JPWO2006098370A1 - 流路の実効的な通過時間の調整機構を具える遅延回路、マイクロチップ、およびその作製方法 - Google Patents

流路の実効的な通過時間の調整機構を具える遅延回路、マイクロチップ、およびその作製方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、予め作製された流路構成に対して、その作製後に部分的な変更操作を施すことにより、遅延装置の通過に要する実効的な所要時間を所望の範囲で調整可能な新たな遅延装置の構造、ならびに、その製造方法を提供する。例えば、最短の経路となる側壁面から、流路拡張部(201)に内部領域へ、最短の経路となる側壁面に沿った流線上の液体の進行を妨げることが可能な障害構造(202)を付加し、最短の経路となる側壁面と、障害構造の側壁面の双方に沿って、液体の進行する流線へと変更することで、流路上流部分の末端から流路下流部分の先端に達する、液体の進行する流線の延長を図り、通過時間の延長(遅延量)を得る。この通過時間の延長(遅延量)の調節は、障害構造の張り出し量、ならびに、設ける障害構造の個数を選択することで、広い範囲で設定可能となる。

Description

本発明は、生化学的検査に利用される、液体試料の流路を有するマイクロチップと、その作製方法に関し、特には、該生化学的検査の対象となる溶質分子を溶解している液体試料がマイクロチップ上に設ける流路を通過する際、流路の所定領域の通過に要する実効的な所要時間を所望の範囲で調整可能な機構を具えたマイクロチップと、その流路の所定領域の通過に要する実効的な所要時間の調整方法に関する。
生化学的検査として、例えば、採取された微量の液体試料中に含まれる溶質分子の分析を行う際、僅かな液量のサンプルの取り扱いに適する、微小容量の検査用容器の使用が必須の要件となる。この目的から、微小容量の検査用容器として、微細サイズの液溜めならびに流路で構成される「マイクロチップ」の利用が進められている。「マイクロチップ」は、基板表面に、液溜めならびに流路となる所定パターンの凹部を形成し、その基板表面を覆う蓋部を設けることで、基板表面の凹部が、流路の下面と両側壁面を、その開口部を覆う蓋部の下面が、流路の上面をそれぞれ構成することで、例えば、上下、両側の4面で囲まれた矩形状の断面形状を有する「流路空間」が形成される。
「マイクロチップ」を利用する生化学的な検査では、「マイクロチップ」内の流路を介して、溶媒中に溶解されている、目的とする溶質分子を所望の部位まで輸送して、各種の生化学的な検査に供する。その際、流路を介して、「マイクロチップ」内の所望の部位へ、目的とする溶質分子を輸送する手段として、種々の輸送手段が利用されている。
例えば、輸送対象の溶質分子が、溶液中に形成される電界によって移動可能なものである際には、輸送に利用される流路に沿って電位勾配を形成し、この電位勾配(電界)を利用して、流路内に満たされる溶媒中を溶質分子を移動させることで、所望の部位へ目的とする溶質分子を輸送する方法がある。この電気泳動(または電気浸透流)を応用する輸送手法を利用することで、DNA鎖の伸長を行う反応セルに対して独立した流路を介して連結される、個別の液溜め中に収納される4種類のdNTP(ヌクレオチド)溶液中の各dNTPを、各流路に対する電界印加のタイミングを制御することにより、所望の時間タイミングで反応セルに導入する(輸送する)手法が提案されている(特許文献1: 特開2001−5637号公報)。
また、チュービング・ポンプの液輸送原理を利用した、マイクロバルブ・マイクロポンプを基板上に作製し、かかるマイクロバルブ・マイクロポンプと集積して形成される流路内の液輸送を行う方法も提案されている(特許文献2: 特開2004−291187号公報)。このマイクロポンプでは、静電的に駆動されるマイクロ・フランジャー型の加圧・減圧機構を利用して、マイクロバルブの開閉動作を行わせ、連続して配置されるマイクロバルブの開閉タイミングを制御することにより、チュービング・ポンプと同等の液輸送機構(微小な定量ポンプ)を構成している。マイクロ・フランジャー型の加圧・減圧機構の駆動に用いる印加電圧、その印加周期等を調整することで、該マイクロポンプによって、単位時間当たり輸送される液量(流速)を一定の範囲内で調節することが可能となっている。
その他、「マイクロチップ」内の流路は、微小な断面積を有するので、かかる流路の内壁面と液体試料の濡れ性、液体試料自体の表面張力に因る、毛細管現象を利用して、流路内を介して液体試料を輸送する手法も利用可能である。その際、毛細管現象は、流路の内壁面と液体試料の濡れ性が乏しくなると、機能を失うという特徴を利用し、流路の一部領域の内壁面を、溶媒の濡れ性を変化可能な構成とすることで、溶媒の濡れ性が劣る状態では、かかる領域を超えて、毛細管現象による溶液の輸送は起こらず、一方、溶媒の濡れ性が優れた状態では、かかる領域を超えた、毛細管現象による溶液輸送が進行するという、「流通制御機構」を設けた「マイクロチップ」が提案されている(特許文献3: 特開2003−43052号公報)。例えば、流路中に、溶媒の濡れ性が劣る材料で内壁面を形成する領域として、溶媒が水の場合に、温度に応じてその疎水性の度合いが変化する、疎水性材料で内壁面を形成する領域を設け、当該領域の温度を調節することで、疎水性の度合いを変化させることで、かかる領域を超えた毛細管現象による溶液輸送が起こる状態(流通)と起こらない状態(停止)の選択が可能となる。具体的には、かかる領域の温度を「温度調節装置」、例えば、ペルチェ素子を用いて変化させると、室温付近では、高い疎水性を示す状態のものも、一般に、温度が上昇するとともに、相対的な疎水性の度合いが低下し、かかる「疎水性領域」を超えて、毛細管現象による溶液の輸送が可能となる。
上記の基板上に集積して作製されるマイクロバルブ・マイクロポンプを利用して、流路を流れる液体の流速を調整することで、流路内の所定領域を液が通過する際に要する時間を制御することが可能である。また、前記流路の一部に「疎水性領域」を設け、温度を調整することで、かかる「疎水性領域」の内壁面の疎水性の度合いを変化させ、毛細管現象による溶液の輸送の可否を選択する「スイッチ機構」を利用することで、流路内の所定領域を液が通過可能となるまでの「待ち時間」を制御することが可能である。但し、これらの手段では、「マイクロバルブ・マイクロポンプ」あるいは「温度調節装置」などの調節機構を、「マイクロチップ」内の流路と一体化して設ける構成とし、同時に、「マイクロバルブ・マイクロポンプ」あるいは「温度調節装置」などの調節機構の動作をコントロールする「動作制御用の外部回路部」を付設することが必要である。
特に、「マイクロバルブ・マイクロポンプ」あるいは「温度調節装置」などの調節機構を、「マイクロチップ」内の流路と一体化して設ける構成を採用するため、マイクロチップ自体の液溜め、流路構成の作製に加えて、これら内蔵される調節機構を集積して作製する工程は、個々の「マイクロチップ」の作製コストを大幅に引き上げる要因となっている。また、流路の一部に、「マイクロバルブ・マイクロポンプ」や「疎水性領域」を一体化して、組込む構成とするため、マイクロチップ自体の液溜め、流路構成を設計する上でも、大きな制約が加わることになる。
特開2001−5637号公報 特開2004−291187号公報 特開2003−43052号公報
一方、自宅や屋外などで実施される「その場」検査用の「マイクロチップ」では、上記の「マイクロバルブ・マイクロポンプ」あるいは「温度調節装置」などの調節機構の動作をコントロールする「動作制御用の外部回路部」ような外付け装置が不要な構成が望まれている。同時に、使い捨てタイプの「その場」検査用の「マイクロチップ」では、安価な作製コストで製造可能な構成が求められている。現在、「マイクロチップ」を利用する「その場」検査において測定されている項目は、尿のpHや血糖値など、少数の項目である。しかしながら、将来的には「その場」検査の適用が望まれる検査項目として、多くの検査項目が検討されている。「マイクロチップ」を利用する「その場」検査が検討されている項目の中には、試料中に含まれる対象物質の検出に利用される反応を行う際、「マイクロチップ」内の流路を介して輸送される液体試料の実効的な進行速度を調節し、反応場(部位)に液体試料が到達するタイミングを調節する必要のある項目が数多く含まれている。例えば、先に述べたように外付けの装置を必要とする「マイクロチップ」構成、あるいは、高い作製コストを有する「マイクロバルブ・マイクロポンプ」を「マイクロチップ」中に集積する構造を有する「マイクロチップ」構成は、使い捨てタイプの「その場」検査用の「マイクロチップ」として、広範な利用を進める上で、大きな障害要因ともなる。
さらに、一般に、検出に利用する反応場(部位)に液体試料が到達すべきタイミングは、検査項目ごとに異なる。すなわち、「マイクロチップ」を利用する「その場」検査法を、多くの検査対象項目に適用する際には、各検査項目に適合する、液体試料の到達タイミングに調整された多種類の「マイクロチップ」を用意する必要がある。多種の検査項目ごとに、液体試料の到達タイミングが調整された「マイクロチップ」を個別に設計・製造することは、「マイクロチップ」の製造単価の上昇を引き起こす一因ともなる。
すなわち、「その場」検査用の「マイクロチップ」では、検出に利用する反応場(部位)に液体試料が到達すべきタイミングを調節する手段として、「マイクロバルブ・マイクロポンプ」を「マイクロチップ」中に集積する構造、あるいは、上記の「マイクロバルブ・マイクロポンプ」や「温度調節装置」などの調節機構の動作をコントロールする「動作制御用の外部回路部」ような外付け装置を要する構成に代えて、「マイクロチップ」自体の流路構成を変更することにより、液体試料の到達タイミングの調節を図る手法の利用が望ましい。例えば、「マイクロチップ」自体の流路構成中に、前記液体試料の到達タイミングの調節に利用可能な「遅延装置」を組み込むことによって、流路の所定領域の通過に要する実効的な所要時間を所望の範囲で調整可能な「遅延時間の調節機能」を具えた「マイクロチップ」の利用が望ましい。具体的には、「マイクロチップ」自体の流路構成において、かかる「遅延装置」を除く、流路は共通の構成を採用した上で、該「遅延装置」部分の流路構成を変更することにより、流路の所定領域の通過に要する実効的な所要時間を所望の範囲で調整可能な「遅延時間の調節機能」を達成できる、汎用性を有する「遅延装置」を内蔵する「マイクロチップ」の利用が望ましい。すなわち、複数の検査項目に対応可能な汎用性を有する、基本的な流路構成を採用する「流路共通部分」と、その流路内に「遅延装置」を含んでなる「可変流路部分」とを組み合わせて使用する「マイクロチップ」において、該「遅延装置」として、予め作製された流路構成に対して、その作製後に部分的な変更操作を施すことにより、該「遅延装置」を含む「可変流路部分」の通過に要する実効的な所要時間を所望の範囲で調整可能な「遅延時間の調節機能」を有する新たな「遅延装置」の提案が望まれている。
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、「マイクロチップ」を構成する流路中に挿入する形態で、他の「流路共通部分」と一体的に作製することができる「遅延装置」であり、また、予め作製された流路構成に対して、その作製後に部分的な変更操作を施すことにより、該「遅延装置」を含む「可変流路部分」の通過に要する実効的な所要時間を所望の範囲で調整可能な「遅延時間の調節機能」を有する新たな「遅延装置」、ならびに、その製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決すべく、検討を進めた。その際、「マイクロチップ」を構成する流路を微小な断面積を有するものとし、かかる流路の内壁面と液体試料の濡れ性、液体試料自体の表面張力に因る、毛細管現象を利用して、流路内を介して液体試料を輸送する手法を採用する際、この毛細管現象に伴って液体試料が輸送される流路の「長さ」、あるいは、毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」を変更すると、当該「流路部分(領域)」を液体試料が通過するに要する時間を「一定の範囲」内で変えることが可能であることを見出した。また、毛細管現象に伴って液体試料が輸送される流路の「長さ」、あるいは、毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」は、下記する機構に基づき、主に、流路の内壁面と液体試料の濡れ性、ならびに、内壁面に沿った「流線」を調整することによって、「一定の範囲」内で変えることが可能であることを見出した。
先ず、所定組成を有する液体試料自体の表面張力は、一般に、周辺の気相雰囲気、その圧力、温度に依存するが、周辺の気相雰囲気、その圧力、温度の条件を同じ条件に維持すると、気/液界面の曲率のみに依存して、高い再現性で等価な表面張力が得られる。一方、流路の内壁面と液体試料の濡れ性に依存して、液体試料と流路の内壁面との接触境界が前進すると、流路内に形成される気/液界面の曲率が変化し、この気/液界面の曲率変化に付随する表面張力の変化が、毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」を決定している。流路の内壁面と液体試料の濡れ性を減少させると、液体試料と流路の内壁面との接触境界が前進する「速度」が減少するため、かかる毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」も、対応して減少する。逆に、流路の内壁面と液体試料の濡れ性を増加させると、液体試料と流路の内壁面との接触境界が前進する「速度」が増加するため、かかる毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」も、対応して増加する。
一方、毛細管現象に因る液体試料の「進行」が進む「流線」は、流路の内壁面と液体試料の濡れ性により引き起こされる、液体試料と流路の内壁面との接触境界が前進する道筋に沿ったものとなる。すなわち、液体試料と流路の内壁面との接触境界が前進する道筋に沿った「流線」の実効的な「延べ長さ」を延ばすと、毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」自体は変化しなくとも、当該「流路部分(領域)」を液体試料が通過するに要する時間を長くすることが可能となる。すなわち、液体試料と流路の内壁面との接触境界が前進する道筋は、流路の内壁面と液体試料の濡れ性に依存して決まり、例えば、液体試料との濡れ性に優れた、特定の「流路の内壁面」に沿ったものとすることが可能である。仮に、この液体試料との濡れ性に優れた「流路の内壁面」の「延べ長さ」を延ばすと、「流線」の実効的な「延べ長さ」を延ばすことが可能となる。
本発明者は、以上の知見に基づき、「遅延装置」を構成する「流路部分(領域)」に関して、
その流路の内壁面と液体試料の濡れ性を増減することで、当該「流路部分(領域)」の内壁面に沿って進んでいく、毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」を増減させる、あるいは、
前記流路の内壁面と液体試料の濡れ性により決定される、内壁面に沿った「流線」を、部分的に内壁面を付加することにより、増減させる、
この二つの手段を応用することで、「流路部分(領域)」を液体試料が通過するに要する時間を「一定の範囲」内で調節可能な「遅延装置」として機能することを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の第一の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
該流路の途中に設ける流路拡張部と、
該流路拡張部の一部を占める障害構造とを形成してなる構成を有し、
流路上流部分から、該流路拡張部を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、前記障害構造によって、液体液面端の進行が妨げられ、該流路拡張部を経由する、液体液面端の進行の流線が延長されることにともなって、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
ことを特徴とする遅延装置である。
その際、前記流路拡張部は、前記流路の幅より拡張された流路幅を有し、
前記流路上流部分の流路拡張部への出口と、流路拡張部から流路下流部分への入口とを結ぶ最短の経路の長さは、前記拡張された流路幅と等しく選択されている構成とすることができる。
本発明の第一の形態にかかる遅延装置では、例えば、
前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記流路拡張部を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
前記流路拡張部に付加される障害構造は、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状に形成されている態様を選択することが可能である。
