JPWO2014058080A1 - 体細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及び細胞作製キット - Google Patents
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Abstract
本発明に係る体細胞のリプログラミングを亢進させる方法は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む。
Description
本発明は、体細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及びリプログラミングされた細胞を作製するキットに関する。
再生医療等への応用を目的として、いわゆる誘導多能性幹細胞(induced pluriopotent stem cell:iPS細胞)に代表される体細胞のリプログラミング技術の開発が重要視されている。
iPS細胞は、所定の核初期化因子を体細胞に作用させて作製する。そのため、iPS細胞は初期胚から樹立される胚性幹細胞(ES細胞)と比較して倫理的問題が少ない。これまでにiPS細胞の作製方法として様々な手法が報告されているが、例えば代表的な方法として、4つの転写因子群の導入が挙げられる(特許文献1)。しかし、特許文献1のアプローチでは、人為的に発現させる遺伝子の種類等によっては細胞のガン化を招来する等の不所望な現象が報告されている。また、iPS細胞又は当該iPS細胞から作製した組織等を治療等の目的でヒトの体内に移植した場合には、人為的に発現させる遺伝子及び当該遺伝子が組み込まれたベクターが人体に影響を及ぼす可能性を否定できない。
また、非特許文献1には、ヒト由来の体細胞をリプログラミングする目的で、人為的に発現させる1つの転写因子と所定の化合物との組み合せを用いることが記載されている。
Zhu et al., Cell Stem Cell, volume7, December 3, 2010, p651
しかしながら、これまでの体細胞のリプログラミング技術では、線維芽細胞などの一般的に入手し易い細胞をリプログラミング対象の細胞(出発細胞)とした際に、外来遺伝子の導入を完全に除き、高効率且つ迅速にリプログラミングがなされた技術の報告はない。
本願発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、遺伝子の導入を要することなく細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及びその利用を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本願発明は以下の何れかの内容を包含する。
体細胞のリプログラミングを亢進させる方法であって、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。
弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材と、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子と、を備えた、リプログラミングされた細胞を作製するキット。
リプログラミングが亢進された細胞の作製方法であって、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。
(a)細胞培養用の基体、(b)当該基体中に配置された、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子を含む細胞培養培地、および(c)当該細胞培養培地中に浸漬された、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材、を含む培養システム。
本発明は、従来技術に比べて、外来遺伝子の導入を完全に除くことができるという利点を持ちつつ、高効率かつ迅速に体細胞のリプログラミングを亢進できるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔1.体細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及びリプログラミングが亢進された細胞〕
本発明に係る方法は、体細胞のリプログラミングを亢進させる方法であって、
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、
弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含んでなる。なお、この方法は、体細胞を出発細胞として、リプログラミングが亢進された細胞を作製する方法と捉えることもできる。
本発明に係る方法は、体細胞のリプログラミングを亢進させる方法であって、
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、
弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含んでなる。なお、この方法は、体細胞を出発細胞として、リプログラミングが亢進された細胞を作製する方法と捉えることもできる。
(体細胞のリプログラミングの亢進)
本明細書における「体細胞のリプログラミングの亢進」とは、未分化マーカーとなる遺伝子の発現量が、出発細胞(体細胞)と比較して亢進された状態を指す。すなわち、出発細胞を、より前段階の分化状態(未分化の状態を含む)にすることと捉えることもできる。好ましくは、顕微鏡観察又はセルソーター等を用いて細胞形態を判定する場合に、細胞形態の変化が認められる状態である。
本明細書における「体細胞のリプログラミングの亢進」とは、未分化マーカーとなる遺伝子の発現量が、出発細胞(体細胞)と比較して亢進された状態を指す。すなわち、出発細胞を、より前段階の分化状態(未分化の状態を含む)にすることと捉えることもできる。好ましくは、顕微鏡観察又はセルソーター等を用いて細胞形態を判定する場合に、細胞形態の変化が認められる状態である。
未分化マーカーとなる遺伝子は、例えば、Nanog遺伝子、Oct3/4遺伝子、Tbx3遺伝子、Sox2遺伝子、SSEA3遺伝子、Klf4遺伝子、Rex1遺伝子、及びStella遺伝子等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。未分化マーカーは当業者において任意に選択されるが、好ましくはNanog遺伝子及びOct3/4遺伝子の両方である。Oct3/4遺伝子は、陽性の状態の中でも発現が特に上昇している状態が好ましい。
本明細書において「細胞形態の変化」とは、体細胞のリプログラミングが亢進することに伴って、出発細胞としての体細胞の形態に生じる変化を広く指す。例えば、出発細胞たる体細胞が接着性細胞の場合には、当該接着性細胞が持つ接着性に変化に生じることで認められる現象を指す。例えば、接着性細胞が有する突起物が衰退して、細胞が球状に近い状態に変化することが挙げられる。
「体細胞のリプログラミングの亢進」の好ましい一例では、対象となる体細胞(出発細胞)を多能性(multipotency)を示す状態かそれ以前の状態にすることであり、より好ましくは全能性(pluripotency)を示す状態かそれ以前の状態にすることである。なお、本明細書において、多能性(multipotency)とは、例えば神経系又は造血系など一部の細胞種に分化できる能力を指す。また、本明細書において、全能性(pluripotency)とは、個体自体を構成することは出来ないが、個体を構成するすべての細胞及び組織に分化できる能力を指す。
本発明の方法によって得られる「リプログラミングが亢進された細胞」とは、上記の未分化マーカーの発現が陽性である細胞、又は出発細胞よりも未分化マーカーの発現量が亢進されている細胞である。
ある一態様において、「リプログラミングが亢進された細胞」とは、好ましくは核初期化細胞である。核初期化細胞の判定として、テラトーマの形成能の有無、ES細胞様コロニーの形成能の有無、又は陽性対象(ES細胞又は従来技術で作製されたiPS細胞(誘導多能性幹細胞))と比較した未分化マーカーの発現量を指標に用いることできるが、これに限定されない。分離された核初期化細胞の分化能及び未分化増殖能はES細胞について汎用されている確認手段を利用することで容易に確認可能である。「iPS細胞」とは、ES細胞(Embryonic Stem Cell)に近い性質を有する細胞のことであり、より具体的には、未分化細胞であって、培養条件によって全能性(pluripotency)及び未分化増殖能を有する細胞を包含する。
本発明の方法によって得られる「リプログラミングが亢進された細胞」の用途は特に限定されず、例えば、ES細胞と同様の試験・研究の用途、薬剤のスクリーニング(肝臓系の体細胞)の用途、細胞療法/組織療法(自家細胞/自家組織移植、他家細胞/他家組織移植)の用途等に使用することができる。
(非生物性の基材)
体細胞を培養するための基材は非生物性であって、その弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である。基材が非生物性であるとは、より具体的には、基材が細胞又は細胞構築物ではないことを指す。ここで、細胞構築物とは、細胞シート及び組織等の細胞の集合体として形成された構築物を指す。
体細胞を培養するための基材は非生物性であって、その弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である。基材が非生物性であるとは、より具体的には、基材が細胞又は細胞構築物ではないことを指す。ここで、細胞構築物とは、細胞シート及び組織等の細胞の集合体として形成された構築物を指す。
弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の上記基材としては、例えば、含水ゲル(ハイドロゲル)、シリコーン、ゼラチン、及びコラーゲンゲル等が挙げられるが、中でも含水ゲルが好ましい。
含水ゲルは、アクリルアミド系ポリマー;アクリル酸系ポリマー;メタクリル酸系ポリマー;アルギン酸カルシウムゲル、及びアルギン酸マグネシウムゲル等のアルギン酸ゲル;カッパ型又はイオタ型のカラギナンゲル;ネイティブ型又は脱アシル型等のジェランガムゲル;等の含水ゲルを構成する有機ポリマーが所定量の水性液体を含むことで構成される。これら含水ゲルの中でも、アクリルアミド系ポリマーの含水ゲルが好ましい。
