JPS6339258B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は約200℃の高温から液体窒素温度約
−196℃の極低温で使用可能な耐熱耐極低温性容
器に関し、特に赤血球、血小板、血漿等の血液成
分及び細菌、酵素その他の生理学的溶液又は食
品、薬品等の冷凍保存用等に適したプラスチツク
容器に関する。

従来、血液の保存方法として、ACD抗凝固剤
による血液保存法（ACD溶液を収容したガラス
びん又は軟質塩化ビニール製容器中で保存する方
法）、緩速凍結法（−80〜−85℃で軟質塩化ビニ
ル製容器中で保存する方法）等が知られている
が、前者の方法は保存中に血液の代謝が進行し、
血液の使用可能期間が採血後21日間と短く、後者
の方法は高濃度グリセリン等の凍害防止剤を添加
するため、使用時その洗浄によつて赤血球回収率
が低くなり、赤血球の質も数年で低下してしまう
などの欠点があり、いずれの方法も長期間の血液
保存法としては適していない。

そのため、血液成分等の生理学的溶液を液体窒
素中で瞬間凍結し、−150〜−200℃程度の極低温
下で保存する急速凍結保存法が開発されている。
しかし、この場合、このような極低温に耐え、か
つ高温滅菌処理が可能で、しかも使用上簡便な保
存用容器が必要となる。たとえば従来の血液保存
用に使用されている軟質塩化ビニル製容器は−
196℃の極低温においては耐性を有せず、凍結時
において、僅かな衝撃によつても亀裂が生じてし
まう。また、アルミニウム、ステンレススチール
等の金属製の容器は加工上、容器の注出入口の封
緘・開封が困難となり、容器内に液体窒素が流入
してしまうおそれもあり、又不透明な為保存液の
状態を外から見ることができず、取り出す前に保
存液の良否が確認できないという問題があると共
に、製造費が高価となる。

耐高低温性の良好な高分子材料として弗素系樹
脂及びポリイミドが知られており、内層４弗化エ
チレン−６弗化プロピレン共重合体、外層ポリピ
ロメリツトイミド積層体から成る袋状容器が血液
の冷凍保存に使用されている例もある。特にポリ
イミドはほとんど融点を示さない耐熱性と液体へ
リウム温度（４〓）においても柔軟性を有する極
低温耐性を有しており、すぐれた材料と言える
が、ポリイミドは透明ではあるが褐色に強く着色
している為に内容物によつては外部からの透視が
不可能である。又ポリイミドは高分子材料の中で
も最も熱伝導率が低いものの一つで、保存内容液
の回収率・性能に影響する凍結スピードが遅くな
る事や、ヒートシール等の条件がきびしくなりシ
ール不良等のトラブルの原因ともなつている。又
ポリイミドは価格の点で非常に高価である。

この本発明は上記事情に鑑みてなされたもので
あつて、200℃程度の高温および−200℃程度の極
低温での使用に耐えることができ、また急速凍
結、急速解凍における急激な温度変化にも耐える
ことができ、かつ製造上簡単であり、収容する生
理学的溶液に対し悪影響を及ぼすおそれのなく、
透明性が良好で比較的安価な容器を提供すること
を目的とする。

すなわち、この発明はエチレン−４弗化エチレ
ン共重合体又は４弗化エチレン−６弗化プロピレ
ン共重合体からなる内層と該内層の外側に積層さ
れたポリパラバン酸樹脂層とによつて形成されて
いることを特徴とする耐熱・耐極低温性容器を提
供するものである。

本発明で用いるポリパラバン酸樹脂は熱伝導率
がポリイミド樹脂の２〜３倍と高くポリイミドの
持つ欠点が少く、又淡い黄色に着色しているが
Haze値は50μフイルムで1.3〜1.4％とすぐれた透
明性を有し、ガラス転移点も290℃で耐熱性も良
好である。更にポリイミドと異なつてポリパラバ
ン酸樹脂は熱可塑性であり、真空成型等で賦形す
ることが可能であり、従来チユーブ等の注出・入
用口部の取付けが困難であつた点も改良されるな
ど利点が大である。又耐低温性の点ではポリイミ
ドと比べても実用上遜色なく−200℃においても
柔軟性を有し、本発明の目的とする約200℃ない
し−200℃の範囲での使用上全く問題ない。

