JPWO2012002472A1 - Acf検出方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、大腸組織の被検領域を分子レベルで解析することによってACFを検出するための方法を提供する。すなわち、本発明は、ACF(異常腺窩)を検出する方法であって、大腸組織の被検領域中のGSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1からなる群より選択される1種以上のACF特異的発現上昇分子を検出することを特徴とする、ACF検出方法;前記被検領域の直径が、0.5mm以下であることを特徴とする前記記載のACF検出方法;GSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、又はFzd1である、ACF検出用マーカー;前記いずれかに記載のACF検出方法を用いて、被検者の大腸組織の被検領域中のACFを検出した結果に基づき、当該被検者の結腸直腸癌及び結腸直腸腺腫のリスクを評価する方法に係る。
Description
本発明は、ACF(異常腺窩)特異的に高発現している分子を指標として、ACFを検出する方法に関する。
本願は、2010年6月30日に日本国に出願された特願2010−148649号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本願は、2010年6月30日に日本国に出願された特願2010−148649号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
結腸直腸癌は、日本における死亡原因第一位、米国においては癌による死亡原因の第二位である。米国では年間約15万人に新たな結腸直腸癌が発見されており、年間5万人以上が死亡している(アメリカ癌協会による推定)。一方で、結腸直腸癌は、良性腫瘍から悪性腫瘍への進行に数十年かかる例も多いため、早期におけるリスク評価・発見は、良好な予後及び予防に貢献すると期待される。
現在一般的に行われている結腸直腸腺腫・腫瘍スクリーニング検査方法として、便潜血検査、注腸X線造影検査、全大腸内視鏡検査、S状結腸内視鏡検査等が存在する。しかしながら、例えば便潜血検査の場合、腺腫や腫瘍以外の要因でも血液が検出されるケースがあるため、結腸直腸腺腫・腫瘍に対する特異性が高いとは言えず、早期検出を目的とした場合には擬陽性となりやすい。一方で注腸X線造影検査は、形態の大きな進行癌は検出することができるが、小さな病変は検出しにくいという欠点がある。
また、内視鏡による検査は、直接病変部位を視認するため、検査結果の信頼性が高く、結腸直腸癌死亡率及び発生率の低下に貢献することが示されている。しかしながら、早期癌では病変部位が微小であるため、内視鏡による検査では検出が困難である、という問題がある。
このように、結腸直腸癌リスクが高い群や早期結腸直腸癌を効果的に抽出する検出技術は依然として未熟であるため、ある程度病期が進行した段階で初めて診断される場合が多い。そこで、早期に、かつ低侵襲若しくは非侵襲に、結腸直腸癌のリスク評価・発見を行うことを可能にする、感度・特異度の高い検査方法が望まれている。
結腸直腸癌を早期病変の段階から検出する方法として、核酸やタンパク質の解析技術を用いて分子レベルで解析する方法が注目されている。例えば、結腸直腸癌のリスク要因として、家族性ポリポーシス(FAP)に代表されるような遺伝的背景があり、被験者の遺伝子を解析することによって結腸直腸癌のリスク評価を行うことができる。また近年では、FAPの様な特徴的な遺伝的背景を有する群と有さない群のいずれにおいても、年齢(50歳以上)や肥満・飲酒・喫煙といった生活習慣因子が、将来の結腸直腸癌リスクを高めることが知られている。このため、将来の結腸直腸癌を予測する手法として、生活習慣に起因する分子異常(エピジェネティクス、発現異常)が注目されている。実際に、GWAS(ゲノムワイド関連解析)研究成果等から、結腸直腸癌との関わりが示唆される分子が多数見出されている。
大腸における分子異常を捉える技術として、糞便や血液中の核酸解析技術が開発されてきている。しかしながら、微小病変由来の核酸は非常に微量であり、早期の分子異常を検出することは難しい。特に、大きさが1mm以下の微小病変内の変化が血液中に反映されることは、解析装置の感度の点から見ても困難である。また、糞便中には、多量の腸内細菌の他、病変以外の領域から剥離した上皮細胞も含まれているため、ノイズが多くなる。このため、糞便を検体として早期の結腸直腸癌・結腸直腸腺腫を検出するためには、癌化・腺腫化の早期に、正常組織よりも発現量が増大する優れた分子マーカーが必要である。このため、大腸における早期の分子異常を検出することによって、早期に結腸直腸癌リスクを評価する技術開発は、未だ実現していない。
一方、異常腺窩(ACF)は、発癌物質(アゾキシメタン)を投与したラットの大腸においてメチレンブルーに濃染される微小病変として、1987年にBirdらにより報告された。ACFは、形態学的に検出できる最初の異常形態であり(例えば、非特許文献1参照。)、細胞増殖活性の亢進やK−ras変異が認められたことから、結腸直腸癌や結腸直腸腺腫発症との関わりが示唆されている。ヒト大腸摘出標本においても、同様にメチレンブルーで濃染される病変が癌患者やポリープ患者において認められ、当該病変の数は健常人、ポリープ患者、癌患者の順に多くなることが報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。これらの知見を受けて、結腸直腸癌予防研究の指標としてACFが用いられるケースが増えてきた。
