以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る入力装置を示す透視斜視図である。
本実施形態の入力装置1は、静電容量方式を用いた操作者の操作位置を検出する機能(位置検出機能)を有するものであり、図1に示すように、導体層付き構造体2を備えている。
まず、本実施形態の入力装置1の構成について、簡単に説明する。
導体層付き構造体2の一方側には、画像表示装置(不図示)が配置されている。画像表示装置は、たとえば、液晶ディスプレイ(Liquid crystal display,LCD)であり、一対の偏光板と、一対の偏光板の間に配置された液晶パネルを有している。また、液晶パネルの一方側には、カラーフィルタが配置され、他方側にバックライトが配置されている。バックライトとしては、エッジライト型や直下型等の既知の構成を採用することができる。
本実施形態の画像表示装置では、バックライトが液晶パネルの背面側を面状に照明し、液晶パネルがバックライトからの光を画素毎に選択的に透過させる。そして、液晶パネルを透過した光が、画像表示装置の表示部に操作用の各種アイコンや、使用者の操作指示に応じた文字情報等を表示する。
導体層付き構造体2が備える配線体4は、2つの網目状電極層61,81(後述)を備えている。なお、配線体4の構成については、後に詳細に説明する。
第1の網目状電極層61は、Y方向にそれぞれ延在する複数(本実施形態では、3つ)の検出電極であり、第2の網目状電極層81は、平面視において第1の網目状電極層61と重なるように配置され、X方向にそれぞれ延在する複数(本実施形態では、4つ)の検出電極である。この第1及び第2の網目状電極層61,81は、画像表示装置の表示部に対応する位置に形成されている。
入力装置1では、第1の網目状電極層61が引き出し配線66を介して外部回路と接続されると共に、第2の網目状電極層81が引き出し配線86を介して外部回路と接続されており、この第1及び第2の網目状電極層61,81間には、所定電圧が周期的に印加されている。
画像表示装置には所定の情報が表示され、この情報に応じて操作者が入力装置1を操作する。操作者が入力装置1に接触すると、2つの網目状電極層61,81の交点毎の静電容量が変化する。本実施形態の入力装置1は、この静電容量の変化に基づいて、当該入力装置1における操作者の操作位置(接触位置)を検出する。
なお、入力装置1は、画像表示パネルとして液晶ディスプレイ(液晶パネル)が組み込まれた構成を有しているが、特にこれに限定されない。たとえば、液晶ディスプレイ(液晶パネル)に代えて、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)パネル、陰極管表示装置(CRT)、表面電界ディスプレイ(SED)パネル等の種々の画像表示パネルを用いることができる。
また、上述では、液晶パネルを有する入力装置について説明したが、特にこれに限定されない。たとえば、視認可能な部分が一部でもあればよく、例えば、液晶パネルを有さずに、表に数字等の画像情報が印刷された透明なカバーケースを含み、その画像情報をタッチした場合にスイッチとして機能するタッチスイッチ等でもよい。
次に、導体層付き構造体2について、図2及び図3を参照しながら、詳細に説明する。図2は本発明の一実施の形態に係る導体層付き構造体を示す分解斜視図、図3は本発明の一実施の形態に係る導体層付き構造体を示す断面図である。
導体層付き構造体2は、カバーガラス31と、液晶パネル32と、配線体4と、第1の接着層101と、第2の接着層102とを備えている。本実施形態における「導体層付き構造体2」が本発明における「導体層付き構造体」及び「タッチパネル」の一例に相当する。
カバーガラス31は、図1に示すように、入力装置1において、配線体4や画像表示装置等を外部から保護する保護層である。このようなカバーガラス31は、特に限定しないが、たとえば、ソーダライムガラスやホウケイ酸ガラス等により構成することができる。
なお、配線体4や画像表示装置を外部から保護する保護層として、カバーガラス31に代えてポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の透明樹脂を用いてもよい。
カバーガラス31は、一様の厚みを有する板状の部材である。カバーガラス31の主面311は、略平坦に形成されている。カバーガラス31は、第1の接着層101を介して、配線体4の一方の主面41側に設けられている。カバーガラス31は、配線体4の主面41の全体を覆っており、配線体4の主面41は、外部に露出していない。
第1の接着層101は、図2及び図3に示すように、配線体4をカバーガラス31に貼り合わせるために用いられる。この第1の接着層101としては、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤等の公知の接着剤を用いることができるが、配線体4の視認性の低下を抑制する観点から、当該第1の接着層101を構成する材料の屈折率が、1.47以上1.52以下であるものを用いることが好ましい。
これにより、カバーガラス31を構成する材料の屈折率と、第1の接着層101を構成する材料の屈折率との差が小さくなるので、当該カバーガラス31及び第1の接着層101間の界面において、導体層付き構造体2に入射した入射光の散乱等の発生を抑制することができる。
第1の接着層101は、カバーガラス31と配線体4との間に介在している。第1の接着層101は、カバーガラス31の主面311に直接接着し、配線体4の主面41(具体的には、第3の樹脂層9)に直接接着している。カバーガラス31と配線体4との間には、第1の接着層101が介在するだけで、基材等の他の構成は介在していない。
カバーガラス31及び第1の接着層101は、第1の樹脂層5に対して第2の樹脂層7側に位置している。詳細は後述するが、この場合、第1及び第2の網目状電極層61,82を構成する第1及び第2の導体線62,82の外形のうち比較的平坦な面がカバーガラス31側を向くように配置される。このため、当該カバーガラス31側から入射する入射光の散乱等の発生を抑制することができる。
本実施形態における「第1の接着層101」が本発明における「第1の接着層」の一例に相当する。
液晶パネル32は、入力装置1に組み込まれる画像表示装置を構成する板状の部材である。液晶パネル32は、第2の接着層102を介して、配線体4の他方の主面42側に設けられている。液晶パネル32は、配線体4の主面42を覆っており、配線体4の主面42は、外部に露出していない。
第2の接着層102は、図2及び図3に示すように、液晶パネル32を配線体4に貼り合わせるために用いられる。この第2の接着層102としては、上述の第1の接着層101として用いられる接着剤と同様の接着剤を用いることができる。
第2の接着層102は、液晶パネル32と配線体4との間に介在している。第2の接着層102は、液晶パネル32の主面321に直接接着し、配線体4の主面42(具体的には、第1の樹脂層5)に直接接着している。液晶パネル32と配線体4との間には、第2の接着層102が介在するだけで、基材等の他の構成は介在していない。本実施形態における「第2の接着層102」が本発明における「第2の接着層」の一例に相当する。
配線体4は、カバーガラス31及び液晶パネル32の少なくとも一方により支持されている。本実施形態では、カバーパネル31及び液晶パネル32のうちの一方が支持体として構成され、他方が基板として構成される。カバーパネル31及び液晶パネル32の何れもが接着層を介して配線体4に接着されている場合、カバーパネル31及び液晶パネル32のうち第1の接着層101と第2の接着層102のうち接着強度が大きい側の接着層を介して配線体4に接着される側が支持体を構成する。本実施形態における「カバーガラス31」が本発明における「支持体」又は「基板」の一方の一例に相当し、本実施形態における「液晶パネル32」が本発明における「支持体」又は「基板」の他方の一例に相当する。
なお、上述では、カバーガラス31及び液晶パネル32の少なくとも一方を支持体として用いているが、特にこれに限定されず、画像表示装置を構成する偏光板やカラーフィルタ等を支持体としてもよい。また、入力装置1がハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、反射防止層、高誘電体層、又は、電磁波遮蔽層を有する場合は、これらを支持体としてもよい。また、入力装置1がプリント基板、放熱板、筐体等を備える場合は、これらを支持体として用いてもよい。すなわち、配線体4を支持することができれば、支持体の構成は特に限定されない。
図4は本発明の一実施の形態に係る配線体を示す透視平面図、図5は図4のV-V線に沿った配線体の断面図、図6は図4のVI-VI線に沿った配線体の断面図、図7は本発明の一実施の形態に係る第1の導体線を説明するための断面図である。なお、図4においては、配線体の構造を理解し易くするため、第2の導体層8を実線にて表示し、第1の導体層6を破線にて表示した。
配線体4は、図5に示すように、第1の樹脂層5と、第1の導体層6と、第2の樹脂層7と、第2の導体層8と、第3の樹脂層9と、を備えている。本実施形態の配線体4は、カバーガラス31及び液晶パネル32の少なくとも一方により支持されるものであり、第1及び第2の導体層6,8を直接接着して支持する基材等を別途備える必要がない構成となっている。
なお、本実施形態では、第2の導体層8は、第1の導体層6と同様の構成を有している。したがって、本明細書において、以下の説明では、第2の導体層8(第2の導体層8が有する各構成を含む)の詳細の説明を省略する。本実施形態における「配線体4」が本発明における「配線体」の一例に相当する。
本実施形態の第1の樹脂層5は、光学等方性を有する材料により構成されており、このような第1の樹脂層5を構成する材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等のUV硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を例示することができる。
この第1の樹脂層5を構成する材料は、リタデーション値Reが10nm以下であり、5nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましい。本明細書において、光学等方性を有する材料とは、リタデーション値Reが10nm以下であることを示す。このように第1の樹脂層5が光学等方性を有する材料により構成されていることで、配線体4に入射する入射光の複屈折が抑えられる。これにより、導体層付き構造体2の視認性の低下が抑制される。
なお、リタデーションとは、結晶その他の非等方性物質に入射した光が互いに垂直な振動方向を持つ2つの光波に分かれる現象である。すなわち、複屈折を持つ材料に非偏向の光が入射すると、入射光は2つに分かれる。これらの入射光は振動方向が互いに直交し、一方が異常光線となり、他方が常光線となる。因みに、異常光線は伝搬速度が伝搬方向によって異なる光線であり、常光線は伝搬速度が伝搬方向によらない光線である。
また、リタデーション値Reとは、樹脂層の面内において最も屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率nx(すなわち、異常光線屈折率)と、遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率ny(すなわち、常光線屈折率)と、樹脂層の厚みdと、により、下記(7)式によって表される。
Re=(nx−ny)×d・・・(7)
このようなリタデーション値は、JIS法(JIS K7142)により測定することができる。なお、本実施形態では、リタデーション値Reとして、公知の計測機器を用いて波長550nmの光に対するリタデーション値を測定したが、特にこれに限定されず、可視光波長全域に亘ってリタデーション値Reが上述の条件を満たしていることが好ましい。
