JPS6113214Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

この考案は捩れ溝をもつたドリル本体の先端に
超硬合金チツプをＶ字形の接合面で接合し、かつ
接合面をろう付け固定したドリルに関する。 近年材料開発が進み種々の難削材が開発されて
いる。そのため機械加工でも重要な要素の一つで
ある、ドリルによる穴明け加工において、被削性
の悪い材料に対しては、通常のドリルでは寿命が
短いので、寿命が長く、精度が良く、高速度で穴
明けのできる超硬質の焼結合金などのチツプを付
けたドリルが要求されている。超硬質の焼結合金
とは、サーメツト合金、超硬合金、立方晶窒化硼
素系合金（CBN）、セラミツク合金などを言い、
これらの超硬質の焼結合金のチツプを本明細書で
は超硬合金チツプと略称することにする。 このような要望に対して従来から、第１図や第
２図に示すように、捩れ溝を有するドリル本体１
の先端に超硬合金チツプ２をＶ字形にろう付け接
合したものが開発されている。しかし、一般的に
ドリルによる穴明けにおいてはドリルを捩り力
（切削トルク）と押しつけ力（スラスト）が作用
する。これらを「切削抵抗」と総称している。ま
た、切削中のドリルは通常第６図に示すように振
動を伴つている。 第１図に示す従来品は、接合面３を軸側面から
見るとＶ字形に形成されているが、ドリル本体１
の接合面は、手前ランド部中心点から軸心を通つ
て反対側ランド部中心点間に軸に直角な線を結
び、ランド部Ｇの正面から見た接合面の手前ラン
ド側の面３ａは軸心に対して左上より右下へ下つ
た斜の面であり、反対側ランド側の面３ｂは軸心
に対して右上より左下に下つた斜めの面であつ
て、接合面の平担面が互に外側に向いている。従
つて切削方向の捩り力のみを受け止める形状とな
つている。従つて第１図に示すような従来品の傾
斜した接合面３は、振動を伴わない切削トルクに
対しては十分耐えることができる。しかし、第１
表に示す静ねじり破壊試験結果によれば、正ねじ
りに対しては従来品は本考案品より若干強くなつ
ている。

【表】 しかし実際の切削ではトルクと同時にスラスト
も作用する。従来品ではスラストに対しては接合
面にせん断力（すべりの力）が作用するので接合
面は容易に破壊される。これに振動が伴うので一
層破壊が助長されることになり、接合強度が不充
分である。さらに、又第２図に示す従来品では、
ドリル本体１とチツプ２の接合面３はランド部に
Ｖ字形の接合面３ｃを形成しており、Ｖ字形の角
度120゜〜150゜と規制されているので、ろう付け
される面積が非常に狭く、捩りおよび曲げに対す
るろう付け強度は不充分である。 本考案は上述のような従来のチツプ付きドリル
の欠点を改善し、接合面の加工が容易で、押しつ
ける力（スラスト）に対する強度および捩り強度
が高く、かつ曲げ強度が高い、ドリル本体１に超
硬合金チツプをＶ字形にろう付けしたドリルを提
供しようとするものである。 以下本考案の実施例を図面について説明する
と、第３図に示すようにドリル本体１に超硬合金
チツプ２がＶ字形にろう付け接合されている。ド
リル本体１側の接合面４は第４図に示す軸直角断
面におけるランドＧの中央付近の点から、捩れ溝
５の中心６に向つて軸に対して斜めの平担な面４
で形成されている。形成された接合面４のランド
Ｇの両端ＡとＢおよびＣとＤとそれぞれ結ぶ直線
，は、Ｖ字形をなす頂部６の稜線とは
平行であり、稜線は軸と直角である。またラ
ンド側から見た接合面７はチツプ側に凸となる曲
線となつている。Ｖ字形接合面４は稜線を含
み、かつ稜線とドリル軸を含む平面に関して
互に対称である二平面４が形成されているので、
