JPH1192286A - シリコン単結晶製造方法 - Google Patents

シリコン単結晶製造方法

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JPH1192286A
JPH1192286A JP25579097A JP25579097A JPH1192286A JP H1192286 A JPH1192286 A JP H1192286A JP 25579097 A JP25579097 A JP 25579097A JP 25579097 A JP25579097 A JP 25579097A JP H1192286 A JPH1192286 A JP H1192286A
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JP
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crucible
melt
single crystal
equation
crystal
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JP25579097A
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English (en)
Inventor
Yutaka Kishida
豊 岸田
Wataru Ohashi
渡 大橋
Masami Hasebe
政美 長谷部
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】シリコン単結晶をチョクラルスキー法によって
育成するにあたり、坩堝内の原料融液が大容量であって
もその流動を安定化し、生産性良く大型のシリコン単結
晶を製造する方法を提供する。 【解決手段】製造に用いる坩堝の内口径をD(m) とし
て、結晶育成時の1 分間あたりの坩堝回転数W(rpm) を
W>0.8 ×D-7/2を満すようにするか、さらに坩堝回転
数を増し、融液深さd(m) 、融坩堝中心軸上における融
液表面と坩堝底部の温度差をΔTv (℃) としてW>4.
5 ×d9/4 ×ΔTv 3/4 ×D-2の関係を満たすようにし
てシリコン単結晶を育成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、チョクラルスキ
ー法によりシリコン単結晶を育成する方法に関するもの
で大口径、大重量結晶の製造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年半導体デバイスの大面積化に対応し
てより口径の大きいシリコンウエハーの需要が高まって
おり、これには直径200mm 重量150kg を越えるような大
型の結晶が必要とされている。この様な結晶の製造は必
然的にチョクラルスキー法に限られ、これまでにない大
型の坩堝を用いることになる。
【0003】しかしながら、チョクラルスキー法の坩堝
内で起こるシリコン融液の対流は坩堝径、融液深さを増
すほど強く、かつ大きな乱れを伴うものとなる。融液対
流の乱れは結晶の育成に対し以下に述べる3 つの事由に
よって悪影響をおよぼす。
【0004】第1 に、対流の乱れは結晶成長面において
時間的に不規則な温度変動をもたらすと同時に融液温度
分布の軸対称性を崩す。これにより結晶成長界面での熱
バランスが乱れ、単結晶としての結晶成長が阻害され
る。
【0005】第2 として、対流の強化は劣化した石英坩
堝底からの不純物の輸送を促進し、これが結晶へ接触す
ることで結晶が多結晶化する。
【0006】第3 として、対流の乱れは融液中に酸素や
ドーパントの濃度むらを生じ、たとえ無転位結晶の育成
に成功したとしても、結晶から切出したウエハーには酸
素、抵抗値などの品質むらを生ずる原因となる。
【0007】従って、現状の単結晶の製造装置において
は、初期の原料チャージは150kg 未満に抑えられ、安定
して製造可能な単結晶の重量は130kg 程度に留まってい
るのが実状であり、装置を単純にスケールアップして大
型の結晶を量産することは困難と考えられている。
【0008】坩堝径と深さの増大に対して、流動の乱れ
がどの程度の規模で増大するかは、流体の運動方程式か
ら、熱膨張による浮力、坩堝回転によるコリオリ力、融
液の粘性力、流動自体が持つ慣性力の働きをみることで
予想できる。融液の単位体積あたりに働く力の関係を表
す運動方程式は、坩堝と同一に回転する座標系において
