明 糸田 書 眼用レンズ表面のコーティング剤 技術分野
本発明は、 眼用レンズ、 とくにコンタクトレンズ表面のコーティング剤 およびそのコーティング剤から形成されるコ一ティング層を有するコン夕 クトレンズに関する。 背景技術
眼用レンズにおいては、 昨今、 その酸素透過性向上を目的として、 ゲイ 素およびフッ素を含むモノマーが使用されており、 これらの成分により、 これまでにない格段の酸素透過性を実現することが可能となった。 しかし、 これらの成分は、 生体適合性が低く、 とりわけゲイ素含有成分を主成分と して使用した材料においては、 親水性が低く、 さらには独特の粘着性によ り、 角膜表面への吸着現象を引き起こすなど、 生体適合性の低さが問題と なっており、 従来より、 種々の表面処理が検討されている。
吸着現象は、 レンズが水分を失う過程でハイドロゲル層がセミドライ状 態になり、 これがレンズと角膜表面との間の相互作用を発生させることに よって生じると考えられる。 レンズと角膜表面との間の相互作用とは、 レ ンズ下の涙液が一旦系外に放出されると、 涙液のレンズへの供給経路を確 保できなくなり、 その間にレンズと角膜表面とが積極的な相互作用を持つ ことを意味する。
眼用レンズ材料の表面コーティングとしては、 レンズ表面にハイドロゲ ル層を形成させるほか、 アルカリ処理、 酸素や窒素などの雰囲気下でのプ ラズマ処理、 親水性基含有化合物のプラズマグラフト処理およびポリマー
グラフト処理などを施すことにより、 表面に親水性を付与してきた。 アルカリ処理においては、 レンズ成分である (メタ) アクリル酸エステ ル部分が加水分解され、 それにより形成される親水性基がレンズ表面を覆 うことで親水性 (=水濡れ性) が向上するが、 レンズが乾燥することでそ の効果は認められなくなる。
プラズマ処理においては、 酸素透過性ハードレンズ (R G Pレンズ) に 対してはコーティング効果が高いが、 ソフトコンタクトレンズ (S C L) にはその効果は低い。 その理由として S C Lにおいては、 主鎖のポリマー 鎖が柔軟であり、 また、 安定化のために官能基が主鎖のポリマー鎖の内部 に埋没することに起因すると考えられるため、 表面には疎水性基が局在す ることが考えられる。 また、 繰り返しプラズマ処理を施しても、 その効果 はさほど期待できない。
プラズマグラフト処理においては、 処理と同時に重合が行われるため、 表面にポリマー層が形成されることで官能基が埋没する可能性は低いが、 重合時の重合度が制御できないことから、 表面全体を均一にコーティング することが難しい。 表面全体を均一にコーティングできないことで、 重合 度の高い部分で酸素透過性が低くなつたり、 重合度の低い部分で角膜表面 への吸着が生じるという問題もあった。
ポリマーグラフト処理においては、 重合度が制御されたポリマーを用い て被覆することで、 表面全体を均一にコーティングすることができるが、 末端のみに官能基を有するグラフト用ポリマーでは反応性が極端に低く、 ほとんどが物理的吸着により表面に存在することから、 日常のレンズケア により表面処理層の剥離など被覆層の安定性の低さが問題となっている。 また、 生物学的および非生物学的表面をコーティングするための組成物 として、 高分子量のポリリジンを有するポリエチレングリコール (P E G) ポリリジン (P L L) ブロックコポリマーまたは櫛形コポリマー、
P PLが PEGの一端に結合したデンドリマーである PEGZPLLコポ リマー、 ならびにポリカチォン性およびポリアニォン性物質交互層を含む 多層組成物が知られている (特表 2002-515932号公報参照) 。 し力、し、 P EGが PL L側鎖に結合し、 表面には PL Lの末端部で結合す るため、 材料表面との結合が弱く、 また、 結合頻度が低いため、 効率的に 表面コートが達成されないなどの問題があつた。
さらに、 接着性、 耐久性に優れた生物医学的材料または眼科用装置を被 覆するための方法としては、 材料表面に、 ポリペプチドなどのポリマー基 本骨格およびここに懸垂して結合している側鎖を含む 1つ以上の異なる櫛 状ポリマーを塗装し、 このポリマーを熱または UV若しくは可視光による 照射を用いて材料表面に固定する方法が知られている (特開 2002 -3 48393号公報参照) 。 しかし、 前記と同様に、 この方法で用いられる 櫛状ポリマーは、 親水性プロックがポリマー基本骨格の側鎖に結合してい るため、 材料表面との結合が弱く、 また、 結合頻度が低いため、 効率的に 表面コートが達成されないなどの問題があつた。 発明の開示
本発明は、 前記従来の課題を解決するためになされてものであって、 レ ンズ表面に、 安定性が高く、 かつ日常のケアによるコーティング層の剥離 のないコーティングを可能にするコーティング剤を提供することを目的と する。
すなわち、 本発明は、 疎水性ブロックの主鎖の少なくとも片末端に、 親 水性プロックが結合したプロック共重合体を含有する眼用レンズ表面の コーティング剤であって、 該疎水性ブロックの側鎖に、 眼用レンズ表面に 存在する官能基と結合できる官能基を少なくとも 1つ有するコーティング 剤に関する。
前記疎水性ブロックが、 少なくとも 1つの官能基を側鎖に有するァミノ 酸を成分とするポリペプチドであることが好ましく、 このポリペプチドが、 アルギニン、 ァスパラギン、 ァスパラギン酸、 システィン、 グルタミン、 グルタミン酸、 ヒスチジン、 リジン、 プロリン、 セリン、 スレオニン、 ト リブトフアンおよびチロシンからなる群から選択されることがより好まし い。
前記ポリぺプチドが、 さらに疎水性ァミノ酸を含むことがより好ましく、 この疎水性アミノ酸が、 ァラニン、 イソロイシン、 ロイシン、 メチォニン、 フエ二ルァラニン、 プロリン、 システィン、 トリプトファン、 チロシンお よびバリンからなる群から選択されることがさらに好ましい。
前記ポリペプチドにおける、 少なくとも 1つの官能基を側鎖に有するァ ミノ酸と疎水性アミノ酸の残基比が 2 0 : 8 0〜1 0 0 : 0であることが 好ましく、 このポリペプチドが、 リジンおよびロイシンからなることがよ り好ましい。
前記ポリペプチドが、 1 5〜1 0 0残基のアミノ酸からなることがさら に好ましい。
前記親水性ブロックが、 エチレングリコール、 N—ビニルピロリドン、 ジメチルアクリルアミド、 メ夕クリル酸および糖からなる群から選択され るモノマーの単独重合体またはそれらの共重合体からなることが好ましい。 前記親水性プロックの重合度が、 1 0〜 5 0 0 0であることがより好ま しい。
本発明は、 眼用レンズ本体および前記コ一ティング剤で形成されたコー ティング層を有する眼用レンズに関する。
前記眼用レンズ本体は、 コンタクトレンズ本体であることが好ましい。 前記コンタクトレンズ本体が、 ゲイ素元素および Zまたはフッ素元素を 含有する共重合体からなることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、 疎水性ブロックの主鎖の少なくとも片末端に、 親水性ブロッ クが結合したブロック共重合体を含有する眼用レンズ表面のコ一ティング 剤であって、 該疎水性ブロックの側鎖に、 眼用レンズ表面に存在する官能 基と結合できる官能基を少なくとも 1つ側鎖に有するコーティング剤に関 する。
本発明のコーティング剤は、 疎水性ブロックと親水性ブロックからなる ブロック共重合体である。