切削の際の軸方向の押し付け圧を均等に軸方向に
確実に受け止めることができ、又切削時の捩りや
曲げの力はＶ字形の稜線を含む対称な二平面
４全体が回り止めおよび、すべり止めとなつて二
平面全体で確実に受け止めることができる。溝５
の中心にＶ字形の接合面４を加工することは容易
で、ろう付け面を広くすることができるので、ド
リル本体１とチツプ２のろう付け強度も高くな
る。 第５図は第３図のドリル本体１とチツプ２をろ
う付け接合した面を展開したもので、ランド部の
曲線７と溝中心６をもつＶ字形線８とはなめらか
につながつており、接合面は対称なるＶ字形であ
ることが判る。ａ，ｂ，ｃ，ｄはそれぞれ第４図
のＡ，Ｂ，Ｃ，Ｄと対応しており、ab，cdはド
リルランド部でありbc，daはドリル溝である。
ドリル本体１側の接合部の頂部６の稜線は強
度上アールに加工する方がよい。一方チツプ２の
形状は、先端は捻れ錐であり、接合面はドリル本
体１の接合面と反対形状のＶ字形に加工されてい
る。そして接合されるチツプ２の側のＶ字形頂部
６の稜線はドリル本体１の頂部につけられた
アールより大きくするか、小さなフラツト部とし
て、両者の頂部間に形成された小さい空間にろう
がたまるようにして、接合面すべてをろう付けす
るようにして、ろう付け強度を保つようにするの
が望ましい。 第７図は従来品と本考案に係るドリルについて
各々どこまで高い送りで切削できるかを切削テス
トにより求めた結果である。これによれば接合面
が傾斜している従来品は第１表に示すように静的
なトルクには強いが、第７図に示す穴明け送り限
界テスト結果で明らかなように実際の切削抵抗を
受けた場合本考案品がはるかに有利であることが
分る。特にマンガン鋼や耐熱鋼などの切削抵抗が
大きい難削材の場合などはこの効果が一層顕著で
ある。 以上述べたように本考案は第３図乃至第５図に
示す如く、軸直角断面における両ランド幅の中央
付近の点から軸中心に向かつて軸に斜方向に平担
な接合面４を形成し、形成された接合面のランド
幅両端の点を結ぶ線およびとＶ字形をなす
頂部６の稜線は互に平行で、かついずれも軸
に直角をなす線上にあらしめ、Ｖ字形をなす二つ
の平担面４，４は稜線を挾んで対称にした接
合面において、ドリル本体１にチツプをろう付け
してあるので、切削中の軸方向の押しつけ力（ス
ラスト）、捩り力（切削トルク）および曲げ力に
対して強度が高く、高速度で高精度の切削が可能
で寿命の長い超硬合金チツプ付きのドリルを容易
に提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は従来の超硬合金チツプ付き
ドリルの側面図、第３図乃至第５図は本考案の一
実施例を示し、第３図は側面図、第４図は先端か
ら見た接合部の断面図、第５図は第３図の接合部
の展開図、第６図は切削中のドリルの振動状態を
示す説明図、第７図は穴明け送り限界の本考案品
と従来品の比較図である。 １……ドリル本体、２……チツプ、４……接合
面、５……捩れ溝、６……頂部、，……ラ
ンド幅両端の点を結ぶ線、……稜線。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 捩れ溝をもつたドリル本体の先端に超硬合金チ
   ツプをＶ字形にろう付け接合したドリルにおい
   て、軸直角断面における両ランド幅の中央付近の
   点より軸中心に向つて軸に斜めに平担な接合面を
   形成し、形成された接合面のランド幅両端の点を
   結ぶ線とＶ字形をなす頂部の稜線は平行で、いず
   れも軸に直角をなす線上にあり、Ｖ字形をなす面
   は稜線をはさんで対称であることを特徴とする接
   合部をＶ字形に形成した超硬合金チツプをろう付
   け接合したドリル。