JPWO2009013876A1 - 電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法 - Google Patents

電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2009013876A1
JPWO2009013876A1 JP2008546019A JP2008546019A JPWO2009013876A1 JP WO2009013876 A1 JPWO2009013876 A1 JP WO2009013876A1 JP 2008546019 A JP2008546019 A JP 2008546019A JP 2008546019 A JP2008546019 A JP 2008546019A JP WO2009013876 A1 JPWO2009013876 A1 JP WO2009013876A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
electrode plate
oxidation
substrate
reduction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008546019A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4283880B2 (ja
Inventor
英弘 佐々木
英弘 佐々木
沖 明男
明男 沖
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Application granted granted Critical
Publication of JP4283880B2 publication Critical patent/JP4283880B2/ja
Publication of JPWO2009013876A1 publication Critical patent/JPWO2009013876A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N27/00Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means
    • G01N27/26Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating electrochemical variables; by using electrolysis or electrophoresis
    • G01N27/28Electrolytic cell components
    • G01N27/30Electrodes, e.g. test electrodes; Half-cells
    • G01N27/327Biochemical electrodes, e.g. electrical or mechanical details for in vitro measurements
    • G01N27/3275Sensing specific biomolecules, e.g. nucleic acid strands, based on an electrode surface reaction
    • G01N27/3277Sensing specific biomolecules, e.g. nucleic acid strands, based on an electrode surface reaction being a redox reaction, e.g. detection by cyclic voltammetry

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Electric Means (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

生体内に微量に含まれる物質を、感度良く検出および定量する電気化学測定用電極板を提供することを目的とする。本発明の電気化学測定用電極板10は、同一面積である上層開口部31Wと下層開口部33wによって開口された酸化電極32Wと還元電極32wを基板本体32Sの両面に備え、さらに酸化電極32Wの上面から還元電極32wの下面まで貫通する複数の貫通孔32Hとを備え、酸化電極32Wに還元体の酸化反応を進行させることができる電位と還元電極32wに酸化体の還元反応を進行させることができる電位を印加することにより、酸化電極32Wと還元電極32wと間でレドックスサイクル効果を発現する電極対を形成する。

