光記録方法
技術分野
[0001] 本発明は、光記録方法に関し、より詳しくは、書き換え可能な相変化型光記録媒体 の光記録方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、書き換え型光記録媒体 (以下、光記録媒体を単に、ディスク又は光ディスクと いう場合がある。)として、相変化型の書き換え型コンパクトディスク (CD— RW、 CD— Rewritable)又は、相変化型の書き換え型 DVD (商品名: DVD— RW、 DVD+RW 、以下、「RW - DVD」という場合がある。)が使用されている。相変化型の CD-RW 又は RW— DVDは、記録層における非晶質状態と結晶状態との屈折率差によって生 じる反射率差および位相差変化を利用して記録情報信号の検出を行う。通常、相変 化型の CD - RW又は RW - DVDは、基板上に下部保護層、相変化型記録層(以下 、単に「記録層」という場合がある。)、上部保護層、反射層を設けた構造を有する。そ して、これらの層の多重干渉を利用して、反射率差および位相差を制御し CD又は D VDと互換性を持たせることができる。
[0003] CD— RW又は RW— DVDにおける記録とは、記録と消去を同時に行うオーバーライ ト記録をいう。通常、 1つの非晶質マークを形成するために、記録レーザーパルスを 分割し、マーク長に対応した長さの記録パルス列を照射する (パルス分割方法)。具 体的には、様々な長さを有する記録マーク長を形成する際に、記録層に照射するレ 一ザ一光を、記録パワー Pwの光を照射する記録パルスと再生パワー程度の低 、パ ヮー (バイアスパワー Pb)の光を照射する冷却ノ ルスとに分割する。そして、記録パヮ 一 Pwの光(記録パルス)とバイアスパワー Pbの光(冷却パルス)とを繰り返し照射する ことによって、様々な長さを有する非晶質状態の記録マークを形成する。
[0004] 図 3は、一般的な光記録方法におけるパルス分割方法を説明する図である。図 3 (a )は、形成する nTの記録長の記録マークのタイミングチャートを示す。図 3 (b)は、 ηΤ の記録長の記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを
示す。図 3 (a)に示す nTの記録長の記録マークのタイミングチャート 200は、長さ ηΤ の記録マークの時間幅に対応している。このタイミングチャート 200は、基準クロック に同期して時間 Τ1 (ηΤマークの始点)で立ち上がり、時間 nT経過後、また、基準クロ ックに同期して、時間 Τ2でたち下がる(nTマークの終点)。図 3 (b)に示す nTの記録 長の記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャート 201は、 nTマーク長を形成するために、複数の記録パルス区間 α Τと冷却ノ ルス区間 β丁と に分割した光エネルギーの時間変化を表す波形である。図 3 (b)に示すように、記録 パルス区間 a T (i= l— mの整数)において記録パワー Pwは一定であり、冷却パル ス区間 j8 1^= 1—1!1の整数)においてバイアスパワー Pbは一定である。そして、マ 一クの間及び a T (i= 1一 m)及び 13 T (i= 1一 m)以外の区間にお!、て、消去パヮ 一 Peは一定である。
[0005] このように、様々な長さを有する記録マーク長を形成する際に、記録層に照射する レーザー光を、記録パワー Pwの光を照射する記録パルスと再生パワー程度の低 ヽ バイアスパワー Pbの光を照射する冷却パルスとに分割する理由の 1つは、非晶質形 成に必要な冷却速度を確保するためである。このため、パルス列中のパルス間の長 さ(冷却パルス)が長くなると冷却速度は速くなる。また、記録マーク間は記録パワー Pwより低 、消去パワー Peを有するレーザー光を照射し、オーバーライト前に存在し た非晶質マークを結晶化させる。
[0006] 近年、データ転送レートを速くするため、高線速度で記録が可能な媒体の開発が 進められている。高線速でのオーバーライト記録では、短時間で非晶質マークを結 晶ィ匕(消去)する必要があるため、結晶化速度の速い記録材料が記録層に用いられ る。一方、結晶化速度が速い記録材料を記録層に用いるために、マーク記録時にお いても再結晶化が起こりやすくなる。従って、結晶化速度が速い記録材料を用いる場 合、マーク記録時に再結晶化を抑制して非晶質マークを形成するために、冷却速度 を充分に速める必要がある。そのため、記録パルス間の冷却パルスを長くする必要 がある。冷却パルスを充分に長くとるための有効な方法として、例えば、複数のマーク 長を同一の分割数のパルス列で記録する方法が挙げられる。具体的には、 CDの 10 倍の線速(12mZs)において、複数のマーク長を同一分割数のパルス列で記録する
光記録方法に関する報告がなされている (特許文献 1参照)。
[0007] 特許文献 1 :特開 2001— 331936号公報 (段落 (0178)、段落 (0179)参照)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] ところで、このような高転送レートが可能な媒体には、同時に、比較的低線速での記 録も可能であることが望まれる。これは、例えば、ディスクを一定回転数で回転させる と、ディスクの内周部と外周部とでは 3倍近い線速度の違いが生じるからである。また 、用途によっては、比較的低転送レートで充分である場合も多いからである。
し力しながら、本発明者の検討によれば、高転送レートが可能な相変化型光記録 媒体に、比較的低線速度での記録を行うと、良好な記録特性が得られにくい場合が あることが明ら力となった。
本発明は、このように、高転送レートが可能な相変化型光記録媒体に低線速度で 記録を行う際に浮かび上がった課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、高転送レートが可能な結晶化速度の速い相変化型光記 録媒体に、比較的低線速度で記録を行う場合において、優れた記録特性を示す光 記録方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0009] かかる課題を解決すベぐ本発明においては、記録パルスの分割数を一定にして 複数の記録マークをそれぞれ形成する場合に、複数の記録マークの中、最も短い記 録マークを記録するための記録パワーを上げる方法を採用している。
即ち、本発明が適用される光記録方法は、光記録媒体に局所的に記録光を照射し 、マーク長変調された情報を複数の時間的な長さを有する記録マークによって記録 する光記録方法であって、一つの記録マークの時間的な長さを nTとしたとき (Τは、 基準クロック周期であり、 ηは、 2以上の自然数である。)、 nTの時間的な長さを有す る記録マークを記録するための光照射時間を、
[0010] [数 1] α ! Τ , β ! Τ , α 2 Τ、 2 Τ、 · · · 、 α ; Τ , )3 i Τ、 · · · 、 a m T、 β m T
[0011] (mは、パルス分割数を表し自然数であり、 tt i ( l≤i≤m)は、 0より大きい実数であり 、 β ( l≤i≤m-l)は、 0より大きい実数であり、 β は、 0以上の実数である。)の順に
1 m
分割し、 a T ( l≤i≤m)の時間内に、記録パワー Pw ( 1≤i≤m)の記録光を照射し 、 j8 T ( l≤i≤m)の時間内に、 Pb≤0. 2 X Pw ( l≤i≤m)なるバイアスパワー Pbの 記録光を照射し、複数の時間的な長さを有する記録マークの中、少なくとも一つの記 録マークについて、ノ ルス分割数 mを 2以上とし、複数の nTの時間的な長さを有する 記録マークを同一のパルス分割数 mで形成する光記録方法にぉ 、て、複数の nTの 時間的な長さを有する記録マークの中、最も nTが長 ヽ記録マークを形成する際の時 間 α T ( l≤i≤m)における記録パワー Pwの平均値を Pw とし、複数の nTの時間
1 1 long
的な長さを有する記録マークのうち、最も nTが短い記録マークを形成する際の時間 a T ( l≤i≤m)における記録パワー Pwの平均値を Pw としたとき、 Pw > Pw l l short short lo となる mが存在することを特徴とするものである。
ng
[0012] ここで、本発明が適用される光記録方法において、 Pw > Pw となる mが、 1及
short long
び Z又は 2であることが好ましい。また、本発明が適用される光記録方法において、 2 種類の記録線速度 V 及び記録線速度 V (但し、 V >V である)により、マー
min max max min
ク長変調された情報を記録する場合、記録線速度 V において、 Pw > Pw と
mm short long なる mが存在することが好ましい。この場合、記録線速度 V と記録線速度 V との
mm max 関係が、 V ≥2V であることが好ましい。
max mm
[0013] さらに、本発明が適用される光記録方法において、複数の nTの時間的な長さを有 する記録マークの中、最も nTが長 、記録マークを形成する際の 1≤ i≤ mにおける m 個の記録パワー Pwをそれぞれ Pwとし、複数の nTの時間的な長さを有する記録マ ークの中、最も nTが短い記録マークを形成する際の l≤i≤mにおける m個の記録パ ヮー Pwの少なくとも一部の記録パワー Pwを Pwとし、残りの記録パワー Pwを Pwと i i 0 i 1 したとき、 Pwと Pwとの関係を、 Pw > Pwとすることが好ましい。この場合、複数の
0 1 0 1
nTの時間的な長さを有する記録マークの中、最も nTが短い記録マークを形成する 際の l≤i≤mにおける m個の記録パワー Pwの総てを Pwとすることが好ましい。
i 0
[0014] また、本発明は、光記録媒体に局所的に記録光を照射し、マーク長変調された情 報を複数の時間的長さを有する記録マークによって記録するための光記録方法であ
る。本発明が適用される光記録方法は、結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行 い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に適用することが 好ましい。即ち、記録層の溶融過程及び冷却過程を制御することにより記録層の再 結晶化を制御することができ、良好な記録マークが得られるという効果が顕著に発揮 されるようになる。このため、本発明が適用される光記録方法を用いて、マーク長変 調された情報を複数の時間的長さを有する記録マークによって記録する光記録媒体 としては、結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な 相変化型記録層を有する光記録媒体が特に好ましい。
発明の効果
[0015] 本発明によれば、高転送レートが可能な結晶化速度の速 、相変化型光記録媒体 に、比較的低線速度で記録を行う場合において、優れた記録特性を示す光記録方 法が得られる。
発明を実施するための最良の形態
