JPWO2011078030A1 - クロメン化合物 - Google Patents
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Abstract
発色時の色調が中間色を示し、初期着色が小さく、発色濃度が高く、退色速度が速く、良好な耐久性を有する新規なフォトクロミック化合物を提供する。フォトクロミック化合物は、構造式(1)で表わされるインデノ(2,1-f)ナフト(1,2-b)ピラン構造を基本骨格とするクロメン化合物であって、ピラン構造の5〜12位の炭素原子の1つが、ピラン構造の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及び前記ピラン構造の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる置換基を、炭素‐炭素結合を介して有する。【化1】
Description
本発明は、フォトクロミッククロメン化合物、その用途及び中間体に関する。さらに詳しくはフォトクロミック眼鏡レンズ用のフォトクロミック化合物として有用な新規なクロメン化合物、その用途及び中間体に関する。
フォトクロミズムとは、ある化合物に、太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射を止めて、暗所に置かれると、元の色に戻る可逆作用のことである。この性質を有する化合物はフォトクロミック化合物と呼ばれ、フォトクロミックプラスチックレンズの材料として使用されている。
このような用途に使用されるフォトクロミック化合物においては、
(I)紫外線を照射する前の可視光領域での着色度(以下、「初期着色」という)が小さいこと、
(II)紫外線を照射した時の着色度(以下、「発色濃度」という)が高いこと、
(III)紫外線を照射し始めてから発色濃度が飽和に達するまでの速度(以下、「発色感度」という)が速いこと、
(IV)紫外線の照射を止めてから元の状態に戻るまでの速度(以下、「退色速度」という)が速いこと、
(V)この可逆作用の繰り返し耐久性(以下、単に「繰り返し耐久性」又は「耐久性」という)がよいこと、及び
(VI)使用されるホスト材料への分散性が高くなるように、硬化後にホスト材料となるモノマー組成物に高濃度で溶解すること
といった特性が求められている。
(I)紫外線を照射する前の可視光領域での着色度(以下、「初期着色」という)が小さいこと、
(II)紫外線を照射した時の着色度(以下、「発色濃度」という)が高いこと、
(III)紫外線を照射し始めてから発色濃度が飽和に達するまでの速度(以下、「発色感度」という)が速いこと、
(IV)紫外線の照射を止めてから元の状態に戻るまでの速度(以下、「退色速度」という)が速いこと、
(V)この可逆作用の繰り返し耐久性(以下、単に「繰り返し耐久性」又は「耐久性」という)がよいこと、及び
(VI)使用されるホスト材料への分散性が高くなるように、硬化後にホスト材料となるモノマー組成物に高濃度で溶解すること
といった特性が求められている。
このような要求を満足し得るフォトクロミック化合物としては、構造式(1)
のインデノ(2,1-f)ナフト(1,2-b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
のインデノ(2,1-f)ナフト(1,2-b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
フォトクロミック化合物を利用したフォトクロミックプラスチックレンズは、グレー、ブラウン等の中間色に発色することが好まれている。このような中間色は、発色時の色調の異なる数種類のフォトクロミック化合物を混合することにより得られる。具体的には、430〜530 nmに極大吸収を有する黄色〜赤色のフォトクロミック化合物(黄色化合物)と、550〜650 nmに極大吸収を有する紫色〜青色のフォトクロミック化合物(青色化合物)とを混合している。
しかし、このような方法で色調調節を行なった場合には、混合された化合物のフォトクロミック物性の違いにより、種々の問題が生じる。例えば、黄色化合物の繰り返し耐久性が青色化合物と比較して低い場合、長期にわたって使用していくと、発色色調が徐々に青色の強い色調へと変化してしまうという問題が発生していた。
また、黄色化合物の発色感度及び退色速度が青色化合物と比べて低い場合、発色途中の色調は青味が強く、退色途中の色調は黄色味が強いものとなる等の問題が発生していた。
このような問題は、光照射時に2つ以上の吸収極大を有し、且つ単一の化合物で中間色に発色する化合物(ダブルピーク化合物)を使用することにより解決できると考えられる。一般的に、黄色化合物の方が、青色化合物よりも耐久性に劣ることが知られている。そのため、ダブルピーク化合物においては、黄色(430〜530 nmに最大吸収波長を有する)の発色濃度が、青色(550〜650 nmに最大吸収波長を有する)の発色濃度よりも、より高くなる化合物が望まれている(以下、ダブルピーク化合物において、青色発色濃度に対する黄色発色濃度の比をダブルピーク性とする場合もある)。
これまで、光照射時に2つ以上の吸収極大を有するフォトクロミック化合物(ダブルピーク化合物)は、下記式(A)〜(C)に示すような化合物が知られている。
しかし、これら化合物は、次の点で改善の余地があった:
すなわち、構造式(A)
を有するクロメン化合物(特許文献3参照)は、ダブルピーク性は高いものの、退色速度が遅い上、繰り返し耐久性が低いという問題があった。
すなわち、構造式(A)
を有するクロメン化合物(特許文献3参照)は、ダブルピーク性は高いものの、退色速度が遅い上、繰り返し耐久性が低いという問題があった。
本発明は、中間色に発色し、初期着色が小さく、発色濃度が高く、退色速度が速く、且つ劣化時の着色が少なく、繰り返し使用した場合の発色濃度の低下が少なく(フォトクロミック性の耐久性に優れた)、光学物品の基材となるモノマー組成物に高濃度で溶解し得るクロメン化合物を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、本発明のクロメン化合物の製法を提供することにある。
本発明の他の目的は、本発明のクロメン化合物及び重合性単量体を含んでなるフォトクロミック硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、本発明のクロメン化合物が内部に分散している高分子成型体を構成部材として有するフォトクロミック光学物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明のクロメン化合物の製造における中間体である新規なナフトール誘導体を提供することにある。
これまでに、インデノ(2,1-f)ナフト(1,2-b)ピラン骨格(以下、単に「ピラン骨格」という)の6位及び7位に電子供与性の高い置換基が結合した化合物が、高いダブルピーク性を発現することが知られている。ここでいう電子供与性の高い置換基とは、具体的には、酸素原子もしくは窒素原子で6位及び7位に結合する置換基である。しかしながら、上記の化合物は、ダブルピーク性は高いものの、基本的に退色速度が遅く、光未照射における室温での熱による発色(以下、この発色をサーモクロミズムによる初期着色という。)が大きく、さらに耐久性も低いという欠点を有している。特に、6位及び7位の置換基の電子供与性をさらに高くした場合に、上記の欠点についてその程度が大きくなる。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、上記構造式(1)のピラン骨格の5〜12位の炭素原子の少なくとも1つの炭素原子に、電子供与性があまり高くなく、立体的に嵩高い置換基を導入することにより、発色濃度の高さ、退色速度の速さ等の種々の特性を維持したまま、サーモクロミズムによる初期着色が小さく、高いダブルピーク性を示すクロメン化合物が得られることを見出し、本発明に至った。
このような電子供与性があまり高くなく、立体的に嵩高い置換基は、ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及びピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる。
本発明によるクロメン化合物が発色濃度の高さ、退色速度の速さ等の種々の特性を維持したまま、サーモクロクロミズムによる初期着色が小さく、高いダブルピーク性を示す理由は定かではないが、5〜12位の炭素原子の少なくとも1つの炭素原子に、このような電子供与性があまり高くなく、立体的に嵩高い置換基を導入することで、導入された5〜12位の置換基とピラン骨格との間の何らかの立体的な相互作用により、予測し得ない効果が達成されるものと推察される。
このように、本発明の第1の目的は、上記構造式(1)のインデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格を基本骨格として有するクロメン化合物であって、前記インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の5〜12位の炭素原子の少なくとも1つが、前記インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及び前記インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる置換基を、炭素‐炭素結合を介して有していることを特徴とするクロメン化合物にある。
本発明の第2の目的は、前記クロメン化合物の製法にある。
本発明の第3の目的は、前記クロメン化合物と重合性単量体とを含有するフォトクロミック硬化性組成物にある。
本発明の第4の目的は、その内部に前記クロメン化合物が分散した高分子成型体を、構成部材として有するフォトクロミック光学物品にある。
さらに、本発明の第5の目的は、少なくとも1つの面の全部又は一部が、前記クロメン化合物が分散している高分子膜で被覆された光学基材を、構成部材とする光学物品にある。
さらに、本発明の第6の目的は、本発明のクロメン化合物を製造するための原料化合物であるナフトール化合物にある。
本発明のクロメン化合物は、発色時の色調が中間色を示し、初期着色が小さく、発色濃度が高く、さらに、溶液中又は高分子固体マトリックス中に分散させても速い退色速度を示し、加えて、優れた耐久性を示す。
従って、例えば、本発明のクロメン化合物を用いてフォトクロミックレンズを作製する場合、屋内では透明性が高く、屋外へ出た時に、すばやく濃い中間色に発色すると共に、屋外から室内に戻った時には、すばやく退色して、元の色調に戻り、さらに、長時間の使用が可能な耐久性の高いフォトクロミックレンズを製造できる。
本発明のクロメン化合物は、上記構造式(1)のインデノ(2,1-f)ナフト(1,2-b)ピラン構造を基本骨格として有し、ピラン骨格の5〜12位の炭素原子の少なくとも1つの炭素原子が、ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及びピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる置換基を、炭素‐炭素結合を介して有するものであり、優れたフォトクロミック特性を維持しつつ、単一化合物で濃く中間色に発色することが可能である。
なお、脂肪族複素環を有する置換基において、ピラン骨格の炭素原子と脂肪族複素環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子とが結合する場合には、ヘテロ原子の原子価が2〜3であるため、原子価が4である炭素と比較して、炭素原子と結合する側の原子が立体的に小さくなる。このことが原因であると考えられるが、得られるクロメン化合物は、初期着色が大きくなる傾向にある。
また、芳香族環を有する置換基において、ピラン骨格の炭素原子と芳香族環の炭素原子とが結合する場合には、ピラン骨格の共役が伸びることが原因であると推定されるが、得られるクロメン化合物は、初期着色が大きくなる傾向にあり、ダブルピーク性をより高くできない傾向にある。
これらの置換基について詳述する。
脂環式環に脂環式環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が4〜20である縮合多環基が好ましく、炭素数が7〜20である縮合多環基が特に好ましい。脂環式環に脂環式環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ビシクロ[2,2,2]オクタン環、ビシクロ[3,2,1]オクタン環、ビシクロ[3,3,1]ノナン環、ビシクロ[4,3,0]ノナン環等のようなビシクロ環の基、及び例えば、1‐アダマンタン環、2‐アダマンタン環等のようなトリシクロ環の基が挙げられる。
脂環式環に脂環式環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が4〜20である縮合多環基が好ましく、炭素数が7〜20である縮合多環基が特に好ましい。脂環式環に脂環式環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ビシクロ[2,2,2]オクタン環、ビシクロ[3,2,1]オクタン環、ビシクロ[3,3,1]ノナン環、ビシクロ[4,3,0]ノナン環等のようなビシクロ環の基、及び例えば、1‐アダマンタン環、2‐アダマンタン環等のようなトリシクロ環の基が挙げられる。
脂環式環に脂肪族複素環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が3〜20である縮合多環基が好ましく、炭素数が6〜20である縮合多環基が特に好ましい。脂環式環に脂肪族複素環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、アザビシクロ[2,2,2]オクタン環、アザビシクロ[3,2,1]オクタン環、アザビシクロ[3,3,1]ノナン環、オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、オキサビシクロ[2,2,2]オクタン環、オキサビシクロ[3,2,1]オクタン環、オキサビシクロ[3,3,1]ノナン環、チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、チアビシクロ[2,2,2]オクタン環、チアビシクロ[3,2,1]オクタン環、チアビシクロ[3,3,1]ノナン環等のようなビシクロ環の基、及び例えば、1‐アザアダマンタン環、2‐アザアダマンタン環、1‐オキサアダマンタン環、1‐チアアダマンタン環等のようなトリシクロ環の基が挙げられる。
脂環式環に芳香族環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が7〜30である縮合多環基が好ましい。脂環式環に芳香族環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、ベンゾシクロプロパン環基、ベンゾシクロブタン環基、ベンゾシクロペンタン環基、ベンゾシクロへキサン環基、ベンゾシクロヘプタン環基、ベンゾシクロオクタン環基等が挙げられる。
脂環式環に芳香族複素環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が6〜30である縮合多環基が好ましい。脂環式環に芳香族複素環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、3,4‐シクロペンテノピリジン環基、3,4‐シクロヘプテノピリジン環基、3,4‐シクロオクテノピリジン環基等が挙げられる。
脂肪族複素環に脂環式環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が3〜20である縮合多環基が好ましく、炭素数が6〜20である縮合多環基が特に好ましい。脂肪族複素環に脂環式環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、アザビシクロ[4,3,0]ノナン環基、オキサビシクロ[4,3,0]ノナン環基、ヘプタヒドロシクロヘキサ[c]チオフェン環基等が挙げられる。
