JPS591164B2 - ル−タ工具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明はルータ工具（ルータ・ミル、ルータピットと
も称する）に関する。

板材の側面や端面の成形又は仕上げに用いるルータ工具
には置方のものとねじれ刃のものとがあり、ねじれ刃の
場合、複数の切れ刃は回転軸に対し同じ方向にねじれ角
を有するのが一般である。

このような従来方式のルータ工具を用いて繊維強化樹脂
を含む板材を加工するとき端縁部でバリがで易いという
問題がある。特に極めて強靭でかつ軽量の構造材として
最近開発された超強靭性有機繊維樹脂（以下ＫＦＲＰと
略す）を用いた板材、成形材、プリプレグ（繊維基材に
樹脂を含浸又は塗布して半硬化させたもの）、又はこれ
をクラッドの一部として用いた板材の場合、繊維の末端
が露呈する端面のルータ加工においては、繊維と樹脂と
で強度差が大きく異なるため、繊維がケバ状に残り平滑
な仕上面が得られ難い。構造部材として端面の仕上品位
に欠陥があればその箇所より剥離、腐食、強度低下ある
いは破壊の生じる原因となり、その程度は金属材料と全
く様相を異にする。本発明は上記した従来技術の欠点を
一掃するべく、ルータ加工時における切れ刃と被削材と
のなす作用を観察分析することによりなされたものであ
り、その目的は繊維強化樹脂を含む板材の端面部の成形
ないし仕上げに使用するルータ工具の提供にある。この
発明の基本的な構成は、対をなす偶数の切れ刃を有し、
対の切れ刃が回転軸に対し等しいねじれ角をもつて互い
にねじれ角方向を異にするとともに切れ刃の長手方向に
必らず切れ刃を回転円周に沿つて展開したとき切れ刃ピ
ツチが一定となる部分が存在し、前記対をなす偶数の切
れ刃は切削加工領域における少なくとも中心近傍で適当
な切削幅をもつてオーバラツプするように設けられてい
るとともに、前記切れ刃ピツチが一定となる部分を被切
削材の中央付近に位置させることにより維持強化樹脂を
含む一板材の平滑に仕上げ加工が可能となり前記目的が
達成できる。

以下実施例の図面を参照し具体的に説明する。

第１図Ａ，ｂは本発明になる２枚刃のルータビツトを示
す。本体１の先端に互いにねじれ角の方向を異にした切
れ刃２，３が設けてある。同図ｂは工具先端から視たも
ので、４，５は刃溝を示している。上記切れ刃２，３は
回転軸方向Ｘ−Ｘに対して正負の同じねじれ角を有する
もので、その角度は任意に選ぶことができる。切れ刃の
方向は右勝手、左勝手のいずれでもよい。この例では２
枚刃（１対の切れ刃）であるが、４枚刃（２対の切れ刃
）、６枚刃等偶数枚あれば刃数にこだわらない。第２図
はこの発明によるルータ工具６で板材ｗの端面を切削す
る場合の工具と加工物との位置関係を示す。

切れ刃２，３の長手方向の中央付近に基準線Ｎ−Ｎを仮
想し、この線を含む軸直角断面に切れ刃７，８，・・・
を第３図の展開図で示すように全て等間隔ｄ１＝Ｄ２に
配設してある。しかし切れ刃のねじれ方向は互いに異な
つているために基準線Ｎ−Ｎから達ざかるに従つて切れ
刃ピツチは不揃いとなる。そこでこれら切れ刃７，８は
切削加工において基準線Ｎ−Ｎを加工すべき板厚Ｄの中
央付近に対応させたとき切削幅全体にわたつてオーバラ
ツプするように形成されてあり、第３図に示すように加
工すべき板厚Ｄの範囲内において常に右ねじれ、左ねじ
れのいずれの切れ刃も切削に関与することになる。この
ような構造を有するルータ工具によりＫＦＲＰを用いた
板を高速加工するとき、全ての部分（切削面）が右ねじ
れ、左ねじれの両切れ刃により、端面に露呈する繊維の
末端を上下の一方向に偏ることなく切削応力を与えなが
ら加工されるものであるから繊維がケバ状に残つたり、
板縁面にバリを生じたりすることがなく平坦な切削加工
面が得られる。

