以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
実施の形態1 図1は、本発明の実施の形態1に係る電動工具の側断面図である。図1において、前後及び上下方向を定義している。図2は、図1に示す電動工具の、ハンドル部3の一部を切り欠いた要部正面図である。図3は、図1に示す電動工具のフィルムコンデンサ組の外観図である。本実施の形態の電動工具は、インパクトドライバであり、ハウジング1は、ブラシレスモータ10、打撃機構部20、及び出力部30の一部を収納する胴体部2と、一端が胴体部2に接続しているハンドル部3と、ハンドル部3の他端に形成された収納部4と、を有する。
ブラシレスモータ10は、前後方向に延びる出力軸11と、出力軸11に固定され複数の永久磁石を有するロータ12と、ロータ12を囲むように配置され複数のステータコイル13を備えるステータ14と、出力軸11に固定された冷却ファン15と、を有する。出力軸11の両側は軸支(軸受で支持)され、ステータ14はハウジング1の胴体部2に固定されている。出力軸11の回転は、遊星歯車機構16を介して減速されて打撃機構部20のハンマ21に与えられる。
打撃機構部20は、ハンマケース25内に配されたハンマ21と、ハンマ21を前方に付勢するバネ23と、を有する。ハンマ21は、前端に衝突部22を有し、遊星歯車機構16の出力軸で回転駆動される。出力部30を構成するアンビル31は、後端に被衝突部32を有する。バネ23は、ハンマ21が回転した際に衝突部22が被衝突部32と回転方向において衝突するように、ハンマ21を前方に付勢する。このような構成により、ハンマ21が回転した際に、出力部30のアンビル31に回転打撃力が与えられる。また、ハンマ21は、バネ23の付勢力に反して後方に移動することも可能に構成されており、衝突部22と被衝突部32との衝突後、ハンマ21はバネ23の付勢力に抗して回転しながら後退する。そして、衝突部22が被衝突部32を乗り越えると、バネ23に蓄えられた弾性エネルギーが解放されてハンマ21は前方に移動し、再び、衝突部22と被衝突部32とが衝突する。出力部30を構成するアンビル31は、胴体部2の先端部、つまりハンマケース25の前端側で回転自在に軸支されており、アンビル31には、先端工具を着脱自在に装着できる。
ハンドル部3にはトリガ5が設けられ、トリガ5はハンドル部3内に収容されたスイッチ機構6と接続される。使用者はトリガ5によって、ブラシレスモータ10への電力の供給と遮断を切替え可能である。収納部4の下部の引出口48からは、商用電源等の外部交流電源に接続するための電源コード40が引き出される。収納部4内に収納された電源ボックス50が、電源コード40の基端側に接続される。電源ボックス50内には、電源コード40から入力された交流電力を直流電力に変換する整流回路を搭載した整流回路基板が設けられる。電源ボックス50内には、また、電源コード40と整流回路との間(すなわち整流回路に接続される電源入力ライン上)にそれぞれ挿入されるノイズフィルタとしての一対のチョークコイル41a,41bが並んで収納される。チョークコイル41a,41bのコアサイズは、例えば外径12mm×内径6mm×幅8mmであり、従来のフェライトコア41(図9)のコアサイズ(例えば外径20mm×内径10mm×幅12mm)と比較して小型である。すなわち、従来のフェライトコアに代えてチョークコイルを用いることで小型化を図ることができる。そのため収納部4を大きくすることなくチョークコイル41a,41bを収納部4に収納することができる。
収納部4内には更に、ブラシレスモータ10の回転等を制御する制御回路を搭載した制御回路基板60が収納される。インバータ回路から発生するノイズを除去するための一対のフィルムコンデンサ42a,42b(無極性コンデンサの例示)は、コンデンサ基板42cに搭載され、ハンドル部3内に並んで収納される。ハンドル部3内の所定数のリブ3aが、ハンドル部3内においてフィルムコンデンサ42a,42bを位置決め支持する。フィルムコンデンサ42a,42bは、それぞれ例えば4.7μFの容量であって相互に並列接続され、トータルで従来と比較して大容量(例えば9.4μF)のコンデンサを成している。図3に示すように、コンデンサ基板42cからは2本のリード線42d,42eが延びる。一方のリード線42dの一端は、フィルムコンデンサ42a,42bの一端に接続される。他方のリード線42eの一端は、フィルムコンデンサ42a,42bの他端に接続される。リード線42d,42eの他端は、電源ボックス50内の整流回路に接続される。