脂肪族複素環に脂肪族複素環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が3〜20である縮合多環基が好ましく、炭素数が6〜20である縮合多環基が特に好ましい。脂肪族複素環に脂肪族複素環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、例えば、ジアザビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン環、ジアザビシクロ[3,2,1]オクタン環、ジアザビシクロ[3,3,1]ノナン環、ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン環、ジオキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ジオキサビシクロ[2,2,2]オクタン環、ジオキサビシクロ[3,2,1]オクタン環、ジオキサビシクロ[3,3,1]ノナン環、ジオキサビシクロ[4,3,0]ノナン環、ジチアビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ジチアビシクロ[2,2,2]オクタン環、ジチアビシクロ[3,2,1]オクタン環、ジチアビシクロ[3,3,1]ノナン環のようなビシクロ環の基、及び例えば、2,4,10‐トリアザトリシクロ[3,3,1,13,7]デカン等のトリシクロ環の基が挙げられる。
脂肪族複素環に芳香族環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が7〜30である縮合多環基が好ましい。脂肪族複素環に芳香族環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、2‐インドリン環基、2‐クマラン環基、2,3‐ジヒドロベンゾ[c]チオフェン環基等が挙げられる。
脂肪族複素環に芳香族複素環が縮環した縮合多環基としては、特に制限されないが、環を構成する炭素数が6〜30である縮合多環基が好ましい。脂肪族複素環に芳香族複素環が縮環した縮合多環基の好適な例を示すと、2,3‐ジヒドロピロロ[2,3‐b]ピリジン環基、2,3‐ジヒドロフロ[2,3‐b]ピリジン環基、2,3‐ジヒドロチエノ[2,3‐b]ピリジン環基、4,6‐ジヒドロフロ[3,4‐b]フラン基、4,6‐ジヒドロチエノ[3,4‐b]チオフェン基等を挙げることができる。
なお、脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、又は脂肪族複素環に脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基は、それ自体、置換されていてもよい。
脂環式環に脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、又は脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基が有し得る置換基について詳述すれば、当該置換基としては、ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子が炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基が挙げられる。
ここで、アルキル基は、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。
好適なアルキル基を例示すれば、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
好適なアルキル基を例示すれば、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
ハロアルキル基は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子で置換された炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基を例示すれば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロメチル基、2‐クロロエチル基、ブロモメチル基等を挙げることができる。
シクロアルキル基は、特に制限されないが、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましい。好適なシクロアルキル基を例示すれば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
アルコキシ基は、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を例示すれば、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、tert‐ブトキシ基等を挙げることができる。
アミノ基は、未置換又は置換されたアミノ基である。アミノ基が有し得る置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8アルコキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、1‐ナフチル基、2‐ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基等の炭素数4〜12のヘテロアリール基等が挙げられる(アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基の具体例は、上記の置換基で説明した基と同様である)。好適なアミノ基を例示すれば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
窒素原子を含み、該窒素原子が炭素原子と直接結合する複素環基は、特に制限されないが、好適なものを例示すれば、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N−メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることができる。さらに、該複素環基は、炭素数1〜8のアルキル基を置換基として有してもよく、具体的な置換基としては、メチル基等のアルキル基を挙げることができる。置換基を有する複素環基のうち、好適なものを例示すると、2,6‐ジメチルモルホリノ基、2,6‐ジメチルピペリジノ基、2,2,6,6‐テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
アルキルカルボニル基は、特に制限されないが、好適なものを例示すれば、アセチル基、エチルカルボニル基等を挙げることができる。
アルコキシカルボニル基は、特に制限されないが、好適なものを例示すれば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等を挙げることができる。
ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
アラルキル基は、特に制限されないが、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すれば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
アリール基は、特に制限されないが、炭素数6〜14のアリール基が好ましい。好適なアリール基を具体的に例示すれば、フェニル基、1‐ナフチル基、2‐ナフチル基等を挙げることができる。
アラルコキシ基は、特に制限されないが、炭素数7〜11のアラルコキシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を具体的に例示すれば、ベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基等を挙げることができる。
アリールオキシ基は、特に制限されないが、炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましい。好適なアリールオキシ基を例示すれば、フェノキシ基、1‐ナフトキシ基、2‐ナフトキシ基等を挙げることができる。
本発明のクロメン化合物において、ピラン骨格の5〜12位の炭素原子が有し得る置換基の中でも、初期着色が小さく、ダブルピーク性が高い化合物が得られるという点で好ましい基を例示すれば、脂環式環に脂環式環、脂肪族複素環又は芳香族環が縮環した縮合多環基、又は脂肪族複素環に脂環式環が縮環した縮合多環基が挙げられる。
本発明のクロメン化合物において、ピラン骨格の5〜12位の炭素原子が有し得る縮合多環基は、アルコキシ基より電子供与性が低く、立体的に嵩高い置換基である。本発明のクロメン化合物は、このような立体的に嵩高い置換基の中でも、得られるクロメン化合物が以下のような形態となる置換基を有することが好ましい。
ピラン骨格の5〜8位に置換基が存在しない場合のクロメン化合物は、MOPACPM3による分子軌道計算において、ピラン骨格の5〜8位の炭素原子を含むベンゼン環は平面上にあり、5〜8位の炭素原子が形成する二面角は0°となる。これに対し、本発明のクロメン化合物においては、ピラン骨格の5位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の8位、5位、7位の炭素原子と8位、6位、7位の炭素原子とが形成する二面角を0.3°以上とする置換基であることが好ましく、さらに0.5°以上とする置換基であることが好ましく、特に1.0°以上とする置換基であることが好ましい。また、ピラン骨格の6位又は7位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の5位、6位、8位の炭素原子と5位、7位、8位の炭素原子とが形成する二面角を0.3°以上とする置換基であることが好ましく、さらに0.5°以上とする置換基であることが好ましく、特に1.0°以上とする置換基であることが好ましい。さらに、ピラン骨格の8位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の6位、7位、5位の炭素原子と6位、8位、5位の炭素原子とが形成する二面角を0.3°以上とする置換基であることが好ましく、さらに0.5°以上とする置換基であること好ましく、特に1.0°以上とする置換基であることが好ましい。
ピラン骨格の5〜8位に置換基が存在しない場合のクロメン化合物は、MOPACPM3による分子軌道計算において、ピラン骨格の5〜8位の炭素原子を含むベンゼン環は平面上にあり、5〜8位の炭素原子が形成する二面角は0°となる。これに対し、本発明のクロメン化合物においては、ピラン骨格の5位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の8位、5位、7位の炭素原子と8位、6位、7位の炭素原子とが形成する二面角を0.3°以上とする置換基であることが好ましく、さらに0.5°以上とする置換基であることが好ましく、特に1.0°以上とする置換基であることが好ましい。また、ピラン骨格の6位又は7位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の5位、6位、8位の炭素原子と5位、7位、8位の炭素原子とが形成する二面角を0.3°以上とする置換基であることが好ましく、さらに0.5°以上とする置換基であることが好ましく、特に1.0°以上とする置換基であることが好ましい。さらに、ピラン骨格の8位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の6位、7位、5位の炭素原子と6位、8位、5位の炭素原子とが形成する二面角を0.3°以上とする置換基であることが好ましく、さらに0.5°以上とする置換基であること好ましく、特に1.0°以上とする置換基であることが好ましい。
本発明のクロメン化合物において、置換基がピラン骨格の5〜8位の炭素原子上に存在する場合、ダブルピーク性をより高めるためには、上記置換基は、ピラン骨格の6位又は7位の炭素原子に結合することが好ましい。
また、ピラン骨格の9〜12位に置換基が存在しない場合のクロメン化合物は、MOPACPM3による分子軌道計算において、ピラン骨格の9〜12位の炭素原子を含むベンゼン環は平面上にあり、9〜12位の炭素原子が形成する二面角は0°である。これに対し、本発明のクロメン化合物においては、ピラン骨格の9位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の12位、9位、11位の炭素原子と12位、10位、11位の炭素原子とが形成する二面角を1.0°以上とする置換基であることが好ましく、さらに1.3°以上とする置換基であることが好ましく、特に1.5°以上とする置換基であることが好ましい。また、ピラン骨格の10位又は11位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の9位、10位、12位の炭素原子と9位、11位、12位の炭素原子とが形成する二面角を1.0°以上とする置換基であることが好ましく、さらに1.3°以上とする置換基であることが好ましく、特に1.5°以上とする置換基であることが好ましい。さらに、ピラン骨格の12位の炭素原子が上記縮合多環基を置換基として有する場合、該縮合多環基の中でも、ピラン骨格の10位、11位、9位の炭素原子と10位、12位、9位の炭素原子とが形成する二面角を1.0°以上とする置換基であることが好ましく、さらに1.3°以上とする置換基であることが好ましく、特に1.5°以上とする置換基であることが好ましい。
本発明のクロメン化合物において、置換基がピラン骨格の9〜12位の炭素原子上に存在する場合、ダブルピーク性をより高めるためには、置換基が9位又は12位の炭素原子に結合することが好ましい。
上記のような二面角を満足するための好ましい基を具体的に例示すれば、ビシクロ[2,2,2]オクタン環基、1‐アダマンタン環基、2‐アダマンタン環基、アザビシクロ[2,2,2]オクタン環基、アザビシクロ[4,3,0]ノナン環基、1‐アザアダマンタン環基等が挙げられる。さらに、ダブルピーク性が高く、初期着色が小さいという点で特に好ましい基を例示すれば、脂環式環に脂環式環が縮環した縮合多環基が挙げられる。特に好ましい基を具体的に例示すると、ビシクロ[2,2,2]オクタン環基、1-アダマンタン環基、2-アダマンタン環基等が挙げられる。
なお、MOPACPM3による分子軌道計算とは、分子軌道法(MO)の一つである。分子軌道法は分子の電子状態を論ずる近似法のひとつであり、Huckel法などの経験的方法、Huckel法の近似を高めた半経験的方法、厳密に計算のみで分子軌道関数を求める非経験的方法の3つに大別できる。近年、コンピュータの発達に伴い、半経験的方法及び非経験的方法が主な方法になっている。分子軌道法は、分子構造と、その化学反応性とを関係づける最も有力な方法の一つである。MOPACPM3は、前記半経験的方法の一つであるNDDO(Neglect of Diatomic Differential Overlap)法の核をなす方法である。MOPACPM3は、主として有機化合物の反応、物性について考察する目的で用いられており、多くの文献や書籍[「分子軌道法MOPACガイドブック」(平野恒夫、田辺和俊偏、海文堂、1991年)、「三訂・量子化学入門」(米沢貞次郎他著、化学同人、1983年)、「計算化学ガイドブック」(大澤映二他訳、Tim Clark著、丸善、1985年)]などで解説されている。
さらに詳述すれば、本発明に係るクロメン化合物は、下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
〔式中、
R1及びR2は、インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及びピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる基であって、炭素‐炭素結合を介してインデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格に結合する基であり、
R1'及びR2'は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であり、
R4及びR5は、それぞれ独立に、一般式(3)
(式中、R8は、アリール基、又はヘテロアリール基であり;R9は、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子であり;mは1〜3の整数である)で表される基、一般式(4)
