JPWO2013042778A1 - 二次電池用正極材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

化学的組成の均一性が高く、長期にわたって高い信頼性を得られる二次電池用正極材料を、低コストでかつ効率的に製造できる二次電池用正極材料の製造方法を提供する。オリビン型、輝石型、またはナシコン型の化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、原料調合物を、少なくとも内周部が導電性耐火材料により形成された容器内に収容し、該容器の少なくとも内周部を誘導加熱することにより前記原料調合物を溶融する溶融工程を有する。

Description

本発明は、二次電池用正極材料の製造方法に関する。
近年、次世代リチウム二次電池用正極材料等として、資源面、安全面、コスト面、性能の安定性等の点での優位性から、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物が注目されている。例えばリン酸鉄リチウムは、実用化に向けた開発が進んでいる。
また、二酸化炭素の排出規制や省エネルギーの観点から、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車の開発が進められている。電気自動車の普及の実現には、二次電池の安全性を維持しつつ、高容量化、高エネルギー密度化を図ることが求められている。
例えば非特許文献1には、多電子反応による高容量化が可能な二次電池用材料として、1分子中に2個のLi原子を含むオリビン(カンラン石)型ケイ酸化合物(LiMSiO、M=Fe、Mn)が開示されている。
上述したオリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物の製造方法としては、例えば固相法、液相法等の方法が提案され実施されているが、近年、二次電池の普及に伴い、電極材料のさらなる低コスト化が求められている。
例えば非特許文献2には、原料混合物を一旦加熱溶融した後、これを冷却することにより、所定の結晶構造を有する二次電池用正極材料を得る方法が開示されている。
このように、原料混合物を一旦溶融状態とすることで、二次電池用正極材料を安価にかつ大量に製造できるうえ、得られる正極材料の化学組成の均一性を向上させることが可能となる。
例えば特許文献1には、二価遷移金属化合物を含有する原料混合物を、アルゴン雰囲気中にて1500℃で加熱溶融した後、単ロールにより急冷して非晶質の遷移金属リン酸錯体を得る方法が開示されている。
原料混合物の加熱溶融には、高温での熱処理が必要であり、加熱溶融に用いる容器には、耐熱性や耐蝕性等の特性が求められる。
例えば特許文献2には、LiFePOおよびLiFからなる原料混合物を白金チューブに入れ、当該白金チューブを石英管内に配設し、高周波誘導加熱によって加熱して原料混合物を溶融した後、溶融物を冷却することで、FeまたはMn等の遷移金属を含むリン酸錯体からなる活物質を得る方法が開示されている。
また、特許文献3には、蓋付きアルミナルツボに入れたLiCO、NHPO、Fe(II)C等の原料を、窒素雰囲気中300℃にて熱処理した後、電気炉中で1200℃、10分間の条件で溶融し、次いで得られた融液を鉄板上に流し出し、プレス急冷して前駆体ガラスとし、これを加熱処理することで、二次電池用正極材料を得る方法が開示されている。
さらに、特許文献4には、LiCO、Fe(COO)・2HO、NHPO等を含む原料調合物を、ロジウム・白金合金製のノズル付きルツボ内に充填し、これをケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉で加熱溶融した後、得られた溶融物を、ステンレス製双ローラに滴下して急冷し、次いで(固化物を)加熱処理することで、オリビン型のリン酸鉄リチウム粒子を得る方法が開示されている。
R. Dominko et al., Electrochemistry Communication, 8, 217-222 (2006) M. Gauthier et al., Journal of The Electrochemical Society, 157, A453-A462 (2010)
日本特開2005−158673号公報 日本特開2007−73360号公報 日本特開2008−47412号公報 日本特開2011−1242号公報
しかしながら、特許文献2の方法は、大量生産に不向きであり、また高周波誘導による加熱時に、白金チューブから白金成分が内部の溶融体に混入し、生成物の純度低下や、生産コストの増大を招くおそれがあった。
特許文献3の方法では、ルツボを構成するアルミナの耐蝕性が必ずしも高くないため、加熱溶融時にFe等の侵食によりルツボの損耗が進行しやすく、交換頻度が増す。また、アルミナ成分がルツボから融液中に混入しやすく、純度低下を招くおそれがあった。さらに、アルミナは熱膨張係数が比較的高いため、急激な温度変化により、ルツボの破損を生じるおそれもあった。
特許文献4の方法では、高温下において、ルツボに含まれる白金やロジウムと、溶融物中の鉄成分との合金生成により、ルツボの損耗が進行しやすいうえ、ルツボから溶解した白金やロジウムが融液中に混入しやすく、生成物の純度低下や、製造コストの増大を招くおそれがあった。
さらに、特許文献3および4の方法においては、上記した所定の原料混合物を、ルツボ等の容器に収容した状態で電気炉により加熱処理しているため、熱効率が悪く、量産性に劣るうえ、炉内全体を昇温する必要があり、十分な加熱速度を得られず、生産効率に劣るという問題があった。
本発明の目的は、原料混合物の加熱溶融に用いる容器に由来する成分の混入が低減された、純度に優れる二次電池用正極材料を、低コストで効率的に製造する量産性の高い方法を提供することにある。
すなわち、本発明の二次電池用正極材料の製造方法は、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、前記原料調合物を、少なくとも内周部が導電性耐火材料により形成された容器内で、該容器の少なくとも内周部を誘導加熱することにより溶融し、溶融物を得る溶融工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の二次電池用正極材料の製造方法において、前記容器の底部に該容器より細径の溶融物導出部が接続され、該溶融物導出部を前記容器とは独立して加熱することにより、前記容器内の溶融物を前記溶融物導出部から導出させることができる。そして、前記溶融物導出部は導電性耐火材料により形成されており、該溶融物導出部の加熱を誘導加熱により行うことができる。
また、前記導電性耐火材料は、炭素または導電性非酸化物セラミックスであることが好ましく、前記導電性非酸化物セラミックスは、炭化ケイ素、ホウ化ジルコニウム、およびホウ化チタンから選ばれる少なくとも1種を主体とするセラミックスであることが好ましい。さらに、前記溶融工程を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で行うことが好ましい。また、前記溶融工程において、前記原料調合物を1100℃〜1800℃に加熱して溶融することが好ましい。
またさらに、本発明の二次電池用正極材料の製造方法は、前記溶融工程で得られた前記溶融物を冷却して固化物を得る冷却工程を有することが好ましい。そして、前記冷却工程において、前記溶融物を1×10℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。また、前記冷却工程で得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程を有することが好ましい。そして、前記粉砕工程において、前記固化物に、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加して粉砕することが好ましい。さらに、前記粉砕工程で得られた粉砕物を加熱する加熱工程を有することが好ましい。
本発明の目的とする二次電池用正極材料が有する化合物の例としては、下記の(1)式で表されるリン酸化合物が挙げられる。
AM1−a 1−b 4+c (1)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、XはZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、ZはSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2であり、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
また、本発明の目的とする二次電池用正極材料が有する他の化合物の例としては、下記の(2)式で表されるケイ酸化合物が挙げられる。
1−d Si1−e 4+f (2)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、XはZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、ZはP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2であり、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
なお、本明細書において、「内周部」とは、容器内に収容された原料調合物および溶融物と直接接触する部分をいう。具体的には、容器の側壁内周部および内底部をいう。
本発明によれば、原料混合物の加熱溶融に用いる容器に由来する成分の混入が低減された、純度に優れる二次電池用正極材料を、低コストで効率的に製造することができる。
また、少なくとも内周部が導電性耐火材料により形成された容器を誘導加熱することにより、原料調合物の溶融を行っているので、電気炉等の加熱炉を使用する従来の方法に比べて、エネルギーロスが少なく熱効率が高い、急速加熱が可能であり、溶融物を短時間で得ることができる、量産性が高い、などの利点がある。
