JPH1176680A - ドラム式洗濯機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】脱水起動時の振動を増加することなく、高速の
定常脱水時の振動を低減できる横軸に対応した流体バラ
ンサ装置を有するドラム式洗濯機を提供する。 【解決手段】ドラム外周に装着したバランサリングとバ
ランサリングに流体を注入する管、および、回転数情報
に基づいて流体の注入を制御する弁より構成される開放
型流体バランサ装置を有するドラム式洗濯機。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ドラム式洗濯機に
関し、特に脱水時の振動低減に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の一般的なドラム式洗濯機は、図６
に示すように吊ばね４によって支持された外槽２の内側
に、水平軸周りに回転するドラム３が配置され、前面の
開閉扉５から洗濯物の出し入れを行う構造となってい
る。

【０００３】このような水平軸周りに回転する構造で
は、脱水行程に入る前にドラム下方に洗濯物が偏るた
め、特に脱水起動時に大きいアンバランスが生じ、それ
に伴って大きな振動が発生する。

【０００４】上記のような問題の対策としては、起動時
に低速で回転したり、正転・反転を繰り返すなどして洗
濯物を分散させ、上記のアンバランスを低減する方法が
多くとられている。

【０００５】しかし、十分にアンバランスが低減できな
かったり、また、上下方向の振動が直接床面に伝わりや
すい構造となっている点などから、高速の定常運転時に
も大きな振動が問題となる場合が多い。

【０００６】脱水の定常運転時の振動を低減する技術と
して、鉛直軸周りに回転する渦巻き式洗濯機では、回転
する内槽に流体バランサを装着する方法があり、回転危
険速度以上の回転数範囲での自動バランス作用により高
速の定常脱水時の振動低減に効果がある。しかし、ドラ
ム式洗濯機においては、前述のように、一般的に水平軸
周りの回転構造を有するために、遠心力の影響の小さい
起動時低回転数範囲では流体の偏りのために過渡的な振
動や音が大きくなるため、また、遠心力が大きくなって
円周方向に均等に分布するようになっても、回転危険速
度以下ではアンバランスを増加する効果を持つため、た
だでさえ大きい前述のような起動時の振動がますます大
きくなる問題があり、従来の一般的なドラム式洗濯機で
は流体バランサを持たないものが多い。

【０００７】このような問題を解決するために流体バラ
ンサに関する以下のような技術が提案されている。流体
バランサを装着するドラム式洗濯機に関する特開昭55−
68387 号公報による発明では、脱水初期にクラッチによ
りバランサの切り離しを行っている。また、特開昭53−
51671 号公報による発明では、バランサリングを多孔壁
で仕切り、脱水初期に水が偏るのを防止しようとするも
のである。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】上記のような従来技術
は、回転軸が水平軸であることに起因する起動時の振動
を増大させることなく、高速の定常回転時の振動を低減
するためのものであるが、以下のような問題点があげら
れる。

【０００９】クラッチを用いる方法では、回転時にバラ
ンサリングの接続操作を行う点で、動作の信頼性確保，
着脱部位の強度の確保、また、コスト面の問題など実用
上の問題が多い。

【００１０】また、多孔壁で仕切る方法では、脱水開始
時の下方にたまった流体が偏ったまま回転し、アンバラ
ンスを助長することが考えられ、脱水初期の問題点を解
決できるとは言えない。

【００１１】本発明は、比較的簡単で、動作や強度等を
含めて信頼性の高い流体バランサの構造とその動作方法
を提案することによって、脱水起動時の振動を増大させ
ることなく、高速定常回転時の振動を低減するための方
法を実現するものである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明のドラム式洗濯機
は、請求項１に記載したように、洗濯機本体と、本体に
弾性支持され水を保持する外槽と、外槽内に位置して軸
受で外槽に支持され、洗濯物を内包して水平軸周りに回
転する多孔性の回転ドラムと、駆動系，給排水系，乾燥
系，制御系などからなるドラム式洗濯機において、上記
回転ドラムの前側あるいは後側外周部に装着されたバラ
ンサリングと、バランサリングに流体を注入する管と、
流体の注入を制御する弁とからなる流体バランサ装置を
備えたものである。

