JPH1160640A - マレイミド系共重合体並びに熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

マレイミド系共重合体並びに熱可塑性樹脂組成物

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JPH1160640A
JPH1160640A JP9231357A JP23135797A JPH1160640A JP H1160640 A JPH1160640 A JP H1160640A JP 9231357 A JP9231357 A JP 9231357A JP 23135797 A JP23135797 A JP 23135797A JP H1160640 A JPH1160640 A JP H1160640A
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JP
Japan
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copolymer
thermoplastic resin
maleimide
weight
resin composition
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JP9231357A
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English (en)
Inventor
Minoru Yamaguchi
稔 山口
Kazuchika Fujioka
和親 藤岡
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Publication date
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 着色が少なく、しかも加工性、耐熱性、およ
び耐衝撃性等の各種物性に優れる熱可塑性樹脂組成物を
提供する。 【解決手段】 芳香族ビニル単量体残基を36重量%〜90
重量%の範囲内、マレイミド単量体残基を10重量%〜50
重量%の範囲内、シアン化ビニル単量体残基を0を越え
て4重量%未満、およびこれらの単量体と共重合可能な
単量体(a)残基を0重量%〜10重量%の範囲内で、そ
の合計量が 100重量%となるように含有するマレイミド
系共重合体と、熱可塑性樹脂とを混合することにより熱
可塑性樹脂組成物を得る。上記構成を有する熱可塑性樹
脂組成物は、着色が少なく、しかも加工性、耐熱性、お
よび耐衝撃性等の各種物性に優れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着色が少なく、し
かも加工性、耐熱性、および耐衝撃性等の各種物性に優
れる熱可塑性樹脂組成物および該熱可塑性樹脂組成物の
原料として好適に用いられるマレイミド系共重合体に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば、自動車や電気・電子
機器、事務機等においては、軽量化、省エネルギー化、
低価格化等を目的として、金属製の成形品を合成樹脂製
の成形品に置き換えることが行われている。これらの成
形品に求められる各種物性としては、例えば、加工性、
耐熱性、耐衝撃性、および透明性等が挙げられる。この
ため、これらの物性に優れた成形品を得るべく、例え
ば、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styren)樹脂やA
S(Acrylonitrile-Styrene) 樹脂等の熱可塑性樹脂の耐
熱性の向上が種々検討されている。
【0003】熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させる方法と
しては、従来、例えば、AS樹脂等の分子鎖中にαーメ
チルスチレン単位を導入する方法が試みられている。し
かしながら、この方法では耐熱性の向上に限界があり、
さらに、高温下での熱安定性が問題となっている。
【0004】そこで、近年、αーメチルスチレン系熱可
塑性樹脂の代わりに、N−フェニルマレイミドとスチレ
ンとの共重合体に代表されるマレイミド系共重合体が注
目されている。N−フェニルマレイミド/スチレン共重
合体は、その剛直な分子構造ゆえにABS樹脂やAS樹
脂等の熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させることが可能で
ある。
【0005】しかしながら、N−フェニルマレイミド/
スチレン共重合体は、ABS樹脂やAS樹脂等の熱可塑
性樹脂の耐熱性を向上させることができる一方で、分子
同士の絡み合い密度が低下するため、耐衝撃性等の物性
を低下させてしまうという問題点を有している。このた
め、このような問題点を解決すべく、マレイミド系共重
合体に、アクリロニトリル等の共重合可能な第3モノマ
ーを組み合わせる方法が提案されている。
【0006】例えば、特開昭57−98536号公報お
よび特開昭63−159458号公報には、N−フェニ
ルマレイミド残基15重量部〜50重量部、ビニル芳香族単
量体残基85重量部〜40重量部、およびこれらと共重合可
能なビニル単量体残基0重量部〜30重量部を、これらの
合計量が100 重量部となるように含んでなる共重合体10
重量%〜90重量%と、ビニルシアン単量体残基15重量部
〜30重量部、ビニル芳香族単量体残基85重量部〜65重量
部、およびこれらと共重合可能なビニル単量体残基0重
量部〜30重量部を、これらの合計量が100 重量部となる
ように含んでなる共重合体90重量%〜10重量%とを含有
してなる樹脂組成物を含む耐熱性樹脂組成物が開示され
ている。
【0007】また、特開平3−205411号公報に
は、芳香族系ビニル化合物単位30重量%、シアン化ビニ
ル単位4〜40重量%、およびN置換マレイミド26重量%
〜50重量%からなる熱可塑性共重合体が開示されてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のマレイミド系共重合体および樹脂組成物は、第3モ
ノマーとしてシアン化ビニル単量体を共重合することで
耐衝撃性は向上するものの、その共重合割合が多いた
め、着色が強いという問題点を有している。即ち、上記
従来のマレイミド系共重合体および樹脂組成物からは、
