JP6844258B2 - メディカルデバイス、メディカルデバイスの製造方法及びメディカルデバイス用表面処理液 - Google Patents

メディカルデバイス、メディカルデバイスの製造方法及びメディカルデバイス用表面処理液 Download PDF

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Description

本発明は、親水性表面を有するメディカルデバイス、メディカルデバイスの製造方法及びメディカルデバイス用表面処理液に関する。詳しくは親水性(水濡れ性)、防汚性(抗脂質付着性)、易滑性(潤滑性)に優れ、その効果が剥離や磨耗によって失われにくい表面を有するメディカルデバイス、メディカルデバイスの製造方法及びメディカルデバイス用表面処理液に関するものである。本発明のメディカルデバイス、メディカルデバイスの製造方法、メディカルデバイス用表面処理液は、特に、コンタクトレンズや眼内レンズ、あるいはカテーテルやステント、人工腎臓等のメディカルデバイスに好適である。
人体の一部と直接接触するメディカルデバイスはよく知られており、その表面は生体適合性を有する必要がある。生体適合性の発現には水、タンパク質、脂質などの物質の付着が制御されていることが重要であり、表面の化学的修飾が有用であることが知られている。
メディカルデバイスの1つとして、ソフトコンタクトレンズが例示される。近年ケイ素やフッ素を含有する化合物を用いた、高酸素透過性を有するソフトコンタクトレンズが利用されている。特に低含水性および非含水性のソフトコンタクトレンズは高い酸素透過性を有する点で優れているが、レンズ表面の疎水性を改善するために表面の親水化処理を施すことが必須で、表面に水濡れ性を付与することが重要である。水濡れ性が不足するとコンタクトレンズの角膜への貼りつきが起こり、装用感の悪化、さらには角膜を傷つけることにより眼病のリスクが高まる恐れがある。
また、従来の技術では親水化処理層の剥離や被覆不足によって基材表面が露出し、レンズ表面と角膜やまぶた間の摩擦増大によって装用感が悪くなるという問題があった。
さらに、レンズ基材自体が疎水性であるために、タンパク質や脂質などの生体由来の分子の付着によって汚染されやすく、眼病のリスクも高くなりやすかった。
以上の様に、メディカルデバイスの表面の処理に際しては、表面改質による水濡れ性と易滑性の付与に加え、生体由来分子の付着性の制御も重要である。
メディカルデバイスの表面を改質する方法に関しては種々知られているが、特に低含水性および非含水性ソフトコンタクトレンズの表面を親水化させる方法として、表面に親水性モノマーをグラフト重合することにより表面を親水化する方法(特許文献1及び2)、ラジカル反応性基を有する親水性重合体で内表面を被覆した型中で、疎水性重合体を形成するのに必要な単量体混合物を型と接触させて重合し、親水性重合体表面を形成する方法(特許文献3)が知られている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の表面処理法では、形成される表面処理層が薄く、またレンズ基材との密着強度が小さいために耐久性に劣り、元の濡れ性に戻ってしまうという欠点を有している。また、特許文献3に記載の表面処理法では、疎水性重合体表面上に均一な親水性重合体表面を形成しにくく、またレンズ基材との密着強度が小さいために耐久性に劣り、元の濡れ性に戻ってしまうという欠点を有している。
したがって、十分な水濡れ性と易滑性を有し、生体由来分子の付着が制御され、日常的に使用することが可能なほどの耐久性を有し、かつ光学的に透明な、親水性表面を有するコンタクトレンズを提供することが望ましい。このような表面処理されたレンズは、実際の使用に際して装用感が快適であり、そして角膜に対する刺激又は他の有害な影響を有することなく、レンズの長時間の装着を可能にする。かかるレンズの経済的かつ商業的な製造が実現可能であるならば一層望ましい。
この様に優れた特性を有する材料は、眼用レンズのみならず、人工腎臓、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクタ、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、皮膚用材料又は薬剤担体などに例示されるメディカルデバイスの材料への利用にも好適である。
一方、表面特性を長期にわたって持続させる手法として、加水分解性シリル基(シランカップリング剤)を用いて化学的に結合する方法が知られている。加水分解性シリル基を利用した表面改質方法に用いられる表面改質剤は、浴室のミラーや太陽熱発電パネルなどの防曇剤としても利用される(特許文献4〜6)。しかしながら、表面改質剤は有機溶媒や無機微粒子等を含むこともあるためにガラスなどの硬質な材料に容易に適用できる一方、メディカルデバイスなどの軟質な材料、特に有機溶媒で膨潤しやすいソフトコンタクトレンズなどには適用しにくいものであった。
加水分解性シリル基を用いた軟質材料の表面改質方法として、特許文献7〜9が例示される。
特許文献7では、シリコーンからなるレンズ基材をアルカリ溶液で処理した後、重合性基を有する加水分解性シリル基と重合性の親水性モノマーと重合開始剤を含んだアルコール溶液中で撹拌し、表面に親水性被膜を形成させる方法が記載されている。
特許文献8では末端に加水分解性アルコキシシランを有する疎水性−親水性ブロックポリマーを用いた眼用レンズ表面用コーティング剤について記載されている。
特許文献9では低分子のシランカップリング剤を用いてコンタクトレンズを含むデバイス表面を処理した後、親水性ポリマーを反応させる方法が記載されている。ここではデバイス表面にシランカップリング剤を反応させるステップ、次いで所望の親水性ポリマーと反応させるステップを経て親水性ポリマーをデバイス表面に被覆している。
特開平2−278224号公報 特開平4−316013号公報 特開平2−124523号公報 特開2011−236403号公報 特開2012−008166号公報 国際公開第2011/087104号 特開昭52−084258号公報 特許第4832910号公報 特開2000−137195号公報
上記表面処理された層の耐久性の向上については、プラズマ表面処理が利用されることもある。しかしながら、一般的にその効果は一時的なものに過ぎず、表面特性を維持することが困難であった。
また、特許文献7に記載の方法については、本発明者らの検討によれば、十分な量の親水性被膜が形成されず、表面易滑性や抗脂質汚染性も不十分であった。また、モノマー等の有機小分子が基材内部に残留したり、基材の変形を誘発したりする懸念もあった。
さらに、特許文献8に記載の眼用レンズ用表面コーティング剤は、耐久性が十分とは言えなかった。これは、前記表面コーティング剤が、ブロックコポリマー鎖の末端1点のみで眼用レンズに結合されるものであったためと考えられる。また、疎水性ブロックを有している為にポリマーの溶剤が限定され、有機溶媒を用いると基材の膨潤、変形を誘発する可能性があるという問題があるなど、汎用性の高い方法ではなかった。
そして、特許文献9に記載の方法は、残存する有機官能基の毒性や、用いる親水性ポリマーの種類によってその都度反応を最適化する必要があり、工程が煩雑になるという問題があった。
そこで本発明は、水濡れ性、防汚性、易滑性に優れ、しかもこれらの表面特性が長期にわたって持続可能なメディカルデバイスを提供することを目的とする。また、本発明は、かかるメディカルデバイスを、基材変形を誘発することなく、簡便なプロセスで安価に製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、かかるメディカルデバイスを製造するためのメディカルデバイス用表面処理液を提供することを目的とする。
上記の目標を達成するために、本発明は下記の構成を有する。
(1)下記(i)〜(iii)からなる群における一つ以上を、表面上及び/又は表面内の少なくとも一部に有する、メディカルデバイス。
(i)1種類以上のモノマーAと1種類以上のモノマーBとを共重合の構成成分として含む親水性コポリマー
(ii)前記親水性コポリマーの加水分解物
(iii)前記親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または前記親水性コポリマーとの縮合物
ここで、
モノマーA:加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマー
モノマーB:ビニル構造とアミド構造とが直接結合した構造と、加水分解性シリル基と、を有するモノマー
(2)前記親水性コポリマーの質量平均分子量が10万〜1千万である、上記(1)に記載のメディカルデバイス。
(3)前記親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマー中の1〜40モル%が前記モノマーBである、上記(1)又は(2)に記載のメディカルデバイス。
(4)前記モノマーAが下記式(a1)又は(a2)で表される構造からなる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のメディカルデバイス。
Figure 0006844258
式(a1)、(a2)中、
及びRは水素原子又はメチル基を表し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表し、
及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜10の1価の有機基を表す。R及びRは結合を介して互いに環を形成していてもよい。