アクリルアミド系ポリマーとは、アクリルアミドの基本骨格C(R1)2=CR2−CON(R3)2を有するモノマーの単独重合体又は共重合体の含水ゲルを指す。R1、R2、及びR3は、基本骨格外の構造であって特に限定されないが、例えば、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルキル基等のヒドロカルビル基、及びアルコキシ基等である。なお、ヒドロカルビル基及びアルコキシ基における炭素原子数は、1〜10個の範囲内であることが好ましく、1〜5個の範囲内であることがより好ましい。アクリルアミドの基本骨格を有するモノマーとしては、例えば、アクリルアミド(AAm)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級化物又はそれらの塩が挙げられる。
なお、非生物性の基材が、モノマーの単独重合体又は共重合体としての含水ゲルの場合、当該モノマーに由来するゲルの骨格及び水分の他、ポリマー同士を架橋する架橋剤、及び重合開始剤等を含んでいてもよい。
非生物性の基材の弾性率は0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内であればよいが、リプログラミングの効率の観点では、0.1kPa以上で100kPa以下の範囲内であることが好ましく、0.1kPa以上で10kPa以下の範囲内であることがより好ましく、0.1kPa以上で4kPa以下の範囲内であることがより好ましく、0.1kPa以上で3kPa〜3.5kPa以下の範囲内、或いは0.1kPa以上で3kPa未満の範囲内であることがさらに好ましく、0.1kPa以上で1kPa〜1.5kPa以下の範囲内、或いは0.2kPa以上で1kPa以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、基材の弾性率が0.1kPa未満である場合、または200kPaを超えている場合は、体細胞のリプログラミングの効率が格段に低下するか、全くリプログラミングが進まなくなる。なお、基材が含水ゲルの場合は、その含水率又はポリマー間の架橋度を調整することによって、所望の弾性率の基材を得ることは容易である。
なお、非生物性の基材の弾性率は、基材の種類に応じた方法で測定すればよい。例えば、基材が含水ゲルの場合には、例えば、おもりの沈み込み量から計算する方法、又は、AFM(原子間力顕微鏡)による応力測定という方法、で測定すればよい。
より具体的には例えば、水又は水溶液中に含水ゲルを配置して十分に膨潤させた(実質的な飽和膨潤状態)後に、重量が分かっている円柱状のおもりを含水ゲル上に配置し、当該おもりの沈み込み量から、含水ゲルの弾性率を求めることができる。
ゲルの弾性率E(単位Pa)は、
E=P(1-ν2)/2aΔh・・・・・・式(1)
求めることができる。ここで、Pはおもりの荷重(単位N)、aはおもりの底面(含水ゲルとの接触面)の半径(単位m)、Δhはおもりの沈み込み量(単位m)、νは試料である含水ゲルのポアソン比であり、後述する実施例1で用いた含水ゲルの場合、νは0.45である。
ゲルの弾性率E(単位Pa)は、
E=P(1-ν2)/2aΔh・・・・・・式(1)
求めることができる。ここで、Pはおもりの荷重(単位N)、aはおもりの底面(含水ゲルとの接触面)の半径(単位m)、Δhはおもりの沈み込み量(単位m)、νは試料である含水ゲルのポアソン比であり、後述する実施例1で用いた含水ゲルの場合、νは0.45である。
また、AFMによる応力測定の場合は、水又は水溶液中に含水ゲルを配置して十分に膨潤させた(実質的な飽和膨潤状態)後に、弾性率がわかっているAFMカンチレバーによって含水ゲルを押し、AFMカンチレバーのたわみを測定する。含水ゲルの弾性率E(単位Pa)は、AFMカンチレバーのたわみから求められた応力F(単位m)と含水ゲルを押し込んだ距離δ(単位m)の値から以下の式を用いて求める。
E=F×(1―ν2)×δ2/(2/π×tan(α))・・・・・式(2)
ここでαはAFMカンチレバー先端の角度(開き角:単位°)であり、νは試料のポアソン比である(実施例の場合は0.45)。なお、含水ゲルの底面を支える支持体(ガラス等)からの影響を避けるため、弾性率の測定に際してδは1μm以下であることが望ましい。
E=F×(1―ν2)×δ2/(2/π×tan(α))・・・・・式(2)
ここでαはAFMカンチレバー先端の角度(開き角:単位°)であり、νは試料のポアソン比である(実施例の場合は0.45)。なお、含水ゲルの底面を支える支持体(ガラス等)からの影響を避けるため、弾性率の測定に際してδは1μm以下であることが望ましい。
非生物性の基材の厚さは特に限定されないが、例えば、10μm以上で5mm以下の範囲内であり、蛍光観察という観点では200μm以下の範囲内であることが好ましい。
非生物性の基材は、例えば、細胞培養用の基体の表面に膜状に固定されていてもよい。細胞培養用の基体とは、細胞培養用のディッシュ、及び細胞培養用のウェルプレート等が挙げられ、当該基材がディッシュの底部又はウェルプレートのウェルの底部に固定されている構成が例示される。
非生物性の基材の表面(培養工程で体細胞が接触する面)は、例えば、ゼラチンコート、コラーゲンコート、及びラミニンコート等の、体細胞の足場となるコーティングを設けてもよい。また、非生物性の基材と上記コーティングの材料とを架橋するクロスリンカーを設けてもよい。クロスリンカーの種類は、基材の材質に応じて適宜選択すればよいが、基材がアクリルアミド系ポリマーの場合はSulfo-SANPAH(Pierce社製)、Sulfo-SMCC、及びGMBS等のクロスリンカーが挙げられる。
(ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤)
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、トリコスタチンA、酪酸、アピシジン、バルプロ酸、及びNaB等が挙げられる。なかでも、トリコスタチンAが好ましい場合がある。当該阻害剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該阻害剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.1nM以上で10mM以下の範囲内であり、1nM以上で1mM以下の範囲内であることが好ましく、2nM以上で0.5mM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてNaBを用いる場合は、例えば10μM以上で10mM以下の範囲内であり、0.1mM以上で1mM以下の範囲内であることが好ましく、0.2mM以上で0.5mM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてトリコスタチンAを用いる場合は、例えば1nM以上で100nM以下の範囲内であり、2nM以上で50nM以下の範囲内であることが好ましく、5nM以上で30nM以下の範囲内であることがより好ましい。
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、トリコスタチンA、酪酸、アピシジン、バルプロ酸、及びNaB等が挙げられる。なかでも、トリコスタチンAが好ましい場合がある。当該阻害剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該阻害剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.1nM以上で10mM以下の範囲内であり、1nM以上で1mM以下の範囲内であることが好ましく、2nM以上で0.5mM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてNaBを用いる場合は、例えば10μM以上で10mM以下の範囲内であり、0.1mM以上で1mM以下の範囲内であることが好ましく、0.2mM以上で0.5mM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてトリコスタチンAを用いる場合は、例えば1nM以上で100nM以下の範囲内であり、2nM以上で50nM以下の範囲内であることが好ましく、5nM以上で30nM以下の範囲内であることがより好ましい。
(TGF−β受容体の阻害剤)
TGF−β受容体の阻害剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、A-83-01(3-(6-Methylpyridin-2-yl)-1-phenylthiocarbamoyl-4-quinolin-4-ylpyrazole)、SB431542(Stemgent社製)、及びLY2157299(和光純薬社製)等が挙げられる。なかでも、A-83-01が好ましい場合がある。また、当該阻害剤はタイプI型の阻害剤であることが好ましい場合がある。当該阻害剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該阻害剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.1nM以上で1mM以下の範囲内であり、1nM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、10nM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてA-83-01を用いる場合は、例えば10nM以上で1mM以下の範囲内であり50nM以上で200μM以下の範囲内であることが好ましく、100nM以上で100μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてSB431542を用いる場合は、例えば100nM以上で100μM以下の範囲内であり、200nM以上で50μM以下の範囲内であることが好ましく、500nM以上で20μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてLY2157299を用いる場合は、例えば1nM以上で10μM以下の範囲内であり、10nM以上で1μM以下の範囲内であることが好ましく、50nM以上で200nM以下の範囲内であることがより好ましい。