黄変性が少なく、透明性に優れた成形品を得ることは困
難である。このため、着色が少なく、しかも耐熱性およ
び耐衝撃性等の各種物性に優れる熱可塑性樹脂組成物が
切望されている。
【0009】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされ
たものであり、その目的は、着色が少なく、しかも加工
性、耐熱性、および耐衝撃性等の各種物性に優れる熱可
塑性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の
他の目的は、着色が少なく、しかも加工性、耐熱性、お
よび耐衝撃性等の各種物性に優れる熱可塑性樹脂組成物
を得るための原料として好適に用いられるマレイミド系
共重合体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来
の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、芳香族ビニル
単量体およびマレイミド単量体に、非常に少量かつ特定
量のシアン化ビニル単量体を共重合させてなるマレイミ
ド系共重合体を原料として用いることで、着色の度合い
を増加させずに耐衝撃性も著しく向上された熱可塑性樹
脂組成物を得ることができることを見いだして本発明を
完成させるに至った。
【0011】即ち、本発明にかかる請求項1記載のマレ
イミド系共重合体は、以上の課題を解決するために、芳
香族ビニル単量体残基を36重量%〜90重量%の範囲内、
マレイミド単量体残基を10重量%〜50重量%の範囲内、
シアン化ビニル単量体残基を0を越えて4重量%未満、
およびこれらの単量体と共重合可能な単量体(a)残基
を0重量%〜10重量%の範囲内で、その合計量が 100重
量%となるように含有することを特徴としている。
【0012】本発明にかかる請求項2記載のマレイミド
系共重合体は、以上の課題を解決するために、請求項1
記載のマレイミド系共重合体において、上記マレイミド
系共重合体の15重量%クロロホルム溶液の黄色度をYI
(1)、265 ℃で4分間加熱後の上記マレイミド系共重
合体の15重量%クロロホルム溶液の黄色度をYI(2)
とすると、YI(2)<YI(1)×1.5 であることを
特徴としている。
【0013】上記の構成によれば、着色が少なく、しか
も加工性、耐熱性、および耐衝撃性等の各種物性に優れ
た熱可塑性樹脂組成物の原料として好適に用いられるマ
レイミド系共重合体を提供することができる。つまり、
本発明によれば、該マレイミド系共重合体が特定の組成
を有することで、熱可塑性樹脂組成物としたときに、耐
熱性の向上に際して、従来、相反する物性であった透明
性と耐衝撃性とを共に満足させることができる。また、
上記マレイミド系共重合体は、加熱前後の黄色度の差が
小さく、加熱による着色を抑えることができる。
【0014】本発明にかかる請求項3記載の熱可塑性樹
脂組成物は、以上の課題を解決するために、請求項1ま
たは2に記載のマレイミド系共重合体と、熱可塑性樹脂
とを含むことを特徴としている。
【0015】本発明にかかる請求項4記載の熱可塑性樹
脂組成物は、以上の課題を解決するために、請求項3記
載の熱可塑性樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂が
AS樹脂および/またはABS樹脂であることを特徴と
している。
【0016】上記の構成によれば、着色が抑制されてい
るにも拘らず耐衝撃性が向上された熱可塑性樹脂組成物
を提供することができる。つまり、本発明によれば、耐
熱性の向上に際して、従来、相反する物性であった透明
性と耐衝撃性とを共に満足させることができる。本発明
にかかる熱可塑性樹脂組成物は、着色が少なく、しかも
加工性、耐熱性、および耐衝撃性等の各種物性に優れ、
例えば、自動車や電気・電子機器、事務機等の各種用途
分野に好適に用いることができる。
【0017】以下に本発明を詳しく説明する。本発明に
かかるマレイミド系共重合体(以下、単に共重合体と記
す)は、芳香族ビニル単量体およびマレイミド単量体
に、特定量のシアン化ビニル単量体を共重合させてな
る。また、上記共重合体を得る際には、必要に応じて、
これら単量体(芳香族ビニル単量体、マレイミド単量
体、およびシアン化ビニル単量体)と共重合可能な単量
体(a)を共重合させることができる。これにより、上
記共重合体は、各々特定量の芳香族ビニル単量体残基、
マレイミド単量体残基、シアン化ビニル単量体残基、お
よび必要に応じて単量体(a)残基を含有する。本発明
において残基とは、各単量体に由来する構造単位を示
す。
【0018】本発明において用いられる上記の芳香族ビ
ニル単量体としては、具体的には、例えば、スチレン、
o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチル
スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、
α−メチル・メチルスチレン、ジメチルスチレン、t−
ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、
ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン
等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これ
ら芳香族ビニル単量体は、一種類のみを用いてもよく、
また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の化合物
のうち、スチレン、α−メチルスチレンがより好まし
い。
【0019】また、上記のマレイミド単量体としては、
具体的には、例えば、マレイミド;N−メチルマレイミ
ド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミ
ド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミ
ド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレ
イミド、N−(クロロフェニル)マレイミド、N−(ブ
ロモフェニル)マレイミド等のN置換マレイミド等が挙
げられるが、特に限定されるものではない。これらマレ
イミド単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二
