JPWO2011052089A1 - 電離性放射線で架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

リニア放出性と2段階放出性との2種類の薬剤放出プロファイルを制御でき、化学架橋された生体内分解性高分子水溶性物質よりも薬剤吸着能力が優れ、最適な治療効果が認められる架橋された生体内分解性高分子水溶性物質に由来する生体内薬剤徐放用担体材料及びその製造方法を提供する。ゼラチン等の生体内分解性高分子水溶性物質を電離性放射線によって窒素等の不活性気体雰囲気下で架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料であって、該ヒドロゲルが、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分とを、質量比で95:5〜5:95、好ましくは、95:5〜55:45で有し、かつ、該担体材料が、薬剤を担持して生体内に埋め込んだ後、2段階放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料、または、該ヒドロゲルを水で洗浄処理した実質的に未架橋部分を含まない生体内薬剤徐放用担体材料、並びにこれら担体材料の製造方法。

Description

本発明は、主に医療分野で用いられる電離性放射線で架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料及びその製造方法に関する。
ゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質は、生体安全性が高く、しかも生体内で分解性を示すため、医療品や化粧品の用途に適した水溶性高分子材料である。ゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質は、架橋することにより、架橋ゼラチンなどの架橋物を形成することができる。架橋ゼラチンなどの架橋物は、板状、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状などの各種形状に成形することができる。架橋ゼラチンなどの架橋物は、水分を吸収してヒドロゲルを形成する。そのため、例えば、架橋ゼラチンは、架橋ゼラチンゲルと呼ばれることがある。
架橋ゼラチンなどの架橋物は、生体内に存在する酵素、例えばプロテアーゼで分解性を示し、その分解速度は、架橋度によって制御することができる。架橋ゼラチンなどの架橋物の架橋度は、その含水率にほぼ逆比例する。架橋ゼラチンなどの架橋物の含水率が小さいほど、その架橋度が高いことを示す。
架橋ゼラチンなどの架橋物は、生体適合性が良好である上、生理活性因子などの薬剤を担持させることができる。成長因子等の生理活性因子を担持した架橋ゼラチンなどの架橋物を生体内に投与すると、架橋ゼラチンなどの架橋物が生体内で分解するにつれて、担持した生理活性因子が徐々に放出される。
生理活性因子としては、例えば、成長因子である血管新生誘導効果を持つ塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が知られている。このような生理活性因子を、水溶液としてヒトなどの生体内に投与すると、比較的短期間で失活したり、生体から排除されたりして、その効果が低下するため、治療目的を達成することが困難である。これに対して、生理活性因子を担持した架橋ゼラチンなどの架橋物を、生体内に埋め込んだり、注射器を用いて生体内に注入したりする方法により投与すると、該生理活性因子が徐放されるため、該生理活性因子を水溶液で投与した場合に比べて、長期間にわたって効果を持続させることができる。
生体内分解性高分子水溶性物質としては、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、デンプン等の多糖類、ゼラチン、コラーゲン等のタンパク質、ポリ−γ−グルタミン酸、ポリ−L−リジン等のポリアミノ酸、及びそれらの誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドとの共重合体などがあるが、そのうち、ゼラチンは、コラーゲンを親物質とする動物性タンパク質である。そのため、架橋ゼラチンは、薬剤徐放用担体材料としての用途だけではなく、化粧品への用途展開も期待されている。このほか、架橋ゼラチンは、工業用などの広範な用途に用いることができる。しかし、従来の架橋ゼラチンには、解決すべき重要な諸問題が残されている。
最大の問題は、従来のゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋方法が、実質的に、架橋剤を用いる化学架橋法に限定されていることにある。化学架橋法は、生産性に劣ることや架橋度の正確な制御が困難であることに加えて、残留する架橋剤や反応停止剤などの化学物質による生体への悪影響が懸念されるという問題を有している。
国際公開第1994/27630号(特許文献1)には、ゼラチンを架橋して得られた架橋ゼラチンに、bFGFを担持させた架橋ゼラチンゲル製剤が提案されている。特許文献1には、ゼラチンの架橋には、架橋剤を用いた化学架橋法のほかに、熱処理または紫外線照射によっても架橋できると記載されている。しかし、特許文献1の実施例には、グルタルアルデヒドや1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などの架橋剤を用いた化学架橋法が示されているだけである。
ゼラチンの化学架橋法では、化学物質からなる架橋剤を使用して架橋反応を行い、かつ、架橋反応を終了させるため、反応系内に化学物質からなる反応停止剤を加える必要がある。低毒性の架橋剤や反応停止剤を用いた場合であっても、これらは、化学物質であるため、微量であっても生体への悪影響のおそれがある。そのため、架橋ゼラチンに架橋剤や反応停止剤が残留しないように十分に精製するなど、安全性の確保に注意する必要がある。特許文献1には、架橋剤を用いて得られた架橋ゼラチンを、蒸留水や有機溶媒で洗浄することが記載されている。具体的には、特許文献1の実施例1には、架橋ゼラチンを、蒸留水により、37℃で12時間洗浄したことが記載されている。特許文献1の実施例1では、架橋反応にも24時間という長時間を費やしている。したがって、架橋剤を用いた架橋ゼラチンの製造方法は、架橋反応や安全性の確保に多大の時間と労力を要する。
他方、ゼラチンに紫外線を照射して架橋する方法では、光反応開始剤を用いて架橋反応を開始させ、そして、架橋反応を終了させるには、反応停止剤を添加して光反応開始剤の活性を停止させる必要がある。光反応開始剤や反応停止剤は、化学物質であるため、化学架橋法と同様の問題を有している。
熱処理によりゼラチンを架橋する方法は、架橋に長時間を要する上、架橋度の制御が難しく、所望の架橋度を持つ架橋ゼラチンを安定的に得ることが困難である。そのため、熱処理により得られた架橋ゼラチンに生理活性因子などの薬剤を担持させても、所望の徐放性を安定して発揮する架橋ゼラチンゲル製剤を得ることが困難である。
また、薬剤を担持した架橋ゼラチンなどの架橋物は、投与手段によっては粒子の形状であることが望ましいことがある。例えば、架橋ゼラチン粒子は、他成分との均一な混合が容易であるため、化粧品などの用途にも適している。しかし、従来の架橋ゼラチンなど生体内分解性高分子水溶性物質の架橋物の製造方法では、有害な残留化学物質を含まず、所望の架橋度を有する架橋ゼラチンなどの架橋物を、粒子の形状で効率的に製造することが困難であった。
すなわち、特許文献1に開示されている架橋剤を用いた架橋ゼラチン粒子の製造方法は、架橋反応と精製による安全性の確保に多大の時間と労力を要し、製品コストの低減化に限界があった。特許文献1に教示されている紫外線の照射や熱処理による架橋方法を採用して、架橋ゼラチン粒子を製造したとしても、このような製造方法は、前述のごとき諸問題を抱えている。
架橋ゼラチンの製造方法としては、化学架橋、紫外線の照射、熱処理などの外に、電子線架橋による方法が知られている。
国際公開第2008/016163号(特許文献2)には、ゼラチンまたはゼラチン誘導体が酸素雰囲気下で電子線の照射により架橋された架橋ゼラチンゲル層の複数層が、互いに隣接して配置された層構成を有する架橋ゼラチンゲル多層構造体と、その製造方法が開示されている。しかし、2枚のシートの接着性向上に主眼を置き、空気中など酸素含有雰囲気下で電子線を照射する方法であるため、薬剤の吸着性、徐放性については未だ改良の余地があった。
更に、特開2004−339395号公報(特許文献3)には、ゼラチンを含む原料と水もしくは緩衝液とを混合し、5〜50%濃度の混合物を形成し、加圧成形して所要形状とした後、1kGy以上200kGy未満の照射量で電離性放射線を照射するゼラチンから成る成形体の製造方法が記載されている。特許文献3には、この成形体は、フィルム、容器等として従来プラスチックで成形されている製品の代替品として用いられることが記載され、加えて、細胞培養担体や、熱傷、創傷、褥瘡、擦過傷または皮膚潰瘍などの皮膚欠損剤等の医用基材として用いることが記載されている。しかし、この成形体を、生体内薬剤徐放用担体材料として使用することについては何ら示唆がない。
