JPWO2004086010A1 - 吸光度読取装置、吸光度読取装置制御方法及び吸光度算出プログラム - Google Patents
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Abstract
Description
図24は従来の吸光度読取装置の概念を説明する図である。図24に示すように、読取り対象となる試料溶液はセル中に注入されている。このとき、光源から照射された照射光は波長駆動部で制御される分光器により単色光にされた後、レンズAにより試料中に焦点を結び、試料に照射される。試料を透過する光はレンズBによって集光され、検出器により電気信号に変換される。
このような吸光度読取装置は、1回の読取りで1つの生体試料の吸光度しか読取ることができなかった。また、セルの大きさは、ほぼ縦50mm、横10mm、深さ10mm程度であり、読取り対象となる多量の試料が必要であった。また、他の例として、ノズルに注入した検体(試料)の吸光度を測定するものなどがある(例えば、特開2000−258341号公報参照)。
上記のような従来の吸光度読取装置では、セル中の試料を読取るため多数の試料の吸光度を短時間で効率良く読取ることが困難であった。
そこで、本発明の目的は、微量の試料で、かつ多種類の試料の吸光度を短時間で一度にまとめて読取ることのできる吸光度読取りシステムを実現することを目的とする。また、読取った吸光度を目視による観察がし易いようにデータの加工などを行い、結果を分かり易く出力するデータ処理を実現することを目的とする。また、吸光度読取結果を基に、更に詳しい分析を行うため、任意の試料を回収できる吸光度読取りシステムを提供することを目的とする。
本発明の吸光度読取装置は、マイクロチャンバーアレイを載置するための試料台と、光源と、光源からの光が入射される分光器と、分光器から出射された照射光の照度分布を調整するための照射用光学系と、照射用光学系を透過した照射光を照射光径を拡大して試料台に載置されたマイクロチャンバーアレイに照射するための視野レンズと、試料透過光を受光するための片側テレセントリック光学系と、片側テレセントリック光学系を介して受光した試料の透過光を画像データとして出力する撮像カメラとを備える。照射用光学系を透過した照射光は、マイクロチャンバーアレイの上面から下面に向けて、あるいは下面から上面に向けて照射され、各ウェルを深さ方向に透過する。吸光度読取装置にウェル内の試料を回収する試料回収機構を設けてもよい。本発明の吸光度読取装置は、マイクロチャンバーアレイ上の全てのウェルの吸光度を1分以内で読取ることができる。
複数のウェルが設けられたマイクロチャンバーアレイの各ウェル内に注入された複数の試料の吸光度を読取るために、本発明では吸光度読取装置を制御するステップとして、吸光度を読取るための照射光を発光する光源を制御するステップと、吸光度を波長スキャンモード又は経時スキャンモードのいずれで読取るかを選択する読取モード選択ステップと、照射光の波長を選択するために分光器を制御するステップと、試料の吸光度を読取るための撮像カメラを制御するステップと、撮像カメラによって読取った吸光度をデータベースに格納するステップとを有する。より詳細には、試料の吸光度を読取るための撮像カメラの露光時間を設定するステップと、吸光度を読取るための照射光の読取開始波長を設定するステップと、吸光度を読取るための照射光の読取波長分解能を設定するステップと、吸光度を読取るための読取時間を設定するステップと、吸光度を読取るための読取回数を設定するステップとを有する。
また、ゼロ補正用溶媒を読取るステップと、被検査試料を読取るステップとを有するのが好ましい。また、吸光度読取装置で読取った吸光度算出の基となる画像データから吸光度算出のための画像データを指定するステップと、指定された画像データの中から吸光度算出範囲を指定するステップと、指定された吸光度算出範囲から吸光度算出を行うステップとを有する。吸光度算出のための画像データを指定するステップは、画像データとしてゼロ補正用溶媒の入ったマイクロチャンバーアレイの画像と被検査試料の入ったマイクロチャンバーアレイの画像とを表示するステップと、ゼロ補正用溶媒と被検査試料の画像データのいずれかに対して吸光度算出範囲を指定するステップとからなっていてもよい。更に、吸光度読取装置に依存する被検査試料上の光路長の差異を補正するための光路長補正ステップ、あるいは所望の被検査試料を回収するステップを有してもよい。前記吸光度読取装置の制御は、コンピュータプログラムによって実行することができる。
図2は、分光器とスリットによる波長分離の説明図である。
図3は、照射及び受光光学系の詳細な説明図である。
図4は、テレセントリック光学系の説明図である。
図5は、吸光度読取装置を制御するコンピュータの機能ブロック図である。
図6は、データベースの構成図である。
図7は、読取条件入力画面の例を説明する図である。
図8は、吸光度算出条件及び吸光度算出結果表示画面である。
図9は、波長スキャンモードでの読取処理のフローチャートである。
図10は、波長スキャンのフローチャートである。
図11は、経時変化スキャンモードでの読取処理のフローチャートである。
図12は、経時変化スキャンのフローチャートである。
図13は、吸光度算出処理のフローチャートである。
図14は、吸光度算出サブルーチンのフローチャートである。
図15は、光路長補正のフローチャートである。
図16は、マイクロチャンバーアレイの概念図(例1)である。
図17は、マイクロチャンバーアレイの概念図(例2)である。
図18は、マイクロチャンバーアレイの概念図(例3)である。
図19は、試料回収の説明図である。
図20は、試料回収機構の説明図(例1)である。
図21は、試料回収機構の説明図(例2)である。
図22は、試料回収機構の説明図(例3)である。
図23は、試料回収機構の説明図である。
図24は、従来の吸光度読取装置の光学系の概要である。
