JPWO2013042706A1 - 有機分子スピンバッテリー - Google Patents

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Abstract

高容量且つサイクル特性に優れる二次電池が得られるレアメタルフリーの活物質、及び該活物質を用いた二次電池を提供する。グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を含む、二次電池用正極活物質。

Description

本発明は、有機分子スピンバッテリー及び該バッテリーに好適な材料に関する。
近年、携帯電話、ポータブル電子機器・情報機器端末等の市場拡大に伴い、これらに用いられるエネルギー密度が大きく高出力・高性能の電池に対する要求が高まっている。この要求に応えるために、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体としてその電荷授受に伴う電気化学反応を利用した二次電池が開発され、特に、エネルギー密度の大きなリチウムイオン二次電池はユビキタスなエネルギー貯蔵デバイスとして現在広く普及している。
リチウムイオン二次電池は電極活物質としては、通常正極にリチウム含有遷移金属酸化物、負極に炭素材料が用いられており、これらの活物質に対するリチウムイオンの挿入反応、及び脱離反応を利用して充放電を行っている。しかしながら、既存のリチウム二次電池は正極活性物質としてレアメタルを含むLiCoO(コバルト酸リチウム)等を不可欠としているため、近い将来の資源価格の問題に直面している。一方、技術革新の面からは、二次電池の大電流容量化、サイクル特性等の高性能化への期待はさらに高まっている。このため、レアメタルフリーの材料を活物質として用いて、高容量且つサイクル特性に優れる二次電池が要求されている。
レアメタルフリー材料として、導電性高分子、有機硫黄化合物等を電極活物質に用いた電池が提案されている。例えば、特許文献1には、導電性高分子を正極又は負極の活物質とする電池が開示されている。この電池は導電性高分子に対する電解質イオンのドープ反応、及び脱ドープ反応を原理としている。ここでのドープ反応とは、導電性高分子の電気化学的な酸化反応又は還元反応によって生じる荷電ソリトン、ポーラロン等の励起子(エキシトン)を対イオンによって安定化させる反応と定義される。一方、脱ドープ反応とは、ドープ反応の逆反応、すなわち、対イオンによって安定化されたエキシトンを電気化学的に酸化又は還元する反応と定義される。導電性高分子を活物質とする電池は、炭素、窒素等の比重の小さな元素のみからなる有機化合物を電極材料に用いているため、高容量密度電池として期待されていた。しかしながら、導電性高分子では電気化学的な酸化還元反応によって生じるエキシトンがπ電子共役系の広い範囲に亘って非局在化し、それらが相互作用して静電反発やラジカルの消失を引き起こす過程が不可避的に存在する。この過程は生成する荷電ラジカル、エキシトン等の濃度に限界をもたらすものであり、電池の容量を制限する。例えば、ポリアニリンを正極に用いた電池のドープ率は50%以下であり、またポリアセチレンの場合は7%であると報告されている。そのため、導電性高分子を電極材料とする電池では軽量化という点では一定の効果を奏しているものの、大きなエネルギー密度をもつ電池はこれまでに得られていない。したがって、このような導電性高分子を電極材料とする電池では、電池の軽量化という点では一定の効果が得られるものの、高容量化という技術においては、依然として不充分であった。
このように、レアメタルフリーの材料を電極活物質として用いて、高容量且つサイクル特性に優れる二次電池を実現するために、様々な種類の電池が提案されている。しかし、未だ要求を満足するものは得られていない。
米国特許第4442187号
Morita, Y. et al., New persistent radicals: synthesis and electronic spin structure of 2,5-di-tert-butyl-6-oxophenalenoxyl derivatives. J. Am. Chem. Soc. 122, 4825-4826 (2000).
本発明は、高容量且つサイクル特性に優れる二次電池が得られる設計理念にもとづく、レアメタルフリーの活物質、及び該当活物質を用いた二次電池を提供することを目的とする。
上記の課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、グラフェンフラグメント骨格を有する化合物を正極活物質として用いた場合(特にフロンティア分子軌道に量子力学的な軌道縮重性を持たせ(縮重フロンティア分子軌道)、さらに、充放電過程で電気を運ぶ電子がこれらの軌道を部分的あるいは全部を占めるように分子設計し、且つ、特定の構造を有するようにした結果)、上記課題を解決した二次電池が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、完成されたものである。すなわち、本発明は、以下の項1−1〜2−12に係る発明を包含する。
項1−1.グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を含む、二次電池用正極活物質。
項1−2.前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、縮重フロンティア分子軌道を有する開殻分子スピン、あるいは中間状態の閉殻構造の分子である、項1−1に記載の二次電池用正極活物質。
項1−3.前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、一般式(1):
Figure 2013042706
[式中、実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される化学分子構造を有する、項1−1又は1−2に記載の二次電池用正極活物質。
項1−4.前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、一般式(2):
Figure 2013042706
[式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される有機化合物又はその誘導体を含む、項1−1〜1−3のいずれかに記載の二次電池用正極活物質。
項1−5.一般式(2):
Figure 2013042706
[式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される有機化合物を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩を含む、項1−4に記載の二次電池用正極活物質。
項1−6.R〜Rがいずれもハロゲン原子である、項1−4又は1−5に記載の二次電池用正極活物質。
項1−7.R〜Rがいずれも臭素原子である、項1−4〜1−6のいずれかに記載の二次電池用正極活物質。
項1−8.項1−1〜1−7のいずれかに記載の二次電池用正極活物質を含む二次電池用正極。
項1−9.さらに、導電性炭素繊維を含む、項1−8に記載の二次電池用正極。
項1−10.項1−8又は1−9に記載の正極を備える有機分子スピンバッテリー。
項1−11.さらに、リチウム化合物を含む電解液を有する、項1−10に記載の有機分子スピンバッテリー。
項2−1.グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を含む二次電池用正極活物質であって、前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体は、
一般式(2):
Figure 2013042706
[式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される有機化合物を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩、並びに