前記制御回路で制御されるインバータ回路は、胴体部2に固定されブラシレスモータ10の背後に位置するインバータ回路基板(スイッチング素子基板)70に搭載される。インバータ回路は、ブラシレスモータ10への通電をオン、オフする例えば6個のスイッチング素子としてのIGBT71を有し、各IGBT71はブラシレスモータ10と共に回転するファン15による空気流で冷却されるようになっている。前記制御回路は、各IGBT71をオン、オフする駆動信号を出力するドライブ回路(ゲートドライバ)及びマイクロコンピュータを含み、制御回路基板60とインバータ回路基板70との電気接続はケーブル72で行われる。なおスイッチング素子はFETであっても良い。
図4は、図1に示す電動工具の制御ブロック図である。電源コード40は商用電源46に接続される。電源ボックス50内には、電源コード40から供給される商用交流電源(例えば、国内ならAC100V、海外ならAC200V、AC230V等)を全波整流するためのダイオードブリッジ45(整流回路の例示)、ノイズフィルタを成す一対のチョークコイル41a,41b及びAC線間コンデンサ43、並びに制御回路81の駆動電圧を生成するスイッチング電源回路44が設けられる。ダイオードブリッジ45の出力端子間には、一対のフィルムコンデンサ42a,42bが並列接続される。電源ボックス50内の回路とフィルムコンデンサ42a,42bは、電源回路51を構成する。ダイオードブリッジ45の出力電圧は、インバータ回路85に入力される。インバータ回路85は、制御回路81の制御に従ってブラシレスモータ10を駆動する。
制御部としての制御回路81は、インバータ回路85のIGBTをオン、オフする駆動信号を出力するドライブ回路(ゲートドライバ)82、及びドライブ回路82を制御するマイクロコンピュータ(演算部)83を有する。ホールIC91は、ブラシレスモータ10のロータ12の位置を検出する回転位置検出素子の例示であり、例えば60°の間隔を隔てて3個配設される。各ホールIC91の回転位置検出出力は、制御回路81の回転位置検出回路84に入力される。制御回路81の過電流検出回路86は、ブラシレスモータ10の駆動電流を監視し、過電流状態を検出するとマイクロコンピュータ83に過電流検出信号を入力する。トリガ5により作動されるスイッチ機構6の出力もマイクロコンピュータ83(制御回路81)に入力される。なお、図4の操作部7は、スイッチ機構6に加え、使用者が操作する例えば正逆切替ボタン、モータ回転数を切り替える打撃力切替ボタン、及び各種モード切替ボタンの操作に応じた信号を出力する機能ブロックをまとめて示したものである。ハウジング1の収納部4には、その上面側に露出する表示パネル96を有するLED基板95が設けられ、表示パネル96には使用者が操作可能な各種ボタン(打撃力切替ボタンやモード切替ボタン等)が設けられると共に、選択された打撃力及びモード等が表示されるようになっている。制御回路81は、トリガ5によりスイッチ機構6が作動されたときに、各ホールIC91によるロータ位置の検出出力に基づいてインバータ回路85の各IGBT71のオン、オフ制御を行い、ロータ12を所定方向に所定回転速度で回転させる制御を行う。
次に、インパクトドライバとしての全体動作について説明する。電源コード40を商用電源に接続すると、制御回路81に駆動用電源が供給される。この状態で作業者がトリガ5を引くと、その引き代に応じた回転数でブラシレスモータ10が回転する。ブラシレスモータ10が回転することによって、打撃機構部20のハンマ21が出力部30のアンビル31を打撃し、これで保持される先端工具が回転する。作業者がトリガ5を離すことによりブラシレスモータ10は停止する。
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
(1) ダイオードブリッジ45の出力端子間に2つのフィルムコンデンサ42a,42bを並列接続しているため、インバータ回路85が発生するノイズを除去するための容量が従来と比較して大きくなり、ノイズ除去効果が増大する(ノイズ耐性が向上する)。また、電源側(AC側)からインバータ回路85側(DC側)に伝搬するノイズ(サージ)に対しても容量アップにより除去効果が大きくなる。
