JPH116526A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

Info

Publication number
JPH116526A
JPH116526A JP9175175A JP17517597A JPH116526A JP H116526 A JPH116526 A JP H116526A JP 9175175 A JP9175175 A JP 9175175A JP 17517597 A JP17517597 A JP 17517597A JP H116526 A JPH116526 A JP H116526A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bearing
life
rolling
wear
test
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9175175A
Other languages
English (en)
Inventor
Nobuaki Mitamura
宣晶 三田村
Kazuo Sekino
和雄 関野
Hisaaki Koike
尚昭 小池
Yukio Takahashi
幸雄 高橋
Mikio Yamaguchi
幹夫 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
IHI Corp
Original Assignee
NSK Ltd
IHI Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd, IHI Corp filed Critical NSK Ltd
Priority to JP9175175A priority Critical patent/JPH116526A/ja
Priority to GB9813024A priority patent/GB2326645B/en
Priority to US09/098,980 priority patent/US6171414B1/en
Priority to DE19826963A priority patent/DE19826963C2/de
Publication of JPH116526A publication Critical patent/JPH116526A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
    • F16C33/58Raceways; Race rings
    • F16C33/62Selection of substances
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C2360/00Engines or pumps
    • F16C2360/23Gas turbine engines
    • F16C2360/24Turbochargers
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
    • Y10STECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10S384/00Bearings
    • Y10S384/90Cooling or heating
    • Y10S384/912Metallic