一般式(2’):
Figure 2013042706
[式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される有機化合物又はその誘導体
よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、二次電池用正極活物質。
項2−2.前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、縮重フロンティア分子軌道を有する、項2−1に記載の二次電池用正極活物質。
項2−3.前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、一般式(2)で示される有機化合物を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩を含有する、項2−1又は2−2に記載の二次電池用正極活物質。
項2−4.前記一般式(2)において、R〜Rは同じか又は異なり、いずれもハロゲン原子である、項2−1〜2−3のいずれかに記載の二次電池用正極活物質。
項2−5.前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、一般式(2’)で示される有機化合物又はその誘導体を含有する、項2−1又は2−2に記載の二次電池用正極活物質。
項2−6.前記一般式(2)及び(2’)において、R〜Rがいずれも臭素原子である、項2−1〜2−5のいずれかに記載の二次電池用正極活物質。
項2−7.項2−1〜2−4のいずれかに記載の二次電池用正極活物質を含む二次電池用正極。
項2−8.さらに、導電性炭素繊維を含む、項2−7に記載の二次電池用正極。
項2−9.グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を含む二次電池用正極活物質と、導電性炭素繊維とを含む、二次電池用正極。
項2−10.前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、縮重フロンティア分子軌道を有する、項2−9に記載の二次電池用正極。
項2−11.項2−7〜2−10のいずれかに記載の正極を備える有機分子スピンバッテリー。
項2−12.さらに、リチウム化合物を含む電解液を有する、項2−10に記載の有機分子スピンバッテリー。
本発明によれば、グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体をレアメタルフリーの正極活物質として用いる(特にフロンティア分子軌道に量子力学的な軌道縮重性を持たせ(縮重フロンティア分子軌道)、さらに、充放電過程で電気を運ぶ電子がこれらの軌道を部分的あるいは全部を占めるように分子設計し、且つ、特定の構造を有する)ことで、高容量且つサイクル特性に優れる二次電池を提供することができる。
比較例1の6OPO、実施例1の(t−Bu)TOT、実施例4のBrTOTに関する量子化学計算の結果を示すエネルギー準位図である。 参考例1の(t−Bu)TOTのBu塩及び参考例2のBrTOTアニオンのBu塩の酸化還元挙動を示すCV曲線図である。 比較例2(a)、実施例5(b)の各コイン型電池の充放電特性及びサイクル特性の結果を示すグラフである。なお、赤線は1サイクル目、青線は2サイクル目、黒はその他のサイクルである。 比較例2のコイン型電池の充放電特性について、充放電の条件を2C(a)、3C(b)とした場合の結果を示すグラフである。なお、赤線は1サイクル目、青線は2サイクル目、黒はその他のサイクルである。 比較例2のコイン型電池の充放電特性について、100サイクル〜500サイクルの結果を示すグラフである。 実施例9のコイン型電池の、1Cで充放電したときの充放電特性(a)(赤線は1サイクル目、青線は2サイクル目、黒はその他のサイクル)及び、1C(赤)又は2C(青)で充放電したときのサイクル特性(b)の結果を示すグラフである。
1.正極活物質
本発明の正極活物質は、グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を含む。
特に、グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体は、
一般式(2):
Figure 2013042706
[式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される有機化合物を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩、並びに
一般式(2’):
Figure 2013042706
[式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される有機化合物又はその誘導体
よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。以下、詳述する。
グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体としては、特に、縮重フロンティア分子軌道を有する開殻有機分子系であることが好ましい。ここで、縮重フロンティア分子軌道における「縮重」とは、エネルギー準位が等しい量子状態が複数存在することを言い、分子・原子サイズの微視的な物理的実在に出現する、量子力学的な性質である。この縮重は、分子の幾何学・立体的構造に由来する群論的な縮重、あるいは分子を構成する原子の位置や導入する置換基の位置を制御して作るトポロジー的な対称性に由来する縮重であってもよい。また、「開殻有機分子」とは、分子内に1個以上の不対電子(化学結合に与らない電子)を持ち、電子スピン角運動量に由来する固有の量子的性質を有する有機分子のことを指す。
グラフェンフラグメント構造とは、本発明においては、例えば、
Figure 2013042706
[式中、実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
等で示され、具体的には、
Figure 2013042706
等が挙げられる。
グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体としては、具体的には、一般式(1):
Figure 2013042706
[式中、実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
で示される構造を有するものが好ましい。
具体的には、一般式(2):
Figure 2013042706
[式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は前記に同じである。]
で示される有機化合物又はその誘導体が好適に挙げられる。
特に、この一般式(2)で示される化合物又はその誘導体は、
Figure 2013042706
[式中、R〜R、実線と破線からなる二重線は前記に同じである。]
のように、1分子で4個の電子を授受することができる。つまり、縮重軌道酸化還元反応において、介在する電子が占める縮重分子軌道間のエネルギーギャップを制御でき、かつ多数の電子が関与することができる(例えば、2個の電子を授受するフェナレニル骨格を有する化合物の2倍)ため、電流容量を劇的に向上させることができる。
一般式(2)において、酸素原子とグラフェンフラグメント骨格との間の結合は、単結合でもよいし二重結合でもよい。単結合の場合であっても、中性ラジカル、アニオン、荷電ラジカルが非局在化されるために安定に存在することができる。また、当該化合物は、平面状の化合物同士が積み重なった構造となることが多い。このため、酸化還元反応の反応部位であるラジカル、アニオン等が外部に出ており、反応性を低下させずに安定な活物質となる。
一般式(2)において、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、電流容量をより大きくでき、サイクル特性をさらに劇的に向上させることができる点から、いずれも、ハロゲン原子、特に臭素原子が好ましい。