[0016] 以下、本発明を実施するための最良の形態 (以下、発明の実施の形態という。 )に ついて詳述する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなぐその 要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
今、一つの記録マークの時間的な長さを nTとしたとき (Τは基準クロック周期であり、 ηは 2以上の自然数である。)、 ηΤの記録マークを記録するための光照射時間を、 [0017] [数 2] ! Τ , (3 ι Τ、 《 2 Τ、 2 Τ、 · · · 、 a ; T , β { Τ , · · · 、 a m T、 ^ m T
[0018] (mは、パルス分割数を表し自然数であり、 tt i(l≤i≤m)は、 0より大きい実数であり 、 β (l≤i≤m-l)は、 0より大きい実数であり、 β は、 0以上の実数である。)の順に 分割する。そして、記録パルス a T(l≤i≤m)の時間内において、記録パワー Pw ( l≤i≤m)の記録光を照射し、冷却パルス |8 T(l≤i≤m)の時間内において、 Pb≤ 0. 2 X Pw (l≤i≤m)なるバイアスパワー Pb (再生パワー程度の低パワー)の記録 光を照射するパルス列を用いる。上述したように、記録パワー Pwは iの値によって変 化し得る値としている。
[0019] 尚、 nは、符号理論によって有限個の値をとることができる。また、 nの値に上限を決 める必要はない。但し、 nは、通常 100以下、実用的には 50以下、より実用的には 20 以下の値をとる。一方、 nは 2以上の自然数とする力 nの最小値は、通常 2又は 3と する。
[0020] 次に、基準クロック周期 Tの一例について以下に説明する。
例えば、 CDの 1倍速(1. 2mZs— 1. 4mZs)基準速度では、 T= 231nsecである 力 40倍速では、 T= 5. 8nsec、 48倍速では、 T=4. 7nsecである。また、 DVDの 1倍速(3. 49mZs)基準速度では、 T= 38. 2nsecである力 10倍速では、 T= 3. 82nsec、 12倍速では、 T= 3. 2nsec、 16倍速では、 T= 2. 4nsec、である。
[0021] 相変化記録層を有する光ディスクでは、レーザー光の照射により記録層を融点以 上の温度に上げた後、急冷することにより非晶質のマークを形成する場合が多い。こ の場合、非晶質マーク形成のためには、温度を十分に上昇させることと急冷させるこ ととの両方が必要となる。レーザー光の照射時間 α Tが長いと温度は上がりやすい 力 過度に長いと、レーザー光を照射し始めた部分は冷却速度が遅くなり、非晶質が 形成されずに再結晶化してしまう。したがって長いマークを形成するときには、通常、 記録パワーのレーザー光の照射区間を、(α Τ
1 、 α Τ ·
2 、 · ·、 α Τ
m— 1 、 α Τ)と、分割 m する必要が生じる。昇温させるためには分割数 mの下限値は勿論 1となる。通常、同 一の mで記録する異なったマーク長の種類の数は 6種類以下が好ましく、 5種類以下 力 り好ましい。尚、各マーク長の種類すべてに異なった分割数 mを用いる場合は本 発明の対象外となる。
[0022] (高速での記録を行う場合)
次に、パルス分割方法による光記録方法を高速記録に適用する場合について説 明する。高データ転送レートが可能な書換型相変化型記録媒体では、結晶化速度 の速い記録材料を記録層に用いる必要がある。これは、オーバーライト時にオーバ 一ライト前に存在した非晶質マークを短時間で結晶化する必要があるからである。一 方、結晶化速度が速くなるために、非晶質状態の記録マーク記録時において再結晶 化が起こりやすくなる。この記録時の再結晶化を抑制して非晶質マークを良好に形 成するためには、冷却速度を速める必要がある。このため、パルス列中の冷却パルス
の時間幅 18 を長くとる必要がある。そして、 の長さを基準クロック周期より長くと る必要がある場合には、基本的に複数の長さを有する ηΤマークを、同一の分割数 m のパルス列で記録する記録方法を用いる必要が生じる。このような記録方法は、ォー バーライト可能な最高線速度における基準クロック周期が 10nsより短くなると必須と なる場合が多い。
[0023] 次に、このような複数の nTマークを同一の分割数 mのパルス列で記録する光記録 方法の場合を説明する。図 4は、本実施の形態が適用される長さの異なる複数の nT マークを同一の分割数 mのパルス列で記録する光記録方法を説明するための図で ある。図 4 (a)は、 8Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチヤ ートを示す。図 4 (b)は、 9Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミン グチャートを示す。そして、図 4 (c)は、 10Tマークを形成するための記録パルス分割 方法のタイミングチャートを示す。尚、図 4では、記録パワー Pwは i〖こよらず一定 (Pw )としている。
[0024] 図 4 (a)—図 4 (c)〖こ示すように、長さの異なる複数の nTマーク(8Tマーク一 10Tマ ーク)を同一の分割数 m (図 4の場合は、 m= 3)のパルス列で記録する場合、同一の パルス分割数(m= 3)で記録される複数の nTマークの中、短!、ηΤマーク(8Τマーク )形成用のパルス列は、長 、ηΤマーク(9Τマーク又は 10Tマーク)形成用のパルス 列と比較して、マークの長さが短くなる。このため、短い nTマーク(8Τマーク)形成用 のパルス列は、長い nTマーク(9Τマーク又は 10Tマーク)形成用のパルス列と比較 して、 βの平均値を小さくするか又は αの平均値を小さくする必要がある。多くの場 合は、 αと j8の両方の平均値を小さくする必要がある。
[0025] し力しながら、短い nTマーク(8Tマーク)において を平均的に短くすると、記録マ ーク形成時の冷却が不十分となる傾向がある。この結果、記録時に再結晶化が起こ り記録特性が低下し易くなる傾向にある。そこで、この短い nTマーク(8Τマーク)につ いての j8は、マークの長さが短くなるからといって単純に短くすることができない。ま た、 βを短くする場合でも、記録時の再結晶化による記録特性の低下が生じない程 度の大きさを確保する必要がある。
[0026] 短 、ηΤマーク(8Τマーク)を形成する際に、 /3の大きさを確保する必要があるため
、記録パルスに用いる αの平均長さは、長い ηΤマーク(9Τマーク又は 10Tマーク) の場合と比較して、より小さくする必要がある。これはマーク長を理想的な長さ付近に するためである。つまり、マーク長は、通常、溶融する部分の長さ(記録パルスの長さ )と溶融後再結晶化する領域の長さで決まる。そして、溶融する部分の長さは、主に 記録パワー Pwを有する先端記録パルス力も後端記録パルスまでの長さ、即ち、パ ルスの時間的な長さ( α T+ |8 丁+…屮 |8 Τ+α Τ)に相当する空間的長さで
1 1 m— 1 m
主に決まる。即ち、 +j8 +〜+j8 +a )の
1 1 m— 1 m 大きさで主に決まる。従って、 β
l を大きくすると、マーク長を合わせるために αは小さくする必要がある。そして、短い ηΤマーク(8Τマーク)を形成する際においてマーク長を合わせるために aを小さく すると、この短マーク(8Tマーク)に関してのみ記録パワー Pwが足りなくなる場合が 生じる。
[0027] 従って、本実施の形態が適用される光記録方法においては、この短マーク(8Tマ ーク)に関してのみ記録パワー Pw (図 4では Pw)を上げれば優れた記録特性が得ら れる。但し、上述の通り、溶融する部分の長さは(α Τ+|8 Τ+〜+|8 Τ+α Τ
1 1 m— 1 m
)に相当する空間的長さに対応する。このため、この短マーク(8Tマーク)に関しての み記録パワー Pwを上げる方法として、溶融する部分の全体 (m個の α Τの全体)に 照射する記録パワー Pwの平均値を上げるようにする。ここで、時間 a T(l≤i≤m) における Pwの平均値は、以下のようにして求めることができる。
[0028] 即ち、まず、任意の iにおける時間の関数である Pwを a Τの時間内で積分する。そ して、この積分を、 l≤i≤mにおける m個それぞれの Pw及び α Τについて行う。こ のようにして得られた m個の積分値を合計して、これを時間 Τ+α丁+…+ひ T)で割った値を求めれば、時間 a .T(l≤i≤m)における記録パワー Pwの平均値を 得ることができる。例えば、総ての iにおける α.Τにおいて記録パワー Pwが一定値を とると仮定した場合、一つの記録マークを形成するために照射される記録パワーの合 計値∑ (Pw X αΤ)は、以下のようになる。
[0029] [数 3]
∑ ( P w i X a i Τ) = { ( P w! X a J T) + ( P w 2 X α 2 Τ) +
* · · · · + ( Ρ wm„ t X am_ J Τ) + (PwmX amT) }
[0030] 従って、時間 a .T (l≤i≤m)における Pwの平均値は、
[0031] 画
∑ ( P w j X a i T ) / ( α T + a 2 T +— + a m T )
[0032] を計算することにより求めることができる。
そして、長さ nTが異なる複数の記録マークを同一のパルス分割数 mで形成する場 合、この複数の記録マークの中、最も長い記録マークを形成する際の時間 ex T (l≤i ≤m)における Pwの平均値を Pw とし、一方、最も短い nTの記録マークを形成す
i long
る際の時間x T (l≤i≤m)における Pwの平均値を Pw とする。そして、 Pw >
1 1 short short
Pw となる mが存在するようにする。
long
[0033] (低線速度での記録を行う場合)
次に、パルス分割方法による光記録方法を低速記録に適用する場合について説 明する。低線速での記録時は、仮に媒体上での光照射位置 (記録パルスの時間的 長さ a Tと、冷却パルスの時間的長さ /3 Tとの関係)を高線速記録の場合と同じにと ると、時間的なパルスの長さ( ex T)やパルス間の長さ( β Τ)は、高線速記録の場合 と比較して、線速度に反比例して長くなる。これは、記録線速度 Vとクロック周期丁との 積 (V X T)は常に一定であるため、クロック周期 Τが記録線速度 Vに反比例して長く なるためである。
[0034] し力しながら、本発明者の実験によれば、低線速度の記録において、媒体上での 光照射位置 (記録パルスの時間的長さ oc Τと、冷却パルスの時間的長さ β との関 係)を高線速記録の場合と同じにしたときは、冷却速度が小さくなる傾向があることが 判明した。そして、この冷却速度の減少により、非晶質マークがうまく形成できない場 合が多いことが判明した。このため、低線速度での記録においては、高線速記録で の記録と比較して、冷却パルスをより長くとる(j8をより大きくする)必要があることがわ かった。即ち、記録パルス間(冷却パルス)に相当する媒体上での空間的(時間的) 長さは、低線速記録であるほど長くする必要がある。これは、低線速度での記録では 一般的に冷却速度が遅くなる傾向が強いからである。
[0035] このとき、高線速度での記録と同様に、記録パルスの時間的長さ a T (l≤i≤m)に
