JPS6244082Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、潤滑油の還流とブローバイガスの回
収とに兼用するオイルリターン通路を備えたシリ
ンダブロツク構造の改良に関するものである。

（従来技術） 自動車等のエンジンにおいて、ブローバイガス
を大気に放出しないように処理する手段の１つ
に、シリンダブロツクに形成したオイルリターン
通路をブローバイガスの回収に兼用するものがあ
る。この手段は、上記オイルリターン通路によ
り、潤滑油をオイルパンに還流させる一方、オイ
ルパン内のブローバイガスをシリンダヘツドカバ
ー内に導入するようにし、さらにこのブローバイ
ガスをオイル分離器を介して吸気通路に送るもの
である。従来、この種のエンジンのシリンダブロ
ツク構造は、シリンダブロツクに複数のオイルリ
ターン通路を並列に配置しているにすぎなかつ
た。

ところが、最近はエンジンの小型化に伴つてオ
イルリターン通路の通路断面積が小さくなつてき
ているため、上記の従来構造によると、ピストン
の上下動によつて生じる吹上げ圧力で、オイルリ
ターン通路流下中の潤滑油がブローバイガスに混
入して吹上げられ、潤滑油の還流が阻害されると
いう問題があつた。とくにデイーゼルエンジンで
は、多量の潤滑油が吹上げられて前記オイル分離
器で分離しきれず吸気通路にまで入ると、この潤
滑油がエンジンに送られて燃焼し、エンジンのオ
ーバラン等の幣害を生じるおそれがあつた。

なお、このような問題の解決を意図する公知技
術として、特開昭51−81242号公報に示される如
く、オイルリターン通路の内壁に縦溝あるいは螺
施溝を設け、潤滑油を上記溝に沿つて流そうとす
るものがある。しかし、この構造では、上記溝が
かなり細くなるので、潤滑油が多くなると上記溝
だけでなくオイルリターン通路の内方空間にも広
がつて流れ、また、スペース的に制約を受けるオ
イルリターン通路の内壁に上記溝を形成すること
とあいまつて通路断面積が狭められ、潤滑油とブ
ローバイガスの衝突が生じ易くなる。このため、
現実には、前述せる潤滑油の吹上げを防止する効
果が得られがたいものであつた。

（考案の目的） 本考案は上記の事情に鑑み、オイルリターン通
路を流下する潤滑油がブローバイガスによつて吹
上げられることを充分に防止し、潤滑油の還流を
容易にすることができるシリンダブロツク構造を
提供するものである。

（考案の構成） 本考案のシリンダブロツク構造は、シリンダヘ
ツドカバー内空間とオイルパン内空間とを連通す
る複数のオイルリターン通路がシリンダブロツク
に形成され、かつ、オイルリターン通路を介して
オイルパン内のブローバイガスがシリンダヘツド
カバー内に導入される構成のエンジンにおいて、
シリンダブロツクに形成される複数のオイルリタ
ーン通路の途中に、各オイルリターン通路が合流
するチヤンバーが設けられていることを特徴とす
るものである。

この構成により、ピストンの上下動によつて生
じる上記複数のオイルリターン通路での圧力変動
の平均化作用、全体圧力を低下させる作用および
オイルリターン通路とチヤンバーとの合流によつ
て生じる曲折流路によるオイル分離作用が生じ、
これらの作用で潤滑油の吹上げが防止される。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面によつて説明す
る。

第１図はシリンダブロツクを示し、第２図はエ
ンジンを組立てた状態を示すもので、図では４気
筒のデイーゼルエンジンに適用した場合を示す。
これらの図において、１はシリンダブロツク、２
はシリンダヘツド、３はシリンダヘツドカバー、
４はオイルパンである。

上記シリンダブロツク１は鋳造等により成形さ
れ、その所要数箇所に気筒１１…を形成するとと
もに、第１図において前面部に、複数のオイルリ
ターン通路１２…を形成している。シリンダブロ
ツク１の下部１５はスカート状に形成している。

上記オイルリターン通路１２…の途中には、こ
れらの通路１２…が合流するチヤンバー１３を設
けている。このチヤンバー１３は、各オイルリタ
ーン通路１２…に連通させて横長に形成してい
る。当実施例ではとくに、各気筒１１…の両側前
方部に配設した所要数の上部オイルリターン通路
１２ａ…を上記チヤンバー１３において合流さ
せ、該チヤンバー１３より下方に気筒数の半数だ
けの下部オイルリターン通路１２ｂ…を形成し、
チヤンバー１３より上方と下方とでオイルリター
ン通路１２…の配置および個数を変えている。そ
して、上記各下部オイルリターン通路１２ｂ…は
それぞれ、後述する如く、隣接する気筒の下方空
間の双方に開口するようにしてある。