TGF−β受容体の阻害剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、A-83-01(3-(6-Methylpyridin-2-yl)-1-phenylthiocarbamoyl-4-quinolin-4-ylpyrazole)、SB431542(Stemgent社製)、及びLY2157299(和光純薬社製)等が挙げられる。なかでも、A-83-01が好ましい場合がある。また、当該阻害剤はタイプI型の阻害剤であることが好ましい場合がある。当該阻害剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該阻害剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.1nM以上で1mM以下の範囲内であり、1nM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、10nM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてA-83-01を用いる場合は、例えば10nM以上で1mM以下の範囲内であり50nM以上で200μM以下の範囲内であることが好ましく、100nM以上で100μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてSB431542を用いる場合は、例えば100nM以上で100μM以下の範囲内であり、200nM以上で50μM以下の範囲内であることが好ましく、500nM以上で20μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてLY2157299を用いる場合は、例えば1nM以上で10μM以下の範囲内であり、10nM以上で1μM以下の範囲内であることが好ましく、50nM以上で200nM以下の範囲内であることがより好ましい。
(MAPK/ERK経路の阻害剤)
MAPK/ERK経路の阻害剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、PD0325901(N-[(2R)-2,3-dihydroxypropoxy]-3,4-difluoro-2-[(2-fluoro-4-iodophenyl)amino]-benzamide)、U0126(Promega社製)、及び5-Iodotubercidin(Merck社製)等が挙げられる。なかでも、PD0325901が好ましい場合がある。当該阻害剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該阻害剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.1nM以上で1mM以下の範囲内であり、1nM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、10nM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてPD0325901を用いる場合は、例えば0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、0.05μM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、0.1μM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてU0126を用いる場合は、例えば1nM以上で10μM以下の範囲内であり、10nM以上で1μM以下の範囲内であることが好ましく、50nM以上で200以下の範囲内であることがより好ましい。
MAPK/ERK経路の阻害剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、PD0325901(N-[(2R)-2,3-dihydroxypropoxy]-3,4-difluoro-2-[(2-fluoro-4-iodophenyl)amino]-benzamide)、U0126(Promega社製)、及び5-Iodotubercidin(Merck社製)等が挙げられる。なかでも、PD0325901が好ましい場合がある。当該阻害剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該阻害剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.1nM以上で1mM以下の範囲内であり、1nM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、10nM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてPD0325901を用いる場合は、例えば0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、0.05μM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、0.1μM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。当該阻害剤としてU0126を用いる場合は、例えば1nM以上で10μM以下の範囲内であり、10nM以上で1μM以下の範囲内であることが好ましく、50nM以上で200以下の範囲内であることがより好ましい。
(3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤)
3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1(PDK−1)の活性化剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、PS48((2Z)-5-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-2-pentenoic acid)が挙げられる。当該活性化剤は、PDK−1のHM/PIFポケットに特異的に結合してPDK−1を活性化させるものであることが好ましい場合がある。当該活性化剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該活性化剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、0.1μM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、1μM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。
3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1(PDK−1)の活性化剤の種類は特に限定されないが、具体的には例えば、PS48((2Z)-5-(4-Chlorophenyl)-3-phenyl-2-pentenoic acid)が挙げられる。当該活性化剤は、PDK−1のHM/PIFポケットに特異的に結合してPDK−1を活性化させるものであることが好ましい場合がある。当該活性化剤は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。当該活性化剤の使用量は、体細胞のリプログラミング亢進の効果が得られる限り特に限定されないが、培養工程における細胞培養培地中の濃度として例えば0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、0.1μM以上で100μM以下の範囲内であることが好ましく、1μM以上で10μM以下の範囲内であることがより好ましい。
(阻害剤、及び活性化剤の組合せ)
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤のうちの少なくとも2つからそれぞれ一種類以上の因子を選択して組合せて用いることが好ましく、少なくとも3つからそれぞれ一種類以上の因子を選択して組合せて用いることがより好ましく、4つからそれぞれ一種類以上の因子を選択して組合せて用いることがより好ましい場合がある。これらを組合せて用いる場合において、好ましい組み合わせの一例は、NaB、A-83-01、PD0325901、及びPS48の組み合わせである。好ましい組み合わせの別の一例は、トリコスタチンA、A-83-01、PD0325901、及びPS48の組み合わせである。好ましい組み合わせのさらに別の一例は、NaB、PD0325901、及びPS48の組み合わせである。
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤のうちの少なくとも2つからそれぞれ一種類以上の因子を選択して組合せて用いることが好ましく、少なくとも3つからそれぞれ一種類以上の因子を選択して組合せて用いることがより好ましく、4つからそれぞれ一種類以上の因子を選択して組合せて用いることがより好ましい場合がある。これらを組合せて用いる場合において、好ましい組み合わせの一例は、NaB、A-83-01、PD0325901、及びPS48の組み合わせである。好ましい組み合わせの別の一例は、トリコスタチンA、A-83-01、PD0325901、及びPS48の組み合わせである。好ましい組み合わせのさらに別の一例は、NaB、PD0325901、及びPS48の組み合わせである。
また、一実施形態において、TGF−β受容体の阻害剤を少なくとも含んでいることが好ましく、MAPK/ERK経路の阻害剤を少なくとも含んでいることがより好ましく、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤を少なくとも含んでいることがさらに好ましく、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤を少なくとも含んでいることが特に好ましい。別の実施形態において、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤を含んでいることが好ましく、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤をさらに含んでいることがより好ましく、MAPK/ERK経路の阻害剤をさらに含んでいることがさらに好ましく、TGF−β受容体の阻害剤をさらに含んでいることが特に好ましい。また、さらに別の実施形態において、トリコスタチンAを少なくとも含んでいることが好ましい。
