JPWO2010140526A1 - プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置の給電方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】マイクロ波の表面波を伝搬させるために大面積の誘電体を必要としないプラズマ処理装置を提供する。【解決手段】マイクロ波プラズマ処理装置100は、マイクロ波を出力するマイクロ波源40と、マイクロ波源40から出力されたマイクロ波を伝送させる方形導波管31と、方形導波管31を介して供給されたマイクロ波のエネルギーによりガスを励起させてプラズマを生成し、減圧された処理室内にて被処理体にプラズマ処理を施す処理容器10と、複数のスロット32aが形成された金属のスロットアンテナ32と、マイクロ波源40と処理容器10との間に設けられ、マイクロ波を透過させる誘電部材と、を備え、マイクロ波を処理容器10の内壁を形成するスロットアンテナ32の金属面に沿って伝搬させる。これにより、マイクロ波のエネルギーによってガスを励起させてプラズマを生成し、処理室内にて基板Gにプラズマ処理を施す。【選択図】図1
Description
本発明は、ガスを励起させて被処理体をプラズマ処理するプラズマ処理装置の給電に関する。
誘電体窓を通して供給されるエネルギーにより生成されるプラズマには、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECP:Electron Cyclotron resonance Plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductive Coupled Plasma)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等がある。このうち、マイクロ波プラズマ処理装置では、磁場が不要であることや、カットオフ密度(表面波励起の臨界密度)以上の高密度プラズマの生成が容易であること等の利点がある。
たとえば、特許文献1では、マイクロ波プラズマ処理装置の一つであるRLSA(Radial Line Slot Antenna)装置が開示されている。RLSA装置では、処理室の天井面に円盤状の誘電体窓が設けられている。マイクロ波は、多数のスロット(開口)に通され、誘電体窓を透過して処理室内に導入される。処理室内にて生成されるプラズマの電子密度がカットオフ密度を超えるとき、誘電体窓とプラズマとの境界面に沿って、径方向及び方位角方向に表面波の伝搬が可能となる。表面波は伝搬しながら、その一部をエバネッセント波(evanescent wave)としてプラズマに吸収される。エバネッセント波のもつ電界エネルギーはプラズマの生成及び維持に使われる。以下では、誘電体窓とプラズマとの境界面に沿って伝搬する表面波を、誘電体表面波(Dielectric Surface Wave)とも称呼する。
特許文献1では、また、処理室の天井に設置された大面積の誘電体により、外部の大気空間から処理室内を封止して処理室内の気密を保持していた。
しかしながら、誘電体窓は大面積であり、製造が難しいだけでなく高価であった。また、プロセス毎に加熱と冷却とが繰り返され、その度に誘電体に応力が掛かって誘電体が割れる可能性があった。さらに、誘電体がプラズマ中の主にイオンによりスパッタされ、これにより生じる誘電体片が処理室内で真空汚染を引き起こし、コンタミネーションの原因になる場合があった。
これに対して、天井に金属製のアンテナを設置し、その金属表面のシース層を誘電体層として機能させ、シースとプラズマとの境界面に沿って表面波を伝搬させる構成にすれば、天井に大面積の誘電体を設置しなくてもマイクロ波の電界エネルギーをプラズマに吸収させることができる。
上記課題を解消するために、本発明は、マイクロ波の表面波を伝搬させるために大面積の誘電体を必要としないプラズマ処理装置及びそのプラズマ処理装置を用いた給電方法を提供する。
すなわち、上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、電磁波を出力する電磁波源と、前記電磁波源から出力された電磁波を伝送させる導波管と、前記導波管を介して供給された電磁波のエネルギーによりガスを励起させてプラズマを生成し、減圧された処理室内にて被処理体にプラズマ処理を施す処理容器と、複数のスロットが形成された金属のスロットアンテナと、前記電磁波源と前記処理容器との間に設けられ、前記電磁波を透過させる誘電部材と、を備え、前記電磁波を前記処理容器の内壁を形成する前記スロットアンテナの金属面に沿って伝搬させるプラズマ処理装置が提供される。
かかる構成によれば、電磁波源と処理容器との間に誘電部材が設けられる。これにより、電磁波源が配置されている大気側と処理容器内の減圧側とを遮断することができる。また、電磁波は、誘電部材を透過しながら導波管を伝送して処理室内に供給され、処理室の内壁を形成するスロットアンテナの金属面とプラズマとの境界面を表面波となって伝搬する。伝搬中、表面波の一部はエバネッセント波としてプラズマに吸収され、その電界エネルギーはプラズマの生成及び維持に使うことができる。
これによれば、処理室の天井面に被処理体と対向して大面積の誘電体窓を設ける必要がない。よって、被処理体の上方に大面積の誘電体が存在しないので、誘電体窓がスパッタされて処理室内の真空汚染が発生することを防止することができる。これにより、コンタミネーションの問題を回避することができる。また、プロセス毎に加熱と冷却とが繰り返され、その度に誘電体に応力が掛かって誘電体窓に割れが生じる危険性も回避することができる。さらに、高価な大面積の誘電体窓を不要としたことにより、コストを低減することができる。また、電磁波の伝送に導波管を用いたことにより、電磁波の伝送に同軸管を用いた場合に比べて装置を小型化でき、コストを抑えることができる。なお、以下では、スロットアンテナの金属面とプラズマとの境界面に沿って伝搬する表面波を、金属表面波(Metal Surface Wave)とも称呼する。
前記スロットアンテナは、前記導波管に隣接して設けられ、前記誘電部材は、前記複数のスロットの内部を閉塞する複数のスロット内誘電部材を含んでいてもよい。
前記スロット内誘電部材の一端は、前記スロットアンテナの金属面より前記処理室側に突出していてもよい。
前記スロット内誘電部材の少なくとも一つは、その突出部分が面取りされていてもよい。