疎水性ブロックは、 眼用レンズ表面にある官能基と結合し、 バリア層を 形成するため、 眼用レンズ表面に存在する官能基と結合できる官能基を、 側鎖に少なくとも 1つ有する材料が使用される。 疎水性ブロックに使用で きる材料としては、 ポリペプチド、 水酸基やアミノ基を含むモノマーと共 重合させたフッ化アルキルモノマ一からなるフッ素ポリマーなどがあげら れる。 なかでも、 生体適合性が高く、 かつ、 酸素透過性を阻害しないこと から、 ポリペプチドがとくに好ましい。
疎水性プロックのポリぺプチドが α _ヘリックス構造を取ることにより、 ポリべプチドの側鎖が外側に配向し、 外側を向いた側鎖がレンズ表面に存 在する官能基と結合することで、 主鎖末端にのみ官能基を有するポリぺプ チドと結合するよりも結合部位が多く、 安定性が高まる。
また、 ポリぺプチド側鎖に存在する官能基と眼用レンズ表面の官能基と が化学的に結合するため、 得られる眼用レンズ表面のコーティング層の安 定性は高く、 かつ剥離性が低いコーティング層をもつ眼用レンズを得るこ とができる。 さらに、 ポリペプチドが剛直な α -ヘリックス構造を呈し、 その分子間隙が小さいことから、 タンパク質や脂質を通さないので、 眼用 レンズに汚れが付着するのを防ぐことができる。
ポリぺプチド主鎖の末端に結合している親水性プロックは、 α—ヘリッ クスの螺旋状構造内に侵入することが困難なため、 常に最外層に親水性ブ ロックを配置することができる。
このポリペプチド鎖を構成するアミノ酸は、 コーティング処理を施す眼 用レンズ表面にある官能基にしたがって選択できる。 ここで、 アミノ酸と は、 中心となる 1個の炭素原子 (C) にァミノ基 (― ΝΗ 2) 、 カルボキ シル基 (一 C O OH) 、 水素原子 (一 Η) 、 側鎖 (― R) が結合したもの である。 側鎖はアミノ酸ごとに異なる原子団で、 各アミノ酸の性質を決定 する部分である。 眼用レンズ表面に存在する官能基と結合する、 少なくと も 1つの官能基を側鎖に有するアミノ酸 (以下、 官能基含有アミノ酸とい う) としては、 アルギニン、 ァスパラギン、 ァスパラギン酸、 システィン、 グルタミン、 グルタミン酸、 ヒスチジン、 リジン、 プロリン、 セリン、 ス レオニン、 トリブトファン、 チロシンなどがあげられる。 なかでも、 眼用 レンズとの化学結合を形成するにあたり、 反応性の高い縮合反応に供する ことが可能なアミノ基を有することから、 リジンが好ましい。 なお、 これ らのアミノ酸は、 1種またはそれ以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリぺプチドのバリァ層は、 レンズが角膜表面へ吸着することを防止す るため、 さらに疎水性アミノ酸を含むのが好ましい。 ここで、 疎水性アミ ノ酸とは、 側鎖に疎水性基を持つアミノ酸を総称したものをいい、 たとえ ば、 ァラニン、 イソロイシン、 ロイシン、 メチォニン、 フエ二ルァラニン、 プロリン、 システィン、 トリブトファン、 チロシン、 ノ リンがあげられる。 なかでも、 疎水性が高く、 かつ生分解性が低いため、 ポリペプチドの安定 性がさらに高まることから、 ロイシンが好ましい。 なお、 これらのァミノ 酸は、 1種またはそれ以上を組み合わせて用いてもよい。
眼用レンズ表面に存在する官能基と結合する官能基含有アミノ酸であり、 かつ、 疎水性アミノ酸であるプロリン、 システィン、 トリブトファンおよ
びチロシンについては、 単独で疎水性ブロックを形成してもよい。
また、 眼用レンズ表面に官能基が存在しない場合は、 眼用レンズ表面に 加水分解によるヒドロキシル基、 カルボキシル基、 アミノ基、 イミダゾ一 ル基などを導入するための前処理を施し、 官能基を付与することで、 本発 明によるコーティングが可能となる。
ポリぺプチドを構成するァミノ酸が、 官能基含有ァミノ酸および疎水性 アミノ酸からなるポリペプチドである場合、 官能基含有アミノ酸と疎水性 アミノ酸の残基比は、 2 0 : 8 0〜: 1 0 0 : 0、 好ましくは 3 0 : 7 0〜 8 0 : 2 0である。 官能基含有アミノ酸の残基比が 2 0未満であり、 疎水 性アミノ酸の残基比が 8 0を超える場合は、 眼用レンズ表面との反応点 (官能基) が少なく、 コ一ティングが不十分となる傾向がある。
ポリペプチドは、 1 5〜1 0 0残基のアミノ酸からなり、 好ましくは 2 2〜8 0残基のアミノ酸からなる。 アミノ酸数が 1 5残基未満であると、 ポリべプチドに特徴的な α—ヘリックス構造を形成することができないた め、 規則的な眼用レンズ表面との結合が不十分となる傾向がある。 また、 1 0 0残基を超えると、 工業的生産性が劣る傾向がある。
親水性ブロックは、 線状ポリマーで、 自己架橋しないものであれば使用 することができる。 本発明に使用できる親水性ブロック材料としては、 ェ チレングリコール、 Ν _ビニルピロリドン、 ジメチルアクリルアミド、 メ タクリル酸、 糖 (たとえば、 ポリサッカライド、 ヒアルロン酸、 コンドロ ィチン硫酸、 デルマタン硫酸など) などの単独重合体またはそれらの共重 合体があげられる。 なかでも、 生体適合性の高さから、 エチレングリコー ル、 Ν—ビニルピロリドン、 ジメチルアクリルアミド、 メタクリル酸の単 独重合体またはそれらの共重合体がとくに好ましい。
親水性ブロックの重合度は、 好ましくは 1 0〜5 0 0 0であり、 より好 ましくは 1 5〜: 1 0 0 0、 さらに好ましくは 2 0〜 5 0 0である。 親水性
ブロックの重合度が 1 0未満であると、 親水性部位としての効果が不十分 となる傾向がある。 また、 5 0 0 0を超えると、 疎水性ポリマーとブロッ ク構造を形成するのが困難となる傾向がある。
本発明のコ一ティング剤に用いられるブロック共重合体は、 疎水性ブ ロックと親水性プロックとからなり、 疎水性プロックの主鎖の少なくとも 片末端に、 親水性ブロックに配置されていれば、 どのようなものでもよい が、 なかでも、 生産性 (合成の簡便性) の点から、 ジブロック共重合体が 好ましい。
プロック共重合体の親水性プロックと疎水性プロックとの割合は、 好ま しくは親水性プロック:疎水性プロックが重量比で 1 : 1 0 0 0〜 1 0 0 0 : 1であり、 より好ましくは 1 : 5 0 0〜5 0 0 : 1である。 親水性ブ ロック:疎水性プロックが重量比で 1 : 1 0 0 0より親水性プロックが少 なくなると、 表面の親水性が不足する傾向がある。 また、 親水性ブロック :疎水性プロックが重量比で 1 : 1 0 0 0より疎水性プロックが多くなる と、 眼用レンズ表面との化学反応が阻害される傾向がある。
ブロック共重合体は、 親水性ブロック材料に、 辣水性ブロック材料を反 応させることにより得られる。 ここで、 疎水性ブロックがアミノ酸からな るポリペプチドである場合、 N—カルポキシアミノ酸無水物 (N C A) を 用いることで高分子量のポリペプチド (疎水性ブロック) を容易に得るこ とができる。 N C Aの合成方法としては、 第 4版 実験化学講座 2 8 高分子合成 (社団法人 日本化学会編) 2 8 8〜2 9 1頁に記載の方法に したがうことができる。 ここで、 N C Aを合成する際に、 リジンなどのよ うな官能基含有アミノ酸を用いる場合には、 その官能基を保護する必要が ある。 たとえば、 ァミノ基の保護基としてはべンジルォキシカルボニル基 など、 ヒドロキシル基の保護基としてはべンジル基、 ァセチル基など、 メ ルカプト基およびカルポキシル基の保護基としてはベンジル基など、 アミ