種類以上を併用してもよい。上記例示の化合物のうち、
入手の容易さおよび経済性等の観点から、N−フェニル
マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドがより好ま
しい。
【0020】また、上記のシアン化ビニル単量体として
は、具体的には、例えば、アクリロニトリル、メタクリ
ロニトリル等が挙げられる。これらシアン化ビニル単量
体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を
併用してもよい。上記例示の化合物のうち、アクリロニ
トリルがより好ましい。
【0021】さらに、本発明において必要に応じて用い
られる上記の単量体(a)としては、具体的には、例え
ば、アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、ア
クリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチ
ル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸ア
ルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エ
チル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メ
タクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アル
キルエステル;アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アリ
ールエステル;メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸
アリールエステル;並びに、無水マレイン酸等の不飽和
ジカルボン酸;等が挙げられるが、特に限定されるもの
ではない。これら単量体(a)は、一種類のみを用いて
もよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示
の化合物のうち、相溶性並びに得られる共重合体および
熱可塑性樹脂組成物の耐熱性等の点から、無水マレイン
酸が特に好ましい。
【0022】本発明において、上記共重合体は、芳香族
ビニル単量体残基を36重量%〜90重量%の範囲内、マレ
イミド単量体残基を10重量%〜50重量%の範囲内、シア
ン化ビニル単量体残基を0を越えて4重量%未満、およ
び単量体(a)残基を0重量%〜10重量%の範囲内で、
好ましくは、芳香族ビニル単量体残基を65重量%〜75重
量%の範囲内、マレイミド単量体残基を25重量%〜40重
量%の範囲内、シアン化ビニル単量体残基を 0.5重量%
〜3重量%の範囲内で、その合計量が 100重量%となる
ように含有することで構成される。
【0023】上記共重合体中の芳香族ビニル単量体残基
の割合、つまり、芳香族ビニル単量体残基、マレイミド
単量体残基、シアン化ビニル単量体残基、および単量体
(a)残基の合計に占める芳香族ビニル単量体残基の割
合が36重量%未満であると、得られる共重合体の機械的
強度や、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の機械的
強度が低下するので好ましくない。一方、上記芳香族ビ
ニル単量体残基の割合が90重量%を越えると、得られる
共重合体および熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下する
ので好ましくない。
【0024】また、上記共重合体中のマレイミド単量体
残基の割合が10重量%未満であると、得られる共重合体
および熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下するので好ま
しくない。一方、上記マレイミド単量体残基の割合が50
重量%を越えると、得られる共重合体および熱可塑性樹
脂組成物の流動性が低下すると共に、耐衝撃性等の機械
的強度、並びに成形加工性が低下する。また、該共重合
体および熱可塑性樹脂組成物が着色し易くなる。
【0025】さらに、上記共重合体がシアン化ビニル単
量体残基を含有することで、得られる共重合体および熱
可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械的強度を向上させ
ることができる。しかしながら、上記共重合体中のシア
ン化ビニル単量体残基の割合が4重量%以上であれば、
得られる共重合体および熱可塑性樹脂組成物の耐熱性や
加工性が低下すると共に、該共重合体および熱可塑性樹
脂組成物の着色が強くなるので好ましくない。本発明で
は、最も顕著には、上記共重合体中のシアン化ビニル単
量体残基の割合を規定すること、つまり、上記共重合体
がシアン化ビニル単量体残基を0を越えて4重量%未満
の範囲内、さらに好ましくは 0.5重量%〜3重量%の範
囲内で含有することにより、着色が抑制されているにも
拘らず耐衝撃性が向上された熱可塑性樹脂組成物を提供
することができる。
【0026】また、本発明において、上記共重合体中の
単量体(a)残基の割合は、選択する単量体(a)の種
類等に応じて適宜設定されるものであり、上記共重合体
が有する物性を阻害しない範囲内において用いられる。
但し、上記共重合体中の単量体(a)の割合が10重量%
を越えると、得られる共重合体および熱可塑性樹脂組成
物の耐衝撃性等の機械的強度、並びに耐熱性が低下する
ので好ましくない。
【0027】本発明において、上記共重合体の製造方
法、即ち、上記各単量体(芳香族ビニル単量体、マレイ
ミド単量体、シアン化ビニル単量体、単量体(a))を
共重合させる方法としては、特に限定されるものではな
く、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法
等、従来公知の種々の方法を採用することができる。そ
のなかでも、溶液重合法を用いることがより好ましい。
【0028】上記溶液重合法に用いられる溶媒として
は、具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタ
ン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ブチルアルコー
ル、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニル
アルコール、デシルアルコール等のアルコール類;メチ
ルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等の
エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベ
ンゼン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素等のハロゲン化
炭化水素;等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用い
てもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよ
い。上記例示の化合物のうち、芳香族炭化水素がより好
ましい。尚、溶媒の使用量は、用いる単量体の組み合わ
せや、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に限
定されるものではない。
【0029】また、上記の共重合反応に際して用いられ
る重合開始剤としては、具体的には、例えば、クメンハ
イドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイド
ロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p
−メンタンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオ
キサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパー
オキシイソプロピルカーボネート、1,1−ビス(t−
ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘ
キサン等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸
カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素等の無機過酸
化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ
化合物;等のラジカル重合開始剤が挙げられる。これら
重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種
類以上を併用してもよい。さらに、上記過酸化物と、亜
硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアミジンスル
フィン酸、アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせ
て、レドックス開始剤とすることもできる。尚、重合開
始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条
件等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるもの
ではない。
【0030】本発明において、上記各単量体を共重合さ
せる際には、撹拌装置等を備えた所定の反応器に、全単
量体成分のうち、少なくとも、シアン化ビニル単量体の
一部または全部を含む単量体成分を仕込んだ後、共重合
反応を開始することが好ましく、得られる共重合体の組
成の均一性をより一層向上させるためには、該反応器
に、全単量体成分のうち、少なくとも、芳香族ビニル単
量体の一部、および、シアン化ビニル単量体の一部また
は全部を含む単量体成分を仕込んだ後、共重合反応を開
始することがより好ましい。
【0031】上記反応系におけるマレイミド単量体の添
加方法、添加時期等は、特に制限されるものではない
が、芳香族ビニル単量体とそれぞれ別個に、予め混合す
ることなく添加することが好ましい。マレイミド単量体
と芳香族ビニル単量体とを予め混合して添加すると、例
えば、数平均分子量が200 〜1,000 の範囲内であって、
マレイミド単量体残基を含む、低分子量成分の生成量が
多くなる。該低分子量成分としては、例えば、マレイミ
ド単量体と芳香族単量体および/またはシアン化ビニル
とのディールス−アルダー反応(Diels-Alder reaction)
により得られる反応物や、該反応物とマレイミド単量体
および/またはシアン化ビニル単量体とがさらに反応し
て生成する反応物等が挙げられる。
【0032】これらの低分子量成分が、最終的な目的物
であるマレイミド共重合体に混在してくると、耐熱性や
耐衝撃性が低下する傾向があり、好ましくない。特に、
これら低分子量成分の混在は、マレイミド共重合体を含
む樹脂組成物の用途によっては、好ましくない場合があ
る。具体的には、特定の電気、自動車部品用途等であ
る。
【0033】従って、上記各単量体を共重合させる際に
は、上述の低分子量成分の生成を抑えるように、上記反
応系におけるマレイミド単量体の添加方法や添加時期を
調整することが好ましい。また、常温で固体であるマレ
イミド単量体を上記反応系に添加する場合には、上記の
マレイミド単量体を、単独で、あるいは、単量体(a)
(好ましくは無水マレイン酸)と混合した後、加熱溶解
し、さらに、滴下装置も加熱して溶解状態を維持させな
がら反応系に滴下することが、上記共重合反応をより均
一に行う上で好ましい。
【0034】また、溶媒並びに重合開始剤は、反応器に
予め全量を仕込んでおいてもよく、或いは、反応器にそ
の一部を仕込む一方、共重合反応を開始した後で反応溶
液に添加する残りの単量体成分に、残りを混合しておい
てもよい。
【0035】上記の共重合反応における反応温度は、特
に限定されるものではないが、70℃〜180 ℃程度がより
好ましく、90℃〜160 ℃程度がさらに好ましい。反応時
間は、反応温度や、単量体成分の添加にかける時間等の
反応条件に応じて適宜設定すればよく、特に限定される
ものではない。
【0036】また、上記の共重合反応に際しては、必要
に応じて、アルキルメルカプタンやα−メチルスチレン
ダイマー等の連鎖移動剤、ヒンダードアミン系やベンゾ
トリアゾール系の耐候性安定剤、ヒンダードフェノール
系の酸化防止剤、分子量調節剤、可塑剤、熱安定剤、光
安定剤等の添加剤を添加してもよい。
【0037】また、反応溶液(重合液)から上記共重合
体を取り出す方法としては、特に限定されるものではな