国際公開第1994/27630号 国際公開第2008/16163号 特開2004−339395号公報
本発明の課題は、生体に対する安全性に優れ、かつ、生理活性因子等の薬剤の担体として有用である、生体内分解性高分子水溶性物質を架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料と、その製造方法を提供することにある。
特に、本発明の課題は、2種類の薬剤放出プロファイルを得ることができる、生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料とその製造方法を提供することにある。すなわち、生体内薬剤徐放用担体材料においては、担持している生理活性因子等の薬剤の種類如何により、大別すると、生体内に埋め込んでから短時間に大量の薬剤が放出される初期バーストが望まれるものと、生体内に埋め込んでから長期間にわたって一定量の薬剤が放出され続けることが望まれるものがあり、本発明は、この2種類の薬剤放出プロファイルの要求に応えるものである。
更に、本発明の課題は、化学架橋品と比較して薬剤吸着能が優れている、架橋ゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋物から成る生体内薬剤徐放用担体材料とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究する中で、電離性放射線で架橋した架橋ゼラチンゲルシートなどの、生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料に薬剤を担持させて水溶液中における薬剤の放出特性を確認した。本発明者らは、その際、初期段階(架橋状態によっては数秒から数時間)で架橋ゼラチンゲルシートに担持させた薬剤の半分以上が架橋ゼラチンゲルシートから溶出することがあること、溶出した物質を調べたところ、架橋ゼラチンゲルシートには低分子量のゼラチンの未架橋部分が存在しており、かつ、このゼラチンの未架橋部分にも薬剤が担持されていること、を見出した。そこで、本発明者らは、架橋ゼラチンゲルのゼラチンの未架橋部分を利用して、薬剤放出性を制御することにより、大きく分けて初期バーストを含む2段階放出の薬剤放出タイプ(以下、「2段階放出性」ということがある。)、及び、長期間にわたって一定量の薬剤が放出され続けるリニア放出の薬剤放出タイプ(以下、「リニア放出性」ということがある。)を、所望により選択することができる架橋ゼラチンゲルなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルを得ることを想到した。
具体的には、ゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質を、不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料として、架橋部分と未架橋部分とを利用することにより、生体内薬剤徐放用担体材料のシートを積層することなく、1層とした場合でも担持した薬剤の2段階放出性を示す架橋ゼラチンシートを想到した。また、ゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質を、不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料に対して水による洗浄処理を行って、実質的に未架橋部分が存在しない生体内薬剤徐放用担体材料を得て、この生体内薬剤徐放用担体材料に薬剤を担持させることにより、担持した薬剤を長期的に一定量放出し続けることができるリニア放出性を示す架橋ゼラチンシートを想到した。
かくして、本発明によれば、
生体内分解性高分子水溶性物質に不活性気体雰囲気下に電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る、生体内薬剤徐放用担体材料であって、
該ヒドロゲルが、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分とを、質量比で95:5〜5:95の範囲で有し、かつ、
該担体材料が、薬剤を担持して生体内に埋め込んだ後、1日経過するまでに担持する薬剤の55質量%以上が体内に放出され、担持する薬剤の残部が2日目以降に徐放される、2段階放出性を示すものである、
生体内薬剤徐放用担体材料、が提供される。
また、本発明によれば、
前記2段階放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料に、水によって洗浄処理を行って成る、
実質的に未架橋部分を含まない、架橋したヒドロゲルから成る、リニア放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料、が提供される。
更に、本発明によれば、
生体内分解性高分子水溶性物質を架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法であって、
不活性気体雰囲気下に電離性放射線を照射して架橋する電離性放射線照射工程を有するとともに、
該ヒドロゲルが、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分とを、質量比で95:5〜5:95の範囲で有し、かつ、
該担体材料が、薬剤を担持して生体内に埋め込んだ後、1日経過するまでに担持する薬剤の55質量%以上が体内に放出され、担持する薬剤の残部が2日目以降に徐放される、2段階放出性を示すものである、
生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法、並びに、
前記電離性放射線照射工程の後に、水による洗浄工程を更に有する、
実質的に未架橋部分を含まない、架橋したヒドロゲルから成る、リニア放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法、が提供される。
本発明の電離性放射線で架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料は、従来行われている化学架橋法で使用される有害な架橋剤を用いることがないので、生体への安全性が高く、化学架橋で行われていた煩雑な工程を大幅に省略できる。
また、本発明の電離性放射線で架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料は、化学架橋された生体内分解性高分子水溶性物質と比較して薬剤吸着能が優れているため、薬剤徐放の制御性が高まり、製剤設計を効率的に行うことができる。なお、化学架橋させた担体材料では、側鎖の官能基を利用して化学架橋反応が進む結果、薬剤のバインディングサイトである官能基が減少するので、薬剤担持吸着能力が低く、また、担体材料の架橋体の生分解によらない薬剤放出も生ずるため、時間当たりの薬剤放出の能力が低い。
薬剤bFGFを吸着担持したゼラチンヒドロゲルの徐放性を示す図。 サケDNAの吸着性と放出性の評価を示す図。 未架橋部分の洗浄除去と生体内残留率を示す図。 BMP−2徐放による骨形成の検討を示す図。
A.生体内薬剤徐放用担体材料
本発明の生体内薬剤徐放用担体材料は、生体内分解性高分子水溶性物質に不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る、生体内薬剤徐放用担体材料である。
1.生体内分解性高分子水溶性物質
本発明に用いる生体内分解性高分子水溶性物質としては、不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して架橋できるものであれば特に制限はなく、一般に入手できる市販品でよいが、例えば、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドとの共重合体などが挙げられる。また、本発明に用いる生体内分解性高分子水溶性物質としては、通常、水に1〜80質量%の濃度で溶解し得るものである。
これらの生体内分解性高分子水溶性物質の中でも、安全性、水に対する溶解性、電離性放射線による架橋性、架橋ゲル製剤や化粧品の成分としての用途への適性などの観点から、ゼラチンが特に好ましい。そこで、以下、生体内分解性高分子水溶性物質として、主としてゼラチンを取り上げて説明するが、ゼラチンに適用可能な技術的事項は、電離性放射線の照射により架橋可能な他の生体内分解性高分子水溶性物質にも適用することができる。
本発明において、生体内分解性高分子水溶性物質として好ましく用いられるゼラチンには、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、及びゼラチン誘導体が含まれる。