(5)前記親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマーBが、下記式(b)で表される構造からなる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のメディカルデバイス。
Figure 0006844258
式(b)中、
は水素原子又はメチル基を表し、
及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、
nは0〜2の整数を表し、
Lは単結合又は炭素数1〜100の有機基を表す。
(6)前記親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマーBが、下記式(c)で表される構造からなる、上記(5)に記載のメディカルデバイス。
Figure 0006844258
式(c)中、
は水素原子又はメチル基を表し、
及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、
mは1〜8の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。
(7)前記親水性コポリマーの少なくとも一部は、前記加水分解性シリル基が縮合される官能基の一方である縮合反応により、表面上もしくは表面内の少なくとも一部に結合している、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のメディカルデバイス。
(8)眼用レンズである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のメディカルデバイス。
(9)1種類以上の下記モノマーAと1種類以上の下記モノマーBとを含む重合原液を共重合して得られる親水性コポリマーを含む表面処理液を、メディカルデバイス基材の表面の少なくとも一部に接触させた後、
共重合の構成成分として含まれるモノマーBの加水分解性シリル基を縮合反応の一方である官能基として縮合反応を起こさせることにより、前記親水性コポリマーを表面上及び/又は表面内の少なくとも一部に結合せしめる工程を含む、メディカルデバイスの製造方法。
モノマーA:加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマー
モノマーB:ビニル構造とアミド構造が直接結合した構造と、加水分解性シリル基と、を有するモノマー
(10)下記(i)〜(iii)からなる群における一つ以上を含む、メディカルデバイス用表面処理液。
(i)1種類以上のモノマーAと1種類以上のモノマーBとを共重合の構成成分として含む親水性コポリマー
(ii)前記親水性コポリマーの加水分解物
(iii)前記親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または前記親水性コポリマーとの縮合物
ここで、
モノマーA:加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマー
モノマーB:ビニル構造とアミド構造とが直接結合した構造と、加水分解性シリル基と、を有するモノマー
本発明のメディカルデバイスは、水濡れ性、防汚性、易滑性に優れ、しかもこれらの表面特性が長期にわたって持続可能なメディカルデバイスである。また、本発明のメディカルデバイスの製造方法により、かかるメディカルデバイスを、基材変形を誘発することなく、簡便なプロセスで安価に製造することができる。また、本発明のメディカルデバイス用表面処理液により、かかるメディカルデバイスを製造することができる。
本発明のメディカルデバイスは、下記(i)〜(iii)からなる群における一つ以上を、表面上及び/又は表面内の少なくとも一部に有する。
(i)1種類以上のモノマーAと1種類以上のモノマーBとを共重合の構成成分として含む親水性コポリマー
(ii)前記親水性コポリマーの加水分解物
(iii)前記親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または前記親水性コポリマーとの縮合物
ここで、
モノマーA:加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマー
モノマーB:ビニル構造とアミド構造とが直接結合した構造と、加水分解性シリル基と、を有するモノマー。
本発明に係る親水性コポリマーは、共重合の構成成分として上記のモノマーA及びモノマーBをそれぞれ1種類以上含む。本発明において、ポリマーまたはコポリマーが、あるモノマーを「共重合の構成成分として」含むとは、当該ポリマーまたはコポリマー中に当該モノマーが未重合の状態で含まれることを表すのではなく、当該ポリマーまたはコポリマー中に当該モノマーを重合したときに得られる構造が含まれることを表す。
本発明に係るメディカルデバイスは、かかる(i)親水性コポリマー、(ii)前記親水性コポリマーの加水分解物、および(iii)前記親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または前記親水性コポリマーとの縮合物からなる群における一つ以上(以下、総称して親水性コポリマー由来物ということがある)を、表面上もしくは表面内(以下、単に「表面」ということがある)、又は表面上及び表面内の両方に有するものである。本発明において、親水性コポリマーの加水分解物とは、本発明に係る親水性コポリマーの加水分解性シリル基の少なくとも一つがシラノール(Si−OH)になったものをいう。また、親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または親水性コポリマーとの縮合物(以下、親水性コポリマーの縮合物ということがある)とは、親水性コポリマーの加水分解性シリル基の少なくとも一つが、メディカルデバイス基材または親水性コポリマーと縮合反応したものをいう。親水性コポリマーのメディカルデバイス基材との縮合物とは、親水性コポリマーがメディカルデバイス基材を構成する分子と結合してなる縮合物をいい、親水性コポリマーとメディカルデバイス基材とが縮合反応した生成物の、親水性コポリマーに由来する部分を指し、メディカルデバイス基材に由来する部分は含まない。また、親水性コポリマーの、親水性コポリマーとの縮合物は、親水性コポリマー分子内で縮合反応したものであっても、親水性コポリマーの分子間、すなわち親水性コポリマーと他の親水性コポリマーと縮合反応したものであってもよい。
上記表面の全てを親水性コポリマー由来物が覆う必要はなく、表面の少なくとも一部に有するものである。ただし、一般的には、生体(患者)に接触する部位については、その表面の全てに親水性コポリマー由来物を有することが好ましい。
上記親水性コポリマーの少なくとも一部は、後述のとおり、前記加水分解性シリル基が縮合される官能基の一方である縮合反応により、デバイス表面に結合することが好ましい。デバイス表面が多孔質構造である等、表面に微小の孔や空洞が存在する場合は、デバイス表面内、すなわち、表面から内部の表面近傍にかけて親水性コポリマー由来物が存在している。
本発明において、親水性コポリマーとは、下記(D−1)及び(D−2)のいずれかもしくは両方に該当するものである。
(D−1)20℃で、100gの水に1g以上溶解するコポリマー。
(D−2)コポリマーを構成する複数種類のモノマーの構造単位のうち、親水性モノマーからなる構造単位が10モル%以上であるコポリマー。
上記(D−2)に関し、親水性コポリマーは、親水性コポリマーを構成する複数種類のモノマーの構造単位のうち、親水性モノマーからなる構造単位が15モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましく、良好な水濡れ性が得られるという観点から、30モル%以上含まれているものがより好ましく、50モル%以上含まれているものがさらに好ましい。
また、本発明において、親水性モノマーとは、20℃の水100gに1g以上溶解するものを意味し、10g以上溶解するものが好ましく、50g以上溶解するものがより好ましく、100g以上溶解するものがさらに好ましく、水と親水性モノマーが層分離することなく任意の割合で混和し得るものが一層好ましい。
上記モノマーA、モノマーBとしては親水性モノマーが好ましいが、必ずしも親水性モノマーでなくてもよく、コポリマーとして親水性であればよい。
本発明に係る親水性コポリマーを構成するモノマーとしては、モノマーA、モノマーBその他のモノマーに限らず、ビニル構造を有するものが好ましい。
本発明においてビニル構造とは、C=Cで表される部分構造を指す。但し該部分構造が芳香族環の一部を構成する場合を除く。
また、本発明において重合性基とは、重合反応に関与する官能基を指し、プロトン性溶媒を用いることができるという観点からラジカル重合可能な官能基が好ましい。好ましい重合性基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、α−アルコキシメチルアクリロイルオキシ基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、又はシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリルアミド基又は(メタ)アクリロイルオキシ基が最も好ましい。