(2) 2つのフィルムコンデンサ42a,42bの並列接続によりトータルで大容量化しており、フィルムコンデンサ42a,42bはハンドル部3を従来より大径化しなくてもハンドル部3内に収納できるため、1つの大容量フィルムコンデンサを用いる場合と異なり、ハンドル部3を大径化しなくてもノイズ対策用のフィルムコンデンサの容量を大きくすることができる。
(3) 2つのフィルムコンデンサ42a,42bを共通のコンデンサ基板42cに搭載しており、コンデンサ基板42cから延びる2本のリード線42d,42eをダイオードブリッジ45の両出力端子にそれぞれ接続すればフィルムコンデンサ42a,42bの配線作業が完了するため、フィルムコンデンサ42a,42bがバラバラである場合と比較してフィルムコンデンサ組の収納及び配線作業が容易で組立性が良好となる。
(4) 2つのチョークコイル41a,41bを電源ボックス50内に収納しているため、チョークコイル41a,41bを電源ボックス50外に配置する場合と比較して配線作業が容易となる。
(5) AC側の素子であるチョークコイル41a,41bとDC側の素子であるフィルムコンデンサ42a,42bが物理的に離れたレイアウトであり、チョークコイルとフィルムコンデンサが相互に近接したレイアウトの場合と比較して、AC側とDC側との間における空間を経由したノイズの相互伝搬が小さいため、ノイズ対策の点で好ましく、また電源ボックス50内に収納可能な小型のチョークコイル41a,41bでも十分なノイズ除去効果が得られる。
実施の形態2 図5は、本発明の実施の形態2に係る電動工具の要部側断面図である。本実施の形態の電動工具は、図1等に示した実施の形態1のものと比較して、2つのフィルムコンデンサ42a,42bがコンデンサ基板42cに搭載されずハンドル部3内でリブ3aにより位置決め支持され、フィルムコンデンサ42a,42bのリード線(合計4本)がそれぞれ電源ボックス50内の整流回路に接続される点で相違し、その他の点で一致する。本実施の形態も、組立性以外の点では実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
実施の形態3 図6は、本発明の実施の形態3に係る電動工具の要部側断面図である。図7は、図6に示す電動工具の、ハンドル部3の一部を切り欠いた要部正面図である。本実施の形態の電動工具は、図1等に示した実施の形態1のものと比較して、2つのフィルムコンデンサ42a,42bが電源ボックス50内に収納され、2つのチョークコイル41a,41bがコイル基板41cに搭載されてハンドル部3内に配置されている点で相違し、その他の点で一致する。コイル基板41cはリブ3aによりハンドル部3内で位置決め支持される。本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に従来と比較してノイズ耐性の向上が可能になると共に、チョークコイルがフィルムコンデンサより小さいため、ハンドル部3の更なる小径化も可能となる。なお、チョークコイル41a,41bはコイル基板41cに搭載されなくてもよい。
実施の形態4 図8は、本発明の実施の形態4に係る電動工具の要部側断面図である。本実施の形態の電動工具は、図1等に示した実施の形態1のものと比較して、2つのフィルムコンデンサ42a,42bが収納部4内にリブ4aで位置決め支持され、電源ボックス50がハンドル部3内にリブ3aにより位置決め支持されている点で相違し、その他の点で一致する。2つのチョークコイルは電源ボックス50内に設けられる。2つのフィルムコンデンサ42a,42bは基板に搭載されてもよい。本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、ハンドル部3を小径としながら従来と比較してノイズ耐性を向上させることができる。
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
各実施の形態では、電動工具としてインパクトドライバを例示したが、本発明は、モータを搭載し交流電源によって駆動される電動工具であれば、インパクトドライバに限定されるものではない。例えば、インパクト工具としてのインパクトレンチ、クラッチを有するドライバドリルやスクリュードライバ、往復打撃機構を有するハンマドリル、油圧の打撃機構部を有するオイルパルスドライバなどであってもよい。