明 細 書 置換ヒドロキシピリジン化合物のドラッグデリバリーシステム
および置換ヒ ドロキシピリジン化合物の抱合体 技術分野
本発明は置換ヒドロキシピリジン化合物のドラッグデリバリーシステム、 さら に詳しくは、 I V型ホスホジエステラーゼ(以下、 PDE I Vと記載することも ある)阻害作用を有し、 喘息、 慢性閉塞性呼吸器疾患、 気道炎症性疾患等の治療 剤として有用な置換ヒドロキシピリジン化合物の副作用を抑え、 標的組織への送 達を促進するためのドラッグデリバリーシステムに関する。 本発明は、 また、 該 ドラッグデリバリーシステムに利用される新規な置換ヒ ドロキシピリジン化合物 の抱合体に関する。 背景技術
PDE I Vは気管支平滑筋、 好酸球をはじめとする炎症性細胞に広く分布し、 サイクリック AMP (以下、 c AMPと記載することもある)の分解を触媒する酵 素である。 PDE I Vを阻害することは、 気管支平滑筋の収縮を抑制し、 炎症 性細胞の活性化を抑制することにつながることが広く認められている [Current Medicinal Chemistry; 2卷, 561-572頁(1995年)]。
PDE I V阻害作用を有する化合物としては、 ロリプラム等の多くの化合物 が知られており(US 4193926号、 WO 90ノ 12961号、 WO 93 /19749号)。 さらに、 WO 00/20391号には、 下記式(A)で示され る 2, 3—ジ置換ピリジン誘導体が PDE I V阻害作用を有することが記載され ている。
o- cHsif 1
(A)
(式中、 Aは酸素原子、 硫黄原子、 C H R 1または N R 2 ; R 1および R 2は水素原 子または低級アルキル基; X 1および X 2は同一または異なって、 水素原子、 ノ、 ロゲン原子、 ニトロ基、 シァノ基、 ヒドロキシ基、 低級アルキル基、 ヒドロキシ 置換低級アルキル基等; Y 1は水素原子または低級アルキル基; Z 1および Z 2は 同一または異なって、 水素原子、 ハロゲン原子、 シァノ基、 ヒドロキシ基、 低級 アルキル基、 ヒドロキシ置換低級アルキル基等; nは 2〜4の整数を意味する) しかるに、 これら P D E I V阻害作用を有する化合物の多くは、 嘔吐中枢を 刺激し、 そのため嘔吐等の副作用があることが知られている。 従って、 そのよう な副作用のないまたは少なレ、薬物の開発が望まれている。
一方、 薬物の副作用を抑え、 より効率的に薬物の効果を発揮させるために、 薬 物を目的の組織や臓器、 あるいは局所へ集中的に送達させるいわゆるドラッグデ リバリ一システムの研究が盛んに行われている。 このドラッグデリバリーシステ ムの研究は、 薬物の標的部所への送達を図るターゲッティングのほかに、 生体に おける薬物吸収の改善や生体内での薬物放出の制御等について行われている。 本発明者らは、 P D E I V阻害作用を有する化合物の副作用をできるだけ抑 え、 所望の効果を充分に発揮しうるドラッグデリバリーシステムを見出すべく、 一連の P D E I V阻害化合物について経口投与における薬物動態を調べ、 種々 検討を重ねるうちに、 ある種の置換ヒドロキシピリジン化合物が、 経口投与した 場合に生体内吸収過程である種の抱合体に変化したのち、 その薬効が望まれる標 的組織に集中的に送達され、 その薬理活性を発揮し得ることを見出した。
一般的に、 経口投与された薬物は消化管で吸収され、 主として肝臓で薬物代謝 酵素により抱合等の化学変化を受けて、 その抱合体は、 薬効に寄与することなく、 尿中および胆汁中に***されると考えられている [Mulder, G. J. (1990年) Conjugation Reactions in Drug Metabol ism, London: Taylor and Francis.」。
しかるに、 本発明者らの研究によれば、 特定の置換ヒドロキシピリジン化合物 の抱合体はそれ自体で薬理活性を有すると共に、 所望の臓器 (肺)に集中的に送達 され、 その薬理活性を発揮し得ること、 さらに該 内で徐々に元のヒ ドロキシ ピリジン化合物に変換されて、 さらに薬理作用を発揮し得るため、 持続的に所望 の効果が得られることを知り、 本発明を完成するに至った。 発明の開示
すなわち、 本発明は、
i)置換ヒドロキシピリジン化合物を経口投与し、
ii)生体内吸収過程で該置換ヒ ドロキシピリジン化合物を抱合体に変換させ、 iii)該抱合体を標的組織に送達させる
ことからなる置換ヒドロキシピリジン化合物のドラッグデリバリーシステムを提 供するものである。
本発明のドラッグデリバリ一システムでは、 さらに、 標的組織に送達された抱 合体が、 その薬効を奏すると共に、 徐々に元の置換ヒドロキシピリジン化合物に 変換されて、 さらに P D E I V阻害活性を発揮するため、 薬理効果をより長期 的に持続させ得ることができる。
本発明のドラッグデリバリーシステムにおける置換ヒドロキシピリジン化合物 としては、 下記式(I ) :
(式中、 Aは酸素原子、 硫黄原子、 C H R 1または N R 2を意味し、 R 1および R 2 は水素原子または低級アルキル基を意味し、
X 1および X 2は同一または異なって、 水素原子、 ハロゲン原子、 ニトロ基、 シ ァノ基、 低級アルキル基、 ノヽロゲノ低級アルキル基、 低級アルコキシ基、 シクロ 低級アルコキシ基、 ハロゲノ低級アルコキシ基、 低級アルコキシ置換低級アルコ
キシ基、 低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基、 低級アルコキシカル ボニル基、 モノ若しくはジ低級アルキルアミノカルボニル基、 低級ァシル基、 低 級ァシルォキシ基、 アミノ基、 低級ァシルァミノ基または力ルバモイル基を意味 し、
Y 1は水素原子または低級アルキル基を意味し、
Z 1は、 水素原子、 ハロゲン原子、 シァノ基、 低級アルキル基、 ハロゲノ低級ァ ルキル基、 低級アルコキシ基、 シクロ低級アルコキシ基、 ハロゲノ低級アルコキ シ基、 低級アルコキシ置換低級アルコキシ基、 低級アルコキシカルボニル置換低 級アルコキシ基、 低級アルコキシカルボニル基、 モノ若しくはジ低級アルキルァ ミノカルボニル基、 低級ァシルォキシ基、 アミノ基、 モノ若しくはジ低級アルキ ノレアミノ基、 低級ァシルァミノ基、 力ルバモイル基、 低級アルコキシカルボニル アミノ基、 低級アルキルスルホニルァミノ基または力ルバモイル基を意味し、 nは 2〜 4の整数を意味する)