なお、本明細書において(メタ)アクリロイルオキシという語はメタクリロイルオキシ及びアクリロイルオキシの両方を表すものである。(メタ)アクリルアミドについても、同様に解釈できる。
本発明におけるモノマーAは、加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマーであるが、親水性を有することが好ましい。
上記加水分解性シリル基については後述する通りであり、モノマーAはこれを分子構造内に含まないものであるが、後述するモノマーB(加水分解性シリル基を有する)とモノマーAとを区別するために当該要件を設けたものである。
本発明において、上記「アミド構造」とは、下記式(a)で表される構造を言う。したがって、例えば、アミド化合物、イミド化合物、尿素化合物、及びこれらの誘導体はアミド構造を有する。
Figure 0006844258
アミド結合はエステル結合などと比べて加水分解されにくく、優れた耐久性を発現することができ、例えば蒸気滅菌の様な過酷な環境下においてもポリマー構造の一部の分解、脱離、変質などを抑制することが期待できる。
なお、分子構造中にアミド構造が存在していたとしても、それがケイ素原子に直接に結合している場合は、加水分解性シリル基に該当するので、モノマーAとはみなさない。
また、上記モノマーAとしては、下記式(a1)又は(a2)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 0006844258
式(a1)、(a2)中、R及びRは水素原子又はメチル基を表す。
及びRはそれぞれ独立に水素原子又は有機基を表す。R及びRの好適な具体例は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基であるが、これらの中で親水性コポリマーに良好な水濡れ性と易滑性を与えるという観点から、さらに好ましいのは、水素原子又はメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜10の1価の有機基を表す。好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、分枝状でも直鎖状でもよい。また、RとRは結合を介して互いに環を形成していてもよい。互いに環を形成する場合の好適な例として、−R−R−がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基であるもの等が挙げられる。これらのうち、形成される環の安定性の点で好ましいのはブチレン基、ペンチレン基である。
また、上記モノマーAは具体的な構造として下記一般式(a3)〜(a7)の構造を有していてもよく、この内、合成の容易さから下記式(a5)の構造を含むことが好ましい。
Figure 0006844258
一般式(a3)〜(a7)中、RはH又はメチル基を表し、XはO、又はNHを表し、L、Lはそれぞれ独立に炭素数1〜20の2価の有機基を表す。より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基もしくはアリーレン基である。その好適な例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、デシレン基又はフェニレン基などが挙げられる。上記アルキレン基、アリーレン基は分岐状であっても直鎖状であってもよく、環状の構造を含んでいてもよい。
上記モノマーAについて、好適な種類としては、(メタ)アクリルアミド類、N−ビニルカルボン酸アミド類、環状N−ビニルラクタム類、環状N−ビニルピリジン類又はN−ビニルイミダゾール類が挙げられる。特に、後述のモノマーBとの共重合において、重合速度が速く均質な組成のポリマーを得やすいという観点から、(メタ)アクリルアミド類が好ましい。
上記モノマーAの好適な具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム等が挙げられる。
これらの中でも、水濡れ性と易滑性に優れた親水ポリマーが得られるという観点から、
N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミドがさらに好ましい。これらは単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明におけるモノマーBにおいては、加水分解性シリル基が、基材表面と化学的に結合し、コポリマーの基材表面との密着性を高め、剥離しにくくする役割を担う。上述の様に、アミド結合はエステル結合等と比較して加水分解耐性に優れていることから、親水性コポリマーの効能を長期にわたって維持させるために重要である。
本発明に係る加水分解性シリル基とは、ケイ素原子一つあたりに1〜3個の加水分解性基が他の原子を介さず結合されてなるものであり、ここで、加水分解性シリル基における加水分解性基とは、水と反応させた時にシラノール(Si−OH)を生成するものを指す。かかる加水分解性基としては、例えば、ハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、オキシム基、フェニルオキシ基、ベンジルオキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、チオアルコキシ基、アルケニルオキシ基などが好ましい例として挙げられ、入手の容易さから、ハロゲン基、アルコキシ基が特に好ましく、反応性に富み、有害な副生成物を生じにくいという観点からアルコキシ基が最も好ましい。これらの加水分解性基は単独でも複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
加水分解性シリル基には、式Z−Si−L−で示される構造のものを利用するのが好ましい。ここで、Lは有機基を表し、Zはハロゲン基又はアルコキシ基を有する加水分解性基であり、好ましくはクロロ基又はアルコキシ基を有する炭素数1〜4の官能基であり、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。3つのZは同一の基であっても、異なる基の組み合わせであってもよい。
本発明におけるモノマーBは、上述の様にビニル構造を有し、さらにアミド構造を有しており、ビニル構造とアミド構造とが直接結合した構造を有している。ここで、ビニル構造の全てがアミド構造と直接結合していなくてもよく、アミド構造の全てがビニル構造と直接結合していなくてもよい。なお、本発明において、ビニル構造とアミド構造とが直接結合した構造とは、上記ビニル構造と上記アミド構造が他の原子を介さず結合している構造を意味する。
前記親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマーBは、下記式(b)で表される構造からなることが好ましい。
Figure 0006844258
式(b)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表す。nは0〜2の整数を表す。Lは単結合又は炭素数1〜100の有機基を表す。
式(b)中のLとしては、上述のように単結合又は、1〜100個の炭素原子を有する2価の有機基とすることができる。この2価の有機基は直鎖状でも分枝状でも環状構造を有してもよい。モノマーAとの共重合性の良さという観点から、1〜10個の炭素原子を有する2価の有機基が好ましく、1〜8個の炭素原子を有する2価の有機基がさらに好ましく、1〜4個の炭素原子を有する2価の有機基が最も好ましい。
また、式(b)の構造を与えるモノマーを合成するに際して、Lの部分を構成するために用いる原料の選定については、ポリマー又はオリゴマーを利用して合成することができ、また、分子量に分布を有していてもよい。好ましくはLがポリオキシアルキレン基となるものであり、より好ましくはポリエチレンオキサイド基又はポリプロピレンオキサイド基であり、モノマーBの精製が容易であるという観点から、原料がジエチレングリコール、トリエチレングリコールであるものが最も好ましい。
前記親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマーBは、下記式(c)で表される構造からなることがより好ましい。式(c)で表される構造は、式(b)中のLが炭素数1〜8のアルキレン基となった構造である。この場合、炭素数1〜8のアルキレン基は、分岐状であっても直鎖状であってもよい。その好適な例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基又はデシレン基、フェニレン基などが挙げられ、親水性コポリマーの水溶性を損なわないという観点から、プロピレン基又はブチレン基が最も好ましい。
Figure 0006844258
式(c)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。mは1〜8の整数を表す。nは0〜2の整数を表す。
上記親水性コポリマーの質量平均分子量は、小さすぎると水濡れ性、易滑性、抗脂質付着性等の物性が十分に発現しにくくなり、大きすぎると重合時のゲル化や親水性コポリマーの溶液が高粘度化あるいはゲル化するために操作性が悪くなる場合があるといった問題が生じることから、10万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましく、上限としては1000万以下が好ましく、500万以下がより好ましく、100万以下がさらに好ましい。
