 同様に使用可能であり、制限酵素及び DNAリガーゼを用いて、あるいは PCR等を 利用して、該プロモーター配列の下流に CREまたは TRE配列を挿入することができ る。 CRE又は TREの制御下におかれるリポーター遺伝子としては、迅速且つ簡便に 遺伝子発現を検出 ·定量できる公知のいかなる遺伝子を使用してもよぐ例えば、ル シフェラーゼ、 β ガラクトシダーゼ、 13ーグルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼ 、ペルォキシダーゼ等のリポーター蛋白質をコードする DNAが挙げられる力 これら に限定されない。リポーター遺伝子の下流にはターミネータ一配列が配置されること 力 り好ましい。このような CRE (又は TRE)—リポーター発現カセットを担持するべク ターとしては、公知のプラスミドベクター又はウィルスベクターを使用することができる 。血清応答エレメント (SRE)の制御下にあるリポーター遺伝子含む発現ベクターにつ いても、上記と同様に調製することができる。
[0081] 本発明のスクリーニング法のために提供される、 GPR92/93を含む脂質二重層膜、 及び GPR92/93と共役する G aを構成要素として含有するスクリーニング系の別の好 ましい実施態様は、 GPR92/93の C末端側に、共役 Gひの GPCR結合領域及び任意 の G aのグァニンヌクレオチド結合領域を少なくとも含むポリペプチドが連結した融合 蛋白質をコードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタトした宿主真核生物細 胞、該細胞のホモジネートまたは該細胞由来の膜画分である。
[0082] GPR92/93をコードする DNA、及び GPR92/93と共役する G aの GPCR結合領域及 び任意の G aのグァニンヌクレオチド結合領域を含むポリペプチドをコードする DNA は、上述のようにして取得することができる。当業者は、これらの DNA配列をもとにし て、公知の遺伝子工学的手法を適宜組み合わせることにより、 GPR92/93と G aとの 融合蛋白質をコードする DNAを構築することができる。簡潔にいえば、 PCR等を用 いて GPR92/93をコードする DNAの終始コドンを除去したものに、 G aをコードする D NAを読み枠が合うように、即ちインフレームに、 DN Aリガーゼを用いてライゲーショ ンする。この際、 GPR92/93の C末の一部を欠失させたり、 GPR92/93と G αとの間に H isタグ等のリンカ一配列を挿入したりしてもよい。
[0083] 得られた融合蛋白質をコードする DNAは、上述のような発現ベクター中に挿入さ
れ、宿主真核生物細胞に上記の遺伝子導入技術を用いて導入される。得られた真 核生物細胞の膜上に当該融合蛋白質が発現すると、レセプターの細胞内第 3ルー プ上の G a活性化ドメインと共役 G aのレセプター結合領域とは、 GPR92/93に対す る生理的リガンドの非存在下に相互作用して、 G aにおける GDP ' GTP交換反応を 促進し得る。従って、 G aは恒常的に活性化された状態となる。
[0084] レセプタ一一 G o;融合蛋白質発現細胞を、 G aのエフェクターへの作用を指標にし たスクリーニングに使用する場合において、 G aがレセプターと連結していることがェ フエクタ一との相互作用の妨げとなる場合には、レセプターと G aとのジャンクション 部位に、特異的なプロテアーゼによって切断されるアミノ酸配列(例えば、トロンビン 感受性配列等)を導入し、融合蛋白質を膜上に発現させた後に当該プロテアーゼを 作用させてレセプターと G aとを切り離すことができる。
[0085] レセプタ一一 G a融合蛋白質発現細胞についても、使用するスクリーニング法に応 じて、無傷細胞、細胞ホモジネート、膜画分のいずれかの形態を適宜選択して用い ることがでさる。
[0086] 本発明のスクリーニング法のために提供される、 GPR92/93を含む脂質二重層膜、 及び GPR92/93と共役する G aを構成要素として含有するスクリーニング系のさらに別 の実施態様は、共役 G蛋白質を内因的に発現する宿主動物細胞を、 GPR92/93をコ ードする DNAを含む発現ベクターでトランスフエタトすることにより調製される細胞、 該細胞のホモジネートまたは該細胞由来の膜画分である。
GPR92/93をコードする DNA、該 DNAを挿入する発現ベクター、該発現べクタ一の 宿主細胞への導入法は、上述の通りのものを使用することができる。
[0087] 本発明のさらに別の態様においては、本発明のスクリーニング系は、 GPR92/93及 び GPR92/93と共役する G蛋白質を内因的に発現する動物細胞、該細胞のホモジネ ートまたは該細胞由来の膜画分である。このような細胞としては、哺乳動物の脾臓も しくは腎臓、肺由来細胞が好ましく例示される。
[0088] 本発明のさらに別の態様においては、 GPR92/93を含む脂質二重層膜、及び GPR9 2/93と共役する G aを構成要素として含有するスクリーニング系として、精製した GPR 92/93と共役 G a、あるいは精製した該レセプターと共役 G aとの融合蛋白質を、人
工脂質二重層膜中に再構成させたものを使用することができる。 GPR92/93は、ヒト又 は他の哺乳動物の脾臓もしくは腎臓、肺由来細胞から得られる膜画分から、抗 GPR9 2/93抗体を用いたァフィユティークロマトグラフィー等により精製することができる。あ るいは、該レセプターは、 GPR92/93をコードする DNAを含む発現ベクターを導入さ れた組換え細胞から、抗 GPR92/93抗体や、 His- tag、 GST- tag等を用いたァフィ-テ ィークロマトグラフィー等〖こより精製することもできる。同様に、該レセプターと共役 G aとの融合蛋白質も、該融合蛋白質をコードする DNAを含む発現ベクターを導入さ れた組換え細胞から、抗 GPR92/93抗体や、 His- tag、 GST- tag等を用いたァフィ-テ ィークロマトグラフィー等〖こより精製することができる。
