JPS6145333Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はいわゆる慣性飛び込み式エンジン始動
装置の改良に関し、特に自動二輪車に適したエン
ジン始動装置に係るものである。

セルモータに連結されているシヤフトに切られ
たヘリカルスプラインにクラツチスリーブを嵌合
し、セルモータの始動時に、クラツチスリーブの
回転慣性を利用し、一方向のみの回転を許すワン
ウエイローラクラツチを介してピニオンギヤを、
エンジンに連結されたリングギヤに噛み合せるよ
うにしたいわゆる慣性飛び込み式エンジン始動装
置においては、前記ワンウエイクラツチによつ
て、エンジンからセルモータへの回転力伝達を遮
断するようになつているため、ピニオンの早期離
脱が改善されているが、エンジンの始動的におけ
るピストン上昇行程とピストン下降行程との瞬間
回転速度の変動が大きい自動二輪車用エンジンの
場合には、ピニオンギヤとリングギヤとの噛み合
いが外れ、始動不能となることがあつた。

本考案はこのような難点を克服したエンジン始
動装置の改良に係り、セルモータの回転に連動し
該セルモータの軸と平行なシヤフト上で戻しばね
力に抗して飛び出し自在に嵌合されたピニオンギ
ヤを有しセルモータの始動回転力のみをエンジン
に伝達するワンウエイクラツチを内蔵したピニオ
ンアツセンブリと、エンジンのクランク軸に連結
され前記ピニオンアツセンブリのピニオンギヤが
飛び出した時に前記ピニオンギヤに噛み合い前記
エンジンをクランキングするリングギヤとを備
え、ピニオンアツセンブリの静止慣性力と前記シ
ヤフトのヘリカルスプラインとにより前記ピニオ
ンギヤの飛び出しがなされるエンジン始動装置に
おいて、前記ピニオンアツセンブリにアーム一端
が係合し該ピニオンアツセンブリのピニオンギヤ
の軸方向移動に従動するアームを前記シヤフトと
直交する軸を中心に揺動自在に枢支し、前記ピニ
オンアツセンブリのピニオンギヤと前記リングギ
ヤとの非噛み合い位置にて前記アームが揺動でき
るように前記アームの他端面にロツク手段の係止
片を衝接させるとともに前記ピニオンギヤと前記
リングギヤとの噛み合い完了位置にて前記アーム
の他端にロツク手段の係止片を係止させるロツク
手段を、前記アームの揺動軸と平行な方向を中心
として揺動自在に枢着し、前記セルモータの回転
と連動して前記ロツク手段を動作させ該ロツク手
段の係止片と前記アームの他端と係止を保持させ
るロツク駆動手段を設けたことを特徴とするもの
で、その目的とする処は、クランキングの瞬間回
転速度変動の大きなエンジンをも確実にエンジン
を始動することができる構造の簡単なエンジン始
動装置を供する点にある。

本考案は、前記したように構成されているた
め、前記セルモータを回転させることにより、前
記ピニオンアツセンブリの静止慣性力を利用し前
記シヤフトのヘリカルスプラインでもつて前記ピ
ニオンギヤを飛び出させて、前記リングギヤに噛
み合せることができるので、ピニオンギヤをリン
グギヤに噛み合せるための噛み合せ駆動手段を必
要とせず、構造が簡単化されて、小型化が可能で
ある。

また本考案においては、ピニオンギヤがリンク
ギヤに一旦噛み合つて、セルモータの回転力がエ
ンジンに伝達されるようになると、前記ロツク駆
動手段の動作によつて、リングギヤにピニオンギ
ヤを噛み合せた状態を保持させることができるの
で、エンジン始動時においてクランク軸の回転速
度が変動しても、ピニオンギヤとリングギヤとの
噛み合せを解除することなく、セルモータの回転
力をクランク軸に伝えて確実に始動させることが
できる。

さらに本考案では、前記ピニオンアツセンブリ
を支持するシヤフトを前記セルモータの軸と平行
に配設したため、その軸方向長さを短縮してエン
ジン始動装置をコンパクトにすることができる。

さらにまた本考案においては、前記したように
前記ピニオンアツセンブリにアーム一端が係合し
該ピニオンアツセンブリのピニオンギヤの軸方向
移動に従動するアームを前記シヤフトと直交する
軸を中心に揺動自在に枢支し、前記ピニオンアツ
センブリのピニオンギヤと前記リングギヤとの非
噛み合い位置にて前記アームが揺動できるように
前記アームの他端面にロツク手段の係止片を衝接
させるとともに前記ピニオンギヤと前記リングギ
ヤとの噛み合い完了位置にて前記アームの他端に
ロツク手段の係止片を係止させるロツク手段を、
前記アームの揺動軸と平行な方向を中心として揺
動自在に枢着し、前記セルモータの回転と連動し
て前記ロツク手段を動作させ該ロツク手段の係止
片と前記アームの他端と係止を保持させるロツク
駆動手段を設けたため、前記アームは、始動時の
ピニオンギヤの飛び出しに追従して無理なく揺動
し、該ピニオンギヤとリングギヤとの噛み合い完
了位置にて前記アームの他端に前記ロツク手段の
係止片が係止し、前記ロツク駆動手段の動作にて
この係止が保持され、この結果、前記アーム、ロ
ツク手段には大きな力が加わらず、これらアー
ム、ロツク手段の強度、剛性が小さくかつロツク
駆動手段が小さくて足り、始動装置の小型軽量化
が可能となる。