いが、例えば、(i) 反応溶液をベント付き二軸押出機等
のいわゆる揮発分分離除去装置に導入し、反応溶液から
揮発分を除去(留去)することにより、共重合体と、未
反応の単量体および溶媒等とを分離する方法や、(ii)上
記の共重合体を溶解しない溶剤(貧溶媒)に反応溶液を
投入して、該共重合体を沈澱(析出)させた後、得られ
た沈澱物、つまり、上記共重合体を濾別して乾燥する方
法等、種々の方法を採用することができる。これらの方
法のなかでも上記(i) の方法が簡便であり、また、工業
的にも有利であることから好ましい。
【0038】上記の共重合体は、加熱前後の黄色度の差
が小さく、該共重合体の15重量%クロロホルム溶液の黄
色度をYI(1)、該共重合体を265 ℃で4分間加熱し
た後の該共重合体の15重量%クロロホルム溶液の黄色度
をYI(2)とすると、YI(2)<YI(1)×1.5
である。上記YI(1)は、10以下であることが好まし
く、5以下であることがさらに好ましい。このように、
上記の共重合体は、着色が少ないだけでなく、加熱後の
着色を抑えることもできる。
【0039】上記の共重合体における、マレイミド単量
体残基を含有する低分子量成分の割合は、できるだけ少
ない方が好ましい。具体的には、上記共重合体中のマレ
イミド単量体残基の重量%をXとすると、上記低分子量
成分の割合は、(0.1 ×X)以下であることが好まし
く、(0.06×X)以下であることがさらに好ましく、
(0.04×X)以下であることが特に好ましい。上記低分
子量成分の割合が(0.1 ×X)を越えると、上記共重合
体の耐熱性および耐衝撃性が低下する傾向がある。尚、
上記低分子量成分の含有量(割合)は、GPC(ゲルパ
ーミエーションクロマトグラフィー)等、公知の方法を
用いて測定することができる。
【0040】本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、熱
可塑性樹脂に上記共重合体を混合することによって容易
に得ることができる。
【0041】本発明において用いられる熱可塑性樹脂と
しては、具体的には、例えば、ABS(Acrylonitrile-B
utadiene-Styren)樹脂、AS(Acrylonitrile-Styrene)
樹脂、AAS(Acrylonitrile Acrylic Styrene) 樹脂、
AES(Acrylonitrile-EPDM-Styren) 樹脂等、従来公知
の種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。これら熱
可塑性樹脂は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類
以上を混合して用いてもよい。これら熱可塑性樹脂のな
かでも、ABS樹脂および/またはAS樹脂が、本発明
の効果を得る上でより好ましい。
【0042】本発明によれば、上記熱可塑性樹脂に前記
の共重合体を混合することによって熱可塑性樹脂の耐熱
性を改善するだけでなく、着色を抑えながら耐衝撃性を
向上させることができる。
【0043】本発明において、上記熱可塑性樹脂と共重
合体との混合割合は、特に限定されるものではないが、
上記熱可塑性樹脂組成物における共重合体の含有量が、
10重量%〜50重量%の範囲内となるように混合すること
が好ましく、15重量%〜45重量%の範囲内となるように
混合することがさらに好ましく、20重量%〜40重量%の
範囲内となるように混合することが特に好ましい。上記
共重合体の含有量が10重量%未満であれば、熱可塑性樹
脂の充分な耐熱性、耐衝撃性等の向上効果を得ることが
できない虞れがある。一方、上記共重合体の含有量が50
重量%を越えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の加工
性や透明性等の物性が低下する虞れがある。
【0044】本発明において、上記熱可塑性樹脂と共重
合体との混合方法としては、特に限定されるものではな
く、従来公知の混合、溶融方法を採用することができ
る。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、粉末状、
ビーズ状、またはペレット状等の共重合体と熱可塑性樹
脂とを所定の割合で混合した後、得られた混合物を溶融
混練することによって容易に得ることができる。
【0045】上記溶融混練に用いられる混練機として
は、特に限定されるものではなく、例えば、一軸押出
機、二軸押出機等の押出機;バンバリーミキサー;加圧
ニーダー;二本ロール等、種々の混練機を用いることが
できる。
【0046】また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る
際には、必要に応じて、酸化防止剤、耐候性安定剤、難
燃剤、帯電防止剤、着色剤、潤滑剤、離型剤等の添加
剤、或いは、ガラス繊維等の各種充填剤を添加してもよ
い。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優
れているため、流動性が低下し易いガラス繊維等の強化
剤を配合する用途に好適に用いられる。
【0047】該熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押
出成形法、圧縮成形法等の各種加工方法によって目的の
成形品とされ、加工性や耐熱性、耐衝撃性、透明性等の
物性が要求される各種用途分野に好適に用いることがで
きる。尚、上記熱可塑性樹脂組成物の成形方法や、その
用途は、特に限定されるものではない。
【0048】以上のように、本発明は、芳香族ビニル単
量体残基を36重量%〜90重量%の範囲内、マレイミド単
量体残基を10重量%〜50重量%の範囲内、シアン化ビニ
ル単量体残基を0を越えて4重量%未満、およびこれら
の単量体と共重合可能な単量体(a)残基を0重量%〜
10重量%の範囲内で、その合計量が 100重量%となるよ
うに含有するマレイミド系共重合体に関するものであ
る。また、上記マレイミド系共重合体は、該マレイミド
系共重合体の15重量%クロロホルム溶液の黄色度をYI
(1)、265 ℃で4分間加熱後の該マレイミド系共重合
体の15重量%クロロホルム溶液の黄色度をYI(2)と
すると、YI(2)<YI(1)×1.5 である。さら
に、本発明は、上記マレイミド系共重合体と熱可塑性樹
脂とを含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。上