1mm以下の微小ACFは、通常の内視鏡検査により検出することは困難であり、一般的には、拡大内視鏡を用いて検出される。しかしながら、拡大内視鏡検査は作業に長時間を要することから、使用機会が限られており、早期の結腸直腸癌の一次スクリーニングに用いることは難しい。このように、微小ACFを顕微鏡・内視鏡的に検出し、結腸直腸癌リスクを評価する技術開発は実現していなかった。
また、ACFを分子レベルで解析するために、有用なマーカー分子の探索が行われている。具体的には、ACFにおいて発現量が変動する分子として、cyclin D1、COX2(cyclooxygenase 2)、β catenin (catenin, beta1)、iNOS(nitric oxide synthase 2,inducible)、EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)、及びCD44 (CD44 molecule)等が報告されている。但し、いずれも小規模試験からの報告であり、結腸直腸癌とは異なり、ACF病変における分子変動についての大規模試験評価に関する報告は、未だなされていない。
例えば、COX2先行研究(非特許文献3参照。)の例では、大腸全体のサンプルを用いて分子変動を解析しているため、ACFに対する特異性が低く、周辺組織と比較した場合のACFのみにおける分子変動が解析されていなかった。また、cyclinD1先行研究(非特許文献4参照。)やiNOS先行研究(非特許文献5参照。)、CD44先行研究(非特許文献6参照。)では、免疫染色データのみの解析であるため、定量性や特異性に乏しく、医療応用されるまでに至っていない。さらにiNOS先行研究(非特許文献7参照。)やEGFR先行研究(非特許文献8参照。)では、50cryptsという比較的巨大なACFを解析対象としており、早期段階の微小ACF分子変動の解析は行っていない。このように、ACFのマーカー分子として使用できる可能性が示唆されている分子は幾つか知られているものの、いずれも臨床的に利用可能な程度に信頼できるものではない。
つまり、1mm以下の微小ACFに代表される微小病変段階(すなわち、早期)において、発現量が変動する分子を解析し、将来の結腸直腸癌リスクを分子生物学に捉えて、簡便に評価することは、未だ実現できていなかった。
ケロフ(Kelloff)、他39名、2006年、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clinical Cancer Research)、第12巻第12号、第3661〜3697ページ。
タカヤマ(Takayama)、他9名、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)、1998年、第339巻第18号、第1277〜1284ページ。
フィケラ(Fichera)、他12名、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(Journal of Surgical Research)、2007年、第142巻、第239〜245ページ。
ポールセン(Paulsen)、他5名、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2005年、第65巻、第121〜129ページ。
ク(Xu)、他3名、ワールド・ジャーナル・ガストロエンテロロジー(World Journal of Gastroenterology)、2003年、第9巻第6号、第1246〜1250ページ。
ブーン(Boon)、他4名、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2002年、第62巻、第5126〜5128ページ。
タカハシ(Carcinogenesis)、他4名、カルシノジェネシス()、2000年、第21巻第7号、第1319〜1327ページ。
コーヘン(Cohen)、他19名、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2006年、第66巻、第5126〜5128ページ。
本発明は、大腸組織の被検領域を分子レベルで解析することによってACFを検出するための方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、GSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1が、大きさが1mm以下の微小なACFにおいて、正常組織よりも発現量が増大していることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) ACF(異常腺窩)を検出する方法であって、
大腸組織の被検領域中のGSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1からなる群より選択される1種以上のACF特異的発現上昇分子を検出することを特徴とする、ACF検出方法、
(2) 前記被検領域の直径が、0.5mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載のACF検出方法、