以下図面に図示された本考案のエンジン始動装
置の一実施例について声明すると、１は自動二輪
車用４サイクルガソリンエンジン（２サイクルエ
ンジンでも可）で、同エンジン１のクランクケー
シング２の後方に隣接してセルモータ３が付設さ
れ、同セルモータ３の出力軸４と一体のピニオン
ギヤ５は、第１減速ギヤ６に噛み合わされ、同第
１減速ギヤ６と一体の第２減速ギヤ７は、ドライ
ブシヤフト８とスプライン結合されたギヤ９に噛
み合されており、セルモータ３が稼動すると、ド
ライブシヤフト８は減速されて駆動されるように
なつている。

しかして前記ドライブシヤフト８には、進みの
大きなヘリカルスプライン１０が形成され、同ヘ
リカルスプライン１０にクラツチインナー１６が
螺合されるようになつている。

またギヤ９とドライブシヤフト８との接合面に
は、ピニオンギヤ１２の移動時に生じる同接合面
の衝撃とそれにより生ずる騒音が防止するための
ダンバリング１１が介装されている。

さらに前記ドライブシヤフト８のギヤ９とヘリ
カルスプライン１０との間の円筒面部にはピニオ
ンギヤ１２が回転自在にかつ軸方向へ摺動自在に
嵌装され、同ピニオンギヤ１２にスタータピニオ
ンカツプ１５によりワンウエイローラクラツチ１
３が一体に取付けられており、セルモータ３の稼
動によりドライブシヤフト８が回転される方向に
はワンウエイローラクラツチ１３はドライブシヤ
フト８の円筒状部とローラ１４を介して一体に楔
合されて回転駆動され、後記するエンジン回転方
向に回転するクランク軸３３からの回転力は自動
的に断たれるようになつている。

さらにまた前記ヘリカルスプライン１０に螺合
されるクラツチインナー１６の一側スリーブ部１
７は、前記ドライブシヤフト８の外周とワンウエ
イローラクラツチ１３の内側に螺合され、ワンウ
エイローラクラツチ１３を挾んでピニオンギヤ１
２と反対側でクラツチインナー１６に係合された
リング１９とスタータピニオンカツプ１５とによ
り、ピニオンギヤ１２、ワンウエイローラクラツ
チ１３およびクラツチインナー１６は、軸方向に
対しては相互に一体化された状態で、ドライブシ
ヤフト８に対して軸方向へ移動しうるようになつ
ている。このため、第３図で反時計方向へドライ
ブシヤフト８が回転してクラツチインナー１６も
同方向へ回転した時、同クラツチインナー１６の
スリーブ部１７はローラ１４を介してワンウエイ
ローラクラツチ１３に楔合し、同ワンウエイロー
ラクラツチ１３およびピニオンギヤ１２は同じ方
向へ回転駆動されるようになつている。

また前記クラツチインナー１６の外側でドライ
ブシヤフト８にワツシヤ２０が嵌合され、同ドラ
イブシヤフト８の外端はピニオンアツセンブリケ
ーイング２１に回転自在に枢支されている。

さらにドライブシヤフト８とクラツチインナー
１６とにリターンスプリング２２が介装されてお
り、同リターンスプリング２２の弾性力により、
ピニオンギヤ１２、ワンウエイローラクラツチ１
３、スタータピニオンカツプ１５、クラツチイン
ナー１６は、ドライブシヤフト８のギヤ９より離
れる方向に付勢されている。

さらにまた前記ドライブシヤフト８を枢支し、
前記ギヤ９、ピニオンギヤ１２、ワンウエイロー
ラクラツチ１３、スタータピニオンカツプ１５、
クラツチインナー１６、リング１９およびワツシ
ヤ２０を覆うピニオンアツセンブリケーイング２
１に、スタータシフター２３が揺動自在に枢止さ
れており、同スタータシフター２３の押圧片２４
がクラツチインナー１６の鍔部１８に接触したま
ま、同クラツチインナー６の軸方向移動に追従で
きるように、前記鍔部１８の外側に押圧片２４と
係合する円周溝が形成されている。

