JP2010136655A - 三次元組織培養物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】三次元組織培養物の強度を簡便に高めることができる三次元組織培養物の製造方法を提供する。
【解決手段】幹細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造する製造方法であって、培養器中の培養液に幹細胞を播種する播種工程と、播種後の幹細胞を培養して、前記培養器の面に付着させると共に、前記幹細胞から細胞外基質を産生させて、培養液中に三次元の培養物を形成する培養工程と、所定期間後に、培養器の面から前記培養物を分離する分離工程と、前記分離させた状態で少なくとも3日以上培養させる浮遊培養工程と、を含む方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、三次元組織培養物の製造方法に関する。
近年、重症臓器不全や難治性疾患、或いは激しいスポーツや交通事故などによって、組織の一部又は全部が損傷を受けた場合には、遺伝子工学や細胞組織工学、再生医学等を駆使して、この欠損部を補う再生型治療が注目されている。
これまで組織修復、再生をめざした細胞治療を行う場合、細胞の集積の維持、細胞増殖、分化機能の安定化、さらには治療部位にかかる力学的ストレスからの保護などのために大多数の研究では、有機高分子化合物や生体スキャフォールド(Scaffold)が使用されてきた(例えば、特許文献1)。しかしスキャフォールドの多くは生物(動物)材料、生体高分子材料等を含有し、それらの材料の使用が生体に及ぼす安全性は長期にわたっては予測しきれない問題があった。
スキャフォールドなどの基盤材料を用いない細胞移植方法としては、温度感受性培養皿を利用した細胞シート工学技術等が知られている(例えば、非特許文献1)。しかし、この細胞シート技術を使用する場合、単独のシートでは脆弱であることが多く、移植等の外科的操作に耐えうる強度を得るためにはシートを重ね合わせる操作等の工夫が必要であった。
これらの問題を解決するために、スキャフォールドを含まない培養組織が知られている(特許文献2及び非特許文献2)。このようなスキャフォールドフリー自己組織性三次元人工組織(3DBT: scaffold-free Three-Dimensional Bioengineered Tissue)では、滑膜などに由来する幹細胞を、細胞外基質産生促進因子を含む細胞培養液中で細胞を培養すると得ることができると記載されている。また、細胞外基質産生促進因子を添加することによって細胞外基質の生産が促進されて、その結果、得られる培養組織又は複合体が効果され、剥離しやすくなり、培養物を剥がしたときに収縮し、三次元化、重層化などが促進されると記載されている。このような培養組織及びその複合体によって、スキャフォールド自体の混入に起因する問題を一挙に解決することができ、スキャフォールドがないにもかかわらず、移植後の経過に優れた治療を可能にすることができると記載されている。
しかしながら、上記スキャフォールドフリー自己組織性三次元人工組織は、線維組織などの構造が未発達のため、自己支持性をある程度は維持できるとしても、手術手技における操作で破損等しないよう取り扱いに注意する必要ある。従来の作製方法では、これ以上の引張強度を向上させるには限界があった。
このように、高分子材料等を用いずに簡便に培養組織の強度を高める方法が必要とされていた。
国際公開第2002/010349号パンフレット 特表2007−528756号公報 J Biomed. Mater. Res., Vol.45, pp.355-362 (1999) Biomaterials, Vol. 38(36), pp.5462-5470 (2007)
従って本発明の目的は、三次元組織培養物の強度を簡便に高めることができる三次元組織培養物の製造方法を提供することである。
本発明は以下のとおりである。
[1] 培養液中で幹細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造する製造方法であって、培養器に幹細胞を播種する播種工程と、播種後の幹細胞を培養して前記培養器の面に付着させると共に、前記幹細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、所定期間後に、培養器の面から前記培養物を分離する分離工程と、前記分離させた状態で少なくとも3日以上浮遊培養する浮遊培養工程と、を含む三次元組織培養物の製造方法。