さらに具体的には、
Figure 2013042706
[式中、実線と破線からなる二重線は前記に同じである。]
等が挙げられ、特に、
Figure 2013042706
等が挙げられる。これらの誘導体も好ましく使用することができる。
本発明で使用できるグラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体としては、中性ラジカルに限られない。グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩であってもよい。これらの化合物においても、グラフェンフラグメント骨格に由来する縮重軌道に派生する量子力学的な性質が保持されるからである。
例えば、一般式(2):
Figure 2013042706
[式中、R〜R、実線と破線からなる二重線は前記に同じである。]
で示される有機化合物を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩も使用できる。その理由は、前記のとおりである。
一般式(2)で示される有機化合物を由来とするアニオンとは、例えば、一般式(2a):
Figure 2013042706
[式中、R〜R、実線と破線からなる二重線は前記に同じである。]
で示されるように、1価のアニオンが好ましい。
金属カチオンとしては、1価のカチオンが好ましく、リチウムイオン、カリウムイオン等が挙げられるが、サイクル特性を考慮すると、リチウムイオンが好ましい。
本発明では、上記したように、中性ラジカルでも塩でも使用できるが、容量及びサイクル特性の観点から中性ラジカルが好ましい。
本発明において、グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体の合成方法は、特に限定されない。
例えば、R〜Rがいずれも炭素数1〜6のアルキル基である化合物を合成する場合には、これに限定されるわけではないが、一般式(3):
Figure 2013042706
[式中Xはハロゲン原子、Rは炭素数1〜6のアルキル基である]
で示される化合物を出発物質として合成することができる。
この化合物において、Xとしては、好ましくは臭素原子である。また、Rとしては、好ましくはtert−ブチル基である。つまり、好ましい出発物質は
Figure 2013042706
である。
工程(1)
Figure 2013042706
[式中Xはハロゲン原子、Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基である]
最初に、一般式(3)で示される化合物に、有機リチウム化合物を作用させた後にカーボネート化合物を作用させ、一般式(4)で示される化合物を得る。
有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。これらのうち、tert−ブチルリチウム等が好ましい。また、カーボネート化合物としては、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
この場合、反応雰囲気は特に限定はなく、具体的には、例えば、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
各物質の使用量、反応時間、反応温度等は特に制限はない。当該反応に通常適用される条件とすることができる。
ここで出発物質が
Figure 2013042706
の場合は、
Figure 2013042706
が得られる。
工程(2)
Figure 2013042706
[式中Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;Rは前記に同じである]
ここでは、水酸基を還元脱離する。還元脱離の方法は、特に制限されず、例えば、ハロゲン(特にヨウ素)と、ホスフィン酸等の還元剤を用いることができる。
この場合、反応雰囲気は特に限定はなく、具体的には、例えば、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
各物質の使用量、溶媒、反応時間、反応温度等は特に制限はない。当該反応に通常適用される条件とすることができる。
次に、各アリール基の2位をハロゲン化する。この際の方法も特に制限はない。
例えば、ヨウ素化する場合には、ヨウ素と過ヨウ素酸、ヨウ素酸等を酢酸及び硫酸の存在下で反応させることが好ましい。これにより、不活性な基質であってもヨウ素化することができる。
この場合、反応雰囲気は特に限定はなく、具体的には、例えば、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
各物質の使用量、反応時間、反応温度等は特に制限はない。当該反応に通常適用される条件とすることができる。
これにより、一般式(5)で示される化合物が得られる。
ここで出発物質が
Figure 2013042706
の場合は、
Figure 2013042706
が得られる。
工程(3)
Figure 2013042706
[式中X及びRは前記に同じである]
ここでは、アリール基の2位のハロゲン原子をカルボキシル基に置換する。その方法としては、特に制限されない。例えば、パラジウム触媒の存在下で一酸化炭素及び水を使用する方法等が挙げられる。具体的には、溶媒中、パラジウム触媒の存在下でCOガスを吹き込み、その後アルカリ条件下で加水分解することが好ましい。
パラジウム触媒としては、金属パラジウムをはじめ、有機化合物(高分子化合物を含む)等の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。具体的には、Pd(PPh、PdCl(PPh、Pd(CHCOO)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリt−ブチルホスフィノ)パラジウム(0)等が挙げられる。本工程では、Pd(CHCOO)等が好ましい。
また、上記カップリング工程において、必要に応じて、上記パラジウム系触媒の中心元素であるパラジウム原子に配位し得る配位子を触媒とともに用いることができる。この配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(S−Phos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル(X−Phos)、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEPhos)等が挙げられる。
溶媒としては、特に制限されない。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エタノール、メタノール、プロパノール等を使用することができる。
アルカリ条件とするためのアルカリとしても特に制限されない。例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウムを使用することが好ましい。
各物質の使用量、反応時間、反応温度等は特に制限はない。当該反応に通常適用される条件とすることができる。
これにより、一般式(6)で示される化合物が得られる。
ここで出発物質が
Figure 2013042706
の場合は、
Figure 2013042706
が得られる。
工程(4)
Figure 2013042706
[式中R、及び実線と破線からなる二重線は前記に同じである]
ここでは、ハロゲン化剤を作用させた後、ルイス酸触媒を作用させる。この反応は、フリーデルクラフツ反応(Friedel-Crafts reaction)として知られる反応である。
ハロゲン化剤としては、オキサリルクロリド、塩化チオニル等が挙げられるが、オキサリルクロリドが望ましい。
ルイス酸触媒としては、具体的には、金属又は半金属のハロゲン化物であり、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化チタン(IV)等が挙げられるが、塩化アルミニウムが好ましい。