(3) 前記被検領域が、ACFであることが疑われる領域を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のACF検出方法、
(4) 前記被検領域中の前記ACF特異的発現上昇分子の量と、前記被検領域と同一の大腸組織内の正常組織領域中の当該ACF特異的発現上昇分子の量とを比較することを特徴とする前記(3)に記載のACF検出方法、
(5) 前記被検領域が、生体から採取された検体であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(6) 前記ACF特異的発現上昇分子の検出を、生体内で行うことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(7) 前記ACF特異的発現上昇分子を蛍光標識することにより検出することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(8) 前記ACF特異的発現上昇分子がmRNA又はタンパク質であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(9) GSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、又はFzd1である、ACF検出用マーカー、
(10) 前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のACF検出方法を用いて、被検者の大腸組織の被検領域中のACFを検出した結果に基づき、当該被検者の結腸直腸癌及び結腸直腸腺腫のリスクを評価する方法、
を提供する。
(1) ACF(異常腺窩)を検出する方法であって、
大腸組織の被検領域中のGSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1からなる群より選択される1種以上のACF特異的発現上昇分子を検出することを特徴とする、ACF検出方法、
(2) 前記被検領域の直径が、0.5mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載のACF検出方法、
(3) 前記被検領域が、ACFであることが疑われる領域を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のACF検出方法、
(4) 前記被検領域中の前記ACF特異的発現上昇分子の量と、前記被検領域と同一の大腸組織内の正常組織領域中の当該ACF特異的発現上昇分子の量とを比較することを特徴とする前記(3)に記載のACF検出方法、
(5) 前記被検領域が、生体から採取された検体であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(6) 前記ACF特異的発現上昇分子の検出を、生体内で行うことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(7) 前記ACF特異的発現上昇分子を蛍光標識することにより検出することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(8) 前記ACF特異的発現上昇分子がmRNA又はタンパク質であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のACF検出方法、
(9) GSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、又はFzd1である、ACF検出用マーカー、
(10) 前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のACF検出方法を用いて、被検者の大腸組織の被検領域中のACFを検出した結果に基づき、当該被検者の結腸直腸癌及び結腸直腸腺腫のリスクを評価する方法、
を提供する。
本発明のACF検出方法により、ACFを分子生物学的な手法を用いて検出することができる。特に、本発明のACF検出方法は、1mm以下の微小ACFをも精度よく検出することができる。
ACFは結腸直腸癌や結腸直腸腺腫の指標とされるから、本発明のACF検出方法は、結腸直腸癌や結腸直腸腺腫の早期検出や、発症リスク評価等にも有用である。
ACFは結腸直腸癌や結腸直腸腺腫の指標とされるから、本発明のACF検出方法は、結腸直腸癌や結腸直腸腺腫の早期検出や、発症リスク評価等にも有用である。
本発明及び本願明細書において、ACF特異的発現上昇分子とは、同一個体中の大腸組織において、周辺の正常組織よりもACFにおいて、遺伝子発現レベルが上昇している分子を意味する。
また、本発明及び本願明細書において、大腸とは、盲腸、結腸、直腸、及び肛門管を含む領域を示し、大腸組織とは、大腸粘膜及び大腸上皮を含む組織を示す。
また、本発明及び本願明細書において、大腸とは、盲腸、結腸、直腸、及び肛門管を含む領域を示し、大腸組織とは、大腸粘膜及び大腸上皮を含む組織を示す。
本発明及び本願明細書において、領域の直径とは、当該領域が円形又は楕円形である場合には、直径(楕円形の場合は長径)を示し、当該領域が円形又は楕円形以外である場合には、当該領域を円形に近似させた場合の近似円の直径、又は当該領域を楕円形に近似させた場合の近似楕円の長径を意味する。