(式中、R10は、アリール基、又はヘテロアリール基であり;nは1〜3の整数である)で表される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基であるか、又はR4及びR5は、互いに結合して、脂環式環を形成し、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子が13位の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であるか、又はR6及びR7は、インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の13位の炭素原子と共に、互いに一緒になって、炭素数が3〜20である、脂環式環基又は脂環式環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環、又は炭素数が3〜20である、複素環基又は複素環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成し、
a、b、c及びdは、それぞれ、0〜4の整数であり、ただし、a+b=1〜8、a+c=4、b+d=4であり、
aが2以上である場合、R1は、互いに、同一又は異なる基であり、
bが2以上である場合、R2は、互いに、同一又は異なる基であり、
cが2以上である場合、R1'は、互いに、同一又は異なる基であり、
dが2以上である場合、R2'は、互いに、同一又は異なる基であり、
a及びbが共に0ではない場合、R1及びR2は、互いに、同一又は異なる基であり、
c及びdが共に0ではない場合、R1'及びR2'は、互いに、同一又は異なる基である。]
〔式中、
R1及びR2は、インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及びピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる基であって、炭素‐炭素結合を介してインデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格に結合する基であり、
R1'及びR2'は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であり、
R4及びR5は、それぞれ独立に、一般式(3)
(式中、R8は、アリール基、又はヘテロアリール基であり;R9は、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子であり;mは1〜3の整数である)で表される基、一般式(4)
(式中、R10は、アリール基、又はヘテロアリール基であり;nは1〜3の整数である)で表される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基であるか、又はR4及びR5は、互いに結合して、脂環式環を形成し、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子が13位の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であるか、又はR6及びR7は、インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の13位の炭素原子と共に、互いに一緒になって、炭素数が3〜20である、脂環式環基又は脂環式環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環、又は炭素数が3〜20である、複素環基又は複素環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成し、
a、b、c及びdは、それぞれ、0〜4の整数であり、ただし、a+b=1〜8、a+c=4、b+d=4であり、
aが2以上である場合、R1は、互いに、同一又は異なる基であり、
bが2以上である場合、R2は、互いに、同一又は異なる基であり、
cが2以上である場合、R1'は、互いに、同一又は異なる基であり、
dが2以上である場合、R2'は、互いに、同一又は異なる基であり、
a及びbが共に0ではない場合、R1及びR2は、互いに、同一又は異なる基であり、
c及びdが共に0ではない場合、R1'及びR2'は、互いに、同一又は異なる基である。]
上記一般式(2)における基について説明する。
R1及びR2のインデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及びピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる基の詳細については、上述のとおりである。R1又はR2は、少なくとも1つは存在しなければならない。すなわち、R1とR2との数を表すa、bとの合計(a+b)が1以上8以下とならなければならない。
R1及びR2は、R1が6位及び/又は7位の炭素原子と結合するか、R2が9位及び/又は12位の炭素原子と結合することにより、ダブルピーク性の特に高いクロメン化合物とすることができる。そのため、aは0〜2の整数であり、bは0〜2の整数であること(ただし、(a+b)≠0である)が好ましい。このような好適なクロメン化合物の中でも、R1が6位又は7位の炭素原子と結合し、b=0であるクロメン化合物が、特に優れた物性を発揮する。
また、R1又はR2以外に、ピラン骨格の5〜12位の炭素原子には、R1'、R2'が結合する。そのため、R1'、R2'の数を表すc、dは、それぞれ、0〜4の整数であって、a+c=4、b+d=4を満足する整数である。
R1'及びR2'は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基である。
R1'及びR2'の各基について詳述する。
アルキル基は、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すれば、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
ハロアルキル基は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子で置換された炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基を例示すれば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロメチル基、2‐クロロエチル基、ブロモメチル基等を挙げることができる。
シクロアルキル基は、特に制限されないが、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましい。好適なシクロアルキル基を例示すれば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
アルコキシ基は、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を例示すれば、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、tert‐ブトキシ基等を挙げることができる。
アミノ基は、未置換又は任意に置換されたアミノ基である。かかるアミノ基が有する置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8アルコキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、1‐ナフチル基、2‐ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基等の炭素数4〜12のヘテロアリール基等が挙げられる(アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基の具体例は、上記の置換基で説明した基と同様である)。好適なアミノ基を例示すればと、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
窒素原子を含み、該窒素原子が炭素原子と直接結合する複素環基は、特に制限されないが、好適なものを例示すれば、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N‐メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることができる。さらに、該複素環基は、炭素数1〜8のアルキル基を置換基として有してもよく、具体的な置換基としては、メチル基等のアルキル基を挙げることができる。置換基を有する複素環基のうち、好適なものを例示すると、2,6‐ジメチルモルホリノ基、2,6‐ジメチルピペリジノ基、2,2,6,6‐テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
アルキルカルボニル基は、特に制限されないが、好適なものを例示すれば、アセチル基、エチルカルボニル基等を挙げることができる。
アルコキシカルボニル基は、特に制限されないが、好適なものを例示すれば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等を挙げることができる。
ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
アラルキル基は、特に制限されないが、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すれば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
アリール基は、特に制限されないが、炭素数6〜14のアリール基が好ましい。好適なアリール基を具体的に例示すれば、フェニル基、1‐ナフチル基、2‐ナフチル基等を挙げることができる。
アラルコキシ基は、特に制限されないが、炭素数7〜11のアラルコキシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を例示すれば、ベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基等を挙げることができる。
アリールオキシ基は、特に制限されないが、炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましい。好適なアリールオキシ基を例示すれば、フェノキシ基、1‐ナフトキシ基、2‐ナフトキシ基等を挙げることができる。
R1'は、高いダブルピーク性が得られるという点で、水素原子であるか、又は炭素数1〜8のアルキル基;炭素数1〜8のアルコキシ基;アミノ基;又は、窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基であることが好ましい。特に好適なものを例示すると、水素原子、メチル基、メトキシ基、N,N‐ジメチルアミノ基、モルホリノ基等が挙げられる。
また、R1'は、特にダブルピーク性を高めるためには、炭素数1〜8のアルキル基;炭素数1〜8のアルコキシ基;アミノ基;又は、窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基であることが好ましい。そして、これら基が、6位又は7位の炭素原子に結合することが好ましい。すなわち、R1が6位又は7位の炭素原子のいずれか一方に結合し、炭素数1〜8のアルキル基;炭素数1〜8のアルコキシ基;アミノ基;又は、窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基から選ばれるR1'が、R1の結合していない他方の炭素原子に結合することが好ましい。
R2'は、速い退色速度が得られるという点で、水素原子であるか、又は電子吸引性基であることが好ましい。また、R2'が電子吸引性基である場合、R2'は、退色速度をより速めるためには11位の炭素原子に結合することが好ましい。好適な電子吸引性基は、シアノ基又は炭素数1〜8ハロアルキル基であり、具体例としては、シアノ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
また、R1との兼ね合いになるが、R1が1つ以上存在する場合(a≧1)、特に、少なくとも1つのR1が6位又は7位の炭素原子と結合する場合、特に優れた物性を発揮するクロメン化合物を得るためには、R2'は水素原子であることが好ましい。
R4及びR5は、互いに独立して、それぞれ、上記一般式(3)で表される基、一般式(4)で表される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基である。
一般式(3)中のR8は、アリール基又はヘテロアリール基である。ここで、アリール基は、R1'及びR2'に関して既に説明したアリール基と同じ基が適用される。へテロアリール基は、特に制限されないが、炭素数6〜14のヘテロアリール基が好ましい。好適なヘテロアリール基を例示すれば、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等を挙げることができる。また、一般式(3)中のR9は、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。また、ハロゲン原子を具体的に例示すれば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を挙げることができる。mは1〜3の整数であるが、原料の入手容易性の観点から、mが1であることが好適である。
前記一般式(3)で示される基の中で好適な基を例示すれば、フェニル‐エチレニル基、(4‐(N,N‐ジメチルアミノ)フェニル)‐エテニル基、(4‐モルホリノフェニル)‐エテニル基、(4‐ピペリジノフェニル)‐エテニル基、(4‐メトキシフェニル)‐エテニル基、(2‐メトキシフェニル)‐エテニル基、フェニル‐1‐メチルエテニル基、(4‐メトキシフェニル)‐1‐メチルエテニル基、フェニル‐1‐フルオロエテニル基、(4‐(N,N‐ジメチルアミノ)フェニル)‐1‐フルオロエテニル基、2‐チエニル‐エテニル基、2‐フリル‐エテニル基、2‐(N‐メチル)ピロリニル‐エテニル基、2‐ベンゾチエニル‐エテニル基、2‐ベンゾフラニル‐エテニル基、2‐(N‐メチル)インドリル‐エテニル基等を挙げることができる。
一般式(4)において、R10は、前記R8と同じアリール基又はヘテロアリール基である。また、nは1〜3の整数であるが、原料入手容易性の観点から、nが1であることが好適である。
一般式(4)で示される基の中で好適な基を例示すれば、フェニル‐エチリニル基、(4‐(N,N‐ジメチルアミノ)フェニル)‐エチニル基、(4‐モルホリノフェニル)‐エチニル基、(4‐ピペリジノフェニル)‐エチニル基、(4‐メトキシフェニル)‐エチニル基、(4‐メチルフェニル)‐エチニル基、(2‐メトキシフェニル)‐エチニル基、2‐チエニル‐エチニル基、2‐フリル‐エチニル基、2‐(N‐メチル)ピロリニル‐エチニル基、2‐ベンゾチエニル‐エチル基、2‐ベンゾフラニル‐エチニル基、2‐(N‐メチル)インドリル‐エチニル基等を挙げることができる。
R4及びR5のアリール基は、R3に関して既に説明したアリール基と同じ基が適用される。また、R4及びR5の前記へテロアリール基は、特に制限されないが、炭素数6〜14のヘテロアリール基が好ましい。好適なヘテロアリール基を例示すると、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等を挙げることができる。さらに、アルキル基は、R3について説明したアルキル基と同じ基が適用される。
また、R4及びR5は、互いに結合して、脂環式環を形成することもできる。脂環式環としては、特に制限はされないが、好適な環を具体的に例示すると、アダマンタン環、ビシクロノナン環、ノルボルナン環等を挙げることができる。
上記R4及びR5について、特に、優れたフォトクロミック特性を発揮するためには、少なくとも一方、好ましくは両方が、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましい。さらに、R4及びR5の少なくとも一方、好ましくは両方が、下記(i)〜(iii)に示されるいずれかの基であることが特に好ましい。