なお、本発明においては、ルータ加工時に全ての部分が
右ねじれ、左ねじれの両切れ刃により加工されるが長手
方向の長さの異なる切れ刃を配置した場合、基準線Ｎ−
Ｎの位置がわかりにくく、加工される板材の中心付近に
合わせるのが実際上困難となる。

したがつて本発明では第３図に示すように長手方向の切
れ刃７，８の長さＴｌ，ｔ２・・・を全ての切れ刃にわ
たつて等しく（１，＝１２）なるように形成し、かつ、
基準線Ｎ−Ｎ上での各切れ刃の間隔Ｄｌ，ｄ２を等しく
（ｄ１＝Ｄ２・・・）とれば左ねじれ刃７と右ねじれ刃
８の位置が多少上下にくいちがつていても、はみ出した
上下両端位置から測つて中間部分に基準線Ｎ−Ｎが来る
ことになり、板材との位置合わせがさほど困難でなくな
る。第４図Ａ，ｂは本発明によるルータビツトの他の例
を示す。

この場合１つの切れ刃に対して、これとねじれ角の方向
の異なる切れ刃を交差させて設けたものである。そして
一つの切れ刃９とこれに交差する他の切れ刃１０は交互
に分断しあるいは一つの長い切れ刃１１に対し他の切れ
刃１２，１３，１４，・・・はいくつかに分断される。
第４図ａは交互に分断した場合、同ｂは一方が他方を３
つに分断した場合であり、第５図Ａ，ｂはそれらを展開
した場合を示す。なお、同図ａでは一方のねじれ刃９と
他方のねじれ刃１０とは切削加工領域における中心近傍
でのみオーバラツプするようになつている。これらの例
において、有効刃長の任意の位置で軸直角に切断した断
面内の切れ刃の数を等しくなるように配置する。第６図
は本発明の別の実施例を示す。

すなわち切れ刃１５，１６が軸方向Ｘ−Ｘ方向に対しテ
ーパ角θを有する場合である。転削工具におけるねじれ
角は回転円筒面での切れ刃の接線と回転軸とのなす角で
呼称されるが、テーパを持つた切れ刃においては切れ刃
の位置によつて回転径が異なるためリード（進み角）を
一定として加工する通常の製作方法ではねじれ角も位置
によつて変化する。しかし、この場合でも右ねじれ、左
ねじれの両切れ刃は、軸直角平面では任意の位置で同角
となり目的を果している。なお上記傾斜角θは実用的に
は１０果以内の範囲で採用されるべきである。第７図は
本発明のさらに他の実施例を示す。同図に示すように対
をなす切れ刃において、一方のねじれ刃では工具先端側
の端面が底面となる仮想円錐１９上に切れ刃が形成され
、他方のねじれ刃では工具基端（シャッタ）側が底面と
なる仮想円錐１８上に切れ刃が形成されている。交互の
ねじれ角をもつ切れ刃は基準線から遠ざかるに従つて、
右ねじれ刃１７は先端側が、左ねじれ刃１８は基端（シ
ヤンク）側が太くなるテーパを有する。基準線上では両
者の軸心からの距離は等しい。この場合にも、切れ刃は
テーパを有するがねじれ角、リードのいずれもが一定で
あれば差支えない。さらにこの実施例においては、テー
パ角度は、切削に際して交互（左、右）のねじれ角を持
つ両切れ刃が加工物の厚み全面にわたつて切削に関与す
る範囲内にあることが特徴である。すなわち、交互ねじ
れ角を有する切れ刃にテーパを付した場合、テーパ角度
及び切削条件の如何によつては、一方向のねじれ角を有
する切れ刃のみしか切削に関与しない場合が存在する。
例えばテーパ角度がある程度以上大きい場合、あるいは
、加工物が片持ち支持されて支持点からの距離が大きい
場合に加工物が振動を起こし切削が困難となることがあ
る。その場合は加工能率が本実施例に比し半減すること
は否めず効果が少ない。なお、この実施例において加工
を行なう際は加工すべき板材の厚み中央部が基準線に一
致すべく調整する。第８図ａ−ｃは２枚刃の実施例にお
いて切削中の切れ刃の移動を模型で示したものである。