本発明の実施形態に用いる溶融装置の一例の構成を示す断面図である。 本発明の実施形態に用いる溶融装置の別の例の構成を示す断面図である。
本明細書において、「オリビン型の結晶構造を有する化合物」を「オリビン型化合物」ともいい、「輝石型の結晶構造を有する化合物」を「輝石型化合物」ともいい、「ナシコン型の結晶構造を有する化合物」を「ナシコン型化合物」ともいう。また、「オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物」を「化合物(α)」ともいう。
本明細書において、前記式(1)で表される組成を有するリン酸化合物を「リン酸化合物(1)」ともいい、前記式(2)で表わされる組成を有するケイ酸化合物を「ケイ酸化合物(2)」ともいう。
<二次電池用正極材料の製造方法>
本発明の二次電池用正極材料の製造方法は、オリビン型、輝石型またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、前記原料調合物を、少なくとも内周部が導電性耐火材料により形成された容器内で、該容器の少なくとも内周部を誘導加熱することにより溶融し、溶融物を得る溶融工程とを含むことを特徴とする。本発明に係る二次電池正極材料は、オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物であるのが好ましい。
オリビン型化合物としては、例えば、一般式AMPO、AVOPO、AMSiO、AVOSiO、AMBO、AMPOF、またはAVOPOFで示されるものを挙げることができる。
また、輝石型化合物としては、例えば、一般式AMSi、AVSiで示されるものを挙げることができる。本明細書において、AMPも輝石型化合物に含まれるものとする。
また、ナシコン型化合物としては、例えば、一般式A(PO、またはA(POで示されるものを挙げることができる。
上記一般式中、原子AはLi、Na、およびK等のアルカリ金属原子を示し、原子MはFe、Mn、Co、およびNi等の遷移金属原子を示す。
上記一般式において、P、Si、B、およびVは、それぞれ相互に部分的に置換したものであってもよく、これらがAlまたはS等の原子と置換したものであってもよい。
また、上述したオリビン型化合物、輝石型化合物、ナシコン型化合物としては、上述した一般式で示される化合物のほか、原子A、原子MとともにZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含むものであってもよい。
上述した一般式で表わされるオリビン型化合物のうち、リン酸化合物としては、下記式(1)で表されるリン酸化合物(1)が好適である。
AM1−a 1−b 4+c (1)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、XはZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、ZはSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
0≦a≦0.2および0≦b≦0.2である場合に、後述する溶融工程(ii)で原料調合物を良好に溶融することができ、均一な溶融物が得られる。また、後述する加熱工程(v)でリン酸化合物(1)を得ることができ、さらにはオリビン型結晶構造を含むリン酸化合物(1)、特にオリビン型結晶構造のみからなるリン酸化合物(1)が得られるので好ましい。
aは、0.001≦a≦0.1がより好ましく、0.001≦a≦0.05が特に好ましい。bは、0.001≦b≦0.1がより好ましく、0.001≦b≦0.05が特に好ましい。aおよびbが上記範囲内であると、多電子型の反応(単位モル数当たり1molを超える原子Aを引き抜く反応)を示すリン酸化合物(1)が得られ、このリン酸化合物(1)を二次電池用正極材料として用いたときに理論電気容量を高めることができる。
リン酸化合物(1)におけるcの値はaおよびbの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存する数であり、正電荷の総和の1/2から4を引いた値である。
また、上記一般式で表わされるオリビン型化合物のうち、ケイ酸化合物としては、下記式(2)で表されるケイ酸化合物(2)が好適である。
1−d Si1−e 4+f (2)
(式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、XはZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、ZはP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
0≦d≦0.2および0≦e≦0.2である場合に、後述する溶融工程(ii)で原料調合物を良好に溶融することができ、均一な溶融物が得られる。また、後述する加熱工程(v)でケイ酸化合物(2)を得ることができ、さらにはオリビン型結晶構造を含むケイ酸化合物(2)、特にオリビン型結晶構造のみからなるケイ酸化合物(2)が得られるので好ましい。
dは、0.001≦d≦0.1がより好ましく、0.001≦d≦0.05が特に好ましい。eは、0.001≦e≦0.1がより好ましく、0.001≦e≦0.05が特に好ましい。dおよびeが上記範囲内であると、多電子型の反応(単位モル数当たり1molを超えるAを引き抜く反応)を示すケイ酸化合物(2)が得られ、このケイ酸化合物(2)を二次電池用正極材料として用いたときに理論電気容量を高めることができる。
ケイ酸化合物(2)の組成におけるfの値はdおよびeの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存する数であり、正電荷の総和の1/2から4を引いた値である。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)において、原子Aは二次電池用正極材料として適しているため、Liを必須とするのが好ましく、Liのみであることが特に好ましい。Liを含むリン酸化合物(1)、Liを含むケイ酸化合物(2)は、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くする。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)において、原子Mは1種のみ、または、2種からなるのが好ましい。特に、原子MはFeのみ、Mnのみ、またはFeおよびMnからなるのが、コストの点で好ましい。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子Mの価数は、+2〜+4の範囲である。原子Mの価数は、原子MがFeの場合は+2、+8/3、+3、Mnの場合は+2、+3、+4、Coの場合は+2、+8/3、+3、Niの場合は+2、+4が好ましい。原子Mの価数は2 〜2.2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)において、原子X、XはZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子である。性能の面から、Zr、TiまたはNbが好ましく、ZrまたはTiが特に好ましい。
リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子X、Xの価数は、基本的にZrの場合は+4、Tiの場合は+2または+4、Nbの場合は+2または+5、Taの場合は+2または+5、Moの場合は+4または+6、Wの場合は+4または+6である。
リン酸化合物(1)において、原子ZはSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種である。性能の面から、BまたはAlが好ましく、Bが特に好ましい。ケイ酸化合物(2)において、原子ZはP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種である。性能の面から、BまたはAlが好ましく、Bが特に好ましい。リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)における原子Z、Zの価数は、基本的にPの場合は+5、Bの場合は+3、Alの場合は+3、Vの場合は+3、+4、+5である。
特に、ケイ酸化合物(2)は、二次電池用正極材料に使用する場合に、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くできるため好ましい。
本発明に係る二次電池用正極材料の製造方法は、上述したオリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であり、原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程(i)と、原料調合物を容器の少なくとも内周部を誘導加熱することにより溶融して溶融物を得る溶融工程(ii)とを有する。本発明の製造方法は、さらに冷却工程(iii)、粉砕工程(iv)、および加熱工程(v)を有することが好ましい。各工程について、以下に具体的に説明する。
[原料調合工程(i)]
本発明の二次電池用正極材料の製造方法では、まず、オリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物の各成分源を、所定の組成を有する溶融物となるように選択し、混合して原料調合物を準備する。
オリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物の構成原子を含む出発原料のうち、原子Aを含む化合物としては、Aの炭酸塩(ACO)、Aの炭酸水素塩(AHCO)、Aの水酸化物(AOH)、Aのケイ酸塩(AO・2SiO、AO・SiO、2AO・SiO等)、Aのリン酸塩(APO等)、Aのホウ酸塩(ABO)、Aのフッ化物(AF)、Aの塩化物(ACl)、Aの硝酸塩(ANO)、Aの硫酸塩(ASO)、およびAの有機酸塩(酢酸塩(CHCOOA)やシュウ酸塩((COOA))等)からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、該少なくとも1種の一部または全部は、それぞれ水和塩を形成していてもよい。)が好ましい。なかでも、安価でかつ取扱いが容易な点で、ACO、AHCO、またはAFがより好ましい。