さらに他の実施形態において、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤のうちの1つ、2つ、又は3つからそれぞれ一種類以上の因子を選択して組み合わせる場合は、少なくとも下記1)の条件を満たすことが最も好ましく、少なくとも下記2)の条件を満たすことが次に好ましく、少なくとも下記3)の条件を満たすことがさらに次に好ましい場合がある。すなわち、下記1)及び2)の条件を同時に満たす態様、又は、下記1)〜3)の条件を同時に満たす態様は、特に好ましい態様でありうる。
1)ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤から一種類以上の因子を選択する。
2)3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤から一種類以上の因子を選択する。
3)MAPK/ERK経路の阻害剤から一種類以上の因子を選択する。
1)ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤から一種類以上の因子を選択する。
2)3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤から一種類以上の因子を選択する。
3)MAPK/ERK経路の阻害剤から一種類以上の因子を選択する。
(体細胞)
本発明において、リプログラミングの対象となる「体細胞」、すなわち出発細胞の種類、由来等は特に限定されず、任意の体細胞を利用することができる。体細胞の種類は、例えば、生殖細胞以外のいかなる細胞であってもよく、例えば、角質化する上皮細胞(例、角質化表皮細胞)、粘膜上皮細胞(例、舌表層の上皮細胞)、外分泌腺上皮細胞(例、乳腺細胞)、ホルモン分泌細胞(例、副腎髄質細胞)、代謝・貯蔵用の細胞(例、肝細胞)、境界面を構成する内腔上皮細胞(例、I型肺胞細胞)、内鎖管の内腔上皮細胞(例、血管内皮細胞)、運搬能をもつ繊毛のある細胞(例、気道上皮細胞)、細胞外マトリックス分泌用細胞(例、線維芽細胞)、収縮性細胞(例、平滑筋細胞)、血液と免疫系の細胞(例、Tリンパ球)、感覚に関する細胞(例、桿細胞)、自律神経系ニューロン(例、コリン作動性ニューロン)、感覚器と末梢ニューロンの支持細胞(例、随伴細胞)、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞(例、星状グリア細胞)、色素細胞(例、網膜色素上皮細胞)、及びそれらの前駆細胞(組織前駆細胞)等が挙げられる。細胞の分化の程度に特に制限はなく、未分化な前駆細胞(体性幹細胞も含む)であっても、最終分化した成熟細胞であっても、同様に本発明における体細胞の起源として使用することができる。ここで未分化な前駆細胞としては、たとえば神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)が挙げられる。
本発明において、リプログラミングの対象となる「体細胞」、すなわち出発細胞の種類、由来等は特に限定されず、任意の体細胞を利用することができる。体細胞の種類は、例えば、生殖細胞以外のいかなる細胞であってもよく、例えば、角質化する上皮細胞(例、角質化表皮細胞)、粘膜上皮細胞(例、舌表層の上皮細胞)、外分泌腺上皮細胞(例、乳腺細胞)、ホルモン分泌細胞(例、副腎髄質細胞)、代謝・貯蔵用の細胞(例、肝細胞)、境界面を構成する内腔上皮細胞(例、I型肺胞細胞)、内鎖管の内腔上皮細胞(例、血管内皮細胞)、運搬能をもつ繊毛のある細胞(例、気道上皮細胞)、細胞外マトリックス分泌用細胞(例、線維芽細胞)、収縮性細胞(例、平滑筋細胞)、血液と免疫系の細胞(例、Tリンパ球)、感覚に関する細胞(例、桿細胞)、自律神経系ニューロン(例、コリン作動性ニューロン)、感覚器と末梢ニューロンの支持細胞(例、随伴細胞)、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞(例、星状グリア細胞)、色素細胞(例、網膜色素上皮細胞)、及びそれらの前駆細胞(組織前駆細胞)等が挙げられる。細胞の分化の程度に特に制限はなく、未分化な前駆細胞(体性幹細胞も含む)であっても、最終分化した成熟細胞であっても、同様に本発明における体細胞の起源として使用することができる。ここで未分化な前駆細胞としては、たとえば神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)が挙げられる。
好ましい一実施態様においては、誘導多能性幹細胞の樹立が報告されている繊維芽細胞、滑膜細胞、ケラチノサイト、羊膜細胞、子宮内膜細胞、グリア細胞、アストロサイト、髄膜細胞、骨髄由来ミエロイド細胞、末梢血由来CD34陽性血液細胞、骨髄単核細胞、T細胞、ナチュラルキラーT細胞、ナチュラルキラー細胞リンパ腫(NK cell lymphoma)、Bリンパ球、臍帯静脈内皮細胞、膵臓β細胞、精巣由来細胞、ナチュラルキラー歯胚由来細胞、腸間膜由来細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、幹細胞、及び脂肪幹細胞等が挙げられる。体細胞は、初代培養細胞であっても継代培養細胞であってもよい。体細胞の由来は、例えば、胎児期(胎仔期)の個体に由来するものの他、成熟した個体に由来するものを用いてもよい。
体細胞が由来する動物種も特に限定されないが、細胞療法/組織療法等の産業上の利用を考慮すると哺乳類(哺乳動物)由来の体細胞が好ましい。また、哺乳動物の種類は特に限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒトを除く霊長類等の実験動物;イヌ、ネコ等の愛玩動物;ウシ、ウマ等の家畜;ヒト;が挙げられる。特に臨床応用においてはヒト由来の組織若しくは細胞が好ましい。
また、本発明によってリプログラミングが亢進された細胞から分化した体細胞、又は従前の技術で樹立されたiPS細胞から分化した体細胞についても、本法によるリプログラミング亢進の対象となる「体細胞」として扱うことができる。当該体細胞の好ましい態様は、上述と同様である。
体細胞のリプログラミングを亢進させることで得られる細胞(好ましくは核初期化細胞)を疾病の治療に用いる場合には、ある局面では患者自身から分離した体細胞を用いることが望ましい場合があり、例えば、疾病に関与する体細胞、又は疾病治療に関与する体細胞などを用いることができる。
(培養工程)
本発明に係る体細胞のリプログラミングを亢進させる方法は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1(PDK−1)の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、上記した所定の弾性率の非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法である。好ましくは、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の存在下において、上記した所定の弾性率の非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法である。
本発明に係る体細胞のリプログラミングを亢進させる方法は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1(PDK−1)の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、上記した所定の弾性率の非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法である。好ましくは、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の存在下において、上記した所定の弾性率の非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法である。
培養工程では、非生物性の上記基材を液体の細胞培養培地中に配置して、当該基材の表面に体細胞が接した状態で培養を行う。細胞培養培地は、例えば、iPS細胞用の細胞培養培地、又はES細胞用の細胞培養培地として公知のものを適宜用いることができ、具体的には、ESGRO(ミリポア社製の商品名)、及びReproFF(リプロセル社製の商品名)等が挙げられる。
培養工程における培養条件は特に限定されず、例えばiPS細胞を作製する公知の方法(参考文献1等)に準じて条件設定をすればよいが、培養期間は、例えば2日〜30日間であり、3日〜20日間であることが好ましく、4日〜10日間であることがより好ましい。培養の温度は、例えば、35℃〜39℃であり、35.5℃〜38.5℃であることが好ましく、36℃〜38℃であることがより好ましい。
参考文献1:Takahashi K, Tanabe K, Ohnuki M, Narita M, Ichisaka T, Tomoda K, Yamanaka S. (2007) Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblastsby defined factors. Cell 131(5):861-72.
培養工程において、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子(「添加剤」と総称する)は、上記細胞培養培地中に存在するように添加される。より具体的には、「添加剤」は細胞培養培地に添加して混合した後に、非生物性の上記基材に供されてもよいし、細胞培養培地を非生物性の上記基材に供した後に「添加剤」を添加してもよいし、「添加剤」を非生物性の上記基材中に含ませておいて、当該基材を介して「添加剤」が細胞培養培地に供給されるようにしてもよい。
参考文献1:Takahashi K, Tanabe K, Ohnuki M, Narita M, Ichisaka T, Tomoda K, Yamanaka S. (2007) Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblastsby defined factors. Cell 131(5):861-72.