記熱可塑性樹脂としては、AS樹脂および/またはAB
S樹脂が好ましい。
【0049】本発明によれば、上記共重合体が上記各単
量体残基、特にシアン化ビニル単量体残基を上記の割合
で含有することで、得られた成形品の着色を、例えば黄
色度(YI)で30以下に抑えながら耐衝撃性を向上させ
ることができる。つまり、本発明によれば、上記共重合
体が特定の組成を有することで、熱可塑性樹脂組成物と
したときに、耐熱性の向上に際して、従来、相反する物
性であった透明性と耐衝撃性とを共に満足させることが
できると共に、加工性や耐熱性にも優れた熱可塑性樹脂
組成物を提供することができる。このように本発明にか
かる熱可塑性樹脂組成物は、着色が少なく、しかも加工
性、耐熱性、および耐衝撃性等の各種物性に優れること
から、例えば、自動車の内装部品、電気・電子機器の部
品、各種工業製品の部品、事務用品等の成形品、或い
は、食品包装材料等として好適である。
【0050】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら
限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記
載の「部」は、「重量部」を示し、「%」は、「重量
%」を示す。また、共重合体の組成並びに共重合体およ
び熱可塑性樹脂組成物の物性は、以下の方法により測定
した。
【0051】共重合体の組成 共重合体を所定量、精秤し、クロロホルムに溶解させて
3%溶液にした。次に、この溶液を用いて、セル厚0.05
mmの条件で赤外分光分析(いわゆる赤外吸収法)を行っ
た。
【0052】そして、測定された赤外吸収スペクトル
(IR)の吸収強度から、共重合体が含有するシアン
基、カルボニル基、および、ベンゼン環の量をそれぞれ
求めることにより、該共重合体の組成を求めた。尚、シ
アン基は、シアン化ビニル単量体に由来し、波数2237cm
-1の赤外線を吸収する。カルボニル基は、マレイミド単
量体および無水マレイン酸に由来し、波数1712cm-1の赤
外線を吸収する。ベンゼン環は、芳香族ビニル単量体に
由来し、波数760cm -1の赤外線を吸収する。
【0053】黄色度(YI) 共重合体の黄色度(YI(1))は以下の方法により測
定した。共重合体を所定量、精秤し、クロロホルムに溶
解させて15%溶液にした。この溶液を試料とし、色差計
(日本電色工業株式会社製;商品名 SZ−Σ80 C
OLOR MEASURING SYSTEM)を用い
て、JIS K 7103に従って、セル厚1cmで透過
法測定を行うことにより求めた。また、熱可塑性樹脂組
成物の黄色度(YI)も上記と同様の測定方法により求
めた。また、上記と同様の測定を、得られた共重合体を
265 ℃で4分間加熱した後に行った。つまり、得られた
共重合体を265 ℃で4分間加熱した後、該共重合体を所
定量、精秤し、クロロホルムに溶解させて15%溶液にし
た。この溶液を試料とし、透過法測定を行って黄色度
(YI(2))を求めた。また、上記熱可塑性樹脂組成
物を成形して得られた試験片の黄色度は、JISK 7
103に従って、いわゆる反射法測定を行うことにより
求めた。
【0054】耐衝撃性 耐衝撃性(kg/cm ・cm) は、JIS K 7110に従
って、熱可塑性樹脂組成物を成形して得られた試験片の
いわゆる1/4'' ノッチ付きIzod衝撃強度を測定する
ことによって評価した。つまり、中央にV字形のノッチ
(切込み)を入れた試験片を一端で支え、ノッチと同じ
側からハンマーで打撃し、その破損によって吸収された
エネルギーの大きさを求めた。
【0055】耐熱性 耐熱性は、熱可塑性樹脂組成物を成形して得られた試験
片のHDT(荷重たわみ温度;℃)を測定することによ
って評価した。つまり、試験片(12.5mm×6mm)の中央部
に18.5kgf/cm2 の応力の相当する荷重を加え、2℃/min
の速度で昇温させ、試験片に0.26mmのたわみを生ずる時
の温度をもって荷重たわみ温度とした。尚、上記耐熱性
の測定は、JIS K 7207に基づいて実施した。
【0056】加工性 加工性は、得られた熱可塑性樹脂組成物の流動性を測定
することによって評価した。つまり、得られた熱可塑性
樹脂組成物を、温度220 ℃、荷重10kgの条件下で所定の
試験装置から押し出し、10分間あたりの押し出し量(M
FR; g/10min )を求めることにより評価した。尚、
上記流動性の測定は、JIS K 7210に基づいて
実施した。
【0057】〔実施例1〕温度計、窒素ガス導入管、二
つの滴下装置、還流冷却器、および撹拌機を備えたステ
ンレス製容器に、芳香族ビニル単量体としてのスチレン
15部、シアン化ビニル単量体としてのアクリロニトリル
0.5部、および、溶媒としてのトルエン24.2部を仕込ん
だ。また、一方の滴下装置(滴下系1)に、スチレン2
6.8部と、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシイソ
プロピルカーボネート 0.1部とからなる混合物(A1)を
仕込んだ。さらに、他方の滴下装置(滴下系2)に、マ
レイミド単量体としてのN−フェニルマレイミド19.1
部、単量体(a)としての無水マレイン酸 0.8部、アク
リロニトリル 0.3部、およびトルエン13.3部からなる混
合物(B1)を、70℃で溶解させて仕込み、該滴下装置を
70℃に保持した。
【0058】次に、上記のステンレス製容器内のトルエ
ン溶液を窒素雰囲気下で撹拌しながら 115℃に昇温した
後、該トルエン溶液に、さらにt−ブチルパーオキシイ
ソプロピルカーボネート0.05部を添加して、共重合反応
を開始した(初期仕込み)。そして、共重合反応の開始
後、反応溶液に、混合物(A1)を3.5 時間かけて連続的
に滴下すると共に、70℃に保持した混合物(B1)を3.5
時間かけて連続的に滴下した。
【0059】共重合反応を開始してから5時間が経過し
た時点で、該共重合反応を終了した。その後、得られた
反応溶液(重合液)をベント付き二軸押出機に導入し
た。そして、所定の圧力に減圧すると共に 250℃に加熱
して脱溶媒を行い、ペレット状の共重合体60部を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に
より測定した該共重合体の重量平均分子量(Mw)は 1
00,000であった。また、該共重合体の組成を求めたとこ
ろ、該共重合体は、スチレン残基を65.3%、N−フェニ