(i)アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有するアリール基又はヘテロアリール基、
(ii)アミノ基を置換基として有するアリール基又はヘテロアリール基、及び
(iii)窒素原子をヘテロ原子として有し、且つ該窒素原子とアリール基又はヘテロアリール基とが結合する複素環基を置換基として有するアリール基又はヘテロアリール基。
(i)アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有するアリール基又はヘテロアリール基、
(ii)アミノ基を置換基として有するアリール基又はヘテロアリール基、及び
(iii)窒素原子をヘテロ原子として有し、且つ該窒素原子とアリール基又はヘテロアリール基とが結合する複素環基を置換基として有するアリール基又はヘテロアリール基。
なお、上記(i)〜(iii)におけるアリール基においては、置換基の位置は特に限定されず、その総数も特に限定されるものではない。ただし、優れたフォトクロミック特性を発揮するためには、置換位置は、アリール基がフェニル基である場合は、3位又は4位であることが好ましい。また、その際の置換基の数は1〜2であることが好ましい。このような好適なアリール基を例示すると、4‐メチルフェニル基、4‐メトキシフェニル基、3,4‐ジメトキシフェニル基、4‐n‐プロポキシフェニル基、4‐(N,N‐ジメチルアミノ)フェニル基、4‐(N,N‐ジエチルアミノ)フェニル基、4‐(N,N‐ジフェニルアミノ)フェニル基、4‐モルホリノフェニル基、4‐ピペリジノフェニル基、3‐(N,N‐ジメチルアミノ)フェニル基、4‐(2,6‐ジメチルピペリジノ)フェニル基等を挙げることができる。
また、前記(i)〜(iii)におけるヘテロアリール基において、置換基の位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、その数は1であることが好ましい。当該ヘテロアリール基として好適なものを具体的に例示すれば、4‐メトキシチエニル基、4‐(N,N‐ジメチルアミノ)チエニル基、4‐メチルフリル基、4‐(N,N‐ジエチルアミノ)フリル基、4‐(N,N‐ジフェニルアミノ)チエニル基、4‐モルホリノピロリニル基、6‐ピペリジノベンゾチエニル基、6‐(N,N‐ジメチルアミノ)ベンゾフラニル基等を挙げることができる。
R6及びR7は、互いに独立して、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の13位の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基である。
R6及びR7におけるアルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の13位の炭素原子と直接結合する複素基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基、アラルコキシ基、及びアリールオキシ基の詳細については、上記R1'及びR2'で説明した基と同様である。
また、R6及びR7は、ピラン骨格の13位の炭素原子と共に、互いに一緒になって環を構成する炭素数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である、脂環式環、又は前記脂環式環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環、環を構成する原子数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である、複素環、又は前記複素環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成してもよい。
環を構成する炭素数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である脂環式環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環、アダマンタン環等が挙げられる。
また、脂環式環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環としては、例えば、ベンゾシクロへキサン環等が挙げられる。
環を構成する原子数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である複素環としては、例えば、ジヒドロチオフェン環、ジヒドロフラン環、テトラヒドロフラン環、ジヒドロピリジン環等が挙げられる。
また、複素環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環としては、例えば、ジヒドロベンゾフラン環、ジヒドロベンゾチオフェン環等が挙げられる。
本発明において、R6及びR7は、ピラン構造の13位の炭素原子と共に、互いに一緒になって、環を形成していることが好ましい。中でも、サーモクロミズムによる初期着色が小さくなり、退色速度が速くなるという観点から、特に、前記脂環式環、又は前記脂環式環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成していることが好ましい。その中でも、特にサーモクロミズムによる初期着色が小さくなり、退色速度が速くなる観点からは、前記脂環式環を形成していることが好ましい。
R6及びR7が形成する脂環式環として、特に好適なものとしては、13位の炭素原子を含めて環を形成する炭素数が3〜20である脂環式環(アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アラルキル基、アリール基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい)である。なお、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アラルキル基、アリール基及びハロゲン原子は、R1'及びR2'で説明したものと同様である。
好適な基を例示すれば、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等の単環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環等のビシクロ環、及びアダマンタン環等のトリシクロ環を例示することができる。これらは、メチル基等の炭素数4以下の低級アルキル基を、置換基として、少なくとも1個有していてもよい。サーモクロミズムによる初期着色が小さくなり、退色速度が速くなるという観点から、炭素数が3〜20の炭化水素環が好ましい。特に、サーモクロミズムによる初期着色が小さくなり、退色速度が速くなるという観点から単環が好ましく、具体的な単環を例示すると、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、3,3,5,5‐テトラメチルシクロへキサン環等が挙げられ、特に、サーモクロミズムによる初期着色が小さくなり、退色速度が速くなる観点から、シクロオクタン環、3,3,5,5‐テトラメチルシクロへキサン環等が好ましい。
本発明のクロメン化合物の中でも、初期着色が小さく、ダブルピーク性が高いという点から、上記一般式(2)におけるR1及びR2の両方が、脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、又は脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基から選ばれる置換基であるクロメン化合物であることが特に好適である。また、同じ理由で、下記一般式(5)又は一般式(6)で表されるロメン化合物も特に好適である。
一般式(5)
[式中、
R1、R2、R2'、R4、R5、R6、R7、b及びdは、それぞれ、上記一般式(2)に記載ものと同意義であり、
R3及びR11は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の5位の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であり、
R12は、上記一般式(2)におけるR1'及びR2'の中で、Hammett数σpが−0.1以下の電子供与性の置換基である。]
[式中、
R1、R2、R2'、R4、R5、R6、R7、b及びdは、それぞれ、上記一般式(2)に記載ものと同意義であり、
R3及びR11は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の5位の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であり、
R12は、上記一般式(2)におけるR1'及びR2'の中で、Hammett数σpが−0.1以下の電子供与性の置換基である。]
一般式(6)
[式中、
R1、R2、R2'、R4、R5、R6、R7、b及びdは、それぞれ、上記一般式(2)に記載のものと同意義であり、
R3及びR11は、上記一般式(2)に記載のものと同意義であり、
R13は、上記一般式(2)におけるR1'及びR2'の中で、Hammett数σpが−0.1以下の電子供与性の置換基である。]
[式中、
R1、R2、R2'、R4、R5、R6、R7、b及びdは、それぞれ、上記一般式(2)に記載のものと同意義であり、
R3及びR11は、上記一般式(2)に記載のものと同意義であり、
R13は、上記一般式(2)におけるR1'及びR2'の中で、Hammett数σpが−0.1以下の電子供与性の置換基である。]
ここで、上記一般式(5)及び(6)におけるR1、R2、R2'、R4、R5、R6、R7、b及びdは、それぞれ、前記一般式(2)に記載のものと同意義であり、これら基として好ましい基についても、前記一般式(2)について例示した基が挙げられる。また、基の数、結合する炭素原子の位置も、前記一般式(2)で説明したものと同意義である。
R3及びR11は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の5位の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基である。これら基の具体例は、上記R1'及びR2'で例示した基と同様の基が挙げられる。また、当然のことながら、好ましい基についても、上記R1'及びR2'で例示した基が挙げられる。
上記一般式(5)、(6)におけるR12及びR13は、前記一般式(2)のR1'及びR2'において、Hammett数σpが−0.1以下となる電子供与性の基である。R12及びR13が、上記電子供与性の基であることにより、特に優れた効果を発揮する。
なお、Hammett数σpとは、p‐置換安息香酸の解離定数Kaを基準に用いて、π電子系に結合した置換基の電気的効果を定量化したHammett則に基づいて定義されるものである。Hammett数σpが0となる置換基は水素原子である。
上記一般式(5)、(6)におけるR12、R13は、中でも、Hammett数σpが−0.1以下となる電子供与性の基であることが特に好ましい。このような範囲を満足する電子供与性の基を有する場合には、初期着色を抑えながらダブルピーク性を高くすることができる。
Hammett数σpが−0.1以下の電子供与性の置換基であるR12、R13としては、ヒドロキシル基(σp=−0.37)、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、又は窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の6位、7位の炭素原子と直接結合する複素環基が挙げられる。
以下、Hammett数σpが−0.1以下である上記電子供与性の置換基について、詳細に説明する。
アルキル基は、通常、Hammett数σpが−0.2以上、−0.1以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を具体的に例示すれば、メチル基(σp=−0.14)、エチル基(σp=−0.13)、n‐プロピル基(σp=−0.12)、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基(σp=−0.15)等を挙げることができる。
シクロアルキル基は、通常、Hammett数σpが−0.2以上、−0.1以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましい。好適なシクロアルキル基を具体的に例示すれば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基(σp=−0.16)等が挙げられる。
アルコキシ基は、通常、Hammett数σpが−0.3以上、−0.2以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を具体的に例示すれば、メトキシ基(σp=−0.28)、エトキシ基(σp=−0.21)、n‐プロポキシ基(σp=−0.26)、イソプロポキシ基、n‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、tert‐ブトキシ基等を挙げることができる。
アリールオキシ基は、通常、Hammett数σpが−0.5以上、−0.2以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましい。好適なアリールオキシ基を具体的に例示すれば、フェノキシ基(σp=−0.32)、1‐ナフトキシ基等を挙げることができる。なお、アリールオキシ基は、ベンゼン環の1もしくは2以上の水素原子が、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されたものであってもよい。これら基で置換されたアリールオキシ基であっても、Hammett数σpは−0.1以下となる。
アミノ基は、通常、Hammett数σpが−1.0以上、−0.5以下の基である。好適なアミノ基を例示すれば、未置換のアミノ基(σp=−0.66)に限定されず、置換基を有するアミノ基であってもよい。かかるアミノ基が有する置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数4〜12のヘテロアリール基等が挙げられる。このような置換アミノ基の好適な例としては、メチルアミノ基(σp=−0.77)、エチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基(σp=−0.83)、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;フェニルアミノ基(σp=−0.11)等のアリールアミノ基、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基等を挙げることができる。
窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の6位又は7位の炭素原子と直接結合する複素環基は、通常、Hammett数σpが−1.0以上、−0.4以下の基である。好適な複素環基を例示すれば、モルホリノ基(σp=−0.50)、ピペリジノ基(σp=−0.83)、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N‐メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることができる。さらに、該複素環基は、炭素数1〜8のアルキル基を置換基として有してもよく、具体的な置換基としては、メチル基等のアルキル基を挙げることができる。置換基を有する複素環基を具体的に例示すれば、2,6‐ジメチルモルホリノ基、2,6‐ジメチルピペリジノ基、2,2,6,6‐テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
このうち、初期着色とダブルピーク性のバランスに優れるという点で、Hammett数σpが−0.90〜−0.20となる基がより好ましく、−0.60〜−0.20となる基がさらに好ましい。具体的な基を例示すれば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、モルホリノ基等の窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の6位又は7位の炭素原子と直接結合する複素環基が特に好ましい。
