JPWO2014061259A1 - 電力ルータ、電力ネットワークシステム、電力融通方法、および電力ルータの運転制御プログラム - Google Patents
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Abstract
Description
デジタルグリッド(登録商標)とは、電力網を小規模なセルに細分化し、それらを非同期に相互接続した電力ネットワークシステムである。各電力セルは、小さなものとしては一つの家やビル、商業施設であり、大きなものとしては県や市町村といった規模になる。各電力セルは、その中に負荷を有することはもちろん、発電設備や電力貯蔵設備を有する場合もある。発電設備としては、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの自然エネルギーを利用する発電設備が例として挙げられる。
図12に電力ネットワークシステム10の例を示す。図12において、基幹系統11は大規模発電所12からの基幹電力を送電する。そして、複数の電力セル21−24が配置されている。各電力セル21−24は、家31やビル32などの負荷や、発電設備33、34や、電力貯蔵設備35、を有している。
発電設備としては、太陽光発電パネル33や風力発電機34などが例として挙げられる。電力貯蔵設備とは蓄電池34などのことである。本明細書では、発電設備と電力貯蔵設備とを総称して、分散電源ということがある。
ここで、レグとは、接続端子と電力変換部とを有しており、各レグにはアドレスが付されている。なお、レグによる電力変換とは、交流から直流へまたは直流から交流への変換や、電力の電圧、周波数、位相を変化させることをいう。
しかし、実際に電力ルータを実用化するとなると、これまでの送配電設備にはない特有の課題がある。現在主流の送配電設備は、電圧、位相および周波数が完全に同期している電力系統を前提としているから、電圧あるいは位相、周波数が異なる電力系統同士を接続する電力ルータには新たな課題に対する配慮が必要である。
電力セルを外部の電力系統に非同期に接続するための電力ルータであって、
所定の定格に電圧が維持される直流母線と、
一方の接続端が前記直流母線に接続され、他方の接続端が外部接続端子として外部の接続相手に接続され、前記一方の接続端と前記他方の接続端との間で電力を双方向に変換する機能を有する電力変換レグと、
前記電力変換レグの運転を制御する制御部と、を備えており、
前記電力変換レグが複数設けられ、
管理サーバからの指令によって制御され、
前記制御部は、前記電力変換レグをマスターモードと指定電力送受電モードとのいずれかの運転モードで運転制御するものであり、
前記マスターモードで運転される前記電力変換レグは、
前記直流母線の電圧が定格から下がった場合、不足分の電力を接続相手から補填し、前記直流母線の電圧が定格から上がった場合、過剰分の電力を接続相手に送出し、
前記指定電力送受電モードで運転される前記電力変換レグは、
前記管理サーバからの指定に応じて、指定電力を接続相手に送電するか、または、指定電力を接続相手から受電し、
制御部は、電力ルータの動作中には、少なくともいずれか一つの電力変換レグをマスターモードにする
ことを特徴とする。
一または複数の前記電力ルータと、
前記電力ルータが直接的または間接的に接続される電力系統と、を具備する電力ネットワークシステムにおいて、
前記マスターモードで運転される電力変換レグが直接または間接的に接続される接続相手は、基幹発電所に繋がる基幹系統か、分散電源か、のいずれかに制約される
ことを特徴とする。
前記電力ルータを二つ以上具備する電力ネットワークシステムであって、
前記電力ルータ間で電力を送受電する
ことを特徴とする。
前記電力ルータを二つ以上用いて、
前記電力ルータ間で電力を送受電することにより電力を融通する
ことを特徴とする。
所定の定格に電圧が維持される直流母線と、
一方の接続端が前記直流母線に接続され、他方の接続端が外部接続端子として外部の接続相手に接続され、前記一方の接続端と前記他方の接続端との間で電力を双方向に変換する機能を有する電力変換レグと、を備え、
前記電力変換レグが複数設けられ、
管理サーバからの指令によって制御され、