ルマレイミド残基を32%、無水マレイン酸残基を 1.4
%、アクリロニトリル残基を 1.3%含有していた。さら
に、上記の共重合体中に含まれる、マレイミド単量体残
基を含む低分子量成分(GPCによる数平均分子量が20
0 〜1,000 の範囲内にある成分;以下、単に低分子量成
分と記す)の含有量を測定したところ、該低分子量成分
の含有量は0.7 %であった。また、該共重合体の各種物
性を前述の方法により評価すると共に、その外観を目視
により評価した。これらの結果を主な反応条件と合わせ
て表1に示す。
【0060】次に、この共重合体とABS樹脂(日本合
成ゴム株式会社製;商品名 ABS−10)とを、共重
合体35部に対し、ABS樹脂65部の割合で二軸押出機に
て混合して本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物を得た。
その後、該熱可塑性樹脂組成物を所定の条件にて射出成
形することにより、該熱可塑性樹脂組成物からなる成形
品を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物およびその成形
品の各種物性を前述の方法により評価すると共に、上記
成形品の外観を目視により評価した。これらの結果を合
わせて表2に示す。
【0061】〔実施例2〕実施例1と同様のステンレス
製容器に、スチレン13部、アクリロニトリル 1.0部、お
よびトルエン26.0部を仕込んだ。そして、一方の滴下装
置(滴下系1)に、スチレン25.8部と、t−ブチルパー
オキシイソプロピルカーボネート 0.1部とからなる混合
物(A1)を仕込んだ。さらに、他方の滴下装置(滴下系
2)に、N−フェニルマレイミド19.9部、アクリロニト
リル 1.0部、およびトルエン13.3部からなる混合物(B
2)を、70℃で溶解させて仕込み、該滴下装置を70℃に保
持した。
【0062】その後、上記のステンレス製容器内のトル
エン溶液の昇温温度、即ち、重合温度を、115 ℃から11
2 ℃に変更した以外は、実施例1と同様の反応・操作を
行って、ペレット状の共重合体60部を得た。GPCによ
り測定した該共重合体の重量平均分子量(Mw)は 10
0,000であった。また、該共重合体の組成を求めたとこ
ろ、該共重合体は、スチレン残基を64.0%、N−フェニ
ルマレイミド残基を33%、アクリロニトリル残基を3.0
%含有していた。さらに、上記の共重合体中に含まれ
る、マレイミド単量体残基を含む低分子量成分の含有量
を測定したところ、該低分子量成分の含有量は0.8 %で
あった。また、該共重合体の各種物性を前述の方法によ
り評価すると共に、その外観を目視により評価した。こ
れらの結果を主な反応条件と合わせて表1に示す。
【0063】次に、この共重合体とABS樹脂(日本合
成ゴム株式会社製;商品名 ABS−10)とを、共重
合体35部に対し、ABS樹脂65部の割合で二軸押出機に
て混合して本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物を得た。
その後、該熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の条件
にて射出成形することにより、該熱可塑性樹脂組成物か
らなる成形品を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物およ
びその成形品の各種物性を前述の方法により評価すると
共に、上記成形品の外観を目視により評価した。これら
の結果を合わせて表2に示す。
【0064】〔比較例1〕実施例1と同様のステンレス
製容器に、スチレン15部およびトルエン25部を仕込ん
だ。そして、一方の滴下装置(滴下系1)に、スチレン
26.8部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネ
ート 0.1部とからなる混合物(A1)を仕込んだ。さら
に、他方の滴下装置(滴下系2)に、N−フェニルマレ
イミド19.1部、無水マレイン酸 0.8部、およびトルエン
13.3部からなる混合物(B3)を、70℃で溶解させて仕込
み、該滴下装置を70℃に保持した。
【0065】その後、実施例1と同様の反応・操作を行
って、ペレット状の比較用の共重合体60部を得た。GP
Cにより測定した該共重合体の重量平均分子量(Mw)
は 100,000であった。また、該共重合体の組成を求めた
ところ、該共重合体は、スチレン残基を66.6%、N−フ
ェニルマレイミド残基を32%、無水マレイン酸残基を1.
4 %含有し、アクリロニトリル単量体残基(即ち、シア
ン化ビニル単量体残基)を含まないものであった。さら
に、上記の共重合体中に含まれる、マレイミド単量体残
基を含む低分子量成分の含有量を測定したところ、該低
分子量成分の含有量は0.8 %であった。また、該共重合
体の各種物性を前述の方法により評価すると共に、その
外観を目視により評価した。これらの結果を主な反応条
件と合わせて表1に示す。
【0066】次に、この共重合体とABS樹脂(日本合
成ゴム株式会社製;商品名 ABS−10)とを、共重
合体35部に対し、ABS樹脂65部の割合で二軸押出機に
て混合して比較用の熱可塑性樹脂組成物を得た。その
後、該熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の条件にて
射出成形することにより、該熱可塑性樹脂組成物からな
る成形品を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物およびそ
の成形品の各種物性を前述の方法により評価すると共
に、上記成形品の外観を目視により評価した。これらの
結果を合わせて表2に示す。
【0067】〔比較例2〕実施例1と同様のステンレス
製容器に、スチレン10部、アクリロニトリル5部、およ
びトルエン25部を仕込んだ。そして、一方の滴下装置
(滴下系1)に、スチレン22.8部と、t−ブチルパーオ
キシイソプロピルカーボネート 0.1部とからなる混合物
(A2)を仕込んだ。さらに、他方の滴下装置(滴下系
2)に、N−フェニルマレイミド19.1部、無水マレイン
酸 0.8部、アクリロニトリル4部、およびトルエン13.3
部からなる混合物(B4)を、70℃で溶解させて仕込み、
該滴下装置を70℃に保持した。
【0068】その後、重合温度を 115℃から 105℃に変
更した以外は、実施例1と同様の反応・操作を行って、