培養工程において、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子(「添加剤」と総称する)は、上記細胞培養培地中に存在するように添加される。より具体的には、「添加剤」は細胞培養培地に添加して混合した後に、非生物性の上記基材に供されてもよいし、細胞培養培地を非生物性の上記基材に供した後に「添加剤」を添加してもよいし、「添加剤」を非生物性の上記基材中に含ませておいて、当該基材を介して「添加剤」が細胞培養培地に供給されるようにしてもよい。
培養工程は、出発細胞たる体細胞に、リプログラミングに関与する一切の遺伝子を導入することなく行うことができる。
(培養システムの一例)
上記培養工程を行うための培養システムの一例は、上述の通り、1)細胞培養用の基体(例えば、ディッシュ等の培養容器)、2)当該基体中に配置された液体の細胞培養培地、3)当該細胞培養培地中に浸漬された非生物性の基材、を含んで構成される。培養対象となる体細胞は、培養に際して、非生物性の基材の表面に配される。また、培養システムには、必要に応じて、細胞の未分化能を向上させる因子(未分化能向上因子)を適宜加えてもよい。未分化能向上因子として、CCL2(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2)等が挙げられる。未分化能向上因子は、直接、細胞培養培地中に加えてもよく、又はプロテインビーズ(登録商標)、架橋ゼラチンヒドロゲル(ゼラチンを架橋化して得られるヒドロゲル)、アテロコラーゲン、ナノファイバー等の担体に取り込ませる方法によって徐放化させてもよい。未分化能向上因子を取り込んでいる上記担体は、担体固定用の部材(細胞培養用の基体内に配置可能なディスク等)上に配された状態で、培養システムに供されてもよい。或いは、未分化能向上因子を非生物性の上記基材に含ませることで、当該因子を徐放化するようにしてもよい。
上記培養工程を行うための培養システムの一例は、上述の通り、1)細胞培養用の基体(例えば、ディッシュ等の培養容器)、2)当該基体中に配置された液体の細胞培養培地、3)当該細胞培養培地中に浸漬された非生物性の基材、を含んで構成される。培養対象となる体細胞は、培養に際して、非生物性の基材の表面に配される。また、培養システムには、必要に応じて、細胞の未分化能を向上させる因子(未分化能向上因子)を適宜加えてもよい。未分化能向上因子として、CCL2(ケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2)等が挙げられる。未分化能向上因子は、直接、細胞培養培地中に加えてもよく、又はプロテインビーズ(登録商標)、架橋ゼラチンヒドロゲル(ゼラチンを架橋化して得られるヒドロゲル)、アテロコラーゲン、ナノファイバー等の担体に取り込ませる方法によって徐放化させてもよい。未分化能向上因子を取り込んでいる上記担体は、担体固定用の部材(細胞培養用の基体内に配置可能なディスク等)上に配された状態で、培養システムに供されてもよい。或いは、未分化能向上因子を非生物性の上記基材に含ませることで、当該因子を徐放化するようにしてもよい。
(培養工程以外の他の工程の例)
また、本発明に係る方法により得られた「リプログラミングが亢進された細胞」は、必要に応じて分離回収工程を行って、所望する以外の細胞と分離してもよい。分離回収工程を行う方法は特に限定されず、例えば形態的な特徴を指標にして所望の細胞を分離する、例えば所定のマーカーの発現の有無又は発現量を指標にして所望の細胞を分離する等の手段を適宜採用できる。
また、本発明に係る方法により得られた「リプログラミングが亢進された細胞」は、必要に応じて分離回収工程を行って、所望する以外の細胞と分離してもよい。分離回収工程を行う方法は特に限定されず、例えば形態的な特徴を指標にして所望の細胞を分離する、例えば所定のマーカーの発現の有無又は発現量を指標にして所望の細胞を分離する等の手段を適宜採用できる。
〔2.リプログラミングされた細胞を作製するキット〕
本発明に係るキットは、1)弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材と、2)ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子とを少なくとも備えてなる。なお、2)の因子に関して、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤と、TGF−β受容体の阻害剤と、MAPK/ERK経路の阻害剤と、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤とを備えてなることが好ましい。なお、1)〜2)の構成は、上記〔1.体細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及びリプログラミングが亢進された細胞〕欄で説明したものと同一である。
本発明に係るキットは、1)弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材と、2)ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子とを少なくとも備えてなる。なお、2)の因子に関して、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤と、TGF−β受容体の阻害剤と、MAPK/ERK経路の阻害剤と、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤とを備えてなることが好ましい。なお、1)〜2)の構成は、上記〔1.体細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及びリプログラミングが亢進された細胞〕欄で説明したものと同一である。
利便性に優れるとの観点では、作製キットにおいて、非生物性の上記基材が、細胞培養用の基体の表面に例えば膜状に固定されていることが好ましい。細胞培養用の基体とは、細胞培養用のディッシュ、及び細胞培養用のウェルプレート等が挙げられ、当該基材がディッシュの底部又はウェルプレートのウェルの底部に固定されている構成が例示される。或いは、細胞培養用の基体が平板状の部材(ディスク又はプレート等)であって、その表面に非生物性の基材が膜状に固定されていてもよい(図5参照)。なお、細胞培養用の基体に上記基材を固定する方法は特に限定されず、基体及び基材の材質等に応じて、適宜、方法を選択すればよい。例えば、基材が含水ゲルであって、細胞培養用の基体上で当該含水ゲルを生成する場合には、含水ゲルの接着力を利用して両者を固定してもよいし、必要に応じて適切なシランカップリング剤でガラス製等の基体の表面を処理しておいてから両者を固定してもよい。
また、作製キットにおいて、非生物性の上記基材の表面のうち体細胞が接する側の表面が、取り外し可能な保護層で保護されていることが好ましい。保護層は、例えばガラス薄膜、又はプラスチック薄膜であり、作製キットの使用時には、体細胞を播種するためにこれら保護層を取り外す(図5中の(b)も参照)。例えば、非生物性の上記基材が含水ゲルの場合、当該ゲルが有する接着性を利用して保護層を付着させておくことができ、これによって含水ゲルの乾燥及び変質を防止することができる。なお、含水ゲルの乾燥及び変質を防止する目的では、必ずしも含水ゲルに保護層が直接的に接着した構成を採る必要はなく、例えば、保護層が間接的に基材上を被覆して保護する構成(例えばウェルプレート上を保護層が被覆する構成)、又は密閉性の高い袋の中に基材が格納された構成等であってもよい。
また、作製キットにおいて、上記のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤から選択される少なくとも一つが、非生物性の上記基材中に含まれている構成であってもよい。これらの「添加剤」が予め基材中に含まれていれば、利便性の向上、及び作製キットのコンパクト化の観点では好ましい。なお、基材が含水ゲルの場合には、これらの「添加剤」を水に溶解又は懸濁した状態で基材中に取り込ませることができる。
なお、これらの「添加剤」を基材に取り込ませる以外の態様としては、例えば、「添加剤」が水等に溶解又は懸濁した状態で、蓋付の格納容器、又は格納袋内に収容されているものが挙げられる。或いは、「添加剤」が常温常圧で固体の場合には、当該固体の状態で、蓋付の格納容器、又は格納袋内に収容されているものが挙げられる。
また、作製キットは、キットの使用説明書を備えていてもよい。キットの使用説明書には、上記〔1.体細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及びリプログラミングが亢進された細胞〕の欄で記載したような、体細胞のリプログラミングを亢進させる方法が記録されている。使用説明書は、例えば、紙等の記録媒体に印刷されていてもよいし、フロッピディスク、コンパクトディスク(CD)、MD、又はフラッシュメモリ等の電子的な記録媒体に電子的に記録されているものでもよい。
この作製キットは、本発明に係る体細胞のリプログラミングを亢進させる方法、及び当該方法を実施するための培養システムの構築に好適に用いることができる。
〔3.まとめ〕
以上のように、本発明は以下の何れかの内容を包含する。
1)体細胞のリプログラミングを亢進させる方法であって、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。
2)上記基材の弾性率が0.2kPa以上で1kPa以下の範囲内である、1)に記載の方法。
3)上記基材が含水ゲルである、1)又は2)に記載の方法。
4)上記含水ゲルは、アクリルアミドの基本骨格を有するモノマーの単独重合体又は共重合体の含水ゲルである、3)に記載の方法。
5)上記培養工程は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤の存在下において行われる、1)〜4)の何れかに記載の方法。
