JPWO2005123122A1 - 癌治療ペプチドワクチン - Google Patents

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Abstract

本発明は癌抗原ペプチドを治療上有効な量にてそれを必要とする患者に投与することを含む、癌患者を処置するための方法であって、1) 2またはそれ以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組を提供する、2) 該患者における、該癌抗原ペプチドの組に含まれる各ペプチドに対する特異的細胞障害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価する、3) 該患者が特異的細胞障害性Tリンパ球前駆細胞を有していないと評価された癌抗原ペプチドを、該癌抗原ペプチドの組から除去して投与用癌抗原ペプチドの組を調製する、および4) 投与用癌抗原ペプチドの組を該癌患者に投与する、ことを含むことを特徴とする方法を提供する。

Description

本発明は、癌を処置するための新規治療法に関する。
我々は以前、HLA-A24+またはHLA-A2+ 患者において腫瘍反応性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し得る一群の抗原性ペプチドを報告した(1-5)。その後、我々は、2つの異なる治療法を用いてペプチドワクチン投与の臨床試験を行った(6-12)。第一の治療法では、肺、大腸および子宮頚癌患者に、それぞれCypB、SART3およびSART2由来ペプチドをワクチン投与した(6, 7, 12)。このワクチン投与プロトコールは完全に安全だったが、目的としていた臨床効果も免疫応答も観察されなかった。「個人別」ワクチン投与と呼ばれる第二の治療法では、HLA-A24+またはHLA-A2+の進行上皮性癌患者に対して、ワクチン投与前末梢血単核細胞(PBMC)にCTL前駆細胞が存在することが確認されたペプチドをワクチン投与した。ワクチン投与したペプチドに対する細胞性および液性免疫応答の増加が、それぞれワクチン投与後のPBMCおよび血清において高頻度に観察された(8-12)。さらに、5人の子宮頚癌患者のうち3人が実際に腫瘍退縮を示し(12)、また、スキルス胃癌患者(GC)4人のうち2人は2年以上病状不変であった(11)。
本発明は、癌患者にとって安全かつ治療上有効なペプチドワクチン療法を提供することを目的とする。
本発明者らは、これまでの個人別ワクチン療法においてワクチン候補として頻繁に選択されたペプチド(8-12)を用いる、前もって患者に投与するぺプチドを指定する「前指定ワクチン」療法を新しく試みた。癌患者18人(子宮頚癌患者10人および胃癌患者8人が前指定ワクチン療法に参加した。前指定ワクチン療法はすべての患者が耐えうるものであった。前指定ワクチン療法の大部分の患者において、ペプチド特異的CTL前駆細胞および液性免疫応答は増加したが、いずれの応答も臨床結果と相関しなかった。
3人の患者は病状不変で、彼らのワクチン投与前末梢血単核細胞は4ペプチドのうち2ペプチド以上に反応するペプチド特異的CTL前駆細胞を含んでいた。前指定ワクチン療法により、進行性疾患を患う患者15人のうち5人において、非ワクチン投与ペプチドに反応する既存の免疫グロブリンGのレベルが減少し、病状増悪までの期間が非常に短くなったが、これまでの個人別療法においては、そのような減少はほとんど観察されていない。これらの結果から、前指定ワクチン療法は一次免疫応答を誘導することができるが、投与されたワクチンに患者の免疫系が認識しないものが含まれている場合、付随的に既存の免疫応答を抑制する可能性があることが示唆される。
腫瘍免疫学の目標の1つは、進行癌患者にとって安全かつ治療上有効なペプチドワクチン療法を開発することである。しかし、過去10年にわたり多くのペプチドワクチン療法の臨床試験が行われているにも関わらず(6-12, 15-21)、現在のところそのような治療法は利用可能ではない。この目標を達成するため、我々は本研究を実施し、これまでの個人別ワクチン療法においてワクチン投与前PBMCにCTL前駆細胞が高頻度で検出され、かつワクチンとして患者に投与された4つのペプチド(8-12)を用いる、前指定ペプチドワクチン投与の安全性、免疫学的および臨床学的応答を評価した。その結果、ワクチン投与ペプチドに対する細胞性および液性免疫応答が効果的に誘導された。この前指定ワクチン療法の試みは、基本的には以前の個人別療法の前向き研究である。前指定ワクチン療法において、ワクチン投与前PBMCにおけるペプチド特異的CTL前駆細胞のレベルは、病状増悪までの期間(TTP)および平均(メジアン)生存期間(MST)の両方に関する臨床結果と相関するようである。それに対し、ペプチドワクチンで誘導された細胞性または液性免疫応答のレベルは、大部分の被験患者のワクチン投与後のPBMCまたは血清において強く誘導されたが、それらは臨床結果と相関しなかった。これらの結果より、投与候補の癌抗原ペプチドの組より、患者の免疫系に認識されていないものを除いた癌抗原ペプチドの組み合わせを投与する、本発明の方法を完成させた。