で示される化合物およびそれらの生理的に許容される塩が挙げられる。
本発明のドラッグデリバリーシステムにおける好ましい化合物としては、 上記 式(I )において、 Aが酸素原子または硫黄原子、 X 1および X 2が同一または異 なって、 水素原子、 ハロゲン原子、 シァノ基、 低級アルキル基、 低級アルコキシ 基、 低級アルコキシカルボニル基、 モノ若しくはジ低級アルキルァミノカルボ二 ル基または低級アシノレ基、 Y 1が水素原子、 Z 1が水素原子、 ハロゲン原子、 シ ァノ基、 低級アルキル基、 低級アルコキシ基、 低級アルコキシカルボニル基、 モ ノ若しくはジ低級アルキルァミノカルボ二ル基またはアミノ基、 nが 2〜 4の整 数である化合物である。
さらに好ましい化合物は、 Aが酸素原子、 X 1および X 2の一方が水素原子で、 他方がハロゲン原子、 Y 1が水素原子、 Z 1が水素原子、 nが 3である化合物で ある。
特に好ましい化合物としては、 下記式( I A) :
で示される化合物である。
本明細書において、 「式(I )で示される化合物の抱合体」 とは式(I )で示され る化合物にダルク口ン酸残基または硫酸残基が結合した化合物を意味し、 具体的 には式( I )で示される化合物の、 ヒドロキシピリジン環におけるヒドロキシ基の 水素原子がダルク口ン酸残基で置換された化合物または硫酸残基で置換された化 合物、 および /またはヒドロキシピリジン環における窒素原子にグルクロン酸残 基が結合した化合物を意味し、 式( I )で示される化合物または他の化合物を原料 として、 化学的に変換を行うことにより製造して得た化合物のみならず、 式(I ) で示される化合物が生体内で薬物代謝酵素により抱合されて生成した化合物も含 む。
また、 本明細書において 「グルクロン酸残基」 とはグルクロン酸の 1位炭素で 結合した基を意味し、 「硫酸残基」 とは硫酸の硫黄原子で結合した基を意味する。
しかして、 本発明のドラッグデリバリーシステムにおいて、 生体内吸収過程で 形成される式(I )の抱合体としては、 下記式(I I ) :
(式中、 A、 X Y 1および nは前記に同じ、 Rは oz または
VJ
を意味し、 Z 1は前記に同じ、 Zはグノレクロン酸残基または硫酸残
基を意味し、 Zaはグルクロン酸残基を意味する)。 上記式(I I)で示される抱合体は、 生体外で合成することもでき、 本発明にお ける抱合体にはそれら合成抱合体も含む。
本発明における特に好適な抱合体は、 下記式(I I A) :
を意味し、 Zはグルクロン酸残基また は硫酸残基を意味し、 Z
aはダルク口ン酸残基を意味する)
で示される化合物またはその生理的に許容される塩である。
本発明における抱合体の特に好ましい具体例としては、 次の化合物またはその 生理的に許容される塩が挙げられる。
硫酸水素 4 _ [3_[2_(3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロ ピル]一 3—ピリジル、
1— O— [4— [3—[2_( 3—クロロフエノキシ)一3—ピリジルォキシ]プロ ピノレ]一 3—ピリジノレ]— β—D—グノレコピランゥロン酸、
1ー[4— [3— [2—(3—クロロフエノキシ)一3—ピリジルォキシ]プロピ ル] - 3—ォキシド一 1一ピリジニォ]― 1—デォキシー β— D—ダルコピランゥ 口ン酸。
本明細書において、 生理的に許容される塩とは生理的に許容される酸付加塩、 アルカリ金属塩、 アルカリ土類金属塩または有機塩基との塩を意味する。 好まし くは、 アルカリ金属塩、 アルカリ土類金属塩または有機塩基との塩である。 具体 的には、 酸付加塩としては、 例えば塩酸塩、 臭化水素酸塩、 ョゥ化水素酸塩、 硫 酸塩、 リン酸塩等の無機酸塩およびシユウ酸塩、 マレイン酸塩、 フマル酸塩、 マ ロン酸塩、 乳酸塩、 リンゴ酸塩、 クェン酸塩、 酒石酸塩、 安息香酸塩、 メタンス
ルホン酸塩、 p—トルエンスルホン酸塩、 ダルコン酸塩等の有機酸塩が挙げられ る。 アルカリ金属塩としては、 例えば、 ナトリゥム塩、 力リゥム塩等の無機アル カリ塩が挙げられ、 アルカリ土類金属塩としては、 例えば、 カルシウム塩、 マグ ネシゥム塩が挙げられ、 また、 有機塩基との塩としては、 例えば、 アンモニア、 メチルァミン、 トリェチルァミン、 トリブチルァミン、 ジィソプロピルェチルァ ミン、 N—メチルモルホリン、 ジシクロへキシルァミンとの塩が挙げられる。 本明細書においては、 式(I )で示される化合物の抱合体を、 本発明の抱合体と 記載することもある。
式( I )で示される化合物の抱合体またはその生理的に許容される塩は、 水和物 および Zまたは溶媒和物の形で存在することもあるので、 これらの水和物、 溶媒 和物もまた本発明の化合物に包含される。
また、 式( I )で示される化合物の抱合体の中には不斉炭素原子を有するものが あるが、 これらの立体異性体およびそれらの混合物もまた本発明の化合物に包含 される。
式(I )で示される化合物は例えば、 WO O 0 2 0 3 9 1号公報に記載の方法 により、 製造することができる。
前述したように、 一般的に抱合体は、 薬効に寄与することなく***されると考 えられているが、 本発明のドラッグデリバリーシステムにおける抱合体は、 意外 にもそれ自体薬理活性を有しているとともに、 尿中等に速やかに***されること なく所望の臓器に送達されるものであって、 きわめて特異的な抱合体である。 すなわち、 本発明における式(I )の化合物のうち、 特に好ましい化合物の 1つ である式(I A)の化合物を標識し、 これを用いて薬物動態試験を実施して、 式 ( I A)の化合物とその抱合体の各種組織への分布を検討したところ、 意外にも、 P D E I V阻害薬の標的組織の一つである肺に、 式(I I A)で示される抱合体が 持続的に相当量存在していることを究明した。 上述したように、 抱合体は一般に ***されやすい性質を有すると考えられている力、 本発明の抱合体は標的組織に 大量に分布し、 しかも持続的に存在する特徴を有しており、 この点においても本 発明の化合物は特殊な抱合体である。
