JPWO2007043200A1 - T細胞分化調節剤 - Google Patents
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Abstract
本発明は、pre−TCRによるシグナル伝達の分子機構に基づいてT細胞の分化および癌化を調節する新しい型の薬剤を提供する。本発明はまた、種々の細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を簡便に検出できるシステムを提供する。
Description
本発明は、T細胞分化調節剤、T細胞分化調節剤のスクリーニング方法、およびT細胞分化を調節する方法に関する。本発明はまた、細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用の検出システムに関する。
細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用は、しばしば、細胞の増殖、分化、生存などを制御する細胞内シグナル伝達系において重要な役割を果たし得る。
例えば、エリスロポイエチンレセプター(EPOR)は、赤血球前駆体の分化および増殖を誘導する因子であるエリスロポイエチン(EPO)の細胞表面レセプターであり、EPORは、その細胞外領域にEPOが結合することにより二量体化して、EPOのシグナルを細胞内へ伝達し、赤血球の増殖および分化を制御する。このEPO/EPORによるシグナル伝達機構に関して、Yoshimuraらは、EPO無しで自己二量体化するような細胞外領域変異を起こしたEPORが、増殖にIL−3を必要とする細胞(本明細書において、「IL−3依存性細胞」という)であるBAF3細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導し得ることを報告している(Yoshimuraら、Nature,348,647−649(1990)参照)。
また、血小板の増殖に関与するトロンボポイエチンレセプター(TPOR)も、そのリガンド無しで自己二量体化するように変異させた場合、IL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導し得ることが報告されている(Onishiら、Blood,88,1399−1406(1996))。
他方、初期T細胞の発達においては、プレT細胞抗原レセプター(以下、「pre−TCR」ともいう)が重要な役割を果たす。
造血幹細胞からのαβT細胞の発生は胸腺の中で生じる。胸腺中の初期T細胞前駆体は、CD4およびCD8の発現を欠いている細胞(以下、「DN細胞」ともいう)であり、DN細胞は、プレT細胞抗原レセプターを発現する。
pre−TCRは、T細胞抗原レセプターβ鎖(TCRβ)と、プレT細胞抗原レセプターα鎖(pTα)と、CD3分子(CD3γ鎖、CD3ε鎖およびCD3ζ鎖)から構成される複合体であり、その発現は、豊富なTCRβ再構成物を有するDN細胞を、CD4+CD8+ダブルポジティブ細胞(以下、「DP細胞」ともいう)へと分化させる。このプロセスは、β選択といわれる(Fehlingら、Nature,375,795−8(1995)参照)。実際に、pre−TCRは、CD4およびCD8の生存、増殖、および発現;Tcraの再構成;Tcrb遺伝子座の対立遺伝子排除を引き起こすことが報告されている(Fehlingら、Nature,375,795−8(1995)参照)。
多くの研究は、pre−TCRが、リガンド非依存的な様式でシグナルを伝達し得ることを示唆している。例えば、Irvingらは、細胞外Ig様ドメインが、シグナル伝達に必要ではないことを報告している(Irvingら、Science,280,905−8(1998)参照)。また、Saint−Rufらは、pre−TCRを発現する細胞株において、pre−TCRがraftに存在し、そして外因性リガンドへのライゲーションを伴わずにシグナル伝達することを示している(Saint−Rufら、Nature,406,524−7(2000)参照)。
これまで、膜に接するpTαの細胞内システインが、raft局在を担い得るとの主張がされてきた。しかし、このシステインのアラニンへの置換は、pre−TCR機能を損なわないことが見出されている(Aifantisら、Nat.Immunol.,3,483−8(2002)参照)。さらに、適切なpre−TCR機能には、pTαの細胞質テール(Aifantisら、Nat.Immunol.,3,483−8(2002)参照)および細胞外ドメイン(Borowskiら、J.Exp.Med.,199,607−15(2004)参照)を必要とすることが示唆されている。
Haksらは、pre−TCRのリガンド非依存的なシグナル伝達の機構として、DN細胞に関する低い活性閾値を提唱している(Haksら、J.Immunol.170,2853−61(2003)参照)。しかし、最近の広範にわたる分析は、pTαが、単なるTCRαの代わりの鎖ではなく、むしろ、pTαが、TCRαのシグナル伝達ポテンシャルとは異なる、pTα独自のシグナル伝達ポテンシャルを有することが示されている(Borowskiら、J.Exp.Med.,199,607−15(2004);Huangら、Eur.J.Immunol.,34,1532−41(2004)参照)。
また、pre−TCRを介するシグナルは、白血病細胞において癌化の引き金となることも示唆されている(Bellaviaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,3788−3793(2002))。
このように、pre−TCRによる初期T細胞発達に関して広範な種々の研究が行われているにもかかわらず、pre−TCRによる自律的シグナルの基礎を成す分子機構はとらえにくく、未だに明らかになっていない。
例えば、エリスロポイエチンレセプター(EPOR)は、赤血球前駆体の分化および増殖を誘導する因子であるエリスロポイエチン(EPO)の細胞表面レセプターであり、EPORは、その細胞外領域にEPOが結合することにより二量体化して、EPOのシグナルを細胞内へ伝達し、赤血球の増殖および分化を制御する。このEPO/EPORによるシグナル伝達機構に関して、Yoshimuraらは、EPO無しで自己二量体化するような細胞外領域変異を起こしたEPORが、増殖にIL−3を必要とする細胞(本明細書において、「IL−3依存性細胞」という)であるBAF3細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導し得ることを報告している(Yoshimuraら、Nature,348,647−649(1990)参照)。
また、血小板の増殖に関与するトロンボポイエチンレセプター(TPOR)も、そのリガンド無しで自己二量体化するように変異させた場合、IL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導し得ることが報告されている(Onishiら、Blood,88,1399−1406(1996))。
他方、初期T細胞の発達においては、プレT細胞抗原レセプター(以下、「pre−TCR」ともいう)が重要な役割を果たす。
造血幹細胞からのαβT細胞の発生は胸腺の中で生じる。胸腺中の初期T細胞前駆体は、CD4およびCD8の発現を欠いている細胞(以下、「DN細胞」ともいう)であり、DN細胞は、プレT細胞抗原レセプターを発現する。
pre−TCRは、T細胞抗原レセプターβ鎖(TCRβ)と、プレT細胞抗原レセプターα鎖(pTα)と、CD3分子(CD3γ鎖、CD3ε鎖およびCD3ζ鎖)から構成される複合体であり、その発現は、豊富なTCRβ再構成物を有するDN細胞を、CD4+CD8+ダブルポジティブ細胞(以下、「DP細胞」ともいう)へと分化させる。このプロセスは、β選択といわれる(Fehlingら、Nature,375,795−8(1995)参照)。実際に、pre−TCRは、CD4およびCD8の生存、増殖、および発現;Tcraの再構成;Tcrb遺伝子座の対立遺伝子排除を引き起こすことが報告されている(Fehlingら、Nature,375,795−8(1995)参照)。
多くの研究は、pre−TCRが、リガンド非依存的な様式でシグナルを伝達し得ることを示唆している。例えば、Irvingらは、細胞外Ig様ドメインが、シグナル伝達に必要ではないことを報告している(Irvingら、Science,280,905−8(1998)参照)。また、Saint−Rufらは、pre−TCRを発現する細胞株において、pre−TCRがraftに存在し、そして外因性リガンドへのライゲーションを伴わずにシグナル伝達することを示している(Saint−Rufら、Nature,406,524−7(2000)参照)。
これまで、膜に接するpTαの細胞内システインが、raft局在を担い得るとの主張がされてきた。しかし、このシステインのアラニンへの置換は、pre−TCR機能を損なわないことが見出されている(Aifantisら、Nat.Immunol.,3,483−8(2002)参照)。さらに、適切なpre−TCR機能には、pTαの細胞質テール(Aifantisら、Nat.Immunol.,3,483−8(2002)参照)および細胞外ドメイン(Borowskiら、J.Exp.Med.,199,607−15(2004)参照)を必要とすることが示唆されている。
Haksらは、pre−TCRのリガンド非依存的なシグナル伝達の機構として、DN細胞に関する低い活性閾値を提唱している(Haksら、J.Immunol.170,2853−61(2003)参照)。しかし、最近の広範にわたる分析は、pTαが、単なるTCRαの代わりの鎖ではなく、むしろ、pTαが、TCRαのシグナル伝達ポテンシャルとは異なる、pTα独自のシグナル伝達ポテンシャルを有することが示されている(Borowskiら、J.Exp.Med.,199,607−15(2004);Huangら、Eur.J.Immunol.,34,1532−41(2004)参照)。
また、pre−TCRを介するシグナルは、白血病細胞において癌化の引き金となることも示唆されている(Bellaviaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,3788−3793(2002))。
このように、pre−TCRによる初期T細胞発達に関して広範な種々の研究が行われているにもかかわらず、pre−TCRによる自律的シグナルの基礎を成す分子機構はとらえにくく、未だに明らかになっていない。
本発明は、pre−TCRによるシグナル伝達の分子機構を明らかとし、該機構に基づいてT細胞の分化および癌化を調節する新しい型の薬剤を提供することを第1の目的とする。本発明者らは、pre−TCRによるシグナル伝達の分子機構を明らかにするために、pre−TCRに固有の構成成分であるpTαの構造および機能に焦点を合わせて研究を行った。その結果、pTαが、その細胞外領域に存在する荷電したアミノ酸残基による静電的相互作用を介して、自己二量体を自発的に形成することを見出した。さらに、これらのアミノ酸残基の置換によるpTαの自己オリゴマー化の阻害は、DN細胞からDP細胞への正常な移行を阻害した。このことから、本発明者らは、pTαの自己二量体形成が、pre−TCRの自律的シグナル伝達の本質的な分子機構であると考えた。
また、本発明は、種々の細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を簡便に検出できるシステムを提供することを第2の目的とする。本発明者らは、細胞表面タンパク質の細胞外ドメインとEPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含むキメラタンパク質をコードする核酸を、IL−3依存性細胞に導入して発現させると、該細胞外ドメイン同士が相互作用した場合に、該キメラタンパク質が二量体を形成して、該細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導することを見出した。すなわち、本検出システムのキメラタンパク質発現系を用いれば、細胞表面タンパク質の細胞外ドメイン間の相互作用を、IL−3非依存的な細胞増殖を指標として検出し得ることを見出した。
本発明者らは、上記の知見に基づき、さらに研究を続けた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである:
[1] プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節する物質を含む、T細胞分化調節剤;
[2] 前記物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を促進する物質である、[1]に記載のT細胞分化調節剤;
[3] 前記プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を促進する物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖をコードする核酸分子である、[2]に記載のT細胞分化調節剤;
[4] 前記物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を抑制する物質である、[1]に記載のT細胞分化調節剤;
[5] 前記プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を抑制する物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖に対する、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNAまたは抗体;あるいはプレT細胞抗原レセプターα鎖の細胞外ドメインのフラグメントである、[4]に記載のT細胞分化調節剤;
[6] プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節する工程を含む、T細胞分化を調節する方法;
[7] 被験物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節するか否かを評価する工程を含む、T細胞分化調節剤のスクリーニング方法;
[8] T細胞分化調節剤をスクリーニングするためのキットであって、pTαと蛍光物質とのキメラタンパク質を発現した細胞、あるいは、pTαとエリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターとのキメラタンパク質を発現したIL−3依存性細胞を含む、キット;
[1A] 細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出する方法であって、
第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子、ならびに
第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子
を導入した、IL−3依存性細胞を、IL−3の非存在下で培養し、該細胞の増殖の有無を確認する工程を含む、方法;
[2A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、同種のタンパク質である、上記[1A]に記載の方法;
[3A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、異種のタンパク質である、上記[1A]に記載の方法;
[4A] 第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質、ならびに
第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質
を発現した、IL−3依存性細胞;
[5A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、同種のタンパク質である、上記[4A]に記載の細胞;
[6A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、異種のタンパク質である、上記[4A]に記載の細胞;
[7A] 細胞表面タンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、キメラタンパク質;
[8A] 上記[7A]に記載のキメラタンパク質をコードする、核酸分子;
[9A] 上記[8A]に記載の核酸分子を含む、発現ベクター;ならびに
[10A] 細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出するためのキットであって、以下:
エリスロポイエチンレセプターもしくはトロンボポイエチンレセプターまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする核酸分子;
発現ベクター;ならびに
IL−3依存性細胞
を含む、キット。
また、本発明は、種々の細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を簡便に検出できるシステムを提供することを第2の目的とする。本発明者らは、細胞表面タンパク質の細胞外ドメインとEPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含むキメラタンパク質をコードする核酸を、IL−3依存性細胞に導入して発現させると、該細胞外ドメイン同士が相互作用した場合に、該キメラタンパク質が二量体を形成して、該細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導することを見出した。すなわち、本検出システムのキメラタンパク質発現系を用いれば、細胞表面タンパク質の細胞外ドメイン間の相互作用を、IL−3非依存的な細胞増殖を指標として検出し得ることを見出した。
本発明者らは、上記の知見に基づき、さらに研究を続けた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである:
[1] プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節する物質を含む、T細胞分化調節剤;
[2] 前記物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を促進する物質である、[1]に記載のT細胞分化調節剤;
[3] 前記プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を促進する物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖をコードする核酸分子である、[2]に記載のT細胞分化調節剤;
[4] 前記物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を抑制する物質である、[1]に記載のT細胞分化調節剤;
[5] 前記プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を抑制する物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖に対する、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNAまたは抗体;あるいはプレT細胞抗原レセプターα鎖の細胞外ドメインのフラグメントである、[4]に記載のT細胞分化調節剤;
[6] プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節する工程を含む、T細胞分化を調節する方法;
[7] 被験物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節するか否かを評価する工程を含む、T細胞分化調節剤のスクリーニング方法;
[8] T細胞分化調節剤をスクリーニングするためのキットであって、pTαと蛍光物質とのキメラタンパク質を発現した細胞、あるいは、pTαとエリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターとのキメラタンパク質を発現したIL−3依存性細胞を含む、キット;
[1A] 細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出する方法であって、
第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子、ならびに
第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子
を導入した、IL−3依存性細胞を、IL−3の非存在下で培養し、該細胞の増殖の有無を確認する工程を含む、方法;
[2A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、同種のタンパク質である、上記[1A]に記載の方法;
[3A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、異種のタンパク質である、上記[1A]に記載の方法;
[4A] 第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質、ならびに
第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質
を発現した、IL−3依存性細胞;
[5A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、同種のタンパク質である、上記[4A]に記載の細胞;
[6A] 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、異種のタンパク質である、上記[4A]に記載の細胞;
[7A] 細胞表面タンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、キメラタンパク質;
[8A] 上記[7A]に記載のキメラタンパク質をコードする、核酸分子;
[9A] 上記[8A]に記載の核酸分子を含む、発現ベクター;ならびに
[10A] 細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出するためのキットであって、以下:
エリスロポイエチンレセプターもしくはトロンボポイエチンレセプターまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする核酸分子;
発現ベクター;ならびに
IL−3依存性細胞
を含む、キット。
図1aは、再構成したpre−TCRおよびαβTCRの表面染色を示す。TCR αnullT細胞ハイブリドーマ(TG40β)に、pMX−pTα/GFP−IRES−rCD2またはpMX−TCRα/GFP−IRES−rCD2を感染させ、そしてMACSを用いて抗rCD2により選別した。細胞を、APC標識抗TCRβを用いて染色し、そしてフローサイトメトリーに供した(左パネル群および中央パネル群)。細胞をまた、蛍光顕微鏡により分析した。代表的な画像を、デコンボリューションされた蛍光画像(右パネル群)(BZ8000,Keyence)として示す。10を超える蛍光スポットを有する細胞の頻度を、マルチスキャン画像から決定した。この頻度は、2.7±3.9%(TCRα/GFP)および87.9±1.7%(pTα/GFP)であった。
図1bは、インターナライズされたpre−TCRは、リソソーム中に局在することを示す。細胞を、50nM LysoTracker Red DND−99を用いて30分間処理し、次いで、広視野蛍光顕微鏡(IX−81,Olympus)により分析した。
図1cは、pre−TCRの迅速かつ構成的なインターナリゼーションを示す。細胞を、PE標識抗TCRβを用いて予備染色し、次いで、37℃にて30分間インキュベーションし、そして共焦点蛍光顕微鏡(DMIRE2,Leica)により分析した。スケールバーは、5μmを表す。
図1dは、preTCRは、細胞表面上でオリゴマーを形成する傾向があることを示すグラフである。
図2aは、pTα/EPORキメラおよびTCRα/EPORキメラの模式図である。
図2bは、EPORキメラの発現を示す。BAF3細胞株に、pMX−IRES−GFPベクター中のpTα/EPORキメラまたはTCRα/EPORキメラを感染させ、そして各々の発現を抗EPORイムノブロットにより分析した。
図2cは、EPORキメラの発現を示す。BAF3細胞株に、pMX−IRES−GFPベクター中のpTα/EPORキメラまたはTCRα/EPORキメラを感染させ、そして各々の発現を抗EPOR染色により分析した。
図2dは、IL−3枯渇後の各BAF3トランスフェクタントの細胞生存度を示す。IL−3枯渇の2日後の明視野とGFPとの代表的なマージ画像を示す(上パネル群)。IL−3枯渇後の細胞生存度を、フローサイトメトリーによりヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定した。各日におけるGFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)またはGFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)の生存度を、0日目の生細胞数を100とした相対百分率として表す。各条件についての感染効率は、全ての実験および類似の結果を示した4つの独立した実験において50%〜80%であった。
図2eは、pTα/CFPおよびpTα/YFPを共発現するT細胞におけるFRETの生成を示す。TG40β細胞に、pTα/YFPのみ(左パネル群)、pTα/CFPおよびpTα/YFP(中央パネル群)、またはpTαR102/117ACFPおよびpTαR102/117A/YFP(右パネル群)を形質導入した。pre−TCRの表面発現を、図1aに記載されるように、3つの細胞株の各々の抗TCRβ染色により検証した。YFPhigh細胞(10,000細胞;黒い点)中のFRETポジティブ細胞(四角のゲート)の割合(パーセント)を示す。
図3aは、マウスpTαの細胞外ドメインのアミノ酸配列を示す(配列番号7)。成熟タンパク質のアミノ酸番号を示す。
図3bは、pTαの細胞外ドメイン内の荷電したアミノ酸の置換を示す。図に示す変異(m1〜m19)を有するpTα/EPORを、図2dのように、BAF3における増殖促進活性について試験した。値は、IL−3枯渇の2日後の、WT pTα/GFP活性を100とした相対活性(%)を表す。
図3cは、pTα−TCRβ複合体の三次元構造モデルの立体図を示す。機能的に重要な荷電したアミノ酸(D22、R24、R102およびR117)を、球棒模型(ball and stick model)により表す。
図3dは、pTα−TCRβ複合体の三次元構造モデルの立体図を示す。置換可能な荷電したアミノ酸(D56、D67、E81、E82、E84およびE87)を、球棒模型(ball and stick model)により表す。
図4aは、R102/R117がpre−TCRの自発的なインターナリゼーションに必須であることを示す。pTαWT/GFPおよびpTαR102/117A/GFPを、TG40β細胞へ導入し、そして表面pre−TCR発現を、抗TCRβ APC(グレーのヒストグラム)およびコントロールAb(白いヒストグラム)を用いて分析した。
図4bは、細胞内GFP小胞を有する細胞の頻度を示す。細胞を蛍光顕微鏡により分析し、そしてマルチスキャン画像を、10を超える明るい小胞を有する細胞数の計数に用いた。データは、5つの独立した視野の平均パーセント±s.dである。
図4cは、BMT再構成アッセイを示す。Sca−1+ pTα−/− BM細胞に、個別に、WT pTαWT−IRES−rCD8またはpTαR102/117A−IRES−hCD2を感染させた。rCD8またはhCD2ポジティブ細胞を選別し、そして、個別に、照射したRag2−/−レシピエントマウスへと注入した。注射の3週間後、胸腺細胞を、hCD8+集団(中央パネル群)またはrCD2+集団(右パネル群)におけるCD4/CD8(上パネル群)およびCD25(下パネル群)の発現について分析した。pTαWTの表面発現と比較して高いpTαR102/117Aの表面発現を、抗pTαを用いる染色により確認した。
図4dは、競合的BMT再構成アッセイを示す。pTαWT−IRES−rCD2またはpTαR102/117A−IRES−hCD8を個別に感染させた、Sca−I+ pTα−/− BM細胞を、1:1の割合で混合し、そして照射したRag2−/−レシピエントマウスに同時に注入した。3週間後、胸腺細胞を、hCD8+(WT)ゲート集団またはrCD2+(R102/117A)ゲート集団におけるCD4/CD8の発現について分析した。データは、類似の結果を有する代表的な3つの独立した実験である。
図5は、IL−3枯渇後のBAF3トランスフェクタントの細胞生存度を表す。各日におけるGFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)およびGFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)の生存度を、0日目の生細胞数を100とした相対百分率として表す。
