JPS5911172B2 - 熱電子放射陰極 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、少ない消費電力で長時間安定に作動する六硼
化物系熱電子放射陰極に関する。

六硼化ランタン（ＬａＢ６λ初めとした六硼化物は仕事
関数が小さく、従来使用されているタングステン、およ
び酸化物系熱電子放射材に代る材料として注目されてい
るが、これらの材料は高温に於で大部分の材料と反応す
るために、加熱時の支持が困難である。

これらの欠点を解決するためいろいろの提案がある。

例えば、（１）六硼化物と反応しにくい熱分解グラファ
イトを反応障壁材兼発熱体として六硼化物陰極を支持し
、且つ該グラファイト及び六硼化物陰極自体にも通電す
ることにより六硼化物を加熱する熱電子放射陰極、（特
公昭４７−２５９１１号）（２）タングステンなどの高
融点金属線上に六硼化物と反応しにくい炭化ジルコニウ
ムなどの反応障壁層を塗布し、さらにこの障壁層上に六
硼化物粉末を塗布し、タングステン線に通電し、六硼化
物層を加熱、支持した陰極、（特公昭４４−６１８２号
公報）などが提案されている。

しかしながら、前記（１）の熱陰極は熱分解グラファイ
トが極めて脆い材料であるために、機械的衝撃に弱いば
かりでなくグラファイトからの熱は導電体支柱の先端か
ら放出されて熱効率がよくない、また衝撃に強くするた
めにグラファイトを太くすると増々犬電力を消費する欠
点がある。

その上グラファイトは加熱時の熱変形により六硼化物が
移動し、電子ビームの位置が不安定となる欠点がある。

また、（２）の熱陰極は高温で使用した場合、六硼化物
を余り厚く出来ない（厚くすると熱膨脹差により六硼化
物層にクラツクが入る）ことから、六硼化物の蒸発によ
り寿命が短かく、その厚さ２０μの場合、１６００°Ｃ
６０分が使用の限界である。

本発明は、これらの欠点を解決することを目的とするも
のであって、直径１００μ程度以上の棒状体をなす固体
六硼化物と後述の材質で構成された反応障壁材を重層的
に接合して一体化し、この反応障壁材の外側部のみを通
電発熱体となるタングステンなどの高融点金属の箔又は
帯状又は線状体に接触させて挾持することにより機械的
衝撃に強く、且つ消費亀力が小さい、しかも長寿命の六
硼化物系熱電子放射陰極を提供しようとするものである
。

すなわち、本発明は固形の六硼化物に固形の反応障壁材
を重層的に接合し、この反応障壁部材の両側又は外周を
高融点金属発熱体で杷持し、この発熱体の両端をそれぞ
れ電流導入端子部に固定してなることを特徴とするもの
である。

以下、図面によって本発明の実施態様につき説明する。

なお、第１〜第３図はそれぞれ本発明の実施例に係る熱
電子放射陰極の斜視図である。

１は先端を尖らせた棒状の六硼化物系熱電子放射材、（
２）は反応障壁材であって前記棒状１に接合されて、接
合体３を形成している。

反応障壁材部２は、その側壁２′を２枚の高融点金属発
熱体４で挾持され、該発熱体の両端部５，６は夫々電極
支柱７，８に固着されている。

前記一対の発熱体４は線状又は箔板状であって重層接合
体３の近傍において点溶接９されている。

第２図は重層接合体３が角柱であって反応障壁材の側壁
２′に接する一対の発熱体４が線状体である ．場合の
一例であり第３図は、線状発熱体と反応障壁材との接触
を強化すると共に熱伝導を一層向上させたものであって
、発熱体嵌入溝１０が反応障壁材２の外周に設けられて
いる。

本発明において六硼化物系熱電子放射材とはＬａ Ｂ
６に代表される希土類硼化物である。

また反応障壁材としては、六硼化物系熱電子放射材およ
びタングステン、タンタル、モリブデンなどの発熱体と
高温で反応し難いことが必要であるが、この要求を満足
する物質としては高密度黒鉛、硼化ジルコニウム、窒化
タンタル、炭化タンタルに代表される周期律表ＩＶａ
， Ｖａ ， ＶＩａ族元素の硼化物、窒化物、炭化物
が挙げられる。

本発明における発熱体は、タングステン、モリブデン等
の高融点金属の箔板又は線条であるから、その全体の形
状は例えば第１図の鎖線の如く任意の形状に加工できる
利点がある。