6)ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤が含まれる場合にその濃度は10μM以上で10mM以下の範囲内であり、TGF−β受容体の阻害剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、MAPK/ERK経路の阻害剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内である、1)〜5)の何れかに記載の方法。
7)上記体細胞は繊維芽細胞である、1)〜6)の何れかに記載の方法。
8)上記培養工程を経て上記体細胞のリプログラミングを亢進させることで、Nanog及びOct3/4陽性であるとともに、テラトーマ形成能を有する細胞が生じる、1)〜7)の何れかに記載の方法。
9)弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材と、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子と、を備えた、リプログラミングされた細胞を作製するキット。
10)上記ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子が徐放性を示す形態で含まれている、9)に記載のキット。
11)非生物性の上記基材が、細胞培養用の基体の表面に固定されている、9)又は10)に記載のキット。
12)リプログラミングが亢進された細胞の作製方法であって、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。13)上記1)〜8)の何れかに記載の方法によって体細胞のリプログラミングを亢進させる工程を含む、リプログラミングが亢進された細胞の作製方法。
14)(a)細胞培養用の基体、(b)当該基体中に配置された、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子を含む細胞培養培地、および(c)当該細胞培養培地中に浸漬された、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材、を含む培養システム。
15)未分化能向上因子として、CCL2が上記細胞培養培地および/または上記非生物性の基材に添加された、14)に記載のシステム。
以上のように、本発明は以下の何れかの内容を包含する。
1)体細胞のリプログラミングを亢進させる方法であって、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。
2)上記基材の弾性率が0.2kPa以上で1kPa以下の範囲内である、1)に記載の方法。
3)上記基材が含水ゲルである、1)又は2)に記載の方法。
4)上記含水ゲルは、アクリルアミドの基本骨格を有するモノマーの単独重合体又は共重合体の含水ゲルである、3)に記載の方法。
5)上記培養工程は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤の存在下において行われる、1)〜4)の何れかに記載の方法。
6)ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤が含まれる場合にその濃度は10μM以上で10mM以下の範囲内であり、TGF−β受容体の阻害剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、MAPK/ERK経路の阻害剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内である、1)〜5)の何れかに記載の方法。
7)上記体細胞は繊維芽細胞である、1)〜6)の何れかに記載の方法。
8)上記培養工程を経て上記体細胞のリプログラミングを亢進させることで、Nanog及びOct3/4陽性であるとともに、テラトーマ形成能を有する細胞が生じる、1)〜7)の何れかに記載の方法。
9)弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材と、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子と、を備えた、リプログラミングされた細胞を作製するキット。
10)上記ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子が徐放性を示す形態で含まれている、9)に記載のキット。
11)非生物性の上記基材が、細胞培養用の基体の表面に固定されている、9)又は10)に記載のキット。
12)リプログラミングが亢進された細胞の作製方法であって、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。13)上記1)〜8)の何れかに記載の方法によって体細胞のリプログラミングを亢進させる工程を含む、リプログラミングが亢進された細胞の作製方法。
14)(a)細胞培養用の基体、(b)当該基体中に配置された、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子を含む細胞培養培地、および(c)当該細胞培養培地中に浸漬された、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材、を含む培養システム。
15)未分化能向上因子として、CCL2が上記細胞培養培地および/または上記非生物性の基材に添加された、14)に記載のシステム。
〔実施例1〕
(基盤の準備)
直径25mmの円形ガラス板(Fisherscientific社製)を100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板を、0.5%の3-methacryloxypropyltriethoxysilaneと1%のアセトンとを含む水溶液にて1時間浸したのち、再び100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板上に、8.5μリットルの3〜4% Acrylamide、0.03〜0.225% N,N’-Methylenebisacrylamide、0.1% Tetramethylethylenediamine、及び0.1% ammonium persulfateを含有する水溶液を滴下し、さらに直径22mmの円形ガラス板を重層した(図5中の(a)参照)。ゲルの堅さはAcrylamideとN,N’-Methylenebisacrylamideとの比を変えることによって調整した。1時間後に、ゲルが固化した後に、直径22mmの円形ガラス板を取り除き(図5中の(b)参照)、50mMのHEPES 含有水溶液(PH8.5)にて洗浄した。このようにしてポリアクリルアミド系の含水ゲルが付着した基盤(ゲル基盤)を準備した。
(基盤の準備)
直径25mmの円形ガラス板(Fisherscientific社製)を100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板を、0.5%の3-methacryloxypropyltriethoxysilaneと1%のアセトンとを含む水溶液にて1時間浸したのち、再び100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板上に、8.5μリットルの3〜4% Acrylamide、0.03〜0.225% N,N’-Methylenebisacrylamide、0.1% Tetramethylethylenediamine、及び0.1% ammonium persulfateを含有する水溶液を滴下し、さらに直径22mmの円形ガラス板を重層した(図5中の(a)参照)。ゲルの堅さはAcrylamideとN,N’-Methylenebisacrylamideとの比を変えることによって調整した。1時間後に、ゲルが固化した後に、直径22mmの円形ガラス板を取り除き(図5中の(b)参照)、50mMのHEPES 含有水溶液(PH8.5)にて洗浄した。このようにしてポリアクリルアミド系の含水ゲルが付着した基盤(ゲル基盤)を準備した。
(基盤のコート)
作成したゲル基盤の上に、500μリットルの0.05% sulfo-SANPAH水溶液を滴下し、波長312nmの紫外光を10分間照射した。その後、50mM HEPES 含有水溶液(PH8.5)にてゲル基盤を洗浄し、次いで0.1%ゼラチンを含む50mM HEPES水溶液に翌日まで浸した(図5中の(c)参照)。
作成したゲル基盤の上に、500μリットルの0.05% sulfo-SANPAH水溶液を滴下し、波長312nmの紫外光を10分間照射した。その後、50mM HEPES 含有水溶液(PH8.5)にてゲル基盤を洗浄し、次いで0.1%ゼラチンを含む50mM HEPES水溶液に翌日まで浸した(図5中の(c)参照)。
含水ゲルの弾性率の測定:
作成した含水ゲルの弾性率は、上記のゲル基盤上に形成したものを対象として測定した。具体的には、ゲル基盤をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)水溶液に浸漬して、含水ゲルを充分に膨潤させた(実質的な飽和膨潤状態)。次いで、この含水ゲル上に、重量0.0159gの円柱状(底面の半径=1.65mm)のおもりを配置し、当該おもりの沈み込み量から、上記式(1)に基づいて含水ゲルの弾性率を求めた。
作成した含水ゲルの弾性率は、上記のゲル基盤上に形成したものを対象として測定した。具体的には、ゲル基盤をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)水溶液に浸漬して、含水ゲルを充分に膨潤させた(実質的な飽和膨潤状態)。次いで、この含水ゲル上に、重量0.0159gの円柱状(底面の半径=1.65mm)のおもりを配置し、当該おもりの沈み込み量から、上記式(1)に基づいて含水ゲルの弾性率を求めた。
(細胞の播種及び培養)
