JPH1174720A - 携帯端末用小形ヘリカルアンテナ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】アンテナ部と給電部を一体化し、衛星等の電波
を確実に追尾できる携帯端末用小形ヘリカルアンテナ装
置を提供する。 【解決手段】円柱状部材１に送、受信波長より十分細い
半径をアンテナ素子２をＮ回巻き付けてクワッドファイ
ラ・ヘリカルアンテナ素子を構成している。上記アンテ
ナ素子２は終端を開放させ、先端より給電する構造とな
っている。上記円柱状部材１は、例えばヘリカル全長Ｈ
が１００ｍｍ、直径Ｄが１０ｍｍの寸法に設定される。
そして、円柱状部材１の下部に給電部３を接続して、こ
の給電部３によりアンテナ素子２の電流の値、すなわ
ち、同振幅で位相差９０度になるような回路構成として
円偏波の指向性を発生させる。これにより装置を一体化
できると共に、衛星の移動によってもアンテナビームを
一定方向に向け、広範囲な領域で使用出来るようにな
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、移動体通信、特に
衛星−地上間の通信に用いられる携帯端末用小形ヘリカ
ルアンテナ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、自動車用携帯電話、携帯電話、Ｐ
ＨＳ等などで使用されるアンテナは、地上局との間で通
信を行う移動体通信に用いられている。この移動体通信
に用いられるアンテナは、指向性が必ずしも天頂方向に
向かなくてもよいことが一般的である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のように
指向性が天頂方向に向かなくてもよいタイプのアンテナ
は、衛星−地上間通信においては衛星方向への利得の低
下を起こし、十分な通信性能が得られないという問題点
がある。

【０００４】一方、目的の方向にビームを向けることが
出来るアンテナとしては、フェーズドアレーアンテナが
あるが、このアンテナはシステムが高価になり、又、複
雑な回路構成となり、汎用性に不向きである。本発明は
上記の課題を解決するためになされたもので、アンテナ
部と給電部を一体化して小形携帯端末用ヘリカルアンテ
ナ装置を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明に係る携帯端末用
小形ヘリカルアンテナ装置は、ヘリカルアンテナと、こ
のヘリカルアンテナの一方の端部に設けた位相差９０度
を構成する給電部とを具備し、上記アンテナと給電部を
一体化し、円偏波の指向性を天頂方向より低仰角まで一
定値となるように構成したことを特徴とする。

【０００６】上記のようにヘリカルアンテナの端部に設
けた給電部により各アンテナ素子に流れる電流の振幅は
同振幅、位相は９０度差として円偏波特性を発生させる
ことにより、アンテナビームを広範囲に設定でき、衛星
の移動によっても使用出来るようになる。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一
実施形態を説明する。図１は、本発明の一実施形態に係
る携帯端末用小形ヘリカルアンテナの構造図である。図
２はアンテナ部と給電部の一体化構造を示す図で、同図
（ａ）はアンテナ素子２を表面側から見た図、同図
（ｂ）はアンテナ素子２を裏面側から見た図である。

【０００８】図１，図２において、１は絶縁材により構
成した円柱状部材（フイルム基板：ベースフイルム厚７
５μｍ、銅厚３５μｍ、εｒ＝２．８２、ｔａｎδ＝
０．０１１）で、この円柱状部材１に送、受信波長より
十分細い半径を持つアンテナ素子（放射部：フイラメン
ト（銅箔）線）２をＮ回巻き付けてクワッドファイラ・
ヘリカルアンテナ素子を構成している。上記アンテナ素
子２は、終端（上部端）を開放させ、先端（下部端）よ
り給電する構造となっている。

【０００９】上記円柱状部材１は、例えばヘリカル全長
（高さ）Ｈが１００（ｍｍ）、直径Ｄが１０（ｍｍ）の
寸法に設定される。そして、円柱状部材１の下部に給電
部３を接続して、この給電部３によりアンテナ素子２の
電流値が同振幅で位相差９０度になるような回路構成と
することにより、円偏波の指向性が得られる。この給電
部３の構成は、誘電体円筒に細い銅箔を巻き付けてヘリ
カルフィラメントをプリントしたものを丸めて構成す
る。上記給電部３の構成は、具体的には図３（ａ），
（ｂ）に示すようにウイルキンソン型２分配回路３４に
て構成される。

【００１０】図３（ａ）は、位相差部（電気長９０°）
３１を直線的に構成した例を示したものである。すなわ
ち、位相差部３１は、アンテナフィラメント出力ポート
１１と他方のアンテナフィラメント（基本の長さ：電気
長０°）３２、出力ポート１２から成り、出力ポート１
２は出力ポート１１より長く構成されている。上記出力
ポート１１と出力ポート１２との間に挿入されている抵
抗３３は、出力ポート１１，１２の整合負荷である。こ
の整合用抵抗３３を入れることにより、アイソレーショ
ンは十分満足のいく結果となっている。そして、給電端
４より給電される。

