JPS6149901B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の利用分野〕 本発明は永久磁石式同期電動機の回転子の着磁
方法に係り、特に自己始動のためのかご形巻線を
備えた永久磁石式同期電動機の回転子の着磁方法
に関する。

〔発明の背景〕

紡糸工場の巻き取りシステムに使用するような
同期電動機は、多数台が並列に揃速運転される。
したがつて、電動機自体が自己始動可能であるこ
と、および負荷慣性と負荷を背負つた状態で同期
引入れができることが要求される。

従来よりこの種電動機は、誘導電動機として始
動させ、同期引入れ後は永久磁石の磁力を利用し
て同期電動機として運転される。したがつて、電
動機は誘導電動機と同期電動機の両者の特性をそ
なえている。このため、この種電動機では、固定
子は特に通常の電動機と変わらないが、回転子は
特殊な構造となつており、極数、磁石材質等によ
り種々の構造が提案されている。

第１図および第２図はその一例を示すものであ
る。

これらの図において、１は回転軸で、図示しな
い固定子の外枠に設けられた軸受により、その両
端部が回転自在に支承されている。この回転軸１
には積層回転子鉄心２が圧入固定されており、回
転子鉄心２の外周部分には多数のかご形導体３が
設けられ、このかご形導体３はその両端がエンド
リング４Ａ，４Ｂにより短絡されて、閉回路をな
すかご形巻線が形成されている。

また、回転子鉄心２の内周側部分には、周方向
に間隔をあけて４個の永久磁石５が設けられてい
る。これら永久磁石５は、周方向に、かつ隣接す
る永久磁石の周方向に対応する側が同一極となる
ように着磁される。永久磁石５の径方向の両側の
空間部には、かご形導体３と同一材質であるアル
ミニウム６が充填され、この部分で永久磁石５に
交流磁界が作用するのを阻止している。

回転子鉄心２を構成する薄鉄板は、回転軸１、
かご形導体３、永久磁石５、磁石側方のアルミニ
ウム部分６などに相当する部分を取り除いた形状
で打抜かれるため、回転子全体の遠心力に対する
強度が充分でない。そのため、この遠心力に対す
る補強材として、磁極の中心部に補強ピン７が挿
通され、この補強ピンの両端が端板８Ａ，８Ｂに
より支持されている。

この構造の回転子では、永久磁石５の材質とし
てアルニコ系、フエライト系のいずれでも採用可
能である。また、永久磁石５の磁束は、回転子鉄
心２の最内周部９および外周部１０により極間で
漏洩するが、この連結短絡部９，１０を設けるこ
とにより、回転子鉄心２を構成する薄鉄板は回転
軸１、かご形導体３、永久磁石５などに相当する
部分を取り除いても、なお連結した１枚の板とし
て打抜くことができ、薄鉄板の積層が容易にな
る。

ところで、この種永久磁石式同期電動機では、
その同期引入れトルクは、誘導電動機の同期速度
近くの速度におけるトルクの勾配と、同期電動機
の脱出トルクの大きさで決定され、誘導電動機の
速度―トルク曲線の勾配が急な程、また脱出トル
クが大きい程引入るトルクは増大する。そして、
このトルク勾配はかご形導体の大きさで決定され
る。したがつて、回転子のかご形導体の大きさは
できるだけ大きい方が好ましい。

しかし、従来の構造、例えば第１図の構造にお
いては、もしかご形導体３を大きく、したがつ
て、かご形導体３を挿入するスロツト深さを深く
すると、永久磁石５の径方向幅が狭くなるため、
磁化方向に直角な断面積が小さくなつて、充分な
磁束量が得られない。

また、永久磁石を径方向に着磁した回転子も提
案されているが、この場合には永久磁石の周方向
幅の占める角度は２π／Ｐ範囲内となるため、永
久磁石の周方向幅を大きくして磁化方向に直角な
断面積を増大するためには、永久磁石をできるだ
け回転子鉄心の外周側に配置しなければならず、
これは結局、誘導電動機として使用できるコアバ
ツク、つまり永久磁石とかご形導体との間の鉄心
部の厚みが少なくなることであり、始動電流の増
大などを電動機として好ましくない結果を招く。

そこで、これらの欠点をなくし、始動特性およ
び同期運転特性が良好な永久磁石式同期電動機と
して第３図に示す如きものが提案されている（例
えば実開昭49―26009号公報参照）。第３図では、
６極の回転子構造を示しており、図中第１図およ
び第２図と同一符号は同一又は均等物を表わす。