すなわち、ゼラチンは、主として、牛骨、牛皮、及び豚皮を原料として生産されている。これらの原料の中でゼラチンに転化される親物質は、コラーゲンと呼ばれるタンパク質である。水に難溶性の物質であるコラーゲンを酸やアルカリで前処理した後、加熱すると、3本鎖螺旋の分子構造が壊れて、ランダムな3本の分子に分かれる。このようにしてゼラチンを熱変性し、可溶化されたコラーゲンを狭義のゼラチンと呼ぶ。コラーゲン原料からゼラチンを抽出するために、塩酸や硫酸などの無機酸または石灰(アルカリ)を用いて、原料の前処理を行う。原料の前処理条件により、前者を酸処理ゼラチン、後者をアルカリ処理ゼラチンと称する。両性電解質であるゼラチンとしては、分子内の正と負がつり合い、全体として荷電がゼロとなるときのpHである等電点に関して、例えば、等電点が5付近のアルカリ処理ゼラチン、及び等電点が9付近の酸処理ゼラチンが含まれる。
ゼラチン誘導体は、ゼラチン側鎖を変性または修飾したものであり、酸処理ゼラチンに、エチレンジアミン、スペルミジンまたはスペルミンをカルボジイミドでグラフト重合したカチオン化ゼラチン誘導体;ゼラチンの側鎖にコハク酸を導入したサクシニル化ゼラチン誘導体;などが代表的なものである。
本発明では、生体内分解性高分子水溶性物質として、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カチオン化ゼラチン誘導体、及びサクシニル化ゼラチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のゼラチンまたはゼラチン誘導体を用いることが好ましい。
市販のゼラチンとしては、例えば、新田ゼラチン株式会社製の等電点が4.9または5.0のアルカリ処理ゼラチン;新田ゼラチン株式会社製の等電点が9.0の酸処理ゼラチン;カチオン化ゼラチン誘導体(等電点が9.0の酸処理ゼラチンにエチレンジアミンをカルボジイミドでグラフトしたゼラチン誘導体);などが挙げられる。
2.電離性放射線
本発明は、ゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質に不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルを得るものである。電離性放射線としては、電子線、α線、β線、及びγ線などの電離性放射線を意味するが、具体的には、取り扱いの容易さなどから、通常、電子線またはγ線が使用され、特に、電子線が好ましい。なお、紫外線は、電離性放射線に包含されるものではない。
3.不活性気体
本発明において、電離性放射線を照射する際に、不活性気体雰囲気を形成する不活性気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン及びクリプトンなどが使用できるが、窒素が好ましく使用される。なお、酸素雰囲気下で電離性放射線を照射すると、オゾンの発生、架橋反応効率の低下、製造される担体材料の表面接着性の上昇などにより、生体内への埋め込みの作業性が低下したり、得られる架橋ゼラチンゲルの未架橋部分の割合を制御することが難しくなることがあるので、本発明では、酸素雰囲気下で電離性放射線を照射することはしない。
4.生体内薬剤徐放用担体材料
本発明における生体内薬剤徐放用担体材料は、薬剤を担持させることができ、薬剤を担持して生体内に埋め込んだ後に、担持する薬剤が徐々に放出されるものであれば、形状は特に限定されない。例えば、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状、粒子状などの任意の形状とすることができる。
薬剤として、生理活性因子を担持した架橋ゼラチンゲルなどの生体内薬剤徐放用担体材料は、通常、手術により生体内に埋め込む方式で用いられ、特にシート状のものが好ましいが、粒子状のものは、注射による投与も可能である。
本発明の架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料がシート状である場合、架橋度が異なる2つのシートを組み合わせることなく、2段階放出性が実現可能であるため、通常は多層構造のシートとする必要はない。しかし、特にシートの厚さを6mm以上とする必要がある場合や初期に放出される薬剤量が多いことが必要な場合には、多層の積層シートとしてもよい。
5.40℃の水に可溶性である未架橋部分
本発明の生体内薬剤徐放用担体材料は、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分とを有するものである。本発明における40℃の水に可溶性である未架橋部分(以下、単に「未架橋部分」ということがある。)とは、生体内分解性高分子水溶性物質に不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルの中の架橋されていない部分であって、40℃の水に可溶性である未架橋部分を指す。該未架橋部分は、生体内では、体温で架橋ゼラチンゲルなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルから容易に放出される。
40℃の水に可溶性である未架橋部分の割合の測定は、乾燥質量比で調べる。すなわち、電子線架橋後の架橋したヒドロゲルの一定量を取り出して、凍結乾燥等により乾燥させて質量(A)を測定した後、40℃の超純水中で1日間静置して、架橋したヒドロゲル中の未架橋部分を除去し、更に、50℃で1日間乾燥して、未架橋部分除去後の質量(B)を測定する。40℃の水に可溶性である未架橋部分の割合を、次の式(1)により求める。
40℃の水に可溶性である未架橋部分の割合(%)=(A−B)/A×100(%)……(1)
本発明において、「実質的に未架橋部分を含まない」とは、架橋ゼラチンゲルなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルを、40℃の水または体温付近の温度の生理食塩水や血液等の水に準じた液体と接触したときに、未架橋部分の放出がないか、あるいは僅かしか認められない状態を意味するものであり、具体的には、前記ヒドロゲルが、40℃の水に溶解する未架橋部分が、未架橋部分と架橋部分との合計に対して5質量%未満であることを意味する。放出される未架橋部分、すなわち、40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満、特に好ましくは0.5質量%未満である。
6.薬剤
本発明の架橋ゼラチンゲルなどの生体内薬剤徐放用担体材料に担持させる薬剤は、生体内に埋め込んだ後に、徐放されることが望まれるものであれば特に限定されないが、生理活性因子が好ましい。
生理活性因子(「生理活性物質」ともいう。)としては、生物に対して生理作用ないしは薬理作用を発現する物質であり、担体材料に担持させて生体内へ埋設または投与することによって、薬剤を徐放させる目的の範囲内で、自由に選択することができる。その際、同じ薬剤であっても、期待する生理活性によって、求められる薬剤の放出プロファイルが異なることがある。
生理活性因子の代表例として、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor;bFGF)を挙げることができる。bFGFは、線維芽細胞ばかりでなく、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、角膜内皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞などの多種類の細胞に対する細胞増殖を刺激することが明らかとなっている物質である。例えば、bFGFを架橋ゼラチンゲルに担持させて、血管新生を誘発する場合は、2段階放出性の放出プロファイルが期待されることがある。
その他の生理活性因子として、例えば、トランスフォーミング増殖因子(TGF−β1)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF−BB)、角化細胞増殖因子(KGF)、骨形成因子(BMP−2)、血管内皮増殖因子(VEGF)、これらをコードするプラスミドDNAなどが含まれる。例えば、BMP−2を架橋ゼラチンゲルに担持させて、骨形成を誘発する場合は、できるだけ長期間にわたって無駄なく安定的に薬剤が放出されるリニア放出性の放出プロファイルが期待されることがある。
また、生理活性因子として、抗癌剤(アドリアマイシン)、臓器保護や降圧用にアンジオテンシンII受容体拮抗剤〔テルミサルタン:ミカルディス(ベーリンガーインゲルハイム)、カンデサルタン(武田薬品工業株式会社)、バルサルタン(ノバルティスファーマ社)〕やエリスロポエチン(タンパク製剤、造血ホルモン)等も挙げられる。これらの薬剤を、架橋ゼラチンゲルに担持させる際には、既に述べたように、2段階放出性が期待される場合と、できるだけ長期間にわたって無駄なく安定的に薬剤が放出されるリニア放出性が期待される場合との両方がある。
生体内薬剤徐放用担体材料に担持させる生理活性因子は、必要に応じて、1種類または2種類以上を選択することができる。なお、多層シートである場合は、シートごとに異なる生理活性因子を担持させることができる。