(1) 式の様になる。
【0009】
【数1】
【0010】ここで記号はそれぞれ以下のものを表す。
【0011】 ρ:融液の密度、 Ω:坩堝の回転角速度、 α:
融液の体積膨張率 P:融液内の圧力、 g:重力加速度、 ν:
融液の動粘性率 u:融液の流速 T:融液の温度 ∇:微分演算子で、位置座標についての微分を示す (1) 式において、左辺第1 項は速度の時間変化、第2 項
は慣性力、右辺第1 項はコリオリ力、第2 項は圧力、第
3 項は浮力、第4 項が粘性力を示す。
【0012】チョクラルスキー法のシリコン融液に対し
て、加速力として働くのは浮力のみ、減速力として働く
のは粘性力のみであることから、融液流動の激しさの程
度は浮力と粘性力の大きの比によって評価される。
【0013】チョクラルスキー法では液面で結晶を育成
するため、坩堝表面と坩堝底との間には必ず温度差がつ
くため融液は直接鉛直上向きへ浮力によって駆動され
る。このような対流は強制対流と呼ばれている。この場
合の浮力と粘性の比を示す無次元数はレイリー数Raとし
て次の(2) 式で定義される。強制対流の速度U は温度の
伝達速度と同程度となることから、U=K/dとして
(1 )式よりオーダー計算によって導出される。
【0014】
【数2】
【0015】ここで、dはシリコン融液の深さ、Kはシ
リコン融液の温度伝導度、ΔTv は石英坩堝中心軸上に
おける融液表面と坩堝底での温度差である。
【0016】シリコン融液の各々の物性値等をあてはめ
ると(2) 式は次式としても表現できる。
【0017】
【数3】
【0018】これより、融液単位体積あたり、融液の深
さの3 乗に比例して浮力が働き、融液深さの増大は大幅
な融液対流の加速をもたらすことがわかる。
【0019】また、坩堝側面と坩堝中心部間で生じる温
度差も融液中に不均一な駆動力(浮力)分布を与えるこ
とになり、これによっても対流が駆動される。これを自
由対流と呼ぶ。自由対流において浮力と粘性の比を示す
無次元数はグラスホフ数Grとして次の(4) 式で定義され
る。自由対流の速度U は粘性による伝達速度と同程度に
なることから、U=ν/dとして(1 )式から求められ
る。
【0020】
【数4】
【0021】ここで、Rは坩堝の半径、ΔTh は融液面
における石英坩堝側壁温度と坩堝中心との温度差であ
る。
【0022】これより、融液単位体積あたり、坩堝径の
3 乗に比例して浮力が働くことがわかり、坩堝径の増大
も大幅な流動加速をもたらし、単結晶としての結晶育成
を困難にする要因となることがわかる。
【0023】一方、コリオリ力は流動方向に直交して働
く力であるため対流を決して加速することはないが、外
部から加熱される容器内の熱対流に対して傾圧波動(Ba
roclinicWave)と呼ばれる流動形態を起こし、融液の温
度分布を大きく歪める働きをする。近年チョクラルスキ
ーの坩堝においてもこの現象が起こり、浮力の増大のみ
ではなくコリオリ力の増大によっても融液表面の温度分
布が軸対称から著しく歪むことが明らかにされている(K
ishida et al., J.Crystal.Growth 130, 34,(1993)、
特開平5-194075、特開平8-259381等)。
【0024】コリオリ力によって起こる熱対流の流動形
態の変化は、次の2 つの無次元数によってほぼ予測され
ている( Greenspan (1968) p125)。1 つはテイラー数Ta
で、これはコリオリ力と浮力の比の2 乗であり、次式の
ように定義される。
【0025】
【数5】
【0026】シリコン融液の動粘性係数νの値をあては
め、1 分間あたりの坩堝の回転数をW(rpm) 、坩堝口径
をD(m) とすると(5) 式は次式のようにも表現できる。
【0027】
【数6】
【0028】もう1 つの無次元数はロスビー数Roで、こ
れはコリオリ力と慣性力との比であり、次の式のように
定義される。
【0029】
【数7】
【0030】慣性力における代表流速Uは坩堝回転を考
慮した次式を元に見積もられている。
【0031】
【数8】
【0032】ただし、(8) 式はコリオリ力と浮力が大き
い状態(温度風平衡、thermal wind equilibrium: Gree
nspan (1968) p125 ) を仮定しているため、(7) 式で定
義されるRoの値が10より大きい場合には物理的な意味は
薄い。
【0033】RoとTaの二つの無次元数で整理すると、回
転系での熱対流の形態は図2 の様に描け3 つの領域に分
けられる。この図はFein等の水銀による実験( J.Fluid.
