JPS6350425Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、ピストン上面に対向するシリンダヘ
ツド内壁面に部分的に凹部を設けてコンパクトな
燃焼室を形成するようにしたエンジンの燃焼室構
造の改良に関するものである。

（従来技術） 従来から、火花点火式のエンジンにおいて、特
開昭50−107309号公報にみられるように、ピスト
ン上面と対向するシリンダヘツド内壁に部分的に
凹部を設け、ピストンが上死点にあるときのシリ
ンダヘツド内壁面に、上記凹部からなる燃焼室と
微少間隙のスキツシユゾーンとを形成するととも
に、上記燃焼室およびスキツシユゾーンに吸、排
気ポートをそれぞれ開口させた燃焼室構造が知ら
れている。この構造によれば、クイツクバーン
（速やかな燃焼）によりノツキングを防止し、高
圧縮比化が可能になるというメリツトがある。つ
まピストン上面とシリンダヘツド内面との対向部
分全体に偏平な燃焼室が形成されるようにした一
般の構造と比べ、上記のように部分的にコンパク
トな燃焼室を形成した構造によると火炎の伝播距
離が短くなり、スキツシユゾーンからのスキツシ
ユ流により火炎の伝播が促進されることと相俟つ
て、短時間で火炎を燃焼室全体にゆき渡らせるこ
とができる。このため、ノツキング防止に有利に
なり、またこのことから、圧縮比を一般的な構造
のものよりも高めることが可能になり、出力およ
び燃費を向上することができる。

ところで、前記公報に示された構造ではシリン
ダヘツドに形成された燃焼室の側面に点火プラグ
が配置されているが、火炎伝播距離を短くしてク
イツクバーンを図るという効果を高める意味で、
点火プラグの位置はできるだけ燃焼室中央に近づ
けることが望ましく、また着火性の面からも、燃
焼室側面に沿つた強いスワールにさらされる部分
を避けて点火プラグを配置することが望ましい。

ただし、ピストン上面との対向部分の周辺に設
けられるガスケツト等との関係で上記燃焼室の位
置は制限され、かつ、燃焼室がコンパクトでその
大部分の範囲に吸気用または排気用のポートが開
口するためこれを避けて点火プラグを配置する必
要があり、これらの制約から、従来この種の燃焼
室構造では前記のような位置に点火プラグが設け
られていた。

（考案の目的） 本考案はこのような事情に鑑み、シリンダヘツ
ドにコンパクトな燃焼室を形成した構造におい
て、ガスケツトおよびバブルポート等による制約
のもとでできるだけ点火プラグを燃焼室中心に近
づけ、その上、点火プラグからの距離が遠い燃焼
室端部への火炎伝播時間を短縮して、より一層の
クイツクバーンを図るとともに着火性を向上する
ことを目的とするものである。

（考案の構成） 本考案は、ピストン上面と対向するシリンダヘ
ツド内壁に部分的に凹部を設け、ピストンが上死
点にあるときのシリンダヘツド内壁面とピストン
上面との間に、上記凹部からなる燃焼室と微少間
隙のスキツシユゾーンとを形成し、上記スキツシ
ユゾーンに吸気ポートを開口させ、上記燃焼室の
上面に排気ポートと点火プラグを有するプラグ孔
とを開口させるとともに、上記プラグ孔に対し上
記排気ポートと反対側でかつ上記点火プラグに近
接した位置にある上記燃焼室の側面に、その下端
開口部付近を除く燃焼室側壁を外方に向けて抉つ
た形の窪み部を設けたものである。

つまり、点火プラグを燃焼室の容積中心に近づ
けることにより、最大火炎伝播距離を短くし、さ
らに排気ポートの熱を利用して、火炎伝播距離が
長くなる方向の火炎伝播距離時間を短縮する構造
としたものである。