本発明は、上記の知見に基づくものである
即ち、本発明は癌抗原ペプチドを治療上有効な量にてそれを必要とする患者に投与することを含む、癌患者を処置するための方法であって、
1) 2またはそれ以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組を提供する、
2) 該患者における、該癌抗原ペプチドの組に含まれる各ペプチドに対する特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価する、
3) 該患者が特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞を有していないと評価された癌抗原ペプチドを、該癌抗原ペプチドの組から除去して、投与用癌抗原ペプチドの組を提供する、および
4) 投与用癌抗原ペプチドの組を該癌患者に投与する
ことを含むことを特徴とする方法を提供する。
本発明はまた、2またはそれ以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組、および
癌患者における癌抗原ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価するための試薬、
を含有する、癌患者の処置のためのキットを提供する。
図1は、代表的子宮頚癌患者4人(C-1、7、9および10)およびGC患者2人(GC-4および8)における、ワクチン投与ペプチドに対する細胞性応答を示すグラフである。 図2は、ワクチン投与ペプチドに反応する血清IgGを示すグラフである。 図3は、子宮頚癌およびスキルスGC患者についての、2つのワクチン療法下の患者の生存期間を示すグラフである。 図4は、非ワクチン投与ペプチドに反応する血清IgGを示すグラフである。
発明の実施のための最良の形態
第一の局面において、本発明は、癌抗原ペプチドを治療上有効な量にてそれを必要とする患者に投与することを含む、癌患者を処置するための方法であって、
1) 2またはそれ以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組を提供する、
2) 該患者における、該癌抗原ペプチドの組に含まれる各ペプチドに対する特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価する、
3) 該患者が特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞を有していないと評価された癌抗原ペプチドを、該癌抗原ペプチドの組から除去して、投与用癌抗原ペプチドの組を調製する、および
4) 投与用癌抗原ペプチドの組を該癌患者に投与する
ことを含むことを特徴とする方法を提供する。
本明細書で用いる「癌抗原ペプチド」なる用語は、腫瘍抗原タンパク質に由来する腫瘍抗原ペプチドを意味する。腫瘍抗原ペプチドは、腫瘍特異的なタンパク質である腫瘍抗原タンパク質が細胞内のプロテアソームにより分解されて生じるものであり、即ち細胞内で合成される。このようにして生じた腫瘍抗原ペプチドは、小胞体においてにMHCクラスI抗原(HLA抗原)と結合して複合体を形成し、その複合体は細胞表面に移行し抗原として提示される。
本明細書における腫瘍抗原タンパク質には、MAGEと呼ばれるヒトメラノーマ細胞由来タンパク質(Science, 254:1643, 1991); メラノソームタンパク質、例えば、メラノサイト組織特異的タンパク質であるgp100(J. Exp. Med., 179:1005, 1994)、MART-1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:3515, 1994)、およびチロシナーゼ(J. Exp. Med., 178:489, 1993); MEGE関連タンパク質(J. Exp. Med., 179:921, 1994); 腫瘍特異的アミノ酸変異を有するβ-カテニン(J. Exp. Med., 183:1185, 1996); およびCDK4(Science, 269:1281, 1995); HER2-neu(J. Exp. Med., 181:2109, 1995)、p53 (変異体)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:14704, 1996); 腫瘍マーカー、例えばCEA(J. Natl. Cancer Inst., 87:982, 1995)、PSA(J. Natl. Cancer Inst., 89:293, 1997); およびウィルスタンパク質、例えばHPV(J. Immunol., 154:5934, 1995)およびEBV(Int. Immunol., 7:653, 1995)、が含まれる。これら物質の詳細な説明は既報の総説に見られる(例えば、Immunol. Today, 18:267, 1997; J. Exp. Med., 183:725, 1996; および Curr. Opin. Immunol., 8:628, 1996)。