図1bは、インターナライズされたpre−TCRは、リソソーム中に局在することを示す。細胞を、50nM LysoTracker Red DND−99を用いて30分間処理し、次いで、広視野蛍光顕微鏡(IX−81,Olympus)により分析した。
図1cは、pre−TCRの迅速かつ構成的なインターナリゼーションを示す。細胞を、PE標識抗TCRβを用いて予備染色し、次いで、37℃にて30分間インキュベーションし、そして共焦点蛍光顕微鏡(DMIRE2,Leica)により分析した。スケールバーは、5μmを表す。
図1dは、preTCRは、細胞表面上でオリゴマーを形成する傾向があることを示すグラフである。
図2aは、pTα/EPORキメラおよびTCRα/EPORキメラの模式図である。
図2bは、EPORキメラの発現を示す。BAF3細胞株に、pMX−IRES−GFPベクター中のpTα/EPORキメラまたはTCRα/EPORキメラを感染させ、そして各々の発現を抗EPORイムノブロットにより分析した。
図2cは、EPORキメラの発現を示す。BAF3細胞株に、pMX−IRES−GFPベクター中のpTα/EPORキメラまたはTCRα/EPORキメラを感染させ、そして各々の発現を抗EPOR染色により分析した。
図2dは、IL−3枯渇後の各BAF3トランスフェクタントの細胞生存度を示す。IL−3枯渇の2日後の明視野とGFPとの代表的なマージ画像を示す(上パネル群)。IL−3枯渇後の細胞生存度を、フローサイトメトリーによりヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定した。各日におけるGFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)またはGFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)の生存度を、0日目の生細胞数を100とした相対百分率として表す。各条件についての感染効率は、全ての実験および類似の結果を示した4つの独立した実験において50%〜80%であった。
図2eは、pTα/CFPおよびpTα/YFPを共発現するT細胞におけるFRETの生成を示す。TG40β細胞に、pTα/YFPのみ(左パネル群)、pTα/CFPおよびpTα/YFP(中央パネル群)、またはpTαR102/117ACFPおよびpTαR102/117A/YFP(右パネル群)を形質導入した。pre−TCRの表面発現を、図1aに記載されるように、3つの細胞株の各々の抗TCRβ染色により検証した。YFPhigh細胞(10,000細胞;黒い点)中のFRETポジティブ細胞(四角のゲート)の割合(パーセント)を示す。
図3aは、マウスpTαの細胞外ドメインのアミノ酸配列を示す(配列番号7)。成熟タンパク質のアミノ酸番号を示す。
図3bは、pTαの細胞外ドメイン内の荷電したアミノ酸の置換を示す。図に示す変異(m1〜m19)を有するpTα/EPORを、図2dのように、BAF3における増殖促進活性について試験した。値は、IL−3枯渇の2日後の、WT pTα/GFP活性を100とした相対活性(%)を表す。
図3cは、pTα−TCRβ複合体の三次元構造モデルの立体図を示す。機能的に重要な荷電したアミノ酸(D22、R24、R102およびR117)を、球棒模型(ball and stick model)により表す。
図3dは、pTα−TCRβ複合体の三次元構造モデルの立体図を示す。置換可能な荷電したアミノ酸(D56、D67、E81、E82、E84およびE87)を、球棒模型(ball and stick model)により表す。
図4aは、R102/R117がpre−TCRの自発的なインターナリゼーションに必須であることを示す。pTαWT/GFPおよびpTαR102/117A/GFPを、TG40β細胞へ導入し、そして表面pre−TCR発現を、抗TCRβ APC(グレーのヒストグラム)およびコントロールAb(白いヒストグラム)を用いて分析した。
図4bは、細胞内GFP小胞を有する細胞の頻度を示す。細胞を蛍光顕微鏡により分析し、そしてマルチスキャン画像を、10を超える明るい小胞を有する細胞数の計数に用いた。データは、5つの独立した視野の平均パーセント±s.dである。
図4cは、BMT再構成アッセイを示す。Sca−1+ pTα−/− BM細胞に、個別に、WT pTαWT−IRES−rCD8またはpTαR102/117A−IRES−hCD2を感染させた。rCD8またはhCD2ポジティブ細胞を選別し、そして、個別に、照射したRag2−/−レシピエントマウスへと注入した。注射の3週間後、胸腺細胞を、hCD8+集団(中央パネル群)またはrCD2+集団(右パネル群)におけるCD4/CD8(上パネル群)およびCD25(下パネル群)の発現について分析した。pTαWTの表面発現と比較して高いpTαR102/117Aの表面発現を、抗pTαを用いる染色により確認した。
図4dは、競合的BMT再構成アッセイを示す。pTαWT−IRES−rCD2またはpTαR102/117A−IRES−hCD8を個別に感染させた、Sca−I+ pTα−/− BM細胞を、1:1の割合で混合し、そして照射したRag2−/−レシピエントマウスに同時に注入した。3週間後、胸腺細胞を、hCD8+(WT)ゲート集団またはrCD2+(R102/117A)ゲート集団におけるCD4/CD8の発現について分析した。データは、類似の結果を有する代表的な3つの独立した実験である。
図5は、IL−3枯渇後のBAF3トランスフェクタントの細胞生存度を表す。各日におけるGFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)およびGFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)の生存度を、0日目の生細胞数を100とした相対百分率として表す。
以下に、本明細書中で用いられる各用語について説明する。
本明細書において、「核酸分子」とは、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAのことを意味する。本明細書において、「ヌクレオチド配列」とは、特に言及しない限り、デオキシリボヌクレオチド(A、G、C、およびTで表す)の配列、またはリボヌクレオチド(A、G、C、およびUで表す)の配列を意味する。本明細書中において、特に言及しない限り、一本鎖ヌクレオチド配列は、左端が5’末端、右端が3’末端を表す。
本明細書において、特に言及しない限り、アミノ酸の表記は、アミノ酸に関する標準的な表記である1文字略号または3文字略号を使用する。本明細書において、特に言及しない限り、アミノ酸配列は、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)を表す。
本明細書において、「T細胞前駆体」とは、CD4およびCD8の発現を欠いている胸腺細胞(「CD4−CD8−ダブルネガティブ胸腺細胞」または「DN細胞」ともいう)を意味する。
本明細書において、「T細胞分化を調節する」とは、CD4−CD8−ダブルネガティブ胸腺細胞(DN細胞)から、CD4+CD8+ダブルポジティブ胸腺細胞(DP細胞)へと分化するプロセス(すなわち、β選択)を、促進または抑制することを意味する。
本明細書において、「プレT細胞抗原レセプターα鎖(pTα)の自己二量体形成を調節する」とは、DN細胞の細胞表面におけるpTαの自己二量体化を促進または抑制することを意味する。
本発明に用いる場合、「プレT細胞抗原レセプターα鎖(pTα)」とは、好ましくは、ヒト由来のpTαもしくはそれと実質的に同一のタンパク質を意味する。
ここで、「実質的に同一」とは、ヒト由来のpTαのアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは、約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列を有するタンパク質がヒト由来のpTαと実質的に同質の活性を有するような配列をいう。
ここで、「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。
「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、水酸基を有するアミノ酸、側鎖の小さいアミノ酸などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は、タンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306−1310(1990)を参照)。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムであるNCBI BLASTを用いて、以下の条件(期待値=10、ギャップを許す、マトリクス=BLOSUM62、フィルタリング=OFF)で計算することができる。
アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873−5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444−453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11−17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらは同様に好ましく用いられ得る。
pTαにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、本発明では、そのいずれを用いてもよい。
本発明に用いられるヒトpTαとしては、好ましくは、GenPept登録番号NP_612153(配列番号2)に示されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
また、本発明に用いられるヒト由来のpTαと実質的に同一のタンパク質としては、例えば、以下のアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、ヒトpTαと実質的に同質の活性を有するタンパク質等も含まれる:
(1)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列;
(2)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列;
(3)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列;
(4)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列;あるいは
(5)上記(1)〜(4)を組み合わせたアミノ酸配列。
アミノ酸配列が、欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位置は、当該タンパク質の活性を損なわない限り、特に限定されない。
pTαについて、実質的に同質の活性としては、pTαが自己二量体を形成して、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を誘導する活性などが挙げられる。
ここで、「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に同等であることを意味する。従って、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
pTαの自己二量体形成は、後述するスクリーニング方法に記載される方法により確認および定量できる。また、DN細胞からDP細胞への移行は、細胞表面に発現するCD4分子およびCD8分子を、これらの各々に特異的に反応する抗体を用いて検出することにより確認および定量できる。該抗体の検出法としては、例えば、蛍光を利用する方法(例えば、Fluorescence Activated Cell Sorter(FACS)法)、酵素反応を利用する方法(例えば、Enzyme−Linked Immunosorbent Assay(ELISA)法)、ラジオアイソトープを利用する方法などが挙げられる。
本明細書において、タンパク質の「細胞外ドメイン」とは、特に言及しない限り、細胞表面タンパク質の細胞外に存在する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本明細書において、タンパク質の「膜貫通ドメイン」とは、特に言及しない限り、細胞表面タンパク質の細胞膜を貫通する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本明細書において、タンパク質の「細胞質ドメイン」とは、特に言及しない限り、細胞表面タンパク質の細胞質内に存在する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本明細書において、「キメラタンパク質」(以下、単に「キメラ」ともいう)とは、特に言及しない限り、異なるタンパク質に由来する2つ以上のドメインから構成される融合タンパク質を意味する。
本明細書において、「IL−3依存性細胞」とは、生存/増殖にIL−3を必要とする細胞(換言すれば、IL−3の非存在下では増殖できない細胞)のことを意味する。
以下、本発明の実施形態について説明する。
第1の局面において、本発明は、T細胞分化調節剤、T細胞分化を調節する方法、およびT細胞分化調節剤のスクリーニング方法に関する。
(T細胞分化調節剤およびT細胞分化を調節する方法)
本発明は、pTαの自己二量体形成を調節する物質を含むT細胞分化調節剤を提供する。より具体的には、本発明は、pTαの自己二量体形成を促進する物質を含むT細胞分化促進剤およびpTαの自己二量体形成を抑制する物質を含むT細胞分化抑制剤を提供する。
(T細胞分化促進剤)
1つの実施形態において、本発明のT細胞分化調節剤は、T細胞分化促進剤であり、該促進剤は、T細胞前駆体(すなわち、DN細胞)の細胞表面におけるpTαの自己二量体形成を促進する物質を含む。このような物質は、pTαの自己二量体形成を直接的または間接的に促進することによって、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を促進することができる。
pTαの自己二量体形成を促進する物質としては、他の遺伝子および/またはタンパク質に及ぼす影響を最小限にするために、標的分子であるpTαに特異的に作用し得る物質であることが望ましい。このような物質としては、例えば、pTαをコードする核酸分子、および後述するスクリーニング方法によって得られる物質が挙げられる。
「pTαをコードする核酸分子」とは、DN細胞に導入された場合に、該細胞においてpTαを発現させることができる核酸分子のことを意味する。該核酸分子により発現したpTαは、それらの間で、または該核酸分子を導入した細胞が生来有するpTαと二量体を形成して、β選択を促進させることができる。
pTαをコードする核酸分子としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。pTαをコードする核酸分子は、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、RT−PCR(Reverse Transcriptase−Polymerase Chain Reaction)法などによって増幅することができる。
pTαをコードする核酸分子としては、例えば、GenBank登録番号:NM_138296(配列番号1)に示されるヒトpTαの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ、配列番号2に示されるpTαのアミノ酸配列を含有するタンパク質と、実質的に同質の活性(細胞外領域のアミノ酸残基の相互作用によって、自己二量体を形成する活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
本明細書において、塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件:期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3にて計算することができる。
塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning、第2版(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム塩濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMであり、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃である条件等が挙げられる。特に、ナトリウム塩濃度が約19mMであり、温度が約65℃である場合が好ましい。
当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダイゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができることを理解する。
pTαをコードする核酸分子は、例えば、適切な発現ベクターに挿入した後、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って、T細胞前駆体(DN細胞)に導入され得る。
pTαをコードする核酸分子を含む発現ベクターは、例えば、pTαをコードする核酸分子から目的とする断片を調製し、該断片を発現ベクター中の適切なプロモーターの下流に連結することにより作製することができる。
発現ベクターとしては、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター(例えば、IRESバイシストロン性発現ベクター、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo、pME18S)などが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応する適切なプロモーターであればいかなるものでもよく、例えば、LCK近位プロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが用いられる。
発現ベクターは、必要に応じて、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーまたはレポーター遺伝子、SV40複製起点(SV40ori)などを含み得る。
選択マーカーおよびレポーター遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
(T細胞分化抑制剤)
別の実施形態において、本発明のT細胞分化調節剤は、T細胞分化抑制剤であり、該抑制剤は、T細胞前駆体(すなわち、DN細胞)の細胞表面におけるpTαの自己二量体形成を抑制する物質を含む。このような物質は、pTαの自己二量体形成を直接的または間接的に抑制することによって、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を抑制することができる。
pTαの自己二量体形成を抑制する物質としては、他の遺伝子および/またはタンパク質に及ぼす影響を最小限にするために、標的分子であるpTαに特異的に作用し得る物質であることが望ましい。このような物質としては、例えば、pTαに対する、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNAおよび抗体;pTαの細胞外ドメインのフラグメント;ならびに後述するスクリーニング方法によって得られる物質が挙げられる。
pTαに対する、アンチセンス核酸、リボザイムおよびsiRNAは、T細胞前駆体中のpTαをコードする核酸分子に作用し、DN細胞におけるpTαの発現そのものを抑制することができる。
アンチセンス核酸は、生理的条件下で、標的mRNA(初期転写産物)とハイブリダイズし得る塩基配列からなり、かつハイブリダイズした状態で標的mRNA(初期転写産物)にコードされるタンパク質またはポリペプチドの翻訳を阻害し得る核酸であり得る。
アンチセンス核酸の種類はDNAであってもRNAであってもよいし、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、天然型のアンチセンス核酸は、細胞中に存在する核酸分解酵素によって、そのリン酸ジエステル結合が容易に分解されるので、酵素分解に安定なチオリン酸型(リン酸結合のP=OをP=Sに置換)、2’−O−メチル型などの修飾ヌクレオチドを用いて、アンチセンス核酸を合成してもよい。
アンチセンス核酸の設計に重要な他の要素として、水溶性及び細胞膜透過性を高めること等が挙げられるが、これらはリポソームやマイクロスフェアを使用するなどの剤形の工夫によっても克服することができる。
アンチセンス核酸の長さは、標的mRNAもしくは初期転写産物と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はないが、例えば、少なくとも約15塩基程度、長いものでmRNA(初期転写産物)の全配列に相補的な配列を含むような配列であってもよい。合成の容易さや抗原性の問題等から、好ましくは約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。
また、アンチセンス核酸は、標的mRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAである標的遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、mRNAへの転写を阻害し得るものであってもよい。
リボザイムとは、核酸を切断する酵素活性を有する核酸分子(主に、RNA)をいう。本発明では、pTαのmRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るものを意図する。
また最近では、当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、リボザイムは、配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。
リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。
siRNAとは、標的mRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相当する二本鎖オリゴRNAである。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が動物細胞でも起こることが確認されたことから(Nature,411(6836):494−498(2001))、リボザイムの代替技術として注目されている。
アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、例えば、pTαのcDNA配列(例えば、配列番号1)に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。
siRNAは、例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分間程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後、リガーゼを用いてライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
pTαに対する抗体、およびpTαの細胞外ドメインのフラグメントは、pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基の1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)に作用することによって、pTαの自己二量体形成を抑制することができる。
「pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基」は、pTαの細胞外に存在する領域(ドメイン)に存在する荷電したアミノ酸残基であり得る。例えば、ヒトpTαの場合、pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基としては、配列番号2のアミノ酸配列中の38番目のAsp;40番目のLys;118番目のArg;および133番目のArgが挙げられる。
これらのアミノ酸は、種の間で高度に保存されているので、ヒト以外の種を対象とする場合、上記に対応するアミノ酸残基を標的とすればよい。
pTαに対する抗体は、pTαの二量体形成を阻害し得る限り、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でもよく、以下に例示するような、当該分野で周知の免疫学的手法により作製することができる。さらに、抗pTα抗体のフラグメントもまた、pTαの二量体形成を阻害し得る限り用いられ得る。このような抗体のフラグメントとしては、例えば、Fab、F(ab’)2、ScFv、minibody等が挙げられる。
ポリクローナル抗体は、例えば、pTαまたはそのフラグメントを抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。
抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
上記抗原としてpTαのフラグメントを用いる場合、該フラグメントは、pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基の1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)を含む。
モノクローナル抗体(mAb)は、例えば、細胞融合法により作製することができる。例えば、マウスに上記抗原を市販のアジュバントと共に2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS−1、P3X63Ag8など)を細胞融合して該抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。
この細胞融合は、PEG法[J.Immunol.Methods,81(2):223−228(1985)]で行ってもよいし、電圧パルス法[Hybridoma,7(6):627−633(1988)]で行ってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得することができる。
上記抗pTα抗体は、ヒトに用いる場合の効果と安全性を考慮すると、ヒトと他の動物(例えば、マウス等)のキメラ抗体であることが好ましく、ヒト化抗体であることがさらに好ましく、完全ヒト抗体であることが特に好ましい。
ここで「キメラ抗体」とは免疫動物由来の可変部(V領域)とヒト由来の定常部(C領域)を有する抗体のことをいい、「ヒト化抗体」とはCDRを除いて他の領域をすべてヒト抗体に置き換えた抗体のことをいう。
キメラ抗体やヒト化抗体は、例えば、上記と同様の方法により作製したマウスモノクローナル抗体の遺伝子からV領域もしくはCDRをコードする配列を切り出し、ヒト骨髄腫由来の抗体のC領域をコードするDNAと融合したキメラ遺伝子を適当な発現ベクター中にクローニングし、これを適当な宿主細胞に導入して該キメラ遺伝子を発現させることにより取得することができる。
完全ヒト抗体は、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生動物、またはファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
ヒト抗体産生動物としては、例えば、XenoMouse(Abgenix社製);Hu−Mab Mouse(Medarex社製);KMマウス(キリンビール社製)などが挙げられる。
ファージディスプレイライブラリーとしては、CAT社のライブラリー;MRC社のライブラリー;Dyax社のライブラリー;Morphosys社のHuCALライブラリー;BioInvent社のライブラリー;Crucell社のライブラリー等が挙げられる。
pTαの細胞外ドメインのフラグメントとは、DN細胞の生来のpTαとのオリゴマー形成能力を有するが、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を誘導することができない、pTαの細胞外領域(ドメイン)の任意のフラグメントのことを意味する。このようなフラグメントは、DN細胞の生来のpTαに対して、別の生来のpTαと競合的に結合することで、生来のpTα同士の結合を阻害することができる。具体的には、本発明で用いられるpTαの細胞外ドメインのフラグメントは、自己二量体形成に関与するアミノ酸残基の1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)を含むが、DN細胞の生来のpTαと結合してもβ選択を誘導することができないフラグメントである。
ここで、該フラグメント中の自己二量体形成に関与するアミノ酸残基は、ヒトpTαについて上記したアミノ酸残基が挙げられるが、これらのアミノ酸残基は、二量体形成能が失われない限り、類似アミノ酸により置換されていてもよい(例えば、AspとGlu;ArgとLysとの間の保存的アミノ酸置換)。