相当する媒体上での空間的長さは、マーク長を合わせるためより短くする必要がある 。こうして記録パルスの時間的な幅 丁(1≤^ 111)に相当する空間的長さは、低線 速記録ほどより短くなる (低線速ほど a ( l≤i≤m)が小さくなる)。そして、総てのマ ーク長において α . ( 1≤i≤m)が小さくなると、同一のパルス分割数 mで複数のマー ク長を記録する場合の ex ( l≤i≤m)の調整範囲も小さくなる。このため、複数の nT マークを同一分割数 mで形成する際に、複数の ηΤマーク間での調整が難しくなり、 短い nTマークにおいて記録パルスの時間的長さ a .T ( l≤i≤m)の長さが不十分と なりやすい。従って、高線速記録用媒体に比較的低線速で記録を行う場合に、本実 施の形態が適用される光記録方法により得られる効果がより大きくなる。
[0036] 即ち、異なる nTの時間的な長さを有する複数の記録マークを同一のノ ルス分割数 mで形成する光記録方法において、この複数の記録マークの中、最も nTが長い記 録マークを形成する際の時間 a T ( l≤i≤m)における Pwの平均値を Pw とし、一 i 1 long 方、最も nTが短い記録マークを形成する際の時間 a T ( l≤i≤m)における Pwの平 均値を Pw とする。そして、 Pw > Pw となる mが存在するようにする。
short short long
[0037] (高速記録時及び低速記録時の両方に共通する好ま 、態様)
( 1)本実施の形態が適用される光記録方法を適用する分割数 m
このような光記録方法を用いる場合に、総ての分割数 mで Pw > Pw としても
short long よい。好ましいのは、一部の分割数 mで用いることである。具体的には、 m= l及び Z 又は m= 2において Pw > Pw とすることが特に好ましい。この理由は以下の通
short long
りである。
m= 2又は m= lで記録される複数の記録マーク長の中で最短の記録マークにつ いては、記録マークの長さを調節するために j8 Tを長い記録マークより短くすること が必要となる。一方、 mが 3以上の場合は、 /3 T (i≠l)で記録マーク長を調整するこ とが可能となり、自由度が高い。ここで、実験によれば、 |8 T (i≠l)を短くする場合と 比較して、 β Τを短くする場合の方が記録品質の特性低下が顕著となる傾向にある 。これは、先頭パルス(α Τ部のパルス)が照射される部分の冷却速度が主に |8 Τ の長さで決まるため、 β Τを短くすると、記録マークの先端部分を形成するための冷 却速度が不足し、相変化記録層の溶融後の再結晶化が記録マークの前端部分 (先
頭記録パルスが照射される側)で起こりやすくなるからである。そして、その結果、記 録マーク先端部分が所望の形とならない (ジッタ特性が低下する)傾向となる。従って
、m= 2又は m= lのように、分割数が小さぐ β Τの長さをある程度確保することが 必要となる場合は、同一分割数における短い記録マークを形成するための記録パヮ 一が不足する傾向が強くなる。このような場合に本実施の形態が適用される光記録 方法を用いる意義が大きい。
[0038] (2)記録パワー Pw (l≤i≤m)設定方法の好ましい態様
パルス列の発生を制御する電子回路の設計の簡略化を行 、、かつレーザー光照 射用の光源の寿命を確保するために、 Pw (l≤i≤m)を次のように設定することが好 ましい。
即ち、同一の分割数 mで異なる長さを有する複数の記録マークを形成する際に、 複数の nTの時間的な長さを有する記録マークの中、最も nTが長い記録マークを形 成する際の l≤i≤mにおける m個の Pw.を Pwと一定値とする。一方、複数の nTの 時間的な長さを有する記録マークの中、最も nTが短い記録マークを形成する際の 1 ≤i≤mにおける m個の Pwの中、少なくとも一部の Pwを Pwとし、残りの Pwを Pwと
i i 0 i 1 する。そして、 Pw >Pwとする。 Pwの値を頻繁に変化させることは、パルス発生の
0 1 i
制御回路の設計を複雑にするだけでなぐレーザー光の光源の寿命を短くする可能 性があるため、上記のような設定とすることが好ましい。
[0039] ここで、最も短い記録マークを形成する際に、記録パワーを Pwとする好ましい i(l
0
≤i≤m)、換言すれば記録パワーを Pwとする好ましい α Τは、 l≤i≤mの α Τの中
0 i i
、 α Tが最小となる記録パルスである。 α Τが最小となる記録パルスにおいては、記 録層の溶融が不十分となりやすいため、記録パワーを Pwと大きくすればよい。さら
0
に、 a Tが最小となる記録パルスにおいて記録パワーを上げることは、冷却速度が速 くなるという効果もある。なぜなら、 (X Tが短いことは、温度上昇中の周りへの熱拡散 の時間が短くなることを意味しており、最高温度に達したときの熱分布が空間的に急 峻となるためである。また、記録パワーを上げることにより、 a Tがより長いパルスと同 程度まで温度を上昇させることができるのである。
[0040] 尚、最後の冷却パルスの時間的長さである j8 Tの長さを変えるとマーク後端部の
再結晶化領域の大きさが変わりマーク長の調整に有効ではあるが、再生波形が歪む 傾向にあるようである。
ノ ルス分割数 mが m= l及び Z又は 2において本実施の形態が適用される光記録 方法を適用する場合には、 a Tにおける記録パワーを Pwとすれば良好な記録品
1 0
質を有する記録マークを形成することができる。
さらに好ましいのは、本実施の形態が適用される光記録方法において、同一の分 割数 mで、異なる長さを有する複数の nTの記録マークを形成する際に、これらの複 数の記録マークの中、最も ηΤが短い記録マークを形成する際の l≤i≤mにおける m 個の Pwの総てを Pwとすることである。このような設定とすることにより、パルス発生 i 0
の制御回路をさらに簡略ィ匕することができるようになる。
[0041] (3) Pw と Pw との関係
short long
本実施の形態が適用される光記録方法において、各マーク長における記録パワー の平均値は、少なくとも 2種類以上の値をとり、用いる記録パワーの中、大きいのもの 力 SPw である。 Pw は、 Pw より大きければ効果がある力 Pw の 1. 05倍以 short short long long 上であることが好ましぐ 1. 1倍以上であることがより好ましぐ 1. 15倍以上が特に好 ましい。一方、記録パワーが大きすぎるとレーザー寿命が短くなるため、 Pw は、 P
short w の 2倍以下が好ましぐ 1. 6倍以下がより好ましぐ 1. 4倍以下が特に好ましい。
long
[0042] また、本実施の形態が適用される光記録方法において、異なる長さを有する複数 の nTの記録マークの中、最も nTが長い記録マークを形成する際の l≤i≤mにおけ る m個の Pwをそれぞれ Pwとし、最も nTが短い記録マークを形成する際の l≤i≤ mにおける m個の Pwの少なくとも一部の Pwを Pwとし、残りの Pwを Pwとしたとき
i i 0 i 1
の、 Pwと Pwとの関係も上記と同様にすればよい。即ち、 Pwは、 Pwより大きけれ
0 1 0 1
ば効果があるが、 Pwの 1. 05倍以上であることが好ましぐ 1. 1倍以上であることが より好ましぐ 1. 15倍以上が特に好ましい。一方、記録パワーが大きすぎるとレーザ 一寿命が短くなるため、 Pwは、 Pwの 2倍以下が好ましぐ 1. 6倍以下がより好まし
0 1
く、 1. 4倍以下が特に好ましい。また、本実施の形態が適用される光記録方法にお いて、異なる長さを有する複数の nTの記録マークの中、最も nTが短い記録マークを 形成する際の l≤i≤mにおける m個の Pwの総てを Pwとする場合の Pwと Pwとの
関係も上記と同様にすればよい。
[0043] (本実施の形態が適用される光記録方法の特に好ま 、態様)
本発明者は、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体に比較的低線速度 での記録を行う等の場合に、高速記録用に合わせ込んだ記録方法をそのまま用いる と良好な記録特性が得られにくい場合があることを見出した。その原因を検討した結 果、高速記録時の最適記録パワーでの記録で低速記録を行うと、特定のマーク長( 特に、 nが小さい値である短いマーク)の特性のみが悪ィ匕することがわ力つた。これら 特定のマーク長(特に、 nが小さい値である短いマーク)の特性を改善するには、適当 な記録パルス波形を選んだ上で、この特定のマーク長を記録するための記録パルス の記録パワーを上げれば良いことを見出した。
[0044] 即ち、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体に、 V >V となる 2種類
max min
の記録線速度 V 及び V で記録を行う場合に、記録線速度が V において、 Pw
min max mm s
>Pw となる mを存在させるようにする。これにより、本実施の形態が適用される hort long
光記録方法により得られる効果がより顕著に発揮される。
記録パルスの発生を制御する電子回路の設計を簡略ィ匕し、ひ 、てはレーザー光の 光源の寿命を延ばすために、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体にお
V、ては、先ず、高速記録 (記録線速度 V )にお 、て良好な記録品質を得られるよう
max
に光記録方法を合わせ込むのが通常である。ところが、高速記録において合わせ込 んだ光記録方法を低線速度に適用すると、前述した「低線速度での記録」において 説明したように、冷却パルスを長くとる(j8を大きくする)必要があるために、記録パル スが短くなる が短くなる)傾向にある。従って、低線速度での記録において、複数 の長さを有する記録マークを同一のパルス分割数 mで形成する際に、 aをより短くし なければならない。そしてこのために、良好な記録品質を有する記録マークを得るた めの平均記録パワー Pw が不十分となりやすい。このため、低線速記録時におい
short
て Pw を Pw よりも大きくする意義が大きくなる。
short long
[0045] 尚、上記の例にぉ 、ては、高速記録 (記録線速度 V )にお 、ては、同一分割数 m
max
で形成する総ての長さの記録マークで Pwを一定値とすれば、記録パルスの発生を 制御する電子回路の設計をより簡略ィ匕できる利点がある。
また、 V と V との関係については、 V と V との差が大きくなればなるほど、 V mm max min max
において上記 αをより短くしなければならない現象が顕著に発生する。従って、 V mm 1
と V との差が大きくなるような V において、本実施の形態が適用される光記録 mm max mm
方法を適用する意義が大きくなる。具体的には、 V と V との関係を、 V ≥2V
mm max max mm とすることにより、本実施の形態が適用される光記録方法により得られる効果がより顕 著に発揮される。
尚、上記の通り、 V と V との差は、大きくなればなるほど好ましい。従って、 V
mm max max の上限は特に規定する必要はない。但し、現実的には、 V の上限は、 V の 1000
max mm 倍又は 100倍程度となる。
