JPS636613B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、外観及び化処処理性の優れた冷延鋼
板の製造方法に関する。 一般に、冷延鋼板は、ユーザーにおいて塗装し
て使用される場合が多く、その際そのほとんど
は、「塗装前処理」としてリン酸塩化成処理が施
されている。この場合、その処理液中での鋼板表
面の電気化学的な活性部分と不活性部分の存在バ
ランスが、その反応性に対して重要な因子とな
る。例えばリン酸亜鉛処理液中に鋼板を浸漬した
場合、その鋼板表面の化学反応における酸化還元
電位は、その対象により異なるが、一般的には第
１図の如く、鋼板表面の活性部分はリン酸塩処理
液中でAnodic（卑）となり、逆に不活性な部分は
Cathodic（貴）となることが知られている。 そこで、Anodicな所では、ピツクリング反応
により素地鉄が溶出（Fe→Fe⁺⁺＋2e）し、
Cathdicな所ではAnode反応による局部電流に支
配されてH⁺が還元されて水素ガスとして消失
（2H⁺＋2e→H₂）することから最終的にホープマ
イト（Zn₃（PO₄）₂・4H₂O）とホスホフイライト
（Zn₂Fe（PO₄）₂・4H₂O）とから成るリン酸亜鉛皮
膜が鋼板上に形成されるのである。 塗装板の塗料密着性や耐食性あるいは塗装後の
色調などの諸特性は、この化成処理皮膜の性状な
いし形成如何によつて大きく影響され、このこと
は化成処理の前段階における前処理の結果が大き
な要素となつてくる。 鋼板を化成処理するに際しての前処理のうちの
表面処理技術、特に連続焼鈍を利用した技術とし
ては、従来特開昭55−76017号及び特開昭55−
21533号公報に見られる如く、一般には連続焼鈍
プロセスの加熱帯の入口側、いわゆる洗浄セクシ
ヨンにおいて処理を施し、700℃前後で加熱処理
するのがほとんどである。 しかしながら、このような方式の場合、冷圧洗
浄後であつても、圧延油等の異物が完全にとり除
かれない場合が多く、その結果次の工程での金属
あるいは金属化合物を付着させる場面における付
着効率は極めて悪く、かつばらつきが大であると
いう欠点を有する。一般的には、この不都合を回
避する手段として当然の行為ではあるが洗浄能力
を高めたり、ブラツシング等の機械的研磨などの
手段をとることがあるが、この手段によつて付着
効率を上昇させ得たとしても、この時の鋼板表面
は一時的に極めて活性の高い状態となつているた
め熱処理中あるいはその前後の場面で酸化反応が
進行し鋼板表面は茶色あるいは青色に着色してし
まう。更には、次の工程である焼鈍炉において
700℃前後の温度に加熱するとき、塗布した金属
あるいは金属化合物は、パウダリングやハースロ
ールでのピツクアツプ等のトラブルを生じ易いと
いう欠点を有し実用化が難かしいのが実情であ
る。 本発明者らは、前述の従来方式とは観点を変え
て冷延鋼板を水焼き入れ方式により連続焼鈍する
際に、水焼き入れ−酸洗直後の鋼板表面が極めて
活性を有するものであることを巧みに利用して、 (1) Fe，NiまたはCoの水溶性化合物の水溶液の
少なくとも１種、と (2) クエン酸、グルコン酸、酢酸、ホウ酸または
酒石酸等のナトリウム塩又はカリウム塩の水溶
液の少なくとも１種 との混合物に鋼板を浸漬させ、鋼板表面に前記(1)
に由来する改質成分を付着させ、同時に(2)の酸化
防止剤の機能により鋼板表面の酸化着色を防止し
つつ過時効処理を行うことによつて該鋼板表面に
均一な金属層あるいは金属酸化物層を形成させ、
外観及び化成処理性の優れた冷延鋼板を製造する
方法に至つたのである。 本発明においてFe，NiまたはCoの水溶性化合
物を使用する理由は、最も付着性が良好でかつリ