本発明はまた、インビトロまたはインビボにおいて、pTαの自己二量体形成を調節することによって、T細胞分化を調節する方法を提供する。
1つの実施形態において、本方法は、インビトロにおいて、pTαの自己二量体形成を調節することによって、T細胞分化を調節する方法に関し、該方法は、上記のT細胞分化調節剤の存在下で、T細胞前駆体(すなわち、DN細胞)を培養することを含む。
T細胞分化調節剤として核酸分子を用いる場合、該核酸分子は、単独で、又はプラスミド若しくはウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)などの適切なベクターに挿入した後、当該分野で周知の方法に従って、T細胞前駆体に導入され得る。
また、T細胞分化調節剤としてタンパク質を用いる場合、該タンパク質は、そのまま培地に混合され得る。あるいは、当該タンパク質をコードする核酸分子を単独又は適切なベクターに挿入した後、当該分野で周知の方法に従って、細胞に導入してもよい。
細胞を培養する培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清(FBS)を含む、MEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地、199培地などが用いられる。
培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約1日〜約1週間、好ましくは、約1日〜約3日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
別の実施形態において、本方法は、インビボにおいて、pTαの自己二量体形成を調節することによって、T細胞分化を調節する方法に関し、該方法は、上記のT細胞分化調節剤を哺乳動物に投与することを含む。
哺乳動物としては、例えば、霊長類、実験用動物、家畜、ペット等が挙げられ、特に限定はされないが、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
T細胞分化調節剤として核酸分子を用いる場合、該核酸分子を単独で、又はプラスミド、ウイルスベクターなどの適切なベクター(例えば、上記で発現ベクターとして列挙したもの)に挿入した後、当該分野で周知の方法に従って、哺乳動物に投与することができる。
また、T細胞分化調節剤としてタンパク質を用いる場合は、剤形を工夫することによって、当該分野で公知のDDS(drug delivery system)技術により当該タンパク質自体を哺乳動物に投与することができる。あるいは、当該タンパク質をコードする核酸分子を単独で、又は適切なベクター(例えば、上記で発現ベクターとして列挙したもの)に挿入した後、当該分野で周知の方法に従って投与することもできる。
本発明のT細胞分化調節剤は、薬学的に許容され得る担体をさらに含み得る。薬学的に許容され得る担体としては、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、粘稠剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。本発明のT細胞分化調節剤は、上記の担体の一つ以上を用いることにより、経口あるいは非経口的に投与することができる。
T細胞分化調節剤の投与量は、投与対象、投与方法、処理時間、あるいは該剤に含有される活性成分の種類などにより異なるが、通常、成人(体重60kgとして)一人当たり、一回につき10μgから1000mgの範囲で投与することができる。
なお、ヒト以外の哺乳動物の場合も、上記値を当該哺乳動物の体重で換算した量を投与することができる。しかしながら、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を越える投与量が必要な場合もある。
(T細胞分化調節剤のスクリーニング方法)
本発明はまた、T細胞分化調節剤のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、被験物質がpTαの自己二量体形成を調節(促進または抑制)するか否か評価することを含む。具体的には、該評価は、被験物質の存在下と非存在下でのpTαの自己二量体形成の程度を比較することで行うことができる。
本スクリーニング方法に用いられる「被験物質」は、いかなる公知化合物でも新規化合物でもよい。被験物質としては、特に制限はされないが、例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、抗体、有機もしくは無機の低分子化合物、有機もしくは無機の高分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物等由来の天然成分等が挙げられる。
pTαの自己二量体形成は、例えば、以下の方法によって検出および定量することができる:
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を用いる方法;ならびに
pTαとエリスロポイエチンレセプター(EPOR)とのキメラタンパク質を発現した細胞、またはpTαとトロンボポイエチンレセプター(TPOR)とのキメラタンパク質を発現した細胞を用いる方法。
(pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を用いるスクリーニング方法)
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を用いるスクリーニング方法としては、例えば、全反射蛍光(Total Internal Reflection Fluorescence:TIRF)顕微鏡分析;蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Enargy Transfer:FRET)分析が挙げられる。
TIRF顕微鏡分析を用いるスクリーニング方法は、pTαと蛍光タンパク質とのキメラを発現した細胞を用いて、pTαの単体と二量体を、その輝点の蛍光強度から区別して検出し得る。
この分析に用いられる蛍光タンパク質としては、GFP、RFP、YFP、CFP、Kusabira−orangeなどが挙げられる。
FRET分析を用いるスクリーニング方法は、第1蛍光タンパク質(励起光波長λ0;蛍光波長λ1)とpTαとのキメラタンパク質と、第2蛍光タンパク質(励起光波長λ1;蛍光波長λ2)とpTαとのキメラタンパク質の両方を発現した細胞を用いて、該細胞に波長λ0の光を照射して、二量体の形成を示す波長λ2の蛍光を検出し得る。
この分析に用いられる第1と第2の蛍光タンパク質の組合わせとしては、CFPとYFPなどが挙げられる。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質に用いられるpTαとしては、好ましくは、ヒトpTαが用いられる。ヒトpTαとしては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
pTαにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を発現する細胞は、該キメラタンパク質をコードする核酸分子を作製し、該核酸分子を適切な細胞に導入することにより作製できる。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子は、pTαをコードする核酸分子、ならびに所望の蛍光タンパク質をコードする核酸分子を用いて、当該分野で公知の遺伝子組換技術(例えば、PCR法を用いる技術)によって作製され得る。
pTαをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。
このような核酸分子としては、例えば、GenBank登録番号:NM_138296(配列番号1)に示されるヒトpTαの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ、配列番号2に示されるpTαのアミノ酸配列を含有するタンパク質と、実質的に同質の活性(細胞外領域のアミノ酸残基の相互作用によって、自己二量体を形成する活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
種々の蛍光タンパク質の塩基配列に関する情報は、公に利用可能な情報源(例えば、学術文献、特許文献、遺伝子およびタンパク質のデータベース(例えば、GenBankなど))から入手可能である。また、種々の蛍光タンパク質遺伝子は、例えば、BD Bisciences Clontechなどから市販されている。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターは、例えば、該キメラタンパク質をコードする核酸分子から目的とする断片(目的遺伝子)を調製し、該断片を適切な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより作製することができる。
発現ベクターおよびプロモーターとしては、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター(例えば、IRESバイシストロン性発現ベクター、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo、pME18S)などが用いられる。
FRET分析に用いられる、2種類の蛍光タンパク質を発現した細胞を作製する場合、第1蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子と、第2蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子とは、同一ベクター上に挿入してもよいし、別個のベクター上に挿入してもよい。
同一ベクター上に挿入する場合、両核酸分子は、別個のプロモーターの制御下におかれてもよいし、IRESバイシストロン性発現ベクターを用いて、同一プロモーターの制御下におくこともできる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよく、例えば、LCK近位プロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが用いられる。
発現ベクターは、必要に応じて、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーまたはレポーター遺伝子、SV40複製起点(SV40ori)などを含み得る。
選択マーカーおよびレポーター遺伝子としては、例えば、GFP遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
発現ベクターとしては、目的遺伝子が選択マーカーまたはレポーターと共に同一mRNAから発現される、IRESバイシストロン性発現ベクターが好ましい。IRESバイシストロン性発現ベクターとしては、例えば、pMX−IRES−GFP(Kitamuraら、Int.J.Hematol.,67,351−9(1998))、およびClontech社により市販されているベクターなどが挙げられる。
細胞への遺伝子導入は、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って行うことができる。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子を導入する細胞としては、好ましくは、生来pTαを発現していない細胞(例えば、TG40β、BW5147など)が挙げられる。
細胞への遺伝子導入の確認は、例えば、上記の選択マーカーおよびレポーターを利用する方法などにより行われ得る。
細胞を培養する培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清(FBS)を含む、MEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地、199培地などが用いられる。
培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約1日〜約1週間、好ましくは、約1日〜約3日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
TIRF顕微鏡分析において、細胞は、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡(Biochem.Biophys.Res.Commun.,235,47−53(1997);Nature,374,555−9(1995))を用いて画像化され得る。得られた画像の記録および分析は、AquaCosmosソフトウェア(Hamamatsu Photonics)などを用いて行われ得る。また、蛍光強度は、例えば、Nature,374,555−9(1995)に記載の方法に従って決定され得る。
FRET分析において、細胞における第1蛍光物質から第2蛍光物質への蛍光共鳴エネルギー転移は、例えば、フローサイトメトリーを用いて検出され得る。
(pTαとEPORとのキメラタンパク質を発現した細胞、またはpTαとTPORとのキメラタンパク質を発現した細胞を用いるスクリーニング方法)
エリスロポイエチンレセプター(EPOR)およびトロンボポイエチンレセプター(TPOR)は、変異により強制的に自己二量体を形成させた場合に、増殖にIL−3を必要とする細胞(以下、「IL−3依存性細胞」という)の増殖を、IL−3の非存在下で誘導し得ることが報告されている(Nature,348,647−649(1990);Blood,88,1399−1406(1996))。
このことから、pTαの細胞外ドメインとEPORの膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインと含むキメラタンパク質(以下、「pTα/EPORキメラ」ともいう)を発現させたIL−3依存性細胞、または、pTαの細胞外ドメインとTPORの膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインと含むキメラタンパク質(以下、「pTα/TPORキメラ」ともいう)を発現させたIL−3依存性細胞を用いれば、IL−3の非存在下での該細胞の増殖を指標として、pTαの自己二量体の形成を評価することができる。
上記キメラタンパク質に用いられるpTαとしては、好ましくは、ヒトpTαが用いられる。ヒトpTαの細胞外ドメインとしては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列(ヒトpTαの全長アミノ酸配列)中、アミノ酸番号17〜147で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
また、pTαにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
上記キメラタンパク質に用いられるEPORとしては、好ましくは、ヒトEPORが用いられる。ヒトEPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとしては、例えば、GenPept登録番号:AAA52403(配列番号4)で示されるアミノ酸配列(ヒトEPORの全長アミノ酸配列)中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
上記キメラタンパク質に用いられるTPORとしては、好ましくは、ヒトTPORが用いられる。ヒトTPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとしては、例えば、GenPept登録番号:NP_005364(配列番号6)で示されるアミノ酸配列(ヒトTPORの全長アミノ酸配列)中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
好ましくは、EPORまたはTPORは、その膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの全部が、キメラを構成するタンパク質として用いられるが、該キメラタンパク質が二量体を形成した場合に、これらの部分に起因して生じる活性(IL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性)が失われない限り、これらのドメインの任意の部分であってもよい(但し、該部分は、自律的二量体化をしない)。
また、EPORまたはTPORには、いくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラを発現するIL−3依存性細胞は、該キメラタンパク質をコードする核酸分子を作製し、該核酸分子をIL−3依存性細胞に導入することにより作製できる。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラをコードする核酸分子は、pTαまたはその細胞外ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子、ならびにEPORもしくはTPORまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子を用いて、当該分野で公知の遺伝子組換技術(例えば、PCR法を用いる技術)によって作製され得る。
pTαをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。pTαの細胞外ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
pTαをコードする核酸分子としては、例えば、GenBank登録番号:NM_138296(配列番号1)に示されるヒトpTαの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ、配列番号2に示されるpTαのアミノ酸配列を含有するタンパク質と、実質的に同質の活性(細胞外領域のアミノ酸残基の相互作用によって、自己二量体を形成する活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
EPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
EPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:M60459(配列番号3)に示されるヒトEPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号4に示されるEPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号3に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
TPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。TPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
TPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:NM_005373(配列番号5)に示されるヒトTPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号6に示されるTPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号5に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラをコードする核酸分子を含む発現ベクターは、上記のpTαと蛍光タンパク質とのキメラと同様の方法で作製することができる。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入は、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って行うことができる。
IL−3依存性細胞としては、例えば、マウスプロB細胞株Ba/F3(BAF3)、マウス肥満細胞株IC2、マウス骨髄細胞株F−36Pが挙げられる。好ましくは、BAF3が、IL−3依存性細胞として用いられ得る。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入の確認は、例えば、上記のpTαと蛍光タンパク質とのキメラにおいて例示したような選択マーカーおよびレポーターなどを利用する方法;EPORまたはTPORに対する抗体を用いたブロッティング;またはこれらの任意の組合わせにより行われ得る。
IL−3依存性細胞を培養する培地および条件としては、上記のpTαと蛍光タンパク質とのキメラにおいて例示したような培地および条件が挙げられる。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラの、pTα部分の間での相互作用の有無は、遺伝子導入したIL−3依存性細胞のIL−3非存在下での生存度により確認できる。細胞の生存度は、例えば、フローサイトメトリーにより、ヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定され得る。
本発明はまた、pTαの自己二量体形成を調節する物質を検出するためのキットを提供する。該キットは、上記スクリーニング方法において記載したpTαと蛍光物質とのキメラタンパク質を発現した細胞、または、pTαとEPORまたはTPORとのキメラタンパク質を発現したIL−3依存性細胞を含む。使用者は、本発明のキットを用いて上記のスクリーニング方法を実施することができる。
また、第2の局面では、本発明は、種々の細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を簡便に検出できるシステム(以下、「本発明の検出システム」と略記することがある)に関する。本発明の検出システムは、第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子、ならびに第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子を導入した、IL−3依存性細胞を、IL−3の非存在下で培養し、該細胞の増殖の有無を確認する工程を含む、細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出する方法(以下、「本発明の検出方法」と略記することがある)を提供する。
本発明の検出システムはまた、第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質、ならびに第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質を発現した、IL−3依存性細胞を提供する。
本発明の検出システムはまた、細胞表面タンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、キメラタンパク質を提供する。
本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質は、タンパク質間の相互作用について試験される細胞表面タンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプター(EPOR)またはトロンボポイエチンレセプター(TPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインから構成される。
本発明の検出システムにおいて、「第1のタンパク質」および「第2のタンパク質」とは、タンパク質間の細胞外領域における相互作用について試験される細胞表面タンパク質を意味する。
ここで、「第1のタンパク質」と「第2のタンパク質」は、同種のタンパク質であってもよいし、異種のタンパク質であってもよい。本発明の検出システムにおいて、「第1のタンパク質」もしくは「第2のタンパク質」またはこれらをまとめて、「被験タンパク質」ともいう。
本発明の検出システムにおける被験タンパク質としては、任意の天然または人工の細胞表面タンパク質が選択され得る。例えば、種々の細胞表面レセプターは、細胞の増殖、分化、生存などを制御する細胞内シグナル伝達系において重要な役割を果たし得るので、該レセプターを構成するタンパク質は、本発明の検出システムにおける被験タンパク質となり得る。
本発明の検出システムにおける被験タンパク質の具体例としては、pTα(例えば、GenBank登録番号:MN_138296;GenPept登録番号NP_612153;Saint−Ruf,C.et al.,Science,266,1208−1212,1994を参照);TCRα(例えば、GenBank登録番号:AY475220;GenPept登録番号:AAS48060を参照);TCRβ(例えば、GenBank登録番号:AY475218;GenPept登録番号:AAS48058を参照)などが挙げられるが、これらに限定されず、疎水性プロット(例えば、Kyte−Doolittleの疎水性分析)により膜貫通(膜結合)タンパク質と推定される任意のタンパク質であってもよい。
本発明の検出システムにおいて、「タンパク質の細胞外ドメイン」とは、細胞表面タンパク質の細胞外に存在する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本発明の検出システムにおいて、「エリスロポイエチンレセプター(EPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン」とは、好ましくは、ヒトEPORの、細胞膜を貫通する領域(ドメイン)および細胞質内に存在する領域(ドメイン)、またはそれと実質的に同一のタンパク質を意味する(以下、「EPORの活性ドメイン」と略記する場合がある)。
ここで「実質的に同一」とは、ヒトEPORの活性ドメインのアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、ヒトEPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するようなタンパク質をいう。
ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。
「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、水酸基を有するアミノ酸、側鎖の小さいアミノ酸などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は、タンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306−1310(1990)を参照)。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムであるNCBI BLASTを用いて、以下の条件(期待値=10、ギャップを許す、マトリクス=BLOSUM62、フィルタリング=OFF)で計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873−5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444−453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11−17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらは同様に好ましく用いられ得る。
EPORにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
好ましくは、EPORの活性ドメインとしては、GenPept登録番号:AAA52403で示されるアミノ酸配列(即ち、ヒトEPORの全長ORFからなるアミノ酸配列(配列番号4))中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
「ヒト由来のEPORの活性ドメインと実質的に同質の活性」としては、二量体の形成により、それを発現するIL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性などが挙げられる。
ここで、「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に同等であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
また、本発明の検出システムにおいて用いられるヒト由来のEPORの活性ドメインと実質的に同一のタンパク質としては、例えば、以下のアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、ヒトEPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するタンパク質等も含まれる:
(1)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列;
(2)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列;