あるいは、前記流路拡張部に付加される障害構造は、
少なくとも、その上面は、前記液体に対する濡れ性が乏しい疎溶媒性の材料からなる面を有する障害物であって、
前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の前記障害物を、前記流路拡張部の底面上に付加することで形成されている態様を選択することも可能である。
さらには、前記流路拡張部に付加される障害構造は、
前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ、複数形成されており、
前記最短の経路となる側壁面と、該複数の障害構造の側壁面の双方に沿って、前記液体の進行する流線へと変更することで、前記流路上流部分からの出口から前記流路下流部分への入口に達する、前記液体の進行する流線の延長が図られている態様を選択することも可能である。
本発明の第二の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
基板上に形成される流路上流部分、ならびに、流路下流部分と、
流路上流部分に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分に連通される下流部延長流路と、
上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される連絡流路とで形成される構成を有し、
流路上流部分から、該連絡流路を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、前記連絡流路を付加する位置を調節し、上流部延長流路、連絡流路、下流部延長流路を経由する流路長さの合計によって流線が延長されることにともなって、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
ことを特徴とする遅延装置である。
本発明の第二の形態にかかる遅延装置では、例えば、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、前記連絡流路は、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様を選択することができる。
あるいは、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、前記連絡流路は、少なくとも、その側壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面である態様を選択することもできる。
本発明の第三の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを結ぶ最短距離を基準として、
該最短距離よりも、その流路の延べ長さが長く選択される、迂回流路によって、該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に、該迂回流路を付加してなる構成を有し、
流路上流部分から、該迂回流路を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、迂回流路部分の流路の延べ長さの変更によって液体の進行する流線の延長を図り、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
ことを特徴とする遅延装置である。
本発明の第三の形態にかかる遅延装置では、例えば、
前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記迂回流路を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、前記迂回流路は、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様を選択することができる。
本発明の第四の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
基板上に形成される流路上流部分、ならびに、流路下流部分と、
流路上流部分と流路下流部分とを連通する、流速調節領域用の連結流路とからなる構成を有し、
該流速調節領域用の連結流路の表面として、
液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面、あるいは液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料からなる面を選択することにより、
毛細管現象によって、該連結流路内を前記液体が進行する速度を増加させる、あるいは減少させることに伴い、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延量の調節が達成される
ことを特徴とする遅延装置である。
その際、
前記連結流路の表面として選択される、
前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面、あるいは前記液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料からなる面は、
前記基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の連結流路の表面を被覆する、親溶媒性材料からなる薄膜、あるいは、疎溶媒性材料からなる薄膜により形成されている形態を選択することができる。
本発明の第四の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
基板上に形成される流路上流部分、ならびに、流路下流部分と、
液体に対する濡れ性に乏しい、疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域上に形成される、該流路上流部分に連結され、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分に連通され、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路と、
上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、親溶媒性材料からなる面で形成される連絡流路とで形成される構成を有し、
流路上流部分から、該連絡流路を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、前記連絡流路を付加する位置を調節し、上流部延長流路、連絡流路、下流部延長流路を経由する流路長さの合計によって流線が延長されることにともなって、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
ことを特徴とする遅延装置である。
なお、上述する本発明における第一の形態〜第五の形態にかかる遅延装置のいずれにおいても、
所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成され、
前記液体は該流路上流部分ならびに該流路下流部分における前記液体の進行は、毛細管現象によってなされていることが好ましい。
また、本発明の第一の形態にかかる遅延装置において、
前記流路拡張部は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成されていることが好ましい。
また、本発明の第二の形態にかかる遅延装置において、
該流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成されていることが好ましい。
加えて、上述する本発明における第一の形態〜第五の形態にかかる遅延装置のいずれにおいても、
前記遅延装置を構成する、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路に対して、
該基板の上面に接合する蓋部を設け、
流路内を進行する液体は、前記基板上に形成される凹部と、前記蓋部の下面とに接触する形態とされていることが好ましい。
本発明は、上述の本発明にかかる遅延装置を利用する、マイクロチップの発明をも提供しており、すなわち、本発明にかかるマイクロチップは、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路を有し、
前記基板表面を覆う蓋部を設け、
前記基板表面の凹部が、流路の下面と両側壁面を、その開口部を覆う蓋部の下面が、流路の上面をそれぞれ構成することで、流路空間が形成され、
毛細管現象によって、前記流路空間内を前記液体が進行する輸送手段を利用するマイクロチップであって、
該マイクロチップ内の流路を構成する要素の一つとして、前記の基板上面を蓋部で被覆する構成を採用する遅延装置の少なくとも一つを該流路内に内在している
ことを特徴とするマイクロチップである。
なお、上記の本発明の第一の形態にかかる遅延装置を製造する方法、特には、
可塑性材料からなる基板を利用し、塑性変形によって障害構造を形成する態様の遅延装置を作製する方法は、
可塑性材料からなる基板を選択して、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分の間に設けられる前記流路拡張部に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
前記流路拡張部に付加される障害構造を、
前記流路拡張部において、前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状に形成する工程として、
前記流路拡張部において、該障害構造を形成すべき部分に、前記基板の上面より、凸形状の金型を押し付け、前記基板を構成する可塑性材料を変形させ、該金型の外面形状に対応する凹形状を形成し、それに伴い排除される可塑性材料によって、該凹形状を取り囲む壁状構造の形状を形成し、
その後、該凸形状の金型を取り除き、前記凹形状を取り囲む壁状構造の形状を残す工程を具え、
得られる前記凹形状を取り囲む壁状構造の形状を、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
また、上記の本発明の第一の形態にかかる遅延装置において、疎溶媒性の材料からなる障害物を利用する態様の遅延装置を作製する方法は、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分の間に設けられる前記流路拡張部に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
前記流路拡張部に付加される障害構造として、
前記流路拡張部において、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の前記障害物を、前記流路拡張部の底面上に付加する工程として、
前記流路拡張部の底面上、該障害物を付加すべき部分に、前記液体に対する濡れ性が乏しい疎溶媒性の材料を所望の平面形状で印刷塗布して、少なくとも、その上面は、疎溶媒性の材料からなる面を有する印刷塗布層を形成する工程を具え、
得られる所望の平面形状を有する前記疎溶媒性材料の印刷塗布層を、前記流路拡張部の底面上に付加される、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の障害物として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
また、上記の本発明の第二の形態にかかる遅延装置を製造する方法、特には、
前記連絡流路は、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様の遅延装置を作製する方法は、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、該流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
両延長流路間を連結する所望の配置に付加される連絡流路として、該基板表面に、新たに溝構造を形成する工程として、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間を跨ぐように、該基板表面を溝状に切削加工を施す工程を具え、
前記基板表面の切削加工により形成される切削溝を、両延長流路間を連結する前記連絡流路として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
また、上記の本発明の第三の形態にかかる遅延装置を製造する方法、特には、
迂回流路は、基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様の遅延装置を作製する方法は、
可塑性材料からなる基板を選択して、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、前記迂回流路として、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成する工程として、
前記迂回流路を形成すべき部分に、前記基板の上面より、前記迂回流路の平面形状の外縁に対応する周辺部分が突出し、その内縁に対応する中央部分が窪んだ形状の金型を押し付け、
前記基板を構成する可塑性材料を変形させ、該金型の周辺部分形状に対応する凹形状と、中央部分形状に対応する凸面形状を形成し、
その後、該金型を取り除き、塑性変形された基板上面に、外縁部は凹形状を、その内部は凸面形状を示す構造を残す工程を具え、
得られる前記塑性変形構造における、外縁部の凹形状からなる溝構造を、該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される迂回流路として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
本発明の第五の形態にかかる遅延装置に記載される遅延装置を作製する方法であって、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分の間に設けられる前記遅延時間調節用の流路構造の構成に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
さらに、前記流路構造の構成領域に、疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域を設け、該基板面の部分領域において、
該流路上流部分の末端に連結され、流路状の平面形状を有する、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通され、流路状の平面形状を有する、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路をそれぞれ予め形成し、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
両延長流路間を連結する所望の配置に付加される連絡流路として利用する、流路状の平面形状を有する、親溶媒性材料からなる面で形成される流路を形成する工程として、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間を跨ぐように、
疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域上面に、親溶媒性材料を所望の平面形状で印刷塗布して、少なくとも、その上面は、親溶媒性材料からなる面を有する印刷塗布層を形成する工程を具え、
前記基板表面に形成される親溶媒性材料からなる面を有する印刷塗布層を、両延長流路間を連結する前記連絡流路として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
本発明にかかる遅延装置は、微小な断面積を有する流路を利用して、該流路の内壁面と液体試料の濡れ性、液体試料自体の表面張力に因る、毛細管現象を利用して液体試料を輸送する手法を採用し、「共通的な構成」を有する流路を予め作製した後、その流路の一部に、この毛細管現象に伴って液体試料が輸送される流路の「長さ」、あるいは、毛細管現象に因る液体試料の「進行速度」を変更する操作を施すことで、当該「流路部分(領域)」を液体試料が通過するに要する時間を「一定の範囲」内で変えるため、例えば、マイクロチップに内蔵する遅延装置として利用することで、その遅延時間をマイクロチップごとに、設定することが可能となる。特に、「共通的な構成」を有する流路を予め作製した後、かかる遅延装置における遅延時間を設定することができる利点は、多様な用途に、基本的な流路構成を共通化したマイクロチップの応用をも可能とする。
