JPS6239310B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、例えばターボドリルの軸封部におい
てタービン側の泥水と潤滑油室側の油とを遮蔽シ
ールさせるような場合に好適するメカニカルシー
ルに関するものである。

このように泥水等の第１密封流体と油等の第２
密封流体とを遮蔽シールさせるメカニカルシール
にあつては、これを両密封流体間に大きな差圧が
生じているような条件下で用いることは、メカニ
カルシールの強度上からいつても可及的に避ける
必要のあること勿論である。

したがつてメカニカルシールは、前記両密封流
体の圧力がバランスされるような位置に配設して
おくのが理想である。

ところが従来のメカニカルシールは、これが一
定位置に固定的に設けられるものであつたため、
その配設位置を如何に決定しておこうとも、両密
封流体の圧力が一定不変である場合はともかく、
このようなことは現実には殆んどあり得ず、密封
流体の圧力変動によつてどうしても両密封流体間
に差圧が生じている条件下におかれることがあ
る。

このため、従来のメカニカルシールにあつて
は、このような苛酷な条件下におかれることを予
測してメカニカルシールの強度を必要以上に大き
く設計しておかざるを得ないといつた不合理があ
つた。しかも両密封流体の差圧状況が変化するよ
うな条件下では、シール機能が安定しない虞れも
あつた。

本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、
メカニカルシール全体をユニツト化して、これが
両密封流体間に差圧が生じたときには両密封流体
の圧力がバランスされる位置へと自動的にもたら
されるように工夫されたメカニカルシールを提供
し、もつてメカニカルシールの設計条件を可及的
に緩和させると共にシール機能の安定化を図つた
ものである。

次に、その一実施例を第１図及び第２図につい
て説明する。

この実施例は、本発明を、ターボドリルの軸封
部において第１密封流体つまりタービン側Ａの泥
水と第２密封流体つまり潤滑油室側Ｂの油とを遮
蔽シールさせるためのメカニカルシールに適用し
た例に係るものである。

前記軸封部には、第１図に示す如く、スリーブ
１ａを備えた回転軸１を同心的に囲繞する円筒状
のシールハウジング２が設けられており、この回
転軸１とシールハウジング２の円形内周部２ａと
の間の円筒状空間部に本発明に係るメカニカルシ
ールが配設されているのであつて、以下その構成
について詳説する。

第１図において、３は回転軸１に遊嵌されると
共にシールハウジング２の内周部２ａに軸線方向
摺動可能に且つ回転不能に嵌合保持されたシール
ユニツトケースであり、各々Ｏリング４を介して
前記内周部２ａに軸線方向摺動可能に且つ回転不
能に液密状態で内嵌された前後壁部５，６とこの
前後壁部５，６間を連結する円筒状部７とを備え
てなる。このシールユニツトケース３は、前後壁
部５，６の外周形状が同一の円形状とされている
ことと、各壁部５，６には各々後述する静止環８
及び固定環１６が固設されていることから、軸線
に直交する面に投影したときにおける、タービン
側Ａの泥水に対する受圧面積と潤滑油室側Ｂの油
に対する受圧面積とが同一となるよう構成されて
おり、したがつて前記泥水と油との間に差圧が生
じたとき例えば潤滑油室側Ｂの油が機外に洩れた
ときには、この差圧によつて両密封流体の圧力が
バランスされる位置へと軸線方向に摺動変位され
るようになされている。

８は回転軸１に遊嵌された静止環で、シールユ
ニツトケース３の前壁部５にＯリング９，９及び
フランジ１０並びにピン１１を介して固設されて
いる。

１２は静止環８に対向させて、回転軸１とシー
ルユニツトケース３の円筒部７との間の第１空間
部３ａ内に配置された回転環で、回転軸１にＯリ
ング１３を介して軸線方向摺動可能に且つ回転不
能に外嵌されている。

そして、前記シールユニツトケース３と回転環
１２との間には、該回転環１２の回転及びシール
ユニツトケース３の軸線方向摺動変位に拘わら
ず、回転環１２を静止環８に密封端面１４で摺接
させた状態に保持させる付勢保持機構１５が介装
されている。すなわちこの付勢保持機構１５は、
回転軸１に遊嵌させた固定環１６を、シールユニ
ツトケース３の後壁部６にＯリング１７，１７を
介して固設し、前記第１空間部３ａ内において、
前記回転環１２と同様形状の可動環１８を固定環
１６に対向させて回転軸１にＯリング１９を介し
て軸線方向摺動可能に且つ回転不能に外嵌させる
と共に、同一な円筒状の第１及び第２スプリング
リテーナ２０，２１を夫々回転環１２及び可動環
１８に連設させ、さらに回転軸１に挿通させたス
プリング２２を両スプリングリテーナ２０，２１
内に配設させてなる。なお、両スプリングリテー
ナ２０，２１の対向端部２０ａ，２１ａは、第２
図に示す如く、互に軸線方向移動を一定の範囲内
で許容しうるよう係合された櫛歯形状に形成され
ている。