クロメン化合物の同定
本発明のクロメン化合物は、一般に、常温常圧において、無色、淡黄色又は淡緑色の固体又は粘稠な液体として存在し、次の(イ)〜(ハ)のような手段で確認できる。
本発明のクロメン化合物は、一般に、常温常圧において、無色、淡黄色又は淡緑色の固体又は粘稠な液体として存在し、次の(イ)〜(ハ)のような手段で確認できる。
(イ)プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)を測定することにより、δ:5.0〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づくピーク、δ:1.0〜4.0ppm付近にアルキル基及びアルコキシ基のプロトンに基づくピークが現れる。また、それぞれのスペクトル強度を相対的に比較することにより、それぞれの結合基のプロトンの個数を知ることができる。
(ロ)元素分析によって相当する生成物の組成を決定することができる。
(ハ)13C-核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)を測定することにより、δ:110〜160 ppm付近に芳香族炭化水素基の炭素に基づくピーク、δ:80〜140 ppm付近にアルケン及びアルキンの炭素に基づくピーク、δ:20〜80ppm付近にアルキル基及びアルコキシ基の炭素に基づくピークが現われる。
クロメン化合物の製造
本発明のクロメン化合物の製造方法は、特に限定されず、各種の合成法に従って行われる。例えば、上記一般式(2)で示されるクロメン化合物は、次のような方法によって、好適に製造される。なお、以下の説明において、各式中の符号は、特記しないかぎり、前述した式で説明したとおりの意味を示す。
本発明のクロメン化合物の製造方法は、特に限定されず、各種の合成法に従って行われる。例えば、上記一般式(2)で示されるクロメン化合物は、次のような方法によって、好適に製造される。なお、以下の説明において、各式中の符号は、特記しないかぎり、前述した式で説明したとおりの意味を示す。
一般式(7)
(式中、R1、R2、R1'、R2'、R6、R7、a、b、c及びdは、上述のとおりである)で表わされるナフトール誘導体と、一般式(8)
(式中、R4及びR5は、上述のとおりである)で表されるプロパルギルアルコール誘導体とを、酸触媒存在下で反応させることにより、好適に製造することができる。ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体との反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には、1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。また、酸触媒としては、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられ、ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体との総和100重量部当り0.1〜10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常、0〜200℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、N‐メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。かかる反応により得られる生成物の精製方法は特に限定されない。例えば、シリカゲルカラム精製を行い、さらに再結晶により、精製を行なうことができる。
(式中、R1、R2、R1'、R2'、R6、R7、a、b、c及びdは、上述のとおりである)で表わされるナフトール誘導体と、一般式(8)
(式中、R4及びR5は、上述のとおりである)で表されるプロパルギルアルコール誘導体とを、酸触媒存在下で反応させることにより、好適に製造することができる。ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体との反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には、1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。また、酸触媒としては、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられ、ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体との総和100重量部当り0.1〜10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常、0〜200℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、N‐メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。かかる反応により得られる生成物の精製方法は特に限定されない。例えば、シリカゲルカラム精製を行い、さらに再結晶により、精製を行なうことができる。
前記一般式(7)で表されるナフトール誘導体は新規な化合物であり、本発明の1態様を構成する。
工程a)一般式(9)で表わされるベンゼン誘導体からの一般式(10)の化合物の調製
一般式(9)
(式中、R1及びaは、一般式(2)と同意義である)で表わされるベンゼン誘導体を、マグネシウムと反応させてGrignard試薬とし、ついで、酸クロリドと反応させて、一般式(10)
で表わされる化合物(R1、R2、R1'、R2'、a、b、c及びdは一般式(2)と同意義である)を調製する。
一般式(9)
(式中、R1及びaは、一般式(2)と同意義である)で表わされるベンゼン誘導体を、マグネシウムと反応させてGrignard試薬とし、ついで、酸クロリドと反応させて、一般式(10)
で表わされる化合物(R1、R2、R1'、R2'、a、b、c及びdは一般式(2)と同意義である)を調製する。
工程b)一般式(11)で表わされる化合物の調製
工程a)で得られた一般式(10)で表わされる化合物を、Stobbe反応、ついで、環化反応に供して、一般式(11)
で表わされる化合物を調製する。なお、一般式(11)の化合物において、RはStobbe反応で使用したジエステル化合物由来の基である。
工程a)で得られた一般式(10)で表わされる化合物を、Stobbe反応、ついで、環化反応に供して、一般式(11)
で表わされる化合物を調製する。なお、一般式(11)の化合物において、RはStobbe反応で使用したジエステル化合物由来の基である。
工程d)一般式(13)で表わされるカルボン酸化合物の調製
工程c)で得られた一般式(12)で表わされるカルボン酸を、炭酸カリウム等の塩基と塩化ベンジルと使用してベンジル化し、次いで、アルカリ又は酸にて加水分解して、一般式(13)
で表されるベンジル保護されたカルボン酸誘導体を調製する。
工程c)で得られた一般式(12)で表わされるカルボン酸を、炭酸カリウム等の塩基と塩化ベンジルと使用してベンジル化し、次いで、アルカリ又は酸にて加水分解して、一般式(13)
で表されるベンジル保護されたカルボン酸誘導体を調製する。
工程e)一般式(14)で表わされるアルコール化合物の調製
工程d)で得られた一般式(13)で表わされるベンジル保護化カルボン酸誘導体を、Curtius転位、Hofmann転位、Lossen転位等の方法によりアミンに変換し、このアミンからジアゾニウム塩を調製する。ついで、ジアゾニウム塩を、Sandmeyer反応等により、臭化物に変換し、得られた臭化物を、マグネシウム、リチウム等と反応させて有機金属試薬を調製する。この有機金属試薬を、一般式(15)
(式中、R6及びR7は、一般式(2)と同意義である)で表わされるケトンと、−80〜70℃、10分〜4時間、有機溶媒中で反応させ、次いで水素とパラジウム炭素等で、脱ベンジル化反応を行うことで、一般式(14)
(式中、R1、R2、R1'、R2'、R6、R7、a、b、c及びdは、一般式(2)と同意義である)で表わされるアルコール体を調製する。
かかる反応において、前記有機金属試薬と前記一般式(15)で表わされるケトンとの反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。反応温度は通常−80〜70℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。
工程d)で得られた一般式(13)で表わされるベンジル保護化カルボン酸誘導体を、Curtius転位、Hofmann転位、Lossen転位等の方法によりアミンに変換し、このアミンからジアゾニウム塩を調製する。ついで、ジアゾニウム塩を、Sandmeyer反応等により、臭化物に変換し、得られた臭化物を、マグネシウム、リチウム等と反応させて有機金属試薬を調製する。この有機金属試薬を、一般式(15)
(式中、R6及びR7は、一般式(2)と同意義である)で表わされるケトンと、−80〜70℃、10分〜4時間、有機溶媒中で反応させ、次いで水素とパラジウム炭素等で、脱ベンジル化反応を行うことで、一般式(14)
(式中、R1、R2、R1'、R2'、R6、R7、a、b、c及びdは、一般式(2)と同意義である)で表わされるアルコール体を調製する。
かかる反応において、前記有機金属試薬と前記一般式(15)で表わされるケトンとの反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。反応温度は通常−80〜70℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。
工程f)一般式(7)のナフトール誘導体の調製
工程e)で得られた一般式(14)で表わされるアルコール体について、中性〜酸性条件下、10〜120℃において、10分〜2時間Friedel-Crafts反応を行うことによって、一般式(7)で表わされるナフトール誘導体を調製する。
工程e)で得られた一般式(14)で表わされるアルコール体について、中性〜酸性条件下、10〜120℃において、10分〜2時間Friedel-Crafts反応を行うことによって、一般式(7)で表わされるナフトール誘導体を調製する。
かかる反応において、酢酸、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等の酸触媒を用いて行うことが好ましく、このような酸触媒は、アルコール体100重量部当り0.1〜10重量部の範囲で用いることが好適である。この反応に際しては、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等の溶媒が使用される。
なお、一般式(7)で表わされるナフトール誘導体の合成に当たり使用される原料の一般式(9)で表されるベンゼン誘導体の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
構造式(17)のベンゼン誘導体
構造式(17)のベンゼン誘導体は、例えば、Journal of Medicinal Chemistry, 4993-5006; 1995に記載の方法に従って合成される。
構造式(17)のベンゼン誘導体は、例えば、Journal of Medicinal Chemistry, 4993-5006; 1995に記載の方法に従って合成される。
構造式(18)のベンゼン誘導体
構造式(18)のベンゼン誘導体は、例えば、Journal of the American Chemical Society, 5654-5655; 1990に記載の方法に従って合成される。
構造式(18)のベンゼン誘導体は、例えば、Journal of the American Chemical Society, 5654-5655; 1990に記載の方法に従って合成される。
構造式(19)のベンゼン誘導体
構造式(19)のベンゼン誘導体は、例えば、Journal of Chemical Society, Perkin Transactions 2, 662-668; 1976に記載の方法に従って合成される。
構造式(19)のベンゼン誘導体は、例えば、Journal of Chemical Society, Perkin Transactions 2, 662-668; 1976に記載の方法に従って合成される。
構造式(20)のベンゼン誘導体は、例えば、Australian Journal of Chemistry, 115-119; 1981、Journal、Journal of Organic Chemistry, 3129-3132; 2007に記載の方法に従って合成される。
上記一般式(8)で表わされるプロパルギルアルコール誘導体は、種々の方法で合成することができるが、例えば、一般式(8)に対応するケトン誘導体とリチウムアセチリド等の金属アセチレン化合物と反応させることにより容易に合成できる。
以上のようにして合成される本発明のクロメン化合物は、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の一般の有機溶媒によく溶解する。このような溶媒に、クロメン化合物を溶解したとき、一般に、溶液は、ほぼ無色透明であり、太陽光又は紫外線を照射すると速やかに発色し、光を遮断すると可逆的に速やかに元の無色にもどる良好なフォトクロミック作用を呈する。
他のフォトクロミック化合物との組み合わせ
本発明のクロメン化合物は、単独で中間色を示すが、フォトクロミックレンズとして要求される様々な色調を得るために他のフォトクロミック化合物と組み合わせて用いることもできる。組み合わせるフォトクロミック化合物は、公知の化合物を何ら制限なく用いることができる。例えば、フルギド、フルギミド、スピロオキサジン、クロメン等が挙げられる。中でも、発退色時の色調を均一に保つことができ、フォトクロミック性の劣化に伴う発色時の色ずれを抑制でき、さらに、初期着色を小さくできるという点からクロメン化合物が特に好ましい。
本発明のクロメン化合物は、単独で中間色を示すが、フォトクロミックレンズとして要求される様々な色調を得るために他のフォトクロミック化合物と組み合わせて用いることもできる。組み合わせるフォトクロミック化合物は、公知の化合物を何ら制限なく用いることができる。例えば、フルギド、フルギミド、スピロオキサジン、クロメン等が挙げられる。中でも、発退色時の色調を均一に保つことができ、フォトクロミック性の劣化に伴う発色時の色ずれを抑制でき、さらに、初期着色を小さくできるという点からクロメン化合物が特に好ましい。
すなわち、本発明のクロメン化合物を含有し、さらに前記のクロメン化合物のように発色感度、退色速度が良好で、且つ、初期着色の小さい他のクロメン化合物を組み合わせることにより、発退色時の色調が均一で、且つ、高い透明性を与えるフォトクロミック組成物を得ることができる。
高い透明性を与えるために、組み合わせる他のクロメン化合物としては、サーモクロミズムによる透過率が75%以上であり、紫外線吸収曲線の吸収端が380〜430 nmであるものが好ましい。さらに、サーモクロミズムによる透過率が85%以上であり、紫外線吸収曲線の吸収端が380〜420 nmであるものが特に好ましく、サーモクロミズムによる透過率が88%以上であり、紫外線吸収曲線の吸収端が380〜410 nmであるものが最も好ましい。なお、このサーモクロミズムによる透過率、及び紫外線吸収曲線の吸収端は、下記の実施例で記載した方法により測定した値である。
これらの好適な他のクロメン化合物は具体的には、下記一般式(21)及び一般式(22)で表されるクロメン化合物を挙げることができる。
一般式(21)
一般式(21)において、R2'、R3、R4、R5、R6及びR7は、一般式(2)で示したものと同意義であり、R12は、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、環員窒素原子を含み且つその窒素原子でそれが結合しているベンゼン環に結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基又はアリール基であり、mは0〜4の整数であり、nは0〜2の整数である。具体例としては、例えば、国際公開WO2001/60811パンフレットに記載の化合物が挙げられる。
