JPS6254161B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

産業上の利用分野 本発明は、鉄を最外層として有する複合粉およ
びその製造方法に関するものである。特には摩擦
材、軸受材等の自己潤滑性鉄系圧粉焼結体におい
て有用に使用されうる鉄被覆複合粉及びその製造
方法に関する。 従来技術とその問題点 従来、自己潤滑性鉄系圧粉焼結体の製造におい
ては、黒鉛、二硫化モリブデン、ボロンナイトラ
イド等に代表される固体潤滑材と鉄粉とを混合
し、それを加圧成形しそして焼結する方法が試み
られたが、固体潤滑材を鉄粉中に均質に分散させ
ることが難しくまた両者の焼結性が悪いため高い
強度の焼結材料が得られなかつた。 そこで、固体潤滑剤と鉄粉とを混合する代り
に、固体潤滑材粉に鉄をめつきした鉄被覆複合粉
の使用が考慮された。しかし、鉄を固体潤滑剤粉
に直接めつきすることはきわめて難しく、鉄ペン
タカーボニルの熱分解による直接被覆法も報告さ
れてはいるが、工程管理が難しくまたコスト高と
なつた。更に、特開昭54−76768号は、金属硫化
物粒子の表面に白金族金属層を被覆してその表面
活性化を行い、その後鉄、銅、ニツケル或いはコ
バルトを被覆する技術を開示する。白金族金属層
の被覆法として、NO、NO₂、NO₃及びNOClから
選択される一種の根を含む白金族化合物の熱分解
が特に好ましいとされている。この技術によつて
白金族金属被覆上に鉄を被覆することは出来る
が、鉄は銅やニツケルに較べてめつきが難しいだ
けに、充分に密着性のある一様な被覆を得ること
は必ずしも完全には保証されなかつた。貴金属塩
の熱分解法を用いた場合、得られる面は微粉状で
ある。従つて、鉄をめつきすべき下地面としては
理想的とは云えない。めつき困難な鉄を密着性良
くめつきするには、平滑に金属化された面を下地
として形成することが理想的である。 最近、二硫化モリブデン或いはボロンナイトラ
イドを含有する鉄系圧粉焼結体への関心が高まつ
ており、そのためにはそれらに密着性よく鉄を被
覆した複合粉の開発がぜひとも必要である。 発明の目的 本発明は、一般的なめつき技術を使用して二硫
化モリブデン或いはボロンナイトライドを芯体と
する鉄被覆複合粉を製造する技術の確立を目的と
する。 発明の概要 二硫化モリブデン或いはボロンナイトライド粉
体へ一般的めつき技術により鉄を直接めつきする
ことはきわめて困難である。そこで、本発明者等
は中間金属層を介在させ、その上に最外層として
鉄をめつきすることを想到し、検討を重ねた。そ
の結果、 (i) スズ、ニツケル及び銅は貴金属塩により活性
化処理した二硫化モリブデン或いはボロンナイ
トライド芯粉体に密着性よく被覆可能であるこ
と、 (ii) 上記スズ、ニツケル及び銅から選択される中
間層は鉄に対する良好なめつき面を提供し、塩
化鉄を用いてのセメンテーシヨン技術により鉄
が被覆可能であること、 (iii) 芯粉体−中間層及び中間層−最外層間の密着
性はきわめて高く、生成する複合粉を用いて焼
結強度の高い焼結材料が得られることを確認す
るに至つた。 斯うして、本発明は、斯界で初めて、（二硫化
モリブデンまたはボロンナイトライド粉体）−（ス
ズ、ニツケルまたは銅のいずれか一種以上の中間
被覆層）−（鉄最外層）という構造の鉄被覆複合粉
を提供する。この複合粉を好適に製造する方法と
して、本発明はまた、二硫化モリブデン粉体また
はボロンナイトライド粉体の表面を貴金属塩によ
り活性化処理した後、スズ、ニツケルまたは銅の
いずれか一種以上の金属を被覆する第一段階と、
該第一段階で得られた被覆粉体を塩化鉄粉末と鉄
よりイオン化傾向の大きい金属を一種以上含有す