電力セルを外部の電力系統に非同期に接続するための電力ルータにコンピュータを組み込んで、
このコンピュータに、前記電力変換レグをマスターモードと指定電力送受電モードとのいずれかの運転モードで運転制御させる電力ルータの運転制御プログラムであって、
前記マスターモードで運転される前記電力変換レグは、
前記直流母線の電圧が定格から下がった場合、不足分の電力を接続相手から補填し、前記直流母線の電圧が定格から上がった場合、過剰分の電力を接続相手に送出し、
前記指定電力送受電モードで運転される前記電力変換レグは、
前記管理サーバからの指定に応じて、指定電力を接続相手に送電するか、または、指定電力を接続相手から受電し、
電力ルータの動作中には、少なくともいずれか一つの電力変換レグをマスターモードにする
ことを特徴とする。
非一時的なコンピュータ可読媒体はこの電力ルータの運転制御プログラムを記録したものである。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態として、電力ルータ100の概略構成を示す図である。また、図2は、電力ルータ100の内部構成をやや詳しく示す図である。
電力ルータ100は、概略、直流母線101と、複数のレグ110−160と、制御部190と、を備えている。
なお、制御部190は、CPU、ROM、RAMを有するいわゆるコンピュータである。
(直流母線101の電圧がどのようにして一定に保たれるのかは後述する。)
各レグ110−160を介して電力ルータ100は外部に繋がるのであるが、外部とやり取りする電力を一旦総て直流に変換して直流母線101にのせる。このように一旦直流を介することにより、周波数や電圧、位相の違いが無関係になり、電力セル同士を非同期で接続することができるようになる。ここでは、直流母線101は、図2に示すように、平滑コンデンサー102を有する並列型であるとする。直流母線101には電圧センサ103が接続されており、この電圧センサ103によって検出された直流母線101の電圧値は制御部190に送られる。
第1レグ110は、電力変換部111と、電流センサ112と、開閉器113と、電圧センサ114と、接続端子115と、を備えている。電力変換部111は、交流電力を直流電力に、あるいは、直流電力を交流電力に変換する。直流母線101には直流電力が流れているので、電力変換部111は、直流母線101の直流電力を定められた周波数および電圧の交流電力に変換して、接続端子115から外部に流す。あるいは、電力変換部111は、接続端子115から流入する交流電力を直流電力に変換して、直流母線101に流す。
(すなわち、一のインバータ回路に対して6個の逆並列回路111Pが設けられる。)
ここでは、三相交流を使用しているので三相インバータ回路としたが、場合によっては単相インバータ回路としてもよい。二つの逆並列回路111Pの間のノードから引き出され、前記ノードと接続端子とを結ぶ配線を支線BLと称することにする。(三相交流であるので、一のレグは三つの支線BLを有する。)
この場合の電力変換とは、DC−DC変換ということになる。図中には記載がないが、直流電源である太陽電池、燃料電池なども接続可能である。
したがって、電力変換部にインバータ回路とコンバータ回路とを並列に設け、接続相手が交流か直流かに応じてインバータ回路とコンバータ回路と使い分けるようにしてもよい。
あるいは、電力変換部がDC−DC変換部であるDC−DC変換専用のレグを設けるようにしてもよい。
すべてのレグのなかにインバータ回路とコンバータ回路とを並列に設けるよりは、AC−DC変換専用のレグとDC−DC変換専用のレグとを併せ持つ電力ルータとする方がサイズやコスト面で有利な点も多々ある。
第1レグ110から第5レグ150は電力変換器111−151を有しており、電力変換器内のサイリスタは制御部190によってそのスイッチング動作を制御されるものであることは既に述べた。
ここで、電力ルータ100は、電力ネットワーク10のノードにあって、基幹系統11、負荷30、分散電源および電力セルなどを互いに結びつける重要な役割を持つ。このとき、各レグ110−160の接続端子115−165がそれぞれ基幹系統11や負荷30、分散電源、他の電力セルの電力ルータに接続されるわけである。本発明者らは、接続相手によって各レグ110−160の役割は異なるものであり、各レグ110−160が役割に応じた適切な運転を行わなければ電力ルータが成り立たないことに気付いた。本発明者らは、レグの構造自体は同じであるが、接続相手によってレグの運転の仕方を変えるようにした。