B.2段階放出の薬剤放出性とリニア放出の薬剤放出性
本発明の架橋ゼラチンゲルなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料は、担持する薬剤の放出性を制御するため、未架橋部分を利用することを特徴とする。
本発明の架橋ゼラチンゲルなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料は、未架橋部分の利用により、大きく分けて、担持した薬剤の2段階放出性の薬剤放出性、またはリニア放出性の薬剤放出性のいずれかを選択することができる。
1.薬剤担持性能
薬剤担持性能は、本発明の生体内薬剤徐放用担体材料に薬剤を担持して、生体内に埋め込んだ後の、埋め込み初期から所定期間経過するまでの間に、残存している薬剤の量を測定することによって求めることができる。
電離性放射線を照射して架橋したゼラチンゲルは、化学架橋したゼラチンゲルと比較して薬剤吸着能が高いことが判明し、より効率的に薬剤を活用できる点でも電離性放射線を照射する架橋方法が優れていることが分かった。詳細な機序は不明であるが、化学架橋したゼラチンゲルは、官能基が架橋によって減少し、吸着能力が減少しているものと推察される。
2.2段階放出性
本発明において、2段階放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料は、ゼラチンなどの生体内分解性高分子水溶性物質に、不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して架橋した架橋ゼラチンゲルなどの生体内薬剤徐放用担体材料であって、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分とを、質量比で95:5〜5:95の範囲で有するヒドロゲルである。未架橋部分と架橋部分との両方に、薬剤を吸着などにより担持させることにより、2段階放出性を有することが可能となる。
2段階放出性とは、初期バーストを示す、すなわち、前記ヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料に薬剤を担持させて生体内に埋め込んだ後、初期(架橋度合いにより若干長短があるが、通常は1日(24時間)を経過するまでを意味する)に架橋ゼラチンゲルに担持する薬剤の55質量%以上が放出される、好ましくは57質量%以上、より好ましくは60質量%以上が生体内に放出されるとともに、後期(2日目以降)には担持した薬剤の残部が持続的に徐放されることを意味する。生体内では、体温で、薬剤を担持する未架橋部分が架橋ゼラチンゲルから溶出されるのに伴い、必要な患部や組織に対して初期の段階から後期の段階にかけて薬剤が届けられる。この結果、電離性放射線を照射して架橋した架橋ゼラチンゲルは、最長4週間程度の期間、持続的に薬剤を放出することが可能である。生体内薬剤徐放用担体材料に薬剤を担持させて生体内に埋め込んだ後、1日(24時間)を経過するまでに架橋ゼラチンゲルが担持する薬剤の55質量%以上が体内に放出されない場合は、初期バーストを欠く結果、所期の薬剤効果が奏されないことがある。初期バーストで放出される薬剤の量の上限は、後期(2日目以降)に担持した薬剤の残部が持続的に徐放される限り、特にないが、通常は80質量%以下、好ましくは75質量%、より好ましくは70質量%である。
通常、電子線照射によって得られる架橋ゼラチンゲルは、架橋部分と未架橋部分とを含んだ状態となり、架橋部分と未架橋部分との両方に生理活性因子等の薬剤を吸着させて担持させることにより、2段階放出性を示すものとなる。
3.リニア放出性
一方、薬剤の種類によって、長期間にわたって一定量の薬剤が放出され続けるリニア放出性が望まれるときは、生体内分解性高分子水溶性物質に電離性放射線を照射して架橋して得た未架橋部分と架橋部分とを有する架橋ゼラチンゲルなどの架橋ゲルに対して、水による洗浄処理を行って、実質的に未架橋部分を含まないものとすればよい。実質的に未架橋部分を含まない架橋ゼラチンゲルに薬剤を吸着などにより担持させることによって、担持する薬剤のリニア放出が可能となり、安定的な薬効を発現することが可能となる。
リニア放出性とは、ヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料に薬剤を担持させて生体内に埋め込んだ後、生体内に埋め込んだ日から7日目以降にかけて、持続的にほぼ直線的に、すなわちほぼ定率で、架橋ゼラチンゲルなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋ゲルから担持した薬剤が放出されることを意味する。すなわち、実質的に未架橋部分を含まない架橋ゼラチンゲルにおいては、担持する薬剤の初期バーストがなく、主に生体内の代謝による架橋ゼラチンゲルの分解に伴って担持する薬剤が放出されるため、なだらかな放出プロファイルとなり、薬剤を持続的に放出させることができる。
ただし、実質的に未架橋部分を含まない架橋ゼラチンゲルなどの生体内分解性高分子水溶性物質の架橋ゲルであっても、生体内に埋め込んだ後、1日(24時間)経過するまでに、担持する薬剤の10〜30質量%程度が体内に放出されることが判明している。これは、架橋ゼラチンゲルに担持させる薬剤の中に、架橋ゼラチンゲルに十分吸着されていないものが含まれていることや、架橋ゼラチンゲルの架橋部分の中の比較的低分子量の架橋部分があり体内で早めに分解を受けること、などに伴って起きるものと推察される。
したがって、本発明において、リニア放出性とは、特に、生体内に埋め込んだ後、2日目以降からの薬剤放出性がほぼ直線的である薬剤の放出プロファイルが得られることを意味する。
リニア放出性としては、薬剤の放出プロファイルが、好ましくは1〜20質量%/日、より好ましくは2〜15質量%/日の範囲内で定率の部分を有するとよい。この結果、実質的に未架橋部分を含まない架橋ゼラチンゲルは、最長4週間程度の期間、持続的に薬剤を放出することが可能である。なお、現時点で得られている化学架橋によるゼラチンゲルでは、薬剤を担持させて生体内に埋め込んだ直後から2日間の間に、担持した薬剤の少なくとも55質量%程度が放出されてしまい、直線的な一定量の薬剤放出とはならないことが判明している。
C.生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法
本発明の生体内薬剤徐放用担体材料を製造する方法は、以下のとおりである。
1.塗工層の形成
シート状の生体内薬剤徐放用担体材料を製造するためには、先ず、ゼラチンまたはゼラチン誘導体など生体内分解性高分子水溶性物質の水溶液の塗工層を形成する(塗工層形成工程)。具体的には、ゼラチンまたはゼラチン誘導体の水溶液を、15〜80℃、好ましくは20〜70℃、より好ましくは40〜60℃の温度に調温し、該ゼラチンまたはゼラチン誘導体水溶液を、所定形状の鋳型(容器)内に、所望の厚みになる容量で流延して塗工層を形成する。水溶液の温度が低すぎると、流延が困難となり、均一な厚さの塗工層を形成することができないことがある。水溶液の温度が高すぎると、水分の揮発が多くなり所望の濃度を維持することが困難となる。
鋳型(容器)としては、ゼラチンまたはゼラチン誘導体の水溶液を流延したときに、水溶液をはじかない表面材質のものが好ましく、ガラス、金属または各種プラスチック材料などを使用することができる。また、鋳型(容器)の形状は、所望の厚みの均一な厚さの塗工層を形成することができれば、特に限定はなく、断面が円形、四角形など、適宜選定することができる。
生体内分解性高分子水溶性物質の水溶液の濃度は、一般に1〜80質量%であり、好ましくは3〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは7〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲内である。水溶液の濃度は、ゼラチン種など生体内分解性高分子水溶性物質の種類に応じて、それぞれに適した範囲内とすることが好ましい。例えば、平均分子量が100,000以上の高分子量ゼラチンの場合は、溶液粘度が高いため、その水溶液の濃度は、5〜30質量%の範囲内が好ましい。ゼラチン誘導体は、一般に溶液粘度が低いため、その水溶液の濃度は、好ましくは7〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは15〜40質量%の範囲内である。水溶液の濃度が薄すぎると、架橋ゼラチンゲルの架橋密度が小さすぎて、十分な薬剤担持性能を備えることが困難となることがある。水溶液の濃度が濃すぎると、流延時に均一な厚さの塗工層を形成することが困難となることがある。