[0046] (本実施の形態が適用される光記録方法の一般的事項)
( 1) α j8の値
a、 βの値は、 iの値、マーク長、記録線速度等によって変化する値である。本発 明では、複数のマーク長を同一の分割数のパルス列で記録する光記録方法を想定 しているため、 l≤i≤m— 1なる(α + β ) Τの平均的な周期は、クロック周期 Τより大 きくなる。但し、大きすぎると 1つのマークを形成するためのパルス列による非晶質部 が光学的に分離されてしまう。従って、 l≤i≤m— 1での(α + β )の平均値は、通常 1以上とするが、 1. 25以上が好ましぐ 2以上がより好ましぐ 2. 5以上がさらに好まし い。一方、 l≤i≤m— 1での(a + β )の平均値は、通常 6以下とするが、 5以下が好 ましく、 4. 5以下がさらに好ましい。
[0047] また、書き換え可能な相変化型記録層を有する記録媒体のオーバーライト可能な 最高線速度においては、 aの平均値(l≤i≤m)は、 0より大きい実数とする力 0. 8 以上が好ましぐ 1以上がより好ましぐ 1. 2以上がさらに好ましい。一方、 ocの平均 値(l≤i≤m)は、通常 5以下とするが、 4以下が好ましぐ 3以下がより好ましぐ 2以 下がさらに好ましい。オーバーライト可能な最高線速度に対して記録線速度を小さく する場合は aは小さくする。このとき、 exの好ましい範囲は、オーバーライト可能な最 高線速度記録における OCの好ましい範囲を線速度に比例して小さくした値となる。
[0048] j8 ( l≤i≤m-l)は 0より大きい実数とする。一方、 j8 ( l≤i≤m-l)の上限は、上 記 + j8 )の値と aの値との関係力も必然的に決まる。 β ( l≤i≤m-l)は、通常
5以下とするが、好ましくは 4以下、より好ましくは 3. 5以下とする。
β は、大きすぎるとオーバーライト前に存在した非晶質マークの結晶化が不充分と なり、小さすぎると記録層の溶融後の再結晶化が激しくなり記録特性が低下する。書 換型相変化型記録媒体のオーバーライト可能な最高線速度における 13 の平均値 は、 0以上の実数とする力 0. 2以上が好ましぐ 0. 5以上がさらに好ましい。一方、 β の平均値は、通常 3以下とするが、 2以下が好ましぐ 1. 5以下がさらに好ましい。 オーバーライト可能な最高線速度に対して記録線速度が小さくなる場合は β は大き くする。このとき、 β の好ましい範囲は、オーバーライト可能な最高線速度記録にお ける β の好ましい範囲を線速度に反比例して大きくした値となる。
[0049] (2)バイアスパワー Pb、消去パワー Pe、記録パワー Pw
ノ ィァスパワー Pbは小さい方が冷却速度を上げる点で好ましい。従って、フォー力 スゃトラッキングサーボに支障が無い限りできるだけ 0に近づけた方が好ましい。 l≤i ≤mにおいて、 PbZPw≤0. 2とする力 Pb/Pw≤0. 1が好ましい。通常 Pbは再 生パワーと同程度の値とする。
本実施の形態が適用される光記録方法においては、 α Τ及び |8 Τ以外の区間で の記録光強度については、特に、定めていない。例えば、書換型相変化型光記録媒 体では、消去パワー Peを照射する。結晶状態を未記録 ·消去状態とし、非晶質状態 を記録マークとするオーバーライト可能な相変化媒体では、消去パワー Peは、記録 層を結晶化温度以上、概ね融点以下の温度に昇温せしめる温度である。その場合、 l≤i≤mにおける PeZPwは、通常 0. 1以上とするのが好ましい。一方、 PeZPwは 、通常 0. 6以下、好ましくは 0. 4以下とするのが好ましい。上記範囲の中、 Pe/Pw は、特に、 0. 2以上 0. 4以下の範囲の値がより好ましい。この比が上記範囲より小さ いと、消去パワーが低すぎて、非晶質マークの消え残りが生じる場合がある。一方、こ の比が上記範囲より大きいと、 Peの照射部が溶融した後に非晶質ィ匕してしまう場合 がある。
[0050] 尚、記録パワー Pw (l≤i≤m)、 Pe及び Pbの値は、必ずしも直流的に一定である 必要はない。例えば、クロック周期 Tの 1Z10程度以下の周期で高周波重畳を加え てレーザーの動作を安定させることができる。この場合の Pw (i≤i≤m)、 pe及び Pb
はそれらの平均値となる。
記録パワー Pwは、通常、 4mW以上、 60mW以下とする。例えば、波長 400nm程 度のレーザーでは、 Pwは、 4mW— 15mW程度とするのが一般的である。例えば、 波長 650nm程度のレーザーでは、 Pwは、 10mW— 50mW程度とするのが一般的 である。また、例えば、波長 780nm程度のレーザーでは、 Pwは、 10mW— 60mW 程度とするのが一般的である。無論、記録パワーは記録条件やディスク構成やレー ザ一の性能により変化し得る値である。
バイアスパワー Pbの値及び消去パワー peの値の上下限値は、記録パワー Pwの 値を基に必然的に決まる。
[0051] (光記録装置)
本実施の形態が適用される光記録方法を実施するための光記録装置について以 下に説明する。
本実施の形態が適用される光記録方法においては、図 4 (a)—図 4 (c)に示すよう なタイミングチャートで、記録パルス α T、冷却パルス j8 Τを順番に発生させる。そし て、同一分割数 mで複数の長さ (ηΤ)を有する記録マークを形成する場合に、上記 複数の長さ(ηΤ)を有する記録マークのうち、最も ηΤが長い記録マークを形成する際 の記録パワー Pwの平均値 Pw とし、最も短 、マークを形成する際の記録パワー P
1 long
wの平均値 Pw とする。そして、 Pw >Pw となるような mを存在させる。
i short short long
ここで、図 4 (a)—図 4 (c)に示すような、実際の分割記録パルス光をレーザーダイ オードから出力させる場合、通常、次のような操作を行なう。すなわち、図 4 (a)—図 4
(c)に示すようなタイミングチャートでゲート信号を発生する論理レベルの集積回路出 力を、レーザードライバー回路に入力する。そして、レーザードライバー回路におい てレーザー駆動のための大電流を制御し、レーザーダイオードからの光出力を制御 して、記録パワー Pw、バイアスパワー Pb、消去パワー Peを発生させる。このようにし て、図 4 (a)—図 4 (c)に示すような分割記録パルス光の制御が達成される。
[0052] 図 5は、本実施の形態が適用される光記録方法を実施するための光記録装置の一 例を示す図である。図 5には、コンピュータ用のデータを記録するための光ディスク記 録 ·再生装置としての光記録装置 2000が示されて 、る。
図 5に示された光記録装置 2000の構成について説明する。 IZF2001は、ホストコ ンピュータ (図示せず)とのデータの受け渡しをするためのインターフェース回路であ る。変調回路 2002は、記録するデータを符号変調するための回路である。分割記録 パルス生成制御回路 2003は、変調回路 2002により変調された信号に基づき、分割 記録用のパルス列を生成するための回路である。 LDドライバ 2004は、分割記録パ ルス生成制御回路 2003から出力される論理レベルの制御信号に基づき、レーザー 光の出力を制御するためのドライバである。 LD2005は、光記録装置 2000の光源と なる半導体レーザー(LD)である。ビームスプリッタ 2006は、 LD2005力らのレーザ 一光を記録媒体である光ディスク 2007上に出射光として出力させ、また光ディスク 2 007からの反射光を分離するための光学素子である。対物レンズ 2009は、レーザー 光を光ディスク 2007上に集束させるための光学素子である。 PD2008は、ビームス プリッタ 2006により導かれた光ディスク 2007からの反射光を受光して電気信号に変 換するためのフォトディテクタである。再生回路 2010は、 PD2008から出力された電 気信号力も光ディスク 2007上に記録された信号を検出し、この信号のための基準ク ロック (周期 T)を生成するための回路である。復調回路 2011は、再生回路 2010より 再生され、光ディスク 2007上に記録されたデータを復調するための回路である。制 御マイコン 2012は、光記録装置 2000全体を制御するためのコンピューターである。 スピンドルモーター 2013は、光ディスク 2007を回転させるための駆動装置である。
[0053] 次に、光記録装置 2000の作用につ 、て説明する。
光ディスク 2007上に記録される記録データは、変調回路 2002より符号変調された パラレルデータを、さらにシリアルな NRZI (Non Return to Zero Inverted)信 号に変換するマーク変調記録方式が採用されている。その際の動作クロックは、再生 回路 2010から出力される基準クロックである。再生回路 2010においては、通常、光 ディスク 2007上にあらカゝじめ形成された案内溝の溝蛇行 (wobble)信号を検出して 、基準クロックを抽出する。このため、記録線速度に応じた基準クロックが得られる。
[0054] 分割記録パルス生成制御回路 2003では、 nTマーク長を形成するための分割記録 パルスを分割生成する。この分割記録パルスを LDドライバ 2004に入力し、 LDドライ ノ 2004においてレーザー駆動のための大電流を制御する。そして、 LD2005力
の光出力を制御して、記録パワー Pwとバイアスパワー Pbとの消去パワー Peを発生 させる。このようにして、図 4 (a)—図 4 (c)に示したように、分割記録パルス光の制御 が達成される。
[0055] 次に、上述した光記録装置 2000を用いることにより、本実施の形態が適用される 光記録方法の具体的な実施方法につ!、て説明する。
本実施の形態において、光記録装置 2000では、複数の nTの時間的な長さを有す る記録マークを、同一のパルス分割数 mで形成するように構成する。そして、複数の n Tの時間的な長さを有する記録マークの中、最も nTが長い記録マークを形成する際 の時間x T ( l≤i≤m)における記録パワー Pwの平均値を Pw とし、複数の nTの
i i long 時間的な長さを有する記録マークのうち、最も nTが短い記録マークを形成する際の 時間 a T ( l≤i≤m)における記録パワー Pwの平均値を Pw としたとき、 Pw >
1 1 short short
Pw となる mが存在するように構成すればよい。
long
[0056] このような構成は、例えば、制御マイコン 2012から、分割数 m、マーク長 nT、 Pw
shor
、及び Pw 等の情報を選択信号 2020として、分割記録パルス生成制御回路 200 t long
3に入力することによって実現できる(図 5参照)。また、用いる光ディスク 2007にとつ て好ましい m、n、Pw 、及び Pw の情報を光ディスク 2007にプレピット列等で記
short long
録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク 2007に記録するのに先立って読 み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク 2007に所望の記録を行 うようにしてもよい。
[0057] また、本実施の形態において、光記録装置 2000は、前述した Pw > Pw とな
