JPWO2017043615A1 - 塩基性培養による麹菌の培養方法と誘導される抗菌組成物の利用 - Google Patents

塩基性培養による麹菌の培養方法と誘導される抗菌組成物の利用 Download PDF

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Abstract

【課題】塩基性一定制御条件下において、麹菌からの抗菌性物質を誘導させる培養方法、及び抗菌組成物を提供する。【解決手段】 麹菌を特定範囲のpHで維持培養することで、麹菌から抗菌性物質が誘導されることを見出した。pHメーターとpH滴定装置を組み合わせ、pH7〜10の塩基性一定制御条件下にて培養させる方法であり、かつ、該方法を利用した抗菌性物質のスクリーニングを行うことで、通常の中性から酸性pH培養では得られない高い抗菌活性及び広範な抗菌スペクトルを持った抗菌物質を製造できる。【選択図】なし

Description

本発明は、麹菌を培養して得られる抗菌性物質とその製造方法に関する。
近年、食品の安全・安心や売れ残り食品の廃棄低減とコストダウンなどを実現するため、品質劣化を招く微生物汚染制御への期待は高まりつつある。
微生物汚染の制御には、工場における製造段階での菌数管理と包材の工夫、流通段階での温度管理と共に、日持向上剤・保存料製剤の利用というアプローチが重要と考えられている。
しかしながら、合成保存料および日持向上剤の添加は、消費者の「自然」あるいは「天然」嗜好を反映して、近年敬遠される傾向にある。「天然」に近いかたちのものとして、微生物由来の抗菌性物質もあるが、安全性を担保する十分な食経験と、幅広い微生物への有効性を兼ね備えた抗菌性物質は限られたものとなっている。
アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)やアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori) 、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari)、アスペルギルス・ルチュエンシス(Aspergillus luchuensis)をはじめとしたアスペルギルス属糸状菌、すなわち麹菌は、清酒や焼酎、泡盛、味噌、醤油などの製造において古くから用いられてきた、発酵食品の製造に欠かすことのできない重要な微生物である。長い年月の間に食経験を蓄積させ、人への安全性において、優れた食品とも言える。
麹菌が抗菌性に関与している可能性や知見は複数報告されている。特許文献1に記載の杉山ら(2012年)は大豆、脱脂大豆、麦、米などに麹菌を接種して作製した固形培養物を水抽出して得た抽出液に、歯周病の原因菌であるジンジバリス菌のほか、ピロリ菌やカンジダ菌に対する抗菌活性があることを見出されている。特許文献2に記載されているアスペルギリン酸は、細菌・真菌・カビに対して効果を有する抗菌物質であることが見出されている。さらに、特許文献3では分子量5,000以上の培養液分画中から細菌・真菌・カビに対して効果を有する抗菌物質の存在が見出されている。
非特許文献1において相良らは、味噌用麹菌と食塩(濃度7.5%以上)を用いて仕込んだ塩麹は、麹菌の何らかの作用により抗菌効果を持つことが示唆されることを報告した。また、非特許文献2において塚原や穂坂らは、麹菌を麹汁培地にて長期間静置培養した上清中に、清酒醸造用の酵母以外の野生酵母に抗菌性を有するイーストサイジン(Yeastcidin)が存在することを報告した。非特許文献3において数岡らは、イーストサイジンが細菌に対する効果を持つ可能性を示唆している。特許文献4において北川らは、蒸煮うるち米等の蒸煮穀類中の蛋白質をプロテアーゼ処理することによって得られた酵素処理液に、アスペルギルス属に属する醸造用麹菌を接種して静置培養することにより麹菌体外に生産される抗菌物質を見出した。非特許文献4には、アスペルギルス・オリゼー(A. oryzae)が培養液中に産生するコウジ酸についても、グラム陰性菌と陽性菌の両方に抗菌効果を示すことが報告されている。