この場合、反応雰囲気は特に限定はなく、具体的には、例えば、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
各物質の使用量、溶媒、反応時間、反応温度等は特に制限はない。当該反応に通常適用される条件とすることができる。
これにより、一般式(7)で示される化合物が得られる。
ここで出発物質が
Figure 2013042706
の場合は、
Figure 2013042706
[式中実線と破線からなる二重線は前記に同じである]
が得られる。
この後、一般式(7)で示される化合物を中和した後に、水酸化テトラブチルアンモニウム(BuNOH)を作用させることで、一般式(2a)においてR〜Rがいずれも炭素数1〜6のアルキル基であるアニオンの、テトラブチルアンモニウム塩が得られる。
また、一般式(7)で示される化合物を中和して得られるアニオンを、酸化剤(特にクロラニル)で酸化させることで、一般式(2)において、R〜Rがいずれも炭素数1〜6のアルキル基である中性ラジカルが得られる。
さらに、前記テトラブチルアンモニウム塩を塩酸等の酸で中和した後に、カリウム化合物(KOH等)、リチウム化合物(LiOH・HO等)を作用させることで、一般式(2a)においてR〜Rがいずれも炭素数1〜6のアルキル基であるアニオンの、カリウム塩、リチウム塩等が得られる。
また、出発物質として、一般式(1’):
Figure 2013042706
[式中、X及びXは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;Rは炭素数1〜6のアルキル基である。]
で示される化合物、特に
Figure 2013042706
を用いて上記と同様の方法を採用すれば、一般式(2)において、R〜Rがいずれもハロゲン原子である中性ラジカル、一般式(2a)においてR〜Rがいずれもハロゲン原子であるアニオンの、テトラブチルアンモニウム塩、リチウム塩、カリウム塩等を得ることもできる。
2.正極
電極活物質(単に活物質とも言う)とは、充電反応及び放電反応等の電極反応に直接寄与する物質のことであり、電池システムの中心的役割を果たすものである。本発明では、電極活物質として、上述したグラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を用いる。なお、上述したグラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、電極活物質として、上述したグラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体のみを使用してもよいし、従来から公知の活物質を組合せて使用してもよい。ただし、レアメタルフリーの二次電池を得る観点と、高容量且つサイクル特性に優れる二次電池を得る観点から、上述したグラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を主体とすることが好ましく、上述したグラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を50質量%以上、特に70質量%以上、さらに90質量%以上含むことが好ましい。グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を質量%として主要に含むことが好ましい理由は、これらの分子のグラフェンフラグメント骨格に由来する縮重軌道を占有する多数電子を電池の酸化還元反応に利用できるからである。
本発明では、上述したグラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体以外に、導電材として、炭素材料を使用することがより好ましい。炭素材料は導電付与材として従来のリチウムイオン電池等にも使用されているが、本発明の場合は金属粉末、導電性高分子等では電池としての動作が認められないことから、単なる集電材以上の何らかの作用を及ぼしていると考えられる。
本発明で使用できる炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子;気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の炭素繊維等が挙げられる。本発明ではこれらの炭素材料を単独で、または2種類以上混合して用いることもできる。なかでも、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の炭素繊維等が好ましい。電極中の炭素質材料の混合割合は特に限定されないが、例えば10〜90質量%とすることができる。
正極の各構成材料間の結びつきを強めるために、結着剤(バインダ)を用いることもできる。この結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、各種ポリウレタン等の樹脂バインダが挙げられる。これらの樹脂バインダは、単独でまたは2種類以上混合して用いることもできる。電極中のバインダの割合は特に限定されないが、例えば5〜30質量%とすることができる。
本発明において正極集電体として、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔、半金属、半導体も含めた金属平板、メッシュ状などの形状の集電体を用いることができる。
3.有機分子スピンバッテリー
本発明の有機分子スピンバッテリーは、上述した本発明の正極を有する。
対向電極は、正極電極に対向して設けられ、本発明では、負極に相当する。本発明においては、リチウム重ね合わせ銅箔、白金版等のカチオンが析出可能な導体;負極活物質を含む電極等が利用できる。このうち、負極活物質としてはカチオンを吸蔵・放出可能な材料であれば特に限定されず、天然黒鉛、石炭・石油ピッチ等を高温で熱処理して得られる黒鉛化炭素等の結晶質カーボン、石炭、石油ピッチコークス、アセチレンピッチコークス等を熱処理して得られる非晶質カーボンやリチウム合金等、二次電池の負極活物質として従来公知の材料が使用できる。
本発明において負極集電体として、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔、半金属、半導体も含めた金属平板、メッシュ状などの形状の集電体を用いることができる。
本発明では従来のリチウムイオン二次電池と同様に正極と負極を隔てる目的でセパレータを利用することもできる。
正極層と対向電極の間の荷電担体輸送を行うために、電解液を使用することができる。一般には、電解液中の電解質としては、室温で10−5〜10−1 S/cmのイオン伝導性を有するものがより好適に用いられる。電解質としては、例えば、電解質塩を溶剤に溶解した電解液、電解質塩を含む高分子化合物からなる固体電解質等を利用することができる。
電解液を構成する電解質塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC、Li(CSOC等のリチウム化合物を用いることができる。
電解質塩を溶解するための溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。これらは、1種単独又は2種以上で用いることができる。
固体電解質を構成する高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体;アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリロニトリル系重合体;ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、これらのアクリレート体、メタクリレート体の重合体等が挙げられる。なお、固体電解質は、これらの高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものを用いても、高分子化合物のみでそのまま用いてもよい。