short long る mが、 1及び Z又は 2となるように構成される事がより好ま 、。
このような構成は、例えば、制御マイコン 2012から、分割数 m、 Pw 、及び Pw
short long の関係に関する情報を選択信号 2020として、分割記録パルス生成制御回路 2003 に入力することによって実現できる(図 5参照)。また、用いる光ディスク 2007にとつて 好ましい m、Pw 、及び Pw の情報を光ディスク 2007にプレピット列等で記録し
short long
ておいてもよい。そして、この情報を光ディスク 2007に記録するのに先立って読み出 す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク 2007に所望の記録を行うよう にしてもよい。
[0058] また、本実施の形態において、光記録装置 2000は、 2種類の記録線速度 V 及
mm び記録線速度 V (但し、 V >v である)を用いるように構成することが好ましい
max max min
。ここで、記録線速度 V において、 Pw >Pw となる mが存在するように構成さ
mm short long
れる事が好ましい。
[0059] さらに、本実施の形態において、光記録装置 2000は、記録線速度 V と記録線速
min
度 V との関係が、 V ≥2V であるように構成されることがより好ましい。
max max mm
このような構成は、例えば、制御マイコン 2012に、 V 及び V のデータを設定し
min max
ておくことによって実現できる(図 5参照)。また、用いる光ディスク 2007にとつて好ま しい V 、V の情報を光ディスク 2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。
min max
そして、この情報を光ディスク 2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この 読み出した情報を用いて、光ディスク 2007に所望の記録を行うようにしてもょ 、。
[0060] また、本実施の形態にお!、て、光記録装置 2000は、同一の分割数 mで形成する 複数の nTの時間的な長さを有する記録マークの中、最も nTが長い記録マークを形 成する際の l≤i≤mにおける m個の記録パワー をそれぞれ Pwとなるように構成 させることが好ましい。さらに、複数の nTの時間的な長さを有する記録マークの中、 最も nTが短い記録マークを形成する際の l≤i≤mにおける m個の記録パワー Pwの 少なくとも一部を Pwとし、残りを Pwと構成することが好ましい。そして、 Pwと Pwと
0 1 0 1 の関係を、 Pw >Pwとなるように構成されることが好ましい。
0 1
[0061] さらに、本実施の形態において、光記録装置 2000は、複数の nTの時間的な長さ を有する記録マークの中、最も nTが短い記録マークを形成する際の l≤i≤mにおけ る m個の記録パワー Pwの総てを Pwとなるように構成することがより好まし!/、。
i 0
このような構成は、例えば、制御マイコン 2012に、 l≤i≤mにおける Pw及び Pw
1 0 のデータを設定しておくことによって実現できる(図 5参照)。また、用いる光ディスク 2 007にとつて好ましい Pw、 Pwの情報を光ディスク 2007にプレピット列等で記録し
1 0
ておいてもよい。そして、この情報を光ディスク 2007に記録するのに先立って読み出 す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク 2007に所望の記録を行うよう にしてもよい。
[0062] (光記録媒体)
本実施の形態が適用される光記録方法は、結晶状態と非晶質状態とで情報の記 録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に適用さ れることが好ましい。
相変化型記録層を有する光記録媒体の具体例としては、基板上に、下部保護層、 記録層、上部保護層、反射層、及び保護コート層をこの順に有する層構成を有する 光記録媒体を挙げることができる。この光記録媒体は、基板を通してレーザー光を照 射することにより信号の記録再生を行う光記録媒体 (基板面入射型の光記録媒体)で ある。また、相変化型記録層を有する光記録媒体の他の具体例としては、基板上に、 反射層、下部保護層、記録層、上部保護層、及び保護コート層をこの順に有する層 構成を有する光記録媒体を挙げることができる。この光記録媒体は、上部保護層を 通じてレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う光記録媒体 (膜面入射 型の光記録媒体)である。膜面入射型の光記録媒体では、基板を通さずに第二保護 層側からレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う。このため、記録層 と光ヘッドの距離を数百ミクロン以下に接近させることが可能となり、開口数が 0. 7以 上の対物レンズを使用することで媒体の記録密度を向上させることが出来る。
[0063] 尚、上記基板面入射型の光記録媒体及び膜面入射型の光記録媒体それぞれの 層構成は例示である。例えば、基板面入射型の光記録媒体及び膜面入射型の光記 録媒体の 、ずれにぉ 、ても、保護層と反射層との間に界面層を設けることができる。 また、例えば、膜面入射型の光記録媒体において、基板と反射層との間に下地層を 設けてもよい。
本実施の形態において好ましいのは、高データ転送レートが可能な書き換え型相 変化型の光記録媒体である。このような光記録媒体は、通常、結晶化速度の速い記 録材料を記録層に用いることによって実現できる。
[0064] 以下、記録層、基板、保護層、反射層、保護コート層を例にとって、これらの各層に ついて説明する。
(1)記録層
記録層の材料としては、例えば、 GeSbTe、 InSbTe、 AgSbTe、及び AglnSbTe といった系列の化合物のように、繰り返し記録が可能な材料が選ばれる。これらの中
で、 Sb Teと GeTeの疑似 2元合金を主成分とする組成、より具体的には、 { (Sb Te
2 3 2
) (GeTe) } Sb 組成(但し、 0. 2≤ a≤0. 9、 0≤ β≤0. 1)が選ばれること
3 1-α α 1-β β
が多い。あるいは、 Sbを 50原子%以上含む Sbを主成分とする組成が選ばれることが 多い。
[0065] 本実施の形態において使用する光記録媒体は、結晶化速度を高めるために、記録 層に Sbを主成分とする組成を用いることが特に好ましい。尚、本実施の形態におい て、「Sbを主成分とする」とは、記録層全体のうち、 Sbの含有量が 50原子%以上であ ることを意味する。 Sbを主成分とする理由は、 Sbの非晶質は、非常に高速で結晶化 できるため、非晶質マークを短時間で結晶化することが可能となる。このため、非晶 質状態の記録マークの消去が容易となる。しかし、一方で、 Sb単独で用いるよりも、 非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高めるための添加元素を Sbと共に併用することが好ましい。記録層の非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状 態の経時安定性を高めるためには、上記添加元素の含有量を、通常 1原子%以上、 好ましくは 5原子%以上、より好ましくは 10原子%以上とし、一方、通常 50原子%以 下とする。
[0066] 非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高める上記添加元素は 、結晶化温度を高める効果もある。このような添加元素としては、 Ge、 Te、 In、 Ga、 S n、 Pb、 Siゝ Ag、 Cu、 Au、希土類元素、 Ta、 Nb、 V、 Hf、 Zr、 W、 Mo、 Cu、 Cr、 Co 、 N、 0、及び Se等を用いることができる。これら添加元素のうち、非晶質形成の促進 、非晶質状態の経時安定性の向上、及び結晶化温度を高める観点から、好ましいの は Ge、 Te、 In、 Ga、及び Snからなる群力も選ばれる少なくとも 1つとすることである。 特に好ましいのは、 Ge及び Z又は Teを少なくとも用いる力、 In、 Ga、及び Snの少な くとも 1つを用いることである。
[0067] 上述の通り、本実施の形態において使用する光記録媒体においては、記録層の材 料として、 Sbと Ge及び Z又は Teとを併用することが特に好ましい。 Ge又は Teそれぞ れの含有量は、 1原子%以上 30原子%以下とすることが好ましい。つまり、 Ge及び T eは、それぞれ単独で 1原子%以上 30原子%以下ずつ含有されていることが好まし い。但し、記録層の主成分を Sbとした場合に Sbの含有量は 50原子%以上となる。こ
のため、 Sbと共に Ge及び Teを記録層に含有させる場合、 Ge及び Teの合計量は 50 原子%よりは少、なくなる。
[0068] 記録層中における Ge又は Teのそれぞれの含有量は、より好ましくは 3原子%以上 とする。この範囲とすれば、非晶質マークを安定ィ匕する効果が十分に発揮されるよう になる。一方、記録層中における Ge又は Teのそれぞれの含有量は、より好ましくは 2 0原子%以下、さらに好ましくは 15原子%以下とする。この範囲とすれば、非晶質が 安定になりすぎて逆に結晶化が遅くなるという傾向を良好に抑制することができるよう になる。さらに、結晶粒界での光散乱によるノイズを抑制することができるようになる。
[0069] 上記 Sbを主成分とする組成は、記録層中に含有される Teの量によって、 2種類に 分類することができる。一つは、 Teを 10原子%以上含有する組成である。もう一つは Teを 10原子%未満含有する組成 (Teを含有しな 、場合を含む)である。
Sbを主成分とする一つの組成は、 Teを概ね 10原子%以上含みつつ、 Sb Te 共
70 30 晶組成よりも過剰の Sbを含有する合金を主成分とする組成である。この記録層材料 を、以下において、 SbTe共晶系と呼ぶ。ここで、 SbZTeは 3以上とすることが好まし ぐ 4以上とすることがより好ましい。
[0070] 上記 Sbを主成分とするもう一つの組成としては、以下のものを挙げることができる。
即ち、記録層の組成を、 Sbを主成分としつつ、 Teを 10原子%未満とし、さらに Geを 必須成分として含有するものが挙げられる。上記記録層の組成の具体例としては、 S b Ge 近傍組成の共晶合金を主成分とし、 Teを 10原子%未満含有する合金 (本
90 10
明細書においては、この合金を SbGe共晶系と呼ぶ。)を好ましく挙げることができる。 Te添カ卩量が 10原子%未満の組成は、 SbTe共晶系ではなぐ SbGe共晶系として の性質を有するようになる。この SbGe共晶系の合金は、 Ge含有量が 10原子%程度 と高くても、初期結晶化後の多結晶状態の結晶粒径は比較的微細なために結晶状 態が単一相となりやすぐノイズが低い。 SbGe共晶系の合金においては、 Teは、付 加的に添加されるにすぎず必須元素とはならない。
SbGe共晶系合金では、 SbZGe比を相対的に高くすることで、結晶化速度を速め ることができ、再結晶化による非晶質マークの消去が良好にできる。