レグの運転の仕方を、運転モードと称する。
本発明者らは、レグの運転モードとして3種類を用意しておき、接続相手によってモードを切り換えるようにした。
レグの運転モードとしては、
マスターモードと、
自立モードと、
指定電力送受電モードと、がある。
以下、順番に説明する。
マスターモードとは、系統など安定した電力供給源に接続される場合の運転モードであり、直流母線101の電圧を維持するための運転モードである。図1では、第1レグ110の接続端子115が基幹系統11に接続されている例を示している。図1の場合、第1レグ110は、マスターモードとして運転制御され、直流母線101の電圧を維持する役目を担うことになる。直流母線101には他の多くのレグ120−150が接続されているところ、レグ120−150から直流母線101に電力が流入することもあれば、レグ120−150から電力が流出することもある。マスターモードとなるレグ110は、直流母線101から電力が流出して直流母線101の電圧が定格から下がった場合、流出で不足した電力分を接続相手(ここでは基幹系統11)から補てんする。または、直流母線101に電力が流入して直流母線101の電圧が定格から上がった場合、流入で過剰になった電力分を接続相手(ここでは基幹系統11)に逃がす。このようにして、マスターモードとなるレグ110は、直流母線101の電圧を維持するのである。
したがって、一の電力ルータにおいて、少なくとも一つのレグはマスターモードとして運転されなければならない。さもなくば、直流母線101の電圧が一定に維持されなくなるからである。逆に、一の電力ルータにおいて二つ以上のレグがマスターモードで運転されてもよいが、やはり、マスターモードのレグは一つの電力ルータには一つであった方がよい。
また、マスターモードとなるレグは、基幹系統の他、安定した出力を持つ直流電源(燃料電池、蓄電池等)にレグを直流接続してもよい。また、例えば、自励式インバータを搭載する分散電源(蓄電池も含む)に交流接続してもよい。ただし、他励式インバータを搭載する分散電源とマスターモードとなるレグとは接続できない。
マスターレグを起動させる際には次のようにする。
まず、開閉器113を開(遮断)状態にしておく。この状態で接続端子115を接続相手に繋ぐ。ここでは、接続相手は基幹系統11である。
電圧センサ114によって接続先の系統の電圧を測定し、PLL(Phase−Locked−Loop)などを用いて系統の電圧の振幅、周波数および位相を求める。その後、求めた振幅、周波数および位相の電圧が電力変換部111から出力されるように、電力変換部111の出力を調整する。すなわち、サイリスタ111Tのオン/オフパターンを決定する。この出力が安定するようになったら、開閉器113を投入し、電力変換部111と系統11とを接続する。この時点では、電力変換部111の出力と系統11の電圧とが同期しているため、電流は流れない。
直流母線101の電圧を電圧センサ103によって測定する。直流母線101の電圧が所定の定格母線電圧を上回っていたら、マスターレグ110から系統に向けて送電が行われるように、電力変換部111を制御する。(電力変換部111から出る電圧の振幅および位相の少なくともいずれか一方を調整して、マスターレグ110を介して直流母線101から系統11に向けて送電が行われるようにする。)なお、直流母線101の定格電圧は、予め設定によって定められているものである。
自立モードとは、管理サーバ50から指定された振幅・周波数の電圧を自ら作り出し、接続相手との間で送受電する運転モードである。
例えば負荷30などの電力を消費するものに向けて電力を供給するための運転モードとなる。あるいは、接続相手から送電されてくる電力をそのまま受け取るための運転モードとなる。
図1では、第2レグ120の接続端子125が負荷30に接続されている例を示している。第2レグ120が自立モードとして運転制御され、負荷30に電力を供給することになる。