本発明にかかる遅延装置を利用するマイクロチップの一例の構成を模式的に示す平面図である。 本発明の第一の形態にかかる遅延装置の構成例を模式的に示す図である。 本発明の第一の形態にかかる遅延装置における、遅延時間の調節機構を模式的に示す図である。 本発明の第二の形態にかかる遅延装置における、遅延時間の調節機構を模式的に示す図である。 本発明の第五の形態にかかる遅延装置における、遅延時間の調節機構を模式的に示す図である。 本発明の第三の形態にかかる遅延装置における、遅延時間の調節機構を模式的に示す図である。 本発明の第四の形態にかかる遅延装置における、遅延時間の調節機構を模式的に示す図である。 本発明かかる遅延装置において、液体の輸送手段として利用される毛細管現象と、かかる毛細管現象による気液界面の進行速度に対する、流路壁面における液濡れ性の役割を模式的に示す断面図である。
なお、図中に示す各符号は、下記の意味を有する。
001 基板
002 金属製コテ(凸形状金型)
003 スタンプ(疎溶媒性材料の印刷塗布手段)
004 金型(迂回流路形成用金型)
100 流路
200 通過時間可変型遅延装置
201 流路拡張部
202 障害物
205 延長流路
206 連絡流路
207 疎水性材料表面被膜
208 調節領域
209 迂回流路
305 空気孔
300 試料導入口
301 バッファー液導入口
302 液溜め
303 前処理槽
304 反応槽
400 分離フィルタ
500 液体スイッチ
501 トリガー流路
600 接触角
601 液体
602 流路内壁表面
603 表面張力のベクトル和
604 気液界面の進行方向
上で述べた本発明にかかる遅延装置に関して、
より詳細な表現で記載すると、下記のように記載することができる。
すなわち、本発明の第一の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路において、前記液体が該流路内を毛細管現象によって、該流路上流部分から該流路下流部分へと進行する際、
該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造を有し、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
前記液体は、溶媒中に溶質が溶解してなる溶液であり、
該遅延装置は、
所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
該流路上流部分ならびに流路下流部分の流路幅を基準として、拡張された流路幅を有する、流路拡張部が、
該流路拡張部を介して、前記流路上流部分の末端と流路下流部分の先端とを連結される形態で設けられ、前記流路状構造を構成し、
毛細管現象によって、前記流路上流部分の先端から流路上流部分の末端へ、前記液体は進行し、前記流路上流部分の末端から該流路拡張部内に前記液体が流入し、その後、該流路拡張部内に流入した前記液体は、前記流路下流部分の先端に達した後、毛細管現象によって、前記流路下流部分内を進行し、前記流路下流部分の末端に達する過程において、
該流路拡張部は、
該流路拡張部内において、前記液体の進行する流線は、該流路拡張部の側壁面に沿って、前記流路上流部分の末端と、前記流路下流部分の先端とを結ぶ最短の経路となるように、該最短の経路となる側壁面は、前記液体との濡れ性が所定の範囲に選択される材料で構成され、
前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ、前記最短の経路となる側壁面に沿った流線上の該液体の進行を妨げることが可能な障害構造を付加し、
前記最短の経路となる側壁面と、該障害構造の側壁面の双方に沿って、前記液体の進行する流線へと変更することで、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線の延長を図り、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能が付与されている
ことを特徴とする遅延装置である。
その際、前記流路拡張部の平面形状において、
前記流路上流部分の末端と、前記流路下流部分の先端とを結ぶ最短の経路の長さは、
該流路拡張部が有する、前記拡張された流路幅と等しく選択されている構成とすることができる。
本発明の第一の形態にかかる遅延装置では、例えば、
前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記流路拡張部を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
前記流路拡張部に付加される障害構造は、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状に形成されている態様を選択することが可能である。
あるいは、前記流路拡張部に付加される障害構造は、
少なくとも、その上面は、前記液体に対する濡れ性が乏しい疎溶媒性の材料からなる面を有する障害物であって、
前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の前記障害物を、前記流路拡張部の底面上に付加することで形成されている態様を選択することも可能である。
さらには、前記流路拡張部に付加される障害構造は、
前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ、複数形成されており、
前記最短の経路となる側壁面と、該複数の障害構造の側壁面の双方に沿って、前記液体の進行する流線へと変更することで、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線の延長が図られている態様を選択することも可能である。
本発明の第二の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路において、前記液体が該流路内を毛細管現象によって、該流路上流部分から該流路下流部分へと進行する際、
該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造を有し、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
前記液体は、溶媒中に溶質が溶解してなる溶液であり、
該遅延装置は、
所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
該流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路をそれぞれ設け、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
両延長流路間を連結する配置に連絡流路を付加し、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを連結する、前記流路状構造が構成され、
該上流部延長流路、該連絡流路、該下流部延長流路を介して、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線経路において、
前記流路上流部分の末端から、前記上流部延長流路に対して前記連絡流路が連結される部位までの、当該上流部延長流路部分の流路長さと、
前記下流部延長流路に対して前記連絡流路が連結される部位から、前記流路下流部分の先端までの、当該下流部延長流路部分の流路長さとを変更することで、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線の延長を図り、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能が付与されている
ことを特徴とする遅延装置である。
本発明の第二の形態にかかる遅延装置では、例えば、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、前記連絡流路は、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様を選択することができる。
あるいは、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、前記連絡流路は、少なくとも、その側壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面である態様を選択することもできる。
本発明の第三の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路において、前記液体が該流路内を毛細管現象によって、該流路上流部分から該流路下流部分へと進行する際、
該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造を有し、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
前記液体は、溶媒中に溶質が溶解してなる溶液であり、
該遅延装置は、
所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを結ぶ最短距離を基準として、
該最短距離よりも、その流路の延べ長さが長く選択される、迂回流路によって、該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に、該迂回流路を付加して、前記流路状構造を構成し、
該迂回流路を介して、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線経路において、
前記迂回流路部分の流路の延べ長さを変更することで、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線の延長を図り、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能が付与されている
ことを特徴とする遅延装置である。
本発明の第三の形態にかかる遅延装置では、例えば、
前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記迂回流路を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、前記迂回流路は、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様を選択することができる。
本発明の第四の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路において、前記液体が該流路内を毛細管現象によって、該流路上流部分から該流路下流部分へと進行する際、
該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造を有し、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
前記液体は、溶媒中に溶質が溶解してなる溶液であり、
該遅延装置は、
所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを連通する、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の連結流路によって、前記流路状構造を構成し、
該連結流路の表面として、
前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面、あるいは前記液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料からなる面を選択することにより、
毛細管現象によって、該連結流路内を前記液体が進行する速度を増加させる、あるいは減少させることに伴い、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行に要する時間の短縮、あるいは、延長を図り、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能が付与されている
ことを特徴とする遅延装置である。
その際、
前記連結流路の表面として選択される、
前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面、あるいは前記液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料からなる面は、
前記基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の連結流路の表面を被覆する、親溶媒性材料からなる薄膜、あるいは、疎溶媒性材料からなる薄膜により形成されている形態を選択することができる。
さらには、本発明の第五の形態にかかる遅延装置は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路において、前記液体が該流路内を毛細管現象によって、該流路上流部分から該流路下流部分へと進行する際、
該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造を有し、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
前記液体は、溶媒中に溶質が溶解してなる溶液であり、
該遅延装置は、
所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
前記液体に対する濡れ性に乏しい、疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域を設け、該基板面の部分領域において、
該流路上流部分の末端に連結され、流路状の平面形状を有する、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通され、流路状の平面形状を有する、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路をそれぞれ設け、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
両延長流路間を連結する配置に、流路状の平面形状を有する、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される連絡流路を付加し、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを連結する、前記流路状構造が構成され、
該上流部延長流路、該連絡流路、該下流部延長流路を介して、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線経路において、
前記流路上流部分の末端から、前記上流部延長流路に対して前記連絡流路が連結される部位までの、当該上流部延長流路部分の流路長さと、
前記下流部延長流路に対して前記連絡流路が連結される部位から、前記流路下流部分の先端までの、当該下流部延長流路部分の流路長さとを変更することで、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線の延長を図り、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能が付与されている
ことを特徴とする遅延装置である。
なお、上述する本発明における第一の形態〜第五の形態にかかる遅延装置のいずれにおいても、
所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成され、
前記液体は該流路上流部分ならびに該流路下流部分における前記液体の進行は、毛細管現象によってなされていることが好ましい。
また、本発明の第一の形態にかかる遅延装置において、
前記流路拡張部は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成されていることが好ましい。
また、本発明の第二の形態にかかる遅延装置において、
該流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路は、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成されていることが好ましい。
加えて、上述する本発明における第一の形態〜第五の形態にかかる遅延装置のいずれにおいても、
前記遅延装置を構成する、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路に対して、
該基板の上面に接合する蓋部を設け、
流路内を進行する液体は、前記基板上に形成される凹部と、前記蓋部の下面とに接触する形態とされていることが好ましい。
本発明は、上述の本発明にかかる遅延装置を利用する、マイクロチップの発明をも提供しており、すなわち、本発明にかかるマイクロチップは、
基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路を有し、
前記基板表面を覆う蓋部を設け、
前記基板表面の凹部が、流路の下面と両側壁面を、その開口部を覆う蓋部の下面が、流路の上面をそれぞれ構成することで、流路空間が形成され、
毛細管現象によって、前記流路空間内を前記液体が進行する輸送手段を利用するマイクロチップであって、
