JPWO2010137722A1 - 再生医薬のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、(1)再生、増殖又は分化能力を有する細胞から胚様体を形成させる工程、(2)工程(1)で得られた胚様体を消化酵素で処理することによって単一細胞状態にする工程、(3)工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する工程、(4)工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する工程、および(5)工程(4)における定量解析の結果をもとに、候補物質が細胞の再生、増殖または分化に与える影響を評価する工程を含む、細胞または臓器の再生、増殖又は分化を調節する物質のスクリーニング方法を提供する。
Description
本発明は、再生医薬のスクリーニング方法に関する。
再生とは、生体の欠失した細胞・組織が幹細胞などの増殖や分化によって修復される現象である。皮膚や消化管上皮のように寿命の尽きた細胞の代わりに新しい細胞を供給する恒常的な細胞の更新は生理的再生と呼ばれ、損傷や疾病によって急速に失われた細胞・組織を補充し回復させるものを病理的再生と呼ぶ。再生は多細胞生物が生存してゆくために必須の現象であるが、ヒトなどの高等動物においては自然に備わった再生力に限界があり、これを超えた重篤あるいは広範囲に及ぶ損傷を受けた臓器や組織は治癒することなく個体全体の生命維持の危機を引き起こす。腎臓や肝臓、心臓のような生体の維持にとって重要ないくつかの臓器の不全に対しては、既に臓器移植による治療法が確立しているが、ドナーの確保や免疫適合性などの問題点のために治療の恩恵を受けることができる患者数には限界があった。そのような臓器移植の問題点を克服するものとして最近注目されているのが再生医療である。これは組織の発生や再生に関して生体に備わった能力を制御する技術を開発し、自己あるいは他人から採取した細胞を材料として組織の再構築や臓器の再生を行なうものである。既に臨床で用いられているものとしては、白血病など多くの疾患で行なわれている骨髄移植や熱傷に対する皮膚移植、糖尿病における膵島移植などがある。そのほか、パーキンソン病に対する神経幹細胞移植、心筋梗塞に対する骨髄細胞移植、脊髄損傷に対するシュワン細胞の移植なども臨床への応用が期待されている。また、増殖分化因子を利用したものとしては繊維芽細胞増殖因子(FGF)を利用した創傷治癒促進、エリスロポエチンによる貧血治療などは既に臨床現場で利用され、肝細胞増殖因子(HGF)あるいはその遺伝子による血管再生なども医薬としての実用化が期待されている。
再生医薬のスクリーニングに関連する技術としては以下のものが知られている。
WO2006−6722(特許文献1)には、再生・分化・増殖能力を有する細胞における複数の遺伝子の発現量をまとめて定量解析することにより、細胞の再生、増殖または分化に関与している遺伝子を特定する工程を含む、細胞の再生・増殖・分化関与遺伝子のスクリーニング方法が開示されている。
Desbordesらは、分化や自己複製に関与する化合物を幅広くスクリーニングした例(hES細胞において未分化マーカーOct4の発現を変動させる化合物をスクリーニングして、2880化合物より14化合物を同定)を報告している(非特許文献1)。
Hahnらは、HDAC inhibitor等に着眼した脳腫瘍治療薬のスクリーニング方法等を報告している(非特許文献2)。
Stegmaierらは、Multiplex RT−PCR(384穴プレート)を用いたスクリーニング方法等を報告している(非特許文献3)。
再生医薬のスクリーニングに関連する技術としては以下のものが知られている。
WO2006−6722(特許文献1)には、再生・分化・増殖能力を有する細胞における複数の遺伝子の発現量をまとめて定量解析することにより、細胞の再生、増殖または分化に関与している遺伝子を特定する工程を含む、細胞の再生・増殖・分化関与遺伝子のスクリーニング方法が開示されている。
Desbordesらは、分化や自己複製に関与する化合物を幅広くスクリーニングした例(hES細胞において未分化マーカーOct4の発現を変動させる化合物をスクリーニングして、2880化合物より14化合物を同定)を報告している(非特許文献1)。
Hahnらは、HDAC inhibitor等に着眼した脳腫瘍治療薬のスクリーニング方法等を報告している(非特許文献2)。
Stegmaierらは、Multiplex RT−PCR(384穴プレート)を用いたスクリーニング方法等を報告している(非特許文献3)。
Cell Stem Cell,2(2008)p.602−612
PNAS,105(2008)p.9751−9756
Nature Genetics 36(2004)p.257−263
従前、幹細胞(胚性幹細胞や体性幹細胞など)や前駆細胞などを用いて人為的に調製が可能な細胞、臓器の種類は限定されており、膵臓β細胞や腎臓、消化管など多くのものについては、臨床応用が可能な細胞、組織の作出には至っていない。また、再生医療にある程度有用な細胞であったとしても、喪失した機能を完全に補填するほど充分なレベルに達していないものも多い。臨床面での需要は非常に高いにも関わらず調製が不可能あるいは効率が低い細胞、組織を再生医療に提供できるようにするためには、従来よりも細胞の分化をより効率良く制御する技術が必要である。また、技術開発の過程で明らかになってくる細胞分化を調節する新たなメカニズムを応用することによって、生体内外で組織の再構築や臓器の再生を促すような医薬候補物質の新規スクリーニング系の構築が可能となる。特に、生体中に存在する幹細胞を活性化し、再生を促す医薬品を開発することが出来れば、手術や免疫抑制剤の使用といった患者の負担を解消することができる。さらに、ヒトあるいは高等動物のあらゆる細胞、組織を効率的にかつ大量に調製することができれば、従来からの創薬プロセスにおける医薬候補物質のスクリーニングや薬効評価、安全性試験などに応用可能となる。
細胞の分化調節プロセスには現在も不明な点が多く残されており、既知の増殖分化因子、サイトカイン、シグナル伝達系の阻害剤および活性化剤などを使用した再生分化調節には限界がある。実際、既存の分化調節物質を利用してin vitroあるいはin vivoでこれまでに再生させることが出来た細胞、組織、器官の種類は非常に限られている。また、特定の細胞系譜にコミットした幹細胞を用いたスクリーニングでは、特定の細胞への分化プロセスを調節する物質が得られるが、そのようなスクリーニングで得られた物質が他の細胞に対しても作用を有する可能性について検証するためには別の分化系での検証が必要となる。さらに、ヒトの細胞の再生分化を調節する物質をスクリーニングするためにはヒト組織から得られた幹細胞を使用することが望ましいが、材料の入手やスクリーニングのための細胞の大量調製などの面での制約があり、使用できる幹細胞は骨髄や脂肪由来の間葉系幹細胞や胎児由来の神経幹細胞などに限定されている。
このように、生体には再生分化を調節する内在性のメカニズムが存在し、それを利用して細胞の分化・増殖を人為的に調節することができる。しかし、実際の再生分化の調節メカニズムは未解明な部分も多く残されているために、従来から知られているような分化・増殖因子を細胞に作用させるような方法には限界があった。また、再生分化に関連するメカニズムは多岐にわたるため、再生分化調節薬あるいは再生分化を効率よく調整するツールの候補となる物質を見出すためには、その作用を幅広くかつ定量的に調べる方法の発明が必要であった。
細胞の分化調節プロセスには現在も不明な点が多く残されており、既知の増殖分化因子、サイトカイン、シグナル伝達系の阻害剤および活性化剤などを使用した再生分化調節には限界がある。実際、既存の分化調節物質を利用してin vitroあるいはin vivoでこれまでに再生させることが出来た細胞、組織、器官の種類は非常に限られている。また、特定の細胞系譜にコミットした幹細胞を用いたスクリーニングでは、特定の細胞への分化プロセスを調節する物質が得られるが、そのようなスクリーニングで得られた物質が他の細胞に対しても作用を有する可能性について検証するためには別の分化系での検証が必要となる。さらに、ヒトの細胞の再生分化を調節する物質をスクリーニングするためにはヒト組織から得られた幹細胞を使用することが望ましいが、材料の入手やスクリーニングのための細胞の大量調製などの面での制約があり、使用できる幹細胞は骨髄や脂肪由来の間葉系幹細胞や胎児由来の神経幹細胞などに限定されている。
このように、生体には再生分化を調節する内在性のメカニズムが存在し、それを利用して細胞の分化・増殖を人為的に調節することができる。しかし、実際の再生分化の調節メカニズムは未解明な部分も多く残されているために、従来から知られているような分化・増殖因子を細胞に作用させるような方法には限界があった。また、再生分化に関連するメカニズムは多岐にわたるため、再生分化調節薬あるいは再生分化を効率よく調整するツールの候補となる物質を見出すためには、その作用を幅広くかつ定量的に調べる方法の発明が必要であった。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、Embryonic Stem(ES)細胞から胚様体を形成させることによって多方向への分化を誘導し、トリプシン処理により胚様体をシングルセルに分散させた後、評価する化合物を添加して接着培養を行い、2種類以上の遺伝子の発現変動を調べるプロセスから構成される再生医薬のスクリーニング方法を見出した。さらに、候補化合物による遺伝子の発現変動を評価する際に使用する遺伝子の選択基準として、(i)分化過程で増減し、(ii)化合物無処理(コントロール)でも有意な値として発現が検出でき、(iii)既存の増殖・分化因子を用いたパイロット試験で発現が変動することが確認された遺伝子(公知)であることを指標として選択することが有用であることを見出した。一般に再生分化には脊椎動物では共通のメカニズムが存在することから、調製の容易なマウスES細胞のような多分化能を有する細胞を用いて得られた知見がヒト組織幹細胞の再生分化調節にも広く応用可能であること、また、各種の幹細胞間にも共通の再生分化のメカニズムが存在し、ある種の幹細胞に作用する物質は他の幹細胞にも作用し得ることなどを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のスクリーニング方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」と称する場合がある。)を提供する。
[1]以下の工程(1)〜(5):
(1)再生、増殖又は分化能力を有する細胞から胚様体を形成させる工程、
(2)工程(1)で得られた胚様体を消化酵素で処理することによって単一細胞状態にする工程、
(3)工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する工程、
(4)工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する工程、および
(5)工程(4)における定量解析の結果をもとに、候補物質が細胞の再生、増殖または分化に与える影響を評価する工程、を含む、細胞または臓器の再生、増殖又は分化を調節する物質のスクリーニング方法。
[2]前記工程(1)における細胞が、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞およびiPS(induced pluripotent stem)細胞から選択される上記[1]記載の方法。
[3]前記工程(1)における胚様体を形成させるために行う細胞培養の期間が3ないし6日間である上記[1]または[2]記載の方法。
[4]再生、増殖又は分化を調節する物質の標的となる細胞が、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞およびそれらの細胞を分化誘導して得られる細胞、ならびに組織幹細胞(間葉系幹細胞、造血幹細胞、筋芽細胞、神経幹細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞、血管芽細胞、生体中に存在する前駆細胞もしくは幹細胞)で生体組織内に存在した状態あるいはin vitroで培養した状態の細胞からなる群より選択される、上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の方法。
[5]再生、増殖又は分化を調節する物質が、合成化合物、天然物、タンパク質、ペプチド、脂質、アミン、アミノ酸、糖、核酸、またはイオンである、上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の方法。
[6]再生、増殖又は分化を調節する物質が、受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、生合成経路阻害剤、タンパク質間相互作用の阻害剤、酵素阻害剤および基質、補酵素、シグナル伝達系の阻害剤および活性化剤、チャンネル阻害剤およびモジュレーター、ビタミン、抗酸化剤、アポトーシス阻害剤および促進剤、抗ウイルス剤、界面活性剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、抗生物質、コンビナトリアルケミストリー法で合成された化合物、ならびにそれらの合成中間体からなる群より選択される、上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の方法。
