JPS6341538Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、副掃気ポートを備えた２サイクル
エンジンに関するものである。

従来、第４図に示すように、シリンダ４１の内
面に主掃気ポート４２のほかに副掃気ポート４３
を設けて、掃気効率を向上させようとしたものが
実施されているが、上記両掃気ポート４２，４３
は、上部に隔壁４４を有する共通の掃気通路４５
によりクランク室４６に連通されているために、
主掃気ポート４２よりも早いタイミングで開放さ
れる副掃気ポート４３からの吹き返しガス４７
は、クランク室４６へ達することなく、上記隔壁
４４の下側から回り込んで主掃気ポート４２へ流
出してしまい、何ら有効に利用されることがなか
つた。

また、実開昭55−88017号公報に開示されてい
るように、複数の掃気ポートを上記のような共通
の掃気通路ではなく、独立した個別の掃気通路に
よりクランク室に連通させた構成が従来より知ら
れているが、この構成では上記複数の掃気ポート
の開放タイミングが同一に設定されているので、
掃気ポートからの吹き返しガスは掃気通路内で往
復移動するだけで、やはり有効に利用されない。

この考案は上記事情に鑑みてなされたもので、
副掃気ポートからの吹き返しガスを積極的に利用
してクランク室４６の圧力および温度を上昇させ
ることにより、燃焼効率の向上を図ることを目的
とする。

以下、この考案の実施例を図面にしたがつて説
明する。

第１図において、シリンダ１１の内面に排気ポ
ート１２と主掃気ポート１３とこの主掃気ポート
１３よりも開口面積が小さい副掃気ポート１４と
が設けられ、この副掃気ポート１４は、排気ポー
ト１２に対してシリンダ１１の周方向へほぼ180゜
離間した位置に設定されている。上記副掃気ポー
ト１４の上端は、排気ポート１２の上端よりも寸
法ａだけ低く、主掃気ポート１３の上端よりも寸
法ｂだけ高く、かつ、ａがｂより小さくなるよう
に設定されており、これにより、ピストン１５の
下降運動で上記副掃気ポート１４が主掃気ポート
１３よりも早くて排気ポート１２よりも遅く、か
つ、主掃気ポート１３と排気ポート１２の開放タ
イミングの中間よりも早く開放されるようになつ
ている。

上記主掃気ポート１３は主掃気通路１７によ
り、上記副掃気ポート１４は副掃気通路１８によ
り、それぞれクランク室１９に連通されており、
上記両通路１７，１８は互いに連通しないように
分離された状態、すなわち、独立の状態に設定さ
れ、そのクランク室１９への開口部２０，２１は
互いに所定間隔だけ離れて位置している。なお、
２２は吸入口、２３はクランクアーム、２４はコ
ンロツドである。

上記構成において、燃料と空気の混合気２５は
吸入口２２からクランク室１９内へ吸引され、ピ
ストン１５の下降運動により圧縮されたのち、掃
気２６として、主掃気通路１７および副掃気通路
１８から燃焼室２７内へ吹き込まれる。このと
き、ピストン１５により、排気ポート１２が開放
された直後に副掃気ポート１４が開放されるが、
この副掃気ポート１４が開放された時点では、ク
ランク室１９の圧力よりも燃焼室２７の圧力の方
が高いので、副掃気ポート１４からクランク室１
９へ圧力が伝播され、クランク室１９の圧力が高
められる。この状態で、ひき続いて主掃気ポート
１３が開放されると、掃気２６はクランク室１９
の高圧力を受けて、主掃気ポート１３から燃焼室
２７内へ吹き込まれ、掃気初期の既燃ガスを排気
ポート１２から外部へ円滑に排出する。その後
は、副掃気ポート１４からも掃気２６が燃焼室２
７内へ吹き込まれる。

また、上記副掃気ポート１４からの吹き返しガ
ス２９は副掃気通路１８を通つてクランク室１９
へ入り、クランク室１９内の混合気２５を加熱し
て、混合気２５の霧化を促進する。さらに、排気
ポート１２が開放された直後に燃焼室２７内に存
在する未燃ガスは、副掃気ポート１４から上記吹
き返しガス２９に混じつてクランク室１９内へ回
収され、排気ポート１２から外部へ逃げる未燃ガ
スの量が少なくなる。