る粉体とを混合後、水又は希塩酸を添加する第二
段階とからなることを特徴とする鉄被覆複合粉の
製造方法を提供する。 発明の具体的説明 本発明において芯となる被めつき粉体は、二硫
化モリブデン及びボロンナイトライド（チツ化ホ
ウ素）を対象とする。 本発明において使用される被めつき粉体の粒度
は、−５メツシユ〜＋400メツシユのものが適当で
ある。５メツシユより大きい寸法の粒子を使用す
ると被覆が不均一となり、他方400メツシユより
小さいと得られる鉄被覆複合粉自体の流動度の低
下及び表面酸化の問題が生ずる。 被めつき粉体に、貴金属塩による活性化処理す
る方法は、該粉体を貴金属の塩類水溶液により処
理した後、加熱分解することにより行われる。 ここに貴金属とは、パラジウム、白金、ロジウ
ム、金、銀等をいう。 また塩類水溶液による処理とは、浸漬、混合、
スプレー等により、被めつき粉体に付着せしめる
工程をいう。 この貴金属塩溶液は、通常極めて低濃度でよい
が、貴金属層の所望厚さに応じて濃厚液を調製し
てもよいし或いは重ね被覆処理を行う。 貴金属塩処理後に被めつき粉体を所要温度に加
熱し該金属層を分解形成せしめる。この加熱温度
は、使用金属塩の分解温度以上とし、分解に高温
を要するときは、好ましくは還元性雰囲気下に加
熱する。 貴金属としてパラジウムを用いるときは、該貴
金属層厚は、数Å〜数＋Åでよいが、特に一定の
値に制限するものではなく主として経済的理由か
ら最低有効値を用いる。 量的には、被めつき粉体に対しては0.005W／
Ｗ％以上好ましくは0.01W／Ｗ％以上がよいが、
この比率は表面形状及び被めつき粉体の粒度分布
等に依存する。 この後、中間層が被覆される。中間層として
は、二硫化モリブデン粉体及びボロンナイトライ
ド粉体に対して密着性の良い被膜を形成しうると
同時に鉄に対して良好なめつき面を与えるもので
なければならない。更に、沸点が高いことも必要
である。何故なら、沸点が高くなければ、焼結の
際に揮発し、焼結体の強度を低下させるからであ
る。こうした観点から、本発明は、中間層として
スズ、ニツケル及び銅の一種以上を使用する。 中間層金属は、セメンテーシヨン法、電気メツ
キ法、化学メツキ法等の公知のめつき手法により
めつきされる。めつき厚さは、鉄めつきのために
良好なめつき面ができる範囲でよいため0.8〜0.1
μの厚さで充分である。 中間層形成後、最外層として鉄が塩化鉄粉を用
いてのセメンテーシヨン技術により被覆される。
本発明において最外層を鉄としたのは、最初に述
べたように鉄系圧粉焼結体において複合粉末を使
用することを意図しているからに他ならない。複
合粉末を圧粉後焼結することによつて最外層の鉄
は鉄マトリツクスを構成する。また、本複合粉末
を鉄粉と共に使用する場合にも、鉄の最外層が存
在する為、分散性が良くなりまたなじみも良くな
つて、焼結体の強度を高くすることが出来る。 鉄被覆においては、中間層被覆粉と塩化鉄粉と
還元媒剤である鉄よりもイオン化傾向大なる金属
粉を混合する。該混合の際、反応は混合後数秒後
に始まるが、反応開始によつて生ずる白色のヒユ
ームが若干発生しはじめた時点ですなわち30秒〜
２分の間に混合後、水又は希塩酸を添加しなけれ
ば反応が止まり、固結してしまう。しかしながら
混合直後に水又は希塩酸を加えれば反応は進行し
ないため注意を要する。またこの際添加する水又
は希塩酸の量は、使用塩化鉄粉末100ｇ当り100ml
以下である。これはそれより多量だと鉄の析出に
影響するためである。 ここで用いられる還元媒剤は、鉄よりイオン化
傾向が大きい金属であれば良いが特には、カルシ
ウム、マグネシウム、アルミニウムが好ましい。
また合金粉であつてもよい。 またここで用いられる鉄の形態は、塩化鉄でな