[2] 前記幹細胞が、4継代以上7継代以下の培養細胞である[1]に記載の製造方法。
[3] 前記幹細胞が、間葉系幹細胞である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記浮遊培養工程が、3日以上7日以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記幹細胞を、細胞外基質産生促進因子の存在下で培養する[1]〜[4]のいずれか1項記載の製造方法。
[6] 前記細胞外基質産生促進因子が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、TGFβ1及びTGFβ3からなる群より選択される少なくとも1種である[5]記載の製造方法。
[7] 細胞外基質が、コラーゲンI、コラーゲンIII、ビトロネクチン及びフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1種である[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記浮遊培養工程によって得られた三次元組織培養物の引張強度が少なくとも0.1MPa以上である[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、三次元組織培養物の強度を簡便に高めることができる三次元組織培養物の製造方法を提供することができる。
本発明の三次元組織培養物の製造方法は、培養液中で幹細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造する製造方法であって、培養器に幹細胞を播種する播種工程と、播種後の幹細胞を培養して前記培養器の面に付着させると共に、前記幹細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、所定期間後に、培養器の面から前記培養物を分離する分離工程と、前記分離させた状態で少なくとも3日以上浮遊培養する浮遊培養工程と、を含む三次元組織培養物の製造方法である。
本発明によれば、幹細胞を培養して細胞外基質を産生させると共に、培養器に付着させて培養した後に、培養器から分離させて分離させた状態で少なくとも3日以上浮遊培養を行うので、三次元組織培養物の厚みが増すだけでなく破断荷重が向上するので、強度を簡便に且つ充分に高めることができる。これにより手術手技のハンドリングに有用な培養物を作製することができる。
本発明の製造方法は、培養液中で幹細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造するものである。
本発明において幹細胞とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。本発明における幹細胞としては、胚性幹(ES)細胞、組織幹細胞を挙げることができ、また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した多能性幹細胞もまた、本発明における幹細胞に該当する。胚性幹細胞とは、初期胚に由来する多能性幹細胞をいい、組織幹細胞とは、胚性幹細胞よりも分化の方向が限定されている細胞である。組織間細胞としては、例えば、皮膚系、消化器系、骨髄系、神経系などに分けられる。皮膚系の組織幹細胞としては、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞などが挙げられる。消化器系の組織幹細胞としては、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄系の組織幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞(例えば、脂肪由来、骨髄由来)などが挙げられる。神経系の組織幹細胞としては、神経幹細胞、網膜幹細胞などが挙げられる。本発明では、なかでも間葉系幹細胞に好ましく用いられる。
間葉系幹細胞は、増殖能と、骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、ストローマ細胞、腱細胞、脂肪細胞への分化能を有する。本発明においては、腱細胞、骨細胞、軟骨細胞等への分化能を有する幹細胞を好ましく用いることができる。