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Rolling Contact Bearings (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温・高速条件下での転がり疲労寿命や耐摩
耗性に優れ、音響不良が生じることのないようにした。 【解決手段】 合金鋼材料で形成された内輪及び外輪か
らなる軌道輪と、セラミック材料で形成されると共に前
記内輪と前記外輪との間に転動自在に配置された複数個
の転動体とで構成され、前記合金鋼材料は、少なくとも
Si:0.7〜1.5wt%、Cr:0.5〜2.0w
t%、Mo:0.5〜2.0wt%を鋼中に含有し、か
つ前記合金鋼材料の表面に浸炭窒化処理が施されてい
る。これにより、高温高速環境下で使用しても耐久性、
耐熱性に優れ且つ音響不良が生じることのない転がり軸
受を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は転がり軸受に関し、
特に自動車のターボチャージャ等に使用される転がり軸
受に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車のターボチャージャ等に用いられ
る転がり軸受は、一般に、高い面圧下で繰り返し剪断応
力を受ける厳しい条件下で使用されるため、該剪断応力
に耐え得る転がり疲労寿命を確保することが必要とされ
る。また、この種の転がり軸受においては、稼働中の軌
道輪と転動体との間の滑りに起因した摩耗が生じるのを
回避する必要があり、従って耐摩耗性が良好であること
も要請される。このため、従前の転がり軸受において
は、転動体材料及び軌道輪材料に高炭素クロム軸受鋼
(SUJ2)を使用し、該高炭素クロム軸受鋼に焼入・
焼戻処理を施すことにより転がり疲労寿命や耐摩耗性を
確保することが行なわれている。
【0003】ところが、近年では、転がり軸受を使用す
る機械の高負荷化・高速化に伴って該転がり軸受の使用
条件は益々厳しいものとなってきており、現状の転がり
疲労特性や耐摩耗特性では満足できなくなってきてい
る。特に、自動車のターボチャージャ等に使用される転
がり軸受は、平均使用温度が例えば150〜200℃
(最大使用温度300℃)と非常に高く、高速回転で使
用され、しかも、0〜180,000rpmの範囲で急
加減速運転されるため、軸受材料として使用される高炭
素クロム軸受鋼の硬さ低下を招来し、その結果、所望の
転がり疲労特性や耐摩耗特性を満たすことができなくな
ってきている。
【0004】また、上述した高温・高速の使用環境下で
は、軌道輪の寸法安定性が良好であることも要請され
る。そして、斯かる良好な寸法安定性を得るためには軸
受の使用温度よりも高い温度で焼戻処理を施す必要があ
るため、高温で焼戻処理を施しても十分な硬さの得られ
る高温強度の良好な耐熱材料を使用する必要がある。
【0005】そこで、このような観点から高温硬さが良
好で転がり疲労特性や耐摩耗特性を満足させるものとし
て、炭化物形成炭素(Cr、Mo、V等)を多量に含有
したM50等の耐熱鋼を使用した転がり軸受が提案され
ている(例えば、実公平8−9452号公報)。
【0006】該転がり軸受においては、軸受材料として
耐熱鋼を使用し、該耐熱鋼に対して500℃近傍の所定
温度で焼戻処理を施すことにより微細炭化物を2次析出
させて耐熱性を確保するようにし、これにより高温使用
における硬さの低下等を抑制し、高温・高速環境下での
転がり疲労寿命や耐摩耗性の充足を図っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、自動車のタ
ーボチャージャにおいては、他のターボチャージャに比
べてオイルメンテナンスをする機会が少なく、また潤滑
油を軸受に供給するため細かいフィルタを使用すること
ができず、したがって、潤滑油中に異物の混入する可能
性が高い。そして、上記異物が転動体と軌道輪との間に
入り込んで噛み込むと軌道輪の走行部に圧痕が生じ、そ
の結果圧痕縁での応力集中によって該圧痕縁を起点とし
た所謂圧痕起点型の早期剥離が生じ、軸受の早期破損を
招来するという問題点があった。すなわち、前記圧痕起
点型の早期剥離を防止するには残留オーステナイトが材
料表面に存在することが有効であるとされているが、上
記耐熱鋼を使用した従来の転がり軸受においては微細炭
化物を2次析出させて耐熱性を確保しているため、材料
表面に残留オーステナイトが殆ど存在しないものとなっ
ており、したがって耐久性に劣り軸受の早期破損を招来
するという問題点があった。
【0008】また、上述した異物の中でも砥粒等の特に
硬い異物が転動体と軌道輪との間に噛み込むと該異物が
軌道輪の走行部にめり込んで該走行部に固着してしまう
場合もあり、かかる状態で転動体が前記軌道輪の走行部
を転動すると前記転動体に帯状の局部的な圧痕集中が発
生する。そして、このような帯状圧痕集中の生じた転動
体は、更にその自転軸を変えながら軸受内を回転するた
め、音響不良が生じるという問題点もあった。
【0009】本発明はこのような問題点に鑑みなされた
ものであって、高温・高速使用条件下においても転がり
疲労寿命や耐摩耗性に優れ、音響不良の生じることがな
い転がり軸受を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】転動体における局部的な
圧痕集中を回避して上述した音響不良の発生を防止する
ためには転動体材料として耐摩耗性に優れたセラミック
材料を使用することが好ましいと考えられる。一方、転
動体材料としてセラミックを使用すると、転動体と軌道
輪との間に異物が噛み込んだ場合に斯かる噛み込みに起
因した圧痕が硬さで劣る鋼製の軌道輪側に一方的に生
じ、しかも該圧痕の形状は合金鋼材料からなる転動体を
使用した場合に比べ大きく且つ深いものとなる。そし
て、前記圧痕の形状が大きく且つ深くなると圧痕縁での
応力集中も大きくなり、このため圧痕起点型の早期剥離
による破損が生じやすくなる。
【0011】そこで、本願出願人は、鋭意研究を行った
結果、Si、Cr、Moを適当量添加した合金鋼材料に
浸炭窒化処理を施すことにより、材料のマトリックス
(マルテンサイト組織)の高温強度を向上させるとこと
ができると共に、圧痕起点型の剥離防止に有効な残留オ