また、本実施形態では、導体層付き構造体2の視認性の低下を抑制する観点から、下記(8)式が成立していることが好ましい。
1.45≦N1≦1.55・・・(8)
但し、上記(8)式において、N1は前記第1の樹脂層5を構成する材料の屈折率である。このような屈折率は、JIS法(JIS K7142)により測定することができる。
上述したカバーガラス31及び液晶パネル32を構成する材料として例示したものは、1.47以上1.52以下の屈折率を有するものであり、上記(8)式が成立していることで、当該カバーガラス31と第1の樹脂層5との屈折率(絶対屈折率)の差を小さくすることができ、配線体4に入射した入射光の散乱等の発生を抑制することができる。これにより、導体層付き構造体2の視認性の低下が抑制される。
なお、屈折率N1としては、1.47以上1.52以下(1.47≦N1≦1.52)であることがより好ましい。
また、本実施形態では、導体層付き構造体2の視認性の低下をさらに抑制する観点から、下記(9)式が成立していることが好ましい。
97%≦T1・・・(9)
但し、上記(9)式において、T1は第1の樹脂層5を構成する材料の全光線透過率である。このような全光線透過率は、JIS法(JIS K7375)により測定することができる。
なお、全光線透過率T1としては、99%以上(99%≦T1)であることがより好ましい。
また、第1の樹脂層5を構成する材料としては、第1及び第2の導体層6,8(特に、第1及び第2の網目状電極層61,81)間の位置ずれを抑制する観点から、当該第1の樹脂層5を形成する過程において体積の収縮が小さい材料が好ましい。具体的には、第1の樹脂層5を構成する材料としては、当該材料を塗工する工程において溶剤を必要としないUV硬化性樹脂を用いることが好ましい。
第1の樹脂層5は、図5及び図6に示すように、略一定の厚さで設けられた平坦部51と、当該平坦部51上に形成された支持部52と、から構成されている。支持部52は、平坦部51と第1の導体層6の間に形成されており、平坦部51から離れる方向(図5中上側方向)に向かって突出するように形成されている。
この第1の樹脂層5は、支持部52の上面(図5中上側の面)において、第1の導体層6と接している。この支持部52は、短手方向断面視において、平坦部51から離れるにしたがって、相互に接近するように傾斜する直線状とされた2つの側面を有している。なお、ここでいう短手方向断面視とは、支持部52と接する第1の網目状電極層61を構成する第1の導体線62(後述)の短手方向に沿った断面を示す。
この支持部52と第1の導体層6との境界は、当該第1の導体層6の接触面(例えば、第1の導体線62(後述)の接触面63等)の凹凸形状に対応した凹凸形状となっている。このような凹凸形状は、第1の導体層6の接触面の面粗さに基づいて形成されている。なお、図6に示すように、第1の導体層6の延在方向に沿った断面における支持部52と当該第1の導体層6との境界も、当該第1の導体層6の接着面の凹凸形状に対応した凹凸形状となっている。第1の導体層6の接触面の面粗さについては、後に第1の導体線62の接触面63の面粗さを例にして詳細に説明する。図5及び図6においては、本実施形態における配線体4をわかりやすく説明するために、支持部52と第1の導体層6との境界の凹凸形状を誇張して示している。
本実施形態では、導体層付き構造体2の薄型化の観点から、下記(10)式が成立していることが好ましい。
0.1μm≦H1≦50μm・・・(10)
但し、上記(10)式において、H1は第1の樹脂層5の高さである。なお、第1の樹脂層5の高さH1とは、当該第1の樹脂層5を構成する平坦部51の厚さ(高さ)と支持部の厚さ(高さ)とを合計した厚さ(高さ)をいう。
本実施形態の第1の樹脂層5を構成する材料は、架橋された樹脂材料である。このため、第1の樹脂層5を構成する材料が架橋される前の状態に比べて、当該第1の樹脂層5の熱膨張率を小さくすることができる。また、第1の樹脂層5を構成する材料が架橋される前の状態に比べて、当該第1の樹脂層5の強度や硬度を向上させることができる。また、第1の樹脂層5が有機溶媒に溶け難くなり、当該第1の樹脂層5の形状を維持し易くなる。このような架橋された樹脂材料は、温度が上昇するに連れて弾性率が所定温度まで低下するが、当該所定温度以上の比較的高温下においては、弾性率がかえって上昇する特性を有する。なお、架橋されていない樹脂材料は、温度が上昇するに連れて弾性率が単調に低下し続ける。
第1の樹脂層5を構成する材料としては、比較的架橋密度の大きい樹脂材料を用いることが好ましい。樹脂材料の架橋密度は、当該樹脂材料の架橋点間分子量を用いて表すことができる。この樹脂材料の架橋点間分子量は、下記(11)式により表すことができる。
Mc=2(1+μ)ρRT/E ・・・(11)
但し、上記(11)式において、Mcは架橋点間分子量、μはポアソン比、ρは密度、Rは気体定数、Tは絶対温度、Eは弾性率である。
本実施形態では、第1の樹脂層5を構成する材料の架橋密度を大きくする観点から、当該第1の樹脂層5を構成する材料の架橋点間分子量は、10000g/mol未満であることが好ましく、3000g/molであることがより好ましい。また、第1の樹脂層5を構成する材料の架橋点間分子量は、モノマー分子量の250倍未満であることが好ましく、80倍未満であることがより好ましい。また、第1の樹脂層5が脆くならないようにする観点から、第1の樹脂層5を構成する材料の架橋点間分子量は、1000g/mol以上であることが好ましい。
本実施形態における「第1の樹脂層5」が本発明における「第1の樹脂層」の一例に相当する。
第1の導体層6は、図4に示すように、第1の網目状電極層61と、引き出し配線66と、を有している。第1の網目状電極層61は、図4に示すように、Y方向に延在する入力装置1の検出電極であり、第1の樹脂層5の支持部52上に積層され、+Z方向に向かって突出するように形成されている(図5及び図6参照)。本実施形態における「第1の導体層6」が本発明における「第1の導体層」の一例に相当する。
第1の網目状電極層61は、導電性粉末とバインダ樹脂とから構成されている。第1の網目状電極層61では、バインダ樹脂中に導電性粉末が略均一に分散して存在しており、この導電性粉末同士が相互に接触することで、当該第1の網目状電極層61に導電性が付与されている。
このような第1の網目状電極層61は、導電性ペーストを塗布して硬化させることで形成されている。このような導電性ペーストの具体例としては、上述の導電性粉末及びバインダ樹脂に、水もしくは溶剤、および各種添加剤を混合して構成される導電性ペーストを例示することができる。
導電性粉末としては、銀、銅、ニッケル、スズ、ビスマス、亜鉛、インジウム、パラジウムなどの金属材料や、グラファイト、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック)、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等のカーボン系材料等を挙げることができる。なお、導電性粉末の他に、上述の金属材料の塩である金属塩を用いてもよい。
導電性粉末としては、形成する第1の網目状電極層61(例えば、第1の導体線62)の幅に応じて、例えば、0.5μm以上2μm以下の直径φ(0.5≦φ≦2)を有する導電性粉末を用いることができる。なお、第1の網目状電極層61における電気抵抗値を安定させる観点から、形成する第1の網目状電極層61の幅の半分以下の平均直径φを有する導電性粉末を用いることが好ましい。また、導電性粉末としてカーボン系材料を用いる場合、BET法により測定した比表面積が20m2/g以上の粒子を用いることが好ましい。
第1の網目状電極層61として、一定以下の比較的小さい電気抵抗値が求められる場合、導電性粉末としては金属材料を用いることが好ましいが、第1の網目状電極層61として、一定以上の比較的大きい電気抵抗値が許容される場合には、導電性粉末としてカーボン系材料を用いることができる。なお、導電性粉末としてカーボン系材料を用いると、メッシュフィルムのヘイズや全光線反射率を改善させる観点から好ましい。
バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等を例示することができる。溶剤としては、α-テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、1−デカノール、ブチルセルソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラデカン等を例示することができる。なお、第1の網目状電極層61を構成する材料からバインダ樹脂を省略してもよい。
本実施形態の第1の網目状電極層61は、図4に示すように、導電性を有する複数の第1の導体線62a,62bを交差させて構成されており、その全体として、四角形状とされた複数の網目が繰り返し配列された形状を有している。本実施形態における「第1の導体線62a,62b」が本発明における「第1の導体線」の一例に相当する。なお、以下の説明では、必要に応じて「第1の導体線62a」及び「第1の導体線62b」を「第1の導体線62」と総称する。
本実施形態の第1の導体線62の外形は、図5及び図6に示すように、接触面63と、頂面64と、2つの側面65,65と、から構成されている。接触面63は、第1の樹脂層5と接触している面である。本実施形態の第1の網目状電極層61は、第1の樹脂層5に支持されるものであるが、この場合、接触面63は、頂面64に対して第1の樹脂層5側に位置する面となる。また、接触面63は、短手方向断面において、微細な凹凸からなる凹凸状の面となっている。
一方、頂面64は、接触面63の反対側の面であり、第1の樹脂層5の下方の面(図5中下側の面)と実質的に平行となっている。頂面64は、第1の導体線62の幅方向の断面において、平坦部641を含んでいる。この平坦部641は、第1の導体線62の幅方向の断面において、頂面64に存在する直線状の部分(すなわち、曲率半径が極めて大きい部分)であり、平面度が0.5μm以下である。なお、平面度は、JIS法(JIS B0621(1984))により測定することができる。
本実施形態では、平坦部641の平面度は、レーザー光を用いた非接触式の測定方法を用いて求める。具体的には、帯状のレーザー光を測定対象(具体的には、頂面64)に照射し、その反射光を撮像素子(たとえば、2次元CMOS)上に結像させて平面度を測定する。平面度の算出方法としては、対象の平面において、できるだけ離れた3点を通過する平面をそれぞれ設定し、それらの偏差の最大値を平面度として算出する方法(最大ふれ式平面度)を用いる。なお、平面度の測定方法や算出方法は、特に上述に限定されない。例えば、平面度の測定方法は、ダイヤルゲージ等を用いた接触式の測定方法であってもよい。また、平面度の算出方法は、対象となる平面を、平行な平面で挟んだときにできる隙間の値を平面度として算出する方法(最大傾斜式平面度)であってもよい。
本実施形態の平坦部641は、頂面64の略全体に形成されている。なお、特に上述に限定されず、平坦部641は、頂面64の一部に形成されていてもよい。この場合、例えば、平坦部が頂面の両端を含まない領域に形成されていてもよい。平坦部が頂面の一部に形成される場合、当該平坦部の幅は、上面の幅に対して少なくとも1/2以上となっている。
側面65,65は、短手方向断面視において、第1の樹脂層5から離れるにしたがって、相互に接近するように傾斜する直線状とされた面である。また、本実施形態では、側面65,65は、短手方向断面視において、接触する第1の樹脂層5の支持部52と連続的になっている。
この側面65は頂面64と接触面63との間に位置している。この側面65は、第1の部分651で頂面64と繋がり、第2の部分652で接触面63と繋がっている。本実施形態の第1の導体線62は、第2の導体層8側に向かって幅狭となるテーパー形状を有していることから、第2の部分652は、第1の部分651よりも外側に位置している。本実施形態の側面65は、第1の導体線62の幅方向の断面において、第1及び第2の部分651,652を通る仮想直線(不図示)上を延在する直線状の面となっている。