また、第4レグ140や第5レグ150のように他の電力ルータと接続される場合に、他の電力ルータから要求される電力分を送電するためのモードとして第4レグ140や第5レグ150を自立モードで運転する場合もある。
または、第4レグ140や第5レグ150のように他の電力ルータと接続される場合に、他の電力ルータから送電されてくる電力を受電するためのモードとして第4レグ140や第5レグ150を自立モードで運転する場合もある。
また、図に示していないが、負荷30に代えて、第2レグを発電設備に接続する場合も第2レグを自立モードで運転することもできる。ただし、この場合には発電設備に他励式インバータを搭載するようにする。
電力ルータ同士を接続する場合の運転モードについては後述する。
まず開閉器123を開(遮断)にしておく。接続端子125を負荷30に接続する。管理サーバ50から電力ルータ100に対し、負荷30に供給すべき電力(電圧)の振幅および周波数が指示される。そこで、制御部190は、指示された振幅および周波数の電力(電圧)が電力変換部121から負荷30に向けて出力されるようにする。(すなわち、サイリスタ121Tのオン/オフパターンを決定する。)この出力が安定するようになったら、開閉器123を投入し、電力変換部121と負荷30とを接続する。あとは、負荷30で電力が消費されれば、その分の電力が自立レグ120から負荷30に流れ出すようになる。
指定電力送受電モードとは、指定によって定められた分の電力をやり取りするための運転モードである。すなわち、接続相手に指定電力を送電する場合と、接続相手から指定電力を受電する場合と、がある。
図1では、第4レグ140および第5レグ150が他の電力ルータと接続されている。
このような場合に、決まった分の電力を一方から他方へ融通するようなことが行われる。
または、第3レグ130は蓄電池35に接続されている。
このような場合に、決まった分の電力を蓄電池35に向けて送電して、蓄電池35を充電するというようなことが行われる。
また、自励式インバータを搭載する分散電源(蓄電池も含む)と指定電力送受電レグとを接続してもよい。ただし、他励式インバータを搭載する分散電源と指定電力送受電レグとは接続できない。
(説明には、第5レグ150に付した符号を使用する。)
電圧センサ154によって接続相手の系統の電圧を測定し、PLL(Phase−Locked−Loop)などを用いて接続相手の電圧の周波数・位相を求める。管理サーバ50から指定された有効電力値および無効電力値と、接続相手の電圧の周波数および位相と、に基づいて、電力変換器151が入出力する電流の目標値を求める。電流センサ152によって電流の現在値を測定する。目標値と現在値との差分に相当する電流が追加で出力されるように、電力変換器151を調整する。(電力変換部151から出る電圧の振幅および位相の少なくともいずれか一方を調整して、指定電力送受電レグと接続相手との間で所望の電力が流れるようにする。)
運転モードの違いによってレグの働きが違ってくるので、接続相手の選択と運転モードの選択との間には自ずと制約が発生する。すなわち、接続相手が決まれば選択できる運転モードが決まり、逆に、運転モードが決まれば選択できる接続相手が決まる。(接続相手が変われば、それに合わせてレグの運転モードを変更する必要がある。)
可能な接続組み合わせのパターンを説明する。
すなわち、マスターレグをMで表す。
自立レグをSで表す。
指定電力送受電レグをDで表す。
ACスルーレグをACで表す。
また、必要に応じてレグの肩に「#1」のように番号を付してレグを区別することがある。
また、図3以降では、図面ごとに系統立てた符号を付すが、必ずしも図面を跨がって同じ要素に同じ符号を付しているわけではない。
例えば、図3の符号200と図4Aの符号200とが全く同じものを指しているわけではない。
第2レグ220が自立レグとして負荷30に接続されている。これも既に説明した通りである。
第3レグ230および第4レグ240が指定電力送受電レグとして蓄電池35に接続されている。これも既に説明した通りである。
なお、第1レグ210がマスターレグとなっていることの関係でいうと、第6レグ260による受電電力が直流母線201の定格維持に足りなければ、マスターレグ210は、基幹系統11から必要な電力を受電することになる。逆に、第6レグ260による受電電力が直流母線201の定格維持に必要な量を超過してしまった場合、マスターレグ210は、過剰な電力を基幹系統11に逃がすことになる。