さらに、 本発明者らの研究によれば、 本発明における抱合体は脳血管関門を通
過し難く、 そのため脳への分布が極めて少量であることが判明し、 それによつて 望ましくない副作用が顕著に抑えられる特徴を有する。 すなわち、 一般に、 P D E I V阻害剤の多くは脳血管関門を通過し易く、 嘔吐中枢に作用するため、 嘔 吐等の副作用が認められているが、 本発明の抱合体はそのような副作用である嘔 吐誘発作用が極めて弱いという特徴も有している。 この特徴はまた、 式(I )で示 される化合物を生体内に投与した場合に、 式( I )で示される化合物が抱合体に速 やかに変換されることにより、 脳への分布が著しく抑制され、 結果として、 式 ( I )で示される化合物が、 P D E I V阻害剤に一般に広く認められている副作用 である、 嘔吐誘発作用が極めて弱いという特徴を有することにつながると説明で きる。
上述のように、 本発明のドラッグデリバリ一システムによれば、 式(I )の化合 物の抱合体が標的組織に相当量存在し、 かつ副作用に関与する組織には極めて少 量しか分布しないという特徴を有している。 従って、 本発明の抱合体をターゲッ ティング医薬として利用することもできる。 本発明の抱合体からなる医薬は、 標 的組織に特徴的に分布して効率的に薬効を発現することができ、 かつ副作用を回 避することができる、 優れたタ一ゲッティング医薬である。
本発明者らは、 さらに、 本発明の抱合体が標的組織の一つである肺において、 式(I )で示される化合物へ脱抱合されて、 式(I )で示される化合物 (以下、 未変 化体と記載することもある)の供給源となっていることを究明した。 し力 して、 本発明の抱合体は標的組織に分布し、 標的組織において徐々に脱抱合されて未変 化体を持続的に供給するという特徴を有しており、 持続性医薬として利用できる 本発明の抱合体のこの特性により、 本発明のドラッグデリバリ一システムでは、 式( I )の化合物の薬理活性の持続時間が延長されるという効果がある。
さらに本発明の抱合体は、 式( I )で示される化合物と比較して溶解度が高レヽと いう特徴を有しているので、 例えば注射剤,デポ剤等の液体製剤、 吸入剤等の経 肺投与製剤、 点鼻剤等の経鼻投与製剤の製造が容易であるという利点を有してい る。
本発明の代表的な抱合体化合物 [式(I I A)の化合物]を用いて、 以下にその薬 理試験結果および薬理作用について説明する。
試験例 1 : PDE I Vの阻害活性試験
モルモット P D E I V阻害活性の試験はモルモット腹腔より分離した好酸球 を用いる方法(Souness, J.E.ら、 Biochetn. Pharmacol.42卷, 937頁(1991年))に 基づいて実施した。 すなわち、 5 X 107個の細胞に 21 OmLのホモゲナイジ ング ·バッファー(組成: 2 OmMトリス—塩酸バッファー(p H7. 5)、 2 mM 塩化マグネシウム、 1 mMジチオスレィロール、 5 mMエチレンジァミン四酢 酸 'ジナトリウム、 25 OmMシュクロース、 20μΜ p—トシルー 1一リジン
—クロロメチルケトン、 10 ju gZmLロイぺプチン)を加え、 遠心する。 残渣 に 1 OmLのソルビライジング ·バッファー(上記のホモゲナイジング■ノ ッフ ァ一にデォキシコール酸ナトリウム(終濃度 0. 5%)、 塩化ナトリウム(終濃度 1 0 OmM)を添加)を加え、 再遠心する。 上清をモノレカツト I I (日本ミリポアリ ミテツド社製)を用いて限外濾過し、 膜上の画分を 1 OmLのホモゲナイジン グ ·バッファ一の添加により回収し、 酵素標本とする。 モルモット P D E IV 阻害活性は、 基質である cAM P (ナカライテスク社製)を含有する溶媒(4 Om Mトリス塩酸緩衝液)に上述酵素標本を添加し、 30分後に c AM Pの加水分解 率を測定する方法において、 酵素を作用させる前に被験ィヒ合物を添加した場合の 基質加水分解率を、 溶媒のみを添加した対照群の基質加水分解率と比較して算出 することにより求めた。 また被験化合物の濃度 ·作用曲線より、 50%阻害濃度 (I C5。)(nM)を求めた。
ヒ ト PDE I V阻害活性の試験は、 健常者末梢血から、 比重勾配遠心法と C D 16マイク口ビーズを用レヽた MAC S (magnetic cell separation system)ネ ガティブ ·デリーション(negative deletion)法により分離した好酸球を用いて、 上記モルモット好酸球を用いる方法に準じて実施した。 それらの結果を表 1に示 す。
表 1 PDE I V阻害作用
一般に抱合体は薬効を有さないものであるにもかかわらず、 表 1から明らかな ように、 本発明の抱合体( I I A)は、 モルモット好酸球およびヒト好酸球より分 離精製した PDE I Vに対し、 強い阻害活性が認められた。
試験例 2 : in vitro抗原誘発気管支収縮抑制作用
ハートレイ(Hartley)系雄性モルモットを卵白アルブミン(シグマ社製) 10m gを腹腔内および皮下投与することにより能動的に感作した。 数週間後、 気管を 摘出し、 常法に従い、 ジグザグ標本を作製した。 標本は 37°Cに保温したマグヌ ス管に 1 gの張力を負荷して懸垂し、 FDピックアップおよびひずみ圧力アンプ を介し、 ペンレコーダーに接続した。 標本は 0. 5—1時間の安定化の後、 溶媒 (DMSO—ポリエチレングリコールを含むクレプス ·へンゼライト緩衝液)に被 験ィ匕合物を溶解させた溶液を添加して、 15分処置した。 さらに卵白アルブミン 1 X 10_ 5 g/Lを添加して収縮を惹起し、 レコーダーに記録された収縮曲 線より、 初期値に対する収縮高をノギスで計測し、 被験化合物を含まない溶媒の み添カ卩した対照群に対する被験化合物添加群の抑制率を算定し、 収縮抑制作用と した。 その結果を表 2に示す。
表 2 抗原誘発気管支収縮抑制作用
表 2から明らかなように、 本発明の抱合体(I Ι Α)は、 in vitroモルモット抗 原誘発気道収縮に対し、 強い抑制作用を示した。