原子Mを含む化合物としては、Mの酸化物(FeO、Fe、Fe、MnO、Mn、MnO、CoO、Co、Co、NiO等)、Mのオキシ水酸化物(MO(OH))、Mのケイ酸塩(MO・SiO、2MO・SiO等)、Mのリン酸塩(M(PO等)、Mのホウ酸塩(M(BO等)、Mのフッ化物(MF等)、Mの塩化物(MCl、MCl等)、Mの硝酸塩(M(NO、M(NO等)、Mの硫酸塩(MSO、M(SO等)、Mの有機酸塩(酢酸塩(M(CHCOO))やシュウ酸塩(M(COO))等)およびMのアルコキシド(M(OCH、M(OC等)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
入手のしやすさやコストから、Fe、Fe、MnO、Mn、MnO、CoおよびNiOからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。特に原子Mが、Feである場合の該化合物としては、Feおよび/またはFeが好ましく、原子MがMnである場合の該化合物としては、MnOが好ましい。原子Mを含む化合物は、1種であっても、2種以上であってもよい。
Siを含む化合物としては、酸化ケイ素(SiO)、ケイ素のアルコキシド(Si(OCH、Si(OC等)、Aのケイ酸塩、またはMのケイ酸塩が好ましい。Siを含む化合物は結晶質であっても、非晶質であってもよい。なかでも、SiOが安価であるのでより好ましい。
Pを含む化合物としては、無水リン酸(P)、リン酸水素アンモニウム(NHPO、(NHHPO)、AまたはMのリン酸塩が好ましい。
AまたはMのリン酸塩としては、例えばLiPO、Fe(PO、FePOおよびMn(POからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
Pを含む化合物は結晶質であっても、非晶質であってもよい。なかでも、NHPOが安価であるのでより好ましい。
原子X、X(Zr、Ti、Nb、Ta、MoおよびW)を含む化合物としては、X、Xの酸化物、例えばZrO、TiO、Nb、Ta、MoOまたはWOが好ましい。
原子Z、Z(P、Si、B、Al、およびV)を含む化合物としては、Z、Zの酸化物(P、B等)、AまたはMのリン酸塩、AまたはMのケイ酸塩、AまたはMのホウ酸塩、AまたはMのアルミン酸塩、および、AまたはMのバナジン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
なかでも、原子Z、ZがPを含む場合はLiPO、Fe(PO、FePOおよびMn(POからなる群より選ばれる少なくとも1種、Siを含む場合はSiO2、Bを含む場合はBおよび/またはH3BO3、Alを含む場合はAl、AlO(OH)およびアルミノケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種、Vを含む場合は酸化バナジウム(VO、V、VO、V等)が安価であるので好ましい。
原料調合物の好適な組み合わせは、原子Aを含む化合物がAの炭酸塩または炭酸水素塩、原子Mを含む化合物がMの酸化物、Pを含む化合物がリン酸水素アンモニウムである場合、Siを含む化合物が酸化ケイ素である場合の組み合わせである。
原料調合物の組成は、原則として、当該原料調合物から得られる溶融物の組成と理論上対応するものである。ただし、該原料調合物中には、溶融処理中に揮発等により失われやすい成分(例えばLi等)が存在するため、得られる溶融物の組成は各原料の仕込み量から計算される酸化物基準のモル%と若干相違する場合がある。そのような場合には、揮発等により失われる量を考慮して、各原料の仕込み量を設定することが好ましい。
原料調合物中の各原料の純度は特に限定されない。反応性や二次電池用正極材料の物性等を考慮すると、水和水を除く純度が99質量%以上であることが好ましい。
各原料としては、粉砕した原料を用いるのが好ましい。各原料は、粉砕してから混合しても、混合した後に粉砕してもよい。粉砕は、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて、乾式または湿式で行うことが好ましく、溶媒の除去工程が不要なことから、乾式が好ましい。原料調合物中の各原料の粒子径は、混合操作、混合物の溶融容器への充填操作、混合物の溶融性等に悪影響を及ぼさない範囲であれば、限定されない。
[溶融工程(ii)]
溶融工程(ii)では、原料調合工程(i)で得られた原料調合物を、少なくとも内周部が導電性耐火材料により形成された容器に入れ、容器の少なくとも内周部を構成する導電性耐火材料を誘導加熱する。そして、誘導加熱された導電性耐火材料からの発熱により、容器内に収容された導電性耐火材料と直接接する原料調合物を加熱して、溶融させる。
本明細書において、「導電性耐火材料」とは、電磁誘導作用によって加熱されるに十分な導電性を有し、かつ耐火性に優れ、原料調合物の溶融温度において外観や組成、物理的特性等が変化することがない材料をいう。導電性耐火材料の耐火温度は、800℃以上であることが好ましい。耐火温度が800℃未満であると、容器の耐溶損性が著しく低下する場合がある。
ただし、導電性耐火材料の耐火温度が過度に高くなると、使用可能な構成材料が過度に制限される場合があるため、耐火温度は900〜2,000℃の範囲とすることが好ましく、1,000〜1,800℃の範囲とすることがより好ましい。なお、耐火温度は、材料を24時間加熱した場合に、顕著な外観変化が観察されない温度を意味する。
本発明において、容器の少なくとも内周部を形成する導電性耐火材料としては、炭素または導電性の非酸化物セラミックスを挙げることができる。
炭素としては、黒鉛が、安価であり、入手しやすく、また加工しやすいので、好ましい。なお、炭素は、高温においては、原料調合物に含まれる鉄等の重金属の酸化物と還元反応するおそれがあるので、誘導加熱の温度を調整することが好ましい。また、導電性耐火材料として炭素を用いる場合は、炭素以外の耐火材料からなる内張り層を設けることもできる。そして、内張り層は導電性非酸化物セラミックスにより形成することが好ましい。すなわち、炭素製の外側容器の内側に、後述する導電性非酸化物セラミックスにより形成された内周部を積層して配置した構造の容器を使用することが好ましい。このような2層構造の容器によれば、溶融物中の重金属成分との反応による容器の損傷を防止することができるうえに、内周部を構成する導電性非酸化物セラミックスの誘導加熱による発熱と、外側容器を構成する炭素の誘導加熱による発熱とを合わせて、効率的に原料調合物を加熱することができる。
導電性非酸化物セラミックスとしては、炭化ケイ素(SiC)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、ホウ化チタン(TiB)から選ばれる少なくとも1種を主体とするセラミックスを挙げることができる。なお、本明細書において、「主体とする」とは、その成分を50質量%以上含有することをいう。前記導電性非酸化物セラミックスのうちでも、ホウ化ジルコニウムを50〜98質量%含むセラミックスは、特に耐蝕性が良好であり好ましい。
少なくとも内周部が炭素または前記導電性非酸化物セラミックスにより形成された容器は、溶融物により侵食されにくい。また、後述するように、原料調合物の溶融は不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で行うことが好ましいが、炭素および前記導電性非酸化物セラミックスは、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下での使用が可能であるので、前記原料調合物の溶融のための容器を構成する材料として好適である。さらに、炭素または前記導電性非酸化物セラミックスは、原料粉末を成型し加熱・焼成した焼成物が入手しやすいので、容器の構成材料として好ましい。
内周部以外の容器の構成材料として、印加する電磁波に透明な材料を用いることができる。容器の外周部は、例えば、アルミナ系セラミックスで構成されていてもよい。
前記導電性耐火材料により少なくとも内周部を形成した容器としては、大きさや形状は特に限定されず、小型の円筒状ルツボとして用いることもでき、大型の溶融タンクとして用いることもできる。特に、容器が大型の溶融タンクの場合、前記導電性耐火材料は少なくとも溶融物と接触する内周部に用いればよく、溶融タンク上部構造等の、溶融物との非接触部分は他の材料で構成してもよい。また、小型の円筒状ルツボとして用いる場合、原料調合物または溶融物の揮発および蒸発を防止するために、当該容器に蓋を装着して溶融を行うこともできる。
以下、本発明の溶融工程(ii)に使用される溶融装置について、図面に基いて説明する。
図1は、前記原料調合物の溶融装置の一例を示すものである。この溶融装置1は、前記導電性耐火材料により形成された溶融容器2と、この溶融容器2の外周を取り囲むように配設された誘導加熱コイル3とを備えている。誘導加熱コイル3は、発生する磁界の方向が溶融容器2の縦軸方向に平行になるように配置されている。
溶融容器2の形状は特に限定されず、例えば円筒状とすることができる。また、溶融容器2全体ではなく、内周部のみを導電性耐火材料により形成することもできる。さらに、溶融容器2全体またはその内周部を構成する導電性耐火材料は、一体物ではなく、複数に分割された部材を所定の間隔をおいて配設した構造物とすることもできる。このような分割構造物とした場合は、分割された各部において、誘導電流がループを形成して流れるので、分割された部位の一部に破損が生じても、影響をその部位だけに止め、発熱を継続させることができる。また、一体物で構成する場合は、溶融容器2のサイズが大きくなると、製作が難しく製作費用も高くなるが、分割することで製作が容易となり製作費用も低減できる。なお、分割された各部の間に絶縁部材を介在させた場合は、誘導電流が各部の間で干渉しにくくなるという利点もある。