すなわち、マスターレグと自立レグとを接続する場合と、指定電力送受電レグと自立レグとを接続する場合と、だけが許される。
図5Aから図5Dは、互いに接続してはいけないパターンである。
図5A、図5B、図5Cを見てわかるように、同じ運転モードのレグ同士を接続してはいけない。
例えば、図5Aの場合、マスターレグ同士を接続している。
マスターレグは、運転動作の説明で前述したように、接続相手の電圧、周波数および位相に同期した電力を作り出す処理をはじめに行う。
ここで、接続相手もマスターレグである場合、お互いに相手の電圧および周波数に同期しようとするが、マスターレグは電圧および周波数を自立的に確立しないため、このような同期処理は成功し得ない。
従って、マスターレグ同士を接続できないのである。
またさらに、次のような理由もある。
マスターレグは、直流母線の電圧を維持するために接続相手から電力を引き込まなければならない。(あるいは、直流母線の電圧を維持するために、過剰な電力は接続相手に逃がさなければならない。)マスターレグ同士が接続されてしまっては、互いに接続相手の要求を満たすことはできない。(仮にマスターレグ同士を接続してしまうと、両方の電力ルータで直流母線の電圧を維持できなくなる。すると、それぞれの電力セル内で停電などの不具合が発生するかもしれない。)このように、マスターレグ同士では互いの役割が衝突してしまうので(整合しないので)、マスターレグ同士を接続してはいけない。
前記マスターレグと同じことであるが、運転動作の説明で前述したように、指定電力送受電レグも接続相手の電圧、周波数および位相に同期した電力を作り出す処理をはじめに行う。
ここで、接続相手も指定電力送受電レグである場合、お互いに相手の電圧および周波数に同期しようとするが、指定電力送受電レグは電圧および周波数を自立的に確立しないため、このような同期処理は成功し得ない。
従って、指定電力送受電レグ同士を接続できないのである。
またさらに、次のような理由もある。
仮に、一方の指定電力送受電レグ510が送電すべき指定送電電力と、他方の指定電力送受電レグ610が受電すべき指定受電電力と、を一致させたとしても、このような指定電力送受電レグ同士を接続してはいけない。例えば、一方の指定電力送受電レグ510が指定送電電力を送電しようとして電力変換部を調整するとする。(例えば、接続相手よりも所定値だけ出力電圧を高くする。)その一方、他方の指定電力送受電レグ610が指定受電電力を受電しようと電力変換部を調整する。(例えば、接続相手よりも所定値だけ出力電圧が低くなるようにする。)同時にこのような調整動作が両方の指定電力送受電レグ510、610で行われてしまっては、互いに制御不能に陥ってしまうことは理解されるであろう。
自立レグは自ら電圧・周波数を作り出すものである。
仮に自立レグ同士を繋いだ状態で2つの自立レグが作り出す電圧、周波数および位相のいずれかが少しでも乖離すると、2つの自立レグの間に意図しない電力が流れてしまうことになる。
2つの自立レグが作り出す電圧、周波数および位相を完全に一致させ続けるというのは無理なのであり、したがって、自立レグ同士を接続していけない。
これまでの説明から、これも成り立たないことは理解できるであろう。マスターレグ510が直流母線501の電圧を維持するように接続相手に対して電力を送受電しようとしても、指定電力送受電レグ610はマスターレグ510の要求に応じて送受電しない。したがって、マスターレグ510は直流母線501の電圧を維持できない。また、指定電力送受電レグ610が接続相手(510)に指定電力を送受電しようとしても、マスターレグ510は指定電力送受電レグ610の要求に応じて送受電しない。したがって、指定電力送受電レグ610は接続相手(ここではマスターレグ510)に指定電力を送受電することはできない。
仮にACスルーレグが無いとすると、図4Aで示したように、一または複数の自立レグを経由しなければならなくなる。電力変換部をもつレグを経由すると、交流電力から直流電力への変換および直流電力から交流電力への変換を経由することになる。電力変換にはやはり数%とはいえどもエネルギーロスが発生するので、単に基幹系統に接続するためだけに複数回の電力変換を必要とするのは効率が悪い。