[7]再生、増殖又は分化を調節する物質の標的となる細胞または臓器が、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、巨核球)、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞、血球系の細胞、脳、脳の各部位(嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、および骨格筋からなる群より選択される、上記[1]ないし[6]のいずれかに記載の方法。
[8]再生、増殖又は分化を調節する物質が、中枢性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、虚血性神経障害)、炎症性疾患(アレルギー性疾患、喘息、リュウマチ、変形性関節症)、循環器疾患(心不全、心肥大、狭心症、動脈硬化症)、癌(非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌)、糖尿病、免疫系疾患(自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性疾患、免疫不全、喘息、リュウマチ性関節炎、乾癬、動脈硬化症、糖尿病、アルツハイマー病)、肝臓・胆のう疾患(硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症)、消化器系疾患(潰瘍、腸炎、消化不全、過敏性大腸炎、潰瘍性大腸炎、下痢、イレウス)、熱傷、骨折、および脱毛症からなる群より選択される疾患の予防・治療薬である、上記[1]ないし[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記工程(2)における消化酵素が、トリプシンである上記[1]ないし[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記工程(3)における接着性プレートが、ゼラチンコートした複数の穴を有するプレートである上記[1]ないし[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記工程(4)において2種類以上の遺伝子の発現量をまとめて定量解析する際、Multiplex RT−PCRを用いる上記[1]ないし[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記工程(4)における細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子が、
(A)未分化マーカーであるNanog、Oct3/4、Sox2、Klf4、Akp2、
(B)原始外胚葉マーカーであるFgf5、
(C)原始線条マーカーであるBrachyury、Snail1、
(D)栄養外胚葉マーカーであるCdx2、Bmp4、
(E)神経マーカーであるTubb3、Nefh、Nestin、p75NTR、
(F)心筋マーカーであるActc1、
(G)平滑筋マーカーであるActa2、Cnn1、
(H)内皮細胞マーカーであるTie2、
(I)中胚葉マーカーであるFlk1、
(J)中胚葉と内胚葉マーカーであるCxcr4、
(K)胚体外内胚葉マーカーであるGata4、Laminin B1、
(L)骨格筋マーカーであるActa1、Tpm1、
(M)骨芽細胞マーカーであるOpn、
(N)造血幹細胞マーカーであるc−kit、および
(O)軟骨細胞マーカーであるSox9からなる群より選択される上記[1]ないし[11]のいずれかに記載の方法。
すなわち、本発明は、以下のスクリーニング方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」と称する場合がある。)を提供する。
[1]以下の工程(1)〜(5):
(1)再生、増殖又は分化能力を有する細胞から胚様体を形成させる工程、
(2)工程(1)で得られた胚様体を消化酵素で処理することによって単一細胞状態にする工程、
(3)工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する工程、
(4)工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する工程、および
(5)工程(4)における定量解析の結果をもとに、候補物質が細胞の再生、増殖または分化に与える影響を評価する工程、を含む、細胞または臓器の再生、増殖又は分化を調節する物質のスクリーニング方法。
[2]前記工程(1)における細胞が、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞およびiPS(induced pluripotent stem)細胞から選択される上記[1]記載の方法。
[3]前記工程(1)における胚様体を形成させるために行う細胞培養の期間が3ないし6日間である上記[1]または[2]記載の方法。
[4]再生、増殖又は分化を調節する物質の標的となる細胞が、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞およびそれらの細胞を分化誘導して得られる細胞、ならびに組織幹細胞(間葉系幹細胞、造血幹細胞、筋芽細胞、神経幹細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞、血管芽細胞、生体中に存在する前駆細胞もしくは幹細胞)で生体組織内に存在した状態あるいはin vitroで培養した状態の細胞からなる群より選択される、上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の方法。
[5]再生、増殖又は分化を調節する物質が、合成化合物、天然物、タンパク質、ペプチド、脂質、アミン、アミノ酸、糖、核酸、またはイオンである、上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の方法。
[6]再生、増殖又は分化を調節する物質が、受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、生合成経路阻害剤、タンパク質間相互作用の阻害剤、酵素阻害剤および基質、補酵素、シグナル伝達系の阻害剤および活性化剤、チャンネル阻害剤およびモジュレーター、ビタミン、抗酸化剤、アポトーシス阻害剤および促進剤、抗ウイルス剤、界面活性剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、抗生物質、コンビナトリアルケミストリー法で合成された化合物、ならびにそれらの合成中間体からなる群より選択される、上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の方法。
[7]再生、増殖又は分化を調節する物質の標的となる細胞または臓器が、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、巨核球)、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞、血球系の細胞、脳、脳の各部位(嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、および骨格筋からなる群より選択される、上記[1]ないし[6]のいずれかに記載の方法。
[8]再生、増殖又は分化を調節する物質が、中枢性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、虚血性神経障害)、炎症性疾患(アレルギー性疾患、喘息、リュウマチ、変形性関節症)、循環器疾患(心不全、心肥大、狭心症、動脈硬化症)、癌(非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌)、糖尿病、免疫系疾患(自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性疾患、免疫不全、喘息、リュウマチ性関節炎、乾癬、動脈硬化症、糖尿病、アルツハイマー病)、肝臓・胆のう疾患(硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症)、消化器系疾患(潰瘍、腸炎、消化不全、過敏性大腸炎、潰瘍性大腸炎、下痢、イレウス)、熱傷、骨折、および脱毛症からなる群より選択される疾患の予防・治療薬である、上記[1]ないし[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記工程(2)における消化酵素が、トリプシンである上記[1]ないし[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記工程(3)における接着性プレートが、ゼラチンコートした複数の穴を有するプレートである上記[1]ないし[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記工程(4)において2種類以上の遺伝子の発現量をまとめて定量解析する際、Multiplex RT−PCRを用いる上記[1]ないし[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記工程(4)における細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子が、
(A)未分化マーカーであるNanog、Oct3/4、Sox2、Klf4、Akp2、
(B)原始外胚葉マーカーであるFgf5、
(C)原始線条マーカーであるBrachyury、Snail1、
(D)栄養外胚葉マーカーであるCdx2、Bmp4、
(E)神経マーカーであるTubb3、Nefh、Nestin、p75NTR、
(F)心筋マーカーであるActc1、
(G)平滑筋マーカーであるActa2、Cnn1、
(H)内皮細胞マーカーであるTie2、
(I)中胚葉マーカーであるFlk1、
(J)中胚葉と内胚葉マーカーであるCxcr4、
(K)胚体外内胚葉マーカーであるGata4、Laminin B1、
(L)骨格筋マーカーであるActa1、Tpm1、
(M)骨芽細胞マーカーであるOpn、
(N)造血幹細胞マーカーであるc−kit、および
(O)軟骨細胞マーカーであるSox9からなる群より選択される上記[1]ないし[11]のいずれかに記載の方法。
1.細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質のスクリーニング方法
本発明の一実施形態によれば、細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質のスクリーニング方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」と称する場合がある。)が提供される。この方法は、典型的には、以下の工程を含む:
(1)再生、増殖又は分化能力を有する細胞から胚様体を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた胚様体を消化酵素で処理することによって単一細胞状態にする工程;
(3)工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する工程;
(4)工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する工程;および
(5)工程(4)における定量解析の結果をもとに、候補物質が細胞の再生、増殖または分化に与える影響を評価する工程。
本発明のスクリーニング方法では、まず、工程(1)で、再生、増殖または分化能力を有する細胞(例:ES細胞)から胚様体(Embryoid body,EB)を形成させることによって、多方向への分化を誘導する。
本明細書中、「胚様体」は当該分野で通常用いられる意味で用いられ、ES細胞、iPS細胞などの多能性幹細胞を浮遊培養で分化させた際に形成される胚様の形態をした様々な組織の幹細胞あるいは前駆細胞からなる細胞塊を意味する。
本発明のスクリーニング方法において、工程(1)で胚葉体を形成する際に用いる再生、増殖または分化能力を有する細胞の好ましい例としては、ヒトおよびその他の温血動物(例、マウス)の胚性幹細胞(ES細胞)およびiPS(induced pluripotent stem)細胞等が挙げられる。胚様体を形成させるには、典型的には、マウスなどのES細胞を血清または血清代替品を含む培地に懸濁し、37℃の5%CO2条件下において1ないし10日間浮遊培養する。工程(1)で胚葉体を形成する際に用いる再生、増殖または分化能力を有する細胞の特に好ましい例としては、ヒトおよびその他の温血動物(例、マウス)の胚性幹細胞(ES細胞)が挙げられる。
細胞培養における細胞の存在形態により細胞培養の方法は接着培養と浮遊培養に分類することができる。接着培養は培養細胞を培養容器に付着させて増殖させる方法であり、浮遊培養は培養細胞を培地内において浮遊状態で増殖させる方法である。
本発明のスクリーニング方法において、胚様体を形成させるために行う細胞培養は、典型的には浮遊培養で行う。培養期間は、胚様体が形成されるまでの期間であれば特に限定されないが、典型的には1ないし6日間である。培養期間は、好ましくは3ないし6日間である。培養期間は、さらに好ましくは4日間である。
例えば、胚様体を形成させる際に非接着性のマルチウェルプレートを利用することで均質な胚様体を形成させ、安定的な結果を得ることができる。
次いで、上記工程(2)では、工程(1)で得られた胚様体に消化酵素を添加して、細胞同士を分離させ単一細胞状態にする。消化酵素としては、トリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ディスパーゼ、アキュターゼ(商品名)等を用いることができる。なかでも、トリプシンが好ましく、典型的には、消化酵素の作用の阻害剤であるCa2+やMg2+をキレートするためにEDTAを加えたトリプシン−EDTA溶液(例:0.25%トリプシン−1mM EDTA)の様な形態で用いられる。