また前記スタータシフター２３の基部受片２５
の端面に隣接してスタータロツクカム２６の先端
係止片２７が同基部受片２５に係脱自在に揺動枢
支され、同スタータロツクカム２６の二又基部２
８はソレノイド２９のプランジヤ３０の先端ピン
３１に嵌合されており、前記ソレノイド２９が動
作されて、プランジヤ３０が引込まれた時には、
スタータロツクカム２６が第４図および第５図で
反時計方向へ揺動されて、スタータシフター２３
の基部受片２５に係合またはその端面に強く押圧
されるようになつている。

そして前記ソレノイド２９は、前記セルモータ
３の稼動と同時に作動されるように、図示されな
いスタータスイツチを介して電源に接続されてい
る。なお３２はソレノイドプランジヤ３０の復帰
用コイルスプリングである。

また前記エンジン１のクランク軸３３には、点
火栓に電流を供給するための交流発電機のマグネ
ツトを備えたフライホイール３４が一体に装着さ
れ、同フライホイール３４にリングギヤ３５が一
体に嵌着されている。

さらに第２図に図示されるように、セルモータ
３は車体右側に取付ステー３６に取付けられてい
る。

図面に図示された実施例は前記したように構成
されているので、図示されないスタータスイツチ
を閉成していない状態では、セルモータ３は始動
されず、かつソレノイド２９も動作されず、リタ
ーンコイルスプリング２２の弾性力によりピニオ
ンギヤ１２は、第４図に図示されるように、ギヤ
９より離れる方向に付勢されてリングギヤ３５よ
り離脱されるとともに、ソレノイド２９のプラン
ジヤ３０は同ソレノイド２９の非動作により突出
され、スタータロツクカム２６の先端係止片２７
はスタータシフター２３の基部受片２５より外さ
れている。

このようにスタータスイツチが閉成されていな
い状態においては、ピニオンギヤ１２とリングギ
ヤ３５との噛み合いは外れているため、エンジン
１とセルモータ３との連結が断たれ、同エンジン
１からセルモータ３への動力の伝達は遮断される
のみならず、逆にセルモータ３からエンジン１へ
の動力の伝達も遮断されている。

しかしながらスタータスイツチを閉成すると、
セルモータ３が回転を始め、ピニオンギヤ５、原
則ギヤ６，７およびギヤ９を介してドライブシヤ
フト８が一方向へ回転される。この始動瞬間にお
いては、ドライブシヤフト８は一方向へ回転され
るが、クラツチインナー１６には回転に対する停
止慣性があるため、停止状態のクラツチインナー
１６が回転状態のドライブシヤフト８のヘリカル
スプライン１０に捩込まれ、クラツチインナー１
６の軸方向移動とともにピニオンギヤ１２がギヤ
９へ接近してリングギヤ３５に噛み合い、セルモ
ータ３の回転トルクがクランク軸３３に伝達さ
れ、エンジン１が始動される（第５図参照）。

またクラツチインナー１６の内側軸方向移動に
伴なつてスタータシフター２３も第４図に図示の
ような状態から第５図に図示のような状態に揺動
されるが、これと同時にスタータスイツチの閉成
によるソレノイド２９の動作でプランジヤ３０が
引込まれ、スタータロツクカム２６が第５図の反
時計方向へ揺動され、その先端係止片２７がスタ
ータシフター２３の基部受片２５に係合され、同
スタータシフター２３が第５図に図示の状態にロ
ツクされる。

このようなスタータロツクカム２６によるスタ
ータシフター２３のロツクで、クラツチインナー
１６がドライブシヤフト８のヘリカルスプライン
１０に深く噛み合された状態に設定されるため、
クランク軸３３に連結されている図示されないピ
ストンの上昇行程と下降行程とにおける作動ガス
に対するエネルギ授受により、またはエンジン始
動初期段階における不連続着火により、クランク
軸３３に著しく大きな瞬間回転速度変動が生じて
も、ドライブシヤフト８とクラツチインナー１６
との結合が保持され、セルモータ３からエンジン
１への回転トルクの伝達が確実に遂行される。

さらに仮に、エンジン１が始動してピニオンギ
ヤ１２が、セルモータ３により駆動されるドライ
ブシヤフト８よりも高速に回転しても、ピニオン
ギヤ１２と、ドライブシヤフト８に一体化されて
いるクラツチインナー１６とに、ワワンウエイロ
ーラクラツチ１３が介装されているため、エンジ
ン１よりセルモータ３への回転トルクの伝達は阻
止され、高速回転によるセルモータ３への悪影響
が阻止される。

しかしながら、エンジン１が始動して安定した
運転状態になつたことを確認した後、スタータス
イツチを切ると、ソレノイド２９が非動作状態に
復帰されて、プランジヤ３０が突設されるため、
第４図に図示されるようにスタータロツクカム２
６の先端係止片２７とスタータシフター２３の基
部受片２５との係合が外される。