ジノ基の保護基としては、 P—トルエンスルホニル基などがあげられる。 親水性ポリマーの末端官能基を開始点とする重合反応によりプロックポ リマーを合成できる溶媒として、 ジメチルホルムアミド、 クロ口ホルム、 テトラヒドロフラン、 ジクロロメタン、 1, 2—ジクロロェタンなどがあ げられる。 親水性ポリマー、 N—力ルボン酸無水物 (N C A) ポリマーの 溶解性を考慮すると、 ジメチルホルムアミドが好ましい。
親水性プロック材料と疎水性プロック材料との反応後、 ァミノ酸側鎖の 官能基の脱保護により、 官能基を側鎖に有する疎水性プロックを得ること ができる。 脱保護の方法としては、 例えば、 ァミノ基の保護基としてベン ジルォキシカルポ二ル基を用いる場合、 臭化水素を作用させる方法などが あげられる。
本発明に用いられる眼用レンズのレンズ本体の材料としては、 たとえば 2以上の活性不飽和基を有し、 数平均分子量が 2 0 0 0〜 1 0 0 0 0 0の シロキサンマクロモノマー (A) および低級脂肪酸ビニルエステル (B ) を含有した重合成分を重合させて得られたシロキサン含有重合体などがあ げられる。
前記シロキサンマクロモノマー (A) の活性不飽和基とは、 ラジカル重 合に供することが可能な活性不飽和基のことであり、 たとえば (メタ) ァ クリロイル基、 ビニル基、 ァリル基、 (メタ) ァクリロイルォキシ基、 ビ 二ルカルバメート基などがあげられる。
. シロキサンマクロモノマー (A) の数平均分子量は、 レンズ材料の柔軟 性の点から 2 0 0 0以上、 好ましくは 2 5 0 0以上であることが望ましく、 レンズ材料の形状回復性の点から 1 0 0 0 0 0以下、 好ましくは 5 0 0 0 0以下であることが望ましい。
なお、 通常シロキサンマクロモノマーは、 水濡れ性に劣り、 それ単独で は比較的機械的強度が不足するものが多い。 したがって、 本発明に用いら
れるシロキサンマクロモノマー (A) としては、 水濡れ性の向上を目的と してマクロモノマー構造中に式:
-N-C-0-
I II H O で表わされるウレ夕ン基を有するものが好ましく、 その個数は平均 2個以 上、 好ましくは平均 4個以上、 また平均 20個以下、 好ましくは平均 14 個以下であることが望ましい。
本発明においては、 シロキサンマクロモノマ一 (A) として、 とくに一 般式 ( I一 1 ) :
A1 — (― U1 -S 1 ―) n -U2 -S2 — U3 -A2 (1— 1) [式中、 A1 および A2 はそれぞれ独立して活性不飽和基、 炭素数 1〜2 0のアルキレン基を有する活性不飽和基または炭素数 1〜 20のアルキレ ングリコール基を有する活性不飽和基、
U1 は両隣りの A1 および S1 とまたは S1 および S1 とウレタン結合を 形成するジウレタン性基、
U2 は両隣りの A1 および S2 とまたは S1 および S2 とウレタン結合を 形成するジウレタン性基、
U3 は両隣りの S 2 および A2 とウレタン結合を形成するジウレタン性基、 S 1 および S 2 はそれぞれ独立して式:
(式中、 R および R2 はそれぞれ独立して炭素数 1〜20のアルキレン 基、 R3 、 R4 、 R5 、 R6 、 R7 および R8 はそれぞれ独立してフッ素
原子で置換されていてもよい直鎖状、 分岐鎖状もしくは環状の炭素数 1〜 20のアルキル基または式: A3 — U4 — R1 -O-R2 一 (式中、 A3 は活性不飽和基、 炭素数 1〜20のアルキレン基を有する活性不飽和基も しくは炭素数 1 ~ 20のアルキレンダリコール基を有する活性不飽和基、 U4 は隣りあう A3 および R1 とウレタン結合を形成するジウレタン性基 を示し、 R1 および R2 は前記と同じ) で表わされる基、 Xは 1〜150 0の整数、 yは 0または 1〜: I 499の整数、 x + yは 1〜: 1500の整 数を示す) で表わされる基、
nは 0または 1〜 10の整数を示す]
で表わされるマクロモノマ一や、
一般式 ( I— 2 ) :
B' - S3 — B1 (1 -2)
[式中、 B1 はウレタン結合を有する活性不飽和基、
S 3 は式:
(式中、 R1 および R 2 はそれぞれ独立して炭素数 1〜20のアルキレン 基、 R3 、 R4 、 R5 、 R6 、 R7 および R8 はそれぞれ独立してフッ素 原子で置換されていてもよい直鎖状、 分岐鎖状もしくは環状の炭素数 1〜 20のアルキル基または式: A3 -U4 — R1 -O-R2 - (式中、 A3 は活性不飽和基、 炭素数 1〜 20のアルキレン基を有する活性不飽和基も しくは炭素数 1〜 20のアルキレンダリコール基を有する活性不飽和基、 U4 は隣りあう A3 および R1 とウレタン結合を形成するジウレタン性基 を示し、 R1および R2は前記と同じ) で表わされる基、 Xは 1〜1500
の整数、 yは 0または 1〜1499の整数、 x + yは 1〜 1500の整数 を示す) で表わされる基を示す]
で表わされるマクロモノマーが好ましく用いられる。
前記一般式 (1— 1) において、 A1 および A2 にて示される活性不飽 和基としては、 前記したように、 たとえば (メタ) ァクリロイル基、 ビニ ル基、 ァリル基、 (メタ) ァクリロイルォキシ基、 ビニルカルバメート基 などがあげられる。 これらのなかでもレンズ材料にさらに良好な柔軟性を 付与することができ、 他の重合成分との共重合性にすぐれる点から、 ァク リロイルォキシ基およびビエル基が好ましく、 とくにァクリロイルォキシ 基が好ましい。
また前記活性不飽和基がアルキレン基またはアルキレングリコール基を 有する場合、 かかるアルキレン基やアルキレンダリコール基の炭素数は好 ましくは 1〜20であり、 1〜10であることがより好ましい。
また、 一般式 ( I— 1 ) 中、 S 1 および S 2 で示される式:
(式中、 R R2 、 R3 、 R4 、 R5 、 R6 、 R7 、 R8 、 xおよび y は前記と同じ) で表わされる基において、 R1 および R2 は好ましくは炭 素数 1〜5のアルキレン基、 R3 〜R8 は好ましくは炭素数 1〜5のアル キル基であり、 またかかる R3 〜R8 を示す式: A3 -U4 — R1 -0- R2 —中の A3 は、 前記例示と同様の活性不飽和基を示し、 かかる活性不 飽和基がアルキレン基またはアルキレングリコール基を有する場合、 アル キレン基やアルキレングリコール基の炭素数は 1〜20が好ましく、 1〜 10であることがより好ましい。 また Xは 1〜500の整数、 yは 0また
は 1 499の整数、 x + yは 1 500の整数であることが好ましい。 さらに一般式 (1— 1) 中、 nは 0または 1 5の整数であることが好 ましい。
一方、 前記一般式 (1 _2) において、 B1 にて示されるウレタン結合 を有する活性不飽和基としては、 たとえば (メタ) ァクリロイルイソシァ ネート基、 (メタ) ァクリロイルォキシイソシァネート基、 ァリルイソシ ァネート基、 ビニルベンジルイソシァネート基などがあげられる。 また、 一般式 (I一 2) 中で S3 にて示される基は、 前記一般式 (1— 1) 中の S1 および S2 にて示される基と同様である。
前記マクロモノマ一のなかでも、 形状回復性に代表される柔軟性および 機械的強度の付与の効果が大きいという点から、 式:
A1 -U2 -S2 -U3 -A2