工程(1)および(2)で、胚様体に由来する均質な細胞集団を調製することにより、スクリーニングにおいて安定的な結果を得ることが可能となる。
工程(3)では、工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する。本明細書中、「接着性プレート」とは、接着培養に用いることができるプレートのことをいい、プレート上に細胞が付着し、伸展および増殖できるように表面を細胞接着促進物質、例えばファイブロネクチン、I型あるいはIV型コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン、マトリゲル(商品名)、ポリリジン、ポリオルニチンでコーティングされたプレートを意味する。本発明のスクリーニング方法で用いる接着性プレートの好ましい例として、ゼラチンコートした複数の穴を有するプレート(例:96穴プレート)が挙げられる。
本明細書中、「候補物質」とは、細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質の候補物質、すなわち、本発明のスクリーニング方法によるスクリーニング対象の物質をいい、合成化合物、天然物、タンパク質、ペプチド、脂質、アミン、アミノ酸、糖、核酸、イオン等が含まれる。また、「候補物質」には受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、生合成経路阻害剤、タンパク質間相互作用の阻害剤、酵素阻害剤および基質、補酵素、シグナル伝達系の阻害剤および活性化剤、チャンネル阻害剤およびモジュレーター、ビタミン、抗酸化剤、アポトーシス阻害剤および促進剤、界面活性剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、抗生物質、抗ウイルス剤、コンビナトリアルケミストリー法で合成された化合物等を含み、さらにそれらの合成中間体も含まれる。
本発明のスクリーニング方法は、多方向へ分化した細胞を含む胚様体をトリプシン等の消化酵素による消化で分散させた後に化合物(候補物質)の評価を行う点で、胚様体形成を行わずに未分化状態で単層培養することで化合物評価を実施している従来のES細胞を用いたスクリーニング系とは明確に区別される。
工程(4)では、工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する。
本明細書中、「細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子」とは、細胞の再生、増殖または分化に一定の役割を担っていることが既に知られている遺伝子、または細胞の再生、増殖または分化過程において発現が大きく変動することが知られている遺伝子のことをいう。
特に、本発明のスクリーニング方法において使用する「細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子」は、(i)分化過程でその発現が増減し、(ii)化合物無処理(コントロール)でも有意な値として発現が検出でき、(iii)既存の増殖・分化因子を用いたパイロット試験で発現が変動することが確認されている遺伝子であることが好ましい。
本発明のスクリーニング方法において用いられ得る細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子の好ましい例としては、
(A)未分化マーカーであるNanog、Oct3/4、Sox2、Klf4、Akp2、
(B)原始外胚葉マーカーであるFgf5、
(C)原始線条マーカーであるBrachyury、Snail1、
(D)栄養外胚葉マーカーであるCdx2、Bmp4、
(E)神経マーカーであるTubb3、Nefh、Nestin、p75NTR、
(F)心筋マーカーであるActc1、
(G)平滑筋マーカーであるActa2、Cnn1、
(H)内皮細胞マーカーであるTie2、
(I)中胚葉マーカーであるFlk1、
(J)中胚葉と内胚葉マーカーであるCxcr4、
(K)胚体外内胚葉マーカーであるGata4、Laminin B1、
(L)骨格筋マーカーであるActa1、Tpm1、
(M)骨芽細胞マーカーであるOpn、
(N)造血幹細胞マーカーであるc−kit、および
(O)軟骨細胞マーカーであるSox9が挙げられる。
本明細書中、「遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する」とは、2種類以上の遺伝子の発現量の定量解析を行う際に、1種類ずつ順次行うのではなく、2種類以上の遺伝子を一緒に一度の処理で定量解析することを意味する。具体的には、例えば、複数の遺伝子の発現量を同時に測定することができるMultiplex RT−PCRなどを用いて、2種類以上の遺伝子の発現量を同時に測定することができる。なお、Multiplex RT−PCRは既存の手法であるが、測定系の設定が煩雑でありハイスループットスクリーニングに使用されている例は非常に少ない。本発明のスクリーニング方法では、遺伝子発現解析において系のスループットを上昇させるためにMultiplex RT−PCRを用いることが好ましい。本発明のスクリーニング方法によれば、分化に関与する幅広い化合物群を取得することができ、得られた候補化合物群を他の成体幹細胞や胚性幹細胞からの分化誘導に利用することができる。
遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する際に、生細胞数を反映する指標を内部コントロールとして測定することが好ましい。内部コントロールで各遺伝子の発現量を補正することにより、化合物が細胞数の増減に与える影響を排除することができる。生細胞数を反映する指標の例としては、Gapdh発現量、ATP含量、タンパク含量、DNA含量が挙げられる。生細胞数を反映する指標としては、Gapdh発現量が好ましい。また、遺伝子の発現量の変化を見るためのコントロールとしては、DMSO、DMF、メタノール、エタノール、生理食塩水、緩衝液など、化合物を溶解した際と同じ溶媒を用いる。遺伝子の発現量の変化を見るためのコントロールを添加した時と比較して遺伝子の発現量を1.2倍以上、好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.6倍以上、なおさらに好ましくは1.8倍以上、最も好ましくは2倍以上変化(減少または増加)させることができる物質を、細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質として選択することができる。
本発明のスクリーニング方法によって見出される細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質を幹細胞に単一あるいは組み合わせて作用させることにより、効率良く目的とする細胞を分化させることができる。
2.本発明のスクリーニング方法により得られた化合物の用途
本発明のスクリーニング方法で得られた化合物は、細胞または臓器に作用させて再生、増殖、または分化を調節するために用いることができる。そのような標的細胞としては、例えば、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞およびそれらの細胞を分化誘導して得られる細胞、組織幹細胞(骨髄および脂肪などに存在する間葉系幹細胞、造血幹細胞、筋芽細胞、神経幹細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞、血管芽細胞など、生体中に存在する前駆細胞もしくは幹細胞)で生体組織内に存在した状態あるいはin vitroで培養した状態の細胞が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法で得られた化合物を作用させて再生、増殖、または分化させる細胞または臓器の例としては、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、巨核球)、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞などや血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節及び骨格筋が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法で得られた化合物を作用させて再生、増殖、または分化させる細胞または臓器の好ましい例として、骨細胞および脂肪細胞が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により得られた化合物、すなわち、細胞または臓器の再生、増殖又は分化を調節する物質は、疾患の治療に用いることができる。対象疾患の例としては、中枢性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、虚血性神経障害)、炎症性疾患(例えば、アレルギー性疾患、喘息、リュウマチ、変形性関節症)、循環器疾患(例えば、心不全、心肥大、狭心症、動脈硬化症)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性疾患、免疫不全、喘息、リュウマチ性関節炎、乾癬、動脈硬化症、糖尿病、アルツハイマー病)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石)、消化器系疾患(例えば、潰瘍、腸炎、消化不全、過敏性大腸炎、潰瘍性大腸炎、下痢、イレウス)、熱傷、骨折、脱毛症などの疾患や傷害が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により得られた化合物は、低毒性であり、必要により自体公知の方法にしたがって製剤化した後に、哺乳動物(例、ヒト)に対して、経口的または非経口的に投与することができる。ここで、前記化合物の投与量および投与回数は、投与対象、対象疾患等に応じて適宜選択すればよい。
本願の配列表に示す配列番号と配列との関係は、以下の通りである。
[配列番号:1]
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[配列番号:2]
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本明細書中で使用される以下の略号は、本技術分野で現在通常用いられている用例に従うものであり、それぞれの意味は次の通りである。
DMEM :Dulbecco’s Modified Eagle Medium
MEM :Minimum Essential Medium
RT−PCR:Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction
ATP :アデノシン三リン酸
DMSO :Dimethyl Sulfoxide
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
BrdU :5−bromo−2’−deoxyuridine
PBS :Phosphate buffered saline
ELISA :Enzyme−Linked Immunosorbent Assay
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこのような実施例に限定されるものではない。
本発明の一実施形態によれば、細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質のスクリーニング方法(以下、「本発明のスクリーニング方法」と称する場合がある。)が提供される。この方法は、典型的には、以下の工程を含む:
(1)再生、増殖又は分化能力を有する細胞から胚様体を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた胚様体を消化酵素で処理することによって単一細胞状態にする工程;
(3)工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する工程;
(4)工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する工程;および
(5)工程(4)における定量解析の結果をもとに、候補物質が細胞の再生、増殖または分化に与える影響を評価する工程。
本発明のスクリーニング方法では、まず、工程(1)で、再生、増殖または分化能力を有する細胞(例:ES細胞)から胚様体(Embryoid body,EB)を形成させることによって、多方向への分化を誘導する。
本明細書中、「胚様体」は当該分野で通常用いられる意味で用いられ、ES細胞、iPS細胞などの多能性幹細胞を浮遊培養で分化させた際に形成される胚様の形態をした様々な組織の幹細胞あるいは前駆細胞からなる細胞塊を意味する。
本発明のスクリーニング方法において、工程(1)で胚葉体を形成する際に用いる再生、増殖または分化能力を有する細胞の好ましい例としては、ヒトおよびその他の温血動物(例、マウス)の胚性幹細胞(ES細胞)およびiPS(induced pluripotent stem)細胞等が挙げられる。胚様体を形成させるには、典型的には、マウスなどのES細胞を血清または血清代替品を含む培地に懸濁し、37℃の5%CO2条件下において1ないし10日間浮遊培養する。工程(1)で胚葉体を形成する際に用いる再生、増殖または分化能力を有する細胞の特に好ましい例としては、ヒトおよびその他の温血動物(例、マウス)の胚性幹細胞(ES細胞)が挙げられる。
細胞培養における細胞の存在形態により細胞培養の方法は接着培養と浮遊培養に分類することができる。接着培養は培養細胞を培養容器に付着させて増殖させる方法であり、浮遊培養は培養細胞を培地内において浮遊状態で増殖させる方法である。