Mech., 75, 81, (1976) ) をもとにしている。Fein等の
実験は理学的なものであるが、チョクラルスキーの坩堝
においても物理現象は同一であると考えられている。図
2 の各領域での対流形態は以下の様になる。
【0034】領域A ではコリオリ力も慣性力も共に弱い
ため、対流が種結晶の回転軸(チョクラルスキー法にお
いては坩堝回転軸と一致する)に対し軸対称となり、融
液表面の温度分布も軸対称となる。これは結晶の育成に
極めて良好な状況である。口径数インチ程度の坩堝であ
れば、加熱条件の工夫で融液の対流をこの状態へ置くこ
とが可能であるが、Ta数が坩堝径の4 乗で増大すること
から坩堝口径が10インチを越えると領域C の状態へ入ら
ざるをを得なくなる。
【0035】領域B では、コリオリ力が弱く慣性力が強
く働くため、対流が乱流となる。このとき温度分布の乱
れも強いため、この状態では結晶育成が不可能なことが
知られている。このとき該当する坩堝回転数は極めて低
回転(0.1rpm)以下となり、チョクラルスキー法において
坩堝を回転させる意味が失われる領域でもある。
【0036】領域C ではコリオリ力が強いために傾圧波
動が起こる領域である。このとき融液表面の温度分布の
回転軸対称性は崩れ不安定なものとなる(図3(a))。温
度分布の不安定は結晶の成長速度の不安定に直接結びつ
くため、この現象は単結晶としての成長に悪影響を及ぼ
す。この傾圧波動が起きている状態であっても特開平8-
259381等で示された手法等により、結晶を育成する坩堝
中心部での温度分布の対称性を結晶の育成中を通してあ
る程度小さい幅に保つことができるならば、単結晶の育
成が可能である。しかしながらこの領域においても、コ
リオリ力がより大きく効いている領域の左側に入るほど
軸対称性が悪くなり、結晶の育成にとって厳しい条件と
なる。
【0037】以上のことからコリオリ力の働きをTa数と
Ro数で整理してみると、チョクラルスキー法による傾圧
波動現象は避けることができないことがわかる。現在行
われている直径150mm や200mm の単結晶の製造は、融液
の加熱条件を工夫することで、かろうじて安定した製造
条件を得ている状況である。(6) 式からわかるように坩
堝直径の増大はコリオリ力を大きくする事を意味するた
め、現状以上に坩堝径を増すことは結晶の育成に対して
より厳しい条件となると考えられている。
【0038】このような状況から、大型の結晶の製造に
対しては, 特公昭58-50951をはじめとして特開平5-1556
82、特開平8-333191等で示されているように、融液に静
磁場を印加しローレンツ力を介して流動を抑制する方法
が有効と目されている。しかし、この方法では磁極間内
に引き上げ炉が入る様な大規模な磁石を設ける必要があ
り、相当の設備投資とランニングコストがかかる。ま
た、炉が大きくなるほど磁極間距離は長くなり、融液流
動の抑制に必要とされる所定の磁場強度を達成できなく
なるため設備としての限度がある。
【0039】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を
解決するためにチョクラルスキー法において磁場印加装
置の様な大がかりな付帯設備を用いることなく融液流動
を安定化し、生産性良く大型のシリコン単結晶を製造す
る方法を提供することを目的とする。
【0040】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶
の育成に用いるべき坩堝の内口径D(m) と結晶育成時の
1 分間あたりの坩堝回転数W(rpm) との関係を、W>0.