本発明において、電池の形状は特に限定されず、従来の電池で行われている円筒型、角型、コイン型、シート型等の形状とすることができる。また、外装方法も特に限定されず、金属ケース、モールド樹脂、アルミラミネートフィルム等によって行うことができる。また、電極からのリードの取り出し等についても従来公知の方法を用いることができる。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
[比較例1]
2,5,8−トリ−tert−ブチル−6−オキソフェナェレンオキシル(6OPO):
Figure 2013042706
は、公知の文献(非特許文献1)に記載の方法に従い、合成した。
[参考例1:(t−Bu)TOTのBu塩]
一般式(2a):
Figure 2013042706
で示されるアニオンのテトラブチルアンモニウム塩((t−Bu)TOTのBu塩)は、以下のように合成した。
工程(1)
4−tert−ブチルブロモベンゼン:
Figure 2013042706
に、tert−ブチルリチウムを作用させた後にジエチルカーボネートを作用させ、
Figure 2013042706
を得た。
具体的には、200−mL滴下漏斗を付けた1−Lシュレンク管に、4−tert−ブチルブロモベンゼン(14 mL,85.3 mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(400 mL)に溶解させた。ドライアイス−エタノール浴で冷却して1時間撹拌した。滴下漏斗を用いてtert−ブチルリチウム(1.48 M ペンタン溶液,115 mL,170.7 mmol)を滴下した。その後、-78°Cまで昇温してから1時間撹拌した。再び反応溶液を冷却し、炭酸ジエチル(3.10 mL,25.6 mmol)を滴下した。滴下後昇温して4時間撹拌した。反応液に水(150 mL)を加えた後、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、ろ過して減圧濃縮した。粗成生物を桐山漏斗上ヘキサンで洗って、トリフェニルメタノール誘導体(10.3 g,94%)を白色固体として得た。
工程(2)
次に、前記工程(1)で得た化合物中の水酸基を、ヨウ素(I)とホスフィン酸を用いて還元脱離した。また、アリール基を過ヨウ素酸及びホスフィン酸の存在下でヨウ素(I)でヨウ素化した。その結果、
Figure 2013042706
を得た。
具体的には、1−Lナスフラスコに トリフェニルメタノール誘導体(12.0 g,28.0 mmol)、酢酸(400 mL)、ヨウ素(7.11 g, 28.0 mmol)、そして50%ホスフィン酸(30mL)を入れ、還流冷却管を取り付け60°Cで3時間加熱した。放冷後、水を加えて、生じた白色固体を桐山漏斗で濾取し、トリフェニルメタン誘導体を合成した。
トリフェニルメタン誘導体(5.40 g,13.1 mmol)、酢酸(50 mL)、蒸留水(10 mL)、過ヨウ素酸二水和物(23.9 g,105 mmol)、ヨウ素(13.1 g,52.3 mmol)そして濃硫酸(1.50 mL)をナスフラスコに入れ、110°Cで加熱還流した。15時間後、放冷し飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、ろ過して濃縮した。粗生成物を塩化メチレンに溶解させ、カラムクロマトグラフィーに供することで、トリ(ヨードフェニル)メタン誘導体(5.96 g,56%)を白色固体として得た。
工程(3)
次に、アルカリ条件下で、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド中、Pd(CHCOO)の存在下で一酸化炭素(CO)ガスを吹き込み、その後加水分解した。その結果、
Figure 2013042706
を得た。
具体的には、100−mLナスフラスコにトリ(ヨードフェニル)メタン誘導体(4.00 g, 5.06 mmol)、1,3−ジフェニルホスフィノプロパン(313 mg,0.759 mmol)、酢酸パラジウム(II)(170 mg,0.759 mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(40 mL)、メタノール(4 mL)、そしてトリエチルアミン(4.24 mL, 30.4 mmol)を入れた。一酸化炭素ガス雰囲気下80°Cで4日間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗ったのち、無水硫酸ナトリウム上乾燥、ろ過して濃縮した。粗生成物を塩化メチレンに溶解させ、カラムクロマトグラフィーに供してトリエステル誘導体(1.35 g, 45%)を淡黄色泡状固体として得た。
50−mLナスフラスコにトリエステル誘導体(900 mg, 1.53 mmol)を入れ、エタノール(35 mL)と、水酸化カリウム(4.3 g, 76.7 mmol)を水(7 mL)に溶解させた水溶液を加え、3時間加熱還流した。放冷した後、2 mol/L塩酸を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥した後、ろ過して濃縮し、トリカルボン酸誘導体(820 mg)を淡黄色固体として得た。
工程(4)
さらに、オキサリルクロライドで作用した後、ルイス酸触媒として塩化アルミニウム(AlCl)で作用することで、
Figure 2013042706
[式中実線と破線からなる二重線は前記に同じである]
を得た。
具体的には、100-Lナスフラスコに、トリカルボン酸誘導体(400 mg, 0.734 mmol)を入れ、オキサリルクロリド(10.0 mL)を加えて加熱還流した。2時間後、過剰のオキサリルクロリドを減圧留去した。残査を塩化メチレン(12 mL)に溶解させ、低温下で塩化アルミニウム(979 mg, 7.34 mmol)を加えて撹拌した。2時間後、塩化メチレンを真空下留去し、青色の残査に炭酸カリウム(8 g)を加えて混ぜ合わせ、水冷しながらさらに蒸留水を加えて懸濁させた。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、ろ過して濃縮することで(t−Bu)TOTアニオンのカリウム塩(563 mg)を青色固体として得た。
工程(5)
この後、得られた化合物を中和して、
Figure 2013042706
で示されるヒドロキシジケトン誘導体を得、さらに、水酸化テトラブチルアンモニウム(BuNOH)を作用させることで、(t−Bu)TOTアニオンのBu塩を得た。
具体的には、このアニオンのカリウム塩(563 mg)を20−mLナスフラスコに入れ、2 mol/L塩酸(20 mL)に懸濁させ、2時間加熱撹拌した。放冷後、固体を桐山漏斗でろ取し、2 mol/L塩酸で洗浄することでヒドロキシジケトン誘導体(294 mg)を得た。
続いて、30−mLナスフラスコにヒドロキシジケトン誘導体(497 mg, 1.01 mmol)を入れ、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(2 mL)を水(5 mL)で希釈した水溶液に懸濁させた。30分間撹拌した後、青色固体を桐山漏斗でろ取した後、蒸留水で洗った。真空乾燥させることで、t−Bu)TOTアニオンのBu塩(536 mg,57%)を青色固体として得た。
Bu4N+ salt of (t-Bu)3TOT anion: blue blocks containing triglyme and water molecules as crystal solvents; mp: 203-204℃; 1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 0.93 (t, J = 7.3 Hz, 12H), 1.30 (m, 8H), 1.49 (s, 27H), 1.49-1.61 (m, 8H), 3.12-3.18 (m, 8H), 8.81 (s, 6H); Analysis (calcd, found for C50H69NO3(C8H18O4)0.5(H2O)): C (77.28, 77.20), H (9.61, 9.35), N (1.67, 1.84).