本発明のスクリーニング方法において、胚様体を形成させるために行う細胞培養は、典型的には浮遊培養で行う。培養期間は、胚様体が形成されるまでの期間であれば特に限定されないが、典型的には1ないし6日間である。培養期間は、好ましくは3ないし6日間である。培養期間は、さらに好ましくは4日間である。
例えば、胚様体を形成させる際に非接着性のマルチウェルプレートを利用することで均質な胚様体を形成させ、安定的な結果を得ることができる。
次いで、上記工程(2)では、工程(1)で得られた胚様体に消化酵素を添加して、細胞同士を分離させ単一細胞状態にする。消化酵素としては、トリプシン、コラゲナーゼ、パパイン、ディスパーゼ、アキュターゼ(商品名)等を用いることができる。なかでも、トリプシンが好ましく、典型的には、消化酵素の作用の阻害剤であるCa2+やMg2+をキレートするためにEDTAを加えたトリプシン−EDTA溶液(例:0.25%トリプシン−1mM EDTA)の様な形態で用いられる。
工程(1)および(2)で、胚様体に由来する均質な細胞集団を調製することにより、スクリーニングにおいて安定的な結果を得ることが可能となる。
工程(3)では、工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する。本明細書中、「接着性プレート」とは、接着培養に用いることができるプレートのことをいい、プレート上に細胞が付着し、伸展および増殖できるように表面を細胞接着促進物質、例えばファイブロネクチン、I型あるいはIV型コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン、マトリゲル(商品名)、ポリリジン、ポリオルニチンでコーティングされたプレートを意味する。本発明のスクリーニング方法で用いる接着性プレートの好ましい例として、ゼラチンコートした複数の穴を有するプレート(例:96穴プレート)が挙げられる。
本明細書中、「候補物質」とは、細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質の候補物質、すなわち、本発明のスクリーニング方法によるスクリーニング対象の物質をいい、合成化合物、天然物、タンパク質、ペプチド、脂質、アミン、アミノ酸、糖、核酸、イオン等が含まれる。また、「候補物質」には受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、生合成経路阻害剤、タンパク質間相互作用の阻害剤、酵素阻害剤および基質、補酵素、シグナル伝達系の阻害剤および活性化剤、チャンネル阻害剤およびモジュレーター、ビタミン、抗酸化剤、アポトーシス阻害剤および促進剤、界面活性剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、抗生物質、抗ウイルス剤、コンビナトリアルケミストリー法で合成された化合物等を含み、さらにそれらの合成中間体も含まれる。
本発明のスクリーニング方法は、多方向へ分化した細胞を含む胚様体をトリプシン等の消化酵素による消化で分散させた後に化合物(候補物質)の評価を行う点で、胚様体形成を行わずに未分化状態で単層培養することで化合物評価を実施している従来のES細胞を用いたスクリーニング系とは明確に区別される。
工程(4)では、工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する。
本明細書中、「細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子」とは、細胞の再生、増殖または分化に一定の役割を担っていることが既に知られている遺伝子、または細胞の再生、増殖または分化過程において発現が大きく変動することが知られている遺伝子のことをいう。
特に、本発明のスクリーニング方法において使用する「細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子」は、(i)分化過程でその発現が増減し、(ii)化合物無処理(コントロール)でも有意な値として発現が検出でき、(iii)既存の増殖・分化因子を用いたパイロット試験で発現が変動することが確認されている遺伝子であることが好ましい。
本発明のスクリーニング方法において用いられ得る細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子の好ましい例としては、
(A)未分化マーカーであるNanog、Oct3/4、Sox2、Klf4、Akp2、
(B)原始外胚葉マーカーであるFgf5、
(C)原始線条マーカーであるBrachyury、Snail1、
(D)栄養外胚葉マーカーであるCdx2、Bmp4、
(E)神経マーカーであるTubb3、Nefh、Nestin、p75NTR、
(F)心筋マーカーであるActc1、
(G)平滑筋マーカーであるActa2、Cnn1、
(H)内皮細胞マーカーであるTie2、
(I)中胚葉マーカーであるFlk1、
(J)中胚葉と内胚葉マーカーであるCxcr4、
(K)胚体外内胚葉マーカーであるGata4、Laminin B1、
(L)骨格筋マーカーであるActa1、Tpm1、
(M)骨芽細胞マーカーであるOpn、
(N)造血幹細胞マーカーであるc−kit、および
(O)軟骨細胞マーカーであるSox9が挙げられる。
本明細書中、「遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する」とは、2種類以上の遺伝子の発現量の定量解析を行う際に、1種類ずつ順次行うのではなく、2種類以上の遺伝子を一緒に一度の処理で定量解析することを意味する。具体的には、例えば、複数の遺伝子の発現量を同時に測定することができるMultiplex RT−PCRなどを用いて、2種類以上の遺伝子の発現量を同時に測定することができる。なお、Multiplex RT−PCRは既存の手法であるが、測定系の設定が煩雑でありハイスループットスクリーニングに使用されている例は非常に少ない。本発明のスクリーニング方法では、遺伝子発現解析において系のスループットを上昇させるためにMultiplex RT−PCRを用いることが好ましい。本発明のスクリーニング方法によれば、分化に関与する幅広い化合物群を取得することができ、得られた候補化合物群を他の成体幹細胞や胚性幹細胞からの分化誘導に利用することができる。
遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する際に、生細胞数を反映する指標を内部コントロールとして測定することが好ましい。内部コントロールで各遺伝子の発現量を補正することにより、化合物が細胞数の増減に与える影響を排除することができる。生細胞数を反映する指標の例としては、Gapdh発現量、ATP含量、タンパク含量、DNA含量が挙げられる。生細胞数を反映する指標としては、Gapdh発現量が好ましい。また、遺伝子の発現量の変化を見るためのコントロールとしては、DMSO、DMF、メタノール、エタノール、生理食塩水、緩衝液など、化合物を溶解した際と同じ溶媒を用いる。遺伝子の発現量の変化を見るためのコントロールを添加した時と比較して遺伝子の発現量を1.2倍以上、好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.6倍以上、なおさらに好ましくは1.8倍以上、最も好ましくは2倍以上変化(減少または増加)させることができる物質を、細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質として選択することができる。
本発明のスクリーニング方法によって見出される細胞または臓器の再生、増殖、または分化を調節する物質を幹細胞に単一あるいは組み合わせて作用させることにより、効率良く目的とする細胞を分化させることができる。
2.本発明のスクリーニング方法により得られた化合物の用途
本発明のスクリーニング方法で得られた化合物は、細胞または臓器に作用させて再生、増殖、または分化を調節するために用いることができる。そのような標的細胞としては、例えば、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞およびそれらの細胞を分化誘導して得られる細胞、組織幹細胞(骨髄および脂肪などに存在する間葉系幹細胞、造血幹細胞、筋芽細胞、神経幹細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞、血管芽細胞など、生体中に存在する前駆細胞もしくは幹細胞)で生体組織内に存在した状態あるいはin vitroで培養した状態の細胞が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法で得られた化合物を作用させて再生、増殖、または分化させる細胞または臓器の例としては、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、巨核球)、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞などや血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節及び骨格筋が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法で得られた化合物を作用させて再生、増殖、または分化させる細胞または臓器の好ましい例として、骨細胞および脂肪細胞が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により得られた化合物、すなわち、細胞または臓器の再生、増殖又は分化を調節する物質は、疾患の治療に用いることができる。対象疾患の例としては、中枢性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、虚血性神経障害)、炎症性疾患(例えば、アレルギー性疾患、喘息、リュウマチ、変形性関節症)、循環器疾患(例えば、心不全、心肥大、狭心症、動脈硬化症)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌)、糖尿病、免疫系疾患(例えば、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性疾患、免疫不全、喘息、リュウマチ性関節炎、乾癬、動脈硬化症、糖尿病、アルツハイマー病)、肝臓・胆のう疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝不全、胆汁うっ滞症、結石)、消化器系疾患(例えば、潰瘍、腸炎、消化不全、過敏性大腸炎、潰瘍性大腸炎、下痢、イレウス)、熱傷、骨折、脱毛症などの疾患や傷害が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により得られた化合物は、低毒性であり、必要により自体公知の方法にしたがって製剤化した後に、哺乳動物(例、ヒト)に対して、経口的または非経口的に投与することができる。ここで、前記化合物の投与量および投与回数は、投与対象、対象疾患等に応じて適宜選択すればよい。
本願の配列表に示す配列番号と配列との関係は、以下の通りである。
[配列番号:1]
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[配列番号:2]
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本明細書中で使用される以下の略号は、本技術分野で現在通常用いられている用例に従うものであり、それぞれの意味は次の通りである。
DMEM :Dulbecco’s Modified Eagle Medium
MEM :Minimum Essential Medium
RT−PCR:Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction
ATP :アデノシン三リン酸
DMSO :Dimethyl Sulfoxide
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
BrdU :5−bromo−2’−deoxyuridine
PBS :Phosphate buffered saline
ELISA :Enzyme−Linked Immunosorbent Assay
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこのような実施例に限定されるものではない。
実施例1:化合物評価系の構築(胚様体形成)
ES細胞としてD3株(American Type Culture Collection、CRL−1934)を使用した。ES細胞の維持のため、マイトマイシンC処理によって細胞増殖を停止させたマウス繊維芽細胞(MEF)(Millipore社より購入)をゼラチンコートしたプレート上に播種してフィーダーとして使用した。ES細胞をフィーダー上に播種した後、DMEM(Invitrogen社)培地に20%仔牛胎児血清(FBS、ES cell−qualified、Invitogen社)、100μM2−メルカプトエタノール(Invitrogen社)、1x MEM非必須アミノ酸液(Invitrogen社)、1x antimyobic−antimycotic(Invitrogen社)、1000U/ml白血病抑制因子(LIF、Chemicon社)を添加した培養液を用いて、37℃、5%CO2下で培養した。培地交換は毎日行い、0.25%トリプシン−1mM EDTA溶液(Invitrogen社、以下「トリプシン−EDTA溶液」と称する)を用いて3日ごとに継代することで未分化状態を維持した。