（実施例） 第１図ないし第４図において、１はシリンダヘ
ツド、２はシリンダブロツク、３はピストンであ
り、上記ピストン３の上面と対向するシリンダヘ
ツド１の内壁には部分的に凹部４が設けられ、ピ
ストン３が上死点にあるときのシリンダヘツド１
内壁面とピストン３上面との間に、上記凹部４か
らなる燃焼室５とこれに隣接した微少間隙のスキ
ツシユゾーン６とが形成されるようにしている。
また、吸気ポートおよび排気ポート８は、それぞ
れの開口面積を大きくとることができるようにす
るため、一方のポートが上記燃焼室５に開口して
他方のポートがスキツシユゾーン６に開口するよ
うに配設され、とくに火炎伝播時間短縮のため、
排気ポート８が燃焼室５に、吸気ポート７がスキ
ツシユゾーン６にそれぞれ開口するように配設さ
れている。この各ポート７，８には吸気弁９およ
び排気弁１０がそれぞれ装備されている。

上記吸気ポート７はシリンダヘツド１の一側面
に開口する吸気通路１１に、排気ポート８はシリ
ンダヘツド１の他側面に開口する排気通路１２に
それぞれ連通している。上記吸気通路１１は、第
１図および第４図に示すように、吸気ポート７の
開口部近傍で隔壁１３によつて低負荷用吸気通路
１１ａと高負荷用吸気通路１１ｂとに区画され、
高負荷用吸気通路１１ｂには開閉弁１４が設けら
れている。そしてこの開閉弁１４がアクチユエー
タ（図示せず）によつてエンジンの低負荷時に閉
作動され、低負荷時には低負荷用吸気通路１１ａ
のみから吸気が供給されるようにしている。この
低負荷用吸気通路１１ａは、シリンダの円周方向
に向けて開口し、シリンダ内への吸気導入時にス
ワールを生じさせないようにしてある。

また、１６はプラグ孔、１７は該プラグ孔１６
に配設した点火プラグであつて、上記プラグ孔１
６は、燃焼室５における排気ポート８の開口部分
を避けて燃焼室５の側辺付近の上面に開口し、こ
の開口部に点火プラグ１７の先端が位置するよう
に点火プラグ１７がプラグ孔１６に取付けられて
いる。このプラグ孔１６に対し上記排気ポート８
と反対側でかつ上記点火プラグ１７に近接した位
置における上記燃焼室５の側面の所定範囲には、
第１図に破線で示すとともに第３図に断面で示す
ような窪み部１８が設けられている。この窪み部
１８は、第３図に示すように燃焼室５の下端開口
部付近を除く側壁を外方に抉つた形としている。
また、燃焼室５側面に沿つたスワールがスムーズ
に上記窪み部１８に導入されるように、第１図に
おいて上記窪み部１８の形成範囲両端１８ａ，１
８ｂ付近では窪み部１８が燃焼室５のほぼ接線方
向に形成されて、窪み部１８を有しない燃焼室５
側面となめらかに連なつている。そして、点火プ
ラグ１７に近い位置ほど窪み部１８が深く抉られ
た形に形成されている。なお、燃焼室５のシリン
ダ円周方向両側の部分では、その側壁下端に湾曲
面５ａ，５ｂを設けてなめらかにスキツシユゾー
ン６のシリンダヘツド面に連なるようにしてい
る。

この燃焼室構造においては、圧縮行程から燃焼
行程への移行時においてピストン３が上死点に達
したとき、スキツシユゾーン６からコンパクトな
燃焼室５に混合気が流入して燃焼室５内が高圧縮
されるとともに燃焼室５内に気流が生じ、この状
態で点火プラグ１７によつて着火が行われ、その
火炎が燃焼室５全体に伝播される。この場合に、
燃焼室５の上面に点火プラグ１７が配置され、か
つ、その付近の燃焼室５側面に前記窪み部１８が
設けられていることにより、配置上の制約を満足
しながら、速やかで効率の良い燃焼を行わせるこ
とができる。つまり、コンパクトな燃焼室５にお
いてその上面の大部分は排気ポート８によつて占
められることから、その側方における燃焼室５上
面に点火プラグ１７が配置され、またこの点火プ
ラグ１７付近において、燃焼室５の下端開口部を
外方にずらすことは図外のガスケツト等との関係
で好ましくないことから、この下端開口部付近を
除く側面に前記窪み部１８が形成されている。そ
してこの窪み部１８により、点火プラグ１７とこ
れに近接する燃焼室５側面との間にもスペースを
もたせていることにより、点火プラグ１７の周囲
全体に火炎が伝播されて燃焼効率が高められると
ともに、点火プラグ１７が燃焼室５の容積中心に
近づけられ、上記窪み部１８を有しないものと比
べ、燃焼室５を同一容積とした場合でも最大火炎
伝播距離が短くなる。さらに、このようにしても
点火プラグ１７から排気ポート８を横切る方向は
他の方向と比べると火炎伝播距離が長くなるが、
この方向への火炎伝播は排気ポート８からの熱で
促進されて火炎伝播時間が短縮されることによ
り、点火プラグ１７から燃焼室端部に至るまでの
火炎伝播時間の、火炎伝播方向によるばらつきが
より小さくされる。これらの作用で、火炎が燃焼
室５全体にゆき渡るまでの時間が短縮されること
となる。