[0089] 人工脂質二重層膜を構成する脂質としては、ホスファチジルコリン (PC)、ホスファ チジルセリン(PS)、コレステロール(Ch)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファ チジルエタノールァミン (PE)等が挙げられ、これら 1種または 2種以上を適当な比率 で混合したものが好ましく使用される。
[0090] 例えば、レセプターと G a、又はレセプタ一一 G a融合蛋白質を組み込んだ人工脂 質二重層膜 (プロテオリボソーム)は、 PC: PI: Ch= 12: 12: 1の混合脂質クロ口ホル ム溶液を適当量ガラスチューブに分取し、窒素ガス蒸気でクロ口ホルムを蒸発させて 脂質をフィルム状に乾燥させた後、適当な緩衝液を加えて懸濁、次いで超音波処理 により均一に分散させ、コール酸ナトリウム等の界面活性剤を含む緩衝液をさらにカロ えて脂質を完全に懸濁する。ここに、精製したレセプターと G α、又はレセプタ一一 G α融合蛋白質を、適量添加し、氷中で時々攪拌しながら 20〜30分間程度インキュ ペートした後、適当な緩衝液に対して透析する。約 100, 000 8で30〜60分間遠 心して沈渣を回収することにより、プロテオリボソームを調製することができる。
[0091] 上記の本発明のスクリーニング法により選択される GPR92/93ァゴニスト、すなわち G PR92/93作動薬は、 GPR92/93の生理的リガンドと同様に、脾臓ランゲルハンス氏島 においてインスリン分泌促進活性を示し、その結果耐糖能異常改善作用を示す。従 つて、これらを適当な添加剤と組み合わせることにより、耐糖能異常改善薬とすること ができる。従って、本発明はまた、本発明のスクリーニング法により選抜された GPR92 /93作動薬と、医薬上許容される担体とを配合させることによる、耐糖能異常改善薬、
又は生活習慣病治療、特に糖尿病治療を提供する。
また、上記の本発明のスクリーニング法により選択される GPR92/93アンタゴ-ストも しくはインバースァゴ-スト等の GPR92/93拮抗薬は、インスリン分泌を抑制することか ら、脂肪細胞における糖取り込みを抑制すると考えられる。従って、 GPR92/93拮抗 薬は、抗肥満作用を示すことは明白であり、従って、これらを適当な添加剤と組み合 わせることにより、抗肥満薬とすることができる。
[0092] (III) 生体由来脂肪酸誘導体および低分子化合物の製造方法
生体由来脂肪酸誘導体は、多数の幾何異性体や光学異性体を含むことから、化学 合成で製造することが困難であることが知られている。一方、動物の臓器等の生体由 来サンプルから、タンパク質等多量に含まれる物質を除去して低分子有機化合物を 精製する方法としては、逆相 HPLCを用いる方法、ゲルろ過法、有機溶媒で抽出する 方法、およびタンパク質を加熱変性および酸変性することにより除去する方法等が知 られて 、るが、多量の生体試料を処理しがた!/、ため多量のタンパク質力 微量生体 成分を精製するのは効率が非常に悪ぐ一部の生体活性成分しか回収できない、ま た生体活性成分が変性および失活することから回収できな 、など、問題点があった。
[0093] 本発明者らは、ブタ脳もしくは脾臓といった生体由来サンプルから、生体由来脂肪 酸誘導体を効率良く精製する方法を見出した。
すなわち本発明はまた、固相抽出榭脂を用いる抽出と逆相 HPLCを組み合わせた 精製工程を含むことを特徴とする、生体由来脂肪酸誘導体および低分子成分の製 造方法を提供する。すなわち、以下の工程:
(a) 固相抽出樹脂と生体由来サンプルを接触させ、生体由来脂肪酸誘導体および 低分子成分を吸着させる工程、及び
(b) 10%〜95%の親水性有機溶媒を含む水溶液により、生体由来脂肪酸誘導体含 有画分および低分子成分を溶出する工程、
を含む生体由来脂肪酸誘導体および低分子成分の製造方法もまた、本発明の範疇 である。
ここで、固相抽出樹脂とは、脂肪酸誘導体含有画分および低分子成分を吸着しタ ンパク質を吸着しない榭脂であり、具体的には Oasis HLB榭脂 (ウォーターズ社製)等
を f列示することができる。
生体由来サンプルとしては特に限定は無ぐ哺乳動物由来の臓器サンプル等が挙 げられる。哺乳動物としては、特に限定は無いが、マウスもしくはラット等のげつ歯類 動物、ゥサギ、ィヌ、ブタ、牛、ヒト等が挙げられる。臓器としては、特に限定は無いが 、脳、脾臓、肝臓、心臓、腎臓、肺、胃、副腎等が挙げられる。
[0094] 生体由来脂肪酸誘導体としては、炭素数 5〜30の直鎖もしくは分枝の、飽和もしく は不飽和の脂肪酸誘導体が挙げられる。具体的には、炭素数 5〜30の直鎖もしくは 分枝の飽和脂肪酸、炭素数 5〜30の直鎖もしくは分枝の 1〜10個の二重結合もしく は三重結合を含む不飽和脂肪酸、前記飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸のエステ ルが挙げられる。前記エステルとが挙げられる。前記ダリセライドには、前記飽和脂肪 酸もしくは不飽和脂肪酸力^〜 3個エステル結合していてもよい。また、前記ダリセラ イドには、グリセリン構造の任意の水酸基はリン酸エステルを形成していてもよぐ当 該リン酸エステルしては、炭素数 1〜6のアルキルエステル、グリセライド、等のリン酸 としては、リン酸(一 OP(=0)(OH) )、ジリン酸(一 OP(=0)0- P(=0)(OH) ),ホスファチ
2 2
ジルコリン、ホスファチジルセリンもしくはホスファチジルイノシトール等が挙げられる。
[0095] 前記親水性有機溶媒としては、メタノール、ァセトニトリル又はこれらの混合溶媒が 挙げられる。好ましくは、 10%〜95%メタノール、 10%〜95%ァセトニトリル等が挙げ られる。溶出液として用いられるこれらの親水性有機溶媒を含む水溶液としては、水 、緩衝液等が挙げられ、 pHは適宜 2〜10に調節することが好ましい。具体的には、 0. 05M〜0.5酢酸、 0.03%〜 0.3%TFA、 0.03%〜0.3%ギ酸、 0.1%〜1%アンモニア 等を含有していてもよい。