【００１３】また、本発明のドラム式洗濯機は、請求項
２に記載したように、請求項１記載のドラム式洗濯機に
おいて、ドラムの回転数情報に基づいて、回転の危険速
度以下ではバランサリング内に流体を注入せず、危険速
度を超えた回転数で注入を行うように弁を制御するよう
にしたものである。

【００１４】また、本発明のドラム式洗濯機は、請求項
３に記載したように、請求項１記載のドラム式洗濯機に
おいて、流体排出孔，流体排出弁をバランサリングに設
け、回転の減速時に流体の慣性により流体排出弁が開い
て流体排出孔より流体が排出されるように構成したもの
である。

【００１５】本発明のように、バランサリングと、バラ
ンサリングに流体を注入する管と、流体の注入を制御す
る弁とからなる流体バランサ装置を備える構造とすれ
ば、流体の注入を制御する弁の開閉により、バランサリ
ングへの流体の注入を任意のタイミングで行うことがで
き、流体バランサがアンバランスを増長する効果を持つ
ときにはバランサリング内に流体が存在しないように、
また、流体バランサがアンバランスを低減する効果を持
つときにはバランサリング内に流体を注入することによ
り、特に広い回転数範囲にわたって運転される脱水行程
において、ドラムの回転振動を低く抑えることが可能と
なる。

【００１６】また、本発明のように、ドラムの回転数情
報に基づいて、回転の危険速度以下ではバランサリング
内に流体を注入せず、危険速度を超えた回転数で流体の
注入を行うように弁を制御するようにすることにより、
流体バランサがアンバランスを増長する効果を持つ危険
速度以下で振動を増加させることなく、また、流体バラ
ンサがアンバランスを低減する効果を持つ危険速度以上
の回転数範囲、特に定常脱水時における振動を低減する
ことが可能となる。

【００１７】また、本発明のように、流体排出孔、およ
び、流体排出弁をバランサリングに設け、回転の減速時
に流体の慣性により流体排出弁が開いて流体排出孔より
流体が排出されるように構成することにより、脱水終了
における回転数降下時に、危険速度以上の状態でバラン
サリング内の流体の排出が可能となり、危険速度以下の
回転数範囲でバランサリング内の流体をほぼ排除し、脱
水停止時の低速回転時の振動増大を防止することができ
る。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、図を用いて実施の形態につ
いて説明する。

【００１９】図１は本発明の第一実施例であるドラム式
洗濯機の全体図である。図１において、１は洗濯機のフ
レーム、２は吊ばね４によってフレーム１に弾性支持さ
れ、水を保持する外槽、３は外槽２内に位置し、水平軸
を回転軸として回転しうるように軸受け１３で外槽２に
支持されたドラム、５は洗濯物を出し入れする扉、６は
おもに洗濯物の飛び出しや水のもれを防止するベロー
ズ、７は洗濯物を持ち上げるリフタ、８は外槽２の振動
を吸収低減するダンパである。ドラム３はモータ１０に
よる動力がベルト１２，プーリ１１により伝達されて回
転するように連結されている。

【００２０】２１は本発明による流体バランサ装置のバ
ランサリング、２２はバランサリング２１に水を注入す
る給水管、２３は水の注入を制御する給水弁、２４は取
水管である。

【００２１】本実施例によると、給水弁２３の開閉によ
り任意のタイミングでバランサリング２１に流体を注入
することができ、特に脱水行程の起動時にこれを行うこ
とにより、起動時の過渡振動などを増大させることな
く、高速定常脱水回転時の振動を低減することができ
る。また、本実施例では、流体バランサ装置に使用する
流体を水としているが、これにより給水元や排水先に特
別の配慮の必要がなく、また、給水弁についても、洗濯
水や乾燥のための冷却水を制御する弁と全く同様のもの
を用いることが可能であり、低コストでバランサ装置の
給水系を実現できる。

【００２２】次に、上記実施例で示したドラム式洗濯機
に対して、本発明の請求項２に記載の、弁を制御するタ
イミングを第二実施例として図２を用いて説明する。図
２はドラムの回転数と振動振幅との関係を示すものであ
る。