また、このように燃焼室５に排気ポート８と点
火プラグ１７のプラグ孔１６とを設ける場合に、
排気ポート８に点火プラグ１７が接近し過ぎると
熱害を受けるおそれがあるが、点火プラグ１７付
近に上記窪み部１８が設けられていることによつ
てスペース的余裕ができるので、点火プラグ１７
を排気ポート８に接近し過ぎないように配置する
ことができる。また着火性の面からも、燃焼室５
の側壁に沿つた強いスワールに直接さらされるよ
うな位置を避けて点火プラグ１７を設けることが
望ましいが、前記のような点火プラグ１７の配置
および窪み部１８の存在によつてこのような要求
も満足される。さらに上記窪み部１８は、点火プ
ラグ１７付近に乱流を生じさせることによつても
燃焼性を向上し、また着火前においてはこの部分
に導入される吸気によつて点火プラグ１７を掃気
する作用も行なう。

（考案の効果） 以上のように本考案は、ピストン上面と対向す
るシリンダヘツド内壁に部分的にコンパクトな燃
焼室を設け、この燃焼室に吸、排気ポートのうち
の一方を開口させるとともにこれを避けて点火プ
ラグを装備する構造において、上記燃焼室に排気
ポートおよび点火プラグのプラグ孔を配設し、こ
のプラグ孔に対し排気ポートと反対側の燃焼室側
壁に窪み部を設けているため、燃焼室の容積中心
を点火プラグに近づけるとともに、排気ポートか
らの熱を利用して、火炎伝播距離が長い方向の火
炎伝播時間を短縮し、これらの作用で全体の燃焼
時間を短くし、燃焼性を改善することができる。
そしてクイツクバーンによるノツキング防止効果
が高めるので、より一層高圧縮比化が可能とな
る。しかも、上記のように排気ポートの熱を利用
して火炎伝播の促進を図りつつ、点火プラグが排
気ポートに接近し過ぎることを避けて熱害を回避
し、また、点火プラグの掃気性を向上することが
できる等の効果も有するものである。

【図面の簡単な説明】

図は本考案の実施例を示すもので、第１図はシ
リンダヘツドの部分底面図、第２図は第１図の
−線に沿つた断面図、第３図は第１図の−
線に沿つた断面図、第４図は第１図の−線に
沿つた断面図である。 １…シリンダヘツド、３…ピストン、４…凹
部、５…燃焼室、６…スキツシユゾーン、７…吸
気ポート、８…排気ポート、１６…プラグ孔、１
７…点火プラグ、１８…窪み部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストン上面と対向するシリンダヘツド内壁に
   部分的に凹部を設け、ピストンが上死点にあると
   きのシリンダヘツド内壁面とピストン上面との間
   に、上記凹部からなる燃焼室と微少間隙のスキツ
   シユゾーンとを形成し、上記スキツシユゾーンに
   吸気ポートを開口させ、上記燃焼室の上面に排気
   ポートと点火プラグを有するプラグ孔とを開口さ
   せるとともに、上記プラグ孔に対し上記排気ポー
   トと反対側でかつ上記点火プラグに近接した位置
   にある上記燃焼室の側面に、その下端開口部付近
   を除く燃焼室側壁を外方に向けて抉つた形の窪み
   部を設けたことを特徴とするエンジンの燃焼室構
   造。