前記スロット内誘電部材の突出部分は、少なくともスロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分と、スロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分とを有していてもよい。
前記スロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分とスロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分とは、その面積比が各スロット内誘電部材を透過して前記スロットアンテナの金属面を伝搬する際の電磁波のエネルギーの分配比に応じた比になるように形成されていてもよい。
前記スロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分の面積は、前記スロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分の面積より大きくてもよい。
前記スロット内誘電部材の突出部分には、傾斜が設けられていてもよい。
前記誘電部材は、前記導波管の少なくとも一部を閉塞する誘電体窓を含んでいてもよい。
前記誘電体窓と前記導波管とは鋳ぐるみにより前記処理室内の気密を保持してもよい。
前記スロット内誘電部材と前記スロットアンテナとは鋳ぐるみにより前記処理室内の気密を保持してもよい。
前記スロット内誘電部材と前記スロットアンテナとは、該スロット内誘電部材と該スロットアンテナの間に封止材を設けることにより前記処理室内の気密を保持してもよい。
上記課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、電磁波源から電磁波を出力するステップと、前記出力された電磁波を導波管内に伝送させ、前記電磁波源とプラズマ処理を行う処理容器との間に設けられた誘電部材に電磁波を透過させるステップと、前記透過した電磁波を、前記処理容器の処理室の内壁を形成する前記スロットアンテナの金属面に沿って伝搬させるステップと、前記スロットアンテナの金属面に沿って伝搬した電磁波のエネルギーによりガスを励起させてプラズマを生成し、減圧された前記処理室内にて被処理体にプラズマ処理を施すステップと、を含むプラズマ処理装置の給電方法が提供される。
以上説明したように、本発明によれば、大面積の誘電体窓を必要とせず、スロット内誘電部材にマイクロ波を透過させて、処理室の内壁を形成するスロットアンテナの金属面とプラズマとの境界面に表面波を伝搬させることができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置について、図1及び図2を参酌しながら説明する。図1は、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の縦断面図(図2の2−2断面)であり、図2は、マイクロ波プラズマ処理装置の天井面を示した図(図1の1−1断面)である。マイクロ波プラズマ処理装置100は、マイクロ波のエネルギーにより所望のガスを励起させてプラズマを生成し、処理室内にて基板にプラズマ処理を施す装置である。プラズマ処理には、成膜処理やエッチング処理等、プラズマの作用により基板Gに加工を施すすべての処理が含まれる。
まず、本発明の第1実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置について、図1及び図2を参酌しながら説明する。図1は、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置の縦断面図(図2の2−2断面)であり、図2は、マイクロ波プラズマ処理装置の天井面を示した図(図1の1−1断面)である。マイクロ波プラズマ処理装置100は、マイクロ波のエネルギーにより所望のガスを励起させてプラズマを生成し、処理室内にて基板にプラズマ処理を施す装置である。プラズマ処理には、成膜処理やエッチング処理等、プラズマの作用により基板Gに加工を施すすべての処理が含まれる。
(マイクロ波プラズマ処理装置の構成)
マイクロ波プラズマ処理装置100は、処理容器10と蓋体20とを備えている。処理容器10は、その上部が開口された有底立方体形状を有している。処理室Uは、処理容器10と蓋体20とにより画成され、その接面に設けられたOリング21により処理室Uの気密が保持されている。処理容器10および蓋体20は、たとえば、アルミニウム等の金属からなり、電気的に接地されている。
マイクロ波プラズマ処理装置100は、処理容器10と蓋体20とを備えている。処理容器10は、その上部が開口された有底立方体形状を有している。処理室Uは、処理容器10と蓋体20とにより画成され、その接面に設けられたOリング21により処理室Uの気密が保持されている。処理容器10および蓋体20は、たとえば、アルミニウム等の金属からなり、電気的に接地されている。
処理容器10の中央にはサセプタ11(載置台)が設けられていて、サセプタ11に基板Gを載置するようになっている。サセプタ11は、たとえば窒化アルミニウムからなり、その内部には、給電部11aおよびヒータ11bが設けられている。
給電部11aには、整合器12a(たとえば、コンデンサ)を介して高周波電源12bが接続されている。また、給電部11aには、コイル13aを介して高圧直流電源13bが接続されている。整合器12a、高周波電源12b、コイル13aおよび高圧直流電源13bは、処理容器10の外部に設けられている。高周波電源12bおよび高圧直流電源13bは、接地されている。
給電部11aは、高周波電源12bから出力された高周波電力により処理容器10の内部に所定のバイアス電圧を印加するようになっている。また、給電部11aは、高圧直流電源13bから出力された直流電圧により基板Gを静電吸着するようになっている。ヒータ11bには、処理容器10の外部に設けられた交流電源14が接続されていて、交流電源14から出力された交流電圧により基板Gを所定の温度に保持するようになっている。
処理容器10の底面は筒状に開口され、その外部周縁にはベローズ15の一端が装着されている。また、ベローズ15の他端は昇降プレート16に固着されている。このようにして、処理容器10底面の開口部分は、ベローズ15および昇降プレート16により密閉されている。
サセプタ11は、昇降プレート16上に配置された筒体17に支持されていて、昇降プレート16および筒体17と一体となって昇降し、これにより、サセプタ11を処理プロセスに応じた高さに調整するようになっている。また、サセプタ11の周囲には、処理室Uのガスの流れを好ましい状態に制御するためのバッフル板18が設けられている。
