JPWO2008155998A1 - 抗不安抗うつ剤 - Google Patents

抗不安抗うつ剤 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2008155998A1
JPWO2008155998A1 JP2009520423A JP2009520423A JPWO2008155998A1 JP WO2008155998 A1 JPWO2008155998 A1 JP WO2008155998A1 JP 2009520423 A JP2009520423 A JP 2009520423A JP 2009520423 A JP2009520423 A JP 2009520423A JP WO2008155998 A1 JPWO2008155998 A1 JP WO2008155998A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antidepressant
anxiolytic
ginseng
anxiety
fermented
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009520423A
Other languages
English (en)
Inventor
英二 武田
英二 武田
純二 寺尾
純二 寺尾
宏義 勢井
宏義 勢井
榊原 啓之
啓之 榊原
和義 北岡
和義 北岡
宮崎 寿次
寿次 宮崎
智恵子 北島
智恵子 北島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nagase and Co Ltd
University of Tokushima
Original Assignee
Nagase and Co Ltd
University of Tokushima
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nagase and Co Ltd, University of Tokushima filed Critical Nagase and Co Ltd
Publication of JPWO2008155998A1 publication Critical patent/JPWO2008155998A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/70Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
    • A61K31/7028Compounds having saccharide radicals attached to non-saccharide compounds by glycosidic linkages
    • A61K31/7034Compounds having saccharide radicals attached to non-saccharide compounds by glycosidic linkages attached to a carbocyclic compound, e.g. phloridzin
    • A61K31/704Compounds having saccharide radicals attached to non-saccharide compounds by glycosidic linkages attached to a carbocyclic compound, e.g. phloridzin attached to a condensed carbocyclic ring system, e.g. sennosides, thiocolchicosides, escin, daunorubicin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K36/00Medicinal preparations of undetermined constitution containing material from algae, lichens, fungi or plants, or derivatives thereof, e.g. traditional herbal medicines
    • A61K36/18Magnoliophyta (angiosperms)
    • A61K36/185Magnoliopsida (dicotyledons)
    • A61K36/25Araliaceae (Ginseng family), e.g. ivy, aralia, schefflera or tetrapanax
    • A61K36/258Panax (ginseng)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/22Anxiolytics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/24Antidepressants
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07JSTEROIDS
    • C07J9/00Normal steroids containing carbon, hydrogen, halogen or oxygen substituted in position 17 beta by a chain of more than two carbon atoms, e.g. cholane, cholestane, coprostane

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Natural Medicines & Medicinal Plants (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Alternative & Traditional Medicine (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Medical Informatics (AREA)
  • Pain & Pain Management (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Medicines Containing Plant Substances (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Steroid Compounds (AREA)
  • Fodder In General (AREA)

Abstract

十分な抗不安作用および/または抗うつ作用を有する抗不安抗うつ剤、および該抗不安抗うつ剤を含有する飲食物を提供する。本発明の抗不安抗うつ剤は、醗酵人参エキスおよび/または該醗酵人参エキスから得られる成分を有効成分として含有する。また、本発明は、該抗不安抗うつ剤を含有し、抗不安抗うつ作用を有することを特徴とする、不安症もしくはうつ症の予防または治療のために用いられる旨の表示を付した飲食物にも関する。