ければならない。硫酸鉄、硝酸鉄、水酸化鉄等の
鉄化合物では、本発明にかかわる目的の反応がな
されない。 またセメンテーシヨン工程における温度は常温
の溶液から出発して、反応熱による温度の上昇に
委ねることでよいが通常90〜100℃に達する。 発明の効果 以上のごとく、本発明は、鉄を被覆してなる複
合粉を提供するものである。本発明は、従来一般
的めつき技術では不可能であつた二硫化モリブデ
ン及びボロンナイトライド粉体上への密着性の良
好な鉄の被覆を、めつき性の良いスズ、ニツケル
または銅を貴金属塩により活性化した粉体上に先
ず形成し、そうして得られた平滑に金属化した面
に鉄をセメンテーシヨン技術を用いて被覆するこ
とにより可能としたものであり、強度の高い鉄系
焼結材を得ることを可能としたものである。 さらに、二硫化モリブデン上に鉄の被覆を可能
としたことにより、二硫化モリブデン粉と鉄粉と
の混合粉の焼結体に比べ、鉄と二硫化モリブデン
の密着性が非常に改良されるため高性能の自己潤
滑材を得ることを可能とした。 以下本発明の実施例を記載する。 実施例 市販二硫化モリブデン粉末（−150メツシユ〜
＋325メツシユ）100ｇに硝酸アンミンパラジウム
水溶液50ml（パラジウム0.01ｇ含有）を添加混合
し、磁製皿上において大気中で300℃で、60分間
加熱処理してパラジウム薄層を形成した。このパ
ラジウム処理した二硫化モリブデン粉を塩化ニツ
ケル（NiCl₂4H₂O）42ｇ／、NH₄Cl70ｇ／、
ロツセル塩13ｇ／、次亜リン酸ソーダ139ｇ／
の無電解ニツケルメツキ液で処理し鍍ニツケル
二硫化モリブデン粉末111.0ｇを得た。 鍍ニツケル量は約10％であつた。 ついで鍍ニツケル処理を施した二硫化モリブデ
ン粉100ｇに塩化鉄粉末を740ｇ添加し更に還元用
アルミニウム粉末（−400メツシユ）48ｇを添加
し混合撹拌を行つた。白色ヒユームが若干認めら
れた時点で約500mlの水を加え、約60秒間撹拌を
継続し、鉄を該ニツケル被覆二硫化モリブデン粉
上にセメンテーシヨンにより均一に析出せしめ
た。生成したスラリーを分離水洗し、更にベンゾ
トリアゾール濃度0.5ｇ／の水溶液で防錆処理
を施し、70〜80℃において減圧乾燥し、複層金属
被覆二硫化モリブデン粉末を得た。 該粉体はパラジウム薄層厚さは６〜10Å、ニツ
ケル層厚さは約0.3μで鉄層の厚さは約４μであ
り、極めて均一の厚さを示した。 なお、該製品の性状は、下記のごとくであつ
た。

【表】 比較例 パラジウム薄層上にニツケルめつき層を介在さ
せないことを除いて実施例と同様にしてセメンテ
ーシヨン技術により鉄を被覆せしめた。一応の鉄
被覆は得られたが、密着性は必ずしも充分でな
く、つきまわりも充分に一様とは云えなかつた。
この鉄被覆粉を用いて作製した焼結体は、実施例
の粉末を用いたものに較べ低い水準の強度しか得
られなかつた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 二硫化モリブデン粉体またはボロンナイトラ
   イド粉体の外面に被覆されるスズ、ニツケルまた
   は銅のいずれか一種以上の金属の中間層及び該中
   間層上に被覆される最外層としての鉄層を具備す
   る鉄被覆複合粉。 ２ 二硫化モリブデン粉体またはボロンナイトラ
   イド粉体の表面を貴金属塩により活性化処理した
   後、スズ、ニツケルまたは銅のいずれか一種以上
   の金属を被覆する第一段階と、該第一段階で得ら
   れた被覆粉体を塩化鉄粉末及び鉄よりイオン化傾
   向の大きい金属を一種以上含有する粉体と混合
   後、水又は希塩酸を添加する第二段階とからなる
   ことを特徴とする鉄被覆複合粉の製造方法。