処理容器10の底部には、処理容器10の外部に設けられた真空ポンプ(図示せず)が備えられている。真空ポンプは、ガス排出管19を介して処理容器10内のガスを排出することにより、処理室Uを所望の真空度まで減圧する。
蓋体20には、矩形状の方形導波管31及びスロットアンテナ32が設けられている。図1の1−1断面である装置天井面の図2にも示したように、方形導波管31は蓋体20の内部に平行に6本並べて設けられている。方形導波管31はマイクロ波源40から出力されたマイクロ波を伝送させる伝送線路(導波管)の一つである。
図1に戻って、方形導波管31の内部は、フッ素樹脂(たとえばテフロン(登録商標))、アルミナ(Al2O3)、石英等の誘電部材33で充填されている。誘電部材33により、λg1=λc/(ε1)1/2の式に従って各方形導波管31を伝送するマイクロ波の管内波長λg1が制御される。ここで、λcは自由空間の波長、ε1は誘電部材33の誘電率である。
各方形導波管31は、上部にて開口し、その開口には、可動部34が昇降自在に挿入されている。可動部34は、アルミニウムなどの非磁性体である導電性材料から形成されている。蓋体20の外部であって各可動部34の上面には、昇降機構35がそれぞれ設けられていて、可動部34を昇降移動させる。かかる構成により、方形導波管31は、誘電部材33の上面までを限度として可動部34を昇降移動させるにより、その高さを変更可能になっている。
スロットアンテナ32は、方形導波管31の下部にて蓋体20と一体となって構成されている。スロットアンテナ32スロットアンテナ32は、アルミニウムなどの非磁性体である金属から形成されている。スロットアンテナ32には、各方形導波管31の下面にて、図2に示したスロット群32agが設けられている。スロット群32agは、方形導波管31の長辺側の面(H面)に形成されている。
各スロット群32agは、スロット32a1〜32a4(以下、スロット32aとも称呼する。)の4つのスロット(開口)から形成され、管内波長λg1/2のピッチで等間隔に配置されている。スロット32a1〜32a4は、スロット群32agの中心に対向して隣り合うスロット間の距離がすべて等しい。また、1つのスロット群32agに含まれる4つのスロット32a1〜32a4は点対称に配置される。方形導波管31は、たとえば図1や図8Aに模式したように、蓋体20に矩形状の溝を掘って形成した部分と、スロットアンテナ32の上面とにより構成されている。
図1に示したように、各スロット32aの内部は、フッ素樹脂、アルミナ(Al2O3)、石英などの誘電体で形成されたスロット内誘電部材36により充填され、これによりスロット32aは閉塞されている。
図3Aは、図2の3−3断面を示している。図3Aに示したように、各スロット32a1,スロット32a3の位置では、方形導波管31の内部空間に形成されるマイクロ波の定在波の振幅の絶対値が等しい。図3Aに示されていないスロット32a2,スロット32a4も同様である。これにより、方形導波管31を伝送したマイクロ波のうち、各スロット32a1〜32a4から処理室内に供給されるマイクロ波の振幅の絶対値は等しくなる。よって、スロット内誘電部材36が同一形状の場合、各スロット32a1〜32a4から供給されたマイクロ波の電界強度はほぼ等しくなり、金属表面波MSW(Metal Surface Wave)となってスロットアンテナ32の金属面とプラズマとの境界面を伝搬する。伝搬中、均等に配分された電界エネルギーにより均一なプラズマを生成することができる。
本実施形態では、スロット内部誘電体36とスロット32aとの間を多数の封止材により封止しているが、スロット内誘電部材36とスロットアンテナ32とを鋳ぐるみにより作成してもよい。つまり、アルミナ(スロット内誘電部材36)の周囲にアルミニウムやアルミニウム合金の金属浴湯を流し込んで鋳ぐるむ。鋳ぐるみの詳細については、例えば、特開昭64−53761号公報に記載されている。これにより、スロット内誘電部材36をスロット32a内に密着させて埋設させることができる。この結果、大気と連通した方形導波管31等と真空状態にある処理室内部とを遮断することができる。これにより、処理室Uの気密を保ちながら、マイクロ波をスロット内誘電部材36に透過させることができる。その際、スロット内誘電部材36により、λg2=λc/(ε2)1/2の式に従って各スロット32aの管内波長λg2が制御される。ここで、ε2はスロット内誘電部材36の誘電率である。
製造時、スロット内誘電部材36とスロットアンテナ32とは、所定の温度で一体焼成されてもよい。これによれば、一体焼成により、スロット内誘電部材36とスロットアンテナ32とが隙間なく密着される。
図2に示したように、3つのマイクロ波源40は、Y分岐管41(Y分岐した導波管)を介してそれぞれ2本の方形導波管31に連結されている。このようにして、3つのマイクロ波源40から出力されたマイクロ波は、Y分岐管41にてY分岐しながら蓋体20内の6つの方形導波管31に伝送される。方形導波管31を伝送されたマイクロ波は、スロット32aから入射され、複数のスロット内誘電部材36を透過して処理室内に供給される。Y分岐管41はマイクロ波源40から出力されたマイクロ波を伝送させる伝送線路(導波管)の一つである。
本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100では、スロットアンテナ32の下面にマイクロ波の表面波を伝搬させるための誘電体が設けられていない。よって、図2に示した本装置の天井面では、スロットアンテナ32の金属面が露出した状態であって、スロット32aからスロット内誘電部材36の端部が突出している状態である。
図1に示したガス供給源42は、ガスラインLinと連結している。ガスラインLinは、図2の天井面に示したように、等間隔に設けられた複数のガス導入管43に連結している。ガス供給源42から供給されたガスは、ガスラインLinを介してそれぞれのガス導入管43に分流しながら、処理室内に導入される。
冷却水配管44は、蓋体20に埋設されていて、本装置の外部に配置された冷媒供給源45に連結されている。冷媒供給源45から供給された冷却水は、冷却水配管44内を循環して冷媒供給源45に戻ることにより、蓋体20は、所望の温度に保たれるようになっている。
