JPS6250357B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は高速船に用いられるプロペラ装置に
関する。

従来30kt位までの速力で使用される船舶におい
ては、断面が翼型や円弧型のスクリユープロペラ
を使用するのが普通であるが、約40kt以上の速力
になるとキヤビテーシヨンが発生して効率が著し
く悪化したり、潰食のためプロペラが損傷したり
するので、その防止手段としてスーパーキヤビテ
ーシヨンプロペラ、ウオータージエツト、サーフ
エスプロペラ等が研究され、一部実用化されてき
た。

しかしながら、スーパーキヤビテーシヨンプロ
ペラは低中速における効率が悪く、キヤビテーシ
ヨンを発生し始める遷移速力（30〜40kt）におい
てはやはり潰食現象を起す欠点がある。またウオ
ータージエツトは近年改良が加えられて、例えば
インペラーの前にインデユーサーを設けて水圧を
高め、キヤビテーシヨンが発生する速力を高める
等の性能向上がみられるが、効率は最大60％程度
であり、また50kt以上ではやはりキヤビテーシヨ
ンが問題となる。

これに対し、プロペラの上方を水面上に露出さ
せた状態で回転するいわゆるサーフエスプロペラ
は、キヤビテーシヨンを起していない“GAWN
の円弧翼型プロペラ性能曲線”に匹敵する70％以
上の効率が得られるが、プロペラの単位面積当り
の推力やトルクが小さく、この傾向は速力が小な
る程著しいので、速力が零付近ではプロペラが空
転して予定速力になかなか達しないおそれがあ
り、またプロペラが水面を間欠的に叩くので推力
やトルクの変動が非常に大きい欠点がある。

本発明の目的は従来の上記欠点を除去し、高速
において効率がよく、しかも副害の発生なしに良
好に作動するプロペラ装置を提供するにある。

本発明は、前記のサーフエスプロペラの背面が
水面上より空気を吸い込み、背面に接して空気が
入つた空洞を形成するため、殆んどキヤビテーシ
ヨンの影響を受けないことに着目してなされたも
ので、その特徴は、前進状態においてはプロペラ
の後方を大気中に開放してプロペラ背面を空気を
吸い込み易い状態にするために、プロペラ前面に
プロペラの殆ど全体に水を当てるようなダクト又
は水路を船体に設け、プロペラ後流を水面上の大
気中に放出せしめた点にある。

以下本発明の実施例を図面を参照して説明す
る。

第１図は左方に航行する滑走艇の後部を示した
もので、船底１より下方に突出して設けた取水口
２から水をダクト３内に誘導し、その後端出口部
に軸受金具４により支持したプロペラ５を設け
る。６はプロペラ駆動軸である。ダクト３の内面
はプロペラ５の外周に近接させる。上記構造のＶ
型高速艇等が滑走すると、後方水面７は船尾にお
いてプロペラ５より低くなり、プロペラ５の後方
を大気中に完全に露出させる。その結果、プロペ
ラ５はダクト３から放出された周囲に自由表面を
有する水流の中で回転することになり、自由表面
よりプロペラ先端に空気が誘引され、第５図に示
すようにプロペラ５（羽根断面で示す）の背面５
ａに空気が吸入されて空洞８を形成するので、サ
ーフエスプロペラと全く同様の性質をもつことに
なる。なお、自由表面に近い所で回転するプロペ
ラがよく空気を誘引することは周知の事実であ
る。これと共に、ダクト３内の水がプロペラ５の
前面全体に当るので推力やトルクがサーフエスプ
ロペラに較べて倍増し、しかもそれらが変動しな
いのである。更に、通常のスーパーキヤビテーシ
ヨン状態における空洞は真空に近い水の蒸気圧で
あるのに対し、空洞８の圧力は大気圧に近いの
で、これによる衝撃的圧力やこれに伴う潰食の発
生等はなく、キヤビテーシヨンの害を生じない。

上記実施例における取水口２は船底下方に突出
したラム型式であるが、第２図に示す実施例は取
水口２ａを船底１に下向けに開口させたフラツシ
型式であり、取水口２ａの上壁下部を曲率小なる
凸面として船底面に滑らかに接続させると、停船
時はダクト３ａ及びプロペラ５が水没している
が、前進時は速度増加とともに船尾が上昇してコ
アンダー効果により水が効率よくダクト３ａ内に
誘引される。本実施例でもダクト３ａの内面はプ
ロペラ外周に近接する。本実施例においては、プ
ロペラ５はダクト３ａの後端より外に設置されて
おり、軸受金具４ａ内を通る駆動軸６ａによりボ
ス９内のギヤボツクスを介して回転される。プロ
ペラ５は一部がダクト３ａに入るように設けても
よい。