なお、メディカルデバイス基材表面に存在する加水分解性シリル基を有する親水性コポリマー由来物の化学構造(分子量を含む)の同定については、一例として、メタノリシスによりメトキシシランに分解し、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー/質量分析法、或いは液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー/質量分析法などの種々の分析手法を適用して化学構造を解析することが可能である(例えば、特開2012−188398号公報に記載の方法を参照)。
本発明に係る親水性コポリマーにおいて、共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率が小さすぎると親水性コポリマーの剥離が起こりやすくなり、十分な耐久性が得られにくくなる。また、共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率が大きすぎると重合時に親水性コポリマーがゲル化しやすくなる場合がある。また、親水性コポリマーを溶解した表面処理液がゲル化しやすくなる場合がある。また、分子内及び/又は分子間の架橋により親水性コポリマーが硬くなり、十分な易滑性が得られにくくなる場合がある。したがって、本発明に係る親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率としては、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、一方で上限としては40モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下が最も好ましい。
本発明に係る親水性コポリマーにおいて、共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率は、後述のとおり、該親水性コポリマーの溶液のプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルを測定して得られる、各モノマーに対応するプロトンのピーク面積比から算出する。なお、メディカルデバイス基材表面に存在する親水性コポリマー、由来物の中に共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率については、一例として、メタノリシスによりメトキシシランに分解し、得られる親水性コポリマーの溶液のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定することにより、算出することができる。また、メディカルデバイス基材表面に存在する親水性コポリマー由来物の中に共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率は、通常、共重合後の親水性コポリマー中に共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率と同じになる。ピーク同士が重なる等の理由でプロトン核磁気共鳴スペクトル測定によるモル分率の算出ができない場合は、元素分析や質量分析などの他の公知の方法によりモル分率を算出してもよい。
また、本発明に係る親水性コポリマーは第3の成分として、前記モノマーA及び前記モノマーB以外のモノマーを重合して得られる構造を含んでも良い。第3の成分として好適な例として(メタ)アクリレート類が挙げられ、優れた易滑性が得られるという観点から、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明に係る親水性コポリマーは、その末端一点のみではなく、ポリマー鎖中の複数の箇所にシランカップリング反応を起こし得る官能基が導入されているため、いわば多点での固定が可能になり、デバイス表面との密着性をより高めることができる。さらに、1ステップのシランカップリング反応により直接親水性層を基材に付与することも可能であり、かつ溶剤として水や多くのアルコールが使用できるため、簡便なプロセスで安価に基材の親水化が達成可能で、かつ、軟質基材の形状変化をも防ぐことができる。加えて、シランカップリング反応による表面固定方法を採用しているため、反応生成過程において生じた有機官能基の残存による生体への悪影響を排除することができ、安全性が高い。
本発明におけるメディカルデバイスとは、医療用として使用され、患者と接触、又は患者から採取された組織、例えば、血液やその他の体液と接触させて使用するデバイスをいう。好適には、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクタ、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、皮膚用材料又は薬剤担体などが例示される。眼用レンズには特に好適である。眼用レンズとしては、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズなどのコンタクトレンズ、強膜レンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズなどが挙げられる。中でも、コンタクトレンズには好適であり、ソフトコンタクトレンズには特に好適である。
本発明におけるメディカルデバイスの基材としては、本発明の親水性コポリマーとの間に強固な密着性を得るために、ケイ素原子を含むことが好ましい。具体的には、ケイ素原子を基材に1質量%以上含むことが好ましい。ケイ素原子の含有量(質量%)は、乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として算出される。基材のケイ素原子含有率は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が最も好ましい。また、ケイ素原子の含有率が大きすぎる場合は引張弾性率が大きくなる場合があり好ましくないことがあるため、基材のケイ素原子含有率は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が最も好ましい。特にメディカルデバイスがコンタクトレンズ用途である場合には硬すぎない様にするため、36質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、26質量%以下がさらに好ましい。なお、上限値と下限値はどれとどれを組み合わせても良い。また、上記ケイ素原子は、シロキサニル基として存在してもよい。上記シロキサニル基と、末端に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基等のラジカル重合可能な官能基とを有するモノマーを重合した化合物を好適に用いることができ、両末端にメタクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサン等のシロキサン化合物が例示される。かかるケイ素原子含有化合物に、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類およびそのアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートメチルエーテルなどのポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類およびそのメチルエーテル類等の親水性化合物、および必要に応じてポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類、N,N−メチレンビスアクリルアミド、多官能性(メタ)アクリレート等の架橋性化合物を混合し、共重合物を得て基材とすることもできる。また、メディカルデバイスを低含水性にする場合には、かかるケイ素原子含有化合物に、アクリル酸ブチルやアクリル酸エチルヘキシル等のアルキル(メタ)アクリレート類を混合し、共重合物を得て基材とすることもできる。
本発明において軟質とは引張弾性率が10MPa以下であることを意味する。特にメディカルデバイスがソフトコンタクトレンズである場合には、引張弾性率は、0.01MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましく、一方で5MPa以下が好ましく、3MPa以下がより好ましく、2MPa以下がさらに好ましく、1MPa以下がよりいっそう好ましく、0.6MPa以下が最も好ましい。引張弾性率が小さすぎると、軟らかすぎてハンドリングが難しくなる傾向がある。引張弾性率が大きすぎると、硬すぎて装用感が悪くなる傾向がある。引張弾性率2MPa以下になると良好な装用感が得られ、1MPa以下になるとさらに良好な装用感が得られるので好ましい。引張弾性率は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
上記親水性コポリマーを重合によって得る場合においては、過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応溶媒に溶解し、所望の反応温度において最適な分解特性を有するものが選択される。一般的には、10時間半減期温度が40〜120℃のアゾ系開始剤又は過酸化物系開始剤が好適である。光重合を行う場合の光開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、又は金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独又は混合して用いられる。重合開始剤の量は、得ようとする親水性コポリマーの目標分子量により適宜調整されるべきものであるが、少なすぎると重合が開始せず、多すぎると分子量が低くなりやすく、再結合停止が起こりやすくなって、所望の分子量のポリマーを得ることが困難であるため、重合原液に対し最大で5質量%までが好ましい。