なお、側面65の形状は、特に上述に限定されない。たとえば、側面65は、第1の導体線62の幅方向の断面において、第1及び第2の部分651,652を通る仮想直線よりも外側に突出していてもよい。このように、側面65は、第1の導体線62の幅方向の断面において、第1及び第2の部分を通る仮想直線よりも内側に凹んでいない形状(導体パターンの裾が広がらない形状)であることが好ましい。
本実施形態の側面65は、第1の導体線62の幅方向の断面において、平坦部653を含んでいる。平坦部653は、第1の導体線62の幅方向の断面において、側面65に存在する直線状の部分(すなわち、曲率半径が極めて大きい部分)であり、平面度が0.5μm以下となっている。本実施形態では、側面65の略全体に平坦部653が形成されている。なお、平坦部653の形状は、特に上述に限定されず、側面65の一部に形成されてもよい。
側面65における光の乱反射を抑制する観点から、側面65と頂面64との間の角度θ1は、90°〜170°(90°≦θ1≦170°)であることが好ましく、90°〜120°(90°≦θ1≦120°)であることがより好ましい。本実施形態では、一の第1の導体線62において、一方の側面65と頂面64との間の角度と、他方の側面65と上面325頂面64との間の角度とは、実質的に同一となっている。
本実施形態における第1の網目状電極層61の接触面63の面粗さは、当該第1の網目状電極層61と第1の樹脂層5とを強固に固定する観点から、頂面64の面粗さに対して相対的に粗いことが好ましい。本実施形態では、頂面64が平坦面641を含んでいることから、上記第1の導体線62における面粗さの相対的関係(接触面63の面粗さが頂面64の面粗さに対して相対的に粗い関係)が成立している。具体的には、接触面63の面粗さRaが0.1μm〜3.0μm程度であるのに対し、頂面64の面粗さRaは0.001μm〜1.0μm程度となっていることが好ましい。なお、第1の導体線62の接触面63の面粗さRaが0.1μm〜0.5μmであることがより好ましく、頂面64の面粗さRaが0.001〜0.3μmであることがさらにより好ましい。また、下面326接触面63の面粗さと、頂面64の面粗さとの比(接触面63の面粗さに対する頂面64の面粗さ)が、0.01〜1未満であることが好ましく、0.1〜1未満であることがより好ましい。また、頂面64の面粗さは、第1の導体線62の幅(最大幅)の5分の1以下であることが好ましい。なお、このような面粗さは、JIS法(JIS B0601(2013年3月21日改正))により測定することができる。また、接触面63の面粗さと、頂面64の面粗さとの比(接触面63の面粗さに対する頂面64の面粗さ)が、0.01〜1未満であることが好ましく、0.1〜1未満であることがより好ましい。また、頂面64の面粗さは、第1の導体線62の幅(最大幅)の5分の1以下であることが好ましい。
因みに、JIS法(JIS B0601(2013年3月21日改正))に記載されるように、ここでの「面粗さRa」とは、「算出平均粗さRa」のことをいう。この「算出平均粗さRa」とは、断面曲線から長波長成分(うねり成分)を遮断して求められる粗さパラメータのことをいう。断面曲線からのうねり成分の分離は、形体を求めるのに必要な測定条件(たとえば対象物の寸法等)に基づいて行われる。
また、本実施形態では、側面65が平坦面653を含んでいる。このため、接触面63の面粗さが、側面65の面粗さに対して相対的に粗くなっている。具体的には、第1の導体線62の接触面63の面粗さRaが0.1μm〜3μm程度であるのに対し、側面65の面粗さRaは0.001μm〜1.0μm程度となっていることが好ましい。
本実施形態では、接触面63の面粗さが頂面64の面粗さ及び側面65の面粗さに対して相対的に粗いことから、当該接触面63を除く他の面(すなわち、頂面64及び側面65)側における配線体4の乱反射率が、当該接触面63側における配線体4の乱反射率に対して相対的に小さくなっている。配線体4の視認性の向上を図る観点から、この接触面63側における配線体4の乱反射率と接触面63を除く他の面側における配線体4の乱反射率との比(接触面63側における配線体4の乱反射率に対する当該接触面63を除く他の面側における配線体4の乱反射率)は、0.1〜1未満であることが好ましく、0.3〜1未満であることがより好ましい。
上述した接触面と当該接触面を除く他の面との面粗さの相対的関係を有する第1の導体線62Bの形状の一例について、図7を参照しながら説明する。図7に示すように、導電性粉末Mとバインダ樹脂Bとにより構成される第1の導体線62Bでは、複数の導電性粉末Mがバインダ樹脂B中に分散している。この第1の導体線62Bには、幅方向の断面において、導電性粉末Mの一部がバインダ樹脂Bから突出する凹凸形状の接触面63Bと、導電性粉末M同士の間にバインダ樹脂Bが入り込み、当該バインダ樹脂Bが導電性粉末Mを覆う平坦形状の頂面64B及び側面65Bと、が形成されている。なお、頂面64B及び側面65Bにおいて、導電性粉末Mがバインダ樹脂Bにより覆われていることで、隣り合う第1の導体線62B同士の間における電気絶縁性が向上し、マイグレーションの発生が抑制される。
図7に示す形態では、接触面63Bにおいて導電性粉末Mの一部がバインダ樹脂Bから突出していることで、当該接触面63Bの面粗さが比較的大きくなっている。一方、頂面64Bにおいてバインダ樹脂Bにより導電性粉末Mが覆われていることで、当該頂面64Bの面粗さが比較的小さくなっている。このため、接触面63Bの面粗さが頂面64Bの面粗さに対して相対的に粗くなっている。
また、側面65Bにおいて、バインダ樹脂Bにより導電性粉末Mが覆われていることで、当該側面65Bの面粗さが比較的小さくなっている。このため、接触面63Bの面粗さが側面65Bの面粗さに対して相対的に粗くなっている。
本実施形態における「接触面63」が本発明における「第1の面」の一例に相当し、本実施形態における「頂面64」が本発明における「第2の面」の一例に相当し、本実施形態における「側面65,65」が本発明における「側面」の一例に相当する。
図4に戻り、本実施形態の第1の網目状電極層61では、以下のように第1の導体線62を配設する。すなわち、第1の導体線62aは、X方向に対して+45°に傾斜した方向(以下、単に「第1の方向」との称する。)に沿って直線状に延在しており、当該複数の第1の導体線62aは、この第1の方向に対して実質的に直交する方向(以下、単に「第2の方向」とも称する。)に等ピッチP1で並べられている。
これに対し、第1の導体線62bは、第2の方向に沿って直線状に延在しており、当該複数の第1の導体線62bは、第1の方向に等ピッチP2で並べられている。そして、これら第1の導体線62a,62bが相互に直交することで、四角形状(菱型状)の網目が繰り返し配列された第1の網目状電極層61が形成されている。本明細書において、ピッチとは中心間距離のことを示す。
なお、第1の網目状電極層61の構成は、特に上述に限定されない。たとえば、本実施形態では、第1の導体線62aのピッチP1と第1の導体線62bのピッチP2とを実質的に同一としているが(P1=P2)、特にこれに限定されず、第1の導体線62aのピッチP1と第1の導体線62bのピッチP2とを異ならせてもよい(P1≠P2)。
また、本実施形態では、第1の導体線62aの延在方向である第1の方向は、X方向に対して+45°に傾斜した方向とされ、第1の導体線62bの延在方向である第2の方向は、第1の方向に対して実質的に直交する方向とされているが、第1及び第2の方向の延在方向(すなわち、X軸に対する第1の方向の角度やX軸に対する第2の方向の角度)は、任意とすることができる。
また、第1の網目状電極層61の網目の形状は、幾何学模様であってもよい。すなわち、網目の形状が、正三角形、二等辺三角形、直角三角形等の三角形でもよいし、長方形、正方形、ひし形、平行四辺形、台形等の四角形でもよい。また、網目の形状が、六角形、八角形、十二角形、二十角形等のn角形や、円、楕円、星型等でもよい。
このように、第1の網目状電極層61として、種々の図形単位を繰り返してえられる幾何学模様を、網目の形状として用いることができる。また、本実施形態では、第1の導体線62は、直線状とされているが、特にこれに限定されず、たとえば、曲線状、馬蹄状、ジグザグ線状等にしてもよい。
また、本実施形態において、第1の導体線62a、62bは互いに略等しい線幅を有しているが、第1の導体線62a、62bが相互に異なる線幅を有していてもよい。具体的には、第1の導体線62a、62bの幅W1(図5参照)としては、50nm〜1000μmであることが好ましく、500nm〜150μmであることがより好ましく、1μm〜10μmであることがさらに好ましく、1μm〜5μmであることがさらにより好ましい。
引き出し配線66は、図4に示すように、第1の網目状電極層61に対応して設けられており、本実施形態では、3つの第1の網目状電極層61に対して3つの引き出し配線66が形成されている。この引き出し配線66は、引出部67を介して第1の網目状電極層61における図中の−Y方向側から引き出されている。この引き出し配線66は、上述した第1の網目状電極層61と同様の材料によって一体的に形成されている。
この「一体的に」とは、部材同士が分離しておらず、且つ、同一材料(同一粒径の導電性粉末、バインダ樹脂等)により一体の構造体として形成されていることを意味する。なお、第1の網目状電極層61の外縁において、引き出し配線66が設けられる位置は特に限定されない。また、本実施形態では、引き出し配線66は引出部67を介して第1の網目状電極層61と接続されているが、特にこれに限定されず、引き出し配線66と第1の網目状電極層61を直接接続してもよい。
第2の樹脂層7は、図5及び図6に示すように、第1の導体層6を覆うように第1の樹脂層5上に形成されている。また、第2の樹脂層7上には、第2の導体層8が形成されている。結果として、第2の樹脂層7は、第1の導体層6と第2の導体層8との間に介在し、これらの絶縁を確保する機能を有している。
本実施形態では、第1及び第2の導体層6,8を含む配線体4は、カバーガラス31及び液晶パネル32の少なくとも一方によって支持されるものである。この場合、第2の樹脂層7は、第1及び第2の導体層6,8(すなわち、二つの電極)間に挿入される絶縁材料(誘電体)であればよく、従来のように電極層を支持する支持体として機能させるための剛性は必要としない。このため、第2の樹脂層7の厚さ(高さ)の低減化が可能であり、延いては、配線体4の薄型化を図ることができる。
本実施形態では、第1の樹脂層5と第2の樹脂層7とは、化学結合により相互に直接接着されている。なお、化学結合に加えて、第1及び第2の樹脂層5,7間の分子間力やアンカー効果によりこれら樹脂層5,7が結合していてもよい。このような第1の樹脂層5と第2の樹脂層7との間の接着強度は、少なくとも10N/cm以上であることが好ましい。また、第1の樹脂層5と第2の樹脂層7との接着強度は、当該第1及び第2の樹脂層5,7の破壊強度よりも大きな接着強度であることが好ましい。
この第2の樹脂層7を構成する材料としては、第1の樹脂層5を構成する材料と同様の材料を例示することができるが、本実施形態では、第1の樹脂層5を構成する材料と、第2の樹脂層7を構成する材料とは、同一の組成を有するものを選択して配線体4を構成する。
つまり、本実施形態の第2の樹脂層7は、第1の樹脂層5と同様、光学等方性を有する材料により構成されており、これにより、配線体4に入射する入射光の複屈折が抑制される。なお、第1の樹脂層5と同様、第2の樹脂層7を構成する材料は、リタデーション値Reが10nm以下であり、5nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましい。