該マイクロチップ内の流路を構成する要素の一つとして、前記の基板上面を蓋部で被覆する構成を採用する遅延装置の少なくとも一つを該流路内に内在している
ことを特徴とするマイクロチップである。
なお、上記の本発明の第一の形態にかかる遅延装置を製造する方法、特には、
前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記流路拡張部を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
前記流路拡張部に付加される障害構造は、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状に形成されている態様を有する遅延装置を作製する方法は、
可塑性材料からなる基板を選択して、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記流路拡張部に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
前記流路拡張部に付加される障害構造を、
前記流路拡張部に利用する凹部において、前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状に形成する工程として、
前記流路拡張部において、該障害構造を形成すべき部分に、前記基板の上面より、凸形状の金型を押し付け、前記基板を構成する可塑性材料を変形させ、該金型の外面形状に対応する凹形状を形成し、それに伴い排除される可塑性材料によって、該凹形状を取り囲む壁状構造の形状を形成し、
その後、該凸形状の金型を取り除き、前記凹形状を取り囲む壁状構造の形状を残す工程を具え、
得られる前記凹形状を取り囲む壁状構造の形状を、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
また、前記流路拡張部に付加される障害構造は、
少なくとも、その上面は、前記液体に対する濡れ性が乏しい疎溶媒性の材料からなる面を有する障害物であって、
前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の前記障害物を、前記流路拡張部の底面上に付加することで形成されている態様を有する遅延装置を作製する方法は、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記流路拡張部に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
前記流路拡張部に付加される障害構造として、
前記流路拡張部に利用する凹部において、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の前記障害物を、前記流路拡張部の底面上に付加する工程として、
前記流路拡張部の底面上、該障害物を付加すべき部分に、前記液体に対する濡れ性が乏しい疎溶媒性の材料を所望の平面形状で印刷塗布して、少なくとも、その上面は、疎溶媒性の材料からなる面を有する印刷塗布層を形成する工程を具え、
得られる所望の平面形状を有する前記疎溶媒性材料の印刷塗布層を、前記流路拡張部の底面上に付加される、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の障害物として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
一方、上記の本発明の第二の形態にかかる遅延装置を製造する方法、特には、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、前記連絡流路は、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様の遅延装置を作製する方法は、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、該流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
両延長流路間を連結する所望の配置に付加される連絡流路として、該基板表面に、新たに溝構造を形成する工程として、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間を跨ぐように、該基板表面を溝状に切削加工を施す工程を具え、
前記基板表面の切削加工により形成される切削溝を、両延長流路間を連結する前記連絡流路として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
さらには、上記の本発明の第三の形態にかかる遅延装置を製造する方法、特には、
前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記迂回流路を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、前記迂回流路は、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている態様の遅延装置を作製する方法は、
可塑性材料からなる基板を選択して、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、前記迂回流路として、
前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成する工程として、
前記迂回流路を形成すべき部分に、前記基板の上面より、前記迂回流路の平面形状の外縁に対応する周辺部分が突出し、その内縁に対応する中央部分が窪んだ形状の金型を押し付け、
前記基板を構成する可塑性材料を変形させ、該金型の周辺部分形状に対応する凹形状と、中央部分形状に対応する凸面形状を形成し、
その後、該金型を取り除き、塑性変形された基板上面に、外縁部は凹形状を、その内部は凸面形状を示す構造を残す工程を具え、
得られる前記塑性変形構造における、外縁部の凹形状からなる溝構造を、該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される迂回流路として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
本発明の第五の形態にかかる遅延装置に記載される遅延装置を作製する方法であって、
該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記流路状構造の構成に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
さらに、前記流路状構造の構成領域に、疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域を設け、該基板面の部分領域において、
該流路上流部分の末端に連結され、流路状の平面形状を有する、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通され、流路状の平面形状を有する、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路をそれぞれ予め形成し、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
両延長流路間を連結する所望の配置に付加される連絡流路として、該基板表面に、流路状の平面形状を有する、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される流路を形成する工程として、
前記上流部延長流路と下流部延長流路との間を跨ぐように、
疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域上面に、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料を所望の平面形状で印刷塗布して、少なくとも、その上面は、親溶媒性材料からなる面を有する印刷塗布層を形成する工程を具え、
前記基板表面に形成される親溶媒性材料からなる面を有する印刷塗布層を、両延長流路間を連結する前記連絡流路として利用する
ことを特徴とする遅延装置の製造方法である。
以下に、本発明に関して、図面を参照して、より詳細に説明する。
本発明にかかる遅延装置においては、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路において、輸送対象の液体が該流路内を毛細管現象によって、その流路上流部分からその流路下流部分へと進行する構成を採用している。その際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節するため、該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に、遅延時間を一定の範囲内で設定・調節することが可能な流路状構造を設けている。すなわち、本発明にかかる遅延装置においては、毛細管現象によって液体が輸送される際、その液体の先端の気液界面(液面端)は、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで進行していくが、その流路上流部分の通過に要する時間と、流路下流部分の通過に要する時間は一定に保ち、該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設ける流路状構造を通過する時間を一定の範囲内で設定・調節することが可能な、通過時間設定型遅延回路を構成している。
この遅延装置自体、液体の輸送手段として、毛細管現象を利用しているため、液を強制的に輸送するための圧力差を印加するためのポンプ機構などを付加する必要はない。同時に、基板上に形成される流路で構成されるマイクロチップを構成する構成要素として、基板内に内蔵する形態で利用する際、該マイクロチップの流路内の液体輸送も、毛細管現象を利用する構成を選択することが可能となる。
図1に、本発明にかかる設定型遅延回路をその構成要素として利用するマイクロチップの一例を示す。図1の平面図にその流路構成示すマイクロチップは、基板001上に形成する、所定の流路パターンを有する凹部に対して、基板001の上面を被覆する形態の蓋部を設ける構成を採用している。従って、前記凹部の上方を開放部は、蓋部の下面で覆われ、基板001に形成される凹部が、底面と両側壁面、蓋部の下面が、上面を構成する流路となっている。この流路内においては、液体は、流路の底面と両側壁面、ならびに上面に接触した状態で、毛細管現象によって輸送される。
毛細管効果を利用して液体を輸送する場合、流路である凹部の幅と深さは、その流路壁面を構成する材料と液体との濡れ性の度合いに応じて適宜選択する。例えば、図1に例示するような生化学用マイクロチップにおいては、流路に用いる凹部の幅は、20μm〜500μm程度の範囲、より好ましくは、100μm程度であり、その深さは、5μm〜50μm程度の範囲、より好ましくは、20μm程度である。この寸法範囲の凹部において、毛細管効果を利用して、例えば、水溶液などの、液体を輸送する上において、凹部の壁面材料として、液体の濡れ性が、接触角で表すと、60°以下、より好ましくは40°以下の材料を用いることが望ましい。水性溶媒を利用する液体に対して、前述する接触角を示す材料の一例として、無機基板材料として、ガラス、石英、シリコン上の自然酸化膜等を挙げることができ、樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、エポキシ系樹脂、その他の親水性エンジニアリングプラスチック等を挙げることができる。
図1に示すマイクロチップでは、液体試料は、まず、血漿分離フィルタ400において、血液サンプルからバッファー液へ、血漿中に含まれる可溶性成分がサンプリングされ、この血漿中の可溶性成分を溶解する液体試料は、一旦、混合槽303に留まる間に、濃度の均一化が進められる。その後、液体スイッチ500を通して、反応槽304へと輸送される。本発明にかかる設定型遅延回路200は、血漿分離フィルタ400の直後から、前記主要流路から分岐され、液体スイッチ500における、トリガー流路501へと連結される部分に利用されている。
血漿分離フィルタ400部分には、国際公開 03/035233号パンフレットに開示される構成を利用しており、併走する二本の流路間に、固液分離フィルタとして機能する分離壁構造を設け、この固液分離フィルタを介して、血液サンプルから、バッファー液へと、血漿中に含まれる可溶性成分が濃度勾配に伴って拡散される機構を採用している。その際、血液サンプルは、蓋部も設ける穴より、試料導入口300へ滴下される。一方、流路101の他端に設ける液溜まり302には、空気口が設けられており、試料導入口300中の血液サンプルは、他端が開放されている、この流路101内を毛細管現象により輸送される。なお、液溜まり302が輸送された液体で満たされた時点で、試料導入口300の液面と液溜まり302との液面の水準に差異がなくなるように、滴下する血液量を設定することで、それ以上の輸送は停止する。
一方、バッファー液は、バッファー液導入口301に供給され、主流路の他端は、空気口305が設けられており、他端が開放されている、主流路内を毛細管現象により輸送される。液体スイッチ500には、国際公開 04/051229号パンフレットに開示されるスイッチの構成を利用している。主流路の液体スイッチ500と連結部には、短い長さの流路部分が、その壁面が疎水性材料被膜で被覆された形態となっており、この短い長さの流路部分では、バッファー液の壁面に対する濡れ性が乏しく、毛細管現象により、この短い部分を超えて、液体スイッチ500内へ液の流入することを抑制されている。一方、液体スイッチ500と連結されているトリガー流路501は、毛細管現象による液の輸送が可能な親水性材料からなる壁面を有しているため、トリガー流路501からは、液体スイッチ500内へ液が輸送される。なお、液体スイッチ500自体の内壁は、親水性材料からなる壁面で構成されており、トリガー流路501からの液の輸送は継続する。その後、主流路の液体スイッチ500と連結部に、トリガー流路501から供給された液が達し、主流路内の液面端と接触すると、この接触点を介して、主流路内の液も液体スイッチ500内へと移動を開始する。あたかも、トリガー流路501から供給された液は「呼び水」となって、主流路内の液の液体スイッチ500内への流入が開始する。
具体的には、バッファー液導入口301の液面水準と、主流路の液体の水準との間には僅かな差異があり、前記主流路の液体スイッチ500と連結部に設ける疎水性領域で一旦停止している液端面は、僅かに凸の形状を示し、但し、疎水性の壁面とバッファー液との接触角を超えない範囲で均衡している。その際、トリガー流路501から供給された液も、この疎水性領域に対して、その液面は同じく、凸の形状を示した状態となる。前記主流路の液体スイッチ500と連結部に設ける疎水性領域の長さを適正に設定すると、両液面の凸形状の先端が互いに接触し、連通すると、疎水性の壁面とバッファー液との接触角は、均衡していた状態を超える。その結果、主流路の液体スイッチ500と連結部を通過して、液の流入が開始する。
液体スイッチ500が「ON」状態となり、液体スイッチ500を満たし、流路102へと液面端が進行する段階では、主流路のコンダクタンス(流路断面積)は、トリガー流路501のコンダクタンス(流路断面積)よりも格段に大きいため、ほとんどの液流は、主流路を介するものとなる。すなわち、混合槽303に留まる間に、濃度の均一化が進められた液体試料が、液体スイッチ500、流路102を経由して、反応槽304へと輸送される。この反応槽304は、濃度が一様になった血漿由来の可溶性成分を、その検出用試薬と混ぜて反応させ、分析するための液溜めである。図1に示すマイクロチップでは、反応槽304部分は、前記の検出用試薬との反応による反応産物の濃度を光学的に測定するため、その表面を被覆する蓋部は、透明部材で形成されている。
本発明にかかる設定型遅延回路200は、血漿分離フィルタ400の直後から、前記主要流路から分岐され、液体スイッチ500における、トリガー流路501へと連結される部分に利用され、主流路中に設ける混合槽303において、濃度の均一化を図るため液体試料が留まる時間を設定する役割を有している。具体的には、利用するバッファー液の液粘度、また、濃度の均一化を図るべき、血漿中の可溶性成分の濃度拡散係数を考慮し、混合槽303に留める時間の適正化を行う必要がある。その適正化された滞留時間に応じて、設定型遅延回路200を介して、血漿分離フィルタ400の直後に設ける、前記主要流路からの分岐点から、トリガー流路501の先端へ液面端が到達するのに要する時間を一定の範囲で調節・設定する。
次に、本発明にかかる設定型遅延回路の構成と、その動作原理に関して、具体的に説明する。
(第一の実施の形態)
本発明の第一の形態にかかる遅延回路の一例を、図2に示す。