ーステナイトを材料表面に存在させることが可能になる
という知見を得た。
【0012】本発明はかかる知見に基づきなされたもの
であって、本発明に係る転がり軸受は、合金鋼材料で形
成された内輪及び外輪からなる軌道輪と、セラミック材
料で形成されると共に前記内輪と前記外輪との間に転動
自在に配置された複数個の転動体とで構成され、前記合
金鋼材料は、少なくともSi:0.7〜1.5wt%、
Cr:0.5〜2.0wt%、Mo:0.5〜2.0w
t%を鋼中に含有し、かつ前記合金鋼材料の表面に浸炭
窒化処理が施されていることを特徴としている。
【0013】上記構成によれば、転動体材料としてセラ
ミックを使用しているので、局部的な帯状の圧痕集中が
転動体に発生するのを回避することが可能となり、音響
劣化に対して改善を図ることができる。また、軌道輪を
形成する合金鋼材料が、少なくともSi:0.7〜1.
5wt%、Cr:0.5〜2.0wt%、Mo:0.5
〜2.0wt%を鋼中に含有し、かつ前記合金鋼材料の
表面に浸炭窒化処理が施されているので、軌道輪の高温
強度が向上し且つ表面に残留オーステナイトが存在す
る。したがって、斯かる軌道輪材料に対して所定の焼入
・焼戻処理を施すことにより、圧痕起点型の早期剥離が
生じることのない転がり軸受を得ることができる。
【0014】また、寸法安定性は、上述したように使用
温度よりも高温でもって焼戻処理を施すことにより改善
されるが、斯かる高温で焼戻処理を施しても多量の残留
オーステナイトが鋼中に存在すると該残留オーステナイ
トの分解により軸受寸法が経時変化を起こし、寸法安定
性の悪化を招く。すなわち、表面に残留オーステナイト
を存在させて圧痕起点型剥離を防止する一方で、寸法安
定性を良好なものとするためには残留オーステナイトの
鋼中に占める容量を低く抑える必要があり、そのために
は芯部の残留オーステナイト量をできるだけ抑制する必
要がある。
【0015】そこで、本願出願人が、更に鋭意研究した
結果、所望の寸法安定性を得るためには軸受の表面、芯
部を含めた平均の残留オーステナイトの容量を5 vol%
以下に設定する必要があるとの知見を得、そのためには
残留オーステナイト量が依存する素材(浸炭窒化以前)
の炭素濃度を転がり軸受に対して0.3〜0.6wt%
に設定することが好ましいことが判明した。
【0016】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る転がり軸受の
実施の形態について詳説する。
【0017】本実施の形態に係る転がり軸受は、上述し
たように、合金鋼材料で形成された内輪及び外輪からな
る軌道輪と、セラミック材料で形成されると共に前記内
輪と前記外輪との間に転動自在に配置された複数個の転
動体とで構成され、前記合金鋼材料は、少なくともS
i:0.7〜1.5wt%、Cr:0.5〜2.0wt
%、Mo:0.5〜2.0wt%を鋼中に含有し、かつ
前記合金鋼材料の表面に浸炭窒化処理が施されており、
さらに好ましくは、鋼中の炭素濃度が0.3〜0.6w
t%とされている。
【0018】以下、本転がり軸受の成分範囲を限定した
理由、及び浸炭窒化を施した理由について説明する。
【0019】(1)Si Si(珪素)は、焼戻し軟化抵抗性に効果のある元素で
あり、高温強度を向上させると共に、高温環境下におい
て圧痕起点型剥離の防止に有効な残留オーステナイトの
分解を遅滞させる効果があるが、斯かる効果を奏するた
めにはSiは少なくとも0.7wt%以上添加すること
が必要である。一方、Siの含有量が多すぎる場合は機
械的強度の低下を招き、またSiは浸炭阻害性のある元
素であることから上限を1.5wt%に設定した。すな
わち、Siの含有量は、0.7〜1.5wt%に限定し
た。
【0020】(2)Cr及びMo Cr(クロム)及びMo(モリブデン)は、Siと同
様、焼戻し軟化抵抗性に効果のある元素であり、高温強
度を向上させる効果がある。また、Cr及びMoは、浸
炭窒化された表面に微小な炭化物を形成する炭化物形成
元素としての役割を担う元素であり、圧痕起点型剥離の
防止に効果的な元素であるが、斯かる効果を奏するため
にはCr及びMoは共に少なくとも0.5wt%以上添
加することが必要である。一方、Cr及びMoの含有量
が2.0wt%を超えると素材の段階で巨大炭化物が形
成され、炭化物の脱落を招来して却って軸受の転がり疲
労寿命を低下させる。したがって、Cr及びMoの含有
量は、共に0.5〜2.0wt%に限定した。
【0021】(3)C 上述したように残留オーステナイト量が多すぎると該残
留オーステナイトが分解して寸法の経時変化を招来し、
寸法安定性を損なう。一方、軌道輪表面における残留オ
ーステナイトの存在は圧痕起点型剥離の防止に効果的で
ある。したがって、表面に残留オーステナイトを存在さ
せた上で、軸受全体に占める残留オーステナイトの容量
を制限するのが好ましく、そのためには軸受芯部の残留
オーステナイトを抑制する必要がある。そして、このよ
うな観点から表面、芯部を含めて平均残留オーステナイ
トの鋼中に占める容量を5 vol%以下とするのが好まし
く、そのためには残留オーステナイトが依存する炭素濃
度(C)を0.6wt%以下にする必要がある。一方、
炭素濃度を過度に低くした場合は、浸炭窒化処理で所定
の浸炭深さを得るのに長時間を要するため、全体的なコ
ストアップを招来する結果となる。かかる点を考慮する
と、そのためには鋼中の炭素濃度を0.3wt%以上と
する必要がある。したがって、寸法安定性をより一層良
好なものとするには鋼中の炭素濃度を0.3〜0.6w
t%に限定するのが好ましい。
【0022】(4)浸炭窒化処理 表面処理として浸炭窒化処理を施すこととしたのは以下
の理由による。
【0023】i) 表面にC(炭素)を付加することに
より、マトリックス(マルテンサイト組織)を固溶強化
することができると共に、極表層部において圧痕起点型
剥離の防止に有効な多量の残留オーステナイトを形成す
ることができる。
【0024】ii) 表面にN(窒素)を付加することによ
り、焼戻抵抗性が向上して高温強度が向上し、耐摩耗性
の向上を達成することができると共に、極表層部におい
て圧痕起点剥離の防止に有効な多量の残留オーステナイ
トを存在させることができる。しかも表面に形成される
炭化物は微細であり、したがって炭化物の脱落をも防止
することができる。