Description

本発明は、精神疾患の1つである不安症および/またはうつ症の予防および/または治療に用いることのできる抗不安抗うつ剤に関する。より詳細には、生体内での不安作用および/またはうつ作用の発現を低減し、精神安定作用を提供し得る抗不安抗うつ剤に関する。
近年の日本では、不安症が1種の社会問題となっている。不安症は精神疾患の1種である。不安症の主な症状は、精神障害、気分障害、人格障害、行動障害、睡眠障害などであり、その症状によりパニック障害、全般性不安障害、恐怖、強迫性障害、外傷後ストレス障害などに分類される。不安症の治療薬としては、ベンゾジアゼピン系、チエノジアゼピン系、カルバメート系などの医薬品がすでに知られている。しかしながら、これらの医薬品は症状を改善させるために何れも長期間に渡って服用する必要がある。このため、眠気、めまい、脱力、注意力散漫、便秘、食欲不振、肝機能障害などの副作用、および連続服用による薬物依存症の発症を伴う恐れがあることが知られている。このような欠点を改善するために、不安症の予防または治療に有効な新たな医薬品、機能性食品などの開発が求められている。
ウコギ科オタネ人参(Panax ginseng C.A.Meyer)は、日本薬局方に収載され、医療用、大衆薬用の漢方エキス製剤の原料として配合されている。中国の古書および神農本草経によれば、その薬効として、「五臓を補い、精神を安んじ、魂魄を定め、動悸を止め、邪気を除き、目を明らかにし、心を開き、智を益する。久しく服すれば身を軽くし、年を延ばす。」ことが知られている。具体的には、オタネ人参は、漢方的作用上、精神安定作用、および、該精神安定作用と反対の作用である興奮作用を有することが知られている。
オタネ人参の生理活性については、現代科学を駆使した多くの研究により徐々に明らかにされている。例えば、非特許文献1は、その成分である各種人参サポニンが複合的に生体に作用して上記薬効を発現することを開示する。具体的には、Rb1、Rb2、Rcなどのプロトパナキサジオール系人参サポニンが神経抑制作用を示し、Rg1などのプロトパナキサトリオール系人参サポニンが神経興奮作用を示すことが開示されている。
上記の各種人参サポニンは、腸内細菌によって分子内の糖鎖がさまざまな程度に切断されてはじめて腸管から吸収され、その生理作用を示すことが明らかにされている(非特許文献2〜4)。さらに、各個人の腸内細菌叢の違いが原因で人参サポニンの作用に差が生じ、その結果、人参の作用の発現に重大な影響を与えることが明らかにされている(非特許文献5および6)。
上記のとおり、オタネ人参が含有する人参サポニンの中には相反する二つの作用(神経抑制作用および神経興奮作用)を示すものがあること、および、これらの人参サポニンの作用は腸内細菌叢に依存して変化することから、オタネ人参の経口摂取によって十分かつ安定な抗不安作用を得ることは困難である。
一方、うつ症は、上記不安症に起因して発症する精神疾患の一形態としても考えられている。うつ症は、その症状により、悲しみ、孤独、絶望、低い自己評価、自責感を特徴とする一時的な精神状態または慢性的な精神障害を引き起こし、精神運動制止、頻回ではない焦燥、社会からの引きこもり、植物神経症状(食欲低下、不眠など)の兆候を伴う。このような兆候を改善するために、うつ症の予防または治療に有効な新たな医薬品、機能性食品などの開発が求められている。
うつ症の治療薬(または抗うつ剤)として現在使用されているものとしては、イミプラミン、クロミプラミン、トリミプラミンなどの三環系抗うつ薬、マプロチリン、ミアンセリンなどの四環系抗うつ薬、トラゾドンなどのトリアゾロピリジン系抗うつ薬、フルボキサミンなどのベンズケトオキシム系の選択的セロトニン再取り込み阻害薬などが挙げられる。
しかし、三環系あるいは類似の環状抗うつ薬では、抗コリン作用(口渇、近点がぼやける、便秘、排尿困難)、抗ヒスタミン作用(体重増加、眠気)、抗アドレナリン作用(姿勢性低血圧、めまい、ふらつき)、心毒症などの副作用や、過剰摂取による急性中毒が指摘されている。
また、選択的セロトニン再取り込み阻害薬では、セロトニン症候群の発症の危険が指摘されている。したがって、より副作用の少ない抗うつ作用を有する薬剤の提供が求められている。
近年、セントジョンズワートがうつ症に有効であることが報告されている(例えば、非特許文献7参照)。セントジョンズワートは、開花期に収穫したHypericum perforatum(和名:セイヨウオトギリソウ)の地上部分を乾燥させたものである。欧州では古くから、これより抽出したオイルが創傷や神経痛などの治療薬として使用されてきた。
また、セントジョンズワートに含まれるフラボノイド化合物であるヒペロシドやイソクエルシトリンが抗うつ作用に関与することも指摘されている(例えば、非特許文献8参照)。
しかし、セントジョンズワートにはヒペリシンというアントラキノンのダイマー構造を有する化合物が含まれており、この化合物が重篤な副作用として光過敏症を示すことが指摘されている。また、セントジョンズワート中の成分であるヒペルフォリンは薬物代謝酵素を誘導させ、サイクロスポリンのような医薬品の体内動態に影響を及ぼすことも指摘されている。
他方、解熱、高血圧、心不全、気管支炎、水腫、神経衰弱などに有効であるといわれてきた、羅布麻の抽出物およびその成分であるフラボノイド化合物(例えば、ヒペロシド、イソクエルシトリン、アストラガリンおよびトリフォリン)が抗うつ作用を奏することが知られている(例えば、特許文献1参照)。羅布麻は、中国ではお茶としても利用されており、古来よりその安全性は認識されている。
しかし、羅布麻を抗うつ剤の原料として工業的に利用しようとしても、その生産量および流通量は未だ充分とは言えず、かつ抗うつ作用も充分満足し得るものとはいえない。
このように、精神疾患として挙げられる不安症およびうつ症のいずれに対しても、より高度な精神安定作用を有する材料を用いた医薬品または機能性食品の開発が所望されている。
特開2002−201139号公報 「からだの科学・臨増(東洋の医学)」、日本評論社、1987年、p145−151 「キャンサー・プリベンション・バイ・ジンセング・バイア・イッツ・インテスティナル・メタボライツ(Cancer Prevention by Ginseng via Its Intestinal Metabolites)」、アート・ビレッジ・インコーポレイテッド(Art Village Inc.)、2003年、p28−38 タワブ(Tawab)ら、ドラッグ・メタボリズム・アンド・ディスポジション(Drug Metabolism and Disposition)、第31巻、第8号、2003年、p1065−1071 バー(Bae)ら、バイオロジカル・ファーマシューティカル・ブルティン(Biol.Pharm.Bull.)、第28巻、第10号、2005年、p1903−1908 「キャンサー・プリベンション・バイ・ジンセング・バイア・イッツ・インテスティナル・メタボライツ(Cancer Prevention by Ginseng via Its Intestinal Metabolites)」、アート・ビレッジ・インコーポレイテッド(Art Village Inc.)、2003年、p50 イム(Yim)ら、バイオロジカル・ファーマシューティカル・ブルティン(Biol.Pharm.Bull.)、第27巻、第10号、2004年、p1580−1583 ケイ.リンドル(K.Lindle)ら、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal)、第313号、1996年、p.253 ヴィ.バターウェック(V.Butterweck)ら、プランタ・メディカ(Planta Medica)、第66号、2000年、p3−6
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、十分な抗不安作用および/または抗うつ作用を有する抗不安抗うつ剤、および該抗不安抗うつ剤を含有する飲食物を提供することにある。
すなわち、本発明の抗不安抗うつ剤は、醗酵人参エキスおよび/または該醗酵人参エキスから得られる成分を有効成分として含有する。
好ましい実施形態においては、上記人参が、ウコギ科薬用人参である。
好ましい実施形態においては、上記ウコギ科薬用人参が、オタネ人参(高麗人参;Korean ginseng:Panax C.A.Meyer)、三七ニンジン(Panax notoginseng Burk.)、アメリカニンジン(Panax quinquefolium L.)、竹節ニンジン(Panax japonicus C.A.Meyer)、ヒマラヤニンジン(Panax Pseudo−ginseng Qall.Subsp.Himalaicus Hara)、およびベトナムニンジン(Panax Vuetnamensis Ha etGrushy)からなる群より選択される少なくとも1種のウコギ科薬用人参である。
好ましい実施形態においては、上記醗酵人参が、β−グルコシダーゼ、α−アラビノシダーゼおよびα−ラムノシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素を生産する微生物を用いて醗酵された人参である。
好ましい実施形態においては、上記微生物が、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP−10123)である。
好ましい実施形態においては、上記醗酵人参エキスが、20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイド(M1)と20(S)−プロトパナキサトリオール(M4)とを1以上の含有量比[M1/M4:重量比]で含む。
本発明の別の局面によれば、20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイドを含む抗不安抗うつ用組成物が提供される。該20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイドは、上記醗酵人参エキスから得られる成分である。
好ましい実施形態においては、上記抗不安抗うつ剤は、医薬組成物、食品組成物または飼料組成物である。
本発明の別の局面によれば、飲食物が提供される。該飲食物は、上記抗不安抗うつ剤を含有し、抗不安抗うつ作用を有することを特徴とし、不安症もしくはうつ症の予防または治療のために用いられる旨の表示が付されている。
本発明の抗不安抗うつ剤によれば、醗酵により抗不安抗うつ作用の発揮に関与する成分がバランスよく生成された醗酵人参エキスを含有するので、十分な抗不安抗うつ作用が発揮され得る。このような抗不安抗うつ剤によれば、腸内細菌による分解を経ることなく上記成分が腸管吸収され得、腸内細菌叢の影響が低減され得るので、十分かつ安定な抗不安抗うつ作用を得ることができる。さらに、本発明の抗不安抗うつ剤は、その有効成分が天然物に由来するものであるため、安全性に優れるという効果を奏し得る。また、本発明の抗不安抗うつ剤は、覚醒量および/または覚醒期における活動量に影響を与えることなく抗不安抗うつ作用を発揮し得る。
図1は、本発明の1つの実施形態による抗不安抗うつ剤を摂取させたマウス(F)、非醗酵オタネ人参エキスを摂取させたマウス(nF)、および従来の飼料のみを摂取させたマウス(コントロール)に対する明暗試験の結果を示すグラフである。(a)は、マウスが最初に明領域に入るまでの時間を表すグラフである。(b)は、マウスが明領域で滞在する時間の割合を表すグラフである。(c)は、マウスが明領域に入った回数を表すグラフである。各データは、8個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図2は、本発明の1つの実施の形態による抗不安抗うつ剤を摂取させたマウス(F)、非醗酵オタネ人参エキスを摂取させたマウス(nF)、および従来の飼料のみを摂取させたマウス(コントロール)に対する高架式十字迷路試験の結果を示すグラフである。(a)は、フィールドに配置されたマウスの全移動距離(cm)を表すグラフである。(b)は、マウスの全移動距離に対するオープンアームエリア内での移動距離の割合(%)を表すグラフである。(c)は、マウスのオープンアームエリア内での滞在時間の割合(%)を表すグラフである。(d)は、マウスがオープンアームエリア内に入った回数を表すグラフである。各データは、8個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図3は、本発明の1つの実施の形態による抗不安抗うつ剤を摂取させたマウス(F)、および従来の飼料のみを摂取させたマウス(コントロール:C)に対する24時間睡眠記録の結果を示すグラフである。(a)は、覚醒時間の割合を表すグラフである。(b)は、ノンレム睡眠時間の割合を表すグラフである。(c)は、レム睡眠時間の割合を表すグラフである。各データは、3個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図4は、本発明の1つの実施の形態による抗不安抗うつ剤を摂取させたマウス(F)、および従来の飼料のみを摂取させたマウス(コントロール:C)に対する活動量測定の結果を示すグラフである。(a)は、24時間記録による自発活動の回数を表すグラフである。(b)は、明期における自発活動の回数を表すグラフである。(c)は、暗期における自発活動の回数を表すグラフである。各データは、2個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図5(a)は、本発明の1つの実施の形態による抗不安抗うつ剤を摂取させたラット(F)、イミプラミンを摂取させたラット、および従来の飼料のみを摂取させたラット(コントロール:C)に対する強制水泳試験の結果を示すグラフである。図5(b)は、非醗酵オタネ人参エキスを摂取させたラット(nF)、イミプラミンを摂取させたラット、および従来の飼料のみを摂取させたラット(コントロール:C)に対する強制水泳試験の結果を示すグラフである。各データは、7個体のラットの平均±標準誤差を示す。 図6は、M1を100mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1)、M1を50mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1h)、ジアゼパムを2mg/kg体重/日で摂取させたマウス(D)、およびコントロール(V)に対するelevated−plus mazeの結果を示すグラフである。(a)は、装置に配置されたマウスの全移動距離(total distance)(cm)を表すグラフである。(b)は、マウスの全移動距離に対するオープン・アーム内での移動距離の割合(percent distance)(%)を表すグラフである。(c)は、マウスの全時間に対するオープン・アーム内での滞在時間の割合(percent time)(%)を表すグラフである。各データは、6個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図7は、M1を100mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1)、M1を50mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1h)、およびコントロール(V)に対するmarble burying testにおいて、床敷により3分の1以上隠されたガラスビーズの数を示すグラフである。