[実施例1:(t−Bu)TOT]
合成例1の途中で得たTOTアニオンを、クロラニルで酸化させることで、
Figure 2013042706
で示される中性ラジカル((t−Bu)TOT)を得た。
具体的には、30−mLナスフラスコにTOTアニオン(100mg, 0.137 mmol)、クロラニル(33.6 g, 0.137mmol)を入れ、1,2−ジメトキシエタン(5 mL)に溶解させた。室温で 20 分間撹拌した後、溶媒を真空減圧下留去した。粗生成物をクロロホルム(80 mL)に溶解させ、カラムクロマトグラフィーに供すことで、中性ラジカル(51.9 mg,77%)を茶色固体として得た。
(t-Bu)3TOT neutral radical: black needles containing water molecule as a crystal solvent; dp > 300℃; Analysis (calcd, found for C34H33O3(H2O)0.15): C (82.95, 82.75), H (6.82, 6.64), N (0.00, 0.00).
[実施例2:(t−Bu)TOTアニオンのK塩]
合成例1で得た(t−Bu)TOTアニオンのBu塩を2MのHClで中和した後、KOHを作用させることで、目的物((t−Bu)TOTアニオンのK塩)を得た。
具体的には、アニオンのBu塩(43 mg, 0.09 mmol)を20−mLナスフラスコに入れてエタノール(5 mL)に溶解させた。炭酸カリウム(61 mg, 0.44 mmol)を加えて攪拌した。1.5時間後、水(1 mL)を加えて生じた沈殿を桐山漏斗でろ取し、真空乾燥させることで、アニオンのK塩を青色固体として得た。
K+ salt of (t-Bu)3TOTanion: blue powder containing water; dp > 300℃; Analysis (calcd, found for C34H33O3K(H2O)3): C (70.07, 69.90), H (6.75, 6.72), N (0.00, 0.00).
[実施例3:(t−Bu)TOTアニオンのLi塩]
合成例1で得た(t−Bu)TOTアニオンのBu塩を2MのHClで中和した後、LiOH・HOを作用させることで、目的物((t−Bu)TOTアニオンのLi塩)を得た。
具体的には、アニオンのBu塩(58 mg, 0.12 mmol)を20−mLナスフラスコに入れてエタノール(5 mL)に溶解させた。水酸化リチウム一水和物(50 mg, 1.2 mmol)を加えて攪拌した。2時間後、水(10 mL)を加えて生じた沈殿を桐山漏斗でろ取し、真空乾燥させることで、アニオンのLi塩を青色固体として得た。
Li+ salt of (t-Bu)3TOTanion: blue powder containing water; dp > 300℃; Analysis (calcd, found for C34H33O3Li(H2O)2): C (76.67, 76.61), H (7.00, 6.85), N (0.00, 0.00).
[参考例2:BrTOTアニオンのBu塩]
出発物質として、
Figure 2013042706
を用いること以外は合成例1と同様の手法により、
Figure 2013042706
で示されるアニオン(BrTOTアニオン)のBu塩を得た。
具体的には、1−Lシュレンク管に、2−ヨード−5−ブロモトルエン(9.0 mL, 63.7 mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(30 mL)に溶解させた。−78 °Cに冷却し、n−ブチルリチウム(1.6 M ヘキサン溶液, 40 mL, 64 mmol)を滴下し、1時間撹拌した。その後、炭酸ジエチル(2.3 mL, 19.1 mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。反応液に水(100 mL)を加えて、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗った。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、ろ過して濃縮した。粗生成物を塩化メチレンに溶解させ、カラムクロマトグラフィーに供して、トリフェニルメタノール誘導体(4.52 g,44%)を白色粉末として得た。
1−Lシュレンク管に、 トリフェニルメタノール誘導体(4.32 g, 8.38 mmol)を入れ、トリフルオロ酢酸(300 mL)に溶解させ、氷浴で冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(3.17 g, 83.8 mmol)を加え、室温まで昇温させて30分間撹拌した。トリフルオロ酢酸を留去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥した後、ろ過し、濃縮することで、トリフェニルメタン誘導体(4.10 g,98%)を白色粉末として得た。
1-Lナスフラスコに2−メチル−2−プロパノール(300 mL)、水(300 mL)、トリフェニルメタン誘導体(5.80 g, 11.1 mmol)、過マンガン酸カリウム(52.6 g,333 mmol)を入れ、加熱還流した。40時間後、室温まで冷却し、不溶性の物質をろ別し、酢酸エチルで洗った。ろ液に 2 mol/L塩酸を加え、酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、ろ過し濃縮することで、トリカルボン酸誘導体(6.00 g,89%)を白色粉末として得た。
200−mLナスフラスコにトリカルボン酸誘導体(2.80 g, 4.57 mmol)を入れ、濃硫酸(60 mL)に溶解させ、1時間加熱撹拌した。放冷後、析出した沈殿物をろ取し、水、塩化メチレン、アセトンで洗い、ヒドロキシジケトン体(1.51 g,58%)を紫色粉末として得た。
100−mLナスフラスコに、ヒドロキシジケトン体(406 mg, 0.73 mmol)を入れ、アセトン(50 mL)に溶解させた。水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(2.2 mL)を加えて攪拌した。1時間後、溶媒を減圧留去し、残渣を水で洗浄することで、アニオンのBu塩(507 mg,87%)で得た。
Bu4N+ salt of Br3TOT anion: blue crystals containing water molecule as a crystal solvent; dp: 191-192℃; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 0.93 (t, J = 7.3 Hz. 12H), 1.25-1.35 (m, 8H), 1.52-1.62 (m, 8H), 3.15 (t, J = 8.5 Hz, 8H), 8.59 (s, 6H); Analysis (calcd, found for C38H42Br3O3N(H2O)0.4): C (56.51, 56.53), H (5.34, 5.27), N (1.73, 1.83).