[0071] 記録層に Sbを主成分とする組成を用い、結晶状態を未記録 ·消去状態とし、非晶
質マークを形成して記録を行う場合、冷却効率を良くすることが非常に重要となる。こ れは以下の理由による。
即ち、上記 SbTe共晶系又は SbGe共晶系等の Sbを主成分とする記録層は、高速 記録に対応するために、 Sb Te 共晶点あるいは Sb Ge 共晶点近傍よりもさらに
70 30 90 10
Sbを過剰に添加し、結晶核生成速度ではなく結晶成長速度を高めることにより結晶 化速度を高めている。このため、これら記録層においては、記録層の冷却速度を速く して、再結晶化による非晶質マークの変化 (非晶質マークが所望のサイズよりも小さく なること)を抑制することが好ましい。従って、記録層を溶融した後に非晶質マークを 確実に形成するために記録層を急冷することが重要となる。換言すれば、記録層の 冷却効率を良くすることが非常に重要となるのである。そのため、上記記録層組成に おいては、反射層に放熱性の高い Ag又は Ag合金を用いることが特に好ましい。そし て、このような記録時の冷却効率を上げる必要がある記録層を有する光記録媒体に 対して、本実施の形態の光記録方法を用いる意義が大き 、。
[0072] 本実施の形態で使用する光記録媒体では、上記 SbTe共晶系等の Sbを主成分と する組成を用いる記録層において、さらに、 In、 Ge、及び Snの少なくとも 1つを含有 し、記録層中における In、 Ge、及び Snのそれぞれの含有量が 1原子%以上 30原子 %以下であることが特に好まし!/、。
[0073] 以下、 Sbを主成分とする組成の具体例についてさらに説明する。
Sbを主成分とする糸且成としては、先ず、 (Sb Te ) M (但し、 0. 6≤x≤0. 9、 0 x 1— x 1— y
≤y≤0. 45、 Mは、 Ge、 Ag、 In, Ga、 Zn、 Sn、 Siゝ Cu、 Au、 Pd、 Pt、 Pb、 Cr、 Co 、 0、 S、 Se、 V、 Nb、及び Taより選ばれる少なくとも 1種)合金を主成分とする SbTe 共晶系の組成を好ましく挙げることができる。尚、上記組成式は、原子数比で組成を 表している。従って、例えば x = 0. 6は、 60原子%を意味する。
上記(Sb Te ) M組成においては、 Mとしては、 Ge、 Ga、 Ag、 Sn、又は Inを x 1— x 1— y y
単独又は併用して用いることが、オーバーライト特性等の記録特性の観点力も特に 好ましい。
上記(Sb Te ) M組成においては、 Xは、通常 0. 6以上、好ましくは 0. 7以上
X 1— X 1— y y
、より好ましくは 0. 75以上であり、一方、通常 0. 9以下とする。また、 yは、通常 0以上
、好ましくは 0. 01以上、より好ましくは 0. 03以上であり、一方、通常 0. 45以下、好 ましくは 0. 4以下である。 x、 yを上記範囲とすれば、高速記録に対応可能な記録層 を得ることがでさるよう〖こなる。
[0074] 上記(Sb Te ) M糸且成において Mとして Geを用いる糸且成について更に説明す
1— 1—
る。この組成としては、 Sb Te 共晶点組成を基本として大幅に過剰の Sbを含む Sb
70 30
Te 合金を母体とし、さらに Geを含む、 Ge (Sb Te ) (但し、 0. 01≤y≤0. 0
70 30 y x 1-x l~y
6、 0. 82≤x≤0. 9)で表される組成を用いることが好ましい。 Ge量は、 Ge (Sb Te ) における yの値として 0. 01以上、特に、 0. 02以上であることが好ましい。一方 1—
、このように Sb含有量が多い SbTe共晶組成では、 Ge量が多すぎると、 GeTeや GeS bTe系の金属間化合物が析出するとともに、 SbGe合金も析出しうるために、記録層 中に光学定数の異なる結晶粒が混在すると推定される。そして、この結晶粒の混在 により、記録層のノイズが上昇しジッタが増加することがある。また、 Geをあまりに多く 添加しても非晶質マークの経時安定性の効果が飽和する。このため、通常 Ge量は、 Ge (Sb Te ) における yの値として、 0. 06以下、好ましくは 0. 05以下、より好ま y 1— 1—
しくは 0. 04以下である。
[0075] 上記 GeSbTe共晶系の組成においては、さらに In、 Ga、 Snを含有させることが特 に好ましい。良卩ち、 Ml Ge (Sb Te ) (0. 01≤z≤0. 4, 0. 01≤y≤0. 06, z y x 1— x 1— y~z
0. 82≤x≤0. 9であり、 Mlは、In、 Ga及び Snからなる群から選ばれた少なくとも一 種の元素を表す。)で表される組成を用いることが特に好ましい。上記 Ml =In、 Ga 及び Snで示される一群の元素のうち少なくとも 1種を添加することによりさらに特性が 改善される。 In、 Ga、 Snの元素は、結晶状態と非晶質状態の光学的コントラストを大 きくでき、ジッタを低減する効果もある。 Mlの含有量を示す zは、通常 0. 01以上、好 ましくは 0. 02以上、より好ましくは 0. 05以上、一方、通常 0. 4以下、好ましくは 0. 3 5以下とする。この範囲とすれば、上記特性改善の効果が良好に発揮されるようにな る。
[0076] 上記 GeSbTe共晶系の糸且成において In、 Ga、 Sn以外に含みうる元素としては、窒 素、酸素及び硫黄を挙げることができる。これら元素は、繰返しオーバーライトにおけ る偏祈の防止や光学特性の微調整ができるという効果がある。窒素、酸素及び硫黄
の含有量は、 Sb、 Te及び Geの合計量に対して 5原子%以下であることがより好まし い。
また、 Cu、 Zr、 Hf、 V、 Nb、 Ta、 Cr、 Coを上記 GeSbTe共晶系の組成に含有させ ることもできる。これら元素は、ごく微量の添カ卩により、結晶成長速度を低下させること なぐ結晶化温度を上昇させ、さらなる経時安定性の改善に効果がある。但し、これら 元素の量が多すぎると特定の物質の経時的偏析ゃ繰返しオーバーライトによる偏析 が起こりやすくなるため、添加量は 5原子%以下、特に 3原子%以下とするのが好ま しい。偏祈が生じると、記録層が初期に有する非晶質の安定性や再結晶化速度等が 変化して、オーバーライト特性が悪ィ匕することがある。
[0077] 記録層の膜厚は、十分な光学的コントラストを得、また結晶化速度を速くし短時間 での記録消去を達成するためには 5nm以上あるのが好ましい。また反射率を十分に 高くするために、より好ましくは lOnm以上とする。
一方、クラックを生じにくぐかつ十分な光学的コントラストを得るためには、記録層 膜厚は lOOnm以下とするのが好ましいが、より好ましくは 50nm以下とする。これは、 熱容量を小さくし記録感度を上げるためである。また、上記範囲とすれば相変化に伴 う体積変化を小さくできる。このため、上下の保護層に対するオーバーライトによる記 録層の繰り返しの体積変化の影響を小さくすることもできる。ひいては、不可逆な微 視的変形の蓄積が抑えられノイズが低減され、繰り返しオーバーライト耐久性が向上 する。
書き換え可能型 DVDのような高密度記録用媒体では、ノイズに対する要求が一層 厳しいため、より好ましくは記録層膜厚を 30nm以下とする。
[0078] 上記記録層は、通常、所定の合金ターゲットを不活性ガス、特に Arガス中で DCま たは RFスパッタリングにより得ることができる。
また、記録層の密度は、バルタ密度の通常 80%以上、好ましくは 90%以上とする。 ここでいうバルタ密度 Pとは、通常下記(1)式による近似値を用いるが、記録層を構 成する合金組成の塊を作成して実測することもできる。
[0079] [数 5]
p =∑ m i p ; ( 1 )
[0080] (ここで、 mは各元素 iのモル濃度であり、 m は元素 iの原子量である。 ) スパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス (通常、 Ar等の希ガス。以下、 A rの場合を例に説明する。)の圧力を低くしたり、ターゲット正面に近接して基板を配 置する等して、記録層に照射される高エネルギー Ar量を多くすることによって、記録 層の密度を上げることができる。高エネルギー Arは、通常スパッタのためにターゲット に照射される Arイオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものカゝ、プラズマ中の Arイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかのいずれかで ある。
[0081] このような高エネルギーの希ガスの照射効果を Atomic peening効果という。一般 的に使用される Arガスでのスパッタでは、 Atomic peening効果により Arがスパッ タ膜に混入される。膜中の Ar量により、 Atomic peening効果を見積もることができ る。即ち、 Ar量が少なければ、高エネルギー Ar照射効果が少ないことを意味し、密 度の疎な膜が形成されやす 、。
一方、 Ar量が多ければ、高エネルギー Arの照射が激しくなり、膜の密度は高くなる 。し力しながら、膜中に取り込まれた Arが繰り返しオーバーライト時に voidとなって析 出し、繰り返しの耐久性が劣化しやすくなる。従って、適度な圧力、通常は、 10"2Pa 一 10— のオーダーの範囲で放電を行う。
[0082] (2)基板
基板には、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフイン等の榭脂、あるいは ガラスを用いることができる。なかでもポリカーボネート榭脂が最も好ましい。ポリカー ボネート榭脂は、 CD— ROM等において最も広く用いられている実績もあり、かつ安 価でもあるからである。基板の厚さは、通常 0. 1mm以上、好ましくは 0. 3mm以上で あり、一方、通常 20mm以下、好ましくは 15mm以下である。一般的には、基板の厚 さは、 0. 6mm— 1. 2mm程度とされる。基板面入射型の光記録媒体においては、 基板はレーザー光を透過する必要があるため、レーザー光に対して透明である必要 力 Sある。一方、膜面入射型の光記録媒体においては、基板は必ずしも透明である必 要はない。
[0083] (3)保護層
記録層の相変化に伴う記録層の蒸発,変形を防止し、記録層の相変化に伴う熱拡 散を制御するために、保護層が用いられる。保護層は、通常記録層の上下一方また は上下両方に形成される。好ましくは、記録層の上下両方に保護層が形成される。 保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留 意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸ィ匕物、 硫化物、窒化物、炭化物や Ca、 Mg、 Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができ る。