また、第2の樹脂層7を構成する材料としては、第1及び第2の導体層6,8(特に、第1及び第2の網目状電極層61,81)間の位置ずれを抑制する観点から、当該第2の樹脂層7を形成する過程において体積の収縮が小さい材料が好ましい。具体的には、第2の樹脂層7を構成する材料としては、当該材料を塗工する工程において溶剤を必要としないUV硬化性樹脂を用いることが好ましい。
本明細書において、2つの樹脂層を構成する材料が同一の組成を有するとは、以下の場合をいう。すなわち、一方の樹脂層(たとえば、第1の樹脂層5)を構成する材料の主鎖を構成する1つ又は2以上の単位構造が他方の樹脂層(たとえば、第2の樹脂層7)を構成する材料の主鎖に全て含まれると共に、他方の樹脂層を構成する材料の主鎖を構成する1つ又は2以上の単位構造が一方の樹脂層を構成する材料の主鎖に全て含まれていることをいう。
2つの樹脂層を構成する材料が同一の組成を有する場合において、一方の樹脂層を構成する材料の側鎖を構成する1つ又は2以上の置換基又は官能基が他方の樹脂層を構成する材料の側鎖に全て含まれると共に、他方の樹脂層を構成する材料の側鎖を構成する1つ又は2以上の置換基又は官能基が一方の樹脂層を構成する材料の側鎖に全て含まれていることが好ましい。
また、2つの樹脂層を構成する材料が同一の組成を有する場合において、一方の樹脂層を構成する材料の平均分子量と、他方の樹脂層を構成する材料の平均分子量とが、実質的に等しいことが好ましい。
また、2つの樹脂層を構成する材料が同一の組成を有する場合において、一方の樹脂層を構成する材料の側鎖を構成する1つ又は2以上の置換基又は官能基が他方の樹脂層を構成する材料の側鎖に全て含まれると共に、他方の樹脂層を構成する材料の側鎖を構成する1つ又は2以上の置換基又は官能基が一方の樹脂層を構成する材料の側鎖に全て含まれ、且つ、一方の樹脂層を構成する材料の平均分子量と、他方の樹脂層を構成する材料の平均分子量とが、実質的に等しいことがより好ましい。
また、これら2つの樹脂層を構成する材料が同一の組成を有する場合、一方の樹脂層に対する赤外線分光分析により得られる赤外吸収スペクトルと、他方の樹脂層に対する赤外線分光分析から得られる赤外吸収スペクトルとが、実質的に一致する。
また、本実施形態では、第1の樹脂層5と同様、配線体4の視認性の低下を抑制する観点から、下記(12)や(13)式が成立していることが好ましい。
1.45≦N2≦1.55・・・(12)
97%≦T2・・・(13)
但し、上記(12)式及び(13)式において、N2は第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率であり、T2は第2の樹脂層7を構成する材料の全光線透過率である。
なお、本実施形態では、第1及び第2の樹脂層5,7を構成する材料は同一の組成を有しているので、第1の樹脂層5を構成する材料の屈折率N1と、第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率N2とが実質的に等しくなる。これにより、第1及び第2の樹脂層5,7間の界面において、配線体4に入射した入射光の散乱等の発生を抑制することができる。また、上記(12)式及び(13)式が成立していることで、配線体4の視認性の低下をさらに抑制することができる。
本明細書において、第1の樹脂層5を構成する材料の屈折率N1と、第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率N2とが実質的に等しいとは、これら屈折率N1,N2の差の絶対値が0.01以下であることをいう。
なお、屈折率N2としては、1.47以上1.52以下(1.47≦N2≦1.52)であることがより好ましく、全光線透過率T2としては、99%以上(99%≦T2)であることがより好ましい。
本実施形態の第2の樹脂層7を構成する材料は、第1の樹脂層5を構成する材料と同様、架橋された樹脂材料である。このため、第2の樹脂層7を構成する材料が架橋される前の状態に比べて、当該第2の樹脂層7の熱膨張率を小さくすることができる。また、第2の樹脂層7を構成する材料が架橋される前の状態に比べて、当該第2の樹脂層7の強度や硬度を向上させることができる。また、第2の樹脂層7が有機溶媒に溶け難くなり、当該第2の樹脂層7の形状を維持し易くなる。
このような第2の樹脂層7を構成する材料としては、比較的架橋密度の大きい樹脂材料を用いることが好ましい。具体的には、第2の樹脂層7を構成する材料の架橋点間分子量を用いて表すと、当該第2の樹脂層7を構成する材料の架橋点間分子量が、10000g/mol未満であることが好ましく、3000g/molであることがより好ましい。また、第2の樹脂層7を構成する材料の架橋点間分子量は、モノマー分子量の250倍未満であることが好ましく、80倍未満であることがより好ましい。また、第2の樹脂層7が脆くならないようにする観点から、当該第2の樹脂層7を構成する材料の架橋点間分子量は、1000g/mol以上であることが好ましい。
この第2の樹脂層7は、図5及び図6に示すように、第1の導体層6を覆う主部71と、当該主部71上に形成された支持部72と、から構成されている。支持部72は、主部71と第2の導体層8の間に形成されており、第1の樹脂層5から離れる方向(図6中上側方向)に向かって突出するように形成されている。支持部72が形成されることで、第2の導体層8を支える部分で第2の樹脂層7の剛性が向上している。また、支持部72と第2の導体層8との境界は、当該第2の導体層8の接触面(例えば、第2の導体線82の接触面83等)の凹凸形状に対応した凹凸形状となっている。このような凹凸形状は、第2の導体層8の接触面の面粗さに基づいて形成されている。なお、図5に示すように、第2の導体層8の延在方向に沿った断面における支持部72と当該第2の導体層8との境界も、当該第2の導体層8の接触面の凹凸形状に対応した凹凸形状となっている。第2の導体層8の接触面の面粗さについては、第2の導体線82の接触面83の面粗さを例にして、後に詳細に説明する。図5及び図6においては、本実施形態における配線体4を分かり易く説明するために、支持部72と第2の導体層8の境界の凹凸形状を誇張して示している。
第2の樹脂層7は、支持部72の上面(図6中上側の面)において、第2の導体層8と接している。この支持部72は、短手方向断面視において、第1の樹脂層5から離れるにしたがって相互に接近するように傾斜する直線状とされた2つの側面を有している。なお、ここでいう短手方向断面視とは、支持部72と接する第2の網目状電極層81を構成する第2の導体線82(図6を参照)の短手方向に沿った断面を示す。
本実施形態では、配線体4の薄型化の観点から、下記(14)式が成立していることが好ましい。
20μm≦H2≦200μm・・・(14)
但し、上記(14)式において、H2は第2の樹脂層7の高さである。なお、第2の樹脂層7の高さH2とは、第1の導体線62の頂面64と第2の導体線82の接触面83との間に介在する当該第2の樹脂層7の厚さ(高さ)をいう。
また、本実施形態では、下記(15)式が成立していることが好ましく、(16)式が成立していることがより好ましい。
H1<H2・・・(15)
H1<H2≦20×H1・・・(16)
本実施形態における「第2の樹脂層7」が本発明における「第2の樹脂層」の一例に相当する。
第2の導体層8は、第1の導体層6と同様、図4に示すように、第2の網目状電極層81と、引き出し配線86と、を有している。第2の網目状電極層81は、図4に示すように、X方向に延在する入力装置1の検出電極である。本実施形態における「第2の導体層8」が本発明における「第2の導体層」の一例に相当する。
第2の網目状電極層81は、第1の網目状電極層61と同様、導電性を有する複数の第2の導体線82a,82bを交差させて構成されており、その全体として、四角形状とされた複数の網目が繰り返し配列された形状を有している。本実施形態における「第2の導体線82a,82b」が本発明における「第2の導体線」の一例に相当する。なお、以下の説明では、必要に応じて「第2の導体線82a」及び「第2の導体線82b」を「第2の導体線82」と総称する。
本実施形態の第2の導体線82の外形は、第1の導体線62と同様、図5及び図6に示すように、接触面83と、頂面84と、2つの側面85,85と、から構成されている。接触面83は、第2の樹脂層7と接触している面である。一方、頂面84は、接触面83の反対側の面である。側面85,85は、短手方向断面視において、第2の樹脂層7から離れるにしたがって、相互に接近するように傾斜する直線状とされた面である。
頂面84は、第2の導体線82の幅方向の断面において、平坦部841を含んでいる。この平坦部841は、第2の導体線82の幅方向の断面において、頂面84に存在する直線状の部分(すなわち、曲率半径が極めて大きい部分)であり、平面度が0.5μm以下となっている。
本実施形態の平坦部841は、頂面84の略全体に形成されている。なお、特に上述に限定されず、平坦部841は、頂面84の一部に形成されていてもよい。この場合、例えば、平坦部が上面の両端を含まない領域に形成されていてもよい。平坦部が上面の一部に形成される場合、当該平坦部の幅は、上面の幅に対して少なくとも1/2以上となっている。
側面85は、頂面84と接触面83との間に位置している。この側面85は、第1の部分851で頂面84と繋がり、第2の部分852で接触面83と繋がっている。本実施形態の第2の導体線82は、第1の導体層32から離れる側に向かって幅狭となるテーパー形状を有していることから、第2の部分852は、第1の部分851よりも外側に位置している。側面85は、第2の導体線82の幅方向の断面において、第1及び第2の部分851,852を通る仮想直線(不図示)上を延在する直線状の面となっている。
なお、側面85の形状は、特に上述に限定されない。例えば、側面85は、第2の導体線82の幅方向の断面において、第1及び第2の部分851,852を通る仮想直線よりも外側に突出していてもよい。このように、側面85は、第2の導体線82の幅方向の断面において、第1及び第2の部分を通る仮想直線よりも内側に凹んでいない形状(第2の導体線82の裾が広がらない形状)であることが好ましい。
本実施形態の側面85は、第2の導体線82の幅方向の断面において、平坦部853を含んでいる。平坦部853は、第2の導体線82の幅方向の断面において、側面85に存在する直線状の部分(すなわち、曲率半径が極めて大きい部分)であり、平面度が0.5μm以下となっている。本実施形態で、側面85の略全体に平坦部853が形成されている。なお、平坦部853の形状は、特に上述に限定されず、側面85の一部に形成されていてもよい。
側面85における光の乱反射を抑制する観点から、側面85と頂面84との間の角度θ2は、90°〜170°(90°≦θ2≦170°)であることが好ましく、90°〜120°(90°≦θ2≦120°)であることがより好ましい。本実施形態では、一の第2の導体線82において、一方の側面85と頂面84との間の角度と、他方の側面85と頂面84との間の角度は、実質的に同一となっている。
本実施形態における第2の網目状電極層81の接触面83の面粗さは、当該第2の網目状電極層81と第2の樹脂層7とを強固に固定する観点から、頂面84の面粗さに対して相対的に粗いことが好ましい。本実施形態では、頂面84が平坦部841を含んでいることから、上記第2の導体線82における面粗さの相対的関係(接触面83の面粗さが頂面84の面粗さに対して相対的に粗い関係)が成立する。このような接触面83の面粗さや頂面84の面粗さの具体的な値としては、上述した接触面63の面粗さや頂面64の面粗さと同様の値であることが好ましい。具体的には、第2の導体線82の接触面83の面粗さRaが0.1μm〜3μm程度であるのに対し、頂面84の面粗さRaは0.001μm〜1.0μm程度となっていることが好ましい。なお、第2の導体線82の接触面83の面粗さRaが0.1μm〜0.5μmであることがより好ましく、頂面84の面粗さはRaが0.001μm〜0.3μmであることがより好ましい。また、接触面83の面粗さと、頂面84の面粗さとの比(接触面83の面粗さに対する頂面84の面粗さ)が、0.01〜1未満であることが好ましく、0.1〜1未満であることがより好ましい。また、頂面84の面粗さは、第2の導体線82の幅(最大幅)の5分の1以下であることが好ましい。頂面84及び接触面83の面粗さの測定は、第2の導体線82の幅方向に沿って行ってもよいし、当該第2の導体線82の延在方向に沿って行ってもよい。