各データは、6個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図8は、M1を100mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1)、M1を50mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1h)、ジアゼパムを2mg/kg体重/日で摂取させたマウス(D)、およびコントロール(V)に対するlight−dark testの結果を示すグラフである。(a)は、マウスが最初に明領域に入るまでの時間(first enter time)(秒)を表すグラフである。(b)は、マウスが明領域で滞在する時間の割合(percent time)(%)を表すグラフである。(c)は、マウスが二つの領域を行き来した回数(number of transitions)を表すグラフである。各データは、9個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図9は、M1を100mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1)、M1を50mg/kg体重/日で摂取させたマウス(M1h)、ジアゼパムを2mg/kg体重/日で摂取させたマウス(D)、およびコントロール(V)に対するopen field testの結果を示すグラフである。(a)は、マウスの全移動距離(total distance)(cm)を表すグラフである。(b)は、底面の中心円内部分(底面積の30%)を移動した距離の全移動距離に対する割合(percent distance)(%)を表すグラフである。(c)は、該中心円内部分での滞在時間の割合(percent time)(%)を表すグラフである。各データは、6個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図10は、M1を摂取させたマウス(M1)、およびコントロール(V)に対する24時間睡眠記録の一部を示すグラフである。(a)は、覚醒時間を表すグラフである。(b)は、ノンレム睡眠時間を表すグラフである。(c)は、レム睡眠時間を表すグラフである。各データは、6個体のマウスの平均±標準誤差を示す。 図11は、M1を摂取させたマウス、イミプラミンを摂取させたマウス、コントロールに対する強制水泳試験におけるマウスの無働時間を示すグラフである。各データは、8個体のマウスの平均±標準誤差を示す。
1.用語の説明
本明細書中に用いられる用語「不安」とは、明らかに認識し得る刺激に結び付かないにも関わらず、不穏、緊張、頻脈、呼吸困難を伴って、危険や恐怖を感じることを意味する。また、本明細書中に用いられる用語「抗不安」とは、上記「不安」に対する防止、制限、解消または改善を包含する意味である。「抗不安」の具体的な例としては、当該「不安」が直接的に奏する各種の疾患・疾病の予防作用または治療作用が挙げられる。
本明細書中に用いられる用語「うつ」および「うつ症」とは、上記「不安」に起因して生じるとされる、悲しみ、孤独、絶望、低い自己評価、自責感を特徴とする一時的または慢性的な精神障害を意味する。また、本明細書中に用いられる用語「抗うつ」とは、上記「うつ」または「うつ症」に対する防止、制限、解消または改善を包含する意味である。「抗うつ」の具体的な例としては、当該「うつ」または「うつ症」が直接的に奏する各種の疾患・疾病の予防作用または治療作用が挙げられる。
本明細書中に用いられる用語「抗不安抗うつ」とは、上記「抗不安」および/または「抗うつ」を意味する。
本明細書中に用いられる用語「エキス」とは、液体、粉末体、ペーストおよびこれらの組合わせでなる形態を包含する、混合物でなる広義の抽出物をいい、必ずしも抽出液に限定されない。したがって、「醗酵人参エキス」は、例えば、人参を醗酵させた際の醗酵物(培養液)そのものであってもよく、醗酵物を乾燥させたものであってもよく、醗酵物をカラムクロマトグラフィーなどで分画精製し、目的とする成分(例えば、人参サポニン成分)を濃縮したものであってもよい。
2.醗酵人参エキスを有効成分として含有する抗不安抗うつ剤
本発明の1つの実施形態による抗不安抗うつ剤は、醗酵人参エキスを有効成分として含有する(以下、抗不安抗うつ剤1ともいう)。
上記人参としては、任意の適切な人参が用いられ得る。人参は、好ましくはウコギ科薬用人参であり、より好ましくはそのアグリコンがプロトパナキサジオールである人参サポニン(例えば、Rb1、Rb2、Rc、Rdなどのプロトパナキサジオール系人参サポニン;以下、「人参サポニン」を「ジンセノサイド」と称することがある)を豊富に含有するウコギ科薬用人参である。プロトパナキサジオール系ジンセノサイドは、後述の醗酵によって分解されて、以下の式(I)で表される20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイド(以下、「M1」と称することがある)となり、本発明の抗不安抗うつ剤の作用機序において、重要な役割を果たすと考えられるからである。M1は、腸内細菌による分解を経ることなく腸管吸収され得るので、抗不安抗うつ作用に対する腸内細菌叢の影響が低減され得る。なお、本発明の抗不安抗うつ剤の作用機序は明らかではないが、M1と醗酵人参エキス中に含有される他の種々の成分との複合的な効果より、その作用が発揮されると推測される。したがって、本発明の醗酵人参エキスを含む抗不安抗うつ剤によれば、M1のみを用いた場合よりも効率的に抗不安抗うつ作用が発揮され得る。
このようなウコギ科薬用人参の例としては、オタネ人参(高麗人参;Korean ginseng:Panax C.A.Meyer)、三七ニンジン(Panax Pseudo−ginseng Wall)、アメリカニンジン(Panax quinquefolium L.)、竹節ニンジン(Panax japonicus C.A.Meyer)、ヒマラヤニンジン(Panax Pseudo−ginseng Qall.Subsp.Himalaicus Hara)、ベトナムニンジン(Panax Vuetnamensis Ha etGrushy)、およびそれらの組合せが挙げられる。本発明においては、入手が容易である点、および、Rb1、Rb2、Rc、Rdなどのプロトパナキサジオール系ジンセノサイドが豊富に含まれている点から、オタネ人参およびアメリカニンジンを用いることが好ましく、オタネ人参を用いることがさらに好ましい。
上記人参の使用部位としては、任意の適切な部位が用いられ得る。例えば、根、茎、葉、花蕾、果実または全草、あるいはそれらの組合せのいずれが用いられてもよい。上記人参としてオタネ人参が用いられる場合、プロトパナキサジオール系ジンセノサイドが他の部位に比べてより豊富に含まれている点から、好ましくは根、より好ましくは側根が用いられ得る。また、アメリカニンジンが用いられる場合、同様の点から、好ましくは根、より好ましくは主根が用いられ得る。
上記人参は、生の状態のものであってもよく、乾燥状態のものであってもよい。乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法を用いることができる。
上記人参を醗酵させることにより醗酵人参エキスが得られる。醗酵人参エキスの製造方法としては、任意の適切な方法が用いられ得る。例えば、醗酵人参エキスは、以下の方法を用いて製造され得る。
醗酵人参エキスの第1の製造方法について以下に説明する。該製造方法においては、所定の大きさ(好ましくは平均長径が0.2mm以下)に細かく裁断、粉砕またはペースト状になるまですり潰された乾燥、または、生の人参の所定部位が、所定容量を有する培養槽に適量の醗酵助剤および水と共に仕込まれる。次いで、代表的には、微生物の仕込み前に加熱滅菌処理されて、醗酵前の仕込み液が得られる。次いで、当該培養槽に、微生物が仕込まれ、醗酵が行われる。なお、上記加熱滅菌処理により、人参サポニンが仕込み液中へ効率良く溶出する。
上記醗酵前の仕込み液に用いられる水としては、好ましくは蒸留水、イオン交換水などが挙げられる。上記微生物の醗酵助剤としては、ペプトン、ポリペプトンなどの窒素栄養源、微量生育栄養素を含む酵母エキス、炭酸カルシウムなどのpH緩衝剤、微量必須元素などが挙げられる。1つの好ましい実施形態において、醗酵前の仕込み液は、酵母エキス10g/L、大豆ペプチド5g/L、炭酸カルシウム10g/Lを含有する。醗酵前の仕込み液のpHとしては、好ましくは3〜7、より好ましくは5〜6.5である。
上記醗酵前の仕込み液に用いられる人参の量は、人参の種類、乾燥状態、培養条件などに応じて、当業者によって適宜選択され得る。例えば、人参と醗酵前の仕込み液との割合[人参の乾燥重量(g)/醗酵前の仕込み液量(g)]は、好ましくは1/100〜50/100、より好ましくは5/100〜20/100、さらに好ましくは10/100〜15/100である。
上記微生物としては、サポニン分解能を有するものが好ましい。サポニン分解能を有する微生物は、非醗酵人参中に含まれるプロトパナキサジオール系ジンセノサイドから、醗酵を通じてM1を生成し得るからである。
本発明で好適に用いられる微生物としては、醗酵中における、Rb1、Rb2、Rc、Rdなどのプロトパナキサジオール系ジンセノサイドとの作用効率が高く、かつ、Rg1などのプロトパナキサトリオール系ジンセノサイドとの作用効率が低い微生物が好ましい。このような微生物によれば、醗酵を通じて、M1が効率良く生成され、かつ、20(S)−プロトパナキサトリオール(以下、「M4」と称することがある)の生成が低減される。1つの好ましい実施形態において、醗酵後の仕込み液において、M1の含有量は、重量を基準としてM4の含有量よりも多く、好ましくはM4の含有量の3倍よりも多く、より好ましくはM4の含有量の5倍よりも多い。
上記微生物の例としては、特開2004−049154号公報に記載の微生物、すなわち、β−グルコシダーゼ、α−アラビノシダーゼおよびα−ラムノシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素を生産する微生物であって、好ましくは食品に添加することができる微生物が挙げられる。より具体的には、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・マリ(L.mali)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)などのラクトバチルス属細菌;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptcoccus thermophilus)などのストレプトコッカス属細菌;ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)などのラクトコッカス属細菌;ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)などのビフィドバクテリウム属細菌;バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などのバチルス属細菌;サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyses cerevisiae)、トルラスポラ・デルブルエッキー(Torulaspora delbrueckii)、キャンジダ・ケフィアなどのサッカロマイセス属酵母;トルラスポラ属酵母;キャンジダ属酵母などが挙げられる。なかでも、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属に属する乳酸菌、ビフィドバクテリウム属細菌、サッカロマイセス属酵母がサポニン分解物の生成量、生成比、醗酵人参の風味などの点から好ましい。
より具体的な例としては、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP−10123)、ラクトバチルス・ガセリDSM20243株、ラクトバチルス・プランタラムATCC14947株およびATCC10241株、ラクトバチルス・ブヒネリATCC4005株、ラクトバチルス・カゼイATCC393株、ラクトバチルス・マリATCC27304株、ラクトバチルス・ガリナラムJCM2011株、ラクトバチルス・アミロボラスJCM1126株、ラクトバチルス・ブレビスATCC14869株、ラクトバチルス・ラムノーザスATCC7469株およびATCC53103株、ラクトバチルス・ケフィアNRIC1693株、ラクトバチルス・パラカゼイNCDO−151株、ラクトコッカス・ラクチスATCC15577株、ビフィドバクテリウム・ビフィダムJCM7002株、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティスATCC15703株、サッカロマイセス・セレビシエIFO−0309株およびIFO−2018株が挙げられる。上記微生物は単独で使用してもよく、あるいは醗酵効率を高める目的で組合わせて使用してもよい。
上記微生物のなかでも、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP−10123)が特に好ましい。該菌株によれば、抗不安抗うつ作用の発揮に関与する成分(M1を含む種々の成分)をバランスよく生成するので、抗不安抗うつ作用の高い醗酵人参エキスを生成し得る。さらに、漬物などの一般食品から分離された微生物であることから、安全性が高いという利点を有する。上記ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP−10123)は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:郵便番号305−8566 日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成15年(2003年)8月11日(受託日)に、受託番号FERM BP−10123として寄託されている。
醗酵は、上記の適切な仕込み液の存在下、培養槽内を、好ましくは25℃〜37℃、より好ましくは28℃〜33℃の温度範囲に設定して行われる。醗酵時間は、仕込み液の組成、植菌量、醗酵温度などに応じて適切に設定され得る。醗酵時間は、好ましくは2日〜21日、より好ましくは7日〜14日である。代表的には、加熱滅菌により、醗酵を終了させる。この場合、加熱によりM1などの人参サポニン代謝物が分解するのを防ぐために、醗酵後の仕込み液のpHを5以上にすることが好ましい。この醗酵によって、上記人参中に含まれるジンセノサイドのうち、Rb1、Rb2、Rc、Rdなどのプロトパナキサジオール系ジンセノサイドが上記微生物による作用を受けて、M1が効率的に生成され得る。なお、醗酵方法の具体的な手順などは、例えば、特許3678362号公報に記載されており、当業者に公知である。該醗酵の結果、本発明に用いられる醗酵人参エキスが得られる。
醗酵人参エキスの第2の製造方法について以下に説明する。該製造方法においては、所定の大きさ(好ましくは平均長径が0.2mm以下)に細かく裁断、粉砕またはペースト状になるまですり潰された乾燥、または、生の人参の所定部位が、抽出溶媒中に浸漬され、抽出が行われる。これにより、ジンセノサイドを含む溶解画分が得られる。得られた溶解画分と醗酵助剤とが混合され、次いで、該混合物に微生物が仕込まれることにより、醗酵が行われる。
上記抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、水、炭素数1〜4のアルコール、またはそれらの混合物(含水アルコール)がより好ましい。炭素数1〜4のアルコールの具体的な例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、およびそれらの組合わせが挙げられる。なかでも、エタノールが好ましい。生体に対する安全性が高いからである。