8 ×D-7/2を満たすように指定することのみで、融液中
に地衡流乱流( Geostrophic Turbulence )が起こる様
に設定した状態で結晶を育成するものである。
【0041】このとき、さらに坩堝回転数を増すか、融
液深さd(m) を抑えたり、炉内の断熱および加熱方式を
工夫することで融坩堝中心軸上における融液表面と坩堝
底部の温度差ΔTv (℃) を小さくして、W>4.5 ×d
9/4 ×ΔTv 3/4 ×D-2の関係を満たすことができれば
より良い効果が得られる。
【0042】本発明において坩堝回転数を増加しすぎる
と、遠心力により液面形状が放物線状になり安定した結
晶の育成に支障をきたすことと、大重量物を高速で回転
することで機械的な負荷がかかることになるため、坩堝
回転数は100rpm以下とすることが望ましい。
【0043】また、用いる石英坩堝の口径が大きすぎる
と、融液表面からの輻射熱流束が大きくなるため加熱を
強化して坩堝側壁を高温に保つ必要が生ずる。このとき
石英坩堝の温度が自重軟化温度である1630℃に達し変形
を起こす危険がある。このため口径が1300mm以内の坩堝
を用いるのが望ましい。
【0044】
【発明の実施の形態】本発明の実施は、チョクラルスキ
ー法によりシリコンの単結晶を育成する期間中に、坩堝
の口径に応じて必要な回転数以上で坩堝を回転させるこ
とで、融液中でのコリオリ力を浮力に比べて卓越させる
ことに尽きる。
【0045】この時坩堝内の融液中の対流は、以下に説
明する様な状態となっている。
【0046】坩堝内の融液中に働く力すなわち、慣性
力、コリオリ力、浮力、粘性力の大きさは、対流の代表
流速をU、坩堝の半径をRとして代表長さに取って、運
動方程式(1) に基づいて比較すると以下の様になる。
【0047】
【数9】
【0048】通常、チョクラルスキー法での坩堝回転は
1 分間あたり数回で回転角速度Ωが1x10-1rad/sec のオ
ーダーであること、シリコンの動粘性係数νが3x10-7
2 /s 程度であること、溶融シリコンの体積膨張率αが
1x10-5のオーダーであること、重力加速度gが約1x101
m/s2 であること、使用する坩堝の半径Rが1x10-1mの
オーダーであること、融液内部の最大温度差Tが1x101
℃のオーダーであること、融液対流の流速Uは大きく見
積もっても坩堝の回転速度ΩRを越えず,1x10-2m/sec
程度であることを考慮すると、(9) 式中各項の大きさの
概算は以下のようになる。
【0049】
【数10】
【0050】したがってチョクラルスキー法の坩堝内融
液において、粘性力は流動形態にほとんど効いておら
ず、前者3 つの力がほぼ拮抗した状態であり、そのバラ
ンスの乱れが速度の時間変動として現れているはずであ
る。このような状況においては、増大する浮力と慣性力
に対して融液に働くコリオリ力を故意に大きくし卓越さ
せることは現実的でかつ、流動を制御する上で極めて有
効となることがわかる。
【0051】本来回転していない容器中での対流は、坩
堝壁近傍で鉛直方向に上昇し中心部でも鉛直方向に下降
するため、対流の回転軸は水平方向を向いている。とこ
ろが坩堝を回転することでコリオリ力が働くと、対流は
坩堝壁近傍で鉛直方向からややずれた方向に上昇するよ
うになるため、対流の回転軸が水平方向から鉛直方向へ
傾いたものとなる傾向があらわれる。従ってコオリ力を
極度に強く働かせる本発明法での坩堝内融液において
は、坩堝内の対流は鉛直方向へは向かわず、ほとんど水
平方向に運動するようになる、つまり坩堝内は回転軸が
垂直方向を向いた渦群で満たされることになる(図
1)。この状態は流体力学では地衡流乱流と呼ばれてい
るものに対応する。
【0052】従来チョクラルスキーの坩堝融液でこのよ
うな地衡流乱流がおきるかどうか、もし起きるのならば
どのような条件で起こるかるかは全く明らかにされてい
なかった。発明者等が結晶の製造に用いる炉で実験を行