[0084] この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量 論的組成をとる必要はない。すなわち、上記酸化物等は、屈折率等の制御のために 組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると 誘電体の混合物が好ましい。より具体的には、 ZnSや希土類硫ィ匕物等のカルコゲン 化合物と、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等の耐熱化合物と、の混合物が挙げら れる。例えば、 ZnSを主成分とする耐熱化合物の混合物や、希土類の硫酸化物、特 に、 Y O Sを主成分とする耐熱化合物の混合物は好ましい保護層組成の一例であ
2 2
る。
[0085] 保護層の材料としては、通常、誘電体材料を挙げることができる。誘電体材料として は、例えば、 Sc、 Y、 Ce、 La、 Ti、 Zr、 Hf、 V、 Nb、 Ta、 Zn、 Al、 Cr、 In、 Siゝ Ge、 S n、 Sb、及び Te等の元素の酸化物; Ti、 Zr、 Hf、 V、 Nb、 Ta、 Cr、 Mo、 W、 Zn、 B、 Al、 Ga、 In、 Si、 Ge、 Sn、 Sb、及び Pb等の元素の窒化物; Ti、 Zr、 Hf、 V、 Nb、 Ta 、 Cr、 Mo、 W、 Zn、 B、 Al、 Ga、 In及び Si等の元素の炭化物等が挙げられる。また、 上記材料の混合物を用いることもできる。また、誘電体材料としては、 Zn、 Y、 Cd、 G a、 In、 Si、 Ge、 Sn、 Pb、 Sb及び Bi等の元素の硫化物、セレン化物もしくはテルル化 物; Mg、 Ca等の元素のフッ化物等を挙げることができる。また上記材料の混合物を 挙げることができる。
[0086] さらに誘電体材料の具体例としては、 ZnS— SiO、 SiN、 SiO、 TiO、 CrN、 TaS
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、 Y O S等を挙げることができる。これら材料の中でも、 ZnS— SiOは、成膜速度の
2 2 2
速さ、膜応力の小ささ、温度変化による体積変化率の小ささ、及び優れた耐候性から 広く利用される。 ZnS— SiOを用いる場合、 ZnSと SiOとの組成比 ZnS : SiOは、通
常、 0 : 1— 1 : 0、好ましく ίま、 0. 5 : 0. 5—0. 95 : 0. 05、より好ましく ίま、 0. 7 : 0. 3— 0. 9 : 0. 1とする。最も好まし! /、のは、 ZnS : SiOを 0. 8 : 0. 2とすることである。
2
[0087] 繰り返し記録特性を考慮すると、保護層の膜密度はバルタ状態の 80%以上である ことが機械的強度の面から望ましい。誘電体の混合物を用いる場合には、バルク密 度として上述の一般式(1)の理論密度を用いる。
保護層の厚さは、一般的に、通常、 lnm以上 500nm以下である。 lnm以上とする ことで、基板や記録層の変形防止効果を十分確保することができる。そして、保護層 としての役目を十分果たすことができる。また、保護層の膜厚を 500nm以下とすれば 、保護層としての役目を十分果たしつつ、保護層自体の内部応力や基板との弾性特 性の差等が顕著になって、クラックが発生すると 、うことを防止することができる。
[0088] 特に、基板と記録層の間に保護層(下部保護層と称することがある)を設ける場合、 下部保護層は、熱による基板変形を抑制する必要がある。このため、下部保護層の 厚さは通常 lnm以上、好ましくは 5nm以上、特に好ましくは 10nm以上である。この ようにすれば、繰り返し記録中の微視的な基板変形の蓄積が抑制される。さらに、上 記膜厚範囲とすれば、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなるということがなくな る。
[0089] 一方、下部保護層の厚みは、成膜に要する時間の関係から、好ましくは、 200nm 以下、より好ましくは、 150nm以下、さらに好ましくは、 lOOnm以下である。このよう にすれば、記録層平面で見た基板の溝形状が変わるということがなくなる。即ち、溝 の深さや幅が、基板表面で意図した形状より小さくなつたりする現象が起こりに《な る。
記録層に対して基板とは反対側に保護層(上部保護層と称することがある)を設け る場合、上部保護層の膜厚は、記録層の変形抑制のために、通常、 lnm以上、好ま しくは、 5nm以上、特に好ましくは、 10nm以上である。また、上部保護層膜厚は、好 ましくは、 200nm以下、より好ましくは、 150nm以下、さら〖こ好ましくは、 lOOnm以下 、特に好ましくは、 50nm以下である。上部保護層膜厚を上記範囲とすれば、繰り返 し記録に伴って発生する上部保護層内部の微視的な塑性変形の蓄積を防止し、再 生光の散乱によるノイズ上昇を抑制することができる。
[0090] 尚、記録層及び保護層の厚みは、機械的強度、信頼性の面力もの制限の他に、多 層構成に伴う干渉効果も考慮して設定される。つまり、記録層及び保護層の厚みは、 レーザー光の吸収効率がよぐ記録信号の振幅 (記録状態と未記録状態のコントラス ト)が大きくなるように選ばれる。
[0091] (4)反射層
光記録媒体においては、さらに反射層を設けることができる。反射層の設けられる 位置は、通常再生光の入射方向に依存する。つまり、反射層は、入射側に対して記 録層の反対側に設けられる。例えば、基板側から再生光を入射する場合は、反射層 は、基板に対して記録層の反対側に設けられるのが通常である。一方、例えば、記 録層側から再生光を入射する場合は、反射層は、記録層と基板との間に設けられる のが通常である。
反射層に使用する材料は、反射率の大きい物質が好ましい。反射層に使用する材 料は、特に放熱効果も期待できる Au、 Agまたは A1等の金属が好ましい。反射層の 放熱性は、通常、膜厚と熱伝導率で決まる。熱伝導率はこれら金属ではほぼ体積抵 抗率に比例するため、反射層の放熱性能は、面積抵抗率で表すことができる。面積 抵抗率は、通常、 0. 05 ΩΖ口以上、好ましくは、 0. 1 ΩΖ口以上、一方、通常、 0. 6 ΩΖ口以下、好ましくは、 0. 5 ΩΖ口以下とする。
[0092] これは、特に放熱性が高いことを保証するものである。上記のような反射層を用いる ことは、非晶質マーク形成において非晶質化と再結晶化の競合が顕著である場合に 、再結晶化をある程度抑制するために必要なことである。反射層自体の熱伝導度制 御や、而腐蝕性の改善のために、上記の金属に Ta、 Ti、 Cr、 Mo、 Mg、 V、 Nb、 Zr 、 Si等を少量加えてもよい。添加量は、通常、 0. 01原子%以上 20原子%以下であ る。 Ta及び Tiの少なくとも一方を 15原子%以下含有するアルミニウム合金 (特に、 A1
Ta (0≤α≤0. 15)なる合金)は、耐腐蝕性に優れているため、光記録媒体の 信頼性を向上させる上で特に好ましい反射層材料である。
あるいは、 Agに、 Mg、 Ti、 Au、 Cu、 Pd、 Pt、 Zn、 Cr、 Si、 Ge、希土類元素のいず れか一種の添加元素を含有する Ag合金も好ましい。特に、上記添加元素を 0. 01原 子%以上 10原子%以下含む Ag合金は、反射率、熱伝導率が高ぐ耐熱性も優れて
いて好ましい。
尚、上部保護層の膜厚を 40nm以上 50nm以下とする場合には、反射層を高熱伝 導率にするため、上記添加元素を 2原子%以下とするのが好ましい。
[0093] 反射層の材料は、特に好ましくは Agを主成分とする。反射層の材料は、最も好まし くは純 Agとする。 Agを主成分とすることが好ましい理由は以下のとおりである。即ち、 長期保存した記録マークを再度記録すると、保存直後の第一回目の記録だけ、相変 化記録層の再結晶化速度が速くなる現象が発生する場合がある。このような現象が 発生する理由は不明である力 この保存直後における記録層の再結晶化速度の増 加により、保存直後の第一回目の記録で形成した非晶質マークの大きさが所望する マークの大きさよりも小さくなるためではないかと推測される。したがって、このような 現象が発生する場合には、反射層に放熱性が非常に高い Agを用いて記録層の冷 却速度を上げるようにする。このようにすれば、保存直後における第一回目の記録時 の記録層の再結晶化が抑制され、非晶質マークの大きさが所望の大きさに保たれる ようになる。
[0094] 反射層の膜厚は、透過光がなく完全に入射光を反射させるために、通常 lOnm以 上とするが、 20nm以上とすることが好ましぐ 40nm以上とすることがより好ましい。ま た、反射層の膜厚があまりに厚すぎても、放熱効果に変化はなくいたずらに生産性を 悪くし、また、クラックが発生しやすくなる。このため、反射層の膜厚は、通常は 500η m以下とする力 400nm以下とすることが好ましぐ 300nm以下とすることがより好ま しい。
[0095] 尚、純 Agまたは Agを主成分とする反射層を、硫黄を含む ZnS等を含む保護層と 接して設ける場合には、 Agの硫黄との反応による腐食を防ぐために、通常、硫黄を 含まない界面層を設ける。界面層は、反射層として機能するような材料であることが 好ましい。界面層の材料としては、 Ta、 Nbを挙げることができる。また界面層の膜厚 は、通常 lnm以上とする。一方、界面層の膜厚は、通常 20nm以下、好ましくは 10η m以下とする。
記録層、保護層及び反射層は、通常スパッタリング法等によって形成される。記録 層用ターゲット、保護層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同
一真空チャンバ一内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸ィ匕 や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
[0096] (5)保護コート層
光記録媒体の最表面側には、空気との直接接触を防いだり、ごみとの接触による傷 を防ぐため、紫外線硬化榭脂ゃ熱硬化型榭脂からなる保護コート層を設けることが好 ましい。保護コート層は通常 1 IX m力も数百 mの厚さである。また、硬度の高い誘電 体保護層をさらに設けたり、その上にさらに榭脂層を設けることもできる。
実施例
[0097] 以下に実施例を示して、本実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本実施の 形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(基本例)
トラックピッチ 0. で、厚さ 0. 6mmのポリカーボネート榭脂基板を射出成形 によって形成した。溝幅は約 0. 31 μ m、溝深さは約 28nmとした。溝形状は、いずれ も波長 441. 6nmの He— Cdレーザー光を用いた U溝近似の光学回折法で求めた。 続いて、ポリカーボネート榭脂基板上に、厚さ 70nmの (ZnS) (SiO ) 保護層、厚
80 2 20 さ 13nmの Ge ln Sb Sn Te (Ge In Sn (Sb Te ) )記録層、厚さ 14nm
4 11 52 22 11 4 11 22 83 17 63 の(ZnS) (SiO ) 保護層、厚さ 2nmの Ta界面層、厚さ 200nmの Ag反射層、厚さ
80 2 20