通常は生体由来サンプル lkgあたり、固相抽出榭脂 100〜500gを用い、親水性有 機溶媒を含む溶出液は通常 0.5L〜5L用いて溶出する。溶出液は適宜分画し、生物 活性等を指標にして、 目的とする生体由来脂肪酸誘導体を含む画分を取得すること ができる。
取得された画分は適宜当業者に知られた精製方法で更に精製し、単一化合物とす ることができる。当該精製方法としては逆相 HPLC、順相 HPLC、シリカゲルカラムクロ マトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶等が挙げられる。好ましくは、逆
相 HPLCが挙げられる。
[0096] 例えば、式(3)で表される LPA(22:6)もしくはその異性体(2—ァシル体)については 、 Oasis HLB榭脂カラムを水、次いで 2%〜10%メタノール水で洗浄した後に、 10% 〜90%ァセトニトリル- 10%〜90%メタノールを溶出液として用いて LPA(22:6)含有画 分を取得することができる。
式 (6)で表される LPI(18:0)もしくはその異性体 (2—ァシル体)等の本発明のリガンド につ 、ても、同様の方法で単一化合物として得ることができる。
[0097] 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する力 これらは単なる例示で あって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例 1
[0098] (正常人の脾臓ランゲルノヽンス氏島における GPR92/93の発現局在)
(1)ゥサギ由来ポリクローナル抗体の作成
GPR92/93抗原ペプチドとして、アミノ酸配列: AQSERSAVTTDATRPD (配列番号: 5)の部分ペプチドを公知の方法で合成し、マススペクトル及び HPLCにより配列を確 した 0
公知の方法に従い、以下のスケジュールで動物を免疫し、抗血清力 ポリクローナ ル抗体の作成を行った。すなわち、ゥサギ (KBL JW 11週齢) 2匹を用い、飼育 1日 目に FCA (Completeゥサギ(KBL JW 11週令) 2匹を用い、飼育 1日目に FCA(Compl ete Freuncfs Adjuvant)に溶解させた抗原ペプチド 200 μ g/匹を腹腔内に注入した。 更に、飼育 14、 28、 42、 57、 70、 84日目に FCA (Complete Freund' s Adjuvant)に 溶解させた抗原ペプチド 100 μ g/匹を腹腔内に注入した。飼育 49、 63日に抗体 力価確認のための採血を行った。抗体力価の上昇を確認後、飼育 77日目〖こ 20〜30 ml/匹、飼育 91日目に 50〜70ml/匹の採血を行い、抗血清を得て抗原ペプチドを固 定したカラムでァフィユティー精製を行い、 1次抗体を得た。精製された抗体は 0.01% アジィ匕ナトリウムを含む PBSに置換し使用まで冷凍保存した。
(2)ゥサギ抗体を用いた免疫組織染色
生検組織サンプル (57歳男性、 95歳男性等)のパラフィンブロックから 4〜5 μ mの厚 さで組織切片を作成した。スライドサンプルはキシレンで除パラフィンを行い、アルコ
ール処理を経て再度水和させた。その後 Target Retrieval Solution (DAKO社)中で オートクレーブ処理による抗原賦活化を行った。以降の操作は Vectastain ABC-AP k it (Vector社)を用いた。添付試薬でブロッキング後、上記 (1)で作成した 1次抗体で 45 分インキュベートした。洗浄後、 5 1½1に希釈した抗ゥサギ2次抗体(8 -1000)で30 分インキュベートした。洗浄後 Vector ABC-AP (AK- 5000) reagentを添カ卩し、 Vector Red (SK-5100)にて発色させた。
結果を表 1に示した。表 1のとおり、 GPR92/93は他組織と比較して脾臓に強く発現 していることがわ力つた。更に、脾臓組織中での発現分布を詳細に検討したところ、 腺房などではほとんど発現しておらず、ランゲルノヽンス島に発現が局在していること が明らかとなった。
さらに、 GPR92/93抗原ペプチドとして TLARPDATQSQRRRKTVRL (配列番号: 6) を用い、同様の手法で発現局在を検討した結果、ランゲルノ、ンス氏島に有意に発現 していることが明ら力となった。
[0100] (cDNAの調製)
RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて、マウス Islet組織から total RNAを抽出した。得 られた total RNA 10 μ g、 Τ7- (dT)24プライマー (Amersham社製) lOOpmolを含む 11 μ 1 の混合液を、 70°C、 10分間加熱後、氷上で冷却した。冷却後、当該混合液に、 Super bcnpt Choice system for cDNA Synthesis(Gibco— BRL社製)【こ まれる 5xFirst Stran d cDNA Buffer 4 /z 1、該キットに含まれる 0.1M DTT 2 μ 1及び当該キットに含まれる 10 mM dNTP Mix 1 μ 1を添カ卩し、この混合液を 42°C、 2分間加熱した。更に、当該混合 液に、当該キットに含まれる Super Scriptll RT 2 1(400U)を添カ卩し、この混合液を 42 °C、 1時間加熱後、氷上で冷却した。冷却後、当該混合液に DEPC処理滅菌蒸留水 9 1 μ 1、当該キットに含まれる 5xSecond Strand Reaction Buffer 30 μ 1、 lOmM dNTP Mi x 3 1、当該キットに含まれる E. coli DNA Ligase 1 μ 1(10U)、当該キットに含まれる E.