試験例 3 :炎症細胞内 c AMP上昇作用
健常者末梢血より試験例 1に記載の方法で好酸球を分離し、 1 0 6個の細胞浮 遊液に被験化合物を添加し、 2時間培養した。 そこへ、 イソプロテレノールを添 加し (終濃度 1 M)、 さらに 5分培養した。 トリクロ口酢酸 (終濃度 6 %)により 反応を終了させた後、 エーテルにより トリクロ口酢酸を除去後、 反応液中の c A M P量を E I A法により測定した。 被験化合物添加群の c AM P量を、 溶媒のみ を添加した対照群における細胞内 c AM P量からの増加量として、 上昇作用を表 した。
表 3 炎症細胞内 c AM P上昇作用
表 3から明らかなように、 本発明の抱合体(I I A)は、 ヒト好酸球において μ Μの濃度から c AM Ρ量上昇作用を示した。
試験例 4 :マウス抗原誘発気道炎症抑制作用
マウスに卵白アルブミン 8 μ gを 2回腹腔內投与し感作した。 最終感作一週間 後に卵白アルブミン 1 Ο Ο μ gを点鼻する事により気道炎症を誘発した。 卵白ァ ルブミン点鼻の 3日後に気管支肺胞洗浄(B A L )を行い、 洗浄液中の炎症細胞数 を計測した。 被験化合物は卵白アルブミン点鼻の 3 0分後、 1日後、 2 後の 3 回点鼻投与した。
被験化合物の抑制率(%)は溶媒のみ投与の対照群の B A L中細胞数と比較して 算出することにより求めた。 その結果を表 4に示す。
表 4 マウス抗原気道炎症抑制作用
表 4から明らかなように、 本発明の抱合体(I I A)は、 マウス抗原誘発気道炎 症作用に対し、 強い抑制作用を示した。
以上の薬理試験から明らかなように、 本発明の抱合体(I I A)は、 強い P D E I V阻害活性を有し、 かつ優れた気管支拡張作用、 炎症細胞内 cAMP上昇作用を示 した。 薬物動態試験
本発明の代表的化合物である式( I A)の化合物についての薬物動態試験結果お よびその特徴について説明する。
試験例 5 :モルモットにおける1 4 C標識化合物経口投与後の血漿、 肺、 気管中 濃度
( 1 )動物実験
被験動物としては、 卵白アルブミンで感作後、 4〜 5週間経過したハートレイ (Hartley)系雄性モルモット(SLC_Std、 7〜 8週齢)を用いた。 式( I A)で示され
る化合物の 3—クロロフエノキシ基が結合している炭素原子を14 Cで標識した 化合物 (以下、 標識化合物と記載することもある)の 0.5%トラガント懸濁液を 調製し、 1 OmgZ7.69MB q/k gの用量で、 モルモットに経口投与した。 投与後、 0.5、 2、 4時間にエーテル麻酔下、 心臓より全採血を行った後、 肺、 気管、 脳を採取した。 例数は各時点とも 3匹とした。
(2)生体試料の処理
血液は、 遠心分離後、 一定量の血漿を液体シンチレーシヨンバイアルに採取し、 シンチレーシヨンカクテル:クリアゾル一 I (ナカライテスタ社製)を加え、 放射 能測定に供した。 組織は、 湿重量を測定後、 その約 4〜5倍量の精製水を加えて グラスホモジナイザーを用いてホモジナイズした。 その一定量を液シンバイアル に採取し、 組織可溶化剤ソルェン— 350 (Packard Instrument社製)約 1 m Lを 添カ卩した。 可溶化後、 シンチレーシヨンカクテル:ハイォニックフロー(Packard Instrument社製)を加え、 放射能測定に供した。 残りの血漿および肺、 気管ホモ ジネートは凍結保存し、 代謝物の分析に供した。
(3)高速液体ク口マトグラフィー(H PLC)による代謝物の分析
(3— 1)血漿の前処理
一定量の血漿(1〜4mL)に対し 4倍容のメタノール ·ァセトニトリノレ(1: 1 )混液を加え、 振とう機で 5分間撹拌した後、 4 °C、 3, 000 rpmで 10分間 遠心分離した。 上清を回収後、 沈殿に再度同量のメタノール 'ァセトニトリル (1 : 1)混液を加え、 同様に振とう撹拌後、 遠心分離した。 この 2回分の除蛋白 上清を合わせて、 減圧下で乾固した。 これを少量の 0. 1%ギ酸に再溶解して、 HP LC分析の試料とした。
(3— 2)組織の前処理
一定量の肺または気管ホモジネート(肺: 2〜8mL、 気管: 1.5mL)に対 し 4倍容のメタノールを加え、 振とう機で 5分間撹拌した後、 4°C、 3, 000 rptnで 10分間遠心分離した。 上清を回収後、 沈殿に再度同量のメタノールを加 え、 同様に振とう撹拌後、 遠心分離した。 この 2回分の上清を合わせて、 減圧下 で濃縮した。 この濃縮液に対し 4倍容のメタノール'ァセトニトリル( 1: 1 )混 液を加え、 振とう後に遠心分離し、 この上清を減圧下で濃縮した。 さらにこの濃
縮液に対し 4倍容のァセトニトリルを加え、 振とう後に遠心分離し、 この上清を 減圧下で乾固した。 これを少量の 0.1%ギ酸に再溶解して、 H P L C分析の試料 とした。
(3_3)HPLC分析
HP L Cポンプは 600 E (Waters社製)を、 力ラムは CAPCELLPAK C18 UG- 120
5 /xm (資生堂製、 内径 4.6 X 250 mm)を 40°Cで使用した。 移動相は A液に 5 mMヘプタフルォロ酪酸水溶液を、 B液にァセトニトリルを用い、 流速 lmL /m i nで、 A液/ B液の割合を注入後 0— 20— 25分で 73/27— 63ノ 37-0/100とするグラジェントを用いた。
検出には UV検出器およびフロー型放射能検出器 FL0-0NE ]3 A- 515 (Packard
Instrument社製)を用いた。 放射能検出器において液体シンチレ一ターとしてゥ ルチマフロー Mを SmL/m i nで使用した。 また、 放射能検出器からの溶出液 を、フラクションコレクター
を用ぃて注入時から0. 5分 ごとに分画し、 必要に応じて各画分の放射能を測定した。 試料中放射能に占める 各放射能成分の割合は、 検出された各放射能成分のピーク面積(または放射能)の 総和に対する当該成分のピーク面積ほたは放射能)の比より算出した。
(4)放射能の測定
生体試料および H P L C溶出液は液体シンチレーシヨンカウンター Tri- Carb 2700TRまたは 2200CA (Packard Instrument社製)で測定した。