図1は、本発明の吸光度読取りシステムの構成を説明するためのシステム構成図である。本吸光度読取りシステムは、大きく分けると、吸光度算出の基になる画像を読取る吸光度読取装置1と、吸光度読取装置1を制御し、かつ読取った画像から吸光度の算出などを行うコンピュータ2とから構成されている。
図1により、まず、吸光度読取装置1について説明する。
吸光度読取装置1は、光源11と、光源制御部12と、スリット13a,13bと、分光器14と、波長駆動装置15と、ステッピングモータ制御部16と、レンズホルダ17と、照射用レンズ18と、ミラー19と、視野レンズ20と、試料台22と、受光レンズ23と、CCDカメラ24と、電源部25と、光学ベンチ26と、試料台モータ制御部29と、試料台モータ30と、ボールネジA31、及び試料回収機構28とから構成されている。これらの各要部の機能などは次のとおりである。
光源11は、後述する吸光度読取り対象の試料(被検査試料)を注入したマイクロチャンバーアレイ(図16を参照)に照射する照射光27を発光するためのもので、ここでは、ハロゲンランプ(可視光、150W)を用いている。光源11は、光源制御部12によってスイッチのオン・オフが制御されるようになっている。
分光器14は、光源11から照射した照射光から任意の波長の光(単色光)を出射するためのもので、波長駆動装置15により制御されるようになっている。スリット13aとスリット13bは、分光器14と合わせて用いるもので、本装置では、単色光の波長半値幅が5nmとなるよう幅1mm、長さ10mmのスリット13bを用いている。分光器14は、内部に回折格子を持っており、分光器14に入射された光は回折格子により波長ごとの光に分離される。波長ごとに分離された光に対してスリット13bを設けることで、任意の波長の光だけがスリット13bを透過し、その結果、単色光を取り出すことが可能になる。
図2は、分光器とスリットによる波長分離の概念を表わしたものである。光源11から照射された照射光14aはスリット13aにより特定の範囲の照射光が回折格子14bにより350nmから800nmの波長の光に分離される。回折格子14bの角度を変えることによって、350nmから800nmの波長の中からスリット13bを通過する照射光を半値幅5nmの単位で取り出す。回折格子14bの角度の回転は、波長駆動装置15により行われる。
波長駆動装置15は分光器内部の回折格子14bの角度を変えるためのモータであり、ステッピングモータ制御部16を介して、コンピュータ2により制御されており、これにより、分光器14から出射する照射光の波長をコンピュータ2から制御することが可能となっている。本装置では、波長分解能5nmで350〜800nmの波長を1分以内で制御可能である。
レンズホルダ17は、照射用レンズ18を支持するためのホルダである。照射用レンズ18は、分光器14から出射された光の単位面積当たりの光の照度分布を均一にするためのレンズである。これにより、読取り領域内での検出感度誤差を低減することが可能となる。本装置では照射用レンズにより読取り領域30×30mmの範囲内での光量の誤差を20%以内に抑えている。
ミラー19は、照射光を試料に対して垂直方向に照射するために光路を上方向に誘導するためのものである。図1では、ミラー19により、上方向に照射光を誘導するようにしているが、視野レンズ20からCCDカメラ24までの受光側の各装置をミラー19より下部側に設けて、ミラー19により照射光の光路を下方向に誘導するようにしても良い。この場合、ミラー19より下方で試料の吸光度を読取ることになる。
視野レンズ20は、ミラー19で誘導された照射光27を、読取り領域全面に照射するため、光径を拡大するためのレンズである。本装置では、視野レンズ20により約10mmの光径を約30mmに拡大している。
ここで、照射用レンズ18及び視野レンズ20による光学系の詳細について、図3を用いて説明する。
スリット13bを透過してきた単色光は、照射用レンズ18に入射する。照射用レンズ18は、入射端レンズ181、ロッドレンズ182及び出射端レンズ183から構成されている。本装置では、スリット13bは、幅1mm、長さ10mmのスリットである。照射用レンズ18に入射した光は、入射端レンズ181によってロッドレンズ182に導かれる。ロッドレンズ182は、ガラスで作られた円柱状のレンズであり、入射した光はロッドレンズ182内部で全反射を繰り返すことによって、ロッドレンズ182の出口では照度分布が均一になる。ロッドレンズ182から出射した光は、出射端レンズ183により集光され、ミラー19及び視野レンズ20に導かれる。本装置では、スリット13bから出射した時点での光は長方形の照度分布を持っているが、照射用レンズ18により照度分布が均一な円形の光に変換され、読取り範囲全面に20%以内の照度分布で均一な光を照射することを可能にしている。
また、本装置では、入射端レンズ181及び出射端レンズ183は直径10mm、ロッドレンズ182は直径8mm、長さ50mmのものを採用しており、出射端レンズ183から出射される光径は約10mmである。視野レンズ20は2枚のレンズ、レンズA201及びレンズB202から構成されている。視野レンズ20は、光を読取り範囲全面に照射するため、光径を拡大するためのレンズである。径約10mmの光が視野レンズ20に入射すると、レンズA201及びレンズB202により光径約30mmに拡大される。ここで視野レンズ20が2枚のレンズで構成されているのは、視野レンズを出射した光を平行光に近づけ、試料に対してより垂直に照射するためである。
図1に戻り、吸光度読取装置1の説明を続ける。