ン酸塩処理性の優れた結果を与えるためである。 本発明では、前記金属ないし金属化合物の皮膜
を鋼板に対して緻密でかつ均一に分布付着させる
ことを目的とするが、そのためには酸洗後のきわ
めて清浄でかつ活性の高い時点で吸着あるいは置
換めつきを行わせることが必要である。この処理
を行うときの条件としては鋼板によつて必ずしも
一律にはできないが、薬液濃度５〜100ｇ／、
処理温度常温〜90℃、好ましくは10〜50ｇ／、
50〜90℃の条件下、約３秒間浸漬することにより
概ね所期の効果が得られ易い。 本発明では、上記の金属化合物とは別に処理液
中にクエン酸、グルコン酸、酢酸、ホウ酸または
酒石酸等のナトリウム塩又はカリウム塩の水溶液
の少なくとも一種の共存を必要とする。これらの
使用目的は、常温〜300℃での酸化防止作用にあ
り、後段の工程である過時効熱処理時には溶融・
揮発して消失するか残存したとしても経時的に鋼
板に悪影響を与えない程度の痕跡量となるような
ものであることが必要である。この目的のために
使用する前記ナトリウム塩又はカリウム塩水溶液
の量は、５〜50ｇ／の中から適宜選択する。 以上の如き構成からなる本発明を実施すること
により、通常の冷延鋼板と同等か、それ以上の良
好な外観を有し、しかもリン酸塩処理性の優れた
冷延鋼板を効率的に製造することができるのであ
る。 以下実施例によつて本発明を説明する。 実施例 第２図の如き水焼き入れ方式による連続焼鈍設
備を用いて、鋼板を水焼き入れ−酸洗い−前処理
−過時効処理−冷却の工程を経て巻きとり、以降
は従前の通りの方法によりリン酸亜鉛処理を行つ
てその性能を判定した。 尚、連続焼鈍設備の具体的データは次の通りで
ある。１…ペイオフリール、２…クリーニング装
置、３…入口側ルーパー、４及び５…加熱帯及び
均熱帯（いずれも700〜850℃に設定し、通算で60
〜120秒間となるようにセツト）、６…ガスジエツ
ト式一次冷却帯（400〜850℃に冷却）、７…水焼
き入れ装置、８…前処理装置（酸洗：50℃HCl、
５秒→湯洗：50℃、５秒→処理：常温〜90℃、５
秒→湯洗：50℃10秒）、９…過時効処理帯（200〜
500℃、90〜150秒）、１０…最終冷却帯（100℃）、
１１…出口側ルーパー、１２…テンパーロール、
１３…巻きとりリール。 リン酸亜鉛処理は、スプレー方法とデイツプ方
法の両方法を試みそれぞれの処理性を判定し、最
終的にはカチオン型電着塗装を行つたのち温水噴
霧を行い塗装後の耐食性についても調査した。 表によつて明らかなように、本発明方法に従つ
て得た冷延鋼板は、従来材ないし他焼鈍プロセス
によつて得た鋼板に比較して、外観、化成処理性
が著しく向上していることが認められる。

【表】 つた。その後、クロスカツト部
をテープ剥離し、その剥離巾を測定した。

【図面の簡単な説明】

第１図は、鋼板表面の電気化学的バランスをモ
デル的に示した説明図であり、第２図は、水焼き
入れ方式による連続焼鈍設備のブロツク図であ
る。 ２……クリーニング装置、４……加熱帯、５…
…均熱帯、６……冷却帯、７……水焼き入れ装置
（酸洗浄装置を含む）、８……前処理装置、９……
過時効処理帯、１０……最終冷却帯。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 鋼板の連続焼鈍において、(1)Fe，Ni又はCo
   の水溶性化合物の水溶液の少なくとも１種と、(2)
   クエン酸、グリコン酸、酢酸、ホウ酸又は酒石酸
   のナトリウム塩又はカリウム塩の水溶液の少なく
   とも１種との混合溶液中に鋼板を浸漬させたの
   ち、過時効処理を行うことを特徴とする外観及び
   化成処理性の優れた冷延鋼板の製造方法。