coli DNA Polymerase I 4 1(40U)及び当該キットに含まれる E. coli RNaseH 1 μ 1(2U) を添加し、この混合液を 16°C、 2時間反応させた。次いで、当該混合液に当該キット に含まれる T4 DNA Polymerase 2 μ 1(10U)をカ卩え、この混合液を 16°C、 5分間反応さ せた後、当該混合液に 0.5M EDTA 10 1を添加した。次いで、この混合液にフエノー ル /クロ口ホルム/イソァミルアルコール溶液(二ツボンジーン社製) 162 μ 1を添カ卩し、混 合した。当該混合液を、予め室温、 14,000rpm、 30秒間遠心分離しておいた Phase Lo ck Gel Light (エツペンドルフ社製)に移し、これを室温、 14,000rpm、 2分間遠心分離し た。遠心分離後、 145 1の水層をエツペンドルフチューブに回収した。回収された水 層に、 7.5M酢酸アンモ-ゥム溶液 72.5 μ 1及びエタノール 362.5 μ 1をカ卩ぇ混合した後 、この混合液を 4°C、 14,000rpm、 20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、 D NAペレットを得た。その後、 DNAペレットに 80%エタノール 0.5mLを添カ卩した。この混 合液を 4°C、 14,000rpm、 5分間遠心分離した後、上清を捨て、 DNAペレットを再び得 た。得られた DNAペレットに再度 80%エタノール 0.5mLを添カ卩した。この混合液を 4°C、 14,000rpm、 5分間遠心分離した後、上清を捨て、 DNAペレットを得た。得られた DN Aペレットを乾燥させた後、 DEPC処理滅菌蒸留水 12 1に溶解することにより、 cDNA 溶液を得た。
実施例 3
(マウス由来の遺伝子のクローユング)
実施例 2で調整した cDNA 1 μ L、配列番号 7で示される塩基配列カゝらなるプライマ 一 1 20pmol、配列番号 8で示される塩基配列からなるプライマー 2 20pmol、 TaKaRa Ex- Taqポリメラーゼ(宝酒造社) 2U、 TaKaRa Ex- Taqポリメラーゼ添付のバッファー 5 μ L及び TaKaRa Ex- Taqポリメラーゼ添付の dNTP mixture (2.5mM) 4 iu Lを含む 50 μ Lの反応液を調製した。 PCRは、まず 94°Cで 30秒間、次いで 65°Cで 30秒間、更に 72 °Cで 1.5分間からなる保温サイクルを 40回繰り返し、最後に 72°Cで 5分間保温する条 件にて行われた。 PCR後、ァガロース電気泳動で約 1.2kbpを示す PCR産物を回収し た。回収された PCR産物を pT7- Blue vector(Novagen社)にサブクローニングした後、 当該プラスミドで E.coliJM109株コンビテントセル (東洋紡社)を形質転換した。形質転 換された細胞を 50 μ g/mLアンピシリン含有 LB培地 lOOmLで培養することにより得ら
れる培養菌体から QIAGEN Plasmid Maxi kit(QIAGEN社)を用いて分離'精製するこ とにより、マウス由来の遺伝子 (mGPR92)の塩基配列を含むプラスミドを得た。
実施例 4
[0102] (マウス由来の遺伝子の塩基配列の決定)
実施例 3で得られた PCR産物(約 1.2kbp)を含むプラスミドを铸型として、 Thermo Se quenase IIダイ'ターミネータ一キット (Amersham Pharmacia Biotech社)及び ABI373D NA配列読み取り装置(PE Applied Biosystems社)を用いて、サンガーの方法〔F.Sang er'S.Nicklen'A.R.し oulson着、 Proceedings of National Academy of science U.b.A.(19 77), 74, 5463-5467]により、配列番号 9で示される塩基配列からなるマウス由来の本 遺伝子 (mGPR92)の塩基配列を決定した。
実施例 5
[0103] (マウス由来の遺伝子発現ベクターの構築)
実施例 3で調製した cDNAを铸型として配列番号 11で示される塩基配列カゝらなるプ ライマー 3 20pmol、配列番号 12で示される塩基配列力もなるプライマー 4 20pmol、 Pfe Platinumポリメラーゼ(インビトロジェン社) 2.5U、 Pfe Platinumポリメラーゼ添付の バッファー 5 μ L及び dNTP mixture (2mM) 7.5 μ Lを含む 50 μ Lの反応液を調製した 。 PCRは、まず 94°Cで 1分間の熱処理を行い、続いて 94°Cで 15秒間、 55°Cで 30秒間、 68°Cで 1分 20秒間からなる保温サイクルを 30回繰り返す条件にて行われた。 PCR後 、ァガロース電気泳動で約 1.2kbpを示す PCR産物を回収した。回収された PCR産物 を GATEWAYシステムの BP反応(インビトロジェン社)を用いて pDONR221 (インビトロ ジェン社)に挿入した後、当該プラスミドで E.coli DH5ひ株コンビテントセル (東洋紡 社)を形質転換した。形質転換された細胞をカナマイシン含有培地で培養すること〖こ より得られる培養菌体力 プラスミドを精製することにより、マウス由来の本遺伝子 (m GPR92)の ORF部分の塩基配列を含むエントリーベクター pENTR/mGPR92/93を得た 。塩基配列に誤りのないことを確認した後、 pENTR/mGPR92/93を GATEWAYシステ ムの LR反応(インビトロジェン社)を用いてデスティネーションベクター pCAGGS-DES T (後述)に挿入した後、 E.coli DH5 a株コンビテントセル (東洋紡社)を形質転換した 。形質転換にて得られたコロニーをアンピシリン含有培地で培養することにより得られ