図2は、本発明の第一の形態にかかる遅延回路において、その遅延回路を構成する、該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造として採用する、流路拡張部201と、前記流路拡張部201に付加される障害構造の例を示す。
図2に例示する、流路拡張部201は、流路100に対して、流路上流部分と流路下流部分とを連結する配置で設けられ、基板001の上面に一体的に形成される凹部として作製されている。流路100の流路幅(W)と較べて、流路拡張部201の流路幅(W)を有意に広く設定している。図2の(a)に示す態様では、この流路拡張部201により連結される、流路上流部分の末端と、流路下流部分の先端とは、矩形形状を有する、流路拡張部201の一つの側壁面に沿った位置に配置されている。
この流路拡張部201に、障害構造を付加していない状況では、毛細管現象によって、流路上流部分を進行してきた液体は、流路上流部分の末端から、流路拡張部201内に流入する。その後、流路拡張部201を構成する底面、壁面、上面に対する、液体の濡れ性を利用して、側壁面と接触した状態で液端面は、流路拡張部201内に拡がってゆく。その結果、この液体の濡れ性に依る、壁面と液体との接触角が90°未満の場合、液端面(気液界面)の形状は、液相側が凹状の状態となり、表面張力により、より平坦な気液界面を達成する方向に力が働き、流路上流から流路拡張部201内への液体の輸送が継続する。その際、流路拡張部201内に拡がってゆく液端面(気液界面)は、親溶媒性の壁面に沿って進行する。流路上流部分の末端と、流路下流部分の先端とを最短距離で結んでいる、流路拡張部201の一つの側壁面を、親溶媒性の壁面に選択すると、この最短距離で結んでいる、流路拡張部201の一つの側壁面に沿って、液端面(気液界面)は進行し、流路下流部分の先端に達する。その後、液体は、流路下流部分の先端から流路下流内への進行してゆく。換言すると、この流路拡張部201を実質的に通過するに要する時間は、液端面(気液界面)が、親溶媒性の壁面に選択されている、流路拡張部201の一つの側壁面に沿って、流路上流部分の末端と、流路下流部分の先端との間を最短距離で結ぶ流線を進行する際に要する時間となっている。
この流路拡張部201に、障害構造が付加された状況、例えば、図2の(a)に示すように、前記流路上流部分の末端と、流路下流部分の先端とを最短距離で結んでいる、流路拡張部201の一つの側壁面から突き出す形態の障害物202が形成されると、液端面(気液界面)は、この障害物202の外周に沿って進行する。その際、流路上流部分の末端と、流路下流部分の先端とを最短距離で結ぶ流線に従って、液端面(気液界面)が流路下流部分の先端に達するまでに要する時間が、この流路拡張部201を実質的に通過するに要する時間に相当する。図3の(a)に示すように、突き出す形態の障害物202の突出量が少なく場合、この流路拡張部201を実質的に通過するに要する時間の延長(遅延量)は小さいが、図3の(b)に示すように、障害物202の突出量が多くなると、その突出量に応じて、この流路拡張部201を実質的に通過するに要する時間の延長(遅延量)は大きくなる。
図2の(c)には、前記障害物202として、基板001を可塑性材料、例えば、熱可塑性有機材料を形成する際、この一部に加熱した金属製コテ002の先端を押し付け、加工を施し、凹状の窪みを形成し、それに付随して、その外縁に壁状の突起を形成する例を示す。この外縁に壁状の突起は、熱可塑性有機材料で構成されており、その壁高さを適正化すると、上面との隙間が実質的に無く、液端面(気液界面)は、この壁状突起の外縁に沿って進行する形態となる。
また、図2の(d)には、別の実施態様として、流路拡張部201の底面上に、疎水性材料からなる塗布層を、印刷塗布手段、例えば、スタンプ003を利用して、印刷塗布する形態を示す。この疎水性材料からなる塗布層の上面は、疎水性表面を構成している結果、この塗布層の上面を超えて、液端面(気液界面)は進行することは困難となり、この塗布層の外周に沿うように液端面(気液界面)は進行していく。すなわち、疎水性材料からなる塗布層を利用して、流路拡張部201に設ける障害物202として機能する、流れの抑制機構を達成することができる。
加えて、図2の(e)に例示するように、流路拡張部201に、障害構造が複数付加された状況では、同様に、液端面(気液界面)は、これらの障害物202の外周に沿って進行する。その際、流路上流部分の末端と、流路下流部分の先端とを最短距離で結ぶ流線に従って、液端面(気液界面)が流路下流部分の先端に達するまでに要する時間が、この流路拡張部201を実質的に通過するに要する時間に相当する。図2の(e)の形態では、側壁面に沿って、流路上流部分の末端から、流路下流部分の先端に達する際、これら障害物202の外周を含めて、最短距離となる流線従って、液端面(気液界面)が流路下流部分の先端に達するまでに要する時間が、この流路拡張部201を実質的に通過するに要する時間に相当する。
図3の(a)、(b)に示すように、流路上流部分の末端と、流路下流部分の先端とを最短距離で結んでいる、流路拡張部201の一つの側壁面の長さ(最短経路長さ)と、流路拡張部201の流路幅(W)とを等しく選択すると、流路拡張部201に、障害構造が付加された状況において、この最短経路長さを有する側壁面に設ける障害物に液端面(気液界面)が到達し、その後、この障害物の外周に回る流線に沿って、液端面(気液界面)が進行する状況がより確実に達成できる。
仮に、最短経路長さと比較して、流路拡張部201の流路幅(W)が大幅に狭くなると、最短経路長さを有する側壁面に設ける障害物に液端面(気液界面)が到達するよりも、遥か前に、液端面(気液界面)は、対向する側壁面に到達することもある。その際には、液端面(気液界面)が、対向する側壁面とほぼ直交する形態となるまで、最短経路長さを有する側壁面に沿った液端面(気液界面)の進行が遅れ、対向する側壁面に沿った液端面(気液界面)の進行が促進される。その後、両側壁面に対して、液端面(気液界面)は、ほぼ直交する状態で液の進行がなされるため、その先に設けている障害物202による、通過時間の延長(遅延量)は、実質的に皆無となる。すなわち、障害物202を設けていない状態でも、最短経路長さと比較して、流路拡張部201の流路幅(W)が大幅に狭くなると、両側壁面に対して、液端面(気液界面)は、ほぼ直交する状態が達成された後、液面の進行が再開される。従って、両者の間で、通過時間には実質的な差異は無いものとなる。
なお、図2に示す形態においては、流路100の深さ(D)と流路拡張部201の深さ(D)は等しくし、基板001の上面を覆う蓋部を設け、底面と上面の双方に液が接触した状態で、流路100から流路拡張部201への液面の進行がなされる形態を選択している。この流路100の深さ(D)と流路拡張部201の深さ(D)を等しくする態様は、基板001の上面に流路を一括して形成する工程を容易に行う上で、好ましい態様である。
本発明の第一の形態にかかる遅延装置では、
前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ、前記最短の経路となる側壁面に沿った流線上の該液体の進行を妨げることが可能な障害構造を付加し、
前記最短の経路となる側壁面と、該障害構造の側壁面の双方に沿って、前記液体の進行する流線へと変更することで、前記流路上流部分の末端から前記流路下流部分の先端に達する、前記液体の進行する流線の延長を図り、
流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能が付与されている。その通過時間の延長(遅延量)の調節は、障害構造の張り出し量、ならびに、設ける障害構造の個数を選択することで、相当に広い範囲で設定可能となる。
なお、流路拡張部201の側壁面に沿って、前記流路上流部分の末端と、前記流路下流部分の先端とを結ぶ最短の経路となるように、該最短の経路となる側壁面は、前記液体との濡れ性を所定の範囲に選択される材料で構成する。例えば、流路100と流路拡張部201は、無機材料からなる基板001、例えば、シリコン、シリコン酸化膜、ガラス、石英などを用いる場合、一般的なリソグラフィーと化学エッチング手段によって形成できる。具体的には、フォトマスクと光レジストを利用して流路パターンを基板に転写し、その流路パターン部分を化学的にエッチングする。あるいは、流路100と流路拡張部201は、基板001として、熱可塑性有機材料、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなどを選択する場合には、金型を用いたプレス、射出成形等の加工手段を用いて形成することが可能である。
流路100と流路拡張部201に利用する凹部の底面、側壁面は、毛細管現象によって輸送する液体が利用する溶媒に対して、濡れ性を有する親溶媒性材料からなる面とする。輸送する液体が、バッファー液のように、水を主体とする溶媒を用いるものである場合、水との濡れ性を有する親水性材料からなる面とする。一方、輸送する液体が、疎水性の有機溶媒を使用するものである場合、かかる疎水性の有機溶媒との濡れ性を有する疎水性材料からなる面とする。また、基板の上面を被覆し、流路の上面となる蓋の下面も、同様に、輸送する液体が利用する溶媒に対して、濡れ性を有する親溶媒性材料からなる面とする。
基板、蓋自体の材料がかかる要件を満足しない場合、適宜、親溶媒性材料からなる被膜層を表面に形成して、所望の濡れ性、すなわち、90°未満の、所望の接触角の範囲から選択される、当該液体との接触角を示す表面とする。水性溶媒を用いる液体を対象とする際、親水性材料からなる被膜層の形成に利用可能な被覆材料の一例として、ポリアクリルアミドゲル、リン脂質類似材料、例えば、MPC(2−メタクロイルオキシエチルホスホコリン、商品名リピジュア、日本油脂株式会社)、その他の親水性カップリング剤を挙げることができる。
なお、障害物202は、流路100、流路拡張領域201が形成された基板に対して、その上面に蓋を接合する前に形成する。障害物202は、図2(c)に示すような壁状の障害物として形成することもできる。例えば、基板が熱可塑性の樹脂材料から成る場合、コテ002を押し当てて、流路拡張部201の一部を加熱して変形させることで、流れを遮る壁状の障害物が形成できる。その際、この形態に利用可能な熱可塑性の樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネートなどを挙げることができる。
一方、基板が無機材料からなる場合、壁状の障害物202は、厚膜レジスト等の感光材料を利用して形成することもできる。その場合、流路の深さ程度の厚膜レジストで基板を覆った後、障害物202以外の部分を、一般的な露光と現像処理で除去することで実現できる。
なお、障害物202は、流路拡張部201の表面の一部を疎液性とすることによっても実現できる。例えば、図2(d)のように、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの疎水性ゴム物質でできたスタンプ003を押しつけて離すこと(スタンプ処理)で実現できる。スタンプが接触した部分の表面は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の被覆にともなって、水の接触角が概ね100°を示す疎水性となり、液体の進行を妨げるため障害物202としての役割を担うことができる。また、疎水性の表面塗布層は、疎水性インクを用いてインクジェット機構を持つ印刷装置で印刷することによっても実現できる。あるいは、疎液性の表面塗布層は、元々親水性の基板を疎水性の光レジストで覆った後、障害物202となる以外の部分を、マスクを利用した露光と現像で除去する方法等でも形成できる。
例えば、基板として、ガラスを、光レジストとして、S1818(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社)を用いる場合、下記表1にまとめる水の接触角の測定例に示すように、清浄なガラス表面では6.4°、また、前記光レジストを塗布後、現像して除去したガラス表面では、34.1°と40°以下の接触角であるが、光レジストで被覆された表面では73.5°の接触角となる。従って、40°以下の接触角を示す、清浄なガラス表面や光レジストを塗布後、現像して除去したガラス表面では、毛細管効果が有効に機能するが、疎水性が増している光レジストで被覆された表面では、液体の進行は極めゆっくりとなる。すなわち、現像で除かれなかった光レジスト層で被覆された部分は、毛細管現象による水性液体の進行を阻害する障害物として機能する。
次に、第一の実施の形態において、遅延時間を調節する要領について説明する。
図1に示す形状の生化学用マイクロチップにおける、トリガー流路に設ける遅延装置を、ガラス基板上に形成する。その際、基板材料のガラス表面に、流路100である凹部と、流路拡張部201とを、その基板上にドライエッチングで形成する。形成される流路拡張部201に、光レジストを利用して障害物202を形成し、この上面を覆うガラスのフタを接合して、マイクロチップを作製する。この遅延装置の構成において、流路100である凹部の幅は100μm、深さは20μm、流路拡張部201は、深さは20μm、その平面形状は、一辺5mmの正方形に選択されている。その際、ドライエッチング加工で形成される流路100の内壁面は、表1の条件3に相当する接触角を持つ。
このマイクロチップに、液溜めから水を導入すると、毛細管効果によって水は、光レジストを塗布後、現像除去したガラス表面を有する流路拡張部201部分では、入口と出口とを繋ぐ側壁面に沿って、毎秒約2.5mmの速さで進行する。そのため、障害物を形成しない場合、水は、流路拡張部201の入口から出口まで、約2秒で到達する。一方、図2(a)のように、障害物202を流路拡張部201の中央にまで張り出させて形成すると、流路拡張部201の入口から約4秒で出口に到達する。すなわち、障害物202を設けることに付随して、約2秒間の遅延が達成される。具体的には、流路拡張部201の入口から出口までを繋ぐ側壁面から張り出す形状の障害物202によって、毛細管効果によって進行する水の先端液面の流線は、入口側の側壁面から、障害物202の周囲に沿って、出口が側の側壁面へと進む流線となる。すなわち、この毛細管効果によって進行する水の先端液面の流線は、障害物202に因り、延長されており、その結果、約2秒の遅延時間の付加がなされる。
正方形の流路拡張部の一辺長さをL、その一辺から張り出した障害物202の張り出し幅をYとすると、障害物202の周囲に沿った流線の延長量は、概ね2Yとなる。その際、障害物202に起因する流線の延長がもたらす、遅延時間Tは、障害物202の周囲に沿った液体液面の進行速度をVとして、次の式1に示す値となる。
T=2Y/V (式1)
逆に、この式1から、所望の遅延時間Tを得るために必要な障害物202の張り出し量Yを決定することができる。なお、図3(b)に示すように、障害物202の張り出し量Yは、一辺長さL以下である。また、入口から進入する液体の一部は、流路拡張部201の残る三辺に沿って、液面が進行して、出口に到達する。従って、一つの障害物202を利用して、設定できる遅延時間Tは、自ずと上限があり、その上限Tmaxは次の式2で示される値となる。
Tmax=2L/V (式2)
すなわち、一辺5mmの正方形形状の流路拡張部201に対して、一つの障害物202を設ける際、遅延時間の上限値Tmaxは、約4秒となり、障害物202の張り出し量Yを0〜5mmの範囲で選択することで、0〜4秒までの範囲で、遅延時間Tの設定が可能となることがわかる。
なお、図2(e)のように、流路拡張部201の他の辺にも障害物202を設置することで、流路拡張部201の残る三辺に沿って、液面が進行して、出口に到達する時間の延長を図り、また、一辺上に設ける障害物202の個数を増すと、設定可能な遅延時間の上限値を、さらに長くすることができる。例えば、一辺上にN個の障害物202を設ける際に、一つの障害物202を設ける場合の流線延長量の、約N倍の流線延長量が達成されると、それに伴い、遅延時間Tも約N倍とすることが可能となる。
ガラス以外の基板を利用する場合、あるいは流路の内側を表面処理剤で被覆する場合には、予め、毛細管効果で、流路拡張部201の側壁面に沿って進行する液体液面の進行速度Vを測定しておく。この進行速度Vの測定値に基づき、式1、式2を適用して、所望の遅延時間Tの設定範囲を得るために必要な流路拡張部201の一辺の長さL、障害物の張り出し量Yの範囲を推定することができる。
ちなみに、光レジストを塗布後、現像して除去したガラス表面は、その過程で使用される有機物が表面を被覆するように残余しているため、水との濡れ性が清浄なガラス表面より劣っている。現像・除去の後、アッシング処理を施し、表面を被覆する有機物を酸化して、その除去を図ると、水との濡れ性は大幅に回復する。その結果、毛細管効果によって水は、流路拡張部201部分では、入口と出口とを繋ぐ側壁面に沿って、毎秒約10mmの速さで進行する。従って、アッシング処理を施したガラス表面を示す、一辺5mmの正方形形状の流路拡張部201に対して、一つの障害物202を設ける際、遅延時間の上限値Tmaxは、式2から、約1秒と予測される。その場合、遅延時間Tの設定可能範囲を0〜4秒とするためには、アッシング処理を施したガラス表面を示す流路拡張部201に対して、その各辺に複数の障害物202を設ける態様を選択する必要があることがわかる。