った結果では、口径16インチ以下の小径の坩堝で回転数
の低いものでは、表面の温度分布は図3(a)の様な、良く
知られている傾圧不安定波動のパターンが絶えず出現す
るのみで、地衡流乱流を確認できなかったが、口径22イ
ンチ以上の大きな坩堝で、かつ坩堝回転数を高くするこ
とではじめて図3(b)のような温度パターンが現れ地衡流
乱流の状態が達成できた。地衡流乱流状態の確認方法に
ついては後述する。
【0053】本発明はコリオリ力を圧倒的に大きくする
ことを目的とするため、地衡流乱流発生の条件は図3 と
同様にRo数とTa数で表現するのが最も適する。よって、
種々の口径の坩堝で種々の回転数で坩堝融液特性の観測
を行った結果から、実際に地衡流乱流領が達成された条
件をRo-Ta ダイアグラム上で示すと、この地衡流乱流領
域は傾圧波動の領域の左側に位置し、その境界は次の直
線になることが判明した。(図5)
【0054】
【数11】
【0055】この式に、(5)(7)式において溶融シリコン
の各物性値を定数として適用し、(7) 式において半径方
向の温度勾配ΔTh /Rを定数と見なし、坩堝口径をD
(m)とし坩堝回転数をW(rpm) とすると、(11)式はW=
0.8 ×D-7/2となる。よって本発明が目的とする地衡流
乱流を起こすに必要な条件は次の不等式となる。これが
本発明が要求する坩堝回転数の条件である。
【0056】
【数12】
【0057】種々の口径の坩堝においてこの不等式(12)
を満たすのに必要な坩堝回転数を計算すると、表1 の3
列目の様になる。
【0058】
【表1】
【0059】実際には、不等式(12)の条件が満たされて
いても鉛直対流が十分抑制されていない場合には結晶が
多結晶化することがある。
【0060】これに対しては、融液のレイリー数Raを下
げるか、坩堝回転数を増してコリオリ力をより効かせる
ことで対処できる。この効果を得るためには、Chandras
ekhar のBenard対流についての理論解析(S.Chandrasekh
ar: "Hydrodynamics and Hydromagnetic instability",
p120, Oxford University. Press, (1961))からの類推
から、レイリー数の増加に対してテイラー数を2/3 乗で
増せば良いと考えられる。発明者らの実験によれば、チ
ョクラルスキー法による結晶育成においては、その比例
係数の値を0.5 とすることで十分な効果があることが判
明した。これを式で表現すると(13)式となる。
【0061】
【数13】
【0062】ここで、RaおよびTaの値を(5)(7)式より求
め、(13)式を, 融液深さd(m) 、坩堝口径D(m) 、融液
表面と坩堝底部の温度差ΔTv (℃) として、坩堝回転
数W(rpm) について表現すると次の(14)式となる。
【0063】
【数14】
【0064】この(14)式の条件を達成するには、坩堝回
転数を大きくすることが効果的であるが、炉内の断熱材
の配置や素材変更による断熱能の強化、もしくは炉内で
のヒータの位置を調整してΔTv を小さくすること、さ
らに溶解するシリコン原料の量を抑えて融液深さdを浅
くすることも有効である。
【0065】表1 の4 列目に、結晶育成に使用する石英
坩堝の代表的な口径に対し、(14)式が規定する最小坩堝
回転数を示した。このとき融液の深さdは0.25m 、ΔT
v は50℃とした。
【0066】(12)式と(14)式を満たすように坩堝回転数
を大きくすることで、地衡流乱流状態が達成されると、
融液中においては温度分布の軸対称性はほとんどないも
のの、融液内部に図1 に示すような渦群が構成される。
このとき、融液表面での温度変動を見ると、渦によって
温度分布が均一化される効果が働き、分布はあるものの
変動の振幅は極めて小さいものとなる。
【0067】このため、結晶が育成される融液表面の温
度変動は地衡流乱流が達成される前に比べ大幅に減少