ヒト線維芽細胞(ScienCell社)を、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、及び1%ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーゲル培地にて培養した。培養した細胞を回収し、次いで、ゲル基盤1枚につき5×104個の細胞を播種し、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、0.25mM NaB、5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901を含むダルベッコ改変イーゲル培地にて4日間培養した。細胞の培養に際して、ゲル基盤は、それを格納可能な大きさの細胞培養ディッシュ内に配置し、ゲル基盤が培地に完全に浸漬した状態とした。
ヒト線維芽細胞(ScienCell社)を、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、及び1%ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーゲル培地にて培養した。培養した細胞を回収し、次いで、ゲル基盤1枚につき5×104個の細胞を播種し、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、0.25mM NaB、5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901を含むダルベッコ改変イーゲル培地にて4日間培養した。細胞の培養に際して、ゲル基盤は、それを格納可能な大きさの細胞培養ディッシュ内に配置し、ゲル基盤が培地に完全に浸漬した状態とした。
また対照実験として、ゲル基盤に代えて硬いプラスチック(BDファルコン社製細胞培養ディッシュ)又はフィーダ細胞上で培養を行った以外は同様の条件にて、ヒト線維芽細胞を培養した。
(結果)
Nanog陽性、Oct3/4陽性、コロニーの出現
ヒト線維芽細胞を柔らかい基盤(ゲル基盤)上で培養したところ、培養4日後でES様コロニーが現れ、免疫染色したところほとんどの細胞がNanogとOct3/4を発現していた。NanogとOct3/4が両方発現しているコロニーの数は、堅いプラスチック(図中でRigidとして示す)上で培養したときと比べ、有意に大きかった(図1及び図2参照)。
Nanog陽性、Oct3/4陽性、コロニーの出現
ヒト線維芽細胞を柔らかい基盤(ゲル基盤)上で培養したところ、培養4日後でES様コロニーが現れ、免疫染色したところほとんどの細胞がNanogとOct3/4を発現していた。NanogとOct3/4が両方発現しているコロニーの数は、堅いプラスチック(図中でRigidとして示す)上で培養したときと比べ、有意に大きかった(図1及び図2参照)。
未分化マーカーの発現
堅さ(弾性率)1kPaの基盤の上で培養した細胞に関して、未分化マーカーを発現しているかどうかを調べたところ、SSEA3、SSEA4、及びSox2の発現が上昇していることが免疫染色法で確認された。また、リアルタイムRT−PCRでmRNAの量を調べたところ、Oct3/4は弾性率0.2〜3kPaのゲル基盤上で培養した場合に、Nanogは弾性率1kPaのゲル基盤上で培養した場合に、堅いプラスチック上で培養した場合と比べて多くなっていた(図3及び図4参照)。
堅さ(弾性率)1kPaの基盤の上で培養した細胞に関して、未分化マーカーを発現しているかどうかを調べたところ、SSEA3、SSEA4、及びSox2の発現が上昇していることが免疫染色法で確認された。また、リアルタイムRT−PCRでmRNAの量を調べたところ、Oct3/4は弾性率0.2〜3kPaのゲル基盤上で培養した場合に、Nanogは弾性率1kPaのゲル基盤上で培養した場合に、堅いプラスチック上で培養した場合と比べて多くなっていた(図3及び図4参照)。
〔実施例2〕
(基盤の準備)
直径25mmの円形ガラス板(Fisherscientific社製)を100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板を、0.5%の3-methacryloxypropyltriethoxysilaneと1%のアセトンとを含む水溶液にて1時間浸したのち、再び100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板上に、8.5μリットルの3% Acrylamide、0.1% N,N'-Methylenebisacrylamide、0.1% Tetramethylethylenediamine、及び0.1% ammonium persulfateを含有する水溶液を滴下し、さらに直径22mmの円形ガラス板を重層した。1時間後に、ゲルが固化した後に、直径22mmの円形ガラス板を取り除き、50mMのHEPES 含有水溶液(PH8.5)にて洗浄した。このようにしてポリアクリルアミド系の含水ゲルが付着した硬さ1kPaの基盤(ゲル基盤)を準備した。
(基盤の準備)
直径25mmの円形ガラス板(Fisherscientific社製)を100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板を、0.5%の3-methacryloxypropyltriethoxysilaneと1%のアセトンとを含む水溶液にて1時間浸したのち、再び100%エタノールで洗浄し乾燥させた。この円形ガラス板上に、8.5μリットルの3% Acrylamide、0.1% N,N'-Methylenebisacrylamide、0.1% Tetramethylethylenediamine、及び0.1% ammonium persulfateを含有する水溶液を滴下し、さらに直径22mmの円形ガラス板を重層した。1時間後に、ゲルが固化した後に、直径22mmの円形ガラス板を取り除き、50mMのHEPES 含有水溶液(PH8.5)にて洗浄した。このようにしてポリアクリルアミド系の含水ゲルが付着した硬さ1kPaの基盤(ゲル基盤)を準備した。
(基盤のコート)
作成したゲル基盤の上に、500μリットルの0.05% sulfo-SANPAH水溶液を滴下し、波長312nmの紫外光を10分間照射した。その後、50mM HEPES 含有水溶液(PH8.5)にてゲル基盤を洗浄し、次いで0.1%ゼラチンを含む50mM HEPES水溶液に翌日まで浸した。
作成したゲル基盤の上に、500μリットルの0.05% sulfo-SANPAH水溶液を滴下し、波長312nmの紫外光を10分間照射した。その後、50mM HEPES 含有水溶液(PH8.5)にてゲル基盤を洗浄し、次いで0.1%ゼラチンを含む50mM HEPES水溶液に翌日まで浸した。
(細胞の播種及び培養)
ヒト線維芽細胞(ScienCell社)を、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、及び1%ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーゲル培地にて培養した。培養した細胞を回収し、次いで、ゲル基盤1枚につき5×104個の細胞を播種し、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、及び以下(1)〜(4)の何れかの組み合わせの試薬を含むダルベッコ改変イーゲル培地にて4日間培養した。
(1)5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901(−NaB)
(2)0.25mM NaB、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901(−PS48)
(3)0.25mM NaB、5μM PS48、及び0.5μM PD0325901(−A8301)
(4)0.25mM NaB、5μM PS48、及び0.5μM A-83-01(−PD0325901)
細胞の培養に際して、ゲル基盤は、それを格納可能な大きさの細胞培養ディッシュ内に配置し、ゲル基盤が培地に完全に浸漬した状態とした。
ヒト線維芽細胞(ScienCell社)を、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、及び1%ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーゲル培地にて培養した。培養した細胞を回収し、次いで、ゲル基盤1枚につき5×104個の細胞を播種し、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、及び以下(1)〜(4)の何れかの組み合わせの試薬を含むダルベッコ改変イーゲル培地にて4日間培養した。
(1)5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901(−NaB)
(2)0.25mM NaB、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901(−PS48)
(3)0.25mM NaB、5μM PS48、及び0.5μM PD0325901(−A8301)
(4)0.25mM NaB、5μM PS48、及び0.5μM A-83-01(−PD0325901)
細胞の培養に際して、ゲル基盤は、それを格納可能な大きさの細胞培養ディッシュ内に配置し、ゲル基盤が培地に完全に浸漬した状態とした。
また、0.25mM NaB、5μM PS48、0.5μM A-83-01及び0.5μM PD0325901を加えた培地(4i)及び薬剤を加えなかった培地(0i)でも同様にヒト線維芽細胞を培養した。
(結果)
Nanog及びOct3/4の発現を免疫染色によって比較した。ヒト線維芽細胞を薬剤の組み合わせを変えて1kPaの硬さの基盤(ゲル基盤)上で培養したところ、培養4日後でES様コロニーが現れた。また、免疫染色したところほとんどの細胞がNanog(赤色)を発現していた。一方、Oct3/4(緑色)は、4iの条件及び−A8301の条件で発現が多く観察された(図6)。また、Nanog及びOct3/4の発現を定量的に調べるため、免疫染色画像の蛍光強度を比較したところ、−A8301の条件で4iの条件の9割程度のNanog発現及びOct3/4発現が見られた(図7)。