【0025】尚、浸炭窒化処理の処理条件としては、浸
炭窒化処理後の表面炭素濃度が0.8〜1.1wt%、
表面窒素濃度が0.2〜0.6wt%となるように条件
設定するのが望ましい。その理由は、表面炭素濃度が
0.8wt%以下の場合は表面硬さが低下して転がり疲
労寿命や耐摩耗性が悪化するからであり、表面炭素濃度
が1.1wt%を超えると浸炭窒化時に巨大炭化物が析
出し、転がり疲労寿命を低下させることとなるからであ
る。また、表面窒素濃度が0.2wt%以下の場合は高
温強度が低下して耐摩耗性が悪化するからであり、表面
窒素濃度が0.6wt%を超えると軸受製造時における
研削仕上げが難研削となり、軸受の生産性低下を招来す
ることとなるからである。
【0026】
【実施例】次に、本発明の実施例について具体的に説明
する。
【0027】自動車のターボチャージャのように高温高
速条件下で転がり軸受を使用する場合は、油膜の形成が
困難となることやスピン滑りが生じて軌道輪表面に作用
する接線力が大きくなる。そしてその結果、軌道輪の材
料内に巨大炭化物が存在すると該巨大炭化物の脱落によ
り組織内に欠陥が生じ、転がり疲労寿命の低下を招来す
ることとなる。また、斯かる脱落した巨大炭化物が潤滑
油中に異物として混入し、その結果軌道輪と転動体との
間に該異物が噛み込んだ場合は、圧痕を形成し転がり疲
労寿命の低下を招来する虞がある。したがって、材料表
面は巨大炭化物の存在を排除して微細炭化物を存在させ
る必要があり、そのためには最大炭化粒径χをできるだ
け小さくする必要がある。
【0028】そこで、本願出願人は、表1に示す成分組
成及び熱処理を施した軌道輪A〜Uを作製し、軌道輪材
料のミクロ組織を観察し、最大炭化物粒径χを測定し
た。
【0029】
【表1】 表1において、*は上記実施の形態で限定した本発明の
範囲外(C成分を除く。)の成分組成等を示している。
【0030】軌道輪MはSiの含有量が不足している場
合を示している。また、軌道輪N、OはCr、Moが夫
々不足している場合を示し、軌道輪P、QはCr、Mo
が夫々過剰とされている場合を示している。
【0031】軌道輪Lは浸炭窒化処理を施さずに所謂ズ
ブ焼きをしたものであり、軌道輪Rは、浸炭窒化処理を
施す代わりに浸炭処理を施したものである。
【0032】軌道輪S、Tは熱処理後の表面炭素濃度が
不足又は過剰の場合を示し、軌道輪Uは熱処理後の表面
窒素濃度が不足している場合を示している。
【0033】軌道輪J、軌道輪Kは従来例を示したもの
であり、軌道輪Jは高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)で
形成され、耐熱鋼(M50)で形成されている。
【0034】これに対して、軌道輪A〜Iはいずれも本
発明の範囲内のものとして作製した軌道輪であり、特に
軌道輪D〜Iは鋼中の炭素濃度をも含めて本発明の範囲
内のものとして作製した軌道輪である。
【0035】図1〜図3はCr、Mo、及び表面炭素濃
度(表面C%)と最大炭化物粒径χとの関係を示した特
性図である。
【0036】図1はCrの含有率と最大炭化物粒径χと
の関係を示す特性図であって、この図1から明らかなよ
うに、Crの含有率が2wt%を超えた場合は最大炭化
物粒径χが極端に大きくなり4μm以上の巨大炭化物が
形成されるのが判る。
【0037】また、図2はMoの含有率と最大炭化物粒
径χとの関係を示す特性図であって、この図2から明ら
かなように、Moの含有率が2wt%を超えると、Cr
の場合と同様、最大炭化物粒径χが極端に大きくなり、
4μm以上の巨大炭化物が形成されるのが判る。
【0038】さらに、図3は表面炭素濃度と最大炭化物
粒径χとの関係を示す特性図であって、この図3から明
らかなように、表面炭素濃度が1.1wt%を超えると
最大炭化物粒径χが極端に大きくなり、4μm以上の巨
大炭化物が形成されるのが判る。
【0039】このようにこれらのミクロ観察の結果か
ら、Cr、Mo、表面炭素濃度の上限値を、夫々、2w
t%、2wt%、1.1%に限定する必要があることが
判る。
【0040】次に、本願出願人は、高炭素クロム軸受鋼
(SUJ2)、耐熱鋼(M50)、セラミック材料とし
ての窒化珪素(Si3 4 )を素材とした転動体を作製
した。
【0041】表2は、転動体の成分組成と製造方法を示
したものであり、転動体Iは高炭素クロム軸受鋼(SU
J2)をズブ焼し、転動体IIは耐熱鋼(M50)をズブ
焼し、さらに、転動体IIIは窒化珪素(Si34 )に周
知のHIP法を使用して作製した。転動体I及び転動体
IIは従来例であり、転動体IIIが本発明実施例に対応す
る。
【0042】
【表2】 次に、本願出願人は、表1に示した軌道輪A〜Uと転動
体I〜IIIとを表3のように組合わせて転がり軸受を製
造し、これら製造された転がり軸受に対して各種評価試
験(転動体帯状摩耗評価試験、剥離寿命評価試験
(L10寿命)、スピン滑り摩耗評価試験、疲労摩耗
評価試験(ピーリング損傷評価試験)、寸法安定性評
価)を行った。表3中、実施例1〜9は本発明の範囲内
となる転がり軸受を示している。また、従来例10、1
1は、夫々、軸受材料として高炭素クロム軸受鋼(SU
J2)、耐熱鋼(M50)を使用した場合を示し、比較
例12〜21は軌道輪又は転動体の内のいずれか一方が
本発明の範囲外となる転がり軸受を示している。
【0043】尚、製造された転がり軸受は、7205C
タイプのアンギュラ玉軸受であり、転動体を保持する保
持器としては、所定形状でもって射出成形されたポリイ
ミド製材料にバレル加工を施したものを使用した。
【0044】
【表3】 以下、転がり軸受の評価試験について説明する。
【0045】転動体帯状摩耗評価試験 上述したように自動車のターボチャージャに使用される
転がり軸受は、潤滑油中に異物が混入した状態で使用さ
れることが多く、砥粒等のように鋼製軌道輪材料に比べ
て硬度が高く、しかも粒径が20μm以下のように小さ
い異物が潤滑油中に混入している場合は、該異物が軌道
輪中にめり込まれる形となって該軌道輪に固着する。し
たがって、斯かる異物が固着した軌道輪上を転動体が通
過すると転動体に帯状の圧痕集中が発生し、音響特性が
劣化する。
【0046】図4(a)は異物が固着した軌道輪上を転
動体が走行した場合の転動体の状態を示した写真であ
り、図4(b)は図4(a)の拡大写真である。
【0047】図4(b)に示すように、異物が固着した