本発明のACF検出方法は、大腸組織の被検領域中のGSTp(glutathione S−transferase pi)、iNOS(NOS2)、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1(Frizzled homolog 1)からなる群より選択される1種以上のACF特異的発現上昇分子を検出することを特徴とする。GSTpは複数のアイソフォームが存在する場合があるが、大腸組織において発現しているアイソフォームであればよく、1種類のアイソフォームのみを検出してもよく、複数のアイソフォームを検出してもよい。これらの6種類のACF特異的発現上昇分子は、いずれも大きさが1mm以下である微小ACFにおいて、周辺正常組織よりも発現量が増大している分子である。このため、これらの6種類のACF特異的発現上昇分子は、いずれもACF検出、特に微小ACF検出のための臨床上有用なマーカー分子であり、これらのACF特異的発現上昇分子の発現量を指標とすることにより、比較的大きなACF(すなわち、形態異常が進行したACF)のみならず、早期の微小なACFをも精度よく検出することができる。
本発明のACF検出方法においては、前記6種類のACF特異的発現上昇分子の少なくとも1種類の分子を検出すればよく、一の被検領域に対して2種類以上の分子を検出してもよい。
ACF特異的発現上昇分子の発現量を検出する被検領域は、大腸組織中の領域であれば特に限定されるものではないが、ACFであることが疑われる領域(被疑ACF領域)を含む領域であることが好ましい。被疑ACF領域としては、例えば、大腸組織中のメチレンブルーによって濃染された領域がある。メチレンブルー染色では、ACF以外の領域も染色されてしまうが、本発明のACF検出方法では、ACF特異的発現上昇分子の発現量を指標とすることにより、メチレンブルー染色よりも精度よくACFを検出することができる。被疑ACF領域としては、その他、内視鏡観察、顕微鏡観察や画像解析等により形態異常が観察されている領域等が挙げられる。
本発明において検出対象とされる6種類のACF特異的発現上昇分子は、いずれも微小ACFにおいても正常組織よりも遺伝子発現レベルが上昇している分子である。このため、本発明において、直径が1mm以下の被疑ACF領域を含む領域を被検領域とすることにより、微小ACFを検出することができる。
本発明のACF検出方法における被検領域の大きさは、特に限定されるものではなく、例えば、被疑ACF領域の大きさ等を考慮して適宜決定することができるが、被検領域に占める被疑ACF領域の割合が高いほうが好ましい。被検領域に占める正常組織領域の割合が高すぎる場合には、当該被疑ACF領域が実際にACFであった場合でも、当該被検領域中のACF特異的発現上昇分子量と正常組織中のACF特異的発現上昇分子量との差が検出し難くなる。例えば、直径が1mm以下の被疑ACF領域を含める場合、被検領域の直径は1mm以下であることが好ましく、1mm未満であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。
本発明のACF検出方法において検出されるACF特異的発現上昇分子は、遺伝子発現量を反映する分子であればよく、mRNAであってもよく、タンパク質であってもよい。すなわち、本発明のACF検出方法は、被検領域中のACF特異的発現上昇分子の情報を、RNAレベルやタンパク質レベルで取得することにより、当該被検領域のACFを検出することができる。
各ACF特異的発現上昇分子の検出方法は、検出結果が被検領域中の各分子の量や濃度に依存する方法であればよく、検体中のmRNAやタンパク質の検出に用いられる公知の方法の中から、適宜選択して用いることができる。中でも、発現解析において用いられている方法で行うことが好ましい。各方法は常法により行うことができる。
被検領域中にACFが含まれている場合には、被検領域中のACF特異的発現上昇分子の量は、大腸組織内の正常組織中よりも多くなる。このため、被検領域中のACF特異的発現上昇分子の量と、大腸組織内の正常組織中のACF特異的発現上昇分子の量とを比較することにより、被検領域中のACFを検出することができる。すなわち、被検領域中のACF特異的発現上昇分子の量が正常組織中よりも多い場合には、当該被検領域中にACFが含まれており、正常組織中とほぼ同等又はそれ以下である場合には、当該被検領域中にはACFが含まれていないと判断することができる。被検領域と正常組織領域とにおけるACF特異的発現上昇分子の量の比較は、各領域の単位表面面積又は単位体積当たりで行ってもよく、各領域に含まれている単位核酸量又は単位タンパク質量当たりで行ってもよい。
本発明においては、同一個体の大腸組織において、被検領域とその周辺の正常組織とを比較することが好ましい。各ACF特異的発現上昇分子の発現量は個体差があるが、同一個体中で比較することにより、個体差による影響を抑えることができる。
用いる検出方法の種類や感度によっては、正常組織ではACF特異的発現上昇分子は検出されず、ACFにおいてのみ検出される場合がある。この場合には、被検領域において当該ACF特異的発現上昇分子が検出された場合には、当該被検領域中にACFが含まれており、当該ACF特異的発現上昇分子が検出されなかった場合には、当該被検領域中にはACFは含まれていない、と判断される。