受光レンズ23は、ウェル中の試料を透過した光を受光するためのレンズである。このとき、試料を透過する光には、試料を垂直に透過した光のほかに、試料中で乱反射した光も含まれている。しかし、試料の透過光のみを測定するには、試料中を乱反射した光は受光せずに、垂直に透過した光のみを受光する必要がある。これは、試料中を乱反射した光は、試料を透過した光ではないため、正しい吸光度測定が困難になるためである。そこで本装置では、受光レンズにテレセントリックレンズを用いている。テレセントリックレンズとは、物体側あるいは像側、又はその両側の主光線が無限遠まで光軸と交わらない光学系を構成するレンズである。例えば、物体側の場合、物体からの光(主光線)が光軸外においても光軸と平行を保っている、すなわち焦点を結ばない。この場合、光軸とは、レンズの中央を通り、レンズに対して垂直な軸のことを意味している。レンズから像に向かう光が光軸と平行の場合を像側、その両方の場合を両側と呼ぶ。本装置では、CCDカメラ上に焦点を結ぶような片側テレセントリックレンズを採用した。
ここで、図4によりテレセントリックレンズについて説明する。
図4(a)において、試料面を垂直に透過する光はレンズによってCCDカメラ上に集光される。このとき、CCDカメラ上に焦点を結ぶような片側テレセントリックレンズを用いることで、試料面を垂直に透過する光のみをCCDカメラ上に集光することが可能になる。一方、図4(b)の非テレセントリック系で試料面からの透過光をCCDカメラに集光した場合、CCDカメラに集光される光は試料面を垂直に透過した光ではなくなってしまう。本装置では、直径30mm(有効範囲直径27mm)の片側テレセントリックレンズを採用し、片側テレセントリックレンズとCCDカメラ上の焦点距離は片側テレセントリックレンズの特性によって左右されるため、本装置ではその距離を50mmとした。
図1に戻り、吸光度読取装置1の説明を続ける。
CCDカメラ24は、受光レンズ23で受光した試料からの透過光を検出して、画像データを出力するためのものである。本装置では、有効ピクセル数約100万画素(1,008×1,018)、露光設定は電子シャッター方式(1/30〜1/10,000)、階調10ビットのCCDカメラを採用した。
試料台モータ30は、試料台22を水平方向に移動させるためのモータであり、試料台モータ制御部29を介してコンピュータ2で制御される。ボールネジ31は、試料台22が水平方向に移動する際のレールの役割りを果たすものである。試料回収機構28は、試料台22に設置されているマイクロチャンバーアレイ中の任意の試料を回収するためのものである。
電源部25は、光源制御部12、ステッピングモータ制御部16、試料台モータ30、CCDカメラ24、及び試料回収機構28を稼動させるためのもので、100ボルトの交流電気を供給する。光学ベンチ26は、吸光度読取装置1の本体を安定的に固定するための基盤である。
以上説明したような構成を持つ吸光度読取装置1を実現することによって、読取り範囲30mm×30mmの範囲を画素分解能30μmで読取ることが可能になった。また、波長分解能5nmで、350〜800nmの範囲を約1分で読取ることが可能になった。これにより、80μm〜数百μmのウェルごとの吸光度を大量かつ一度に読取ることが可能である。また、上記読取り結果から、必要に応じてマイクロチャンバーアレイ上の任意のウェル中の試料を回収することが可能になった。
次に、図5を用いて本発明のコンピュータ2での処理の概要を説明する。コンピュータ2は、吸光度読取装置1を制御し、吸光度読取装置1で読取った吸光度算出の基となる画像から吸光度の算出などの処理を行うものであり、各要部の機能などは次のとおりである。
入力装置5は、オペレータがコンピュータへ各種指示を入力するためのキーボードやマウスなどの入力装置である。表示装置6は、コンピュータプログラムの処理結果を表示したり、オペレータがコンピュータプログラムに対して対話形式で各種指示を入力するGUI(Graphical User Interface)画面などを表示したり、吸光度算出結果などを表示するための表示装置である。データベース4は、吸光度読取装置1で読取った画像データを格納するためのデータベースであり、波長スキャンモード、経時変化スキャンモードにより読取った画像データが格納される。また、前記画像データを基に算出した吸光度算出結果などを格納する。
処理装置3には、アプリケーションプログラムとして、吸光度読取りプログラム31と吸光度算出プログラム32及び試料回収プログラム33がハードディスクなどの記憶装置(図示せず)から呼び出され実行可能な状態にあることを表わしている。
吸光度読取りプログラム31は、主として吸光度読取装置を制御して吸光度算出の基となる画像データを読取るためのプログラムであり、波長スキャンモードと経時変化スキャンモードを選択するための読取モード選択部311と、吸光度読取装置1の光源11を制御するための光源制御部312と、ステッピングモータを制御するためのステッピングモータ制御部313と、CCDカメラを制御するためのCCDカメラ制御部314と、吸光度読取結果をデータベース4に格納する読取結果格納部315と、ゼロ補正用のマイクロチャンバーアレイと被検査試料用のマイクロチャンバーアレイを交換するための読取試料切替部316とからなっている。
吸光度算出プログラム32は、主として吸光度読取りプログラム31で読取った吸光度算出の基となる画像データから、吸光度を算出したり算出結果を表示装置6に表示したりするためのプログラムであり、吸光度を波長スキャンモード又は経時変化スキャンモードのいずれで算出するかを選択するための読取モード選択部321と、表示画像の輝度などを調整するための階調補正部322と、マイクロチャンバーアレイ上のどのウェルに該当する画像から吸光度を求めるかを選択するための吸光度算出範囲選択部323と、読取モード、階調補正及び吸光度算出範囲の指定に基づき吸光度を算出するための吸光度算出部324と、市販の一般的な吸光光度計と本発明の装置との光路長の違いを補正するための光路長補正部325と、吸光度算出結果を基に、オペレータからの指示により任意のウェル中の試料を回収するための試料回収部326とからなっている。
試料回収プログラム33は、主として吸光度読取プログラム31からの指示により、ゼロ補正用のマイクロチャンバーアレイと被検査試料用のマイクロチャンバーアレイを交換したり、吸光度算出プログラム32から指定されたマイクロチャンバーアレイ上の任意のウェル内の試料を回収するプログラムであり、試料台モータ制御部332と、バキュームポンプ制御部333とからなっている。