(3)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列;
(4)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列;あるいは
(5)上記(1)〜(4)を組み合わせたアミノ酸配列。
ここで、「実質的に同質の活性」とは、上記と同義である。
アミノ酸配列が、欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位置は、当該タンパク質の活性を損なわず、かつ自己二量体化を引き起こさない限り、特に限定されない。
本発明の検出システムにおいて、「トロンボポイエチンレセプター(TPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン」とは、好ましくは、ヒトTPORの、細胞膜を貫通する領域(ドメイン)および細胞質内に存在する領域(ドメイン)、またはそれと実質的に同一のタンパク質を意味する(以下、「TPORの活性ドメイン」と略記する場合がある)。
ここで「実質的に同一」とは、ヒトTPORの活性ドメインのアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、ヒトTPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するようなタンパク質をいう(ここで「相同性」とは、上記と同義である)。
TPORにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
好ましくは、TPORの活性ドメインとしては、GenPept登録番号:NP_005364で示されるアミノ酸配列(即ち、ヒトTPORの全長ORFからなるアミノ酸配列(配列番号6))中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
「ヒト由来のTPORの活性ドメインと実質的に同質の活性」としては、二量体の形成により、それを発現するIL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性などが挙げられる。
ここで、「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に同等であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
また、本発明の検出システムにおいて用いられるヒト由来のTPORの活性ドメインと実質的に同一のタンパク質としては、例えば、以下のアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、ヒトTPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するタンパク質等も含まれる:
(1)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列;
(2)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列;
(3)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列;
(4)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列;あるいは
(5)上記(1)〜(4)を組み合わせたアミノ酸配列。
ここで、「実質的に同質の活性」とは、上記と同義である。
アミノ酸配列が、欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位置は、当該タンパク質の活性を損なわず、かつ自己二量体化を引き起こさない限り、特に限定されない。
本発明の検出システムにおいて、EPORまたはTPORは、好ましくは、その膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの全部が、本検出システムに用いられるキメラタンパク質を構成するタンパク質として用いられるが、該キメラタンパク質が二量体を形成した場合に、それらに由来するドメインに起因して生じる活性(IL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性)が失われない限り、これらのドメインの任意の部分であってもよい(但し、該部分は、自律的二量体化をしない)。
また、本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質は、EPORまたはTPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに加えて、それらの細胞外領域の一部を含んでいてもよい。
本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質をコードする核酸分子は、被験タンパク質またはその細胞外ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子、ならびにEPORもしくはTPORまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子を用いて、当該分野で公知の遺伝子組換技術(例えば、PCR法を用いる技術)によって作製され得る。
被験タンパク質をコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。被験タンパク質の細胞外ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、Polymerase Chain Reaction(PCR)法、Reverse Transcriptase−Polymerase Chain Reaction(RT−PCR)法などによって増幅することができる。
被験タンパク質の候補となり得る、種々の細胞表面タンパク質またはその細胞外ドメインの塩基配列およびアミノ酸配列に関する情報は、公に利用可能な情報源(例えば、学術文献、特許文献、遺伝子およびタンパク質のデータベース(例えば、GenBank、GenPeptなど))から入手可能である。
EPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
EPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:M60459(配列番号3)に示されるヒトEPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号4に示されるEPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号3に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
TPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。TPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
TPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:NM_005373(配列番号5)に示されるヒトTPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号6に示されるTPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号5に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件:期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3にて計算することができる。
塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning、第2版(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム塩濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMで、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃の条件等が挙げられる。持に、ナトリウム塩濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。
当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダイゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができることを理解する。
本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターは、例えば、本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質をコードする核酸分子から、目的とする断片(目的遺伝子)を調製し、該断片を適切な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより作製することができる。
発現ベクターとしては、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター(例えば、IRESバイシストロン性発現ベクター、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo、pME18S)などが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよく、例えば、LCK近位プロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが用いられる。
発現ベクターは、必要に応じて、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーまたはレポーター遺伝子、SV40複製起点(SV40ori)などを含み得る。
選択マーカーおよびレポーター遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
発現ベクターとしては、目的遺伝子が選択マーカーまたはレポーターと共に同一mRNAから発現される、IRESバイシストロン性発現ベクターが好ましい。IRESバイシストロン性発現ベクターとしては、例えば、pMX−IRES−GFP(Kitamuraら、Int.J.Hematol.,67,351−9(1998))、およびClontech社により市販されているベクターなどが挙げられる。
第1のタンパク質と第2のタンパク質とが異種である場合、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子と、第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子とは、同一ベクター上に挿入してもよいし、別個のベクター上に挿入してもよい。
同一ベクター上に挿入する場合、両核酸分子は、別個のプロモーターの制御下におかれてもよいし、上記IRESバイシストロン性発現ベクターを用いて、同一プロモーターの制御下におくこともできる。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入は、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って行うことができる。
IL−3依存性細胞細胞としては、例えば、マウスプロB細胞株Ba/F3(本明細書において、「BAF3」とも表記する)、マウス肥満細胞株IC2、マウス骨髄細胞株F−36Pが挙げられる。
本発明の検出システムにおいて、好ましくは、BAF3が、IL−3依存性細胞として用いられ得る。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入の確認は、例えば、上記の選択マーカーおよびレポーターを利用する方法、EPORまたはTPORに対する抗体を用いたブロッティング、またはこれらの任意の組合わせにより行われ得る。
細胞を培養する培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清(FBS)を含む、MEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地、199培地などが用いられる。
培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約1日〜約1週間、好ましくは、約1日〜約3日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
第1のタンパク質と第2のタンパク質が、特定のリガンドの存在下で相互作用し得る場合は、適当な濃度の該リガンドが培地に添加され得る。
従って、本発明の検出システムはまた、相互作用することが既知であり、かつそのリガンドが未知である細胞表面タンパク質のスクリーニング方法を提供する。
あるいは、本発明の検出システムはまた、リガンドが公知である細胞表面タンパク質のアゴニスト、アンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。
本発明の検出システムにおいて、細胞外領域での第1のタンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用の有無は、遺伝子導入したIL−3依存性細胞の生存度により確認できる。細胞の生存度は、例えば、フローサイトメトリーにより、ヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定され得る。
第1のタンパク質と第2のタンパク質が異種である場合、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用の他に、第1のタンパク質間の相互作用および/または第2のタンパク質間の相互作用も考えられる。
従って、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用の有無は、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子と第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子の両方をIL−3依存性細胞に導入した場合の該細胞のIL−3非存在下での生存度と、第1および第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子をそれぞれ単独でIL−3依存性細胞に導入した場合の生存度とを、比較することにより検討することがより望ましい。
本発明の検出システムはまた、細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出するためのキットを提供する。本検出キットは、EPORもしくはTPORまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする核酸分子;発現ベクター;ならびにIL−3依存性細胞を含む。
本検出キットの使用者は、試験する細胞表面タンパク質またはその細胞外ドメインをコードする核酸分子を準備すれば、本検出キットを使用して、上記の手順に従って、被験タンパク質間の細胞外領域における相互作用の有無を確認することができる。
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
本明細書において、「核酸分子」とは、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAのことを意味する。本明細書において、「ヌクレオチド配列」とは、特に言及しない限り、デオキシリボヌクレオチド(A、G、C、およびTで表す)の配列、またはリボヌクレオチド(A、G、C、およびUで表す)の配列を意味する。本明細書中において、特に言及しない限り、一本鎖ヌクレオチド配列は、左端が5’末端、右端が3’末端を表す。
本明細書において、特に言及しない限り、アミノ酸の表記は、アミノ酸に関する標準的な表記である1文字略号または3文字略号を使用する。本明細書において、特に言及しない限り、アミノ酸配列は、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)を表す。
本明細書において、「T細胞前駆体」とは、CD4およびCD8の発現を欠いている胸腺細胞(「CD4−CD8−ダブルネガティブ胸腺細胞」または「DN細胞」ともいう)を意味する。
本明細書において、「T細胞分化を調節する」とは、CD4−CD8−ダブルネガティブ胸腺細胞(DN細胞)から、CD4+CD8+ダブルポジティブ胸腺細胞(DP細胞)へと分化するプロセス(すなわち、β選択)を、促進または抑制することを意味する。
本明細書において、「プレT細胞抗原レセプターα鎖(pTα)の自己二量体形成を調節する」とは、DN細胞の細胞表面におけるpTαの自己二量体化を促進または抑制することを意味する。
本発明に用いる場合、「プレT細胞抗原レセプターα鎖(pTα)」とは、好ましくは、ヒト由来のpTαもしくはそれと実質的に同一のタンパク質を意味する。
ここで、「実質的に同一」とは、ヒト由来のpTαのアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは、約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列を有するタンパク質がヒト由来のpTαと実質的に同質の活性を有するような配列をいう。
ここで、「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。
「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、水酸基を有するアミノ酸、側鎖の小さいアミノ酸などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は、タンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306−1310(1990)を参照)。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムであるNCBI BLASTを用いて、以下の条件(期待値=10、ギャップを許す、マトリクス=BLOSUM62、フィルタリング=OFF)で計算することができる。
アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873−5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444−453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11−17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらは同様に好ましく用いられ得る。
pTαにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、本発明では、そのいずれを用いてもよい。
本発明に用いられるヒトpTαとしては、好ましくは、GenPept登録番号NP_612153(配列番号2)に示されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
また、本発明に用いられるヒト由来のpTαと実質的に同一のタンパク質としては、例えば、以下のアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、ヒトpTαと実質的に同質の活性を有するタンパク質等も含まれる:
(1)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列;
(2)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列;
(3)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列;
(4)配列番号2に示されるヒトpTαのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列;あるいは
(5)上記(1)〜(4)を組み合わせたアミノ酸配列。
アミノ酸配列が、欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位置は、当該タンパク質の活性を損なわない限り、特に限定されない。
pTαについて、実質的に同質の活性としては、pTαが自己二量体を形成して、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を誘導する活性などが挙げられる。
ここで、「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に同等であることを意味する。従って、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
pTαの自己二量体形成は、後述するスクリーニング方法に記載される方法により確認および定量できる。また、DN細胞からDP細胞への移行は、細胞表面に発現するCD4分子およびCD8分子を、これらの各々に特異的に反応する抗体を用いて検出することにより確認および定量できる。該抗体の検出法としては、例えば、蛍光を利用する方法(例えば、Fluorescence Activated Cell Sorter(FACS)法)、酵素反応を利用する方法(例えば、Enzyme−Linked Immunosorbent Assay(ELISA)法)、ラジオアイソトープを利用する方法などが挙げられる。
本明細書において、タンパク質の「細胞外ドメイン」とは、特に言及しない限り、細胞表面タンパク質の細胞外に存在する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本明細書において、タンパク質の「膜貫通ドメイン」とは、特に言及しない限り、細胞表面タンパク質の細胞膜を貫通する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本明細書において、タンパク質の「細胞質ドメイン」とは、特に言及しない限り、細胞表面タンパク質の細胞質内に存在する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本明細書において、「キメラタンパク質」(以下、単に「キメラ」ともいう)とは、特に言及しない限り、異なるタンパク質に由来する2つ以上のドメインから構成される融合タンパク質を意味する。
本明細書において、「IL−3依存性細胞」とは、生存/増殖にIL−3を必要とする細胞(換言すれば、IL−3の非存在下では増殖できない細胞)のことを意味する。
以下、本発明の実施形態について説明する。
第1の局面において、本発明は、T細胞分化調節剤、T細胞分化を調節する方法、およびT細胞分化調節剤のスクリーニング方法に関する。
(T細胞分化調節剤およびT細胞分化を調節する方法)
本発明は、pTαの自己二量体形成を調節する物質を含むT細胞分化調節剤を提供する。より具体的には、本発明は、pTαの自己二量体形成を促進する物質を含むT細胞分化促進剤およびpTαの自己二量体形成を抑制する物質を含むT細胞分化抑制剤を提供する。
(T細胞分化促進剤)
1つの実施形態において、本発明のT細胞分化調節剤は、T細胞分化促進剤であり、該促進剤は、T細胞前駆体(すなわち、DN細胞)の細胞表面におけるpTαの自己二量体形成を促進する物質を含む。このような物質は、pTαの自己二量体形成を直接的または間接的に促進することによって、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を促進することができる。
pTαの自己二量体形成を促進する物質としては、他の遺伝子および/またはタンパク質に及ぼす影響を最小限にするために、標的分子であるpTαに特異的に作用し得る物質であることが望ましい。このような物質としては、例えば、pTαをコードする核酸分子、および後述するスクリーニング方法によって得られる物質が挙げられる。
「pTαをコードする核酸分子」とは、DN細胞に導入された場合に、該細胞においてpTαを発現させることができる核酸分子のことを意味する。該核酸分子により発現したpTαは、それらの間で、または該核酸分子を導入した細胞が生来有するpTαと二量体を形成して、β選択を促進させることができる。
pTαをコードする核酸分子としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。pTαをコードする核酸分子は、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、RT−PCR(Reverse Transcriptase−Polymerase Chain Reaction)法などによって増幅することができる。
pTαをコードする核酸分子としては、例えば、GenBank登録番号:NM_138296(配列番号1)に示されるヒトpTαの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ、配列番号2に示されるpTαのアミノ酸配列を含有するタンパク質と、実質的に同質の活性(細胞外領域のアミノ酸残基の相互作用によって、自己二量体を形成する活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
本明細書において、塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件:期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3にて計算することができる。
塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning、第2版(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム塩濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMであり、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃である条件等が挙げられる。特に、ナトリウム塩濃度が約19mMであり、温度が約65℃である場合が好ましい。
当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダイゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができることを理解する。
pTαをコードする核酸分子は、例えば、適切な発現ベクターに挿入した後、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って、T細胞前駆体(DN細胞)に導入され得る。
pTαをコードする核酸分子を含む発現ベクターは、例えば、pTαをコードする核酸分子から目的とする断片を調製し、該断片を発現ベクター中の適切なプロモーターの下流に連結することにより作製することができる。
発現ベクターとしては、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター(例えば、IRESバイシストロン性発現ベクター、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo、pME18S)などが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応する適切なプロモーターであればいかなるものでもよく、例えば、LCK近位プロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが用いられる。
発現ベクターは、必要に応じて、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーまたはレポーター遺伝子、SV40複製起点(SV40ori)などを含み得る。
選択マーカーおよびレポーター遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
(T細胞分化抑制剤)
別の実施形態において、本発明のT細胞分化調節剤は、T細胞分化抑制剤であり、該抑制剤は、T細胞前駆体(すなわち、DN細胞)の細胞表面におけるpTαの自己二量体形成を抑制する物質を含む。このような物質は、pTαの自己二量体形成を直接的または間接的に抑制することによって、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を抑制することができる。
pTαの自己二量体形成を抑制する物質としては、他の遺伝子および/またはタンパク質に及ぼす影響を最小限にするために、標的分子であるpTαに特異的に作用し得る物質であることが望ましい。このような物質としては、例えば、pTαに対する、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNAおよび抗体;pTαの細胞外ドメインのフラグメント;ならびに後述するスクリーニング方法によって得られる物質が挙げられる。