ACF特異的発現上昇分子がRNAである場合、各ACF特異的発現上昇分子の検出方法としては、各分子に特異的なプライマーを用いた核酸増幅反応を利用した方法や、各分子に特異的なプローブを用いたハイブリダイゼーションを利用した方法等が挙げられる。核酸増幅反応を利用した方法としては、例えば、被検領域に含まれているRNAから逆転写反応によりcDNAを合成した後、得られたcDNAを鋳型としてRT−PCR等の核酸増幅反応を行うことによって、被検領域中のACF特異的発現上昇分子を検出し、若しくは正常組織領域中の量と比較可能な程度に定量的に測定する方法が挙げられる。被検領域からのRNAの抽出、逆転写反応、RT−PCR等の核酸増幅反応は、当該技術分野において公知の手法の中から、適宜選択して行うことができる。
核酸増幅反応を利用した方法においては、蛍光性インターカレーターや、蛍光物質により標識されたプライマー等を用いることにより、増幅されたACF特異的発現上昇分子を蛍光標識し、定量的に検出することができる。一方、ハイブリダイゼーションを利用した方法においては、蛍光物質により標識されたプローブや、ハイブリダイズした場合に初めて蛍光を発するように修飾されたプローブを用いることにより、被検領域中のACF特異的発現上昇分子を蛍光標識し、定量的に検出することができる。
ACF特異的発現上昇分子がタンパク質である場合、各ACF特異的発現上昇分子は、例えば、各分子を特異的に認識する抗体(特異的抗体)を用いた免疫学的手法により検出することができる。具体的には、標識物質により標識した各分子の特異的抗体を、被検領域中の当該分子に結合させた後、当該標識物質からのシグナルを測定することにより、被検領域中のACF特異的発現上昇分子を蛍光標識し、定量的に検出することができる。標識物質による標識は、各分子の特異的抗体に直接標識物質を結合させてもよく、当該特異的抗体に特異的に結合する二次抗体に結合させてもよい。標識物質としては、抗原抗体反応や、2分子の結合の有無を検出する際に一般的に用いられている標識物質の中から適宜選択して用いることができる。このような標識物質としては、例えば、蛍光物質、磁性体、放射性同位体等が挙げられる。高感度であり、かつ安全性が高い点から、蛍光物質を標識物質として用いることが好ましい。抗原抗体反応は、常法により行うことができる。免疫学的手法以外には、例えば、ACF特異的発現上昇分子の活性を示す特異的なプローブを用い、当該プローブを検出することによっても、タンパク質であるACF特異的発現上昇分を検出することができる。
ACF特異的発現上昇分子の検出は、生体から採取された検体に対して行うことができる。例えば、生体の大腸組織の部分領域を外科的に切除して採取された大腸組織切除サンプルから、顕微鏡下で被疑ACF領域を含む被検領域のサンプルを採取することができる。この際、必要に応じて、同一の大腸組織切除サンプルから、正常組織領域、好ましくは被検領域の周辺の正常組織のサンプルを採取する。また、予め生体の大腸組織をメチレンブルー染色し、濃染された領域を含む被検領域を外科的に切除することにより、生体から直接被検領域のサンプル(バイオプシーサンプル)を採取することができる。大腸組織切除サンプルの場合と同様に、被検領域の周辺の正常組織のサンプルも、生体から採取することができる。このようにして採取された被検領域や正常組織領域のサンプルを、ACF特異的発現上昇分子の検出に供する。生体内の大腸組織のメチレンブルー染色は、常法により行うことができる。
ACF特異的発現上昇分子の検出は、生体内で行うこともできる。例えば、ACF特異的発現上昇分子に特異的な標識済みプローブや、直接又は間接的に標識したACF特異的発現上昇分子の特異的抗体、ACF特異的発現上昇分子の活性を示す特異的な標識済みプローブを、生体の大腸内の被検領域を含む領域に塗布又は噴霧し、当該プローブ又は特異的抗体をACF特異的発現上昇分子に結合させてACF特異的発現上昇分子を標識した後に当該標識を検出することにより、ACF特異的発現上昇分子を検出することができる。
生体内においてACF特異的発現上昇分子の検出を行う場合には、ACF特異的発現上昇分子を蛍光標識して検出することが好ましい。具体的には、まず、蛍光物質で標識されたプローブや特異的抗体を用いて被検領域中のACF特異的発現上昇分子を蛍光標識する。その後、分光検出を可能とする内視鏡や消化管ビデオスコープを用いて当該標識から発される蛍光を光学的に検出し、蛍光画像を得る。得られた蛍光画像を解析することにより、ACF特異的発現上昇分子を高感度かつ定量的に検出することができる。
生体内におけるACF特異的発現上昇分子の検出は、蛍光内視鏡を用いることにより、より簡便かつ効率よく行うことができる。より具体的には、例えば、生体の体腔内に少なくとも一部が入れられ、該体腔内の撮影対象の画像を取得する内視鏡システムであって、前記撮影対象内部の特定の物質と結合若しくは反応する感受性蛍光薬剤又は当該撮影対象内部に蓄積される蛍光薬剤を前記撮影対象に向けて吐出する薬剤吐出手段と、該薬剤吐出手段を制御する吐出制御手段と、前記蛍光薬剤を励起させるための励起光および該励起光とは異なる分光特性の照射光を発する光源部と、該光源部からの前記励起光および照射光を前記撮影対象に向けて伝播する光学系と、前記体腔内に入れられる部位に設けられるとともに、前記励起光によって前記撮影対象から放射される蛍光および前記照射光によって前記撮影対象から放射される当該蛍光とは異なる波長帯域の光とを撮影可能な撮像手段とを備える内視鏡システムを用いて行うことができる(特開2007−229054号公報参照。)。蛍光薬剤として、蛍光物質で標識されたACF特異的発現上昇分子に特異的なプローブや特異的抗体を用いればよい。
