JPS6036857B2 - 円筒、円柱状耐摩耗鋳物およびその製造法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は圧延用ロール、ローラーおよびその他の円筒状
もしくは円柱状鋳物の用途に供される耐摩耗複合鋳物お
よびその製造方法に係り、特にその外層の外表面にＷＣ
粒子を含有する高硬度層を一体に形成した三層構造から
なる耐摩耗性に優れたものの提供に関する。

例えば、圧延用ロールについては、その胸部表面には耐
摩耗性が要求され、その芯部およびネック部は軟質で強
鋤性のあることが要求される。

このため現在一般的には、遠心力鋳造によりその胸部表
面部のみを耐摩耗性に優れる高合金材で外殻層に形成し
た後、その内部に強靭材を鋳込み両者を溶着一体化せし
めて構成した複合ロールを使用する場合が多い。しかし
乍ら、このような複合ロールにあっても、高合金材等か
ら形成されるその外殻層の耐摩耗性に限度があり、特に
耐摩耗性が要求される用途には充分に対応し得ない現状
にある。

そこで、丸棒や線材圧延の仕上ロールの用途については
、従来はその外殻層を高合金チルド材で形成した硬度Ｈ
ｓ８疎前後を有する複合ロールが用いられてきたのであ
るが、最近ではこれに代わるものとして、ＷＣ粉末の焼
結超硬品を用いたものが使用され、優れた耐摩耗成績を
収めている。しかし乍ら、この種焼結超硬品にあっては
、大型ロールや胴長の長いロールに供するための大物品
の製造ができない現況にあり、しかもコスト高につく難
点がある。本発明はこのような技術背景に鑑みなされた
ものであり、圧延用ロールをはじめとしてその使用層に
当る外表面側には特に耐摩耗性が要求され、一方その内
層もしくは芯部には強靭性が要求される各種の円筒状も
しくは円柱状鋳物について、これを外層と内層もしくは
芯村とを溶着一体化せしめてなる複合構造のものにする
と共に、さらにその外層を、高合金材中に優れた高硬度
、耐摩耗特性を発揮するＷＣ粒子をほぼ等密度で密集状
態に含有した高硬度外層と、該高硬度外層の内面に形成
されＷＣ粒子を含有しない高合金外層とで構成した新規
な三層構造からなるものを提供せんとするものであり、
同時に又本発明は、上記ＷＣ粒子を含有する高硬度層を
形成してなる耐摩耗鋳物の製造手段として、従来のＷＣ
焼結品の場合のような問題を伴うことなく、遠心力鋳造
法を利用して目的鋳物を簡単かつ安価に製造できる方法
を提供するものである。

以下圧延用ロールを例に本発明をその製造方法と共に詳
述する。

そこで先ず、本発明の製造方法についてから述べると、
本法は第１図のような遠心力鋳造装置を用いて実施され
る。すなわち、第１図は圧延用ロールの鋳造に供される
通常の遠心力鋳造装置の概略を示し、図中１は回転ロー
フー、２は回転金型でその両端内面にネック部形成用の
砂型部３を装着して構成される。しかして、このような
回転金型２には、取鍋４からトラフ５等を介し、例えば
高合金グレン、高合金チルド、高Ｃアダマィト材等から
なる外層溶湯が鋳込まれ、まず複合ロールの外層が遠０
力鋳造されるのであるが、この外層の鋳込みに際しては
、好適には外層溶湯の銭込み溶傷流に対して、Ｎｉ、Ｎ
ｉ−Ｐ、Ｎｉ−Ｂ、Ｃｕ等でメッキされかつ適宜温度に
予熱されたＷＣ粉末６を添加するのである。

このようにして外層落陽に添加されたＷＣ粉末は、外層
溶傷中で遠心力付加の下にその比重差に基づいて、外層
が凝固するまでの間に比重分離する。すなわち、外層は
外層材である高合金材中にＷＣ粒子をほぼ等密度で密集
状態に含有した高硬度外層と、該高硬度外層の内面に形
成されＷＣ粒子を含有しない高合金外層とに分離形成さ
れる。ここで、本法において最も特徴を有する上記ＷＣ
粉末の添加について更に説明する。

まず本法においては、ＷＣ粉末を適宜被覆材でメッキし
て添加することを必須条件とするものであるが、これは
次のような理由に基づく。すなわち、外層外表面に目的
とする高硬度層を形成するためには、ＷＣ粉末をその粒
子の状態で外層組織中に含有させなければならないので
あるが、ＷＣ粉末をそのまま添加した場合では、それが
容易にＷとＣＯに分離してしまい、その分解したＷが外
層材に合金化して所期目的を達することができなくなる
。そこで本法では、このＷＣ粉末の分解を阻止し、それ
がＷＣ粒子の状態で組織中に有効に介在されるべく、Ｗ
Ｃ粉末にメッキ処理を施したものを添加するのである。
この際、メッキ材にはＷＣ粉末にメッキし易いもの、外
層材質に悪影響を及ぼさないもの、及び低コストのもの
であることの条件が議されるが、その好適な具体例とし
ては前記の通りである。このようにメッキされたＷＣ粉
末を添加する場合では、その分解合金化のおそれが少な
く、その添加有効率が高められる。