Description

本発明は生体内に微量に含まれる物質を、感度良く検出および定量する電気化学測定用電極板に関する。
近年、酵素が有する特異的触媒作用と電極反応活性を有する電子メディエータとを組み合わせ、生体中の血液に含まれるスクロース、グルコースなどの糖類の濃度を定量する電気化学測定用電極板が開発されている。
このような電気化学測定用電極板では、糖類と酵素の反応を利用して、電気化学的に糖類の濃度を定量する。まず、血液サンプルに酵素と電子メディエータとを混合して試料液を作成したのち、糖類と酵素との間で酵素反応をさせた後、それらに共存させた電子メディエータを電気化学的に測定することによって、電子メディエータを介して間接的に試料液中に含まれる糖類を定量する。
この方法は酵素の反応が糖類に対する特異性が高く、操作時の温度の影響が小さく、定量装置の機構も簡便であるため、この方法を用いることにより、一般の人々が家庭などで簡易に自己の血液中の糖類の濃度を定量することができる。
電気化学測定用電極板は、生体に含まれる微量溶液サンプルの分析に適している。そのため、電気化学測定用電極板は、様々な有機材料または無機材料と組み合わせてセンサなどへの応用が試みられている。電気化学測定用電極板の電極応答速度は、電気化学測定用電極板が有する微小電極の面積が減少するにしたがって高くなるため、様々な電極形状、電極の微細化が検討されている。
しかし、電極面積の減少に伴い、得られる電流値は減少する。例えば、電極面積を数百μm2程度まで微細化すると、検出できる電流値は数十〜数nAオーダーまで低下する。そのため、測定時にノイズ応答の増加や感度低下が発生する。そこで、これらの不具合を解消するため、複数の微小電極を集積した電気化学測定用電極板が特許文献1〜4で検討されている。
特許文献1〜4では、隣接する微小電極との間の距離を一定に保つ微小電極を、多量に再現性良く基板上に作製する方法が提案されている。
図1は、特許文献1に記載された従来の電気化学測定用電極板の構成を示している。
この電気化学測定用電極板10は、絶縁性の基板1/酸化電極として機能する下部電極2/絶縁層3/還元電極として機能する表面電極4が積層されてなる。表面電極4の表面には円筒形の多数の微細孔5が形成されており、この微細孔5には下部電極2の表面が露出している。
絶縁性の基板1は、例えばシリコン基板1aの主表面に酸化膜1bが被着された、いわゆる酸化膜付きシリコン基板から成る。下部電極2は、基板1上の酸化膜1bの表面(すなわち、絶縁体の表面)に金属、半金属、炭素材、または半導体で形成された酸化電極である。表面電極4は、絶縁層3上に、下部電極2と同様、金属、半金属、または半導体から形成された還元電極である。下部電極2と表面電極4とから、作用電極対が構成されている。すなわち、下部電極2および表面電極4はいずれも作用電極として機能し、より詳細には、上述したように、下部電極2は酸化電極として、表面電極4は還元電極として機能する。なお、図1において、7は下部電極2の一端部に外部リードを接続するために開口された電極引出し用の開口部である。ここで微細孔とは絶縁層3と表面電極4を完全に貫通し、下部電極2の表面に到達する孔のことを指す。
上記のような電気化学測定用電極板を用いた電気化学測定装置においては、電流応答を得るために、下部電極2と表面電極4との間に電位を印加する。電気化学測定装置が下部電極2、表面電極4、対極(図示せず)の3つの電極で構成される場合、対極が試料用液中で示す電位をゼロとして、下部電極2−対極間、表面電極4−対極間に電位を印加する。また、電気化学測定装置が下部電極2、表面電極4、参照電極(図示せず)、補助電極(図示せず)の4つの電極で構成される場合、参照電極が試料液中で示す電位をゼロとして、下部電極2−参照電極間、表面電極4−参照電極間に電位を印加する。
特許文献4および非特許文献1においては、円筒形の微細孔5の間隔を、その径に対して大きく取った電気化学測定用電極板が提案され、それを用いた電気化学測定結果が報告されている。これらの文献においては、マクロ電極である表面電極4は、微小電極の集合体である下部電極2よりも大きな面積を有する。測定時には、下部電極2上で酸化反応を、そして表面電極4上で還元反応を起こしうる電位をそれぞれ印加する。これにより、下部電極2と表面電極4との間で自己誘発レドックスサイクルが発現し、見かけ上高い電流応答を得ることができると報告されている。
このようにして、試料液に存在する電子メディエータを介して、糖類などの目的物質を定量する。
なお、下部電極2に還元反応が起こる電位を印加し、上部電極4に酸化反応が起こる電位を印加しても、同様の自己誘発レドックスサイクルが発現する。
ここで、特許文献4、非特許文献1及び2に記載されている自己誘発レドックスサイクルを、図2を用いて説明する。
図2における自己誘発レドックスサイクルはふたつの作用電極、すなわち微小電極21およびマクロ電極22上で進行する。
微小電極21の表面では、還元体23の酸化反応が生じて酸化体24が生成することにより、微小電極21に酸化電流が流れる。
マクロ電極22のうち微小電極21に近い部分22aの表面では、酸化体24が還元されて還元体25となることにより、マクロ電極22に還元電流が流れる。
さらに還元体25が拡散して微小電極21の表面に到達することにより、還元体23から酸化体24への酸化反応が再び起こり、微小電極21に酸化電流が流れる。結果的にマクロ電極22aの表面では微小電極21から生成した酸化体24を還元して還元体25とすることにより、微小電極21表面に還元体23を供給することができる。
これにより、微小電極21とマクロ電極22aとの間で酸化反応と還元反応が循環するいわゆるレドックスサイクル反応が生じる結果、微小電極21に定常的に電流が流れて、試料液中に微量に含まれる目的物質の検出および定量を行うことができる。
そして高感度測定の有効性を高めるために、微小電極21を基板上により多数形成してレドックスサイクルが進行する酸化電極と還元電極とからなる電極対を、できる限り多く形成する。
特許第2556993号公報(第6項、第1図) 特許第2564030号公報(第7項、第2図) 特開2006−78404号公報(第25項、図1) 特許第3289059号公報(第16頁、図5) 特開2007−010429号公報(図3、図4) J.Electrochem.Soc.,138巻,12号,3551項(1991) 青木幸一ら著 「微小電極を用いる電気化学測定法」 (社)電子情報通信学会編 平成10年2月10日発行 48−49,70−71項
図1に示されるように、還元電極として機能する表面電極4の面積が、酸化電極として機能する下部電極2の面積よりもずっと大きいことにより自己誘発レドックスサイクルが生じるが、これには次のような問題が生じる。
マクロ電極22a上で生成した還元体25は拡散するが、それは微小電極21(図1における下部電極2に相当)に到達するだけでなく、図2の右側に示すように、その一部はマクロ電極22(図2における表面電極4に相当)のうち微小電極21から遠い部分22b上にも到達する。このような還元体26は酸化反応により酸化体27となる。すなわち、マクロ電極22上では酸化反応も起こる(特開平3−246460号公報の第4図も参照)。
次に、この酸化体27は拡散し、マクロ電極22のうち微小電極21に近い部分22b上に到達する。そこで還元反応により、還元体25となる。還元体25は拡散して微小電極21表面に到達し再び酸化されて酸化体24となる(あるいは、再度、マクロ電極22のうち微小電極21から遠い部分22bに到達する)。
すなわち、図1の表面電極4上では酸化反応と還元反応が同時に起こることとなる。その結果、下部電極2で検出したい還元体の酸化が表面電極4の上でも同時に起こってしまう。
そのため、表面電極4で発生した還元体が効率的に下部電極2上で酸化せず、高感度化に課題を生じている。
さらに、図1に示されるように、基板の一方の面にのみ電気化学測定用電極板を構成した構造では、電極を形成し得る面積が限られ、これによっても高感度化に課題を生じていた。
この他、表面電極4はマクロ電極として作用するため電位印加時の充電電流が大きい。そのため、微小電極である下部電極2に比べて反応が定常状態に達する時間が長くなるという課題も生じていた。
上記課題を解決する本発明に係る電気化学測定用電極板10は、
絶縁体からなる基板32と、
前記基板32の上面に設けられた絶縁体からなる上層31と、
前記基板32の下面に設けられた絶縁体からなる下層33と、
を備え、
前記基板32は、前記基板32の上面と前記上層31との間に挟まれている複数の酸化電極32Wと
前記基板32の下面と前記下層33との間に挟まれている複数の還元電極32wと
を備え、
前記上層31は、複数の上層開口部31Wを有し、
前記各上層開口部31Wからは、前記各酸化電極32Wが露出しており、
前記下層33は、複数の下層開口部33wを有し、
前記各下層開口部33wからは、前記各還元電極32wが露出しており、
前記各酸化電極32Wの上面から前記各還元電極32wの下面にかけて貫通する複数の貫通孔32Hが前記基板32に設けられており、
前記各上層開口部31Wの面積と、前記各下層開口部33wの面積とは同一であり、
前記各上層開口部31Wの面積は10000μm2以下であり、
前記各下層開口部33wの面積は10000μm2以下である。
前記各上層開口部の面積は225μm2以上であり、前記各下層開口部の面積は225μm2以上であることが好ましい。
前記貫通孔の断面積は、1μm2以上2500μm2以下であることが好ましい。
前記下層の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
この電気化学測定用電極板10は、参照電極42および補助電極43と組み合わされるか、または対極と組み合わされ、電気化学測定装置を構成する。この電気化学測定装置もまた、本発明の趣旨に含まれる。
そして、この電気化学測定装置により、以下のような、電子メディエータを含有する試料液に含まれる目的物質を定量する方法もまた、本発明の趣旨に含まれる。
参照電極、補助電極、および電気化学測定用電極板、または対極および電気化学測定用電極板からなる電気化学測定装置により、試料液に含まれる目的物質を定量する方法であって、
前記方法は、以下の工程を包含する:
電子メディエータを含有する試料液を調製する工程、
前記電気化学測定用電極板を用意する工程、ここで
前記電気化学測定用電極板は、
絶縁体からなる基板と、
前記基板の上面に設けられた絶縁体からなる上層と、
前記基板の下面に設けられた絶縁体からなる下層と、
を備え、
前記基板は、
基板の上面と前記上層との間に挟まれている複数の酸化電極と
前記基板の下面と前記上層との間に挟まれている複数の還元電極と
を備え、
前記上層は、複数の上層開口部を有し、
前記各上層開口部からは、前記各酸化電極が露出しており、
前記下層は、複数の下層開口部を有し、
前記各下層開口部からは、前記各還元電極が露出しており、
前記各酸化電極の上面から前記各還元電極の下面にかけて貫通する複数の貫通孔が前記基板に設けられており、
前記各上層開口部の面積と、前記各下層開口部の面積とは同一であり、
前記各上層開口部の面積は10000μm2以下であり、
前記各下層開口部の面積は10000μm2以下であり、
前記参照電極、前記補助電極、および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触させるか、または前記対極および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触される接触工程、
前記酸化電極板に正電位を掃印し、かつ前記還元電極板に負電位を印加するか、あるいは前記酸化電極板に正電位を印加し、かつ前記還元電極板に負電位を掃引することによって、前記酸化電極板および前記還元電極のそれぞれに流れる電流を測定する電流測定工程、および
前記電流測定工程によって得られた電流から前記目的物質の量を算出する算出工程。
前記補助電極の表面積は、前記酸化電極の集合体の10倍以上であることが好ましい。
前記上層の上面にメッシュ状のフィルタを設けても良い。
前記参照電極が前記上層の上面に形成され、前記補助電極が前記下層の下面に形成されていることが好ましい。
本発明により、生体内に微量に含まれる物質を、感度良く検出および定量する電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法が提供される。
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
図1は、特許文献1に記載の従来の電気化学測定用電極板の(A)全体斜視図(B)拡大斜視図である。 図2は、特許文献4、非特許文献1および2に記載の自己誘発レドックスサイクルのメカニズムを示す図である。 図3は、本発明の実施の形態1における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 図4は、本発明の実施の形態1に係る電気化学測定用電極板を有する電気化学測定装置の概略図である。 図5は、本発明の実施例1における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図6は、本発明の比較例1における従来の電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図7は、本発明の実施例2における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図8は、本発明の実施例3における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図9は、本発明の実施例4における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図10は、本発明の実施例5における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図11は、本発明の実施の形態2における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 図12は、本発明の実施例6における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図13は、本発明の実施の形態3における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 図14は、本発明の実施例7における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図15は、検量線の一例を示すグラフである。
符号の説明
1 基板
1a シリコン基板
1b 酸化膜
2 下部電極
3 絶縁膜(SiO2膜)
4 酸化電極
5 微細孔
7 下部電極2の開口部
10 電気化学測定用電極板
21 微小電極
22 マクロ電極(微小電極近傍)
23 マクロ電極(微小電極遠方)
24 還元体1
25 酸化体1
26 還元体2
27 還元体3
28 酸化体2
31 上層
31I 絶縁体
31W 上層開口部
32 基板
32S 基板本体
32E 酸化電極板
32H 貫通孔
32T 酸化電極リード
32W 酸化電極
32e 還元電極板
32t 還元電極リード
32w 還元電極
33 下層
33i 絶縁体
33w 下層開口部
41 酸化電極32Wの集合体
42 参照電極
43 補助電極
44 試料液容器
45 制御装置
46 レコーダー
50 基板
51 酸化電極
52 還元電極
53 上層
54 上層開口部
55 下層
56 下層開口部
57 上側孔
58 下側孔
59 貫通孔
60 基板
61 下部電極
62 絶縁層
63 表面電極
64 レジスト
65 微細孔
80a 基板(酸化電極側)
80b 基板(還元電極側)
80A 酸化電極形成基板
80B 還元電極形成基板
90 モールド
100 ワークテーブル
111M フィルタ
131E 参照電極
131T 参照電極リード
133e 補助電極
133t 補助電極リード
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図3は、本実施の形態1における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。
図3に示されるように、本実施の形態1に係る電気化学測定用電極板10は、下側から順に、下層33、基板32、および上層31が積層されていることにより構成されている。下層33および上層31は、いずれも絶縁体である。
基板32は、絶縁体からなる基板本体32Sからなり、この基板本体32Sの上面に酸化電極板32Eを備え、この基板本体32Sの下面に還元電極板32eを備えている。酸化電極板32Eは、図3に示すように、基板本体32Sと上層31との間に挟まれている。同様に、還元電極板32eは、基板本体32Sと下層33との間に挟まれている。
上層31は、複数の上層開口部31Wを有している。図3では、9つの上層開口部31Wが設けられている。各上層開口部31Wからは、酸化電極板32Eの一部分が露出している。酸化電極板32Eのうち、各上層開口部31Wから露出している部分、すなわち、図3において、酸化電極板32E上で斜線が施された部分が、試料液と接し、酸化電極32Wとして機能する。図3では、9つの酸化電極32Wが設けられている。酸化電極板32Eのうち、上層31が形成されている部分、すなわち、図3において、酸化電極板32E上で斜線が施されず、白く表されている部分は、試料液とは接することがない。よって、この部分は、酸化電極としては機能しない。
上層31と同様に、下層33もまた、複数の下層開口部33Wを有している。図3では、9つの下層開口部33Wが設けられている。各下層開口部33Wからは、還元電極板32eの一部分が露出している。還元電極板32eのうち、各下層開口部33wから露出している部分、すなわち、図3において、還元電極板32e上で斜線が施された部分が、還元電極32wとして機能する。図3では、9つの還元電極32wが設けられている。還元電極板32eのうち、下層33が形成されている部分、すなわち、図3において、還元電極板32e上で斜線が施されず、白く表されている部分は、試料液とは接することがない。よって、この部分は、還元電極としては機能しない。
酸化電極板32Eと還元電極板32eにはそれぞれ独立して電位を印加することができ、それぞれの電極上で目的物質の電気化学反応、より具体的には酸化反応と還元反応とを進行させることができる。酸化電極32W上における電気化学反応によって発生した電気信号は酸化電極板32Eを伝わり、酸化電極リード32Tを介してガルバノメーター等の計測器で定量することができる。同様に還元電極32w上における電気化学反応によって発生した電気信号は還元電極板32eを伝わり、還元電極リード32tを介してガルバノメーター等の計測器で定量することができる。
各酸化電極32Wと各還元電極32wとは、平面基板本体32Sを間に挟んで重なり合っている。図3では、縦3列×横3行の酸化電極32Wと、縦3列×横3行の還元電極32wとが、基板本体32Sを間に挟んで重なり合っている。
図3においては、説明を容易にするために、還元電極板32eは、基板本体32Sと分離して記載したが、実際には、還元電極板32eは基板本体32Sの下面に形成されている。
酸化電極板32Eはその一端に酸化電極リード32Tを有している。酸化電極板32Eで得られた電気信号は酸化電極リード32Tから取り出すことができる。還元電極板32eも同様に還元電極リード32tと電気的に同通しており、還元電極板32eで得られた電気信号は還元電極リード32tから取り出すことができる。
基板32には複数の貫通孔32Hが設けられている。そして、各貫通孔32Hは、各酸化電極32Wの上面から各還元電極32wの下面にかけて貫通している。図3では、1つの酸化電極32W、1つの貫通孔32H、および1つの還元電極32wからなる9つのセットが示されている。
貫通孔32Hがなければ、後述する比較例1からも理解されるように、目的物質の定量を高感度に行い得ず、さらに定量時における定常状態に達するまでに多くの時間を要する。
各上層開口部31Wの面積、すなわち、各酸化電極32Wの面積は10000μm2以下である。10000μm2を超えると、図2の右側で示されるような望まれない反応が生じてしまい、結果的に、高感度化に課題を生じる。すなわち、後述する比較例2からも示されるように、目的物質の定量を高感度に行い得ず、さらに定量時における定常状態に達するまでに多くの時間を要する。同様に、各下層開口部33wの面積、すなわち、各還元電極32wの面積も10000μm2以下である。
なお、各上層開口部31Wの面積(すなわち、各酸化電極32Wの面積)および各下層開口部33wの面積(すなわち、各還元電極32wの面積)の下限には特に限定はないが、225μm2以上であることが好ましい。
各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とは実質的に同一である。すなわち、複数個の上層開口部31Wの面積はいずれも同一である。同様に、複数個の下層開口部33Wの面積はいずれも同一である。そして、これらの上層開口部31Wの面積と、これらの下層開口部33Wの面積とは、いずれも同一である。各貫通孔32Hの断面積は同一であることが好ましい。
各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とを同一にすることにより、定常状態になるまでに要する時間を短くすることができる。また、各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とが異なっている場合、図2に示すような反応が生じるため、高感度化が困難となるためである。
貫通孔32Hの断面積は、当然、上層開口部31Wの面積および下層開口部33Wの面積のいずれよりも小さい。1つの酸化電極32Wおよび1つの還元電極32wのセットに対して、2つ以上の貫通孔32Hを設けても良い。ただし、設計上は、1つの酸化電極32Wおよび1つの還元電極32wのセットに対して、1つの貫通孔32Hで充分である。
貫通孔32Hの断面積の大きさはなるべく小さいほうが、基板32上に多くの貫通孔を形成することが可能となる。このことは酸化電極32Wおよび還元電極32wからなる電極対をより多く配置することが可能となるので好ましい。ただし、貫通孔32Hの断面積を小さくすることによって、試料液に含まれる電子メディエータが孔を通り抜ける際のコンダクタンスが増加する傾向がある。一方、あまりにも断面積の値が大きすぎる貫通孔32Hは、面積が10000μm2以下でなければならない各酸化電極32Wおよび各還元電極32wの面積を意味もなく小さくしてしまうことにつながる。そのため、好ましい貫通孔32Hの断面積の値は、1μm2以上2500μm2以下である。
下層33の厚みは5μm以上100μm以下が好ましい。隣接する還元電極32wの間の距離は一般的に7μm程度であるので、下層33の厚みが5μm未満である場合には、事実上、隣接する2以上の還元電極32wが連続する1つの還元電極32wとして機能してしまうことになる。そのため、図2の右側で示される望ましくない反応が生じやすくなる。
言い換えれば、下層33の厚みが5μm未満である場合には、還元電極32wで生じた還元型の電子メディエータが貫通孔32Hを通って酸化電極32Wに達するよりも、還元電極32wで生じた還元対の電子メディエータは隣接する還元電極32w上で酸化されて酸化型のメディエータとなりやすい。一方、下層33の厚みが100μmを超える場合には、正確な測定のために必要となる試料液の量が増えることになり、好ましいとは言えない。このことは、上層31についても同様である。
基板本体32Sの材料としては、例えば両面が酸化されたシリコン、ガラス、酸化アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シリコン樹脂、ポリイミド及びその誘導体、エポキシ樹脂、高分子熱硬化物、感光性樹脂等を挙げることができる。
本発明の電気化学測定用電極板では、貫通孔32Hが試料液の通り道となるため、試料液が水溶液である場合には、貫通孔32Hの内壁が親水性であることが望ましい。そのため、基板本体32Sとしては、シリコン基板、ガラス基板などの親水性表面を有する基板か、または親水性のポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート基板などのポリエステル材からなる基板を選択することが望ましい。疎水性を有する基板を使用する際には、エタノール、イソプロピルアルコールなどによって貫通孔32Hの内壁に親水化処理を施すことが望ましい。
酸化電極板32E(酸化電極リード32Tを含む)の材料、および還元電極板32e(還元電極リード32tを含む)の材料としては、電気伝導性を有する材料を挙げることができる。具体的には、金属として金、白金、パラジウム、銀、クロム、チタン、ニッケル、半導体としてp型シリコン、n型シリコン、p型ゲルマニウム、n型ゲルマニウム、硫化カドミウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウム燐、ガリウム砒素、インジウム燐、二砒化モリブデン、セレン化タングステン、二酸化銅、酸化スズ、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物などを挙げることができる。その他、ケッシェンブラックなどの導電性カーボンを用いることができる。
これらの中でも電極材料として安定である金、白金、パラジウムを用いることが好ましい。これらの形成には蒸着、スパッタ等の成膜手法とエッチング手法を組み合わせた方法。マスクを用いたスクリーン印刷、レーザアブレーション法、または導電性インクを用いたスピンコート法、インクジェットプリント法による直接描画手法を用いることができる。
貫通孔32Hの形成手法としては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、リフトオフ法、集束イオンビーム照射による加工法などにより電極形成済基板に穴を形成する手法が挙げられる。これに代えて、基板にメタルマスクを用いて貫通孔32Hのパターニングをした後、基板を前記手法による孔形成加工を行うことによって形成しても良い。この他、貫通孔32Hの凸型パターンを有する鋳型に基板を形成し、この基板に電極板を形成した後、鋳型を抜き取る方法。加熱した鋳型により電極板付の基板に貫通孔を形成したのち、鋳型を抜き取ることも考えられる。
上層開口部31Wと下層開口部33wを形成する手法としては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、リフトオフ法、集束イオンビーム照射による加工方法などにより絶縁体31Iおよび絶縁体33iに開口部を形成する手法を挙げることができる。また、ポジ型レジストやネガ型レジスト、ドライフィルムレジスト等の感光性樹脂材料を用いて遮光マスクと露光手法を組み合わせた方法により形成しても良い。
酸化電極板32E(酸化電極リード32Tを含む)、還元電極板32e(還元電極リード32tを含む)、上層31、下層33をスピンコートによって形成する場合、コーターのワークテーブルには多孔体を用いてあるものを使うことが望ましい。これは基板本体32Sの両面に電極板(酸化電極板32Eと還元電極板32e)と絶縁層(上層31と下層33)を形成するため、基板を安定して固定するには多孔体による真空吸着法が、テフロン(登録商標)等の材料に数箇所吸着用の孔を設けたコーターヘッドを用いる場合に比べて、吸着固定する面積が大きくなるため好ましい。
なお、図3の構造は、特許文献5の図3・図4に記載された構造と類似しているが、特許文献5は細胞電位測定用容器を開示しているに過ぎず、酸化電極および還元電極を備えた電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法については、開示も示唆もしていない。
図4は、実施の形態1に係る電気化学測定用電極板を有する電気化学測定装置(以下、単に「測定装置」という)を示している。
図4に示すように、電気化学測定用電極板10、参照電極42、および補助電極43を、試料液容器44に満たされた試料液に浸す。これにより、これらの電極が試料液に接触する。また、電気化学測定用電極板10の表面には、酸化電極32Wが複数形成されて、酸化電極32Wの集合体41を形成している。図示していないが、電気化学測定用電極板10の裏面には同様に還元電極32wが集合体を形成している。
参照電極44は電気化学測定用電極板10に印加する電位の基準となる電極である。参照電極44が試料液中で示す電位をゼロとして、酸化電極32W、還元電極それぞれに電位を印加する。
補助電極43は、測定装置においてアンペアの法則を成り立たせるために、電流を補償するための電極である。測定装置45は、酸化電極リード32Tおよび還元電極リード32tを介して電気化学測定用電極板10と電気的に接続しており、同様に参照電極42、補助電極43とも電気的に接続している。レコーダー46により、測定装置45から出力された電流応答が記録される。
(電気化学測定方法の説明)
次に、試料液に含まれる電子メディエータの定量方法を説明する。
サイクリックボルタンメトリー等の手法により、電子メディエータの酸化反応が進行する電位と還元反応が進行する電位を予め調べておいて、後に説明する酸化電極の電位の値と還元電極の電位の値に用いる。なお、電位の基準は参照電極42が試料液中で示す平衡電位である。すなわち、酸化電極32Wおよび還元電極32wにそれぞれ印加される電位は、参照電極42を0Vとした場合における相対的な電位である。
酸化電極32Wと還元電極32wの電位を制御装置45に入力したのち、測定を開始する。後述する実施例では詳細に説明するが、具体的には、酸化電極32Eに0Vから正電圧をゆっくりと印加する。後述する実施例では、酸化電極32Eに印加される電圧を0Vから+0.7Vにゆっくりと連続的に変化させている。なお、これを「掃印」と呼ぶ。すなわち、本明細書において用いられる用語「掃印」とは、連続的に電位を変化させることを意味している。これとは対照的に、本明細書において用いられる用語「印加」とは、あらかじめ定められた電位に急激に変化させることを意味している。
このとき、還元電極には参照電極と同一の電位(多くの場合、0V)を印加し続けることが好ましい。酸化電極32Eに電圧を印加する速度(以下、「掃印速度」ということがある)は、一般的に5mV/秒以上500mV/秒以下である。後述する実施例では、100mV/秒である。
なお、上記の説明では、酸化電極板32Eに正電位を掃印し、還元電極板32eに負電位を印加している。しかし、酸化電極板32Eに正電位を印加し、還元電極板32eに負電位を掃引してもよい。
酸化電極32Wにおける酸化反応で得られた電流は酸化電極リード32Tを介して制御装置45によって検出される。同様に還元電極における還元反応で得られた電流は還元電極リード32tを介して制御装置45によって検出される。検出された電流はレコーダー46に出力され、記録された酸化電流値を標準試料の酸化電流値の測定結果(後述する検量線)と比較して、試料液中の検出対象物質を定量することができる。
レコーダー46に記録された還元電流値を標準試料の還元電流測定結果と比較して試料液中の検出対象物質を定量することもできる。このためには、予め本実施の形態の検出装置を用いて標準試料の検量線を作成しておくことが望ましい。
ここで、検量線を用いた、試料液中の検出対象物質を定量する方法、すなわち、試料液中の検出対象物質の濃度を算出する方法について説明する。
まず、標準試料を準備する。この標準試料には、濃度既知の還元型電子メディエータ(ここでは、フェロシアン化カリウムと仮定する)が含まれている。この濃度既知の標準試料を試料液として用いて、図4に示すような電気化学測定装置により、還元型電子メディエータの濃度と、電気化学測定装置により測定された反応電流値との間の関係をグラフ化する。このグラフの一例を図15に示す。
図15に示されるように、ここでは、還元型の電子メディエータの濃度が100μMである場合には、反応電流値は10μA、還元型の電子メディエータの濃度が300μMである場合には、反応電流値は30μA、還元型の電子メディエータの濃度が500μMである場合には、反応電流値は50μAであったと仮定する。これらをグラフ上にプロットして、検量線を引く。このようにして、濃度既知の標準試料から、検量線を得る。
次に、濃度不知の試料液を用いて、図4に示すような電気化学測定装置により反応電流値を得る。ここで得られた反応電流値が20μAであった場合、検量線から、試料液に含まれる還元型の電子メディエータの濃度を知ることができる。この還元型の電子メディエータの濃度から、試料液に含まれる(あるいは、含まれていた)目的物質の量を算出する。
なお、実際には、検量線の作成や目的物質の量の算出などは、すべてコンピュータ上で行われることは言うまでもないだろう。
(参照電極、補助電極に関する説明)
参照電極42と補助電極43の2つの電極の代わりに、対極1つを用いて測定を行うことも可能である。しかし参照電極42と補助電極43は独立して設けることが好ましい。なぜなら、電位の基準となる参照電極もしくは対極に電流が流れる間には、その表面で電極反応が進行しており、反応進行に伴う電子メディエータの濃度変化が大きくなると本実施の形態の検出装置の基準としている電位が変動して正確な測定を行うことができないためである。