(5)データ処理
血漿、 組織中放射能濃度は、 放射能測定値を投与薬物の比放射能で除すること により、 式(IA)で示される化合物の当量濃度に換算した。 血漿、 組織中の未変 化体および抱合体の濃度は、 それぞれの試料中放射能濃度に HP LC分析により 得られた当該成分の試料中放射能に占める割合を乗じて算出し、 式(I A)で示さ れる化合物の当量濃度で表示した。 数^ ίは原則として、 3例の平均値土標準誤 差で示した。 その結果を表 5に示す。
(6)結果
表 5 組織中の濃度
N. D. :検出できず
*:硫酸水素 4— [3— [2— (3—クロロフエノキシ)一3—ピリジノレオキシ]プ 口ピル]一 3—ピリジル
** : 1 _0—[4一 [3_[2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ] プロピル]— 3—ピリジル]一 ]3— D—グルコピランゥロン酸
表 5から明らかなように、 式( I A)で示される化合物をモノレモットに経口投与 後、 血漿、 肺および気管中では、 対応する硫酸抱合体およびグルクロン酸抱合体 が未変化体より高い濃度で、 投与後 4時間においても持続して存在することが判
明した。 また、 未変化体の肺中濃度は、 血漿中濃度を大きく上回り、 標的組織に おいて抱合体から生成した未変化体が寄与しているものと考えられた。 さらに、 脳中放射能濃度は、 血漿中放射能濃度の 1 Z 10〜 1 Z 20以下であり、 脳へ移 行しにくいことが明らかになった。
試験例 6 :抱合体の肺における脱抱合反応試験
丄) in vitro^J^
モルモット肺を 3倍量のホモジナイズバッファー(組成: 50 mMトリス塩酸 緩衝液(pH7.4)、 154mM塩化カリウム、 2 mMエチレンジァミン四酢 酸 -二カリウム)でホモジナイズ後、 800 X gで 10分間遠心し上清を肺ホモ ジネートとした。 実施例 2で得られるダルク口ン酸抱合体の 3_クロロフエノキ シ基が結合している炭素原子を14 Cで標識した化合物 (終濃度 1. 25、 2. 5、 5、 10、 20および 30 μΜ)を肺ホモジネート(終濃度 lmgZmL)と 5 Om M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)中で 37°C、 10分間反応させた。 反応液に了 セトニトリノレ 1.5mLを添加し反応停止後、 3, 000 rpmで 10分間遠心分離 した。 上清を減圧下で乾固後、 HP LCの移動相に溶解して HP LC分析の試料 とした。
(2) HPLC分析
HP LCポンプは HP 1090 (Agilent Technologies社製)を、 カラムは CAPCELLPAK C18 UG-120 5 μ m (資生堂製、 内径 4.6X 250瞧)を 40でで 使用した。 移動相は A液に 1 OmMギ酸アンモニゥムを、 B液にァセトニトリノレ を用い、 流速 lmLZmi nで、 A液/ B液の割合を注入後 0— 25 _ 25. 5 -26-30分で 70/30-45/55-0/100-70/30-70/3 0とするグラジェントを用いた。 検出にはフロー型放射能検出器 FLO- ONE β A- 515 (Packard Instrument社製)を用いた。 検出された各放射能成分のピーク面積 の総和に対する未変化体のピーク面積の比より、 未変化体生成量を算出した。
(3)データ処理
未変化体生成量より脱抱合速度を算出し、 基質として用いた14 C標識ダルク口 ン酸抱合体濃度に対してプロットした。 非線形最小二乗法により Michael is- Menten式にフィッティングを行ない脱抱合クリアランスを算出した。
(4)結果
モルモット肺ホモジネートにおいてグルクロン酸抱合体は脱抱合され未変化体 へ変換された。 そのときの脱抱合クリァランスは 0.0332mL/m i n/m g proteinでめった。
以上の薬物動態試験から明らかなように、 本発明の抱合体は、 薬効の標的組織 に相当量存在し、 かつ副作用に関与する組織には極めて少量しか分布しないとい う特徴を有し、 さらに標的組織において脱抱合されて未変化体を持続的に供給す るという特徴を有している。
本宪明のドラッグデリパリ一システムで用いられる式( I )の化合物は、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 細粒剤、 粉剤などの経口投与用固形製剤または水溶液剤、 シロップ剤、 乳剤、 懸濁剤などの経口投与用液剤の形で経口投与される。 これら 経口投与用製剤は、 一般に経口製剤に用いられている賦形剤、 希釈剤などの製剤 用担体を用いて常法に従って製造される。 固形製剤では、 例えば乳糖、 白糖、 塩 化ナトリウム、 ブドウ糖、 尿素、 デンプン、 炭酸カルシウム、 カオリン、 結晶セ ルロース、 ケィ酸などの賦形剤、 アラビアゴム、 ゼラチン、 カルボキシメチルセ ルロース、 セラック、 メチルセルロース、 ポリビ-ルピロリ ドンなどの結合剤、 アルギン酸ナトリウム、 カンテン末、 ラミナラン末、 ポリオキシエチレンソルビ タン脂肪酸エステル類、 ラウリル硫酸ナトリウムなどの崩壊剤、 第四級アンモニ ゥム塩基、 ラウリノレ硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、 精製タルク、 ステアリン 酸塩、 ホウ酸末、 ポリエチレングリコールなどの潤沢剤などが挙げられる。 また 液剤では、 生理食塩水、 単シロップなどが挙げられる。
式(I)の化合物の投与量は、 患者の年齢、 性別その他の条件、 患者の症状等に より異なるが、 通常大人 1日当たり 0.01〜100mg、 好ましくは 0. 1〜5 Om gである。
また本発明の抱合体を PDE I V阻害薬として使用する場合、 経口投与、 非 経口投与あるいは直腸内投与のいずれでもよい。 経肺投与、 経口腔粘膜投与、 経 鼻腔粘膜投与でもよい。 投与量としては、 投与方法、 患者の症状、 患者の年齢、 処置形式 (予防または治療)等により異なるが、 通常 0.01〜10 OmgZ日、 好ましくは 0. 1〜5 OmgZSである。 経肺投与の場合は通常 30 μ g〜30