以上に説明した構成により、図2に示した3つのマイクロ波源40から出力されたマイクロ波は、方形導波管31を伝送され、スロットアンテナ32の各スロット32aに入射され、スロット内誘電部材36を透過して処理室U内に供給される。ガス供給源42から供給されたガスは、入射されたマイクロ波の電界エネルギーにより励起し、これにより基板Gの上方にプラズマが生成され、基板G上にプラズマ処理が施される。
(マイクロ波の伝搬)
次に、図3A(図2の3−3断面)を参照しながら、マイクロ波の伝搬について説明する。図3Aは、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100のマイクロ波の伝搬を示し、図3Bは、従来のマイクロ波プラズマ処理装置99のマイクロ波の伝搬を示している。
次に、図3A(図2の3−3断面)を参照しながら、マイクロ波の伝搬について説明する。図3Aは、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100のマイクロ波の伝搬を示し、図3Bは、従来のマイクロ波プラズマ処理装置99のマイクロ波の伝搬を示している。
従来のマイクロ波プラズマ処理装置99では、方形導波管31の下面にスロットアンテナ32が設けられ、スロットアンテナ32には複数のスロット32aが形成されている点で、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100と同様である。これに加え、従来のマイクロ波プラズマ処理装置99には、スロットアンテナ32の下面に密着して大面積の誘電体90が配設されている。大面積の誘電体90は、梁91により固定されている。
従来のマイクロ波プラズマ処理装置99によれば、方形導波管31を伝送されたマイクロ波は、スロット32aを通り、大面積の誘電体90を透過して処理室内に供給される。さらに、マイクロ波は、大面積の誘電体90の表面とプラズマ境界面に沿って伝搬する。伝搬中、マイクロ波の一部は、エバネッセント波としてプラズマに吸収され、プラズマの維持に使われる。図3Bでは、大面積の誘電体90の表面とプラズマ境界面に沿って伝搬するマイクロ波の表面波を誘電体表面波DSWとして模式的に示している。
これに対して、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100では、図3Aに示したように、スロットアンテナ32の下面に誘電体はなく、スロットアンテナ32が天井面に露出している。この場合、方形導波管31を伝送されたマイクロ波は、スロット32aに入射され、スロット内誘電部材36を透過して処理室内に供給される。
処理室に供給されたマイクロ波は、天井面に露出したスロットアンテナ32の金属表面とプラズマ境界面に沿って伝搬する。伝搬中、マイクロ波の一部は、エバネッセント波としてプラズマに吸収され、プラズマの維持に使われる。図3Aでは、スロットアンテナ32の金属表面とプラズマ境界面に沿って伝搬するマイクロ波の表面波を金属表面波MSWとして模式的に示している。
(金属表面波の伝搬と周波数との関係)
プラズマの誘電率は、εr′−jεr″で表わされる。プラズマの誘電率には損失成分もあるため、プラズマの誘電率は複素数で表現される。プラズマの誘電率の絶対値εr′は通常−1よりも小さい。プラズマの誘電率は、次式(1)で表される。
プラズマの誘電率は、εr′−jεr″で表わされる。プラズマの誘電率には損失成分もあるため、プラズマの誘電率は複素数で表現される。プラズマの誘電率の絶対値εr′は通常−1よりも小さい。プラズマの誘電率は、次式(1)で表される。
また、プラズマにマイクロ波を入射したときの伝搬特性は、次式(2)にて表される。
ここで、kは波数、k0は真空中の波数、ωは金属表面波の周波数、νcは電子衝突周波数、ωpeは次式(3)で表される電子プラズマ周波数である。
進入長δは、マイクロ波を入射したとき、マイクロ波がどれだけプラズマ内部に入射可能であるかを示す。具体的には、マイクロ波の電界強度Eがプラズマの境界面での電界強度E0の1/eに減衰するまでに進入した距離が進入長δである。進入長δは、次式(4)で表される。
kは波数である。
kは波数である。
電子密度neが次式(5)で表されるカットオフ密度ncより大きい場合、マイクロ波はプラズマ中を伝搬することができず、プラズマに入射されたマイクロ波は急速に減衰する。換言すれば、電子密度neがカットオフ密度ncより大きい場合、マイクロ波は、プラズマ表面付近で反射され、処理室の内面を表面波として伝搬する。
式(5)によれば、カットオフ密度ncは、ωは金属表面波の周波数の2乗に比例する。これは、915MHzの周波数のマイクロ波を用いた場合には、2.45GHzの周波数のマイクロ波を用いた場合に対して電子密度neが1/7程度でも安定したプラズマが得られることを示す。これにより、低エネルギーでもプラズマが生成され、ダメージの非常に小さいプロセスが可能になり、プロセスウィンドウを広くすることができる。
たとえば915MHzの周波数では、表面付近の電子密度が1×1011cm−3程度の低密度プラズマでも金属表面波MSWが処理室の内面を長く伝搬する。式(1)によれば、周波数を下げるとプラズマの誘電率の実部εr′が負に大きくなり、プラズマインピーダンスが小さくなる。従って、プラズマにかかるマイクロ波電界がシースにかかるマイクロ波電界と比較して弱くなり、プラズマ中におけるマイクロ波の損失が小さくなるため、金属表面波MSWの減衰量が減少する。従って、金属表面波MSWの減衰量が少ない1〜2GHz以下のマイクロ波を供給するとより好ましい。
図1に示したマイクロ波プラズマ処理装置100において、スロット32aから放出されたマイクロ波が処理容器10の内壁(スロットアンテナ32の金属面及び処理容器の金属側壁)に沿って基板Gの周辺まで伝搬してしまうと、処理容器10内に生成されるプラズマが不均一になりプロセスの均一性が悪化したり、処理容器10内に基板Gを搬入出させる際に開閉されるゲートバルブや、基板Gを載置させるサセプタ11が劣化する等の弊害が生じる。よって、金属表面波MSWがスロットアンテナ32の金属面に沿って伝搬する間に十分減衰しない場合には、金属表面波MSWを反射させてそれ以上伝搬させない手段が必要になる。
そこで、天井面を形成するスロットアンテナ32の外周近傍の金属面には、略矩形状に溝50が形成されている。溝50は、処理容器10の側壁近傍に該側壁から等間隔離れて設けられ、天井面に形成されたスロット32aとガス導入管36の孔とを取り囲んでいる。これにより、溝50は、金属表面波MSWの伝搬を抑制する。なお、溝50は、スロットアンテナ32の外周近傍の金属面以外の処理容器10の内面に設けられていてもよい。また、溝50の替わりに金属の突出を形成することにより金属表面波MSWの伝搬を抑制してもよいし、誘電体部材の突出を形成することにより金属表面波MSWの伝搬を抑制してもよい。