而して、この付勢保持手段１５によれば、回転
環１２及び可動環１８（並びに両スプリングリテ
ーナ２０，２１、スプリング２２）が回転軸１と
一体的に回転せしめられると共に回転軸１に対し
て相対的に軸線方向に摺動自在とされており、し
かも回転環１２と可動環１８とがスプリング２２
によつて互に離間する方向へ摺動付勢されている
と共に、可動環１８がシールユニツトケース３側
の固定環１６に相対回転自在に摺接されているか
ら、回転環１２の回転及びシールユニツトケース
３の軸線方向変位に拘わらず、常に回転環１２を
静止環８に密封端面１４で摺接させた状態に付勢
保持させておくことができるのである。したがつ
て泥水と油とは、密封端面１４における静止環８
と回転環１２との相対摺接回転によつて遮蔽シー
ルされる。

なお、前記固定環１６には該固定環１６と回転
軸１との間隙部２３から前記第１空間部３ａへと
連通させる連通孔１６ａが、及びシールユニツト
ケース３の円筒部７には前記密封端面１４に対向
する位置に位置せしめて前記第１空間部３ａから
前記円筒部７とシールハウジング２の内周部２ａ
との間の第２空間部３ｂへと連通させる連通孔７
ａが、並びにシールユニツトケース３の後壁部６
には前記第２空間部３ｂから潤滑油室側Ｂへと連
通させる連通孔６ａが夫々形成されていて、潤滑
油室側Ｂの油がシールユニツトケース３内に流入
されるように工夫されている。この油は、回転環
１２の遠心力によつて第１空間部３ｂ内の油が連
通孔７ａから第２空間部３ｂ内へと強制的に送り
込まれることによつて、潤滑油室側Ｂから順次間
隙部２３、連通孔１６ａ、第１空間部３ａ、連通
孔７ａ、第２空間部３ｂ更に連通孔６ａを経て潤
滑油室側Ｂへ循環せしめられ、この間において、
各接触部分の潤滑を行うと共に密封端面１４等摩
擦熱発生箇所の冷却を行う。

以上のような構成であれば、メカニカルシール
全体がシールユニツトケース３でもつて軸線方向
摺動可能にユニツト化されており、しかもタービ
ン側Ａの泥水に対する受圧面積と潤滑油室側Ｂの
油に対する受圧面積とが同一とされているから、
例えば潤滑油室側Ｂの油が漏洩する等に起因して
メカニカルシール両側Ａ，Ｂの密封流体間に圧力
差が生じた場合には、ユニツト化されたメカニカ
ルシール全体が両密封流体の圧力がバランスされ
る位置へと自動的にもたらされ、該位置に保持さ
れる。

このように、タービン側Ａ或いは潤滑油室側Ｂ
の密封流体の圧力変動に拘わらず、メカニカルシ
ールは、常に両密封流体の圧力がバランスされた
条件下でシール機能を営むことになる。

したがつて両密封流体間に差圧が生じている苛
酷な条件下でシール機能を営ませる場合を想定し
てメカニカルシールを設計しておく必要が全くな
く、メカニカルシールの設計条件を大巾に緩和さ
せることができて、メカニカルシールの設計製作
上極めて有利となる。

しかも前記両密封流体の差圧状況が変化するよ
うな条件下においても、その変化の都度メカニカ
ルシールが均等受圧位置に変位されて、両密封流
体の圧力がバランスされた条件下でシール機能が
営まれるので、シール機能が安定する。

ところで、前記実施例の如きターボドリルにお
いて、仮に回転軸１が軸線方向に移動（変位）し
たとしても、本発明に係るメカニカルシールによ
れば、ユニツト化されたメカニカルシールが回転
軸１に対して相対的に軸線方向移動できて、回転
軸１の移動（変位）に拘わらず前記両密封流体の
圧力がバランスされる位置に両密封流体の圧力に
よつて保持されることになるから、極めて好適に
用いることができる。