(式中、 A1 A2 U2 U3 および S2 は前記と同じ) で表わされる マクロモノマーおよび式:
A
1 - (-U
1 -S
1 -)
n'— U
2 — S
2 -U
3 -A
2 (式中、 A
1 A
2 U
1 U
2 U
3 S
1 および S
2 は前記と同じ、 n' は 1 4の整数を示す) で表わされるマクロモノマーが好ましく、 と くに式:
A-CH2CH2OCH2CH2CH2-S iO- S iO S i— CH2CH2CH2〇CH2CH2— A
I
(式中、 Aは式:
で表わされる基、 aは 2 0〜 5 0の整数を示す)
で表わされるマクロモノマーが好ましい。
前記低級脂肪酸ビニルエステル (B ) の代表例としては、 たとえば一般 式 (I I) :
H
I
H 2 C = C— 0 _ C _ R (I I)
II
0
(式中、 Rは水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数 1〜1 5のアルキル基を示す) で表わされる化合物が好ましい。 かかる化 合物の具体例としては、 たとえばギ酸ビニル、 酢酸ビエル、 プロピオン酸 ビニル、 酪酸ビニル、 ピバリン酸ビニル、 バーサチック酸ビニル、 ラウリ ン酸ビニル、 ステアリン酸ビニル、 モノクロ口酢酸ビエル、 モノフルォロ 酢酸ビニル、 トリクロ口酢酸ビエル、 トリフルォロ酢酸ビニルなどがあげ られ、 これらは単独でまたは 2種以上を混合して用いることができる。 前記低級脂肪酸ビニルエステル (B ) のなかでも、 形状回復性および親 水性の付与の効果が大きいという点から、 酢酸ビニル、 プロピオン酸ビ二 ルおよびピバリン酸ビニルが好ましく、 とくに酢酸ビエルが好ましい。 たとえば本発明に用いられるレンズ材料であるシロキサン含有重合体は、 前記シロキサンマクロモノマー (A) および低級脂肪酸ビニルエステル (B ) を含有した重合成分を重合させて得られるが、 かかる重合成分には、 このほかにたとえばケィ素含有モノマ一 (C) が含有されていてもよい。 前記ケィ素含有モノマー (C) の代表例としては、 たとえばペンタメチ ルジシロキサニルメチル (メタ) ァクリレート、 トリメチルシロキシジメ チルシリルプロピル (メタ) ァクリレート、 メチルビス (トリメチルシロ キシ) シリルプロピル (メタ) ァクリレート、 トリス (トリメチルシロキ
シ) シリルプロピル (メタ) ァクリレート、 モノ [メチルビス (トリメチ ルシロキシ) シロキシ] ビス (トリメチルシロキシ) シリルプロピル (メ 夕) ァクリレート、 トリス [メチルビス (トリメチルシロキシ) シロキ シ] シリルプロピル (メタ) ァクリレート、 トリメチルシリルメチル (メ 夕) ァクリレート、 トリメチルシリルプロピル (メタ) ァクリレート、 メ チルビス (トリメチルシロキシ) シリルェチルテトラメチルジシロキサニ ルメチル (メタ) ァクリレート、 テトラメチルトリイソプロビルシクロテ トラシロキサニルプロピル (メタ) ァクリレート、 テトラメチルトリイソ プロビルシクロテトラシロキシビス (トリメチルシロキシ) シリルプロピ ル (メタ) ァクリレート、 トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル
(メタ) ァクリレートなどのケィ素含有 (メタ) ァクリレート ;たとえば トリス (トリメチルシロキシ) シリルスチレン、 メチルビス (トリメチル シロキシ) シリルスチレン、 ジメチルシリルスチレン、 トリメチルシリル スチレン、 トリス (トリメチルシロキシ) シロキサニルジメチルシリルス チレン、 [メチルビス (トリメチルシロキシ) シロキサニル] ジメチルシ リルスチレン、 ペンタメチルジシロキサニルスチレン、 ヘプ夕メチルトリ シロキサニルスチレン、 ノナメチルテトラシロキサニルスチレン、 ペン夕 デカメチルへプタシ口キサニルスチレン、 ヘンエイコサメチルデ力シロキ サニルスチレン、 ヘプタコサメチルトリデカシロキサニルスチレン、 ヘン トリアコンタメチルペン夕デカシロキサニルスチレン、 トリメチルシロキ シペン夕メチルジシロキシメチルシリルスチレン、 トリス (ペン夕メチル ジシロキシ) シリルスチレン、 [トリス (トリメチルシロキシ) シロキサ ニル] ビス (トリメチルシロキシ) シリルスチレン、 メチルビス (ヘプ夕 メチルトリシ口キシ) シリルスチレン、 トリス [メチルビス (トリメチル シロキシ) シロキシ] シリルスチレン、 トリメチルシロキシビス [トリス
(トリメチルシロキシ) シロキシ] シリルスチレン、 ヘプ夕キス (トリメ
チルシ口キシ) トリシロキサニルスチレン、 トリス [トリス (トリメチル シロキシ) シロキシ] シリルスチレン、 [卜リス (トリメチルシロキシ) へキサメチルテトラシ口キシ] [トリス (トリメチルシロキシ) シロキ シ] トリメチルシロキシシリルスチレン、 ノナキス (トリメチルシロキ シ) テトラシロキサニルスチレン、 メチルビス (トリデカメチルへキサシ 口キシ) シリルスチレン、 ヘプタメチルシクロテトラシロキサニルスチレ ン、 ヘプタメチルシクロテトラシロキシビス (トリメチルシロキシ) シリ ルスチレン、 トリプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサニルスチレ ンなどの一般式:
(式中、 pは 1〜1 5の整数、 qは 0または 1、 rは 1〜1 5の整数を示 す) で表わされるゲイ素含有スチレン誘導体などがあげられ、 これらは単 独でまたは 2種以上を混合して用いることができる。
前記ケィ素含有モノマー (C) のなかでも、 レンズ材料に高酸素透過性 および柔軟性、 とくに形状回復性を同時に付与する効果がより大きいとい う点から、 ケィ素含有 (メタ) ァクリレートが好ましく、 トリス (トリメ チルシ口キシ) シリルプロピルァクリレートがとくに好ましい。
さらに前記重合成分には、 シロキサンマクロモノマー (A) 、 低級脂肪 酸ビニルエステル (B ) およびゲイ素含有モノマー (C ) のほかに、 たと えばフッ素含有モノマー (D) が含有されていてもよい。
フッ素含有モノマー (D) の代表例としては、 たとえば 2 , 2 , 2—ト リフルォロェチル (メタ) ァクリレート、 2 , 2 , 3, 3—テトラフルォ 口プロピル (メタ) ァクリレート、 2, 2, 3 , 3—テトラフルオロー t
—ペンチル (メタ) ァクリレート、 2、 2, 3, 4, 4, 4—へキサフル ォロブチル (メタ) ァクリレート、 2, 2, 3, 4, 4, 4_へキサフル オロー t一へキシル (メタ) ァクリレート、 2, 3, 4, 5, 5, 5—へ キサフルオロー 2, 4—ビス (トリフルォロメチル) ペンチル (メタ) ァ クリレート、 2, 2, 3, 3, 4, 4—へキサフルォロブチル (メタ) ァ クリレート、 2, 2, 2, 2 ' , 2 ' , 2' _へキサフルォロイソプロピ ル (メタ) ァクリレート、 2, 2, 3, 3, 4, 4, 4—ヘプタフルォロ ブチル (メタ) ァクリレート、 2, 2, 3, 3, 4, 4, 5, 5—才クタ フルォロペンチル (メタ) ァクリレートなどのほか、 一般式:
R2
H2C = C-C-0-CH2-CH-CH.-R1
II I O OH