【００２３】通常、回転ドラムには図中に示すような危
険速度とよばれる回転数が存在し、流体バランサ装置は
危険速度以下ではアンバランスを助長するように、ま
た、危険速度以上の回転数範囲ではアンバランスを低減
するような効果を持つ。また、脱水の定常回転数は危険
速度以上の回転数範囲に存在する。

【００２４】本実施例では、ドラム３の回転数情報に基
づいて、危険速度を超えた回転数で給水弁２３の開放を
行い、バランサリング２１へ水を注入する。本実施例に
よれば、流体バランサ装置がアンバランス低減効果を持
たない、または、アンバランス助長の効果を持つ危険速
度以下の回転数範囲では、バランサリング２１内に流体
が存在しないため、振動増大などの問題を生じることな
く、また、流体バランサ装置がアンバランス低減効果を
持つ危険速度以上の回転数範囲では、バランサリング２
１内に流体を注入することにより、振動低減の効果を発
揮し、高速回転の定常脱水時の振動を低く抑えることが
可能となる。

【００２５】次に、本発明のバランサリング部の具体的
な構造、および、流体注入時，静止時の様子について、
第三実施例として図３，図４および図５を用いて説明す
る。図３は流体注入時のバランサリング部の断面を示し
たものである。図３（ａ）はバランサリングと給水管の
一般的な構成を示したものであり、図中の、３は回転ド
ラム、２１はバランサリング、２２は給水管である。バ
ランサリング２１は、片側に流体を注入するための隙間
が設けられており、この隙間を通して給水管２２より流
体が注入される。流体は前記実施例で示されたように危
険速度以上の回転数で注入される。この時、バランサリ
ング２１内に注入された流体は、遠心力により外周側に
寄り、外周壁にはり付いた状態になる。これにより流体
を注入した回転数以上の回転数範囲では、流体はバラン
サリング内に保持され、流体バランサのアンバランス低
減効果により、定常脱水時を主とした高速の回転数範囲
で振動の低減が実現できる。

【００２６】また、図３（ｂ）はバランサリング２１と
給水管２２が離れた構造とした実施例を示した図であ
る。この実施例によれば、回転するバランサリング２１
と静止した給水管２２との間の接触を確実に防止するこ
とができ、より高い信頼性を確保することができる。

【００２７】図４は流体を注入したときのバランサリン
グ２１の軸方向断面図である。バランサリング２１は周
方向に流体が移動できるような孔を有する仕切板２６に
よって、周方向に複数の部屋に仕切られている。これは
バランサリング内の流体が不安定振動を起こすのを防ぐ
ためであり、密閉型の流体バランサでも使用されている
構造である。

【００２８】また、本実施例に示すような開放型のバラ
ンサリング構造とすることにより、遠心力作用のなくな
る静止時には、上記の隙間より水は外槽内に出て、図５
に示すように一部の残流水を除いてほぼ排出され、次回
の運転時の支障となることを防止できる。

【００２９】なお、この構造では、注入された流体は、
脱水終了時の低速回転範囲で、遠心力による作用が重力
の作用より小さくなる時点から排出が開始される。

【００３０】次に、上記の各実施例に示したドラム式洗
濯機の構造および流体バランサ装置の制御方法を用いた
場合の脱水時の運転方法の具体的実施例を図７を用いて
説明する。図７は脱水行程の起動時における運転方法を
示したフローチャートである。

【００３１】ドラム式洗濯機では、洗濯終了後は洗濯物
はドラム内下方に偏ってたまった状態になっている。脱
水行程では、まず最初に偏ってたまった洗濯物をほぐす
ための布ほぐし運転を行う。次に低速回転により大まか
な脱水を行う。

【００３２】この脱水により、アンバランスの絶対量が
低減される。次に低速で正転・逆転などを繰り返し、洗
濯物の分布がなるべく均等になるように布ならし運転を
行う。この後、アンバランス量の判定を行って昇速可能
かどうかを判定し、昇速可能ならば昇速し、また、昇速
不可能と判定した場合は布ならし運転を繰り返し行う。
昇速途中の危険速度を超えたところで、給水弁２３を開
いてバランサリング２１に流体を注入する。

【００３３】次に、本発明の請求項３に記載の、流体排
出弁、および、流体排出孔をバランサリングに設け、回
転の減速時にバランサリング内の流体の排出が可能とす
るように構成した例を第四実施例として図８および図９
を用いて説明する。