従来、麹菌における抗菌物質の探索はアスペルギルス・オリゼー(A. oryzae)を対象に実施されてきた。培養は基本的に固体培地であり、液体培地であったとしても、大量(7.5%以上)の食塩を必要とするか、米と麹菌由来の複雑且つ栄養豊富な米麹糖化液を培地とするなど、自由な培地の設計や工業的生産時のスケールアップが困難である。さらに、培地の原料に由来する成分を抗菌性物質誘導の必要条件とする点から、純粋に麹菌そのものが抗菌物質を作るというより、培地由来の成分を麹菌の酵素・代謝により変換合成している物質が含まれる。静置培養故に、麹菌の培養には10〜20日間を要するなど、抗菌性物質生産以外の一般的な麹菌増殖培養に必要な72時間からさらに時間が掛かるため、生産性を上げることが課題とされる。
麹菌をはじめとしたアスペルギルス属糸状菌の培養は、一般的に中性から酸性、特に酸性条件を至適とすることが知られており、既存の抗菌性物質は中性〜酸性側で産生することが報告されていた。pHは調整しなくとも培養中の培地液性は中性から酸性に推移するため、既存の抗菌性物質取得の実施において、pHは未調整、若しくは酸性条件になるよう意図して調整されてきた。
非特許文献5では、12時間おきに断続的な塩基性条件を組み合わせて麹菌を培養させた場合、アスペルギルス・オリゼー(A. oryzae) KCTC 6909において抗菌性物質の産生量が促進されることをParkら(2008年)は報告している。しかし、このように12時間おきに塩基性条件であるpH8.0に 調整する手法では、産生される抗菌性物質の絶対量は高くなかった。
国際公開2012/043743号 特開2003−81715号公報 特開2003−26693号公報 特開平7−177897号公報
相良 他「3F28a07 塩麹製造中および保存中における食塩濃度の違いによる抗菌効果について」2015年日本農芸化学会 学会発表 穂坂 他「麹菌(A. oryzae)の生産する抗菌性物質(Yeastcidin)の精製と性質」(1991年)発酵工学 第65巻、第3号 191−197 数岡 他「麹菌が生産する抗菌物質をもちいた食品汚染防止」平成20年度 東京農業大学 学部研究所プロジェクト 研究成果総括報告書 「New Food Industry」(1990年) P.25, Vol.32, No.7, 「Isolation and Characterization of an Extracellular Antimicrobial Protein from A. oryzae)」 J. Agric. Food Chem. 2008, 56, 9647-9652
本発明の目的は、食経験があり安全性が認められている微生物から効率的に得られる、新たな抗菌性物質を提供することである。また、特殊な培養培地を必要とせず、短期間の培養で十分な抗菌性物質を誘導する方法、すなわち安全性の高い抗菌性物質の工業的生産性に優れた製造方法を提供することである。
このような事情を鑑みて鋭意研究を重ねた結果、食経験があり安全性が認められているアスペルギルス糸状菌、すなわち麹菌を、一般的な組成の微生物用培地を用い、pHメーターと塩基性水溶液の自動滴定装置を組み合わせたpH制御装置を用いた塩基性一定制御培養を行うことにより、アスペルギルス・オリゼー(A. oryzae)から抗菌性物質が多く産生されることを見出した。さらにこのようにして得られた抗菌性物質が、公知の方法で得られたものと異なる、新たな抗菌性物質である可能性を見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
(1)麹菌をpH 7〜10に維持された液体培地で培養する工程を含む、抗菌性物質の製造方法。
(2)前記麹菌が、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari)、アスペルギルス・ルチュエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nigar)から選ばれる1種又は2種以上の菌株である、上記(1)に記載の製造方法。
(3)麹菌を液体培地で培養する際に、pHメーターによる連続モニタリングと、pH滴定装置を組み合わせ、培養液のpHをpH7〜10に維持する工程を含む、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)前記液体培地へのNaClの配合量が、0〜5重量%である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
に係るものである。