pTαに対する、アンチセンス核酸、リボザイムおよびsiRNAは、T細胞前駆体中のpTαをコードする核酸分子に作用し、DN細胞におけるpTαの発現そのものを抑制することができる。
アンチセンス核酸は、生理的条件下で、標的mRNA(初期転写産物)とハイブリダイズし得る塩基配列からなり、かつハイブリダイズした状態で標的mRNA(初期転写産物)にコードされるタンパク質またはポリペプチドの翻訳を阻害し得る核酸であり得る。
アンチセンス核酸の種類はDNAであってもRNAであってもよいし、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、天然型のアンチセンス核酸は、細胞中に存在する核酸分解酵素によって、そのリン酸ジエステル結合が容易に分解されるので、酵素分解に安定なチオリン酸型(リン酸結合のP=OをP=Sに置換)、2’−O−メチル型などの修飾ヌクレオチドを用いて、アンチセンス核酸を合成してもよい。
アンチセンス核酸の設計に重要な他の要素として、水溶性及び細胞膜透過性を高めること等が挙げられるが、これらはリポソームやマイクロスフェアを使用するなどの剤形の工夫によっても克服することができる。
アンチセンス核酸の長さは、標的mRNAもしくは初期転写産物と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はないが、例えば、少なくとも約15塩基程度、長いものでmRNA(初期転写産物)の全配列に相補的な配列を含むような配列であってもよい。合成の容易さや抗原性の問題等から、好ましくは約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。
また、アンチセンス核酸は、標的mRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAである標的遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、mRNAへの転写を阻害し得るものであってもよい。
リボザイムとは、核酸を切断する酵素活性を有する核酸分子(主に、RNA)をいう。本発明では、pTαのmRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るものを意図する。
また最近では、当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、リボザイムは、配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。
リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。
siRNAとは、標的mRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相当する二本鎖オリゴRNAである。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が動物細胞でも起こることが確認されたことから(Nature,411(6836):494−498(2001))、リボザイムの代替技術として注目されている。
アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、例えば、pTαのcDNA配列(例えば、配列番号1)に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。
siRNAは、例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分間程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後、リガーゼを用いてライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
pTαに対する抗体、およびpTαの細胞外ドメインのフラグメントは、pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基の1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)に作用することによって、pTαの自己二量体形成を抑制することができる。
「pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基」は、pTαの細胞外に存在する領域(ドメイン)に存在する荷電したアミノ酸残基であり得る。例えば、ヒトpTαの場合、pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基としては、配列番号2のアミノ酸配列中の38番目のAsp;40番目のLys;118番目のArg;および133番目のArgが挙げられる。
これらのアミノ酸は、種の間で高度に保存されているので、ヒト以外の種を対象とする場合、上記に対応するアミノ酸残基を標的とすればよい。
pTαに対する抗体は、pTαの二量体形成を阻害し得る限り、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でもよく、以下に例示するような、当該分野で周知の免疫学的手法により作製することができる。さらに、抗pTα抗体のフラグメントもまた、pTαの二量体形成を阻害し得る限り用いられ得る。このような抗体のフラグメントとしては、例えば、Fab、F(ab’)2、ScFv、minibody等が挙げられる。
ポリクローナル抗体は、例えば、pTαまたはそのフラグメントを抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。
抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
上記抗原としてpTαのフラグメントを用いる場合、該フラグメントは、pTαの自己二量体形成に関与するアミノ酸残基の1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)を含む。
モノクローナル抗体(mAb)は、例えば、細胞融合法により作製することができる。例えば、マウスに上記抗原を市販のアジュバントと共に2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS−1、P3X63Ag8など)を細胞融合して該抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。
この細胞融合は、PEG法[J.Immunol.Methods,81(2):223−228(1985)]で行ってもよいし、電圧パルス法[Hybridoma,7(6):627−633(1988)]で行ってもよい。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、好ましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得することができる。
上記抗pTα抗体は、ヒトに用いる場合の効果と安全性を考慮すると、ヒトと他の動物(例えば、マウス等)のキメラ抗体であることが好ましく、ヒト化抗体であることがさらに好ましく、完全ヒト抗体であることが特に好ましい。
ここで「キメラ抗体」とは免疫動物由来の可変部(V領域)とヒト由来の定常部(C領域)を有する抗体のことをいい、「ヒト化抗体」とはCDRを除いて他の領域をすべてヒト抗体に置き換えた抗体のことをいう。
キメラ抗体やヒト化抗体は、例えば、上記と同様の方法により作製したマウスモノクローナル抗体の遺伝子からV領域もしくはCDRをコードする配列を切り出し、ヒト骨髄腫由来の抗体のC領域をコードするDNAと融合したキメラ遺伝子を適当な発現ベクター中にクローニングし、これを適当な宿主細胞に導入して該キメラ遺伝子を発現させることにより取得することができる。
完全ヒト抗体は、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生動物、またはファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
ヒト抗体産生動物としては、例えば、XenoMouse(Abgenix社製);Hu−Mab Mouse(Medarex社製);KMマウス(キリンビール社製)などが挙げられる。
ファージディスプレイライブラリーとしては、CAT社のライブラリー;MRC社のライブラリー;Dyax社のライブラリー;Morphosys社のHuCALライブラリー;BioInvent社のライブラリー;Crucell社のライブラリー等が挙げられる。
pTαの細胞外ドメインのフラグメントとは、DN細胞の生来のpTαとのオリゴマー形成能力を有するが、DN細胞からDP細胞への移行(すなわち、β選択)を誘導することができない、pTαの細胞外領域(ドメイン)の任意のフラグメントのことを意味する。このようなフラグメントは、DN細胞の生来のpTαに対して、別の生来のpTαと競合的に結合することで、生来のpTα同士の結合を阻害することができる。具体的には、本発明で用いられるpTαの細胞外ドメインのフラグメントは、自己二量体形成に関与するアミノ酸残基の1つ以上(例えば、1、2、3または4つ)を含むが、DN細胞の生来のpTαと結合してもβ選択を誘導することができないフラグメントである。
ここで、該フラグメント中の自己二量体形成に関与するアミノ酸残基は、ヒトpTαについて上記したアミノ酸残基が挙げられるが、これらのアミノ酸残基は、二量体形成能が失われない限り、類似アミノ酸により置換されていてもよい(例えば、AspとGlu;ArgとLysとの間の保存的アミノ酸置換)。
本発明はまた、インビトロまたはインビボにおいて、pTαの自己二量体形成を調節することによって、T細胞分化を調節する方法を提供する。
1つの実施形態において、本方法は、インビトロにおいて、pTαの自己二量体形成を調節することによって、T細胞分化を調節する方法に関し、該方法は、上記のT細胞分化調節剤の存在下で、T細胞前駆体(すなわち、DN細胞)を培養することを含む。
T細胞分化調節剤として核酸分子を用いる場合、該核酸分子は、単独で、又はプラスミド若しくはウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)などの適切なベクターに挿入した後、当該分野で周知の方法に従って、T細胞前駆体に導入され得る。
また、T細胞分化調節剤としてタンパク質を用いる場合、該タンパク質は、そのまま培地に混合され得る。あるいは、当該タンパク質をコードする核酸分子を単独又は適切なベクターに挿入した後、当該分野で周知の方法に従って、細胞に導入してもよい。
細胞を培養する培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清(FBS)を含む、MEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地、199培地などが用いられる。
培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約1日〜約1週間、好ましくは、約1日〜約3日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
別の実施形態において、本方法は、インビボにおいて、pTαの自己二量体形成を調節することによって、T細胞分化を調節する方法に関し、該方法は、上記のT細胞分化調節剤を哺乳動物に投与することを含む。
哺乳動物としては、例えば、霊長類、実験用動物、家畜、ペット等が挙げられ、特に限定はされないが、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
T細胞分化調節剤として核酸分子を用いる場合、該核酸分子を単独で、又はプラスミド、ウイルスベクターなどの適切なベクター(例えば、上記で発現ベクターとして列挙したもの)に挿入した後、当該分野で周知の方法に従って、哺乳動物に投与することができる。
また、T細胞分化調節剤としてタンパク質を用いる場合は、剤形を工夫することによって、当該分野で公知のDDS(drug delivery system)技術により当該タンパク質自体を哺乳動物に投与することができる。あるいは、当該タンパク質をコードする核酸分子を単独で、又は適切なベクター(例えば、上記で発現ベクターとして列挙したもの)に挿入した後、当該分野で周知の方法に従って投与することもできる。
本発明のT細胞分化調節剤は、薬学的に許容され得る担体をさらに含み得る。薬学的に許容され得る担体としては、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、粘稠剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。本発明のT細胞分化調節剤は、上記の担体の一つ以上を用いることにより、経口あるいは非経口的に投与することができる。
T細胞分化調節剤の投与量は、投与対象、投与方法、処理時間、あるいは該剤に含有される活性成分の種類などにより異なるが、通常、成人(体重60kgとして)一人当たり、一回につき10μgから1000mgの範囲で投与することができる。
なお、ヒト以外の哺乳動物の場合も、上記値を当該哺乳動物の体重で換算した量を投与することができる。しかしながら、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を越える投与量が必要な場合もある。
(T細胞分化調節剤のスクリーニング方法)
本発明はまた、T細胞分化調節剤のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、被験物質がpTαの自己二量体形成を調節(促進または抑制)するか否か評価することを含む。具体的には、該評価は、被験物質の存在下と非存在下でのpTαの自己二量体形成の程度を比較することで行うことができる。
本スクリーニング方法に用いられる「被験物質」は、いかなる公知化合物でも新規化合物でもよい。被験物質としては、特に制限はされないが、例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、抗体、有機もしくは無機の低分子化合物、有機もしくは無機の高分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物等由来の天然成分等が挙げられる。
pTαの自己二量体形成は、例えば、以下の方法によって検出および定量することができる:
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を用いる方法;ならびに
pTαとエリスロポイエチンレセプター(EPOR)とのキメラタンパク質を発現した細胞、またはpTαとトロンボポイエチンレセプター(TPOR)とのキメラタンパク質を発現した細胞を用いる方法。
(pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を用いるスクリーニング方法)
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を用いるスクリーニング方法としては、例えば、全反射蛍光(Total Internal Reflection Fluorescence:TIRF)顕微鏡分析;蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Enargy Transfer:FRET)分析が挙げられる。
TIRF顕微鏡分析を用いるスクリーニング方法は、pTαと蛍光タンパク質とのキメラを発現した細胞を用いて、pTαの単体と二量体を、その輝点の蛍光強度から区別して検出し得る。
この分析に用いられる蛍光タンパク質としては、GFP、RFP、YFP、CFP、Kusabira−orangeなどが挙げられる。
FRET分析を用いるスクリーニング方法は、第1蛍光タンパク質(励起光波長λ0;蛍光波長λ1)とpTαとのキメラタンパク質と、第2蛍光タンパク質(励起光波長λ1;蛍光波長λ2)とpTαとのキメラタンパク質の両方を発現した細胞を用いて、該細胞に波長λ0の光を照射して、二量体の形成を示す波長λ2の蛍光を検出し得る。
この分析に用いられる第1と第2の蛍光タンパク質の組合わせとしては、CFPとYFPなどが挙げられる。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質に用いられるpTαとしては、好ましくは、ヒトpTαが用いられる。ヒトpTαとしては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
pTαにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を発現する細胞は、該キメラタンパク質をコードする核酸分子を作製し、該核酸分子を適切な細胞に導入することにより作製できる。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子は、pTαをコードする核酸分子、ならびに所望の蛍光タンパク質をコードする核酸分子を用いて、当該分野で公知の遺伝子組換技術(例えば、PCR法を用いる技術)によって作製され得る。
pTαをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。
このような核酸分子としては、例えば、GenBank登録番号:NM_138296(配列番号1)に示されるヒトpTαの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ、配列番号2に示されるpTαのアミノ酸配列を含有するタンパク質と、実質的に同質の活性(細胞外領域のアミノ酸残基の相互作用によって、自己二量体を形成する活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
種々の蛍光タンパク質の塩基配列に関する情報は、公に利用可能な情報源(例えば、学術文献、特許文献、遺伝子およびタンパク質のデータベース(例えば、GenBankなど))から入手可能である。また、種々の蛍光タンパク質遺伝子は、例えば、BD Bisciences Clontechなどから市販されている。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターは、例えば、該キメラタンパク質をコードする核酸分子から目的とする断片(目的遺伝子)を調製し、該断片を適切な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより作製することができる。
発現ベクターおよびプロモーターとしては、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター(例えば、IRESバイシストロン性発現ベクター、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo、pME18S)などが用いられる。
FRET分析に用いられる、2種類の蛍光タンパク質を発現した細胞を作製する場合、第1蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子と、第2蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子とは、同一ベクター上に挿入してもよいし、別個のベクター上に挿入してもよい。
同一ベクター上に挿入する場合、両核酸分子は、別個のプロモーターの制御下におかれてもよいし、IRESバイシストロン性発現ベクターを用いて、同一プロモーターの制御下におくこともできる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよく、例えば、LCK近位プロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが用いられる。
発現ベクターは、必要に応じて、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーまたはレポーター遺伝子、SV40複製起点(SV40ori)などを含み得る。
選択マーカーおよびレポーター遺伝子としては、例えば、GFP遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
発現ベクターとしては、目的遺伝子が選択マーカーまたはレポーターと共に同一mRNAから発現される、IRESバイシストロン性発現ベクターが好ましい。IRESバイシストロン性発現ベクターとしては、例えば、pMX−IRES−GFP(Kitamuraら、Int.J.Hematol.,67,351−9(1998))、およびClontech社により市販されているベクターなどが挙げられる。
細胞への遺伝子導入は、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って行うことができる。
pTαと蛍光タンパク質とのキメラタンパク質をコードする核酸分子を導入する細胞としては、好ましくは、生来pTαを発現していない細胞(例えば、TG40β、BW5147など)が挙げられる。
細胞への遺伝子導入の確認は、例えば、上記の選択マーカーおよびレポーターを利用する方法などにより行われ得る。
細胞を培養する培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清(FBS)を含む、MEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地、199培地などが用いられる。
培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約1日〜約1週間、好ましくは、約1日〜約3日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
TIRF顕微鏡分析において、細胞は、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡(Biochem.Biophys.Res.Commun.,235,47−53(1997);Nature,374,555−9(1995))を用いて画像化され得る。得られた画像の記録および分析は、AquaCosmosソフトウェア(Hamamatsu Photonics)などを用いて行われ得る。また、蛍光強度は、例えば、Nature,374,555−9(1995)に記載の方法に従って決定され得る。
FRET分析において、細胞における第1蛍光物質から第2蛍光物質への蛍光共鳴エネルギー転移は、例えば、フローサイトメトリーを用いて検出され得る。
(pTαとEPORとのキメラタンパク質を発現した細胞、またはpTαとTPORとのキメラタンパク質を発現した細胞を用いるスクリーニング方法)
エリスロポイエチンレセプター(EPOR)およびトロンボポイエチンレセプター(TPOR)は、変異により強制的に自己二量体を形成させた場合に、増殖にIL−3を必要とする細胞(以下、「IL−3依存性細胞」という)の増殖を、IL−3の非存在下で誘導し得ることが報告されている(Nature,348,647−649(1990);Blood,88,1399−1406(1996))。
このことから、pTαの細胞外ドメインとEPORの膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインと含むキメラタンパク質(以下、「pTα/EPORキメラ」ともいう)を発現させたIL−3依存性細胞、または、pTαの細胞外ドメインとTPORの膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインと含むキメラタンパク質(以下、「pTα/TPORキメラ」ともいう)を発現させたIL−3依存性細胞を用いれば、IL−3の非存在下での該細胞の増殖を指標として、pTαの自己二量体の形成を評価することができる。
上記キメラタンパク質に用いられるpTαとしては、好ましくは、ヒトpTαが用いられる。ヒトpTαの細胞外ドメインとしては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列(ヒトpTαの全長アミノ酸配列)中、アミノ酸番号17〜147で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
また、pTαにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
上記キメラタンパク質に用いられるEPORとしては、好ましくは、ヒトEPORが用いられる。ヒトEPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとしては、例えば、GenPept登録番号:AAA52403(配列番号4)で示されるアミノ酸配列(ヒトEPORの全長アミノ酸配列)中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
上記キメラタンパク質に用いられるTPORとしては、好ましくは、ヒトTPORが用いられる。ヒトTPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとしては、例えば、GenPept登録番号:NP_005364(配列番号6)で示されるアミノ酸配列(ヒトTPORの全長アミノ酸配列)中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列、またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質が用いられる(ここで、「実質的に同一」とは、上記と同義である)。
好ましくは、EPORまたはTPORは、その膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの全部が、キメラを構成するタンパク質として用いられるが、該キメラタンパク質が二量体を形成した場合に、これらの部分に起因して生じる活性(IL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性)が失われない限り、これらのドメインの任意の部分であってもよい(但し、該部分は、自律的二量体化をしない)。
また、EPORまたはTPORには、いくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラを発現するIL−3依存性細胞は、該キメラタンパク質をコードする核酸分子を作製し、該核酸分子をIL−3依存性細胞に導入することにより作製できる。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラをコードする核酸分子は、pTαまたはその細胞外ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子、ならびにEPORもしくはTPORまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子を用いて、当該分野で公知の遺伝子組換技術(例えば、PCR法を用いる技術)によって作製され得る。
pTαをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。pTαの細胞外ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
pTαをコードする核酸分子としては、例えば、GenBank登録番号:NM_138296(配列番号1)に示されるヒトpTαの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ、配列番号2に示されるpTαのアミノ酸配列を含有するタンパク質と、実質的に同質の活性(細胞外領域のアミノ酸残基の相互作用によって、自己二量体を形成する活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
EPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
EPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:M60459(配列番号3)に示されるヒトEPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号4に示されるEPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号3に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
TPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。TPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
TPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:NM_005373(配列番号5)に示されるヒトTPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号6に示されるTPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号5に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラをコードする核酸分子を含む発現ベクターは、上記のpTαと蛍光タンパク質とのキメラと同様の方法で作製することができる。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入は、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って行うことができる。
IL−3依存性細胞としては、例えば、マウスプロB細胞株Ba/F3(BAF3)、マウス肥満細胞株IC2、マウス骨髄細胞株F−36Pが挙げられる。好ましくは、BAF3が、IL−3依存性細胞として用いられ得る。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入の確認は、例えば、上記のpTαと蛍光タンパク質とのキメラにおいて例示したような選択マーカーおよびレポーターなどを利用する方法;EPORまたはTPORに対する抗体を用いたブロッティング;またはこれらの任意の組合わせにより行われ得る。
IL−3依存性細胞を培養する培地および条件としては、上記のpTαと蛍光タンパク質とのキメラにおいて例示したような培地および条件が挙げられる。
pTα/EPORキメラまたはpTα/TPORキメラの、pTα部分の間での相互作用の有無は、遺伝子導入したIL−3依存性細胞のIL−3非存在下での生存度により確認できる。細胞の生存度は、例えば、フローサイトメトリーにより、ヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定され得る。
本発明はまた、pTαの自己二量体形成を調節する物質を検出するためのキットを提供する。該キットは、上記スクリーニング方法において記載したpTαと蛍光物質とのキメラタンパク質を発現した細胞、または、pTαとEPORまたはTPORとのキメラタンパク質を発現したIL−3依存性細胞を含む。使用者は、本発明のキットを用いて上記のスクリーニング方法を実施することができる。
また、第2の局面では、本発明は、種々の細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を簡便に検出できるシステム(以下、「本発明の検出システム」と略記することがある)に関する。本発明の検出システムは、第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子、ならびに第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子を導入した、IL−3依存性細胞を、IL−3の非存在下で培養し、該細胞の増殖の有無を確認する工程を含む、細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出する方法(以下、「本発明の検出方法」と略記することがある)を提供する。
本発明の検出システムはまた、第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質、ならびに第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質を発現した、IL−3依存性細胞を提供する。
本発明の検出システムはまた、細胞表面タンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、キメラタンパク質を提供する。
本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質は、タンパク質間の相互作用について試験される細胞表面タンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプター(EPOR)またはトロンボポイエチンレセプター(TPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインから構成される。
本発明の検出システムにおいて、「第1のタンパク質」および「第2のタンパク質」とは、タンパク質間の細胞外領域における相互作用について試験される細胞表面タンパク質を意味する。
ここで、「第1のタンパク質」と「第2のタンパク質」は、同種のタンパク質であってもよいし、異種のタンパク質であってもよい。本発明の検出システムにおいて、「第1のタンパク質」もしくは「第2のタンパク質」またはこれらをまとめて、「被験タンパク質」ともいう。
本発明の検出システムにおける被験タンパク質としては、任意の天然または人工の細胞表面タンパク質が選択され得る。例えば、種々の細胞表面レセプターは、細胞の増殖、分化、生存などを制御する細胞内シグナル伝達系において重要な役割を果たし得るので、該レセプターを構成するタンパク質は、本発明の検出システムにおける被験タンパク質となり得る。
本発明の検出システムにおける被験タンパク質の具体例としては、pTα(例えば、GenBank登録番号:MN_138296;GenPept登録番号NP_612153;Saint−Ruf,C.et al.,Science,266,1208−1212,1994を参照);TCRα(例えば、GenBank登録番号:AY475220;GenPept登録番号:AAS48060を参照);TCRβ(例えば、GenBank登録番号:AY475218;GenPept登録番号:AAS48058を参照)などが挙げられるが、これらに限定されず、疎水性プロット(例えば、Kyte−Doolittleの疎水性分析)により膜貫通(膜結合)タンパク質と推定される任意のタンパク質であってもよい。
本発明の検出システムにおいて、「タンパク質の細胞外ドメイン」とは、細胞表面タンパク質の細胞外に存在する領域(ドメイン)の全部またはその任意のフラグメントを意味する。
本発明の検出システムにおいて、「エリスロポイエチンレセプター(EPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン」とは、好ましくは、ヒトEPORの、細胞膜を貫通する領域(ドメイン)および細胞質内に存在する領域(ドメイン)、またはそれと実質的に同一のタンパク質を意味する(以下、「EPORの活性ドメイン」と略記する場合がある)。
ここで「実質的に同一」とは、ヒトEPORの活性ドメインのアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、ヒトEPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するようなタンパク質をいう。
ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。
「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸、脂肪族アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、水酸基を有するアミノ酸、側鎖の小さいアミノ酸などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換は、タンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306−1310(1990)を参照)。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムであるNCBI BLASTを用いて、以下の条件(期待値=10、ギャップを許す、マトリクス=BLOSUM62、フィルタリング=OFF)で計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873−5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444−453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11−17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらは同様に好ましく用いられ得る。
EPORにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
好ましくは、EPORの活性ドメインとしては、GenPept登録番号:AAA52403で示されるアミノ酸配列(即ち、ヒトEPORの全長ORFからなるアミノ酸配列(配列番号4))中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
「ヒト由来のEPORの活性ドメインと実質的に同質の活性」としては、二量体の形成により、それを発現するIL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性などが挙げられる。
ここで、「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に同等であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
また、本発明の検出システムにおいて用いられるヒト由来のEPORの活性ドメインと実質的に同一のタンパク質としては、例えば、以下のアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、ヒトEPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するタンパク質等も含まれる:
(1)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列;
(2)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列;
(3)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列;
(4)配列番号4のアミノ酸配列中、アミノ酸番号251〜508で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列;あるいは
(5)上記(1)〜(4)を組み合わせたアミノ酸配列。
ここで、「実質的に同質の活性」とは、上記と同義である。
アミノ酸配列が、欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位置は、当該タンパク質の活性を損なわず、かつ自己二量体化を引き起こさない限り、特に限定されない。
本発明の検出システムにおいて、「トロンボポイエチンレセプター(TPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメイン」とは、好ましくは、ヒトTPORの、細胞膜を貫通する領域(ドメイン)および細胞質内に存在する領域(ドメイン)、またはそれと実質的に同一のタンパク質を意味する(以下、「TPORの活性ドメイン」と略記する場合がある)。
ここで「実質的に同一」とは、ヒトTPORの活性ドメインのアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、ヒトTPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するようなタンパク質をいう(ここで「相同性」とは、上記と同義である)。
TPORにはいくつかのスプライスバリアントが知られているが、そのいずれを用いてもよい。
好ましくは、TPORの活性ドメインとしては、GenPept登録番号:NP_005364で示されるアミノ酸配列(即ち、ヒトTPORの全長ORFからなるアミノ酸配列(配列番号6))中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
「ヒト由来のTPORの活性ドメインと実質的に同質の活性」としては、二量体の形成により、それを発現するIL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性などが挙げられる。
ここで、「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に同等であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
また、本発明の検出システムにおいて用いられるヒト由来のTPORの活性ドメインと実質的に同一のタンパク質としては、例えば、以下のアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、ヒトTPORの活性ドメインと実質的に同質の活性を有するタンパク質等も含まれる:
(1)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列;
(2)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列;
(3)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列に、1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列;
(4)配列番号6のアミノ酸配列中、アミノ酸番号468〜610で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列;あるいは
(5)上記(1)〜(4)を組み合わせたアミノ酸配列。
ここで、「実質的に同質の活性」とは、上記と同義である。
アミノ酸配列が、欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位置は、当該タンパク質の活性を損なわず、かつ自己二量体化を引き起こさない限り、特に限定されない。
本発明の検出システムにおいて、EPORまたはTPORは、好ましくは、その膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの全部が、本検出システムに用いられるキメラタンパク質を構成するタンパク質として用いられるが、該キメラタンパク質が二量体を形成した場合に、それらに由来するドメインに起因して生じる活性(IL−3依存性細胞の増殖をIL−3の非存在下で誘導する活性)が失われない限り、これらのドメインの任意の部分であってもよい(但し、該部分は、自律的二量体化をしない)。
また、本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質は、EPORまたはTPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに加えて、それらの細胞外領域の一部を含んでいてもよい。
本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質をコードする核酸分子は、被験タンパク質またはその細胞外ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子、ならびにEPORもしくはTPORまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含むフラグメントをコードする核酸分子を用いて、当該分野で公知の遺伝子組換技術(例えば、PCR法を用いる技術)によって作製され得る。
被験タンパク質をコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。被験タンパク質の細胞外ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、Polymerase Chain Reaction(PCR)法、Reverse Transcriptase−Polymerase Chain Reaction(RT−PCR)法などによって増幅することができる。
被験タンパク質の候補となり得る、種々の細胞表面タンパク質またはその細胞外ドメインの塩基配列およびアミノ酸配列に関する情報は、公に利用可能な情報源(例えば、学術文献、特許文献、遺伝子およびタンパク質のデータベース(例えば、GenBank、GenPeptなど))から入手可能である。
EPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
EPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:M60459(配列番号3)に示されるヒトEPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号4に示されるEPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号3に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。
TPORをコードする核酸分子(DNAまたはRNA)としては、ゲノムDNA、mRNA、cDNAなどが挙げられる。TPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、ゲノムDNAまたはcDNAを鋳型とし、適切なプライマーを用いて、PCR法、RT−PCR法などによって増幅することができる。
TPORをコードするDNAとしては、例えば、GenBank登録番号:NM_005373(配列番号5)に示されるヒトTPORの全コード領域の塩基配列を含有するDNA、あるいは該DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号6に示されるTPORのアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(二量体の形成により、IL−3依存細胞をIL−3の非存在下で増殖させる活性)を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
上記ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号5に示される塩基配列と、約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAが用いられ得る。塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件:期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3にて計算することができる。
塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning、第2版(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム塩濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMで、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃の条件等が挙げられる。持に、ナトリウム塩濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。
当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダイゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができることを理解する。
本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質をコードする核酸分子を含む発現ベクターは、例えば、本発明の検出システムに用いられるキメラタンパク質をコードする核酸分子から、目的とする断片(目的遺伝子)を調製し、該断片を適切な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより作製することができる。
発現ベクターとしては、レトロウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター(例えば、IRESバイシストロン性発現ベクター、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo、pME18S)などが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよく、例えば、LCK近位プロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、RSV−LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが用いられる。
発現ベクターは、必要に応じて、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカーまたはレポーター遺伝子、SV40複製起点(SV40ori)などを含み得る。
選択マーカーおよびレポーター遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子が挙げられる。
発現ベクターとしては、目的遺伝子が選択マーカーまたはレポーターと共に同一mRNAから発現される、IRESバイシストロン性発現ベクターが好ましい。IRESバイシストロン性発現ベクターとしては、例えば、pMX−IRES−GFP(Kitamuraら、Int.J.Hematol.,67,351−9(1998))、およびClontech社により市販されているベクターなどが挙げられる。
第1のタンパク質と第2のタンパク質とが異種である場合、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子と、第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子とは、同一ベクター上に挿入してもよいし、別個のベクター上に挿入してもよい。
同一ベクター上に挿入する場合、両核酸分子は、別個のプロモーターの制御下におかれてもよいし、上記IRESバイシストロン性発現ベクターを用いて、同一プロモーターの制御下におくこともできる。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入は、当該分野で公知の方法(例えば、Virology,52,456(1973)に記載の方法)に従って行うことができる。
IL−3依存性細胞細胞としては、例えば、マウスプロB細胞株Ba/F3(本明細書において、「BAF3」とも表記する)、マウス肥満細胞株IC2、マウス骨髄細胞株F−36Pが挙げられる。
本発明の検出システムにおいて、好ましくは、BAF3が、IL−3依存性細胞として用いられ得る。
IL−3依存性細胞への遺伝子導入の確認は、例えば、上記の選択マーカーおよびレポーターを利用する方法、EPORまたはTPORに対する抗体を用いたブロッティング、またはこれらの任意の組合わせにより行われ得る。
細胞を培養する培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清(FBS)を含む、MEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地、199培地などが用いられる。
培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約1日〜約1週間、好ましくは、約1日〜約3日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
第1のタンパク質と第2のタンパク質が、特定のリガンドの存在下で相互作用し得る場合は、適当な濃度の該リガンドが培地に添加され得る。
従って、本発明の検出システムはまた、相互作用することが既知であり、かつそのリガンドが未知である細胞表面タンパク質のスクリーニング方法を提供する。
あるいは、本発明の検出システムはまた、リガンドが公知である細胞表面タンパク質のアゴニスト、アンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。
本発明の検出システムにおいて、細胞外領域での第1のタンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用の有無は、遺伝子導入したIL−3依存性細胞の生存度により確認できる。細胞の生存度は、例えば、フローサイトメトリーにより、ヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定され得る。
第1のタンパク質と第2のタンパク質が異種である場合、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用の他に、第1のタンパク質間の相互作用および/または第2のタンパク質間の相互作用も考えられる。
従って、第1のタンパク質と第2のタンパク質との間の相互作用の有無は、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子と第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子の両方をIL−3依存性細胞に導入した場合の該細胞のIL−3非存在下での生存度と、第1および第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子をそれぞれ単独でIL−3依存性細胞に導入した場合の生存度とを、比較することにより検討することがより望ましい。
本発明の検出システムはまた、細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出するためのキットを提供する。本検出キットは、EPORもしくはTPORまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする核酸分子;発現ベクター;ならびにIL−3依存性細胞を含む。
本検出キットの使用者は、試験する細胞表面タンパク質またはその細胞外ドメインをコードする核酸分子を準備すれば、本検出キットを使用して、上記の手順に従って、被験タンパク質間の細胞外領域における相互作用の有無を確認することができる。
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(実施例1)
(方法)
(マウス)
C57BL/6バックグラウンドのRag2−/−マウスを、Taconicから入手した。pre−Tα−/−マウスは、H.von Boehmer博士(Dana−Farber Cancer Institute,Harvard Medical School)から提供された。全てのマウスを、層流方式クリーンルーム内で維持し、そして標準的な実験用飼料および水を適宜与えた。全ての動物実験を、本発明者らの施設のガイドラインに従って行った。
(細胞および試薬)
ハトシトクロムc特異的T細胞ハイブリドーマ(2B4)およびそのα−β−バリアント(TG40)を、10%FCSを補充したRPMI1640中で維持した。TG40に、pMX−puroレトロウイルスベクターを用いて、P14 TCRβ鎖を感染させた(TG40β)。
抗CD4 mAb、抗CD8 mAb、抗TCRβ mAb、抗CD25 mAb、および抗hCD8mAbを、eBioscienceから購入した。
抗pTα(2F5)mAbを、BD Biosciencesから入手した。
抗rCD2 mAbを、CedarLaneから入手した。
抗hEPOR mAbをSanta Cruzから入手した。
(キメラタンパク質の構築)
pTα/GFPを、PCR法によって、pTα鎖のC末端にGFPを融合させることにより作製した。
TCRα/GFPを、PCR法によって、P14 TCRα鎖のC末端にGFPを融合させることにより作製した。
pTα/EPORを、PCR法によって、ヒトエリスロポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインにpTαの細胞外ドメインを融合させることにより作製した。
TCRα/EPORを、PCR法によって、ヒトエリスロポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインにP14 TCRαの細胞外ドメインを融合させることにより作製した。
具体的には、pTαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(2)にてpTαの細胞外ドメインを増幅した。一方、TCRαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(3)にてTCRαの細胞外ドメインを増幅した。
pTαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とpTαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(5)を用いて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)を用いて増幅して、目的とするpTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。一方、TCRαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とTCRαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(6)にて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)にて増幅して、目的とするTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。
pTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAおよびTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを、それぞれ、pMX−IRES−GFPベクターへサブクローニングし、以下の解析に供した。
primer(1)GGTGGACCATCCTCTAGACT(配列番号8)
primer(2)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGTACCTGCCGCTGTGTCCCCC(配列番号9)
primer(3)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGCAGGTTTTGAAAGTTTAGGT(配列番号10)
primer(4)TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号11)
primer(5)GGGGGACACAGCGGCAGGTACTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号12)
primer(6)ACCTAAACTTTCAAAACCTGCTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号13)
pMX−IRES−rCD2は、M.Kubo博士(Riken)より提供された。
pMX−IRES−hCD8は、MX−IRES−GFP中のGFPのNcoI/SalIフラグメントを、細胞質領域を欠失した短縮型ヒトCD8α(Δ198〜214)と交換することにより構築した。
(骨髄移植)
骨髄移植(BMT)に関して、Rag2−/−マウス由来のSca−1+ BM細胞を、MACS(Miltenyi)により選別し、そして10%FCS、10ng/ml IL−7および100ng/ml SCF(Pepro Tech)を補充したRPMI1640中で、1×106/mlにて培養した。レトロウイルス媒介遺伝子移入を、Yamasakiら、Blood,103,3093−101(2004)に記載される方法に従って行った。1日目および2日目に、10倍に濃縮したレトロウイルス上清を加え、そしてこれを、32℃で、2000rpmにて1時間、遠心分離した。感染の4日後に、hCD8+細胞を、MACS(Miltenyi)を用いて選別し、そして照射(7Gy)したRag2−/−マウスに静脈内注入した。BMTの6週間後、マウスから胸腺細胞または脾細胞を取り出して分析した。
(競合的BMT)
pTα−/−マウス由来のSca−1+ BM細胞に、上記のように、野生型pTα−IRES−hCD8をコードするレトロウイルスベクターまたはpTαR102/117A−IRES−rCD2をコードするレトロウイルスベクターを感染させた。感染の4日後、hCD8+細胞またはrCD2+細胞を、MACSを用いて選別した。各集団由来の5×105細胞を混合し、そして照射(4Gy)したRag2−/−マウスへと注入した。BMTの3週間後、胸腺細胞をFACSを用いて分析した。
(pTα−βヘテロ二量体複合体の分子モデリング)
マウスpTαの配列(Genbank登録番号:NM_011195)を、NCBIサーバーから入手した。pTαの10番目の残基〜119番目の残基の範囲の部分配列を抽出し、そしてその三次元構造を、ホモロジーモデリングのための一般的な方法を用いて予想した。TCRαの結晶構造(PDB−エントリー:1nfd)(Wangら、Embo.J.,17,10−26(1998))を、ホモロジーモデルを作成するためのテンプレートとして、Protein Data Bank(PDB)(Bermanら、Nucleic.Acid.Res.,28,235−42(2000))から入手した。pTαの部分配列を、NW alignment(Needlemanら、J.Mol.Biol.,48,443−53(1970))を用いてテンプレートタンパク質と整列させた。適切な整列を得るために、pTα中のギャップおよびCys残基を、テンプレートタンパク質のCys残基の対応する位置に向けて手動で移動させた。適切な整列を達成すると、標的タンパク質中の主鎖原子を、TCRαのテンプレートタンパク質中の対応する残基の配位に割り当てた。ループ領域の挿入および欠失を、公知の構造のタンパク質のフラグメントから作成されたフラグメントデータベースから、適切な構造を検索することにより、モデリングした。側鎖を、Metropolis Monte Carlo法を用いて、pTαモデルバックボーン上に構築した。構造を緩和させるために、500ps 分子ダイナミックスシミュレーションを、molecular dynamicsパッケージAMBER8(Cornellら、Abstracts of the Papers of the American Chemical Society,204,40−Comp(1992);Pearlmanら、Computer Physics Communications,91,1−41(1995))を用いて行った。図を、ViewerLite(Accelrys)を用いて作成した。
(単分子の分析)
細胞を、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡(Tokunagaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,235,47−53(1997);Funatsuら、Nature,374,555−9(1995))を用いて画像化した。固体レーザー(488nm、20mW、SAPPHIRE 488−20−OPS,COHERENT,CA)からのビームを、照射のために、倒立顕微鏡(IX−81,Olympus)に導入した。画像を、EB−CCDカメラ(C−7190−23,Hamamatsu Photonics)を用いてキャプチャーした。画像の記録および分析を、AquaCosmosソフトウェア(Hamamatsu Photonics)を用いて行った。細胞を、ポリ−L−リジンをコートしたガラス底皿(Matsunami)上で、葉酸およびリボフラビンを含まないフェノールレッドフリー Eagle’s MEM中で分析した。
(蛍光共鳴エネルギー転移(FRET))
CFPおよびYFPを、テンプレートとしてpECFP−C1およびpEYFP−C1(BD Biosciences Clontech)を用いるPCRにより、上記のpTα/GFP融合タンパク質と同じ様式で、pTαまたはpTαR102/117Aと融合させた。TCRαnull TG40β細胞を、これらの蛍光タンパク質を用いて、レトロウイルスにより再構成した。フローサイトメトリーによるFRETの検出のために、細胞を、FACSAriaを用いて、YFP(励起480nm;発光530nm)、CFP(励起407nm;発光510nm)およびFRET(励起407nm;発光535nm)について分析した。FRETを、CFP励起により得られるYFP発光として表し、これをYFP励起によるYFP発光に対してプロットした。
(結果)
(pre−TCRの構成的インターナリゼーションおよびリソソーム局在)
pre−TCRは、リガンド非依存的な様式で作用することが提唱されているが、このような自律的シグナル伝達の基礎を成す分子機構は、明らかではない。
この問題に取り組むために、本発明者らは、pTαおよびTCRαのGFP融合タンパク質(すなわち、キメラタンパク質)を用いて、同じ細胞状況下でpre−TCRおよびαβTCRの亜細胞局在および動的輸送(dynamic trafficking)を可視化した。
蛍光標識したpre−TCRおよびαβTCRを、それぞれ、pTα/GFPおよびTCRα/GFPを導入することによって、TCRαnullT細胞ハイブリドーマ(TG40β)において再構成した。
抗TCRβ染色は、pre−TCRの表面発現レベルが、αβTCRのレベルよりもかなり低い(図1a、左パネル群および中央パネル群)が、これら2つの株の総GFP発現レベルは、類似していた(図1a、中央パネル群)ことを示した。これらの観察と一致して、TCRα/GFPではなく、pTα/GFPのかなりの画分が、細胞内小胞区画(intracellular vesicular compartments)において見出され(図1a、右パネル群)、これらは、リソソームのマーカーと同時局在していた(図1b)。抗TCRβ mAbを用いて標識したTCRβ鎖表面は、37℃にて30分間インキュベートした後、pTα/GFPと同時局在していた(図1c)。このことは、pre−TCR複合体が、細胞表面から迅速にインターナライズされることを示した。これらの観察は、pre−TCRが、自律的に結合され得ることを示唆した。
TG40β細胞の表面上のpTα/GFPを含むレセプター複合体、またはTCRα/GFPを含むレセプター複合体の自己オリゴマー化能力を、先に記載したように、TIRF顕微鏡により評価した。
細胞表面上の単一のレセプタークラスター内のGFP分子の数を、pTα/GFPまたはTCRα/GFPを用いて評価した。細胞表面上のレセプターの単一クラスターを反映する単一の明るいスポットの各々の蛍光強度を、Funatsuら、Nature,374,555−9(1995)に記載されるように決定した。個々の表面の明るいスポットを分析し、そしてそれらの蛍光を、度数分布のヒストグラムとして表す(図1d)。組換えGFPから同時に決定された単一のGFP分子の平均蛍光強度は、1585±56a.u.(arbitrary units)であった。オリゴマーを反映する高い蛍光強度を有するクラスターが、pTα/GFPを発現する細胞においてのみ観察され(図1d、下パネル)、そしてTCRα/GFPを発現する細胞では観察されなかった(図1d、上パネル)ことは注目に値する。
上記と一致して、細胞表面上のpTα/GFPの、単分子レベルでの、顕微鏡分析は、pre−TCR複合体が、原形質膜内でオリゴマーを形成する能力を有することを示唆した(図1d)。
(pTα/EPORキメラは、自律的増殖を誘導する)
上記に示したpre−TCRの固有の特性は、pTαに完全に依存する。なぜならば、細胞状況および他のレセプター成分(TCRβおよびCD3複合体)が、これらの2つの細胞株の間で一致するからである。従って、本発明者らは、pTαの構造および機能に焦点を合わせ、そしてpTαのリガンド結合の非存在下でのオリゴマー化能力を試験する新規のシステムを利用した。
pTαおよびTCRαの細胞外ドメインを、ヒトエリスロポイエチンレセプター(EPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインへ融合した(それぞれ、pTα/EPORおよびTCRα/EPORという)(図2a)。形質導入したBAF3細胞における各キメラレセプターの発現を、抗EPORイムノブロット及び染色により確認した(図2b、図2c)。pTα/EPORを形質導入したBAF3細胞は、IL−3の非存在下でさえ、かなりの増殖を示し、他方、偽感染(mock)またはTCRα/EPOR感染は、BAF3増殖に影響を与えなかった(図2d)。これらの結果は、pTαの細胞外ドメイン自体が、自発的にオリゴマーを形成する能力を有することを示した。
pTα/CFPおよびpTα/YFPを用いるFRET分析もまた、pre−TCRが細胞表面上にオリゴマーを形成する能力を有することを示した(図2e)。
(pTαの特定の荷電した残基は、pTα/EPOR活性に重要である)
pTαのオリゴマー化のための構造的要件を解明するために、pTα/EPORにより誘導される細胞増殖を利用して、突然変異誘発を行った。
本発明者らは、ヒトおよびマウスのpTαに関して保存されている荷電したアミノ酸残基に注目した(図3a)。pTαのこれらのアミノ酸の全てを、個別かつ同時に変異させ、そしてBAF3増殖に対するこれらの影響を評価した。
本発明者らは、D22、R24、R102、およびR117が、pTα/EPOR機能に重要であることを見出した。なぜならば、これらの残基の各々のアラニン置換は、増殖を支持する活性を無効にしたからである(図3b、m5、m9−m11)。
R24の、かさ高いアミノ酸残基(Q)、親水性のアミノ酸残基(S)、または酸性のアミノ酸残基(E)との置換は、pTα/EPOR活性を完全に無効にし(図3b、m12−m14)、他方、R24、R102、およびR117の、塩基性アミノ酸残基(K)との置換は、この活性を維持した(図3b、m15−m19)。
このことは、これらの残基の正電荷が、活性に重要であることを示唆する。同様に、D22A変異は、活性を抑止したが、負電荷を保持したD22E変異は、活性を維持した(図3b、m6)。まとめると、これらの観察は、22位、24位、102位、および117位の荷電したアミノ酸は、pTαの自己オリゴマー化特性に重要であることを示唆する。
pTα−TCRβヘテロ二量体の三次元構造の状況下で、これらの荷電した残基を配置することを試みるために、分子モデリングを、αβTCRヘテロ二量体の結晶構造(Wangら、Embo.J.,17,10−26(1998))に基づいて行った(詳細については、前述のとおりである)。
このモデルは、機能的に重要なアミノ酸である、D22、R24、R102、およびR117が、pTα−TCRβ複合体の分子表面上に位置付けられることを示す(図3c)。このことは、これらの残基が、オリゴマー形成を導く静電的相互作用を促進するように適切に配置されていることを示唆する。
明らかに対照的に、他の荷電した残基である、E81、E82、E84、E87、D35、およびD42は、TCRβと向い合うことが示された(図3d)。このことは、これらの残基が、pre−TCRの自己オリゴマー化に関与する可能性が低いことを示唆する。
この仮定と一致して、これらの残基は、胸腺細胞におけるpTα−TCRβ複合体形成において役割を果たし得るにもかかわらず、pTα/EPORタンパク質の自己オリゴマー化に必須ではなかった。
(pTαのR102/R117は、インビボでのβ選択に重要である)
上記の荷電した残基が、pre−TCR機能に実際に寄与するか否かを検討した。4つの重要な荷電した残基の中で、R102およびR117は、pTα−β境界面から別々の方向に離れていることから、R102/117A変異を有するpTα/GFP融合タンパク質(pTαR102/117A/GFP)を、TCRαnullT細胞へと導入し、そして、上記と同じように、インターナリゼーションについて分析した。
pTαR102/117A/GFPを発現する細胞の細胞表面上のpre−TCR発現は、野生型(WT)における発現よりもかなり高かった(図4a)。さらに、構成的なインターナリゼーションを反映するpre−TCRを含有する細胞内小胞は、R102/117A変異体によりかなり減少される(図4b)。これらの結果は、これらの荷電した残基が、効果的なpre−TCRインターナリゼーションに重要であることを示す。
本発明者らは、次いで、放射線BMT実験において、インビボでの胸腺細胞の発達におけるこの変異体pTαの機能を分析した。
pTα−/−マウス由来のBM細胞に、pTαWT−IRES−hCD8またはpTαR102/117A−IRES−rCD2をレトロウイルスにより形質導入し、そして、照射したRag2−/−マウスに注入した。3週間後、レシピエントマウス由来の胸腺細胞を、hCD8+集団またはrCD2+集団におけるCD4およびCD8発現について分析した(図4c、上パネル群)。WT pTαを発現する細胞は、効果的なDP移行を示し(DP細胞は、hCD8+胸腺細胞の85.6%を表した)、他方、DP胸腺細胞は、pTαR102/117Aを発現する細胞(rCD2+)のわずか10.8%を表した。さらに、β選択と関連する別の事象である、CD25のダウンレギュレーションは、pTαRR102/117AではなくpTαWTを発現するpTα−/−マウス由来の胸腺細胞において顕著であった(図4c、下パネル群)。
これらの結果はまた、競合的BMT実験においても確認された。pTα−/−BM細胞に、pTαWT−IRES−hCD8またはpTαR102/117A−IRES−rCD2を別々に形質導入し、1:1の割合で混合し、そして照射したRag2−/−レシピエントマウスへと注射した。再度、R102/117A変異体(rCD2+)を発現する胸腺細胞は、WT(hCD8+)よりも効果の低いDP移行を示した。従って、pTαの細胞外ドメイン内のR102および/またはR117は、β選択チェックポイントのトラバース(インビボでのpre−TCRの生理学的機能)に重要であると考えられる。
(実施例2)
pre−TCRは、リガンド非依存的な様式で作用することが提唱されている(Irvingら、Science,280,905−8(1998))が、このような自律的シグナル伝達の基礎となる分子機構は明らかではない。
発明者らは、pre−TCRに固有のタンパク質であるpTαに焦点を合わせ、pTαのオリゴマー化能力を試験するために本発明のシステムを利用した。
pTαの細胞外ドメインおよびTCRαの細胞外ドメインを、それぞれ、EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインへ融合したキメラタンパク質(図2a;以下、それぞれ、pTα/EPORおよびTCRα/EPORという)を発現するBAF3細胞を作製した。
pTαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(2)を用いてpTαの細胞外ドメインを増幅した。一方、TCRαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(3)を用いてTCRαの細胞外ドメインを増幅した。
pTαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とpTαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(5)を用いて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)を用いて増幅して、目的とするpTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。一方、TCRαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とTCRαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(6)にて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)にて増幅して、目的とするTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。
pTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAおよびTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを、それぞれ、pMX−IRES−GFPベクターへサブクローニングし、以下の解析に供した。
primer(1)GGTGGACCATCCTCTAGACT(配列番号8)
primer(2)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGTACCTGCCGCTGTGTCCCCC(配列番号9)
primer(3)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGCAGGTTTTGAAAGTTTAGGT(配列番号10)
primer(4)TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号11)
primer(5)GGGGGACACAGCGGCAGGTACTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号12)
primer(6)ACCTAAACTTTCAAAACCTGCTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号13)
pMX−IRES−GFPベクター中のpTα/EPORおよびTCRα/EPORを、それぞれ、BAF3細胞にトランスフェクトし、BAF3細胞トランスフェクタントにおける各キメラレセプターの発現を、抗EPORイムノブロット(図2b)及び抗EPOR染色(図2c)により確認した。
IL−3枯渇後の細胞生存度を、フローサイトメトリーによりヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定した。
図2dに、GFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)またはGFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)の生存度を、0日目の生存細胞数を100とした相対百分率として表す。各条件についての感染効率は、全ての実験および類似の結果を示した4つの独立した実験において50%〜80%であった。
IL−3の非存在下でさえ、pTα/EPORを導入したBAF3細胞は、かなりの増殖を示し、他方、偽感染(Mock)またはTCRα/EPOR感染は、BAF3増殖に影響を与えなかった(図2d)。
上記の結果は、pTαの細胞外ドメイン自体が、自発的にオリゴマーを形成する能力を有することを示唆した。
また、細胞外ドメインのS−S結合によりホモ二量体として存在することが既知な分子であるCD8を用いて実験を行った。
CD8の細胞外ドメインを、EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインへ融合したキメラタンパク質(以下、CD8/EPORという)を発現するBAF3細胞を作製した。
具体的には、CD8の全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(7)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(8)にてCD8の細胞外ドメインを増幅した。CD8の細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(9)とCD8の細胞外ドメインの一部を含むprimer(10)を用いて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(7)及びprimer(9)を用いて増幅し、目的とするCD8/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。CD8/EPORキメラ分子をコードするcDNAをpMX−IRES−GFPベクターへサブクローニングし、以下の解析に供した。
primer(7)GGTGGACCATCCTCTAGACT(配列番号14)
primer(8)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGATCACAGGCGAAGTCCAATC(配列番号15)
primer(9)TTTGCGGCCGCTAAGAGCAAGCCACATAGC(配列番号16)
primer(10)GATTGGACTTCGCCTGTGATCTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号17)
pMX−IRES−GFPベクター中のCD8/EPORを、BAF3細胞にトランスフェクトした。
IL−3枯渇後の細胞増殖度を、フローサイトメトリーによりヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定した。
図5に、GFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)またはGFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)の細胞増殖度を、0日目の生存細胞数を100とした相対百分率として表す。図5から、CD8/EPORキメラは細胞増殖を誘導していることがわかる。
(方法)
(マウス)
C57BL/6バックグラウンドのRag2−/−マウスを、Taconicから入手した。pre−Tα−/−マウスは、H.von Boehmer博士(Dana−Farber Cancer Institute,Harvard Medical School)から提供された。全てのマウスを、層流方式クリーンルーム内で維持し、そして標準的な実験用飼料および水を適宜与えた。全ての動物実験を、本発明者らの施設のガイドラインに従って行った。
(細胞および試薬)
ハトシトクロムc特異的T細胞ハイブリドーマ(2B4)およびそのα−β−バリアント(TG40)を、10%FCSを補充したRPMI1640中で維持した。TG40に、pMX−puroレトロウイルスベクターを用いて、P14 TCRβ鎖を感染させた(TG40β)。
抗CD4 mAb、抗CD8 mAb、抗TCRβ mAb、抗CD25 mAb、および抗hCD8mAbを、eBioscienceから購入した。
抗pTα(2F5)mAbを、BD Biosciencesから入手した。
抗rCD2 mAbを、CedarLaneから入手した。
抗hEPOR mAbをSanta Cruzから入手した。
(キメラタンパク質の構築)
pTα/GFPを、PCR法によって、pTα鎖のC末端にGFPを融合させることにより作製した。
TCRα/GFPを、PCR法によって、P14 TCRα鎖のC末端にGFPを融合させることにより作製した。
pTα/EPORを、PCR法によって、ヒトエリスロポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインにpTαの細胞外ドメインを融合させることにより作製した。
TCRα/EPORを、PCR法によって、ヒトエリスロポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインにP14 TCRαの細胞外ドメインを融合させることにより作製した。
具体的には、pTαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(2)にてpTαの細胞外ドメインを増幅した。一方、TCRαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(3)にてTCRαの細胞外ドメインを増幅した。
pTαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とpTαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(5)を用いて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)を用いて増幅して、目的とするpTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。一方、TCRαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とTCRαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(6)にて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)にて増幅して、目的とするTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。
pTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAおよびTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを、それぞれ、pMX−IRES−GFPベクターへサブクローニングし、以下の解析に供した。
primer(1)GGTGGACCATCCTCTAGACT(配列番号8)
primer(2)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGTACCTGCCGCTGTGTCCCCC(配列番号9)
primer(3)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGCAGGTTTTGAAAGTTTAGGT(配列番号10)
primer(4)TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号11)
primer(5)GGGGGACACAGCGGCAGGTACTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号12)
primer(6)ACCTAAACTTTCAAAACCTGCTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号13)