上記抽出溶媒の使用量は、使用する人参の部位、使用量または抽出温度などの各種条件に応じて、適切に設定され得る。人参100重量部(乾燥重量)に対して、通常、300〜3000重量部、好ましくは800〜1500重量部の抽出溶媒が用いられ得る。
上記人参の浸漬時間および温度もまた、各種条件に応じて、適切に設定され得る。温度は、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは50℃〜121℃である。該好適温度での浸漬時間としては、好ましくは0.1〜72時間、より好ましくは0.3〜1時間である。
上記抽出により、ジンセノサイドは抽出溶媒中に可溶化し、溶解画分に分配される。すなわち、該溶解画分は、ジンセノサイド可溶化抽出物である。該溶解画分は、濾過などの手段を用いることにより、食物繊維などの人参由来不溶成分と分離された状態で得ることができる。また、必要に応じて、減圧留去などの当業者に周知の手段を用いて、該溶解画分から炭素数1〜4のアルコールを除去してもよい。これらのアルコールは、微生物醗酵を抑制および/または阻害する可能性があるからである。さらに、カラムクロマトグラフィーなどにより該溶解画分の精製を行って、ジンセノサイドを高濃度に含む水性画分としてもよい。また、該溶解画分を乾燥させて粉末化してもよい。
上記のようにして得られたジンセノサイド可溶化抽出物(溶解画分)そのもの、または、該抽出物を水により溶解および/または適当量に希釈した希釈物と、微生物の醗酵助剤とを混合する。得られた混合物を、高圧蒸気滅菌、ろ過滅菌などの任意の適当な方法で混在する雑菌を除菌することにより、上記醗酵に供される前の、いわゆる非醗酵の人参エキスを得ることができる。微生物の醗酵助剤としては、上記第1の製造方法で記載したものが挙げられる。
上記のようにして得られた非醗酵の人参エキスに微生物を接種し、醗酵させることにより、本発明に用いられる醗酵人参エキスが得られる。微生物、醗酵条件および醗酵方法としては、上記第1の製造方法で記載したものが挙げられる。
上記第1および第2の製造方法によって得られる醗酵人参エキスは、そのまま用いられてもよく、ろ過など適切な方法で不溶性成分が除去されてもよく、さらには、必要に応じて濃縮、精製などの操作が行われてもよい。また、上記醗酵人参エキスは、スプレードライや凍結乾燥などの当業者に周知の手段により水分が除去され、固形物または粉末として用いられてもよい。
上記醗酵人参エキスは、他の成分と比べてM1を豊富に含有することが好ましい。該醗酵人参エキスにおいては、上記微生物の作用によって、Rg1、Reなどのプロトパナキサトリオール系ジンセノサイドに由来するM4の生成量よりも、Rb1、Rb2、Rc、Rdなどのプロトパナキサジオール系ジンセノサイドに由来するM1の生成量が高くなっていることが好ましい。より具体的には、得られた醗酵人参エキス中におけるM1およびM4の含有量比[M1/M4:重量比]は、好ましくは1以上である。例えば、得られた醗酵人参エキス中におけるM1の含有量は、重量を基準としてM4の含有量よりも多く、好ましくはM4の含有量の3倍よりも多く、より好ましくはM4の含有量の5倍よりも多い。該好適比または相対含有量でM1およびM4を含有することにより、抗不安抗うつ作用が好適に発揮され得る。醗酵人参エキス中のM1およびM4の含有量およびその比は、当業者に公知の手段(例えば、液体クロマトグラフィー)を用いて容易に把握され得る。
本発明の抗不安抗うつ剤1では、上記醗酵人参エキスを有効成分として含有する。抗不安抗うつ剤1中における醗酵人参エキスの含有量としては、醗酵人参エキスの性状(醗酵液、濃縮物、乾燥物など)、用途などに応じて適切に設定され得る。該含有量は、抗不安抗うつ剤中、好ましくは0.1〜100重量%、より好ましくは0.5〜100重量%、さらに好ましくは2〜100重量%である。また、醗酵人参エキスを有効成分として含む抗不安抗うつ剤中におけるM1の含有量は、好ましくは0.1重量%以上である。
上記抗不安抗うつ剤は、上記醗酵人参エキスと同様の方法で醗酵させたアマチャヅルエキスをさらに含有してもよい。
本発明に用いられ得るアマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum Makino)は、従来より、オタネ人参などと同様のサポニンを豊富に含有するウリ科の多年生植物として知られている。アマチャヅルの使用部位としては、任意の適切な部位が用いられ得る。例えば、根、茎、葉または全草、あるいはそれらの組合せのいずれが使用されてもよい。本発明においては、M1を豊富に含んでいる点から、茎および/または葉を用いることが好ましい。上記アマチャヅルは、生の状態のものであってもよく、乾燥状態のものであってもよい。乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法を用いること
ができる。
上記抗不安抗うつ剤1は、上記醗酵人参エキスが有する抗不安作用および/または抗うつ作用を妨げない範囲において、任意の適切な添加物を含有し得る。該添加物としては、例えば、水;アルコール;食肉加工品;米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、スイートポテト、大豆、コンブ、ワカメ、テングサなどの一般食品材料およびそれらの粉末;デンプン、水飴、乳糖、グルコース、果糖、スクロース、マンニトール、ラクトース、デキストリン、コーンスターチ、ソルビトール、結晶性セルロースなどの糖類;香辛料、甘味料、食用油、ビタミン類などの一般的な食品添加物;注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油などの希釈剤;界面活性剤;賦形剤;着色料;保存料;コーティング助剤;ポリビニルピロリドン;油分;保湿剤;増粘剤;防腐剤;香料;殺菌剤;安定剤ならびにこれらの組合せが挙げられる。上記抗不安抗うつ剤は、必要に応じて、他の薬剤(漢方薬を包含する)をさらに含有していてもよい。このような添加物および/または他の薬剤の含有量は、上記醗酵人参エキスが有する抗不安作用および/または抗うつ作用を妨げない範囲であればよい。
上記抗不安抗うつ剤1の製造方法としては、任意の適切な製造方法が採用され得る。例えば、上記醗酵法により得られる醗酵人参エキスと任意の適切な添加物とを適宜添加かつ混合することにより製造することができる。
上記抗不安抗うつ剤1の用量は、摂取者の状況(不安症および/またはうつ症の程度、性別、年齢など)に応じて、適切に設定され得る。経口摂取する場合の用量としては、成人1日当たり、醗酵人参エキスの摂取量(乾燥重量)換算で、好ましくは1mg〜200mg/kg体重、より好ましくは3mg〜100mg/kg体重、さらに好ましくは6mg〜50mg/kg体重である。また、非経口摂取する場合の用量としては、成人1日当たり、醗酵人参エキスの摂取量換算で、好ましくは0.01mg〜20mg/kg体重、より好ましくは0.3mg〜10mg/kg体重、さらに好ましくは0.6mg〜5mg/kg体重である。上記抗不安抗うつ剤は、1回で摂取されてもよく、複数回に分けて摂取されてもよい。
3.醗酵人参エキスから得られる成分を含む抗不安抗うつ剤
本発明の別の実施形態による抗不安抗うつ剤は、前記醗酵人参エキスから得られる成分を含み、好ましくは前記醗酵人参エキスから得られる成分である20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイド(M1)を含む(以下、抗不安抗うつ剤2ともいう)。1つの実施形態においては、抗不安抗うつ剤2は実質的にM1からなる。
上記醗酵人参エキスから得られるM1は、腸内細菌による分解を経ることなく腸管吸収され得るので、抗不安抗うつ作用に対する腸内細菌叢の影響が低減され得る。前記醗酵人参エキスから得られたM1を用いた場合であっても、十分な抗不安抗うつ作用を安定的に発揮し得る。また、本発明の抗不安抗うつ剤は、覚醒量および/または覚醒期における活動量に影響を与えることなく抗不安抗うつ作用を発揮し得る。
上記20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイド(M1)は、上記醗酵人参エキスを精製することにより得られる。
精製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、上記醗酵エキスをフィルターなどでろ過し、得られたろ液を液体クロマトグラフィーなどに供することにより、精製が行われ得る。
また、M1は、上記の人参エキスを醗酵させることによって得る方法以外にも、例えば、化学的加水分解法や酵素法によってM1を製造し、必要に応じて精製することでも得ることができる。M1は、例えば、プロトパナキサジオール系サポニンから所定の糖鎖を分離することにより得られ得る。
上記化学的加水分解法および酵素法による例としては、チョウ,ダブリュ.(Zhou、W.)ら、ジャーナル・オブ・エイジアン・ナチュラル・プロダクツ・リサーチ(Journal of Asian Natural Products Research),2006年,8(6),p519−527;中国特許出願公開第1594341号明細書;韓国特許公開第2003043168号明細書;ジャン,ビー.(Jiang,B.)ら、ツォンカオヤオ(Zhoncaoyao),2004年,35(9),p986−988;国際公開第2003/040383号パンフレット;またはキム,ビー.(Kim,B.)ら、バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン(Biological and Pharmaceutical Bulletin),2006年,29(12),p.2472−2478;に記載の方法が挙げられる。
また、上記の人参以外にも、例えば、アマチャヅルを醗酵原料として用いて、醗酵させることにより、M1を得ることができる。アマチャヅルを醗酵原料として用いた場合も、上記の人参を醗酵原料とした場合と同様の方法によって、M1を得ることができる。
上記の醗酵人参エキス以外の方法で得られたM1は、醗酵人参エキスから得られたM1と組み合わせて抗不安抗うつ剤に用いることができる。
上記抗不安抗うつ剤2におけるM1の含有量は、好ましくは、下限が0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上または10重量%以上のいずれかであり、かつ、上限が100重量%未満、95重量%以下、80重量%以下、または60重量%以下のいずれかである。
本発明の抗不安抗うつ剤2は、M1が有する抗不安作用および/または抗うつ作用を妨げない範囲において、任意の適切な添加物を含有し得る。該添加物としては、上記の抗不安抗うつ剤1で例示したものが挙げられる。
上記抗不安抗うつ剤2の製造方法としては、任意の適切な製造方法が採用され得る。例えば、M1を単離し、必要に応じてさらに精製し、任意の適切な添加物を適宜添加かつ混合することにより製造することができる。
上記抗不安抗うつ剤2の用量は、摂取者の状況(不安症および/またはうつ症の程度、性別、年齢など)に応じて、適切に設定され得る。経口摂取する場合の用量としては、成人1日当たり、M1の摂取量換算で、好ましくは1〜500mg/kg体重、より好ましくは10〜300mg/kg体重、さらに好ましくは50〜200mg/kg体重である。また、非経口摂取する場合の用量としては、成人1日当たり、好ましくは0.1〜100mg/kg体重、より好ましくは0.5〜50mg/kg体重、さらに好ましくは1〜20mg/kg体重である。上記抗不安抗うつ剤は、1回で摂取されてもよく、複数回に分けて摂取されてもよい。
4.抗不安抗うつ剤の用途
上記抗不安抗うつ剤は、例えば、医薬組成物、食品組成物または飼料組成物として用いられ得る。例えば、医薬品、医薬部外品などの医薬組成物として、そのまま、または他の医薬組成物と組み合わせて用いられてもよく;一般の食品、健康食品(機能性食品)などの食品組成物として、そのまま、または他の食品と組み合わせて用いられてもよく;家畜または養殖魚などの生産分野に利用される飼料組成物として、そのままあるいは他の飼料用材料と組み合わせて用いられてもよい。
上記抗不安抗うつ剤が医薬組成物として使用される場合、経口組成物または非経口組成物のいずれの形態で使用されてもよい。また、その投与剤形としては、日本薬局方に記載の方法にしたがって、任意の適切な剤形に加工され得る。投与剤形のより具体的な例としては、経口投与を目的とする医薬組成物の場合、カプセル剤、錠剤、粉剤、顆粒剤、細粒剤、徐放剤などの剤形が挙げられる。非経口投与を目的とする医薬組成物の場合、静脈注射、皮下注射または筋肉注射を目的とした注射剤、輸液剤、軟膏などの塗布剤、直腸内投与のための坐剤などの剤形が挙げられる。該医薬組成物は、当業者に公知の方法によって目的の形態に加工され得る。
上記抗不安抗うつ剤が、食品組成物として使用される場合、その形態は、固形食品に限定されず、飲料(例えば、液体飲料)のようなものも包含される。具体的には、食品組成物は、液状、ペースト状、固形状などの形態であり得る。食品組成物の具体例としては、茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、乳飲料、菓子類、シロップ類、果実加工品、野菜加工品、漬物類、畜肉製品、魚肉製品、珍味類、缶・ビン詰類、即席飲食物、内服液、肝油ドロップ、口中清涼剤、ゼリーなどが挙げられる。食品組成物である抗不安抗うつ剤中における醗酵人参エキスの含有量は、好ましくは0.1〜100重量%、より好ましくは0.5〜99.5重量%、さらに好ましくは2〜99重量%である。また、食品組成物である抗不安抗うつ剤における20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイド(M1)の含有量は、好ましくは、下限が0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上または10重量%以上のいずれかであり、かつ上限が100重量%未満、95重量%以下、80重量%以下、または60重量%以下のいずれかである。該食品組成物は、当業者に公知の手法によって製造され得る。
上記抗不安抗うつ剤が、飼料組成物として使用される場合、その形態は、家畜の種類などに応じて、適切に設定され、加工され得る。
5.飲食物
本発明の飲食物は、上記抗不安抗うつ剤を含有し、抗不安抗うつ作用を有する。具体的には、上記抗不安抗うつ剤1を用いる場合には、上記醗酵人参エキスの含有量が、好ましくは0.1〜100重量%、より好ましくは0.5〜99.5重量%、さらに好ましくは2〜99重量%となるように抗不安抗うつ剤を含有する。本発明の飲食物が含有し得る他の成分としては、食品添加物として許容され得るものであればよい。例えば、上記添加物が挙げられる。
本発明の飲食物が、上記抗不安抗うつ剤2を含有する場合には、該飲食物中の20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイド(M1)の含有量は、好ましくは、下限が0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上または10重量%以上のいずれかであり、かつ上限が100重量%未満、95重量%以下、80重量%以下、または60重量%以下のいずれかである。本発明の飲食物が含有し得る他の成分としては、食品添加物として許容され得るものであればよい。例えば、上記添加物が挙げられる。