図6は、吸光度読取りシステムでの吸光度読取結果と、吸光度算出結果を格納したデータベースの例を示したものである。
データベース4は、吸光度読取装置1により、波長スキャンモードで読取った読取結果411と、それに基づき吸光度を算出した吸光度算出結果412を格納した波長スキャンモードファイル41と、経時変化スキャンモードで読取った読取結果421と、それに基づき吸光度を算出した吸光度算出結果422を格納した経時変化スキャンモードファイル42とから構成されている。
波長スキャンモードファイル41には、吸光度読取装置1により350nm〜800nmまで5nmおきの波長で読取ったゼロ補正読取結果と、それに対応する被検査試料読取結果が格納されている。また、ゼロ補正読取結果と被検査試料読取結果から各波長での吸光度を算出した吸光度算出結果412が格納されている。
経時変化スキャンモードファイル42には、吸光度読取装置1により特定の波長として例えば600nmで読取ったゼロ補正読取結果と、600nmの波長で0秒〜120秒まで10秒おきに試料を読取った被検査試料読取結果が格納されている。また、ゼロ補正読取結果と被検査試料読取結果から、各経過時間の吸光度を算出した吸光度算出結果422が格納されている。
図7は、図5の吸光度読取りプログラム31に対してオペレータが読取り条件を指示するための読取条件の入力画面の例を表したものである。図7において、読取モード61は、波長スキャンモード又は経時変化スキャンモードのどちらかを選択するものである。図7の例では、波長スキャンモードが選択されている状態を表している。
露光時間62は、1回のCCDカメラの露光時間で、本実施例では、0.1〜30msecの範囲を0.1msec単位で設定可能である。露光時間が長いほどCCDカメラの感度は向上し、少ない光でも検出可能になる。例えば、透過率の低い、すなわち吸光度が高い試料を測定する場合には露光時間を30msecなど長く設定する必要がある。図7の例では、露光時間を1msecに指定した場合を表している。
読取開始波長63及び読取終了波長64は、波長スキャンモードにおいて、読取りを開始又は終了する波長を指定するものである。一方、経時変化スキャンモードは単一波長での読取りなので、経時変化スキャンモードが選択されている場合は、読取開始波長として読取る波長が設定可能で、読取終了波長は設定不可となる。図7の例では、読取開始波長350nm、読取終了波長800nmに指定した場合を表している。
読取波長分解能65は、波長スキャンモードにおいて、読取開始波長から読取終了波長までの読取波長間隔を指定するものであり、波長スキャンモードが選択されている場合のみ設定可能である。図7の場合、読取波長分解能として5nmが指定されている場合を表している。これにより、読取開始波長350nmから読取終了波長800nmまでを5nmおきの波長で読取ることになる。なお、本実施例の装置では、読取波長分解能として、5、10、15、20nmから1つを選択可能である。読取波長分解能が小さいほどより詳細なスペクトルが得られ、大きいほどスペクトルは粗くなるが読取り時間は短くなる。
時間間隔66及び読取回数67は、読取りを行う時間間隔及び読取りを行う回数を指定するもので、経時変化スキャンモードが選択されている場合のみ設定可能となる。ビニング数68は、本実施例ではチェックボックスがチェックされていると2×2のビニングを行い、チェックされていないとビニングを行わない。2×2のビニングとは、CCDカメラで得られる画素のうち、隣接する縦・横2画素ずつを平均化し1つの画素として出力することである。得られる画像の画素分解能は2倍大きくなるが、ファイルサイズが4分の1になるメリットがある。
次に吸光度算出について説明する。
図8は、図5の吸光度算出プログラム32に吸光度算出条件をオペレータが指示したり、吸光度算出プログラム32の吸光度算出結果を表示したり、更にはオペレータが吸光度算出結果から任意のウェル中の試料回収を指示する表示画面の例を説明する図である。
図8において、読取モード71は、波長スキャンモードが選択された場合を表している。「画像を開く」72とは、データベース4に格納されているゼロ補正読取結果画像及びサンプル読取結果画像から、吸光度を算出する画像を選択するものである。選択された画像は、ゼロ補正表示ウィンドウ76及び試料表示ウィンドウ77に表示される。
本実施例では、画像は白黒の濃淡で表示され、輝度値の高い画素は濃く(黒く)、低い画素は薄く(白く)表示される。これにより、ユーザは画像上でのウェルの位置を容易に認識することができる。この時、読取り範囲である縦、横それぞれ30mm以内に含まれているウェルが全て表示される。ただし、本装置の画像分解能は30μmであるので、ウェルの一辺の長さ、及びウェル間隔ともに30μm以上である必要がある。本装置では、正しく吸光度算出が可能なウェルの一辺の長さとして80μm以上としている。1つのウェルを表示するために必要な画素数として少なくとも3つを確保する必要があると考えられるためである。
吸光度算出範囲選択73は、読取った画像のうち吸光度を算出する範囲を選択するものである。ゼロ補正表示ウィンドウ76及び試料表示ウィンドウ77上で、マウスを用いて吸光度算出範囲79が指示されると、指示された画像を吸光度算出範囲79として選択する。この時、吸光度算出範囲として1ウェルを選択することで、1ウェルの吸光度を算出することが可能になる。また、吸光度算出範囲79を任意に選択可能とすることで、様々な寸法のウェル(例えば一辺の長さが90μmのウェル)の吸光度算出に対応することができる。図8の例では、右から2列目、上から3番目のウェルが吸光度算出対象として選択されていることを表している。この場合、ゼロ補正表示ウィンドウ76に表示されている右から2列目、上から3番目のゼロ補正用のウェルと対応付けして吸光度算出が行なわれる。一方、ゼロ補正表示ウィンドウ76に表示されているウェルを選択すると、試料表示ウィンドウ77上に表示されている対応するウェルと対応付けして吸光度算出が行なわれる。