このシリンダブロツク１の上端にシリンダヘツ
ド２が取付けられ、さらに該シリンダヘツド２に
シリンダヘツドカバー３が取付けられる。上記シ
リンダヘツド２は、吸気ポートを開閉する吸気弁
２２、排気ポートを開閉する排気弁（図示省
略）、動弁カム２３、燃料噴射弁２４、渦流室２
５、グロープラグ２６等を具備する。また、シリ
ンダヘツドカバー３は、その内部にブローバイガ
スを導入する空間３１を有し、該空間３１に導入
されるブローバイガスがオイル分離器３２を介し
て吸気通路（図示省略）に送られるようにしてい
る。上記空間３１は、シリンダヘツド２に形成し
た連通路２７を介して前記オイルリターン通路１
２に連通する。

一方、シリンダブロツク１の下部１５内には、
各気筒１１…間の隔壁５の下端部にクランク軸支
持用軸受部５ａが形成され、各気筒１１…内に装
備したピストン６に連動連結したクランク軸７
が、上記軸受部５ａとキヤツプ５′によりベアリ
ング８を介して支持される。また、シリンダブロ
ツク１の下端にオイルパン４が取付けられ、該オ
イルパン４内の空間４１に前記オイルリターン通
路１２が連通する。この場合、上記隔壁５の前方
上端部が下部オイルリターン通路１２ｂの下端開
口部中央に位置し、該下部オイルリターン通路１
２ｂが隔壁５の両側の気筒下方部空間の双方に開
口するように、下部オイルリターン通路１２ｂを
配置している。４２はオイルパン４内の潤滑油で
ある。

このように形成されたエンジンにおいては、メ
カニズムを潤滑した潤滑油が、第２図に実線矢印
で示す如く、シリンダヘツド２内から前記オイル
リターン通路１２…を流下してオイルパン４に還
流される。一方、オイルパン４内のブローバイガ
スは、点線矢印で示す如く、潤滑油とは逆にオイ
ルリターン通路１２…内を上昇し、前記シリンダ
ヘツドカバー３内の空間３１に導入される。

この場合に、各気筒１１…のピストン下方部空
間内の圧力は各気筒間が隔壁５により隔絶されて
いることによりピストン６の上下動に応じて周期
的に変動する。このため、従来のように複数のオ
イルリターン通路を並列に形成しておくだけで
は、各オイルリターン通路内に周期的に大きな吹
上げ圧力が生じ、これにより、ブローバイガス中
に潤滑油がミスト状に混入して吹上げられること
となる。

これに対し、本考案の構造によると、各オイル
リターン通路１２…がその途中で前記チヤンバー
１３にて連通されることにより、ここで上記各通
路１２…内の圧力が平均化され、部分的および周
期的な圧力変化が吸収される。また、該チヤンバ
ー１３において通路断面積が広がることにより、
全体的な吹上げ圧力も低減される。さらに、該チ
ヤンバー１３によつてブローバイガス流路が曲折
化され、曲折流路を用いたオイル分離器と同様の
原理によるオイル分離作用も得られる。これらの
各作用が相まつて、ブローバイガス中への潤滑油
の混入が格段に低減されることとなる。

また、当実施例の構造では、縦方向のオイルリ
ターン通路１２…の通路壁によつてシリンダブロ
ツク１が補強されることに加え、この通路に直行
する横方向にもチヤンバー１３が設けられること
によりこのチヤンバー１３を構成する壁でシリン
ダブロツク１の剛性が高められる。

（考案の効果） 以上説明したように、本考案のシリンダブロツ
ク構造は、潤滑油の還流とブローバイガスの回収
とに兼用される複数のオイルリターン通路の途中
に、これらの通路が合流するチヤンバーが設けら
れているため、該チヤンバーにおける吹上げ圧力
の平均化作用、全体的圧力の低下作用および曲折
流路によるオイル分離作用により、ブローバイガ
ス中に潤滑油が混入して吹上げられることを防止
し、潤滑油の還流を容易にすることができるもの
である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のシリンダブロツク構造の一実
施例を示す斜視図、第２図は上記シリンダブロツ
ク構造を用いてエンジンを組立てた状態の断面図
である。 １……シリンダブロツク、２……シリンダヘツ
ド、３……シリンダヘツドカバー、４……オイル
パン、１２……オイルリターン通路、１３……チ
ヤンバー。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダヘツドカバー内空間とオイルパン内空
   間とを連通する複数のオイルリターン通路がシリ
   ンダブロツクに形成され、かつ、オイルリターン
   通路を介してオイルパン内のブローバイガスがシ
   リンダヘツドカバー内に導入される構成のエンジ
   ンにおいて、シリンダブロツクに形成される複数
   のオイルリターン通路の途中に、各オイルリター
   ン通路が合流するチヤンバーが設けられているこ
   とを特徴とするエンジンのシリンダブロツク構
   造。