このように、外側に誘導加熱コイル3が周設された溶融容器2は、ステンレス等の金属材料またはセラミックス等の耐火材料により形成されたジャケット(外装筐体)4内に収納されている。ジャケット4は、溶融容器2の搬入および取り出しのための開閉自在部(例えば蓋部)(図示を省略。)を有している。そして、ジャケット4の上部には、原料調合物5を溶融容器2内に供給するための原料供給管6が接続されている。また、ジャケット4の側部には、ジャケット4内に後述する不活性ガスまたは還元性ガスを導入するためのガス導入管7と、ジャケット4内のガスを外部に排出するためのガス排出管8がそれぞれ取り付けられている。ジャケット4は、これら原料供給管6、ガス導入管7およびガス排出管8の取付け部以外は密閉されていることが好ましい。
このような溶融装置1を使用して、本発明における溶融工程(ii)を実施するには、まず、ジャケット4内に収納された溶融容器2内に、原料供給管6を通して原料調合物5を供給する。そして、誘導加熱コイル3に交流電流を供給して、溶融容器2の少なくとも内周部を構成する導電性耐火材料を誘導加熱する。そして、この誘導加熱により発生した熱により、溶融容器2内に収容された原料調合物5を加熱して溶融させる。
誘導加熱コイル3に供給する交流電流の周波数は、例えば、1kHz〜5GHzとすることが好ましい。
また、原料調合物5の加熱温度は、1100℃〜1800℃が好ましい。ここで、加熱温度とは、溶融物自体の温度をいい、熱電対やパイロメーターで測定できる。原料調合物5を1100℃〜1800℃の温度に加熱することで、オリビン型、輝石型、またはナシコン型化合物の原料調合物5を溶融し、均一な組成を有する溶融物が得られるため好ましい。ここで、「溶融」とは各原料が融解し、目視で透明な状態になることをいう。加熱温度が1100℃以上であると、溶融が容易になり、1800℃以下であると原料調合物5の揮発がしにくくなる。
原料調合物5の加熱温度は、1200℃〜1600℃がより好ましい。加熱を1200℃以上の温度で行うことで、溶融をより容易に行うことができる。また、1600℃以下の温度で加熱を行うことで、加熱による導電性耐火材料の損耗がより抑制される。
加熱時間は、溶融方法、溶融規模、溶湯の均一度等を考慮して適宜設定できるが、0.2〜24時間が好ましく、0.5〜2時間が特に好ましい。加熱時間が0.2時間以上であると溶融物の均一性が十分になり、24時間以下であると原料調合物5が揮発しにくい。溶融工程(ii)において、溶融物の均一性を上げるために撹拌してもよい。また、次の冷却工程(iii)を行うまで、溶融時の最高温度より低い温度で溶融物を清澄させてもよい。さらに、原料の投入は、1回または複数回で行ってよい。
本発明における溶融工程(ii)は、大気下で行うことができるが、ガス導入管7からジャッケット4内に不活性ガスまたは還元性ガスを導入して、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で溶融を行うことが好ましい。特に、オリビン型化合物、一部の輝石型化合物を製造する場合には、溶融物中の元素Mが低酸化数状態(例えば、M=Feの場合はFe2+)であることが好ましいため、また溶融容器の酸化による損耗を抑制するため、溶融工程(ii)を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で行う。なお、溶融物は、より還元的である方が好ましいが、より酸化的であっても、後述する加熱工程(iv)において還元(例えばM3+からM2+への変化)することができる。
溶融の条件は、容器の大きさや種類に適した条件を選択することができる。圧力は、常圧、加圧、減圧(0.9×10Pa以下)のいずれの条件下で実施してもよい。また、原料調合物5を溶融容器2に充填後、加熱前に不活性ガスまたは還元性ガスを導入して、置換することもできる。
ここで、不活性雰囲気とは、窒素(N)、およびヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスから選ばれる少なくとも1種の不活性ガスを99体積%以上含む気体条件であることをいう。
また、還元性雰囲気とは、上記した不活性ガスに、還元性を有するガスを添加し、実質的に酸素を含まない気体条件であることをいう。還元性を有するガスとしては、水素(H)、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH)等が挙げられる。不活性ガスに添加される還元性ガスの量は、全ガス中に還元性ガスが0.1体積%以上であるのが好ましく、1〜10体積%がより好ましい。酸素の含有量は、該ガス中に1体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましい。
こうして溶融容器2の誘導加熱により、溶融容器2内で加熱され溶融された溶融物を取り出し、次の冷却工程(iii)で冷却する。図1に示す溶融装置1を使用する場合、溶融物の入った溶融容器2をジャケット4から取り出した後、溶融容器2を傾動して、上端部等の開口部から溶融物を流出させる。そして、流出させた溶融物を後述する冷却固化装置に供給する。
このような溶融装置1を使用して実施される本発明の溶融工程(ii)においては、原料調合物5を収容する溶融容器2の少なくとも内周部を導電性耐火材料により形成し、この導電性耐火材料を誘導加熱することにより、導電性耐火材料に直接接する原料調合物5を加熱し溶融しているので、溶融容器を電気炉等の加熱炉内に収納して加熱する従来の方法に比べて、エネルギーロスが少なく熱効率が高い。また、加熱速度が大きく急速加熱が可能であり、量産性が高い。
さらに、本発明の溶融工程(ii)においては、誘導加熱コイル3により発生する磁界と溶融物中の誘導電流との相互作用により溶融物に対流が生じ、この対流により均一な組成の溶融物が得られる。したがって、外的な撹拌を行う必要がない。
また、原料調合物5を収容する溶融容器2の少なくとも内周部が、耐火性に優れた導電性耐火材料により形成されているので、高温での使用が可能であり、原料調合物5の溶融温度で溶融容器2に損耗が生じにくい。さらに、この溶融容器2は原料調合物5により侵食されにくいので、溶融物中に溶融容器2を構成する成分が混入しがたい。
次に、本発明の溶融工程(ii)において使用される溶融装置の別の例について説明する。
図2に示す溶融装置1は、溶融容器として、上下方向中間部から下方に向って水平開口断面が徐々に縮径する溶融空間を有し、少なくとも内周部が前記導電性耐火材料により形成された溶融部2aを有する。そして、この溶融部2aに、溶融物導出部が接続されている。すなわち、溶融部2aの底部に、該溶融部2aより細径の溶融物導出管2bが前記溶融空間に連通するように接続されており、この溶融物導出管2bにより溶融物導出部が形成されている。溶融物導出管2bが接続される位置は、溶融部2aの底部でも側面部でもよいが、溶融物の導出性の点で、溶融部2aの底部に垂直下方に向けて接続されることが好ましい。
また、溶融物導出管2bは、溶融部2aと同様に、少なくとも内周部を導電性耐火材料により形成することができるが、溶融物導出管2b全体を導電性耐火材料により形成することが好ましい。
そして、溶融部2aの外側には、溶融部加熱用の誘導加熱コイル(以下、第1の誘導加熱コイルと示す。)3aが、溶融部2aを周方向に取り囲むように配設されている。また、溶融物導出管2bの外側には、その外周を取り囲むように溶融物導出管加熱用の誘導加熱コイル(以下、第2の誘導加熱コイルと示す。)3bが配設されている。
さらに、外側に第1の誘導加熱コイル3aが周設された溶融部2aは、金属材料またはセラミックス等の耐火材料により形成されたジャケット4内に収納されている。そして、ジャケット4の底部には貫通孔が設けられ、この貫通孔を通って、溶融物導出管2bの下部が外部に配設されている。また、溶融物導出管2bの開口した下端部の近傍には、冷却用ガスの噴出機構のような冷却機構(図示を省略。)が配置されており、冷却用ガスを導入する等の方法で、溶融物導出管2b内を冷却するように構成されている。なお、溶融物導出管2bが挿通された貫通孔の隙間は、例えば、耐火材料を充填する等の方法でシールすることが好ましい。
溶融部2aの少なくとも内周部および溶融物導出管2bを形成する導電性耐火材料としては、図1に示す溶融装置1において、溶融容器2の構成材料として説明した炭素または導電性非酸化物セラミックスを挙げることができる。溶融部2aと溶融物導出管2bとは、互いに異なる材料で形成してもよいが、製作が容易であることから、同じ材料で形成することが好ましい。
溶融部2aを誘導加熱する第1の誘導加熱コイル3aと、溶融物導出管2bを誘導加熱する第2の誘導加熱コイル3bとは、それぞれ別の電源に接続し、独立して制御することが好ましい。
図2において、符号9は、後述する冷却工程で使用される冷却固化装置を示し、符号10は冷却固化装置9により得られる固化物を示す。冷却固化装置9としては、後述するように、高速で回転する双ローラや回転する単ローラ、あるいは冷却したカーボン板や金属板に溶融物をプレスして固化物を得るように構成された装置等が用いられる。図2に示す溶融装置1において、その他の部分は図1に示す溶融装置1と同様に構成されているので、同じ符号を付して説明を省略する。
図2に示す溶融装置1を使用して溶融工程(ii)を実施するには、まず、ジャケット4内に収納された溶融部2aに、原料供給管6を用いて原料調合物5を供給する。ここで、原料調合物5を供給する前に、原料調合物5と同じ組成の溶融物の固化物(プラグ11)を、溶融物導出管2bの内部(例えば、溶融部2aとの接続部)の少なくとも一部に予め詰めることで、溶融物導出管2bを閉塞しておくことが好ましい。
このようにすることで、原料調合物5が加熱工程中に、溶融物導出管2bから吐出されるのを防ぐことができる。原料調合物の溶融固化物からなるプラグ11としては、後述する溶融物の導出工程で溶融物導出管2b内に形成される滞留固化物を使用することもできる。すなわち、溶融物の導出工程で、溶融物導出管2bへの加熱を中止すると、溶融部2aで得られた溶融物が溶融物導出管2b内で固化し、プラグ機能を有する固化物を形成することがある。この固化物をそのまま用いて、溶融物導出管2bからの溶融物の流出を閉止することができる。