(第二の実施の形態)
本発明の第二の形態にかかる遅延回路の一例を、図4に示す。
図4に示す形態では、流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造として、所定の流路幅を有する、流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路をそれぞれ設け、
この上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路205間を連結する配置に連絡流路206を付加し、流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを連結する構成を利用する。
図4の(a)に示すように、流路100と、それにつながる2本の延長流路205とを予め一体に基板001上に形成しておく。図4の(a)に示す2本の延長流路205は、連通していないため、この状態では、流路上流部分と流路下流部分とは分離されている。その後、図4の(b)に示すように、2本の延長流路205を跨ぐように、基板001の表面を切削することで、新たに溝を設けると、この溝を介して、2本の延長流路205が連通される。
図4の(b)に示すような、上流部延長流路、連絡流路、下流部延長流路を介して、流路上流部分の末端から流路下流部分の先端に達する、液体の進行する流線経路において、
流路上流部分の末端から、上流部延長流路に対して連絡流路が連結される部位までの、当該上流部延長流路部分の流路長さ(L)と、
下流部延長流路に対して連絡流路が連結される部位から、流路下流部分の先端までの、当該下流部延長流路部分の流路長さ(L)と、
連絡流路自体の流路長さとを合計したものが、
この流路状構造の総流路長となっている。従って、図4の(c)の構成と、図4の(b)の構成では、連絡流路206を形成する位置が異なることに伴い、上流部延長流路部分の流路長さ(L)と下流部延長流路部分の流路長さ(L)との和に差異が生じる。すなわち、目的とする通過時間の延長(遅延量)の調節は、連絡流路206を形成する位置を選択することで、上流部延長流路部分の流路長さ(L)と下流部延長流路部分の流路長さ(L)との和を変更することにより達成される。
なお、図4に示す構成においては、2本の延長流路205は、初期状態では連通していないが、両者が先端部分で連通している形態としてもよい。その場合、連絡流路206を付加しない状態で、通過時間の延長(遅延量)は最大となり、連絡流路206を形成する位置を選択することで、上流部延長流路部分の流路長さ(L)と下流部延長流路部分の流路長さ(L)との和を小さくする結果、通過時間の延長(遅延量)を減少させる形式となる。なお、延長流路205の平面形状は、連絡流路206の形成を妨げない範囲で、任意の形状を選択することができる。
この図4に例示する形態では、連絡流路206を経由して、液体が毛細管現象によって進行する必要があり、この連絡流路206の壁面は、液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料の面である必要がある。換言するならば、基板001の表面を切削することで、新たに溝を設けることで、連絡流路206の壁面を形成する際には、基板001自体が親溶媒性材料で形成されていることが必要となる。なお、基板001の表面を切削することで、新たに溝を設け、その加工面に、親溶媒性材料の被膜を形成する態様を選択する際には、基板001自体は、必ずしも親溶媒性材料で形成されている必要はない。なお、水性液体を対象とする際、基板001自体の作製に利用可能な親水性材料として、無機材料としては、ガラス、石英等を挙げることができ、樹脂材料としては、ポリエチレンレテフフタレート、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
なお、連絡流路206を形成するための切削加工は、流路100が形成された基板に対して、その上面に蓋を接合する前に実施する。この連絡流路206として利用する切削加工溝は、溝の全長は、2本の延長流路205を跨ぐが、必要以上に長くならない範囲に設定する。また、溝の幅(切削幅)は、延長流路205の流路幅よりも、極端に狭くなく、また、毛細管現象による輸送に適する範囲内の幅とすることが好ましい。例えば、ダイシングに利用される極薄刃のマイクロ切断砥石などを利用することで、適正な切削幅で、2本の延長流路205をまたぐように基板の表面を切削することで設けることができる。このマイクロ切断砥石による断面は鋭利なため、延長流路205の断面と連絡流路206の断面との連通部分は、良好な連結状態となる。
この第二の実施の形態において、連絡流路206を形成する位置は、次のように容易に決定することができる。すなわち、図4(b)のような流路形態を選択する時、延長流路205部分における液体液面の進行速度をV、延長流路205の起点から、連絡流路206の形成位置までの流路長さY、また、連絡流路206部分の通過に要する時間をtとすると、延長流路205部分を通過するに要する延べ時間Tは、
T=t+2Y/V (式3)
で推定できる。この式3に従って、目的とする遅延時間(2Y/V)が達成するように、延長流路205の起点から、連絡流路206の形成位置までの流路長さYを選択することが可能である。
(第5の実施の形態)
本発明の第二の形態にかかる遅延装置では、2本の延長流路205に対して、それを連通する連絡流路206として、基板を切削加工して作製する溝構造を利用している。一方、本発明の第五の形態にかかる遅延装置では、疎溶媒性表面に対して、流路パターン状に親溶媒性の領域を形成することで、かかる流路パターン状に形成される親溶媒性領域上は、液体に対して良好な濡れ性を示し、その周辺の疎溶媒性表面は濡れ性が乏しいため、この流路パターン状に形成される親溶媒性領域を、毛細管現象を利用する流路として利用できる点に着目して、2本の延長流路とそれを連通する連絡流路とを、前記の表面処理による流路系で構成している。なお、この疎溶媒性表面に対して、流路パターン状に親溶媒性の領域を形成する手法は、国際公開第03/044519A1号パンフレットに開示する手法を応用するものである。
本発明の第五の形態にかかる遅延回路の一例を、図5に示す。
図5に示す形態では、流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造として、所定の流路幅を有する、流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
液体に対する濡れ性に乏しい、疎溶媒性材料からなる表面を有する、基板面の部分領域207を設け、この基板面の部分領域207において、
流路上流部分の末端に連結され、流路状の平面形状を有する、液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路、ならびに、流路下流部分の先端に連通され、流路状の平面形状を有する、液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路をそれぞれ設け、
この上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
両延長流路間を連結する配置に、流路状の平面形状を有する、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される連絡流路を付加し、
流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを連結する構造を採用している。
例えば、流路100自体は、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態を採用し、所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分は、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、液体と接する凹部内壁面は、液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成され、液体は流路上流部分ならびに流路下流部分における液体の進行は、毛細管現象によってなされている場合、この図5に例示する流路状構造は、基板上に形成される、所定の面積を有する凹部内に形成する形態とする。
具体的には、図2において、流路拡張部201として利用するような、基板上に形成される凹部を利用する流路100と、等しい深さを有し、所定の面積を有する凹部に流路100の、流路上流部分の末端と流路下流部分の先端とが連結する形態とする。この所定の面積を有する凹部の底面、側壁面は、液体に対する濡れ性に乏しい、疎溶媒性材料の被膜層207で覆われた表面とする。この疎溶媒性材料の被膜層207の上面に、流路上流部分の末端と連結するように、流路状の平面形状を有する、液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路と、流路下流部分の先端に連通され、流路状の平面形状を有する、液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路とを形成する。
例えば、図1に例示するように、マイクロチップを構成する要素の一つとして、本発明の第五の形態にかかる遅延回路を内蔵する形態で利用する際には、基板001の上面に蓋を被覆する構成を採用するため、この図5に例示する流路状構造は、基板上に形成される、所定の面積を有する凹部内に形成する形態とすることが必要となる。
流通を図る液体が、図1に例示するように、マイクロチップのように、水系溶媒を使用する液体である際、図5に例示する設定型遅延回路は、流路100に連結される延長流路205、連絡流路206は、疎水性材料207の上に形成された、所定のパターン形状の親水性膜として実現される。基板001面を被覆する、疎水性材料207からなる被膜層は、例えば、PMMAの希薄溶液や、シラザンのキシレン溶液、あるいは、国際公開第03/044519号パンフレットに記載のシランアカップリング剤を、基板001の上面にスピンコートすることで実現できる。なお、疎水性材料207の被膜層は、基板001自体が親水性材料である際に、その表面を疎水性とする目的で利用させており、基板001自体が疎水性材料である際には、その表面を利用し、疎水性材料207の被膜層を省くこともできる。
流路100に連結される延長流路205は、この疎水性材料207の被膜層上に、親水性の表面を持つカップリング剤を、国際公開第03/044519号パンフレットに開示される方法でパターニングすることで実現きる(図5(b))。また、連絡流路206は、親水性の材料、例えば、CAM(カルボキシメチルセルロース)、コラーゲン、でんぷん等、ならびに、疎水性材料207との親和性も持つカップリング剤の溶液、あるいは、それらの混合液、ないしは、それらの材料を含むゾル溶液を所定のパターンに塗布し、形成することができる。この塗布操作は、インクジェット方式、あるいはスタンプ方式、ないしは、ディップペン方式など、塗布される液の粘度に適する手法が利用することが好ましい。なお、延長流路205の所定の位置に、連絡流路206を形成することで、通過時間の延長(遅延量)の調節が実現される。
例えば、基板を構成する親水性材料として、ガラス(接触角〜6°)を選択する場合を挙げて、説明する。幅1mmの流路に相当部分の除き、それ以外の領域の基板表面に接触するようなPDMSでつくったスタンプをガラス基板表面に押しつけて、流路に相当部分を除く基板面を疎水化(接触角〜100°)する。その後、基板の一部にスペーサとして厚さ0.3mmの両面粘着テープ(住友スリーエム株式会社)を貼り付けた上で、アクリル樹脂(PMMA、接触角〜80°)のフタを貼り付け、基板とフタの間に約0.3mmの隙間を設ける。この構成を有する、清浄なガラス面の流路相当部分の端に水を導入したところ、水の液面は、清浄なガラス面が露呈している流路相当部分だけを毎秒約10mmで進行し、それ以外の疎水化処理が施されている領域に漏れ出すことは無い。この場合、連絡流路206は、疎水化処理が施されている領域の表面にポリアクリルアミド溶液を塗布し、乾燥固化することで、高親水性被膜層を作製することで実現される(ちなみに、ポリアクリルアミドを固化した表面の接触角は1°以下である)。
なお、上述の態様は、流路を流れる液体として水溶液を用いる態様であるが、流路を流れる液体が、疎水性有機溶媒を利用する油性溶液である際には、基板001の上面の被覆層は、かかる疎水性有機溶媒に対する濡れ性に乏しい、疎溶媒性材料の被膜層を用い、また、延長流路205、連絡流路206は、かかる疎水性有機溶媒に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料を利用する塗布層を利用する。
(第三の実施の形態)
本発明の第三の形態にかかる遅延回路の一例を、図6に示す。
図6に例示する遅延装置では、流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造として、
所定の流路幅を有する、流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを結ぶ最短距離を基準として、
この最短距離よりも、その流路の延べ長さが長く選択される、迂回流路によって、流路上流部分の末端と流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に、迂回流路を付加する構成を採用している。
図6に例示する態様では、
流路上流部分と流路下流部分、ならびに流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる迂回流路を形成する基板001として、可塑性材料からなる基板を選択し、
流路上流部分の末端と流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、迂回流路209は、
基板001を構成する可塑性材料に変形を加えて、基板001表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている。
具体的には、当初、図6の(a)、(b)に示すように、迂回流路209を形成する部位も、流路100と同じ断面形状を有する凹部が、可塑性材料からなる基板001面上に形成されている。その後、図6の(d)に示すような、目的とする迂回流路の平面形状の外縁に対応する周辺部分が突出し、その内縁に対応する中央部分が窪んだ形状の金型004を押し付け、
基板001を構成する可塑性材料を変形させ、金型004の周辺部分形状に対応する凹形状と、中央部分形状に対応する凸面形状を形成し、
その後、金型004を取り除き、塑性変形された基板上面に、外縁部は凹形状を、その内部は凸面形状を示す構造を残す。この加工を終えた後、この塑性変形された部分に、基板001の上面を被覆する蓋で覆う。
その際、図6の(d)に示すように、金型004の周辺部分形状に対応する凹形状の水準は、中央部分形状に対応する凸面形状の領域に残っている、本来の流路の底面の水準より低い状態となっている。その結果、流路上流部分の末端から供給される液体は、まず、外縁部の凹形状の側壁面と底面とで構成される迂回流路209に沿って、毛細管現象によって、その液面端(気液界面)が進んでゆく。その後、流路下流部分の先端の位置に対して、その直下の位置まで、液面端(気液界面)が到達し、外縁部の凹形状全体を液が満たし、前記直下の位置の液面が、流路下流部分先端の底面の水準に達するまで、流路下流部分への液面の進行は起こらない。すなわち、外縁部の凹形状を満たす液量は、本来の流路を満たす液量よりも大幅に多いため、流路下流部分の先端に、実際に液面端(気液界面)が達し、流れが進行するまでに要する時間は、本来の流路を進行する時間より、大幅に長いものとなる。すなわち、本発明の第三の形態にかかる遅延回路では、迂回流路部分の流路の延べ長さを変更することで、流路上流部分の末端から流路下流部分の先端に達する、液体の進行する流線の延長を図り、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、液体の進行方向の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を達成している。