本明細書で用いる腫瘍抗原ペプチドの典型例には以下のものが含まれるが、これらに限定されない: WO97/46676、WO99/29715およびWO99/33977に記載の腫瘍抗原ペプチド; シクロフィリンB由来腫瘍抗原ペプチド(WO99/67288); SART-1由来腫瘍抗原ペプチド(WO00/06595); SART-3由来腫瘍抗原ペプチド(WO00/12701); ART-1由来腫瘍抗原ペプチド(WO00/32770); SART2由来腫瘍抗原ペプチド(J. Immunol., 164:2565, 2000); lck由来腫瘍抗原ペプチド(Eur. J. Immunol., 31:323, 2001); ART4由来腫瘍抗原ペプチド(Cancer Res., 60:3550, 2000); およびppMAPkk、WHSC2、UBE2V、HNRPL、EIF由来腫瘍抗原ペプチド(Cancer Res., 61:2038, 2001)。
本発明で用いる癌抗原ペプチドの同定は、腫瘍抗原タンパク質の一部を含む候補ペプチドを合成し、ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し得るかに基づいて、要すれば更に免疫グロブリンG(IgG)により認識され得るかに基づいてそれらを選別することにより行うことができる。ペプチド合成は、ペプチド化学において通常用いられる方法に従い行うことができる。既知の方法の例は、「Peptide Synthesis」, Interscience, New York, 1966;「The Proteins」, vol. 2, Academic Press Inc., New York, 1976;「ペプチド合成」, 丸善株式会社, 1975などの文献に記載のものである。好ましくは、ペプチドは、HLA結合モチーフに基づき合成される。ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導し得るかに基づく候補ペプチドの選別は、通常、HLA抗原によって提示された候補ペプチドがCTLによって認識されるか否かを測定するアッセイによって行うことができる。IgGにより認識され得るかに基づく候補ペプチドの選別は、通常、ELISAによって行うことができる。
当業者は、そのアミノ酸配列が本発明のペプチドのアミノ酸配列に対して1つまたは幾つかのアミノ酸残基の置換、欠失および/または付加を含み、かつ癌抗原ペプチドとしての性質を有する、即ち、HLA抗原に結合してCTLに認識され得る能力を有し、場合によっては液性免疫応答によって認識される変異ペプチドである、「その癌抗原ペプチドと機能的に同等の性質を有する癌抗原ペプチドの誘導体」を、容易に調製し使用することができるであろう。本明細書で用いる癌抗原ペプチドはこの誘導体を包含する。
癌抗原ペプチドまたはその誘導体のアミノ酸配列の好ましい長さは8から15アミノ酸残基、より好ましくは8から11アミノ酸残基である。
本発明において用いられる、癌抗原ペプチドとしては、現時点で同定されているものか今後見いだされるかを問わず、いずれの癌抗原ペプチドであってもよい。好適には治療対象である患者の人種やHLA型、性別および治療しようとする癌の種類等に応じて、患者の免疫系が認識する可能性が高いと予測される癌抗原ペプチドを選択して調製すればよい。
本発明において、「2以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組」には、上記のごとき癌抗原ペプチドが好適には4以上、例えば14個含まれる。
本発明の方法においては、まず患者が癌抗原ペプチドの組に含まれる各癌抗原ペプチドに対して、特異的な細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞を有しているか否かを判定する。かかる判定従来公知の方法にて行えばよく、例えば本明細書の実施例1.4細胞性免疫応答に記載の方法によって行えばよい。
患者が特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞を有していないと評価された癌抗原ペプチドを除外して、投与用癌抗原ペプチドの組を調製する。本発明の方法においては、この投与用癌抗原ペプチドの組を患者に投与する。投与用癌抗原ペプチドの組は、1以上の癌抗原ペプチドを含んでいればよく、好ましくは2以上、より好ましくは3乃至4の癌抗原ペプチドを含んでいるものがよい。投与用癌抗原ペプチドの組に含まれる癌抗原ペプチド数は特に制限は無いが、患者への負担を考えると最大4つとすることが好ましい。
投与用癌抗原ペプチドの組は、該ペプチドを含む医薬組成物として調製すればよく、該組成物にはワクチンの投与に際して使用することが知られているアジュバント含有させてもよい。または、別個に調製された該医薬組成物とアジュバントを同時に投与してもよい。