これらの間葉系幹細胞は、これらの幹細胞が存在しうる組織から得ることができる。本発明における幹細胞を得るために好ましく用いられる供給源としての組織には、骨、軟骨、腱、靭帯、半月、椎間板、骨膜、血管、血管様組織、心臓、心臓弁、心膜、硬膜などの組織が挙げることができる。なかでも、腱細胞へ分化可能な幹細胞を用いる場合には、滑膜等の組織を供給源とすることができ、滑膜由来間質細胞などを用いることがより好ましい。
細胞の由来には特に制限はないが、培養物の移植片等として使用する場合には、種適合性等を勘案して哺乳動物から適宜選択されることが好ましい。このような哺乳動物としては、例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目などを挙げることができ、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物を具体例として挙げることができる。
これらの細胞は、生体から採取されたいわゆる初代培養物であっても継代されたものであってもよいが、幹細胞密度向上と細胞外基質生産能力向上の観点から、4継代以上7継代以下の培養細胞を用いることが好ましい。本発明において「継代」とは、当業界で通常用いられる意味で使用され、本発明における幹細胞は、生体から採取した初代培養以来の継代回数で表される。本発明における幹細胞が4継代以上の培養細胞であれば充分な強度の培養物とすることができ、7継代以下の培養細胞であれば細胞の増殖能も充分に高いため、好ましい。また、5継代以上7継代以下の培養細胞であれば、細胞外基質の生産と三次元組織培養物としたときの細胞密度のバランスを高いレベルで良好なものにすることができ、より好ましい。
幹細胞の培養に用いられる培養液としては、目的とする細胞の培養に一般的に用いられるものであればよく、例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB104、199、MCDB153、L15、SkBM、Basal培地などを使用することができる。また、これらの培養液には、一般に添加可能な各種の成分、例えば、グルコース、FBS(ウシ胎仔血清)またはヒト血清、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシンなど)を添加してもよい。なお、血清を添加する場合の濃度は、そのときの培養状態によって適宜変更することができるが、通常10%(v/v)とすることができる。細胞の培養には、通常の培養条件、例えば37℃の温度で5%CO濃度のインキュベーター内での培養が適用される。
培養に用いられる培養器としては、上述した細胞の培養に通常用いられるものであればよく、ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)、シリコーンなどの容器を挙げることができる。後述する分離工程において細胞を分離する際に、細胞に損傷を与えない範囲で、細胞付着性を向上させる処理が付されているものであってもよい。
細胞の播種は、細胞の種類、細胞の継代数、培養期間などによって適宜調整可能であるが、一般に、5×10〜1×10cells/cmの細胞密度で播種することができる。
細胞の播種が完了すると、付着培養工程において、幹細胞を培養して、幹細胞を培養器の面に付着させると共に、幹細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する。
幹細胞の培養器の面への付着は、通常の培養条件での培養を継続させることにより、細胞の性質に応じて培養器の面へ細胞が付着することより容易に達成される。幹細胞の付着は、培養器の面に強固に接着している必要はなく、細胞の性質上、独立して浮遊せず、培養器の例えば底面に接触している程度でもよく、後述する分離工程において、所定の分離手段によって容易に分離可能となる程度の付着力であることが、細胞の損傷を抑えることができ好ましい。
また培養期間を継続させることにより、幹細胞から細胞外基質が産生される。
幹細胞から産生される細胞外基質としては、例えば、コラーゲンI、コラーゲンIII、コラーゲンV、エラスチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンディン、プロテオグリカン類(例えば、デコリン、バイグリカン、フィブロモジュリン、ルミカン、ヒアルロン酸、アグリカンなど)などを挙げることができるがそれらに限定されず、細胞接着を担う細胞外基質であれば、いずれのものであってもよい。より好ましくは、細胞外基質は、コラーゲン(I型、III型など)、ビトロネクチンおよびフィブロネクチンをすべて含む。これらの細胞外基質が産生されることにより、細胞外基質のネットワークが形成された細胞と細胞外基質とで構成された三次元の培養物が形成する。