よって、参照電極42には電流が流れ込まないように入力インピーダンスを極力大きく設定することが望ましい。望ましくはインピーダンスの値が10の6乗オーム以上であることが望ましい。参照電極42には銀塩化銀電極、飽和カロメル電極等を用いることができる。
補助電極43の表面積は大きいことが望ましい。補助電極43の好ましい表面積は酸化電極32Wの集合体41の10倍以上である。その理由は、補助電極43の電極表面積が小さくて十分な電流を流せない場合、電気化学測定用電極板10で得られる電流が制御装置45に十分流れ込まなくなり、正確な電流値を得られないことや、電流を流すために補助電極43の電位が大きく変動して水の電気分解等望ましくない反応が進行する場合があるためである。
補助電極43としては、電極自体の酸化還元反応や腐蝕反応が起こりにくい貴金属電極を使用することが望ましい。例えば、白金線に白金黒を析出させて大きな電極面積を持たせた白金電極が好ましい。
(実施の形態2)
図11に示すように、本実施の形態2においては、上層31の上面にメッシュ状のフィルタ111Mを設けている。
測定に用いる試料液として、血液から分離した血漿成分を用いる場合、分離しきれずに混入した血球成分、蛋白成分、固化した血栓などが、貫通孔32Hを塞ぐ事がある。
これを防止するために、電極系外でフィルタによる濾過を経て試料液を電極に供給するが、これに加えて、上層31に濾過機能を有するフィルタ111Mを形成することにより、血栓等によって貫通孔32Hが塞がれることが防止される。
必要に応じて、下層33の下側にフィルタ(図示せず)を設けても良い。
(実施の形態3)
図13に示すように、本実施の形態3においては、酸化電極板32E、還元電極板32eだけでなく、参照電極131E、補助電極133eを一体に形成しても良い。この構成では、図4に示すような参照電極42および補助電極43を付加する必要がなくなるため、装置を小型化できる。
参照電極131Eは、上層31の上面に形成することが好ましい。参照電極133eは、下層33の下面に形成することが好ましい。
なお、実施の形態2に示されるフィルタがこの実施の形態3に示される電気化学測定用電極板に設けられる場合には、フィルタ111Mの上に参照電極131Eを設けても良いし、逆にフィルタ111Mの下に参照電極131Eを設けても良い。
実施の形態1〜3の説明においては、便宜上、酸化電極32Wが基板本体32Sの上側に、還元電極32wが基板本体32Sの下側に設けられていることとした。これは、説明を容易にするためにすぎない。各図面に示されている電気化学測定用電極板をひっくり返した場合であっても、本発明に含まれることは言うまでもない。実施の形態3における参照電極131Eおよび補助電極133eについても同様である。すなわち、参照電極E131は下層33の下側に設けられ、補助電極133eは上層31の上側に設けられていても良い。
(実施例)
以下、実施例および比較例により、本発明をさらにより詳細に説明する。
(実施例1)
図5は本発明の実施例1における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。なお、図5から図10まで、図12、および図14には1つの貫通孔32Hしか表されていないが、実際には各実施例・比較例において説明されている数の貫通孔32Hが設けられた。
まず、図5(a)および図5(b)に示すように、1μmのSiO2膜を表面に形成した厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)からなる基板50の上面に、以下のように、スパッタ法により酸化電極板51を形成した。
すなわち、基板50をスパッタ装置(株式会社 アルバック製)内の所定位置に取り付けた後、クロム及び金を順次成膜した。具体的には、圧力1.3Pa,アルゴン雰囲気で、クロム10秒,金:50秒間スパッタを行い全体で130nmの膜厚とした。これにより酸化電極板51を形成した。
次に、図5(c)に示すように、基板50の下面に、酸化電極板51と同様に、還元電極板52を形成した。
さらに、図5(d)に示すように、酸化電極板51上に上層53および上層開口部54を、以下のように形成した。すなわち、酸化電極板51の上面に、スピンコート法により感光性樹脂材料(化薬マイクロケム株式会社製:SU−8 2000)を厚みが2μmとなるように塗布した。そして、70℃30分間ベーキングした後、上層開口部54のパターンを有するクロムマスクを用いて60秒間、密着露光することにより、マスクパターンを樹脂材料に転写した。この後、現像液中にて20℃、300秒間現像を行い、水洗、乾燥してマトリックス状の上層開口部54を上層53に形成した。
ここで、実施例1における上層開口部54について詳しく説明する。この上層開口部54は正方形であった。その一辺は15μmであり、面積は225μm2であった。上層開口部54の個数は10000個であり、隣接する上層開口部54の中心点の間の距離は18μmであった。
図5(e)に示すように、上層開口部54を形成した手順と同様に、還元電極板52の下側に下層55および下側開口部56を形成した。
次に、酸化電極板51をエッチングすることにより、以下のように上側孔57を形成した。すなわち、酸化電極板51上に厚み4〜5μmのレジスト材(東京応化工業株式会社製:TSMR−8900LB)を塗布した。このレジストを塗布した基板50をオーブン中にいれ、プレベーキング工程を100℃・30分、ポストベーキング工程を120℃・30分の条件にて行った。その後、孔57のパターンを有するクロムマスクを用いて、マスクアライナー(ミカサ株式会社製)により60秒間、密着露光した。次に現像液中にて25℃120秒間現像を行い、水洗、乾燥してマスクパターンをレジストに転写した。
次に、図5(f)に示すように、基板をアルゴンミリング装置に入れ、アルゴンガスの流量12sccm、圧力0.03Pa、ビーム電流90mAの条件で金およびクロムからなる酸化電極板31Eを順次エッチングした。これにより、基板に複数の上側孔57を形成した。形成された上側孔57は円形であり、その面積は78.5μm2であった。基板50に形成された上側孔57の個数は10000個であった。なお、各上側孔57の中心は上側開口部54の中心と一致するよう形成した。
さらに、図5(g)に示すように、酸化電極板51に上側孔57を形成した手順と全く同様に、還元電極板52に下側孔58を形成した。
最後に、図5(h)に示されるように、次に上側孔57および下側孔58を形成した基板50を反応性イオンエッチング装置に入れ、下側孔58をマスクパターンとし、C26ガスの流量を25sccm、圧力0.25Pa、150Wの条件で15分間、基板50をエッチングした。これにより、基板50に多数の貫通孔59が形成された(図5(h))。
このようにして、実施例1に係る電気化学測定用電極板を得た。
(比較例1)
比較のために、従来の電気化学測定用電極板を作製した。以下にその作製手順を示す。
図6に示すように、基板60として1μmのSiO2膜を表面に形成した厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)の上面に、クロムおよび金をからなる下部電極61を成膜した。成膜条件は図5(b)と同一とした。
次に、図6(c)に示すように、下部電極61の上面にプラズマCVD装置(株式会社アルバック製)を用いて、厚み430nmのSiO2からなる絶縁層62を堆積した。
成膜条件は、シランガス流量10sccm、N2Oガス流量200sccm、圧力80Pa,パワー50W、基板温度300℃とした。
さらに、図6(d)に示すように、クロムおよび金をからなる表面電極63を成膜した。成膜条件は図5(b)と同一とした。
次に、図6(e)に示すように表面電極63の上面に、厚み2〜3μmのレジスト材64を塗布し、現像、水洗、乾燥してマスクパターンをレジスト64に転写した。用いたレジストおよびレジストパターン形成の条件は、図5(d)に関する説明と同一とした。
その後、図6(f)に示すように、微細孔65を形成した。レジスト64が形成されていない部分、すなわち、露出している表面電極63の部分を、アルゴンミリング装置を用いて順次エッチングした。アルゴンミリングの条件は、アルゴンガスの流量12sccm、圧力0.03Pa、ビーム電流90mAとした。
最後に反応性イオンエッチング装置を用いて、絶縁層62に多数の微細孔65を形成した。反応性イオンエッチングの条件は、C26ガスの流量:25sccm、圧力:0.25Pa、150Wの条件とした。
ここで、比較例1における微細孔65について詳しく説明する。この微細孔65は円形であった。その直径は10μmであり、面積は78.5μm2であった。微細孔65の個数は10000個であり、隣接する微細孔65の中心点の間の距離は70μmであった。なお、この微細孔65は図6(f)に示されるように、下部電極61、基板60を貫通していなかった。
(実施例1および比較例1に係る電気化学測定)
実施例1および比較例に係る電気化学測定用電極板を用いて、図4に示すように、電気化学測定装置を組み立て、電子メディエータの定量評価を行った。
1mMのフェロシアン化カリウムおよび1mMのフェリシアン化カリウム(合計2mM)を、50mMの支持電解質(塩化カリウム)を含有する水溶液に添加することによって、試料液を調製した。
参照電極として銀/塩化銀電極(BAS株式会社製)を用いた。なお、以下、酸化電極の電位や還元電極の電位は、全てこの参照電極として用いた銀/塩化銀電極に対する電位である。
実施例1に係る電気化学測定用電極板をバイポテンシオスタット(CH instruments社製:ALS740A)にリード線を介して接続した。酸化電極板51の電位を0V、還元電極板52の電位を0V、酸化電極板51の電位の掃印速度を100mV/sに設定した後、最終的に酸化電極板51の電位が+0.7Vになるまで、サイクリックボルタンメトリー法により酸化電極板51に流れる、反応電流を計測した。その反応は化1に示すフェロシアン化カリウムの酸化反応である。
酸化電極板51の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は39.8μAであった。
同様に、比較例1に係る電気化学測定用電極板を用いて、酸化電極として機能する下部電極2の電位を、0から+0.7Vまで掃印速度100mV/sで掃引した。還元電極として機能する表面電極4の電位は0Vに設定した。
その結果、下部電極においても化1に示すフェロシアン化カリウムの酸化反応に伴う酸化電流が観測された。下部電極61の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は22.5μAであった。
実施例1および比較例1の実験結果を、以下の表1にまとめて示す。
これは図2の自己誘発レドックスサイクルの説明図に当てはめて考えてみると、比較例1における微小電極から遠い部分のマクロ電極22bで酸化されていたフェロシアン化カリウムが微小電極21上の酸化反応に用いられなかったのに対し、実施例1においては全てのフェロシアン化カリウムは微小電極21上でのみ酸化されたため、酸化反応の電流値が効率的に増加したものと考えられる。
本実施例の電気化学測定用電極板においては同一形状と面積を有する微小電極対を基板上に多数配列した。それにより、それぞれの電極対同士で反応面積が揃い、上記のようなマクロ電極上のフェロシアン化カリウムの反応が起こらなくなったあるいは著しく減少したと考えられる。これにより、両極間で効率的なレドックスサイクル反応が進行したと考えられる。
また、比較例1の微小電極を構成する下部電極61および実施例1の電気化学測定用電極を構成する酸化電極板51に対して、+0.4Vの電位を印加して得られる酸化電流の時間依存性を評価した。実施例1の還元電極板52の電位および比較例1の表面電極63の電位は0Vに保った。
その結果、実施例1の酸化電流値は6秒で定常状態に達したが、比較例1の酸化電流値が定常状態に達するのに26秒要した(表2)。このことは、比較例1の下部電極に比べて、上部電極の面積が大きいために定常状態に達する時間が必要であったのに対し、実施例1の酸化電極は同一面積を有する還元電極と電極対を形成したため、両極間で即座に定常状態に達したと考えられる。
以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(比較例2)
実施例1における上層開口部54および下層開口部56の面積が、電子メディエータの定量評価に及ぼす影響を検証するために、以下の手順にて比較例2に係る電気化学測定用電極板を作製した。
基本的な作製手順は図5と同一であるので、相違点のみ説明する。比較例2では、正方形の上層開口部54の一辺は1000μmであり、面積は1000000μm2であった。上層開口部54の個数は10個であり、隣接する上層開口部54の中心点の間の距離は1500μmであった。
この電極を用いて、実施例1と同様にサイクリックボルタンメトリー法による反応電流の計測を行ったところ、酸化電極板51の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は20.7μAであった。同様に、酸化電流の時間依存性も評価した。比較例2の酸化電極に流れる電流が定常状態に達するのに35秒要した(表2)。
このことは、本発明の電気化学測定用電極板に設ける開口部の面積が1000000μm2と大きな場合、図2で示したような還元電極上において酸化電極から近い部分と遠い部分とが生じ、酸化電極で酸化するべき還元体が還元電極上で反応してしまったために、酸化電極上で効率的な反応が起こらなかったと推測される。
(実施例2)
図7は本発明の実施例2における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。酸化電極板51と還元電極板52の形成工程(a〜c)までは実施例1と同様に行った。
次に実施例1で用いた手順により、参加電極板51、基板50、還元電極板52を順次エッチングし、断面積100μm2の貫通孔59を5000個等間隔になるように形成した(c〜e)。
次に酸化電極板51の上側に上層53と上層開口部54を形成した。また、還元電極板52の下層に、下層55と下層開口部56を形成した。
上層53と下層55の材料には、厚み5μmのドライフィルムレジスト(旭化成工業株式会社製 サンフォート)を用いた。上層開口部54と下層開口部56は各5000個形成した。それらの開口部の断面積は900μm2であった。上層開口部と下層開口部の形成方法は実施例1と同様であった(f〜i))。
以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
本実施例の電気化学測定用電極板を用いて実施例1と同様の試験を行った。表1に示すように酸化電極51で観測された電流値は、比較例1における下部電極61のそれより大きかった。さらに表2に示すように酸化電極51で観測された電流値が定常状態到達に要した時間は10秒と比較例1のそれより短かった。
以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例3)
図8は実施例3における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。本実施例においては実施例1と同様の酸化電極板51と還元電極板52の形成工程(b1,b2)、上層および下層形成工程(c1,c2)、上層開口部および下層開口部形成工程(d1,d2)、上側貫通孔および下側貫通孔形成工程(e1,e2,f1,f2)を経た。その結果、酸化電極形成基板80A、還元電極形成基板80Bを形成した。
前記2つの基板をそれぞれの下面で貼り合わせることにより、本実施例の電気化学測定用電極板を得た(g)。上層開口部54および下層開口部56の断面積は900μm2で、それを1000個等間隔に形成した。貫通孔59の断面積は314μm2であった。
本実施例の電気化学測定用電極を用いて実施例1と同様の試験を行った結果、表1に示すように実施例1と同様の結果が得られた。以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例4)
図9は実施例4における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。絶縁性の基板50には厚さ0.5mmの熱硬化性のフェノール樹脂材料(PM−8200 住友ベークライト製)を用いた。前記基板に酸化電極板51と還元電極板52を形成した(a〜c)。
次に前記の電極板形成済基板の貫通孔形成加工を行った。モールド90を160℃に加熱し、還元電極板52の下面から酸化電極51の上面を完全に貫通したところでそのままの温度で10分間保持した(d)。次に、室温まで5℃/分で徐冷したのち、室温で10分間保持した。次に、モールド90を抜き取ることにより、貫通孔59を1000個形成した。それらの貫通孔の断面積は314μm2だった(e)。
次に実施例2と同様の手順により上層53と上層開口部54、下層55と下層開口部56を1000個形成した(f〜i)。それらの開口部の面積は6400μm2であった。これにより、本実施例の電気化学測定用電極板を得た。
本実施例の電気化学測定用電極板を用いて実施例1と同様の試験を行った結果、表1に示すように実施例1と同様の結果が得られた。以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例5)
図10は実施例5における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。基板50は1μmのSiO膜を表面に形成した直径4インチ、厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)を用いた。
その両面にチタンを10nm全面成膜した。次に、その下面をスピンコーターのワークテーブル100に真空吸着により、固定した(a)。ワークテーブル100はポーラスチャック(株式会社 吉岡精工製)を用いた。その吸着部は焼結したアルミナ多孔体で形成されていた。
前記基板50の上面に直径5nmのパラジウム粒子分散液(溶媒:ヘキサン)を厚さ500nmとなるように全面塗布した。次に排気設備付の電気炉にて300℃、3時間焼成を行い、酸化電極51を形成した。続いて下面にも同様にパラジウム粒子分散液を塗布、焼成を経て還元電極52を形成した(b)。
次に実施例1と同様の手順により、貫通孔59を1000個形成した。貫通孔の断面積は2500μm2であった(c〜e)。
次いで実施例2と同様の手順での上層53と上層開口部54、下層55と下層開口部56を1000個形成した。開口部の断面積は1000μm2であった(f〜i)。以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
得られた電気化学測定用電極板の酸化電極表面及び還元電極表面を、原子間力顕微鏡により観察した。その結果、酸化電極表面及び還元電極表面におよそ直径50nmのグレインが凝集した構造が確認できた。一方、成膜手法を用いて作製したパラジウム電極表面は、基板の研磨において形成された研磨傷を反映した形状のみ観測され、グレイン構造は確認できなかった。
ここから本実施例の電気化学測定用電極板の酸化電極表面積の見積もりを行った。単純に基板50の表面を直径50nmのパラジウム粒子の半球が覆いつくしたと仮定すると、半球の表面積の総和は幾何面積のおよそ30倍となった。成膜手法で作製した電極表面はほとんど平坦であったため、その面積はほぼ貴下面積と一致する。よって、本実施例の電気化学測定用電極板は成膜手法で作製した電極よりも広い電極面積を有することが分かった。このことは電極の反応面積が増大することにつながる。これにより、本発明の電気化学測定用電極板が好ましい性質を有することが認められた。
次に図12を用いて実施の形態2の電気化学測定用電極板の作製工程を述べる。
(実施例6)
図12は実施例6における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。実施例1の手順を用いて基板50に酸化電極板51、還元電極板52、上層53、上層開口部54、下層55、下層開口部56、貫通孔59を形成した。貫通孔の断面積は100μm2、開口部の断面積は10000μm2、それぞれ2500個形成した(a〜i)。
最後にボロシリケートファイバーグラスからなる口径42μmのフィルタ113M(日本ミリポア株式会社製)を所定の大きさにカットしたのち、上層53上にシリコン接着剤を用いて固定した(j)。
以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
血液中の血漿成分を本実施例の電気化学測定用電極板に挿入した結果、分離しきれなかった血球成分、蛋白成分、血栓がフィルタ113Mにトラップされ、血漿成分のみが上層開口部54、貫通孔59を経て下層開口部まで供給された。一方、フィルタ113Mを形成しなかった同形状の電気化学用測定電極板は一部血栓により塞がれたため、貫通孔59が機能を果たさなくなった。これらは目視により確認した。以上の結果から、本実施の形態の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
次に図14を用いて実施の形態3の電気化学測定用電極板の作製工程を述べる。
(実施例7)
図14は実施例7における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。実施例1の手順を用いて基板50に酸化電極板51、還元電極板52、上層53、上層開口部54、下層55、下層開口部56、貫通孔59を形成した。貫通孔の断面積は100μm2、開口部の断面積は2500μm2とし、それぞれ5000個形成した(a〜i)。
次に上層53と下層55にメタルマスクを被せて白金を100nm成膜した(j)。メタルマスクを除いた後、上層53に形成した白金薄膜へ、リード部分を残して銀塩化銀インク(ビーエーエス株式会社製)を塗布した。その後、40℃30分間電気炉中にて乾燥を行い、参照電極131Eを得た。続いて平均粒径1.0〜10.0μmの白金粉末(田中貴金属工業株式会社製)をエタノール中に分散してスラリーを作製した。作製したスラリーを下層55上に形成した白金薄膜へ、リード部分を残して塗布および乾燥を行い、補助電極133eを得た。以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
本実施例で作製した電気化学測定用電極板と比較例1のそれを用いて、電気化学測定装置を組み上げた。その際、本実施例の電気化学測定用電極板は厚みが0.5mm程度であるのに対し、比較例1のそれは外部から参照電極と補助電極を導入したため、厚みが5cm程度となった。そのことにより、測定に用いる試料液の量は数1000倍に増加した。
このことは測定に必要な電極を電極板上に一体形成したことにより、小型化が求められる各種センサ用電極として好適な構成となったことを示す。よって、本実施例の電気化学測定用電極板は小型センサ用電極として適することが分かった。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の電気化学測定用電極板は、高いレドックスサイクル効果を有し、グルコースセンサに代表される生体物質等微量成分のセンシングデバイスを構成する電極として有用である。またクロマトグラフィーの検出器を構成する電極の用途等にも応用できる。
本発明は生体内に微量に含まれる物質を、感度良く検出および定量する電気化学測定用電極板に関する。
近年、酵素が有する特異的触媒作用と電極反応活性を有する電子メディエータとを組み合わせ、生体中の血液に含まれるスクロース、グルコースなどの糖類の濃度を定量する電気化学測定用電極板が開発されている。
このような電気化学測定用電極板では、糖類と酵素の反応を利用して、電気化学的に糖類の濃度を定量する。まず、血液サンプルに酵素と電子メディエータとを混合して試料液を作成したのち、糖類と酵素との間で酵素反応をさせた後、それらに共存させた電子メディエータを電気化学的に測定することによって、電子メディエータを介して間接的に試料液中に含まれる糖類を定量する。
この方法は酵素の反応が糖類に対する特異性が高く、操作時の温度の影響が小さく、定量装置の機構も簡便であるため、この方法を用いることにより、一般の人々が家庭などで簡易に自己の血液中の糖類の濃度を定量することができる。
電気化学測定用電極板は、生体に含まれる微量溶液サンプルの分析に適している。そのため、電気化学測定用電極板は、様々な有機材料または無機材料と組み合わせてセンサなどへの応用が試みられている。電気化学測定用電極板の電極応答速度は、電気化学測定用電極板が有する微小電極の面積が減少するにしたがって高くなるため、様々な電極形状、電極の微細化が検討されている。
しかし、電極面積の減少に伴い、得られる電流値は減少する。例えば、電極面積を数百μm2程度まで微細化すると、検出できる電流値は数十〜数nAオーダーまで低下する。そのため、測定時にノイズ応答の増加や感度低下が発生する。そこで、これらの不具合を解消するため、複数の微小電極を集積した電気化学測定用電極板が特許文献1〜4で検討されている。
特許文献1〜4では、隣接する微小電極との間の距離を一定に保つ微小電極を、多量に再現性良く基板上に作製する方法が提案されている。
図1は、特許文献1に記載された従来の電気化学測定用電極板の構成を示している。
この電気化学測定用電極板10は、絶縁性の基板1/酸化電極として機能する下部電極2/絶縁層3/還元電極として機能する表面電極4が積層されてなる。表面電極4の表面には円筒形の多数の微細孔5が形成されており、この微細孔5には下部電極2の表面が露出している。
絶縁性の基板1は、例えばシリコン基板1aの主表面に酸化膜1bが被着された、いわゆる酸化膜付きシリコン基板から成る。下部電極2は、基板1上の酸化膜1bの表面(すなわち、絶縁体の表面)に金属、半金属、炭素材、または半導体で形成された酸化電極である。表面電極4は、絶縁層3上に、下部電極2と同様、金属、半金属、または半導体から形成された還元電極である。下部電極2と表面電極4とから、作用電極対が構成されている。すなわち、下部電極2および表面電極4はいずれも作用電極として機能し、より詳細には、上述したように、下部電極2は酸化電極として、表面電極4は還元電極として機能する。なお、図1において、7は下部電極2の一端部に外部リードを接続するために開口された電極引出し用の開口部である。ここで微細孔とは絶縁層3と表面電極4を完全に貫通し、下部電極2の表面に到達する孔のことを指す。
上記のような電気化学測定用電極板を用いた電気化学測定装置においては、電流応答を得るために、下部電極2と表面電極4との間に電位を印加する。電気化学測定装置が下部電極2、表面電極4、対極(図示せず)の3つの電極で構成される場合、対極が試料用液中で示す電位をゼロとして、下部電極2−対極間、表面電極4−対極間に電位を印加する。また、電気化学測定装置が下部電極2、表面電極4、参照電極(図示せず)、補助電極(図示せず)の4つの電極で構成される場合、参照電極が試料液中で示す電位をゼロとして、下部電極2−参照電極間、表面電極4−参照電極間に電位を印加する。
特許文献4および非特許文献1においては、円筒形の微細孔5の間隔を、その径に対して大きく取った電気化学測定用電極板が提案され、それを用いた電気化学測定結果が報告されている。これらの文献においては、マクロ電極である表面電極4は、微小電極の集合体である下部電極2よりも大きな面積を有する。測定時には、下部電極2上で酸化反応を、そして表面電極4上で還元反応を起こしうる電位をそれぞれ印加する。これにより、下部電極2と表面電極4との間で自己誘発レドックスサイクルが発現し、見かけ上高い電流応答を得ることができると報告されている。
このようにして、試料液に存在する電子メディエータを介して、糖類などの目的物質を定量する。
なお、下部電極2に還元反応が起こる電位を印加し、上部電極4に酸化反応が起こる電位を印加しても、同様の自己誘発レドックスサイクルが発現する。
ここで、特許文献4、非特許文献1及び2に記載されている自己誘発レドックスサイクルを、図2を用いて説明する。
図2における自己誘発レドックスサイクルはふたつの作用電極、すなわち微小電極21およびマクロ電極22上で進行する。
微小電極21の表面では、還元体23の酸化反応が生じて酸化体24が生成することにより、微小電極21に酸化電流が流れる。
マクロ電極22のうち微小電極21に近い部分22aの表面では、酸化体24が還元されて還元体25となることにより、マクロ電極22に還元電流が流れる。
さらに還元体25が拡散して微小電極21の表面に到達することにより、還元体23から酸化体24への酸化反応が再び起こり、微小電極21に酸化電流が流れる。結果的にマクロ電極22aの表面では微小電極21から生成した酸化体24を還元して還元体25とすることにより、微小電極21表面に還元体23を供給することができる。
これにより、微小電極21とマクロ電極22aとの間で酸化反応と還元反応が循環するいわゆるレドックスサイクル反応が生じる結果、微小電極21に定常的に電流が流れて、試料液中に微量に含まれる目的物質の検出および定量を行うことができる。
そして高感度測定の有効性を高めるために、微小電極21を基板上により多数形成してレドックスサイクルが進行する酸化電極と還元電極とからなる電極対を、できる限り多く形成する。
特許第2556993号公報(第6項、第1図) 特許第2564030号公報(第7項、第2図) 特開2006−78404号公報(第25項、図1) 特許第3289059号公報(第16頁、図5) 特開2007−010429号公報(図3、図4) J.Electrochem.Soc.,138巻,12号,3551項(1991) 青木幸一ら著 「微小電極を用いる電気化学測定法」 (社)電子情報通信学会編 平成10年2月10日発行 48−49,70−71項
図1に示されるように、還元電極として機能する表面電極4の面積が、酸化電極として機能する下部電極2の面積よりもずっと大きいことにより自己誘発レドックスサイクルが生じるが、これには次のような問題が生じる。
マクロ電極22a上で生成した還元体25は拡散するが、それは微小電極21(図1における下部電極2に相当)に到達するだけでなく、図2の右側に示すように、その一部はマクロ電極22(図2における表面電極4に相当)のうち微小電極21から遠い部分22b上にも到達する。このような還元体26は酸化反応により酸化体27となる。すなわち、マクロ電極22上では酸化反応も起こる(特開平3−246460号公報の第4図も参照)。
次に、この酸化体27は拡散し、マクロ電極22のうち微小電極21に近い部分22b上に到達する。そこで還元反応により、還元体25となる。還元体25は拡散して微小電極21表面に到達し再び酸化されて酸化体24となる(あるいは、再度、マクロ電極22のうち微小電極21から遠い部分22bに到達する)。
すなわち、図1の表面電極4上では酸化反応と還元反応が同時に起こることとなる。その結果、下部電極2で検出したい還元体の酸化が表面電極4の上でも同時に起こってしまう。
そのため、表面電極4で発生した還元体が効率的に下部電極2上で酸化せず、高感度化に課題を生じている。
さらに、図1に示されるように、基板の一方の面にのみ電気化学測定用電極板を構成した構造では、電極を形成し得る面積が限られ、これによっても高感度化に課題を生じていた。
この他、表面電極4はマクロ電極として作用するため電位印加時の充電電流が大きい。そのため、微小電極である下部電極2に比べて反応が定常状態に達する時間が長くなるという課題も生じていた。
上記課題を解決する本発明に係る電気化学測定用電極板10は、
絶縁体からなる基板32と、
前記基板32の上面に設けられた絶縁体からなる上層31と、
前記基板32の下面に設けられた絶縁体からなる下層33と、
を備え、
前記基板32は、前記基板32の上面と前記上層31との間に挟まれている複数の酸化電極32Wと
前記基板32の下面と前記下層33との間に挟まれている複数の還元電極32wと
を備え、
前記上層31は、複数の上層開口部31Wを有し、
前記各上層開口部31Wからは、前記各酸化電極32Wが露出しており、
前記下層33は、複数の下層開口部33wを有し、
前記各下層開口部33wからは、前記各還元電極32wが露出しており、
前記各酸化電極32Wの上面から前記各還元電極32wの下面にかけて貫通する複数の貫通孔32Hが前記基板32に設けられており、
前記各上層開口部31Wの面積と、前記各下層開口部33wの面積とは同一であり、
前記各上層開口部31Wの面積は10000μm2以下であり、
前記各下層開口部33wの面積は10000μm2以下である。
前記各上層開口部の面積は225μm2以上であり、前記各下層開口部の面積は225μm2以上であることが好ましい。
前記貫通孔の断面積は、1μm2以上2500μm2以下であることが好ましい。
前記下層の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
この電気化学測定用電極板10は、参照電極42および補助電極43と組み合わされるか、または対極と組み合わされ、電気化学測定装置を構成する。この電気化学測定装置もまた、本発明の趣旨に含まれる。
そして、この電気化学測定装置により、以下のような、電子メディエータを含有する試料液に含まれる目的物質を定量する方法もまた、本発明の趣旨に含まれる。
参照電極、補助電極、および電気化学測定用電極板、または対極および電気化学測定用電極板からなる電気化学測定装置により、試料液に含まれる目的物質を定量する方法であって、