上記飲食物は、抗不安作用および/または抗うつ作用を有することから、不安症もしくはうつ症の予防または治療のために用いられる旨の表示がなされ得る。このような機能の表示を付した飲食物の例としては、特定保健用食品、特別用途食品が挙げられる。上記飲食物に対する機能の別の表示としては、例えば、精神的不安の予防または改善のために用いられる旨の表示、ストレスの予防または治療のために用いられる旨の表示;心の不安の低減または解消のために用いられる旨の表示;精神的リラックスのために用いられる旨の表示;などが挙げられる。該表示は、使用者にとって上記のような機能が実質的に理解され得る様式で表されておればよい。例えば、当該飲食物の外装または内装パッケージ、商品カタログ、ポスターなどに対して表示が行われ得る。
本発明の抗不安抗うつ剤においては、醗酵人参エキスから得られるM1またはM1と醗酵人参エキスに含まれるその他の種々の成分が相俟って複合的に作用することにより、不安症および/またはうつ症の優れた予防作用または治療作用が発揮され得る。したがって、本発明の抗不安抗うつ剤および飲食物は、例えば、不安症および/またはうつ症に起因する精神障害、気分障害、人格障害、行動障害、睡眠障害などの予防または治療に好適に利用され得る。
以下、本発明を実施例によって具体的に記述する。しかし、これらによって本発明は制限されるものではない。
<調製例1:醗酵オタネ人参エキスの製造>
ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(FERM BP−10123)を前培養培地(組成:グルコース30g/L、酵母エキス10g/L、大豆ペプチド5g/L、KHPO 2g/L、MgSO・7HO 0.5g/L)20mLに1白金耳植菌し、28℃にて48時間静置培養した。
上記培養後の培養液2mLを、新たな前培養培地120mLに植菌し、28℃にて48時間静置培養した。
上記培養後の培養液20mlを、高圧蒸気滅菌(121℃、20分間)した仕込み液(オタネ人参(側根)粉末130g/L、酵母エキス10g/L、大豆ペプチド5g/L、炭酸カルシウム10g/L)1Lに植菌し、28℃で10日間醗酵した。得られた培養液を、水酸化ナトリウムでpH5.0に調整し、次いで、噴霧乾燥することにより、醗酵オタネ人参エキス145gを得た。
得られた醗酵オタネ人参エキス中におけるM1およびM4の含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。上記醗酵オタネ人参エキス 1gを、試験サンプルとして精密に量り取った。該試験サンプルを下記のHPLC移動相20mlを加えて超音波槽で5分間懸濁した後、同HPLC移動相で50mLにメスアップした。得られた懸濁液 約0.5mlをフィルター(DISMIC 13−HP、ADVANTEC社製、孔径:0.45μM)で濾過することにより、試料液を得た。該試料液を下記条件にて分析した結果、上記醗酵オタネ人参エキス中におけるM1の含有量は0.9重量%であり、M4の含有量は0.1重量%であった。
[HPLC条件]
装置:(株)島津製作所製、商品名「紫外吸光光度計(SPD−M10Avp)」
測定波長:203nm
カラム:(株)ワイエムシー製、商品名「YMC−Pack R−ODS−5A(5μM,C18,120A)」(φ4.6×250mm)
移動相:60%(v/v)アセトニトリル溶液
(水:ミリQ水、アセトニトリル:関東化学製)
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
注入量:10μl
<比較調製例1:非醗酵オタネ人参エキスの製法>
調製例1において、ラクトバチルス・カゼイ・ハセガワ菌株(FREM BP−10123)を植菌しなかったこと以外は、調製例1と同様の操作を行うことにより、当該菌株による醗酵がなされなかった非醗酵オタネ人参エキス150gを得た。
<実施例1:マウスの不安行動に対する効果の検証>
被検体として、8週齢のオスのC57BL/6マウス(体重19g〜24g、日本エスエルシー(株)製)を使用した。マウスを、2匹ずつ飼育ケージ(17×27×13cm)内で自由飲水にて飼育した。マウス搬入後、翌日から8日間、1匹あたり5分間ハンドリングを行った。また、同ケージ内で飼育するマウスの搬入時の体重差を0g〜0.5gとなるように設定した。なお、飼育室の温度を25±1℃に保持し、12時間の明暗サイクルを自動制御した(8時点灯、20時消灯)。
<1−1:試料および摂取方法>
マウスに与える試料として、上記調製例1で得られた醗酵オタネ人参エキス、比較調製例1で得られた非醗酵オタネ人参エキス、およびコントロールとしてのマウス飼育用標準粉末飼料(オリエンタル酵母工業(株)製 商品名「MF」)を用いた。醗酵オタネ人参エキスおよび非醗酵オタネ人参エキスについては、摂食予備試験に基づいて50mg/kg体重/日となるように、上記MFと混合することにより濃度調製を行った。全ての試料を、マウス搬入直後から全測定終了まで、自由摂食させた。ただし、摂食量の計量に伴い、粉末給餌器の外側にプラスチック製カバー(オリエンタル酵母工業(株)製 Roden CAFE)を取り付けておき、マウスにはこのカバーの穴から摂食させた。なお、飼料(試料)の種類に応じて、マウスを8匹ずつ3群に分けた。
<1−2:行動実験>
不安の評価として、以下の(1)明暗試験(light−dark test)および(2)高架式十字迷路試験(elevated plus−maze test)を採用した。マウス搬入11日後から、(1)および(2)の試験を、この順に1日おきに行い、それぞれ13時〜18時の時間帯に実施した。なお、体重測定は、搬入日、搬入4日後、行動実験開始日および最終日に行った。摂食量の計量は2日おきに行った。
<1−2−1:明暗試験>
本評価試験では、23×23×30cmの明領域(light area)と、18×23×30cmの暗領域(dark area)とが隣接する明暗箱で構成される装置であって、当該箱の床から5cmほどの境界を通して、マウスが上記2つの領域を相互に行き来可能となっている構造を有する装置を使用した。両領域とも天井はフタになっており、明領域は透明の壁と白色の床とで構成されている。暗領域は黒色の壁および黒色の床で構成されており、フタを閉じると内部が真っ暗になる構造を有する。本評価試験では、このような装置に、上記マウスを暗領域側から入れ、その後の行動を5分間観察および測定した。具体的には、マウスが最初に明領域に入るまでの時間、マウスが明領域で滞在する時間、およびマウスが明領域に入った回数を測定した。本評価試験は、明るい場所に対するげっ歯類の生得的嫌悪感と、新奇環境に対する探索行動とに基づくものである。本評価試験では、明領域に入るまでの時間が短いほど、また明領域での滞在時間が長いほど、そのマウスの不安が低いと評価することができる。
<1−2−2:高架式十字迷路試験>
本評価試験では、不安を測定するための実験装置である高架式十字迷路を使用した。当該高架式十字迷路は、透明な壁(14cm)を有する2つのクローズド・アーム(closed arms)と、壁のない2つのオープン・アーム(open arms)と、これら4つのアームを接続する中央プラットフォームとから構成されている。床からアームまでの高さは70cm、全長は65cmおよびアーム幅は5cmであった。このような装置に、上記試料をそれぞれ摂取させたマウスを置き、5分間かけて以下の測定および解析を行った。すなわち、当該装置に配置されたマウスの全移動距離、全移動距離に対するオープン・アーム内での移動距離の割合、全時間に対するオープン・アーム内での滞在時間の割合、およびオープン・アームに入った回数を測定し、これら4つの指標を使ってマウスの不安水準を評価した。本評価試験では、全移動距離に対するオープン・アーム内での移動距離の割合が大きいほど、またオープン・アーム内での滞在時間が長いほど、そのマウスの不安が低いと評価することができる。なお、当該測定・解析には、ビデオ画像行動解析装置(PanLab社製 商品名「Smart」)を使用した。
<1−3:睡眠記録>
(1)手術
麻酔薬として、ケタミン(ketamine)(20mg/ml)とキシラジン(xylazine)(5mg/ml)の1:1のカクテルを使用した。該麻酔薬を体重10gあたり0.1mlの割合で、上記試料をそれぞれ摂取させたマウスに腹腔内投与した。次いで、当該マウスの頭部を適度に散髪し、皮膚を円形にカットした後、頭骨に歯科用ドリルで3ヵ所穴を開けた。該3ヵ所の穴のそれぞれにテフロン(登録商標)コートされたステンレスワイヤーに予めはんだ付けしたステンレス製ビス電極を取り付けた。その後、筋電図記録のために、同様のワイヤーをマウスの両側の肩筋に取り付けた。計5本のワイヤーをはんだでソケットに接合した後、ワイヤーを覆うように、歯科技工用即時重合レジンで頭骨とともに固定した。術後は1週間の回復期間をおいた。
(2)24時間睡眠記録
記録開始3日前に、上記手術を施したマウスを記録用ケージ(30×30×35cm)に移し、生体アンプ(日本光電工業(株)製 RM−6100)にケーブルで接続し、慣れさせた。記録当日は、明暗サイクルに合わせ、8時から24時間、当該マウスの脳波と筋電図とを記録した。サンプリングしたデータを、CED社製CED1401 DATAプロセッサにてA/D変換し、これを生体信号記録・解析システム(CED社製 商品名「Spike2」)によって記録・解析した。なお、記録は、コントロール群と醗酵オタネ人参エキス群について、各群3匹ずつ行った。一度の記録に各群1匹ずつの計2匹を同時に記録した。
(3)解析
記録終了後、6秒ごとに、覚醒、ノンレム睡眠(徐波睡眠)およびレム睡眠(逆説睡眠)の3つのステージにデータを視察判定した。
<1−4:活動量測定>
飼育ケージ(15×22×12cm)に、上記試料をそれぞれ摂取させたマウスを1匹ずつ入れ、自発運動量測定装置(バイオリサーチセンター(株)製 商品名「ACTIMO」)によって、活動量の24時間測定を行った。記録・解析は、上記睡眠記録と同様に、生体信号記録・解析システム(CED社製 商品名「Spike2」)によって行った。なお、測定中は自由飲水・摂食(各試料)させた。測定は、コントロール群と醗酵オタネ人参エキス群について、各群2匹について実施した。
<1−5:統計解析>
上記で得られた結果のそれぞれを、図1〜図4に平均値±標準誤差で示した。有意差検定として、行動実験についてはKruskal−Wallis検定を行い、post・hoc検定としてMann−Whitney U検定を行った。睡眠記録についてはMann−Whitney U検定を行った。いずれもp<0.05を有意とした。
<1−6:結果および考察>
実施例1における各行動実験の期間中、各マウスには、3つの群間で体重変化に差異が見出されず、各マウスとも成長は順調であった。摂餌量についても各群間で差異はなく、摂食予備試験と同様の結果であることを確認した。
図1(a)に示すように、明暗試験においては、醗酵オタネ人参エキス群のマウスは、コントロール群のマウスと比較して、最初に明領域に入るまでの時間(秒)が有意に低下した(*p<0.05)。すなわち、醗酵オタネ人参エキス群で抗不安作用が認められた。
図2(b)および(c)に示すように、高架式十字迷路試験においては、醗酵オタネ人参エキス群のオープンアーム内での移動距離と滞在時間が、コントロール群のそれらに対して上昇した。すなわち、醗酵オタネ人参エキス群で抗不安傾向が認められた。一方、総行動量(図2(a)参照)およびその経時変化(データは示さず)については両群の間に差はなかった。上記明暗試験および高架式十字迷路試験の結果は、本発明の抗不安抗うつ剤(醗酵オタネ人参エキス含有試料)の長期摂取が、行動量に影響を与えることなく抗不安作用を発揮し得ることを示唆する。
図3(b)に示すように、睡眠記録においては、明期における醗酵オタネ人参エキス群のノンレム睡眠量がコントロール群に対して有意に増大した。また、図4に示すように、活動量測定においては、特にマウスにおける活動期である暗期において、醗酵オタネ人参エキス群の活動量が多い傾向が認められた。これらの結果は、本発明の抗不安抗うつ剤(醗酵オタネ人参エキス含有試料)の長期摂取が、活動期の行動量を抑制することなく、安静期の睡眠を増加させながら、抗不安作用を発揮し得ることを示唆する。すなわち、本発明の抗不安抗うつ剤は、一般的な抗不安薬のように副作用として鎮静作用を誘発することなく、抗不安作用を発揮し得るという利点を有する。
<実施例2:ラットの実験的うつ状態に対する効果の検証>
被検体として、3週齢の雄のCD(SD)ラット(日本チャールズリバー社)を使用した。ラットは、3匹ずつ飼育ケージ(幅250mm×深さ400mm×高さ200mm)内で自由飲食にて飼育した。飼育室を湿度50−60%、室温24±1℃に保持し、12時間の明暗サイクルを自動制御した(8時30分点灯、20時30分消灯)。ラット搬入後10日間は予備飼育期間とし、その後試料の経口投与を開始した。試料としては、比較調製例1で得た非醗酵オタネ人参エキス、および調製例1で得た醗酵オタネ人参エキスを用いた。いずれの試料も、経口投与当日に目的濃度となるように蒸留水に溶解した。
<2−1:試料の投与方法>
試料の摂取量が0、1、10mg/kg体重/日となるように、蒸留水または蒸留水に溶解した上記試料を、毎日13時から15時の間に2週間経口投与した。また、ポジティブコントロールとして、抗うつ剤(イミプラミン)を15mg/kg体重/日となるよう、上記試料と同様に投与した。なお、試料の種類および摂取量に応じて、ラットを7匹ずつ7群に分けた。
<2−2:ラット強制水泳試験>
ラットを用いた強制水泳試験はPorsoltら(Nature,266,730−732,1977)に従った。以下にその手順を示す。強制水泳試験の24時間前に、ラットに15分間の予備水泳をさせた。その後、強制水泳試験の24、5、1時間前に、それぞれ上記各試料またはイミプラミンを経口投与した。
逃避不可能な水槽(内径192mm×高さ440mm)に17cmの高さまで25±1℃の水を入れ、その中で強制的にラットに水泳をさせた。ラットは最初、激しい水泳行動を示すが、次第に泳ぐことを諦めて泳がなくなる。この強制水泳試験では、水泳開始後5分間内の泳いでいない時間(無働時間)を測定し、該無働時間の短縮を抗うつ作用の指標として、投与した試料の抗うつ作用を評価した。この試験は、14時から16時までの時間帯に実施した。結果を図5に示す。
<2−3:オープンフィールド試験>
強制水泳試験後、さらに1週間上記試料の経口投与を継続し、オープンフィールド試験に供した。オープンフィールド試験では、18個の等面積に区切られた円形フィールド(直径70cm)中央にラットを静かに置いた後5分間内に、ラットが跨いだ線の数、後ろ足で立ち上った回数、および排便数を測定した。これにより、自発活性を調べた。
<2−4:統計解析>
上記で得られた結果を、図5に平均値±標準誤差で示した。有意差検定として、ラット強制水泳実験についてはKruskal−Wallis検定を行い、post・hoc検定としてMann−Whitney U検定を行った。p<0.05を有意とした。
<2−5:結果および考察>
表1に示すように、実施例2における各試験期間中、所定量の非醗酵オタネ人参エキスまたは醗酵オタネ人参エキスを経口投与した各ラットには、2つの群間で体重変化に差異が見出されず、各ラットとも成長は順調であった。摂餌量についても各群間で差異はなく、摂食予備試験と同様の結果であることを確認した。