0 0 μ g Z回、 好ましくは 1 Ο Ο μ g〜: l Ο Ο Ο μ g /回を 1日に 1〜 2回であ る。
本発明の抱合体を活性成分とする P D E I V阻害薬は、 通常、 製剤用担体と 混合して調整した製剤の形で投与され、 その剤型としては、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 散剤、 シロップ剤、 懸濁剤、 坐剤、 ゲル剤、 注射剤、 デポ剤、 吸入剤、 点鼻剤等が挙げられる。 これらの製剤は、 製剤用担体として製剤分野において常 用されかつ本発明の抱合体と反応しない物質を用レ、、 常法に従って調製される。 そのような製剤担体としては、 例えば乳糖、 ブドウ糖、 マンニット、 デキストリ ン、 デンプン、 白糖、 メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、 合成ケィ酸アルミ二 ゥム、 結晶セルロース、 カルボキシメチルセルロースナトリウム、 ヒドロキシプ 口ピルデンプン、 カルボキシメチルセルロースカルシウム、 イオン交換樹脂、 メ チルセルロース、 ゼラチン、 アラビアゴム、 ヒ ドロキシプロピルセルロース、 低 置換度ヒ ドロキシプロピノレセノレロース、 ヒ ドロキシプロピノレメチルセノレロース、 ポリビュルピロリ ドン、 ポリビュルアルコール、 軽質無水ケィ酸、 ステアリン酸 マグネシウム、 タノレク、 カルボキシビ二ルポリマー、 酸化チタン、 ソノレビタン月旨 肪酸エステル、 ラウリスレ硫酸ナトリウム、 グリセリン、 脂肪酸グリセリンエステ ル、 精製ラノリン、 グリセ口ゼラチン、 ポリソルベート、 マクロゴーノレ、 植物油、 ロウ、 非イオン界面活性剤、 プロピレングリコール、 水等が挙げられる。
なお、 液体製剤にあっては、 用時、 水または他の適当な媒体に溶解または懸濁 する形であってもよい。 また錠剤、 顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよ レ、。 注射剤の場合には、 本発明の化合物を水に溶解させて調製されるが、 必要に 応じて等張化剤に溶解させてもよく、 また pH調節剤、 緩衝剤や保存剤を添カ卩して ちょい。
また、 これらの製剤は、 必要に応じて抗アレルギー剤、 ステロイド剤、 ]3 2刺 激薬、 抗コリン薬等と併用することも可能である。 発明を実施するための最良の形態
以下に実施例、 参考例および製剤例を挙げて本発明の抱合体の合成、 式(I )の 化合物またはその抱合体を含有する薬剤の製造についてさらに具体的に説明する
が、 本発明はこれらに限定されるものではない。 また、 本発明のドラッグデリバ リーシステムにおいては、 該抱合体は生体内で薬物代謝酵素により抱合されるこ とによって生成される。 化合物は元素分析、 水素核磁気共鳴吸収スペクトル H— NMR)等により同定された。
iH— NMRの記載においては、 簡略化のために下記の略号を使用する。
J :結合定数、
s :一直線、
d :二重線、
d d :二重の二重線、
d d d :二重の二重の二重線、
t :三重線、
d t :二重の三重線、
m :多直線 0
実施例 1 :硫酸 4— [3— [ 2— (3—クロロブエノキシ) _ 3 _ピリジルォキシ] プロピル]— 3 _ピリジルナトリゥムの製造
WOO 0/20391号公報 (実施例 31 )に記載の方法で得た 4— [ 3— [ 2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル] _ 3—ピリジノ一ル (10.0 g、 28. Ommo 1 )と水酸ィ匕ナトリウム(2. 24 g、 56. Ommo 1 )を水(5 OmL)に溶解した後、 三酸ィヒ硫黄トリメチルアミン錯体(7. 79 g、 56.0 mm o 1 )を加えて 50でで 3時間加熱撹拌した。 氷冷下でエタノール (5 OmL)を加えた後、 濃塩酸(4.7mL、 56 mm o 1 )をゆつくり加え、 析 出した結晶を濾取し、 水(20mL)、 エタノール(2 OmL)で洗浄した後、 減圧 乾燥し、 硫酸水素 4 _ [3— [2—(3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキ
シ]プロピル] _3_ピリジル(1 1.8 g、 27. Ommo 1)を無色結晶として得 た。
これを水(30 OmL)とメタノーノレ(10 OmL)に懸濁させ、 炭酸水素ナトリ ゥム(4. 5 g、 54mmo 1)を加えて室温で 20時間撹拌した後、 減圧濃縮し た。 残渣を水(15 OmL)に溶解し、 ァセトニトリル(30 OmL)を加え、 不溶 物を濾過した後、 減圧濃縮した。 更にァセトニトリル(20 OmL)を加えて減圧 濃縮した後、 アセトン(30 OmL)を加え、 不溶物を濾過した後、 減圧濃縮した。 残渣をエタノール(1 OmL)およびジイソプロピルエーテル(1 OmL)に溶解し て濾過した後、 エタノール(1 OmL)およびジイソプロピルエーテル(3 OmL) を加え、 析出した結晶を濾取した。 これをエタノール(17mL)に溶解し、 ジィ ソプロピルエーテル(17 mL)を加えて再結晶し、 標記ィ匕合物(8. 10 g)を無 色結晶として得た。 融点 185— 19 1 °C
参者^] 1.: 2, 3, 4—トリ一 O—ァセチル一D—ダルコピランゥロン酸メチルの
1—ブロモー 2, 3, 4—トリ一O—ァセチル一α—D—ダルコピランゥロン酸 メチル(2 O. O g、 50.4 mm o 1)をアセトン(125mL)に溶解し、 炭猶艮 (15.3 g、 55.4mmo 1 )および水(0. 9mL、 50mmo l)を加え、 室 温で 16時間撹拌し、 セライト濾過した後、 減圧濃縮した。 残渣をシリカゲル力 ラムクロマトグラフィーに付し、 クロ口ホルム//酢酸ェチルで溶出、 精製した後、 ジィソプロピルエーテルより再結晶して標記化合物( 13.8 g )を無色結晶とし て得た。 融点 94-98°C
実施例 2 : 1— O_[4— [3— [2— (3—クロロブエノキシ)_3—ピリジルォ キシ]プロピル]一 3—ピリジル]—/3—D—ダルコピランゥロン酸ナトリゥムの