また、本実施形態では、側面85が平坦部853を含んでいる。このため、接触面83の面粗さが、側面85の面粗さに対して相対的に粗くなっている。具体的には、第2の導体線82の接触面83の面粗さRaが0.1μm〜3μm程度であるのに対し、側面85の面粗さRaは0.001μm〜1.0μm程度となっていることが好ましい。
本実施形態では、接触面83の面粗さが頂面84の面粗さ及び側面85の面粗さに対して相対的に粗いことから、当該接触面83を除く他の面(すなわち、頂面84及び側面85)側における配線体4の乱反射率が、当該接触面63側における配線体4の乱反射率に対して相対的に小さくなっている。この接触面83側における配線体4の乱反射率と接触面63を除く他の面側における配線体4の乱反射率との比(接触面83側における配線体4の乱反射率に対する当該接触面83を除く他の面側における配線体4の乱反射率)は、配線体4の視認性の向上を図る観点から、0.1〜1未満であることが好ましく、0.3〜1未満であることがより好ましい。
上述した下面と当該下面を除く他の面との面粗さの相対的関係を有する第2の導体線の形状の一例としては、図7に示す第1の導体線62Bと同様の形状を挙げることができる。すなわち、図示は省略するが、第2の導体線には、幅方向の断面において、導電性粉末の一部がバインダ樹脂から突出する凹凸形状の下面と、導電性粉末同士の間にバインダ樹脂が入り込み、当該バインダ樹脂が導電性粉末を覆う平坦形状の上面及び側部と、が形成されている。これにより、下面の面粗さが上面の面粗さに対して相対的に粗くなっている。また、下面の面粗さが側部の面粗さに対して相対的に粗くなっている。
また、第2の導体線82の幅及び高さは、上述の第1の導体線62の幅及び高さの範囲内で設定することができる。
第3の樹脂層9は、図5及び図6に示すように、第2の導体層8を覆うように第2の樹脂層7上に形成されている。この第3の樹脂層9は、第2の導体層8を外部から保護する保護層としての機能を有している。また、第3の樹脂層9により第2の導体層8を覆うことで、配線体4表面での光の散乱等の発生が抑制され、当該配線体4の視認性の低下をさらに抑制することができる。
本実施形態では、第3の樹脂層9を構成する材料は、第1及び第2の樹脂層5,7を構成する材料と同一の組成を有している。したがって、第1及び第2の樹脂層5、7と同様、第3の樹脂層9が光学等方性を有する材料により構成されるので、配線体4に入射する入射光の複屈折が抑制される。また、第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率と、第3の樹脂層9を構成する材料の屈折率とが実質的に等しいことで、当該第2及び第3の樹脂層7,9間の界面において、配線体4に入射した入射光の散乱等の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、下記(17)式が成立していることが好ましく、(18)式が成立していることがより好ましい。
H3<H2・・・(17)
H1≦H3<H2・・・(18)
但し、上記(17)式及び(18)式において、H3は、第3の樹脂層9の高さである。なお、第3の樹脂層9の高さH3とは、第2の導体線82の頂面84と、第3の樹脂層9の第2の樹脂層7側に位置する面の反対側の面との間に介在する第3の樹脂層9の厚さ(高さ)をいう。
なお、第3の樹脂層9の高さH3としては、具体的には、1μm以上180μm以下であることが好ましい(1μm≦H3≦180μm)。
本実施形態における「第3の樹脂層9」が本発明における「第3の樹脂層」の一例に相当する。
次に、本実施形態における配線基板の製造方法について説明する。図8(a)〜図8(e)、及び、図9(a)〜図9(k)は本発明の一実施の形態に係る導体層付き構造体の製造方法を示す断面図である。
まず、図8(a)に示すように、第1の導体層6の形状に対応する形状の凹部111が形成された凹版11を準備する。凹版11を構成する材料としては、ニッケル、シリコン、二酸化珪素などガラス類、有機シリカ類、グラッシーカーボン、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等を例示することができる。
凹部111のうち第1の網目状電極層61に対応する部分の深さは、100nm〜100μmであることが好ましく、500nm〜10μmであることがさらに好ましく、500nm〜5μmであることがさらにより好ましく、その幅は、100nm〜100μmが好ましく、500nm〜10μm以下であることさらに好ましく、500nm〜5μm以下であることがより好ましい。
一方、凹部111のうち引き出し配線66に対応する部分の深さは、第1の網目状電極層61と同じか深い方が好ましく、100nm〜500μmであることが好ましく、500nm〜100μmであることがさらに好ましく、500nm〜30μmであることがさらにより好ましく、その幅は、第1の網目状電極層61よりも広い方が好ましく、1μm〜500μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがさらに好ましく、1μm〜30μmであることがさらにより好ましい。本実施形態において凹部111の断面形状は、底部に向かうにつれて幅狭となるテーパー形状が形成されている。
なお、凹部111の表面には、離型性をするために、黒鉛系材料、シリコーン系材料、フッ素系材料、セラミック系材料、アルミニウム系材料等からなる離型層(不図示)を予め形成することが好ましい。
上記の凹版11の凹部111に対し、導電性材料12を充填する。このような導電性材料12としては、上述した導電性ペーストを用いる。
導電性材料12を凹版11の凹部111に充填する方法としては、例えばディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法を挙げることができる。もしくはスリットコート法、バーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法での塗工の後に凹部111以外に塗工された導電性材料をふき取るもしくは掻き取る、吸い取る、貼り取る、洗い流す、吹き飛ばす方法を挙げることができる。導電性材料の組成等、凹版の形状等に応じて適宜使い分けることができる。
次に、図8(b)に示すように、凹版11の凹部111に充填された導電性材料12を加熱することにより第1の導体層6を形成する。導電性材料12の加熱条件は、導電性材料の組成等に応じて適宜設定することができる。この加熱処理により、導電性材料12が体積収縮し、当該導電性材料12の表面121に僅かに凹凸形状が形成される。この際、導電性材料12の上面を除く外面は、凹部111に沿った形状に成形される。
なお、導電性材料12の処理方法は加熱に限定されない。赤外線、紫外線、レーザー光等のエネルギー線を照射しても良いし、乾燥のみでもよい。また、これらの2種以上の処理方法を組合せても良い。表面121の凹凸形状により、第1の導体層6と第1の樹脂層5との接触面積が増大し、当該第1の導体層6をより強固に第1の樹脂層5に固定することができる。
続いて、図8(c)に示すように、第1の樹脂層5を形成するため、第1の導体層6が形成された凹版11(図8(b)に示す状態の凹版11)上に樹脂材料13を塗布する。このような樹脂材料13としては、上述した第1の樹脂層5を構成する材料を用いる。樹脂材料13を凹版11上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法、キャスト法等を例示することができる。
形成しようとする第1の樹脂層5の特性に応じて、樹脂材料13の粘度を調整したり、種々の添加剤を混合してもよい。また、形成しようとする第1の樹脂層5の特性に応じて、樹脂材料13に、当該樹脂材料13の硬化処理に適した溶剤や硬化開始剤等を混合してもよい。第1の樹脂層5の特性としては、たとえば、当該第1の樹脂層5の厚さ、耐イオンマイグレーション性、紫外線耐性、離型性等がある。樹脂材料13の粘度の調整は、混合する溶剤の含有量を調整したり、当該樹脂材料13を構成する材料の主鎖を構成する単位構造の原料状態での分子量を調整したりすることで行う。なお、樹脂材料13として、溶剤を必要としないUV硬化性樹脂を用いると、第1の樹脂層5を形成する過程において体積の収縮が小さいなるため好ましい。
次いで、図8(d)に示すように、樹脂材料13が凹版11の凹部111に入り込むよう支持基材14を凹版11上に配置して、当該支持基材14を凹版11に押し付け、樹脂材料13を硬化させる。本実施形態において、樹脂材料13の硬化処理は、当該樹脂材料13に化学反応(例えば、重合反応や架橋反応等)を生じさせることで行われる。樹脂材料13を硬化させる方法としては、紫外線、赤外線レーザー光等のエネルギー線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を例示することができる。樹脂材料13を硬化させるために加熱やエネルギー線照射を行う場合、当該樹脂材料13への加熱方法や照射方法は、形成しようとする第1の樹脂層5の特性に応じて適宜設定する。また、樹脂材料13に加える熱量は、形成しようとする第1の樹脂層5の特性に応じて適宜設定する。これにより、第1の樹脂層5が形成される。
ここで、支持基材14は、カバーガラス31及び液晶パネル32の少なくとも一方に配線体4を支持させるまで、当該配線体4の運搬等に際し、これを仮に支持するものである。支持基材14を構成する材料としては、たとえば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等を用いることができる。なお、支持基材14を構成する材料は、配線体4を仮に支持する剛性を有していればよく、その材料は特に上述に限定されず、より安価な材料を採用してもよい。
このように、本実施形態では、配線体4(具体的には、第1及び第2の導体層6,8)を支持する機能を、当該配線体4の構成から分離することで、配線体4の薄型化を図ると共に、電極層を支持する部材(すなわち、本実施形態では支持基材14)のリタデーション値Reに起因した視認性の低下を抑制することができる。また、支持基材14を構成する材料として安価なものを採用することができるので、配線体4の製造コストの低減を図ることができる。
本実施形態では、配線体4の視認性の低下の抑制及び配線体4の欠損防止の観点から、下記(19)式が成立していることが好ましい。
0.01N/cm≦N1≦1N/cm・・・(19)
但し、上記(19)式において、N1は第1の樹脂層5と支持基材14との剥離強度である。なお、本明細書における剥離強度は、JIS法(JIS Z0237)により測定することができる。
N1が上記(19)式の下限値以未満であると、配線体4の製造過程において、第1の樹脂層5と支持基材14とが意図せず剥離してしまうおそれがある。一方、N1が上記(19)式の上限値超であると、配線体4から支持基材14を剥離させる際に、過度に大きい力を付与する必要があるため、当該配線体14が欠損するおそれがある。なお、N1については、第1の樹脂層5と支持基材14との剥離性を向上する観点から、0.2N/cm以下であることがより好ましい(0.01N/cm≦N1≦0.2N/cm)。
本実施形態の支持基材14では、上記(19)式を達成するため少なくとも、支持基材14の主面のうち配線体4の主面42に面する側の主面が平滑となるような表面処理が施されている。このような支持基材14の主面としては、具体的には、その面粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。上記支持基材14の面粗さは、当該支持基材14を構成する材料に含まれる添加剤やフィラーを除去したり、当該フィラーの寸法(フィラー径)を小さくすることで得ることができる。