内層材としてのエチレン−４弗化エチレン共重
合体（ETFE）及び４弗化エチレン−６弗化プロ
ピレン共重合体（FEP）はそれぞれ265〜270℃
及び260〜280℃という適度な融点を有し、200℃
までの高温滅菌操作に充分適合すると共に、融点
以上300℃以下の条件で比較的容易に熱融着が可
能で、外層にポリパラバン酸フイルムを積層する
ことによつてバーシール法等通常の方法でシール
可能である。ETFE、FEPはそれぞれ−196℃の
極低温において柔軟で良好な物理的性質を保持
し、又毒性も少く衛生性も良く、化学的にも安定
で長期間赤血球等を保存したとしても内容物の変
質等悪影響はほとんど問題とならない。

この発明で用いられる内層ETFE又はFEPの厚
みはシール強度、耐ピンホール性の点から0.025
mm以上が好ましく、また、急速凍結を容易にする
ための観点から0.075mm以下とすることが好まし
い。又外層のポリパラバン酸は0.012〜0.075mmの
範囲で用いることが好ましいが、容器シール部の
安定性、強度および熱伝導性から内層ETFE又は
FEPは比較的厚くし、ポリパラバン酸樹脂外層
は比較的薄くするようにして積層し、かつ全体の
厚みが0.125mm以下が好ましく、0.100mm以下とす
ることが更に好ましい。

ETFE及びFEPは単層のフイルムとして袋状に
することも可能であるが、急速冷凍に適する
0.100mm以下の厚みでは、ヒートシール又はイン
パルスシール時の熱と圧力によつてシール部分が
薄くなつて、この部分が切れ易くなりシール強度
が得られないおそれがあり、またシール時にフイ
ルムがシールバーへ付着して連続的に安定したシ
ール作業が困難となり、シール面も汚れるおそれ
がある。その為、この発明においてはこのETFE
又はFEPの外側にポリパラバン酸樹脂を積層す
ることによつて、これらの問題の解決した。

ポリパラバン酸樹脂は本質的には熱可塑性樹脂
であるがポリイミドと大差ない著しい耐熱性を有
し、かつ非常に強じんな物性を有するから、シー
ル時にシールバーへ付着することなく、内層
ETFE又はFEPフイルムのシール部分の薄膜化を
最小限に抑えることが可能となり、さらにポリパ
ラバン酸樹脂は同じ厚さのETFE又はFEPフイル
ムの２〜８倍の引張降伏強度を有しているから、
容器全体の強度を著しく増大させることができ、
低温での手荒な扱いによつても容器は破損しない
ようにすることができる。

この様な積層体シートを作るにはETFE又は
FEPフイルム内層１と外層のポリパラバン酸フ
イルム２とをまず耐熱性、耐極低温性の反応硬化
型接着剤３たとえばポリエステル系、ポリウレタ
ン系あるいはエポキシ系接着剤を用いて接着すれ
ば良い。

この積層体を用いて袋状容器とする場合、第１
図に示すように、この積層体のETFE又はFEPフ
イルム１面が相接するように重ね合わせ、かつ、
その間の適当個所に液体注入口、注出口４を介在
させた条件で周囲をヒートシールすれば袋状の容
器とすることができる。又第２図に示すように本
積層体を真空成型法又は圧空成形法を用いて10mm
程度の浅絞りを行いかつシール部の注入口、注出
口をチユーブ状に成形した後、ETFE又はFEPフ
イルム１面が相接するように重ね合わせて周囲を
ヒートシールすることにより、特別の注入口・注
出口なしで、液体の収納に便利な容器とすること
ができる。この容器は血液等を収容する場合、あ
らかじめ蒸気滅菌あるいは乾熱滅菌処理して使用
に供せられる。