[実施例4:BrTOT]
出発物質として、
Figure 2013042706
を用いること以外は合成例1〜2と同様の手法により、
Figure 2013042706
で示される中性ラジカル(BrTOT)を得た。
具体的には、100−mLナスフラスコに、アニオンのBu塩(503 mg,0.63 mmol)を入れ、塩化メチレン(40 mL)に溶解させた。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(223 mg, 0.95 mmol)を加えて室温で攪拌した。1時間後、生じた沈殿を桐山漏斗でろ取することで、中性ラジカル(351 mg,〜100%)で得た。
Br3TOT neutral radical: black blocks; dp: 268℃; Analysis (calcd, found for C22H6Br3O3): C (47.35, 47.04), H (1.08, 1.30), N (0.00, 0.00).
[試験例1:エネルギー準位図]
比較例1の6OPO、実施例1の(t−Bu)TOT及び実施例4のBrTOTについて、以下のように、分子設計の要になる電子構造に関して知見を得るために、量子化学計算を行った。
量子化学計算は、UB3LYP/6-31G(d,p)レベルで最適化された分子構造を用いて、ROB3LYP/6-31G(d,p)レベルでGAUSSIAN 03に用いて行った。結果を図1に示す。
その結果、6OPOは、SOMO、LUMO間のエネルギーギャップは0.94 eVであった。また、(t−Bu)TOT及びBrTOTは、いずれもSOMOと2つの縮重したLUMOを有し、エネルギーギャップはそれぞれ0.82 eV、0.56 eVであった。BrTOTのフロンティア分子軌道は、6OPO及び(t−Bu)TOTよりも低い位置に存在していた。
[試験例2:酸化還元挙動(CV曲線)]
参考例1の(t−Bu)TOTのBu塩及び参考例2のBrTOTアニオンのBu塩について、以下のように酸化還元挙動を測定した。
290 K(17℃)で、参考例1の(t−Bu)TOTのBu塩の1×10−3 MのTHF溶液中に、支持電解質としてBuNClOを0.1 M投入した。その後、直径1.6 mmの金の作用極と、白金ワイヤーの対極を用い、室温且つアルゴン雰囲気下で、Ag/10 mMAgNOの参照極を用いて測定した。なお、結果は、フェロセン/フェロセニウムで標準化した。
BrTOTアニオンのBu塩の測定については、参考例2のBrTOTアニオンのBu塩の3×10−3 MのTHF溶液を用いること以外は上記と同様にした。
結果を図2に示す。なお、上は参考例1、下は参考例2である。
参考例1については、−0.40 V以外に、−2.0〜−2.6 Vの間で電位差の小さな3個のレドックス波が可逆的によく観測された。一方、参考例2では、0 V付近に電気化学的に不可逆な波と、−2.0〜−3.05 Vの間でレドックス波が観測された。このことから、4段階の酸化還元能を有することが示唆される。
[比較例2:6OPOを用いた電池]
比較例1の6OPO、ポリテトラフルオロエチレン及びVGCFを、質量比で10:10:80になるように秤り取り、均一に混合しながら混練した。この混合体を、加圧成型して、厚さ約150 μmの薄板を得た。これを、真空中80 ℃で1時間乾燥した後、直径12 mmの円形に打ち抜き、6OPOを含む正極層とした。
次に、得られた正極層を電解液に含浸し、電極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、1.0 MのLiPF電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合容積比3:7)を用いた。この正極を、コイン型電池を構成する正極集電体上に置き、その上に同じく電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フィルムからなるセパレータを積層し、さらに負極となるリチウム張り合わせ銅箔を積層した。その後、周囲に絶縁パッキンを配置した状態でコイン型電池のアルミ外装(Hohsen製)を重ね、かしめ機によって加圧し、正極活物質として6OPO、負極活物質として金属リチウムを用いた密閉型のコイン型電池を作製した。
[実施例5:(t−Bu)TOTを用いた電池(1)]
カソードの活物質として、6OPOではなく実施例1の(t−Bu)TOTを用いたこと以外は比較例2と同様に、正極活物質として(t−Bu)TOT、負極活物質として金属リチウムを用いた密閉型のコイン型電池を作製した。
[実施例6:(t−Bu)TOTを用いた電池(2)]
実施例1の(t−Bu)TOT、ポリテトラフルオロエチレン及びアセチレンブラックを、質量比で10:30:60になるように測り採り、均一に混合しながら混練した。この混合体を、加圧成型して、厚さ約150 μmの薄板を得た。これを、真空中80 ℃で1時間乾燥した後、直径12 mmの円形に打ち抜き、(t−Bu)TOTを含む正極層とした。
次に、得られた正極層を電解液に含浸し、電極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、1.0 MのLiN(SOCF電解質塩を含むトリエチレングリコールジメチルエーテル溶液を用いた。この正極を、コイン型電池を構成する正極集電体上に置き、その上に同じく電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フィルムからなるセパレータを積層し、さらに負極となるリチウム張り合わせ銅箔を積層した。その後、周囲に絶縁パッキンを配置した状態でコイン型電池のアルミ外装(Hohsen製)を重ね、かしめ機によって加圧し、正極活物質として(t−Bu)TOT、負極活物質として金属リチウムを用いた密閉型のコイン型電池を作製した。
[実施例7:(t−Bu)TOTアニオンのK塩を用いた電池]
カソードの活物質として、6OPOではなく実施例2の(t−Bu)TOTアニオンのK塩を用いたこと以外は比較例2と同様に、正極活物質として(t−Bu)TOTアニオンのK塩、負極活物質として金属リチウムを用いた密閉型のコイン型電池を作製した。
[実施例8:(t−Bu)TOTアニオンのLi塩を用いた電池]
カソードの活物質として、6OPOではなく実施例3の(t−Bu)TOTアニオンのLi塩を用いたこと以外は比較例2と同様に、正極活物質として(t−Bu)TOTアニオンのLi塩、負極活物質として金属リチウムを用いた密閉型のコイン型電池を作製した。
[実施例9:BrTOTを用いた電池]
実施例4のBrTOT、ポリフッ化ビニリデン及びアセチレンブラックを、質量比で10:10:80になるように測り採り、均一に混合しながら混練した。この混合体を、加圧成型して、厚さ約150 μmの薄板を得た。これを、真空中100℃で12時間乾燥した後、直径12 mmの円形に打ち抜き、BrTOTを含む正極層とした。