化合物評価系の安定化と簡便化のため、フィーダー細胞を除去した未分化細胞を以下に示す方法で大量に凍結保存した。まず、トリプシン−EDTA溶液を用いて細胞を単一細胞状態とした後、ゼラチンコートした培養皿に移して37℃で90分間培養した。接着しなかった細胞を回収することによりフィーダーであるマウス繊維芽細胞(MEF)を除去した後、別のゼラチンコートした培養皿においてさらに3日間培養した。その後、再びトリプシン−EDTA溶液を用いて単一細胞状態とした細胞を、ゼラチンコートした培養皿に1x105cells/cm2の細胞濃度となるように播種してさらに24時間培養した。それらの細胞をトリプシン−EDTA溶液によって剥離させたのち、2x106cells/mlの濃度でセルバンカー(日本全薬工業)に懸濁して−80℃で凍結保存した。これ以降の実験は、この凍結保存した細胞を用いて実施した。
胚様体を形成させるために、凍結保存した細胞を37℃の恒温槽で溶解させた後、96穴スフェロイド用プレート(住友ベークライト社)に1ウェルあたり1000細胞となるように播種した。DMEM培地に10%仔牛胎児血清(FBS、ES cell−qualified、Invitogen社)、2mM GlutaMAX−1(Invitrogen社)、3x10−4Mモノチオグリセロール(Sigma社)、1x MEM非必須アミノ酸液(Invitrogen社)、1x penicillin−streptomycin(Sigma社)を添加した培養液を用いて、1〜6日間浮遊培養した。本手法のとおり、96穴スフェロイド用プレートを用いて1ウェルに1つの胚様体を形成させることで、非接着性の培養皿上で浮遊培養を行って不均一な胚様体を形成させる従来の方法と比較して大きさが均一な胚様体が形成された。
本手法で胚様体を形成させる過程における、初期分化マーカーの発現変動を調べた。胚様体を経時的に回収し、RNeasy96またはRNeasy mini kit(Qiagen社)を用いて全RNAを精製した。PrimeScript RT reagent kit(タカラバイオ社)を用いてcDNAを合成した後、定量RT−PCRを実施することで、Brachyury、Flk1、Sox17、Sox1、Oct3/4、Nanogの各遺伝子の発現量を測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
Brachyury、Flk1、Sox17、Sox1、Oct3/4、Nanogの各遺伝子の発現量を解析した結果を図5に示す。浮遊培養4日日から5日目の間に、原始線条マーカーであるBrachyuryの一過的な発現上昇がみとめられた。さらに、中胚葉マーカーであるFlk1と内胚葉マーカーであるSox17の発現も浮遊培養4日目から5日目にかけて顕著に上昇していた。また、外胚葉マーカーであるSox1の発現も培養期間中、徐々に上昇していた。一方、未分化マーカーであるOct3/4、Nanogの発現は、浮遊培養期間が長くなるにつれて徐々に低下していた。これらの結果より、本実施例に記載の方法を用いることで大きさの均一な胚様体が形成されること、ES細胞を4日間以上の浮遊培養することによって該ES細胞が3胚葉方向へ分化誘導されることが明らかとなった。
実施例2:化合物評価系の構築(胚様体から接着培養への移行)
スループットの高い化合物評価を可能とするために、以下に示す方法により胚様体を分散させて接着培養を行った。実施例1に記載した手法に従って4日間の浮遊培養を行い胚様体を作製した後、トリプシン−EDTA溶液で処理することで単一細胞状態にした。単一細胞状態の細胞を、ゼラチンコートされた96穴プレート(旭テクノグラス社)に1ウェルあたり1000細胞となるように播種して、1〜4日間の接着培養を行った。培養液は胚様体形成時と同じものを使用した。1〜4日間の接着培養における初期分化マーカーの発現量について、実施例1と同様の手法を用いることで測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
1〜4日間の接着培養における初期分化マーカーの発現量を解析した結果を図6に示す。中胚葉で発現しているFlk1とBrachyuryの発現量は、接着培養によって顕著に上昇していた。また、外胚葉マーカーであるSox1の発現量は接着培養によって低下した一方で、神経前駆細胞マーカーであるNestinの発現量は徐々に上昇していた。また、栄養外胚葉マーカーであるCdx2の発現も接着培養によって顕著に誘導されていた。一方で、内胚葉マーカーであるFoxa2の発現は接着培養によって低下していた。これらの結果より、胚様体から接着培養に移行した後でも、中胚葉系、神経系、栄養外胚葉への分化が誘導されていることが明らかとなった。
以上の結果をもとに、ES細胞を用いた化合物評価系を設定した。本評価系の概略を図7に示す。本評価系は、(1)96穴スフェロイド用プレートを用いて4日間の浮遊培養を行うことで胚様体を形成させる、(2)胚様体をトリプシン−EDTA溶液で処理することで単一細胞状態とした後に、ゼラチンコートした96穴プレートに播種する、(3)細胞の播種と同時に評価したい化合物を添加して4日間の接着培養を行う、(4)培養終了時に各分化マーカーの発現量を測定することで化合物が分化に与える影響を評価する、という手順からなる。測定する分化マーカーとしては、未分化マーカーであるNanog、神経マーカーであるTubb3とNefh、心筋マーカーであるActc1、平滑筋マーカーであるActa2、内皮細胞マーカーであるTie2、中胚葉マーカーであるFlk1の7遺伝子を選択した。さらに、生細胞数を反映する内部コントロールとしてGapdh発現量も測定した。化合物が生細胞数に与える影響についても評価するため、Gapdh発現量についても評価の1項目とした。その他の分化マーカーの発現量は細胞数の増減の影響を避けるため、Gapdh発現量で補正した値を化合物の評価に用いた。
実施例3:分化に関与する化合物を用いた化合物評価系の検証
本発明のスクリーニング方法が分化に関与する化合物を検出するのに有効であるかを検証するため、分化に関与することが報告されている各種化合物を添加した場合の分化マーカーの発現変動について調べた。実施例2で示したプロトコールに従い、分化に関与する化合物の評価を実施した。
その結果、1μM 6−bromoindirubin−3’oxime(BIO、GSK3β阻害剤)、10μM PD169316(p38 MAPK阻害剤)、50nMレチノイン酸、3μMデキサメタゾン、0.5μM BIX−01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤)、1μM SB 431542(ALK5阻害剤)、1μM suberoylanilidehydroxamic acid(SAHA、HDAC阻害剤)を添加した場合に、1種類以上の遺伝子発現量がDMSO添加時と比べて2倍以上に上昇することがわかった。また、化合物添加による8種類の遺伝子発現の増減のパターンは、それぞれの化合物ごとに違っており、それぞれの化合物が分化に対して異なった影響を与えることが推定された。本発明のスクリーニング方法によって分化に関与する様々な化合物の活性が検出できたことから、本発明のスクリーニング方法は新たな分化調節薬を探索する上で非常に有益であることが確認された。
実施例4:LOPACライブラリーを用いた化合物評価
本発明のスクリーニング方法を用いて、市販されている化合物ライブラリーであるLOPAC1280(1280化合物、Sigma社)の中から分化に関与する化合物のスクリーニングを実施した。実施例2で示したプロトコールに従い、個々の化合物を最終濃度が3μM、溶媒であるDMSO濃度が0.15%となるように添加して化合物評価を実施した。スクリーニングにおいては、上記で示した8種類の遺伝子の発現量をハイスループットで測定するため、複数遺伝子の発現量を同時に測定できるMultiplex RT−PCR系を設定した。8種類の遺伝子発現は、セット1(Gapdh(蛍光プローブBODIPY)、Acta2(蛍光プローブVIC)、セット2(Actc1(蛍光プローブBODIPY)、Tubb3(蛍光プローブVIC)、Nanog(蛍光プローブFAM))、セット3(Flk1(蛍光プローブBODIPY)、Nefh(蛍光プローブVIC)、Tie2(蛍光プローブFAM))の3種類のMultiplex RT−PCRによって測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
スクリーニングの結果、56化合物についてはGapdhの発現量がDMSO添加のコントロールに対して5%以下に低下しており、これらの化合物には細胞毒性があることが示唆された。これら56化合物については、それ以降の解析から除外した。それ以外の化合物の中から、少なくとも1つ以上の遺伝子においてDMSO添加のコントロールと比較して2倍以上に発現量を上昇させた化合物を選択した。さらに、活性のあった化合物についてはもう一度同様の実験を行って再現性を調べ、最終的に再現性が確認された52化合物(全化合物中の4.1%)をヒット化合物(以下、「選択化合物」と称することがある。)として選択した(図2)。ヒット化合物の薬理作用については、図3に示す。それぞれの遺伝子ごとのヒット率は、Flk1で2.7%、Actc1で0.2%、Acta2で1.6%、Tie2で0.6%、Nefhで0.5%、Tubb3で0.4%、Nanogで0.0%、Gapdhで1.1%であった。これらの結果より、8種類の遺伝子発現を同時に測定することによって1種類の遺伝子発現のみを測定した場合よりも多くの化合物の活性を検出できることが明らかとなった。さらに、ヒット化合物として選択された化合物には、他の報告で分化に関与することが知られており、本実施例に記載の化合物評価系においても活性が認められていたBIO、PD169316、レチノイン酸といった化合物が含まれていた。これらの結果は、本スクリーニング方法において、分化に関与する化合物が正しく選択されたことを示している。また、ヒット化合物の中にはGapdh発現量を上昇させる化合物が14個含まれていた。これらの化合物が生細胞数に与える影響を調べるため、ウェル内のATP量をCellTiter−Glo luminescent cell viability kit(Promega社)を用いて測定した。その結果、各14化合物の添加によってウェル内のATP量の増加がみとめられた。これらの結果より、これらの14化合物は、少なくとも本分化条件においては生細胞数を増加させる作用があることが明らかとなった。
実施例5:スクリーニングから選択された化合物が他の分化マーカー発現に与える影響
選択化合物がES細胞の分化に与える影響をさらに詳細に解析するため、スクリーニングで用いた8遺伝子以外の分化マーカーの発現量についても上記と同様の手法で測定した。分化マーカーとして、未分化マーカーであるOct3/4、Sox2、Klf4、Akp2、原始外胚葉マーカーであるFgf5、原始線条マーカーであるBrachyury、Snail1、栄養外胚葉マーカーであるCdx2、Bmp4、中胚葉と内胚葉マーカーであるCxcr4、胚体外内胚葉マーカーであるGata4、Laminin B1、神経マーカーであるNestin、p75NTR、骨格筋マーカーであるActa1、Tpm1、平滑筋マーカーであるCnn1、骨芽細胞マーカーであるOpn、造血幹細胞マーカーであるc−kit、軟骨細胞マーカーであるSox9の発現量について測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
選択化合物のうち、32化合物において2種類以上の遺伝子発現を2倍以上に上昇させる活性がみとめられた(図2)。これら32種類の化合物の遺伝子発現パターンを比較するため、それぞれの発現データについて相関距離に基づくクラスタリングを実施した。
その結果を図11に示す。その結果、薬理作用が同じで化合物の構造が類似した化合物は同様の遺伝子発現プロファイルを示すこと明らかとなった。例えば、ドーパミン受容体拮抗薬で構造が似通っているthiothixene hydrochloride、perphenazine、cis−(Z)−flupenthixol dihydrochlorideは同じグループに分類された。また、ともにp38 MAPK阻害剤であり、構造が類似したPD 169316とSB 202190についても同じグループに分類された。さらに、コルチコステロイドであるhydrocortisone 21−hemisuccinate sodium、 hydrocortisone、betamethasone、beclomethasone、レチノイン酸受容体アゴニストであるTTNPB、13−cis−retinoic acid、 retinoic acid、 retinoic acidp−hydroxanilideもそれぞれ同一のグループに分類された。このように本実施例の化合物評価系を用いて複数の分化マーカーの発現量を解析することで、化合物を分化に与える作用に基づき分類できることが明らかとなった。
実施例6:スクリーニングにより選択された化合物がヒト間葉系幹細胞からの脂肪分化に与える影響
選択化合物は、ES細胞だけでなく成体幹細胞からの分化も制御する可能性が考えられた。そこで、これらの選択化合物がヒト間葉系幹細胞からの脂肪分化に与える影響について調べた。ヒト間葉系幹細胞はLonza社より購入し、低グルコースDMEM(Invitrogen社)に10%仔牛胎児血清、2mM GlutaMAX−1、1x penicillin−streptomucin(Sigma社)を添加した培地(以下、「増殖培地」と称する)を用いて接着培養した。脂肪分化誘導時には、細胞を1ウェルあたり3000細胞となるように96穴プレートへ播種した後、増殖培地で1晩培養した。その後、増殖培地を脂肪分化誘導培地(高ゴルコースDMEM(Invitrogen社)に10%仔牛胎児血清、2mM GlutaMAX−1、0.5mM 3−isobutyl−1−methylxanthine(IBMX,和光純薬)、10μg/mlインスリン(和光純薬)、1μMデキサメタゾン(和光純薬)、200μMインドメタシン(和光純薬)、1xpenicillin−streptomucin(Sigma社)を添加した培地)へと交換することで脂肪分化を誘導した。脂肪分化を誘導すると同時に、最終濃度が3μMとなるように選択化合物をそれぞれ添加して、5日間培養した。5日後に脂肪細胞マーカーであるAdiponectinの発現量を、実施例1で示したのと同様の手法を用いて測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