一般式(22)において、R3、R4及びR5は、一般式(2)で示したものと同意義であり、R13は、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、環員窒素原子を含み且つその窒素原子でそれが結合しているベンゼン環に結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシ基又はアリール基であり、o及びpは、互いに独立して、0〜4の整数である。具体例としては、例えば、国際公開WO2009/136668パンフレットに記載の化合物が挙げられる。
また、本発明のクロメン化合物と他のクロメン化合物とを含むフォトクロミック組成物とする場合、各クロメン化合物の配合割合は、所望とする色調に応じて適宜決定すればよい。その場合、本発明のクロメン化合物または他のクロメン化合物が重合単量体100質量部に対し0.001〜10質量部とするのが好ましい。具体的に、より好ましくは、コーティングのような薄膜(例えば100μm程度の薄膜の場合)の場合は、コーティング膜あるいはコーティング膜を与える重合性単量体100質量部に対して、本発明のクロメン化合物0.001〜5.0質量部、他のクロメン化合物0.001〜5.0質量部の範囲で色調を調整するのがよい。あるいは、厚い硬化体(例えば1ミリ以上の場合)の場合は、厚い硬化体あるいは厚い硬化体を与える重合性単量体100質量部に対して、本発明のクロメン化合物0.001〜0.5質量部、他のクロメン化合物0.001〜0.5質量部の範囲で色調を調整するのがよい。
組み合わせる安定剤
本発明のクロメン化合物は、そのままでも耐久性が高いが、下記に示す紫外線吸収剤や光安定剤、酸化防止剤などを用いることにより、さらに耐久性を高くすることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物等の公知の紫外線吸収剤を使用することができ、特に、シアノアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物が好ましい。上記紫外線吸収剤は、本発明のクロメン化合物を含む重合単量体100質量部に対し、0.001〜5質量部の範囲で用いることで効果を発揮する。また、光安定剤としては公知のヒンダードアミンを、酸化防止剤としては公知のヒンダードフェノールを使用することができる。上記の光安定剤、酸化防止剤は、本発明のクロメン化合物を含む重合単量体100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲で用いることで効果を発揮する。
本発明のクロメン化合物は、そのままでも耐久性が高いが、下記に示す紫外線吸収剤や光安定剤、酸化防止剤などを用いることにより、さらに耐久性を高くすることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物等の公知の紫外線吸収剤を使用することができ、特に、シアノアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物が好ましい。上記紫外線吸収剤は、本発明のクロメン化合物を含む重合単量体100質量部に対し、0.001〜5質量部の範囲で用いることで効果を発揮する。また、光安定剤としては公知のヒンダードアミンを、酸化防止剤としては公知のヒンダードフェノールを使用することができる。上記の光安定剤、酸化防止剤は、本発明のクロメン化合物を含む重合単量体100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲で用いることで効果を発揮する。
クロメン化合物の用途
また、本発明のクロメン化合物及び前記構造式(1)、前記一般式(21)又は(22)で表わされるクロメン化合物を含むフォトクロミック組成物は、高分子固体マトリックス中でも同様なフォトクロミック特性を示す。かかる高分子固体マトリックスとしては、本発明のクロメン化合物が均一に分散するものであればよい。高分子固体マトリックスのための光学的に好ましい高分子化合物としては、例えばポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
また、本発明のクロメン化合物及び前記構造式(1)、前記一般式(21)又は(22)で表わされるクロメン化合物を含むフォトクロミック組成物は、高分子固体マトリックス中でも同様なフォトクロミック特性を示す。かかる高分子固体マトリックスとしては、本発明のクロメン化合物が均一に分散するものであればよい。高分子固体マトリックスのための光学的に好ましい高分子化合物としては、例えばポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
また、本発明のクロメン化合物及び前記構造式(1)、前記一般式(21)又は(22)で表わされるクロメン化合物を含むフォトクロミック組成物は、重合体とする前の各種の重合性単量体と混合することにより、フォトクロミック硬化性組成物とし、これを重合硬化することでフォトクロミック組成物とすることもできる。即ち、本発明のフォトクロミック組成物および各種の重合性単量体を含有するフォトクロミック硬化性組成物を重合硬化することで、該フォトクロミック組成物を均一に分散させた硬化体を得ることができる。
なかでも、発色濃度が高く、退色速度が速いといった優れたフォトクロミック物性を示し、且つ基材については硬度や耐熱性が高いといった優れた基材特性を得る観点から、前記構造式(1)、前記一般式(21)又は(22)で表わされるクロメン化合物を含むフォトクロミック組成物と下記に示す(A1)、(A2)及び(A3)の重合性単量体:
(A1)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下である重合性単量体、
(A2)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上である3官能以上のラジカル重合性単量体、
(A3)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上である2官能ラジカル重合性単量体
を混合し、Lスケールロックウェル硬度が60以上となる硬化体を形成するフォトクロミック硬化性組成物とすることが好ましい。各成分の具体例としては、例えば、(A1)成分としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β‐メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA‐モノグリシジルエーテル‐メタクリレート、4‐グリシジルオキシメタクリレート、3‐(グリシジル‐2‐オキシエトキシ)‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、3‐(グリシジルオキシ‐1‐イソプロピルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、3‐(グリシジルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物及びポリエチレングリコールジアクリレート等のポリアルキレングリコール化合物;(A2)成分としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物、ウレタンオリゴマーテトラメタアクリレート等のウレタンアクリレート及びポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート等のポリエステルアクリレート;(A3)成分としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2‐ビス(4‐メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2‐ビス(3,5‐ジブロモ‐4‐メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物等、国際公開WO2001/05854パンフレットに記載の重合性単量体が挙げられる。なお、Lスケールロックウェル硬度とは、JIS-B 7726に従って測定される硬度を意味し、各モノマーの単独重合体について該測定を行うことにより上記硬度の条件を満足するかどうかを簡単に判断することができる。
(A1)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウェル硬度が40以下である重合性単量体、
(A2)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上である3官能以上のラジカル重合性単量体、
(A3)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウェル硬度が60以上である2官能ラジカル重合性単量体
を混合し、Lスケールロックウェル硬度が60以上となる硬化体を形成するフォトクロミック硬化性組成物とすることが好ましい。各成分の具体例としては、例えば、(A1)成分としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β‐メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA‐モノグリシジルエーテル‐メタクリレート、4‐グリシジルオキシメタクリレート、3‐(グリシジル‐2‐オキシエトキシ)‐2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、3‐(グリシジルオキシ‐1‐イソプロピルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、3‐(グリシジルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物及びポリエチレングリコールジアクリレート等のポリアルキレングリコール化合物;(A2)成分としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物、ウレタンオリゴマーテトラメタアクリレート等のウレタンアクリレート及びポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート等のポリエステルアクリレート;(A3)成分としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2‐ビス(4‐メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2‐ビス(3,5‐ジブロモ‐4‐メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物等、国際公開WO2001/05854パンフレットに記載の重合性単量体が挙げられる。なお、Lスケールロックウェル硬度とは、JIS-B 7726に従って測定される硬度を意味し、各モノマーの単独重合体について該測定を行うことにより上記硬度の条件を満足するかどうかを簡単に判断することができる。
また、上述した重合性単量体を、重合性単官能単量体と共重合させた共重合体も、前記高分子マトリックスとして使用することができる。このような重合性単官能単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物;1,2‐ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2‐アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4-ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及び多価チオメタクリル酸エステル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α‐メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン等のビニル化合物等が挙げられる。これらは一種又は二種以上を混合して使用でき、その配合量は使用する用途に応じて適宜決定される。
本発明のクロメン化合物を上記高分子固体マトリックス中へ分散させる方法としては特に制限はなく、一般的な手法を用いることができる。例えば、上記熱可塑性樹脂とクロメン化合物を溶融状態にて混練して樹脂中に分散させる方法、又は上記重合性単量体にクロメン化合物を溶解させた後、重合触媒を加え、熱又は光にて重合させて樹脂中に分散させる方法、あるいは上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の表面にクロメン化合物を染色することにより樹脂中に分散させる方法等を挙げることができる。
本発明のクロメン化合物はフォトクロミック材として広範囲に利用でき、例えば、銀塩感光材に代る各種の記憶材料、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記憶材料、レーザー用感光材料、ホログラフィー用感光材料等の種々の記憶材料として利用できる。その他、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミック材は、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレイ材料、光量計、装飾等の材料としても利用できる。
例えば、フォトクロミックレンズに使用する場合、均一な調光性能が得られる方法であれば、特に制限がない。具体的に例示すれば、本発明のフォトクロミック材を均一に分散してなるポリマーフィルムをレンズ中にサンドウイッチする方法、本発明のクロメン化合物を前記の重合性単量体中に分散させ、所定の手法により重合する方法、又はこの化合物を、例えば、シリコーンオイル中に溶解し、150〜200℃で10〜60分かけてレンズ表面に含浸させ、さらに、その表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法等がある。さらに、上記ポリマーフィルムをレンズ表面に塗布し、その表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法等もある。
本発明のクロメン化合物を含有する重合硬化性組成物からなるコーティング剤を、レンズ基材の表面に塗布し、塗膜を硬化させてもよい。このとき、レンズ基材には予めアルカリ性溶液による表面処理又はプラズマ処理等の表面処理を施してもよく、さらに(これら表面処理と併せて又はこれら表面処理を行なわずに)、基材とコート膜との密着性を向上させるためにプライマーを施用することもできる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
[実施例1]
構造式(23)
のナフトール誘導体1.20g(2.3ミリモル)と、構造式(24)
のプロパルギルアルコール誘導体0.80g(3.0ミリモル)とを、トルエン70mlに溶解し、さらに、p‐トルエンスルホン酸0.022gを添加し、加熱還流下、1時間攪拌した。
反応後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製して、白色粉末状の生成物1.33を得た。収率は75%であった。
のナフトール誘導体1.20g(2.3ミリモル)と、構造式(24)
のプロパルギルアルコール誘導体0.80g(3.0ミリモル)とを、トルエン70mlに溶解し、さらに、p‐トルエンスルホン酸0.022gを添加し、加熱還流下、1時間攪拌した。
反応後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製して、白色粉末状の生成物1.33を得た。収率は75%であった。
この生成物の元素分析値は、C 84.01%、H 7.64%、O 8.35%(酸素の分析値は、100%から他の元素の分析値を引き算することで算出した)であり、C54H58О4の計算値であるC 84.12%、H 7.58%、O 8.30%と極めて良く一致した。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0〜3.0ppm付近にテトラメチルシクロヘキサン環のメチルプロトン、アダマンタン環のプロトン及びメチレンプロトンに基づく33Hのピーク、δ2.3〜4.5ppm付近にメトキシ基のメチルプロトンに基づく9Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく16Hのピークを示した。