本発明によると、食経験があり安全性が認められているアスペルギルス糸状菌、すなわち麹菌を用いて、複雑な工程を経ることなく、短期間の培養で十分な抗菌物質を産生することができる。麹菌の培養に用いる培地としては一般的な組成の液体培地でよく、特殊な培養培地を必要としない。また、この方法を用いて得られた抗菌性物質は、公知の方法で得られたものとは異なる抗菌スペクトルを有する新たな抗菌性物質である可能性がある。
以下、本発明を詳細に説明し、本発明の理解に供する。
本発明の抗菌性物質の製造に用いる麹菌とは、発酵食品の製造に利用され、食経験を有するアスペルギルス属糸状菌を指す。
代表的なものとしては、醸造食品製造において食経験豊富なアスペルギルス属糸状菌として、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)およびアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari)、アスペルギルス・ルチュエンシス(Aspergillus luchuensis) 、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nigar)が挙げられる。アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)のような、アフラトキシンを産生する菌株は用いない。
本発明の実施において、培地は液体培地が好ましい。
培養に必要な培地は特殊なものである必要は無く、たとえば単純なYPD培地で構わない。或いは糖源や窒素源を変更することや、NaClを5.0%以下となるよう添加することも可能である。
麹菌の培養には、糖として、資化可能な任意の単糖類や二糖類、三糖以上の多糖類、デンプン、さらに、ショ糖製造時に副産物として生じるモラセス(廃糖蜜)の様な混合糖類などを利用でき、特に制限は無い。好ましくはグルコースとマルトースである。
窒素源としては、麹菌が資化可能な任意の窒素源を利用することができ、具体的には硝酸塩やアンモニウム塩などの無機窒素、オカラや豆乳、ホエー、小麦ふすま、畜肉、酵母などの残渣や酵素分解物などが利用できる。好ましくはペプトンやトリプトンである。
培養は振とう培養や通気撹拌培養によるバッチ培養、または連続培養や通電による電気培養法も利用できる。
本発明の抗菌物質は、麹菌を接種した後の培地を24時間以上、中性〜塩基性に維持することで得られる。pH制御に用いる塩基の種類は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの水溶液などが挙げられるが、特に制限することなく使用して製造できる。培養時にはpHモニタリング装置とpH滴定装置を組み合わせたpH制御装置を使用し、且つ通気撹拌培養による振とう培養を行うことが望ましい。
培養中の培地のpH制御値は麹菌の菌株毎に最適化を図るが、好ましくはpH7〜pH10、より好ましくはpH7.5〜pH9.5、さらに好ましくはpH8.0〜pH9.5である。
麹菌の培養時間は、抗菌性物質が産生されるのに必要な時間とし、通常24時間から120時間である。
培養後の培養液は抗菌性物質を含有する。抗菌性物質を含む培養液はそのまま使用または保存しても良いし、好ましくは菌体を除去後、必要に応じて精製し、得られた抗菌性物質を含む組成物を凍結または粉末化して保存する。
抗菌製剤の製造には、賦形剤等の目的で食品用として利用可能な原料を用いることができる。また、抗菌性物質を含む組成物を精製せずに用いることも可能であり、目的に応じて精製してから利用することもできる。
本発明においては製造工程中、または工程後に、例えば乳酸菌抽出物や酵母抽出物などの未加工粗製物や分解物、グリシンやキチン・キトサン、ポリリジンなどの保存料や日持ち向上剤、EDTAやクエン酸などのキレート物質、プロテアーゼやアミラーゼ、ホスファターゼなどの分解酵素を添加することにより、剤としての安定性や抗菌スペクトルの拡大、抗菌物質構造や組成物の改良、収量向上、味質の改善を図ってもよい。
本願方法により得られた抗菌性物質又は抗菌性物質を含む組成物は、安全性が高いため、食品であれば、特に制限なく使用できる。例えば、野菜、果物などの食品、調味料などの食品素材、惣菜などの調理食品などに利用できる。また、食品だけでなく医薬品、医薬部外品、化粧品、畜産・漁業での飼料、微生物由来農薬、植物の免疫強化などの多様な分野で使用することが可能である。本発明品は、公知の抗菌剤の使用方法が利用できる。例えば、食品であれば、本発明品を食品に均一に混合する、本発明品を適宜濃度調整し、食品に噴霧するなどがある。