る培養菌体から QIAGEN Plasmid Maxi kit(QIAGEN社)を用いて分離'精製すること により、動物細胞導入用プラスミドを調製した。 目的の発現ベクターが得られたことは 制限酵素による切断にて確認し、本プラスミドを pCAGGS/mGPR92/93と命名した。 なお、デスティネーションベクター pCAGGS-DESTは哺乳動物細胞発現ベクター p
CAGGSの Xhol部位を平滑化後、 GATEWAYリーディングフレーム Bをプロモーターと 同じ方向に挿入したものである。
実施例 6
[0104] (ヒト由来遺伝子発現ベクター)
巿販 ESTクローン〔IMAGE クローン: ID=4335693 (5') (ResGen社)〕力 制限酵素を 用いてタンパク質コード領域を切り出し、ベクターにつなげることにより調製した。ここ で導入したコード領域がコードするアミノ酸配列が配列番号 2に記載のアミノ酸配列と 同一であることを、配列分析により確認した。
実施例 7
[0105] (共役 Gタンパク質)
(1)細胞への GPR92/93の一過的導入
一過性遺伝子導入のために、遺伝子と導入用試薬を以下のように混合調製した。 すなわち、 96wellプレートの lwellにっき、実施例 6で調製した GPR92/93組み込みべ クタ一 0.05 μ g/Opti- MEM培地 5 μ 1と Lipofectamine 0.3 μ 1/Opti- MEM培地 5 μ 1 を混合し、室温で 30分間静置した後に F-12培地 40 1を加えて遺伝子導入用溶液と した。前日に 96wellプレートに 2 x 104 cells/100 μ 1/well (培地: 10% FBSZF- 12)で捲 き込んで 5% CO、 37°Cで 22〜24時間培養した CHO-K1細胞の培地を吸引除去し、 F
2
-12培地で 2回洗浄した後、上述の遺伝子導入用溶液 50 1/wellを添カ卩して、 5% CO
2
、 37°Cで 3.5時間培養した。培地を吸引除去し、 10% FBS ZF-12培地で一回洗浄後 、 100 1/wellの 10% FBSZF-12培地を添カ卩して 5% CO
2、 37°Cでさらに 24時間培養し た。
(2) cAMP産生量の測定
上記 (1)の方法で一過的に遺伝子導入した細胞の培養上清を除去し、 PBS (—)で洗 浄した。 0.5mM IBMX/lmg/ml BSA/PBS (-) 50 μ 1/wellを添カ卩して室温で 30分間
静置した後、溶液を除去し、 80 μ 1/wellの lysis buffer(l'M KF/l.25% Triton X100/5 OmMリン酸緩衝液 (pH7.0))を加えて細胞を溶解させた。この溶解液 20 1/wellを 384 well白色プレートに移し、同じ 384wellプレートに標準曲線作成用の cAMP希釈液 (0, 0 .8, 2.4, 8, 24, 80, 320 nM)を各 20 /z l / well添加した。 cAMP定量キットである HTRF r eagent set (CIS bio international)の cAMP - XL665 conjugateおよび anti - c AMP crypta te conjugate溶液を lmg/ml BSAZPBS (―)で 40倍希釈して各 10 μ 1 I weir添加し、シ ールして室温でー晚静置した。シールをはがし、測定機 ARVOにて、 cryptate力 出 る 620nmの長寿命蛍光と、励起された cryptateからエネルギー転移を受けた XL665 が生じる 665nmの長寿命蛍光の強度を、時間分解 2波長測定した。
測定結果力も算出した cAMP量を、表 1に示した。表 1のとおり、ヒトおよびマウスの G PR92/93を一過性導入した細胞で cAMP産生量が増加しており、 GPR92/93は Gsと共 役する GPCRであると推定された。
(ここで、データは η = 3で測定した平均値を表す)
実施例 8
[0107] (LPAの添加による、濃度依存的な cAMPの上昇)
実施例 7の (1)に示した方法で GPCR92/93遺伝子を細胞に一過的に導入した。実 施例 7の (2)の方法で cAMP量を定量する際、冒頭の PBS (—)洗浄後に、種々の濃度 の LPA SniM IBMX/lmg/ml BSA/PBS (—) 50 μ I/wellを添加し、室温で 30分間 静置した。以降は、同(2)の方法で cAMP量を定量した。
結果を表 3に示したが、 GPR92/93導入細胞では添加した LPA濃度に依存した cAM P量の増加が見られた。
[0108] [表 3]
慰正された用紙
cAMP産生量(p mol/wel I)
PA濃度 M)
一(mock導入細胞) ヒト GPR92/93導入細胞 マウス GPR92/93導入細胞
0.03±0.01 2.06±0.14 2.64±0.42
.01 0.04±0.01 2.63±0.22 3.12±0.07
.1 0.05±0.01 4.59±0.52 5.60±0.30
0.08±0.03 7.67±0.65 8.90±0.71
(ここで測定値は n= 3の平均値である。 )
ここで、 LPAのかわりに、被験物質を用いることによって、 GPR92/93リガンド(ァゴ二 スト及びインバースァゴ-スト)を評価することができる。
実施例 9
[0109] (単離ラ氏島でのインスリン分泌)
ICRマウス(日本クレア、 SPF、 o71)から、コラゲナーゼ消化法により脾臓ラ氏島を単 離した。手順を以下に示す。 自由摂食状態で飼育した ICRマウスをネンブタール麻酔 下にて開腹し、下腹部大静脈を切断して脱血死させる。総胆管が露出するように十 二指腸を配置し、総胆管を十二指腸直前部分で結紮する。総胆管の肝臓側より力二 ユーレを挿入し、 0.02%コラゲナーゼ液 3mlを注入した後に脾臓を摘出する。 5mlのコラ ゲナーゼ液中に浸潰した状態で 37°C、 20分間消化した後、激しく浸透して脾臓を破 砕する。 RPMI1640培地 (10%FCS、抗生物質入り)にて 50mlにメスアップし、懸濁した後 に lOOOrpmXl分間遠心し、上清を除去する。同じ作業をさらに 2回繰り返した後に、 実態顕微鏡観察下、ピペットマンを用いてラ氏島をピックアップし、 RIMI培地中、 37°C 、 5% CO /95% Airにて一晩インキュベートした後に実験に供した。