(スロット内誘電部材の突出)
特に、図3Aに示したように、スロット内誘電部材36の一端は、スロットアンテナ32の下面(すなわち、処理室側に露出した金属面)より処理室側に1mm〜5mm程度突出している。これにより、マイクロ波がスロット内誘電部材36から放出されやすいようになっている。
特に、図3Aに示したように、スロット内誘電部材36の一端は、スロットアンテナ32の下面(すなわち、処理室側に露出した金属面)より処理室側に1mm〜5mm程度突出している。これにより、マイクロ波がスロット内誘電部材36から放出されやすいようになっている。
(誘電体部材の面取り)
さらに、図4Aに示したように、スロット内誘電部材36の突出部分は、面取りされている。その面取り(C面:chamfer)は、スロット内誘電部材36の長手方向に沿って形成されている。スロット内誘電部材36のC面は、スロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分(外テーパー)と、スロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分(内テーパー)とを少なくとも有する。外テーパーOCの面積は、内テーパーICの面積より大きい。
さらに、図4Aに示したように、スロット内誘電部材36の突出部分は、面取りされている。その面取り(C面:chamfer)は、スロット内誘電部材36の長手方向に沿って形成されている。スロット内誘電部材36のC面は、スロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分(外テーパー)と、スロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分(内テーパー)とを少なくとも有する。外テーパーOCの面積は、内テーパーICの面積より大きい。
なお、スロット内誘電部材36の外テーパーの面取りは、処理室の内壁に最も近いスロット内誘電部材36にのみ形成されるようにしてもよい。
(マイクロ波のエネルギー分配)
発明者は、面取り部分の形状が、その面取り部分から出力されるマイクロ波のエネルギーにどのように関係するかについてシミュレーションを行った。
発明者は、面取り部分の形状が、その面取り部分から出力されるマイクロ波のエネルギーにどのように関係するかについてシミュレーションを行った。
図4Bに示したシミュレーションでは、スロット群32agの中心に対して内側の面取り部IC(内テーパー)の短手方向の幅は0.2mmの固定値とし、スロット群32agの中心に対して外側の面取り部OC(外テーパー)の短手方向の幅を0.2mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mmと可変に設定した。
その結果、内テーパーICと外テーパーOCの寸法比が同じ場合(図5Aの場合)、内テーパーICに対する外テーパーOCの電力反射比は、1.18(e−5)となった。電力反射比は、内テーパーICにより反射されて戻ってくるマイクロ波と外テーパーOCにより反射されて戻ってくるマイクロ波とのエネルギーの分配比を示す。
また、図4Bの結果によれば、内テーパーICに対する外テーパーOCの寸法比を徐々に大きくしていくと、これに応じて電力反射比も徐々に大きくなり、外テーパーOCの寸法を5mmにした場合には、電力反射比は2.30(e−5)に達した。
内テーパーICの寸法0.2mmに対して、外テーパーOCの寸法を0.2mm〜5mmとしたとき、いずれの場合にも電力反射比は、e−5のオーダーと微少であった。よって、スロット内誘電部材36に内テーパーIC及び外テーパーOCを形成しても、プラズマ生成に消費されずに戻ってくるマイクロ波のエネルギーは微少であり、スロット内誘電部材36にテーパーの面取りを形成することに問題はないことがわかった。
そこで、次に、発明者は、図9に示した放射距離比のシミュレーションを行った。ここでも、スロット群32agの中心に対して内側の面取り部IC(図9のaの内テーパー)の短手方向の幅は0.2mmの固定値とし、スロット群32agの中心に対して外側の面取り部OC(図9のaの外テーパー)のの短手方向の幅を0.2mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mmと可変に設定した。図9のcのグラフの横軸は外テーパーの幅を示し、縦軸は内テーパーに対する外テーパーの放射距離比を示す。放射距離比は、内テーパー側に拡散しているプラズマの距離(プラズマの強度に相当)に対する外テーパー側に拡散しているプラズマの距離(プラズマの強度に相当)を示す。
これによれば、内テーパーIC及び外テーパーOCの寸法をともに0.2mmとしたとき、外テーパーOCと内テーパーICとから出力されるマイクロ波のエネルギーは等分されることがわかる。この状態を、スロット内誘電部材36の長手方向に垂直な方向の断面を示した図5Aに模式的に示す。
これに対して、内テーパーICの寸法を0.2mm、外テーパーOCの寸法を5mmとしたとき、放射距離比が最も大きく、外テーパーOCから出力されるマイクロ波のエネルギーを、内テーパーICから出力されるマイクロ波のエネルギーの約1.3倍に分配することができることがわかった。この状態を、図5Bに模式的に示す。
プラズマは、基板Gの上方にて均一に生成されることが好ましい。したがって、内テーパーIC及び外テーパーのOCの寸法を等しくした場合、図11に示したように、スロット32aは、スロット群32agの中心方向C1に対して隣り合うスロットとの距離Saと、その反対方向で中心方向C2に対して隣り合うスロットとの距離Sbとがほぼ等しくなる位置に配置することが望ましい。これにより、全てのスロット間の距離が等しくなり、かつ外テーパーOCと内テーパーICとから出力されるマイクロ波のエネルギーは等分されることから、均一なプラズマを生成することができる。しかしながら、マイクロ波を効率よく伝送させる導波管の寸法は規格により決まっており、スロット32aの配置は、導波管の寸法上の制約を受けることになる。したがって、実際には、図12に示したように、導波管31の寸法に応じて、スロット32aは、スロット群32agの中心に寄った位置に配置せざるを得ない。