投与用癌抗原ペプチドの組は、皮下、皮内に、または静脈内注射により投与することができる。投与用癌抗原ペプチドの組に含まれる各ペプチドは、別々に、または一緒に投与することができる。具体的には、各ペプチドを別個の部位に注射してもよく、すべてのペプチドを組み合わせて1つの部位に注射してもよい。ワクチン投与における腫瘍抗原ペプチドの量は、例えば疾患の状態、特定の患者の年齢および体重に依存して適宜調節し得るが、通常該組の各ペプチドを、一週間または二週間毎に、0.1 mgから10.0 mg、好ましくは0.5 mgから5.0 mg、より好ましくは1.0 mgから3.0 mgの量で投与する。
第二の局面において、本発明は、本発明の方法を実施するためのキット、具体的には、2またはそれ以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組、および
癌患者における癌抗原ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価するための試薬、
を含有する、癌患者の処置のためのキットを提供する。
該キットに含まれる癌抗原ペプチドの組は、好適には凍結乾燥したものである。評価用と投与用の癌抗原ペプチドの組は同時に提供されても、評価用の第一の組、投与用の第二の組に分けて提供されてもよい。
評価用に使用される第一の組の癌抗原ペプチドは、例えばジメチルスルホキシド等の適当な溶媒に溶解して用いられる。ジメチルスルホキシド等に溶解した後、使用までしばらく保存する必要がある場合には、低温、例えば約4℃で保存される。
投与用に使用される第二の組の癌抗原ペプチドは、投与に先立ち適当な投与に先立ち生理的に適当な溶解液、たとえば、生理食塩水に溶解または懸濁すればよい。あるいは、重曹を溶解助剤として用いることもできる。ペプチド溶液はさらにアジュバントと混合して、エマルションを調製してこれを投与すればよい。
従って、本発明のキットには評価用、および投与用溶解液、アジュバントを含んでいても良い。また、本発明のキットとしては、評価用の癌抗原ペプチドの第一の組と評価のための試薬を含む部分と、投与用の第二の組の癌抗原ペプチドと、要すれば投与用溶解液、アジュバントを含む部分が別個に提供されるものであってもよい。
本発明において、「癌患者における癌抗原ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価するための試薬」とは、従来知られたいずれかの方法にてかかる評価のために必要な材料を包含するものとし、例えば評価に必要な細胞、細胞培養用培地、評価用プレートなども含まれるものとする。
[実施例]
本発明をさらに以下の実施例によって説明するが、いかなる意味においてもそれらによって限定されない。実施例に先立ち、1. 患者適格基準、および、2. 患者特性を説明する。
1. 患者適格基準
久留米大学、北海道大学、高知大学、および杏雲堂病院の施設内倫理審査委員会が、これらの前指定ペプチドワクチン投与の臨床プロトコールを許可した。登録の際に、全ての患者から完全な書面によるインフォームドコンセントを得た。プロトコールでは、患者は、PBMC上のHLAクラスI発現を常套的血清型タイピングによって既報(11,12)のように決定した場合にHLA-A24または-A2陽性であることを必要した。すべての患者について胃腺癌または子宮頚癌を有することを病理学的に確認した。適格基準には、年齢80歳またはそれ未満、血清クレアチニン1.4 mg/dl未満、ビリルビン1.5 mg/dl未満、血小板数100,000/μlまたはそれ以上、ヘモグロビン8.0 g/dlまたはそれ以上、および全白血球数3,000/μlまたはそれ以上、が含まれた。B型肝炎表面抗原およびC型肝炎RNAは陰性とした。患者は本試験に入る前少なくとも4週間は無処置であり、試験参加の時点で、Eastern Cooperative Oncology Groupのパフォーマンス・ステータスが0から2でなければならないとした。重篤な疾患、免疫抑制または自己免疫疾患の徴候を有する患者は除外した。処置は、2001年8月から2003年6月に渡り行われた。
2. 患者特性
18人の患者 (再発性子宮頚癌患者10人、および進行胃癌(GC)患者8人)を本研究に登録した。これら患者の詳細な特性は以下の表1に示す。患者の平均年齢は50歳であり、27歳から74歳までであった。10および8人の患者が、それぞれHLA-A24および-A2陽性であった。子宮頚癌の再発部位は膣断端(n = 4)、リンパ節(n = 4)、肺(n = 1)、および陰門上皮(n = 1)であった。子宮頚癌の組織学は、扁平上皮細胞癌(n = 8)または腺癌(n = 2)であった。これまでの処置には、外科的切除(n = 7)、化学療法(n = 6)、および放射線療法(n = 10)が含まれた。5、2および1人のGC患者が、日本胃癌分類第13版に基づきそれぞれステージIV、IIIBおよびIIIAであった。GCの組織学はすべて腺癌であり、6人(GC-3から -8)がスキルス(びまん性)であり、残りの2人が非スキルスであった。全てのGC患者が一次病巣の外科的切除を受けており、そのうち6人は以前に化学療法に失敗していた。
Figure 2005123122
実施例1
前指定ワクチン投与
1.1 ペプチド