WOO 0/20391号公報 (実施例 31 )に記載の方法で得た 4一 [ 3— [ 2— ( 3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル]一 3—ピリジノール (12.2 g、 34.2mmo 1 )と参考例 1で得た 2, 3, 4一トリ—O—ァセチノレ — D—グノレコピランゥロン酸メチノレ(1 1.4 g、 34. 1 mmo 1 )とトリフエ二 ノレホスフィン(17.9 g、 68. 2 mmo 1 )をテトラヒ ドロフラン(120m L) に溶解し、 氷冷下でジィソプロピルァゾジカルボキシラート( 6. 9 g、 34.2 mmo 1)を滴下した後、 室温で 24時間撹拌した。 反応液を減圧濃縮し、 残渣 をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、 クロ口ホルム 酢酸ェチルで溶出、 精 製し、 2, 3, 4—トリ一 O—ァセチル一 l—O— [4— [3— [2— (3—クロロフ ェノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル]一 3—ピリジル]― β— D—ダルコピ ランゥロン酸メチノレ(10. 3 g、 15.3 mmo 1)を油状物として得た。
これをアセトン(255mL)に溶解し、 1規定水酸化ナトリゥム水溶液(99. 5mL)を加え、 室温で 2時間撹拌した。 析出した結晶を濾取し、 アセトン(10 OmL)で洗浄した後、 水 Zエタノールより再結晶し、 標記化合物の 1水和物(3. 17 g )を無色結晶として得た。 融点 234— 238 °C
参考例 2 : l-O—ジエトキシホスフィノー α— D—ダルコピランゥロン酸メチ ルの製造
参考例 1で得た 2, 3, 4-トリ— O—ァセチル一 D—ダルコピランゥロン酸メ
チノレ(2. 00 g、 5. 98mmo 1 )を塩化メチレン(1 OmL)に溶解し、 ァルゴ ンガス気流下、 — 78 °Cで、 ジイソプロピルェチルァミン(0. 93 g、 7. 20 mmo 1 )、 続いてクロ口亜りん酸ジェチル(1. 03 g、 6. 58mmo 1 )の塩 化メチレン溶液(3mL)を 10分間で滴下し、 更に 30分間撹拌した後、 飽和炭 酸水素ナトリゥム水溶液(1 OmL)を加えて反応を終了した。 反応溶液を減圧濃 縮し、 水(1 OmL)を加えた後、 酢酸ェチル(3 5 mLX 2)で抽出し、 飽和食 塩水で洗浄後、 無水硫酸ナトリウムで乾燥し、 減圧濃縮した。 残渣をシリカゲル カラムクロマトグラフィーに付し、 酢酸ェチル /n—へキサンで溶出、 精製して 標記化合物(1. 83 g)を無色油状物として得た。
!H-NMR (200MHz, CDC13, δ ppm) : 1.27 (dt, 3H, J=lHz, 7Hz), 1.28(dt, 3H, J=lHz, 7Hz), 2.03(s, 3H), 2.04(s, 3H), 2.05 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 3.83- 4.03 (ra, 4H), 4.53 (dd, 1H, J=10Hz, 1Hz), 4.95 (dd, 1H, J=10Hz, 4Hz), 5.20 (dd, 1H, J=10Hz, lOHz) , 5.56(t, 1H, J=10Hz), 5.75 (dd, 1H, J=8Hz, 4Hz)
参考例 3 : 1— O— (ジェトキシ一 N—フエニル一ホスフォルイミ ドイル)一 α— D一グルコピランゥロン酸メチ の製造
OCOCH3
参考例 2で得た 1—O—ジエトキシホスフィノー α—D—ダルコピランゥロン 酸メチル(50 Omg、 1. 1 Ommo 1 )をトノレェン( 1. 2mL)に溶角 し、 Org. Synth. , Coll. Vol. 3, p.710 - 711記載の方法に準じて合成したフエニルアジド (144mg、 1. 2 lmmo 1 )のトノレェン溶液(1. 2mL)をカロえ、 45〜5 0。Cで 2時間撹拌した。 反応液を減圧濃縮して標記化合物( 680 m g )を微黄色 油状物として得た。
!H-NMR (200MHz, CDC13, 6 ppm) : 1.26-1.42 (m, 6H), 1.97(s, 3H), 2.03(s,
6H), 3.74 (s, 3H), 4.05— 4.29 (m, 4H), 4.51 (d, 1H, J=10Hz), 4.96-5.06 (m, 1H), 5.23 (t, 1H, J=10Hz), 5.56 (t, 1H, J=10Hz), 6.04— 6.12 (tn, 1H), 6.72- 6.87 (m, 3H), 7.06—7.17 (m, 2H)
実施例 3 : 1—[4— [3— [2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ] プロピル] - 3—ォキシド— 1—ピリジニォ]― 1ーデォキシ— /3— D—ダルコピ ランゥロン酸ナトリゥムの製造
WOO 0/20391号公報 (実施例 31 )に記載の方法で得た 4 _ [ 3— [ 2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル]一 3—ピリジノール (100mg、 0.28mmo 1 )と参考例 3で得た 1 _0—(ジエトキシー N—フ ェニルーホスフオノレイミドイル)一a—D—グノレコピランゥロン酸メチル(306 mg、 0.56mmo 1 )とモレキュラーシーブス 4 A (40 Omg)にプロピオ二 トリル( 5 m L)を力 [1え、 氷冷下でトリフルォロメタンスルホン酸トリメチルシリ ル(249mg、 1. lmmo 1)を加えた後、 室温で 3日間撹拌した。 反応液を 濾過し、 減圧濃縮した後、 残渣を酢酸ェチル(2 OmL)に溶解し、 飽和炭酸水素 ナトリウム水溶液で洗浄した後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥し、 減圧濃縮した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、 クロ口ホルム/メタノーノレ で溶出、 精製して、 2, 3, 4一トリ一 O—ァセチノレー 1ー[4— [3—[2—(3— クロロブエノキシ)一3—ピリジルォキシ]プロピル]— 3—ォキシドー 1一ピリ ジニォ]— 1一デォキシ一] 3— D—ダルコピランゥロン酸メチル(26.3mg、