同図ａは円筒上に設けた切れ刃のうち基準線Ｎ−Ｎ上に
ある切れ刃により切込量ｔとして切削した場合を示す。
ここでは円周方向のピッチが均一のため、切れ刃は等間
隔に進む。同図ｂは同じ形状で基準線Ｎ−Ｎより遠ざか
つた切れ刃による場合を示し、Ａは一方（たとえば右）
のねじれ刃による切削量（けずり屑の量）を示し、Ｂは
他方（たとえば左）のねじれ刃による切削量を示す。こ
の場合切れ刃の進みが不等分になる。同図ｃは交互ねじ
れ、交互テーパを持つ切れ刃の基準線Ｎ−Ｎから隔てた
位置での切れ刃の進みを示す。この場合切れ刃の進みに
大小ができるとともに切込量もテーパ角度に対応して変
化する。使用条件によつて、例えば加工物の支持状態や
、切削速度により、一方のねじれ刃による切込量Ｔ２が
極めて小さくなり、切削量ＢがほとんどＯになる場合も
あり得る。本発明は切削量ＢがＯにならないような範囲
でテーパの角度を選ぶものとする。交互ねじれ刃をもつ
類似工具として千晦刃側フライスがあるが、これは主と
して金属材料の粗削りを目的とした工具であり工具分類
および用途において全く異なるとともにその形状、切れ
刃の配置等の構造も顕著に異なる。

本発明によるルータ工具の具体的効果は直径６．３５ｒ
ｗｔの２枚刃（円筒状切れ刃）を高速度工具鋼にて製作
した場合、回転数１５００ｒｐｍ〜３０００ｒｐｍで使
用してＫＦＲＰ材端面にバリゲバ等の欠陥は認められな
かつた。

本発明においては切れ刃部以外の構成および工具材料に
ついて任意に選択できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明によるルータ工具の一実施例を示しａは
その正面図、ｂはその側（先端）面図である。 第２図は本発明によるルータ工具を用いて加工時の工具
と加工物の位置関係を示す説明図、第３図は第２図の展
開図である。第４図Ａ，ｂは本発明によるルータ工具の
他の実施例をそれぞれ示し、第５図Ａ，ｂは第４図のＡ
，ｂに対応する展開図、第６図は本発明によるルータ工
具の他の実施例を示す正面図、第７図ａは本発明のさら
に他の実施例を示す正面図、同図ｂはａの構造を明らか
にするための斜視図である。第８図Ａ，ｂ，ｃは切れ刃
の進み方を模型的に示す展開図である。１・・・本体、
２，３・・・切れ刃、４，５・・・刃溝、６・・・ルー
タ工具、７，８，９，１０・・・切れ刃、１１・・・長
い切れ刃、１２，１３，１４・・・分断された切れ刃、
１５，１６・・・切れ刃（テーパ角を有する）、１７・
・・右ねじれ切れ刃、１８・・・左ねじれ切れ刃、ｗ・
・・被切削材、Ｎ−Ｎ・・・基準線、Ｘ−Ｘ線線、Ｄ・
・・板厚、１１，１２・・・切れ刃長さ、Ｄｌ，ｄ２・
・・基準線上の切れ刃間隔、θ・・・傾斜角、Ｔ，ｔｌ
，ｔ２・・・切込量、Ａ，Ｂ・・・切削片。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 対をなす偶数の切れ刃を有し、対の切れ刃が回転軸
   に対し等しいねじれ角をもつて互いにねじれ角方向を異
   にし、切れ刃を回転円周に沿つて展開した状態で切れ刃
   ピッチが一定となる部分が存在し、前記対をなす切れ刃
   は切削加工領域における少なくとも中心近傍で適当な切
   削幅をもつてオーバラップするように設けられていると
   ともに前記切れ刃ピッチが一定となる部分を被切削材の
   中心近傍に位置させることを特徴とするルータ工具。 ２ 前記対をなす偶数の切れ刃は、各切れ刃長さを等し
   くし、かつ軸方向の位置を等しく円筒上に配置してある
   特許請求の範囲第１項に記載のルータ工具。 ３ 前記対をなす偶数の切れ刃は軸方向に対し同じ傾斜
   角を有し、その傾斜角は最大１０°とする特許請求の範
   囲第１項又は第２項記載のルータ工具。 ４ 前記対をなす切れ刃において、一方のねじれ刃では
   工具先端側の端面が底面となる仮想円錐上に切れ刃が形
   成されるとともに、他方のねじれ刃では工具基端側の切
   れ刃終端面が底面となる仮想円錐上に切れ刃が形成され
   る特許請求の範囲第１項、第２項又は第３項記載のルー
   タ工具。