回転軸１には積層回転子鉄心２が圧入固定さ
れ、回転子鉄心２の外周部分に多数のかご形導体
３が設けられていることは、前記従来例と同様で
ある。

この回転子鉄心２の内周に近い部分には、円周
を極数Ｐ（この場合はＰ＝６）で等分した角度、
２π／Ｐ＝60度より大きな角度を有する円弧状の
永久磁石１１が極対数（Ｐ／２＝３）と同じ数だ
け設けられている。これら永久磁石１１の着磁方
向は径方向で、すべて同一方向である。すなわ
ち、外周側がＮ極、内周側がＳ極に統一されてい
る。

回転子鉄心２の極間には、極間スリツト１２が
形成されている。これら極間スリツト１２は、各
永久磁石１１の両端部からかご形導体３の内側近
くまで延び、かご形導体３近くの外方端では円周
をほぼＰ等分する位置にあり、永久磁石１１の配
置された極では内方に行くに従つて次第に広がる
ように形成されている。

ここで、永久磁石１１の内周側鉄心部１３の幅
は永久磁石１１の半分の磁束が通つても磁気飽和
が生じない寸法に、隣接する永久磁石１１間の鉄
心部１４の幅は永久磁石１２の全磁束が通つても
磁気飽和が生じない寸法にそれぞれ設定する必要
がある。

なお、図示しない固定子側より回転子のＳ極、
つまりイメージ極に入つた磁束は、鉄心部１５，
１４を通つて永久磁石１１に達し、ここからＮ極
に至り、再び固定子側に戻る。

以上のように構成された回転子では、永久磁石
１１の周方向の幅を２π／Ｐよりも大きくするこ
とができるので、永久磁石１１を内周側に配置し
ても、外周側に配置したと実質的に同様な、磁化
方向に直角な断面積を得ることができる。しか
も、永久磁石１１をできるだけ内周側に配置する
ことにより、誘導電動機として使用できるコアバ
ツクの厚さを充分大きくとることができるので、
始動時の電流の低減を図り、また逆にかご形導体
の太さを充分大きくとることができるので、誘導
電動機のトルク勾配を大きくし、同期引入れトル
クを増大することもできる。

ところで、このような回転子を製作する場合に
は、予め着磁した永久磁石を用いると、かご形巻
線をダイカスト成形するときの熱によつて永久磁
石の磁気特性が劣化したり、あるいはかご形巻線
の成形後においては鉄心を構成する各鉄板が一体
化して相互に移動しないので永久磁石を鉄心内へ
挿入するのが極めて困難である等の理由により、
回転子を組立てた後に永久磁石の着磁を行なうこ
とが望ましい。しかし、前記のようにイメージ極
があるため、各永久磁石をすべて同一方向（径方
向において）に着磁しなければならないが、一方
の永久磁石を着磁しようとすると、他方の永久磁
石の極性が反転してしまうため、回転子の組立後
にすべての永久磁石を同一方向に着磁することは
困難であつた。

〔発明の目的〕

本発明の目的は、この種のイメージ極を有する
６極形の永久磁石式同期電動機の回転子を組立後
に容易に着磁し得る着磁方法を提供することにあ
る。

〔発明の概要〕

この目的を達成するため、本発明は、永久磁石
部材の磁石材として減磁耐力の大きい希土類磁石
を用いるとともに、着磁装置の着磁用鉄心におけ
る極弧の小さい一方の磁極部に３つの永久磁石部
材のうち１つを、極弧の大きい他方の磁極部に他
の２つをそれぞれ対応させ、着磁鉄心に巻装され
た着磁コイルを付勢して１つの永久磁石部材に大
きな磁界を、他の２つの永久磁石部材に小さな磁
界をそれぞれ加える着磁工程を、３つの永久磁石
部材のそれぞれについて順次行なうことを特徴と
する。

〔発明の実施例〕

以下、本発明の一実施例に係る回転子の着磁方
法を第４図について説明する。

第４図について、１５は着磁用鉄心、１５ａ，
１５ｂはその磁極部で、極弧の小さい一方の磁極
部１５ａはほぼ２π／Ｐ（この場合π／３）の角
度を有し、極弧の大きい他方の磁極部１５ｂはほ
ぼ（２π／Ｐ）×３（この場合はπ）の角度を有
している。１６はこの着磁用鉄心１５に巻回され
た着磁用コイルで、スイツチ１７を介して直流電
源１８に接続されており、これらにより着磁装置
が構成されている。