軌道輪上を転動体が走行すると該転動体表面には黒色で
表示される圧痕が集中して発生し、斯かる圧痕集中が生
じると音響特性の劣化を招く。
【0048】そこで、本願出願人は、表3の各種転がり
軸受に対して一定時間(500時間)稼働させた後、転
動体の表面観察及び転動体形状等を測定し、圧痕が生じ
たか否かにより帯状摩耗の評価を行った。
【0049】帯状摩耗評価の試験条件は下記の通りであ
り、試験結果は表4に示す通りである。
【0050】 〔帯状摩耗評価の試験条件〕 試験機 : 玉軸受寿命試験機(日本精工(株)製) 試験軸受 : 7205Cタイプ(アンギュラ玉軸受) 試験荷重 : 100kgf(アキシャル荷重) 回転数 : 25000rpm 計算寿命 : 1534時間 試験温度 : 200℃ 潤滑形式 : 油浴 潤滑油 : MIL−L−23699C潤滑油(モービル(株)製) 試験稼働時間 : 500時間 異 物 : アルミナ粉(Al23 ) ヴィッカース硬さHv : 1500以上 粒 径 : 5〜10μm 濃 度 : 100ppm
【0051】
【表4】 この表4から明らかなように、転動体として耐熱鋼を使
用した従来例11及び比較例13には全体的に圧痕が生
じ、且つ局部的に帯状の圧痕集中が発生しているのが認
めらたのに対し、転動体としてSi34 を使用した転
がり軸受には圧痕の発生は認められなかった。このよう
に転動体材料としてSi34 等の耐摩耗性に優れたセ
ラミック材料の使用は、帯状の圧痕集中発生を阻止する
のに有効であり、帯状摩耗の発生を抑制するのに効果的
であることが判る。
【0052】剥離寿命評価試験(L10寿命) 上述したように自動車のターボチャージャに使用される
転がり軸受が潤滑油中に異物が混入した状態で使用され
た場合は、異物の軌道輪への噛み込み等によっり圧痕起
点型の剥離が軌道輪に生じる虞があり、軸受性能として
は斯かる耐剥離特性の良好であることが要求される。
【0053】そこで、本願出願人は、試験片として表3
に示す各種転がり軸受を各5個宛使用して剥離寿命評価
試験を行った。尚、剥離寿命は、試験片近傍の試験機適
所に振動計を取り付け、該振動計の計測値が所定値以上
を示したときに試験片が剥離損傷したと判断することに
より評価した。
【0054】尚、剥離寿命評価の試験条件は下記の通り
である。
【0055】 〔剥離寿命評価の試験条件〕 試験機 : 玉軸受寿命試験機(日本精工(株)製) 試験軸受 : 7205Cタイプ(アンギュラ玉軸受) 試験荷重 : 250kgf(アキシャル荷重) 回転数 : 25000rpm 計算寿命 : 155時間 試験温度 : 200℃ 潤滑形式 : 油浴 潤滑油 : MIL−L−23699C潤滑油(モービル(株)製) 異 物 : 鋼粉 ヴィッカース硬さHv : 870 粒 径 : 37〜74μm 濃 度 : 100ppm また、各試験結果をワイブル分布によって整理し、L10
寿命を算出して各軸受の剥離寿命を評価した。表5は、
各試験軸受のL10寿命を示している。
【0056】
【表5】 この表5の実施例4と比較例13、及び従来例11と比
較例12との比較から分かるように、同一の軌道輪材料
を使用した場合において、転動体材料にSi34を使用
したときは合金鋼材料を使用したときに比べてL10寿命
が低下していることが判る。これは転動体材料に比べて
軌道輪材料の方が柔らかいため、転動体と軌道輪との間
に異物が噛み込んだ場合、圧痕縁の応力集中が大きくな
るような圧痕が軌道輪側に生じ、その結果軌道輪寿命に
悪影響を及ぼすためと考えられる。
【0057】したがって、転動体材料としてSi34
等の耐摩耗性に優れたセラミックを使用する場合は、軌
道輪が圧痕起点型の剥離を起こさないような軌道輪材料
を選定する必要がある。
【0058】そこで、本願出願人は、図5〜図9に示す
ように、Si、Cr及びMoの鋼中の各含有率、表面炭
素濃度、表面窒素濃度とL10寿命との関係をプロット
し、計算寿命と比較した。
【0059】図5はSiの含有率とL10寿命との関係を
示した特性図である。比較例15(軌道輪材料M)は、
Si含有率が0.65wt%と低いため、L10寿命が1
36時間と軸受の計算寿命(155時間)以下となって
おり、軌道輪寿命が転がり軸受の計算寿命以上を確保す
るためには、Si含有率が0.7wt%以上であること
が必要とされることが判る。
【0060】図6はCrの含有率とL10寿命との関係を
示した特性図である。比較例16(軌道輪材料N)は、
Cr含有率が0.42wt%と低いため、L10寿命が1
45時間と軸受の計算寿命(155時間)以下となって
おり、軌道輪寿命が転がり軸受の計算寿命以上を確保す
るためには、Cr含有率が0.5wt%以上であること
が必要とされることが判る。
【0061】図7はMoの含有率とL10寿命との関係を
示した特性図である。比較例17(軌道輪材料O)は、
Mo含有率が0.44wt%と低いため、L10寿命が1
19時間と軸受の計算寿命(155時間)以下となって
おり、軌道輪寿命が転がり軸受の計算寿命以上を確保す
るためには、Mo含有率が0.5wt%以上であること
が必要とされることが判る。
【0062】図8は表面炭素濃度とL10寿命との関係を
示した特性図である。比較例19(軌道輪材料S)は、
表面炭素濃度が0.75wt%と低いため、L10寿命が
99時間と軸受の計算寿命(155時間)以下となって
おり、軌道輪寿命が転がり軸受の計算寿命以上を確保す
るためには、表面炭素濃度が0.8wt%以上であるこ
とが必要とされることが判る。一方、比較例20(軌道
輪材料T)は、表面炭素濃度が1.19wt%と高いた
め巨大炭化物が生成されて該巨大炭化物が脱落し、組織
に欠陥が生じるため、L10寿命が150時間と軸受の計
算寿命(155時間)以下となっており、表面炭素濃度
の上限としては1.1wt%以下であることが必要とさ
れることが判る。
【0063】図9は表面窒素濃度とL10寿命との関係を
示した特性図である。比較例21(軌道輪材料U)は、
表面窒素濃度が0.15wt%と低いため、L10寿命が
148時間と軸受の計算寿命(155時間)以下となっ
ており、軌道輪寿命が転がり軸受の計算寿命以上を確保
するためには、表面窒素濃度が0.2wt%以上である
ことが必要とされることが判る。
【0064】以上の剥離試験の試験結果から、Siの含