塗工層の厚みは、照射する電離性放射線の線量や架橋ゼラチンゲルの未架橋部分の割合などを考慮して、最適な範囲が選択されるが、通常、50μm〜8mmの範囲であり、好ましくは200μm〜6mm、より好ましくは300μm〜5mm、特に好ましくは500μm〜3mmである。塗工層の厚みが薄すぎると、電離性放射線を照射して架橋した生体内薬剤徐放用担体材料の薬剤担持能力が十分なものとならなかったり、未架橋部分と架橋部分との比率を調整することが困難となることがある。塗工層の厚みが厚すぎると、加速電圧を過度に大きくする必要が生じたり、未架橋部分と架橋部分との比率を調整することが困難となることがある。なお、塗工層の厚みは、電離性放射線を照射して架橋した後にも実質的に保持されている。
2.電離性放射線の照射
その後、塗工層に、不活性気体雰囲気下で電離性放射線を照射して、架橋ゼラチンゲルを得る(電離性放射線照射工程)。電離性放射線としては、電子線が好ましく用いられる。
塗工層への電子線の照射は、汎用の電子線照射装置を用いることができる。例えば、株式会社NHVコーポレーション製の電子線照射装置「走査型電子照射装置 EPS−800」を用いた加速電圧上限800kVでの照射を挙げることができるが、この装置に限定されるものではない。電子線の照射は、塗工層に、電子流(mA)と照射域の被照射体移動速度(m/min)から規定される所望の照射線量(kGy)を照射して、ゼラチン等の生体内分解性高分子水溶性物質を架橋させる。
電子線の照射は、生体内分解性高分子水溶性物質の種類や形状、塗工層の厚み等によって、最適条件を選択すればよく、例えば、窒素雰囲気下で、加速電圧100kV〜3MV、好ましくは500kV〜1MVの範囲内で、照射線量2〜500kGy、好ましくは3〜300kGyの範囲内で行う。一般的には塗工層の厚みが大きいときは、加速電圧を大きくしたり、照射線量を大きくする必要があるが、塗工層の厚み方向で生じることがある電子線エネルギーの減衰が、単純な比例関係ではないので、加速電圧及び照射線量の調整が必要である。電子線の照射は1回行うことが通例であるが、加速電圧を変更し、数回に分けて電子線の照射を行うこともできる。
なお、電離性放射線としてγ線を照射するときは、電子線の照射に準じて、最適範囲を選定すればよい。
また、シート状の架橋ゼラチンゲルの多層構造体を得る場合は、架橋したシート状のゼラチンゲル層の上に、上記と同様にゼラチンまたはゼラチン誘導体水溶液を流延し、次いで、電子線を照射して架橋させる操作を繰り返し行うことにより、所望の層数と合計厚みを持つ架橋ゼラチンゲル多層構造体を得ることができる。
3.シート状の担体材料の回収
電離性放射線を照射して架橋させた架橋ゼラチンゲルを鋳型から取り出し、シート状の生体内薬剤徐放用担体材料を回収する。
2段階放出性のシート状の生体内薬剤徐放用担体材料を回収するに際しては、通常、超純水、蒸留水またはイオン交換水などの水による架橋ゼラチンゲルの洗浄処理を行わない。
しかし、薬剤の放出性制御のために、水による洗浄処理を行うことによって、未架橋部分を一定量除くこともできる。例えば、電離性放射線を照射して生体内分解性高分子水溶性物質を架橋した後、超純水、蒸留水またはイオン交換水などの水による洗浄処理を行って未架橋部分の特定量を除き、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分との質量比が95:5〜5:95の範囲、好ましくは95:5〜20:80、より好ましくは95:5〜30:70の範囲、更に好ましくは、未架橋部分が過半を占める95:5〜55:45の範囲に調整することで、前述の体内での薬剤放出プロファイルを本発明の範囲内とすることができる。
回収後のシート状の担体材料は、そのまま保管してもよいが、減圧乾燥または凍結乾燥(フリーズドライ)しておくと、比較的長期間の保存が可能となる。
4.粒子状の担体材料の製造
球状、粒子状、粒状(以下、これらをまとめて「粒子状」ということがある。)の架橋ゼラチンゲルを製造する場合は、オイル中にゼラチン水溶液を分散させて、該ゼラチン水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョン(油相中に水相が分散してなるエマルジョン)を調製する方法を好適に採用することができる。W/O型エマルジョンにおける水相の分散サイズを調整することにより、得られる粒子状の架橋ゼラチンゲルのサイズを所望の範囲に設計できる。
油相を形成させるために使用するオイルは、植物性のものが好ましく、オリーブオイル、ダイズオイル、コーンオイル等を例示できる。W/O型エマルジョンの調製は、エマルジョンの形成方法として従来公知である方法を用いて行うことができる。たとえば、オイルにゼラチン水溶液を添加した後、攪拌を1分間以上行うことが好ましく、より好ましくは5分間以上、更に好ましくは10分間以上行えばよい。この場合、特に分散が均一なW/O型エマルジョンを得ることができる。分散の均一性の点では、エマルジョンの形成における攪拌時間は長い方が好ましいが、攪拌時間が長過ぎると、ゼラチンのゲル化能力などの物性が劣化する場合があるため、攪拌時間は24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは5時間以下とすればよい。
具体的には、撹拌用モーターとフッ素樹脂製撹拌用プロペラを三つ口丸底フラスコに取り付け、これらを固定した装置に、ゼラチン水溶液を入れ、ここにオリーブ油等の油を加えて200〜600rpm程度の速度で撹拌し、W/O型エマルジョンとすることができる。
次いで、このエマルジョンに電子線などの電離性放射線を照射した後に、遠心分離により粒子状の架橋ゼラチンを所定のメッシュ間隔のフィルターで濾別して回収し、アセトン、酢酸エチル、IPA、エタノール等で洗浄することによって、粒子状の架橋ゼラチンゲルを得ることができる。
粒子状の架橋ゼラチンゲルの平均粒径は、1〜500μmmの範囲内、好ましくは1.5〜200μm、より好ましくは2〜100μmの範囲内が、特に注射器を用いた作業の取り扱いなどのために便利である。なお、ここで平均粒径とは、たとえばレーザー回折式分析装置を用いてレーザー散乱を検出する方法で測定される値である。
架橋ゼラチンゲル粒子が凝集する場合には、例えば、超音波照射(冷却下、1分以内程度が好ましい)等を行ってもよい。
2段階放出性の粒子状の生体内薬剤徐放用担体材料を製造する場合は、通常、水による架橋ゼラチンゲルの洗浄処理を行わない。しかし、薬剤の放出性制御のために、水による洗浄処理を行うことによって、未架橋部分を一定量除いて、未架橋部分の割合を所望の範囲に調整することもできる。
5.未架橋部分の除去
本発明において、実質的に未架橋部分を含まない架橋したヒドロゲルを製造するためには、生体内分解性高分子水溶性物質に不活性気体雰囲気下で電子線などの電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料を得た後に、この生体内薬剤徐放用担体材料に対して、超純水、蒸留水またはイオン交換水などの水による洗浄処理を行うことによって、未架橋部分を溶出させる方法によればよい(洗浄処理工程)。未架橋部分を溶出させるための水による洗浄処理工程としては、例えば、5〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは15〜42℃の温度の水に、架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料を、10分間〜2日間、好ましくは20分間ないし1日間、より好ましくは30分間〜10時間浸漬させる洗浄操作を、1回〜10回、好ましくは1回〜6回、より好ましくは2回〜4回繰り返して行う方法等が挙げられる。この洗浄操作により、未架橋部分を減じて、実質的に未架橋部分を含まない架橋ゼラチンゲルが得ることができる。
なお、生体内薬剤徐放用担体材料が多層構造体である場合は、多層構造体を積層する前または後で、未架橋部分を溶出させるための水による洗浄処理工程を行うことができるが、工程を煩雑としないために、すべての層の積層が終わった後に洗浄処理を行うことが好ましい。
D.薬剤の担持
本発明の生体内薬剤徐放用担体材料は、生理活性因子等の薬剤を担持させるためのものである。本発明の生体内薬剤徐放用担体材料に薬剤を担持させる方法は、特に限定されないが、例えば、薬液(薬剤を水溶液等に溶解させたもの)を滴下して、架橋ゼラチンゲルに含浸により薬剤を吸着させて担持させる方法や、架橋ゼラチンゲルを、薬剤の水溶液中に浸漬して、含浸により薬剤を吸着させて担持させる方法などがある。架橋ゼラチンゲルに担持させることができる薬剤の量は、架橋ゼラチンゲルの未架橋部分と架橋部分の割合や含水率等により異なるが、通常、架橋ゼラチンゲル1mg当たり0.1〜500μg、好ましくは1〜450μg、より好ましくは5〜400μgを担持させることができる。
得られた架橋ゼラチンゲルは、ヒドロゲルの状態でも薬液を含浸等により吸着させて薬剤を担持することが可能であるが、架橋ゼラチンゲルを減圧乾燥または凍結乾燥(フリーズドライ)することにより、薬液を迅速に含浸させることが可能となる。