本発明で使用するペプチドは、適正製造基準(GMP)の条件下でMultiple peptide Systems (San Diego, CA)により調製された。ペプチドの配列は以下の通りである: HLA-A24+患者に使用したペプチドは、SART3 109 (VYDYNCHVDL; 配列番号1)、SART3 315 (AYIDFEMKI; 配列番号2)、lck 208 (HYTNASDGL; 配列番号3)、lck 488 (DYLRSVLEDF; 配列番号4)、およびSART2 93 (DYSARWNEI; 配列番号5)であった。HLA-A2+患者に使用したのは、CypB 172 (VLEGMEVV; 配列番号6)、lck 246 (KLVERLGAA; 配列番号7)、ppMAPkkk 432 (DLLSHAFFA; 配列番号8)、およびUBE2V 43 (RLQEWCSVI; 配列番号9)であった。これらペプチドは全て、癌患者のPBMCにおいてHLA-A24-またはHLA-A2拘束性および腫瘍特異的CTL活性を誘導する能力が示されている(2-12)。それらは、ワクチン投与前にペプチドに対する細胞性応答を確認するこれまでの個人別ワクチン療法において、頻繁に癌患者に投与されている(8-12)。HLA-A2+患者のためのペプチドは全てHLA-A*0201分子に対する結合モチーフに基づき選択したが、これらペプチドは、HLA-A*0201患者においてのみならず、他のHLA-A2サブタイプ、例えばHLA-A*0206またはHLA-A*0207の患者においてもまた免疫原性がある(2, 11, 12)。
1.2 ペプチドワクチン投与
各ペプチドを少量のジメチルスルホキシドに溶解し、生理食塩水で濃度4 mg/mlに希釈した。不完全フロインドアジュバントであるMontanide ISA-51は、Seppeic, Inc (Franklin Lakes, NJ)により製造された。得られた4つの異なるペプチドエマルジョン各1ml (2 mg/ペプチド/注射)を、既報のようにガラスシリンジを使用し(11, 12)、胃癌(GC)患者に対しては外側腹腔壁の別々の部位に皮下注射し、子宮頚癌患者に対しては外側大腿部の別々の部位に皮下注射した。ワクチン投与の間隔は1週間であり、合計6回注射した。
1.3 有害事象
有害事象について18人の患者全員を評価した。ワクチン投与の寛容性は概ね良好であった。軽い風邪様症状を伴うグレードIおよびIIの発熱が、それぞれ4人の患者および1人の患者で観察された; これらの発熱は一過性であり、自然寛解した。注射部位におけるグレードIおよびIIの局所発赤および腫脹が、それぞれ12および4人の患者において観察された。吐き気、嘔吐、腹痛、および下痢が、それぞれ2人の患者において観察された。本ペプチドワクチン投与は、重度(グレードIIIまたはIV)の毒性は伴わなかった。グレードIの、膀胱浸潤による血尿および膣断端からの出血がそれぞれ1人の患者で観察され、一方、腫瘍進行によるグレードIVの吐血が、1人のGC患者(GC-7)において観察された。症状、理学的診断または臨床検査により判断したところ、自己免疫反応を示す臨床学的証拠は存在しなかった。
1.4 細胞性免疫応答
細胞性応答を測定するため、既報のようにして(11, 12)、PBMCをFicoll-Conray比重遠心法によって分離し、その後CTL前駆細胞アッセイに使用した。投与ペプチドに対する細胞性免疫応答の評価は表2に示した。ワクチン投与ペプチドに対する細胞性免疫応答を評価するため、既報のように(12)、ワクチン投与前および後(6回目)のPBMC(1 x 105 細胞/ウェル)を、インターロイキン(IL)-2(100 units/ml)含有培養培地200 μl中にて各ペプチド10 μMと96穴マイクロカルチャープレート(Nunc, Roskilde, Denmark)の4つの異なるウェルにおいてインキュベートした。培養14日目に、各ウェルからペプチド刺激PBMC(8-12 x 105/ウェル)を別個に回収し、4等分した。既報のように(10-12)、そのうち2つはそれぞれ、HLA-A24+ PBMCについてはC1R-A2402細胞(Oiso M, Eura M, Katsura F, Takiguchi M, Sobao Y, Masuyama K, Nakashima M, Itoh K, Ishikawa T. A newly identified MAGE-3-derived epitope recognized by HLA-A24-restricted cytotoxic T lymphocytes. Int. J. Cancer 81: 387-394, 1999)に対する、HLA-A2+ PBMCについてはT2細胞(HLA-A*0201発現細胞株、ATCC: CRL-1992)に対するインターフェロン(IFN)-γ産生能について2例で試験し、残りの2つは、陰性対照ペプチド(HIV ペプチド、HLA-A24についてはRYLRDQQLLおよびHLA-A2についてはSLYNTVATL)について試験した。HIV ペプチドに応答したバックグラウンドIFN-γ産生(<50 pg/ml)を差し引いた。18時間インキュベートした後、酵素免疫測定法(ELISA)(検出限界: 10 pg/ml)によってIFN-γを測定するため、上清を回収した。統計学的解析には両測Student's t-testを用いた。代表的な4人の子宮頚癌患者(C-1、7、9、および10)および2人のGC患者(GC-4および8)を図1に示す。詳細なまとめは表2に示す。細胞性応答の評価基準もまた表2のレジェンドに記載する。