よって、外テーパーOCの面積を内テーパーICの面積より大きく加工して外テーパーOCから出力されるマイクロ波のエネルギーを、内テーパーICから出力されるマイクロ波のエネルギーより大きくするように設計すれば、均一なプラズマを生成することができる。
発明者は、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100の場合には、外テーパーOCの寸法と内テーパーICの寸法とを「5:0.2」にするとプラズマ密度分布の均一性を図ることができることをシミュレーションにより明らかにした。
以上に説明したように、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100によれば、従来天井面に設けられていた誘電体窓が不要となるため、コンタミの問題やメンテナンスやコストの面で有利な装置を製造できる。
これに加えて、スロット内を閉塞するスロット内誘電部材36の突出部分の形状を適正化することにより、スロット内誘電部材36の下部からスロットアンテナ32の金属面に向けて放射状に放出されるマイクロ波のエネルギーの分配比をコントロールすることができる。
すなわち、スロットアンテナ32の金属面を伝搬するマイクロ波のエネルギーの分配比が所望の比になるように、外テーパーOC、内テーパーICの面積比を定め、加工する。これにより、スロット群32agの中心に対して外側に分配されるマイクロ波のエネルギー量を高め、プラズマの均一性を高めることができる。
なお、面取り部分は、スロット群32agの中心に対して外側に向かう角部及びスロット群32agの中心に対して内側に向かう角部だけでなく、その他の角部が面取りされていてもよい。たとえば、図6に示したように、スロット内誘電部材36の側面に外テーパーOC、内テーパーICが設けられていてもよい。この場合にも外テーパーOCは内テーパーICより大きく削られている。このようにして外テーパーOCから出力されるマイクロ波のエネルギーを内テーパーICより大きくすることによって、均一なプラズマを生成することができる。図7に示したように、図4Aの面取りOC,ICと図6の外テーパーOC、内テーパーICとを組み合わせた形状としてもよい。もちろん、場合によっては、内テーパーICを外テーパーOCより大きく削ったほうがよい場合も考えられる。
また、スロット内誘電部材36の外テーパーの面取りは、処理室の内壁に最も近いスロット内誘電部材36にのみ形成されるようにしてもよい。あるいは、処理室の内壁に最も近いスロット内誘電部材36の外テーパーの面取りを、他のスロット内誘電部材36の外テーパーの面取りよりも大きくとるように形成してもよい。プラズマは、基板Gの上方にて均一に生成されることが好ましい。しかしながら、一般に、外周のプラズマは、中心のプラズマより密度が低くなる傾向がある。これは、プラズマが処理室の内壁側に拡散した場合、壁面近傍にて生じる化学反応(再結合)にプラズマが消費されるためである。したがって、処理室の内壁に最も近いスロット内誘電部材36の外テーパーOCの面積を大きく加工して、プラズマ密度が低くなる傾向がある処理室の内壁側方向に出力されるマイクロ波のエネルギーより大きくするように設計すれば、均一なプラズマを生成することができる。
以上に説明したように、第1実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100によれば、スロットアンテナ32の下部に大面積の誘電体窓を設けることなく、均一なプラズマを生成することができる。特に、スロット内誘電部材36の突出部分をマイクロ波プラズマ処理装置100の構成やプロセス条件に合わせて適正な形状に加工することにより、スロット内誘電部材36を透過したマイクロ波のエネルギーの分配比を制御することができる。この結果、プラズマ密度を均一化することができる。
第1実施形態では、スロット内誘電部材36でスロット内を閉塞することにより、スロットアンテナ32の下部に大面積の誘電体窓を設けることなく、導波管側の大気と処理容器側の真空とを遮断していた。
これに対して、スロット内以外の部分であってマイクロ波源40と処理容器10との間に誘電体を設けることにより、導波管側の大気と処理容器側の真空とを遮断してもよい。これによっても、スロットアンテナ32の下部に大面積の誘電体窓を設けることなく、導波管側の大気と処理容器側の真空とを遮断することができる。
<第2実施形態>
たとえば、図8Aに示した第2実施形態では、マイクロ波源40と処理容器10との間であって、方形導波管31及びY分岐管41の端部に導波管間誘電部材200が設けられていて、その各接面は封止材205により封止されている。これにより、Y分岐管41内は大気状態になり、方形導波管31内は真空状態(又は減圧状態)になる。この結果、処理容器10内を気密に保持できる。なお、導波管間誘電部材200は、必ずしも方形導波管31及びY分岐管41の端部に配置されている必要はなく、導波管側の大気と処理容器側の真空とを遮断するように、方形導波管31又はY分岐管41の少なくとも一部を閉塞していればよい。
たとえば、図8Aに示した第2実施形態では、マイクロ波源40と処理容器10との間であって、方形導波管31及びY分岐管41の端部に導波管間誘電部材200が設けられていて、その各接面は封止材205により封止されている。これにより、Y分岐管41内は大気状態になり、方形導波管31内は真空状態(又は減圧状態)になる。この結果、処理容器10内を気密に保持できる。なお、導波管間誘電部材200は、必ずしも方形導波管31及びY分岐管41の端部に配置されている必要はなく、導波管側の大気と処理容器側の真空とを遮断するように、方形導波管31又はY分岐管41の少なくとも一部を閉塞していればよい。
導波管間誘電部材200としては、誘電正接(tanδ)が0.0001以下で、かつ大気と真空との間の圧力差に耐えうる強度を持った材質が好ましい。導波管間誘電部材200の一例としては、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、イットリア(Y2O3)が挙げられる。封止材としては、Oリングが挙げられる。
本実施形態では、封止材205により封止しているが、図8AのMで示した部分の導波管間誘電部材200と方形導波管31及びY分岐管41とを鋳ぐるみにより作成してもよい。つまり、アルミナ(導波管間誘電部材200)の周囲にアルミニウムやアルミニウム合金の金属浴湯を流し込んで鋳ぐるむ。これにより、導波管間誘電部材200と方形導波管31及びY分岐管41とを接合させる。なお、以下に説明する第3及び第4実施形態についても鋳ぐるみの製造方法が適用可能である。