階調補正74は、表示されている画像の階調の上限、下限を設定するものである。階調補正により表示装置の輝度を調整することで、画像の輝度値が強調され、画像の見た目が改善される。
吸光度算出75とは、吸光度算出範囲選択73で選択された範囲の吸光度を算出し、その結果を吸光度表示ウィンドウ78上に表示するものである。例えば、波長スキャンモードにおいては、波長ごとの吸光度が算出され、その結果が吸光度表示ウィンドウ78にプロットされる。同時に波長と吸光度の算出結果をデータベース4へ格納する。図6で説明した吸光度算出結果がそれに該当する。なお、図8の場合は、波長スキャンモードでの表示例を示しているが、経時変化スキャンモードでの表示の場合は、横軸が時間で、縦軸が吸光度になる。
試料回収80とは、試料回収プログラム33を起動し、任意のウェル中の試料を回収するためのものである。試料回収プログラムが起動されると、試料表示ウィンドウ77上において吸光度算出範囲79として選択されているウェルから試料を回収する。
次に吸光度読取り処理の詳細について説明する。
吸光度読取りには、波長スキャンモードと経時変化スキャンモードがある。波長スキャンモードとは、読取開始波長から読取終了波長までを読取波長分解能ごとに読取って、波長ごとの吸光度を算出するための読取処理である。例えば、読取開始波長を350nm、読取終了波長を800nm、読取波長分解能を5nmとした場合、350nm、355nm、360nm、365nm、370nm‥‥795nm、800nmで読取りを行う。波長スキャンモードは、一般に得られる吸光度スペクトルのピーク波長及び吸光度値が未知の場合に用いる。
また、読取りは、ゼロ補正用溶媒と被検査試料の2つの読取りを行う。これは、ゼロ補正用溶媒と被検査試料のそれぞれの結果から吸光度を算出するためである。
図9は、波長スキャンモードでの吸光度読取りプログラム31の処理を説明するフローチャートである。まず最初にオペレータは試料台22にゼロ補正用溶媒のマイクロチャンバーアレイと被検査試料のマイクロチャンバーアレイをセットしておく。波長スキャンモードにおいて、吸光度読取りプログラム31は図7の画面によりオペレータからの読取り条件(読取開始波長、読取終了波長、読取波長分解能、露光時間、ビニング数)の入力を受付ける(ステップ800)。次に、試料台22にセットされているゼロ補正用溶媒のマイクロチャンバーアレイの読取開始の入力を受付け(ステップ810)、図10の波長スキャンのサブルーチンを実行して、ゼロ補正用溶媒の波長スキャンを実行する(ステップ820)。波長スキャンの処理は図10のとおりである。波長スキャンモード開始後、図9のステップ800で受付けた読取開始波長まで波長駆動装置を移動させる(ステップ900)。その後、図9のステップ800で受付けた露光時間でCCDカメラを露光し(ステップ910)、吸光度読装置1を制御して吸光度を読取り、結果をデータベース411に格納する(ステップ920)。その後、現在の波長位置から読取波長分解能分だけ波長を移動させ(ステップ930)、ステップ940で現在の分光器の波長が読取終了波長と同じか小さい場合は、ステップ910に戻って処理を繰り返する。また、ステップ940において、現在の分光器の波長が読取終了波長より大きい場合は、波長スキャンは終了となり図8のステップ820に戻る。以上、図9のステップ810から820がゼロ補正用溶媒の読取りにあたる。
次に読取試料切替部316によりゼロ補正用溶媒に代えて被検査試料のマイクロチャンバーアレイを試料台22の読取位置に自動的にセットし、被検査試料の読取り開始入力を受付ける(ステップ830)。次にステップ840で波長スキャン処理プログラム(図9)により波長スキャンを行い、すべての読取りが終了する。
次に、経時変化スキャンモードでの吸光度読取りの詳細について説明する。
経時変化スキャンモードとは、単一の読取波長において経過時間ごとの吸光度を算出するモードである。例えば、読取波長600nm、読取間隔10秒、読取回数10回とした場合、読取波長を600nmで一定に保ち、読取開始より0秒後、10秒後、20秒後、30秒後‥‥、100秒後での吸光度を読取る。経時変化スキャンモードは、一般に読取るべき波長は既知で、その波長での吸光度の経過時間ごとの変化が未知の場合に用いられる。
図11は、経時変化スキャンモードでの吸光度読取りプログラム31の処理を説明するフローチャートである。まず、最初にオペレータはゼロ補正用溶媒のマイクロチャンバーアレイと被検査試料のマイクロチャンバーアレイを試料台22にセットしておく。経時変化スキャンモードにおいて、読取開始後、吸光度読取りプログラム31は図7の画面によりオペレータからの読取り条件(読取波長、読取間隔、読取回数、露光時間、ビニング数)の入力を受付ける(ステップ1000)。その後、オペレータからの読取り開始の入力を受付け(ステップ1010)、図12の経時変化スキャンのサブルーチンを実行して、設定された特定の読取波長で読取り(経時変化スキャン)を行う(ステップ1020)。
図12は、経時変化スキャンのフローチャートである。経時変化スキャン開始後、波長駆動装置15の制御により図11のステップ1000で受付けた読取波長に分光器の波長を移動し(ステップ1100)、次にゼロ補正用溶媒の読取りか、被検査試料読取りかを判定する(ステップ1110)。ゼロ補正用溶媒の読取りの場合は、ステップ1120によりCCDカメラを露光した後、吸光度読取装置1を制御してゼロ補正用溶媒の吸光度を読取り、読取り結果を取得してデータベース421に格納する(ステップ1130)。その後、図11のステップ1020に戻り、次に読取試料切替部316によりゼロ補正用溶媒に代えて被検査試料のマイクロチャンバーアレイを試料台22の読取位置に自動的にセットし、被検査試料の読取りの入力を受け付け(ステップ1030)、次に図12の経時変化スキャンのサブルーチンを実行して、設定された特定の読取波長で試料の読取り(経時変化スキャン)を行う(ステップ1040)。