ところで、ターボドリルの場合（あるいは、水
中ポンプ等の堅型の機器もそうであるが）、軸受
を潤滑するための油室が軸封装置の下部にあると
き、即ち第１図でいえば、潤滑油室側Ｂ（図示し
てないが、この油室側Ｂに軸受が装備されてい
る。）が下部に位置し、その上部にシールユニツ
トがある場合、潤滑油が機外に洩れると、軸封装
置部分に空気溜りを生じやすく、軸封装置がドラ
イ運転される状態となり、極端に軸封装置の寿命
を短かくするが、本発明に係るシールユニツト
（メカニカルシール）では、常にシールユニツト
が軸方向に移動して、完全にドライ運転を防止す
るので、安全な運転が可能となる。

なお、シールユニツトケース３はシールハウジ
ング２の内周部２ａに回転不能に保持させておく
必要があり、前記実施例ではこの保持をＯリング
４の摩擦力によつて行つているが、さらに次のよ
うに工夫しておくことで、Ｏリング４の摩擦力が
熱等により低下した場合にもシールユニツトケー
ス３の回転を確実に防止することができる。

すなわち、第３図に示す如く、回転軸１の軸線
に沿う充分長尺な安内杆２４を、シールユニツト
ケース３の前後壁５，６にＯリング２５，２５を
介して挿通させて、シールハウジング２に取付け
ておくならば、この安内杆２４によつてシールユ
ニツト３の軸線方向移動を許容しながらその回転
を確実に防止できる。第３図において、第１図に
示す部分と同一の部分には同一の符号を付してあ
り、シールユニツトケース３の後壁部６に形成せ
る連通孔６ａは省略してある。

また前記各実施例においては、シールハウジン
グ２の内周部２ａの断面形状及びシールユニツト
ケース３の前後壁５，６の外周部の断面形状を円
形にしたが、第４図に示す如く、前記シールハウ
ジング２の内周部２ａの断面形状を直線部２′
ａ，２′ａを有する非円形とすると共に前記前後
壁部５，６の外周部の断面形状もこれに対応させ
ておくならば、前記案内杆２４の如き別部材を設
けておかずとも、シールユニツトケース３の回転
を確実に防止できる。なお、Ｏリング４の形状も
上記した形状に合せて形成しておくこと勿論であ
る。

さらに、このように互に嵌合する部材の断面形
状を非円形としておく工夫は、シールハウジング
２とシールユニツトケース３との嵌合部分に適用
できる他、例えば回転環１２及び可動環１６と回
転軸１との嵌合部分にも適用することができ、か
くすることによつて前記両環１２，１６の回転軸
１に対する相対回転を確実に防止できる。

また、本発明は前記した如きターボドリルの軸
封に適用されるばかりでなく、圧力変動によつて
差圧状況が変化する虞れのある一種類以上の密封
流体を遮蔽シールさせる必要のあるあらゆる機器
に好適に適用されうる。また、プランジヤーポン
プの如き往復運動する軸、即ち機器のケーシング
と軸とが軸方向に相対運動（移動）する機器の軸
封装置としても、好適に適用されうるものであ
る。

何れにしても、以上の説明からも容易に理解さ
れるように、本発明のメカニカルシールは、第１
密封流体と第２密封流体との圧力がバランスされ
る位置へと自動的に変位せしめられるようユニツ
ト化されているものであるから、常に前記両密封
流体間の圧力がバランスされる条件下でシール機
能が営まれ、メカニカルシールの設計条件の大巾
な緩和並びにシール機能の位定化を図ることがで
きるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るメカニカルシールの一実
施例を下半部を省略して示す縦断側面図、第２図
は第１図の部分の展開平面図であり、第３図は
他の実施例を示す第１図同様の縦断側面図であ
り、第４図は更に他の実施例を示す要部の縦断正
面図（断面箇所は第１図の−線に沿う断面箇
所に相当する）である。 １…回転軸、２…シールハウジング、２ａ…シ
ールハウジングの内周部、３…シールユニツトケ
ース、４…Ｏリング、８…静止環、１２…回転
環、１５…付勢保持機構。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 第１密封流体と第２密封流体とを遮蔽シール
   させるメカニカルシールであつて、回転軸に軸線
   方向摺動可能に且つ回転不能に保持させた回転環
   を収納すると共に静止環を固設したシールユニツ
   トケースを、シールハウジングの内周部に、前記
   両密封流体の圧力がバランスされる位置へと軸線
   方向摺動自在に且つ回転不能に液密状態で嵌合保
   持させ、さらに前記シールユニツトケースと回転
   環との間に、該シールユニツトケースの軸線方向
   摺動変位及び回転環の回転に拘わらず、該回転還
   を前記静止環に摺接させた状態に付勢保持させる
   付勢保持機構を介装してあることを特徴とするメ
   カニカルシール。