Figure 2005123122
ペプチド特異的CTL前駆細胞アッセイでの in vitro 操作による影響を避けるため、ワクチン投与前および後(6回目)のPBMCは両方同時に解凍した。2人の患者(GC-1およびGC-3)由来のワクチン投与前PBMCは、細胞数が限られていたため解析に利用できず、また3人の患者(C-3、GC-5およびGC-7)由来のワクチン投与後PBMCは、急速に増悪し死亡したため利用できなかった。ペプチド特異的CTL前駆細胞アッセイは4例で行い、HIV ペプチドに応答したIFN-γ量を差し引いた。結果は、表のレジェンドに記載するように、2つのパラメーター、P値およびIFN-γ産生の点から評価した。全体で、ペプチド特異的CTL前駆細胞は、患者13人のうち9人(69%)において誘導された。例えば、HLA-A24+ GC 患者(GC-4)において、ワクチン投与前PBMCは4つのワクチン投与ペプチドいずれにも応答しなかったが、ワクチン投与後PBMCの各1ウェルがSART3109 ペプチド、SART3315 ペプチドまたはlck488 ペプチドに応答した。HLA-A2+子宮頚癌患者(C-9)において、ワクチン投与前PBMCの1ウェルがUBE2V43 ペプチドに応答し、2ウェルがlck246 ペプチドに応答し、2ウェルがppMAPkkk432 ペプチドに応答した。それに対し、ワクチン投与後PBMCの4、4、および3ウェルが、それぞれUBE2V43 ペプチド、lck246 ペプチドおよびppMAPkkk432 ペプチドに応答した。これらの結果は、前指定ワクチン療法がペプチド特異的CTLを効果的に誘導する能力を有することを意味する。
1.5 液性免疫応答
我々は最近、投与ペプチドに反応するIgGの誘導が、幾つかの癌タイプの患者の臨床応答および結果とよく相関することを報告した(8, 10, 11)。それ故、我々はペプチド特異的IgGのレベルを動態学的に検討した。簡単に説明すると、100 μl/ウェルのワクチン投与前および後(6回目)の血清試料を0.05% Tween 20-Block Aceで希釈し、ペプチド(20 μg/ウェル)固相化プレートに添加した。37 ℃で2時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、さらに1:1000希釈ウサギ抗ヒトIgG抗体(γ鎖特異的、DAKO, Glostrup, Denmark)と2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、そして1:100希釈ヤギ抗ウサギIg抗体結合西洋わさびペルオキシダーゼ−デキストランポリマー(EnVision, DAKO)100 μlを各ウェルに添加し、プレートを40分間インキュベートした。洗浄後、100 μl/ウェルのテトラメチル−ベンジジン基質溶液(KPL, Guildford, UK)を添加し、そして1 M リン酸を添加して反応を停止させた。各試料の吸光度(OD)はOD units/mlで示した。カットオフ値を決定するため、患者の血清を、対応ペプチドおよび陰性対照ペプチドとして用いたHIV ペプチドの両方に対する反応性について同時に測定した。OD値(対応ペプチドに応答したOD値から血清希釈1:100でのHIV ペプチドに応答したOD値を差し引いたもの)が>0.02の場合にペプチド反応性IgGが陽性であると判断した。
表2に示すように、ペプチドに反応するIgGがワクチン投与前に検出され、そしてペプチド特異的IgGはペプチドワクチン投与後に増加した(C-4、GC-1、4、および6)。さらに、投与ペプチドに反応するIgGが、試験した15人の患者のうち6人(C-1、4、6、7、8、および10)由来のワクチン投与後血清において誘導された。全体として、ワクチン誘発性のペプチド特異的IgGの誘導または増加は、試験した15人の患者のうち9人(60%)のワクチン投与後血清において観察された。その血清が少なくとも1つのペプチドに反応するIgGを有意なレベルで有した9人の患者の結果を図2に示す。HLA-A2+ GC 患者(GC-6)においては、UBE2V43およびlck246 ペプチドに特異的なIgGがワクチン投与前血清において有意なレベル(血清希釈1:100でOD値が<0.02)で検出可能であり(他の2つのペプチドに特異的なIgGは検出できない)、ペプチドワクチン投与によりそのペプチド特異的IgGのレベルが増加した。これらIgGそれぞれのペプチド特異性は他で示している(6-12)。
1.6 遅延型過敏(DTH)反応
各ペプチド50 μgを、26ゲージ針を備えたツベルクリンシリンジを使用して皮内注射することにより皮膚試験を行った。生理食塩水を陰性対照として使用した。即時反応および遅延型過敏(DTH)反応は、それぞれ注射後20分および24時間の時点で測定した。注射後24時間で少なくとも10 mmの硬化または20 mmの紅斑が示された場合、DTH皮膚試験が陽性と判定した。