凍結乾燥の一例として、架橋ゼラチンゲルを、液体窒素中で30分間以上保持または−90℃から−80℃の超低温フリーザ中で1時間以上保持する条件で凍結させた後、角型ドライチャンバー(東京理化器械株式会社製DRC−1000)中に−40℃で保存し、次いで、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製FDU−2100)で1Pa以下になるまで減圧し、−10℃で1〜3日間乾燥させ、取り出し時に結露しないように30℃に調温する工程を取って凍結乾燥体とする方法が挙げられる。本発明の架橋ゼラチンゲルは、凍結乾燥体とすることにより、薬液の吸着性とともに保存安定性が向上する。
E.薬剤担持後の合体による2段階放出性
2段階放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料を製造する別の方法として、それぞれ薬剤を担持させた架橋部分と未架橋部分とを合体させる方法がある。
すなわち、未架橋部分と架橋部分とを有する架橋ゼラチンゲルを、水で数回洗浄することによって、実質的に未架橋部分がない架橋部分のみから成る生体内薬剤徐放用担体材料と、未架橋部分のみから成る生体内薬剤徐放用担体材料とに分離した後、それぞれを凍結乾燥等を行って粉末状にする。次いで、粉末状の、架橋部分のみから成る生体内薬剤徐放用担体材料と、未架橋部分のみから成る生体内薬剤徐放用担体材料とのそれぞれに薬液を含浸により吸着担持させてから、架橋部分と未架橋部分とを一体化することによって、2段階放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料を得ることができる。粉末状態であるため、架橋部分のみから成る生体内薬剤徐放用担体材料と、未架橋部分のみから成る生体内薬剤徐放用担体材料との重量を容易に計量可能であるため、薬剤の2段階放出性を制御することがより容易になる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例中の部及び%は、特に断りのない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
A.未架橋部分を利用して2段階放出性の放出プロファイルを示す架橋ゼラチンゲル
(1)電子線照射によるゼラチンゲルの架橋条件と未架橋部分の存在割合に関する実験
[参考例1]
鋳型(直径55mm・深さ8mmのガラスシャーレを使用した。)内に、牛骨由来I型コラーゲンのアルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;等電点5.0)水溶液(濃度10質量%)を流延して、厚み3mmの均一な塗工層を形成した。次いで、該塗工層の水分を実質的に乾燥させることなく、該塗工層の上方から、電子線照射システムEPS−800(株式会社NHVコーポレーション製)を用いて、窒素雰囲気下で、電子線を加速電圧800kVで照射線量を5〜100kGyの範囲で表1に記載の条件で照射して、単層のシート状の架橋ゼラチンゲルを形成した。
シート状の架橋ゼラチンゲルに対して、フリーズドライを行い、初期重量(A)を測定した。次いで、ヤマト科学株式会社製MILLIPORE(使用カラム:SIMPAKKRJ)を用いて得られた40℃の超純水中で1日間静置して、架橋ゼラチンゲル中の未架橋部分を除去した後、50℃で1日間乾燥して未架橋部分除去後の重量(B)を測定した。先の式(1)により、架橋ゼラチンゲル中の未架橋部分の割合を求め、架橋部分の割合を、100−未架橋部分の割合として求めた。架橋部分と未架橋部分との割合(質量%)を求めた結果を表1に示す。
Figure 2011052089
照射線量が20kGyまでは、照射線量の増加に伴って、架橋部分の割合が高まるが、照射線量が20kGyを超えても、照射線量の増加に伴って、架橋部分の割合が高まっていない。電子線が加速電圧800kVでは、厚さ3mmの均一な塗工層の深部では電子線のエネルギーの減衰が生じていること、及び、照射線量が50kGy以上に多くなると、ゼラチンの分解反応が生じて、40℃の水に可溶性である未架橋部分が増加することが推察される。
(2)薬剤bFGFを担持した架橋ゼラチンヒドロゲルの徐放性(2段階放出性)
架橋ゼラチンヒドロゲルの製造及び徐放性の評価は、以下の方法により行った。
[実施例1]
鋳型内に、牛骨由来I型コラーゲンのアルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;等電点5.0)水溶液(濃度10質量%)を流延して、厚み3mmの均一な塗工層を形成した。次いで、該塗工層の水分を実質的に乾燥させることなく、該塗工層の上方から、電子線照射システムEPS−800(株式会社NHVコーポレーション製)を用いて、窒素雰囲気下で、電子線を加速電圧800kVで照射線量が20kGyとなるように照射して、単層のシート状の架橋ゼラチンゲルを形成した。得られた架橋ゼラチンゲルの未架橋部分の割合は、68質量%であり、架橋部分の割合は、32質量%であった。
また、bFGF(生化学用、和光純薬工業株式会社から購入)には、蛍光試薬(Alexa Flour 488(invitrogen製))を、タンパク質ラベリングキット(Alexa Flour 488 Protein Labeling Kit(invitrogen製))を用いて付加させた。
フリーズドライしたシート状の上記架橋ゼラチンゲル5mgに、1mg/mlのbFGF水溶液100μlを含浸させて、薬剤を架橋ゼラチンゲルに吸着させ担持させた。次いで、薬剤を担持した架橋ゼラチンゲルを、マウス(ddY4週齢メス)背部皮下に埋め込んだ。
1、3、7、10、及び14日後に、架橋ゼラチンゲルを取り出して、超純水200μl中に0.05%トリプシン(プロテアーゼ、和光純薬一級)で40℃24時間処理して、架橋ゼラチンゲルを溶解し、ルミノメーター(Perkin Elmer社製、ARVOMX1420)にて535nmの蛍光を計測することにより、架橋ゼラチンゲル中の残留bFGF濃度を計測した。初期投入量に比した残留bFGFを残存率として、得られた結果を図1に示す。
不活性気体雰囲気下で電子線を照射して架橋したヒドロゲルから成る実施例1の架橋ゼラチンゲルは、未架橋部分を68質量%有するとともに、生体内に埋め込んでから1日経過するまでに、担持したbFGFの約69質量%が放出され、その後、担持したbFGFの残部が徐放され、特に3日目以降は、担持したbFGFが、ほぼ定率で14日目まで徐放されているから、2段階放出性を示すものである。
[比較例1]
架橋前のゼラチン水溶液の塗工層の厚みを1mmとしたこと以外は、実施例1の方法と同様にして、薬剤の残存率を調べた。得られた結果を図1に示す。なお、得られた架橋ゼラチンゲルの未架橋部分の割合は37質量%、架橋部分の割合は63質量%であった。
図1の結果から、電子線架橋したヒドロゲルから成る比較例1の架橋ゼラチンゲルは、未架橋部分を37質量%有するが、生体内に埋め込んでから1日経過するまでには、担持したbFGFの約50質量%が放出されるので、初期バーストを示さない。ただし、2日目以降は、担持したbFGFが、ほぼ定率で14日目まで徐放されている。比較例1の架橋ゼラチンゲルは、2段階放出性を示すものではない。
[比較例2]
単層のシート状の架橋ゼラチンゲルをMedGEL(化学架橋品、厚み3mm、株式会社メドジェル製)としたこと以外は、実施例1の方法と同様にして、薬剤の残存率を調べた。得られた結果を図1に示す。
図1によれば、化学架橋したヒドロゲルから成る比較例2の架橋ゼラチンゲルは、生体内に埋め込んでから1日を経過するまでには、担持したbFGFの約42質量%が放出され、また、2日を経過するまでには、担持したbFGFの約71質量%が放出されているが、その後は、担持したbFGFが徐放されているかどうかが判然としない。比較例2の架橋ゼラチンゲルは、2段階放出性を示すものではない。
(3)bFGF徐放による血管新生の評価
上記(2)における実施例1、比較例1及び2のbFGFを担持させたシート状の架橋ゼラチンゲル、並びにbFGFの溶液注射(コントロール)について、マウス背部皮下に埋め込んでから、または注射を行ってから、14日目の皮下の状況からマウスにおける血管新生状態を評価した(n=3)。なお、ここで使用したbFGFには蛍光ラベルを施していない。結果を表2に示す。
Figure 2011052089
2段階放出性を示す実施例1の電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料は、未架橋部分を多く含有し、かつ、初期バーストする生体内埋植初期の薬剤放出が多量で、バースト終了後には持続的かつ定量的な薬剤徐放を行うことが可能な架橋ゼラチンゲルであるが、血管新生効率が優れているといえる。
これに対して、同じく電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料であるが、2段階放出性を示さない比較例1の架橋ゼラチンゲルのシートにおいては、優れた血管新生効率が得られていない。また、比較例2の化学架橋ゼラチンゲルのシートは、血管新生効率が十分とはいえない。
すなわち、本発明の2段階放出性の放出プロファイルを示す生体内薬剤徐放用担体材料は、薬剤として、bFGFなどの成長因子を担持する生体内薬剤徐放用担体材料である場合に、有用であることが分かった。