また、特に上述に限定されず、たとえば、支持基材14の主面にコーティング層を形成するコーティング処理を行う表面処理によって上記(19)式を達成してもよい。コーティング層を構成する材料としては、シリコーン系材料、フッ素系材料、黒鉛系材料、セラミック系材料、アルミニウム系材料等を例示することができる。このようなコーティング層の厚さとしては、1μm以下であることが好ましい。支持基材14主面にコーティング層を形成する方法としては、上述の材料を含むコーティング液を当該支持基材14の主面に塗布した後、乾燥、硬化等をする方法を例示することができる。
なお、支持基材14の表面処理の方法としては、上記(19)式を達成することができれば、上述した方法に限定されず、公知の方法を採用することができる。
樹脂材料13として、熱硬化性材料を用いた場合には、当該樹脂材料13に種々の添加剤等を加えて流動性を向上させた状態にして、上記方法により流延した後加熱することにより、樹脂材料13に化学反応を生じさせて第1の樹脂層5を形成することができる。
このように、本実施形態では、第1の樹脂層5を形成するに際して、物理的な圧力を印加しない(すなわち、延伸を行わない)ので、延伸による分子の配向が生じない。これにより、第1の樹脂層5に光学等方性が付与され、当該第1の樹脂層5を備える配線体4の視認性の低下が抑制される。
因みに、第1の樹脂層5の形成方法は特に上記に限定されない。例えば、第1の樹脂層5を形成するための樹脂材料13が支持基材14上に略均一に塗布されたものを用意して、当該樹脂材料13が凹版11の凹部111に入り込むように当該支持基材14を凹版11に押し付けた状態で樹脂材料13を硬化させることにより第1の樹脂層5を形成してもよい。
続いて、図8(e)に示すように、支持基材14、第1の樹脂層5、及び第1の導体層6を凹版11から離型させ、第1の中間体15を得る。
次に、図9(a)に示すように、第2の導体層8の形状に対応する形状の凹部161が形成された凹版16を準備する。凹版16を構成する材料としては、凹版11を構成する材料と同様の材料を例示することができる。また、凹版16に形成された凹部161の形状は、第2の導体層8に対応するものであるが、この第2の導体層8は第1の導体層6と同様の構成を有しているので、凹部161の深さや幅は、上述の凹部111と同様の値を有する。
なお、凹部111と同様、凹部161の表面には、離型性を向上するために、黒鉛系材料、シリコーン系材料、フッ素系材料、セラミック系材料、アルミニウム系材料等からなる離型層(不図示)を予め形成することが好ましい。
上記の凹版16の凹部161に対し、導電性材料17を充填する。このような導電性材料17としては、導電性材料12と同様の材料を例示することができる。また、導電性材料17を凹版16の凹部161に充填する方法としては、導電性材料12を凹版11の凹部111に充填する方法と同様の方法を用いることができる。
次に、図9(b)に示すように、凹版16の凹部161に充填された導電性材料17を加熱することにより第2の導体層8を形成する。導電性材料17の加熱条件は、導電性材料の組成等に応じて適宜設定することができる。この加熱処理により、導電性材料17が体積収縮し、当該導電性材料17の表面171に僅かに凹凸形状が形成される。この際、導電性材料17の上面を除く外面は、凹部161に沿った形状に成形される。
表面171の凹凸形状により、第2の導体層8と第2の樹脂層7との接触面積が増大し、当該第2の導体層8をより強固に第2の樹脂層7に固定することができる。なお、導電性材料12の場合と同様、導電性材料17の処理方法は加熱に限定されない。
続いて、図9(c)に示すように、第2の樹脂層7を形成するため、樹脂材料18を第1の中間体15上に塗布する。このような樹脂材料18としては、上述した第2の樹脂層7を構成する材料を用いることができるが、本実施形態では、上述した樹脂材料13で選択された材料と同一の組成を有する材料が用いられる。
形成しようとする第2の樹脂層7の特性に応じて、樹脂材料18の粘度を調整したり、種々の添加剤を混合してもよい。また、形成しようとする第2の樹脂層7の特性に応じて、樹脂材料18に、当該樹脂材料18の硬化処理に適した溶剤や硬化開始剤等を混合してもよい。第2の樹脂層7の特性としては、第1の樹脂層5と同様のものが挙げられる。また、樹脂材料18の粘度を調整する方法としては、樹脂材料13の粘度を調整する方法と同様の方法を用いることができる。なお、樹脂材料18として、溶剤を必要としないUV硬化性樹脂を用いると、第2の樹脂層7を形成する過程において体積の収縮が小さいなるため好ましい。
本実施形態において、樹脂材料13に混合される添加剤、溶剤、硬化開始剤と、樹脂材料18に混合される添加剤、溶剤、硬化開始剤とが異なっていてもよい。本明細書において、第1の樹脂層5を構成する材料と、第2の樹脂層7を構成する材料とが同一の組成を有しているとは、樹脂材料13の組成と樹脂材料18の組成が異なるかどうかに因らず、第1及び第2の樹脂層5,7が形成された後の状態で判断する。
なお、第2の樹脂層7を構成する材料の粘度は、塗布時の十分な流動性を確保する観点から、1mPa・s〜10,000mPa・sであることが好ましい。また、硬化後の樹脂の貯蔵弾性率は、第1の導体層6や第2の導体層8の耐久性の観点から、106Pa以上、109Pa以下であることが好ましい。樹脂材料18を第1の中間体15上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法、キャスト法等を例示することができる。
ここで、本実施形態では、第1の中間体15を構成する第1の樹脂層5は、樹脂材料13に化学反応を生じさせて硬化させている。このため、樹脂材料13と、第1の樹脂層5を構成する材料とは、相互に異なる主骨格を有している。また、樹脂材料13の分子量と、第1の樹脂層5を構成する材料の分子量とは、相互に異なっている。この場合、第1の中間体15(具体的には、第1の樹脂層5)上に樹脂材料13と同じ組成の樹脂材料18を塗布しても、当該樹脂材料18に含まれる溶剤等により当該第1の樹脂層5が浸食されない。また、樹脂材料18の熱量により当該第1の樹脂層5が熱変形しない。
次いで、図9(d)に示すように、樹脂材料18が凹版16の凹部161に入り込むよう第1の中間体15及び樹脂材料18を凹版16上に配置して、当該第1の中間体15を凹版16に押し付け、樹脂材料18を硬化させる。第1の中間体15を凹版16に押し付ける際の加圧力は、0.001MPa〜100MPaであることが好ましく、0.01MPa〜10MPaであることがより好ましい。なお、当該加圧は加圧ローラー等を用いて行うことができる。これにより、第2の樹脂層7が形成されると共に、当該第2の樹脂層7を介して第1の中間体15と第2の導体層8とが相互に接着され固定される。
本実施形態において、樹脂材料18の硬化処理は、当該樹脂材料18に化学反応を生じさせることで行われる。樹脂材料18を硬化させる方法としては、紫外線、赤外線レーザー光等のエネルギー線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を例示することができる。これにより、第2の樹脂層7が形成される。なお、第1の樹脂層5と同様、第2の樹脂層7についても、当該第2の樹脂層7を形成する際に物理的な圧力を印加しないので、分子の配向が生じない。これにより、第2の樹脂層7に光学等方性が付与され、当該第2の樹脂層7を備える配線体4の視認性の低下が抑制される。
本実施形態では、第1の中間体15を樹脂材料18に押し付けて、当該樹脂材料18を硬化させる過程において、当該樹脂材料18と第1の樹脂層5を構成する材料の官能基との間で化学反応(架橋反応)が生じている。このため、第1の樹脂層5と第2の樹脂層7とが、相互に化学的に結合された状態となる。なお、上述の化学的な結合に加えて、第1の樹脂層5と第2の樹脂層7とが、これらの間の分子間力やアンカー効果により結合されていてもよい。
そして、図9(e)に示すように、第1の中間体15、第2の樹脂層7及び第2の導体層8を凹版16から離型させ、第2の中間体19を得る。
続いて、図9(f)に示すように、第3の樹脂層9を形成するため、樹脂材料20を第2の中間体19上に塗布する。このような樹脂材料20としては、上述した第3の樹脂層9を構成する材料を用いることができるが、本実施形態では、上述した樹脂材料13、18で選択された材料と同一の組成を有する材料が用いられる。
形成しようとする第3の樹脂層9の特性に応じて、樹脂材料20の粘度を調整したり、種々の添加剤を混合してもよい。また、形成しようとする第3の樹脂層9の特性に応じて、樹脂材料20に、当該樹脂材料20の硬化処理に適した溶剤や硬化開始剤等を混合してもよい。第3の樹脂層9の特性としては、第1の樹脂層5と同様のものが挙げられる。また、樹脂材料20の粘度を調整する方法としては、樹脂材料13の粘度を調整する方法と同様の方法を用いることができる。なお、樹脂材料20として、溶剤を必要としないUV硬化性樹脂を用いると、第3の樹脂層9を形成する過程において体積の収縮が小さいなるため好ましい。
樹脂材料13、18と樹脂材料20の間で、混合される添加剤、溶剤、硬化開始剤等が相互に異なっていてもよい。本明細書において、第1の樹脂層5を構成する材料又は第2の樹脂層7を構成する材料と、第3の樹脂層9を構成する材料とが同一の組成を有しているとは、樹脂材料13、18の組成と樹脂材料20の組成が異なるかどうかに因らず、第1〜第3の樹脂層5,7,9が形成された後の状態で判断する。
なお、第3の樹脂層9を構成する材料の粘度は、塗布時の十分な流動性を確保する観点から、1mPa・s〜10,000mPa・sであることが好ましい。また、硬化後の樹脂の貯蔵弾性率は、第2の導体層8の耐久性の観点から、106Pa以上、109Pa以下であることが好ましい。樹脂材料20を第2の中間体19上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法、キャスト法等を例示することができる。
ここで、本実施形態では、第2の中間体19を構成する第2の樹脂層7は、樹脂材料18に化学反応を生じさせて硬化させている。このため、樹脂材料18と、第2の樹脂層7を構成する材料とは、相互に異なる主骨格を有している。また、樹脂材料18の分子量と、第2の樹脂層7を構成する材料の分子量とは、相互に異なっている。この場合、第2の中間体19(具体的には、第2の樹脂層7)上に樹脂材料18と同じ組成の樹脂材料20を塗布しても、当該樹脂材料20に含まれる溶剤等により当該第2の樹脂層7が浸食されない。また、樹脂材料20の熱量により第2の樹脂層7が熱変形しない。
そして、樹脂材料20を硬化させて、第3の樹脂層9を形成する。本実施形態において、樹脂材料20の硬化処理は、当該樹脂材料20に化学反応を生じさせることで行われる。樹脂材料20を硬化させる方法としては、紫外線、赤外線レーザー光等のエネルギー線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を例示することができる。この第3の樹脂層9についても、第1及び第2の樹脂層5,7と同様、当該第3の樹脂層9を形成する際に物理的な圧力を印加しないので、分子の配向が生じない。これにより、第3の樹脂層9に光学等方性が付与され、当該第3の樹脂層9を備える配線体4の視認性の低下が抑制される。
続いて、図9(g)に示すように、第1の接着層101を構成する接着材料21を、カバーガラス31上に塗布する。このような接着材料21としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を例示することができる。接着材料21をカバーバラス31上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法、キャスト法等を例示することができる。