ペプチドに対する遅延型過敏(DTH)反応は、ワクチン投与前は、試験したいずれの患者においても観察されなかった。6回目のワクチン投与までに、4人の子宮頚癌患者(C-1、2、6および7)においてペプチド特異的DTH反応が誘導された;これらの詳細は表2に示す。例えば、患者 C-1において、lck208およびlck488 ペプチドに対するDTH反応がそれぞれ3および4回目のワクチン投与後に観察された。
1.7 臨床応答の評価
3回目から6回目の各ワクチン投与の前および後に、すべての既知の疾患部位をCTスキャンまたはX線検査により評価した。患者は、固形腫瘍についての応答評価基準(WHO基準の改訂版、癌治療の結果を報告するためのWHOハンドブックにて1999年6月に公開)に従って分類した。
臨床応答を表2にまとめる。際だった腫瘍退縮(> 50% 減少)は、いずれの患者においても観察されなかった。4人の患者(C-3、GC-3、-5および-7)は急速に増悪し、6回目のワクチン投与の前に癌のために死亡した。6回目のワクチン投与の時点で、評価適格のある14人の患者のうち、8人の患者が病状不変(SD)と診断され、残りの6人の患者が病状増悪(PD)と診断された。これら14人の患者全員が自ら、ワクチン投与後(6回目)PBMCを用いたペプチドに対するCTL前駆細胞の選別に基づく個人別ワクチン療法に入ることを決めた。12回目のワクチン投与の時点で、評価適格を有する8人の患者のうち、3人の患者(C-4、 -9およびGC-8)がSDと診断され、残りの5人の患者がPDと診断された。1人(C-9)の患者で、傍大動脈リンパ節の16%のサイズ減少による腫瘍退縮が、10回目のワクチン投与の時点で観察された。18人の患者の平均(メジアン)観察期間、増悪までの平均期間(平均(メジアン)TTP)および平均(メジアン)生存期間(MST)は、それぞれ11、1.5(47日)、および5ヶ月(156日)であった。
3人のSD患者の解析は、予後因子の評価に役立つであろう。患者C-4においては、ペプチドワクチン投与後、ペプチド特異的IgGは誘導されたがペプチド特異的CTLおよびDTHは観察されなかった。患者C-9およびCG-8においては、ペプチド特異的CTLは誘導されたが、ペプチド特異的IgGおよびDTHは観察されなかった。他の15人の患者と比較して、これら3人のSD患者に共通する知見は、2つ以上のペプチドに対するペプチド特異的CTL前駆細胞がワクチン投与前PBMCにおいて検出されたことであった。即ち、患者C-9のワクチン投与前PBMCにおいて4つのワクチン投与ペプチドのうち3つに対するCTL前駆細胞が検出でき、患者C-4およびGC-8のワクチン投与前PBMCにおいて4つのワクチン投与ペプチドのうち2つに対するCTL前駆細胞が検出できた。結果は表3にまとめる。
Figure 2005123122
1.8 前指定ワクチン療法における患者生存期間の短縮
本研究において、我々は、これまでの個人別療法においてワクチン候補として頻繁に選択されたペプチドを患者にワクチン投与する「前指定ワクチン」療法を新しく試みた。しかしながら、その臨床応答は個人別療法のものよりも劣っているようであった。それ故我々は、前指定ワクチン療法の下での子宮頚癌およびGC(硬性)患者の全体的生存率(n = 16)を、これまでの個人別ワクチン療法の下でのもの(n = 9、子宮頚癌患者5人、および硬性GC患者4人)と比較した(図3)。その結果、本治療法における患者の全体的生存率は、これまでの個人別療法のものよりも有意に(Log-rank testによりp=0.0033)短かった。
1.9 前指定ワクチン投与による既存の免疫応答の付随的抑制
前指定ワクチン療法における患者の生存期間短縮の機構として、前指定ワクチン療法においては、CTL前駆細胞が存在しなかった投与ペプチドに対する一次免疫応答の誘導により既存の免疫応答が付随的に抑制された可能性がある。この可能性について調べるため、我々は、ワクチン投与ペプチドに反応するIgGのレベルを非ワクチン投与ペプチドに反応するIgGのレベルと比較した。HLA-A24+患者(n = 8)においては6種類の異なるHLA-A24拘束性CTLエピトープペプチド(CypB84、ART1170、ART413、ART475、MRP3503、およびMRP31293)に、HLA-A2+患者(n = 7)においては5種類の異なるHLA-A2拘束性CTLエピトープペプチド(WHSC103、WHSC141、HNRPL140、HNRPL501、およびEIF51)に特異的なIgGのレベルについて、15人の患者由来のワクチン投与前および後(6回目)血清を試験した。いずれのペプチドも前指定ワクチン療法においてワクチンとして投与されていなかったが、それらは全てこれまでの個人別療法において投与され、他所でも血清IgGのペプチド特異性が報告されていた(8-14)。結果を図4に示す。図4の左の列に示すように、15人の患者のうち5人(C-5、7、8、GC-2および6)の血清において、ペプチド特異的IgGのレベルが前指定ワクチン投与後に減少した。これら5人の患者のTTPは非常に短く(39、41、47、53および65日)、平均(メジアン)TTPは43日であったことは注目すべきである。個人別ワクチン療法の血清もまた非ワクチン投与ペプチドに対する反応性を調べるため準備し、そしてワクチン投与後血清が特異的ペプチドに対する応答の増加または減少を示した6人の患者の結果を図4の右の列に示す。個人別ワクチン投与についての詳細な結果は他所に記載した(11, 12)。個人別療法においては、患者 HS-001のMRP3-1293 ペプチドを除き、ワクチン投与後にペプチド特異的IgGが増加していた。