前記方法は、以下の工程を包含する:
電子メディエータを含有する試料液を調製する工程、
前記電気化学測定用電極板を用意する工程、ここで
前記電気化学測定用電極板は、
絶縁体からなる基板と、
前記基板の上面に設けられた絶縁体からなる上層と、
前記基板の下面に設けられた絶縁体からなる下層と、
を備え、
前記基板は、
基板の上面と前記上層との間に挟まれている複数の酸化電極と
前記基板の下面と前記上層との間に挟まれている複数の還元電極と
を備え、
前記上層は、複数の上層開口部を有し、
前記各上層開口部からは、前記各酸化電極が露出しており、
前記下層は、複数の下層開口部を有し、
前記各下層開口部からは、前記各還元電極が露出しており、
前記各酸化電極の上面から前記各還元電極の下面にかけて貫通する複数の貫通孔が前記基板に設けられており、
前記各上層開口部の面積と、前記各下層開口部の面積とは同一であり、
前記各上層開口部の面積は10000μm2以下であり、
前記各下層開口部の面積は10000μm2以下であり、
前記参照電極、前記補助電極、および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触させるか、または前記対極および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触される接触工程、
前記酸化電極板に正電位を掃引し、かつ前記還元電極板に負電位を印加するか、あるいは前記酸化電極板に正電位を印加し、かつ前記還元電極板に負電位を掃引することによって、前記酸化電極板および前記還元電極のそれぞれに流れる電流を測定する電流測定工程、および
前記電流測定工程によって得られた電流から前記目的物質の量を算出する算出工程。
前記補助電極の表面積は、前記酸化電極の集合体の10倍以上であることが好ましい。
前記上層の上面にメッシュ状のフィルタを設けても良い。
前記参照電極が前記上層の上面に形成され、前記補助電極が前記下層の下面に形成されていることが好ましい。
本発明により、生体内に微量に含まれる物質を、感度良く検出および定量する電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法が提供される。
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図3は、本実施の形態1における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。
図3に示されるように、本実施の形態1に係る電気化学測定用電極板10は、下側から順に、下層33、基板32、および上層31が積層されていることにより構成されている。下層33および上層31は、いずれも絶縁体である。
基板32は、絶縁体からなる基板本体32Sからなり、この基板本体32Sの上面に酸化電極板32Eを備え、この基板本体32Sの下面に還元電極板32eを備えている。酸化電極板32Eは、図3に示すように、基板本体32Sと上層31との間に挟まれている。同様に、還元電極板32eは、基板本体32Sと下層33との間に挟まれている。
上層31は、複数の上層開口部31Wを有している。図3では、9つの上層開口部31Wが設けられている。各上層開口部31Wからは、酸化電極板32Eの一部分が露出している。酸化電極板32Eのうち、各上層開口部31Wから露出している部分、すなわち、図3において、酸化電極板32E上で斜線が施された部分が、試料液と接し、酸化電極32Wとして機能する。図3では、9つの酸化電極32Wが設けられている。酸化電極板32Eのうち、上層31が形成されている部分、すなわち、図3において、酸化電極板32E上で斜線が施されず、白く表されている部分は、試料液とは接することがない。よって、この部分は、酸化電極としては機能しない。
上層31と同様に、下層33もまた、複数の下層開口部33Wを有している。図3では、9つの下層開口部33Wが設けられている。各下層開口部33Wからは、還元電極板32eの一部分が露出している。還元電極板32eのうち、各下層開口部33wから露出している部分、すなわち、図3において、還元電極板32e上で斜線が施された部分が、還元電極32wとして機能する。図3では、9つの還元電極32wが設けられている。還元電極板32eのうち、下層33が形成されている部分、すなわち、図3において、還元電極板32e上で斜線が施されず、白く表されている部分は、試料液とは接することがない。よって、この部分は、還元電極としては機能しない。
酸化電極板32Eと還元電極板32eにはそれぞれ独立して電位を印加することができ、それぞれの電極上で目的物質の電気化学反応、より具体的には酸化反応と還元反応とを進行させることができる。酸化電極32W上における電気化学反応によって発生した電気信号は酸化電極板32Eを伝わり、酸化電極リード32Tを介してガルバノメーター等の計測器で定量することができる。同様に還元電極32w上における電気化学反応によって発生した電気信号は還元電極板32eを伝わり、還元電極リード32tを介してガルバノメーター等の計測器で定量することができる。
各酸化電極32Wと各還元電極32wとは、平面基板本体32Sを間に挟んで重なり合っている。図3では、縦3列×横3行の酸化電極32Wと、縦3列×横3行の還元電極32wとが、基板本体32Sを間に挟んで重なり合っている。
図3においては、説明を容易にするために、還元電極板32eは、基板本体32Sと分離して記載したが、実際には、還元電極板32eは基板本体32Sの下面に形成されている。
酸化電極板32Eはその一端に酸化電極リード32Tを有している。酸化電極板32Eで得られた電気信号は酸化電極リード32Tから取り出すことができる。還元電極板32eも同様に還元電極リード32tと電気的に同通しており、還元電極板32eで得られた電気信号は還元電極リード32tから取り出すことができる。
基板32には複数の貫通孔32Hが設けられている。そして、各貫通孔32Hは、各酸化電極32Wの上面から各還元電極32wの下面にかけて貫通している。図3では、1つの酸化電極32W、1つの貫通孔32H、および1つの還元電極32wからなる9つのセットが示されている。
貫通孔32Hがなければ、後述する比較例1からも理解されるように、目的物質の定量を高感度に行い得ず、さらに定量時における定常状態に達するまでに多くの時間を要する。
各上層開口部31Wの面積、すなわち、各酸化電極32Wの面積は10000μm2以下である。10000μm2を超えると、図2の右側で示されるような望まれない反応が生じてしまい、結果的に、高感度化に課題を生じる。すなわち、後述する比較例2からも示されるように、目的物質の定量を高感度に行い得ず、さらに定量時における定常状態に達するまでに多くの時間を要する。同様に、各下層開口部33wの面積、すなわち、各還元電極32wの面積も10000μm2以下である。
なお、各上層開口部31Wの面積(すなわち、各酸化電極32Wの面積)および各下層開口部33wの面積(すなわち、各還元電極32wの面積)の下限には特に限定はないが、225μm2以上であることが好ましい。
各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とは実質的に同一である。すなわち、複数個の上層開口部31Wの面積はいずれも同一である。同様に、複数個の下層開口部33Wの面積はいずれも同一である。そして、これらの上層開口部31Wの面積と、これらの下層開口部33Wの面積とは、いずれも同一である。各貫通孔32Hの断面積は同一であることが好ましい。
各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とを同一にすることにより、定常状態になるまでに要する時間を短くすることができる。また、各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とが異なっている場合、図2に示すような反応が生じるため、高感度化が困難となるためである。
貫通孔32Hの断面積は、当然、上層開口部31Wの面積および下層開口部33Wの面積のいずれよりも小さい。1つの酸化電極32Wおよび1つの還元電極32wのセットに対して、2つ以上の貫通孔32Hを設けても良い。ただし、設計上は、1つの酸化電極32Wおよび1つの還元電極32wのセットに対して、1つの貫通孔32Hで充分である。
貫通孔32Hの断面積の大きさはなるべく小さいほうが、基板32上に多くの貫通孔を形成することが可能となる。このことは酸化電極32Wおよび還元電極32wからなる電極対をより多く配置することが可能となるので好ましい。ただし、貫通孔32Hの断面積を小さくすることによって、試料液に含まれる電子メディエータが孔を通り抜ける際のコンダクタンスが増加する傾向がある。一方、あまりにも断面積の値が大きすぎる貫通孔32Hは、面積が10000μm2以下でなければならない各酸化電極32Wおよび各還元電極32wの面積を意味もなく小さくしてしまうことにつながる。そのため、好ましい貫通孔32Hの断面積の値は、1μm2以上2500μm2以下である。
下層33の厚みは5μm以上100μm以下が好ましい。隣接する還元電極32wの間の距離は一般的に7μm程度であるので、下層33の厚みが5μm未満である場合には、事実上、隣接する2以上の還元電極32wが連続する1つの還元電極32wとして機能してしまうことになる。そのため、図2の右側で示される望ましくない反応が生じやすくなる。
言い換えれば、下層33の厚みが5μm未満である場合には、還元電極32wで生じた還元型の電子メディエータが貫通孔32Hを通って酸化電極32Wに達するよりも、還元電極32wで生じた還元対の電子メディエータは隣接する還元電極32w上で酸化されて酸化型のメディエータとなりやすい。一方、下層33の厚みが100μmを超える場合には、正確な測定のために必要となる試料液の量が増えることになり、好ましいとは言えない。このことは、上層31についても同様である。
基板本体32Sの材料としては、例えば両面が酸化されたシリコン、ガラス、酸化アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シリコン樹脂、ポリイミド及びその誘導体、エポキシ樹脂、高分子熱硬化物、感光性樹脂等を挙げることができる。
本発明の電気化学測定用電極板では、貫通孔32Hが試料液の通り道となるため、試料液が水溶液である場合には、貫通孔32Hの内壁が親水性であることが望ましい。そのため、基板本体32Sとしては、シリコン基板、ガラス基板などの親水性表面を有する基板か、または親水性のポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート基板などのポリエステル材からなる基板を選択することが望ましい。疎水性を有する基板を使用する際には、エタノール、イソプロピルアルコールなどによって貫通孔32Hの内壁に親水化処理を施すことが望ましい。
酸化電極板32E(酸化電極リード32Tを含む)の材料、および還元電極板32e(還元電極リード32tを含む)の材料としては、電気伝導性を有する材料を挙げることができる。具体的には、金属として金、白金、パラジウム、銀、クロム、チタン、ニッケル、半導体としてp型シリコン、n型シリコン、p型ゲルマニウム、n型ゲルマニウム、硫化カドミウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウム燐、ガリウム砒素、インジウム燐、二砒化モリブデン、セレン化タングステン、二酸化銅、酸化スズ、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物などを挙げることができる。その他、ケッシェンブラックなどの導電性カーボンを用いることができる。
これらの中でも電極材料として安定である金、白金、パラジウムを用いることが好ましい。これらの形成には蒸着、スパッタ等の成膜手法とエッチング手法を組み合わせた方法。マスクを用いたスクリーン印刷、レーザアブレーション法、または導電性インクを用いたスピンコート法、インクジェットプリント法による直接描画手法を用いることができる。
貫通孔32Hの形成手法としては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、リフトオフ法、集束イオンビーム照射による加工法などにより電極形成済基板に穴を形成する手法が挙げられる。これに代えて、基板にメタルマスクを用いて貫通孔32Hのパターニングをした後、基板を前記手法による孔形成加工を行うことによって形成しても良い。この他、貫通孔32Hの凸型パターンを有する鋳型に基板を形成し、この基板に電極板を形成した後、鋳型を抜き取る方法。加熱した鋳型により電極板付の基板に貫通孔を形成したのち、鋳型を抜き取ることも考えられる。
上層開口部31Wと下層開口部33wを形成する手法としては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、リフトオフ法、集束イオンビーム照射による加工方法などにより絶縁体31Iおよび絶縁体33iに開口部を形成する手法を挙げることができる。また、ポジ型レジストやネガ型レジスト、ドライフィルムレジスト等の感光性樹脂材料を用いて遮光マスクと露光手法を組み合わせた方法により形成しても良い。
酸化電極板32E(酸化電極リード32Tを含む)、還元電極板32e(還元電極リード32tを含む)、上層31、下層33をスピンコートによって形成する場合、コーターのワークテーブルには多孔体を用いてあるものを使うことが望ましい。これは基板本体32Sの両面に電極板(酸化電極板32Eと還元電極板32e)と絶縁層(上層31と下層33)を形成するため、基板を安定して固定するには多孔体による真空吸着法が、テフロン(登録商標)等の材料に数箇所吸着用の孔を設けたコーターヘッドを用いる場合に比べて、吸着固定する面積が大きくなるため好ましい。
なお、図3の構造は、特許文献5の図3・図4に記載された構造と類似しているが、特許文献5は細胞電位測定用容器を開示しているに過ぎず、酸化電極および還元電極を備えた電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法については、開示も示唆もしていない。
図4は、実施の形態1に係る電気化学測定用電極板を有する電気化学測定装置(以下、単に「測定装置」という)を示している。
図4に示すように、電気化学測定用電極板10、参照電極42、および補助電極43を、試料液容器44に満たされた試料液に浸す。これにより、これらの電極が試料液に接触する。また、電気化学測定用電極板10の表面には、酸化電極32Wが複数形成されて、酸化電極32Wの集合体41を形成している。図示していないが、電気化学測定用電極板10の裏面には同様に還元電極32wが集合体を形成している。
参照電極44は電気化学測定用電極板10に印加する電位の基準となる電極である。参照電極44が試料液中で示す電位をゼロとして、酸化電極32W、還元電極それぞれに電位を印加する。
補助電極43は、測定装置においてアンペアの法則を成り立たせるために、電流を補償するための電極である。測定装置45は、酸化電極リード32Tおよび還元電極リード32tを介して電気化学測定用電極板10と電気的に接続しており、同様に参照電極42、補助電極43とも電気的に接続している。レコーダー46により、測定装置45から出力された電流応答が記録される。
(電気化学測定方法の説明)
次に、試料液に含まれる電子メディエータの定量方法を説明する。
サイクリックボルタンメトリー等の手法により、電子メディエータの酸化反応が進行する電位と還元反応が進行する電位を予め調べておいて、後に説明する酸化電極の電位の値と還元電極の電位の値に用いる。なお、電位の基準は参照電極42が試料液中で示す平衡電位である。すなわち、酸化電極32Wおよび還元電極32wにそれぞれ印加される電位は、参照電極42を0Vとした場合における相対的な電位である。
酸化電極32Wと還元電極32wの電位を制御装置45に入力したのち、測定を開始する。後述する実施例では詳細に説明するが、具体的には、酸化電極32Eに0Vから正電圧をゆっくりと印加する。後述する実施例では、酸化電極32Eに印加される電圧を0Vから+0.7Vにゆっくりと連続的に変化させている。なお、これを「掃引」と呼ぶ。すなわち、本明細書において用いられる用語「掃引」とは、連続的に電位を変化させることを意味している。これとは対照的に、本明細書において用いられる用語「印加」とは、あらかじめ定められた電位に急激に変化させることを意味している。
このとき、還元電極には参照電極と同一の電位(多くの場合、0V)を印加し続けることが好ましい。酸化電極32Eに電圧を印加する速度(以下、「掃引速度」ということがある)は、一般的に5mV/秒以上500mV/秒以下である。後述する実施例では、100mV/秒である。
なお、上記の説明では、酸化電極板32Eに正電位を掃引し、還元電極板32eに負電位を印加している。しかし、酸化電極板32Eに正電位を印加し、還元電極板32eに負電位を掃引してもよい。
酸化電極32Wにおける酸化反応で得られた電流は酸化電極リード32Tを介して制御装置45によって検出される。同様に還元電極における還元反応で得られた電流は還元電極リード32tを介して制御装置45によって検出される。検出された電流はレコーダー46に出力され、記録された酸化電流値を標準試料の酸化電流値の測定結果(後述する検量線)と比較して、試料液中の検出対象物質を定量することができる。
レコーダー46に記録された還元電流値を標準試料の還元電流測定結果と比較して試料液中の検出対象物質を定量することもできる。このためには、予め本実施の形態の検出装置を用いて標準試料の検量線を作成しておくことが望ましい。
ここで、検量線を用いた、試料液中の検出対象物質を定量する方法、すなわち、試料液中の検出対象物質の濃度を算出する方法について説明する。
まず、標準試料を準備する。この標準試料には、濃度既知の還元型電子メディエータ(ここでは、フェロシアン化カリウムと仮定する)が含まれている。この濃度既知の標準試料を試料液として用いて、図4に示すような電気化学測定装置により、還元型電子メディエータの濃度と、電気化学測定装置により測定された反応電流値との間の関係をグラフ化する。このグラフの一例を図15に示す。
図15に示されるように、ここでは、還元型の電子メディエータの濃度が100μMである場合には、反応電流値は10μA、還元型の電子メディエータの濃度が300μMである場合には、反応電流値は30μA、還元型の電子メディエータの濃度が500μMである場合には、反応電流値は50μAであったと仮定する。これらをグラフ上にプロットして、検量線を引く。このようにして、濃度既知の標準試料から、検量線を得る。
次に、濃度不知の試料液を用いて、図4に示すような電気化学測定装置により反応電流値を得る。ここで得られた反応電流値が20μAであった場合、検量線から、試料液に含まれる還元型の電子メディエータの濃度を知ることができる。この還元型の電子メディエータの濃度から、試料液に含まれる(あるいは、含まれていた)目的物質の量を算出する。
なお、実際には、検量線の作成や目的物質の量の算出などは、すべてコンピュータ上で行われることは言うまでもないだろう。
(参照電極、補助電極に関する説明)
参照電極42と補助電極43の2つの電極の代わりに、対極1つを用いて測定を行うことも可能である。しかし参照電極42と補助電極43は独立して設けることが好ましい。なぜなら、電位の基準となる参照電極もしくは対極に電流が流れる間には、その表面で電極反応が進行しており、反応進行に伴う電子メディエータの濃度変化が大きくなると本実施の形態の検出装置の基準としている電位が変動して正確な測定を行うことができないためである。
よって、参照電極42には電流が流れ込まないように入力インピーダンスを極力大きく設定することが望ましい。望ましくはインピーダンスの値が10の6乗オーム以上であることが望ましい。参照電極42には銀塩化銀電極、飽和カロメル電極等を用いることができる。
補助電極43の表面積は大きいことが望ましい。補助電極43の好ましい表面積は酸化電極32Wの集合体41の10倍以上である。その理由は、補助電極43の電極表面積が小さくて十分な電流を流せない場合、電気化学測定用電極板10で得られる電流が制御装置45に十分流れ込まなくなり、正確な電流値を得られないことや、電流を流すために補助電極43の電位が大きく変動して水の電気分解等望ましくない反応が進行する場合があるためである。
補助電極43としては、電極自体の酸化還元反応や腐蝕反応が起こりにくい貴金属電極を使用することが望ましい。例えば、白金線に白金黒を析出させて大きな電極面積を持たせた白金電極が好ましい。
(実施の形態2)
図11に示すように、本実施の形態2においては、上層31の上面にメッシュ状のフィルタ111Mを設けている。
測定に用いる試料液として、血液から分離した血漿成分を用いる場合、分離しきれずに混入した血球成分、蛋白成分、固化した血栓などが、貫通孔32Hを塞ぐ事がある。
これを防止するために、電極系外でフィルタによる濾過を経て試料液を電極に供給するが、これに加えて、上層31に濾過機能を有するフィルタ111Mを形成することにより、血栓等によって貫通孔32Hが塞がれることが防止される。
必要に応じて、下層33の下側にフィルタ(図示せず)を設けても良い。
(実施の形態3)
図13に示すように、本実施の形態3においては、酸化電極板32E、還元電極板32eだけでなく、参照電極131E、補助電極133eを一体に形成しても良い。この構成では、図4に示すような参照電極42および補助電極43を付加する必要がなくなるため、装置を小型化できる。
参照電極131Eは、上層31の上面に形成することが好ましい。参照電極133eは、下層33の下面に形成することが好ましい。
なお、実施の形態2に示されるフィルタがこの実施の形態3に示される電気化学測定用電極板に設けられる場合には、フィルタ111Mの上に参照電極131Eを設けても良いし、逆にフィルタ111Mの下に参照電極131Eを設けても良い。
実施の形態1〜3の説明においては、便宜上、酸化電極32Wが基板本体32Sの上側に、還元電極32wが基板本体32Sの下側に設けられていることとした。これは、説明を容易にするためにすぎない。各図面に示されている電気化学測定用電極板をひっくり返した場合であっても、本発明に含まれることは言うまでもない。実施の形態3における参照電極131Eおよび補助電極133eについても同様である。すなわち、参照電極E131は下層33の下側に設けられ、補助電極133eは上層31の上側に設けられていても良い。
(実施例)
以下、実施例および比較例により、本発明をさらにより詳細に説明する。
(実施例1)
図5は本発明の実施例1における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。なお、図5から図10まで、図12、および図14には1つの貫通孔32Hしか表されていないが、実際には各実施例・比較例において説明されている数の貫通孔32Hが設けられた。
まず、図5(a)および図5(b)に示すように、1μmのSiO2膜を表面に形成した厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)からなる基板50の上面に、以下のように、スパッタ法により酸化電極板51を形成した。
すなわち、基板50をスパッタ装置(株式会社 アルバック製)内の所定位置に取り付けた後、クロム及び金を順次成膜した。具体的には、圧力1.3Pa,アルゴン雰囲気で、クロム10秒,金:50秒間スパッタを行い全体で130nmの膜厚とした。これにより酸化電極板51を形成した。
次に、図5(c)に示すように、基板50の下面に、酸化電極板51と同様に、還元電極板52を形成した。
さらに、図5(d)に示すように、酸化電極板51上に上層53および上層開口部54を、以下のように形成した。すなわち、酸化電極板51の上面に、スピンコート法により感光性樹脂材料(化薬マイクロケム株式会社製:SU−8 2000)を厚みが2μmとなるように塗布した。そして、70℃30分間ベーキングした後、上層開口部54のパターンを有するクロムマスクを用いて60秒間、密着露光することにより、マスクパターンを樹脂材料に転写した。この後、現像液中にて20℃、300秒間現像を行い、水洗、乾燥してマトリックス状の上層開口部54を上層53に形成した。
ここで、実施例1における上層開口部54について詳しく説明する。この上層開口部54は正方形であった。その一辺は15μmであり、面積は225μm2であった。上層開口部54の個数は10000個であり、隣接する上層開口部54の中心点の間の距離は18μmであった。
図5(e)に示すように、上層開口部54を形成した手順と同様に、還元電極板52の下側に下層55および下側開口部56を形成した。
次に、酸化電極板51をエッチングすることにより、以下のように上側孔57を形成した。すなわち、酸化電極板51上に厚み4〜5μmのレジスト材(東京応化工業株式会社製:TSMR−8900LB)を塗布した。このレジストを塗布した基板50をオーブン中にいれ、プレベーキング工程を100℃・30分、ポストベーキング工程を120℃・30分の条件にて行った。その後、孔57のパターンを有するクロムマスクを用いて、マスクアライナー(ミカサ株式会社製)により60秒間、密着露光した。次に現像液中にて25℃120秒間現像を行い、水洗、乾燥してマスクパターンをレジストに転写した。
次に、図5(f)に示すように、基板をアルゴンミリング装置に入れ、アルゴンガスの流量12sccm、圧力0.03Pa、ビーム電流90mAの条件で金およびクロムからなる酸化電極板31Eを順次エッチングした。これにより、基板に複数の上側孔57を形成した。形成された上側孔57は円形であり、その面積は78.5μm2であった。基板50に形成された上側孔57の個数は10000個であった。なお、各上側孔57の中心は上側開口部54の中心と一致するよう形成した。
さらに、図5(g)に示すように、酸化電極板51に上側孔57を形成した手順と全く同様に、還元電極板52に下側孔58を形成した。
最後に、図5(h)に示されるように、次に上側孔57および下側孔58を形成した基板50を反応性イオンエッチング装置に入れ、下側孔58をマスクパターンとし、C26ガスの流量を25sccm、圧力0.25Pa、150Wの条件で15分間、基板50をエッチングした。これにより、基板50に多数の貫通孔59が形成された(図5(h))。
このようにして、実施例1に係る電気化学測定用電極板を得た。
(比較例1)
比較のために、従来の電気化学測定用電極板を作製した。以下にその作製手順を示す。
図6に示すように、基板60として1μmのSiO2膜を表面に形成した厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)の上面に、クロムおよび金をからなる下部電極61を成膜した。成膜条件は図5(b)と同一とした。
次に、図6(c)に示すように、下部電極61の上面にプラズマCVD装置(株式会社アルバック製)を用いて、厚み430nmのSiO2からなる絶縁層62を堆積した。
成膜条件は、シランガス流量10sccm、N2Oガス流量200sccm、圧力80Pa,パワー50W、基板温度300℃とした。
さらに、図6(d)に示すように、クロムおよび金をからなる表面電極63を成膜した。成膜条件は図5(b)と同一とした。
次に、図6(e)に示すように表面電極63の上面に、厚み2〜3μmのレジスト材64を塗布し、現像、水洗、乾燥してマスクパターンをレジスト64に転写した。用いたレジストおよびレジストパターン形成の条件は、図5(d)に関する説明と同一とした。
その後、図6(f)に示すように、微細孔65を形成した。レジスト64が形成されていない部分、すなわち、露出している表面電極63の部分を、アルゴンミリング装置を用いて順次エッチングした。アルゴンミリングの条件は、アルゴンガスの流量12sccm、圧力0.03Pa、ビーム電流90mAとした。
最後に反応性イオンエッチング装置を用いて、絶縁層62に多数の微細孔65を形成した。反応性イオンエッチングの条件は、C26ガスの流量:25sccm、圧力:0.25Pa、150Wの条件とした。
ここで、比較例1における微細孔65について詳しく説明する。この微細孔65は円形であった。その直径は10μmであり、面積は78.5μm2であった。微細孔65の個数は10000個であり、隣接する微細孔65の中心点の間の距離は70μmであった。なお、この微細孔65は図6(f)に示されるように、下部電極61、基板60を貫通していなかった。
(実施例1および比較例1に係る電気化学測定)
実施例1および比較例に係る電気化学測定用電極板を用いて、図4に示すように、電気化学測定装置を組み立て、電子メディエータの定量評価を行った。
1mMのフェロシアン化カリウムおよび1mMのフェリシアン化カリウム(合計2mM)を、50mMの支持電解質(塩化カリウム)を含有する水溶液に添加することによって、試料液を調製した。
参照電極として銀/塩化銀電極(BAS株式会社製)を用いた。なお、以下、酸化電極の電位や還元電極の電位は、全てこの参照電極として用いた銀/塩化銀電極に対する電位である。
実施例1に係る電気化学測定用電極板をバイポテンシオスタット(CH instruments社製:ALS740A)にリード線を介して接続した。酸化電極板51の電位を0V、還元電極板52の電位を0V、酸化電極板51の電位の掃引速度を100mV/sに設定した後、最終的に酸化電極板51の電位が+0.7Vになるまで、サイクリックボルタンメトリー法により酸化電極板51に流れる、反応電流を計測した。その反応は化1に示すフェロシアン化カリウムの酸化反応である。
酸化電極板51の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は39.8μAであった。
同様に、比較例1に係る電気化学測定用電極板を用いて、酸化電極として機能する下部電極2の電位を、0から+0.7Vまで掃引速度100mV/sで掃引した。還元電極として機能する表面電極4の電位は0Vに設定した。
その結果、下部電極においても化1に示すフェロシアン化カリウムの酸化反応に伴う酸化電流が観測された。下部電極61の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は22.5μAであった。
実施例1および比較例1の実験結果を、以下の表1にまとめて示す。
これは図2の自己誘発レドックスサイクルの説明図に当てはめて考えてみると、比較例1における微小電極から遠い部分のマクロ電極22bで酸化されていたフェロシアン化カリウムが微小電極21上の酸化反応に用いられなかったのに対し、実施例1においては全てのフェロシアン化カリウムは微小電極21上でのみ酸化されたため、酸化反応の電流値が効率的に増加したものと考えられる。
本実施例の電気化学測定用電極板においては同一形状と面積を有する微小電極対を基板上に多数配列した。それにより、それぞれの電極対同士で反応面積が揃い、上記のようなマクロ電極上のフェロシアン化カリウムの反応が起こらなくなったあるいは著しく減少したと考えられる。これにより、両極間で効率的なレドックスサイクル反応が進行したと考えられる。
また、比較例1の微小電極を構成する下部電極61および実施例1の電気化学測定用電極を構成する酸化電極板51に対して、+0.4Vの電位を印加して得られる酸化電流の時間依存性を評価した。実施例1の還元電極板52の電位および比較例1の表面電極63の電位は0Vに保った。
その結果、実施例1の酸化電流値は6秒で定常状態に達したが、比較例1の酸化電流値が定常状態に達するのに26秒要した(表2)。このことは、比較例1の下部電極に比べて、上部電極の面積が大きいために定常状態に達する時間が必要であったのに対し、実施例1の酸化電極は同一面積を有する還元電極と電極対を形成したため、両極間で即座に定常状態に達したと考えられる。
以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(比較例2)
実施例1における上層開口部54および下層開口部56の面積が、電子メディエータの定量評価に及ぼす影響を検証するために、以下の手順にて比較例2に係る電気化学測定用電極板を作製した。
基本的な作製手順は図5と同一であるので、相違点のみ説明する。比較例2では、正方形の上層開口部54の一辺は1000μmであり、面積は1000000μm2であった。上層開口部54の個数は10個であり、隣接する上層開口部54の中心点の間の距離は1500μmであった。
この電極を用いて、実施例1と同様にサイクリックボルタンメトリー法による反応電流の計測を行ったところ、酸化電極板51の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は20.7μAであった。同様に、酸化電流の時間依存性も評価した。比較例2の酸化電極に流れる電流が定常状態に達するのに35秒要した(表2)。
このことは、本発明の電気化学測定用電極板に設ける開口部の面積が1000000μm2と大きな場合、図2で示したような還元電極上において酸化電極から近い部分と遠い部分とが生じ、酸化電極で酸化するべき還元体が還元電極上で反応してしまったために、酸化電極上で効率的な反応が起こらなかったと推測される。
(実施例2)
図7は本発明の実施例2における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。酸化電極板51と還元電極板52の形成工程(a〜c)までは実施例1と同様に行った。