【００３４】図８において、２８，２９はバランサリン
グ２１に設けられた排水孔および排水弁、２６は仕切
板、２７は仕切板を固定しているばねである。本実施例
では、排水弁２９は仕切板２６と一体の構造となってい
る。

【００３５】通常は、仕切板および排水弁はばね２７の
力により図８の状態になっているが、ドラムの回転があ
る大きさ以上で減速すると、流体の慣性により仕切板２
６に作用する流体力がばね力に以上となり、仕切板およ
び排水弁は図９のような状態になり、水は排水孔を通っ
てバランサリング外に排出される。これにより、図２に
示すように、脱水終了時に危険速度以上の回転数で排水
を開始することができ、危険速度以下ではバランサリン
グ内の水をほぼ排出することができ、流体バランサがア
ンバランスを助長する効果を防止することができる。

【００３６】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、第１の
発明によれば、第一実施例に示すように、バランサリン
グと、バランサリングに流体を注入する管と、流体の注
入を制御する弁とからなる流体バランサ装置を備える構
造とすることにより、流体の注入を制御する弁の開閉に
より、バランサリングへの流体の注入を任意のタイミン
グで行うことができ、流体バランサがアンバランスを増
長する効果を持つときにはバランサリング内に流体が存
在しないように、また、流体バランサがアンバランスを
低減する効果を持つときにはバランサリング内に流体を
注入することにより、特に広い回転数範囲にわたって運
転される脱水行程において、ドラムの回転振動を低く抑
えることが可能となる。

【００３７】また、第２の発明によれば、上記の第二，
第三実施例に示したように、ドラムの回転数情報に基づ
いて、回転の危険速度以下ではバランサリング内に流体
を注入せず、危険速度を超えた回転数で流体の注入を行
うように弁を制御することにより、流体バランサがアン
バランスを助長する効果を持つ危険速度以下で振動を増
加させることなく、また、流体バランサがアンバランス
を低減する効果を持つ危険速度以上の回転数範囲、特に
定常脱水時における振動を低減することが可能となる。

【００３８】また、第３の発明によれば、第四実施例に
示したように、流体排出孔、および、流体排出弁をバラ
ンサリングに設け、回転の減速時に流体の慣性により流
体排出弁が開いて流体排出孔より流体が排出されるよう
に構成することにより、脱水終了における回転数降下時
に、危険速度以上の状態でバランサリング内の流体の排
出が可能となり、危険速度以下の回転数範囲でバランサ
リング内の流体をほぼ排除し、脱水停止時の低速回転時
の振動増大を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のドラム式洗濯機の実施例を示す全体
図。

【図２】流体の注入，排出のタイミングおよびバランサ
の効果を示す図。

【図３】バランサリング部の周方向断面を示す図。

【図４】バランサリング部の正面図。

【図５】静止時のバランサリング内の水の状態を示す説
明図。

【図６】一般的なドラム式洗濯機の全体を示す図。

【図７】本発明のドラム式洗濯機の運転方法を示すフロ
ーチャート。

【図８】本発明の請求項３の実施例を示すバランサリン
グ部の正面図。

【図９】本発明の請求項３の実施例における流体排出の
動作を示す説明図。

【符号の説明】

１…フレーム、２…外槽、３…ドラム、４…吊ばね、５
…扉、６…ベローズ、７…リフタ、８…ダンパ、９…
脚、１０…モータ、１１…プーリ、１２…ベルト、２１
…バランサリング、２２…給水管、２３…給水弁、２４
…取水管、２５…水、２６…仕切板、２７…ばね、２８
…排水孔、２９…排水弁。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】洗濯機本体と、本体に弾性支持され水を保
   持する外槽と、外槽内に位置して軸受で外槽に支持さ
   れ、洗濯物を内包して水平軸周りに回転する多孔性の回
   転ドラムと、駆動系，給排水系，乾燥系，制御系などか
   らなるドラム式洗濯機において、上記回転ドラムの前側
   あるいは後側外周部に装着されたバランサリングと、バ
   ランサリングに流体を注入する管と、流体の注入を制御
   する弁とからなる流体バランサ装置を有することを特徴
   とするドラム式洗濯機。