第３図ａ，ｂに示す他の実施例は、プロペラに
当る水流の上半分をプロペラ先端に近い自由水面
となるように船尾底部を後端１０がほぼ半円にな
るように凹設した水路３ｂを設けたもので、水路
内面形状によるコアンダー効果については第２図
の実施例と同様であり、また水路内面はプロペラ
外周に近接しており、プロペラ５の背面上半部が
大気中に露出しており、プロペラ背面にサーフエ
スプロペラと同様に空気が誘引される。本実施例
においては、プロペラ５を支持するギヤボツクス
９ｂ、軸受金具４ｂ等をプロペラ５の後方に設
け、駆動軸６ｂを船外から船内に誘導している。
このようにするとプロペラ５の前方に構造物がな
いのでプロペラ性能を向上させることができる。

第４図ａ，ｂに示す他の実施例は、船底１が船
の後端まで水平に延長する形において、後部船底
１ｃに後方が半円形をなす下面開放の成形部材１
１を固定して高速滑走時に後方水面を成形部材１
１の下部斜面１１ａによつて破線のように低下さ
せ、これによりプロペラ５の上半部を大気中に露
出させて第３図におけると同様の作用効果を得た
ものである。この構造は既存の舟艇にもそのまま
利用し得る便があり、適用範囲がきわめて広い利
点がある。

次に本発明に使用されるプロペラの翼形につい
て説明する。

第６図ａはエーロフオイル型で、飛行機の空中
翼と同じものであり、効率がよいので中低速の船
に最も多用される翼型である。ｂは上下面が円弧
をなす円弧翼型で、中低速における性能はエーロ
フオイル型に劣るが、製作が容易で、キヤビテー
シヨンはエーロフオイル型よりも優れており、レ
ジヤーボートや特殊な高速船に使われる。

第６図ｃ，ｄ，ｅはスーパーキヤビテーシヨン
の領域で使用される翼型（以下SC翼と称する）
であり、ｃは下面が平面の平面SC翼、ｄはTulin
−Burkart翼、ｅは５項翼の代表的な翼型であ
る。このほか図示しないが３項翼といわれるもの
もあり、これは翼下面がTulin−Burkart翼と５
項翼ｅとの中間の形状を有する。これらのTulin
−Burkart翼、３項翼、及び５項翼は高性能翼と
して知られており、高速水中翼船の翼やSCプロ
ペラとして使用されている。これに対し平面SC
翼は性能劣悪とされているが、円弧翼、平面SC
翼、Tulin−Burkart翼のプロペラをサーフエス
プロペラとして使用した実験成績では、Tulin−
Burkart翼が効率70〜75％、平面SC翼もこれとほ
ぼ同等の成績を示したのに対し、円弧翼のものは
効率60〜65％程度に止まるのと報告例もある。し
かしこれらの翼型のプロペラはいずれも本発明に
利用可能である。なお、プロペラ背面の通気を良
くするため、背面に段差を設けた第６図ｆ、又は
背面外方に溝を設けたｇの如きベンテドフオイル
型のプロペラも本発明に使用することができる。

また前述の如き、サーフエスプロペラの速力零
付近における空転現象に対しては、プロペラを静
止状態において水没する位置に取付け、滑走状態
においてプロペラ後面が大気中に露出するよう水
路の後方出口の形状を選定することによつて解決
することができる。

本発明は上記構成を有し、プロペラ後方を大気
中に解放し、且つプロペラ前面に水を当てさせる
ことにより、キヤビテーシヨンの発生を防止し、
しかも効率が良く、推力やトルクの変動がなく、
いかなる速力でも安定に作動し得る等のすぐれた
効果があり、構造もきわめて簡単で製作容易であ
り、使用するプロペラの翼型についても既存の水
中翼やSCプロペラの資料をそのまま活用し得る
ので直ちに実施可能である等の効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図，第２図，第３図ａ，第４図ａは本発明
のそれぞれ異る実施例を示す部分断面立面図、第
３図ｂ，第４図ｂはそれぞれ第３図ａ，第４図ａ
の実施例の側面図、第５図は本発明におけるプロ
ペラ背面の空洞発生説明図、第６図ａ〜ｇは本発
明に使用可能の各種のプロペラ翼型の断面図であ
る。 ３，３ａ……ダクト、３ｂ……水路、５……プ
ロペラ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 船体の後部船底に、前進時においてプロペラ
   のほぼ全体に近い水面上露出部分に水が当る量の
   水を吸引して船体後方の水面上の開放大気中に放
   出し内面がプロペラ外周に近接したダクト又は水
   路を設け、該ダクト又は水路の下部上壁を曲率小
   なる凸面として船底面に滑らかに接続させ、該ダ
   クト又は水路の出口部の水流中でプロペラを作動
   させることを特徴とする通気型プロペラ装置。