以下実施例により本発明を説明する。

実施例 １ ＬａＢ６焼結体（相対密度９９５％）及び硼化ジルコニ
ウム（相対密度９５．３％）をそれぞれ直径２５ｍｍ，
厚さ１．５ｉｍに加工した。

この２枚を重ね合わせ２０３０℃に加熱し、円板の上下
より１５０Ｉｙ／ｆｆｌの圧力で３０分間加圧して両者
を接合した。

次いでこの接合体を超音波加工法により直径０．２ｍｉ
ｔｔの丸棒として切り出し、ＬａＢ６先端を電解研磨に
より尖がらせて重層接合体３を得た。

電解研磨液には通常のフッ酸一硝酸−アルコール系水溶
液を使用した。

次いで厚み０．０５ｍｍ，巾ＬＯｍｗのタンタル箔板２
枚を発熱体４としてこれらの間に反応障壁材２である硼
化ジルコニウムを挿入し、第１図の如くスポット溶接９
し、接合体丸棒を固定した、さらにタンタル箔の両端５
，６をコバール電極７，８に点溶接により固定した。

この陰極を真空度２×１０−５Ｔｏｒｒ下で連続１００
時間、１６００℃に加熱した。

加熱時の所要電力は８．５Ｗであった。加熱後陰極には
何の異常も認められなかった。

比較のためにタンタル箔の代りに黒鉛薄板（厚み０．
５ ｍｍ ）を２枚合わせ、２枚の合わせ面の空間に０
．２ｍｌｌＣ２＋のＬａＢ，棒をさし込み第４図の如き
構造の陰極を作成した。

第４図に於て１２はＬａＢ６チツプ、１３は黒鉛薄板、
１４は黒鉛スペーサーである。

黒鉛薄板とスペーサーの部分はＴａ板を介してコバール
電極板にかしめた。

この構造の陰極を１６００℃に加熱するには２３．３Ｗ
を要し、しかも加熱後１５分でＬａＢ６チップと黒鉛板
にゆるみが生じ、ＬａＢ６チツプが動いてしまった。

実施例，２ ＬａＢ６−ＹＢ６（六硼化イットリウム）系複合焼結体
（ＬａＢ６７ ５重量％）を直径２５ｍｍ，厚さ１．５
間の形状でホットプレス法により作成し、実施例１と同
様な方法、条件下で直径２５ｍ４厚さ１．５框の炭化ジ
ルコニウムの円板に接合した。

次いでこの接合円板より超音波加工法により０．３ｉｍ
口の角柱状の接合体３を切り出し、焼結体先端を実施例
１と同様にして電解研磨により尖らせた。

次いで直径０． １ ｙｔｗのタングステン線を発熱体
として第２図の如き構造の陰極を作成しｔラこの陰極を
３Ｘ１ ０−５Ｔｏｒｒ下で常温と１６００℃の間で加
熱、冷却をくり返した。

くり返し回数１５０回で陰極に異常は認められなかった
０１６００℃加熱時の消費電力は９．７Ｗであった。

一方市販のタングステンヘアピン陰極のタングステン細
線上に先ず炭化ジルコニウム粉末を塗布、焼結し、次い
でその上にＬａＢ６−ＹＢ６混合粉末（ＬａＢ６７５ｗ
ｔ％）を塗布、焼結した陰極を作成した。

この際、硼化物層の厚みは１５μであった。この様にし
て作成した陰極を同様な加熱条件でくり返し加熱したと
ころ、くり返し４回目で硼化物層は消失した。

【図面の簡単な説明】

第１〜第３図はそれぞれ本発明の実施例に係る熱電子放
射陰極の斜視図である。 第４図は比較例の斜視図である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 六硼化物系熱電子放射材と反応障壁材とが重層的に
   接合された接合体が、その反応障壁材部のみを電極支柱
   間に架設された一対の線状又は箔板状の高融点金属製発
   熱体によって挾持されてなる熱電子放射陰甑。 ２ 反応障壁材の外側面に高融点金属製発熱体嵌合用溝
   が形成されてなる特許請求の範囲第１項記載の熱電子放
   射陰極。 ３ 重層接合体の反応障壁材部が、その外周を高融点金
   属製発熱体によって囲撓されて支持されている特許請求
   の範囲第１項又は第２項の熱電子放射陰極。