2
ラ氏島を KRB(0.5%BSAを含む)中に移し、サイズを揃えた後に、 37°C設定の恒温 機中にて 30分間インキュベートした。予め各条件の LPAを添加した KRBを 37°C恒温 槽にセットし、予熱しておく。インキュベートの終了したラ氏島を 5個 Zチューブにて添 加し、正確に 30分インキュベートした後に氷中に移し、分泌反応を停止させた。各チ ユーブの上清を回収し、レビス インスリンキットマウス(シバヤギ)を用いてインスリン 濃度を測定した。結果を表 4に示した。
[0110] [表 4]
添加薬剤 DMS0 GLP-1 (lOOnM) LPA (2μΜ) LPA (10 μΜ)
インスリン分泌量 3338±1534 7264±4959 4171±1720 6312±2904
表 2おいて DMSOは溶媒のみのネガティブコントロールであり、 GLP-1はインスリン 分泌促進作用を有することが公知のペプチド化合物、すなわちポジティブコントロー ルである。表 2からわ力るように LPAは用量依存的にインスリン分泌促進活性を示し、 LPA: 10 μ Μにおけるインスリン分泌促進活性は GLP- 1(100 μ Μ)とほぼ同程度であ つた ο
実施例 10
[0111] (バインディングアツセィによるスクリ一ユング、
(1)細胞膜画分の調製
実施例 2 (1)で調製した GPR92/93発現株をフラスコに播種し、 10%FBS (Gibco社製) を培地中で 60〜70%コンフルェントになるまで培養する。細胞を回収し buffer A(50mM
HEPES(pH7.0), 10mM 2- ME, ImM PMSF, 0.25M sucrose)に懸濁する。 Potter型ホ モジェナイザーでホモジナイズ (400rpm、 20ストローク)したのち、 100000gで 60分遠 心分離を行い、得られた沈殿を再度 buffer Aに懸濁する。この懸濁液を 35%(mass/vol )sucrose in buffer Aの上に重層し 45000gで 45分遠心分離を行う。界面の画分を回収 し buffer Aに懸濁し、 100000gで 60分遠心分離を行う。得られた沈殿を 20 μ g/ml apro tininを含む buffer Aに懸濁し以下のアツセィに用いる。
(2)レセプターバインディングアツセィ
MultiscreenGVPlate(Miripore)に反応バッファー (50mM Hepes pH7.4、 12.5mM酢酸 マグネシウム、 3.125mM塩化マグネシウム、 0.125mg/ml BSA)に懸濁した [3H]LPAと 希釈した被験物質 (DMSO溶液)とを添カ卩しする。 30°Cでインキュベートしたのち上記 の手順で調整した膜画分を添加する。 30°Cでインキュベートしたのち等量の 20%TC Aを添加し、上清を吸引除去しタンパク質を沈殿させる。 10%TCAで数回洗浄した後 、 37°Cで乾燥させた膜をパンチアウトし γカウンターで測定する。被験物質における 放射活性が、被験物質として DMSOのみを用いた対照における放射活性よりも大きけ れば、当該被験物質は、 GPR92/93リガンドであると決定できる。
実施例 11
[0112] (ビアコアを用いたスクリーニング)
(1)細胞膜画分の調製
実施例 2(1)に記載の GPR92/93発現株をフラスコに播種し、 10%FBS (Gibco)を培地 中で 60〜70%コンフルェントになるまで培養する。細胞を回収し buffer A(50mM HEPE S(pH7.0), lOmM 2- ME, ImM PMSF, 0.25M sucrose)に懸濁する。 Potter型ホモジェ ナイザーでホモジナイズ (400rpm、 20ストローク)したのち、 100000gで 60分遠心分離 を行い、得られた沈殿を再度 buffer Aに懸濁する。この懸濁液を 35%(mass/vol)sucros e in buffer Aの上に重層し 45000gで 45分遠心分離を行う。界面の画分を回収し buffer Aに懸濁し、 100000gで 60分遠心分離を行う。得られた沈殿を 20 μ g/ml aprotininを 含む buffer Aに懸濁し以下のアツセィに用いる。
(2)ビアコアでの結合測定
文献 [Anal Biochem. 1998 Dec 15;265(2):340- 50. Markgren PO et al.]に記載され て 、る一般的な方法を用いる。上記手順で調整した GPR92/93発現細胞膜画分 (例 えば 1〜10 μ g)を 10mMの酢酸バッファー(pH4)に溶解し、ビアコアのセンサーチッ プ CM5の表面のマトリックスにカルボキシル基を介して固定化する。
HBSバッファー(アマシャム フアルマシア バオテク株式会社製)をセンサーチッ プに 20 1Z分の流速で流し、ノ ックグラウンドの値を記録する。途中力も HBSバッフ ァ一に 10ηΜ〜10 /ζ Mの濃度で溶解した被験物質に切り替えて 1分間流し、薬剤の 結合に伴う値の変化を記録する。再び、薬剤を含まない HBSバッファーに切り替え、 結合した薬剤の解離に伴う値の変化を記録する。結合と解離の速度、あるいは最大 結合量力 被験物質と GPR92/93との親和性を計算する。
実施例 12
プラスミド DNA作製方法
GPR92/93 (ΝΜ_020400 ;配列番号 13)を以下のプライマーを用いた PCRを行うこと で増幅した。
atGPR92M: GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCCACCatgttagccaacagc tcctcaac (配列番号 15)