ペレット状の共重合体60部を得た。GPCにより測定し
た該共重合体の重量平均分子量(Mw)は 100,000であ
った。また、該共重合体の組成を求めたところ、該共重
合体は、スチレン残基を56.6%、N−フェニルマレイミ
ド残基を32%、無水マレイン酸残基を1.4 %、アクリロ
ニトリル残基を10%含有していた。さらに、上記の共重
合体中に含まれる、マレイミド単量体残基を含む低分子
量成分の含有量を測定したところ、該低分子量成分の含
有量は1.4 %であった。該共重合体の各種物性を前述の
方法により評価すると共に、その外観を目視により評価
した。これらの結果を主な反応条件と合わせて表1に示
す。
【0069】次に、この共重合体とABS樹脂(日本合
成ゴム株式会社製;商品名 ABS−10)とを、共重
合体35部に対し、ABS樹脂65部の割合で二軸押出機に
て混合して比較用の熱可塑性樹脂組成物を得た。その
後、該熱可塑性樹脂組成物を実施例1と同様の条件にて
射出成形することにより、該熱可塑性樹脂組成物からな
る成形品を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物およびそ
の成形品の各種物性を前述の方法により評価すると共
に、上記成形品の外観を目視により評価した。これらの
結果を合わせて表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】表1および表2に記載の結果から、本実施
例によれば、特定の組成を有する共重合体を原料に用い
ることで、着色が抑制されているにも拘らず耐衝撃性が
向上された熱可塑性樹脂組成物を得ることができること
が判る。本実施例で得られた熱可塑性樹脂組成物は、何
れも、着色が少なく、しかも加工性、耐熱性、および耐
衝撃性等の各種物性に優れている。一方、熱可塑性樹脂
組成物中の共重合体がアクリロニトリル残基(シアン化
ビニル単量体残基)を含まない場合、着色は少ないが、
耐衝撃性に劣ることが判る。また、上記共重合体中のア
クリロニトリル残基の含有量が多ければ、耐衝撃性は改
良されるが、着色が強くなることが判る。さらに、本実
施例において、上記熱可塑性樹脂組成物の原料として用
いた共重合体は、該共重合体中のアクリロニトリル残基
の含有量を0を越えて4重量%未満に調整しているの
で、耐衝撃性に優れており、かつ、着色が少ないばかり
か、加熱による着色を抑えることができることも判る。
【0073】
【発明の効果】本発明の請求項1記載のマレイミド系共
重合体は、以上のように、芳香族ビニル単量体残基を36
重量%〜90重量%の範囲内、マレイミド単量体残基を10
重量%〜50重量%の範囲内、シアン化ビニル単量体残基
を0を越えて4重量%未満、およびこれらの単量体と共
重合可能な単量体(a)残基を0重量%〜10重量%の範
囲内で、その合計量が 100重量%となるように含有する
構成である。
【0074】本発明の請求項2記載のマレイミド系共重
合体は、以上のように、上記マレイミド系共重合体の15
重量%クロロホルム溶液の黄色度をYI(1)、265 ℃
で4分間加熱後の上記マレイミド系共重合体の15重量%
クロロホルム溶液の黄色度をYI(2)とすると、YI
(2)<YI(1)×1.5 である構成である。
【0075】上記の構成によれば、着色が少なく、しか
も加工性、耐熱性、および耐衝撃性等の各種物性に優れ
た熱可塑性樹脂組成物の原料として好適に用いられるマ
レイミド系共重合体を提供することができる。つまり、
本発明によれば、該マレイミド系共重合体が特定の組成
を有することで、熱可塑性樹脂組成物としたときに、耐
熱性の向上に際して、従来、相反する物性であった透明
性と耐衝撃性とを共に満足させることができる。また、
上記マレイミド系共重合体は、加熱前後の黄色度の差が
小さく、加熱による着色を抑えることができるという効
果を奏する。
【0076】本発明の請求項3記載の熱可塑性樹脂組成
物は、以上のように、請求項1または2に記載のマレイ
ミド系共重合体と、熱可塑性樹脂とを含む構成である。
【0077】本発明の請求項4記載の熱可塑性樹脂組成
物は、以上のように、上記熱可塑性樹脂がAS樹脂およ
び/またはABS樹脂である構成である。
【0078】上記の構成によれば、着色が抑制されてい
るにも拘らず耐衝撃性が向上された熱可塑性樹脂組成物
を提供することができる。つまり、本発明によれば、耐
熱性の向上に際して、従来、相反する物性であった透明
性と耐衝撃性とを共に満足させることができる。本発明
にかかる熱可塑性樹脂組成物は、着色が少なく、しかも
加工性、耐熱性、および耐衝撃性等の各種物性に優れ、
例えば、自動車や電気・電子機器、事務機等の各種用途
分野に好適に用いることができるという効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI //(C08F 212/00 222:40 220:42)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】芳香族ビニル単量体残基を36重量%〜90重
    量%の範囲内、マレイミド単量体残基を10重量%〜50重
    量%の範囲内、シアン化ビニル単量体残基を0を越えて
    4重量%未満、およびこれらの単量体と共重合可能な単
    量体(a)残基を0重量%〜10重量%の範囲内で、その
    合計量が 100重量%となるように含有することを特徴と
    するマレイミド系共重合体。
  2. 【請求項2】上記マレイミド系共重合体の15重量%クロ
    ロホルム溶液の黄色度をYI(1)、265 ℃で4分間加
    熱後の上記マレイミド系共重合体の15重量%クロロホル
    ム溶液の黄色度をYI(2)とすると、YI(2)<Y
    I(1)×1.5 であることを特徴とする請求項1記載の
    マレイミド系共重合体。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載のマレイミド系共
    重合体と、熱可塑性樹脂とを含むことを特徴とする熱可
    塑性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】上記熱可塑性樹脂がAS樹脂および/また
    はABS樹脂であることを特徴とする請求項3記載の熱
    可塑性樹脂組成物。
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