次いで、図9(h)に示すように、第2の中間体19を接着材料21が介した状態でカバーガラス31に押し付け、当該接着材料21を硬化させる。接着材料21を硬化させる方法としては、紫外線、赤外線レーザー光等のエネルギー線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を例示することができる。これにより、第1の接着層101が形成される。カバーガラス31は、第1の接着層101を介して、配線体4の主面41に接着している。配線体4は、主面41側からカバーガラス31により支持される。
そして、図9(i)に示すように、支持基材14を剥がして配線体4の主面42(第1の樹脂層5)を露出させる。配線体4は、第1の接着層101を介して、カバーガラス31により支持されているので、支持基材14を配線体4から剥離しても、配線体4が破損するおそれは低い。なお、支持基材14を剥離するタイミングは、特に上述に限定されない。たとえば、第3の樹脂層9を形成した後(図9(f))、支持基材14を剥離させてもよい。この場合、配線体4の主面41にカバーガラス3を設ける前に、支持基材14を剥離させる。
次いで、図9(j)に示すように、第2の接着層102を構成する接着材料22を、液晶パネル32の主面321上に塗布する。このような接着材料22としては、上述の接着材料21と同様の材料を用いる。接着材料22を液晶パネル32上に塗布する方法としては、上述の接着材料21をカバーガラス31上に塗布する方法と同様の方法を用いる。
次いで、図9(k)に示すように、第2の中間体19を接着材料22が介した状態で液晶パネル32に押し付け、当該接着材料22を硬化させる。接着材料22を硬化させる方法としては、上述の接着材料21を硬化させる方法と同様の方法を用いる。これにより、第2の接着層102が形成される。液晶パネル32は、第2の接着層102を介して、配線体4の主面42に設けられる。以上により、導体層付き構造体2を得ることができる。
本実施形態における導体層付き構造体2は、以下の効果を奏する。
従来では、静電容量方式を用いた接触位置検出機構として、基材と、当該基材の両方の主面のそれぞれに形成された二つの電極層と、から構成されるものが用いられている。このような接触位置検出機構を採用してタッチパネルとする場合、基材を構成する材料は、二つの電極層を支持する剛性を確保することができるものを選定する必要があった。このような基材は、二つの電極層を支持する必要があるため、その厚さ(高さ)を小さくすることも困難であり、結果として、タッチパネルの薄型化を阻害していた。加えて、このような基材としては、一般に、樹脂材料を延伸して形成される複屈折のある材料が用いられる。この場合、基材を透過することで発生する光の位相差によって、タッチパネルの画像表示面にニジムラ等が生じ、当該タッチパネルの視認性を低下させるおそれがあった。光学等方性を有するリタデーション値の小さい材料や光学異方性を有するリタデーション値の大きい材料(すなわち、複屈折の大きい材料)を採用して、上述する視認性の低下の抑制を図ることも考えられるが、このようなリタデーション値の小さい材料や大きい材料を用いると、製造コストの増大を招くおそれがあった。
また、従来から用いられる光学等方性を有する材料として、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、又はシクロオレフィンがある。接触位置検出機構を構成する二つの電極層は、それぞれ電極と当該電極を支持する樹脂層とから構成されるが、従来の光学等方性を有する材料を当該樹脂層に採用して、二つの樹脂層を積層させる場合、これらの材料を予めフィルム状に成形して、二つの樹脂層同士を接着材料により接合しなければならない。このため、樹脂層を構成する材料と接着材料とが異なる組成となり、当該樹脂層を構成する材料と接着材料間の屈折率の相違から入射光の散乱等が発生し、接触位置検出機構の視認性が低下するおそれがある。また、上述の従来の光学等方性を有する材料は、架橋されていないため、熱膨張率が比較的大きく、温度変化に対する寸法精度が悪い。また、上述の従来の光学等方性を有する材料は、架橋されていないため、これら材料により構成された樹脂層の強度や硬度が比較的劣っている。さらに、上述の従来の光学等方性を有する材料は、有機溶媒に可溶であるため、一方の樹脂層を構成する材料が他方の樹脂層を浸食したり、熱変形させたりして、二つの樹脂層を積層させることができない。
これに対し、本実施形態では、第1の樹脂層5を構成する材料と、第2の樹脂層7を構成する材料とは、同一の組成の光学等方性を有する材料により構成されているので、配線体4に入射する入射光の複屈折が抑制される。これにより、導体層付き構造体2の視認性の低下の抑制を図ることができる。また、第1及び第2の樹脂層5,7として、高価な材料を使用する必要がないので、コストの低減を図ることができる。
さらに、本実施形態では、第1の導体層6は第1の樹脂層5で支持されているため、第1の導体層6を支持するための基材等が不要となり、導体層付き構造体2の視認性の低下の抑制を図ることができると共に、薄型化することができる。
そして、本実施形態の導体層付き構造体2では、カバーガラス31が配線体4の一方の主面41側に設けられ、液晶パネル32が配線体4の他方の主面42側に設けられ、カバーガラス31及び液晶パネル32の少なくとも一方により配線体4を支持している。カバーガラス31と配線体4の一方の主面41との間には、第1の接着層101のみが介在しており、基材等の他の構成は介在していない。また、液晶パネル32と配線体4の他方の主面42との間には、第2の接着層42のみが介在しており、基材等の他の構成は介在していない。このように、本実施形態では、配線体4に直接接着され配線体4を支持する基材等を用いないため、導体層付き構造体2の視認性の低下の抑制を図ることができると共に、導体層付き構造体2の薄型化を図ることができる。
なお、特開2014−191717号公報では、タッチパネルにおいて、印刷基材(支持基材)上にプライマ層及びセンサ電極等の導体層を形成しているが、印刷基材を有するため、薄型化出来ず、また、光学等方性の基材は高価であり、低コスト化できない。これに対し、本実施形態では、印刷基材を有さないため、薄型化かつ視認性を向上させることができる。
なお、従来の配線体では、センサ電極などを得るための導電性組成物の硬化を支持基材上で行うため、支持基材と絶縁樹脂とが焼き付いたり、支持基材が変形するため、配線体から支持基材をきれいに剥がすことができない。したがって、支持基材14を用いることなく、導体層付き構造体2(配線体4)を得ることはできない。
また、本実施形態では、第1の樹脂層5を構成する材料と、第2の樹脂層7を構成する材料とは、同一の組成を有しているので、第1の樹脂層5を構成する材料の屈折率N1と、第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率N2とが実質的に等しくなる。これにより、第1及び第2の樹脂層5,7間の界面において、配線体4に入射した入射光の散乱等の発生を抑制することができ、導体層付き構造体2の視認性の低下の抑制を図ることができる。
また、本実施形態では、第1の樹脂層5を構成する材料と、第2の樹脂層7を構成する材料とが同一の組成を有していることで、これらの樹脂層5,7間において熱膨張係数を実質的に等しくすることができるので、第1及び第2の樹脂層5,7の間で、寸法の変化の程度(たとえば、変化量や変化方向)を実質的に等しくすることができる。これにより、第1の樹脂層5上に位置する第1の網目状電極層61と、第2の樹脂層7上に位置する第2の網目状電極層81との間で位置ずれが生じ難くなり、平面視において、第1及び第2の網目状電極層61,81の重複部分にムラが生じて導体層付き構造体2の視認性が低下するのを抑えることができる。
また、第1の樹脂層5を構成する材料と、第2の樹脂層7を構成する材料とが同一の組成を有する場合において、第1の樹脂層5を構成する材料の側鎖を構成する1つ又は2以上の置換基又は官能基が第2の樹脂層7を構成する材料の側鎖に全て含まれると共に、第2の樹脂層7を構成する材料の側鎖を構成する1つ又は2以上の置換基又は官能基が第1の樹脂層5を構成する材料の側鎖に全て含まれていることで、第1の樹脂層5を構成する材料の屈折率N1と、第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率N2とをより等しくすることができると共に、第1の樹脂層5を構成する材料の熱膨張率と、第2の樹脂層7を構成する材料の熱膨張率とをより等しくすることができる。これにより、第1及び第2の樹脂層5,7間の界面において、配線体4に入射した入射光の散乱等の発生をさらに抑制されると共に、第1及び第2の網目状電極層61,81の重複部分にムラが生じるのをさらに抑えることができる。この結果、導体層付き構造体2の視認性の低下をさらに抑制することができる。
また、第1の樹脂層5を構成する材料と、第2の樹脂層7を構成する材料とが同一の組成を有する場合において、第1の樹脂層5を構成する材料の平均分子量と、第2の樹脂層7を構成する材料の平均分子量とを実質的に等しくすることで、第1の樹脂層5を構成する材料の屈折率N1と、第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率N2とをより等しくすることができると共に、第1の樹脂層5を構成する材料の熱膨張率と、第2の樹脂層7を構成する材料の熱膨張率とをより等しくすることができる。これにより、第1及び第2の樹脂層5,7間の界面において、配線体4に入射した入射光の散乱等の発生をさらに抑制されると共に、第1及び第2の網目状電極層61,81の重複部分にムラが生じるのをさらに抑えることができる。この結果、導体層付き構造体2の視認性の低下をさらに抑制することができる。
また、本実施形態では、樹脂材料13に化学反応を生じさせて硬化処理を行い、第1の樹脂層5を形成している。この場合、樹脂材料13と、第1の樹脂層5を構成する材料とは、相互に異なる主骨格を有し、また、樹脂材料13の分子量と、第1の樹脂層5を構成する材料の分子量とは、相互に異なっている。このため、第1の樹脂層5上に樹脂材料13と同じ組成の樹脂材料18を塗工しても、当該樹脂材料18に含まれる溶剤により第1の樹脂層5が浸食されない。また、塗工する樹脂材料18の熱量により第1の樹脂層5が熱変形しない。
さらに、本実施形態では、上記(8)式及び(12)が成立していることで、上述したカバーガラス31を構成する材料の屈折率と、当該第1及び第2の樹脂層5、7との屈折率との差を小さくすることができ、導体層付き構造体2に入射した入射光の散乱等の発生を抑制することができる。これにより、導体層付き構造体2の視認性の低下の抑制を図ることができる。
また、本実施形態では、上記(9)及び(13)式が成立していることで、配線体4に入射した光の透過光量が減少し難いので、導体層付き構造体2の視認性が低下するのをさらに抑制することができる。
さらに、本実施形態では、上記(10)式が成立していることで、導体層付き構造体2の薄型化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、接触面63、83の面粗さが、頂面64,84の面粗さに対して相対的に粗いことで、第1の網目状電極層61と第1の樹脂層5、或いは、第2の網目状電極層81と第2の樹脂層7とを強固に固定することができる。
さらに、本実施形態では、第3の樹脂層9を構成する材料を、第1及び第2の樹脂層5、7を構成する材料と同一の組成とすることで、当該第3の樹脂層9も光学等方性を有する材料により構成されるので、配線体4に入射する入射光の複屈折が抑制される。これにより、導体層付き構造体2の視認性の低下をさらに抑制することができる。