図12の経時変化スキャン開始後、波長駆動装置15の制御により図11のステップ1000で受付けた読取波長に分光器の波長を移動し(ステップ1100)、次にゼロ補正用溶媒の読取りか、被検査試料の読取りかを判定し(ステップ1110)する。被検査試料の読取りの場合は、ステップ1140で変数Nを0とする。その後、図11のステップ1000で受付けた読取間隔分をカウントし(ステップ1150)、CCDカメラを露光し(ステップ1160)、吸光度読取装置1を制御して試料の吸光度を読取り、読取り結果を取得してデータベース421に格納する(ステップ1170)。その後Nに1を加え(ステップ1180)、指定された読取回数分のスキャンをしたか判定し(ステップ1190)、Nが読取回数と同じか小さい場合はステップ1150に戻り処理を繰り返す。また、Nが読取回数より大きい場合は、経時変化スキャンを終了して図11のステップ1040へ戻った後、処理を終了する。
次に吸光度算出処理について詳細に説明する。
吸光度算出処理は、吸光度読取りプログラム31によって得られデータベース4に格納されているゼロ補正用溶媒、及び被検査試料のそれぞれの画像から吸光度を算出する処理である。吸光度算出処理は、波長スキャンモードと経時変化スキャンモードの2つがあるが、以下では波長スキャンモードについて説明する。
図6において、ゼロ補正読取結果、及び被検査試料読取結果のそれぞれについて、読取った波長分の画像がデータベース4の読取結果411に記憶されている。吸光度算出プログラム32は図8に示したとおりゼロ補正読取結果画像、被検査試料読取結果画像を受付け、それぞれの画像をゼロ補正表示ウィンドウ76と試料表示ウィンドウ77に表示する。その後、吸光度算出プログラム32はオペレータが選択した任意の吸光度算出範囲を受付け、吸光度算出範囲を画面上に表示する。その後、吸光度算出範囲内の平均吸光度を波長ごとに算出し、プロットする。
なお、吸光度算出範囲をオペレータが任意に指定することによって、様々な寸法のウェルの吸光度を算出することが可能となる。従って、マイクロチャンバーアレイ上に異なる寸法のウェルが混在していても、吸光度の算出が可能である。この時、吸光度算出範囲として1ウェルを選択することにより、ウェルごとの吸光度を算出することが可能である。
図8の吸光度表示ウィンドウ78は、吸光度算出の結果得られる吸光度スペクトルの例を示したものである。例えば、細胞の活性又は非活性を読取った場合、図8の吸光度表示ウィンドウ78において、実線が活性細胞から得られた吸光度スペクトルで、破線が非活性細胞から得られた吸光度スペクトルとなる。つまり、得られた吸光度スペクトルのピーク波長での吸光度の値から、細胞の活性又は非活性を判断することができる。また、このほかにも吸光度の値は同じだがピーク位置がシフトする場合などもある。
ゼロ補正用溶媒及び被検査試料から吸光度を算出する際の読取手法は次のとおりである。初めに、ある波長において、吸光度算出範囲として指定されたウェルを構成するすべての画素について、次式(1)に従い吸光度を算出する。
Abs=log(1/T) (1)
T=Et/E0
T:透過度
Et:被検査試料読取結果の読取値
E0:ゼロ補正溶媒読取結果の読取値
Abs:吸光度
その後、算出された吸光度の平均を求め、ある波長での平均吸光度を求める。この吸光度の算出をデータベースの読取結果411にある全ての波長について行い、波長ごとの吸光度を算出し、プロットする。
図13は、吸光度算出プログラム32の処理を説明するためのフローチャートである。
図13において、動作開始後、オペレータからの吸光度算出対象の画像選択の入力を受付け(ステップ1200)、選択された画像を表示する(ステップ1210)。その後、吸光度算出範囲の選択の入力を受付け(ステップ1220)、図14の吸光度算出サブルーチンを実行して吸光度を算出し(ステップ1230)、結果を表示する(ステップ1240)。
図14は、吸光度算出の処理を説明するためのフローチャートである。
図14において、初めに読取開始波長を変数Nにセットする(ステップ1300)。次に波長Nnmでのゼロ補正読取結果画像、サンプル読取結果画像のそれぞれに対して、平均吸光度E0(N)、Et(N)を算出し(ステップ1310、1320)、E0(N)及びEt(N)より波長Nnmでの吸光度Abs(N)を算出する(ステップ1330)。次に変数Nに波長分解能分を加える(ステップ1340)。その後、Nが読取終了波長と同じか小さい場合はステップ1310に戻り処理を繰り返し、Nが読取終了波長より大きい場合は処理を終了し、図13のステップ1230に戻った後、図14で算出した吸光度を表示し(ステップ1240)、終了する。
次に光路長補正処理について説明する
一般に市販されている従来の吸光光度計で得られる吸光度は、本発明のシステムと同様に(1)式に従って算出されているが、このとき、市販の吸光光度計での光路長はセル(図24を参照)の幅にあたり、一般にセルの幅は10mmである。一方、本発明のシステムの光路長はマイクロチャンバーアレイのウェルの深さにあたる。即ち、光路長とは、読取る試料中を光が透過する際の長さのことである。
一般に、吸光度(Abs)と光路長の関係は次式(2)で表される。
Abs=C×L×M (2)
C:モル吸光係数
L:光路長
M:濃度
ここで、モル吸光係数とは、試料の持つ固有の係数のことで、生体試料ごとに与えられている。濃度とは試料の濃度である。従って、式(2)より、吸光度と光路長は比例している。つまり、ウェルの深さL(μm)と市販の吸光光度計のセル幅10mmの比を係数として考慮することで、本発明の吸光度読取りシステムで得られた吸光度から、光路長10mmの時の吸光度を求めることができる。これによって、本発明のシステムから得られた吸光度と市販の吸光光度計から得られた吸光度を補正なしに比較することが可能になる。
図15は、光路長補正処理を説明するフローチャートである。