atGPR92R: GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCAtcagagggcggaatcctggg gacac (目己列番号 16)
得られた断片を PDONR201と GATEWAYシステムの BP反応( 、ずれもインビトロジェ
ン社)を行うことにより pENTR/GPR92/93を得た。得られたクローンについて塩基配列 を確認した。さらに、 pENTR/GPR92/93から、当業者に汎用されている方法で GPR92 /93発現ベクターを構築した。このようにして得られたクローンを拡大培養し、キアゲン MAXIキットを利用して導入用プラスミド DNAを精製した。
実施例 13
[0114] アツセィ方法
CHO-K1細胞を 2xl04個/ wellで 96穴プレートにまき、抗生物質を含まない培地を用い て C02インキュベータで 24時間培養した。 50 ngの GPR92/93発現プラスミド DNA(GP R92/93/pCAGGS)を 5 1の OPTI- MEMに希釈し、また 0.3 1の LipofectAmineを 5 1の OPTト MEMに希釈した。両者を混合し室温で 30分間静置後、 40 1の血清無 添カ卩の F12培地をカ卩え、血清無添カ卩の F12培地で 1回洗浄した wellに添カ卩した。 C02 インキュベータで 4時間培養後、 10% FBS添加 F12培地に置き換え(1回洗浄)、 C02ィ ンキュベータで 24時間培養した。細胞を PBS (-)で洗浄し、ブタ臓器活性画分を含む 5 0 μ 1の 0.5 mM IBMXを含んだ Hanks Hepes液に置換した。 15分後に、 Hanks Hepes 液を吸引し、 40 μ 1の Lysis buffer (1% TritonX100、 50 mMリン酸バッファー (pH7.0)、 0 .2% BSA)を添加し、細胞を溶解した。細胞溶解液うち 10 1を cAMP定量アツセィ〖こ 使用した。 10 μ 1の反応液を 384- well white plateに入れ、 5 μ 1ずつの cAMP- XL665 c onjugateと Mab anti- cAMP- Cryptate conjugateを添カ卩した。室温で 2時間反応させた 後、マルチプレートリーダー ARVOを用いて、 TR- FRET法による cAMPの定量をおこ なった。
実施例 14
[0115] ブタ脳組織由来活性成分 LPAおよび LPIの単離
ブタ新鮮脳 9個 (湿重量 924.9 g)を採取した。当日、新鮮脳 9個に生理食塩水 5Lを 加えホモゲナイズした後に、 4°Cに冷却し 9,000Gで 30分間高速遠心して上清 4,277g を取得した。
ウォーターズ社 Oasis HLB榭脂 300gを充填したカラム(容量 900ml)にメタノール 1L を流し予め洗浄し、次いで水 2L以上を流して平衡ィ匕させた。平衡ィ匕させた Oasis HL B榭脂カラムに上記の遠心上清を通液し吸着させた。カラムを水 5Lで洗浄し (C1とラ
ベル)、 5%メタノール水 5Lで洗浄した後に(C2とラベル)、 90%ァセトニトリル- 10%メ タノール 4Lを通液して活性成分を溶出させた (C3とラベル)。その後にァセトニトリル- 10%メタノール- 10% 0.1M酢酸 3Lを通液し(C4とラベル) 、 80%ァセトニトリル- 10% メタノール- 10% 0.1%ギ酸 3Lを通液し(C5とラベル) 、 80%ァセトニトリル- 10%メタ ノール- 10% 0.1%トリクロ口酢酸 TFA3Lを通液した(C6とラベル)。それぞれの溶出 液について活性測定した結果、活性成分は C3に溶出されていることが判った。
溶出液 C3について逆相液体クロマトグラフィー法により精製した。 4Lの溶出液 C3を エバポレーターで減圧濃縮し、濃縮液を少量のメタノールに溶解した。濃縮液を Agil ent社製の ZORBAX Eclipse XDB- C18カラムに通液し、 0.1%トリクロ口酢酸/ァセトニ トリル溶媒系でァセトニトリル濃度を増加させて活性成分を溶出した。グラジェント条 件は下記の条件に従って実施した。
(Zorbax-C 18- HPLC条件)
Lし装 : Applied Biosystems Integral HPLし
カラム: ZORBAX Eclipse XDB- C18 4.6x250mm (Agilent)
移動相: A: 0.1%TFA-H2O B: 0.08%TFA- 90%ACN
0%B(0min)-20%B(10min)-60%B(40min)-100%B(40min)-100%B(5min)
流速: l.OmL/min
分画: l.Omin/Fr
検出: UV220nm,280nm
各フラクション 50 1についてスピードバック濃縮装置を用いて減圧濃縮した後に、 1 1の DMSOに溶解し GPR92/93発現 CHO- K1細胞を使用するアツセィ法により活性 を測定した。活性はフラクション 64およびフラクション 65に溶出された。それぞれの cA MP生成量は 1.9nMおよび 3.1nMであった。
上記のフラクション 64およびフラクション 65それぞれ 800 μ 1をスピードバック濃縮装 置により減圧濃縮した後に、 200 1のメタノールに溶解し、 Waters社製の Xterraカラム に通液し、 0.1%トリクロ口酢酸/ァセトニトリル溶媒系でァセトニトリル濃度を増加させ て活性成分を溶出した。グラジェント条件は下記の条件に従って実施した。
(Xterra- HPLC条件)
LC装置: Applied Biosystems Integral HPLC
カラム: Xterra (登録商標) RP18 4.6x150mm (Waters)
移動相: A: 0.1%TFA-H2O B: 0.08%TFA- 90%ACN
0%B(0min)-50%B(5min)-58%B(8min)-70%B(24min)-75%B(5min)-100%B(10min)
-100%(3min)
流速: 0.8mL/min
分画: l.Omin/Fr
検出: UV220nm,280nm