Nanog及びOct3/4の発現を免疫染色によって比較した。ヒト線維芽細胞を薬剤の組み合わせを変えて1kPaの硬さの基盤(ゲル基盤)上で培養したところ、培養4日後でES様コロニーが現れた。また、免疫染色したところほとんどの細胞がNanog(赤色)を発現していた。一方、Oct3/4(緑色)は、4iの条件及び−A8301の条件で発現が多く観察された(図6)。また、Nanog及びOct3/4の発現を定量的に調べるため、免疫染色画像の蛍光強度を比較したところ、−A8301の条件で4iの条件の9割程度のNanog発現及びOct3/4発現が見られた(図7)。
〔実施例3〕
(基盤の準備)
実施例2と同様に行った。
(基盤の準備)
実施例2と同様に行った。
(基盤のコート)
実施例2と同様に行った。
実施例2と同様に行った。
(細胞の播種及び培養)
ヒト線維芽細胞(ScienCell社)は、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、及び1%ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーゲル培地にて培養した。培養した細胞を回収し、次いで、ゲル基盤1枚につき5×104個の細胞を播種し、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、及び以下(1)〜(4)の何れかの組み合わせの試薬を含むダルベッコ改変イーゲル培地にて4日間培養した。
(1)20nM トリコスタチンA(シグマ・アルドリッヒ社製)、5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901(TriA)
(2)0.25mM NaB、5μM PS48、2μM SB431542(シグマ・アルドリッヒ社製)、及び0.5μM PD0325901(SB431542)
(3)0.25mM NaB、5μM PS48、100nM LY2157299(和光純薬社製)、及び0.5μM PD0325901(LY2157299)
(4)0.25mM NaB、5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び100nM U0126(シグマ・アルドリッヒ社製)(U0126)
細胞の培養に際して、ゲル基盤は、それを格納可能な大きさの細胞培養ディッシュ内に配置し、ゲル基盤が培地に完全に浸漬した状態とした。
ヒト線維芽細胞(ScienCell社)は、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、及び1%ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーゲル培地にて培養した。培養した細胞を回収し、次いで、ゲル基盤1枚につき5×104個の細胞を播種し、10%牛胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、及び以下(1)〜(4)の何れかの組み合わせの試薬を含むダルベッコ改変イーゲル培地にて4日間培養した。
(1)20nM トリコスタチンA(シグマ・アルドリッヒ社製)、5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び0.5μM PD0325901(TriA)
(2)0.25mM NaB、5μM PS48、2μM SB431542(シグマ・アルドリッヒ社製)、及び0.5μM PD0325901(SB431542)
(3)0.25mM NaB、5μM PS48、100nM LY2157299(和光純薬社製)、及び0.5μM PD0325901(LY2157299)
(4)0.25mM NaB、5μM PS48、0.5μM A-83-01、及び100nM U0126(シグマ・アルドリッヒ社製)(U0126)
細胞の培養に際して、ゲル基盤は、それを格納可能な大きさの細胞培養ディッシュ内に配置し、ゲル基盤が培地に完全に浸漬した状態とした。
また、0.25mM NaB、5μM PS48、0.5μM A-83-01及び0.5μM PD0325901を加えた培地(4i)及び薬剤を加えなかった培地(0i)でも同様にヒト線維芽細胞を培養した。
(結果)
Nanog及びOct3/4の発現を免疫染色によって比較した。ヒト線維芽細胞を薬剤の組み合わせを変えて1kPaの硬さの基盤(ゲル基盤)上で培養したところ、培養4日後でES様コロニーが現れた。また、免疫染色したところほとんどの細胞がNanog(赤色)を発現していた。一方、Oct3/4(緑色)は、4iの条件及びTriAの条件で発現が多く観察された(図8)。また、Nanog及びOct3/4の発現を定量的に調べるため、免疫染色画像の蛍光強度を比較したところ、TriAの条件で4iの条件の8割程度のNanog発現、1割五分増しのOct3/4発現が見られた。
Nanog及びOct3/4の発現を免疫染色によって比較した。ヒト線維芽細胞を薬剤の組み合わせを変えて1kPaの硬さの基盤(ゲル基盤)上で培養したところ、培養4日後でES様コロニーが現れた。また、免疫染色したところほとんどの細胞がNanog(赤色)を発現していた。一方、Oct3/4(緑色)は、4iの条件及びTriAの条件で発現が多く観察された(図8)。また、Nanog及びOct3/4の発現を定量的に調べるため、免疫染色画像の蛍光強度を比較したところ、TriAの条件で4iの条件の8割程度のNanog発現、1割五分増しのOct3/4発現が見られた。
本発明は上述した各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載した参考文献に記載の内容は全て、リファレンスとして本明細書の内容に援用される。
本発明は、遺伝子の導入を要することなく細胞のリプログラミングを亢進させる方法を提供する。
Claims (13)
- 体細胞のリプログラミングを亢進させる方法であって、
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、
弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。 - 上記基材の弾性率が0.2kPa以上で1kPa以下の範囲内である、請求項1に記載の方法。
- 上記基材が含水ゲルである、請求項1又は2に記載の方法。
- 上記含水ゲルは、アクリルアミドの基本骨格を有するモノマーの単独重合体又は共重合体の含水ゲルである、請求項3に記載の方法。
- 上記培養工程は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤の存在下において行われる、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
- ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤が含まれる場合にその濃度は0.1nM以上で10mM以下の範囲内であり、TGF−β受容体の阻害剤が含まれる場合にその濃度は0.1nM以上で1mM以下の範囲内であり、MAPK/ERK経路の阻害剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内であり、3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤が含まれる場合にその濃度は0.01μM以上で1mM以下の範囲内である、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
- 上記体細胞は繊維芽細胞である、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
- 上記培養工程を経て上記体細胞のリプログラミングを亢進させることで、Nanog及びOct3/4陽性であるとともに、テラトーマ形成能を有する細胞が生じる、請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
- 弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材と、
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子と、を備えた、リプログラミングされた細胞を作製するキット。 - 上記ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子が徐放性を示す形態で含まれている、請求項9に記載のキット。
- 非生物性の上記基材が、細胞培養用の基体の表面に固定されている、請求項9又は10に記載のキット。
- リプログラミングが亢進された細胞の作製方法であって、
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子の存在下において、
弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材に接した状態で体細胞を培養する培養工程を含む、方法。 - (a)細胞培養用の基体、
(b)当該基体中に配置された、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤、TGF−β受容体の阻害剤、MAPK/ERK経路の阻害剤、及び3’−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ−1の活性化剤からなる因子群より選択される少なくとも一つの因子を含む細胞培養培地、および
(c)当該細胞培養培地中に浸漬された、弾性率が0.1kPa以上で200kPa以下の範囲内である非生物性の基材、
を含む培養システム。
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