本発明の吸光度読取りシステムでは、ステップ1420の式で、吸光度の補正を行っている。ここでLはマイクロチャンバーアレイのウェルの深さであり、Lはパラメータとしてオペレータからの入力を受付けるようになっている。
光路長補正処理開始後、吸光度算出プログラム32は読取りに用いたマイクロチャンバーアレイのウェルの深さにあたる、光路長L(μm)を受付ける(ステップ1400)。また、読取開始波長を変数Nにセットする(ステップ1410)。次に本装置を用いて得られた、波長Nでの補正前の吸光度Abs(N)、及び光路長Lより、波長Nでの補正後の吸光度Abs’(N)を求める(ステップ1420)。その後、変数Nに読取波長分解能を加える(ステップ1430)。次にNが読取終了波長と同じか小さい場合はステップ1420に戻り処理を繰り返し、Nが読取終了波長より大きい場合は処理を終了する(ステップ1440)。以上によって、読取ったすべての波長に対して、光路長の補正が行われる。補正後の吸光度は、補正前と同様に吸光度と波長のテーブルとしてデータベース4に格納される。
次に、マイクロチャンバーアレイについて説明する。
図16はマイクロチャンバーアレイを説明する概念図である。マイクロチャンバーアレイとは、スライドガラス(25mm×75mm、厚さ1mm)の基盤上に微小サイズのウェルを形成したもので、ウェルの寸法は一辺の長さ及び深さとも80μmから数百μmである。マイクロチャンバーアレイのウェルの形成されている上面を第1面、下面を第2面と呼ぶことにする。第1面のウェル内には細胞などの生体試料を注入する。細胞の寸法はヒトの細胞が10〜20μmであり、その他動植物の細胞が数百μmであり、1ウェル内に1細胞を注入することを前提としているため、ウェル寸法は細胞の寸法に由来している。細胞をウェルに注入後、上から反応溶液を滴下させることで注入した被検査試料である細胞と反応溶液が反応する。マイクロチャンバーアレイにより披検査試料の分析を一度に大量の処理(ハイスループット)をすることが可能であり、分析時間の短縮、試薬の節約によるコスト低減などのメリットがある。
細胞を試料とする場合には、1ウェルの寸法が縦0.03mm以上1mm以下、横0.03mm以上1mm以下、隣り合うウェル間の距離が0.03mm以上1mm以下のマイクロチャンバーアレイを用いるのが好ましい。1つのマイクロチャンバーアレイに設けるウェルの数は、100個以上で、最大10,000個とするのが好ましい。
また、図16に示した他にも、いくつかのマイクロチャンバーアレイが考えられる。図17は、各ウェルの底面に通過孔を設けたマイクロチャンバーアレイを説明する概念図である。マイクロチャンバーアレイの寸法及びウェルの寸法は図16と同様で、通過口は直径10μmである。図18は、各ウェルの側面に通過孔を設けたマイクロチャンバーアレイを説明する概念図である。図18(a)は本マイクロチャンバーアレイの斜視図で、マイクロチャンバーアレイ上に、2列にウェルが配列されている。本マイクロチャンバーアレイの断面図は図18(b)のとおりである。
次に、試料回収について説明する。
図19は、試料台22の移動について説明する図である。試料台22及びマイクロチャンバーアレイは、読取りを行う際は処理装置からの制御によって図19中の読取位置191に制御されているが、試料回収プログラム33が起動されると、試料回収プログラム33により試料回収位置192に移動される。試料台22及びマイクロチャンバーアレイの移動は、試料台モータ30及びボールネジA31の制御によって行われる。
図20は、試料回収機構28の原理を説明する概念図である。試料回収機構28は、横軸回収パネル2001と、縦軸回収パネル2002と、バキュームポンプ2003からなっている。横軸回収パネル2001は横軸方向に一直線上に穴があいており、縦軸回収パネル2002は縦軸方向に一直線上に穴があいている。横軸回収パネル2001及び縦軸回収パネル2002はマイクロチャンバーアレイの下側に配置されており、更にその下にバキュームポンプ2003が配置されており、バキュームポンプ2003で吸引することで任意のウェルから試料を試料回収部に回収することが可能になっている。
図17のマイクロチャンバーアレイの場合は、この横軸回収パネル2001の縦方向位置と縦軸回収パネルの横方向位置を制御し、バキュームポンプ2003により吸引することによって、マイクロチャンバーアレイ上の任意のウェルから、ウェル内の被検査試料を回収することが可能となる。
また、図21は、横軸回収パネルは横軸回収パネル用モータ2101及びボールネジBにより制御されており、縦軸回収パネルの位置は固定、試料台モータ30及びボールネジA31によってマイクロチャンバーアレイの横軸方向を制御している例である。
図22は、図18のマイクロチャンバーアレイにおける試料回収機構の原理を説明する概念図である。図22において、試料回収機構は回収チューブと、セレクター、及びバキュームポンプからなっている。セレクター及びバキュームポンプは処理装置から制御されており、試料回収プログラム33で指定されたウェルに従って、セレクターは試料を回収する回収チューブ1つを選択する。その後、バキュームポンプが吸引を行うことで、任意のウェルから試料を試料回収部に回収することが可能になっている。
図23は、図16のマイクロチャンバーアレイにおける試料回収機構の原理を説明する概念図である。図23において、試料回収機構は、マイクロシリンジ2301と、バキュームポンプ2302と、シリンジモータ2303、及びボールネジC2304からなっている。試料台モータ30及びボールネジAによってマイクロチャンバーアレイの横方向を、シリンジモータ2303及びボールネジC2304によってマイクロシリンジ2301の縦方向を制御することによって、マイクロシリンジ2301をマイクロチャンバーアレイ上の任意のウェルに移動させ、バキュームポンプ2302によって任意のウェル内の試料を吸引し、回収することが可能である。