実施例 １ 片面をコロナ放電処理した厚さ0.05mmのエチレ
ン−４弗化エチレンコーポリマーフイルム（旭硝
子(株)製アフレツクス、４弗化エチレンがモル比で
40〜60％のもの）とポリエステルイソシアネート
系接着剤を3.5ｇ／m²塗布した厚さ0.025mmのポリ
パラバン酸フイルム（Exxon Chemical社製
TRADLON）を貼り合せ、２層の積層フイルム
を得た。これにエチレン−４弗化エチレンコーポ
リマー製のチユーブ状注出・注入用口部を取りつ
け、ETFE層を内側にして熱封緘し、400ml用袋
状容器（実容量1000ml）を得た。この袋を180℃
−１時間乾熱滅菌した後、赤血球濃厚液400mlを
入れ、さらに29％グリセリン液400mlを加えた後、
口部を熱封緘し、激しく震盪して混合した後、ア
ルミ製ホルダーで袋体の厚みを20mmに規制しつつ
液体窒素槽に垂直に投入し、瞬間凍結させた。凍
結は約２分で完了した。凍結した血液バツグをホ
ルダーからはずして液体窒素保存槽に移し換え２
日間−150℃以下で保存した後、＋40℃の温水中で
震蘯しつつ解凍した。これらの工程中急激な温度
変化及び衝撃を受けたにもかかわらず本発明によ
る袋体は破損、シール部の剥離、内容物の流出等
の問題はなく良好であつた。また−150℃で６ケ
月間保存後解凍したところ赤血球回収率も問題は
なかつた。さらに、この実施例で得た袋体につい
て急性毒性試験溶出物試験、発熱性物質試験、微
生物透過試験を所定の方法でおこなつた結果、全
く異常は認められなかつた。

実施例 ２ 片面を接着処理した厚さ0.051mmの４弗化エチ
レン−６弗化プロピレン共重合体フイルム
（DuPont社製テフロンFEP−Ｃタイプ）とポリ
エステルイソシアネート系接着剤を3.8ｇ／m²塗
布した厚さ0.050mmのポリパラバン酸フイルムを
貼り合わせ２層の積層シートを得た。これを深さ
５mmでシール部を全周につば状に有し、シール部
の一部が半円状に絞られたトレイ状型を用いて
FEPを内側として圧空成形成し、得られたトレ
イ状成形シートをFEP面が相接するように重ね
合わせて周囲を熱封緘し容量400mlの容器を得た。
これに水：グリセリン＝１：１の溶液を380ml充
填したのち、シール部に設けられていたチユーブ
状注入・出口部を熱緘し、これを液体窒素中での
瞬間凍結、40℃温水中での解凍を３回繰返し、サ
ーマルシヨツクテストをおこない、シール部の剥
離の発生及び破損の有無を調べた。

その結果凍結に至る時間はいずれも３分以内で
良好であり、かつシール部の剥離、容器の破損は
なく良好であつた。

以上詳述した様に本発明に係わる耐熱耐極低温
性容器はヒートシール性が良好で製造上も簡単で
あり、しかも200℃の高温滅菌操作に耐えさらに
−200℃の極低温下でも柔軟性および十分な機械
的強度を有し、さらに毒性等の問題もないなど
種々の利点を有し、更に従来のポリイミド積層体
ではなし得なかつたアンプル状の成形等も可能に
なるなど生理学的溶液類の低温保存用容器として
好適なものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示し、第１図は袋状容
器の断面図、第２図ａは圧空成型した積層シート
の斜視図、ｂはａのシートを重ねてヒートシール
して得た容器の平面図、ｃはその断面図である。 １……内層、２……外層、３……接着剤、４…
…液体注出入口。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ エチレン−４弗化エチレン共重合体又は４弗
   化エチレン−６弗化プロピレン共重合体からなる
   内層と、該内層の外側に積層されたポリパラバン
   酸樹脂層とによつて形成されていることを特徴と
   する耐熱耐極低温性容器。 ２ 内層が0.025〜0.075mmの厚みを有することを
   特長とする前記第１項記載の容器。 ３ 外層が0.012〜0.075mmの厚みを有することを
   特長とする前記第１項又は第２項記載の容器。