幹細胞からの細胞外基質の産生を促進するために、細胞の培養は、細胞外基質産生促進因子の存在下行われることが好ましい。このため、培養液には、細胞外基質産生促進因子が添加されることが好ましい。
なお、細胞外基質産生促進因子は、培養開始時から培養液に添加していてもよく、細胞播種後に培養液に添加してもよい。また、細胞外基質産生促進因子は、付着培養工程において存在していればよく、付着培養工程のみであっても、付着培養工程と浮遊細胞工程との双方でも存在していてもよい。
これらの細胞外基質産生促進因子の存在下で細胞を培養することにより、後述する分離工程において、培養物の分離をより容易にすることができる。
培養液中に添加される細胞外基質産生促進因子は、細胞外基質の分泌を促進するような因子であり、例えば、TGF−β1、TGF−β3、アスコルビン酸、アスコルビン酸2リン酸またはその誘導体あるいはそれらの塩を挙げることができる。コラーゲン生成の観点から好ましくは、アスコルビン酸、アスコルビン酸2リン酸またはそれらの誘導体およびその塩(例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩など)とすることができる。本発明におけるアスコルビン酸は、L体であることが好ましいがそれに限定されない。
本発明において使用される細胞外基質産生促進因子の添加量としては、例えばアスコルビン酸2リン酸の場合であれば、通常0.01mM以上、三次元組織培養物の引張強度の観点から好ましくは0.05mM以上、さらに好ましくは0.1mM以上とすることができ、より好ましくは0.2mM以上とすることができる。一方、アスコルビン酸2リン酸の場合には、添加量を多くしてもよく、例えば5.0mM以下としてもよいが、添加量に対する引張強度向上効率の観点から、1.0mMであることがさらに好ましい。
三次元培養物を形成するための付着培養期間としては、播種した細胞数、細胞の種類などによって異なるが、一般には、少なくとも7日間とすることができるが、大きな強度の増大を期待できる観点から、より好ましくは21日程度である。これにより、目的に応じた十分なサイズの三次元組織培養物を形成することができる。
分離工程では、培養器の面から、培養中の前記培養物を分離する。
培養工程によって形成された三次元培養物は、培養器の面からの分離によって培養液中に浮遊する。この分離の刺激を与えることによって自己収縮が生じて、培養物の硬化(線維組織の配向や架橋による剛性と強度の増大)が生じる。ここで培養器の面とは、播種された幹細胞が付着した面を意味し、容器の形状によって決定されるが、一般に、培養器の底面であるが、側面であってもよい。
分離の手段としては、細胞に自己収縮を生じる一方で細胞に損傷を与えない刺激であればよい。このような分離手段としては、例えば、物理的手段(例えば、培地のピペッティングなど)、化学的手段(物質の添加)などを挙げることができる。中でもピペッティングなどの物理的手段であることが、得られた組織物に異物を混入させないという観点から好ましい。また、剥離は、物理的な刺激(例えば、容器の角に棒などで物理的手段、即ち、ずり応力印加、ピペッティング、容器の変形などを与えるなど)を行うことによって促進することができる。自己収縮は、このような剥離の後、物理的刺激が与えられる場合、自然に起こる。化学的刺激の場合は、自己収縮および剥離が並行して生じる。このような刺激により生じる自己収縮によって、特に第三次元方向の生物学的結合が促進されると考えられ、この結果、培養物は、三次元の構造体としての形態を維持することができる。
分離工程において分離された培養物は、浮遊培養工程において、分離された状態で少なくとも3日以上、浮遊培養に付される。分離によって、三次元培養物は自然と培養液中に浮遊状態となり、この浮遊培養工程では、このような浮遊状態による培養を所定期間継続することにより行われる。
特定の理論に拘束されるものではないが、一般に付着性の細胞は、付着することにより生体内に近い環境を構築して安定化するため、浮遊状態での培養は細胞にとって不安定な状態であると考えられる。本発明において、このような浮遊状態での培養を所定期間継続することによって、培養物の強度が向上することは予想外のことであり、分離工程における分離の効果としての自己収縮とは明らかに異なる現象である。即ち、自己収縮が分離後数時間から短期間で生じるのに対して、本発明による組織培養物の強度の向上は、3日以上の浮遊培養期間によって生じるものである。