図5に示すように、抗うつ作用のスクリーニング方法として広く用いられている強制水泳試験においては、醗酵オタネ人参エキス群のラットは、コントロール群のラットと比較して、無働時間が有意に短縮した。また、醗酵オタネ人参エキス群の無働時間は、イミプラミン投与群よりも短いものであった(図5(a))。一方、非醗酵オタネ人参エキス群のラットでは無働時間が短縮しなかった(図5(b))。
上記のような無働時間の短縮作用は、抗うつ作用を有する成分以外に、カフェインなどの自発活性を高める成分によって発揮される場合がある。しかしながら、自発活性の有無を調べるオープンフィールド試験によれば、醗酵オタネ人参エキス群では、いずれの投与量でも自発活性の上昇は見られなかった(表2)。すなわち、醗酵オタネ人参エキス群で測定された無働時間の短縮は、抗うつ作用によるものと考えられる。
<調製例2:M1の調製>
調製例1で得た醗酵オタネ人参エキス25gに50%エタノールを500ml加えて懸濁した後、遠心分離を行って、上清分画を回収した。得られた上清分画を、水で平衡化した分離精製用樹脂カラム(樹脂:三菱化学社製、(登録商標)ダイヤイオンHP20、カラム:φ200mm、高さ75cm)に導入し、カラム容積の3倍量の50%エタノールを流した。次に、カラム容積の3倍量の100%エタノールを流して吸着物を溶出させた。得られた溶出液中の溶媒を減圧留去し、凍結乾燥してM1を含むサポニン粗分画10gを得た。このサポニン粗分画5gをさらに逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メルク社製、シリカゲルRP−8,250g、溶出溶媒:80%メタノール)にて分離精製し、0.5gのM1を得た。得られたM1の純度は、95%以上であった。
<実施例3: 抗不安作用の検証>
被験体として、C57BL/6マウス(雄性、8〜9週齢、体重27±3g、日本エスエルシー(株))を使用した。マウスの飼育は、徳島大学栄養学科棟動物室(室温23±1℃、8時〜20時、20時〜8時の明暗サイクル)で同大学の動物飼育規定に従って行った。飼育の間は、マウス飼育用標準固形飼料(オリエンタル酵母工業(株)製 商品名「MF」)の自由摂食及び自由飲水とした。
<3−1:試料および投与方法>
1回0.2mlの経口投与で所望の摂取量となるように、実験当日に投与試料液を作製し、経口投与した。具体的には、M1の摂取量が50または100mg/kg体重/日となるように、調製例2で得たM1を溶解した5%アラビアゴム水溶液を経口投与した。ポジティブコントロールとして、抗不安薬であるジアゼパム(Diazepam)の摂取量が2mg/kg体重/日となるように、ジアゼパムを溶解した5%アラビアゴム水溶液を経口投与した。さらに、コントロールとして、5%アラビアゴム水溶液を経口投与した。なお、M1の摂取量が100mg/kg体重/日であるものをM1群、50mg/kg体重/日であるものをM1h群、ポジティブコントロールをD群、コントロールをV群とした。
<3−2:行動実験>
elevated−plus maze、marble burying test、light−dark test、およびopen field testを行い、マウスの情動(特に不安)行動を評価した。これらの実験は、概日リズムを考慮して13:00〜18:00の間に行った。
<3−2−1.elavated−plus maze>
十文字型の通路(幅:6cm、全長:65cm)を有する高さ55cmの高架式十字迷路を用いて実験を行った。十文字型の通路のうち、向かい合う一組の通路(close arm)は透明の壁で囲まれており、他方の組の通路(open arm)には壁がない。それぞれの通路が6×6cmのプラットホームでつながって十字型をなしている。上記試料の投与1時間後に、プラットホームの中央にマウスを置き、1匹ずつ10分間かけて以下の測定および解析を行った(M1群、M1h群、D群、V群;n=6)。すなわち、当該装置に配置されたマウスの全移動距離(total distance)、全移動距離に対するオープン・アーム内での移動距離の割合(percent distance)、および、全時間に対するオープン・アーム内での滞在時間の割合(percent time)を測定した。本実験では、全移動距離に対するオープン・アーム内での移動距離の割合が大きいほど、またオープン・アーム内での滞在時間が長いほど、そのマウスの不安が低いと評価することができる。なお、当該測定・解析には、ビデオ画像行動解析装置(PanLab社製 商品名「Smart」)を使用した。
<3−2−2.marble burying test>
横15cm、縦25cmおよび深さ15cmのプラスチックケージに、木製床敷(日本クレア株式会社製)を深さ5cmになるように入れた。上記試料の投与後すぐに、マウスを該ケージの中に入れ、1時間静置した。1時間経過後、該ケージの中に15個のタブレット状ガラスビーズ(直径1.5cm、黒色)を、縦3列×横5列の等間隔に並べた。30分後、マウスをケージから取り出し、床敷により3分の1以上隠れたガラスビーズの数を目視により計測した(M1群、M1h群、V群;n=6)。本実験は、物体に対して恐怖心を持つと、該物体を隠そうとするマウスの性質を利用して、不安の程度を評価するものであり、ガラスビーズを隠した数が多いほど不安が強いとみなすことができる。
<3−2−3.light−dark test>
本評価試験では、23×23×30cmの明領域(light area)と、18×23×30cmの暗領域(dark area)とが隣接する明暗箱で構成される装置であって、当該箱の床から5cmほどの境界を通して、マウスが上記2つの領域を相互に行き来可能となっている構造を有する装置を使用した。両領域とも天井はフタになっており、明領域は透明の壁と白色の床とで構成されている。暗領域は黒色の壁および黒色の床で構成されており、フタを閉じると内部が真っ暗になる構造を有する。上記試料の投与1時間後に、マウスを暗領域に入れ、その後の行動を1匹ずつ5分間観察および測定した(M1群、M1h群、D群、V群;n=9)。具体的には、マウスが最初に明領域に入るまでの時間(first enter time)、マウスが明領域で滞在する時間の割合(percent time)および二つの領域を行き来した回数(number of transitions)を測定した。本実験は、暗所を好むマウスの性質を利用して不安を評価するものであり、明領域に入るまでの時間が短いほど、また、明領域での滞在時間が長いほど不安が小さいと評価することができる。
<3−2−4.open field test>
上記試料の投与1時間後に、直径80cm、深さ50cmのプラスチック製の円筒内中央にマウスを置き、全移動距離(total distance)、底面の中心円内部分(底面積の30%)を移動した距離の全移動距離に対する割合(percent distance)および該中心円内部分での滞在時間の割合(percent time)を10分間計測した(M1群、M1h群、D群、V群;n=6)。本実験は、壁際を好むマウスの性質を利用して不安を評価するものであり、percent distanceおよびpercent timeが大きいほど不安が小さいと評価することができる。なお、当該測定・解析には、ビデオ画像行動解析装置(PanLab社製 商品名「Smart」)を使用した。
<3−3.睡眠測定>
(1)手術
麻酔薬として、ケタミン(ketamine)(20mg/ml)とキシラジン(xylazine)(5mg/ml)の1:1のカクテルを使用した。該麻酔薬を体重10gあたり0.1mlの割合で、マウスに腹腔内投与した。当該マウスの頭骨に歯科用ドリルで穴を開け、極小のステンレス製ネジ電極をとりつけた。さらに筋電図記録のために、テフロン(登録商標)コートされたステンレスのスチールワイヤーを両側の肩筋に取り付け、歯科用アクリルセメントで頭骨とともに固定した。マウス(M1群、V群;n=6)に各群一匹ずつペアで、同日内に手術を行った。術後は、10日間の回復期間をおいた。
(2)24時間睡眠記録
記録開始前日にマウスを記録用ケージ(30×30cm、深さ35cm、室温23±1℃、8時〜20時、20時〜8時の明暗サイクル、飼料および水は自由摂取)に移し、コンピュータのデータ解析システム(CED1401 data processor,Cambridge Electronic Design、CED社製)に、ケーブルでつなぎ、一晩慣らし期間をおいた。翌日8時から24時間、脳波と筋電図のポリグラフをM1群、V群のマウスを1匹ずつペアで記録した。暗期が開始する1時間前の19時にマウスにそれぞれ試料を経口投与した。測定終了後、データをoff−lineのコンピューター上で、5秒ごとに、覚醒、ノンレム睡眠およびレム睡眠の3つのステージに視察判定した。
<3−4:統計解析>
上記実験の結果を図6〜10に平均値±標準誤差(mean±SE)で示した。有意差検定としては、Analysis of Variance(ANOVA)を行い、P<0.05を有意とした。
<3−5:結果および考察>
図6に示すとおり、elevated−plus mazeの結果によれば、percent distanceについて、V群およびM1h群が10%以下であり、M1群およびD群が40%強という有意に高値を示した(p<0.05)。percent timeについても同様に、V群およびM1h群が約10%であり、M1群およびD群が約50%という有意に高値を示した(p<0.05)。このように、M1群およびD群が、percent distanceおよびpercent timeについて有意に高値を示したことから、M1およびジアゼパムが抗不安作用を有することがわかる。
図7に示すとおり、marble burying testの結果では、V群と比較してM1群は、有意に低値を示した(p<0.01)。該実験は、行動量に影響されることなく不安を評価する方法として優れた方法である。上記実験結果から、M1が抗不安作用を有することがわかる。
図8に示すとおり、light−dark testの結果によれば、M1群、M1h群、およびD群は、V群と比較してfirst enter timeが短い傾向にある。また、M1群、M1h群、およびD群は、V群と比較してpercent timeが高値の傾向にある。このことから、M1およびジアゼパムの摂取には抗不安傾向の差が明瞭であることが認められる。
図9に示すとおり、open field testの結果によれば、percent distance、および、percent timeについて、M1群が他の群よりも高値の傾向にある。このことから、M1の摂取には抗不安傾向が認められる。なお、total distanceについては、各群ともほぼ同等であった。
上記elevated−plus mazeにおいて、M1群およびM1h群のtotal distanceが減少していることから、M1の摂取が自発的運動量に影響を及ぼすとも考えられる。あるいは、該実験では、マウスを「高所で壁がない」という特殊な環境に置くため、マウスの行動が全体的に抑制されていることが予想される。しかし、心理的影響の少ないopen field testにおいては、各群間でtotal distanceに差が出ていないことから、M1の摂取は自発的運動量に影響を与えないと判断できる。
図10は、睡眠測定24時間ポリグラフによって得られたデータのうち、明期の12時間目から暗期の6時間目までの各7時間について、覚醒量・ノンレム睡眠量・レム睡眠量の変化をV群とM1群の間で比較した図である。図10に示すとおり、覚醒量、ノンレム睡眠量について、各時間において2群間に有意な差は見られなかった。レム睡眠量について、明期12時間目(経口投与後1時間)でV群と比較してM1群が有意に低下していた(p<0.05)。
上記脳波および筋電図ポリグラフによる睡眠測定から、M1が摂取後1時間でレム睡眠を著しく抑制したことがわかる。具体的には、覚醒量およびノンレム睡眠量については、M1群とV群との間にほとんど差が見られなかったのに対し、M1摂取後1時間でレム睡眠量が著しく減少した。レム睡眠期は最大で10%であるが、短期間で有意差が認められたことは、M1の大きな特徴といえる。
<実施例4:マウスの実験的うつ状態に対する効果の検証>
被検体として、7週齢の雄のC57BL/6Jマウス(日本チャールズリバー社)を使用した。マウスは、5匹ずつ飼育ケージ内で、マウス飼育用標準固形飼料(オリエンタル酵母工業(株)製 商品名「MF」)およびイオン交換水の自由飲食にて飼育した。飼育室は湿度50〜60%、室温23±1℃に保たれており、8時から20時まで点灯した。マウス搬入後7日間を予備飼育期間とし、この間、十分なハンドリング処置を施した。
<4−1:試料の投与方法>
投与量が0、0.3、1mg/kg体重/日となるように、精製水または精製水に溶解した調製例2で得たM1を、腹腔内に単回投与した。また、ポジティブコントロールとして、抗うつ剤(イミプラミン)を30mg/kg体重/日となるよう、上記試料と同様に投与した。投与量は0.5mL/100gとした。なお、試料の種類・摂取量に応じて、マウスを8匹ずつ4群に分けた。
<4−2:マウス強制水泳試験>
マウスを用いた強制水泳試験はPorsoltら(Eur.J.Pharmacol.,47,379−391,1978)に従った。以下にその手順を示す。なお、強制水泳試験は、上記試料またはイミプラミンを投与した1時間後に行った。
逃避不可能な水槽(内径114mm×高さ220mm)に12cmの高さまで25±1℃の水を入れ、その中で強制的にマウスに水泳をさせた。マウスは最初、激しい水泳行動を示すが、次第に泳ぐことを諦めて泳がなくなる。この強制水泳試験では、水泳開始後2分〜6分の計4分間の泳いでいない時間(無働時間)を測定し、該無働時間の短縮を抗うつ作用の指標として、投与した試料の抗うつ作用を評価した。無働時間の解析はImage J(米国 National Institutes of Healthにおいて作成されたフリーウェア;http://rsb.info.nih.gov/ijより入手可能)をもとに作られたImage J PS1 (FZ1) (O’Hara & Co.,Ltd.)を使用して行った。結果を図11に示す。
<4−3:オープンフィールド試験>
Rodriguesらの方法(Rodriguesら、Pharmacol.Toxicol.,79,150−156,1996)を参考にして、オープンフィールド試験を行った。フィールドとしては、縦50cm×横50cmであり、高さ50cmの壁面で囲まれているフィールドを用いた。試験中のフィールド内の照射強度は、50luxに設定した。試料投与の1時間後、マウスをフィールドの右下の角に静置し、10分間にマウスが移動した距離を測定した。解析にはImage Jをもとに作られたImage J OF1 for Open field test (O‘Hara & Co., Ltd.)を使用した。結果を表3に示す。
<4−4:統計解析>
上記実験の結果を図11に平均値±標準誤差(mean±SE)で示した。有意差検定としては、Analysis of Variance(ANOVA)を行い、P<0.05を有意とした。
<4−5:結果および考察>
図11に示すように、強制水泳試験においては、M1を1mg/kg体重/日で投与した群のマウスは、コントロール群(0mg/kg体重/日)のマウスと比較して、無働時間が有意に短縮した。また、表3に示すように、オープンフィールド試験において、M1を1mg/kg体重/日で投与した群では、移動距離の増加が見られなかった。すなわち、この群で測定された無働時間の短縮は、自発活性の上昇によるものではなく、抗うつ作用によるものと考えられる。
本発明の抗不安抗うつ剤は、食品または飲料として用いられ得る人参由来の成分を有効成分とするため、安全性が高い。したがって、日常的な使用が可能であり、食品、医薬品などに適用され得る。