次に、第2の誘導加熱コイル3bに電流を供給することなく、第1の誘導加熱コイル3aにのみ電流を供給し、溶融部2aの少なくとも内周部を構成する導電性耐火材料を誘導加熱する。そして、この誘導加熱により、溶融部2aに収容された原料調合物5を加熱して溶融させる。なおこのとき、原料調合物5の溶融固化物からなるプラグ11が溶融するのを防ぐために、溶融物導出管2bの下端部から冷却用ガスを導入する等の方法で、溶融物導出管2b内を冷却することが好ましい。
原料調合物5の加熱温度、加熱時間、加熱雰囲気等については、図1に示す溶融装置を用いて溶融工程(ii)を行う場合と同様である。
こうして第1の誘導加熱コイル3aにより溶融部2aを誘導加熱することで、溶融部2aに収容された原料調合物5を加熱して溶融させた後、第2の誘導加熱コイル3bにも電流を供給して、溶融物導出管2bを誘導加熱する。溶融物導出管2bの誘導加熱により、前記プラグ11が溶融・落下して溶融物導出管2bの閉塞が解除されるので、溶融部2a内の溶融物は溶融物導出管2bを通って速やかに外部に導出される。
このような溶融装置1を使用した場合も、図1に示す溶融装置1を使用する場合と同様に、電気炉等の加熱炉内に収納して加熱する従来の方法に比べて、エネルギーロスが少なく熱効率が高いうえに、加熱速度が大きく急速加熱が可能であり、量産性が高い。
また、溶融部2aおよび溶融物導出管2bが原料調合物5により侵食されにくいので、溶融物中に溶融部2a等を構成する成分が混入しがたい。
さらに、溶融物導出管2bから導出された溶融物を、後述する冷却固化装置9(例えば双ロール)にそのまま供給することで、溶融工程(ii)から連続して冷却工程(iii)を行うことができる。また、前記したように、第2の誘導加熱コイル3bへの電力供給を中断し、溶融物導出管2b内に冷却用ガスを導入する等の方法で、溶融物導出管2b内を冷却すると、温度降下により溶融物導出管2b内で溶融物が固化してプラグ機能を有する固化物を形成する。このようにして形成された固化物によって再び溶融物導出管2bを閉塞することで、溶融物の流出を阻止することができ、こうして溶融から冷却固化の工程を断続的に行うこともできる。
なお、溶融物導出管2bの加熱を、前記したような誘導加熱ではなく、通電加熱により行うことも可能である。すなわち、溶融物導出管を前記導電性耐火材料または金属材料により形成し、その上下両端部にそれぞれ配設された電極から電流を供給し、溶融物導出管を構成する前記導電性耐火材料または金属材料を発熱させることで、溶融物導出管内を加熱することもできる。そして、溶融物導出管2bを通電加熱した場合も、誘導加熱した場合と同様な効果を上げることができる。
[冷却工程(iii)]
冷却工程(iii)では、前記溶融工程(ii)で得られた溶融物を、室温(20〜25℃)付近まで冷却して固化物を得る。
固化物は非晶質物であることが好ましいが、固化物の一部は結晶化物であってもよい。固化物が非晶質物を含むことで、次の粉砕工程(iv)が実施しやすくなり、得られる化合物の組成および粒子径を制御しやすくなる。固化物が結晶化物を含む場合、後述する加熱工程(v)で結晶化物が結晶核となり、結晶化しやすくなる。固化物中の結晶化物量は、固化物の全質量に対して0〜30質量%であることが好ましい。結晶化物を多く含むと粒状やフレーク状の固化物を得ることが困難となる。また、冷却機器の損耗を早め、その後の粉砕工程(iv)の負担が大きくなる。
溶融物の冷却は、設備等が簡便であることから、大気中、不活性雰囲気下、または還元性雰囲気下で冷却する方法が好ましい。不活性雰囲気および還元性雰囲気の好ましい条件は、溶融工程(ii)で説明したのと同様である。
1000℃から50℃までの冷却速度は1×10℃/秒以上が好ましく、1×10℃/秒以上が特に好ましい。冷却速度を1×10℃/秒以上にすると非晶質物が得られやすい。冷却速度が速いほど非晶質物を得やすくなるが、製造設備や大量生産性を考慮すると、冷却速度は1×1010℃/秒以下が好ましく、実用性の点からは1×10℃/秒以下が特に好ましい。
冷却方法としては、例えば、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下してフレーク状の固化物を得る方法、回転する単ローラに溶融物を滴下してフレーク状または板状の固化物を掃引して得る方法、冷却したカーボン板や金属板に溶融物をプレスして塊状の固化物を得る方法、溶融物を空気中または水中に小粒状で吹き付けて塊状の固化物を得る方法、を採用することが好ましい。
なかでも、双ローラを用いた冷却方法が、冷却速度が速く、大量に処理できるのでより好ましい。双ローラとしては、金属製、カーボン製、セラミックス製のものを用いることが好ましい。
上記のように、溶融工程(ii)の後、冷却速度1×10℃/秒以上で溶融物を急速冷却することで、得られる固化物が非晶質となりやすく、固化物の化学組成の均一性が高められるため好ましい。
なお、冷却速度1×10℃/秒以上での、いわゆる急冷処理は、導電性耐火材料により形成された容器から流し出した溶融物に対してそのまま行ってもよく、当該容器内で溶融した溶融物を、一旦通常の速度で冷却した後、再溶融したものに対して行ってもよい。
固化物は、フレーク状または繊維状が好ましい。フレーク状の場合には、その平均厚さが200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。フレーク状の厚さ方向に垂直な面の平均直径は、特に限定されない。繊維状の場合には、その平均直径が50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
平均厚さや平均直径の上限値以下であると、続く粉砕工程(iv)の負担を軽減でき、加熱工程(v)における結晶化効率を高くすることができる。フレーク状の固化物の平均厚さは、ノギスやマイクロメータにより測定することができる。また、繊維状の固化物の平均直径は、上記方法または顕微鏡での観察により測定することができる。
[粉砕工程(iv)]
冷却工程(iii)の後、得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程(iv)を行うことが好ましい。
冷却工程(iii)で得られる固化物は通常の場合、非晶質物を多く含むか、または非晶質物からなるため、粉砕がしやすい利点がある。また粉砕に使用する装置に負担をかけずに粉砕ができかつ粒子径の制御がしやすい利点がある。
また、例えば固相反応により正極材料を得る場合には、焼成の後に粉砕を行うが、この場合には、粉砕によって残留応力が生じ、電池特性を悪化させる場合がある。これに対し、後述する加熱工程(v)の前に粉砕工程(iv)を行うことで、粉砕によって生じた残留応力を、加熱処理によって低減または除去することができる。
粉砕工程(iv)では、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種を炭素源として添加してもよい。
有機化合物および/または炭素系導電物質は、後述する加熱工程(v)後に導電材として機能するため、二次電池用正極材料の導電性を高めることができる。また、有機化合物および/または炭素系導電物質を添加することによって、粉砕工程(iv)や加熱工程(v)における酸化を防止し、さらに還元を促進することもできる。
該粉砕工程(iv)で炭素源を添加する場合には、固化物と炭素源とを混合した後に粉砕する工程、固化物と炭素源とをそれぞれ粉砕した後に混合する工程、または、固化物を粉砕した後に炭素源を添加する工程であるのが好ましい。なお、炭素源が有機化合物のみである場合には、粉砕せずに、固化物と混合できる。
次工程の加熱工程(v)で得られる化合物(α)は絶縁体であるため、二次電池用正極材料として使用するためには、電気伝導度を高めることが好ましい。
該炭素源として炭素系導電物質を用いた場合、炭素系導電物質が導電性炭素として、化合物(α)の表面の少なくとも一部を被覆する。また、有機化合物を用いた場合には、次工程の加熱工程(v)を行うことで、有機化合物の少なくとも一部が炭化され、導電性炭素として、化合物(α)の表面の少なくとも一部を被覆する。該導電性炭素は化合物(α)の導電材として機能するため、二次電池用正極材料の電気伝導性を高めることができる。
炭素源としての有機化合物は、不活性雰囲気下または還元雰囲気下で加熱した際に熱分解反応し、酸素や水素が離脱して炭化する化合物が好ましい。有機化合物としては、糖類、アミノ酸類、ペプチド類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、テルペン類、複素環式アミン類、脂肪酸および官能基を有する脂肪族非環状ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
炭素源としての炭素系導電物質は、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンファイバおよびアモルファスカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。アモルファスカーボンとしては、FTIR分析において、正極材料の導電性低下の原因となるC−O結合ピークやC−H結合ピークが実質的に検出されないものが好ましい。
炭素源の質量の割合は、炭素源中の炭素換算量(質量)が、固化物の質量と、該炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対して、0.1〜20質量%となる量が好ましく、2〜10質量%となる量がより好ましい。
有機化合物と炭素系導電物質を併用する場合には、これらの合計量が上記範囲となるように調整する。炭素量を0.1質量%以上にすることで、化合物(α)からなる二次電池用正極材料の導電性を十分に高めることができる。また、炭素量を20質量%以下とすることで、二次電池用正極材料としての特性を高いまま保持しつつ、導電性を十分に高めることができる。