【００１１】上記図３（ａ）では、出力ポート１２の移
相差部３１を直線的に構成したものであるが、その他、
図３（ｂ）に示すように出力ポート１２の長さをＵ字型
のようにし、２つの出力ポート１１，１２の給電部の高
さを一致させることにより、９０度の位相差を基板上で
実現させてもよい。

【００１２】上記図３（ａ）に示すように出力ポート１
２の移相差部３１を直線的に構成した場合において、円
柱状部材１のヘリカル全長Ｈ、すなわち、アンテナの高
さＨを１００（ｍｍ）、直径Ｄを１０（ｍｍ）とし、周
波数ｆを１９８５ＭＨｚ，２０９０ＭＨｚ，２２００Ｍ
Ｈｚとし、アンテナ素子２の巻き数Ｎ、アンテナの高さ
Ｈを種々変化した場合の指向性、利得、軸比、インピー
ダンス等の各種の特性を図４ないし図１９に示した。な
お、図３（ｂ）に示すように出力ポート１２の長さをＵ
字型に構成した場合においても、図３（ａ）の場合とほ
ぼ同様の特性を得ることができる。

【００１３】まず、図４（ａ），（ｂ）、図５（ａ），
（ｂ）に示した指向性は、アンテナの高さＨを１００〜
４０（ｍｍ）に変化した場合であり、アンテナの高さＨ
を短くすると背面方向の指向性が大きくなることが分か
る。又、アンテナの高さＨを短くすることにより、図６
（ａ），（ｂ）、図７（ａ），（ｂ）に示したように軸
比も大きくなることが分かる。以上のことよりアンテナ
の高さＨはあまり小さく出来ないことが分かる。

【００１４】次に、図８（ａ），（ｂ）〜図１５は、ア
ンテナの高さＨ（１００ｍｍ）を一定とし、アンテナ素
子２の巻き数Ｎを０．５〜３．５ターンの範囲で種々変
化させた場合の指向性及び軸比を示したものである。巻
き数Ｎが０．５ターンの場合は背面方向に指向性が向
き、１．５〜２ターンの場合が最もよい結果が得られ
た。

【００１５】［検討１：アンテナの高さＨに対する最適
化］アンテナ素子２の巻き数Ｎを１．５ターンに固定し
てアンテナの高さＨを小さくした場合（Ｈ＝４０，６
０，８０ｍｍ）の検討結果、図１６（ａ），（ｂ）〜図
１７（ａ），（ｂ）に示すようにアンテナの高さＨを小
さくすると、前後比（Ｆ／Ｂ比）が悪化することが分か
った。Ｆ／Ｂ比は２０ｄＢ以下を目標とすると、これを
満たすのはＨ＝８０ｍｍである。又、Ｈ＝８０ｍｍの場
合の軸比の変化は、θ＝７０゜，８０゜，９０゜で良好
な結果を得た。

【００１６】［検討２：巻き数に対する最適化］図１８
（ａ），（ｂ）及び図１９（ａ），（ｂ）は、アンテナ
の高さＨを８０ｍｍに固定して、アンテナ素子２の巻き
数Ｎを変化させた時の指向性を示したものである。これ
により天頂方向のレベルを下げることの検討を行い、そ
の結果、同図より巻き数Ｎを１．５ターンより小さくす
ると、天頂方向のレベルは下がるが、Ｆ／Ｂ比の悪化を
招くことが分かった。

【００１７】［検討３：筐体による影響］上記検討１、
２より最適値であるアンテナの高さＨ＝８０ｍｍ、巻き
数Ｎ＝１．５ターンとした場合について、図２０に示す
筐体（３０×５０×１５０ｍｍ）５を付けたときの特性
の変化を検討した。このときのφ＝０°とφ＝９０°の
場合の特性を図２１（ａ），（ｂ）に示す。筐体５を付
けた場合、同図から明らかなようにＦ／Ｂ比及び対称性
が幾分崩れるが、指向性への影響は比較的小さい。

【００１８】［検討４：実験結果］上記の計算結果を鑑
み、理論の確認のために実験を行った。実験は、ｆ＝
２．２ＧＨｚ、Ｈ＝８０ｍｍ、Ｎ＝１．５ターンとし、
給電部として図３（ｂ）に示した回路を使用した。図２
２（ａ），（ｂ）及び図２３は、給電回路部のみの特性
を示したものである。すなわち、図２２（ａ）は給電回
路部の入力インピーダンス特性、図２２（ｂ）は電流の
振幅比、図２３は電流の位相特性を示したものである。
図２４は、アンテナと給電部を接続した入力インピーダ
ンス特性である。図２５は、そのときの指向性であり、
天頂方向より低仰角まで円偏波特性となっていることが
分かる。