選択化合物のうち、ROCK阻害剤Y−27632、キナーゼ阻害剤HA−100、バニロイド受容体アンタゴニストcapsazepineがAdiponectinの発現量を増加させる化合物として見出された(図12a)。これらの化合物がAdiponectin発現を上昇させる作用は、PPARγアゴニストであるTroglitazone(10μM)と同等以上であった。
さらに、これら3化合物(Y−27632、HA−100およびcapsazepine)をそれぞれ添加した場合の脂肪分化のマスターレギュレーターであるPPARγ発現量についても同様の手法により測定した。図12aに示すとおり、Y−27632とHA−100に関してはPPARγ発現量も濃度依存的に増加させる作用があることが確認された。
次に、これら3化合物が脂肪滴形成に与える影響について調べた。10μMのY−27632、10μMのHA−100、または3μMのcapsazepineを脂肪分化を誘導すると同時に脂肪分化誘導培地に添加して5日間接着培養した。その後、それぞれの細胞を4%パラホルムアルデヒド(和光純薬)で30分間固定した後、PBSで3回洗浄した。さらに、0.36%オイルレッド0(Chemicon社)を用いて50分間室温で染色した後、蒸留水で3回洗浄して細胞の観察・撮影を行った。その結果、Y−27632とHA−100を添加することによって、DMSO添加コントロールと比較して脂肪滴の量が増加する様子が観察された(図12b)。一方、capsazepineには脂肪滴形成を増加させる顕著な活性はみとめられなかった。
さらに、これら3化合物を添加した場合に、それぞれの培養液中に含まれるアディポネクチン量を測定した。10μMのY−27632、10μMのHA−100、3μMのcapsazepineを脂肪分化誘導と同時に添加して8日間接着培養した。培養後、培養液中に含まれるアディポネクチン量をhuman adiponectin ELISA kit(R&D systems社)を用いて測定した。その結果、Y−27632とHA−100を添加することによって培養液中に含まれるアディポネクチン量が顕著に上昇することが明らかとなった(図12c)。一方、capsazepineにはアディポネクチン量を上昇させる作用はみとめられなかった。以上の結果より、少なくともY−27632とHA−100にはヒト間葉系幹細胞からの脂肪分化を促進する活性があることが明らかとなった。一方、選択化合物の中にはAdiponectin発現量を半分以下に低下させる化合物も10化合物存在しており、選択化合物の中には脂肪分化を抑制する化合物も含まれていることが示唆された。
実施例7:スクリーニングから選択された化合物がヒト間葉系幹細胞からの骨分化に与える影響
次に、選択化合物が、ヒト間葉系幹細胞からの骨分化に与える影響について調べた。ヒト間葉系幹細胞は、実施例6と同様の手法によって維持、培養した。細胞を1ウェルあたり1000細胞となるように96ウェルプレートへ播種した後、増殖培地で1晩培養した。その後、低ゴルコースDMEMに10%仔牛胎児血清、2mM GlutaMAX−1、10mM β−glycerophosphate(和光純薬)、0.05mM ascorbic acid−2−phosphate(和光純薬)、0.1μMデキサメタゾン(和光純薬)、1x penicillin−streptomycin(Sigma社)を添加した培地へと培地を交換することで骨分化を誘導した。骨分化を誘導すると同時に、最終濃度が3μMとなるように選択化合物をそれぞれ添加し、8日間接着培養した。培養終了後、初期骨芽細胞マーカーであるAlkaline phosphatase(Alpl)の発現量を実施例1と同様の手法により測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
その結果、選択化合物のうち、GSK3β阻害剤である6−bromoindirubin−3’oxime(BIO)とチミジンアナログである5−Bromo−2’−deoxyuridine(BrdU)がAlpl発現量を顕著に増加させる化合物として見出された(図13a)。
BIOとBrdUを添加した時の他の骨分化マーカー発現についても調べた。BIO、BrdUを添加して8日間接着培養した後、実施例1と同様の手法によりrunt−related transcription factor 2(Runx2)、collagen typeI alpha 1(Col1a1)、parathyroid hormone receptor(PTHR)の発現量を測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。その結果、3μMのBIOと10μMのBrdUによってRunx2、Col1a1、PTHRの発現量も顕著に増加することが明らかとなった(図13a)。
化合物が骨分化に与える影響についてさらに検証するため、アルカリホスファターゼ染色を行った。骨分化を誘導すると同時に3μMのBIO、10μMのBrdUを添加して、8日間接着培養した。培養後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(和光純薬)で30分間固定した後、PBSで3回洗浄した。alkaline phosphatase kit III(Vector Laboratories社)を添付プロトコールに従って使用してアルカリホスファターゼ染色を行った。その結果、BIOとBrdUを添加することでアルカリホスファターゼの染色性が高まっており、これらの化合物によってアルカリホスファターゼ活性が上昇することが明らかとなった(図13b)。
さらに、細胞内に蓄積されたカルシウム量を調べた。骨分化を誘導すると同時に3μMのBIO、10μMのBrdUを添加して、15日間接着培養した。培養後、細胞をPBSで洗浄した後に10mM Tris−HClと0.2% TritonX−100からなる溶解液に細胞を溶解させた。一部の溶解液を用いてタンパク濃度をBCA protein assay kit(Pierce社)を用いて測定した。残りの溶解液に塩酸を最終濃度が0.5Nとなるように加え、1晩振盪させた。0.5N塩酸を含む溶解液にとけだしたカルシウム量をCalcium E−test Kit Wako(和光純薬)を用いて測定した。カルシウム量は、タンパク量で補正した値を解析に用いた。その結果、BIOとBrdU添加によって細胞内のカルシウム量が増加していた(図13c)。これらの結果より、BIOとBrdUはヒト間葉系幹細胞からの骨分化を促進する活性を持っていることが明らかとなった。一方、選択化合物の中にはAlpl発現量を半分以下に低下させる化合物も2化合物存在しており、選択化合物の中には骨分化を抑制する化合物も含まれていることが示唆された。
実施例8:本発明のスクリーニング方法におけるGapdh発現量とATP量との相関
本発明のスクリーニング方法において測定したGapdh発現量がウェル内の生細胞数と相関するかどうかを調べた。実施例2に示した方法に従って、分化に関与することが知られている化合物である1μM6−bromoindirubin−3’oxime(BIO)、10μM PD169316、10μM forskolin、50nMレチノイン酸、5μM myoseverin、3μMデキサメタゾン、0.5μM BIX−01294をそれぞれ添加して4日間接着培養した後、Gapdh発現量を実施例1と同様の手法で測定した。上記測定と同時に、ウェル内のATP量についてもCellTiter−Glo luminescent cell viability kit(Promega社)を用いて測定した。その結果を図8に示す。いずれの化合物を添加した場合にもGapdh発現量はウェル内のATP量と非常によく相関していた。これらの結果より、Gapdh発現量はウェル内の生細胞数を示す指標として有用であることが確認された。
実施例9:分化に関与する化合物を用いた化合物評価
実施例3において、分化に関与することが知られている化合物を添加した場合に8種類の遺伝子発現パターンが変動することを示した。これらの実験の結果を図9に示す。実施例3で示したとおり、各化合物を添加した場合に、1種類以上の遺伝子発現量がDMSO添加時と比べて2倍以上に上昇することがわかった。また、化合物添加による8種類の遺伝子発現の増減のパターンは、それぞれの化合物ごとに違っており、それぞれの化合物が分化に対して異なった影響を与えることが推定された。本発明のスクリーニング方法によって分化に関与する様々な化合物の活性が検出できたことから、本発明のスクリーニング方法は新たな分化調節薬を探索する上で非常に有益であることが確認された。
実施例10:Gapdh発現量を増加させた化合物が生細胞数に与える影響
実施例4においてGapdh発現量を上昇させる化合物が14種類見出された。これらの14化合物を添加した後、ウェル内のATP量をCellTiter−Glo Luminescent cell viability kit(Promega社)を用いて測定した結果を図10に示す。実施例4で記載したとおり、これらの14化合物を添加した場合にはいずれもウェル内のATP量の増加が認められた。これらの14化合物は、本発明のスクリーニング方法の条件下において生細胞数を増加させる作用があることが明らかとなった。
実施例11:スクリーニングから選択された化合物がヒト間葉系幹細胞からの分化に与える影響
実施例6と実施例7に示した手法に基づいて、選択化合物がヒト間葉系幹細胞から脂肪分化あるいは骨分化に与える影響について調べた。選択化合物が、脂肪分化誘導時のAdiponectin発現量に与える影響および骨分化誘導時のAlpl発現量に与える影響について図4にまとめて示す。脂肪分化誘導時に添加することでAdiponectin発現量をコントロールと比較して1.3倍以上に増加させる化合物として、Y−27632、HA−100、capsazepineが見出された。また、骨分化誘導時に添加することでAlpl発現量をコントロールと比較して2倍以上に増加させる化合物として、BIOとBrdUが見出された。
ES細胞としてD3株(American Type Culture Collection、CRL−1934)を使用した。ES細胞の維持のため、マイトマイシンC処理によって細胞増殖を停止させたマウス繊維芽細胞(MEF)(Millipore社より購入)をゼラチンコートしたプレート上に播種してフィーダーとして使用した。ES細胞をフィーダー上に播種した後、DMEM(Invitrogen社)培地に20%仔牛胎児血清(FBS、ES cell−qualified、Invitogen社)、100μM2−メルカプトエタノール(Invitrogen社)、1x MEM非必須アミノ酸液(Invitrogen社)、1x antimyobic−antimycotic(Invitrogen社)、1000U/ml白血病抑制因子(LIF、Chemicon社)を添加した培養液を用いて、37℃、5%CO2下で培養した。培地交換は毎日行い、0.25%トリプシン−1mM EDTA溶液(Invitrogen社、以下「トリプシン−EDTA溶液」と称する)を用いて3日ごとに継代することで未分化状態を維持した。
化合物評価系の安定化と簡便化のため、フィーダー細胞を除去した未分化細胞を以下に示す方法で大量に凍結保存した。まず、トリプシン−EDTA溶液を用いて細胞を単一細胞状態とした後、ゼラチンコートした培養皿に移して37℃で90分間培養した。接着しなかった細胞を回収することによりフィーダーであるマウス繊維芽細胞(MEF)を除去した後、別のゼラチンコートした培養皿においてさらに3日間培養した。その後、再びトリプシン−EDTA溶液を用いて単一細胞状態とした細胞を、ゼラチンコートした培養皿に1x105cells/cm2の細胞濃度となるように播種してさらに24時間培養した。それらの細胞をトリプシン−EDTA溶液によって剥離させたのち、2x106cells/mlの濃度でセルバンカー(日本全薬工業)に懸濁して−80℃で凍結保存した。これ以降の実験は、この凍結保存した細胞を用いて実施した。
胚様体を形成させるために、凍結保存した細胞を37℃の恒温槽で溶解させた後、96穴スフェロイド用プレート(住友ベークライト社)に1ウェルあたり1000細胞となるように播種した。DMEM培地に10%仔牛胎児血清(FBS、ES cell−qualified、Invitogen社)、2mM GlutaMAX−1(Invitrogen社)、3x10−4Mモノチオグリセロール(Sigma社)、1x MEM非必須アミノ酸液(Invitrogen社)、1x penicillin−streptomycin(Sigma社)を添加した培養液を用いて、1〜6日間浮遊培養した。本手法のとおり、96穴スフェロイド用プレートを用いて1ウェルに1つの胚様体を形成させることで、非接着性の培養皿上で浮遊培養を行って不均一な胚様体を形成させる従来の方法と比較して大きさが均一な胚様体が形成された。
本手法で胚様体を形成させる過程における、初期分化マーカーの発現変動を調べた。胚様体を経時的に回収し、RNeasy96またはRNeasy mini kit(Qiagen社)を用いて全RNAを精製した。PrimeScript RT reagent kit(タカラバイオ社)を用いてcDNAを合成した後、定量RT−PCRを実施することで、Brachyury、Flk1、Sox17、Sox1、Oct3/4、Nanogの各遺伝子の発現量を測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