浮遊培養工程は、浮遊状態での培養を少なくとも3日以上継続する。3日以上であれば培養物としての十分な強度のものとするができる。浮遊培養工程の期間が3日未満では、自己収縮が生じるのみであって、得られる三次元組織培養物の強度としては不十分である。培養物の強度面から好ましくは3日以上7日以下である。
ここで培養物として十分な強度とは、自己支持性に十分な強度に加えて、手術手技においてピンセット等で把持し、操作する際に破壊されない程度の強度を意味する。本発明における「自己支持性」とは、組織の少なくとも1点が空間上に固定されたときに、その組織が実質的に破壊されない特性をいう。本発明における三次元組織培養物は、自己支持性に十分な程度の強度よりも大きな強度を示すものであり、従来の培養法で得られる組織に比べ、約2倍の引張強度を得ることが可能である。
引っ張りに抗する組織の力学的特性は、一般に引張試験を実施して、引張強度、剛性率、ヤング率などを測定することによって求めることができる。
ここで、本発明の培養組織、三次元構造体などが有する力学的特性は、力学試験において応力・歪み特性を測定することによって求めることができる。手短に述べると、試料に荷重を加え、例えば、1chは歪み、2chは荷重の各々のAD変換器(例えば、ELK−5000)に入力して、応力および歪みを測定し、引っ張り強さや接戦係数(材料の硬さ)などを求めることができる。
力学的特性はまた、クリープ特性を試験することによっても求めることができる。クリープ特性インデンテーション試験とは、一定の荷重を加えた状態で時間とともにどのように伸びていくかを調べる試験である。微小な素材、薄い素材などのインデンテーション試験は、先端の半径0.1〜1μm程度の、例えば、三角錐の圧子を試験対象物に押し込んで実験を行う。まず、試験片に対して圧子を押し込み、負荷を与える。そして、試験片に数十nmから数μm程度押し込んだところで、圧子を戻し除荷する。このような試験方法によって得られる荷重除荷曲線から得られた負荷荷重と押し込み深さの挙動とによって硬さ、ヤング率などを求めることができる。
本発明の三次元組織培養物が有する高い強度は、引張強度による数値を指標として評価することができる。この引張強度による数値は、手術手技のハンドリングの観点から、少なくとも0.1MPa又はそれ以上であることが好ましく、高いほどよい。この引張強度は、引張試験によって確認することができる。上記の強度は、以下の条件で測定されたものとして定義する。
引張試験は、37℃一定に保たれたPBS中で、各試料をアルミ合金(A6061)のクランプで挟み込み、幅が6mmになるよう両側を切りそろえる。PBSの温度は、バス底面に配置したシリコンラバーヒータ(一般用SR:スリーハイ社)と温度コントローラにより温度管理を行う。クランプの一方はアクチュエータ(LAH−46−3002−F−PA−B1−SP、ハーモニック・ドライブ・システムズ)に接続し、他方は荷重検出部と一体とする。荷重検出部は、表裏に2枚ずつ、ひずみゲージ(KGF−02−120−C1−23、共和電業)を貼ることにより微小加重も正確に検出できるようにする。試験中、各試料のひずみを非接触で測定するため、マーカーは、微小磁石(質量0.002g、寸法1×1×1mm)と発泡スチロールビーズ(φ2mm)を用いて作製し、各試料を上下から挟み込んだ。断面積は、マイクロスコープ(VHX−100、キーエンス)で測定した厚さと幅から算出した。プレロードとして2mN与え、その状態をひずみ0と定義し、引張速度0.05mm/sで試料が破断するまで引張加重を与える。
また、三次元組織培養物を特定方向に配向させた培養物とするため、また三次元組織培養物の強度を更に向上させるために、分離工程後の培養物は、浮遊培養工程において、特定方向に引き伸ばしながら培養することが好ましい。引き伸ばしの手段としては、何ら制約されるものではないが、単純にピンセットで引っ張る方法や、コンピュータ制御のアクチュエータにより繰り返し引張を与える方法等が挙げられる。培養物を配向させることによって線維性組織が配向して、培養物の剛性を高めることができる。
培養物を配向させるための条件としては、細胞の種類、培養物の大きさ等によって異なるが、特定方向に引き伸ばしながら行うものであれば特に制限されない。例えば、幅6mm×厚さ0.1mmのサイズの培養物としたときに、引張強度の約5%前後の繰り返し応力を与える。