粉砕は、カッターミル、ジョークラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて行うのが好ましい。また、粒子径により各種法を段階的に用いることで、効率よく粉砕を進めることができる。例えば、カッターミルで予備的に粉砕した後、遊星ミルやボールミルで粉砕することによって、粉砕にかかる時間を短縮できるので好ましい。生産性の観点から、特にボールミルを用いることが好ましい。粉砕メディアとしては、ジルコニアボール、アルミナボール、ガラスボール等を用いることが好ましい。特に、ジルコニアボールは磨耗率が低く、不純物の混入を抑制できるので好ましい。
粉砕メディアの径は0.1〜30mmが好ましい。粉砕を多段階にし、大きい粉砕メディアで粉砕を行った後、粉砕メディアと粉砕物を分離し、さらに小さい粉砕メディアを用いて粉砕してもよい。該方法であると、未粉砕粒子の残存を抑制できる。
粉砕容器は特に限定されないが、容器内に粉砕メディアと固化物とを容器容積の30〜80%まで入れると粉砕効率がよい。ボールミルを用いる場合、粉砕時間は6〜360時間が好ましく、6〜120時間がより好ましく、12〜96時間が特に好ましい。粉砕時間が6時間以上であると充分に粉砕を進めることができ、360時間以下であると過粉砕が抑制できる。
粉砕は乾式または湿式のいずれで行ってもよいが、粉砕物の粒子径を小さくできる点から、湿式で行うのが好ましい。また、粉砕工程(iv)で炭素源を添加する場合には、固化物と炭素源とを均一に混合できる点からも、湿式で行うのが好ましい。すなわち、粉砕工程(iv)は溶媒(粉砕溶媒)を用いて実施するのが好ましい。粉砕溶媒は、粉砕メディアが入った状態で、容器容積の30〜80%まで充填すると粉砕効率がよくなる。粉砕工程(iv)を湿式で行った場合は、粉砕溶媒を沈降、濾過、減圧乾燥、加熱乾燥等で除去した後に、加熱工程(v)を実施するのが好ましい。ただし、粉砕溶媒に対する固形分の割合が30%以上の場合には、粉砕溶媒を含んだ粉砕物のままで加熱工程(v)に供してもよい。
粉砕溶媒としては、固化物が溶けにくく、炭素源となじみのよい適度の極性を持つ溶媒であって、固化物および炭素源と混合した際に粘度が著しく上昇しない溶媒が好ましい。コストや安全性の面からは水が好ましい。一方、固化物が溶出してしまう等の問題が発生する場合には、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。粉砕溶媒は、水、アセトンおよびイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、特にアセトンが好ましい。
粉砕溶媒の使用量は、固化物および炭素源の合計量の濃度が1〜80%となる量が好ましく、10〜40%となる量が特に好ましい。粉砕溶媒の使用量を1%以上とすることで、生産性を高めることができる。また、粉砕溶媒の使用量を80%以下とすることで、固化物および炭素源の混合、粉砕を効率よく進めることができる。
粉砕物の平均粒子径は、二次電池用正極材料に適用した場合により高い導電性を得る観点から、体積基準のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜5μmが特に好ましい。平均粒子径が10nm以上であると、加熱工程(v)を実施するときに、化合物(α)の粒子同士が焼結して粒子径が大きくなりすぎることがない。平均粒子径が10μm以下であると、高い導電性を示す二次電池正極材料を得やすく、その高容量化、および高エネルギー密度化を実現しやすくなる。ただし、粒子径が10nm未満というような非常に細かい粒子が多く含まれると、加熱工程(v)を実施するときに焼結助剤の作用をし、加熱後の平均粒子径を大きくする。
本明細書において、平均粒子径は、主にはレーザ回折/散乱式粒子径測定装置(堀場製作所社製、商品名:LA−950)により得られるものであるが、上記の装置により粒子径の測定が困難な場合は、沈降法、フロー式画像分析装置を用いることができる。
[加熱工程(v)]
粉砕工程(iv)の後、得られた粉砕物を不活性雰囲気下または還元雰囲気下で加熱し、固化物の粉砕物から所定の組成を有する化合物(α)を合成する加熱工程(v)を行うことが好ましい。
加熱工程(v)は、粉砕により生じた応力の緩和、粉砕物の結晶核生成および粒成長を含むことが好ましい。このような加熱工程(v)を、上述した粉砕工程(iv)後に行うことで、粉砕による残留応力を低減または除去しつつ、結晶成長させた二次電池用正極材料を得ることができる。
加熱工程(v)においては、例えばリン酸化合物(1)の粒子、またはケイ酸化合物(2)の粒子を得ることが好ましく、リン酸化合物(1)またはケイ酸化合物(2)の結晶粒子を得ることがより好ましく、オリビン型の結晶構造を有するリン酸化合物(1)の結晶粒子またはオリビン型の結晶構造を有するケイ酸化合物(2)の結晶粒子を得ることが特に好ましい。
得られた化合物は非晶質物を含まないことが好ましい。化合物が非晶質物を含まない場合には、X線回折でハローパターンが検出されない。
粉砕工程(iv)で粉砕物の表面に付着した有機化合物や炭素系導電物質は、加熱工程(v)で生成した化合物(α)、好ましくはその結晶粒子の表面に結合して導電材として機能する。有機化合物は加熱工程(v)で熱分解され、さらに少なくとも一部が炭化物となって導電材として機能する。粉砕工程(iv)を湿式で行った場合には、分散媒の除去を加熱時に同時に行なってもよい。
化合物(α)を合成するための加熱温度は、400〜1,000℃が好ましく、500〜900℃が特に好ましい。加熱温度が400℃以上であると、反応が生じやすく、1,000℃以下であると粉砕物が融解しにくく、結晶系や粒子径を制御しやすい。また、該加熱温度であると、適度な結晶性、粒子径、粒子径分布等を有する化合物(α)、好ましくはその結晶粒子、さらに好ましくはオリビン型の結晶粒子が得られやすくなる。加熱は、一定温度で保持することに限らず、多段階に保持温度を設定して行ってもよい。加熱温度を高くするほど、生成する粒子の粒子径が大きくなる傾向があるため、所望の粒子径に応じて加熱温度を設定するのが好ましい。
加熱時間(加熱温度による保持時間)は所望の粒子径を考慮して1〜72時間が好ましい。加熱は、電気、石油、ガス等を熱源とする、ボックス炉、トンネルキルン、ローラーハースキルン、ロータリーキルン、マイクロウェーブ加熱炉等で行うのが好ましい。
加熱工程(v)は大気下、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で実施することが好ましい。不活性雰囲気および還元性雰囲気の好ましい条件は、溶融工程(ii)で説明したのと同様である。雰囲気圧力は、常圧、加圧、減圧(0.9×10Pa以下)のいずれであってもよい。
また、加熱炉内に還元剤(例えばグラファイト)を入れた容器を装填してもよい。加熱工程(v)を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で実施すれば、粉砕物中のMイオンの還元(例えばM3+からM2+への変化)を促進できる。
加熱の後は、通常は室温まで冷却する。該冷却における冷却速度は30℃/時間〜300℃/時間が好ましい。冷却速度を該範囲にすることにより、加熱による歪みを除去でき、生成物が結晶体である場合は、結晶構造を保ったまま目的物を得ることができる。冷却は、放置して室温まで冷却させるのが好ましい。冷却は不活性雰囲気下または還元雰囲気下で行うのが好ましい。
加熱工程(v)で炭素源を添加することもできる。この場合、粉砕工程(iv)で得られた粉砕物(炭素源を含まない粉砕物であることが好ましい。)を加熱して化合物(α)を得た後、該化合物(α)と炭素源とを含む粉砕物を得て、次いで該粉砕物を加熱する製法を採ることが好ましい。
上述した溶融、冷却、粉砕、加熱の各工程を経ることによって、二次電池用正極材料としての、所定の組成を有する化合物(α)が製造される。化合物(α)は結晶粒子を含むことが好ましく、またオリビン型であることが好ましい。このような組成および結晶系であると、前述したように多電子型の理論電気容量の材料を得ることができる。
特にケイ酸化合物は、二次電池用正極材料に使用する場合に、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くできるため好ましい。ケイ酸化合物はオリビン型が好ましく、該オリビン型ケイ酸化合物は二次電池用正極材料として好適である。また、リン酸化合物は、二次電池用正極材料に使用する場合には、二次電池の性能の信頼性を高くできるため好ましい。リン酸化合物はオリビン型が好ましく、該オリビン型リン酸化合物は二次電池用正極材料として好適である。
本発明により得られる二次電池用正極材料の比表面積は0.2m/g〜200m/gが好ましく、1m/g〜100m/gがより好ましい。比表面積を該範囲とすることにより、導電性が高くなる。比表面積は、例えば窒素吸着法による比表面積測定装置で測定できる。
また、二次電池用正極材料の結晶粒子の平均粒子径は、粒子の導電性を高めるために、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmがより好ましい。なお、本発明により得られる二次電池用正極材料の平均粒子径は、結晶粒子だけでなく非晶質粒子を含んでいたとしても同様に、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmがより好ましい。
本発明によれば、オリビン型化合物、輝石型化合物、またはナシコン型化合物の原料調合物を、少なくとも内周部が導電性耐火材料により形成された容器内で、この導電性耐火材料を誘導加熱することにより溶融しているので、溶融容器を電気炉等の加熱炉内に収納して加熱溶融を行う従来の方法に比べて、熱効率が高く、急速加熱が可能であるうえに、量産性が高い。溶融工程(ii)において1バッチあたり10kg以上、好ましくは100kg以上の生産量を実現可能である。
また、溶融物に含まれるFe、Mn等の重金属元素による容器の侵食を抑制でき、加熱溶融に用いる容器の損耗を防止できるため、メンテナンスの頻度を低減し、二次電池用正極材料の製造コストを低減することができる。さらに、容器に由来する成分が、当該容器内の溶融物中に混入するのを抑制でき、純度に優れた二次電池用正極材料を得ることができる。