約 4 mの紫外線硬化榭脂層をこの順に形成した。 Ta界面層は、 Ag反射層中への Sの拡散を防ぐための界面層である。各層の成膜は、ポリカーボネート榭脂基板上に 、真空を解除することなぐ順にスパッタリング法によって積層した。但し、紫外線硬化 榭脂層はスピンコート法によって塗布した。その後、未成膜の同様の厚さ 0. 6mmの ポリカーボネート榭脂基板を、接着剤を介して、前述した記録層面が内側になるよう に貼り合せ、相変化型光記録媒体 (以下、単にディスクと記す)を作製した。
[0098] 各層の膜厚は成膜レートを測定した後、スパッタ成膜時間によって制御した。記録 層組成は、蛍光 X線法による各元素の蛍光強度を、別途化学分析 (原子吸光分析) によって求めた絶対組成によって校正した値を用いた。
次に、初期結晶化を行なった。初期結晶化は、波長 810nm、長軸約 75 mZ短 軸約 1 μ mに集光した長楕円形状、パワー 1500mW、のレーザー光を用いた。そし
て、このレーザー光を、長軸が上記案内溝に垂直になるようにして、 24mZsで回転 させたディスクに照射した。そして、 1回転あたり送り量 50 mで半径方向にレーザー 光を連続的に移動させることにより、初期結晶化をおこなった。
[0099] 記録再生評価は、パルステック株式会社製 DDU 1000テスタ(波長約 650nm、 N A=0. 65、スポット形状は 1/e2強度で 0. 86 mの円形)を用いた。 DVDの標準 線速度 3. 49mZsを 1倍速とし、 4倍速以上でのオーバーライト特性を評価した。 各線速度におけるデータの基準クロック周期は、 1倍速におけるデータの基準クロ ック周期 38. 2nsecに対して各線速度で反比例させたものとした。
再生は特に断わらない限り 1倍速で行った。 DDU1000からの出力信号を 5— 20k Hzにカットオフのある高周波通過フィルタを通した後、タイムインターバルアナライザ 一 (横河電機株式会社製)でジッタを測定した。再生パワー Prは 0. 6mWとした。 記録パルス分割方法を制御するための論理レベルの生成は、任意信号発生器 (A WG710、ソニーテクトロニクス株式会社製)を用いた。この任意信号発生器から、 EC Lレベルの論理信号をゲート信号として、このゲート信号を上記テスターのレーザード ライバーに入力した。
[0100] (実施例 1)
基本例にお 、て調製したディスクに、線速度を 10倍速とし EFM +ランダムデータ を 10回オーバーライト記録した後、記録データのデータ ·ッ一'クロック ·ジッタ(Data to clock jitter,以下では、基準クロック周期 Tで規格化し%値で表したものを単 にジッタ、 jitter、と称する。)の記録パワー Pw依存性を測定した。各マーク長記録用 のパルス列の設定を表 1に示す。
[0102] マーク長によってはパルス列の照射タイミングを所定の時間だけずらし、この時間を 表 1中の「遅延時間」の欄に記した。数値はクロック周期 Τで規格ィ匕した。照射タイミン グを遅らせる場合を + (プラス)、早める場合を一 (マイナス)と定義した。遅延時間を 設けることにより形成されたマークは、理想的な EFM +ランダム信号に近づく。この ため、ジッタが良好になる。バイアスパワー Pbは 0. 5mWとした。マーク間部(表 1に 記載した以外の部分)には 6. 2mWの消去パワー(Pe)を照射した。データ ·ツー.ク ロック ·ジッタの記録パワー Pw依存性の測定結果を図 1に示す。
図 1に示した結果から、記録パワー Pwが 22mW— 23mWで 8. 5%のジッタ値が得 られており、充分に実用化を狙える特性であることが分かる。
[0103] (実施例 2)
基本例にお 、て作製したディスクに、線速度を 4倍速とし EFM +ランダムデータを 10回オーバーライト記録した後、記録データのデータ ·ッ一'クロック ·ジッタの記録パ ヮー Pw依存性を測定した。各マーク長記録用のパルス列の設定を表 2に示す。
[0105] 消去パワー Peは 6mW、バイアスパワー Pbは 0. 5mWとした。データ'ッ一'クロック •ジッタの記録パワー Pw依存性を測定した結果を図 1に示す。図 1に示した結果から 、 21mW— 22mWで 9. 4%のジッタ値が得られており、実用化を狙える特性であると いえる。し力しながら、 4倍速記録でのデータ'ツー 'クロック'ジッタは、 10倍速記録 時のそれよりも多少悪い値となった。フォーカス、トラッキングサーボ等の特性は低線 速の方が有利と思われることを考えると、ジッタ値が改善される可能性はあるように思 われる。
そこで最適記録パワー 22mWにおける記録信号の各マーク長それぞれについて のマーク長ジッタを測定した。マーク長ジッタの測定結果を表 3に示す。
[0106] [表 3] マーク長 マーク長ジッタ(%) パルス分割数: m
3T 13.9 1
4T 7.4 1
5T 15.4 2
6T 1 1.5 2
7T 10.2 2
8T 10.6 3
9T 9.3 3
1 0T 10.8 3
1 I T 7.8 4
1 4T 8.1 5
[0107] 表 3に示した結果から、明らかに、分割数 m= 2で最も短い 5Tマークのマーク長ジ ッタと、分割数 m= lで最も短い 3Tマークのマーク長ジッタと、が他のマーク長と比較 して不良であることがわかる。この短いマークでのジッタ特性の低下力 全体のジッタ を低下させている原因と思われる。尚、マーク長平均値の理想値力ものずれは、どの マーク長でも同程度に小さく合わせてある。
[0108] マーク長ジッタが不良な理由は、 5Tマーク、 3Tマークの記録条件では冷却速度が 充分ではなぐ記録層溶融後の再結晶化が激しすぎるからであると考えられる。なぜ なら、 5Tマークと 6Tマークの記録パルス列の違いは ;3 の大きさだけであり、 β を大 きくして冷却速度を速めればマーク長ジッタは良くなることが示されてレ、るからである( もちろんこの場合、 5Τマークは長くなりすぎてしまう)。 3Τについても先頭記録パルス ひ は 4Τを除く他のマーク長と同じであり、マーク長ジッタが悪い原因はこの部分の 冷却速度が遅いためと考えられる。
[0109] そこで、冷却速度を速めるために表 4に示すパルス列を用いた。そして、線速度を 4 倍速とし EFM +ランダムデータを 10回オーバーライト記録し、再度、マーク長ジッタ を測定した。記録パワー Pwは 22mW、消去パワー Peは 6mW、バイアスパワー Pb = 0. 5mWとした。記録ノ ルス列の表 2からの変更点は、 5Tと 3Tについて α を小さく し、 β を大きくしたことのみである。このときマーク長平均値は変化しないように調整 した。マーク長ジッタの測定結果を表 5に示す。
[0110] [表 4]
[0112] 表 5に示した結果から、冷却速度は速くなつていると思われるにもかかわらず、 5Tと 3Tのジッタはあまり改善されていないことが分かる。この原因は、 (X を小さくしたこと によりマーク形成部の温度が充分に上がっていないためと考えられる。
[0113] (実施例 3)
実施例 2において、冷却速度は速くなつていると思われるにもかかわらず、 5Tと 3T のジッタはあまり改善されない原因は、 OC を小さくしたことによりマーク形成部の温度 が充分に上がらないためと考えられる。そこで、この仮説を裏付けるため以下の測定 を行った。表 4に示すパルス列の設定に従い、 Pw= 22mW、 Pe = 6mW、 Pb = 0. 5 mWで、線速度を 4倍速とし EFM +ランダムデータを 10回オーバーライト記録した部 分に、さらに 5Tのトーン信号 (マーク長、マーク間長ともに 5T狙いの信号)を、表 4の 5Tのパルス列で記録パワー Pwを変えて(20— 28mW) 1回オーバーライトし、マー ク長ジッタを測定した。最後の記録において、オーバーライトする信号をトーン信号と した理由は、記録パワーを変えることによって他の長さのマークが変化する効果を除 くためである。マーク長ジッタの測定を 3Tについても同様に行った。測定結果を図 2 に示す。
[0114] 図 2に示す結果から、マーク長ジッタは記録パワーを上げることにより大きく改善さ れることが分かる。従って、表 4の 5Tと 3Tのパルス列は、記録パワー 22mWではパヮ 一不足であると判断できる。
以上の結果は、 5Tと 3T以外のマーク長については 22mWとし、 5Tと 3Tについて のみ記録パワーを上げれば、全体のデータ ·ッ一'クロック ·ジッタを改善できると!、う ことを強く示唆している。但し、 5Tと 3Tについては記録パワーを上げることによって 変わるマーク長の微調整(α、 βの微調整)をする必要はあるであろう。
以上、本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離 れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。 産業上の利用可能性
[0115] 本発明によれば、高データ転送レート可能な媒体に特定の記録方法でオーバーラ イトを行うことにより、書き換えが良好にできるようになる。特に、高転送レートが可能 な光記録媒体に比較的低線速度での記録を行う場合に良好なオーバーライト記録 を実現できる。
尚、本出願は、 2003年 10月 17日付けで出願された日本出願 (特願 2003— 3580 54)に基づいており、その全体が引用により援用される。
図面の簡単な説明
[0116] [図 1]実施例 1及び実施例 2のデータ ·ツー ·クロック ·ジッタの記録パワー Pw依存性 の測定結果を示す図である。
[図 2]実施例 3のマーク長ジッタの記録パワー Pw依存性の測定結果を示す図である
[図 3]—般的な光記録方法におけるパルス分割方法を説明する図である。図 3 (a)は 、形成する nTの記録長の記録マークのタイミングチャートを示す。図 3 (b)は、 ηΤの 記録長の記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示 す。
[図 4]本実施の形態が適用される、長さの異なる複数の nTマークを同一の分割数 m のパルス列で記録する光記録方法を説明するための図である。図 4 (a)は、 8Tマー クを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。図 4 (b)は、 9T マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。そして、図 4 (c)は、 10Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示 す。
[図 5]本実施の形態が適用される光記録方法を実施するための光記録装置の一例を 示す図である。
符号の説明
20Ο··ηΤの記録長の記録マークのタイミングチャート、 201〜ηΤの記録長の記録マ ークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャート、 2000…光記録装 置、 2001•••I/F, 2002···変調回路、 2003···分割記録パルス生成制御回路、 200 4-"LDドライバ、 2005---LD, 2006···ビームスプリッタ、 2007· "光ディスク、 2008 •••PD、 2009···対物レンズ、 2010···再生回路、 2011···復調回路、 2012···制御マ イコン、 2013···スピンドノレモーター