本発明のACF検出方法において、ACF特異的発現上昇分子の検出に供される試料は、動物の大腸由来であればよく、魚類、鳥類、爬虫類、及び哺乳類のいずれの動物由来の試料であってもよい。本発明においては、哺乳類由来の試料であることが好ましい。例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ等のげっ歯類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、サル等のヒト以外の動物であってもよく、ヒトであってもよい。
被検領域中のACF特異的発現上昇分子の量が正常組織中の量よりも多いかどうかという情報は、被検領域中にACFが存在しているか否かを判断する際に有用である。よって、本発明のACF検出方法により得られた検出結果は、ACF診断のために提供される情報として有用である。
また、本発明における6種類のACF特異的発現上昇分子の発現レベルの上昇はACFの存在を示しており、かつ、ACFは将来結腸直腸癌へと進行する可能性が高いことから、本発明のACF検出方法により得られた検出結果は、結腸直腸癌の存在リスクの判断や、将来の結腸直腸癌発症リスクを早期に、低侵襲に評価する際に、非常に有効な情報である。例えば、本発明のACF検出方法により、被検者の大腸組織において、被検領域中のACF特異的発現上昇分子の量が周辺の正常組織領域中よりも多く、当該被検領域にACFが検出された場合には、当該被験者が将来結腸直腸癌及び結腸直腸腺腫を発症するリスクが高いと評価することができる。逆に、被検領域中のACF特異的発現上昇分子の量が周辺の正常組織領域中と同等若しくは少なく、当該被検領域にACFが検出されなかった場合には、当該被験者が将来結腸直腸癌及び結腸直腸腺腫を発症するリスクが低いと評価することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
GSTp1、iNOS(NOS2)、CD44、EGFR、Fzd1、Cdh1(Cadherin 1)、Ctsb(Cathepsin B)、PCNA(proliferating cell nuclear antigen)、Ctnnb1(Catenin beta)、Met(met proto−oncogene)、及びCOX2の全11種類の候補分子に対して、同一個体中の周辺正常組織と被疑ACF領域とにおける遺伝子発現レベルを比較し、これらの候補分子群のうちACF特異的に遺伝子発現レベルが上昇している分子を同定した。
具体的には、アゾキシメタン(AOM)投与により大腸組織内にACFを形成させたラットから採取された大腸組織切除サンプルから、顕微鏡下でACF部位であることを確認した領域のみを採取したサンプルと、その周辺の正常組織領域のみを採取したサンプルとをそれぞれ調製し、各サンプル中の各分子の発現量を測定し、比較した。より詳細に、下記に示す。
GSTp1、iNOS(NOS2)、CD44、EGFR、Fzd1、Cdh1(Cadherin 1)、Ctsb(Cathepsin B)、PCNA(proliferating cell nuclear antigen)、Ctnnb1(Catenin beta)、Met(met proto−oncogene)、及びCOX2の全11種類の候補分子に対して、同一個体中の周辺正常組織と被疑ACF領域とにおける遺伝子発現レベルを比較し、これらの候補分子群のうちACF特異的に遺伝子発現レベルが上昇している分子を同定した。
具体的には、アゾキシメタン(AOM)投与により大腸組織内にACFを形成させたラットから採取された大腸組織切除サンプルから、顕微鏡下でACF部位であることを確認した領域のみを採取したサンプルと、その周辺の正常組織領域のみを採取したサンプルとをそれぞれ調製し、各サンプル中の各分子の発現量を測定し、比較した。より詳細に、下記に示す。
5匹のF344/Nラット(雄、4週齢)を1週間の馴化後、AOM皮下投与(15mg/kg)を週1回、3週に渡り実施した。最終投与から11週〜14週にかけて、それぞれのラットから大腸を摘出し、ACFのサンプリングを実施した。具体的には、摘出したラット大腸を冷PBSで洗浄して内容物を除去し、縦方向に開いた後、60%メタノール/10%酢酸を用いて固定した。固定後、大腸粘膜表層を0.2%メチレンブルーで染色した。染色されたラット大腸から、顕微鏡下でACF部位であることが確認された部位を含む領域をACFサンプルとして採取した。この際、大きさが1mm以下の微小ACFを選択して採取した。同時にコントロールサンプルとして周辺の正常組織を採取した。2匹のラット(ラット1及び2)からは市販されている最小サイズの生検器具(直径1mm)を用いて、残る3匹のラット(ラットA〜C)からは自作した直径0.5mm未満の生検器具を用いて、ACFサンプル及びコントロールサンプルの採取を行った。