次に、得られた正極層を電解液に含浸し、電極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、1.0 MのLiPF電解質塩を含むエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶液(混合容積比3:7)を用いた。この正極を、コイン型電池を構成する正極集電体上に置き、その上に同じく電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フィルムからなるセパレータを積層し、さらに負極となるリチウム張り合わせ銅箔を積層した。その後、周囲に絶縁パッキンを配置した状態でコイン型電池のアルミ外装(Hohsen製)を重ね、かしめ機によって加圧し、正極活物質としてBrTOT、負極活物質として金属リチウムを用いた密閉型のコイン型電池を作製した。
[試験例3:充放電特性及びサイクル特性]
比較例2、実施例5〜9のコイン型電池の充放電特性及びサイクル特性を以下のように測定した。
比較例2
比較例2のコイン型電池を、1Cで電圧が4.0 Vになるまで充電し、その後、1 Cで2.0Vまで放電を行った。その後、2.0〜4.0 Vの間の充放電を同様に、100サイクル繰り返した。結果を図3a、図4及び図5に示す。
その結果、初期放電容量は152 Ah/kgであり、理論値の147 Ah/kgと近い値であった。
2サイクル目以降の充電過程においては、最初に挙動が変わる電位が3.0 Vと低下し、階段的な挙動は示さなかった。一方、放電過程においては、3.5 V、2.7 V、2.1 V(平均電位:2.9 V)の3箇所で段階的に挙動が変化した。
この挙動は、充放電条件を1 Cではなく、2 C又は3 Cとしても同様であった。
また、100サイクル後の放電容量は33 Ah/kgまで低下し、サイクル特性は22%でしかなかった。サイクル数を500サイクルまで測定すると、さらに容量は低下した。
実施例5
実施例5のコイン型電池を用い、充放電条件を、0.3 Cで1.4〜3.8 Vの間の充放電を行ったこと以外は比較例2のコイン型電池の場合と同様にした。結果を図3bに示す。
初期容量(311 Ah/kg)及び2サイクル目の容量(169 Ah/kg)は、比較例2のコイン型電池や、従来のLiCoOを用いたリチウムイオン電池より著しく優れており、約2倍であった。なお、初期容量は、理論値(220 Ah/kg)よりもはるかに大きい値であった。
また、100サイクル後の放電容量は73 Ah/kgのため、サイクル特性は43%であり、比較例2と比較して大きく向上した。
実施例6
実施例6のコイン型電池を用い、充放電条件を、0.2 Cで1.4〜3.6 Vの間の充放電を行ったこと以外は比較例2のコイン型電池の場合と同様にした。その結果、初期容量及びサイクル特性ともに、実施例5よりは低下し、導電材としてVGCFが優れていることが示唆された。
実施例7
実施例7のコイン型電池を用い、充放電条件を、0.3 Cで1.2〜4.0 Vの間の充放電を行ったこと以外は比較例2のコイン型電池の場合と同様にした。その結果、初期容量及びサイクル特性ともに、後述の実施例8よりは低下し、カチオンとしてはリチウムイオンが優れていることが示唆された。
実施例8
実施例8のコイン型電池を用い、充放電条件を、0.1 Cで1.2〜4.0 Vの間の充放電を行ったこと以外は比較例2のコイン型電池の場合と同様にした。その結果、初期容量及びサイクル特性ともに、実施例5よりは低下し、中性ラジカルが優れていることが示唆された。
実施例9
実施例9のコイン型電池を用い、充放電条件を、1 C又は2 Cで1.4〜4.0 Vの間の充放電を行ったこと以外は比較例2のコイン型電池の場合と同様にした。結果を図6に示す。
その結果、1 Cで充放電した際の初期容量は225 Ah/kg、2Cで充放電した際の初期容量は208 Ah/kgと、理論値(192 Ah/kg)と近い値であった。
また、100サイクル後の放電容量は、1 Cでは159 Ah/kgのためサイクル特性は71%、2 Cでは177 Ah/kgのためサイクル特性は85%であり、他の実施例及び比較例と比較すると、容量及びサイクル特性(特にサイクル特性)が劇的に向上した。

Claims (12)

  1. グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を含む二次電池用正極活物質であって、前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体は、
    一般式(2):
    Figure 2013042706
    [式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
    で示される有機化合物を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩、並びに
    一般式(2’):
    Figure 2013042706
    [式中、R〜Rは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合である。]
    で示される有機化合物又はその誘導体
    よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、二次電池用正極活物質。
  2. 前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、縮重フロンティア分子軌道を有する、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
  3. 前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、一般式(2)で示される有機化合物を由来とするアニオンと、金属カチオンとからなる塩を含有する、請求項1又は2に記載の二次電池用正極活物質。
  4. 前記一般式(2)において、R〜Rは同じか又は異なり、いずれもハロゲン原子である、請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池用正極活物質。
  5. 前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、一般式(2’)で示される有機化合物又はその誘導体を含有する、請求項1又は2に記載の二次電池用正極活物質。
  6. 前記一般式(2)及び(2’)において、R〜Rがいずれも臭素原子である、請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池用正極活物質。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池用正極活物質を含む二次電池用正極。
  8. さらに、導電性炭素繊維を含む、請求項7に記載の二次電池用正極。
  9. グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体を含む二次電池用正極活物質と、導電性炭素繊維とを含む、二次電池用正極。
  10. 前記グラフェンフラグメント骨格を有する有機化合物又はその誘導体が、縮重フロンティア分子軌道を有する、請求項9に記載の二次電池用正極。
  11. 請求項7〜10のいずれかに記載の正極を備える有機分子スピンバッテリー。
  12. さらに、リチウム化合物を含む電解液を有する、請求項10に記載の有機分子スピンバッテリー。
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