従って、前記の金型004による塑性変形加工を施す、基板001は、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、プロエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂製の基板を利用する。なお、これらの樹脂基板の表面は、接触角70°以上と、水との濡れ性は劣るので、塑性変形処理後、フタを貼り付ける前に、適宜、前述のポリアクリルアミド等の親水性の表面処理剤を用いて親水性の表面としておく。一方、金型004は、銅、ニッケル、真鍮、ステンレスなど靱性の高い材料を、図6(d)に示すように周辺部を鋭利加工して、中央付近は、周辺部の先端よりも凹んだ位置にくりぬいた形状に加工することで実現できる。このような形状の金型004を加熱して、流路100が図6(a)のように形成された基板001に押し付ける。すると、基板001を構成する可塑性材料は、金型004の先端では、金型の内側へ向かって押しのけられ、金型の外側の盛り上がりを最小限に抑えることができる。その結果、金型004を引きはがすと、金型004の周辺部分で刻印されて、迂回流路209となる。この迂回流路209は、その上面付近で、流路100と連通した状態となる。なお、塑性変形処理を施した後、金型の離型を良くするために、金型表面をフッ素樹脂加工したり、シリコーンオイル等を基材とする離型剤で処理することにより、この工程を歩留まり良く実現することができる。
なお、図6の(c)中に示す矢印は、流路上流部分の末端から供給される液体が、迂回流路209の側壁面と底面とで構成される流路に沿って、その液面端(気液界面)が進行する経路を示したものである。
本発明の第三の形態にかかる遅延回路において、一つの迂回流路209により得られる通過時間の延長(遅延量)は、その迂回流路209の外縁部の長さ、あるいは、外縁部の凹形状全体を満たすに必要な液量によって決定される。すなわち、迂回流路209の長さが長い程、遅延時間が長くなるので、迂回流路209が短い金型004と長い金型004を用意しておき、どちらの金型を用いるか選択することによって、遅延時間を設定することが可能である。また、遅延回路全体として、その流路上に、複数個の迂回流路209を形成することで、一つの迂回流路209により得られる通過時間の延長(遅延量)の整数倍の総遅延時間を設定する形態とすることも可能である。
なお、本発明の第三の実施の形態を利用して遅延時間を設定する要領は、第一の実施の形態、第二の実施の形態と同様にかかる迂回流路209の入口から出口に達する間に要する時間によっている。図6(c)において、迂回流路209の側壁面に沿って、毛細管効果で液体液面が進行する進行速度Vと、この迂回流路209の側壁面に沿って、入口から出口に達する流線の延長量とから、入口から出口に達する間に要する時間が推定することが可能となる。
(第四の実施の形態)
本発明の第四の形態にかかる遅延回路の一例を、図7に示す。
図7に例示する遅延装置では、流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる流路状構造として、
所定の流路幅を有する、流路上流部分ならびに流路下流部分に対して、
流路上流部分の末端と流路下流部分の先端とを連通する、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の連結流路を利用する形態である。その際、この連結流路の表面として、
液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面、あるいは液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料からなる面を選択することにより、
毛細管現象によって、この連結流路内を液体が進行する速度を増加させる、あるいは減少させることに伴い、流路上流部分の末端から流路下流部分の先端に達する、液体の進行に要する時間の短縮、あるいは、延長を図っている。
本発明の第四の形態にかかる遅延回路は、流路上流部分の末端から流路下流部分の先端に達する、液体の進行に要する時間の短縮、あるいは、延長を図ることができる、すなわち、正の遅延時間(時間の延長)のみでなく、負の遅延時間(時間の短縮)を設定する態様もある点で、先に述べた、本発明の第一の形態〜第三の形態、第五の形態にかかる遅延回路とは異なった応用も可能である。
この遅延時間は、流路上流部分の末端と流路下流部分の先端とを連通する連結流路、図7においては、調節領域208と称される部分を形成する被膜層の材料に、液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料、あるいは液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料を選択するかで決定される。
図7に例示する構成では、基板100上に形成される凹部を使用する流路100に対して、この調節領域208では、その流路の底面、側壁面を被覆するように、所定の濡れ性を有する材料の被膜層を形成する。この被膜層の形成は、所望の被膜材料を含む溶液を、その液粘度に応じて、インクジェット機構等によって印刷すること、あるいは、スタンプすること、あるいは、一旦、均一にコートした上で、リソグラフィー等の一般的な手法によって所望の平面形状にパターニングするなどの手法を適用することで実現できる。
次に、この調節領域208を液体が通過するに要する時間と、この被膜層の濡れ性との関係を説明する。図8に、毛細管現象による液体の輸送する原理を示す。
一般に、表面に対して、液体が接触する際、その表面と液体の気液界面とのなす角度は、その液体に対する、表面の濡れ性に依存し、特異的な角度(接触角600)を示す。この角度(接触角)は、表面を構成する材料の、その液体(溶媒)に対する親和性に依存している。具体的には、その液体に対する親和性を示す、親溶媒性材料では、その接触角は、90°未満であり、親和性が増す(親溶媒性の度合いが増す)とともに、減少していく。逆に、その液体に対する親和性が乏しい、疎溶媒性材料では、その接触角は、90°を超え、疎溶媒性の度合いが増す(親和性がさらに低くなる)とともに、増加していく。
流路内の液体が、流路表面に対して、接触角600が90°未満の状態で接触すると、その流路内の気液界面(液面端)の形状は、気相に対して、凹形状となる。その際、この気液界面(液面端)の形状を平坦とする方向に、液面の表面張力が作用するため、その液面の表面張力のベクトル和603は、液体から気相へ向かう方向となる。この表面張力によって、気液界面(液面端)の中央は、進行方向604に向かって進行する。その結果、流路内の気液界面(液面端)の凹形状は平坦化し、流路表面に対して、液体の気液界面のなす角度は、当初の接触角600より大きくなる。その状態となると、流路表面上の液体は濡れ広がり、再び、当初の接触角600となるまで、流路表面上の液体が接触している位置も前進する。すなわち、前記の過程で、その流路内の気液界面(液面端)全体が、当初の凹形状を維持した状態で、進行方向604に向かって進行する。この現象では、接触角600が同じであれば、流路幅が狭いほど、流路内の気液界面(液面端)の凹形状の曲率半径が小さくなり、それに伴い、かかる流路の単位断面積当たりの、その液面の表面張力のベクトル和603は相対的に大きくなる。すなわち、この液体に対する表面の濡れ性と、気液界面における表面張力に起因する液体の輸送過程は、微細な管径を有し、水に対する濡れ性のよいガラス材料などの毛細管において、最も端的に観測される現象であるため、従来から、毛細管現象と称されている。
なお、気液界面(液面端)の形状は、表面張力の他、気相と液相との間の圧力差の影響を受ける。例えば、気相側が、開放端でない場合、液面の進行に伴い、気相側の圧が増加し、液面の表面張力のベクトル和603と、気相と液相との間の圧力差が均衡すると、それ以上の液面の進行は停止する。逆に、気相側が、開放端であり、液相側に押し出し圧が印加されている状態では、流路内の気液界面(液面端)の形状は、中央部が、気相方向に凸形状となる。その際、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)より、気相方向に凸形状を示す気液界面(液面端)が示す接触角(θ)が大きい場合、流路表面での接触角が、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)と等しくなるように、流路表面上において、液体が濡れ拡がる。その後、圧力差によって、流路内の気液界面(液面端)の形状は、再び、中央部が、気相方向に凸形状へと復する。見掛け上、圧力差によって、液が押し出される現象も、微視的には、液体に対する流路表面の濡れ性に依存する接触角と、液面の表面張力ならびに気相と液相との間の圧力差とにより支配される流路内の気液界面(液面端)の形状とに依存する現象である。すなわち、液面の表面張力ならびに気相と液相との間の圧力差とにより支配される流路内の気液界面(液面端)の形状が示す流路表面での接触角(θ)と、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)とが等しくなると、液面は、何れの方向にも進行しない状態となる。上述する図1において説明する、液体スイッチにおいて、主流路における液面の進行が停止する状態は、前記の状況に相当している。
流路幅が等しい場合、液体に対する流路表面の濡れ性が優るほど、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)は小さくなり、流路内の気液界面(液面端)の凹形状は、中央部における曲率半径はより小さくなる。すなわち、液体に対する流路表面の濡れ性が優るほど、接触角600が小さくなり、それに伴い、表面張力のベクトル和603が大きくなるので、液面の移動速度が速くなる。逆に、液体に対する流路表面の濡れ性が低下するに従って、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)は大きくなり、流路内の気液界面(液面端)の凹形状は、中央部における曲率半径はより大きくなる。すなわち、液体に対する流路表面の濡れ性が低下するほど、接触角600が大きくなり、それに伴い、表面張力のベクトル和603が小さくなるので、液面の移動速度は遅くなる。
なお、液体に対する流路表面の濡れ性が更に劣り、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)が90°を超えると、液体自体の自重によって、気相と液相との間に僅かな圧力差が存在しているため、この僅かな圧力差と表面張力とが均衡する状態、すなわち、流路内の気液界面(液面端)は、中央部が気相方向に若干凸形状となっている。この流路内の気液界面(液面端)が若干凸形状をとる際、流路表面での接触角(θ)が、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)と等しい状態となった時点で、液面は、何れの方向にも進行しない状態となる。例えば、表面上に滴下した液滴は、液体自体の自重による、気相と液相との間に生じる圧力差と、表面張力とが均衡する状態で、かつ表面での接触角(θ)が、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)と等しい状態で、一定の形状で平衡状態となることに相当している。
本発明の第四の形態にかかる遅延回路は、流路の底面と側壁面を液体に対する濡れ性が異なる材料からなる被膜層を設けることで、この表面における、気相と液相との間に圧力差が存在していない状態での接触角(θ)を変更することで、かかる調節領域208を毛細管現象により液面が進行する速度を変更するものである。
従って、かかる調節領域208に連通される、流路100表面よりも接触角が大きくなる、すなわち、親水性の度合いが低い材料の被膜層で調節領域208を形成すれば、水溶媒を用いる液体の進行は、調節領域208では遅くなる。すなわち、この調節領域208を通過する時間の延長(正の遅延時間)が得られる。逆に、接触角が小さい、すなわち親水性の度合いが高い材料の被膜層で調節領域208を形成すれば、少なくとも、調節領域208では、水溶媒を用いる液体はより速く進行する。その結果、この調節領域208を通過する時間の短縮(負の遅延時間)が得られる。このように、調節領域208を形成する被膜層に利用する材料が示す、水との濡れ性、すなわち、水との接触角が異なると、この調節領域208を水溶媒を用いる液体が通過するに要する時間が異なったものとなる。
具体的には、流路100表面がシリコン酸化膜、あるいは硝子、石英などの高親水性材料からなる場合、水との接触角は10°以下となる。その際、調節領域208を、水との接触角が70°〜80°のエポキシ樹脂(ノボラックなど)やアクリル樹脂の被膜層で形成すれば、この調節領域208を通過する時間の延長(正の遅延時間)が得られる。
但し、PDMSスタンプやシラザン処理のように接触角が100°を超えるような疎水性処理を施して、この調節領域208を形成すると、流路の他の部分が親水性で毛細管効果があるとしても、流路底面付近の液面の進行は、かかる調節領域208に侵入した段階で停止してしまう。そのため、調節領域208を超えて、水性液体の液面が進行するためには、調節領域208を形成する疎水性材料の水との濡れ性は、流路の他の表面の親水性の度合いを勘案して選択する必要がある。ガラス基板上に掘られた幅100μm、深さ20μmの矩形断面を持つ流路において、調節領域の底面部分だけに疎水性処理を施す場合、かかる疎水性処理に利用する材料に対する水の接触角は、90°以下であることが好ましい。
次に、第四の実施の形態において遅延時間を調節する要領について説明する。
ガラス基板に幅100μm、深さ20μmの流路である凹部を形成し、その上に光レジスト(S1818、ローム・あんど・ハース電子材料株式会社)を利用して、調節領域208を形成し、その基板上にガラスのフタを接合してマイクロチップを作製する。このマイクロチップの流路に水を導入すると、調節領域208以外の部分では水(液面端)は毛細管効果により流路中を毎秒約2.5mmで進行するが、調節領域208に達すると、その進行速度は毎秒約0.5mmに低下する。これは、調節領域208の流路底面は、水との濡れ性が悪い(接触角約70°)ため、水との濡れ性に優れたガラス製フタに接する液面端と、流路底面と接する液面端との間に位置ズレを生じるためである。液面端がこの調節領域208を超えた後、再び、水との濡れ性に優れた流路底面と接する液面端は、急速に進行して、水との濡れ性に優れたガラス製フタと接する液面端位置と一致するまで移動する。この効果によれば、図7(a)における調節領域208の長さをY、調節領域208における液体の進行速度をV、調節領域208以外の流路100における液体の進行速度をV1とすれば、遅延時間Tは、式4で推定できる。
T=Y×{(1/V2)−(1/V1)} (式4)
例えば、式4から逆算すると、上記のマイクロチップにおいて、10秒間の遅延時間を生じさせるには、調節領域200の流路長さは約6.3mm必要である。
逆に、調節領域208を、流路100表面よりもさら接触角が小さい材料、例えば、ポリアクリルアミドゲル(接触角1°以下)の被膜層で形成すれば、この調節領域208を通過する時間の短縮(負の遅延時間)が得られる。
本発明にかかる遅延装置は、臨床検査や生化学分析の分野で利用される、微小量の液体試料を対象とする分析作業に用いるマイクロチップ型の各種バイオチップ、あるいは、微小な反応場を利用して、各種の合成反応を実施する際に利用される、微量容量のマイクロチップ型の化学合成用チップ反応系などにおいて、所定の領域へ液が達するまでの所要時間を調節可能な遅延手段として、広範に利用可能である。

Claims (23)

  1. 基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
    流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
    該流路の途中に設ける流路拡張部と、
    該流路拡張部の一部を占める障害構造とを形成してなる構成を有し、
    流路上流部分から、該流路拡張部を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、前記障害構造によって、液体液面端の進行が妨げられ、該流路拡張部を経由する、液体液面端の進行の流線が延長されることにともなって、
    流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
    ことを特徴とする遅延装置。
  2. 前記流路拡張部は、前記流路の幅より拡張された流路幅を有し、
    前記流路上流部分の流路拡張部への出口と、流路拡張部から流路下流部分への入口とを結ぶ最短の経路の長さは、前記拡張された流路幅と等しく選択されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の遅延装置。
  3. 前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記流路拡張部を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
    前記流路拡張部に付加される障害構造は、
    前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状に形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の遅延装置。