得られたACFサンプル及びコントロールサンプルから、PAXgene Tissue RNA kit(QIAGEN社製)を用いてトータルRNAを抽出し、バイオアナライザー(Agilent社製)を用いて品質確認を行った。RIN7以上のRNA(5ng)を添加した反応溶液(最終容量20μL)中で、37℃で60分間のRT反応を行い、cDNAを合成した。前増幅反応として、得られたcDNAを鋳型とし、各候補分子を増幅するためのプライマーセットを用いて、サイクル数の少ない前増幅反応を行った。プライマーセットは、表1に記載の市販のもの(アプライドバイオシステムス社製)をそれぞれ用いた。具体的には、10μLのRT反応後の反応溶液と、事前に各プライマーセットを混合した溶液12.5μL、25μLの核酸増幅試薬(Taqman Gene Expression Master Mix、アプライドバイオシステムズ社製)、2.5μLの超純水をそれぞれ添加して、最終容量50μLの反応溶液を調製した。各反応溶液をPCR装置(エッペンドルフ社製)にセットし、95℃で10分間の熱処理を行った後、95℃で15秒間、60℃で4分間の熱反応を14サイクル行った。反応後、反応液を20倍に希釈したものを、リアルタイムPCRサンプルとして供した。
前増幅を行ったcDNAを鋳型として、リアルタイムPCRを実施し、各候補分子の発現産物(mRNA)の検出を行った。具体的には、0.2mLの96ウェルプレートに、前増幅反応後の各cDNAを5μLずつ分注した後、各ウェルに4μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬(Taqman Gene Expression Master Mix、アプライドバイオシステムズ社製)、1μLのプライマープローブセットを添加し、PCR反応溶液を調整した。この96ウェルプレートをリアルタイムPCR装置(アプライドバイオシステムズ社製)にセットし、50℃で2分間、95℃で10分間の熱処理を行った後、95℃で15秒間、60℃で1分間の熱反応を40サイクル行い、経時的に蛍光強度を測定した。
蛍光強度の計測結果を分析し、各サンプルから回収されたRNA中の候補分子の遺伝子発現量を算出した。コントロールサンプルにおける遺伝子発現量を1とし、同一個体から採取されたACFサンプルにおける遺伝子発現量の相対値を算出した。候補分子ごとの算出結果を図1〜11にそれぞれ示す。各図中、(A)は自作した直径0.5mm未満の生検器具を用いてサンプリングしたものの結果であり、(B)は市販の直径1mmの生検器具を用いてサンプリングしたものの結果である。また、各図中、「X−con」はラットXのコントロールサンプルの結果であり、「X−ACF」はラットXのACFサンプルの結果である。また、ACFサンプルの発現量相対値が1.3以上を示したサンプルを「*」で示した。
この結果、同一個体中の周辺正常組織における発現量とACFにおける発現量とを比較したところ、直径0.5mm未満の生検器具を用いてサンプリングした場合には、GSTp1、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1の6種類の分子では、ラット3個体全てにおいて、ACF病変(ACFサンプル)では、周辺正常組織(コントロールサンプル)と比較し、発現量が増大していた。つまり、これらの6種類の分子は、ACF特異的に遺伝子発現レベルが上昇していることが分かった。
一方で、直径1mmの生検器具を用いてサンプリングした場合には、ACF病変と周辺正常組織において、遺伝子発現量に差が認められなかった。これらの結果から、1mm以下の微小ACFを検出する場合には、従来法より小さな、直径0.5mm未満の生検器具を用いてサンプルを採取した場合においてのみ、ACF特異的な遺伝子発現解析が可能となることが示唆された。
[実施例2]
実施例1において、ACF病変特異的に発現量が増大していることが観察されたGSTp1、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1の6種類の分子について、各分子に特異的に反応する蛍光プローブをそれぞれ作製し、各蛍光プローブについて、同一個体中の周辺正常組織と被疑ACF領域とにおける反応性を比較した。
具体的には、アゾキシメタン(AOM)投与により大腸組織内にACFを形成させたラットから摘出された大腸切除組織に、上述した蛍光プローブを散布し、実体顕微鏡下でACF部位を確認すると共に、蛍光顕微鏡下で蛍光観察を行った。より詳細に、下記に示す。なお、GSTp1については、GSTpの全てのアイソフォームに反応する蛍光プローブを用いた。
実施例1において、ACF病変特異的に発現量が増大していることが観察されたGSTp1、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1の6種類の分子について、各分子に特異的に反応する蛍光プローブをそれぞれ作製し、各蛍光プローブについて、同一個体中の周辺正常組織と被疑ACF領域とにおける反応性を比較した。
具体的には、アゾキシメタン(AOM)投与により大腸組織内にACFを形成させたラットから摘出された大腸切除組織に、上述した蛍光プローブを散布し、実体顕微鏡下でACF部位を確認すると共に、蛍光顕微鏡下で蛍光観察を行った。より詳細に、下記に示す。なお、GSTp1については、GSTpの全てのアイソフォームに反応する蛍光プローブを用いた。