し、結晶を変形なく引き上げることが極めて容易とな
る。これに伴い結晶の引き上げ速度も改善され生産性の
向上が計れる。
【0068】また、融液中に地衡流乱流が達成できる
と、融液中で鉛直方向の運動が抑制され、沸き上がりに
よる凝固界面温度の不安定が抑制されるとともに、坩堝
底からの未溶解シリコンや劣化した石英坩堝からの不純
物の輸送を減少することで結晶の多結晶化を防止でき
る。
【0069】なお、地衡流乱流の状態が実現されたかど
うかの確認は、特開平8-259381等で示されているように
結晶育成開始前の種結晶の浸漬時において融液表面の温
度分布とその時間変動を輻射光としてビデオカメラ等で
撮影録画とその画像データを解析することで行うことが
できる。
【0070】地衡流乱流状態が達成されると、カメラで
写した融液表面の温度分布は図3b)の様に複数の高温域
が島状に分布した状態になる。ただし鉛直対流が強く図
1の様な鉛直方向を向いた渦群が構成せれていない場合
にも似たような温度分布が見られるため、画像だけでの
判断では不十分である。地衡流乱流は二次元化した乱流
であるため二次元乱流特有である周波数fの-4乗則に乗
った急勾配の連続エネルギースペクトルを持つことを確
認する必要がある。具体的には、ビデオ画像の任意の1
画素での温度変動の時系列データを取り出しそのフーリ
エ変換からパワースペクトルを求める。地衡流乱流であ
れば図4 に示される様に周波数fの-4乗則に沿った勾配
部が0.1Hz から1Hz の範囲にわたって出現することで確
認がとれる。
【0071】
【実施例】口径24インチ(0.6m)の坩堝に150kg の原料シ
リコンを溶解し、種々の坩堝回転条件の下で結晶育成を
試みた。坩堝回転数と、種結晶の浸漬直前の10分間に測
定した融液表面温度変動の二乗平均値および、直径320m
m で重量130kg の結晶を育成したとき単結晶として育成
できた割合を表2 に示す。
【0072】
【表2】
【0073】比較例1 および2 では坩堝回転が低く各々
1rpmおよび3rpmであり本発明の(12)式の条件が満たされ
ていない。それぞれの例において融液の温度変動は大き
く二乗平均で6 ℃を超えており、育成中に多結晶化が起
こる場合が多かった。しかし実施例1 から4 までの坩堝
回転数6rpm以上の条件では(12)式の条件が満たされてい
るため容易に単結晶育成が可能であり、90%以上の高い
割合で単結晶としての育成を完遂できた。実施例1 から
4 において融液は極めて安定であっため、結晶の変形が
おきず、比較例2 における引き上げ速度0.40mm/secに対
し0.75mm/secまで上昇させることもできた。とくに実施
例3 および4 においては、(14)式の条の条件も同時に満
たされていたため、融液表面は極めて安定で融液温度変
動の二乗平均値も3 ℃以下であり、それぞれ10回の育成
中一度も多結晶化が起こらなかった。
【0074】また、高断熱材を用いて断熱能を高めた炉
中で口径28インチの坩堝に180kg の原料シリコンを溶解
し、種々の坩堝回転条件の下で結晶の育成も試みた。坩
堝回転数と、種結晶の浸漬直前の10分間に測定した融液
表面温度変動の二乗平均値および、直径320mm で重量16
0kg の結晶を育成したとき単結晶として育成できた割合
を表3 に示す。
【0075】
【表3】
【0076】比較例3 においては、回転数が低く(12)式
の条件に満たなかった。このため融液の温度変動も大き
く二乗平均で6 ℃近くあり融液も不安定で、育成中に多
結晶化が起こる場合が度々あり、単結晶として育成でき
た割合は40%しかなかった。一方、実施例5 から9 にお
いては、いずれの場合も断熱の強化により融液中の温度
差ΔTv も小さく(12)式の条件および(14)式の条件も同
時に満たされており、鉛直対流が十分抑制されている状
態であった。このため、いずれの場合においても90%以
上の高い確率で多結晶化することなく単結晶での育成を
完遂することができた。