ここで、重合原液とはポリマーを重合する際のモノマーを含んだ反応溶液を指し、重合するモノマーと重合溶媒と重合開始剤を含む溶液を指す。この重合原液には連鎖移動剤を含んでも良い。
重合溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらの中で水、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールはラジカル重合を阻害しにくい点でより好ましい。
重合溶媒を使用する場合の重合原液におけるモノマー濃度は、低すぎると十分な分子量が得られず、高すぎると重合熱で暴走する危険性があることから、10質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜65質量%がより好ましく、20質量%〜50質量%が最も好ましい。
重合に際して、分子量の調整などの目的で連鎖移動剤を用いてもよい。本発明に係る親水性コポリマーの重合に用いられる連鎖移動剤の好適な例として、2−メルカプトエタノール、2−アミノエタンチオール、2−アミノエタンチオール塩酸塩又は2−チオプロピオン酸などが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限られるものではない。それらのうち、得られる連鎖移動剤末端の反応性の高さの点から2−メルカプトエタノール、2−アミノエタンチオール又は2−アミノエタンチオール塩酸塩がより好ましい。また、その使用量は、得ようとするポリマーの目標分子量によって適宜調整されるべきものであるが、多すぎると未反応の連鎖移動剤が系中に残存しやすくなることから、モノマーの混合物に対して0.01モル%以上が好ましく、0.05モル%以上がより好ましく、0.1モル%以上がさらに好ましく、上限としては50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。
本発明のメディカルデバイスは、前記親水性コポリマーの少なくとも一部が、前記加水分解性シリル基が縮合される官能基の一方である縮合反応により、表面上もしくは表面内の少なくとも一部に結合していることが好ましい。
本発明のメディカルデバイスでは、その基材表面の少なくとも一部が、1種又はそれ以上の上記加水分解性シリル基を反応に有効な量有している親水性コポリマーと反応してなることがさらに好ましい。「反応に有効な量」とは所望の親水性表面に変換するのに十分な加水分解性シリル基の量をいう。上記親水性コポリマーでメディカルデバイスの基材表面を処理することにより、基材に直接的に親水性を付与することが可能である。また、当該コポリマーは水溶性が高いため、水溶液としての添加が容易であり、上記特開2009−137195号公報(特許文献9)に記載の方法のように、複数種類の溶媒を用いる必要はなく、不要な基材の形状変化が起きる懸念もない。
上記親水性コポリマー中の加水分解性シリル基は、基材表面の構成官能基とのみでなく、当該シリル基同士が縮合反応(シランカップリング反応)により縮合していることが好ましい。かかる縮合反応により、基材表面に直接的に結合した加水分解性シリル基が他のシリル基と強固に結合することとなるため、親水性コポリマーのデバイス表面との結合はより強固となり、メディカルデバイスの優れた表面特性がより長期にわたって持続可能となる。かかる縮合反応は、加水分解性シリル基を直接、あるいはその加水分解物を経て縮合させることによって起こすことができる。かかる縮合反応が起こっているかどうかは、赤外分光光度分析、XPS分析、あるいはこれらの組み合わせなどによって調べることができる。
本発明のメディカルデバイスの製造方法は、1種類以上の下記モノマーAと1種類以上の下記モノマーBとを含む重合原液を共重合して得られる親水性コポリマーを含む表面処理液を、メディカルデバイス基材の表面の少なくとも一部に接触させた後、共重合の構成成分として含まれるモノマーBの加水分解性シリル基を縮合反応の一方である官能基として縮合反応を起こさせることにより、前記親水性コポリマーを表面上及び/又は表面内の少なくとも一部に結合せしめる工程を含む。
モノマーA:加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマー
モノマーB:ビニル構造とアミド構造が直接結合した構造と、加水分解性シリル基と、を有するモノマー
本発明のメディカルデバイスの製造方法の好ましい態様の1つは、下記工程1〜工程4をこの順に含むものである。
<工程1>
1種類以上の下記モノマーAと1種類以上の下記モノマーBとを含む重合原液を共重合してなる親水性コポリマーを作成し、該親水性コポリマーを含有する表面処理液を調製する工程。
モノマーA:加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマー
モノマーB:ビニル構造とアミド構造とが直接結合した構造と、加水分解性シリル基と、を有するモノマー
<工程2>
表面処理対象となるメディカルデバイス基材表面の少なくとも一部と上記表面処理液を接触させる工程。
<工程3>
上記表面処理液に含まれる親水性コポリマーの加水分解性シリル基を、縮合される官能基の一方又は両方として、メディカルデバイスの表面の少なくとも一部を構成する官能基と縮合せしめる工程。
<工程4>
余剰なポリマー(主に親水性コポリマー)を洗浄除去する工程。
上記の様に、メディカルデバイスの少なくとも一部と、加水分解性シリル基を有する親水性コポリマー(モノマーAとモノマーBとが共重合されてなるポリマー)とを反応させることにより、メディカルデバイス上に親水性コポリマーからなる層を形成することができる。工程4において、余剰の親水性コポリマーは十分に洗浄除去することが好ましい。上記表面処理液中に含まれる加水分解性シリル基、あるいはその加水分解物がメディカルデバイスの表面の少なくとも一部を構成する官能基と縮合反応して、架橋反応(シランカップリング反応)が起こることにより、表面処理液中の親水性コポリマーがメディカルデバイス表面と縮合すると考えられる。
上記加水分解性シリル基を有する親水性コポリマーは、水溶液の形態で上記メディカルデバイス基材表面と反応させることが好ましい。但し、上記親水性コポリマーが水に溶解しにくい場合には、親水性コポリマーが溶解し得るアルコール等、例えばメタノール,エタノール又はプロパノール等、又はベンゼン、トルエン、ヘキサン等の有機溶媒を含む溶液を用いることもできる。
本発明のメディカルデバイス用表面処理液は、下記(i)〜(iii)からなる群における一つ以上を含む。
(i)1種類以上のモノマーAと1種類以上のモノマーBとを共重合の構成成分として含む親水性コポリマー
(ii)前記親水性コポリマーの加水分解物
(iii)前記親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または前記親水性コポリマーとの縮合物
ここで、
モノマーA:加水分解性シリル基を有さず、アミド構造を有するモノマー
モノマーB:ビニル構造とアミド構造とが直接結合した構造と、加水分解性シリル基と、を有するモノマー
本発明では、上記製造方法において用いられる表面処理液を含めて「メディカルデバイス用表面処理液」としており、すなわち、親水性コポリマー由来物を適切な液体に溶解した液体を指している。なお、本明細書において、メディカルデバイス用表面処理液を表面処理液と記載する場合がある。
表面処理液中の加水分解性シリル基を有する親水性コポリマーの含有量は、基材表面の親水性の付与効果を充分に発現させるためには、0.01mg/mL以上が好ましく、0.1mg/mL以上であることがより好ましく、さらに好ましいのは1mg/mL以上である。またメディカルデバイス基材表面に形成される表面処理層の外観(例えば透明性)が損なわれたり、表面処理液がゲル化したりするのを避けるためには、100mg/mL以下が好ましく、50mg/mL以下であることがより好ましい。さらに製造コストを下げる観点から、5mg/mL以下が一層好ましい。
上記表面処理液をメディカルデバイス基材の表面に接触させて表面処理を施すことが好ましい。上記表面処理液をメディカルデバイス基材の表面に接触させる方法としては、たとえば浸漬法(ディップ法)、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、スピンコート法、ダイコート法、スキージ法などの種々のコーティング手法を適用できる。なかでも表面処理液にレンズ基材を浸漬させる方法、表面処理液をメディカルデバイス基材に塗布する方法などが好ましく採用される。
表面処理液にメディカルデバイス基材を浸漬させるには、たとえば適切な器に表面処理液を入れ、かかる表面処理液中にメディカルデバイス基材全体を充分に浸漬させるなどすればよい。この場合、表面処理液中の加水分解性シリル基が十分に基材に結合するためには、浸漬する時間は30分以上が好ましく、より好ましいのは1時間以上、さらに好ましいのは2時間以上である。
なお、上記表面処理液については、メディカルデバイス基材との接触、例えば基材を液中に浸漬する前に、攪拌しながら加水分解性シリル基の加水分解を行うなどの前処理を行ってもよい。