したがって、電力ルータに電力変換部を有さないACスルーレグを設けておくことには意味があるのである。
また、図9に、4つの電力ルータ100−400を相互に接続した場合の一例を挙げる。
いずれの接続関係もこれまでの説明中に登場したので、一つ一つの接続先を細かく説明することはしないが、いずれも許容される接続関係であることは理解されるであろう。
電力ルータ同士を繋ぐ接続線を送電線と称するとすると、送電線は基幹系統の一部となっていてもよいし、基幹系統から切り離されていてもよい。
(図9においては、基幹系統の一部となっている送電線に71Aの符号を付し、基幹系統から切り離された送電線に71Bの符号を付した。)
すなわち、基幹系統に対して複数の電力ルータが接続されていてもよい。このように基幹系統を介して二以上の電力ルータを接続することにより、複数の電力ルータ間で基幹系統を介した電力融通が可能となり、融通される電力の過不足を基幹系統で補填するようにもできる。その一方、基幹系統を介さないで二以上の電力ルータ同士を接続してもよい。
また、電力ルータと負荷(または分散電源)とを繋ぐ接続線を配電線72と称するとすると、配電線72は基幹系統11から切り離されたものである。すなわち、電力ルータと負荷(または分散電源)とを繋ぐ配電線72は基幹系統11に繋がらない。
各レグの運転モードについては説明を省略するが、電力融通の方向とこれまでに説明した接続制約とを考慮して適切に各レグの運転モードを選択しなければならないことはもちろんである。
なお、図10において、基幹系統11を、蓄電池や発電設備などの分散電源に代えてもよいことはもちろんである。すなわち、複数の電力ルータを分散電源にバス接続してもよい。
図11において、基幹系統11を分散電源に代えてもよい。
すなわち、本実施形態の電力ルータにより、電力セル同士を非同期に相互接続した電力ネットワークシステムを構築することができる。そして、本実施形態に説明した接続制約に従うことによって、互いの役割が矛盾しないようにレグ同士を接続していくことができる。これにより、電力ネットワークシステムを拡張し、また、全体を安定的に運用することができるようになる。
本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。また、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
図12に電力ネットワークシステム10の例を示す。図12において、基幹系統11は大規模発電所12からの基幹電力を送電する。そして、複数の電力セル21−24が配置されている。各電力セル21−24は、家31やビル32などの負荷や、発電設備33、34や、電力貯蔵設備35、を有している。
発電設備としては、太陽光発電パネル33や風力発電機34などが例として挙げられる。電力貯蔵設備とは蓄電池35などのことである。本明細書では、発電設備と電力貯蔵設備とを総称して、分散電源ということがある。
ここで、レグとは、接続端子と電力変換部とを有しており、各レグにはアドレスが付されている。なお、レグによる電力変換とは、交流から直流へまたは直流から交流への変換や、電力の電圧、周波数、位相を変化させることをいう。
Claims (10)
- 電力セルを外部の電力系統に非同期に接続するための電力ルータであって、
所定の定格に電圧が維持される直流母線と、
一方の接続端が前記直流母線に接続され、他方の接続端が外部接続端子として外部の接続相手に接続され、前記一方の接続端と前記他方の接続端との間で電力を双方向に変換する機能を有する電力変換レグと、
前記電力変換レグの運転を制御する制御部と、を備えており、
前記電力変換レグが複数設けられ、
管理サーバからの指令によって制御され、
前記制御部は、前記電力変換レグをマスターモードと指定電力送受電モードとのいずれかの運転モードで運転制御するものであり、
前記マスターモードで運転される前記電力変換レグは、
前記直流母線の電圧が定格から下がった場合、不足分の電力を接続相手から補填し、前記直流母線の電圧が定格から上がった場合、過剰分の電力を接続相手に送出し、
前記指定電力送受電モードで運転される前記電力変換レグは、