ここで、上記副掃気ポート１４を排気ポート１
２に近接させると、つまり、ａを小さくしておく
と、圧力の高い吹き返しガス２９が得られるので
有利であり、また、副掃気ポート１４を主掃気ポ
ート１３よりも十分離間させておくと、つまり、
ｂを大きくしておくと、副掃気ポート１４が開放
されたのち主掃気ポート１２が開放されるまでの
時間が長くなるので、副掃気ポート１４から副掃
気通路１８内へ入つた吹き返しガスの圧力波が、
主掃気ポート１３の開放前に、確実にクランク室
１９へ達してこのクランク室１９内の混合気２５
を十分加熱する。

このような事情から、この考案ではａ＜ｂ、す
なわち、副掃気ポート１４が主掃気ポート１３と
排気ポート１２の開放タイミングの中間よりも早
く開放されるように設定しており、これによつ
て、上記した高い圧力の吹き返しガス２９を得な
がら、この吹き返しガス２９がクランク室１９内
へ達するのを保証して、クランク室１９内の混合
気２５を有効に加熱することができる。

また、副掃気ポート１４が排気ポート１２に対
向する位置、すなわち、シリンダ１１の周方向へ
ほぼ180゜離間した位置に設定されているので、排
気ポート１２が開放された直後に燃焼室２７内に
おける排気ポート１２と反対側の奥部（左側）に
滞留しようとする未燃ガスが副掃気ポート１４か
ら有効に回収される。

第２図はこの考案の第２の実施例を示すもの
で、副掃気通路１８のクランク室１９への開口部
２１が、クランク室１９の底部に設定されてい
る。これによれば、副掃気通路１８からの吹き返
しガス２９により、クランク室１９の底部に溜ま
つた燃料の気化が促進されるので、未気化燃料の
混入に起因するエンジン急加速時の排気白煙がな
くなり、公害対策上好ましい。なお、この例で
は、副掃気通路１８が長くなるので、副掃気ポー
ト１４からの圧力波が、主掃気ポート１３の開放
前にクランク室１９へ達するように、両ポート１
３，１４の間隔ｂが大きく設定されている。

第３図は、この考案の第３の実施例を示すもの
で、副掃気通路１８に燃焼室２７からクランク室
１９へのみの流通を許す逆止弁４８を設けてい
る。主掃気通路１７の通路面積を十分確保できる
場合には、このような逆止弁４８により副掃気ポ
ート１４からの掃気を行なわないようにして、掃
気行程後期において余分な混合気が排気ポート１
２から外部へ無駄に吹き抜ける、いわゆる新気吹
き抜けを防止している。

第２図および第３図においても、副掃気ポート
１４は排気ポート１２に対してほぼ180゜離間して
いる。

以上説明したように、この考案によれば、既燃
ガスを排気ポートから外部へ円滑に排出すること
ができるとともに、クランク室内の混合気の霧化
が促進され、かつ、未燃ガスがクランク室内へ有
効に回収されるので、エンジンの燃焼効率が向上
し、それだけ燃料消費率が改善される。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の第１の実施例を示す縦断面
図、第２図は第２の実施例を示す縦断面図、第３
図は第３の実施例を示す縦断面図、第４図は従来
例を示す概略構成図である。 １１……シリンダ、１２……排気ポート、１３
……主掃気ポート、１４……副掃気ポート、１７
……主掃気通路、１８……副掃気通路、１９……
クランク室、４８……逆止弁。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) シリンダの内面に排気ポートと主掃気ポート
   とこの主掃気ポートよりも開口面積が小さい副
   掃気ポートとを設けて、ピストンにより上記副
   掃気ポートが主掃気ポートよりも早くて排気ポ
   ートよりも遅く、かつ、主掃気ポートと排気ポ
   ートの開放タイミングの中間よりも早く開放さ
   れるように設定するとともに、上記主掃気ポー
   トと副掃気ポートを、それぞれ独立した主掃気
   通路と副掃気通路によりクランク室に連通さ
   せ、上記副掃気ポートは、排気ポートに対し
   て、シリンダの周方向へほぼ180゜離間した位置
   に設定されてなる２サイクルエンジン。 (2) 副掃気通路のクランク室への開口部は、クラ
   ンク室の底部に設定されている実用新案登録請
   求の範囲第１項記載の２サイクルエンジン。