なお、本発明においては、メディカルデバイス基材の表面への表面処理層の安定化という点から、表面処理液をメディカルデバイス基材の表面に接触させる前に、メディカルデバイス基材をあらかじめ酸処理、塩基処理又はプラズマ処理を行うことが好ましい。
上記酸処理法とは、0.001〜1M程度の酸溶液中に、そのレンズ基材表面を浸漬させ、酸処理を施す方法である。たとえば塩酸、硫酸もしくは酢酸などの酸の溶液中にレンズ基材を浸漬させるなどの方法により行なえばよい。
上記塩基(アルカリ)処理法とは、0.5〜7.5M程度の塩基溶液中に、そのレンズ基材表面を浸漬させ、塩基処理を施す方法である。たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくはアンモニアなどの塩基の溶液中にレンズ基材を浸漬させるなどの方法により行なえばよい。
上記酸処理及びアルカリ処理に用いる溶液には、アルコールなどの水溶性の有機溶媒を含んでもよい。
上記プラズマ処理とは、例えば酸素ガス及び/又は炭酸ガス、及び/又はアルゴンガス雰囲気中で行われるものであるが、これらに限られものではない。
プラズマ処理において使用されるガスは、約0.01〜1.0トルクの圧力が好ましく、適切には、出力が約100〜1000ワットの間、好ましくは200〜800ワットの間、より好ましくは300〜500ワットの間で処理するのが好ましい。
プラズマ処理時間は、有効かつ効率的な製造のためには、片面につき20秒以上、好ましくは片面につき30秒以上、より好ましくは片面につき約60秒〜600秒であり、最も好ましくは、片面につき約60〜300秒処理することである。
なお、プラズマ処理においてガスのフロー速度は、例えば、好ましくは10〜100sccm(Standard cm/min)、より好ましくは30〜100sccmの流速が好ましい。
また、前記のごとき前処理を施す前に、たとえばノニオン性界面活性剤や、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどの有機溶媒などでメディカルデバイス基材を洗浄しておくことが好ましい。また洗浄する際、超音波を併用してもよい。
上記加水分解性シリル基を有する親水性コポリマーが上記メディカルデバイス基材表面と接触するときの温度については、0℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、25℃がさらに好ましく、一方で、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
上記加水分解性シリル基の種類によっては、酸触媒又は塩基触媒を使用してもよい。
上記酸触媒とは、たとえば酢酸が挙げられ、表面処理液中で0.1〜2体積%程度の濃度が好ましい。
上記塩基触媒とは、たとえば水酸化ナトリウム、アンモニアが挙げられ、表面処理液中で0.1〜2体積%程度の濃度が好ましい。
なお、本発明においては、上記シランカップリング反応を行なう前に、かかるシランカップリング反応をより充分に促進させるために、その表面に表面処理液が付着したレンズ基材を、たとえば室温、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上で30分間〜24時間程度乾燥させることが好ましい。
表面処理層が形成された表面処理レンズ基材は、たとえば蒸留水や有機溶媒などで十分に洗浄することが好ましい。
かくして表面処理液をレンズ基材の表面に接触させて表面処理を施したのち、かかる接触によって付着した表面処理液をシランカップリング反応させることで、水濡れ性、易滑性、防汚性に優れ、剥離しにくい表面処理層を形成し長期に効能を維持することができる。
本発明によって形成される表面処理層の厚さは、上記親水性コポリマー由来物がデバイス表面の上に存在する場合は、優れた表面特性が充分に発現されるようにするために、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であることが望ましく、また特にコンタクトレンズの様な実施態様において透明度を保持するためには、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下であることが望ましい。
後述する数平均分子量とは、0.5Nの硝酸リチウムを含む水:メタノール=1:1の混合液を溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。質量平均分子量及び分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)も同様の方法で測定される。
なお、本明細書においては、質量平均分子量をMw、数平均分子量をMnで表す場合がある。また分子量1000を1kDと表記することがある。例えば「Mw33kD」という表記は「質量平均分子量33000」を表す。
本発明のメディカルデバイスは、水の静止接触角が100度以下であることが好ましく、90度以下がより好ましく、80度以下がさらに好ましい。
例えば本発明の実施態様がコンタクトレンズである場合には、装用者の角膜への貼り付きを防止する観点から静止接触角はより低いことが好ましく、65度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、55度以下がさらに好ましく、50度以下が一層好ましく、45度以下が最も好ましい。静止接触角はリン酸緩衝液による湿潤状態の試料にて、リン酸緩衝液に対して測定される。
本発明のメディカルデバイスの生体への馴染みの良さ、及び体組織の表面に接触した際の動きを円滑にするという観点から、また特に本発明の態様がコンタクトレンズである場合は装用者の角膜への貼り付きを防止する観点から、メディカルデバイスの表面が優れた易滑性を有することが好ましい。
易滑性を表す指標としては、本明細書の実施例に示した方法で測定される動摩擦係数が小さい方が好ましい。動摩擦係数が小さいほど摩擦力が小さく、生体(例えばコンタクトレンズの場合は角膜や眼瞼結膜)との間に擦れが生じたときに生体に与える影響が小さくなる。動摩擦係数は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましく、0.02以下が最も好ましい。また、摩擦が極端に小さいと脱着用時の取扱が難しくなる傾向があるので、動摩擦係数は0.001以上、好ましくは0.01以上であることが好ましい。なお、動摩擦係数はリン酸緩衝液による湿潤状態の試料にてガラス面に対して測定される。
本発明におけるメディカルデバイス表面の親水性コポリマー由来物の耐久性は、例えば手のひらの中央に窪みを作ってそこにサンプル(例えばコンタクトレンズ形状のもの)を置き、そこに所定の洗浄液を加えて、所定の方法で所定回数擦った後、サンプルをリン酸緩衝液中に浸漬した状態で、上記易滑性を判断することにより評価される。本発明の好ましい態様においては、親水性コポリマー由来物が共有結合によりレンズ基材表面に結合しているため、上述した擦り洗い処理を施した後でも、良好な水濡れ性と易滑性を有する。
より具体的には、本発明のメディカルデバイスの好ましい態様では、メディカルデバイス基材表面の少なくとも一部に、親水性コポリマー由来物が結合している。より詳細には、当該加水分解性シリル基におけるケイ素原子がメディカルデバイス基材表面を構成する原子と反応し、反応の結果生成されたシロキサン結合を介して親水性基含有部分が基材表面にて共有結合している。これにより、メディカルデバイス表面に良好な水濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与えることができ、さらに共有結合により結合されているため、剥離耐久性がよい。
本発明のメディカルデバイスの防汚性、特にタンパク質や脂質に対する抗付着性は、ムチン付着、脂質(パルミチン酸メチル)付着、及び人工涙液浸漬試験により、評価することができる。これらの評価による付着量が少ないものほど、装用感に優れるとともに、細菌繁殖リスクが低減されるために好ましい。ムチン付着量は5μg/cm以下が好ましく、4μg/cm以下がより好ましく、3μg/cm以下が最も好ましい。抗脂質付着性は本明細書の実施例に記載された方法で評価することができ、白濁が無く透明であるのが好ましい。
本発明のメディカルデバイスが眼用レンズなどの光学製品である場合には、透明性が高いことが好ましい。透明性の基準としては、目視した際に透明で濁りがないことが好ましい。さらに眼用レンズは、レンズ投影機で観察した場合、濁りがほとんど、又は、全く観察されないことが好ましく、濁りが全く観察されないことが最も好ましい。
以下、実施例により本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例7は参考例7とする。
〈分析方法及び評価方法〉
(1)親水性コポリマーの分子量測定
島津製作所製 Prominence GPCシステムを用いて測定した。装置構成は以下の通りである。ポンプ:LC−20AD、オートサンプラ:SIL−20AHT、カラムオーブン:CTO−20A、検出器:RID−10A、カラム:東ソー社製GMPWXL(内径7.8mm×30cm、粒子径13μm)。溶出溶媒として、水/メタノール=1/1(0.1N硝酸リチウム添加)を使用し、流速:0.5mL/分、測定時間:30分で測定した。サンプル濃度は0.2質量%とし、サンプル注入量を100μLとした。検量線はAgilent社製ポリエチレンオキシド標準サンプル(0.1kD〜1258kD)を用いて算出した。
(2)親水性コポリマー中に共重合成分として含まれるモノマーBのモル分率