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<pH制御を行わない培養>
<比較例1>
(1)麹菌の調製
麹菌としては、A. oryzae (株式会社樋口松之助商店製、No.100株、酒造用「白峯」)を用いた。単離・純粋培養した菌を、ポテトデキストロース寒天斜面培地(日水製薬株式会社製)7mLに割線後、30℃で72時間培養し、適宜寒天培地毎切り出して下記液体培養に供試した。
(2)液体培地の調製
培養は全て液体培地にて実施した。酵母エキス(日本製薬株式会社製)1重量%、ハイポリペプトン(日本製薬株式会社製)2重量%、グルコース(和光純薬工業株式会社製、特級)2重量%となるように超純水に溶解したものを基本組成のYPD培地とした。これらを121℃20分間オートクレーブ処理して滅菌した後、培養に使用した。
(3)麹菌の培養〜培養液凍結乾燥粉末の取得
麹菌の培養は坂口フラスコを用いて実施した。滅菌済みの500mL坂口フラスコに前記のとおり調製した各培地100mLを移し、PDA培地から切り出したA. oryzae 白峯の胞子を植菌。28℃で72時間振とう培養した。培養終了後、培養液を金属メッシュのザル(目開き1mm)で粗ろ過したのち、ろ紙(ADVANTEC社製「7C」)でろ過して菌糸を取り除いた。取得したろ液のpHが、以降の抗菌性評価に影響を及ぼさないpH7±1になるよう水酸化ナトリウム水溶液で調整した。ろ液を10,000rpmで10分間遠心分離した後、上清を回収してφ0.8μmフィルター(ADVANTEC社製)で処理したのち、φ0.22μm(ろ過できなければφ0.45μm)フィルターでデブリや胞子を除去した。凍結乾燥は「FreeZone-2.5」(LABCONCO社製)を用い、麹菌培養液の凍結乾燥粉末を得た。得られた凍結乾燥粉末を比較例1の組成物とした。
<比較例2>
YPD培地に加えて塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、特級)を0.5重量%配合した培地を使用する以外は、比較例1と同様に行い、得られた凍結乾燥粉末を比較例2の組成物とした。
<比較例3>
YPD培地に加えて塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、特級)を1.0重量%配合した培地を使用する以外は、比較例1と同様に行い、得られた凍結乾燥粉末を比較例3の組成物としとした。
<比較例4>
YPD培地に加えて塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、特級)を3.0重量%配合した培地を使用する以外は、比較例1と同様に行い、得られた凍結乾燥粉末を比較例4の組成物とした。
<比較例5>
YPD培地に加えて塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、特級)を5.0重量%配合した培地を使用する以外は、比較例1と同様に行い、得られた凍結乾燥粉末を比較例5の組成物とした。
(4)抗菌性試験
グラム陰性菌としてEscherichia coli DH5α(大腸菌)、グラム陽性菌としてBacillus subtilis (納豆菌)を被検菌として用いた。これらの各被検菌を、液体LB培地を用いて37℃にて一晩前培養してPBS緩衝液に希釈し、2%の希釈被検菌体液を調製した。
試料として、比較例1〜5の組成物をそれぞれ液体LB培地(Difco社製『LB Broth, Miller (Luria-Bertani)』)に溶解し、フィルターろ過(φ0.45um)した後、24ウェルのマルチプレート(住友ベークライト社製、ウェル底面未処理)に900uLずつ分注した。比較例1〜5の組成物をLB培地に溶解する濃度は、1%、3%、5%とした。対照区については、LB培地900μL分注した。
前述の被検菌体液を各ウェルに90uLずつ、最終菌体濃度0.2%となるよう分注したのち、100uLを濁度測定のため抜き取り、プレートをシールした。振とう培養装置(TAITEC社製、Invitro shaker)で37℃、650rpmにて24時間振とう培養した。培養後、各ウェルの培養液について波長600nmで測定した濁度による増殖抑制を比較した。