(式中、 は炭素数 3〜1 5のフルォロアルキル基、 R2は水素原子ま たはメチル基を示す) で表わされる、 たとえば 3—パーフルォロブチル— 2—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレート、 3—パ一フルォ口へキシ ル一 2—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレート、 3—パ一フルォロォ クチル一 2—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレート、 3— (パーフル オロー 3 _メチルプチル) 一 2—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレー ト、 3— (パーフルオロー 5—メチルへキシル) —2—ヒドロキシプロピ ル (メタ) ァクリレート、 3— (パーフルオロー 7—メチルォクチル) ― 2—ヒドロキシプロピル (メタ) ァクリレートなどのフルォロアルキル
(メタ) ァクリレートがあげられる。
これらのなかでも、 酸素透過性、 柔軟性および耐脂質汚染性のうち、 と くにレンズ材料に柔軟性を付与する効果が大きいという点から、 フルォロ アルキルァクリレートが好ましい。
さらに、 通常フッ素化合物は酸素透過性および耐脂質汚染性を付与し得 るものの、 水濡れ性に劣るものが多い。 これに対し、 酸素透過性および耐 脂質汚染性を損なうことなく、 レンズ材料に柔軟性および水濡れ性を付与 することができるという観点から、 とくに一般式:
H
I
H2C = C-C-0-CH2-CH-CH2-R'1
II I O OH
(式中、 R' iは炭素数 3〜15、 好ましくは 3〜8、 さらに好ましくは 4〜 6のパーフルォロアルキル基を示す) で表わされる水酸基を有するフ ルォロアルキルァクリレートが好ましい。
前記シロキサンマクロモノマー (A) および低級脂肪酸ビニルエステル
(B) ならびに必要に応じて用いられるケィ素含有モノマー (C) の量は、 レンズ材料に充分な柔軟性ならびに機械的強度および酸素透過性が付与さ れるようにするには、 ケィ素含有モノマー (C) を用いない場合、 (A) Z (B) が 30Z70以上、 好ましくは 50Z50以上であることが望ま しく、 またレンズ材料に充分な形状回復性および親水性が付与されるよう にするには、 前記割合が 90ノ 10以下、 好ましくは 80ノ 20以下であ ることが望ましい。
また、 ゲイ素含有モノマー (C) を用いる場合のシロキサンマクロモノ マー (A) とケィ素含有モノマー (C) との割合 ( (A) / (C) (重量 比) ) は、 形状回復性を低下させずにレンズ材料に充分な機械的強度が付 与されるようにするには、 20/80以上、 好ましくは 25/75以上で あることが望ましく、 またレンズ材料に充分な酸素透過性が付与されるよ うにするには、 前記割合が 90/10以下、 好ましくは 80 20以下で あることが望ましい。
前記シロキサンマクロモノマー (A) および低級脂肪酸ビニルエステル
(B) 並びに必要に応じて用いられるケィ素含有モノマー (C) および フッ素含有モノマー (D) の量は、 レンズ材料にシロキサンマクロモノ マー (A) 、 低級脂肪酸ビニルエステル (B) およびゲイ素含有モノマー
(C) による効果が充分に発現されるようにするには、 シロキサンマクロ モノマ一 (A) 、 低級脂肪酸ビニルエステル (B) およびゲイ素含有モノ マー (C) の合計量とフッ素含有モノマ一 (D) との割合 ( (A) 、
(B) および (C) の合計量 Z (D) (重量比) ) が 20 80以上、 好 ましくは 40/60以上であることが望ましく、 またレンズ材料にとくに 充分な耐脂質汚染性が付与されるようにするには、 前記割合が 90/1 0 以下、 好ましくは 8 5/1 5以下であることが望ましい。
なお、 前記重合成分には、 必要に応じて、 さらに 2以上の重合性基を有 する架橋性化合物 (E) が含有されていてもよい。
架橋性化合物 (E) の代表例としては、 たとえばエチレングリコールジ
(メタ) ァクリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 トリエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 プロピレングリコール ジ (メタ) ァクリレート、 ジプロピレングリコールジ (メタ) ァクリレー ト、 ァリル (メタ) ァクリレート、 ビニル (メタ) ァクリレート、 トリメ チロールプロパントリ (メタ) ァクリレート、 メ夕クリロイルォキシジェ チルァクリレート、 ジビニルベンゼン、 ジァリルフタレート、 アジピン酸 ジァリル、 ジエチレングリコールジァリルエーテル、 トリアリルイソシァ ヌレート、 α—メチレン一 N—ビニルピロリ ドン、 4 _ビニルベンジル
(メタ) ァクリレート、 3—ビニルベンジル (メタ) ァクリレート、 2, 2—ビス (ρ_ (メタ) ァクリロイルォキシフエニル) へキサフルォロプ 口パン、 2, 2—ビス (m_ (メタ) ァクリロイルォキシフエニル) へキ サフルォロプロパン、 2, 2—ビス (o— (メタ) ァクリロイルォキシ
フエニル) へキサフルォロプロパン、 1, 4 _ビス (2 _ (メタ) ァクリ ロイルォキシへキサフルォロイソプロピル) ベンゼン、 1, 3—ビス (2 - (メタ) ァクリロイルォキシへキサフルォロイソプロピル) ベンゼン、 1, 2—ビス (2— (メタ) ァクリロイルォキシへキサフルォロイソプロ ピル) ベンゼン、 1, 4一ビス (2— (メタ) ァクリロイルォキシイソプ 口ピル) ベンゼン、 1 , 3 _ビス (2— (メタ) ァクリロイルォキシイソ プロピル) ベンゼン、 1, 2—ビス (2— (メタ) ァクリロイルォキシィ ソプロピル) ベンゼンなどがあげられ、 これらは単独でまたは 2種以上を 混合して用いることができる。
前記架橋性化合物 (E) のなかでも、 レンズ材料に光学特性および機械 的強度を付与する効果が大きく、 取扱いやすいという点から、 エチレング リコ一ルジ (メタ) ァクリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) ァク リレート、 アジピン酸ジァリルおよびジエチレングリコールジァリルエー テルが好ましく、 とくにエチレングリコールジ (メタ) ァクリレートおよ びジェチレングリコ一ルジァリルエーテルが好ましい。
架橋性化合物 (E) の重合成分中の含有量は、 レンズ材料に充分に光学 特性および機械的強度を付与するためには、 0 . 0 1重量%以上、 好まし くは 0 . 0 5重量%以上であることが望ましく、 またレンズ材料に機械的 強度は付与されるものの、 柔軟性が低下するおそれをなくすためには、 1 5重量%以下、 好ましくは 1 0重量%以下であることが望ましい。
前記レンズ材料の調製の際には、 その種類および配合量を適宜調整した 重合成分に、 通常、 まず後述する熱重合法、 光重合法などの、 活性不飽和 基にラジカルを発生させて重合反応に供するラジカル重合法に応じ、 ラジ カル重合開始剤、 光増感剤などが添加される。
前記ラジカル重合開始剤の代表例としては、 たとえばァゾビスィソプチ ロニトリル、 ァゾビスジメチルバレロニトリル、 ベンゾィルパーォキサイ