Brachyury、Flk1、Sox17、Sox1、Oct3/4、Nanogの各遺伝子の発現量を解析した結果を図5に示す。浮遊培養4日日から5日目の間に、原始線条マーカーであるBrachyuryの一過的な発現上昇がみとめられた。さらに、中胚葉マーカーであるFlk1と内胚葉マーカーであるSox17の発現も浮遊培養4日目から5日目にかけて顕著に上昇していた。また、外胚葉マーカーであるSox1の発現も培養期間中、徐々に上昇していた。一方、未分化マーカーであるOct3/4、Nanogの発現は、浮遊培養期間が長くなるにつれて徐々に低下していた。これらの結果より、本実施例に記載の方法を用いることで大きさの均一な胚様体が形成されること、ES細胞を4日間以上の浮遊培養することによって該ES細胞が3胚葉方向へ分化誘導されることが明らかとなった。
実施例2:化合物評価系の構築(胚様体から接着培養への移行)
スループットの高い化合物評価を可能とするために、以下に示す方法により胚様体を分散させて接着培養を行った。実施例1に記載した手法に従って4日間の浮遊培養を行い胚様体を作製した後、トリプシン−EDTA溶液で処理することで単一細胞状態にした。単一細胞状態の細胞を、ゼラチンコートされた96穴プレート(旭テクノグラス社)に1ウェルあたり1000細胞となるように播種して、1〜4日間の接着培養を行った。培養液は胚様体形成時と同じものを使用した。1〜4日間の接着培養における初期分化マーカーの発現量について、実施例1と同様の手法を用いることで測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
1〜4日間の接着培養における初期分化マーカーの発現量を解析した結果を図6に示す。中胚葉で発現しているFlk1とBrachyuryの発現量は、接着培養によって顕著に上昇していた。また、外胚葉マーカーであるSox1の発現量は接着培養によって低下した一方で、神経前駆細胞マーカーであるNestinの発現量は徐々に上昇していた。また、栄養外胚葉マーカーであるCdx2の発現も接着培養によって顕著に誘導されていた。一方で、内胚葉マーカーであるFoxa2の発現は接着培養によって低下していた。これらの結果より、胚様体から接着培養に移行した後でも、中胚葉系、神経系、栄養外胚葉への分化が誘導されていることが明らかとなった。
以上の結果をもとに、ES細胞を用いた化合物評価系を設定した。本評価系の概略を図7に示す。本評価系は、(1)96穴スフェロイド用プレートを用いて4日間の浮遊培養を行うことで胚様体を形成させる、(2)胚様体をトリプシン−EDTA溶液で処理することで単一細胞状態とした後に、ゼラチンコートした96穴プレートに播種する、(3)細胞の播種と同時に評価したい化合物を添加して4日間の接着培養を行う、(4)培養終了時に各分化マーカーの発現量を測定することで化合物が分化に与える影響を評価する、という手順からなる。測定する分化マーカーとしては、未分化マーカーであるNanog、神経マーカーであるTubb3とNefh、心筋マーカーであるActc1、平滑筋マーカーであるActa2、内皮細胞マーカーであるTie2、中胚葉マーカーであるFlk1の7遺伝子を選択した。さらに、生細胞数を反映する内部コントロールとしてGapdh発現量も測定した。化合物が生細胞数に与える影響についても評価するため、Gapdh発現量についても評価の1項目とした。その他の分化マーカーの発現量は細胞数の増減の影響を避けるため、Gapdh発現量で補正した値を化合物の評価に用いた。
実施例3:分化に関与する化合物を用いた化合物評価系の検証
本発明のスクリーニング方法が分化に関与する化合物を検出するのに有効であるかを検証するため、分化に関与することが報告されている各種化合物を添加した場合の分化マーカーの発現変動について調べた。実施例2で示したプロトコールに従い、分化に関与する化合物の評価を実施した。
その結果、1μM 6−bromoindirubin−3’oxime(BIO、GSK3β阻害剤)、10μM PD169316(p38 MAPK阻害剤)、50nMレチノイン酸、3μMデキサメタゾン、0.5μM BIX−01294(G9aヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤)、1μM SB 431542(ALK5阻害剤)、1μM suberoylanilidehydroxamic acid(SAHA、HDAC阻害剤)を添加した場合に、1種類以上の遺伝子発現量がDMSO添加時と比べて2倍以上に上昇することがわかった。また、化合物添加による8種類の遺伝子発現の増減のパターンは、それぞれの化合物ごとに違っており、それぞれの化合物が分化に対して異なった影響を与えることが推定された。本発明のスクリーニング方法によって分化に関与する様々な化合物の活性が検出できたことから、本発明のスクリーニング方法は新たな分化調節薬を探索する上で非常に有益であることが確認された。
実施例4:LOPACライブラリーを用いた化合物評価
本発明のスクリーニング方法を用いて、市販されている化合物ライブラリーであるLOPAC1280(1280化合物、Sigma社)の中から分化に関与する化合物のスクリーニングを実施した。実施例2で示したプロトコールに従い、個々の化合物を最終濃度が3μM、溶媒であるDMSO濃度が0.15%となるように添加して化合物評価を実施した。スクリーニングにおいては、上記で示した8種類の遺伝子の発現量をハイスループットで測定するため、複数遺伝子の発現量を同時に測定できるMultiplex RT−PCR系を設定した。8種類の遺伝子発現は、セット1(Gapdh(蛍光プローブBODIPY)、Acta2(蛍光プローブVIC)、セット2(Actc1(蛍光プローブBODIPY)、Tubb3(蛍光プローブVIC)、Nanog(蛍光プローブFAM))、セット3(Flk1(蛍光プローブBODIPY)、Nefh(蛍光プローブVIC)、Tie2(蛍光プローブFAM))の3種類のMultiplex RT−PCRによって測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
スクリーニングの結果、56化合物についてはGapdhの発現量がDMSO添加のコントロールに対して5%以下に低下しており、これらの化合物には細胞毒性があることが示唆された。これら56化合物については、それ以降の解析から除外した。それ以外の化合物の中から、少なくとも1つ以上の遺伝子においてDMSO添加のコントロールと比較して2倍以上に発現量を上昇させた化合物を選択した。さらに、活性のあった化合物についてはもう一度同様の実験を行って再現性を調べ、最終的に再現性が確認された52化合物(全化合物中の4.1%)をヒット化合物(以下、「選択化合物」と称することがある。)として選択した(図2)。ヒット化合物の薬理作用については、図3に示す。それぞれの遺伝子ごとのヒット率は、Flk1で2.7%、Actc1で0.2%、Acta2で1.6%、Tie2で0.6%、Nefhで0.5%、Tubb3で0.4%、Nanogで0.0%、Gapdhで1.1%であった。これらの結果より、8種類の遺伝子発現を同時に測定することによって1種類の遺伝子発現のみを測定した場合よりも多くの化合物の活性を検出できることが明らかとなった。さらに、ヒット化合物として選択された化合物には、他の報告で分化に関与することが知られており、本実施例に記載の化合物評価系においても活性が認められていたBIO、PD169316、レチノイン酸といった化合物が含まれていた。これらの結果は、本スクリーニング方法において、分化に関与する化合物が正しく選択されたことを示している。また、ヒット化合物の中にはGapdh発現量を上昇させる化合物が14個含まれていた。これらの化合物が生細胞数に与える影響を調べるため、ウェル内のATP量をCellTiter−Glo luminescent cell viability kit(Promega社)を用いて測定した。その結果、各14化合物の添加によってウェル内のATP量の増加がみとめられた。これらの結果より、これらの14化合物は、少なくとも本分化条件においては生細胞数を増加させる作用があることが明らかとなった。
実施例5:スクリーニングから選択された化合物が他の分化マーカー発現に与える影響
選択化合物がES細胞の分化に与える影響をさらに詳細に解析するため、スクリーニングで用いた8遺伝子以外の分化マーカーの発現量についても上記と同様の手法で測定した。分化マーカーとして、未分化マーカーであるOct3/4、Sox2、Klf4、Akp2、原始外胚葉マーカーであるFgf5、原始線条マーカーであるBrachyury、Snail1、栄養外胚葉マーカーであるCdx2、Bmp4、中胚葉と内胚葉マーカーであるCxcr4、胚体外内胚葉マーカーであるGata4、Laminin B1、神経マーカーであるNestin、p75NTR、骨格筋マーカーであるActa1、Tpm1、平滑筋マーカーであるCnn1、骨芽細胞マーカーであるOpn、造血幹細胞マーカーであるc−kit、軟骨細胞マーカーであるSox9の発現量について測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
選択化合物のうち、32化合物において2種類以上の遺伝子発現を2倍以上に上昇させる活性がみとめられた(図2)。これら32種類の化合物の遺伝子発現パターンを比較するため、それぞれの発現データについて相関距離に基づくクラスタリングを実施した。
その結果を図11に示す。その結果、薬理作用が同じで化合物の構造が類似した化合物は同様の遺伝子発現プロファイルを示すこと明らかとなった。例えば、ドーパミン受容体拮抗薬で構造が似通っているthiothixene hydrochloride、perphenazine、cis−(Z)−flupenthixol dihydrochlorideは同じグループに分類された。また、ともにp38 MAPK阻害剤であり、構造が類似したPD 169316とSB 202190についても同じグループに分類された。さらに、コルチコステロイドであるhydrocortisone 21−hemisuccinate sodium、 hydrocortisone、betamethasone、beclomethasone、レチノイン酸受容体アゴニストであるTTNPB、13−cis−retinoic acid、 retinoic acid、 retinoic acidp−hydroxanilideもそれぞれ同一のグループに分類された。このように本実施例の化合物評価系を用いて複数の分化マーカーの発現量を解析することで、化合物を分化に与える作用に基づき分類できることが明らかとなった。
実施例6:スクリーニングにより選択された化合物がヒト間葉系幹細胞からの脂肪分化に与える影響
選択化合物は、ES細胞だけでなく成体幹細胞からの分化も制御する可能性が考えられた。そこで、これらの選択化合物がヒト間葉系幹細胞からの脂肪分化に与える影響について調べた。ヒト間葉系幹細胞はLonza社より購入し、低グルコースDMEM(Invitrogen社)に10%仔牛胎児血清、2mM GlutaMAX−1、1x penicillin−streptomucin(Sigma社)を添加した培地(以下、「増殖培地」と称する)を用いて接着培養した。脂肪分化誘導時には、細胞を1ウェルあたり3000細胞となるように96穴プレートへ播種した後、増殖培地で1晩培養した。その後、増殖培地を脂肪分化誘導培地(高ゴルコースDMEM(Invitrogen社)に10%仔牛胎児血清、2mM GlutaMAX−1、0.5mM 3−isobutyl−1−methylxanthine(IBMX,和光純薬)、10μg/mlインスリン(和光純薬)、1μMデキサメタゾン(和光純薬)、200μMインドメタシン(和光純薬)、1xpenicillin−streptomucin(Sigma社)を添加した培地)へと交換することで脂肪分化を誘導した。脂肪分化を誘導すると同時に、最終濃度が3μMとなるように選択化合物をそれぞれ添加して、5日間培養した。5日後に脂肪細胞マーカーであるAdiponectinの発現量を、実施例1で示したのと同様の手法を用いて測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
選択化合物のうち、ROCK阻害剤Y−27632、キナーゼ阻害剤HA−100、バニロイド受容体アンタゴニストcapsazepineがAdiponectinの発現量を増加させる化合物として見出された(図12a)。これらの化合物がAdiponectin発現を上昇させる作用は、PPARγアゴニストであるTroglitazone(10μM)と同等以上であった。
さらに、これら3化合物(Y−27632、HA−100およびcapsazepine)をそれぞれ添加した場合の脂肪分化のマスターレギュレーターであるPPARγ発現量についても同様の手法により測定した。図12aに示すとおり、Y−27632とHA−100に関してはPPARγ発現量も濃度依存的に増加させる作用があることが確認された。
次に、これら3化合物が脂肪滴形成に与える影響について調べた。10μMのY−27632、10μMのHA−100、または3μMのcapsazepineを脂肪分化を誘導すると同時に脂肪分化誘導培地に添加して5日間接着培養した。その後、それぞれの細胞を4%パラホルムアルデヒド(和光純薬)で30分間固定した後、PBSで3回洗浄した。さらに、0.36%オイルレッド0(Chemicon社)を用いて50分間室温で染色した後、蒸留水で3回洗浄して細胞の観察・撮影を行った。その結果、Y−27632とHA−100を添加することによって、DMSO添加コントロールと比較して脂肪滴の量が増加する様子が観察された(図12b)。一方、capsazepineには脂肪滴形成を増加させる顕著な活性はみとめられなかった。