引張負荷としては、細胞の種類、培養物の大きさ等によって異なるが、一般に、4〜8mNの動的負荷を1日1時間、合計3日間程度与える条件であることが好ましい。このような引張負荷は、培養液中で行うことが好ましい。
このような引張負荷を与えることによって、更に強度を高めることができる。
このように、本発明により得られた三次元組織培養物は、人工物を含まない、いわゆるスキャフォールトフリーの組織培養物であって、手術手技における操作で破損等することがなく、充分な操作性を確保できる強度を有するものである。
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
[実施例1]
(1)培養細胞の維持
患者に同意を得た上で採取されたヒト滑膜由来間質細胞を用いて三次元組織培養物を得るための細胞を調製した。
膝関節より滑膜細胞を採取し、コラゲナーゼ処理後、10%FBS(HyClone社製)−DMEM培地(GIBCO社製)にて培養を行った。すべての培地は、ペニシリン/ストレプトマイシンを1%含む。培養細胞の維持は、培養液(20ml)の約1/3量を7日ごとに交換することとし、継代を行う場合には、14日ごとに継代を行った。
(2) 試験片の調製(試料A)
上記(1)で得られた初代細胞を、初期細胞密度4.0×10cells/cmの細胞密度となるように、DMEM培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン添加、0.2mMアスコルビン酸添加))に懸濁し、6ウェルプレート培養ディッシュ(BD FALCON)に播種して、5%CO、37℃の条件で培養を開始した。細胞は播種した後ほどなく、培養ディッシュの底面に付着した。
培養35日目に、軽くピペッティングを行うことによって培養ディッシュの底面から培養物を剥離して、浮遊させた。その後、浮遊状態のまま更に7日間培養を継続させた。7日後に培養を終了して、培養物を培養液から取り出し、試料Aとした(図1参照)。試料Aの培養期間は、合計で42日間である。
(3)比較試験片の調製(試料B)
上記(1)で得られた初代細胞を、上記(2)と同様に培養液に懸濁して培養を開始した。培養42日目に、マイクロピペットの先端を用いて培養物を端から剥離することによって、培養物を培養ディッシュの底面から浮遊させ、浮遊状態のまま1時間維持して、自己収縮させた。自己収縮後に培養物を培養液から取り出し、試料Bとした。
(4)試験片の評価
上記で得られた試料A及びBの力学的特性を以下のようにして評価した。
(a)引張試験
各試料をステンレス製のクランプに挟み込み,幅が6mmになるよう両側を切断した。各試料のひずみを非接触で測定するため,マーカーは微小磁石(重量0.002g、寸法1×1×1mm)と発泡スチロールビーズ(φ2mm)を用いて製作し、各試料を上下から挟み込んだ。断面積はマイクロスコープ(VHX−100,キーエンス)で測定した厚さと幅から算出した。リニアアクチュエータ(LAH−46−3002−F−PA−V1−SP,ハーモニック・ドライブ・システムズ)によりプレロード2mNを与え、その状態をひずみ0と定義し、引張速度0.05mm/sで試料が破断するまで引張荷重を与えた。結果を表1に示す。
(b)ひずみ測定
ひずみは、各試料に付けたマーカーを画像センサー(CV−750,キーエンス)により、非接触で測定した。また、試験環境を生体に模擬するため、シャーレ及びシリコンラバーヒーター(一般用SR,スリーハイ)と温度コントローラー(ON−DO産業)を用いて、PBSを37℃一定に保つ仕組みとした。
チャック上端部に貼られたゲージの荷重出力を試験片の初期断面積で除し公称応力を求めた。接線係数や引張強度の検定はt検定で行い、ともに有意水準を5%とした。結果を表1に示す。
また、組織の剛性を求めるために,応力−ひずみ線図のひずみ5%〜10%における傾きを接線係数として求め比較した。応力−ひずみ曲線を図2に示す。図2において、白四角は浮遊培養を行った試料Aを表し、黒丸は浮遊培養を行わなかった試料Bを表す。
(c)厚み測定
各試料をスライドガラスに広げてカバーガラスで挟み、デジタルマイクロスコープを用いて、スライドガラスとカバーガラス間距離を5カ所測定し、測定した値の平均を、各試料の厚みとした。結果を表1に示す。