ド、 t 一ブチルハイド口パーオキサイド、 クメンバ一オキサイドなどの熱 重合開始剤;メチルオルソベンゾィルベンゾエー卜、 メチルベンゾィル フオルメート、 ベンゾインメチルエーテル、 ベンゾインェチルエーテル、 ベンゾインイソプロピルエーテル、 ベンゾインイソブチルェ一テル、 ベン ゾイン一 n—ブチルエーテルなどのベンゾイン系光重合開始剤; 2—ヒド 口キシ一 2—メチルー 1—フエニルプロパン— 1—オン、 p—^ Γソプロピ ルー α—ヒドロキシイソブチルフエノン、 p— t—ブチルトリクロロアセ トフエノン、 2, 2—ジメトキシ一 2—フエニルァセトフエノン、 ひ, ージクロ口一 4—フエノキシァセトフエノン、 N, N—テトラエチル一 4, 4ージァミノべンゾフエノンなどのフエノン系光重合開始剤; 1—ヒドロ キシシクロへキシルフェニルケトン; 1—フエニル— 1, 2—プロパンジ オン一 2 _ ( o—エトキシカルポニル) ォキシム; 2 _クロ口チォキサン ソン、 2 _メチルチオキサンソンなどのチォキサンソン系光重合開始剤; ジベンゾスバロン; 2—ェチルアンスラキノン;ベンゾフエノンァクリ レート ;ベンゾフエノン;ベンジルなどがあげられる。
前記光増感剤は、 単独では紫外線照射によって活性化しないが、 光開始 剤とともに用いると、 助触媒として機能し、 光開始剤を単独で用いた場合 よりもすぐれた効果を発揮するものである。 このような光増感剤としては、 たとえば 1, 2—ベンゾアントラキノンゃ、 n—プチルァミン、 ジ一 n— プチルァミン、 卜リエチルァミンなどのアミン類; トリ— n—ブチルホス フィン、 ァリルチオ尿素、 s—べンジルイソチウロニゥム _ p—トルエン スルフイネ一卜、 ジェチルアミノエチルメタクリレートなどがあげられる。 ラジカル重合開始剤、 光増感剤などは、 これらのなかから 1種または 2種以上を適宜選択して用いればよい。 これらの使用量は、 重合成分全量 1 0 0重量部 (以下、 部という) に対して 0 . 0 0 2〜2部程度、 好まし くは 0 . 0 1〜1部程度であることが望ましい。
ラジカル重合法においては、 重合成分とラジカル重合開始剤や光増感剤 とのみを重合に供してもよいが、 たとえば重合成分同士の相溶性をより向 上させるために、 希釈剤を用いてもよい。
希釈剤の代表例としては、 たとえばメタノール、 エタノール、 プロパ ノール、 ブタノール、 ペン夕ノール、 へキサノールなどのアルコール;ァ セトン、 メチルェチルケトンなどのケトン;ジェチルエーテル、 テトラヒ ドロフランなどのエーテルなどがあげられ、 これらは単独でまたは 2種以 上を混合して用いることができる。
前記希釈剤のなかでも、 重合成分の溶解性にすぐれるという点から、 炭 素数 1〜6のアルコールが好ましく、 とくに n—プロパノール、 n—ブ夕 ノールおよび n _ペン夕ノールが好ましい。
前記重合成分と希釈剤との混合割合は、 重合成分が希釈剤に充分に溶解 するようにするためには、 重合成分と希釈剤との重量比 (重合成分 Z希釈 剤) が 9 0 1 0以下、 好ましくは 8 0 Z 2 0以下であることが望ましい。 また、 得られる重合体が白濁し、 光学特性が低下したり、 機械的強度が不 足するおそれをなくすためには、 前記重量比が 3 0 / 7 0以上、 好ましく は 5 0 / 5 0以上であることが望ましい。
前記レンズ材料は、 公知のいかなる製法によっても製造することが可能 であるが、 得られるレンズ材料の性能を最大限に活用することを可能にす るといった点から、 とくに前記重合成分および必要に応じて希釈剤を、 ソ フトコンタクトレンズのレンズ前面の形状に対応した铸型と、 レンズ後面 の形状に対応した铸型との 2つからなる铸型内に注入して密閉したのち、 重合反応を行って重合体を調製し、 レンズを作製することが好ましい。 铸型内に重合成分と必要に応じて希釈剤との混合物を注入したのち、 重 合反応を行なって重合体を製造する。 かかる重合反応の方法にはとくに限 定がなく、 通常の方法を採用することができる。
重合反応の方法としては、 たとえば前記ラジカル重合開始剤が配合され た重合成分と、 必要に応じて希釈剤との混合物を、 まずたとえば 3 0〜6 0 で程度にて数時間〜数 1 0時間加熱して重合させ、 ついで 1 2 0〜 1 4 0 程度まで数時間〜 1 0数時間で順次昇温して重合を完結させる方法 (熱 重合法) 、 前記混合物を、 たとえば紫外線などのラジカル重合開始剤の活 性化の吸収帯に応じた波長の光線を照射して重合させる方法 (光重合法) 、 熱重合法と光重合法とを組合せて重合を行なう方法などがあげられる。 こ れらのなかでは、 短時間での重合が可能であるという点では光重合法が好 ましい。
前記熱重合法を用いる場合には、 恒温槽または恒温室内で加熱してもよ く、 またマイクロ波のような電磁波を照射してもよく、 その加熱は段階的 に行なってもよい。 また、 前記光重合法を用いる場合には、 前記光増感剤 をさらに添加してもよい。
かくして得られた重合体を铸型内から脱離させてレンズ材料を得ること ができる。
なおレンズ材料には、 必要に応じて切削加工、 研磨加工などの機械的加 ェを施してもよい。
前記レンズ材料にコーティング剤との化学結合を導入する目的で、 加水 分解処理を施すことができる。
前記加水分解処理とは、 加水分解により分解が可能な低級脂肪酸ビニル エステル (B ) に由来する単位を後述するアルカリ性化合物にてアルカリ 処理するかまたはたとえば硫酸にて酸処理してビニルアルコールとするこ とや、 アクリル酸誘導体構造を有する化合物に対しては、 加水分解により アクリル酸とすることが可能である。 ただし、 後者の酸処理による加水分 解処理は、 反応速度がおそく、 かつ均一なものが得られにくく、 副反応が おこるという欠点があるので、 アル力リ処理による加水分解処理が望まし
い。 かかる加水分解処理により、 含水率をそれほど上昇させることなくレ ンズ材料に官能基を導入することができる。
アル力リ処理に用いられるアル力リ性化合物としては、 たとえばァンモ ニァ、 アルカリ金属水酸化物、 アルカリ土類金属水酸化物などがあげられ る。 かかるアルカリ性化合物の具体例としては、 たとえば水酸化アンモニ ゥム、 水酸化ナトリウム、 水酸化カリウム、 水酸化カルシウムなどがあげ られる。 これらのアルカリ性化合物はおもに固体であるため、 たとえば水、 アルコール類、 エーテル類などに溶解し、 アルカリ溶液として加水分解処 理に用いるのがよい。
前記アルコール類としては、 たとえばメタノール、 エタノール、 プロパ ノール、 ブ夕ノールなどがあげられ、 前記エーテル類としては、 たとえば ジェチルエーテル、 テトラヒドロフランなどがあげられる。
加水分解処理に用いられるアル力リ性化合物のアル力リ溶液のなかでは、 アルコール類を用いたものが好ましく、 加水分解処理をより効率よく進め るために、 なかでもその濃度が 0 . 0 1〜1モル リットルの水酸化ナト リウムのメタノール水溶液が好ましく、 とくにメタノール水溶液がメ夕 ノールと水との混合割合 (メタノール Z水 (体積比) ) が 1 0 / 9 0〜 9 0 / 1 0のものが好ましい。
加水分解処理は前記アル力リ溶液や、 酸性化合物の溶液に重合体を浸漬 することにより行なわれる。
加水分解処理の温度にはとくに限定がなく、 一般に 0〜1 0 0で、 好ま しくは 1 0〜7 0で程度に設定することが望ましい。
加水分解処理の時間は、 アルカリ性化合物や酸性化合物の種類、 アル力 リ性化合物や酸性化合物の濃度、 加水分解処理の温度などにより異なるの で一概には決定することができないが、 レンズ材料の親水性が効果的に向 上するようにするには、 0 . 1時間以上、 好ましくは 0 . 5時間以上であ