この時、セルモータ３の稼動が停止されるた
め、クラツチインナー１６とドライブシヤフト８
との速度差により、またリターンスプリング２２
の助成により、ドライブシヤフト８のヘリカルス
プライン１０に沿いクラツチインナー１６は外側
に軸移動され、ピニオンギヤ１２とリングギヤ３
５との噛み合いが解除され、エンジン１とセルモ
ータ３との連結が完全に遮断される。

また第４図に図示のように、スタータロツクカ
ム２６とスタータシフター２３との係合が外れた
状態で、クラツチインナー１６の内側軸方向移動
によるスタータシフター２３の揺動開始以前に、
ソレノイド２９の動作で、プランジヤ３０が引込
まれようとしても、スタータロツクカム２６の先
端係止片２７はスタータシフター２３の基部受片
２５の端面に衝接したままであるので、クラツチ
インナー１６の内側軸方向移動によるスタータシ
フター２３の揺動は円滑に行なわれ、ピニオンギ
ヤ１２がリングギヤ３５に噛み合つた時に、スタ
ータロツクカム２６とスタータシフター２３との
ロツクが完了される。

さらに第２図に図示されるように、セルモータ
３は車体右側の取付けステー３６を介して車体に
取付けられているため、同セルモータ３を外し、
ピニオンアツセンブリケース２２を電動式始動装
置のないキツク駆動式始動装置のケースに交換す
ることができ、互換性を持たせることができる。

さらにドライブシヤフト８の鍔部とギヤ９とに
ダンパリング１１を介装したため、ピニオンギヤ
１２の移動時に生じる衝撃が緩衝され、この衝撃
による騒音が確実に防止される。

さらにまたスタータスイツチの閉成によつて、
電気的にスタータロツクカム２６とスタータシフ
ター２３とのロツクが自動的に行われるため、ハ
ンドルと始動装置との間をワイヤで連結する必要
性がなく、操作性と信頼性が改善される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本案に係るエンジン始動装置の一実施
例を備えたエンジンの側面図、第２図はその平面
図、第３図はその一部縦断側面図、第４図はその
要部縦断平面図、第５図は他の作動宕状態の要部
縦断平面図である。 １……エンジン、２……クランクケーイング、
３……セルモータ、４……出力軸、５……ピニオ
ンギヤ、６，７……減速ギヤ、８……ドライブシ
ヤフト、９……ギヤ、１０……ヘリカルスプライ
ン、１１……ダンパリング、１２……ピニオンギ
ヤ、１３……ワンウエイローラクラツチ、１４…
…ローラ、１５……スタータピニオンカツプ、１
６……クラツチインナー、１７……スリーブ部、
１８……鍔部、１９……リング、２０……ワツシ
ヤ、２１……ピニオンアツセンブリケーイング、
２２……リターンスプリング、２３……スタータ
シフター、２４……押圧片、２５……基部受片、
２６……スタータロツクカム、２７……先端係止
片、２８……二又基部、２９……ソレノイド、３
０……プランジヤ、３１……先端ピン、３２……
復帰用コイルスプリング、３３……クランク軸、
３４……フライホイール、３５……リングギヤ、
３６……取付ステー。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. セルモータの回転に連動し該セルモータの軸と
   平行なシヤフト上で戻しばね力に抗して飛び出し
   自在に嵌合されたピニオンギヤを有しセルモータ
   の始動回転力のみをエンジンに伝達するワンウエ
   イクラツチを内蔵したピニオンアツセンブリと、
   エンジンのクランク軸に連結され前記ピニオンア
   ツセンブリのピニオンギヤが飛び出した時に前記
   ピニオンギヤに噛み合い前記エンジンをクランキ
   ングするリングギヤとを備え、前記ピニオンアツ
   センブリの静止慣性力と前記シヤフトのヘリカル
   スプラインとにより前記ピニオンギヤの飛び出し
   がなされるエンジン始動装置において、前記ピニ
   オンアツセンブリにアーム一端が係合し該ピニオ
   ンアツセンブリのピニオンギヤの軸方向移動に従
   動するアームを前記シヤフトと直交する軸を中心
   に揺動自在に枢支し、前記ピニオンアツセンブリ
   のピニオンギヤと前記リングギヤとの非噛み合い
   位置にて前記アームが揺動できるように前記アー
   ムの他端面にロツク手段の係止片を衝接させると
   ともに前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの噛
   み合い完了位置にて前記アームの他端にロツク手
   段の係止片を係止させるロツク手段を、前記アー
   ムの揺動軸と平行な方向を中心として揺動自在に
   枢着し、前記セルモータの回転と連動して前記ロ
   ツク手段を動作させ該ロツク手段の係止片と前記
   アームの他端と係止を保持させるロツク駆動手段
   を設けたことを特徴とするエンジン始動装置。