表1及び図2に示されるように、全体の培養期間としてはほぼ同一であるにもかかわらず、ディッシュから剥離後7日間にわたり浮遊培養を行った試料Aは、このような浮遊培養を行わなかった試料Bと比較して、厚さと剛性には有意差が見られないものの、引張強度では66.5%増大した(P<0.05)。このことから、剥離後、7日間にわたって浮遊培養を行うという簡便な方法で、厚みを増やすだけでなく容易に培養物の強度を高めることができた。
[実施例2]
<浮遊培養期間による影響>
実施例1と同様に培養35日目に浮遊させた後、浮遊培養を1日間、3日間、7日間行った試料C、D、E(それぞれn=5)を調製した。試料C、D、Eについて実施例1と同様に強度を測定した。結果を表2に示す。
表2に示されるように、浮遊培養を3日間行った試料Dの強度上昇がより良好であることがわかった。これに対して浮遊培養1日の試料Cでは、強度が0.1MPa以下であった。この試料Cの強度では、手術手技での取り扱いに不充分である。
[実施例3]
<浮遊培養期間における負荷培養の影響>
実施例1と同様に培養35日目に浮遊させた試料F及び試料G(それぞれn=5)を、幅8mmの形状に整えた後、試料Gに対してのみ引張負荷を与えながら培養した以外は実施例1と同様にして、3日間の浮遊培養を行った。荷重の負荷は以下のとおりとした。即ち、試料Gの長手方向両端部を、試験機のチャック部に把持させた状態で培地(実施例1で使用されたものと同一)中に配置し、4mNから8mNの間で動的に荷重を変化させながら1日1時間、合計3日間培養した。
荷重下培養を行った後は、実施例1と同様にして引張強度を測定した。結果を表3に示す。表3に示されるように、荷重下培養を行っていない試料Fと比較すると、荷重下培養を行った試料Gでは、厚みにはほとんど差がない一方で、強度が1.6倍に上昇した(P<0.05)。従って、培養細胞の強度は、浮遊培養を行うことによって約2倍上昇し、荷重下培養を行うことによって更に強度を上昇させることができる。
このことから、本発明によれば、三次元組織培養物の強度を簡便に高めることができる。強度が高められた三次元組織培養物は、手術手技のハンドリングにおいて有用である。
本発明の実施例にかかる試料Aの調製を模式的に示した図である。 本発明の実施例1で得られた各試料の応力−ひずみ曲線である。

Claims (8)

  1. 培養液中で、幹細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造する製造方法であって、
    培養器に幹細胞を播種する播種工程と、
    播種後の幹細胞を培養して前記培養器の面に付着させると共に、前記幹細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、
    所定期間後に、培養器の面から前記培養物を分離する分離工程と、
    前記分離させた状態で少なくとも3日以上浮遊培養する浮遊培養工程と、
    を含む三次元組織培養物の製造方法。
  2. 前記幹細胞が、4継代以上7継代以下の培養細胞である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記幹細胞が、間葉系幹細胞である請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記浮遊培養工程が、3日以上7日以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の製造方法。
  5. 前記幹細胞を、細胞外基質産生促進因子の存在下で培養する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の製造方法。
  6. 前記細胞外基質産生促進因子が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、TGFβ1及びTGFβ3からなる群より選択される少なくとも1種である請求項5記載の製造方法。
  7. 細胞外基質が、コラーゲンI、コラーゲンIII、ビトロネクチン及びフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の製造方法。
  8. 前記浮遊培養工程によって得られた三次元組織培養物の引張強度が少なくとも0.1MPa以上である請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の製造方法。
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