ることが望ましく、 また白濁するなどして透明性が低下したり、 機械的強 度が低下しすぎてコンタクトレンズとして不適切な材料となるほか、 時間 がかかりすぎて作業性がわるくなるおそれをなくすためには、 3 0時間以 下、 好ましくは 1 5時間以下であることが望ましい。
加水分解処理されたレンズ材料は、 たとえば生理食塩水 (0 . 9 %塩化 ナトリウム水溶液) 中で数時間煮沸処理してもよい。
本発明のコーティング剤による眼用レンズ本体の表面のコ一ティング方 法としては、 以下の 3つの方法があげられるが、 これらに限定されるもの ではない。
( 1 ) ブロック共重合体が可溶性のジメチルホルムアミド、 ジクロロメ夕 ン、 1, 2—ジクロロメタン等の溶媒に、 ブロック共重合体、 必要に応じ て触媒を溶解し、 その中へ眼用レンズ本体を浸漬することによりコーティ ングする方法。
( 2 ) プロック共重合体および必要に応じて触媒を展開した展開層の中に、 眼用レンズ本体を浸漬したり、 引き出したりすることで、 規則的に表面を コーティングする方法。
( 3 ) 粉末状のブロック共重合体と触媒を混合し、 この混合物を眼用レン ズ本体上に塗布し、 加熱により反応させてコーティングする方法。
触媒として、 (1 ) および (2 ) では、 たとえば、 ジプロピルカルポジ イミドと 1 —ヒドロキシ— 7—ァザべンゾトリアゾ一ルの組み合わせ、 ま たはジシクロへキシルカルポジイミドと N—ヒドロキシベンゾトリァゾー ルの組み合わせを用いることが好ましく、 (3 ) では p—トルエンスルホ ン酸を用いることが好ましい。
眼用レンズ本体表面上のブロック共重合体のコーティングの厚さは、 0 . 1〜: 1 0 0 0 A、 好ましくは 5〜5 0 O Aである。 厚さが、 0 . l A 未満であると、 コーティングの効果が得られない傾向がある。 また、 1 0
0 OAを超えると、 酸素透過性等の基材特性を損なう傾向がある。
以下、 具体的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。 以下の 実施例は単に説明を目的とするものであり、 条件および技術範囲などを限 定する目的のものではない。
実施例 1〜4
(NE—力ルポベンゾキシ—L一リジン N"—カルボキシ酸無水物 (N CA) の合成)
3. 5 X 1 (J—2モルの Νε—力ルポベンゾキシ—L—リジンを、 60 に加熱した、 充分に乾燥されたテトラヒドロフラン中において、 0. 33 モルのトリホスゲンと反応させ、 Ν£—力ルポベンゾキシ— L—リジン Ν CAを得た。
(L—ロイシン Na—力ルポキシ酸無水物 (NCA) の合成)
1. 3 X 10— 1モルの L—ロイシンを、 各々 6 に加熱した、 充分 に乾燥されたテトラヒドロフラン中において、 0. 33モルのトリホスゲ ンと反応させ、 L -ロイシン NCAを得た。
(ブロック共重合体の合成)
末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール (末端アミノ基 PE G) の分子量 (M) および配合量、 ならびに NE—カルボベンゾキシ一 L —リジン NC Aおよび L一口イシン NC Aの配合量を、 表 1に示す。 末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール (末端アミノ基 PE G) のジメチルホルムアミド溶液中に、 Νε—カルボベンゾキシ—L—リ ジン NC Αと L—ロイシン NC Αのジメチルホルムアミド混合溶液を滴下 し、 その後、 室温下 2日間撹拌した。
得られたポリマーを臭化水素 (HB r) 酢酸溶液と反応させることで NE—カルボベンゾキシ—L—リジン NC Aのァミノ基の脱保護を行い、 ジブロック共重合体を得た。
表 1
(眼用レンズ材料の重合)
以下に示す構造を有するシロキサンマクロモノマー 31重量部、 トリス (トリメチルシロキシ) シリルプロピルァクリレート 21重量部、 酢酸ビ ニル 28重量部、 3—パ一フルオロー 2—ヒドロキシプロピルァクリレー 卜 20重量部、 ジエチレングリコールジァリルエーテル 0. 8重量部、 2 —ヒドロキシ— 2—メチル— 1 _フエニルプロパン— 1一オン 0. 2重量 部からなるモノマー混合液をポリプロピレン製型内に充填し、 紫外線 (主 波長: 360 nm、 照射強度: l OmWZcm2) に 10分間暴露するこ とにより、 眼用レンズ材料を得た。
シロキサンマクロモノマーの構造式:
眼用レンズ材料を 4 の 0. 5モル ZLの水酸化ナトリウム溶液 (5 0 %メタノール +50%精製水) 中に 240分間浸漬し、 眼用レンズ材料 表面にカルボキシル基を導入した。
(眼用レンズ材料のコーティング)
ブロック共重合体 0. 10 gを、 ジメチルホルムアミド 3mLに溶解し、 3. 2 X 10— 4モルの 1, 3—ジイソプロピルカルポジイミドと 3. 2 X 10— 4モルの 1ーヒドロキシ— 7—ァザべンゾトリアゾールを含むジ メチルホルムアミド溶液 2 mLと混合した溶液に、 前処理済の眼用レンズ 材料を、 室温下 7日間浸漬して、 コーティング眼用レンズ材料を得た。 実施例 5〜 7
表 2に記載の条件にしたがつて、 実施例 1で得られたものと同じ眼用レ ンズ材料を、 0. 5モル/ Lの水酸化ナトリウム溶液 (50%メタノール + 50%精製水) 中に浸漬し、 眼用レンズ材料表面に官能基を導入した以 外は、 実施例 1と同様の方法によりコーティング眼用レンズ材料を得た。 表 2
眼用レンズ材料の前処理条件
末端にアミノ基を有する分子量 2000のポリエチレングリコール 3% 溶液中に、 実施例 1で得られた眼用レンズ材料を、 室温下 7日間浸漬した。 比較例 2
2. 5 X 10— 4モルの n—へキシルァミンのジメチルホルムアミド溶
液中に、 6. 0 X 10— 3モルの N£—カルボベンゾキシ _L—リジン NC Aと 2. 6 X 10— 3モルの L—ロイシン NCAのジメチルホルムアミド 混合溶液を滴下し、 その後室温下 2日間撹拌した。
得られたポリマーを臭化水素 (HB r) 酢酸溶液と反応させることで NE—カルボベンゾキシ—L一リジン NC Aのァミノ基の脱保護を行い、 ブロック共重合体を得た。 このブロック共重合体を使用した以外は、 実施 例 1と同様の方法によりコ一ティング眼用レンズ材料を得た。
比較例 3
1. 2 X 10-4モルの n—へキシルァミンのジメチルホルムアミド溶 液中に、 1. 4X 10— 3モルの NE—カルボベンゾキシ—L—リジン NC Aと 2. 9 X 10—3モルの L—ロイシン NC Aのジメチルホルムアミド 混合溶液を滴下し、 その後室温下 2日間撹拌した。
得られたポリマーを臭化水素 (HB r) 酢酸溶液と反応させることで N E—カルボベンゾキシ一 L -リジン NC Aのァミノ基の脱保護を行い、 ブロック共重合体を得た。 このブロック共重合体を使用した以外は、 実施 例 1と同様の方法によりコーティング眼用レンズ材料を得た。
試験方法
(残基数および N E—力ルポベンゾキシ— L—リジンと L—ロイシン N C Aの比率)
実施例 1〜 4および比較例 1〜 3で得られたブロック共重合体の疎水性 ブロックの残基数および N ε—カルボベンゾキシ _ L—リジンと L一ロイ シン NCAの比率は、 NMR測定 (Va r i an社製、 超伝導 FT— NM R、 GEMI N I 2000/400 BB) により得られたシグナルから 算出した。 結果を表 3に示した。