有率は0.7wt%以上、Crの含有率は0.5wt%
以上、Moの含有率は0.5wt%以上、表面炭素濃度
は0.8〜1.1wt%、表面窒素濃度は0.2wt%
以上が必要であることが判った。
【0065】スピン滑り摩耗評価試験 自動車のターボチャージャに使用される転がり軸受は、
アキシャル荷重が受けられるように通常はアンギュラ玉
軸受が使用されるが、該アンギュラ玉軸受がアキシャル
荷重を受けた場合は接触角が生じ、転動体と軌道輪との
間にスピン滑りが生じる。
【0066】図10(a)はスピン滑りが生じた場合の
写真であり、図10(b)は図10(a)の拡大写真で
ある。
【0067】この図10(b)に示すように、アキシャ
ル荷重を受けた場合の軌道輪と転動体との間の接触角に
よりスピン滑りが生じ、その結果転動体には線状の摩耗
痕が生じる。特に、自動車用のターボチャージャのよう
に高速回転や油膜形成が困難な高温環境下で使用される
場合は、上述したスピン滑りによる摩耗痕の発生を回避
する必要がある。
【0068】そこで、本願出願人は、表3の各種転がり
軸受に対して計算寿命(538時間)まで稼働させ、試
験終了後に軌道輪及び転動体の表面を光学顕微鏡や電子
顕微鏡で表面状態を観察し、スピン滑り摩耗を評価し
た。
【0069】スピン滑り摩耗評価の試験条件は下記の通
りであり、表6は試験結果を示している。
【0070】 〔スピン滑り摩耗評価の試験条件〕 試験機 : 玉軸受寿命試験機(日本精工(株)製) 試験軸受 : 7205Cタイプ(アンギュラ玉軸受) 試験荷重 : 150kgf(アキシャル荷重) 回転数 : 25000rpm 計算寿命 : 538時間 試験温度 : 200℃ 潤滑形式 : オイルエア(遮断式)潤滑 潤滑油 : MIL−L−23699C潤滑油(モービル(株)製) 異 物 : なし
【0071】
【表6】 この表6から明らかなように、従来例10では上述した
図10(b)に示すような線状の摩耗痕が転動体に生じ
ていることが観察され、また軌道輪の表面は摩滅してい
ることが観察された。比較例14(軌道輪材料L)及び
比較例18(軌道輪材料R)はいずれも浸炭窒化処理が
施されておらず、また比較例21(軌道輪材料U)は表
面窒素濃度が低いため、耐摩耗性に劣っており、軌道輪
の表面が摩滅していることが確認された。これらの実験
結果により軌道輪の表面に浸炭窒化処理を施して窒素を
固溶させることが耐摩耗性の向上に寄与することが判
る。
【0072】疲労摩耗評価試験(ピーリング損傷評価
試験) 上述したように自動車のターボチャージャに使用される
転がり軸受が潤滑油中に異物の混入した状態で使用され
た場合は、圧痕起点型の剥離が軌道輪に生じる虞がある
が、該剥離以外にも疲労摩耗(ピーリング損傷)が生じ
る虞がある。
【0073】図11(a)は軌道輪にピーリング損傷が
生じた場合の写真であり、図11(b)は図11(a)
の拡大写真である。
【0074】この図11(b)に示すように、疲労摩耗
により軌道輪表面にはフレーク状の剥離が生じている。
特に、自動車用のターボチャージャのように滑りの大き
くなる高速回転や油膜形成が困難な高温環境下で使用さ
れる場合は、上述した疲労摩耗が生じやすくなる。
【0075】そこで、本願出願人は、表3の各種転がり
軸受に対して計算寿命(538時間)まで稼働させ、試
験終了後に軌道輪の表面を光学顕微鏡や電子顕微鏡で表
面状態を観察し、表面に微小クラックが発生していない
か否かにより疲労摩耗を評価した。
【0076】疲労摩耗評価の試験条件は下記の通りであ
り、表7は試験結果を示している。
【0077】 〔疲労摩耗評価の試験条件〕 試験機 : 玉軸受寿命試験機(日本精工(株)製) 試験軸受 : 7205Cタイプ(アンギュラ玉軸受) 試験荷重 : 150kgf(アキシャル荷重) 回転数 : 25000rpm 計算寿命 : 538時間 試験温度 : 200℃ 潤滑形式 : 油浴 潤滑油 : MIL−L−23699C潤滑油(モービル(株)製) 異 物 : 鋼粉 ヴィッカース硬さHv : 870 粒 径 : 37μm以下 濃 度 : 300ppm
【0078】
【表7】 この表7から明らかなように、従来例10、比較例1
2、14〜21で微小クラックの発生が認められた。ま
た、従来例11と比較例12との比較から明らかなよう
に、転動体材料としてSi34 等の耐摩耗性に優れた
セラミック材料を使用した場合は、転動体材料として鋼
材料を使用した場合に比べ、ピーリング損傷(疲労摩
耗)が生じ易いことが判る。これはピーリング損傷は微
小な異物の噛み込みによる微小圧痕を起点とした微小剥
離の集合体であるため、軌道輪側に優先的に圧痕縁の応
力集中が大きくなるような圧痕が生じ、このため上述し
たピーリング損傷が生じ易くなるものと考えられる。
【0079】したがって、転動体材料としてSi34
等の耐摩耗性に優れたセラミック材料を使用する場合
は、疲労摩耗(ピーリング損傷)を防止するためには剥
離寿命評価と同様(図5〜図9参照)、圧痕起点型剥離
の発生を阻止し得る軌道輪材料を使用することにより、
ピーリング損傷の発生を抑制することができる。
【0080】寸法安定性評価 自動車用ターボチャージャのように最大300℃の高温
環境下で転がり軸受が使用された場合は軸受寸法の経時
変化が生じ易く、軸受異常に起因した故障が発生する虞
がある。
【0081】そこで、本願出願人は表3に示す転がり軸
受を200℃で加熱保持し、1000時間後に軌道輪の
外径寸法を測定し、寸法安定性を評価した。
【0082】尚、寸法安定性に影響を与える焼戻温度
は、高クロム炭素鋼(SUJ2)を使用して実施例10
及び耐熱鋼(M50)を使用した従来例11及び比較例
12を除き、320℃に設定し、従来例10については
硬さ低下を考慮して240℃に設定して行い、また従来
例11及び比較例12については析出硬化させるために
550℃に設定して行なった。
【0083】表8は各試験軸受に対する寸法安定性を示
している。
【0084】
【表8】 実施例1〜3、従来例10及び比較例14は、鋼中の炭
素濃度が少なくとも0.67wt%以上とされているた
め、高温で焼戻しを施しても残留オーステナイトが多量
に存在する。このため、これら実施例1〜3、従来例1
0及び比較例14では、鋼中の残留オーステナイトが分
解する結果、軸受寸法の寸法変化率が1.0×10
-2(%)以上に膨張し、軸受寸法の経時的変化が大きい