従って、その添加量は目的鋳物の条件に応じて適正に管
理でき、ＷＣ粉末の不必要な部分での含有も避けられて
高価なＷＣ粉末の添加量が必要最少限に抑えられる。ま
た、ＷＣ粒子は分解合金化のおそれが少ないから、ＷＣ
粒子が埋入された高硬度外層において、ＷＣ粒子はほぼ
等密度で密集状態となり、高硬度外層の肉厚方向に亘っ
て硬度がほとんど低下しないものとなる。従って、かか
る高硬度外層を圧延使用層として使用すれば、使用に伴
ない圧延使用層（すなわち（高硬度外層）が摩滅しても
耐摩耗性が低下することがなく、高硬度外層のすべてが
使用可能となり、経済性に極めて優れる。なお、外層外
表面の基地組織を形成する外層材が低合金の軟貿材であ
る場合では、ＷＣ粒子の存在によっても、使用時にこの
部分から摩耗を進行し、全体として耐摩耗性が劣化する
ことになり、またＷＣ粒子を含有する高硬度外層を外表
面に一体に形成する高合金外層は、それ自体ある程度硬
い材質のものである方がロール全体として全体としての
圧延時の変形や耐事故性の確保に対して好都合となるた
め、外層材は先に列記した如き高硬度、耐摩耗性を有す
る高合金材が使用される。

また、既述した通り高硬度外層はその肉厚方向に亘つて
硬度の低下がほとんどないので、該高合金外層を介する
ことにより、後述する欧材質の内層もしくは芯村との急
激な硬度変化を緩和する役目を果たし、硬度差の急激な
変化に起因する割損の発生等の欠陥を有効に防止するこ
とができる。次に又、本法においては、ＷＣ粉末を適宜
温度に子熱して添加することを必須条件とするものであ
るが、これは次のような理由に基づく。すなわち、子熱
しないでＷＣ粉末を添加する場合においては、熔湯量に
対して添加量が多い場合その添加後における外層溶湯の
温度低下を来し、これがため湯流れが悪くなると共に凝
固が早くなって、巣の発生原因となり易く、またＷＣ粉
末が外層外表面に均一に分布し難くなるためである。予
熱温度は添加する量により決定される。しかして、その
子熱温度については、外層材、その銭込温度、重量及び
メッキ材によって異なるが、通常３００〜９００℃の範
囲が適当である。すなわち、余り低過ぎる予熱効果が不
十分となり、一方高過ぎるとメッキ材が熔融したり、予
備処理のための設備、コストが嵩む難がある。なお、添
加されるＷＣ粉末の粒子の大きさは、余り細か過ぎると
耐摩耗性の効果がなく、また溶湯に添加した際均一に分
布しない問題を生じ、一方大き過ぎると外層外表面の機
械的性質を低下する欠点を招くが、通常５０〜２００仏
の範囲が適当である。

また、外層落陽の鏡込温度は、ＷＣ粉末の添加による温
度低下を考慮して、予めその低下分だけ高く設定してお
くのがＷＣ粉末の均一分布のために好適である。上記の
如くして、回転金型２内に外層溶湯を鋳込み外層が凝固
したならば、以後従来の複合ロールの場合と同様にして
、その内部に適宜鋳造手段により欧質強靭村からなる芯
材溶湯を鋳込み、外層と芯部及びネック部を溶着一体化
せしめた複合ロールを得るのである。

第２図はこのようにして製造された本発明の複合ロール
の構造を図示するものであり、図中７はＷＣ粒子を含有
する高硬度外層を、８はこの高硬度外層をその外表面に
一体に形成した高合金外層を、９はこの高合金外層と溶
着一体化された芯部＊及びネック部を示している。

すなわち、本発明に係る複合ロールは、高合金材からな
る外層と、軟質強轍村からなる芯材とを溶着一体化せし
めてなるものにおいて、更にその外層を、高合金材中に
優れた高硬度、耐摩耗特性を発揮するＷＣ粒子をほぼ等
密度で密集状態に含有した高硬度外層と、該高硬度外層
の内面に形成されＷＣ粒子を含有しない高合金外層とで
構成した三層構造を有することを特徴とするものである
。

以上は圧延用ロールを例に述べたのであるが、本発明は
各種ロール、ローフー、ライナー、スリーブその他の外
表面側に耐摩耗性が要求される円筒状もしくは円柱状鋳
物にも同様に適用できることは言うまでもなく、特に円
筒状鋳物への適用に際しては、外層鋳造後引続き遠心力
鋳造法により内層を鋳造すればよい。