この着磁装置を用いて回転子を着磁するには、
図示のように、着磁用鉄心１５の極弧の小さい一
方の磁極部１５ａに、回転子の永久磁石１１を有
する磁極の１つを、また極弧の大きい他方の磁極
部１５ｂに、永久磁石１１を有する他の磁極から
永久磁石１１を有するさらに他の磁極にわたる部
分をそれぞれ対向させ、スイツチ１７を閉じて、
着磁用コイル１６を付勢する。このようにする
と、極弧の小さい一方の極磁部１５ａに対向する
回転子の磁極側には充分大きな磁界がかかり、極
弧の大きい他方の磁極部１５ｂに対向する回転子
の磁極側にはこれに比べて小さな磁界がかかるこ
とになるので、回転子を回転させて、永久磁石１
１を有する各磁極について、すなわち計３回、こ
れを行なうことにより、すべての永久磁石１１を
着磁することができる。

この際、着磁磁界が大きい、つまり磁極部１５
ａに対向する側の永久磁石１１は、たとえどのよ
うな極性に着磁されていても、着磁磁界の方向に
着磁されるので、問題はないが、小さな着磁磁界
つまり磁極部１５ｂに対向する側の永久磁石１１
が、着磁磁界の方向に着磁されると不都合が生じ
るので、永久磁石１１の材質としては、磁極部１
５ｂの小さな着磁磁界よりも大きい減磁耐力を持
つものを用いる必要がある。

磁極部１５ａの着磁磁界がほぼ25kOe、磁極部
１５ｂの着磁磁界がほぼ12.5kOeの着磁装置を用
いて着磁した場合、磁極部１５ａのほぼ25kOeの
大きな磁界で強く着磁されせた永久磁石は、ほぼ
25kOeの反磁界まで磁力を保持するので、磁極部
１５ｂでほぼ12.5kOeの小さな反磁界を受けても
極性が反転することはない。また、磁極部１５ｂ
のほぼ12.5kOeの小さな磁界で弱く着磁された永
久磁石は、磁極部１５ａでのほぼ25kOeの大きな
反磁界を受けると、極性が反転して所望の極性に
着磁される。

したがつて、このような性質を有する磁石材と
して、本実施例では、例えばサマリユームコバル
トSmCo系のような希土類磁石で、その残留磁束
密度Brが8kG、抵抗力Hcが7.95kOe、iHcが
25kOeの材質を使用している。

なお、この実施例では、第３図に示すような、
永久磁石部材として１個の円弧状の永久磁石を用
いた回転子の着磁に適用した場合について述べた
が、第５図に示すような、製作し易い平板状の永
久磁石１９を複数個用いた回転子の着磁に適用す
ることもできる。

〔発明の効果〕 以上説明したように、本発明によれば、始動特
性および同期運転特性に優れたイメージ極を有す
６極形の永久磁石式同期電動機の回転子を組立後
において容易に着磁することができる。その結
果、従来のようにかご形巻線のダイカスト成形時
の熱によつて予め着磁された永久磁石部材の磁気
特性が劣化するのを防ぎ、かつ永久磁石部材の鉄
心内への挿入作業も容易となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来における永久磁石式同期電動機の
回転子の一例を示す縦断側面図、第２図は第１図
のＡ―Ａ断面図、第３図は本発明の着磁方法が適
用される永久磁石式同期電動機の回転子の一例を
示す縦断側面図、第４図は本発明の着磁方法を実
施するための着磁装置を示す概略構成図、第５図
は本発明が適用される永久磁石式同期電動機の回
転子の他例を示す縦断側面図である。 １……回転軸、２……回転子鉄心、３……かご
形導体、１１，１９……永久磁石、１５……着磁
用鉄心、１５ａ，１５ｂ……磁極部、１６……着
磁用コイル。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 回転軸と、この回転軸に固着された回転子鉄
   心と、この回転子鉄心の外周部分に設けられたか
   ご形巻線と、前記回転子鉄心のかご形巻線より内
   側の部分に設けられかつ周方向にほぼ等しい間隔
   をあけて配置された周方向に延びる３つの永久磁
   石部材とからなり、かつこれら３つの永久磁石部
   材を径方向にかつ同一方向に着磁し、これら永久
   磁石部材の周方向の間に３つのイメージ極を形成
   する永久磁石式同期電動機の回転子の着磁方法に
   おいて、前記永久磁石部材の磁石材として希土類
   磁石を用いるとともに、着磁装置の着磁用鉄心に
   おける極弧の小さい一方の磁極部に、組立てられ
   た回転子における前記３つの永久磁石部材のうち
   の１つを、極弧の大きい他方の磁極部に、他の２
   つをそれぞれ対応させ、前記着磁用鉄心に巻装さ
   れた着磁用コイルを付勢して１つの永久磁石部材
   に大きな磁界を、他の２つの永久磁石部材に小さ
   な磁界をそれぞれ加える着磁工程を、３つの永久
   磁石部材のそれぞれについて順次行うことを特徴
   とする永久磁石式同期電動機の回転子の着磁方
   法。