のに対し、炭素濃度が0.3〜0.6wt%の範囲内と
されているものは良好な寸法安定性を示しているのが判
る。
【0085】このように軸受寸法の寸法安定性は軌道輪
材料の鋼中の炭素濃度と密接な関係があり、鋼中の炭素
濃度は0.3〜0.6wt%の範囲内とされるのが好ま
しいことが判る。
【0086】表9は上記各種軸受け評価試験を纏めたも
のである。
【0087】
【表9】 表中、○は良好を示し、△はやや劣る場合を示し、×は
不良を示している。
【0088】この表9から明らかなように、従来例10
は軌道輪材料にMoが含有されておらず、Si含有率も
本発明の範囲外であるため、剥離寿命及び疲労摩耗の評
価結果が不良となり、また浸炭窒化処理を施していない
ためスピン摩耗の評価結果も不良となった。従来例11
は、転動体材料として耐熱鋼(M50)を使用している
ため、帯状摩耗の評価結果が不良となった。
【0089】比較例12はSi含有量が少ない一方、C
r及びMoの含有量が多すぎるため巨大炭化物が表面に
析出し、その結果剥離寿命及び疲労摩耗の評価結果が不
良となった。比較例13は転動体材料として耐熱鋼(M
50)を使用しているため帯状摩耗の評価結果が不良と
なった。比較例14はSi含有量が少なく且つ浸炭窒化
処理が施されていないため剥離寿命、スピン摩耗及び疲
労摩耗の評価結果が不良となった。比較例15〜17
は、夫々Si、Cr、Moが不足しているため剥離寿命
及び疲労摩耗の評価結果が不良となった。比較例18は
軌道輪材料に浸炭窒化処理が施されていないため、窒素
の固溶による耐摩耗性向上を図ることができず、そのた
め剥離寿命、スピン摩耗及び疲労摩耗の評価結果が不良
となった。
【0090】比較例19は軌道輪材料の表面炭素濃度が
不足しているため剥離寿命及び疲労摩耗の評価結果が不
良となった。比較例20は表面炭素濃度が過剰であるた
め巨大炭化物の脱落による組織の欠陥が生じ、このため
剥離寿命及び疲労磨耗の評価結果が不良となった。比較
例21は軌道輪材料の表面窒素濃度が少なく、組織内へ
の窒素の固溶が不十分であるため剥離寿命、スピン摩耗
及び疲労摩耗の評価結果が不良となった。
【0091】これに対して、実施例1〜実施例9は、い
ずれも本発明の範囲内にあり帯状摩耗、剥離寿命、スピ
ン摩耗、疲労摩耗の各評価結果は良好となった。特に、
実施例4〜実施例9は鋼中の炭素濃度が0.3〜0.6
wt%に抑制されているため、鋼中の芯部の残留オース
テナイトが少なく、実施例1〜実施例3に比べ、寸法安
定性においても優れた結果が得られた。
【0092】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る転がり
軸受は、合金鋼材料で形成された内輪及び外輪からなる
軌道輪と、セラミック材料で形成されると共に前記内輪
と前記外輪との間に転動自在に配置された複数個の転動
体とから構成され、前記合金鋼材料は、少なくともS
i:0.7〜1.5wt%、Cr:0.5〜2.0wt
%、Mo:0.5〜2.0wt%を鋼中に含有し、かつ
前記合金鋼材料の表面に浸炭窒化処理が施されているの
で、耐熱性を損なうこともなく、帯状摩耗やスピン摩
耗、疲労摩耗等の各種摩耗特性に優れ、しかも圧痕起点
型の早期剥離を防止することができる。よって、高温高
速環境下で使用しても耐久性、耐熱性に優れ且つ音響不
良が生じることのない転がり軸受を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cr含有率と最大炭化物粒径χとの関係を示し
た特性図である。
【図2】Mo含有率と最大炭化物粒径χとの関係を示し
た特性図である。
【図3】表面炭素濃度と最大炭化物粒径χとの関係を示
した特性図である。
【図4】転動体に生じた帯状摩耗の状態を示す写真であ
る。
【図5】Si含有率とL10寿命との関係を示した特性図
である。
【図6】Cr含有率とL10寿命との関係を示した特性図
である。
【図7】Mo含有率とL10寿命との関係を示した特性図
である。
【図8】表面炭素濃度とL10寿命との関係を示した特性
図である。
【図9】表面窒素濃度とL10寿命との関係を示した特性
図である。
【図10】転動体に生じたスピン摩耗の状態を示す写真
である。
【図11】軌道輪に生じたピーリング損傷の状態を示す
写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小池 尚昭 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東二テクニカルセンタ ー内 (72)発明者 高橋 幸雄 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東二テクニカルセンタ ー内 (72)発明者 山口 幹夫 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社技術研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金鋼材料で形成された内輪及び外輪か
    らなる軌道輪と、セラミック材料で形成されると共に前
    記内輪と前記外輪との間に転動自在に配置された複数個
    の転動体とで構成され、 前記合金鋼材料は、少なくともSi:0.7〜1.5w
    t%、Cr:0.5〜2.0wt%、Mo:0.5〜
    2.0wt%を鋼中に含有し、かつ前記合金鋼材料の表
    面に浸炭窒化処理が施されていることを特徴とする転が
    り軸受。
JP9175175A 1997-06-17 1997-06-17 転がり軸受 Pending JPH116526A (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9175175A JPH116526A (ja) 1997-06-17 1997-06-17 転がり軸受
GB9813024A GB2326645B (en) 1997-06-17 1998-06-16 Rolling Bearing
US09/098,980 US6171414B1 (en) 1997-06-17 1998-06-17 Rolling bearing
DE19826963A DE19826963C2 (de) 1997-06-17 1998-06-17 Wälzlager