5匹のF344/Nラット(雄、4週齢)を1週間の馴化後、AOM皮下投与(15mg/kg)を週1回、3週に渡り実施した。最終投与から7週〜10週にかけて、それぞれのラットから大腸を摘出し、蛍光プローブ評価を実施した。具体的には、摘出したラット大腸を冷PBSで洗浄して内容物を除去し、縦方向に開いた後、各分子特異的に反応する蛍光プローブを散布した。染色されたラット大腸を蛍光顕微鏡下で観察し、被疑ACF領域における反応(蛍光強度)を確認すると共に、実体顕微鏡下で同領域のACF病変を確認した。同時に、PBSを皮下投与したコントロール群についても同様の観察を実施した。使用した蛍光プローブは、参考文献A(JACS 2008,vol.130,p14533〜14543)又は参考文献B(WO2007/149456号パンフレット)に記載されているものの他、市販されている抗体を蛍光ラベルしたものを用いた。
蛍光染色画像及び蛍光強度解析の結果を図12〜15に示す。図12(A)は、参考文献Aに記載されているGSTp特異的蛍光プローブの蛍光染色画像を、図12(B)は図12(A)と同一視野の白色観察像(透過光画像)を示す。図12(B)の透過光画像は、組織片以外の部位を、画像処理により黒塗りした。また、図12(A)及び(B)中、矢印で示した箇所は、組織片を固定したピンの位置を示す。図12(A)のAOMラットの蛍光染色画像中、2つのACF部位(蛍光プローブで強く染色されている2領域)については、拡大画像を透過光画像とともに示した。図13は、図12のAOMラットの蛍光染色画像中のACF部位の蛍光強度と、該ACF部位と同じ面積の正常組織領域の蛍光強度とを、画像解析により解析した結果を示す。図14は、参考文献Bに記載されているCOX2特異的蛍光プローブの蛍光染色画像を示す。図14(A)はAOMラットの蛍光染色画像であり、図14(B)は正常ラットの蛍光染色画像である。図14(A)のAOMラットの蛍光染色画像中、ACF部位(蛍光プローブで強く染色されている領域)の拡大画像も示した。図15は、図14(A)のAOMラットの蛍光染色画像中のACF部位の蛍光強度と、該ACF部位と同じ面積の正常組織領域の蛍光強度とを、画像解析により解析した結果を示す。さらに、図16に、市販されている抗GSTp抗体を用いて行ったAOMラットの免疫染色画像を示す。図16(A)はHE染色画像であり、図16(B)は、図16(A)と同組織ブロックの連続切片に対して抗GSTp抗体による免疫染色画像である。図16(A)のHE染色画像の中心に存在する比較的強く染色されている領域がACF部位である。
この結果、同一個体中のACF部位における蛍光強度は、周辺正常組織における蛍光強度に比べ、相対値が1.4以上と明らかに高いことが観察された(図13、15)。また、正常ラット(コントロール群)においては、AOMラットで認められたようなシグナル部位は認められなかった(図14)。さらにAOMラットにおいてHE染色により確認されたACF部位のタンパク発現を免疫染色で確かめたところ、周辺正常部位と比較して強く染色されていることが確認された(図16)。これらの結果から、ACF部位において、周辺正常部位よりもGSTpがより多く発現していることが明らかである。
本発明のACF検出方法により、ACFを分子生物学的手法により精度よく検出することができるため、学術研究のみならず、結腸直腸癌・結腸直腸腺腫診断のための臨床検査等の分野において利用が可能である。
Claims (10)
- ACF(異常腺窩)を検出する方法であって、
大腸組織の被検領域中のGSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、及びFzd1からなる群より選択される1種以上のACF特異的発現上昇分子を検出することを特徴とする、ACF検出方法。 - 前記被検領域の直径が、0.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のACF検出方法。
- 前記被検領域が、ACFであることが疑われる領域を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のACF検出方法。
- 前記被検領域中の前記ACF特異的発現上昇分子の量と、前記被検領域と同一の大腸組織内の正常組織領域中の当該ACF特異的発現上昇分子の量とを比較することを特徴とする請求項3に記載のACF検出方法。
- 前記被検領域が、生体から採取された検体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のACF検出方法。
- 前記ACF特異的発現上昇分子の検出を、生体内で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のACF検出方法。
- 前記ACF特異的発現上昇分子を蛍光標識することにより検出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のACF検出方法。
- 前記ACF特異的発現上昇分子がmRNA又はタンパク質であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のACF検出方法。
- GSTp、iNOS、CD44、EGFR、COX2、又はFzd1である、ACF検出用マーカー。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のACF検出方法を用いて、被検者の大腸組織の被検領域中のACFを検出した結果に基づき、当該被検者の結腸直腸癌及び結腸直腸腺腫のリスクを評価する方法。
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