<二次電池用正極および二次電池の製造方法>
本発明の製造方法によって得られる二次電池用正極材料を用いることによって、二次電池用正極および二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状およびサイズを適宜採用できる。
二次電池用正極は、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極材料を用いて、公知の電極の製造方法にしたがって製造できる。例えば、本発明により得られる二次電池用正極材料を必要に応じて公知の結着材(ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等)と混合した後、さらに、公知の有機溶媒(N−メチルピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)を用いてスラリーとし、公知の集電体(アルミニウム、またはステンレスの金属箔等)に塗布する等の方法によって、製造できる。
二次電池の構造は、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極材料を電極として用いる以外は、公知の二次電池における構造を採用することができる。セパレータ、電池ケース等についても同様である。負極としては、活物質として公知の負極用活物質を使用でき、炭素材料、アルカリ金属材料およびアルカリ土類金属材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。電解液としては、非水系の電解液が好ましい。すなわち、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極材料を用いた二次電池としては、非水電解質リチウムイオン二次電池が好ましい。
本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
<実施例1>
(原料調合工程(i))
溶融物の組成が、LiO、FeO、およびP換算量(単位:モル%)でそれぞれ、25.0モル%、50.0モル%、および25.0モル%となるように、炭酸リチウム(LiCO)、四酸化三鉄(Fe)、およびリン酸水素アンモニウム(NHPO)を秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。
(溶融工程(ii))
得られた原料調合物を、溶融装置を用いて以下に示すようにして加熱し溶融した。すなわち、まず原料調合物を、グラファイト製で外径50mm、内径40mm、高さ100mmの円筒状のルツボに充填した。次いで、このルツボを、容積50Lのステンレス製の蓋つき外装容器(ジャケット)内に設置された、内径70mmの銅製誘導コイル(ケィディケィ社製)の内側に装填した。そして、外装容器内に10L/分の流量でNガスを流通させながら、誘導加熱コイルに5kHzの交流電流を流し、ルツボを誘導加熱した。ルツボ内の温度を20℃/分の速度で昇温させ、1250℃に達したらこの温度に10分間保持した。こうして、ルツボ内の原料調合物を加熱して溶融し、溶融物を得た。
(冷却工程(iii))
ルツボを外装容器から取り出し、溶融工程(ii)で得られた溶融物を水冷したステンレス製の板の上に流し出した。そして、流出された溶融物の上に、さらに別のステンレス製の板を当ててプレスし、固化物を得た。冷却速度は、固化物の温度がプレス後50℃程度に低下していたので、1×10℃/秒以上と考えられる。
(粉砕工程(iv))
得られた固化物を、乳棒と乳鉢を用いて粗粉砕した。さらに、粗粉砕後の固化物を、粉砕メディアとしてジルコニア製ボールを用いた遊星ミル(伊藤製作所製、装置名:LP−4)を用いてアセトン中で粉砕して、粉砕物を得た。得られた粉砕物の平均粒子径は、体積基準のメディアン径で0.22μmであった。
(加熱工程(v))
粉砕工程(iv)で得られた粉砕物を、電気炉(モトヤマ社製、型式名;SKM−3035)を用いて、Hガスを3体積%含むArガス雰囲気下において700℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸鉄リチウム粒子を析出させた。
得られたリン酸鉄リチウム粒子の鉱物相を、X線回折装置(リガク社製、装置名:RINT TTRIII)を用いて測定した。回折パターンから、得られたリン酸鉄リチウム粒子は、斜方晶のオリビン型LiFePOであることが確認された。また、比表面積を比表面積測定装置(島津製作所社製、装置名:ASAP2020)を用いて測定したところ、25m/gであった。さらに、得られたリン酸鉄リチウム粒子の平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分析計(堀場製作所社製、装置名:LA−950)を用いて測定したところ、体積換算のメディアン径は0.23μmであった。
なお、溶融物を取り出して冷却した後のルツボを切断し、侵食量をフラックスラインで測定したところ、0.2mm以下であった。
<実施例2>
溶融物の組成が、LiO、FeO、およびSiO換算量(単位:モル%)でそれぞれ、33.3モル%、33.3モル%、および33.3モル%となるように、炭酸リチウム(LiCO)、四酸化三鉄(Fe)、および二酸化ケイ素(SiO)を秤量し、乾式で混合して原料調合物を得た。
次いで、得られた原料調合物を、実施例1と同じ溶融装置を用い、ルツボ内の温度を1450℃で30分間保持する以外は実施例1と同様に溶融して、溶融物を得た。次いで、実施例1と同様にして、冷却工程(iii)、粉砕工程(iv)を順に行い、粉砕物を得た。
次いで、粉砕工程(iv)で得られた粉砕物を、実施例1と同様に加熱し、ケイ酸鉄リチウム粒子を析出させた。得られたケイ酸鉄リチウム粒子の鉱物相を測定したところ、斜方晶のオリビン型LiFeSiOであることが確認された。また、比表面積を測定したところ、23m/gであった。さらに、ケイ酸鉄リチウム粒子の平均粒子径を測定したところ、体積換算のメディアン径は0.45μmであった。
溶融物を取り出して冷却した後のルツボを切断し、侵食量をフラックスラインで測定したところ、0.2mm以下であった。
<実施例3>
溶融物の組成が、LiO、Fe、およびSiO換算量(単位:モル%)でそれぞれ、16.7モル%、16.7モル%、および66.7モル%となるように、炭酸リチウム(LiCO)、三酸化二鉄(Fe)、および二酸化ケイ素(SiO)を秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。
得られた原料調合物を、溶融装置を用いて以下に示すようにして加熱し溶融した。すなわち、まず外径50mm、内径40mm、高さ100mmのグラファイト製のルツボの内側に嵌合・配置された内径35mm、高さ60mmの炭化ケイ素製のルツボに原料調合物を充填した。次いで、この二重構造のルツボを、容積50Lのステンレス製の蓋つき外装容器内に設置された内径70mmの銅製誘導加熱コイル(ケィディケィ社製)の内側に装填した。そして、実施例2と同様に誘導加熱し、炭化ケイ素製ルツボ内を1450℃で30分間保持することにより原料調合物を溶融し、溶融物を得た。
次いで、実施例1と同様にして、冷却工程(iii)、粉砕工程(iv)を順に行い、粉砕物を得た。
次いで、粉砕工程(iv)で得られた粉砕物を、実施例1と同様に加熱し、ケイ酸鉄リチウム粒子を析出させた。得られたケイ酸鉄リチウム粒子の鉱物相を測定したところ、単斜晶の輝石型LiFeSiであることが確認された。また、比表面積を測定したところ、23m/gであった。さらに、ケイ酸鉄リチウム粒子の平均粒子径を測定したところ、体積換算のメディアン径は0.38μmであった。
溶融物を取り出して冷却した後の炭化ケイ素製ルツボを切断し、侵食量をフラックスラインで測定したところ、0.2mm以下であった。
<実施例4>
溶融物の組成が、LiO、Fe、およびP換算量(単位:モル%)でそれぞれ、37.5モル%、25.0モル%、および37.5モル%となるように、炭酸リチウム(LiCO)、三酸化二鉄(Fe)、およびリン酸水素アンモニウム(NHPO)を秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。
得られた原料調合物を、実施例3と同様に、グラファイト製のルツボの内側に設置された炭化ケイ素製のルツボに充填し、ルツボ内を1200℃で10分間保持する以外は実施例3と同様に加熱して、溶融物を得た。
次いで、実施例1と同様にして、冷却工程(iii)、粉砕工程(iv)を順に行い、粉砕物を得た。
次いで、得られた粉砕物を、実施例1と同じ電気炉を用いて大気中650℃で8時間加熱し、次いで室温まで冷却し、リン酸鉄リチウム粒子を析出させた。
得られたリン酸鉄リチウム粒子の鉱物相を測定したところ、単斜晶のナシコン型LiFe(POであることが確認された。また、比表面積を測定したところ、31m/gであった。さらに、リン酸鉄リチウム粒子の平均粒子径を測定したところ、体積換算のメディアン径は0.35μmであった。
溶融物を取り出して冷却した後の炭化ケイ素製ルツボを切断し、侵食量をフラックスラインで測定したところ、0.2mm以下であった。
<実施例5>
実施例1と同じ組成の原料調合物を、図2に示す溶融装置を用いて以下に示すようにして加熱し溶融した。なお、この溶融装置では、溶融容器である外径50mm、内径40mm、高さ100mmのグラファイト製溶融部の底部に、外径15mm、内径5mm、長さ10mmのグラファイト製のノズル部(溶融物排出管)が接続された構造とした。また、溶融部の外側に、第1の誘導加熱コイルである内径70mmの銅製誘導コイル(ケィディケィ社製)を、ノズル部の外側に、第2の誘導加熱コイルである内径25mmの銅製誘導コイル(ケィディケィ社製)をそれぞれ設置した。さらに、これら溶融部、ノズル部、第1および第2の誘導加熱コイルを、容積50Lで底部に直径20mmの貫通孔を有するステンレス製の蓋つき外装容器(ジャケット)内に収納し、ノズル部の下端部が外装容器の貫通孔から外部に延出するように設置した。