次に実施例1で用いた手順により、参加電極板51、基板50、還元電極板52を順次エッチングし、断面積100μm2の貫通孔59を5000個等間隔になるように形成した(c〜e)。
次に酸化電極板51の上側に上層53と上層開口部54を形成した。また、還元電極板52の下層に、下層55と下層開口部56を形成した。
上層53と下層55の材料には、厚み5μmのドライフィルムレジスト(旭化成工業株式会社製 サンフォート)を用いた。上層開口部54と下層開口部56は各5000個形成した。それらの開口部の断面積は900μm2であった。上層開口部と下層開口部の形成方法は実施例1と同様であった(f〜i))。
以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
本実施例の電気化学測定用電極板を用いて実施例1と同様の試験を行った。表1に示すように酸化電極51で観測された電流値は、比較例1における下部電極61のそれより大きかった。さらに表2に示すように酸化電極51で観測された電流値が定常状態到達に要した時間は10秒と比較例1のそれより短かった。
以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例3)
図8は実施例3における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。本実施例においては実施例1と同様の酸化電極板51と還元電極板52の形成工程(b1,b2)、上層および下層形成工程(c1,c2)、上層開口部および下層開口部形成工程(d1,d2)、上側貫通孔および下側貫通孔形成工程(e1,e2,f1,f2)を経た。その結果、酸化電極形成基板80A、還元電極形成基板80Bを形成した。
前記2つの基板をそれぞれの下面で貼り合わせることにより、本実施例の電気化学測定用電極板を得た(g)。上層開口部54および下層開口部56の断面積は900μm2で、それを1000個等間隔に形成した。貫通孔59の断面積は314μm2であった。
本実施例の電気化学測定用電極を用いて実施例1と同様の試験を行った結果、表1に示すように実施例1と同様の結果が得られた。以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例4)
図9は実施例4における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。絶縁性の基板50には厚さ0.5mmの熱硬化性のフェノール樹脂材料(PM−8200 住友ベークライト製)を用いた。前記基板に酸化電極板51と還元電極板52を形成した(a〜c)。
次に前記の電極板形成済基板の貫通孔形成加工を行った。モールド90を160℃に加熱し、還元電極板52の下面から酸化電極51の上面を完全に貫通したところでそのままの温度で10分間保持した(d)。次に、室温まで5℃/分で徐冷したのち、室温で10分間保持した。次に、モールド90を抜き取ることにより、貫通孔59を1000個形成した。それらの貫通孔の断面積は314μm2だった(e)。
次に実施例2と同様の手順により上層53と上層開口部54、下層55と下層開口部56を1000個形成した(f〜i)。それらの開口部の面積は6400μm2であった。これにより、本実施例の電気化学測定用電極板を得た。
本実施例の電気化学測定用電極板を用いて実施例1と同様の試験を行った結果、表1に示すように実施例1と同様の結果が得られた。以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例5)
図10は実施例5における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。基板50は1μmのSiO膜を表面に形成した直径4インチ、厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)を用いた。
その両面にチタンを10nm全面成膜した。次に、その下面をスピンコーターのワークテーブル100に真空吸着により、固定した(a)。ワークテーブル100はポーラスチャック(株式会社 吉岡精工製)を用いた。その吸着部は焼結したアルミナ多孔体で形成されていた。
前記基板50の上面に直径5nmのパラジウム粒子分散液(溶媒:ヘキサン)を厚さ500nmとなるように全面塗布した。次に排気設備付の電気炉にて300℃、3時間焼成を行い、酸化電極51を形成した。続いて下面にも同様にパラジウム粒子分散液を塗布、焼成を経て還元電極52を形成した(b)。
次に実施例1と同様の手順により、貫通孔59を1000個形成した。貫通孔の断面積は2500μm2であった(c〜e)。
次いで実施例2と同様の手順での上層53と上層開口部54、下層55と下層開口部56を1000個形成した。開口部の断面積は1000μm2であった(f〜i)。以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
得られた電気化学測定用電極板の酸化電極表面及び還元電極表面を、原子間力顕微鏡により観察した。その結果、酸化電極表面及び還元電極表面におよそ直径50nmのグレインが凝集した構造が確認できた。一方、成膜手法を用いて作製したパラジウム電極表面は、基板の研磨において形成された研磨傷を反映した形状のみ観測され、グレイン構造は確認できなかった。
ここから本実施例の電気化学測定用電極板の酸化電極表面積の見積もりを行った。単純に基板50の表面を直径50nmのパラジウム粒子の半球が覆いつくしたと仮定すると、半球の表面積の総和は幾何面積のおよそ30倍となった。成膜手法で作製した電極表面はほとんど平坦であったため、その面積はほぼ貴下面積と一致する。よって、本実施例の電気化学測定用電極板は成膜手法で作製した電極よりも広い電極面積を有することが分かった。このことは電極の反応面積が増大することにつながる。これにより、本発明の電気化学測定用電極板が好ましい性質を有することが認められた。
次に図12を用いて実施の形態2の電気化学測定用電極板の作製工程を述べる。
(実施例6)
図12は実施例6における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。実施例1の手順を用いて基板50に酸化電極板51、還元電極板52、上層53、上層開口部54、下層55、下層開口部56、貫通孔59を形成した。貫通孔の断面積は100μm2、開口部の断面積は10000μm2、それぞれ2500個形成した(a〜i)。
最後にボロシリケートファイバーグラスからなる口径42μmのフィルタ113M(日本ミリポア株式会社製)を所定の大きさにカットしたのち、上層53上にシリコン接着剤を用いて固定した(j)。
以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
血液中の血漿成分を本実施例の電気化学測定用電極板に挿入した結果、分離しきれなかった血球成分、蛋白成分、血栓がフィルタ113Mにトラップされ、血漿成分のみが上層開口部54、貫通孔59を経て下層開口部まで供給された。一方、フィルタ113Mを形成しなかった同形状の電気化学用測定電極板は一部血栓により塞がれたため、貫通孔59が機能を果たさなくなった。これらは目視により確認した。以上の結果から、本実施の形態の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
次に図14を用いて実施の形態3の電気化学測定用電極板の作製工程を述べる。
(実施例7)
図14は実施例7における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。実施例1の手順を用いて基板50に酸化電極板51、還元電極板52、上層53、上層開口部54、下層55、下層開口部56、貫通孔59を形成した。貫通孔の断面積は100μm2、開口部の断面積は2500μm2とし、それぞれ5000個形成した(a〜i)。
次に上層53と下層55にメタルマスクを被せて白金を100nm成膜した(j)。メタルマスクを除いた後、上層53に形成した白金薄膜へ、リード部分を残して銀塩化銀インク(ビーエーエス株式会社製)を塗布した。その後、40℃30分間電気炉中にて乾燥を行い、参照電極131Eを得た。続いて平均粒径1.0〜10.0μmの白金粉末(田中貴金属工業株式会社製)をエタノール中に分散してスラリーを作製した。作製したスラリーを下層55上に形成した白金薄膜へ、リード部分を残して塗布および乾燥を行い、補助電極133eを得た。以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
本実施例で作製した電気化学測定用電極板と比較例1のそれを用いて、電気化学測定装置を組み上げた。その際、本実施例の電気化学測定用電極板は厚みが0.5mm程度であるのに対し、比較例1のそれは外部から参照電極と補助電極を導入したため、厚みが5cm程度となった。そのことにより、測定に用いる試料液の量は数1000倍に増加した。
このことは測定に必要な電極を電極板上に一体形成したことにより、小型化が求められる各種センサ用電極として好適な構成となったことを示す。よって、本実施例の電気化学測定用電極板は小型センサ用電極として適することが分かった。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の電気化学測定用電極板は、高いレドックスサイクル効果を有し、グルコースセンサに代表される生体物質等微量成分のセンシングデバイスを構成する電極として有用である。またクロマトグラフィーの検出器を構成する電極の用途等にも応用できる。
図1は、特許文献1に記載の従来の電気化学測定用電極板の(A)全体斜視図(B)拡大斜視図である。 図2は、特許文献4、非特許文献1および2に記載の自己誘発レドックスサイクルのメカニズムを示す図である。 図3は、本発明の実施の形態1における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 図4は、本発明の実施の形態1に係る電気化学測定用電極板を有する電気化学測定装置の概略図である。 図5は、本発明の実施例1における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図6は、本発明の比較例1における従来の電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図7は、本発明の実施例2における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図8は、本発明の実施例3における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図9は、本発明の実施例4における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図10は、本発明の実施例5における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図11は、本発明の実施の形態2における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 図12は、本発明の実施例6における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図13は、本発明の実施の形態3における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 図14は、本発明の実施例7における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図15は、検量線の一例を示すグラフである。
符号の説明
1 基板
1a シリコン基板
1b 酸化膜
2 下部電極
3 絶縁膜(SiO2膜)
4 酸化電極
5 微細孔
7 下部電極2の開口部
10 電気化学測定用電極板
21 微小電極
22 マクロ電極(微小電極近傍)
23 マクロ電極(微小電極遠方)
24 還元体1
25 酸化体1
26 還元体2
27 還元体3
28 酸化体2
31 上層
31I 絶縁体
31W 上層開口部
32 基板
32S 基板本体
32E 酸化電極板
32H 貫通孔
32T 酸化電極リード
32W 酸化電極
32e 還元電極板
32t 還元電極リード
32w 還元電極
33 下層
33i 絶縁体
33w 下層開口部
41 酸化電極32Wの集合体
42 参照電極
43 補助電極
44 試料液容器
45 制御装置
46 レコーダー
50 基板
51 酸化電極
52 還元電極
53 上層
54 上層開口部
55 下層
56 下層開口部
57 上側孔
58 下側孔
59 貫通孔
60 基板
61 下部電極
62 絶縁層
63 表面電極
64 レジスト
65 微細孔
80a 基板(酸化電極側)
80b 基板(還元電極側)
80A 酸化電極形成基板
80B 還元電極形成基板
90 モールド
100 ワークテーブル
111M フィルタ
131E 参照電極
131T 参照電極リード
133e 補助電極
133t 補助電極リード
本発明は生体内に微量に含まれる物質を、感度良く検出および定量する電気化学測定用電極板に関する。
近年、酵素が有する特異的触媒作用と電極反応活性を有する電子メディエータとを組み合わせ、生体中の血液に含まれるスクロース、グルコースなどの糖類の濃度を定量する電気化学測定用電極板が開発されている。
このような電気化学測定用電極板では、糖類と酵素の反応を利用して、電気化学的に糖類の濃度を定量する。まず、血液サンプルに酵素と電子メディエータとを混合して試料液を作成したのち、糖類と酵素との間で酵素反応をさせた後、それらに共存させた電子メディエータを電気化学的に測定することによって、電子メディエータを介して間接的に試料液中に含まれる糖類を定量する。
この方法は酵素の反応が糖類に対する特異性が高く、操作時の温度の影響が小さく、定量装置の機構も簡便であるため、この方法を用いることにより、一般の人々が家庭などで簡易に自己の血液中の糖類の濃度を定量することができる。
電気化学測定用電極板は、生体に含まれる微量溶液サンプルの分析に適している。そのため、電気化学測定用電極板は、様々な有機材料または無機材料と組み合わせてセンサなどへの応用が試みられている。電気化学測定用電極板の電極応答速度は、電気化学測定用電極板が有する微小電極の面積が減少するにしたがって高くなるため、様々な電極形状、電極の微細化が検討されている。
しかし、電極面積の減少に伴い、得られる電流値は減少する。例えば、電極面積を数百μm2程度まで微細化すると、検出できる電流値は数十〜数nAオーダーまで低下する。そのため、測定時にノイズ応答の増加や感度低下が発生する。そこで、これらの不具合を解消するため、複数の微小電極を集積した電気化学測定用電極板が特許文献1〜4で検討されている。
特許文献1〜4では、隣接する微小電極との間の距離を一定に保つ微小電極を、多量に再現性良く基板上に作製する方法が提案されている。
図1は、特許文献1に記載された従来の電気化学測定用電極板の構成を示している。
この電気化学測定用電極板10は、絶縁性の基板1/酸化電極として機能する下部電極2/絶縁層3/還元電極として機能する表面電極4が積層されてなる。表面電極4の表面には円筒形の多数の微細孔5が形成されており、この微細孔5には下部電極2の表面が露出している。
絶縁性の基板1は、例えばシリコン基板1aの主表面に酸化膜1bが被着された、いわゆる酸化膜付きシリコン基板から成る。下部電極2は、基板1上の酸化膜1bの表面(すなわち、絶縁体の表面)に金属、半金属、炭素材、または半導体で形成された酸化電極である。表面電極4は、絶縁層3上に、下部電極2と同様、金属、半金属、または半導体から形成された還元電極である。下部電極2と表面電極4とから、作用電極対が構成されている。すなわち、下部電極2および表面電極4はいずれも作用電極として機能し、より詳細には、上述したように、下部電極2は酸化電極として、表面電極4は還元電極として機能する。なお、図1において、7は下部電極2の一端部に外部リードを接続するために開口された電極引出し用の開口部である。ここで微細孔とは絶縁層3と表面電極4を完全に貫通し、下部電極2の表面に到達する孔のことを指す。
上記のような電気化学測定用電極板を用いた電気化学測定装置においては、電流応答を得るために、下部電極2と表面電極4との間に電位を印加する。電気化学測定装置が下部電極2、表面電極4、対極(図示せず)の3つの電極で構成される場合、対極が試料用液中で示す電位をゼロとして、下部電極2−対極間、表面電極4−対極間に電位を印加する。また、電気化学測定装置が下部電極2、表面電極4、参照電極(図示せず)、補助電極(図示せず)の4つの電極で構成される場合、参照電極が試料液中で示す電位をゼロとして、下部電極2−参照電極間、表面電極4−参照電極間に電位を印加する。
特許文献4および非特許文献1においては、円筒形の微細孔5の間隔を、その径に対して大きく取った電気化学測定用電極板が提案され、それを用いた電気化学測定結果が報告されている。これらの文献においては、マクロ電極である表面電極4は、微小電極の集合体である下部電極2よりも大きな面積を有する。測定時には、下部電極2上で酸化反応を、そして表面電極4上で還元反応を起こしうる電位をそれぞれ印加する。これにより、下部電極2と表面電極4との間で自己誘発レドックスサイクルが発現し、見かけ上高い電流応答を得ることができると報告されている。
このようにして、試料液に存在する電子メディエータを介して、糖類などの目的物質を定量する。
なお、下部電極2に還元反応が起こる電位を印加し、上部電極4に酸化反応が起こる電位を印加しても、同様の自己誘発レドックスサイクルが発現する。
ここで、特許文献4、非特許文献1及び2に記載されている自己誘発レドックスサイクルを、図2を用いて説明する。
図2における自己誘発レドックスサイクルはふたつの作用電極、すなわち微小電極21およびマクロ電極22上で進行する。
微小電極21の表面では、還元体23の酸化反応が生じて酸化体24が生成することにより、微小電極21に酸化電流が流れる。
マクロ電極22のうち微小電極21に近い部分22aの表面では、酸化体24が還元されて還元体25となることにより、マクロ電極22に還元電流が流れる。
さらに還元体25が拡散して微小電極21の表面に到達することにより、還元体23から酸化体24への酸化反応が再び起こり、微小電極21に酸化電流が流れる。結果的にマクロ電極22aの表面では微小電極21から生成した酸化体24を還元して還元体25とすることにより、微小電極21表面に還元体23を供給することができる。
これにより、微小電極21とマクロ電極22aとの間で酸化反応と還元反応が循環するいわゆるレドックスサイクル反応が生じる結果、微小電極21に定常的に電流が流れて、試料液中に微量に含まれる目的物質の検出および定量を行うことができる。
そして高感度測定の有効性を高めるために、微小電極21を基板上により多数形成してレドックスサイクルが進行する酸化電極と還元電極とからなる電極対を、できる限り多く形成する。
特許第2556993号公報(第6項、第1図) 特許第2564030号公報(第7項、第2図) 特開2006−78404号公報(第25項、図1) 特許第3289059号公報(第16頁、図5) 特開2007−010429号公報(図3、図4) J.Electrochem.Soc.,138巻,12号,3551項(1991) 青木幸一ら著 「微小電極を用いる電気化学測定法」 (社)電子情報通信学会編 平成10年2月10日発行 48−49,70−71項
図1に示されるように、還元電極として機能する表面電極4の面積が、酸化電極として機能する下部電極2の面積よりもずっと大きいことにより自己誘発レドックスサイクルが生じるが、これには次のような問題が生じる。
マクロ電極22a上で生成した還元体25は拡散するが、それは微小電極21(図1における下部電極2に相当)に到達するだけでなく、図2の右側に示すように、その一部はマクロ電極22(図2における表面電極4に相当)のうち微小電極21から遠い部分22b上にも到達する。このような還元体26は酸化反応により酸化体27となる。すなわち、マクロ電極22上では酸化反応も起こる(特開平3−246460号公報の第4図も参照)。
次に、この酸化体27は拡散し、マクロ電極22のうち微小電極21に近い部分22b上に到達する。そこで還元反応により、還元体25となる。還元体25は拡散して微小電極21表面に到達し再び酸化されて酸化体24となる(あるいは、再度、マクロ電極22のうち微小電極21から遠い部分22bに到達する)。
すなわち、図1の表面電極4上では酸化反応と還元反応が同時に起こることとなる。その結果、下部電極2で検出したい還元体の酸化が表面電極4の上でも同時に起こってしまう。
そのため、表面電極4で発生した還元体が効率的に下部電極2上で酸化せず、高感度化に課題を生じている。
さらに、図1に示されるように、基板の一方の面にのみ電気化学測定用電極板を構成した構造では、電極を形成し得る面積が限られ、これによっても高感度化に課題を生じていた。
この他、表面電極4はマクロ電極として作用するため電位印加時の充電電流が大きい。そのため、微小電極である下部電極2に比べて反応が定常状態に達する時間が長くなるという課題も生じていた。
上記課題を解決する本発明に係る電気化学測定用電極板10は、
絶縁体からなる基板32と、
前記基板32の上面に設けられた絶縁体からなる上層31と、
前記基板32の下面に設けられた絶縁体からなる下層33と、
を備え、
前記基板32は、前記基板32の上面と前記上層31との間に挟まれている複数の酸化電極32Wと
前記基板32の下面と前記下層33との間に挟まれている複数の還元電極32wと
を備え、
前記上層31は、複数の上層開口部31Wを有し、
前記各上層開口部31Wからは、前記各酸化電極32Wが露出しており、
前記下層33は、複数の下層開口部33wを有し、
前記各下層開口部33wからは、前記各還元電極32wが露出しており、
前記各酸化電極32Wの上面から前記各還元電極32wの下面にかけて貫通する複数の貫通孔32Hが前記基板32に設けられており、
前記各上層開口部31Wの面積と、前記各下層開口部33wの面積とは同一であり、
前記各上層開口部31Wの面積は10000μm2以下であり、
前記各下層開口部33wの面積は10000μm2以下である。
前記各上層開口部の面積は225μm2以上であり、前記各下層開口部の面積は225μm2以上であることが好ましい。
前記貫通孔の断面積は、1μm2以上2500μm2以下であることが好ましい。
前記下層の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
この電気化学測定用電極板10は、参照電極42および補助電極43と組み合わされるか、または対極と組み合わされ、電気化学測定装置を構成する。この電気化学測定装置もまた、本発明の趣旨に含まれる。
そして、この電気化学測定装置により、以下のような、電子メディエータを含有する試料液に含まれる目的物質を定量する方法もまた、本発明の趣旨に含まれる。
参照電極、補助電極、および電気化学測定用電極板、または対極および電気化学測定用電極板からなる電気化学測定装置により、試料液に含まれる目的物質を定量する方法であって、
前記方法は、以下の工程を包含する:
電子メディエータを含有する試料液を調製する工程、
前記電気化学測定用電極板を用意する工程、ここで
前記電気化学測定用電極板は、
絶縁体からなる基板と、
前記基板の上面に設けられた絶縁体からなる上層と、
前記基板の下面に設けられた絶縁体からなる下層と、
を備え、
前記基板は、
前記基板の上面と前記上層との間に挟まれている複数の酸化電極と
前記基板の下面と前記層との間に挟まれている複数の還元電極と
を備え、
前記上層は、複数の上層開口部を有し、
前記各上層開口部からは、前記各酸化電極が露出しており、
前記下層は、複数の下層開口部を有し、
前記各下層開口部からは、前記各還元電極が露出しており、
前記各酸化電極の上面から前記各還元電極の下面にかけて貫通する複数の貫通孔が前記基板に設けられており、
前記各上層開口部の面積と、前記各下層開口部の面積とは同一であり、
前記各上層開口部の面積は10000μm2以下であり、
前記各下層開口部の面積は10000μm2以下であり、
前記参照電極、前記補助電極、および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触させるか、または前記対極および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触さる接触工程、
前記酸化電極板に正電位を掃引し、かつ前記還元電極板に負電位を印加するか、あるいは前記酸化電極板に正電位を印加し、かつ前記還元電極板に負電位を掃引することによって、前記酸化電極板および前記還元電極のそれぞれに流れる電流を測定する電流測定工程、および
前記電流測定工程によって得られた電流から前記目的物質の量を算出する算出工程。
前記補助電極の表面積は、前記酸化電極の集合体の10倍以上であることが好ましい。
前記上層の上面にメッシュ状のフィルタを設けても良い。
前記参照電極が前記上層の上面に形成され、前記補助電極が前記下層の下面に形成されていることが好ましい。
本発明により、生体内に微量に含まれる物質を、感度良く検出および定量する電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法が提供される。
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図3は、本実施の形態1における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。
図3に示されるように、本実施の形態1に係る電気化学測定用電極板10は、下側から順に、下層33、基板32、および上層31が積層されていることにより構成されている。下層33および上層31は、いずれも絶縁体である。
基板32は、絶縁体からなる基板本体32Sからなり、この基板本体32Sの上面に酸化電極板32Eを備え、この基板本体32Sの下面に還元電極板32eを備えている。酸化電極板32Eは、図3に示すように、基板本体32Sと上層31との間に挟まれている。同様に、還元電極板32eは、基板本体32Sと下層33との間に挟まれている。
上層31は、複数の上層開口部31Wを有している。図3では、9つの上層開口部31Wが設けられている。各上層開口部31Wからは、酸化電極板32Eの一部分が露出している。酸化電極板32Eのうち、各上層開口部31Wから露出している部分、すなわち、図3において、酸化電極板32E上で斜線が施された部分が、試料液と接し、酸化電極32Wとして機能する。図3では、9つの酸化電極32Wが設けられている。酸化電極板32Eのうち、上層31が形成されている部分、すなわち、図3において、酸化電極板32E上で斜線が施されず、白く表されている部分は、試料液とは接することがない。よって、この部分は、酸化電極としては機能しない。
上層31と同様に、下層33もまた、複数の下層開口部33Wを有している。図3では、9つの下層開口部33Wが設けられている。各下層開口部33Wからは、還元電極板32eの一部分が露出している。還元電極板32eのうち、各下層開口部33wから露出している部分、すなわち、図3において、還元電極板32e上で斜線が施された部分が、還元電極32wとして機能する。図3では、9つの還元電極32wが設けられている。還元電極板32eのうち、下層33が形成されている部分、すなわち、図3において、還元電極板32e上で斜線が施されず、白く表されている部分は、試料液とは接することがない。よって、この部分は、還元電極としては機能しない。
酸化電極板32Eと還元電極板32eにはそれぞれ独立して電位を印加することができ、それぞれの電極上で目的物質の電気化学反応、より具体的には酸化反応と還元反応とを進行させることができる。酸化電極32W上における電気化学反応によって発生した電気信号は酸化電極板32Eを伝わり、酸化電極リード32Tを介してガルバノメーター等の計測器で定量することができる。同様に還元電極32w上における電気化学反応によって発生した電気信号は還元電極板32eを伝わり、還元電極リード32tを介してガルバノメーター等の計測器で定量することができる。
各酸化電極32Wと各還元電極32wとは、平面基板本体32Sを間に挟んで重なり合っている。図3では、縦3列×横3行の酸化電極32Wと、縦3列×横3行の還元電極32wとが、基板本体32Sを間に挟んで重なり合っている。
図3においては、説明を容易にするために、還元電極板32eは、基板本体32Sと分離して記載したが、実際には、還元電極板32eは基板本体32Sの下面に形成されている。
酸化電極板32Eはその一端に酸化電極リード32Tを有している。酸化電極板32Eで得られた電気信号は酸化電極リード32Tから取り出すことができる。還元電極板32eも同様に還元電極リード32tと電気的に同通しており、還元電極板32eで得られた電気信号は還元電極リード32tから取り出すことができる。
基板32には複数の貫通孔32Hが設けられている。そして、各貫通孔32Hは、各酸化電極32Wの上面から各還元電極32wの下面にかけて貫通している。図3では、1つの酸化電極32W、1つの貫通孔32H、および1つの還元電極32wからなる9つのセットが示されている。
貫通孔32Hがなければ、後述する比較例1からも理解されるように、目的物質の定量を高感度に行い得ず、さらに定量時における定常状態に達するまでに多くの時間を要する。
各上層開口部31Wの面積、すなわち、各酸化電極32Wの面積は10000μm2以下である。10000μm2を超えると、図2の右側で示されるような望まれない反応が生じてしまい、結果的に、高感度化に課題を生じる。すなわち、後述する比較例2からも示されるように、目的物質の定量を高感度に行い得ず、さらに定量時における定常状態に達するまでに多くの時間を要する。同様に、各下層開口部33wの面積、すなわち、各還元電極32wの面積も10000μm2以下である。
なお、各上層開口部31Wの面積(すなわち、各酸化電極32Wの面積)および各下層開口部33wの面積(すなわち、各還元電極32wの面積)の下限には特に限定はないが、225μm2以上であることが好ましい。
各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とは実質的に同一である。すなわち、複数個の上層開口部31Wの面積はいずれも同一である。同様に、複数個の下層開口部33の面積はいずれも同一である。そして、これらの上層開口部31Wの面積と、これらの下層開口部33の面積とは、いずれも同一である。各貫通孔32Hの断面積は同一であることが好ましい。
各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とを同一にすることにより、定常状態になるまでに要する時間を短くすることができる。また、各上層開口部31Wの面積と各下層開口部33wの面積とが異なっている場合、図2に示すような反応が生じるため、高感度化が困難となるためである。
貫通孔32Hの断面積は、当然、上層開口部31Wの面積および下層開口部33Wの面積のいずれよりも小さい。1つの酸化電極32Wおよび1つの還元電極32wのセットに対して、2つ以上の貫通孔32Hを設けても良い。ただし、設計上は、1つの酸化電極32Wおよび1つの還元電極32wのセットに対して、1つの貫通孔32Hで充分である。
貫通孔32Hの断面積の大きさはなるべく小さいほうが、基板32上に多くの貫通孔を形成することが可能となる。このことは酸化電極32Wおよび還元電極32wからなる電極対をより多く配置することが可能となるので好ましい。ただし、貫通孔32Hの断面積を小さくすることによって、試料液に含まれる電子メディエータが孔を通り抜ける際のコンダクタンスが増加する傾向がある。一方、あまりにも断面積の値が大きすぎる貫通孔32Hは、面積が10000μm2以下でなければならない各酸化電極32Wおよび各還元電極32wの面積を意味もなく小さくしてしまうことにつながる。そのため、好ましい貫通孔32Hの断面積の値は、1μm2以上2500μm2以下である。
下層33の厚みは5μm以上100μm以下が好ましい。隣接する還元電極32wの間の距離は一般的に7μm程度であるので、下層33の厚みが5μm未満である場合には、事実上、隣接する2以上の還元電極32wが連続する1つの還元電極32wとして機能してしまうことになる。そのため、図2の右側で示される望ましくない反応が生じやすくなる。
言い換えれば、下層33の厚みが5μm未満である場合には、還元電極32wで生じた還元型の電子メディエータが貫通孔32Hを通って酸化電極32Wに達するよりも、還元電極32wで生じた還元対の電子メディエータは隣接する還元電極32w上で酸化されて酸化型のメディエータとなりやすい。一方、下層33の厚みが100μmを超える場合には、正確な測定のために必要となる試料液の量が増えることになり、好ましいとは言えない。このことは、上層31についても同様である。
基板本体32Sの材料としては、例えば両面が酸化されたシリコン、ガラス、酸化アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シリコン樹脂、ポリイミド及びその誘導体、エポキシ樹脂、高分子熱硬化物、感光性樹脂等を挙げることができる。