また、第2の樹脂層7を構成する材料の屈折率と、第3の樹脂層9を構成する材料の屈折率とが実質的に等しくなるので、第2及び第3の樹脂層7,9間の界面において、配線体4に入射した入射光の散乱等の発生を抑制することができ、導体層付き構造体2の視認性の低下の抑制を図ることができる。
また、本実施形態では、配線体4が上記(15)式を満たしていることで、第1の導体線62と第2の導体線82の間の距離が長くなるため、電気的特性の悪化を防止でき、2層以上の導電層を有する当該配線体4として正常に機能させることができる。また、第1の樹脂層5が、第2の樹脂層7よりも薄くなるため、配線体4(配線基板1)全体の膜厚を薄くすることができる。特に、本実施形態における配線体4をタッチセンサに用いた場合には、指等の接触体が接触した場合、放出された電気力線が第1の導体線62と第2の導体線82の間で閉じることが防止でき、接触体に適切に反応する。その結果、検出力が向上する。また、導体層付き構造体2全体の膜厚を薄くすることで、光透過性も向上する。
また、本実施形態では、配線体4が上記(16)式を満たしていることで、第2の樹脂層7厚さH2を必要以上に厚くすることを防止できるため、導体層付き構造体2全体の膜厚を薄くすることができる。
また、本実施形態では、配線体4が上記(17)式を満たしていることで、第3の樹脂層9を設けた場合でも全体の膜厚を薄くすることが可能となる。特に導体層付き構造体2をタッチパネルに用いた場合には、光透過性も向上させることができる。
また、本実施形態の配線体4では、第1の導体層6における接着面と当該接着面以外の他の面との面粗さ(すなわち、うねり成分を遮断した粗さパラメータ)の相対的関係に着目している。第1の導体線62を例に説明すると、本実施形態では、当該第1の導体線62の接触面63の面粗さRaを他の面(第1の導体線62の頂面64及び側面65を含む面)の面粗さRaに対して相対的に粗くしている。このため、第1の導体線62と第1の導体層6とを強固に接着しつつ、外部から入射する光の乱反射を抑制することができる。特に、第1の導体線62の幅が1μm〜5μmの場合に、接着面と他の面との面粗さの相対的関係が上述の関係を満たすことで、第1の樹脂層5と第1の導体線62とを強固に接着しつつ、外部から入射する光の乱反射を抑制することができるという効果を顕著に奏することができる。
また、本実施形態では、側面65は、第1及び第2の部分651,652を通る仮想直線と実質的に一致するように延在している。この場合、第1の導体層の構成要素の幅方向の断面において、側面が仮想直線よりも内側に凹んだ形状(導体パターンの裾が広がる形状)となっていないため、導体層付き構造体2の外部から入射する光の乱反射が抑えられる。このような配線体4をタッチパネル等に実装することで、当該タッチパネル等の視認性をさらに向上することができる。
また、本実施形態では、接触面63の面粗さRaを接触面63以外の他の面の面粗さRaに対して相対的に粗くしていることで、当該他の面側における配線体4の乱反射率が、接触面63側における配線体4の乱反射率に対して相対的に小さくなっている。ここで、配線体4の乱反射率が小さいと、第1の導体線62が白く映るのを抑え、当該第1の導体線62を視認できる領域においてコントラストの低下を抑制することできる。このように、本実施形態の配線体4を実装したタッチパネル等の視認性のさらなる向上を図ることができる。なお、本実施形態において、上述の作用・効果は、第2の導体層8における接触面83が当該接触面83以外の他の面との面粗さに対して相対的に粗いことによって、当該第2の導体層8においても奏することができる。
さらに、本実施形態の導体層付き構造体2では、接着層10は、カバーガラス31と第3の樹脂層9との間に介在している。すなわち、第1の樹脂層5に対して第2の樹脂層7がカバーガラス31に接近する側に位置するように配線体4が配置されている。これにより、第1及び第2の網目状電極層61,82を構成する第1及び第2の導体線62,82の外形のうち比較的平坦な面がカバーガラス31側を向くように配置されるので、当該カバーガラス31側から入射する入射光の散乱等の発生を抑制することができる。
図10は本発明の他の実施の形態に係る導体層付き構造体を示す断面図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
図10に示すように、本実施形態の導体層付き構造体2Aは、カバーガラス31と、配線体4と、第1の接着層101とを備えている。
カバーガラス31は、第1の接着層101を介して、配線体4の一方の主面41側から配線体4を支持している。カバーガラス31は、配線体4の主面41の全体を覆っており、配線体4の主面41は、外部に露出していない。
第1の接着層101は、カバーガラス31と配線体4との間に介在している。第1の接着層101は、カバーガラス31の主面311に直接接着し、配線体4の主面41(具体的には、第3の樹脂層9)に直接接着している。カバーガラス31と配線体4との間には、第1の接着層101が介在するだけで、基材等の他の構成は介在していない。配線体4の他方の主面42は、導体層付き構造体2Aの外部に露出している。
本実施形態の導体層付き構造体2Aでは、配線体4は、カバーガラス31により支持されているので、破損が生じるおそれが低い。このため、配線体4の他方の主面42に基材を用いることなく露出させたままとすることができる。これにより、導体層付き構造体2Aの視認性の低下の抑制を図ることができると共に、薄型化を図ることができる。
図11は本発明の他の実施の形態に係る導体層付き構造体を示す断面図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
図11に示すように、本実施形態の導体層付き構造体2Bは、支持体31Bと、配線体4Bとを備えている。配線体4Bは、第1の樹脂層5と、第1の導体層6と、第2の樹脂層7とを備える。配線体4Bの一方の主面41は、第2の樹脂層7により構成されている。配線体4Bの他方の主面42は、第1の樹脂層5により構成されている。
支持体31Bは、例えば、配線体4Bを収容する筐体(不図示)の底面を構成する板状の部材である。支持体31Bとしては、配線体4Bを支持できる剛性を有していればよく、特に限定されないが例えば、プリント基板、放熱板、筐体等により構成されている。支持体31Bからは、配線体4Bの位置をずれなく保持するための複数の位置決めピン312が設けられている。位置決めピン312は、支持体31Bの主面311Bから、Z方向に沿って立設されている。
配線体4Bの外縁近傍には、位置決めピン312が内部に挿通される複数の位置決め穴43が形成されている。位置決め穴43は、配線体4Bの両方の主面41,42に開口し、Z方向に沿って配線体4Bを貫通している。本実施形態の導体層付き構造体2Bでは、配線体4Bは、位置決め穴43の内部に位置決めピン312が挿通された状態で、支持体31B上に載置されている。支持体31Bの主面311Bと配線体4Bの主面42とは、単に直接接触しているだけで、接着されていない。本明細書において、支持体と配線体とが接触するとは、接着されておらず、固定されなければ分離可能な状態をいう。配線体4Bの主面41は、導体層付き構造体2Bの外部に露出している。配線体4Bの主面41上には、基材等の他の構成は設けられていない。本実施形態における「支持体31B」が本発明における「支持体」の一例に相当する。
本実施形態の導体層付き構造体2Bでは、配線体4Bは、支持体31Bにより支持されているため、破損が生じるおそれは低い。このように、本実施形態では、配線体4Bに直接接着され配線体4Bを支持するための基材等を用いる必要がないため、導体層付き構造体2Bの視認性の低下の抑制を図ることができると共に、導体層付き構造体2Bの薄型化を図ることができる。
図12は本発明の他の実施の形態に係る導体層付き構造体を示す断面図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
図12に示すように、本実施形態の導体層付き構造体2Cは、支持体31Bと、基板32Bと、配線体4Bとを備えている。
基板32Bは、配線体4上に載置される板状の部材である。このような基板32Bとしては、特に限定されないが例えば、プリント基板、放熱板、筐体、カバー部材等により構成されている。支持体31B及び基板32Bの少なくとも一方は、透光性を有する部分を有する。
本実施形態の導体層付き構造体2Cでは、配線体4Bは、支持体31Bと基板32Bとの間に挟まれている。支持体31Bの主面311Bと配線体4の主面42とは、単に直接接触しているだけで、接着されていない。基板32Bの主面321Bと配線体4の主面41とは、単に直接接触しているだけで、接着されていない。本実施形態における「基板32B」が本発明における「基板32B」の一例に相当する。
なお、配線体4Bと支持体31Bとが単に直接接触しているだけで、接着されておらず、配線体4Bと基板32Bとが単に直接接触しているだけで、接着されていない場合、配線体4Bを基準にして鉛直方向において下側に位置する側が支持体を構成し、配線体4Bを基準にして鉛直方向において上側に位置する側が基板を構成する。
本実施形態の導体層付き構造体2Cでは、配線体4Bは、支持体31Bと基板32Bとの間に挟まれて、支持体31Bにより支持されており、破損が生じるおそれは低い。このように、本実施形態では、配線体4に直接接着され配線体4Bを支持するための基材等を用いる必要がないため、導体層付き構造体2Cの視認性の低下の抑制を図ることができると共に、導体層付き構造体2Cの薄型化を図ることができる。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述の実施形態では、導体層付き構造体2は、配線体4とカバーガラス31との間に介在し、配線体4をカバーガラス31に接着する第1の接着層101と、配線体4と液晶パネル32との間に介在し、配線体4を液晶パネル32に接着する第2の接着層102と、を備えているが、特に上述に限定されない。たとえば、第1の接着層101を省略して、カバーパネル31の主面311と配線体4の主面41とを単に直接接触させるだけで、カバーパネル31と配線体4とを接着しなくてもよい。或いは第2の接着層102を省略して、液晶パネル32の主面321と配線体4の主面42とを単に直接接触させるだけで、液晶パネル32と配線体4とを接着していなくてもよい。
例えば、上述の実施形態では、第1及び第2の導体層を構成する導電性粉末として、金属材料又はカーボン系材料を用いているが、特にこれに限定されず、金属材料及びカーボン系材料を混合したものを用いてもよい。この場合、例えば、第1の導体線62を例に説明すると、当該第1の導体線62の頂面64側にカーボン系材料を配置し、接触面63側に金属系材料を配置してもよい。また、その逆で、第1の導体線62の頂面64側に金属系材料を配置し、接触面63側にカーボン系材料を配置してもよい。
また、本実施形態の配線体4は、2つの導体層6,8を備えているが、特にこれに限定されず、第1の導体層6のみを備える構成としてもよい。本例の第2の樹脂層が本発明における「第2の樹脂層」の一例に相当する。
また、上述の実施形態では、導体層付き構造体は、入力装置に用いられるとして説明したが、導体層付き構造体配線体の用途は特にこれに限定されない。たとえば、配線体に通電して抵抗加熱等で発熱させることにより当該導体層付き構造体をヒータとして用いてもよい。この場合、導体層を構成する導電性粉末としては、比較的電気抵抗値の高いカーボン系材料を用いることが好ましい。また、配線体の導体部の一部を接地することにより導体層付き構造体を電磁遮蔽シールドとして用いてもよい。また、導体層付き構造体をアンテナとして用いてもよい。本発明の導体層付き構造体は、透明性(透光性)を必要とするのであれば、種々の構造体に適用することができ、例えば、単純なスイッチ等にも用いることができる。この場合、配線体を実装する実装対象が本発明の「支持体」の一例に相当し、配線体及び支持体を備えるヒータ、電磁遮蔽シールド、及びアンテナが本発明における「導体層付き構造体」の一例に相当する。