さらに13C‐核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ110〜160 ppm付近に芳香環の炭素に基づくピーク、δ20〜60ppmにアルキルの炭素に基づくピークを示した。
実施例1と同様にして、表1‐1〜1‐3(実施例2〜12)に示すクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、実施例1と同様の構造確認の手段を用いて構造解析を行った結果、表1‐1〜1‐3に示す構造式を有する化合物であることが確認された。
また、表2に、これらの化合物の元素分析値、各化合物の構造式から求めた計算値及び1H-NMRスペクトルの特徴的なスペクトルを示した。
コーティング法により作製したフォトクロミックプラスチックレンズの物性評価
上記実施例で得られたクロメン化合物を、光重合開始剤及び重合性単量体と混合した後、レンズ基材表面に塗布し、紫外線を照射して重合させ、レンズ基材表面に塗膜を形成した。
上記実施例で得られたクロメン化合物を、光重合開始剤及び重合性単量体と混合した後、レンズ基材表面に塗布し、紫外線を照射して重合させ、レンズ基材表面に塗膜を形成した。
フォトクロミック硬化性組成物としては、ラジカル重合性単量体として、2,2‐ビス(4‐メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン/ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量532)/トリメチロールプロパントリメタクリレート/ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセルユーシービー(株)製、EB-1830)/グリシジルメタクリレート混合物(配合割合:50質量部/10質量部/10質量部/10質量部/10質量部)を使用した。このラジカル重合性単量体混合物90質量部に対して、実施例1で得られたクロメン化合物1質量部を添加し、十分に混合した後、光重合開始剤であるCGI 1800[1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチル‐ペンチルホスフィンオキサイドの混合物(重量比3:1)]0.3質量部、安定剤であるビス(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)セバケート5質量部、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3‐(5‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐m‐トリル)プロピオネート]3質量部、シランカップリング剤であるγ‐メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン7質量部、及びN‐メチルジエタノールアミン3質量部を添加し、さらに十分に混合して、フォトクロミック硬化性組成物とした。
続いて、前記方法で得られたフォトクロミック硬化性組成物約2gを、MIKASA製スピンコーター1H-DX2を用いて、レンズ基材(CR39:アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)の表面にスピンコートした。表面がコートされたレンズに、窒素ガス雰囲気において、出力120 mW/cm2のメタルハライドランプを用いて3分間照射し、硬化された高分子膜(クロメン化合物が分散している)で被覆された光学物品(フォトクロミックプラスチックレンズ)を作製した(高分子膜の厚さ:40μm)。
得られたフォトクロミックプラスチックレンズについて、下記のフォトクロミック特性を評価した。
[1]極大吸収波長(λmax):大塚電子工業(株)製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクター MCPD3000)により求めた発色後の極大吸収波長であり、発色時の色調の指標とした。該極大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
[2]発色濃度(A0):前記極大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度ε(120)と光未照射状態の吸光度ε(0)との差であり、発色濃度の指標とした。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
[3]ダブルピーク性(AY/AB):黄色(430 nm〜530 nmに最大吸収波長を有する)の発色濃度(AY:λmaxの値)と青色(550 nm〜650 nmに最大吸収波長を有する)の発色濃度(AB:λmaxの値)との比であり、ダブルピーク性の指標とした。
[4]退色半減期(τ1/2(秒)):120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記極大吸収波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間であり、退色速度の指標とした。この時間が短いほど退色速度が速い。
[5]吸収端(λ0):前記条件にて得られたフォトクロミックプラスチックレンズを試料として、これを一昼夜暗所にて保存した後、室温にて、紫外可視分光光度計(Shimadzu, UV-2550)を用いて、300 nm〜800 nmまでの紫外光の透過率(T%)を測定する。得られた紫外光吸収曲線の透過率(T%)が50%となる点を通るように、該紫外光吸収曲線に対して接線を引き、その接線の透過率(T%)が0となる吸収波長の吸収端(紫外光スペクトルの吸収端)を求め、初期着色の指標とした。例えば、メガネレンズのような光学物品においては、この値が低いほど初期着色が低く、光未照射状態の透明性が高い。
[6]サーモクロミズム(T0):前記条件にて得られたフォトクロミックプラスチックレンズを試料として、室温にて、紫外可視分光光度計(Shimadzu, UV−2550)を用いて、300 nmから800 nmまでの透過率(T%)を測定する。430 nm〜650 nmの範囲にある透過率が極小値をとる波長における透過率を求め、初期着色の指標とした。この値が大きいほど初期着色が小さく、光未照射状態の透明性が高い。
[7]残存率(A50/A0×100):得られたフォトクロミックプラスチックレンズをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により50時間促進劣化させる。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)及び試験後の発色濃度(A50)を測定し、その比(A50/A0)を残存率とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
[8]発色感度〔ε(10)/ε(120)〕: 前記条件にて得られたフォトクロミックプラスチックレンズを試料として、120秒間光照射後の発色濃度{ε(120)}と10秒間光照射後の発色濃度{ε(10)}との比を算出し、発色感度の指標とした。この値が大きいほど、光照射に短い時間で濃く発色する。
実施例1のクロメン化合物を使用したフォトクロミックプラスチックレンズについて得られたフォトクロミック特性の結果を表3にまとめた。
また、フォトクロミック化合物として、実施例2〜12で得られたクロメン化合物を使用し、上記実施例1のクロメン化合物を使用するフォトクロミックレンズの作製法と同様にして、フォトクロミックプラスチックレンズを作製し、そのフォトクロミック特性を評価した。その結果を、合わせて表3に示す。なお、表3において、「化合物No.」は、当該化合物を調製した実施例の番号に相当する(例えば、「化合物No. 1」は、実施例1で調製したのロメン化合物である)。
比較例1〜6
比較のため、上述の特許文献3〜5に記載された構造式(A)〜(C)のフォトクロミック化合物及び構造式(D)
、構造式(E)
、構造式(F)
の各フォトクロミック化合物を用いて、実施例と同様にして、フォトクロミックプラスチックレンズを作製し、各レンズのフォトクロミック特性を評価した。得られた結果を表4に示す(表4において、使用したフォクロミック化合物を、化合物No. A〜Fで示す)。
比較のため、上述の特許文献3〜5に記載された構造式(A)〜(C)のフォトクロミック化合物及び構造式(D)
、構造式(E)
、構造式(F)
の各フォトクロミック化合物を用いて、実施例と同様にして、フォトクロミックプラスチックレンズを作製し、各レンズのフォトクロミック特性を評価した。得られた結果を表4に示す(表4において、使用したフォクロミック化合物を、化合物No. A〜Fで示す)。
これら表3及び4の対比から、下記の事項が理解できる。
本発明のクロメン化合物を用いた実施例13〜24(化合物1〜12)は、発色濃度の高さ、退色速度の速さ、初期着色の小ささ、繰り返し耐久性の高さを示すと同時に、高いダブルピーク性を示すことが分かる。
本発明のクロメン化合物において、ダブルピーク性(AY/AB)が高いものが、グレーやブラウンの色調に調整する際に、一般的に耐久性が低い黄色化合物の使用量を減らすことができる点で好ましい。例えば、AY/ABは、1.00以上が好ましく、1.10以上がより好ましく、1.20以上がさらに好ましく、1.30以上が特に好ましい。
退色半減期τ1/2は、40秒以上130秒未満が好ましく、40秒以上100秒未満がより好ましく、40秒以上80秒未満が特に好ましい。
サーモクロミズムによる透過率は、85%以上が好ましく、87%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。
吸収端は、初期着色と発色感度の観点から、400 nm以上420 nm以下が好ましく、405 nm以上420 nm以下がより好ましく、405 nm以上415 nm以下が特に好ましい。
一方、比較例1(化合物A)は、ダブルピーク性は高いものの、退色速度が非常に遅く、初期透過率が低く(ブラウンに着色している)、繰り返し耐久性もやや低いという問題を有する。これに対し、本発明の実施例20(化合物8)は、ダブルピーク性を維持しつつ、退色速度も速く、初期透過率も高く、繰り返し耐久性も高いことが分かる。
比較例2(化合物B)は、ダブルピーク性が低く、初期透過率が低く(グレーに着色している)、さらに繰り返し耐久性も低いという問題を有する。これに対し、本発明の実施例21(化合物9)は、ダブルピーク性が高く、初期透過率も高く、耐久性も高いことが分かる。
比較例3(化合物C)は、ダブルピーク性が高く、繰り返し耐久性にも優れるが、吸収端による初期着色が大きい(吸収端が可視領域にかかっているため黄色に着色している)という問題を有する。これに対し、本発明の実施例22(化合物10)は、ダブルピーク性、繰り返し耐久性を維持しつつ、吸収端による初期着色も小さいことが分かる。
比較例4(化合物D)は、6位にメトキシ基を有するが、5位、7位、9〜12位のいずれにも、脂環式環に脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、又は脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基から選ばれる置換基を有していない。この場合、高いダブルピーク性は得られない。
比較例5(化合物E)は、5〜12位のいずれにも、脂環式環に脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、又は、脂肪族複素環に脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環基から選ばれる置換基を有していない。この場合、高いダブルピーク性は得られない。
比較例6(化合物F)は、ピラン骨格の7位の炭素との結合が芳香族環となされている。この場合、吸収端による初期着色が大きくなり(吸収端が可視領域にかかっているため黄色に着色している)、高いダブルピーク性は得られない。これに対し、本発明の実施例24(化合物12)は、ダブルピーク性、繰り返し耐久性を維持しつつ、吸収端による初期着色も小さいことが分かる。
[実施例25〜38]
[実施例25〜38]
実施例1と同様にして表5に示したクロメン化合物を合成した。得られた生成物のクロメン化合物について、実施例1と同様にして構造解析した結果、表5に示す構造式で示される化合物であることを確認した。表6には、各実施例で得られたクロメン化合物の元素分析値と1H-NMRスペクトル値を示した。表6において、化合物No. 25〜38は、それぞれ、実施例25〜38で得られたクロメン化合物である。
クロメン化合物として実施例25〜38で得られた化合物を用いた以外は、実施例12と同様の方法によりフォトクロミックプラスチックレンズを製造し、その特性を評価した。その結果をまとめて表7に示した。表7中の化合物No. 25〜38は、それぞれ、実施例25〜38で得られたクロメン化合物である。
以下に、構造式(7)で表わされるナフトール化合物の実施例を例示する。
[実施例53]
[実施例53]
実施例1において使用する構造式(23)のナフトール誘導体の調製
マグネシウム5.2g(214.0ミリモル)をテトラヒドロフラン230 mlに加え、55℃に昇温した。上述の構造式(17)のベンゼン誘導体65g(188.0ミリモル)のテトラヒドロフラン(230 ml)溶液を、先の溶液に滴下し、Grignard試薬を調製した。得られたGrignard試薬を−78℃に冷却し、ベンゾイルクロライド29.8g(214.0ミリモル)のテトラヒドロフラン(230 ml)溶液を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温し、3時間攪拌した。反応後、水で洗浄し、溶媒を除去し、メタノールでの再結晶によって精製をして、下記構造式(26)
のベンゾフェノン誘導体42.3g(122.2ミリモル)を白色固体として得た(収率:65%)。
マグネシウム5.2g(214.0ミリモル)をテトラヒドロフラン230 mlに加え、55℃に昇温した。上述の構造式(17)のベンゼン誘導体65g(188.0ミリモル)のテトラヒドロフラン(230 ml)溶液を、先の溶液に滴下し、Grignard試薬を調製した。得られたGrignard試薬を−78℃に冷却し、ベンゾイルクロライド29.8g(214.0ミリモル)のテトラヒドロフラン(230 ml)溶液を滴下した。滴下終了後、室温まで昇温し、3時間攪拌した。反応後、水で洗浄し、溶媒を除去し、メタノールでの再結晶によって精製をして、下記構造式(26)
のベンゾフェノン誘導体42.3g(122.2ミリモル)を白色固体として得た(収率:65%)。
前記構造式(26)のベンゾフェノン誘導体42.3g(122.2ミリモル)、コハク酸ジエチル24.5g(140.5ミリモル)を、テトラヒドロフラン200 mlに溶解し、55℃に昇温した。この溶液に、カリウム‐t‐ブトキシド15.7g(140.5ミリモル)のテトラヒドロフラン(400 ml)溶液を滴下し、1時間攪拌した。反応後、トルエン200 mlを加え、濃塩酸、次いで、酢酸エチル200 mlを加え、水で洗浄し、溶媒を除去して、下記構造式(27)
の化合物58.0g(122.2ミリモル)をオレンジ色オイルとして得た(収率:100%)。
の化合物58.0g(122.2ミリモル)をオレンジ色オイルとして得た(収率:100%)。
前記構造式(27)の化合物58.0g(122.2ミリモル)、酢酸ナトリウム10.1g(122.2ミリモル)及び無水酢酸62.4g(608.5ミリモル)をトルエン200 mlに溶解し、3時間還流した。反応後、水で洗浄し、溶媒を除去し、酢酸エチル及びアセトニトリルでの再結晶によって精製して、下記構造式(28)
の化合物14.0g(28.1ミリモル)を、黄色固体として得た(収率:23%)。
の化合物14.0g(28.1ミリモル)を、黄色固体として得た(収率:23%)。
前記構造式(28)の化合物14.0g(28.1ミリモル)をメタノール75mlに分散した。この溶液に水酸化ナトリウム6.7g(168.6ミリモル)の水溶液80mlを加え、3時間還流した。反応後、濃塩酸、次いで、水で洗浄し、溶媒を除去し、トルエンにて再度懸濁化することによって精製して、下記構造式(29)