また、 得られたそれぞれのコーティング眼用レンズ材料について、 以下 の評価をおこなった。 評価結果を、 表 4に示した。
(赤外分光光度計 ( I R) による表面分析 (Am i do/S i O) ) 充分に洗浄した眼用レンズ材料の表面分析を、 赤外分光光度計 (Pe r k i n E 1 me r社製 S p e c t r a O n e ) を使用し、 全反射減衰 分光法 (ATR法) にて測定した。 1650 cm— 1のアミド結合由来の ピークと 1010 cm— 1の S i O結合由来のピーク強度比により、 被覆 率を算出した。
Am i d oZS i O比 (%) = 1650 cnT1のピーク高さ
/1010 cm— 1のピーク高さ また、 カルポニル基については、 1560 cm— 1付近のカルボニル基 由来のピークの増加により、 加水分解処理の進行を確認した。
(X線光電子分光装置 (XPS) による表面分析)
X線光電子分光装置 (日本電子 (株) 製 J PS— 9000MX) を使用 し、 X線として MgKa線を 10 k V、 10mAの出力で照射し、 フッ素、 酸素、 窒素、 炭素およびケィ素について、 アナライザー通過エネルギー 1 0 e V (分解能 0. 9 eV) でコーティング眼用レンズ材料を測定し、 コ一ティング前の眼用レンズ材料と比較した。
(接触角の測定)
ゴニォメータ式接触角測定装置 (エルマ光学 (株) 製 G— 1) を使用し、 液滴法による接触角度の測定を行った。
(酸素透過係数 (Dk) の測定)
GTG (GAT t o GAS) ANALYZER (REHDERDE VELOPMENT COMPANY製) を用いて、 測定時間 2分、 温度 35 X:にて測定し、 その得られた測定値を I SO 9912-2にて規格 化されたメニコン EX (Dk = 64X 10 11 (cm2 s e c) · (m LO (mL - mmHg) ) を用いて換算して、 Dk値を求めた。
表 3
表 4
備考
*° 親水性プロックの代わりに疎水性である n—へキシルァミンを使用
'2) + :1650cm—1付近のアミド結合由来のピーク高さが、 lOlOcnr1付近の SiO結合由来のピーク高さに対して、 20%以下
++ :1650cm— 1付近のアミド結合由来のピーク高さが、 1010cm—1付近の SiO結合由来のピーク高さに対して、 20%以上 50%未満 H+ :1650cm—1付近のアミド結合由来のピーク高さが、 1010cm— '付近の SiO結合由来のピーク高さに対して、 50%以上
'3) + :1560cm—1付近の力ルポニル基由来のピーク高さが若干増加
++ :1560cm— 1付近の力ルポニル基由来のピーク高さが中程度増加
+++ :1560cnfi付近の力ルポニル基由来のピーク高さが非常に増加
'4) 1 :処理前より有意に減少
→ :処理前後で変化なし
'5) アミド結合由来のピーク、 およびコーティング厚みは検出されず
試験結果
(残基数および Ne—カルボベンゾキシ—L—リジンと L—ロイシン NC Aの比率)
実施例 1〜4および比較例 1〜 3で得られたプロック共重合体の残基数 および Νε—力ルポベンゾキシ—L—リジンと L—ロイシン NC Aの比率 を、 表 3に示す。
(赤外分光光度計 (I R) による表面分析)
実施例 1〜4ならびに比較例 2および 3において、 1650 cm一1付 近と 1530 cm— 1付近にアミド結合由来のピークを認めた。 比較例 1 では眼用レンズ材料にアミド結合が観察されなかったため、 算出できな かった。
(赤外分光光度計 (I R) による表面分析)
1650 cm— 1のアミド結合由来のピークと 1010 cm— 1の S i O 結合由来のピークの強度比により、 被覆率を算出したところ、 実施例 1〜 4および 6ならびに比較例 2および 3において、 1650 cm— 1付近の アミド結合由来のピーク高さが、 1010 cm— 1付近の S i 0結合由来 のピーク高さに対して、 20%以上 50%未満であった。
カルポニル基については、 1560 cm— 1付近のカルボニル基由来の ピークの増加により、 加水分解処理の進行を確認した。
(X線光電子分光装置 (XPS) による表面分析)
実施例 1〜 4ならびに比較例 2および 3において、 処理前の眼用レンズ 材料表面に 20%存在したケィ素原子が 5%以下まで減少した。 比較例 1 においては、 コーティング処理前後でゲイ素原子比率は変化なかった。 (接触角の測定)
実施例 1〜4において、 比較例 1 (未処理レンズ) より明らかに接触角 が小さくなり、 水濡れ性が向上した。 また、 親水性ブロックの代りに疎水
性の n—へキシルァミンを用いた比較例 2および 3では、 接触角の変化は 認められなかった。
(酸素透過係数 (Dk) の測定)
実施例に記載の眼用レンズ材料を、 実施例 1で得られたプロック共重合 体でコーティングする前後の酸素透過係数を測定した。 コーティング前の 酸素透過係数は、 201 X 10— 11 (cm2 s e c) · (mL02/ (m L · mmHg) ) 、 コーティング後の酸素透過係数は 1 90 X 1
(cm2/ s e c) · (mL02/ (mL - mmH g) ) であり、 コー ティング前後において、 酸素透過係数の変化はみられなかった。
したがって、 眼用レンズ材料に対する表面処理、 とりわけケィ素および フッ素含有成分を主成分とする眼用レンズ材料の表面処理において、 本発 明のコーティング剤が、 最表層のゲイ素存在率を薄層により効率的に低下 させることが可能となった。 これにより、 ゲイ素およびフッ素成分に起因 するレンズ特性を損なうことなく、 問題であった表面特性のみを改善する ことが可能となった。 産業上の利用可能性
本発明のコーティング剤において、 疎水性ブロックとしてポリペプチド を用いた場合、 ポリペプチド主鎖の末端に結合している親水性ブロックは、 α—ヘリックスの螺旋状構造内に侵入することが困難であるため、 常に最 外層に配置することができる。
本発明のコーティング剤によって、 レンズ表面に、 角膜表面への吸着防 止のための、 水分を含まない疎水性ブロックをバリア層として積層し、 さ らにそのバリア層上に親水性ブロックを積層すること (二層化) により、 効率的かつ均一に眼用レンズ表面に親水性層を導入することができる。 ま た、 二層化により、 コンタクトレンズ表面にコーティングした場合、 水分
蒸発時にも疎水性の層が残るため、 眼用レンズ材料と角膜との相. 用を 抑制することができ、 コンタクトレンズの角膜への吸着を防ぐことができ る。
さらに、 疎水性ブロックのポリペプチドがひ-ヘリックス構造を取るこ とにより、 ポリペプチドの側鎖が外側に配向し、 外側を向いた側鎖がレン ズ表面に存在する官能基と結合することで、 ポリぺプチドの末端で結合す るよりも結合部位が多く、 安定性が高まり、 かつ、 ポリペプチド側鎖に存 在する官能基と眼用レンズ表面の官能基とが化学的に結合するため、 得ら れる眼用レンズ表面のコーティング層の安定性は高く、 かつ剥離性が低い 眼用レンズを得ることができる。 これにより、 日常の手入れなどによる コーティング層の剥離を防ぐことができる。 また、 ポリペプチドが剛直な α -へリックス構造を呈し、 その分子間隙が小さいことから、 タンパク質 や脂質を通さないので、 眼用レンズに汚れが付着するのを防ぐことができ る。