1.10 考察
患者特性に関して、子宮頚癌患者の数を除き(前指定ワクチン療法において10人に対して、これまでの個人別療法において5人)2つの治療法間で明確な違いはみられない。ワクチン投与ペプチドに対する細胞性応答の増加は、本治療法では13人の患者のうち11人(85)のワクチン投与後PBMCにおいて、および52ペプチドのうち26ペプチド(50)において観察され、一方これまでの個人別療法では18人の患者のうち11人(61)において、および48ペプチドのうち9ペプチド(18.8)において観察された(11, 12)。ペプチドに対する液性応答は、前指定ワクチン療法では試験した15人の患者のうち9人(60)のワクチン投与後血清において、および60ペプチドのうち17ペプチド(28.3)において観察され、一方これまでの個人別療法では、15人の患者のうち13人(87)において、および56ペプチドのうち20ペプチド(35.7)において観察された。これらの結果は、投与ペプチドに対する細胞性応答の誘導に関しては前指定ワクチン療法が個人別療法よりも優れており、一方液性応答の場合は個人別療法が優れているようだ、ということを示唆している。しかしながら、これら治療法間で臨床応答に際だった相違が観察された。即ち、本治療法下の患者の平均(メジアン)TTP(n = 16, 1.5ヶ月)(子宮頚癌患者(n = 10, 2ヶ月)およびスキルスGC(n = 6, 1ヶ月))は、これまでの個人別療法を受けた患者のもの(n = 9, 15ヶ月)(子宮頚癌患者(n = 5, 15ヶ月)およびスキルスGC(n = 4, 7ヶ月))(11, 12)よりもそれぞれかなり短かった。前指定ワクチン療法下でのこれら患者の全体的生存率は、これまので個人別療法下でのものより有意に短かった(図3)。
前指定ワクチン療法に関連する生存期間の短縮に関与する免疫学的機構は現在のところ明らかではない。しかしながら、1つには、投与ペプチドに対する強力な一次免疫応答の誘導が腫瘍細胞に対する既存の特異的免疫応答を抑制する可能性がある。この可能性について調べるため、我々はCTLエピトープペプチドに反応する血清IgGのレベルについて調べた。これらのレベルは、既報のように(8-12, 14, 15)、ワクチン投与前の癌患者および健常ドナーの両者においてしばしば示されていた。その結果、15人の患者のうち5人由来のワクチン投与前血清におけるペプチド特異的IgGのレベルは、ワクチン投与後血清におけるものより低く、これら患者のTTPの短縮と関連していることが明らかとなった。ペプチドに関しては、11種類のペプチドのうち5種類に反応するIgGが減少することがわかった。それに対して、このような非ワクチン投与ペプチドに対する液性応答の減少は、個人別療法下の患者のワクチン投与後にはほとんどみられなかった。
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下記文献は引用により本願明細書の一部を為す。
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Claims (4)

  1. 癌抗原ペプチドを治療上有効な量にてそれを必要とする患者に投与することを含む、癌患者を処置するための方法であって、
    1) 2またはそれ以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組を提供する、
    2) 該患者における、該癌抗原ペプチドの組に含まれる各ペプチドに対する特異的細胞障害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価する、
    3) 該患者が特異的細胞障害性Tリンパ球前駆細胞を有していないと評価された癌抗原ペプチドを、該癌抗原ペプチドの組から除去して投与用癌抗原ペプチドの組を調製する、および
    4) 投与用癌抗原ペプチドの組を該癌患者に投与する
    ことを含むことを特徴とする方法。
  2. 癌抗原ペプチドの組が、4以上の癌抗原ペプチドを含む請求項1記載の方法。
  3. 投与用癌抗原ペプチドの組が、3または4種の癌抗原ペプチドを含有するものである、請求項1記載の方法。
  4. 2またはそれ以上の癌抗原ペプチドからなる癌抗原ペプチドの組、および
    癌患者における癌抗原ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球前駆細胞の有無を評価するための試薬、
    を含有する、癌患者の処置のためのキット。
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