第2実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100によっても、スロットアンテナ32の下部に大面積の誘電体を設けることなく、導波管間誘電部材200により導波管側の大気と処理容器側の真空とを遮断することができる。これにより、処理容器の天井面を形成するスロットアンテナ32の金属面に金属表面波(MSW)を伝搬させることができる。さらに、マイクロ波源40までガスが漏れることを抑制することができる。また、第1実施形態では、スロット内誘電部材36とスロット32aとの間を封止する封止材が多数必要であったが、第2実施形態によれば、導波管間誘電部材200の一箇所のみ封止すればよく、封止材の個数を少なくできる。
<第3実施形態>
第2実施形態では、方形導波管31の内部が真空のため導波管内で放電が生じてしまうおそれがある。そこで、図8Bに示した第3実施形態では、第2実施形態の構成に加えて方形導波管31の内部をフッ素樹脂(たとえばテフロン(登録商標))の誘電体210で埋める。これにより、方形導波管31の内部での異常放電を回避することができる。
第2実施形態では、方形導波管31の内部が真空のため導波管内で放電が生じてしまうおそれがある。そこで、図8Bに示した第3実施形態では、第2実施形態の構成に加えて方形導波管31の内部をフッ素樹脂(たとえばテフロン(登録商標))の誘電体210で埋める。これにより、方形導波管31の内部での異常放電を回避することができる。
また、第3実施形態では、方形導波管31及び誘電体210の隙間にアルゴンガス等の不活性ガスを導入するほうが好ましい。これによれば、処理ガスが処理室側から導波管内に逆流することを防ぐことができる。一方、アルゴンガスが導波管内から処理室内に漏れても、不活性であるため処理室内でのプロセスに影響は生じない。
<第4実施形態>
図8Cに示した第4実施形態では、第2実施形態で示した導波管間誘電部材200と第1実施形態で示したスロット内誘電部材36とを有し、さらに、方形導波管31の内部にSF6ガス等の絶縁性ガスを導入する。例えば、SF6ガスは、空気の3倍程度の絶縁性がある。これによっても、方形導波管31の内部での異常放電を回避することができる。
図8Cに示した第4実施形態では、第2実施形態で示した導波管間誘電部材200と第1実施形態で示したスロット内誘電部材36とを有し、さらに、方形導波管31の内部にSF6ガス等の絶縁性ガスを導入する。例えば、SF6ガスは、空気の3倍程度の絶縁性がある。これによっても、方形導波管31の内部での異常放電を回避することができる。
第4実施形態でスロット内誘電部材36をスロット内に埋め込んでいるのは、SF6ガスが処理容器内に流れ込むとプロセスに悪影響を及ぼすので、これを回避するためである。第2及び第3実施形態においても、導波管間誘電部材200に加え、スロット内誘電部材36をスロット内に埋め込む構成としてもよい。
なお、以上の各実施形態の説明では、導波管の長辺側の面(H面)にスロット群を形成したが、導波管の短辺側の面(E面)に長方形のスロットを形成してもよい。この場合にも、スロットの間隔は管内波長λg/2の整数倍の長さとなる。
上記実施形態において、各部の動作は互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作及び一連の処理として置き換えることができる。これにより、プラズマ処理装置の実施形態を、プラズマ処理装置の給電方法の実施形態とすることができる。
これにより、プラズマ処理が施される処理室に電磁波を供給するプラズマ処理装置の給電方法であって、電磁波源から電磁波を出力するステップと、前記出力された電磁波を導波管に伝送させるステップと、前記伝送された電磁波を金属のスロットアンテナに形成された複数のスロットから入射し、該複数のスロット内を閉塞する複数のスロット内誘電部材に透過させるステップと、前記透過した電磁波を、前記処理室の内壁を形成する前記スロットアンテナの金属面に沿って伝搬させるステップと、を含むプラズマ処理装置の給電方法を提供することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
たとえば、上記各実施形態にて説明したスロット内誘電部材36及び導波管間誘電部材200は、電磁波源と処理容器との間に設けられ、電磁波源が配置された大気側と処理容器内の減圧側とを遮断する誘電部材の一例である。よって、本発明に係る誘電部材は、電磁波源が配置された大気側と処理容器内の減圧側とを遮断することができれば、電磁波源と処理容器との間のどの位置に設けられていてもよい。
本発明に係るプラズマ処理装置は、上記実施形態に示した矩形状のマイクロ波プラズマ処理装置に限られず、スロットを用いて給電するプラズマ処理装置に用いることができる。たとえば、円筒状のRLSAプラズマ処理装置の場合、天井面に円盤状の誘電体窓を設ける必要はなく、誘電体窓のないラジアルラインスロットアンテナを伝送したマイクロ波は、金属表面波となって天井の内壁を形成する金属面を伝搬する。
また、本発明に係るスロットアンテナは、図2に示したスロット32aの配置に限られず、各スロット32aから処理室内に供給されるマイクロ波の位相及びエネルギー強度が概ね等しくなる位置に配置することができる。
スロット位置の具体的変形例について、図10を参照しながら説明する。本変形例では、複数のスロット32a1〜32a4の長手方向は、方形導波管31の長手方向に対して45度傾けた位置にてスロット32a1とスロット32a3、スロット32a2とスロット32a4が、それぞれ互いに対向して口型に形成されている。スロット32a1とスロット32a3の長手方向は、方形導波管31の長手方向に対して反時計回りに45度傾けた位置に形成され、スロット32a2とスロット32a4の長手方向は、方形導波管31の長手方向に対して時計回りに45度傾けた位置に形成される。
スロット32a1及びスロット32a3間の距離と、スロット32a2及びスロット32a4間の距離はすべて等しい。また、スロット32a1〜32a4は、隣り合うスロット間の距離がすべて等しい。1つのスロット群32agに含まれる4つのスロット32a1〜32a4は、点対称に配置される。スロット群32agは、管内波長λg/2のピッチで形成される。
本変形例では、スロット32a1〜32a4を方形導波管31の長手方向に対して45度傾けて配置したことにより、各スロット32a1〜32a4から処理室内に供給されるマイクロ波は、円偏波しながら処理室に供給される。円偏波の場合、発生する電磁界は回転しながらスロット32a1〜32a4から漏れ、処理容器10の内部に伝わる。