Claims (9)

  1. 醗酵人参エキスおよび/または該醗酵人参エキスから得られる成分を有効成分として含有する、抗不安抗うつ剤。
  2. 前記人参が、ウコギ科薬用人参である、請求項1に記載の抗不安抗うつ剤。
  3. 前記ウコギ科薬用人参が、オタネ人参(高麗人参;Korean ginseng:Panax C.A.Meyer)、三七ニンジン(Panax notoginseng Burk.)、アメリカニンジン(Panax quinquefolium L.)、竹節ニンジン(Panax japonicus C.A.Meyer)、ヒマラヤニンジン(Panax Pseudo−ginseng Qall.Subsp.Himalaicus Hara)、およびベトナムニンジン(Panax Vuetnamensis Ha etGrushy)からなる群より選択される少なくとも1種のウコギ科薬用人参である、請求項2に記載の抗不安抗うつ剤。
  4. 前記醗酵人参が、β−グルコシダーゼ、α−アラビノシダーゼおよびα−ラムノシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素を生産する微生物を用いて醗酵された人参である、請求項1から3いずれか記載の抗不安抗うつ剤。
  5. 前記微生物が、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP−10123)である、請求項4記載の抗不安抗うつ剤。
  6. 前記醗酵人参エキスが、20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイド(M1)と20(S)−プロトパナキサトリオール(M4)とを1以上の含有量比[M1/M4:重量比]で含む、請求項1から5いずれか記載の抗不安抗うつ剤。
  7. 前記醗酵人参エキスから得られた成分が20(S)−プロトパナキサジオール 20−O−β−d−グルコピラノサイドである、請求項1〜6いずれかに記載の抗不安抗うつ剤。
  8. 医薬組成物、食品組成物または飼料組成物である、請求項1から7いずれか記載の抗不安抗うつ剤。
  9. 請求項1から7いずれかに記載の抗不安抗うつ剤を含有し、抗不安抗うつ作用を有することを特徴とする、不安症もしくはうつ症の予防または治療のために用いられる旨の表示を付した飲食物。
JP2009520423A 2007-06-21 2008-06-06 抗不安抗うつ剤 Pending JPWO2008155998A1 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007164034 2007-06-21
JP2007164183 2007-06-21
JP2007164183 2007-06-21
JP2007164034 2007-06-21
PCT/JP2008/060477 WO2008155998A1 (ja) 2007-06-21 2008-06-06 抗不安抗うつ剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2008155998A1 true JPWO2008155998A1 (ja) 2010-08-26