培養後の濁度が対照区よりも低いものを抗菌活性(+)とし、同じか高いものを抗菌活性(−)とした。
比較例1〜5の結果
比較例1〜5の試料のLB培地への溶解濃度が1%、3%の場合は、比較例1〜5のいずれも、グラム陰性(大腸菌)、グラム陽性(納豆菌)ともに抗菌活性は(−)であった。試料の溶解濃度が5%の場合の結果を表1(A. oryzae由来培養上清物の抗菌力(抗菌試験での試料添加濃度5%))に示す。
Figure 2017043615
表1に示す通り、試料添加濃度5%で抗菌活性試験をしたとき、A. oryzae 白峯をpH制御無しで培養した上清の凍結乾燥物(比較例1〜5)は、1%塩化ナトリウム添加で培養した比較例3を除き、抗菌性を示さなかった。比較例3については、グラム陰性菌であるE.coliに対してのみ増殖を抑制する抗菌性を示した。全体として、この培養法における抗菌性物質の産生量は低いか、抗菌性物質の抗菌活性が低いことがわかった。また、抗菌性物質の誘導に対する塩化ナトリウムの影響は少ないと推察された。
<pH一定制御培養>
<実施例1>
実施例1については、以下の方法により調製した。
(1)麹菌の調製
比較例1の(1)と同様に、A. oryzae (株式会社樋口松之助商店製、No.100株、酒造用「白峯」)を用いた。単離・純粋培養した菌を、ポテトデキストロース寒天斜面培地(日水製薬株式会社製)7mLに割線後、30℃で72時間培養し、適宜寒天培地毎切り出して下記液体培養に供試した。
(2)液体培地の調製
比較例1の(2)と同様の方法により調製した培地を用いた。なお、YPDに加える塩化ナトリウム濃度は0.5%(5g/L)とした。
(3)麹菌の培養〜抗菌性物質の取得
実施例1において、pHの一定制御培養をジャーファーメンターにて実施した。滅菌済みの2Lジャーファーメンターに調製した液体培地1Lを移し、PDA培地から切り出した胞子を植菌した。培養中はpHメーターによる連続モニタリングとpH滴定装置を組み合わせ、1規定水酸化ナトリウムを用いてpH7.5〜8.5に入るように制御、温度28℃、通気量0.8L/min、撹拌速度400rpmにて72時間培養した。また、発泡が激しいため、途中から滅菌済みの「消泡剤CKB」(ディスフォーム社製)を80μL添加した。培養液について、比較例1と同様の方法により処理を行い、得られた凍結乾燥粉末を実施例1の組成物とした。
<比較例6>
実施例1の麹菌の培養において、pHを一定制御ではなく、12時間おき(計6回)に1規定水酸化ナトリウム溶液でpH8.0に調整した以外は、実施例1と同様に行って、麹菌培養液の凍結乾燥粉末を取得し、比較例6の組成物とした。
実施例1と比較例6の組成物について、前述の(4)抗菌性試験に準じて、抗菌性試験を行った。
抗菌性試験の結果を表2(pHをアルカリ域で制御したA.oryzae培養上清の抗菌力)に示す。
Figure 2017043615
表2に示すとおり、この抗菌試験系においては、比較例6の組成物は抗菌活性をほとんど示さなかった。一方、実施例1の組成物は、グラム陰性菌に対しては添加濃度3%以上において、グラム陽性菌に対しては添加濃度1%以上において、抗菌活性を示した。
このことから、培養液のpH調整方法としては、断続的にアルカリ性に制御するのに比べ、常にアルカリ性を保つように制御をする方が、抗菌性物質が多く産生される、あるいは産生される抗菌性物質の抗菌活性が高いことがわかる。
また、pH一定制御した実施例1においては、グラム陰性菌よりグラム陽性菌に対して、より強い抗菌活性を示した。一方、pH調整を行わない培養を行った比較例3においては、グラム陽性菌よりグラム陰性菌に対してより強い抗菌活性を示している。
これらのことから、pH一定制御で得られた実施例1の組成物に含まれる抗菌性物質は、pH無調整で得られる抗菌性物質とは異なる抗菌性物質である可能性が示唆された。
<有機酸分析>
乳酸や酢酸などは抗菌性を有する有機酸として知られているため、実施例1の抗菌活性が、それらの有機酸によるものであるかを確認するために試験を行った。
実施例1、比較例6のサンプル5%添加後の被検菌培地中の乳酸と酢酸の濃度を、pH緩衝化ポストカラム電気伝導度検出法によるHPLC分析により測定した。カラムはShim-pack SCR-102H ×2を用いた。