これに加えて、本変形例では、スロット32a1〜32a4は、方形導波管31の長手方向に対して45度傾けて配置される。これにより、天井面を伝搬する金属表面波MSWは、方形導波管31の長手方向に対して斜め45度の方向に向けて放射状に伝搬する。この結果、上記スロット内誘電部材36の面取りの効果も併せて、処理室の天井面の角方向にも金属表面波MSWが伝搬しやすいため、より均一なプラズマを生成することができる。したがって、均一なプラズマを生成するためには、スロット32a1〜32a4を方形導波管31の長手方向に対して45度傾けた方が、スロット32a1〜32a4を方形導波管31の長手方向に対して平行及び垂直に配置するより好ましい。
なお、方形導波管31の長手方向に対する複数のスロット32a1〜32a4の傾斜角は、45度でなくてもよく、スロット32a1とスロット32a3の長手方向は、方形導波管31の長手方向に対して反時計回りにα度(0<α<90)傾けた位置に形成され、スロット32a2とスロット32a4の長手方向は、方形導波管31の長手方向に対して時計回りにα度(0<α<90)傾けた位置に形成されていればよい。
この場合にも、スロット32a1〜32a4を方形導波管31の長手方向に対して任意の角度だけ傾けて配置されているので、各スロット32a1〜32a4から処理室内に供給されるマイクロ波は、円偏波しながら処理室に供給される。
本発明に係るマイクロ波源40から出力されるマイクロ波は、896MHz、915MHz、922MHz、2.45GHz等であってもよい。また、マイクロ波源40は、プラズマを励起するための電磁波を出力する電磁波源の一例であり、100MHz以上の電磁波を出力する電磁波源であれば、マグネトロンや高周波電源も含まれる。
なお、基板G(ガラス基板)のサイズは、720mm×720mm以上であればよく、たとえば、G3基板サイズで720mm×720mm(チャンバ内の寸法:400mm×500mm)、G4.5基板サイズで730mm×920mm(チャンバ内の寸法:1000mm×1190mm)、G5基板サイズで1100mm×1300mm(チャンバ内の寸法:1470mm×1590mm)である。上記大きさの処理室内に1〜8W/cm2のパワーのマイクロ波が供給される。
10 処理容器
20 蓋体
31 導波管
32 スロットアンテナ
32a スロット
36 スロット内誘電部材
40 マイクロ波源
43 ガス導入管
50 溝
100 マイクロ波プラズマ処理装置
200 導波管間誘電部材
MSW 金属表面波
DSW 誘電体表面波
20 蓋体
31 導波管
32 スロットアンテナ
32a スロット
36 スロット内誘電部材
40 マイクロ波源
43 ガス導入管
50 溝
100 マイクロ波プラズマ処理装置
200 導波管間誘電部材
MSW 金属表面波
DSW 誘電体表面波
Claims (13)
- 電磁波を出力する電磁波源と、
前記電磁波源から出力された電磁波を伝送させる導波管と、
前記導波管を介して供給された電磁波のエネルギーによりガスを励起させてプラズマを生成し、減圧された処理室内にて被処理体にプラズマ処理を施す処理容器と、
複数のスロットが形成された金属のスロットアンテナと、
前記電磁波源と前記処理容器との間に設けられ、前記電磁波を透過させる誘電部材と、を備え、
前記電磁波を前記処理容器の内壁を形成する前記スロットアンテナの金属面に沿って伝搬させるプラズマ処理装置。 - 前記スロットアンテナは、前記導波管に隣接して設けられ、
前記誘電部材は、前記複数のスロットの内部を閉塞する複数のスロット内誘電部材を含む請求項1に記載のプラズマ処理装置。 - 前記スロット内誘電部材の一端は、前記スロットアンテナの金属面より前記処理室側に突出している請求項2に記載のプラズマ処理装置。
- 前記スロット内誘電部材の少なくとも一つは、その突出部分が面取りされている請求項3に記載のプラズマ処理装置。
- 前記スロット内誘電部材の突出部分は、少なくともスロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分と、スロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分とを有する請求項4に記載のプラズマ処理装置。
- 前記スロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分とスロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分とは、その面積比が各スロット内誘電部材を透過して前記スロットアンテナの金属面を伝搬する際の電磁波のエネルギーの分配比に応じた比になるように形成されている請求項5に記載のプラズマ処理装置。
- 前記スロット群の中心に対して外側の面が面取りされている部分の面積は、前記スロット群の中心に対して内側の面が面取りされている部分の面積より大きい請求項6に記載のプラズマ処理装置。
- 前記スロット内誘電部材の突出部分には、傾斜が設けられている請求項3に記載のプラズマ処理装置。
- 前記誘電部材は、前記導波管の少なくとも一部を閉塞する誘電体窓を含む請求項1に記載のプラズマ処理装置。
- 前記誘電体窓と前記導波管とは鋳ぐるみにより前記処理室内の気密を保持する請求項9に記載されたプラズマ処理装置。
- 前記スロット内誘電部材と前記スロットアンテナとは鋳ぐるみにより前記処理室内の気密を保持する請求項2に記載されたプラズマ処理装置。
- 前記スロット内誘電部材と前記スロットアンテナとは、該スロット内誘電部材と該スロットアンテナの間に封止材を設けることにより前記処理室内の気密を保持する請求項2に記載されたプラズマ処理装置。
- 電磁波源から電磁波を出力するステップと、
前記出力された電磁波を導波管内に伝送させ、前記電磁波源とプラズマ処理を行う処理容器との間に設けられた誘電部材に電磁波を透過させるステップと、
前記透過した電磁波を、前記処理容器の処理室の内壁を形成する前記スロットアンテナの金属面に沿って伝搬させるステップと、
前記スロットアンテナの金属面に沿って伝搬した電磁波のエネルギーによりガスを励起させてプラズマを生成し、減圧された前記処理室内にて被処理体にプラズマ処理を施すステップと、
を含むプラズマ処理装置の給電方法。
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