前記管理サーバからの指定に応じて、指定電力を接続相手に送電するか、または、指定電力を接続相手から受電し、
制御部は、電力ルータの動作中には、少なくともいずれか一つの電力変換レグをマスターモードにする
ことを特徴とする電力ルータ。 - 請求項1に記載の電力ルータにおいて、
前記電力変換レグの運転モードには、前記マスターモードと前記指定電力送受電モードとに加えて、さらに、自立モードを含み、
前記自立モードで運転される前記電力変換レグは、
前記管理サーバから指定された振幅・周波数の電圧を自ら作り出し、接続相手との間で送受電する
ことを特徴とする電力ルータ。 - 請求項1または請求項2に記載の電力ルータにおいて、
さらに、
一方の接続端が外部接続端子として外部の接続相手に接続され、他方の接続端が他のレグの外部接続端子に内部配線で接続されており、電力変換を介することなく、一方の接続端と他方の接続端とを導通させるACスルーレグを備える
ことを特徴とする電力ルータ。 - 一または複数の請求項3に記載の電力ルータと、
前記電力ルータが直接的または間接的に接続される電力系統と、を具備する電力ネットワークシステムにおいて、
前記マスターモードで運転される電力変換レグが直接または間接的に接続される接続相手は、基幹発電所に繋がる基幹系統か、分散電源か、のいずれかに制約される
ことを特徴とする電力ネットワークシステム。 - 請求項4に記載の電力ネットワークシステムにおいて、
前記マスターモードで運転される電力変換レグが間接的に基幹系統または分散電源に接続される場合、
間に介在するのは、自立モード運転される電力変換レグか、ACスルーレグか、のいずれかに制約される
ことを特徴とする電力ネットワークシステム。 - 請求項4または請求項5のいずれかに記載の電力ネットワークシステムにおいて、
前記指定電力送受電モードで運転される電力変換レグが直接または間接的に接続される接続相手は、基幹系統、分散電源、および、自立モードで運転される電力変換レグ、のいずれかに制約される
ことを特徴とする電力ネットワークシステム。 - 請求項6に記載の電力ネットワークシステムにおいて、
前記指定電力送受電モードで運転される電力変換レグが間接的に、基幹系統、分散電源、および、自立モードで運転される電力変換レグ、のいずれかに接続される場合、
間に介在するのは、ACスルーレグに制約される
ことを特徴とする電力ネットワークシステム。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の電力ルータを二つ以上具備する電力ネットワークシステムであって、
前記電力ルータ間で電力を送受電する
ことを特徴とする電力ネットワークシステム。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の電力ルータを二つ以上用いて、
前記電力ルータ間で電力を送受電することにより電力を融通する
ことを特徴とする電力融通方法。 - 所定の定格に電圧が維持される直流母線と、
一方の接続端が前記直流母線に接続され、他方の接続端が外部接続端子として外部の接続相手に接続され、前記一方の接続端と前記他方の接続端との間で電力を双方向に変換する機能を有する電力変換レグと、を備え、
前記電力変換レグが複数設けられ、
管理サーバからの指令によって制御され、
電力セルを外部の電力系統に非同期に接続するための電力ルータにコンピュータを組み込んで、
このコンピュータに、前記電力変換レグをマスターモードと指定電力送受電モードとのいずれかの運転モードで運転制御させる電力ルータの運転制御プログラムであって、
前記マスターモードで運転される前記電力変換レグは、
前記直流母線の電圧が定格から下がった場合、不足分の電力を接続相手から補填し、前記直流母線の電圧が定格から上がった場合、過剰分の電力を接続相手に送出し、
前記指定電力送受電モードで運転される前記電力変換レグは、
前記管理サーバからの指定に応じて、指定電力を接続相手に送電するか、または、指定電力を接続相手から受電し、
電力ルータの動作中には、少なくともいずれか一つの電力変換レグをマスターモードにする
ことを特徴とする電力ルータの運転制御プログラム。
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