B.未架橋部分を除去し、リニア放出性の放出プロファイルが得られる架橋ゼラチンゲル
(4)DNAの吸着性と未架橋部分の溶出除去による放出性の制御に関する実験
[実施例2]
鋳型内に、20質量%の豚皮由来I型コラーゲンの酸処理ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製、等電点9.0)水溶液(以下、「20%PI−9」という。)を流延して、厚み1mmの均一な塗工層を形成した。次いで、該塗工層の水分を実質的に乾燥させることなく、該塗工層の上方から、電子線照射システムEPS−800(株式会社NHVコーポレーション製)を用いて、窒素雰囲気下で、電子線を加速電圧800kVで照射線量が20kGyとなるように照射して、単層のシート状の架橋ゼラチンゲルを形成した。次に、未架橋部分を溶出するための水による洗浄処理の操作として、架橋ゼラチンゲルを40℃の超純水中で4時間静置する工程を2回繰り返した。その後、架橋ゼラチンゲルをフリーズドライして、シート状の架橋ゼラチンゲルの乾燥体を得た。得られた架橋ゼラチンゲルの、40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、未架橋部分と架橋部分との合計に対して、0.1質量%であった。
[比較例3]
未架橋部分を溶出するための水による洗浄処理の操作を行わなかった以外は、上記実施例2と同様にして、シート状の架橋ゼラチンゲルの乾燥体を得た。得られた架橋ゼラチンゲルの40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、42質量%であり、架橋部分の割合は、58質量%であった。
[比較例4]
実施例2の電子線架橋ゼラチンゲルの乾燥体に代えて、化学架橋による架橋ゼラチン乾燥体(メドジェルPI9、株式会社メドジェル製)を用いた。
(サケDNAの吸着性と放出性の評価)
DNAの吸着性と放出性の評価を以下の方法により行った。
実施例2、比較例3及び4の架橋ゼラチンゲルのそれぞれ5mgをマイクロチューブに入れ、PBS溶液(pH7.2〜7.4、日本水産株式会社製)で、5mg/mlに調整したサーモンスパムDNA(サケ***由来049−17321、和光純薬工業株式会社から購入)溶液50μlを上記マイクロチューブに添加し、37℃のインキュベータで18時間静置して、架橋ゼラチンゲルにDNAを吸着担持させた。次いで、上記PBS溶液を1/10に希釈した溶液1000μlでサーモンスパムDNAの溶出を開始し、0、3、7及び24時間経過後の波長260nmの吸光度を測定した。溶出開始から7時間まで雰囲気を20℃とし、7時間以降は雰囲気を37℃とした。
DNAを含有していないそれぞれのフリーズドライゲルの1000μlの1/10PBS溶液をコントロールとし、その差分から架橋ゼラチンゲルから放出されたDNAの量を算出し、吸着率を評価した。実施例2、比較例3及び4の評価結果を図2に示す。
図2に示された結果、特に、溶出開始当初(溶出時間0時間)の吸着率からみて、電子線を照射して架橋した架橋ゼラチンゲルを使用する実施例2と比較例3は、化学架橋した架橋ゼラチンゲルを使用する比較例4と比較して、サケDNAの吸着率が高く、薬剤の担持能力に優れていることが分かる。また、実施例2と比較例4との溶出開始初期(溶出時間0時間〜3時間)の傾きの違いから、化学架橋品の方が、吸着率の減少も大きいことが分かる。
化学架橋ゼラチンゲルにおいては、DNA担持能を向上させるために、側鎖にカチオン基を導入(カルボキシル基の50倍等量のカチオン基を導入)したカチオン化ゼラチン等を作製することが行われているが、図2の結果によれば、電子線を照射して架橋したゼラチンゲルは、DNAの担持能力が高いので、カチオン基の導入量を低下させても遺伝子担持能力を良好に維持できる可能性も示されたといえる。更に、カチオン基の減少により、主鎖同士の排斥が抑制されるので、電子線架橋の効率も上がることが予測される。
なお、電子線を照射して架橋したゼラチンゲルであっても、水による洗浄処理を行わなかった比較例3については、電子線架橋の特徴である初期の吸着DNA量が優れるという初期吸着性は実施例2と同様であったが、その後の吸着率減少が大きい結果となっている。これは、溶出時間24時間を経過するまでは、未架橋部分に吸着していた薬剤が、未架橋部分の分解と同時に放出され続けている(24時間経過時点で、約57%が放出されている。)からである。
このことから電子線架橋した後に、水による洗浄処理を行って得られた実質的に未架橋部分を含まない架橋ゼラチンゲルを用いることで、薬剤吸着性に優れ、且つ初期バーストを抑え、長期間に亘ってほぼ直線的に徐放される薬剤の放出プロファイルを構築することが可能である。
(5)電子線架橋体の未架橋部分の洗浄除去による生体内残存率(定率徐放)の実験
[実施例3]
電子線の加速電圧を800kV、照射線量を20kGyとし、流延厚を500μm厚とした以外は実施例2と同様にして、シート状の架橋ゼラチンゲルを得た後、サケDNAを吸着させて担持させた。なお、得られた架橋ゼラチンゲルの、40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、未架橋部分と架橋部分との合計に対して、0.1質量%であった。
[実施例4]
電子線の加速電圧を800kV、照射線量を50kGyとし、流延厚を500μm厚とした以外は実施例2と同様にして、シート状の架橋ゼラチンゲルを得た後、サケDNAを吸着させて担持させた。なお、得られた架橋ゼラチンゲルの、40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、未架橋部分と架橋部分との合計に対して、0.1質量%であった。
[比較例5]
電子線の加速電圧を800kV、照射線量を50kGyとし、未架橋部分を溶出するための水による洗浄処理の操作を実施しなかった以外は実施例2と同様にして、シート状の架橋ゼラチンゲルを得た後、サケDNAを吸着させて担持させた。なお、得られた架橋ゼラチンゲルの、40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、29質量%であり、架橋部分の割合は、71質量%であった。
[実施例5]
10質量%の牛骨由来I型コラーゲンのアルカリ処理ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製;等電点5.0)水溶液(以下、「10%PI−5」という。)を流延して、電子線の加速電圧を800kV、照射線量を10kGyとした以外は、実施例2と同様にして、シート状の架橋ゼラチンゲルを得た後、サケDNAを吸着させて担持させた。なお、得られた架橋ゼラチンゲルの、40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、未架橋部分と架橋部分との合計に対して、0.1質量%であった。
作成したシート状の架橋ゼラチンゲルを、約5mgに裁断して、初期重量を精密に計測し、これをマウス(ddY4週齢メス)背皮下に埋め込んだ。その後、1〜48日目の架橋ゼラチンゲルをマウスから取り出し、フリーズドライ後の乾燥重量を計測し、初期重量と比して残留率を求めた。結果を図3に示す。
回帰直線の傾きから、実施例3では約5質量%/日、実施例4では約2質量%/日、及び実施例5では約10質量%/日の定率の放出プロファイルが示されており、所定の期間にわたる薬剤のリニア放出性が期待される。一方、未架橋部分を溶出するための水による洗浄処理を行わなかった比較例5では、初期(埋め込んでから1日経過時点)に約70質量%と大量の薬剤が放出され、その後、定率徐放約1.2質量%/日が示されており、2段階放出性が示されている。架橋ゼラチンゲルに担持されたDNAが、初期に大量に流出してしまう結果となるため、DNAの放出プロファイルとしては好ましいものではなかった。
(6)架橋ゼラチンゲルシートにBMP−2を担持させた場合の骨形成試験
[実施例6]
電子線の加速電圧を800kV、照射線量を50kGyとした以外は、実施例2と同様にして、シート状の架橋ゼラチンゲルを得た。得られた架橋ゼラチンゲルの、40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、未架橋部分と架橋部分との合計に対して、0.1質量%であった。
[比較例6]
電子線の加速電圧を800kV、照射線量を50kGyとし、未架橋部分を溶出するための水による洗浄処理の操作を実施しなかった以外は、実施例2と同様にして、シート状の架橋ゼラチンゲルを得た。得られた架橋ゼラチンゲルの40℃の水に溶解する未架橋部分の割合は、29質量%であり、架橋部分の割合は、71質量%であった。
BMP−2の担持と骨形成の評価を以下の方法で行った。