結果を表3(pHをアルカリ域で制御したA.oryzae培養上清の有機酸量)に示す。
今回測定された有機酸量は、pH7付近における各々のMICを下回る100分の1以下の濃度であることから、有機酸の抗菌性は無視できる。すなわち、抗菌性試験で見られた抗菌活性は、これらの有機酸によるものではないと考えられる。
Figure 2017043615
<アルカリ処理と抗菌性>
実施例1の組成物における抗菌性が、アルカリにより菌体から溶出した成分である可能性を考え、確認を行った。
pH7(中性)一定制御で、A. oryzae 「白峯」を72時間培養した。得られた培養液を、水酸化ナトリウムでpH9に調整して4つに分け、それぞれ室温で4日、50℃で30分、90℃で30分、110℃で30分置いた後、塩酸でpH7.0に調整した。これらについて、培養液凍結乾燥粉末を取得し、前述の(4)抗菌性試験に準じて抗菌活性を測定したところ、4ついずれも抗菌活性は認められなかった。
この結果から、実施例1の組成物中の抗菌性物質は、菌体がアルカリで処理されて溶出された物質ではなく、アルカリ一定条件下での培養において産生された物質であることが裏付けられた。
<酵素処理と抗菌性>
糸状菌の菌糸の細胞壁成分であるキチンや、キチンをアルカリ処理することで得られるキトサンには抗菌活性があるという知見があるため、実施例1の抗菌活性が、それらによるものであるかを確認するために試験を行った。
pH6一定制御で、A. oryzae 「白峯」を72時間培養した。得られた培養液100gに、糸状菌細胞壁溶解酵素Yatalase(タカラバイオ社製)を50mg添加し、37℃で8時間反応させた。加熱失活後、pH7.0に調整し、その培養液凍結乾燥粉末について、前述の(4)抗菌性試験に準じて抗菌活性を測定したところ、抗菌活性は認められなかった。
この結果から、実施例1の組成物中の抗菌性物質は、糸状菌の細胞壁が溶解して生じたキチンやキトサンではなく、アルカリ一定条件下での培養において産生された物質であることが裏付けられた。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の条件変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明により、塩基性に維持した培地で麹菌を培養することにより、きわめて効率的に抗菌性物質が誘導されることが見出された。またその抗菌性物質は、公知の方法では得られなかった新規の抗菌性物質であることが示唆された。
従来、「天然」由来の抗菌性物質は限られており、望ましい抗菌スペクトルや耐酸・耐熱・耐アルカリを有するものを見つけることが困難であったユーザーに対して、多種類の麹菌から希望する特性を有する抗菌物質を提供できる可能性を有している。よって食品だけでなく医薬品、医薬部外品、化粧品、畜産・漁業での飼料、微生物由来農薬、植物の免疫強化などの広い分野において利用されてゆくことが期待される。

Claims (4)

  1. 麹菌をpH 7〜10に維持された液体培地で培養する工程を含む、抗菌性物質の製造方法。
  2. 前記麹菌が、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・グラウカス(Aspergillus glaucus)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamari)、アスペルギルス・ルチュエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nigar)から選ばれる1種又は2種以上の菌株である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 麹菌を液体培地で培養する際に、pHメーターによる連続モニタリングと、pH滴定装置を組み合わせ、培養液のpHをpH7〜10に維持する工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記液体培地へのNaClの配合量が、0〜5重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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