本発明の電気化学測定用電極板では、貫通孔32Hが試料液の通り道となるため、試料液が水溶液である場合には、貫通孔32Hの内壁が親水性であることが望ましい。そのため、基板本体32Sとしては、シリコン基板、ガラス基板などの親水性表面を有する基板か、または親水性のポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート基板などのポリエステル材からなる基板を選択することが望ましい。疎水性を有する基板を使用する際には、エタノール、イソプロピルアルコールなどによって貫通孔32Hの内壁に親水化処理を施すことが望ましい。
酸化電極板32E(酸化電極リード32Tを含む)の材料、および還元電極板32e(還元電極リード32tを含む)の材料としては、電気伝導性を有する材料を挙げることができる。具体的には、金属として金、白金、パラジウム、銀、クロム、チタン、ニッケル、半導体としてp型シリコン、n型シリコン、p型ゲルマニウム、n型ゲルマニウム、硫化カドミウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガリウム燐、ガリウム砒素、インジウム燐、二砒化モリブデン、セレン化タングステン、二酸化銅、酸化スズ、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物などを挙げることができる。その他、ケッシェンブラックなどの導電性カーボンを用いることができる。
これらの中でも電極材料として安定である金、白金、パラジウムを用いることが好ましい。これらの形成には蒸着、スパッタ等の成膜手法とエッチング手法を組み合わせた方法。マスクを用いたスクリーン印刷、レーザアブレーション法、または導電性インクを用いたスピンコート法、インクジェットプリント法による直接描画手法を用いることができる。
貫通孔32Hの形成手法としては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、リフトオフ法、集束イオンビーム照射による加工法などにより電極形成済基板に穴を形成する手法が挙げられる。これに代えて、基板にメタルマスクを用いて貫通孔32Hのパターニングをした後、基板を前記手法による孔形成加工を行うことによって形成しても良い。この他、貫通孔32Hの凸型パターンを有する鋳型に基板を形成し、この基板に電極板を形成した後、鋳型を抜き取る方法。加熱した鋳型により電極板付の基板に貫通孔を形成したのち、鋳型を抜き取ることも考えられる。
上層開口部31Wと下層開口部33wを形成する手法としては、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、リフトオフ法、集束イオンビーム照射による加工方法などにより絶縁体31Iおよび絶縁体33iに開口部を形成する手法を挙げることができる。また、ポジ型レジストやネガ型レジスト、ドライフィルムレジスト等の感光性樹脂材料を用いて遮光マスクと露光手法を組み合わせた方法により形成しても良い。
酸化電極板32E(酸化電極リード32Tを含む)、還元電極板32e(還元電極リード32tを含む)、上層31、下層33をスピンコートによって形成する場合、コーターのワークテーブルには多孔体を用いてあるものを使うことが望ましい。これは基板本体32Sの両面に電極板(酸化電極板32Eと還元電極板32e)と絶縁層(上層31と下層33)を形成するため、基板を安定して固定するには多孔体による真空吸着法が、テフロン(登録商標)等の材料に数箇所吸着用の孔を設けたコーターヘッドを用いる場合に比べて、吸着固定する面積が大きくなるため好ましい。
なお、図3の構造は、特許文献5の図3・図4に記載された構造と類似しているが、特許文献5は細胞電位測定用容器を開示しているに過ぎず、酸化電極および還元電極を備えた電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法については、開示も示唆もしていない。
図4は、実施の形態1に係る電気化学測定用電極板を有する電気化学測定装置(以下、単に「測定装置」という)を示している。
図4に示すように、電気化学測定用電極板10、参照電極42、および補助電極43を、試料液容器44に満たされた試料液に浸す。これにより、これらの電極が試料液に接触する。また、電気化学測定用電極板10の表面には、酸化電極32Wが複数形成されて、酸化電極32Wの集合体41を形成している。図示していないが、電気化学測定用電極板10の裏面には同様に還元電極32wが集合体を形成している。
参照電極44は電気化学測定用電極板10に印加する電位の基準となる電極である。参照電極44が試料液中で示す電位をゼロとして、酸化電極32W、還元電極それぞれに電位を印加する。
補助電極43は、測定装置においてアンペアの法則を成り立たせるために、電流を補償するための電極である。測定装置45は、酸化電極リード32Tおよび還元電極リード32tを介して電気化学測定用電極板10と電気的に接続しており、同様に参照電極42、補助電極43とも電気的に接続している。レコーダー46により、測定装置45から出力された電流応答が記録される。
(電気化学測定方法の説明)
次に、試料液に含まれる電子メディエータの定量方法を説明する。
サイクリックボルタンメトリー等の手法により、電子メディエータの酸化反応が進行する電位と還元反応が進行する電位を予め調べておいて、後に説明する酸化電極の電位の値と還元電極の電位の値に用いる。なお、電位の基準は参照電極42が試料液中で示す平衡電位である。すなわち、酸化電極32Wおよび還元電極32wにそれぞれ印加される電位は、参照電極42を0Vとした場合における相対的な電位である。
酸化電極32Wと還元電極32wの電位を制御装置45に入力したのち、測定を開始する。後述する実施例では詳細に説明するが、具体的には、酸化電極32Eに0Vから正電圧をゆっくりと印加する。後述する実施例では、酸化電極32Eに印加される電圧を0Vから+0.7Vにゆっくりと連続的に変化させている。なお、これを「掃引」と呼ぶ。すなわち、本明細書において用いられる用語「掃引」とは、連続的に電位を変化させることを意味している。これとは対照的に、本明細書において用いられる用語「印加」とは、あらかじめ定められた電位に急激に変化させることを意味している。
このとき、還元電極には参照電極と同一の電位(多くの場合、0V)を印加し続けることが好ましい。酸化電極32Eに電圧を印加する速度(以下、「掃引速度」ということがある)は、一般的に5mV/秒以上500mV/秒以下である。後述する実施例では、100mV/秒である。
なお、上記の説明では、酸化電極板32Eに正電位を掃引し、還元電極板32eに負電位を印加している。しかし、酸化電極板32Eに正電位を印加し、還元電極板32eに負電位を掃引してもよい。
酸化電極32Wにおける酸化反応で得られた電流は酸化電極リード32Tを介して制御装置45によって検出される。同様に還元電極における還元反応で得られた電流は還元電極リード32tを介して制御装置45によって検出される。検出された電流はレコーダー46に出力され、記録された酸化電流値を標準試料の酸化電流値の測定結果(後述する検量線)と比較して、試料液中の検出対象物質を定量することができる。
レコーダー46に記録された還元電流値を標準試料の還元電流測定結果と比較して試料液中の検出対象物質を定量することもできる。このためには、予め本実施の形態の検出装置を用いて標準試料の検量線を作成しておくことが望ましい。
ここで、検量線を用いた、試料液中の検出対象物質を定量する方法、すなわち、試料液中の検出対象物質の濃度を算出する方法について説明する。
まず、標準試料を準備する。この標準試料には、濃度既知の還元型電子メディエータ(ここでは、フェロシアン化カリウムと仮定する)が含まれている。この濃度既知の標準試料を試料液として用いて、図4に示すような電気化学測定装置により、還元型電子メディエータの濃度と、電気化学測定装置により測定された反応電流値との間の関係をグラフ化する。このグラフの一例を図14に示す。
14に示されるように、ここでは、還元型の電子メディエータの濃度が100μMである場合には、反応電流値は10μA、還元型の電子メディエータの濃度が300μMである場合には、反応電流値は30μA、還元型の電子メディエータの濃度が500μMである場合には、反応電流値は50μAであったと仮定する。これらをグラフ上にプロットして、検量線を引く。このようにして、濃度既知の標準試料から、検量線を得る。
次に、濃度不知の試料液を用いて、図4に示すような電気化学測定装置により反応電流値を得る。ここで得られた反応電流値が20μAであった場合、検量線から、試料液に含まれる還元型の電子メディエータの濃度を知ることができる。この還元型の電子メディエータの濃度から、試料液に含まれる(あるいは、含まれていた)目的物質の量を算出する。
なお、実際には、検量線の作成や目的物質の量の算出などは、すべてコンピュータ上で行われることは言うまでもないだろう。
(参照電極、補助電極に関する説明)
参照電極42と補助電極43の2つの電極の代わりに、対極1つを用いて測定を行うことも可能である。しかし参照電極42と補助電極43は独立して設けることが好ましい。なぜなら、電位の基準となる参照電極もしくは対極に電流が流れる間には、その表面で電極反応が進行しており、反応進行に伴う電子メディエータの濃度変化が大きくなると本実施の形態の検出装置の基準としている電位が変動して正確な測定を行うことができないためである。
よって、参照電極42には電流が流れ込まないように入力インピーダンスを極力大きく設定することが望ましい。望ましくはインピーダンスの値が10の6乗オーム以上であることが望ましい。参照電極42には銀塩化銀電極、飽和カロメル電極等を用いることができる。
補助電極43の表面積は大きいことが望ましい。補助電極43の好ましい表面積は酸化電極32Wの集合体41の10倍以上である。その理由は、補助電極43の電極表面積が小さくて十分な電流を流せない場合、電気化学測定用電極板10で得られる電流が制御装置45に十分流れ込まなくなり、正確な電流値を得られないことや、電流を流すために補助電極43の電位が大きく変動して水の電気分解等望ましくない反応が進行する場合があるためである。
補助電極43としては、電極自体の酸化還元反応や腐蝕反応が起こりにくい貴金属電極を使用することが望ましい。例えば、白金線に白金黒を析出させて大きな電極面積を持たせた白金電極が好ましい。
(実施の形態2)
10に示すように、本実施の形態2においては、上層31の上面にメッシュ状のフィルタ111Mを設けている。
測定に用いる試料液として、血液から分離した血漿成分を用いる場合、分離しきれずに混入した血球成分、蛋白成分、固化した血栓などが、貫通孔32Hを塞ぐ事がある。
これを防止するために、電極系外でフィルタによる濾過を経て試料液を電極に供給するが、これに加えて、上層31に濾過機能を有するフィルタ111Mを形成することにより、血栓等によって貫通孔32Hが塞がれることが防止される。
必要に応じて、下層33の下側にフィルタ(図示せず)を設けても良い。
(実施の形態3)
12に示すように、本実施の形態3においては、酸化電極板32E、還元電極板32eだけでなく、参照電極131E、補助電極133eを一体に形成しても良い。この構成では、図4に示すような参照電極42および補助電極43を付加する必要がなくなるため、装置を小型化できる。
参照電極131Eは、上層31の上面に形成することが好ましい。参照電極133eは、下層33の下面に形成することが好ましい。
なお、実施の形態2に示されるフィルタがこの実施の形態3に示される電気化学測定用電極板に設けられる場合には、フィルタ111Mの上に参照電極131Eを設けても良いし、逆にフィルタ111Mの下に参照電極131Eを設けても良い。
実施の形態1〜3の説明においては、便宜上、酸化電極32Wが基板本体32Sの上側に、還元電極32wが基板本体32Sの下側に設けられていることとした。これは、説明を容易にするためにすぎない。各図面に示されている電気化学測定用電極板をひっくり返した場合であっても、本発明に含まれることは言うまでもない。実施の形態3における参照電極131Eおよび補助電極133eについても同様である。すなわち、参照電極E131は下層33の下側に設けられ、補助電極133eは上層31の上側に設けられていても良い。
(実施例)
以下、実施例および比較例により、本発明をさらにより詳細に説明する。
(実施例1)
図5は本発明の実施例1における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。なお、図5から図まで、図11、および図13には1つの貫通孔32Hしか表されていないが、実際には各実施例・比較例において説明されている数の貫通孔32Hが設けられた。
まず、図5(a)および図5(b)に示すように、1μmのSiO2膜を表面に形成した厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)からなる基板50の上面に、以下のように、スパッタ法により酸化電極板51を形成した。
すなわち、基板50をスパッタ装置(株式会社 アルバック製)内の所定位置に取り付けた後、クロム及び金を順次成膜した。具体的には、圧力1.3Pa,アルゴン雰囲気で、クロム10秒,金:50秒間スパッタを行い全体で130nmの膜厚とした。これにより酸化電極板51を形成した。
次に、図5(c)に示すように、基板50の下面に、酸化電極板51と同様に、還元電極板52を形成した。
さらに、図5(d)に示すように、酸化電極板51上に上層53および上層開口部54を、以下のように形成した。すなわち、酸化電極板51の上面に、スピンコート法により感光性樹脂材料(化薬マイクロケム株式会社製:SU−8 2000)を厚みが2μmとなるように塗布した。そして、70℃30分間ベーキングした後、上層開口部54のパターンを有するクロムマスクを用いて60秒間、密着露光することにより、マスクパターンを樹脂材料に転写した。この後、現像液中にて20℃、300秒間現像を行い、水洗、乾燥してマトリックス状の上層開口部54を上層53に形成した。
ここで、実施例1における上層開口部54について詳しく説明する。この上層開口部54は正方形であった。その一辺は15μmであり、面積は225μm2であった。上層開口部54の個数は10000個であり、隣接する上層開口部54の中心点の間の距離は18μmであった。
図5(e)に示すように、上層開口部54を形成した手順と同様に、還元電極板52の下側に下層55および下側開口部56を形成した。
次に、酸化電極板51をエッチングすることにより、以下のように上側孔57を形成した。すなわち、酸化電極板51上に厚み4〜5μmのレジスト材(東京応化工業株式会社製:TSMR−8900LB)を塗布した。このレジストを塗布した基板50をオーブン中にいれ、プレベーキング工程を100℃・30分、ポストベーキング工程を120℃・30分の条件にて行った。その後、孔57のパターンを有するクロムマスクを用いて、マスクアライナー(ミカサ株式会社製)により60秒間、密着露光した。次に現像液中にて25℃120秒間現像を行い、水洗、乾燥してマスクパターンをレジストに転写した。
次に、図5(f)に示すように、基板をアルゴンミリング装置に入れ、アルゴンガスの流量12sccm、圧力0.03Pa、ビーム電流90mAの条件で金およびクロムからなる酸化電極板31Eを順次エッチングした。これにより、基板に複数の上側孔57を形成した。形成された上側孔57は円形であり、その面積は78.5μm2であった。基板50に形成された上側孔57の個数は10000個であった。なお、各上側孔57の中心は上側開口部54の中心と一致するよう形成した。
さらに、図5(g)に示すように、酸化電極板51に上側孔57を形成した手順と全く同様に、還元電極板52に下側孔58を形成した。
最後に、図5(h)に示されるように、次に上側孔57および下側孔58を形成した基板50を反応性イオンエッチング装置に入れ、下側孔58をマスクパターンとし、C26ガスの流量を25sccm、圧力0.25Pa、150Wの条件で15分間、基板50をエッチングした。これにより、基板50に多数の貫通孔59が形成された(図5(h))。
このようにして、実施例1に係る電気化学測定用電極板を得た。
(比較例1)
比較のために、従来の電気化学測定用電極板を作製した。以下にその作製手順を示す。
図6に示すように、基板60として1μmのSiO2膜を表面に形成した厚さ0.5mmのシリコン基板(信越化学工業株式会社製)の上面に、クロムおよび金をからなる下部電極61を成膜した。成膜条件は図5(b)と同一とした。
次に、図6(c)に示すように、下部電極61の上面にプラズマCVD装置(株式会社アルバック製)を用いて、厚み430nmのSiO2からなる絶縁層62を堆積した。
成膜条件は、シランガス流量10sccm、N2Oガス流量200sccm、圧力80Pa,パワー50W、基板温度300℃とした。
さらに、図6(d)に示すように、クロムおよび金をからなる表面電極63を成膜した。成膜条件は図5(b)と同一とした。
次に、図6(e)に示すように表面電極63の上面に、厚み2〜3μmのレジスト材64を塗布し、現像、水洗、乾燥してマスクパターンをレジスト64に転写した。用いたレジストおよびレジストパターン形成の条件は、図5(d)に関する説明と同一とした。
その後、図6(f)に示すように、微細孔65を形成した。レジスト64が形成されていない部分、すなわち、露出している表面電極63の部分を、アルゴンミリング装置を用いて順次エッチングした。アルゴンミリングの条件は、アルゴンガスの流量12sccm、圧力0.03Pa、ビーム電流90mAとした。
最後に反応性イオンエッチング装置を用いて、絶縁層62に多数の微細孔65を形成した。反応性イオンエッチングの条件は、C26ガスの流量:25sccm、圧力:0.25Pa、150Wの条件とした。
ここで、比較例1における微細孔65について詳しく説明する。この微細孔65は円形であった。その直径は10μmであり、面積は78.5μm2であった。微細孔65の個数は10000個であり、隣接する微細孔65の中心点の間の距離は70μmであった。なお、この微細孔65は図6(f)に示されるように、下部電極61、基板60を貫通していなかった。
(実施例1および比較例1に係る電気化学測定)
実施例1および比較例に係る電気化学測定用電極板を用いて、図4に示すように、電気化学測定装置を組み立て、電子メディエータの定量評価を行った。
1mMのフェロシアン化カリウムおよび1mMのフェリシアン化カリウム(合計2mM)を、50mMの支持電解質(塩化カリウム)を含有する水溶液に添加することによって、試料液を調製した。
参照電極として銀/塩化銀電極(BAS株式会社製)を用いた。なお、以下、酸化電極の電位や還元電極の電位は、全てこの参照電極として用いた銀/塩化銀電極に対する電位である。
実施例1に係る電気化学測定用電極板をバイポテンシオスタット(CH instruments社製:ALS740A)にリード線を介して接続した。酸化電極板51の電位を0V、還元電極板52の電位を0V、酸化電極板51の電位の掃引速度を100mV/sに設定した後、最終的に酸化電極板51の電位が+0.7Vになるまで、サイクリックボルタンメトリー法により酸化電極板51に流れる、反応電流を計測した。その反応は化1に示すフェロシアン化カリウムの酸化反応である。
酸化電極板51の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は39.8μAであった。
同様に、比較例1に係る電気化学測定用電極板を用いて、酸化電極として機能する下部電極2の電位を、0から+0.7Vまで掃引速度100mV/sで掃引した。還元電極として機能する表面電極4の電位は0Vに設定した。
その結果、下部電極においても化1に示すフェロシアン化カリウムの酸化反応に伴う酸化電流が観測された。下部電極61の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は22.5μAであった。
実施例1および比較例1の実験結果を、以下の表1にまとめて示す。
これは図2の自己誘発レドックスサイクルの説明図に当てはめて考えてみると、比較例1における微小電極から遠い部分のマクロ電極22bで酸化されていたフェロシアン化カリウムが微小電極21上の酸化反応に用いられなかったのに対し、実施例1においては全てのフェロシアン化カリウムは微小電極21上でのみ酸化されたため、酸化反応の電流値が効率的に増加したものと考えられる。
本実施例の電気化学測定用電極板においては同一形状と面積を有する微小電極対を基板上に多数配列した。それにより、それぞれの電極対同士で反応面積が揃い、上記のようなマクロ電極上のフェロシアン化カリウムの反応が起こらなくなったあるいは著しく減少したと考えられる。これにより、両極間で効率的なレドックスサイクル反応が進行したと考えられる。
また、比較例1の微小電極を構成する下部電極61および実施例1の電気化学測定用電極を構成する酸化電極板51に対して、+0.4Vの電位を印加して得られる酸化電流の時間依存性を評価した。実施例1の還元電極板52の電位および比較例1の表面電極63の電位は0Vに保った。
その結果、実施例1の酸化電流値は6秒で定常状態に達したが、比較例1の酸化電流値が定常状態に達するのに26秒要した(表2)。このことは、比較例1の下部電極に比べて、上部電極の面積が大きいために定常状態に達する時間が必要であったのに対し、実施例1の酸化電極は同一面積を有する還元電極と電極対を形成したため、両極間で即座に定常状態に達したと考えられる。
以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(比較例2)
実施例1における上層開口部54および下層開口部56の面積が、電子メディエータの定量評価に及ぼす影響を検証するために、以下の手順にて比較例2に係る電気化学測定用電極板を作製した。
基本的な作製手順は図5と同一であるので、相違点のみ説明する。比較例2では、正方形の上層開口部54の一辺は1000μmであり、面積は1000000μm2であった。上層開口部54の個数は10個であり、隣接する上層開口部54の中心点の間の距離は1500μmであった。
この電極を用いて、実施例1と同様にサイクリックボルタンメトリー法による反応電流の計測を行ったところ、酸化電極板51の電位が+0.6から+0.7Vまでの間に定常電流が観測された。+0.7Vにおける反応電流は20.7μAであった。同様に、酸化電流の時間依存性も評価した。比較例2の酸化電極に流れる電流が定常状態に達するのに35秒要した(表2)。
このことは、本発明の電気化学測定用電極板に設ける開口部の面積が1000000μm2と大きな場合、図2で示したような還元電極上において酸化電極から近い部分と遠い部分とが生じ、酸化電極で酸化するべき還元体が還元電極上で反応してしまったために、酸化電極上で効率的な反応が起こらなかったと推測される。
(実施例2)
図7は本発明の実施例2における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。酸化電極板51と還元電極板52の形成工程(a〜c)までは実施例1と同様に行った。
次に実施例1で用いた手順により、参加電極板51、基板50、還元電極板52を順次エッチングし、断面積100μm2の貫通孔59を5000個等間隔になるように形成した(c〜e)。
次に酸化電極板51の上側に上層53と上層開口部54を形成した。また、還元電極板52の下層に、下層55と下層開口部56を形成した。
上層53と下層55の材料には、厚み5μmのドライフィルムレジスト(旭化成工業株式会社製 サンフォート)を用いた。上層開口部54と下層開口部56は各5000個形成した。それらの開口部の断面積は900μm2であった。上層開口部と下層開口部の形成方法は実施例1と同様であった(f〜i))。
以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
本実施例の電気化学測定用電極板を用いて実施例1と同様の試験を行った。表1に示すように酸化電極51で観測された電流値は、比較例1における下部電極61のそれより大きかった。さらに表2に示すように酸化電極51で観測された電流値が定常状態到達に要した時間は10秒と比較例1のそれより短かった。
以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例3)
図8は実施例3における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。本実施例においては実施例1と同様の酸化電極板51と還元電極板52の形成工程(b1,b2)、上層および下層形成工程(c1,c2)、上層開口部および下層開口部形成工程(d1,d2)、上側貫通孔および下側貫通孔形成工程(e1,e2,f1,f2)を経た。その結果、酸化電極形成基板80A、還元電極形成基板80Bを形成した。
前記2つの基板をそれぞれの下面で貼り合わせることにより、本実施例の電気化学測定用電極板を得た(g)。上層開口部54および下層開口部56の断面積は900μm2で、それを1000個等間隔に形成した。貫通孔59の断面積は314μm2であった。
本実施例の電気化学測定用電極を用いて実施例1と同様の試験を行った結果、表1に示すように実施例1と同様の結果が得られた。以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
(実施例4)
図9は実施例4における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。絶縁性の基板50には厚さ0.5mmの熱硬化性のフェノール樹脂材料(PM−8200 住友ベークライト製)を用いた。前記基板に酸化電極板51と還元電極板52を形成した(a〜c)。
次に前記の電極板形成済基板の貫通孔形成加工を行った。モールド90を160℃に加熱し、還元電極板52の下面から酸化電極51の上面を完全に貫通したところでそのままの温度で10分間保持した(d)。次に、室温まで5℃/分で徐冷したのち、室温で10分間保持した。次に、モールド90を抜き取ることにより、貫通孔59を1000個形成した。それらの貫通孔の断面積は314μm2だった(e)。
次に実施例2と同様の手順により上層53と上層開口部54、下層55と下層開口部56を1000個形成した(f〜i)。それらの開口部の面積は6400μm2であった。これにより、本実施例の電気化学測定用電極板を得た。
本実施例の電気化学測定用電極板を用いて実施例1と同様の試験を行った結果、表1に示すように実施例1と同様の結果が得られた。以上の結果から、本実施例の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
次に図11を用いて実施の形態2の電気化学測定用電極板の作製工程を述べる。
(実施例
11は実施例における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。実施例1の手順を用いて基板50に酸化電極板51、還元電極板52、上層53、上層開口部54、下層55、下層開口部56、貫通孔59を形成した。貫通孔の断面積は100μm2、開口部の断面積は10000μm2、それぞれ2500個形成した(a〜i)。
最後にボロシリケートファイバーグラスからなる口径42μmのフィルタ11M(日本ミリポア株式会社製)を所定の大きさにカットしたのち、上層53上にシリコン接着剤を用いて固定した(j)。
以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
血液中の血漿成分を本実施例の電気化学測定用電極板に挿入した結果、分離しきれなかった血球成分、蛋白成分、血栓がフィルタ11Mにトラップされ、血漿成分のみが上層開口部54、貫通孔59を経て下層開口部まで供給された。一方、フィルタ11Mを形成しなかった同形状の電気化学用測定電極板は一部血栓により塞がれたため、貫通孔59が機能を果たさなくなった。これらは目視により確認した。以上の結果から、本実施の形態の電気化学測定用電極板の効果が認められた。
次に図13を用いて実施の形態3の電気化学測定用電極板の作製工程を述べる。
(実施例
13は実施例における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。実施例1の手順を用いて基板50に酸化電極板51、還元電極板52、上層53、上層開口部54、下層55、下層開口部56、貫通孔59を形成した。貫通孔の断面積は100μm2、開口部の断面積は2500μm2とし、それぞれ5000個形成した(a〜i)。
次に上層53と下層55にメタルマスクを被せて白金を100nm成膜した(j)。メタルマスクを除いた後、上層53に形成した白金薄膜へ、リード部分を残して銀塩化銀インク(ビーエーエス株式会社製)を塗布した。その後、40℃30分間電気炉中にて乾燥を行い、参照電極131Eを得た。続いて平均粒径1.0〜10.0μmの白金粉末(田中貴金属工業株式会社製)をエタノール中に分散してスラリーを作製した。作製したスラリーを下層55上に形成した白金薄膜へ、リード部分を残して塗布および乾燥を行い、補助電極133eを得た。以上の工程を経ることにより、本実施例の電気化学測定用電極板が得られた。
本実施例で作製した電気化学測定用電極板と比較例1のそれを用いて、電気化学測定装置を組み上げた。その際、本実施例の電気化学測定用電極板は厚みが0.5mm程度であるのに対し、比較例1のそれは外部から参照電極と補助電極を導入したため、厚みが5cm程度となった。そのことにより、測定に用いる試料液の量は数1000倍に増加した。
このことは測定に必要な電極を電極板上に一体形成したことにより、小型化が求められる各種センサ用電極として好適な構成となったことを示す。よって、本実施例の電気化学測定用電極板は小型センサ用電極として適することが分かった。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明の電気化学測定用電極板は、高いレドックスサイクル効果を有し、グルコースセンサに代表される生体物質等微量成分のセンシングデバイスを構成する電極として有用である。またクロマトグラフィーの検出器を構成する電極の用途等にも応用できる。
図1は、特許文献1に記載の従来の電気化学測定用電極板の(A)全体斜視図(B)拡大斜視図である。 図2は、特許文献4、非特許文献1および2に記載の自己誘発レドックスサイクルのメカニズムを示す図である。 図3は、本発明の実施の形態1における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 図4は、本発明の実施の形態1に係る電気化学測定用電極板を有する電気化学測定装置の概略図である。 図5は、本発明の実施例1における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図6は、本発明の比較例1における従来の電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図7は、本発明の実施例2における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図8は、本発明の実施例3における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 図9は、本発明の実施例4における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 10は、本発明の実施の形態2における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 11は、本発明の実施例における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 12は、本発明の実施の形態3における電気化学測定用電極板の分解斜視図である。 13は、本発明の実施例における電気化学測定用電極板の作製プロセスの工程断面図である。 14は、検量線の一例を示すグラフである。
1 基板
1a シリコン基板
1b 酸化膜
2 下部電極
3 絶縁膜(SiO2膜)
4 酸化電極
5 微細孔
7 下部電極2の開口部
10 電気化学測定用電極板
21 微小電極
22 マクロ電極(微小電極近傍)
23 マクロ電極(微小電極遠方)
24 還元体1
25 酸化体1
26 還元体2
27 還元体3
28 酸化体2
31 上層
31I 絶縁体
31W 上層開口部
32 基板
32S 基板本体
32E 酸化電極板
32H 貫通孔
32T 酸化電極リード
32W 酸化電極
32e 還元電極板
32t 還元電極リード
32w 還元電極
33 下層
33i 絶縁体
33w 下層開口部
41 酸化電極32Wの集合体
42 参照電極
43 補助電極
44 試料液容器
45 制御装置
46 レコーダー
50 基板
51 酸化電極
52 還元電極
53 上層
54 上層開口部
55 下層
56 下層開口部
57 上側孔
58 下側孔
59 貫通孔
60 基板
61 下部電極
62 絶縁層
63 表面電極
64 レジスト
65 微細孔
80a 基板(酸化電極側)
80b 基板(還元電極側)
80A 酸化電極形成基板
80B 還元電極形成基板
90 モールド
100 ワークテーブル
111M フィルタ
131E 参照電極
131T 参照電極リード
133e 補助電極
133t 補助電極リード