骨形成因子である5μgのBMP−2(Bone Morphogenetic Protein-2、生化学用、和光純薬工業株式会社から購入)を含んだ30μlのPBS溶液(pH7.2〜7.4、日本水産株式会社製)に、実施例6として作製した実質的に未架橋部分を含まない架橋ゼラチンゲル、及び、比較例6として作製した未架橋部分と架橋部分が混在した架橋ゼラチンゲルを、それぞれ約5mgに切断したシートを一晩含浸し、BMP−2を吸着して担持させる。これをマウス(ddY5週齢メス)頚部の表皮裁断部位から、マウス背尾部皮下に埋め込んだ後、表皮切断面を縫合する。1、7、及び14日目にマウスを犠牲死させ、ゲルとその周辺の皮下組織(2×2cm)をメスで掻き取り、マイクロチューブに封入する。直ちに液体窒素を用いて瞬間凍結後、フリーズドライを行う。このフリーズドライ体をホモジナイズして、粉末組織を5mg取り出す。これをサンプル緩衝液(0.2%IGEPAL CA−630、10mM Tris−HCl、1mM MgCl、pH7.5)1mlに懸濁、4℃ 12000rpmで15分間遠心分離を行い、上清をサンプル液とする。アルカリフォスファターゼ(ALP)は骨芽細胞に存在しており、骨形成の指標となることから、「アルカリ性フォスファB−テストワコー:和光純薬株式会社製」のキットを用い、その使用方法に基づいてアルカリフォスタファーゼ活性(以下、「ALP」という。)を評価することで骨形成を評価した。
また、コントロールとして、実施例6の架橋ゼラチンゲルにBMP−2を含まないPBS溶液を含浸させたもの(「健常」という。)と、架橋ゼラチンゲルを用いることなく、BMP−2を含んだPBS溶液をゲル埋植部付近にインジェクション投与したもの(「インジェクション」という。)とを用いて、14日目にマウスを犠牲死させ、アルカリフォスタファーゼ活性を評価した。
これらの評価結果を図4に示す。
図4から分るように、水による洗浄処理を行って、実質的に未架橋部分を含まないものとした架橋ゼラチンゲルを使用する実施例6においては、生体内に埋め込んでから14日目に、コントロール(健常)と比べ約5倍のALPを示している。実施例6のサンプルの周りには血管が誘発しており、血管の部分のレントゲン写真によると、バイオマテリアル周辺に濃く白い部分が存在していた。この部分に触るとゼラチンゲルにはない硬さがあり、形成された骨であることが分かった。
これに対して、インジェクション投与の場合、ALPがほとんど変化しておらず、骨形成が認められなかったことから、一度に大量の細胞増殖因子を投与しても、その場に細胞増殖因子を滞留させて徐放させることができなければ、骨形成が行われないことが容易に考察できる。
このことから、薬剤として細胞増殖因子を担持させる場合には、細胞増殖因子が体内で一定期間留まり、徐放により薬剤を放出させることが、細胞増殖に良いことが分かり、リニア放出性の有用性が確認された。
未架橋部分を洗浄除去しなかった架橋ゼラチンゲルを使用する比較例6においても、生体内に埋め込んでから14日目に、コントロール(健常)と比べ約3.5倍のALPが示されている。ただし、未架橋部分が存在する場合、生体内に埋め込んだ直後から薬剤が大量に放出される2段階放出性の薬剤放出プロファイルに従うため、未架橋部分を洗浄除去した実施例6と対比すると、細胞増殖因子の利用効率の点では、やや劣る結果となった。
すなわち、BMP−2による骨形成を行おうとする場合には、長期間にわたって、ほぼ等量ずつ継続的に薬剤を徐放できるリニア放出性を選択することがより有効である。
本発明によれば、生体に対する安全性に優れ、生理活性因子等の薬剤の担体として有用な生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料とその製造方法、具体的には、担持している生理活性因子の薬剤を生体内において、初期バーストを有する2段階放出性、またはリニア放出性の2種類の薬剤放出プロファイルを得ることができる、生体内分解性高分子水溶性物質の架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料とその製造方法が提供される。この結果、生体に対する安全を確保しつつ、未架橋部分を積極的に利用して、薬剤放出性を制御することにより、薬剤の徐放の制御性が高まり、製剤設計を効率的に行うことができるので、医療分野や化粧品分野を含む広範な技術分野において好適に利用することができる。

Claims (14)

  1. 生体内分解性高分子水溶性物質に不活性気体雰囲気下に電離性放射線を照射して架橋したヒドロゲルから成る、生体内薬剤徐放用担体材料であって、
    該ヒドロゲルが、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分とを、質量比で95:5〜5:95の範囲で有し、かつ、
    該担体材料が、薬剤を担持して生体内に埋め込んだ後、1日経過するまでに担持する薬剤の55質量%以上が体内に放出され、担持する薬剤の残部が2日目以降に徐放される、2段階放出性を示すものである、
    生体内薬剤徐放用担体材料。
  2. 前記ヒドロゲルが、未架橋部分と架橋部分とを、質量比で95:5〜55:45の範囲で有する
    請求項1記載の生体内薬剤徐放用担体材料。
  3. 前記生体内分解性高分子水溶性物質が、ゼラチンまたはゼラチン誘導体であり、担持する薬剤が、生理活性因子である、
    請求項1または2記載の生体内薬剤徐放用担体材料。
  4. 前記生体内分解性高分子水溶性物質が、ゼラチンまたはゼラチン誘導体であり、担持する薬剤が、成長因子であるbFGFであり、かつ、
    前記担体材料が、bFGFを担持してマウスの生体内に埋め込んだ後、14日目までに血管新生が認められるものである、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体内薬剤徐放用担体材料。
  5. 前記の担体材料が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生体内薬剤徐放用担体材料を、未架橋部分と架橋部分とを分離した状態で、薬剤をそれぞれに担持させた後、該未架橋部分と架橋部分とを合わせて成るものである、
    生体内薬剤徐放用担体材料。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生体内薬剤徐放用担体材料に、水によって洗浄処理を行って成る、
    実質的に未架橋部分を含まない、架橋したヒドロゲルから成る、リニア放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料。
  7. 前記ヒドロゲルが、40℃の水に溶解する未架橋部分が、未架橋部分と架橋部分との合計に対して5質量%未満である、
    請求項6記載の生体内薬剤徐放用担体材料。
  8. 前記担体材料が、薬剤を担持して生体内に埋め込んだ後、担持する薬剤の放出プロファイルが、2〜15質量%/日の範囲内で定率の部分を有するものである、
    請求項6または7記載の生体内薬剤徐放用担体材料。
  9. 担持する薬剤が、プラスミドDNAである、
    請求項6乃至8のいずれか1項に記載の生体内薬剤徐放用担体材料。
  10. 担持する薬剤が、BMP−2である、
    請求項6乃至8のいずれか1項に記載の生体内薬剤徐放用担体材料。
  11. 生体内分解性高分子水溶性物質を架橋したヒドロゲルから成る生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法であって、
    不活性気体雰囲気下に電離性放射線を照射して架橋する電離性放射線照射工程を有するとともに、
    該ヒドロゲルが、40℃の水に可溶性である未架橋部分と架橋部分とを、質量比で95:5〜5:95の範囲で有し、かつ、
    該担体材料が、薬剤を担持して生体内に埋め込んだ後、1日経過するまでに担持する薬剤の55質量%以上が体内に放出され、担持する薬剤の残部が2日目以降に徐放される、2段階放出性を示すものである、
    生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法。
  12. 請求項11記載の生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法であって、
    電離性放射線照射工程の後に、水による洗浄処理工程を更に有する、
    実質的に未架橋部分を含まない、架橋したヒドロゲルから成る、リニア放出性を示す生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法。
  13. 電離性放射線照射工程に先だって、生体内分解性高分子水溶性物質の水溶液を流延して塗工層を形成する塗工層形成工程を更に有する、
    請求項11または12記載の生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法。
  14. 電離性放射線が、電子線であって、
    電子線の照射を、加速電圧100kV〜3MVの範囲内で、不活性気体雰囲気下にて、線量2〜500kGyの範囲内で行う、
    請求項11乃至13のいずれか1項に記載の生体内薬剤徐放用担体材料の製造方法。
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