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9175175A JPH116526A (ja) 1997-06-17 1997-06-17 転がり軸受

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH116526A true JPH116526A (ja) 1999-01-12

Family

ID=15991589

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9175175A Pending JPH116526A (ja) 1997-06-17 1997-06-17 転がり軸受

Country Status (4)

Country Link
US (1) US6171414B1 (ja)
JP (1) JPH116526A (ja)
DE (1) DE19826963C2 (ja)
GB (1) GB2326645B (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6357924B1 (en) * 1998-12-21 2002-03-19 Nsk Ltd. Rolling bearing
DE19902414A1 (de) * 1999-01-22 2000-08-17 Fag Oem & Handel Ag Lager für Breitstreckwalzen
DE10020118B4 (de) * 2000-04-22 2009-11-12 Schaeffler Kg Wälzlagerbauteil
JP3630076B2 (ja) * 2000-05-30 2005-03-16 株式会社デンソー 弁装置
JP3855651B2 (ja) * 2000-08-29 2006-12-13 日本精工株式会社 転がり軸受の寿命予測方法、寿命予測装置、寿命予測装置を使用した転がり軸受選定装置及び記憶媒体
JP4812220B2 (ja) * 2002-05-10 2011-11-09 株式会社小松製作所 高硬度高靭性鋼
JP2004076125A (ja) * 2002-08-21 2004-03-11 Komatsu Ltd 転動部材
JP4390576B2 (ja) * 2003-03-04 2009-12-24 株式会社小松製作所 転動部材
JP4390526B2 (ja) * 2003-03-11 2009-12-24 株式会社小松製作所 転動部材およびその製造方法
JP2005090680A (ja) * 2003-09-19 2005-04-07 Koyo Seiko Co Ltd 転がり軸受部品およびその製造方法
US20100122558A1 (en) * 2008-11-19 2010-05-20 John Michael Jewell Apparatus and Method of Sintering an Optical Fiber Preform
JP5445750B2 (ja) * 2009-07-28 2014-03-19 公立大学法人大阪府立大学 Ni3(Si,Ti)系金属間化合物合金で形成された高温用軸受及びその製造方法
RU2019112955A (ru) * 2016-11-08 2020-12-10 Кэрриер Корпорейшн Гибридные подшипники

Family Cites Families (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US1537375A (en) * 1924-12-16 1925-05-12 Gen Electric Control system for adjustable-speed motors
EP0304872B1 (en) * 1987-08-26 1991-04-17 Koyo Seiko Co., Ltd. Heat-resistant ball bearing
JP2681182B2 (ja) * 1987-12-15 1997-11-26 光洋精工株式会社 玉軸受
US5085733A (en) * 1989-08-24 1992-02-04 Nippon Seiko Kabushiki Kaisha Rolling steel bearing
JPH0826446B2 (ja) 1990-05-17 1996-03-13 日本精工株式会社 転がり軸受
JP2541160B2 (ja) * 1991-07-18 1996-10-09 日本精工株式会社 転がり軸受
JP2590645B2 (ja) * 1991-09-19 1997-03-12 日本精工株式会社 転がり軸受
JP3326874B2 (ja) 1993-05-31 2002-09-24 日本精工株式会社 転がり軸受
JPH089452A (ja) * 1994-06-23 1996-01-12 Matsushita Electric Ind Co Ltd 無線電話登録装置
JP3413975B2 (ja) * 1994-08-08 2003-06-09 日本精工株式会社 耐摩耗性に優れた転がり軸受
JP3385742B2 (ja) 1994-08-25 2003-03-10 日本精工株式会社 転がり軸受及びその製造方法
JP3538995B2 (ja) * 1994-09-29 2004-06-14 日本精工株式会社 転がり軸受
GB2314344B (en) * 1996-06-17 1999-01-13 Nsk Ltd Rolling bearing

Also Published As

Publication number Publication date
GB2326645B (en) 2000-07-26
DE19826963C2 (de) 2003-04-03
GB2326645A (en) 1998-12-30
DE19826963A1 (de) 1999-01-21
GB9813024D0 (en) 1998-08-12
US6171414B1 (en) 2001-01-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH116526A (ja) 転がり軸受
WO2011122371A1 (ja) 転がり軸受
JP2007297676A (ja) 軸の製造方法およびこの方法で得られた軸
JP4998054B2 (ja) 転がり軸受
JP2002364648A (ja) 転がり軸受
JP2003193200A (ja) 転がり軸受
JP2001165174A (ja) 転がり軸受
JP2008151236A (ja) 転がり軸受
CN112824692A (zh) 推力滚子轴承
JP3013452B2 (ja) 転がり軸受
JP2009222076A (ja) 4列円錐ころ軸受
JP2003222142A (ja) アンギュラ玉軸受
JP2006071022A (ja) 転がり軸受
JP2002194438A (ja) 転がり軸受
JP2006328464A (ja) 転がり軸受及びその転動部品の製造方法
JP4375038B2 (ja) スラスト針状ころ軸受
JP2002155948A (ja) 転がり軸受
JPH0811848B2 (ja) 紡機用リング
JP2006183845A (ja) 転がり軸受
JPH08232964A (ja) 転がり部品とその製造方法
JPH1068419A (ja) 転がり軸受
JP4333063B2 (ja) 軸受部品の研削加工方法
JP2006045591A (ja) 円すいころ軸受
JP2009174656A (ja) 転がり軸受
JP2004011737A (ja) 自動調心ころ軸受

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040526

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050104

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050118

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20050517