  4. 前記流路拡張部に付加される障害構造は、
    少なくとも、その上面は、前記液体に対する濡れ性が乏しい疎溶媒性の材料からなる面を有する障害物であって、
    前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の前記障害物を、前記流路拡張部の底面上に付加することで形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の遅延装置。
  5. 前記流路拡張部に付加される障害構造は、
    前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ、複数形成されており、
    前記最短の経路となる側壁面と、該複数の障害構造の側壁面の双方に沿って、前記液体の進行する流線へと変更することで、前記流路上流部分からの出口から前記流路下流部分への入口に達する、前記液体の進行する流線の延長が図られている
    ことを特徴とする請求項1に記載の遅延装置。
  6. 基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
    流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
    基板上に形成される流路上流部分、ならびに、流路下流部分と、
    流路上流部分に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分に連通される下流部延長流路と、
    上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される連絡流路とで形成される構成を有し、
    流路上流部分から、該連絡流路を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、前記連絡流路を付加する位置を調節し、上流部延長流路、連絡流路、下流部延長流路を経由する流路長さの合計によって流線が延長されることにともなって、
    流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
    ことを特徴とする遅延装置。
  7. 前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、前記連絡流路は、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている
    ことを特徴とする請求項6に記載の遅延装置。
  8. 前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、前記連絡流路は、少なくとも、その側壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面である
    ことを特徴とする請求項6に記載の遅延装置。
  9. 基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
    流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
    該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端とを結ぶ最短距離を基準として、
    該最短距離よりも、その流路の延べ長さが長く選択される、迂回流路によって、該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に、該迂回流路を付加してなる構成を有し、
    流路上流部分から、該迂回流路を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、迂回流路部分の流路の延べ長さの変更によって液体の進行する流線の延長を図り、
    流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
    ことを特徴とする遅延装置。
  10. 前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分とを連結する部位に設けられる前記迂回流路を形成する前記基板として、可塑性材料からなる基板を選択し、
    該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、前記迂回流路は、
    前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成することで作製されている
    ことを特徴とする請求項9に記載の遅延装置。
  11. 基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
    流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
    基板上に形成される流路上流部分、ならびに、流路下流部分と、
    流路上流部分と流路下流部分とを連通する、流速調節領域用の連結流路とからなる構成を有し、
    該流速調節領域用の連結流路の表面として、
    液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面、あるいは液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料からなる面を選択することにより、
    毛細管現象によって、該連結流路内を前記液体が進行する速度を増加させる、あるいは減少させることに伴い、
    流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延量の調節が達成される
    ことを特徴とする遅延装置。
  12. 前記連結流路の表面として選択される、
    前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面、あるいは前記液体に対する濡れ性が劣る、疎溶媒性材料からなる面は、
    前記基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の連結流路の表面を被覆する、親溶媒性材料からなる薄膜、あるいは、疎溶媒性材料からなる薄膜により形成されている
    ことを特徴とする請求項11に記載の遅延装置。
  13. 基板上に形成される流路中を液体が毛細管現象によって、該流路上流から該流路下流へと進行する際、流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間を調節する機能を有する遅延装置であって、
    流路上流部分と流路下流部分の間に設ける遅延時間調節用の流路構造は、
    基板上に形成される流路上流部分、ならびに、流路下流部分と、
    液体に対する濡れ性に乏しい、疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域上に形成される、該流路上流部分に連結され、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分に連通され、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路と、
    上流部延長流路と下流部延長流路との間に、両延長流路間を連結する配置に付加される、親溶媒性材料からなる面で形成される連絡流路とで形成される構成を有し、
    流路上流部分から、該連絡流路を経由して、流路下流部分へと液体の液面端が進行する際、前記連絡流路を付加する位置を調節し、上流部延長流路、連絡流路、下流部延長流路を経由する流路長さの合計によって流線が延長されることにともなって、
    流路上流部分の先端から流路下流部分の末端まで、前記液体の液面端が到達するに要する時間の遅延が達成される
    ことを特徴とする遅延装置。
  14. 所定の流路幅を有する、前記流路上流部分ならびに流路下流部分は、
    基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成され、
    前記液体は該流路上流部分ならびに該流路下流部分における前記液体の進行は、毛細管現象によってなされている
    ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の遅延装置。
  15. 前記流路拡張部は、
    基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成されている
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の遅延装置。
  16. 該流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路は、
    基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態であって、前記液体と接する凹部内壁面は、前記液体に対する濡れ性を示す、親溶媒性材料からなる面で形成されている
    ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の遅延装置。
  17. 前記遅延装置を構成する、基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路に対して、
    該基板の上面に接合する蓋部を設け、
    流路内を進行する液体は、前記基板上に形成される凹部と、前記蓋部の下面とに接触する形態とされている
    ことを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の遅延装置。
  18. 基板上に形成される凹部内に液体を保持する形態の流路を有し、
    前記基板表面を覆う蓋部を設け、
    前記基板表面の凹部が、流路の下面と両側壁面を、その開口部を覆う蓋部の下面が、流路の上面をそれぞれ構成することで、流路空間が形成され、
    毛細管現象によって、前記流路空間内を前記液体が進行する輸送手段を利用するマイクロチップであって、
    該マイクロチップ内の流路を構成する要素の一つとして、請求項17に記載の遅延装置の少なくとも一つを該流路内に内在している
    ことを特徴とするマイクロチップ。
  19. 請求項3に記載される遅延装置を作製する方法であって、
    可塑性材料からなる基板を選択して、
    該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分の間に設けられる前記流路拡張部に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
    前記流路拡張部に付加される障害構造を、
    前記流路拡張部において、前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状に形成する工程として、
    前記流路拡張部において、該障害構造を形成すべき部分に、前記基板の上面より、凸形状の金型を押し付け、前記基板を構成する可塑性材料を変形させ、該金型の外面形状に対応する凹形状を形成し、それに伴い排除される可塑性材料によって、該凹形状を取り囲む壁状構造の形状を形成し、
    その後、該凸形状の金型を取り除き、前記凹形状を取り囲む壁状構造の形状を残す工程を具え、
    得られる前記凹形状を取り囲む壁状構造の形状を、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する壁状構造の形状として利用する
    ことを特徴とする遅延装置の製造方法。
  20. 請求項4に記載される遅延装置を作製する方法であって、
    該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分の間に設けられる前記流路拡張部に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
    前記流路拡張部に付加される障害構造として、
    前記流路拡張部において、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の前記障害物を、前記流路拡張部の底面上に付加する工程として、
    前記流路拡張部の底面上、該障害物を付加すべき部分に、前記液体に対する濡れ性が乏しい疎溶媒性の材料を所望の平面形状で印刷塗布して、少なくとも、その上面は、疎溶媒性の材料からなる面を有する印刷塗布層を形成する工程を具え、
    得られる所望の平面形状を有する前記疎溶媒性材料の印刷塗布層を、前記流路拡張部の底面上に付加される、前記最短の経路となる側壁面から、該流路拡張部に内部領域へ突出する平面形状の障害物として利用する
    ことを特徴とする遅延装置の製造方法。
  21. 請求項7に記載される遅延装置を作製する方法であって、
    該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、該流路上流部分の末端に連通される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通される下流部延長流路に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
    前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
    両延長流路間を連結する所望の配置に付加される連絡流路として、該基板表面に、新たに溝構造を形成する工程として、
    前記上流部延長流路と下流部延長流路との間を跨ぐように、該基板表面を溝状に切削加工を施す工程を具え、
    前記基板表面の切削加工により形成される切削溝を、両延長流路間を連結する前記連絡流路として利用する
    ことを特徴とする遅延装置の製造方法。
  22. 請求項10に記載される遅延装置を作製する方法であって、
    可塑性材料からなる基板を選択して、
    該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
    該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される、前記迂回流路として、
    前記基板を構成する可塑性材料に変形を加えて、該基板表面に、新たに溝構造を形成する工程として、
    前記迂回流路を形成すべき部分に、前記基板の上面より、前記迂回流路の平面形状の外縁に対応する周辺部分が突出し、その内縁に対応する中央部分が窪んだ形状の金型を押し付け、
    前記基板を構成する可塑性材料を変形させ、該金型の周辺部分形状に対応する凹形状と、中央部分形状に対応する凸面形状を形成し、
    その後、該金型を取り除き、塑性変形された基板上面に、外縁部は凹形状を、その内部は凸面形状を示す構造を残す工程を具え、
    得られる前記塑性変形構造における、外縁部の凹形状からなる溝構造を、該流路上流部分の末端と該流路下流部分の先端が連通されてなる形態となる配置に付加される迂回流路として利用する
    ことを特徴とする遅延装置の製造方法。
  23. 請求項13に記載される遅延装置を作製する方法であって、
    該基板表面に、前記流路上流部分と流路下流部分、ならびに該流路上流部分と流路下流部分の間に設けられる前記遅延時間調節用の流路構造の構成に利用する、所望の平面形状ならびに深さを有する凹部を予め形成し、
    さらに、前記流路構造の構成領域に、疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域を設け、該基板面の部分領域において、
    該流路上流部分の末端に連結され、流路状の平面形状を有する、親溶媒性材料からなる面で形成される上流部延長流路、ならびに、該流路下流部分の先端に連通され、流路状の平面形状を有する、親溶媒性材料からなる面で形成される下流部延長流路をそれぞれ予め形成し、
    前記上流部延長流路と下流部延長流路との間に、
    両延長流路間を連結する所望の配置に付加される連絡流路として利用する、流路状の平面形状を有する、親溶媒性材料からなる面で形成される流路を形成する工程として、
    前記上流部延長流路と下流部延長流路との間を跨ぐように、
    疎溶媒性材料からなる表面を有する、該基板面の部分領域上面に、親溶媒性材料を所望の平面形状で印刷塗布して、少なくとも、その上面は、親溶媒性材料からなる面を有する印刷塗布層を形成する工程を具え、
    前記基板表面に形成される親溶媒性材料からなる面を有する印刷塗布層を、両延長流路間を連結する前記連絡流路として利用する
    ことを特徴とする遅延装置の製造方法。
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