のカルボン酸誘導体11.4g(26.7ミリモル)を黄色固体として得た(収率:95%)。
のカルボン酸誘導体11.4g(26.7ミリモル)を黄色固体として得た(収率:95%)。
前記構造式(29)のカルボン酸誘導体11.4g(26.7ミリモル)及び塩化ベンジル7.4g(58.7ミリモル)をN,N‐ジメチルホルムアミド150 mlに溶解した。この溶液に、炭酸カリウム9.2g(66.8ミリモル)を加え、60℃に昇温し、3時間攪拌した。反応後、トルエン200 mlを加え、水で洗浄し、溶媒を除去して、下記構造式(30)
の化合物15.9g(26.2ミリモル)を黄色固体として得た(収率:98%)。
の化合物15.9g(26.2ミリモル)を黄色固体として得た(収率:98%)。
前記構造式(30)の化合物15.9g(26.2ミリモル)を、イソプロピルアルコール200 mlに分散した。この溶液に、水酸化ナトリウム31.4g(786.0ミリモル)の水溶液180 mlを加え、3時間還流した。反応後、トルエン200 mlを加え、濃塩酸、次いで、テトラヒドロフラン200 mlを加え、水で洗浄し、溶媒を除去し、トルエンにて再度懸濁化することによって精製して、下記構造式(31)
のカルボン酸誘導体13.3g(25.7ミリモル)を黄色固体として得た(収率:98%)。
のカルボン酸誘導体13.3g(25.7ミリモル)を黄色固体として得た(収率:98%)。
前記構造式(31)のカルボン酸誘導体13.3g(25.7ミリモル)を、トルエン180 mlに分散した。この溶液に、トリエチルアミン7.8g(77.1ミリモル)及びジフェニルホスホリルアジド9.2g(33.4ミリモル)を加え、室温で2時間攪拌した。この溶液に、エタノール5.9g(128.5ミリモル)を加えて、70℃で2時間反応させた。この溶液に、エタノール75mlを加え、次いで、水酸化カリウム14.4g(257.0ミリモル)を加えて、3時間還流した。反応後、エタノールを常圧留去し、テトラヒドロフラン200 mlを加え、水で洗浄し、溶媒を除去して、下記構造式(32)
の化合物11.6g(23.6ミリモル)を黄色固体として得た(収率:92%)。
の化合物11.6g(23.6ミリモル)を黄色固体として得た(収率:92%)。
前記構造式(32)の化合物11.6g(23.6ミリモル)を、アセトニトリル150 mlに分散し、6%塩酸水溶液101.3g(116.8ミリモル)を加え、0℃〜5℃に冷却した。この溶液に、33%亜硝酸ナトリウム水溶液7.3g(35.4ミリモル)を加え、30分攪拌した。この溶液に50%ヨウ化カリウム水溶液19.6g(118.0ミリモル)を加え、室温で6時間攪拌した。反応後、トルエンを加え、水で洗浄し、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフ法により精製して、下記構造式(33)
の化合物10.6g(17.7ミリモル)を黄色固体として得た(収率:75%)。
の化合物10.6g(17.7ミリモル)を黄色固体として得た(収率:75%)。
前記構造式(32)の化合物10.6g(17.7ミリモル)を、トルエン370 mlに分散し、−50℃に冷却した。この溶液に、n‐ブチルリチウム(1.6Mへキサン溶液)12.2 ml(19.5ミリモル)を滴下し、30分攪拌した。この溶液に、3,3,5,5‐テトラメチルシクロへキサノン3.4g(22.2ミリモル)のトルエン溶液7.0gを滴下し、0℃において3時間攪拌した。反応後、トルエンを加え、水で洗浄し、溶媒を除去した後、メタノールにて再度懸濁化することによって精製して、下記構造式(34)
の化合物6.7g(10.6ミリモル)を黄色固体として得た(収率:60%)。
の化合物6.7g(10.6ミリモル)を黄色固体として得た(収率:60%)。
前記構造式(34)の化合物6.7g(10.6ミリモル)を、テトラヒドロフラン150 mlに溶解し、ギ酸アンモニウム2.7g(42.4ミリモル)、5%炭化パラジウム2.2gを加え、室温において8時間攪拌した。反応後、トルエン50mlを加え、水で洗浄し、溶媒を留去した後、トルエンにて再度懸濁化することによって精製して、下記構造式(35)
の化合物5.4g(10.0ミリモル)を黄色固体として得た(収率:94%)。
の化合物5.4g(10.0ミリモル)を黄色固体として得た(収率:94%)。
前記構造式(35)の化合物5.4g(10.0ミリモル)を、トルエン120 mlに溶解し、90℃に昇温した。この溶液に、p‐トルエンスルホン酸一水和物57.6g(303.0ミリモル)を加え、4時間還流した。反応後、水で洗浄し、溶媒を除去した後、トルエンにて再度懸濁化することによって精製して、上記構造式(23)のナフトール化合物3.9g(7.5ミリモル)を、白色固体として得た(収率:75%)。
この生成物の元素分析値はC:85.42%、H:8.55%、O:6.03%であって、C37H44
この生成物の元素分析値はC:85.42%、H:8.55%、O:6.03%であって、C37H44
O2の計算値であるC:85.34%、H:8.52%、O:6.14%に良く一致した。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ0.5〜4.5ppm付近にアルキル基に基づく36Hのピーク、δ5.0〜9.0ppm付近にヒドロキシル基及び芳香環プロトンに基づく8Hのピークを示した。
さらに、13C‐核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ110〜160 ppm付近に芳香環の炭素に基づくピーク、δ20〜80ppmにアルキル基、アルコキシ基の炭素に基づくピークを示した。
前記の結果から、単離生成物は構造式(23)のナフトール化合物であることを確認した。
[実施例54〜78]
[実施例54〜78]
実施例53と同様にして、下記の表8に示すナフトール化合物を合成した。得られた生成物について、実施例53と同様の構造同定手段を用いて構造解析した結果、実施例2〜12及び実施例25〜38のクロメン化合物の合成において使用されたナフトール誘導体であることが確認された。表8には、これらのナフトール化合物の元素分析値、各化合物の構造式から求めた計算値及び1H-NMRスペクトルの特徴的なスペクトルを示した。
Claims (17)
- 構造式(1)
のインデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格を基本骨格として有するクロメン化合物であって、前記インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の5〜12位の炭素原子の少なくとも1つが、前記インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及び前記インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる置換基を、炭素‐炭素結合を介して有していることを特徴とするクロメン化合物。 - 一般式(2)
〔式中、
R1及びR2は、インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基、及びピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に、脂環式環、脂肪族複素環、芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環基からなる群から選ばれる基であって、炭素‐炭素結合を介してインデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格に結合する基であり、
R1'及びR2'は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であり、
R4及びR5は、それぞれ独立に、一般式(3)
(式中、R8は、アリール基、又はヘテロアリール基であり;R9は、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子であり;mは1〜3の整数である)で表される基、一般式(4)
(式中、R10は、アリール基、又はヘテロアリール基であり;nは1〜3の整数である)で表される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基であるか、又はR4及びR5は、互いに結合して、脂環式環を形成し、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子が13位の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であるか、又はR6及びR7は、インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の13位の炭素原子と共に、互いに一緒になって、炭素数が3〜20である、脂環式環基又は脂環式環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環、又は炭素数が3〜20である、複素環基又は複素環に芳香族環又は芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成し、
a、b、c及びdは、それぞれ、0〜4の整数であり、ただし、a+b=1〜8、a+c=4、b+d=4であり、
aが2以上である場合、R1は、互いに、同一又は異なる基であり、
bが2以上である場合、R2は、互いに、同一又は異なる基であり、
cが2以上である場合、R1'は、互いに、同一又は異なる基であり、
dが2以上である場合、R2'は、互いに、同一又は異なる基であり、
a及びbが共に0ではない場合、R1及びR2は、互いに、同一又は異なる基であり、
c及びdが共に0ではない場合、R1'及びR2'は、互いに、同一又は異なる基である]
で表される請求項1記載のクロメン化合物。 - インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に脂環式環が縮環した縮合多環基が、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ビシクロ[2,2,2]オクタン環、ビシクロ[3,2,1]オクタン環、ビシクロ[3,3,1]ノナン環、及びビシクロ[4,3,0]ノナン環でなる群から選ばれる環を構成する炭素数4〜20のビシクロ環の基又は1‐アダマンタン環及び2‐アダマンタン環から選ばれる環を構成する炭素数4〜20のトリシクロ環の基である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に脂肪族複素環が縮環した縮合多環基が、アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、アザビシクロ[2,2,2]オクタン環、アザビシクロ[3,2,1]オクタン環、アザビシクロ[3,3,1]ノナン環、オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、オキサビシクロ[2,2,2]オクタン環、オキサビシクロ[3,2,1]オクタン環、オキサビシクロ[3,3,1]ノナン環、チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、チアビシクロ[2,2,2]オクタン環、チアビシクロ[3,2,1]オクタン環、及びチアビシクロ[3,3,1]ノナン環から選ばれる環を構成する炭素数3〜20のビシクロ環の基又は1‐アザアダマンタン環、2‐アザアダマンタン環、1‐オキサアダマンタン環、及び1‐チアアダマンタン環から選ばれる環を構成する炭素数3〜20のトリシクロ環の基である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に芳香族環が縮環した縮合多環基が、ベンゾシクロプロパン環基、ベンゾシクロブタン環基、ベンゾシクロペンタン環基、ベンゾシクロへキサン環基、ベンゾシクロヘプタン環基、及びベンゾシクロオクタン環基からなる群から選ばれる環を構成する炭素数7〜30の縮合多環基である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂環式環に芳香族複素環が縮環した縮合多環基が、3,4‐シクロペンテノピリジン環基、3,4‐シクロヘプテノピリジン環基、3,4‐シクロオクテノピリジン環基からなる群から選ばれる環を構成する炭素数6〜30の縮合多環である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に脂環式環が縮環した縮合多環基が、アザビシクロ[4,3,0]ノナン環基、オキサビシクロ[4,3,0]ノナン環基、ヘプタヒドロシクロヘキサ[c]チオフェン環基からなる群から選ばれる環を構成する炭素数3〜20の縮合多環である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に脂肪族複素環が縮環した縮合多環基が、ジアザビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン環、ジアザビシクロ[3,2,1]オクタン環、ジアザビシクロ[3,3,1]ノナン環、ジアザビシクロ[4,3,0]ノナン環、ジオキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ジオキサビシクロ[2,2,2]オクタン環、ジオキサビシクロ[3,2,1]オクタン環、ジオキサビシクロ[3,3,1]ノナン環、ジオキサビシクロ[4,3,0]ノナン環、ジチアビシクロ[2,2,1]ヘプタン環、ジチアビシクロ[2,2,2]オクタン環、ジチアビシクロ[3,2,1]オクタン環、ジチアビシクロ[3,3,1]ノナン環、2,4,10‐トリアザトリシクロ[3,3,1,13,7]デカンの基からなる群から選ばれる環を構成する炭素数3〜20の縮合多環基である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に芳香族環が縮環した縮合多環基が、2‐インドリン環基、2‐クマラン環基、2,3‐ジヒドロベンゾ[c]チオフェン環基からなる群から選ばれる環を構成する炭素数7〜30の縮合多環である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- インデノ(2,1‐f)ナフト(1,2‐b)ピラン骨格の炭素原子との結合部位が存在する脂肪族複素環に芳香族複素環が縮環した縮合多環基が、2,3‐ジヒドロピロロ[2,3‐b]ピリジン環基、2,3‐ジヒドロフロ[2,3‐b]ピリジン環基、2,3‐ジヒドロチエノ[2,3‐b]ピリジン環基、4,6‐ジヒドロフロ[3,4‐b]フラン基、4,6‐ジヒドロチエノ[3,4‐b]チオフェン基からなる群から選ばれる環を構成する炭素数6〜30の縮合多環基である、請求項1又は2記載のクロメン化合物。
- 一般式(5)
[式中、
R1、R2、R2'、R4、R5、R6、R7、b及びdは、それぞれ、請求項2に記載のもの と同意義であり、
R3及びR11は、水素原子;ヒドロキシル基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アミノ基;窒素原子を含み、該窒素原子がピラン骨格の炭素原子と直接結合する複素環基;シアノ基;ニトロ基;ホルミル基;ヒドロキシカルボニル基;アルキルカルボニル基;アルコキシカルボニル基;ハロゲン原子;アラルキル基;アリール基;アラルコキシ基;又はアリールオキシ基であり、
R12は、請求項2において定義したR1'及びR2'の中で、Hammett数σpが−0.1以下の電子供与性の基である]
で表される請求項2に記載のクロメン化合物。 - 請求項1〜11のいずれかに記載のクロメン化合物と重合性単量体とを含有するフォトクロミック硬化性組成物。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のクロメン化合物が内部に分散している高分子成型体を構成部材として有するフォトクロミック光学物品。
- 少なくとも1つの面の全部又は一部が、請求項1〜11のいずれかに記載のクロメン化合物が分散している高分子膜で被覆された光学基材を構成部材として有する光学物品。
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