pMX−IRES−rCD2は、M.Kubo博士(Riken)より提供された。
pMX−IRES−hCD8は、MX−IRES−GFP中のGFPのNcoI/SalIフラグメントを、細胞質領域を欠失した短縮型ヒトCD8α(Δ198〜214)と交換することにより構築した。
(骨髄移植)
骨髄移植(BMT)に関して、Rag2−/−マウス由来のSca−1+ BM細胞を、MACS(Miltenyi)により選別し、そして10%FCS、10ng/ml IL−7および100ng/ml SCF(Pepro Tech)を補充したRPMI1640中で、1×106/mlにて培養した。レトロウイルス媒介遺伝子移入を、Yamasakiら、Blood,103,3093−101(2004)に記載される方法に従って行った。1日目および2日目に、10倍に濃縮したレトロウイルス上清を加え、そしてこれを、32℃で、2000rpmにて1時間、遠心分離した。感染の4日後に、hCD8+細胞を、MACS(Miltenyi)を用いて選別し、そして照射(7Gy)したRag2−/−マウスに静脈内注入した。BMTの6週間後、マウスから胸腺細胞または脾細胞を取り出して分析した。
(競合的BMT)
pTα−/−マウス由来のSca−1+ BM細胞に、上記のように、野生型pTα−IRES−hCD8をコードするレトロウイルスベクターまたはpTαR102/117A−IRES−rCD2をコードするレトロウイルスベクターを感染させた。感染の4日後、hCD8+細胞またはrCD2+細胞を、MACSを用いて選別した。各集団由来の5×105細胞を混合し、そして照射(4Gy)したRag2−/−マウスへと注入した。BMTの3週間後、胸腺細胞をFACSを用いて分析した。
(pTα−βヘテロ二量体複合体の分子モデリング)
マウスpTαの配列(Genbank登録番号:NM_011195)を、NCBIサーバーから入手した。pTαの10番目の残基〜119番目の残基の範囲の部分配列を抽出し、そしてその三次元構造を、ホモロジーモデリングのための一般的な方法を用いて予想した。TCRαの結晶構造(PDB−エントリー:1nfd)(Wangら、Embo.J.,17,10−26(1998))を、ホモロジーモデルを作成するためのテンプレートとして、Protein Data Bank(PDB)(Bermanら、Nucleic.Acid.Res.,28,235−42(2000))から入手した。pTαの部分配列を、NW alignment(Needlemanら、J.Mol.Biol.,48,443−53(1970))を用いてテンプレートタンパク質と整列させた。適切な整列を得るために、pTα中のギャップおよびCys残基を、テンプレートタンパク質のCys残基の対応する位置に向けて手動で移動させた。適切な整列を達成すると、標的タンパク質中の主鎖原子を、TCRαのテンプレートタンパク質中の対応する残基の配位に割り当てた。ループ領域の挿入および欠失を、公知の構造のタンパク質のフラグメントから作成されたフラグメントデータベースから、適切な構造を検索することにより、モデリングした。側鎖を、Metropolis Monte Carlo法を用いて、pTαモデルバックボーン上に構築した。構造を緩和させるために、500ps 分子ダイナミックスシミュレーションを、molecular dynamicsパッケージAMBER8(Cornellら、Abstracts of the Papers of the American Chemical Society,204,40−Comp(1992);Pearlmanら、Computer Physics Communications,91,1−41(1995))を用いて行った。図を、ViewerLite(Accelrys)を用いて作成した。
(単分子の分析)
細胞を、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡(Tokunagaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,235,47−53(1997);Funatsuら、Nature,374,555−9(1995))を用いて画像化した。固体レーザー(488nm、20mW、SAPPHIRE 488−20−OPS,COHERENT,CA)からのビームを、照射のために、倒立顕微鏡(IX−81,Olympus)に導入した。画像を、EB−CCDカメラ(C−7190−23,Hamamatsu Photonics)を用いてキャプチャーした。画像の記録および分析を、AquaCosmosソフトウェア(Hamamatsu Photonics)を用いて行った。細胞を、ポリ−L−リジンをコートしたガラス底皿(Matsunami)上で、葉酸およびリボフラビンを含まないフェノールレッドフリー Eagle’s MEM中で分析した。
(蛍光共鳴エネルギー転移(FRET))
CFPおよびYFPを、テンプレートとしてpECFP−C1およびpEYFP−C1(BD Biosciences Clontech)を用いるPCRにより、上記のpTα/GFP融合タンパク質と同じ様式で、pTαまたはpTαR102/117Aと融合させた。TCRαnull TG40β細胞を、これらの蛍光タンパク質を用いて、レトロウイルスにより再構成した。フローサイトメトリーによるFRETの検出のために、細胞を、FACSAriaを用いて、YFP(励起480nm;発光530nm)、CFP(励起407nm;発光510nm)およびFRET(励起407nm;発光535nm)について分析した。FRETを、CFP励起により得られるYFP発光として表し、これをYFP励起によるYFP発光に対してプロットした。
(結果)
(pre−TCRの構成的インターナリゼーションおよびリソソーム局在)
pre−TCRは、リガンド非依存的な様式で作用することが提唱されているが、このような自律的シグナル伝達の基礎を成す分子機構は、明らかではない。
この問題に取り組むために、本発明者らは、pTαおよびTCRαのGFP融合タンパク質(すなわち、キメラタンパク質)を用いて、同じ細胞状況下でpre−TCRおよびαβTCRの亜細胞局在および動的輸送(dynamic trafficking)を可視化した。
蛍光標識したpre−TCRおよびαβTCRを、それぞれ、pTα/GFPおよびTCRα/GFPを導入することによって、TCRαnullT細胞ハイブリドーマ(TG40β)において再構成した。
抗TCRβ染色は、pre−TCRの表面発現レベルが、αβTCRのレベルよりもかなり低い(図1a、左パネル群および中央パネル群)が、これら2つの株の総GFP発現レベルは、類似していた(図1a、中央パネル群)ことを示した。これらの観察と一致して、TCRα/GFPではなく、pTα/GFPのかなりの画分が、細胞内小胞区画(intracellular vesicular compartments)において見出され(図1a、右パネル群)、これらは、リソソームのマーカーと同時局在していた(図1b)。抗TCRβ mAbを用いて標識したTCRβ鎖表面は、37℃にて30分間インキュベートした後、pTα/GFPと同時局在していた(図1c)。このことは、pre−TCR複合体が、細胞表面から迅速にインターナライズされることを示した。これらの観察は、pre−TCRが、自律的に結合され得ることを示唆した。
TG40β細胞の表面上のpTα/GFPを含むレセプター複合体、またはTCRα/GFPを含むレセプター複合体の自己オリゴマー化能力を、先に記載したように、TIRF顕微鏡により評価した。
細胞表面上の単一のレセプタークラスター内のGFP分子の数を、pTα/GFPまたはTCRα/GFPを用いて評価した。細胞表面上のレセプターの単一クラスターを反映する単一の明るいスポットの各々の蛍光強度を、Funatsuら、Nature,374,555−9(1995)に記載されるように決定した。個々の表面の明るいスポットを分析し、そしてそれらの蛍光を、度数分布のヒストグラムとして表す(図1d)。組換えGFPから同時に決定された単一のGFP分子の平均蛍光強度は、1585±56a.u.(arbitrary units)であった。オリゴマーを反映する高い蛍光強度を有するクラスターが、pTα/GFPを発現する細胞においてのみ観察され(図1d、下パネル)、そしてTCRα/GFPを発現する細胞では観察されなかった(図1d、上パネル)ことは注目に値する。
上記と一致して、細胞表面上のpTα/GFPの、単分子レベルでの、顕微鏡分析は、pre−TCR複合体が、原形質膜内でオリゴマーを形成する能力を有することを示唆した(図1d)。
(pTα/EPORキメラは、自律的増殖を誘導する)
上記に示したpre−TCRの固有の特性は、pTαに完全に依存する。なぜならば、細胞状況および他のレセプター成分(TCRβおよびCD3複合体)が、これらの2つの細胞株の間で一致するからである。従って、本発明者らは、pTαの構造および機能に焦点を合わせ、そしてpTαのリガンド結合の非存在下でのオリゴマー化能力を試験する新規のシステムを利用した。
pTαおよびTCRαの細胞外ドメインを、ヒトエリスロポイエチンレセプター(EPOR)の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインへ融合した(それぞれ、pTα/EPORおよびTCRα/EPORという)(図2a)。形質導入したBAF3細胞における各キメラレセプターの発現を、抗EPORイムノブロット及び染色により確認した(図2b、図2c)。pTα/EPORを形質導入したBAF3細胞は、IL−3の非存在下でさえ、かなりの増殖を示し、他方、偽感染(mock)またはTCRα/EPOR感染は、BAF3増殖に影響を与えなかった(図2d)。これらの結果は、pTαの細胞外ドメイン自体が、自発的にオリゴマーを形成する能力を有することを示した。
pTα/CFPおよびpTα/YFPを用いるFRET分析もまた、pre−TCRが細胞表面上にオリゴマーを形成する能力を有することを示した(図2e)。
(pTαの特定の荷電した残基は、pTα/EPOR活性に重要である)
pTαのオリゴマー化のための構造的要件を解明するために、pTα/EPORにより誘導される細胞増殖を利用して、突然変異誘発を行った。
本発明者らは、ヒトおよびマウスのpTαに関して保存されている荷電したアミノ酸残基に注目した(図3a)。pTαのこれらのアミノ酸の全てを、個別かつ同時に変異させ、そしてBAF3増殖に対するこれらの影響を評価した。
本発明者らは、D22、R24、R102、およびR117が、pTα/EPOR機能に重要であることを見出した。なぜならば、これらの残基の各々のアラニン置換は、増殖を支持する活性を無効にしたからである(図3b、m5、m9−m11)。
R24の、かさ高いアミノ酸残基(Q)、親水性のアミノ酸残基(S)、または酸性のアミノ酸残基(E)との置換は、pTα/EPOR活性を完全に無効にし(図3b、m12−m14)、他方、R24、R102、およびR117の、塩基性アミノ酸残基(K)との置換は、この活性を維持した(図3b、m15−m19)。
このことは、これらの残基の正電荷が、活性に重要であることを示唆する。同様に、D22A変異は、活性を抑止したが、負電荷を保持したD22E変異は、活性を維持した(図3b、m6)。まとめると、これらの観察は、22位、24位、102位、および117位の荷電したアミノ酸は、pTαの自己オリゴマー化特性に重要であることを示唆する。
pTα−TCRβヘテロ二量体の三次元構造の状況下で、これらの荷電した残基を配置することを試みるために、分子モデリングを、αβTCRヘテロ二量体の結晶構造(Wangら、Embo.J.,17,10−26(1998))に基づいて行った(詳細については、前述のとおりである)。
このモデルは、機能的に重要なアミノ酸である、D22、R24、R102、およびR117が、pTα−TCRβ複合体の分子表面上に位置付けられることを示す(図3c)。このことは、これらの残基が、オリゴマー形成を導く静電的相互作用を促進するように適切に配置されていることを示唆する。
明らかに対照的に、他の荷電した残基である、E81、E82、E84、E87、D35、およびD42は、TCRβと向い合うことが示された(図3d)。このことは、これらの残基が、pre−TCRの自己オリゴマー化に関与する可能性が低いことを示唆する。
この仮定と一致して、これらの残基は、胸腺細胞におけるpTα−TCRβ複合体形成において役割を果たし得るにもかかわらず、pTα/EPORタンパク質の自己オリゴマー化に必須ではなかった。
(pTαのR102/R117は、インビボでのβ選択に重要である)
上記の荷電した残基が、pre−TCR機能に実際に寄与するか否かを検討した。4つの重要な荷電した残基の中で、R102およびR117は、pTα−β境界面から別々の方向に離れていることから、R102/117A変異を有するpTα/GFP融合タンパク質(pTαR102/117A/GFP)を、TCRαnullT細胞へと導入し、そして、上記と同じように、インターナリゼーションについて分析した。
pTαR102/117A/GFPを発現する細胞の細胞表面上のpre−TCR発現は、野生型(WT)における発現よりもかなり高かった(図4a)。さらに、構成的なインターナリゼーションを反映するpre−TCRを含有する細胞内小胞は、R102/117A変異体によりかなり減少される(図4b)。これらの結果は、これらの荷電した残基が、効果的なpre−TCRインターナリゼーションに重要であることを示す。
本発明者らは、次いで、放射線BMT実験において、インビボでの胸腺細胞の発達におけるこの変異体pTαの機能を分析した。
pTα−/−マウス由来のBM細胞に、pTαWT−IRES−hCD8またはpTαR102/117A−IRES−rCD2をレトロウイルスにより形質導入し、そして、照射したRag2−/−マウスに注入した。3週間後、レシピエントマウス由来の胸腺細胞を、hCD8+集団またはrCD2+集団におけるCD4およびCD8発現について分析した(図4c、上パネル群)。WT pTαを発現する細胞は、効果的なDP移行を示し(DP細胞は、hCD8+胸腺細胞の85.6%を表した)、他方、DP胸腺細胞は、pTαR102/117Aを発現する細胞(rCD2+)のわずか10.8%を表した。さらに、β選択と関連する別の事象である、CD25のダウンレギュレーションは、pTαRR102/117AではなくpTαWTを発現するpTα−/−マウス由来の胸腺細胞において顕著であった(図4c、下パネル群)。
これらの結果はまた、競合的BMT実験においても確認された。pTα−/−BM細胞に、pTαWT−IRES−hCD8またはpTαR102/117A−IRES−rCD2を別々に形質導入し、1:1の割合で混合し、そして照射したRag2−/−レシピエントマウスへと注射した。再度、R102/117A変異体(rCD2+)を発現する胸腺細胞は、WT(hCD8+)よりも効果の低いDP移行を示した。従って、pTαの細胞外ドメイン内のR102および/またはR117は、β選択チェックポイントのトラバース(インビボでのpre−TCRの生理学的機能)に重要であると考えられる。
(実施例2)
pre−TCRは、リガンド非依存的な様式で作用することが提唱されている(Irvingら、Science,280,905−8(1998))が、このような自律的シグナル伝達の基礎となる分子機構は明らかではない。
発明者らは、pre−TCRに固有のタンパク質であるpTαに焦点を合わせ、pTαのオリゴマー化能力を試験するために本発明のシステムを利用した。
pTαの細胞外ドメインおよびTCRαの細胞外ドメインを、それぞれ、EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインへ融合したキメラタンパク質(図2a;以下、それぞれ、pTα/EPORおよびTCRα/EPORという)を発現するBAF3細胞を作製した。
pTαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(2)を用いてpTαの細胞外ドメインを増幅した。一方、TCRαの全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(1)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(3)を用いてTCRαの細胞外ドメインを増幅した。
pTαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とpTαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(5)を用いて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)を用いて増幅して、目的とするpTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。一方、TCRαの細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(4)とTCRαの細胞外ドメインの一部を含むprimer(6)にて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(1)およびprimer(4)にて増幅して、目的とするTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。
pTα/EPORキメラ分子をコードするcDNAおよびTCRα/EPORキメラ分子をコードするcDNAを、それぞれ、pMX−IRES−GFPベクターへサブクローニングし、以下の解析に供した。
primer(1)GGTGGACCATCCTCTAGACT(配列番号8)
primer(2)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGTACCTGCCGCTGTGTCCCCC(配列番号9)
primer(3)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGCAGGTTTTGAAAGTTTAGGT(配列番号10)
primer(4)TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号11)
primer(5)GGGGGACACAGCGGCAGGTACTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号12)
primer(6)ACCTAAACTTTCAAAACCTGCTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号13)
pMX−IRES−GFPベクター中のpTα/EPORおよびTCRα/EPORを、それぞれ、BAF3細胞にトランスフェクトし、BAF3細胞トランスフェクタントにおける各キメラレセプターの発現を、抗EPORイムノブロット(図2b)及び抗EPOR染色(図2c)により確認した。
IL−3枯渇後の細胞生存度を、フローサイトメトリーによりヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定した。
図2dに、GFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)またはGFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)の生存度を、0日目の生存細胞数を100とした相対百分率として表す。各条件についての感染効率は、全ての実験および類似の結果を示した4つの独立した実験において50%〜80%であった。
IL−3の非存在下でさえ、pTα/EPORを導入したBAF3細胞は、かなりの増殖を示し、他方、偽感染(Mock)またはTCRα/EPOR感染は、BAF3増殖に影響を与えなかった(図2d)。
上記の結果は、pTαの細胞外ドメイン自体が、自発的にオリゴマーを形成する能力を有することを示唆した。
また、細胞外ドメインのS−S結合によりホモ二量体として存在することが既知な分子であるCD8を用いて実験を行った。
CD8の細胞外ドメインを、EPORの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインへ融合したキメラタンパク質(以下、CD8/EPORという)を発現するBAF3細胞を作製した。
具体的には、CD8の全長を含むプラスミドを鋳型にしてprimer(7)とEPORの膜貫通ドメインの一部を含むprimer(8)にてCD8の細胞外ドメインを増幅した。CD8の細胞外ドメインの増幅物を、EPORの全長を含むプラスミドを鋳型としてprimer(9)とCD8の細胞外ドメインの一部を含むprimer(10)を用いて増幅したEPORの膜貫通ドメイン〜細胞内ドメインにアニールさせ、primer(7)及びprimer(9)を用いて増幅し、目的とするCD8/EPORキメラ分子をコードするcDNAを得た。CD8/EPORキメラ分子をコードするcDNAをpMX−IRES−GFPベクターへサブクローニングし、以下の解析に供した。
primer(7)GGTGGACCATCCTCTAGACT(配列番号14)
primer(8)AGGGAGAGCGTCAGGATGAGATCACAGGCGAAGTCCAATC(配列番号15)
primer(9)TTTGCGGCCGCTAAGAGCAAGCCACATAGC(配列番号16)
primer(10)GATTGGACTTCGCCTGTGATCTCATCCTGACGCTCTCCCT(配列番号17)
pMX−IRES−GFPベクター中のCD8/EPORを、BAF3細胞にトランスフェクトした。
IL−3枯渇後の細胞増殖度を、フローサイトメトリーによりヨウ化プロピジウム(PI)陰性の細胞を計数することにより決定した。
図5に、GFP+細胞(キメラを発現する細胞:●)またはGFP−細胞(キメラを発現しない細胞:○)の細胞増殖度を、0日目の生存細胞数を100とした相対百分率として表す。図5から、CD8/EPORキメラは細胞増殖を誘導していることがわかる。
本発明は、pTαの自己二量体形成を調節することによってT細胞分化を調節する新規作用機序の薬剤を提供する。本発明はまた、このような薬剤のスクリーニング方法、およびこのような薬剤を用いたT細胞分化の調節方法を提供する。
本発明のT細胞分化調節剤は、インビトロおよびインビボの両方において、新規作用機序でT細胞分化を調節する薬剤として有用である。このようなT細胞分化調節剤は、T細胞の異常な分化またはT細胞の増加もしくは減少により特徴付けられる疾患(例えば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)を予防または治療するための医薬として有用であり得る。
また、本発明により、種々の細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を簡便に検出できるシステムが提供される。
本発明により、細胞外領域におけるタンパク質間の相互作用を簡便に検出できるシステムが提供される。本発明の検出システムは、細胞表面タンパク質が関与する細胞事象(例えば、細胞の分化、増殖および生存)における分子機構を解析するツールとして有用である。
本出願は、日本で出願された特願2005−288640および特願2005−289136を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
[配列表]
本発明のT細胞分化調節剤は、インビトロおよびインビボの両方において、新規作用機序でT細胞分化を調節する薬剤として有用である。このようなT細胞分化調節剤は、T細胞の異常な分化またはT細胞の増加もしくは減少により特徴付けられる疾患(例えば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病など)を予防または治療するための医薬として有用であり得る。
また、本発明により、種々の細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を簡便に検出できるシステムが提供される。
本発明により、細胞外領域におけるタンパク質間の相互作用を簡便に検出できるシステムが提供される。本発明の検出システムは、細胞表面タンパク質が関与する細胞事象(例えば、細胞の分化、増殖および生存)における分子機構を解析するツールとして有用である。
本出願は、日本で出願された特願2005−288640および特願2005−289136を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。
[配列表]
Claims (18)
- プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節する物質を含む、T細胞分化調節剤。
- 前記物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を促進する物質である、請求の範囲1に記載のT細胞分化調節剤。
- 前記プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を促進する物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖をコードする核酸分子である、請求の範囲2に記載のT細胞分化調節剤。
- 前記物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を抑制する物質である、請求の範囲1に記載のT細胞分化調節剤。
- 前記プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を抑制する物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖に対する、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNAまたは抗体;あるいはプレT細胞抗原レセプターα鎖の細胞外ドメインのフラグメントである、請求の範囲4に記載のT細胞分化調節剤。
- プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節する工程を含む、T細胞分化を調節する方法。
- 被験物質が、プレT細胞抗原レセプターα鎖の自己二量体形成を調節するか否かを評価する工程を含む、T細胞分化調節剤のスクリーニング方法。
- T細胞分化調節剤をスクリーニングするためのキットであって、pTαと蛍光物質とのキメラタンパク質を発現した細胞、あるいは、pTαとエリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターとのキメラタンパク質を発現したIL−3依存性細胞を含む、キット。
- 細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出する方法であって、
第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質をコードする核酸分子、ならびに
第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質をコードする核酸分子
を導入した、IL−3依存性細胞を、IL−3の非存在下で培養し、該細胞の増殖の有無を確認する工程を含む、方法。 - 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、同種のタンパク質である、請求の範囲9に記載の方法。
- 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、異種のタンパク質である、請求の範囲9に記載の方法。
- 第1のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第1のキメラタンパク質、ならびに
第2のタンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、第2のキメラタンパク質
を発現した、IL−3依存性細胞。 - 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、同種のタンパク質である、請求の範囲12に記載の細胞。
- 第1のタンパク質と第2のタンパク質が、異種のタンパク質である、請求の範囲12に記載の細胞。
- 細胞表面タンパク質の細胞外ドメインと、エリスロポイエチンレセプターまたはトロンボポイエチンレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとを含む、キメラタンパク質。
- 請求の範囲15に記載のキメラタンパク質をコードする、核酸分子。
- 請求の範囲16に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
- 細胞表面タンパク質間の細胞外領域における相互作用を検出するためのキットであって、以下:
エリスロポイエチンレセプターもしくはトロンボポイエチンレセプターまたはそれらの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする核酸分子;
発現ベクター;ならびに
IL−3依存性細胞
を含む、キット。
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