Claims (18)

  1. 絶縁体からなる基板と、
    前記基板の上面に設けられた絶縁体からなる上層と、
    前記基板の下面に設けられた絶縁体からなる下層と、
    を備え、
    前記基板は、
    前記基板の上面と前記上層との間に挟まれている複数の酸化電極と
    前記基板の下面と前記下層との間に挟まれている複数の還元電極と
    を備え、
    前記上層は、複数の上層開口部を有し、
    前記各上層開口部からは、前記各酸化電極が露出しており、
    前記下層は、複数の下層開口部を有し、
    前記各下層開口部からは、前記各還元電極が露出しており、
    前記各酸化電極の上面から前記各還元電極の下面にかけて貫通する複数の貫通孔が前記基板に設けられており、
    前記各上層開口部の面積と、前記各下層開口部の面積とは同一であり、
    前記各上層開口部の面積は10000μm2以下であり、
    前記各下層開口部の面積は10000μm2以下である
    電気化学測定用電極板。
  2. 前記各上層開口部の面積は225μm2以上であり、
    前記各下層開口部の面積は225μm2以上である
    請求項1に記載の電気化学測定用電極板。
  3. 前記貫通孔の断面積が1μm2以上2500μm2以下である、請求項1に記載の電気化学測定用電極板。
  4. 前記下層の厚みが5μm以上100μm以下である、請求項1に記載の電気化学測定用電極板。
  5. 参照電極、補助電極、および電気化学測定用電極板、または対極および電気化学測定用電極板からなる電気化学測定装置であって、
    前記電気化学測定用電極板は、
    基板と、
    前記基板の上面に設けられた絶縁体からなる上層と、
    前記基板の下面に設けられた絶縁体からなる下層と、
    を備え、
    前記基板は、
    前記基板の上面と前記上層との間に挟まれている複数の酸化電極と
    前記基板の下面と前記下層との間に挟まれている複数の還元電極と
    を備え、
    前記上層は、複数の上層開口部を有し、
    前記各上層開口部からは、前記各酸化電極が露出しており、
    前記下層は、複数の下層開口部を有し、
    前記各下層開口部からは、前記各還元電極が露出しており、
    前記各酸化電極の上面から前記各還元電極の下面にかけて貫通する複数の貫通孔が前記基板に設けられており、
    前記各上層開口部の面積と、前記各下層開口部の面積とは同一であり、
    前記各上層開口部の面積は10000μm2以下であり、
    前記各下層開口部の面積は10000μm2以下である、
    電気化学測定装置。
  6. 前記各上層開口部の面積は225μm2以上であり、
    前記各下層開口部の面積は225μm2以上である
    請求項5に記載の電気化学測定装置。
  7. 前記貫通孔の断面積が1μm2以上2500μm2以下である、請求項5に記載の電気化学測定装置。
  8. 前記下層の厚みが5μm以上100μm以下である、請求項5に記載の電気化学測定装置。
  9. 前記補助電極の表面積が前記酸化電極の集合体の10倍以上である、請求項5に記載の電気化学測定装置。
  10. 前記上層の上面にメッシュ状のフィルタが設けられている、請求項5に記載の電気化学測定装置。
  11. 前記参照電極が前記上層の上面に形成され、前記補助電極が前記下層の下面に形成されている、請求項5に記載の電気化学測定装置。
  12. 参照電極、補助電極、および電気化学測定用電極板、または対極および電気化学測定用電極板からなる電気化学測定装置により、試料液に含まれる目的物質を定量する方法であって、
    前記方法は、以下の工程を包含する:
    電子メディエータを含有する試料液を調製する工程、
    前記電気化学測定用電極板を用意する工程、ここで
    前記電気化学測定用電極板は、
    絶縁体からなる基板と、
    前記基板の上面に設けられた絶縁体からなる上層と、
    前記基板の下面に設けられた絶縁体からなる下層と、
    を備え、
    前記基板は、
    基板の上面と前記上層との間に挟まれている複数の酸化電極と
    前記基板の下面と前記上層との間に挟まれている複数の還元電極と
    を備え、
    前記上層は、複数の上層開口部を有し、
    前記各上層開口部からは、前記各酸化電極が露出しており、
    前記下層は、複数の下層開口部を有し、
    前記各下層開口部からは、前記各還元電極が露出しており、
    前記各酸化電極の上面から前記各還元電極の下面にかけて貫通する複数の貫通孔が前記基板に設けられており、
    前記各上層開口部の面積と、前記各下層開口部の面積とは同一であり、
    前記各上層開口部の面積は10000μm2以下であり、
    前記各下層開口部の面積は10000μm2以下であり、
    前記参照電極、前記補助電極、および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触させるか、または前記対極および前記電気化学測定用電極板を前記試料液に接触される接触工程、
    前記酸化電極板に正電位を掃印し、かつ前記還元電極板に負電位を印加するか、あるいは前記酸化電極板に正電位を印加し、かつ前記還元電極板に負電位を掃引することによって、前記酸化電極板および前記還元電極のそれぞれに流れる電流を測定する電流測定工程、および
    前記電流測定工程によって得られた電流から前記目的物質の量を算出する算出工程。
  13. 前記各上層開口部の面積は225μm2以上であり、
    前記各下層開口部の面積は225μm2以上である
    請求項12に記載の方法。
  14. 前記貫通孔の断面積が1μm2以上2500μm2以下である、請求項12に記載の方法。
  15. 前記下層の厚みが5μm以上100μm以下である、請求項12に記載の方法。
  16. 前記補助電極の表面積が前記酸化電極の集合体の10倍以上である、請求項12に記載の方法。
  17. 前記上層の上面にメッシュ状のフィルタが設けられている、請求項12に記載の方法。
  18. 前記参照電極が前記上層の上面に形成され、前記補助電極が前記下層の下面に形成されている、請求項12に記載の方法。
JP2008546019A 2007-07-20 2008-07-15 電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法 Active JP4283880B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007189006 2007-07-20
JP2007189006 2007-07-20
PCT/JP2008/001893 WO2009013876A1 (ja) 2007-07-20 2008-07-15 電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP4283880B2 JP4283880B2 (ja) 2009-06-24
JPWO2009013876A1 true JPWO2009013876A1 (ja) 2010-09-30