このような構造を有する溶融装置の溶融部に、前記原料調合物を充填した。ここで、ノズル部には、溶融部に充填された原料調合物と同じ組成のものを溶融し固化して作製されたプラグを予め詰めておいた。そして、溶融部内に10L/分の流量でNガスを流通させながら、溶融部の外側に設置された第1の誘導加熱コイルに5kHzの交流電流を流し、溶融部を誘導加熱した。溶融部内の温度を20℃/分の速度で昇温させ、1250℃に達したらこの温度に10分間保持し、溶融部内の原料調合物を溶融した。なお、この加熱中、ノズル部の下端開口部から2L/分の流量でNガスを導入し、ノズル部内を冷却した。
次いで、ノズル部内へのNガスの導入を停止し、第1の誘導加熱コイルへの通電を継続しながら、ノズル部の外側に設置された第2の誘導加熱コイルに8kHzの交流電流を流した。こうしてノズル部を誘導加熱して、前記した原料調合物の溶融固化物からなるプラグを溶融させ、ノズル部の閉塞を開放した。そして、ノズル部を通って流下した溶融物を、ノズル部の下方に設置されたステンレス製双ローラ(外径10cm、回転数200rpm)に滴下し、急速冷却して、固化物を得た。冷却速度は約1×10℃/秒であった。
次に、実施例1と同様にして、粉砕工程(iv)、加熱工程(v)を順に行い、リン酸鉄リチウム粒子を析出させた。
得られたリン酸鉄リチウム粒子の鉱物相を測定したところ、斜方晶のオリビン型LiFePOであることが確認された。また、比表面積を測定したところ、32m/gであった。さらに、リン酸鉄リチウム粒子の平均粒子径を測定したところ、体積換算のメディアン径は0.30μmであった。
<比較例1>
実施例1と同様の組成を有する原料調合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製(内容量100mL)のルツボに充填し、次に、ルツボをケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉(モトヤマ社製、装置名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉内を2L/分でNガスを流通しつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1250℃で0.5時間保持、加熱して、溶融物を得た。溶融物を、毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことにより、1×10℃/秒で室温になるまで冷却し、フレーク状の固化物を得た。
次いで、得られた固化物中のPt含量およびRh含量を以下のようにして定量した。すなわち、固化物をHF−HClOで分解した後、HClで再溶解し、溶解液中のPt含量およびRh含量をICP発光分光分析法によって測定した。その結果、固化物中のPt含量は9.6μg/gであり、Rh含量は23μg/gであった。
なお、実施例1で得られた固化物について、上記と同様にして、Pt含量およびRh含量を測定したところ、いずれも0.1μg/g以下であった。
<比較例2>
実施例1と同様の組成を有する原料調合物を、蓋付の、外径46mm、高さ53mmのアルミナ製の焼結ルツボ(ニッカトー社製、商品名:SSA−S)に充填した。次に、ルツボをケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉(モトヤマ社製、装置名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉内を2L/分でNガスを流通しつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1450℃で0.5時間保持、加熱して、溶融物を得た。溶融物を、急速冷却することなく、5℃/分で室温になるまで冷却した。加熱、冷却処理終了後のルツボを目視で観察したところ、ルツボ表面に亀裂が生じていた。また、ルツボの一部を切断し、侵食量を測定したところ、900μmであった。
本発明によれば、純度に優れた二次電池用正極材料を、低コストでかつ効率的に製造することができる。
なお、2011年9月22日に出願された日本特許出願2011−207026号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
1…溶融装置、2…溶融容器、2a…溶融部、2b…溶融物導出管、3…誘導加熱コイル、3a…第1の誘導加熱コイル、3b…第2の誘導加熱コイル、4…ジャケット、5…原料調合物、6…原料供給管、7…ガス導入管、8…ガス排出管、9…冷却固化装置、10…固化物。11…原料調合物の溶融固化物からなるプラグ。

Claims (14)

  1. オリビン型、輝石型、またはナシコン型の結晶構造を有する化合物を含む二次電池用正極材料を製造する方法であって、
    原料を調合して原料調合物を準備する原料調合工程と、
    前記原料調合物を、少なくとも内周部が導電性耐火材料により形成された容器内で、該容器の少なくとも内周部を誘導加熱することにより溶融し、溶融物を得る溶融工程と、
    を含むことを特徴とする二次電池用正極材料の製造方法。
  2. 前記容器の底部に該容器より細径の溶融物導出部が接続され、該溶融物導出部を前記容器とは独立して加熱することにより、前記容器内の溶融物を前記溶融物導出部から導出させる、請求項1に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  3. 前記溶融物導出部は導電性耐火材料により形成されており、該溶融物導出部の加熱を誘導加熱により行う、請求項2に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  4. 前記導電性耐火材料は、炭素または導電性非酸化物セラミックスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  5. 前記導電性非酸化物セラミックスは、炭化ケイ素、ホウ化ジルコニウム、およびホウ化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とするセラミックスである、請求項4に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  6. 前記溶融工程を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  7. 前記溶融工程において、前記原料調合物を1100℃〜1800℃に加熱して溶融する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  8. 前記溶融工程で得られた前記溶融物を冷却して固化物を得る冷却工程を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  9. 前記冷却工程において、前記溶融物を1×10℃/秒以上の冷却速度で冷却する、請求項8に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  10. 前記冷却工程で得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程を有する、請求項8または9に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  11. 前記粉砕工程において、前記固化物に、有機化合物および炭素系導電物質からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加して粉砕する、請求項10に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  12. 前記粉砕工程で得られた粉砕物を加熱する加熱工程を有する、請求項10または11に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
  13. 前記二次電池用正極材料が下記式(1)で表されるリン酸化合物を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
    AM1−a 1−b 4+c (1)
    (式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、XはZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、ZはSi、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。aは0≦a≦0.2であり、bは0≦b≦0.2であり、cは、aおよびbの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
  14. 前記二次電池用正極材料が下記式(2)で表されるケイ酸化合物を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
    1−d Si1−e 4+f (2)
    (式中、AはLi、Na、およびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、MはFe、Mn、Co、およびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、XはZr、Ti、Nb、Ta、MoおよびWからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示し、ZはP、B、Al、およびVからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を示す。dは0≦d≦0.2であり、eは0≦e≦0.2であり、fは、dおよびeの数値、ならびにMの価数、Xの価数およびZの価数に依存し、電気的中性を満たす数である。)
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