【0077】各試験条件において結晶育成開始前に、結
晶の育成域を覆う直径400 mmの融液表面からの輻射光を
ビデオカメラで撮影しており、図3(b)に示した融液表面
の温度分布等図は、実施例2 においてその画像を処理し
て構成した画像である。画像には地衡流乱流特有の島状
に分布した高温域が現れている。図5 に示した温度変動
のパワースペクトラムも実施例2 のもので、地衡流乱流
特有の周波数の-4乗に比例した勾配部が出現している。
このことから地衡流乱流状況が達成されていることが確
認されている。これらの特徴は実施例1から9 のいずれ
の場合において確認できているが、比較例1 から3 の場
合では確認できなかった。
【0078】
【発明の効果】本発明は、直径200mm 以上、重量150kg
以上の大型インゴットの製造において、初期シリコンの
チャージ量と坩堝径に応じて、坩堝の内径と引上時の坩
堝回転数を、所定の範囲で設定することのみによって制
御するものであるため、大型電磁石のような付帯設備を
設ける必要がなくなり、装置の製造、維持費用が大幅に
削減できる。
【0079】また、地衡流乱流の特性を利用することに
よって操業時に以下の効果を発揮できる。
【0080】第一に、融液表面での温度変動が渦群によ
り緩和されるため、無転位結晶を変形なく引き上げるこ
とが極めて容易となる。
【0081】第二に、融液の安定化により、結晶の引き
上げ速度も改善され生産性の向上が計れる。
【0082】第三として、融液中で鉛直方向の流動が抑
制されるため、沸き上がりによる凝固界面に坩堝底から
の未溶解シリコンや劣化した石英坩堝からの不純物の輸
送が減少できることで、結晶が多結晶化する可能性が大
幅に減ずる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 坩堝内部での地衡流乱流状態の模式図
【図2】 RoとTaで整理した回転容器中における熱対流
の形態を示す図
【図3】 (a) は傾圧波動状態での融液表面の等温線分
布図、(b) は地衡流乱流状態での融液表面の等温線分布
【図4】 地衡流乱流下での温度変動のパワースペクト
ル図
【図5】 チョクラルスキー法の坩堝内のシリコン融液
において地衡流乱流状態が出現するRo数およびTa数のと
の関係を示す図

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チョクラルスキー法によりシリコン単結
    晶を育成するにあたり、用いる坩堝の内口径D(m) と坩
    堝の1 分間あたりの回転数W(rpm) との関係が、W>0.
    8 ×D-7/2を満足すように設定することを特徴とするシ
    リコン単結晶製造方法。
  2. 【請求項2】 坩堝の1 分間あたりの回転数W(rpm)
    と、坩堝の内口径D(m) 、結晶育成中の融液の最大深さ
    d(m),坩堝中心軸上における融液温度の表面と坩堝底部
    での差ΔT( ℃) との関係が、W>4.5 ×d9/4 ×ΔT
    v 3/4 ×D-2を満足することを特徴とする請求項1記載
    のシリコン単結晶製造方法。
JP25579097A 1997-09-19 1997-09-19 シリコン単結晶製造方法 Pending JPH1192286A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014174752A1 (ja) * 2013-04-26 2014-10-30 信越半導体株式会社 シリコン単結晶の製造方法

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WO2014174752A1 (ja) * 2013-04-26 2014-10-30 信越半導体株式会社 シリコン単結晶の製造方法

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