親水性コポリマー2mgを重クロロホルム2mlに溶解し、NMRサンプルチューブに入れてNMR測定を行った。モノマーBに由来すると帰属されるピークのプロトン比と、それ以外のモノマーに由来すると帰属されるピークのプロトン比から、親水性コポリマー中に共重合成分として含まれるモノマー中のモノマーBのモル分率を求めた。
以下に実施例1を例に説明する。2.8〜3.3ppm間に認められるN,N−ジメチルアクリルアミドの二つのメチル基(6H)由来のピークとベースラインで囲まれた領域の面積をSとし、当該ピークに含まれると帰属される1分子中のプロトン数をNHAとした。実施例1においてはNHA=6である。同様に、0.7〜0.9ppm間に認められるトリエトキシシリル基のSi原子に隣接する炭素原子に結合した水素原子(2H)由来のピークとベースラインで囲まれた領域の面積をSとし、当該ピークに含まれると帰属される1分子中のプロトン数をNHBとした。実施例1においてはNHB=2である。
実施例1における親水性コポリマー中に共重合成分として含まれるモノマーBのモル分率は次式によって求めた。(S/NHB)/{(S/NHA)+(S/NHB)}
実施例2〜5も同じモノマーAとモノマーBの組み合わせであるため、同様にしてモノマーBのモル分率を求めた。他のモノマーの組み合わせからなる共重合体の場合は適宜、適切なプロトン由来のピークを選択してモル分率を求めることができる。
(3)易滑性及びその擦り洗い耐久性
コンタクトレンズ形状の試験片を、室温でバイアル瓶中のリン酸緩衝液中に浸漬し、蒸気滅菌した。試験片をリン酸緩衝液から引き上げ、人指で5回擦った時の感応評価を下記5段階の評価により行って、0サイクルの易滑性とした。
さらに、上記評価を行ったサンプルを、手のひらの中央における窪みに置き、洗浄液(日本アルコン株式会社製、“オプティフリー”(登録商標))を加えて、もう一方の手の人差し指の腹で表裏10回ずつ擦った後、よく水洗した。以上の操作を1サイクルとして、14サイクル繰り返した。その後、サンプルを純水で洗浄し、リン酸緩衝液中に浸漬した。1サイクル目、7サイクル目及び14サイクル目の感応評価を下記5段階の評価により行った。表1に0、1、7及び14サイクルにおける評価結果を示す。
5:非常に優れた易滑性がある。
4:5と3の中間程度の易滑性がある。
3:中程度の易滑性がある。
2:易滑性がほとんど無い(3と1の中間程度)。
1:易滑性が無い。
(4)抗脂質付着性
500mlのビーカーに攪拌子(36mm)を入れ、パルミチン酸メチル1.5gと純水500gを入れた。ウォーターバスの温度を37℃に設定し、前述のビーカーをウォーターバスの中央に置き、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。回転速度は600rpmとした。球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを1枚ずつバスケットに入れ、前述のビーカー内に投入し、そのまま攪拌した。1時間後、攪拌を止め、バスケット内のサンプルを40℃の水道水と家庭用液体洗剤(ライオン株式会社製“ママレモン”(登録商標))でこすり洗いした。洗浄後のサンプルを蒸留水が入った12ウェルプラスチックディッシュに入れ、冷蔵庫中で終夜静置した。サンプルの白濁を目視観察し、下記の基準でサンプルへのパルミチン酸メチルの付着量を判定した。
5:白濁が無く透明である。
4:白濁した部分がわずかにある。
3:白濁した部分が相当程度ある。
2:大部分が白濁している。
1:全体が白濁している。
(5)水の静止接触角
静止接触角はKYOWA社製のWET−6000を使用し、液滴法により測定した。コンタクトレンズ基材及び表面処理したレンズ基材は、RO水に24時間以上浸漬した。それぞれ、マイクロシリンジにて約1μLの液滴(RO水)を接触させ、かかるレンズ表面と液滴との接する角度を接触角として測定した。
(6)動摩擦係数
カトーテック株式会社製摩擦感テスターKE−SE−STPを用いて測定した。ステージ上によく洗浄した清浄なガラス板を設置し、その上にコンタクトレンズ専用の測定用アダプターを用いてコンタクトレンズ3枚を円周上に等間隔に配置した。コンタクトレンズはリン酸緩衝液140μLを液滴上でガラス面と接触させ、87gの静荷重存在下、0.1mm/秒の速さで測定用アダプターを動かし、表面の動摩擦係数を測定した。
(7)原子間力顕微鏡(AFM)
コンタクトレンズ表面の形態を研究するためにAFMを利用した。島津製作社製WET−SPM9500J3型を用いて、ダイナミックモードにより空気中で5μm四方の範囲を測定した。得られたAFM像を付属ソフトで解析し、表面粗さ(Rms)を算出した。
(参考例1)
[基材の作成]
成分aとして以下の成分を混合し、よく撹拌した。
トリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(57.9質量部)
2−エチルヘキシルアクリレート(7質量部)
ジメチルアミノエチルアクリレート(0.1質量部)
重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(0.5質量部)
着色剤Reactive Blue246(0.02質量部)
重合開始剤“イルガキュア”(登録商標)819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.5質量部)
t−アミルアルコール(10質量部)
この成分aの混合液に、成分bとして両末端にメタクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(28質量部)及び片末端にメタクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサン(FM0721、JNC、質量平均分子量5000)(7質量部)を加え、よく混合し攪拌した。
この混合物をメンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いて重合原液を得た。この重合原液を透明樹脂(ベースカーブ側ポリプロピレン、フロントカーブ側ゼオノア)製のコンタクトレンズ用モールドに注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(1.01mW/cm、20分間)して重合した。重合後に、モールドごとイソプロピルアルコール中に浸漬して、80℃で1時間加温してモールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。得られた成型体を、イソプロピルアルコールに室温、30分間浸漬した後、「テフロン(登録商標)」製のメッシュを敷いた清浄なプラスチック製容器に入れ乾燥した。得られたレンズ基材の縁部の直径は約14mm、中心部の厚みは約0.07mmであった。
(合成例1)
[加水分解性シリル基を有するモノマーの合成例]
窒素気流下、冷却管、滴下ロートを装着した300mL三ツ口フラスコに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン66.42g(300mmol)、テトラヒドロフラン300mLを入れて−30℃に冷却した。この溶液にトリエチルアミン60mLをゆっくりと加え、5分間撹拌させた後、アクリル酸クロリド25mL(309mmol)とテトラヒドロフラン50mLとの混合溶液を30分かけて滴下し、さらに室温で5時間撹拌させた。この反応混合溶液に酢酸エチル100mLを加え、ハイフロスーパーセルを敷いた桐山ロートで吸引ろ過、濃縮した。得られた粗体について油拡散ポンプを用いて減圧蒸留で精製し、37.79gの目的物を得た。
(実施例1)
[親水性コポリマーの調製]
500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA、和光純薬製、18.84g、190.1mmol)、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN、和光純薬製、52.1mg、210μmol)、合成例1で得られた化合物(TSPA、2.75mg、9.99mmol)、t−アミルアルコール(TAA、東京化成工業株式会社製、50.38g)を加え、デジタル温度計、三方コックを取り付けた冷却管、撹拌羽付きシーラーを装着した。超音波照射下、10mmHgまで吸引し窒素フラッシュするというサイクルを5回ほど繰り返して、混合溶液内の溶存酸素を除去した。続いてオイルバス上60℃で撹拌させながら1時間半反応させ、急激な粘度上昇が観察されたところで反応容器をオイルバスから引き上げて空冷した。重合反応溶液にエタノール50mLを加えて撹拌し、粘度を下げてから、アセトン:ヘキサン=100mL:600mL中へ注いでポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーをエタノール40mLに再溶解させ、アセトン:ヘキサン=50mL:500mLを注いで再沈殿させた。同様の操作を2回繰り返した後、真空乾燥機中で40℃終夜加熱乾燥させた。乾燥させたポリマーは液体窒素を用いて凍結粉砕して粉末状にし、再び真空乾燥機で乾燥させた。得られたポリマー粉末の量は15.33gで、数平均分子量(Mn)=117000、質量平均分子量(Mw)=496000であり、収率80%で目的物(親水性コポリマー)を得た。
[表面処理液の調製]
シリコーン基材を処理するアルカリ処理液として、4mol/L水酸化ナトリウム10v/v%エタノール水溶液を調製した。表面処理液については、親水性コポリマーの粉末を蒸留水に溶解して2wt%水溶液を調製し、5μm孔径のメンブレンフィルターで加圧ろ過を行った。