【００１９】上記のように理論結果に基づいて設計し、
それを実験で確認し、良好な結果を得た。本発明による
携帯端末用小形ヘリカルアンテナ装置では、円偏波で低
仰角まで送信、受信を行なうことができ、移動体の移動
範囲がより広く変わっても送、受信が可能である。

【００２０】なお、上記実施形態では、アンテナ素子２
は、先端（上端部）を開放させ、終端（下端部）より給
電する構成としたが、これとは逆の構成、すなわち、ア
ンテナ素子２の下端部を開放させ、上端部より給電する
構成としても良く、この場合においても上記実施形態と
ほぼ同様の特性を得ることができる。

【００２１】

【発明の効果】以上詳記したように本発明によれば、ヘ
リカルアンテナの一方の端部に９０度の位相差を有する
給電部を設け、上記ヘリカルアンテナと給電部とを一体
化した構造としているので、非常に小形で性能の良いア
ンテナとすることができる。従って、本発明によるヘリ
カルアンテナは、ビームの仰角を使用範囲内に傾けるこ
とが出来る移動体用のアンテナである携帯端末用アンテ
ナとして用いることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係る携帯端末用小形ヘリ
カルアンテナ装置の構造図。

【図２】同実施形態におけるアンテナ部の詳細を示す構
成図。

【図３】（ａ）は同実施形態における給電部の詳細を示
す構成図、（ｂ）は給電部の他の構成例を示す図。

【図４】同実施形態におけるアンテナの高さ１００ｍｍ
及び８０ｍｍの場合の指向性を示す図。

【図５】同実施形態におけるアンテナの高さ６０ｍｍ及
び４０ｍｍの場合の指向性を示す図。

【図６】同実施形態におけるアンテナの高さ１００ｍｍ
及び８０ｍｍの場合の軸比を示す特性図。

【図７】同実施形態におけるアンテナの高さ６０ｍｍ及
び４０ｍｍの場合の軸比を示す特性図。

【図８】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を０．
５ターン及び１ターンとした場合の指向性を示す図。

【図９】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を１．
５ターン及び２ターンとした場合の指向性を示す図。

【図１０】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を
２．５ターン及び３ターンとした場合の指向性を示す
図。

【図１１】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を
３．５ターンとした場合の指向性を示す図。

【図１２】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を
０．５ターン及び１ターンとした場合の軸比を示す特性
図。

【図１３】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を
１．５ターン及び２ターンとした場合の軸比を示す特性
図。

【図１４】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を
２．５ターン及び３ターンとした場合の軸比を示す特性
図。

【図１５】同実施形態におけるアンテナ素子の巻数を
３．５ターンとした場合の軸比を示す特性図。

【図１６】同実施形態におけるアンテナ素子の巻き数Ｎ
を１．５ターンに固定してアンテナの高さＨを４０ｍｍ
及び６０ｍｍとした場合の指向性を示す図。

【図１７】同実施形態におけるアンテナ素子の巻き数Ｎ
を１．５ターンに固定してアンテナの高さを８０ｍｍと
した場合の指向性及び軸比を示す図。

【図１８】アンテナの高さを８０ｍｍに固定して巻き数
を１及び１．１２５とした場合の指向性を示す図。

【図１９】アンテナの高さを８０ｍｍに固定して巻き数
を１．２５及び１．３７５とした場合の指向性を示す
図。

【図２０】同実施形態におけるアンテナが装着される筐
体の構成例を示す図。

【図２１】同実施形態におけるアンテナの高さを最適値
に設定して筐体を付けた場合のφ＝０°とφ＝９０°と
したときの指向性を示す図。

【図２２】（ａ）は同実施形態における給電回路部のみ
の入力インピーダンス特性を示す図、（ｂ）は電流の振
幅比を示す図。

【図２３】同実施形態における給電回路部のみの電流の
位相特性を示す図。

【図２４】同実施形態におけるアンテナと給電部を接続
した場合の入力インピーダンス特性を示す図。

【図２５】同実施形態におけるアンテナと給電部を接続
した場合の指向性を示す図。

【符号の説明】

１ 円柱状部材（ヘリカルアンテナ） １１，１２ 出力ポート ２ アンテナ素子（フィラメント（銅箔）線） ２１ フイルム基板 ３ 給電部 ３１ 位相差部（電気長９０゜） ３２ アンテナフィラメント（電気長０゜） ３３ 整合用抵抗 ３４ ウイルキンソン２分配回路 ４ 給電

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川上 春夫 埼玉県大宮市宮ヶ谷塔４丁目72番地 アン テナ技研株式会社内 (72)発明者 野本 真一 埼玉県上福岡市大原２丁目１番地15 国際 電信電話株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ヘリカルアンテナと、このヘリカルアン
   テナの一方の端部に設けた位相差９０度を構成する給電
   部とを具備し、上記アンテナと給電部を一体化し、円偏
   波の指向性を天頂方向より低仰角まで一定値となるよう
   に構成したことを特徴とする携帯端末用小形ヘリカルア
   ンテナ装置。