各フラクション 10 1についてスピードバック濃縮装置を用いて減圧濃縮した後に、 1 μ 1の DMSOに溶解し GPR92/93発現 CHO- K1細胞を使用するアツセィ法(実施例 13 を参照)により活性を測定した。活性はフラクション 16に溶出された。 cAMP生成量は 3 2nMであった。
フラクション 16 (700 1)をスピードバック濃縮装置により減圧濃縮した後に、 200 1 のメタノールに溶解し、 Waters社製の Atlantisカラムに通液し、 0.1%トリクロ口酢酸/ァ セトニトリル溶媒系でァセトニトリル濃度を増力 []させて活性成分を溶出した。グラジェ ント条件は下記の条件に従って実施した。
(Atlantis -HPLC条件)
Lし装 : Applied Biosystems Integral HPLし
カラム: Atlantis (登録商標) dC18 4.6x150mm (Waters)
移動相: A: 0.1%TFA-H2O B: 0.08%TFA- 90%ACN
0%B(0min)-50%B(5min)-58%B(8min)-70%B(24min)-100%B(5min)
流速: 0.8mL/min
分画: 0.3min/Fr
検出: UV220nm,280nm
各フラクション 20 1についてスピードバック濃縮装置を用いて減圧濃縮した後に、 1 1の DMSOに溶解し GPR92/93発現 CHO- K1細胞を使用するアツセィ法により活性 を測定した。活性はフラクション 41およびフラクション 47に溶出された。それぞれの cA MP生成量は 4.3nMおよび 5.1nMであった。
実施例 15
ブタ脳組織由来活性成分 LPAおよび LPIの構造解析
質量分析には Nanosprayイオン源を装着した Micomass社 QTOF2質量分析計および Thermo Electoron社イオントラップ質量分析計 LCQを解析に使用した。試料は 0.1%A cOH-H20/MeOH/AcCN(l : 1:1)に溶解し、流速 200nL/minにて Nanospray測定を行 つた。 LCQではキヤピラリー温度 150°C、イオン化電圧 1.8kVに設定し、 positive測定 および negative測定の両モードでの測定を行った。 QTOF2では positiveイオンモード のみ測定を行った。
(1)活性フラクション 41の構造解析
活性フラクション 41のマススペクトルを取得したところ、負イオンモードでは [M-H]-と 考えられるピーク m/z599.9が検出され、正イオンモードでは [M+H]+=601.7, [M+Na]+,
[2M+H1+, [M+H-H20]+が検出され、本成分の分子量は 600と決定でき、単一成分 に精製されていることがわ力つた。負イオン MS/MSスペクトルで検出されたフラグメン トイオン m/z419, m/z241からイノシトールリン脂質と推定され、さらに、 m/z315, m/z34 1のフラグメントイオンから、本リガンド候補成分は lysophosphatidylinositol (LPI (18:0) )と推定することができた。 lysophosphatidylinositol (LPI (18:0) )標品の MS/MSスぺタト ルを取得したところ、フラグメントイオンが一致し、 MW600活性成分は lysophosphatidy linositol (LPI (18:0) )と決定した。
(2)活性フラクション 47の構造解析
活性フラクション 47のマススペクトルを取得したところ、負イオンスペクトルでは、 [M- H]-および [2M- H]-のピークが検出され、正イオンスペクトルでは、 [M+H]+, [2M+H1+ , [3M+H]+, [M+Na]+, [M+H- H20]+のピークが検出されたことから、本成分の分子量 は 482と決定でき、単一成分に精製されていることがわ力つた。正イオン m/z483.8から の MS/MSスペクトルでは- 98フラグメントが検出され、リン酸基があることが示唆された 。負イオン m/z481.8からの MS/MSスペクトルでは、グリセロールリン酸に特徴的な m/z 153のフラグメントイオンが検出され、本成分はリゾリン脂質の一種であるリゾフォスフ ァチジン酸 Docosahexaenoy卜 LPA (LPA (22:6) )と推定できた。本 MS/MSスペクトルで は、ァシル基の結合部位 (sn-1あるいは sn-2)は確定できず、両方の可能性がある。
酵素合成法(Tokumur, A.ら、 Biochem J. 2002 Aug l;365(Pt 3):617- 28.)により調製 した Docosahexaenoy卜 LPA (LPA (22:6) )標品の MS/MSスペクトルを取得したところ、 フラグメントイオンが一致し、 MW482活性成分は Docosahexaenoy卜 LPA (LPA (22:6) ) と決定した。
実施例 16
[0117] 各種類縁化合物の活性
上記活性化合物の構造類似化合物について GPR92/93発現 CHO-K1細胞を使用す るアツセィ法 (実施例 13を参照)により活性を測定した。活性測定結果を表 1に示した
[0118] [表 5]
*(被験物質存在下での cAMP量) (被験物質非存在下での cAMP量)
産業上の利用可能性
[0119] 本発明の GPR92/93作動薬は、インスリン分泌促進活性を示し、耐糖能異常改善薬 、糖尿病治療薬として有用である他、研究用試薬として利用することもできる。また、 本発明のスクリーニング方法により、医薬品の候補ィ匕合物となり得る、 GPR92/93作動 薬及び拮抗薬を探索することが可能になった。
配列表フリーテキスト
[0120] 配列番号 5:抗原ペプチド
配列番号 6 :抗原ペプチド
配列番号 7: PCR用プライマー
配列番号 8: PCR用プライマー
配列番号 11: PCR用プライマー 配列番号 12 :PCR用プライマー 配列番号 15: PCR用プライマー 配列番号 16 :PCR用プライマー