0.039 mm o 1 )を淡褐色油状物として得た。
これをアセトン(0.66 mL)に溶解し、 氷冷下、 1規定水酸ィ匕ナトリウム水溶 液(0.25 mL)を加えて 2時間撹拌後、 ァセトン(1. 34 m L)を加えて 3時間
撹拌した。 析出した油状物を分離し、 アセトンを加えて粉末化させた後、 濾取し た。 これを Sep_Pak Vac 35cc C18 - 10g (Waters社製)に付し、 メタノールで溶出、 精製して、 標記化合物(18.5 mg)を無色粉末として得た。
XH-NMR (400MHz, CDC13, δ ppm) : 1.96-2.04 (ra, 2H), 2.56- 2.62 (m, 2H), 3.20- 3.44 (m, 5H) , 4.04—4.10 (m, 2H), 5.09 (d, 1H, J=9Hz) , 5.20 (s, 1H), 5.52 (s,
1H), 7.06 (ddd, 1H, J=8Hz, 2Hz, 1Hz), 7.13-7.16 (m, 2H), 7.21 (t, 1H, J=2Hz) , 7.22-7.25 (m, 2H), 7.33 (dd, 1H, J=6Hz, 2Hz), 7.412 (t, 1H, J=8Hz) , 7.54 (dd, 1H, J=8Hz, 2Hz), 7.69 (dd, 1H, J=5Hz, 2Hz)
製剤例 1 : (吸入剤の製法)
常法に従って、 薬物を溶媒に溶解して噴射剤とともに充填して MD I (定量噴 霧式吸入剤)を調製した。
硫酸 4一 [3— [2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル]―
3—ピリジルナトリウム(実施例 1の化合物)(1 OOmg)、
ソルビタントリオレエ一ト(界面活性剤)( 20 m g )、
1, 1, 1, 2—テトラフルォロェタン(噴射剤)(8.58 g)、
合計(8. 70 g)
製剤例 2 : (注射剤の製法)
常法に従って、 下記成分を溶解し、 0. 22 πιのメンブランフィルターでろ 過後、 アンプノレに充填して注射剤を調製した。
硫酸 4— [3— [2— (3—クロロフエノキシ)一 3 _ピリジルォキシ]プロピル]―
3—ピリジルナトリウム(実施例 1の化合物)( 1 m g )、
ブドウ糖 (等張化剤)(100mg)、
注射用蒸留水 (適量)、
全量(2m 1)
製剤例 3 : (注射剤の製法)
常法に従って、 下記成分を溶解し、 0. 22 //mのメンブランフイノレターで濾 過後、 アンプルに充填して注射剤を調製した。
硫酸 4— [3— [2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル]― 3—ピリジノレナトリウム(実施例 1の化合物)(1 Omg)、
塩化ナトリウム(等張化剤)(25 Omg)、
注射用蒸留水 (適量)、
全量(5mL)
製剤例 4 : (凍結乾燥注射剤の製法)
常法に従って、 下記成分を溶解し、 0. 22 のメンブランフィルターで濾 過後、 バイアルに充填して凍結乾燥して凍結乾燥注射剤を調製した。
硫酸 4— [3— [2_(3_クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル]一 3—ピリジルナトリウム(実施例 1の化合物)( 10 m g )、
マンニトーノレ(25 Omg)、
注射用蒸留水 (適量)、
全量(5mL)
製剤例 5 : (デポ剤の製法)
常法に従って、 下記処方で、 マイクロスフェア調製時に薬物含量が 2〜20% となるようにポリ乳酸に取り込ませて、 1ヶ月投与型デポ剤を調製した。
硫酸 4— [3— [2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジルォキシ]プロピル]―
3—ピリジルナトリゥム(実施例 1の化合物)( 100 m g )、
ポリ乳酸(50 Omg)
製剤例 6 : (錠剤の製法)
常法に従って、 下記成分を混和し、 頼粒状とし、 圧縮成形して、 1錠 100m gの錠剤 1000錠を調製した。
4— [3— [2— (3—クロロフエノキシ)一 3—ピリジノレオキシ]プロピル]一 3— ピリジノール(5 g)、
乳糖(59 g)、
結晶セルロース(30 g)、
ヒ ドロキシプロピノレセノレロース(4 g)、
軽質無水ケィ酸(l g)、 および
ステアリン酸マグネシウム(1 g)
産業上の利用可能性
本発明のドラッグデリバリーシステムによれば、 置换ヒドロキシピリジン化合 物を経口投与することにより、 生体内吸収過程で抱合体に変換され、 ついで標的 組織に集中的に送達されるため、 所望の薬理効果が効率的に発揮されると共に、 一般に P D E I V阻害薬に見られる嘔吐等の副作用が抑えられるため、 極めて 優れた P D E I V阻害剤が^される。
さらに本発明のドラッグデリバリーシステムに用いられる抱合体は、 強い P D E I V阻害作用を有し、 かつ優れた気管支拡張作用を示すので、 P D E I V阻 害薬として広くアレルギー性炎症疾患や組織炎症疾患等に対する治療薬および予 防薬として有用である。 特に喘息をはじめとする気道閉塞性の肺疾患の治療薬お よび予防薬として有用である。 本発明の抱合体は薬効の標的組織に相当量存在し、 かつ副作用に関与する組織には極めて少量しか分布しないという特徴を有してい るので、 ターゲッティング医薬として利用できる。 本宪明の抱合体はまた標的組 織に分布し、 標的組織において脱抱合されて未変化体を持続的に供給するという 特徴を有しているので、 薬理活性の持続時間が延長されるという効果があり、 持 続性医薬として利用できる。 さらに本発明の抱合体は、 溶解度が高いという特徴 を有しているので、 例えば注射剤,デポ剤等の液体製剤、 吸入剤等の経肺投与製 剤、 点鼻剤等の経鼻投与製剤の製造が容易であるという利点を有している。