[シランカップリング反応によるコーティング]
スクリュー管中のアルカリ処理液20mLに、このアルカリ処理液を撹拌しながら参考例1に記載の方法で得たレンズ基材を入れ、60℃で1時間撹拌した。アルカリ処理液からレンズを取り出し、RO水で3回すすぎ洗いした。
表面処理液をよく撹拌した後、表面処理液質量の1質量%の酢酸を添加した。
スクリュー管中の表面処理液20mLに、この表面処理液を撹拌しながらアルカリ処理したレンズを入れ、80℃で1時間撹拌した。
表面処理液からレンズを取り出し、余分な水分を除去後、「テフロン(登録商標)」パンチングシートの上に、レンズを上に凸の状態で静置し、100℃で20分加熱した。
加熱後のレンズを軽くRO水で洗浄後、バイアル瓶中のリン酸緩衝液に浸漬し、蒸気滅菌(121℃、30分)し、上記の分析及び評価方法で、表面処理の効果を調べた。
(実施例2〜6)
共重合に供するTSPA(モノマーB)の親水性コポリマー調製時の全モノマーに対するモル比を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを調製し、コーティングを行い、分析及び評価を行った。
(実施例7)
実施例1の共重合に供するN,N−ジメチルアクリルアミド2モル%相当を、ブレンマーPME−400(日油株式会社製)に置換した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを調製し、分析及び評価を行った。
以上の実施例の結果を表1に示す。易滑性の向上の観点から、モノマーBの親水性コポリマー調製時の全モノマーに対するモル比が20モル%以上となると易滑性が比較的劣る傾向があることが分かった。親水性コポリマーの分子内及び/又は分子間の加水分解性シリル基の縮合反応によって架橋が形成されるために、表面特性の維持すなわち耐久性の観点から、モノマーBは少なくとも1モル%以上あることが好ましく、3モル%以上の共重合比では初期の易滑性を十分に維持することが可能であることが確認できた。抗脂質付着性の観点からは、モノマーBが3モル%以上共重合されていれば十分に脂質の付着が抑制される結果が得られた。
総じて、親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマー中のモノマーBの共重合比率は1〜40モル%が好ましく、1〜20モル%がより好ましく、1〜10モル%がさらに好ましく、3〜10モル%が最も好ましいと確認できた。さらに、第3の成分として、メトキシポリエチレングリコールを側鎖に有するモノマーを共重合することで、易滑性が更に向上した。
(比較例1)
参考例1に記載の方法で得たレンズ基材について、アルカリ処理による前処理のみを行い、加水分解性シリル基を有する親水性コポリマーと接触させなかった。この場合には、表面に親水性基が生じるため、水濡れ性と動摩擦係数は下がったものの、その効果は一時的であり、7回の擦り洗いを終えた段階で元の基材と同程度の易滑性に戻り、十分な耐久性を有する表面処理方法ではなかった。また、抗脂質付着性も十分とは言えなかった。
したがって、アルカリによる表面処理だけでは、十分に表面特性を維持できないことが確認できた。
(比較例2)
親水性コポリマーをポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)にした以外は実施例1と同様にして、シランカップリング反応によるコーティングを行った。親水性コポリマーであるポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)のデバイス表面への物理的吸着によって、一時的に水濡れ性と動摩擦係数は良好な値を示したが、上記親水性コポリマーが加水分解性シリル基を有さないため、基材表面と親水性コポリマー間で縮合反応が起きず、共有結合により固定されることがなかった。したがって、7回の擦り洗いを終えた段階で元の基材と同程度の易滑性に戻り、十分な耐久性を有する表面処理方法では無いことがわかった。また、抗脂質付着性も十分とは言えなかった。
(比較例3)
大阪有機化学工業製LAMBIC−771Wを用いて表面処理を行う以外は実施例1と同様にしてコーティングを行った。該製品は、浴室用ミラーなどの防曇剤として利用される、末端に加水分解性シリル基を有する親水性コポリマーであるが、本発明に係る親水性コポリマーとは異なるコーティングに際しては、製造元提供の説明書に記載の方法に従って処理を行った。水濡れ性と動摩擦係数は大きく改善されたが、易滑性は初期の状態から十分とは言えなかった。また、7回の擦り洗いを終えた段階で元の基材と同程度の易滑性に戻り、十分な耐久性を有する表面処理方法では無かった。また、抗脂質付着性も十分とは言えなかった。
したがって、末端のみに加水分解性シリル基を有していても耐久性が十分でなく、本発明のように複数点での結合が可能であることが重要であることが確認できた。
(比較例4)
参考例1に記載の方法で得たレンズ基材について、特開昭52−84258号公報の実施例1に記載の方法で表面処理を行った。水濡れ性と動摩擦係数は処理前と比較してほとんど変わらず易滑性もほぼ変化がなく、有効な表面処理方法では無かった。また、抗脂質付着性も元の基材と同等で、十分とは言えなかった。
本発明は、血液やその他の体液と接触させて使用するデバイスに用いることができる。好適な例としては、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクタ、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、皮膚用材料又は薬剤担体などが挙げられる。眼用レンズには特に好適である。眼用レンズとしては、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズなどのコンタクトレンズ、強膜レンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズなどが挙げられる。中でも、コンタクトレンズには好適であり、ソフトコンタクトレンズには特に好適である。
Figure 0006844258

Claims (5)

  1. 下記(i)〜(iii)からなる群における一つ以上を、表面上及び/又は表面内の少なくとも一部に有し、下記親水性コポリマーの質量平均分子量が10万〜1千万であり、ソフトコンタクトレンズである、メディカルデバイス。
    (i)1種類以上のモノマーAと1種類以上のモノマーBとを共重合の構成成分として含む親水性コポリマー
    (ii)前記親水性コポリマーの加水分解物
    (iii)前記親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または前記親水性コポリマーとの縮合物
    ここで、
    モノマーA:N,N−ジメチルアクリルアミド
    モノマーB:下記式(c)で表される構造からなるモノマー
    Figure 0006844258
    式(c)中、
    は水素原子又はメチル基を表し、
    及びR はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、
    mは1〜4の整数を表し、nは0〜2の整数を表す。
  2. 前記親水性コポリマーに共重合の構成成分として含まれるモノマー中の1〜40モル%が前記モノマーBである、請求項1に記載のメディカルデバイス。
  3. 前記親水性コポリマーの少なくとも一部は、前記加水分解性シリル基が縮合される官能基の一方である縮合反応により、表面上もしくは表面内の少なくとも一部に結合している、請求項1又は2に記載のメディカルデバイス。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のメディカルデバイスを製造する方法であって、1種類以上の下記モノマーAと1種類以上の下記モノマーBとを含む重合原液を共重合して得られる親水性コポリマーを含む表面処理液を、メディカルデバイス基材の表面の少なくとも一部に接触させた後、
    共重合の構成成分として含まれるモノマーBの加水分解性シリル基を縮合反応の一方である官能基として縮合反応を起こさせることにより、前記親水性コポリマーを表面上及び/又は表面内の少なくとも一部に結合せしめる工程を含み、前記親水性コポリマーの質量平均分子量が10万〜1千万である、メディカルデバイスの製造方法。
    モノマーA:N,N−ジメチルアクリルアミド
    モノマーB:前記式(c)で表される構造からなるモノマー
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のメディカルデバイス用の表面処理液であって、下記(i)〜(iii)からなる群における一つ以上を含み、下記親水性コポリマーの質量平均分子量が10万〜1千万である、メディカルデバイス用表面処理液。
    (i)1種類以上のモノマーAと1種類以上のモノマーBとを共重合の構成成分として含む親水性コポリマー
    (ii)前記親水性コポリマーの加水分解物
    (iii)前記親水性コポリマーの、メディカルデバイス基材または前記親水性コポリマーとの縮合物
    ここで、
    モノマーA:N,N−ジメチルアクリルアミド
    モノマーB:前記式(c)で表される構造からなるモノマー
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