マイクロチャンバーアレイを用いた吸光度算出による被検査試料への適用例としては、例えばウィルス性の病気の発生メカニズムの研究、診断、治療などが挙げられる。ウィルスは自分の遺伝子を感染した細胞の遺伝子に潜り込ませ、細胞を破壊していく。ある細胞にウィルス遺伝子が存在するのか、存在していたとしたらどのくらい、どのような状態で存在するのかを、1個1個の細胞について調べる必要がある。この時、マイクイロチャンバーアレイはハイスループットでの細胞ごとの分析が可能であり、これを用いた分析は非常に有効であると考えられる。
本発明は、マイクロチャンバーアレイを対象としてウェルごとの吸光度を読取る装置に関するものである。また前提として、マイクロチャンバーアレイが透明素材である必要がある。また、本発明においては、ウェルに注入する試料は細胞の他、DNAやたんぱく質でも良い。
産業上の利用性
以上説明したような構成の吸光度読取りシステムを実現することによって、マイクロチャンバーアレイ上の多数のウェルのそれぞれの吸光度を、一度に大量かつ高速に読取ることを可能にした。また、試料からの透過光をCCDカメラに集光する光学系にテレセントリックレンズを採用することで高い位置精度での読取りを実現している。また、マイクロチャンバーアレイに構成される様々な寸法のウェルの吸光度を読取ることが可能である。また、ユーザは吸光度算出結果を基に、任意のウェル中の被検査試料を回収して、更に詳しい分析を行うことが可能である。
Claims (15)
- 複数のウェルが設けられたマイクロチャンバーアレイの各ウェル内に注入された試料の吸光度を読み取る吸光度読取装置において、
前記マイクロチャンバーアレイを載置するための試料台と、
光源と、
前記光源からの光が入射される分光器と、
前記分光器から出射された照射光の照度分布を調整するための照射用光学系と、
前記照射用光学系を透過した照射光を照射光径を拡大して前記試料台に載置された前記マイクロチャンバーアレイに照射するための視野レンズと、
試料透過光を受光するための片側テレセントリック光学系と、
前記片側テレセントリック光学系を介して受光した試料の透過光を画像データとして出力する撮像カメラとを備えることを特徴とする吸光度読取装置。 - 請求項1記載の吸光度読取装置において、前記照射用光学系を透過した照射光を前記マイクロチャンバーアレイの第2面から第1面に向って、又は第1面から第2面に向かって照射するよう誘導するためのミラーを設けたことを特徴とする吸光度読取装置。
- 請求項1又は2記載の吸光度読取装置において、前記ウェル内の試料を回収する試料回収機構を設けたことを特徴とする吸光度読取装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の吸光度読取装置において、前記マイクロチャンバーアレイ上のウェルの吸光度を1分以内で読取ることを特徴とする吸光度読取装置。
- 複数のウェルが設けられたマイクロチャンバーアレイの各ウェル内に注入された複数の試料の吸光度を読取るための吸光度読取装置を制御する方法において、
吸光度を読取るための照射光を発光する光源を制御するステップと、
吸光度を波長スキャンモード又は経時スキャンモードのいずれで読取るかを選択する読取モード選択ステップと、
照射光の波長を選択するために分光器を制御するステップと、
試料の吸光度を読取るための撮像カメラを制御するステップと、
撮像カメラによって読取った吸光度をデータベースに格納するステップと
を含むことを特徴とする吸光度読取装置制御方法。 - 請求項5記載の吸光度読取装置制御方法において、
試料の吸光度を読取るための撮像カメラの露光時間を設定するステップと、
吸光度を読取るための照射光の読取開始波長を設定するステップと、
吸光度を読取るための照射光の読取波長分解能を設定するステップと、
吸光度を読取るための読取時間を設定するステップと、
吸光度を読取るための読取回数を設定するステップと
を有することを特徴とする吸光度読取装置制御方法。 - 請求項5又6記載の吸光度読取装置制御方法において、
ゼロ補正用溶媒を読取るステップと、
被検査試料を読取るステップと
を有することを特徴とする吸光度読取装置制御方法。 - 請求項5〜7のいずれか1項記載の吸光度読取装置制御方法において、
吸光度読取装置で読取った吸光度算出の基となる画像データから吸光度算出のための画像データを指定するステップと、
指定された画像データの中から吸光度算出範囲を指定するステップと、
指定された吸光度算出範囲から吸光度算出を行うステップと
を有することを特徴とする吸光度読取装置制御方法。 - 請求項8記載の吸光度読取装置制御方法において、
前記吸光度算出のための画像データを指定するステップは、画像データとしてゼロ補正用溶媒の入ったマイクロチャンバーアレイの画像と被検査試料の入ったマイクロチャンバーアレイの画像とを表示するステップと、
前記ゼロ補正用溶媒と被検査試料の画像データのいずれかに対して吸光度算出範囲を指定するステップと
からなることを特徴とする吸光度読取装置制御方法。 - 請求項5〜9のいずれか1項記載の吸光度読取装置制御方法において、吸光度読取装置に依存する被検査試料上の光路長の差異を補正するための光路長補正ステップを有することを特徴とする吸光度読取装置制御方法。
- 請求項5〜10のいずれか1項記載の吸光度読取装置制御方法において、所望の被検査試料を回収するステップを有することを特徴とする吸光度読取装置制御方法。
- 請求項5〜11のいずれか1項記載の複数のステップを実行することを特徴とする吸光度算出プログラム。
- 吸光度読取装置に用いるマイクロチャンバーアレイであって、1ウェルは、縦0.03mm以上1mm以下、横0.03mm以上1mm以下であることを特徴とするマイクロチャンバーアレイ。
- 請求項13記載のマイクロチャンバーアレイにおいて、隣り合うウェル間の距離は、0.03mm以上1mm以下であることを特徴とするマイクロチャンバーアレイ。
- 請求項13又は14記載のマイクロチャンバーアレイにおいて、100以上10000以下のウェルを有することを特徴とするマイクロチャンバーアレイ。
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