Family

ID=40156157

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009520423A Pending JPWO2008155998A1 (ja) 2007-06-21 2008-06-06 抗不安抗うつ剤

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JPWO2008155998A1 (ja)
WO (1) WO2008155998A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5563285B2 (ja) * 2009-12-14 2014-07-30 ライオン株式会社 飲食品、医薬品、又は医薬部外品、並びに、プロトパナキサトリオールの安定化方法、及びプロトパナキサジオールの安定化方法
CN102145006A (zh) * 2010-02-09 2011-08-10 张作光 人参皂甙Ppt的抗抑郁用途
KR100992800B1 (ko) * 2010-05-14 2010-11-08 주식회사 지씨에이치앤피 미량의 진세노사이드 성분이 증가된 신규한 가공인삼 또는 가공인삼추출물의 제조방법
CN103965281B (zh) * 2013-01-31 2016-06-08 上海中药创新研究中心 一种原人参二醇衍生物、其制备方法及其应用
PL3040078T3 (pl) 2013-08-30 2021-11-02 Green Cross Wellbeing Corporation Kompozycja do zapobiegania i leczenia zmęczenia związanego z nowotworem, zawierająca przetworzony proszek z żeń-szenia lub przetworzony ekstrakt z żeń-szenia o zwiększonej zawartości ginsenozydu
JP6280398B2 (ja) * 2014-03-04 2018-02-14 株式会社ナガセビューティケァ Glp−1分泌促進剤
KR101641509B1 (ko) * 2015-01-22 2016-07-21 샘표 주식회사 아글리콘인 ppd 및/또는 ppt를 유효성분으로 포함하는 항스트레스용 조성물
KR20180019474A (ko) * 2016-08-16 2018-02-26 주식회사 엠디헬스케어 락토바실러스 플란타룸 유래 소포를 포함하는 정신질환 예방 또는 치료용 조성물
JP6450878B1 (ja) * 2018-03-28 2019-01-09 株式会社ナガセビューティケァ 発酵物の製造方法

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1099094A (ja) * 1996-09-25 1998-04-21 Happy World:Kk 薬用ニンジンサポニン代謝産物の製造法
JP2004049154A (ja) * 2002-07-23 2004-02-19 Hideo Hasegawa サポニン分解物を含む発酵人参およびその製造方法
JP2005160373A (ja) * 2003-12-02 2005-06-23 Hideo Hasegawa 配糖体分解性プロバイオティクス
JP2006508660A (ja) * 2002-12-05 2006-03-16 ホングリム トレーディング カンパニー リミテッド 人参の乳酸菌発酵物、それを含有する人参ヨーグルト及びそれに利用される乳酸菌の菌株
WO2006115307A1 (en) * 2005-04-26 2006-11-02 Ko, Boong-Kyung Method of extracting ginsengnoside rg2m, pharmaceutical composition including ginsengnoside rg2, and uses thereof
CN1895256A (zh) * 2006-06-09 2007-01-17 上海中药创新研究中心 20(s)-原人参二醇在制备抗抑郁药物中的应用

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008000102A (ja) * 2006-06-26 2008-01-10 Bio Ken:Kk ヨーグルト製造用種菌

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1099094A (ja) * 1996-09-25 1998-04-21 Happy World:Kk 薬用ニンジンサポニン代謝産物の製造法
JP2004049154A (ja) * 2002-07-23 2004-02-19 Hideo Hasegawa サポニン分解物を含む発酵人参およびその製造方法
JP2006508660A (ja) * 2002-12-05 2006-03-16 ホングリム トレーディング カンパニー リミテッド 人参の乳酸菌発酵物、それを含有する人参ヨーグルト及びそれに利用される乳酸菌の菌株
JP2005160373A (ja) * 2003-12-02 2005-06-23 Hideo Hasegawa 配糖体分解性プロバイオティクス
WO2006115307A1 (en) * 2005-04-26 2006-11-02 Ko, Boong-Kyung Method of extracting ginsengnoside rg2m, pharmaceutical composition including ginsengnoside rg2, and uses thereof
CN1895256A (zh) * 2006-06-09 2007-01-17 上海中药创新研究中心 20(s)-原人参二醇在制备抗抑郁药物中的应用

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6012052447; WEI, X.-Y. et al: J. Ethnopharmacol. Vol.111, No.3, 20070522, p.613-618 *
JPN6012052448; PARK, J.-H. et al.: Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry Volume 29, Issue6, 2005, p.895-900 *
JPN6012052449; TACHIKAWA, E. et al.: Biochemical Pharmacology Volume 66, Issue 11, 2003, P.2213-2221 *
JPN6012052450; 長谷川秀夫: 医学のあゆみ Vol.207, No.10, 2003, p.857-861 *
JPN6012052451; Kimihiro Matsunaga et al: Natural Medicines 51(1), 1997, p.63-66 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2008155998A1 (ja) 2008-12-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5204771B2 (ja) Gaba作動性ニューロン賦活剤
JPWO2008155998A1 (ja) 抗不安抗うつ剤
KR101912774B1 (ko) 포름산 생성능이 우수한 균주를 유효성분으로 포함하는 비만 또는 비만으로 야기된 대사증후군의 예방 또는 치료용 조성물
WO2009145363A1 (ja) ワスレグサ属植物の熱水抽出物を含む抗うつ様作用又は睡眠改善による疲労回復作用を有する組成物
JP2010132625A (ja) 抗糖尿病剤
KR101425466B1 (ko) 발효 청미래덩굴 잎, 이의 제조방법 및 이의 용도
KR20150132616A (ko) 아피오스 추출물 또는 아피오스 발효 추출물을 유효성분으로 포함하는 면역증강용 조성물
JP2021527414A (ja) ロイコノストック属菌株を含む腸機能改善用組成物
KR101614929B1 (ko) 인지장애 및 기억장애 치료용 약학 조성물
CN109528814A (zh) 一种乳酸菌发酵黄芪的微生态制剂及其制备方法和应用
US9895400B2 (en) Composition and use of Lactobacillus reuteri GMNL-263 in decreasing blood lipid levels
KR102180223B1 (ko) 괭생이 모자반 추출물을 유효성분으로 포함하는 항비만용 조성물
KR20140017932A (ko) 탱자 발효물에 의한 비만개선효과물질의 조성
JP6735224B2 (ja) アストロサイトのグルコース代謝活性化剤
KR101651082B1 (ko) 갈근엑스 발효물을 함유한 간손상 보호용 조성물
KR101775087B1 (ko) 멀베로푸란 g, 상게논 g 및 상게놀 a를 유효성분으로 함유하는 스트레스 또는 우울 증상의 개선, 예방 또는 치료용 조성물
JP5422200B2 (ja) 肝機能障害改善剤
KR101545843B1 (ko) 유산균 발효 천마 추출물을 포함하는 수면유도 조성물
JP7078227B2 (ja) 概日リズム変調及びそれに起因する症状の予防又は改善用の内服剤並びに飲食品組成物
KR101600884B1 (ko) 결명자 유산균 발효물을 유효성분으로 하는 변비 개선, 치료 또는 예방용 조성물
WO2019156213A1 (ja) グリセロール放出促進剤
KR20210070699A (ko) 홍삼, 원지, 복령, 모렐 및 초석잠의 혼합발효물로부터 얻어지는 인지능 개선용 옥고
JP2007063236A (ja) 睡眠の質改善用組成物
KR102552609B1 (ko) 기억력, 학습력 향상 및 스트레스 완화용 총명환 조성물
EP4289438A1 (en) Composition for preventing, alleviating or treating sleep disorders, containing, as active ingredient, gut microbiota or extracellular vesicles derived therefrom

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121010

RD13 Notification of appointment of power of sub attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7433

Effective date: 20121122

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20121122

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121122

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121130

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20130205