Family

ID=40281138

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008546019A Active JP4283880B2 (ja) 2007-07-20 2008-07-15 電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法

Country Status (4)

Country Link
US (1) US7638035B2 (ja)
JP (1) JP4283880B2 (ja)
CN (1) CN101595381B (ja)
WO (1) WO2009013876A1 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101960300B (zh) 2008-05-28 2013-05-29 松下电器产业株式会社 使用电化学测定装置检测或者定量目标物质的方法、电化学测定装置以及电化学测定用电极板
JP5839986B2 (ja) * 2011-12-26 2016-01-06 日産自動車株式会社 検査方法および検査システム
CA2903295A1 (en) * 2013-03-05 2014-09-12 Micromass Uk Limited Charging plate for enhancing multiply charged ions by laser desorption
CN106164243B (zh) * 2014-03-31 2018-04-27 松下知识产权经营株式会社 电化学测定器件
CN104792845A (zh) * 2014-08-07 2015-07-22 中国科学院微电子研究所 传感装置
CN107003265B (zh) * 2014-12-12 2021-08-24 松下知识产权经营株式会社 电化学测量装置
US10705002B2 (en) * 2014-12-23 2020-07-07 Heraeus Nexensos Gmbh Sensor for detecting electrically conductive and/or polarizable particles and method for adjusting such a sensor
JP6116075B1 (ja) * 2015-11-20 2017-04-19 日本航空電子工業株式会社 電気化学測定方法、電気化学測定装置及びトランスデューサ
CN107170794B (zh) * 2016-03-08 2020-02-04 中国科学院苏州纳米技术与纳米仿生研究所 应用于tem进行原位电化学反应测量的芯片
SG10201607523RA (en) 2016-09-09 2018-04-27 Heraeus Materials Singapore Pte Ltd Coated wire
CN107121479B (zh) * 2017-05-17 2019-12-27 中国科学院长春应用化学研究所 一种电化学***
CN109019788A (zh) * 2018-08-30 2018-12-18 福建安冠环境科技有限公司 一种混合电化学废水处理装置
JP7231168B2 (ja) * 2019-11-14 2023-03-01 Nok株式会社 細胞外電位測定装置

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2556993B2 (ja) 1989-04-10 1996-11-27 日本電信電話株式会社 電気化学測定用微細孔電極セル及びその製造方法
JP2564030B2 (ja) 1990-09-28 1996-12-18 日本電信電話株式会社 電気化学測定用カーボン薄膜電極の製造方法
JP2992603B2 (ja) * 1991-06-24 1999-12-20 日本電信電話株式会社 ウォールジェット型電気化学的検出器およびその製造方法
JP3108499B2 (ja) * 1992-02-14 2000-11-13 日本電信電話株式会社 電気化学検出用微小電極セル及びその製造方法
JP3289059B2 (ja) * 1992-05-11 2002-06-04 日本電信電話株式会社 電気化学検出方法および検出装置
JPH09101283A (ja) * 1995-10-03 1997-04-15 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 電気化学検出器およびその製造方法
DE19907164C2 (de) * 1999-02-19 2002-10-24 Micronas Gmbh Meßeinrichtung sowie Verfahren zu deren Herstellung
DE10058397A1 (de) * 2000-11-24 2002-06-06 Siemens Ag Anordnung für ein elektrochemisches Analyseverfahren und deren Verwendung
WO2002097416A1 (en) * 2001-05-30 2002-12-05 I-Sens, Inc. Biosensor
JP4691407B2 (ja) 2005-06-29 2011-06-01 パナソニック株式会社 細胞電位測定用容器
JP3902156B2 (ja) * 2003-06-03 2007-04-04 日本電信電話株式会社 オンラインカテコールアミンセンシングデバイス
US7250115B2 (en) * 2003-06-12 2007-07-31 Agilent Technologies, Inc Nanopore with resonant tunneling electrodes
JP4750394B2 (ja) 2004-09-10 2011-08-17 三菱化学メディエンス株式会社 多層電極及び多層電極カートリッジ、電気化学分析装置及び電気化学分析方法、電気化学発光分析装置及び電気化学発光分析方法、並びに電気化学発光素子
JP2006322813A (ja) 2005-05-19 2006-11-30 Kobe Steel Ltd 電気化学センサアレイ及びその製造方法
CN2886565Y (zh) * 2005-12-30 2007-04-04 中国科学院长春应用化学研究所 电化学毒气传感器

Also Published As

Publication number Publication date
WO2009013876A1 (ja) 2009-01-29
JP4283880B2 (ja) 2009-06-24
US20090145780A1 (en) 2009-06-11
CN101595381B (zh) 2012-11-14
CN101595381A (zh) 2009-12-02
US7638035B2 (en) 2009-12-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4283880B2 (ja) 電気化学測定用電極板、およびこの電極板を有する電気化学測定装置、ならびにこの電極板を用いて目的物質を定量する方法
JP4418030B2 (ja) 電気化学測定装置を用いて目的物質を検出または定量する方法、電気化学測定装置、および電気化学測定用電極板
Liao et al. Highly selective and sensitive glucose sensors based on organic electrochemical transistors using TiO2 nanotube arrays-based gate electrodes
Sandison et al. Optimization of the geometry and porosity of microelectrode arrays for sensor design
Mu et al. A robust flexible electrochemical gas sensor using room temperature ionic liquid
Hwang et al. CMOS microelectrode array for electrochemical lab-on-a-chip applications
JP5660533B2 (ja) 電流検出装置
JP3289059B2 (ja) 電気化学検出方法および検出装置
JP2011099849A (ja) 対向電極を備えた複室多検体テストストリップ
Olejnik et al. A flexible Nafion coated enzyme‐free glucose sensor based on Au‐dimpled Ti structures
JP2011095259A (ja) 対向電極を備えた複室多検体テストストリップと共に使用するための検査計
US20140145709A1 (en) Nanowire electrode sensor
JP4283881B1 (ja) 電気化学測定用電極板、および当該電気化学測定用電極板を有する電気化学測定装置、ならびに当該電気化学測定用電極板を用いて目的物質を定量する方法
Zhao et al. Non‐Enzymatic Electrochemical Detection of Glucose with a Gold Nanowire Array Electrode
Wang et al. Low-potential amperometric determination of NADH using a disposable indium-tin-oxide electrode modified with carbon nanotubes
KR20120126977A (ko) 탄소나노튜브 기반 3전극 시스템, 그 제조방법 및 이를 이용한 전기화학 바이오센서
US20190017953A1 (en) Electrode tip
JP2009210362A (ja) 微小電気化学検出器
US9000769B2 (en) Controlled electrochemical activation of carbon-based electrodes
JPH03246460A (ja) 電気化学検出器
TWI381052B (zh) 酵素電極與其製造方法
TWI468680B (zh) 電化學檢測試片
Al Mamun et al. In tegration of carbon nanostructures on CMOS for lab-on-a-chip sensing
JPH0219758A (ja) くし形修飾微小電極セルおよびその製造方法
JPH0251055A (ja) 電気化学測定用電極セルおよびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090224

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090319

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4283880

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120327

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120327

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130327

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130327

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140327

Year of fee payment: 5