さらに、これら3化合物を添加した場合に、それぞれの培養液中に含まれるアディポネクチン量を測定した。10μMのY−27632、10μMのHA−100、3μMのcapsazepineを脂肪分化誘導と同時に添加して8日間接着培養した。培養後、培養液中に含まれるアディポネクチン量をhuman adiponectin ELISA kit(R&D systems社)を用いて測定した。その結果、Y−27632とHA−100を添加することによって培養液中に含まれるアディポネクチン量が顕著に上昇することが明らかとなった(図12c)。一方、capsazepineにはアディポネクチン量を上昇させる作用はみとめられなかった。以上の結果より、少なくともY−27632とHA−100にはヒト間葉系幹細胞からの脂肪分化を促進する活性があることが明らかとなった。一方、選択化合物の中にはAdiponectin発現量を半分以下に低下させる化合物も10化合物存在しており、選択化合物の中には脂肪分化を抑制する化合物も含まれていることが示唆された。
実施例7:スクリーニングから選択された化合物がヒト間葉系幹細胞からの骨分化に与える影響
次に、選択化合物が、ヒト間葉系幹細胞からの骨分化に与える影響について調べた。ヒト間葉系幹細胞は、実施例6と同様の手法によって維持、培養した。細胞を1ウェルあたり1000細胞となるように96ウェルプレートへ播種した後、増殖培地で1晩培養した。その後、低ゴルコースDMEMに10%仔牛胎児血清、2mM GlutaMAX−1、10mM β−glycerophosphate(和光純薬)、0.05mM ascorbic acid−2−phosphate(和光純薬)、0.1μMデキサメタゾン(和光純薬)、1x penicillin−streptomycin(Sigma社)を添加した培地へと培地を交換することで骨分化を誘導した。骨分化を誘導すると同時に、最終濃度が3μMとなるように選択化合物をそれぞれ添加し、8日間接着培養した。培養終了後、初期骨芽細胞マーカーであるAlkaline phosphatase(Alpl)の発現量を実施例1と同様の手法により測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。
その結果、選択化合物のうち、GSK3β阻害剤である6−bromoindirubin−3’oxime(BIO)とチミジンアナログである5−Bromo−2’−deoxyuridine(BrdU)がAlpl発現量を顕著に増加させる化合物として見出された(図13a)。
BIOとBrdUを添加した時の他の骨分化マーカー発現についても調べた。BIO、BrdUを添加して8日間接着培養した後、実施例1と同様の手法によりrunt−related transcription factor 2(Runx2)、collagen typeI alpha 1(Col1a1)、parathyroid hormone receptor(PTHR)の発現量を測定した。各遺伝子の測定に利用したプライマーとプローブの配列は図1に示す。その結果、3μMのBIOと10μMのBrdUによってRunx2、Col1a1、PTHRの発現量も顕著に増加することが明らかとなった(図13a)。
化合物が骨分化に与える影響についてさらに検証するため、アルカリホスファターゼ染色を行った。骨分化を誘導すると同時に3μMのBIO、10μMのBrdUを添加して、8日間接着培養した。培養後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(和光純薬)で30分間固定した後、PBSで3回洗浄した。alkaline phosphatase kit III(Vector Laboratories社)を添付プロトコールに従って使用してアルカリホスファターゼ染色を行った。その結果、BIOとBrdUを添加することでアルカリホスファターゼの染色性が高まっており、これらの化合物によってアルカリホスファターゼ活性が上昇することが明らかとなった(図13b)。
さらに、細胞内に蓄積されたカルシウム量を調べた。骨分化を誘導すると同時に3μMのBIO、10μMのBrdUを添加して、15日間接着培養した。培養後、細胞をPBSで洗浄した後に10mM Tris−HClと0.2% TritonX−100からなる溶解液に細胞を溶解させた。一部の溶解液を用いてタンパク濃度をBCA protein assay kit(Pierce社)を用いて測定した。残りの溶解液に塩酸を最終濃度が0.5Nとなるように加え、1晩振盪させた。0.5N塩酸を含む溶解液にとけだしたカルシウム量をCalcium E−test Kit Wako(和光純薬)を用いて測定した。カルシウム量は、タンパク量で補正した値を解析に用いた。その結果、BIOとBrdU添加によって細胞内のカルシウム量が増加していた(図13c)。これらの結果より、BIOとBrdUはヒト間葉系幹細胞からの骨分化を促進する活性を持っていることが明らかとなった。一方、選択化合物の中にはAlpl発現量を半分以下に低下させる化合物も2化合物存在しており、選択化合物の中には骨分化を抑制する化合物も含まれていることが示唆された。
実施例8:本発明のスクリーニング方法におけるGapdh発現量とATP量との相関
本発明のスクリーニング方法において測定したGapdh発現量がウェル内の生細胞数と相関するかどうかを調べた。実施例2に示した方法に従って、分化に関与することが知られている化合物である1μM6−bromoindirubin−3’oxime(BIO)、10μM PD169316、10μM forskolin、50nMレチノイン酸、5μM myoseverin、3μMデキサメタゾン、0.5μM BIX−01294をそれぞれ添加して4日間接着培養した後、Gapdh発現量を実施例1と同様の手法で測定した。上記測定と同時に、ウェル内のATP量についてもCellTiter−Glo luminescent cell viability kit(Promega社)を用いて測定した。その結果を図8に示す。いずれの化合物を添加した場合にもGapdh発現量はウェル内のATP量と非常によく相関していた。これらの結果より、Gapdh発現量はウェル内の生細胞数を示す指標として有用であることが確認された。
実施例9:分化に関与する化合物を用いた化合物評価
実施例3において、分化に関与することが知られている化合物を添加した場合に8種類の遺伝子発現パターンが変動することを示した。これらの実験の結果を図9に示す。実施例3で示したとおり、各化合物を添加した場合に、1種類以上の遺伝子発現量がDMSO添加時と比べて2倍以上に上昇することがわかった。また、化合物添加による8種類の遺伝子発現の増減のパターンは、それぞれの化合物ごとに違っており、それぞれの化合物が分化に対して異なった影響を与えることが推定された。本発明のスクリーニング方法によって分化に関与する様々な化合物の活性が検出できたことから、本発明のスクリーニング方法は新たな分化調節薬を探索する上で非常に有益であることが確認された。
実施例10:Gapdh発現量を増加させた化合物が生細胞数に与える影響
実施例4においてGapdh発現量を上昇させる化合物が14種類見出された。これらの14化合物を添加した後、ウェル内のATP量をCellTiter−Glo Luminescent cell viability kit(Promega社)を用いて測定した結果を図10に示す。実施例4で記載したとおり、これらの14化合物を添加した場合にはいずれもウェル内のATP量の増加が認められた。これらの14化合物は、本発明のスクリーニング方法の条件下において生細胞数を増加させる作用があることが明らかとなった。
実施例11:スクリーニングから選択された化合物がヒト間葉系幹細胞からの分化に与える影響
実施例6と実施例7に示した手法に基づいて、選択化合物がヒト間葉系幹細胞から脂肪分化あるいは骨分化に与える影響について調べた。選択化合物が、脂肪分化誘導時のAdiponectin発現量に与える影響および骨分化誘導時のAlpl発現量に与える影響について図4にまとめて示す。脂肪分化誘導時に添加することでAdiponectin発現量をコントロールと比較して1.3倍以上に増加させる化合物として、Y−27632、HA−100、capsazepineが見出された。また、骨分化誘導時に添加することでAlpl発現量をコントロールと比較して2倍以上に増加させる化合物として、BIOとBrdUが見出された。
本発明のスクリーニング方法は、生体中に存在する幹細胞等を活性化し、再生を促す医薬品候補をスクリーニングするため等に有用である。本発明のスクリーニング方法により得られた医薬品は、手術や免疫抑制剤の使用といった患者の負担を解消すること等に利用することができる。さらに、本発明のスクリーニング方法は、ヒトあるいは高等動物のあらゆる細胞、組織を効率的にかつ大量に調製するために利用することができるため、従来からの創薬プロセスにおける医薬候補物質のスクリーニングや薬効評価、安全性試験などに応用可能である。
[配列表]
[配列表]
Claims (12)
- 以下の工程(1)〜(5):
(1)再生、増殖又は分化能力を有する細胞から胚様体を形成させる工程、
(2)工程(1)で得られた胚様体を消化酵素で処理することによって単一細胞状態にする工程、
(3)工程(2)で得られた細胞を接着性プレートに播種するとともに、該プレートに候補物質を添加して接着培養する工程、
(4)工程(3)における接着培養後に、細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子のうち2種類以上の発現量をまとめて定量解析する工程、および
(5)工程(4)における定量解析の結果をもとに、候補物質が細胞の再生、増殖または分化に与える影響を評価する工程、を含む、細胞または臓器の再生、増殖又は分化を調節する物質のスクリーニング方法。 - 前記工程(1)における細胞が、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞およびiPS(induced pluripotent stem)細胞から選択される請求項1記載の方法。
- 前記工程(1)における胚様体を形成させるために行う細胞培養の期間が3ないし6日間である請求項1記載の方法。
- 再生、増殖又は分化を調節する物質の標的となる細胞が、ヒトおよび温血動物の胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞およびそれらの細胞を分化誘導して得られる細胞、ならびに組織幹細胞で生体組織内に存在した状態あるいはin vitroで培養した状態の細胞からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 再生、増殖又は分化を調節する物質が、合成化合物、天然物、タンパク質、ペプチド、脂質、アミン、アミノ酸、糖、核酸、またはイオンである、請求項1記載の方法。
- 再生、増殖又は分化を調節する物質が、受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、生合成経路阻害剤、タンパク質間相互作用の阻害剤、酵素阻害剤および基質、補酵素、シグナル伝達系の阻害剤および活性化剤、チャンネル阻害剤およびモジュレーター、ビタミン、抗酸化剤、アポトーシス阻害剤および促進剤、抗ウイルス剤、界面活性剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、抗生物質、コンビナトリアルケミストリー法で合成された化合物、ならびにそれらの合成中間体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 再生、増殖又は分化を調節する物質の標的となる細胞または臓器が、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、血球系の細胞、脳、脳の各部位、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、および骨格筋からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 再生、増殖又は分化を調節する物質が、中枢性疾患、炎症性疾患、循環器疾患、癌、糖尿病、免疫系疾患、肝臓・胆のう疾患、消化器系疾患、熱傷、骨折、および脱毛症からなる群より選択される疾患の予防・治療薬である、請求項1記載の方法。
- 前記工程(2)における消化酵素が、トリプシンである請求項1記載の方法。
- 前記工程(3)における接着性プレートが、ゼラチンコートした複数の穴を有するプレートである請求項1記載の方法。
- 前記工程(4)において2種類以上の遺伝子の発現量をまとめて定量解析する際、Multiplex RT−PCRを用いる請求項1記載の方法。
- 前記工程(4)における細胞の再生、増殖または分化に関与する遺伝子が、
(A)未分化マーカーであるNanog、Oct3/4、Sox2、Klf4、Akp2、
(B)原始外胚葉マーカーであるFgf5、
(C)原始線条マーカーであるBrachyury、Snail1、
(D)栄養外胚葉マーカーであるCdx2、Bmp4、
(E)神経マーカーであるTubb3、Nefh、Nestin、p75NTR、
(F)心筋マーカーであるActc1、
(G)平滑筋マーカーであるActa2、Cnn1、
(H)内皮細胞マーカーであるTie2、
(I)中胚葉マーカーであるFlk1、
(J)中胚葉と内胚葉マーカーであるCxcr4、
(K)胚体外内胚葉マーカーであるGata4、Laminin B1、
(L)骨格筋マーカーであるActa1、Tpm1、
(M)骨芽細胞マーカーであるOpn、
(N)造血幹細胞マーカーであるc−kit、および
(O)軟骨細胞マーカーであるSox9からなる群より選択される請求項1記載の方法。
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