そして、数個に切断して複合リングとして使用すること
も可能である。なお、図例では水平型遠心力鋳造による
場合を示しているが、本発明の製造方法においては傾斜
型等の適用も可能なことは勿論である。次に本発明の具
体的な実施例を掲げて説明する。

実施例 ロール寸法２９００×４００そ（金型寸法内径３００Ｊ
、胴長４５０肋）圧延用複合ロールを下記の材質、条件
で製造した：但し、鋳造諸条件は外層鏡込温度 １４
０００Ｏ ＷＣ粉末の添加条件 １００〜１５位ｈｅｓｈのものにＣｕメッキを施し、８
５０℃に予熱したものを、外層落陽の銭込時に５８ｋ９
添加（ロール８同部の外表面から２仇吻厚の部分まで面
積率で約５０％ＷＣ粒子が占める量に相当）。

錆込肉厚、重量外 層 ４帆
１０８ｋ９芯 材 ４２
５ｋ９化学成分（重量％）銭込材 Ｃ Ｓｉ Ｍ
ｎ Ｐ Ｓ Ｎｉ Ｃｒ Ｍｏ外 層 ３．
２１ ０．偽 ０．３１ ０．１０１ ０．０４５ ３
．５４ １．２１ ０．２５芯 村 ３．３５ １．１
２ ０．５４ ０．０９４ ０．０６１１．０３ ０．
４１，０．０９かくして得られたロールは、所期の三層
構造からなり、且同部外表面にはＷＣ粒子がほぼ等密度
で密集状態に含有した、耐摩耗性に秀でた高硬度外層が
形成され、一方高合金外層及び芯材についてはＷの影響
は認められず、所期の強級性が確保されているのを確認
した。

なお、この複合ロールの高硬度外層、高合金チルド材か
らなる高合金外層及び高級鋳鉄からなる芯材の各顕微鏡
組織を第３図，第４図及び第５図に現わす。

以上詳細に説明したように、本発明は圧延用ロールをは
じめその使用層に当る外表面側には特に耐摩耗性が要求
され、一方その内層もしくは芯部には強鞠性が要求され
る各種の円筒状もしくは円柱状鋳物について、内層もし
くは芯材に悪影響を及ぼすことなく、その外層を、高合
金材中にＷＣ粒子をほぼ等密度で密集状態に含有した高
硬度外層と、該高硬度外層の内側に形成されたＷＣ粒子
を含有しない高合金外層とで構成したので、外層の外表
面部を著しく耐摩耗性に優れたものとすることができ、
しかもこの高硬度外層は肉厚方向に百つて硬度変化がほ
とんどないので、表面が磨滅しても硬度低下がなく、高
硬度外層の全体について耐摩耗性に優れる。

更に、ＷＣ粒子を埋入させている基地が高合金材である
から、この基地部分から摩耗が進行し難く、全体として
耐摩耗性が劣化し‘こくい。また、高硬度外層の内面に
高合金外層が形成されていることにより、鋳物全体とし
ての変形や耐事故性の確保に対して好都合であり、更に
高硬度外層と内層もしくは芯村との硬度ギャップを緩和
せしめ、硬度差に起因する品質欠陥の発生を有効に防止
することができる。また本発明はその好適な製造方法と
共に、大物品や胴長の長いロールのような場合について
も、遠心力鋳造を利用して簡単かつ安価に適用でき、従
来健結超硬品の難点を克服し得たものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る複合ロールの製造工程を概略的に
示す断面図、第２図は本発明に係る複合ロールの構造を
示す断面図である。 第３〜５図は本発明に係る複合ロール一例についての各
部における組織を現わす顕微鏡写真であって、第３図は
高硬度層を、第４図は高合金外層を、第５図は芯材を現
わしている。７・・・・・・高硬度層、８・・・・・・
高合金外層、９・・・・・・心部及びネック部。 第１図 第２図

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 高合金材からなる外層と、軟質強靭材からなる内層
   もしくは芯材とを溶着一体化せしめてなる円筒状もしく
   は円柱状複合鋳物において、前記外層は高合金材中にＷ
   Ｃ粒子をほぼ等密度で密集状態に含有した高硬度外層と
   、該高硬度外層の内面に形成されＷＣ粒子を含有しない
   高合金外層とからなることを特徴とする円筒、円柱状耐
   摩耗鋳物。 ２ 円筒状もしくは円柱状複合鋳物の遠心力鋳造におい
   て、その外層溶湯の鋳込みに際し、同溶湯にＮｉ、Ｃｕ
   等をベースとした金属でメツキされかつ予熱されたＷＣ
   粉末を添加し、このＷＣ粉末を遠心力付加の下に比重分
   離してその外表面にＷＣ粒子を含有する高硬度外層とＷ
   Ｃ粒子を含有しない高合金外層とを一体に形成してなる
   外層を鋳造し、しかる後この外層内に内層もしくは芯材
   溶湯を鋳込み、両者を溶着一体化せしめることを特徴と
   する円筒、円柱状耐摩耗鋳物の製造法。