JPH1136063A - アーク式蒸発源 - Google Patents

アーク式蒸発源

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JPH1136063A
JPH1136063A JP20727797A JP20727797A JPH1136063A JP H1136063 A JPH1136063 A JP H1136063A JP 20727797 A JP20727797 A JP 20727797A JP 20727797 A JP20727797 A JP 20727797A JP H1136063 A JPH1136063 A JP H1136063A
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聡 大谷
Hiroshi Murakami
浩 村上
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治男 平塚
Kiyoshi Ogata
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 陰極から飛散するドロップレットを低減する
ことができ、しかも膜厚均一性の高い成膜領域が広く、
かつ陰極寿命の長いアーク式蒸発源を提供する。 【解決手段】 このアーク式蒸発源2aは、陰極4の蒸
発面5を含む領域に、当該蒸発面5での強さが700O
e以上の磁界を形成する磁気コイル8aを備えている。
しかもこの磁気コイル8aは、蒸発面5の前方において
集束せずに平行進行ないし発散する磁力線12であっ
て、蒸発面5内の任意の点に立てた法線と当該点におけ
る磁力線12の方向との成す角度が0度以上30度以下
の磁力線12を発生させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば工具や金
型等の基体の表面に陰極物質を被着して、当該陰極物質
から成る、または当該陰極物質の窒化物、酸化物等から
成る薄膜を形成する薄膜形成装置(これはアーク式イオ
ンプレーティング装置とも呼ばれる)等に用いられるも
のであって、アーク放電によって陰極を溶解させて陰極
物質を蒸発させるアーク式蒸発源に関する。
【0002】
【従来の技術】アーク式蒸発源で蒸発させる陰極物質に
は、陰極近傍に生じるアークプラズマによってイオン化
された陰極物質イオンがかなりの割合で含まれており、
この陰極物質イオンを電界によって基体に引き込んで基
体表面に薄膜を形成するアーク式イオンプレーティング
法またはアーク式イオンプレーティング装置は、薄膜の
密着性が良い、成膜速度が大きい等の利点を有してお
り、工具や金型等の表面に金属膜やセラミックス膜を被
覆する手段として広く用いられている。膜の密着性が良
いのは、陰極物質中に含まれている陰極物質イオンを、
負バイアス電圧等による電界によって基体に引き込んで
衝突させることができるからである。成膜速度が大きい
のは、アーク放電を利用して陰極を溶解させるからであ
る。
【0003】しかし、上記陰極から発生する陰極物質に
は、ドロップレットと呼ばれる粗大粒子が含まれてお
り、これが基体表面に形成される薄膜に入射付着する
と、当該薄膜の平滑性を損ねて工具等の寿命を短くした
り、薄膜の外観を損ねたりする。
【0004】このようなドロップレットを低減するため
に、陰極の前方付近に磁界を形成するアーク式蒸発源が
既に提案されている。その一例を図12に示す。
【0005】このアーク式蒸発源2は、特開平5−17
1427号公報に開示されているものであり、陰極(カ
ソード)4と図示しない陽極(アノード)との間でアー
ク放電を生じさせて、このアーク放電によって陰極4を
溶解させて陰極物質6を蒸発させる。陰極4は例えば金
属から成る。この陰極4の陰極物質6を蒸発させる面が
蒸発面5である。この蒸発面5の前方(即ち陰極物質6
の蒸発方向。以下同じ)付近にはアーク放電によるプラ
ズマ(即ちアークプラズマ)が生成され、上記陰極物質
6には、このプラズマによってイオン化された陰極物質
イオンがかなりの割合で含まれている。
【0006】この陰極4の前方に基体18を配置してお
くことにより、上記陰極物質6をこの基体18に入射堆
積させて薄膜を形成することができる。その際に、例え
ば基体18に負のバイアス電圧を印加しておくことによ
り、陰極物質6に含まれている陰極物質イオンを、この
負バイアス電圧によって基体18に向けて加速して基体
18に衝突させることができる。また、基体18の周り
に陰極物質6と反応する反応性ガス(例えば窒素、酸
素、炭化水素等)を導入しておけば、陰極物質6とこの
反応性ガスとが反応して、基体18の表面に化合物(セ
ラミックス)薄膜を形成することができる。
【0007】更にこのアーク式蒸発源2は、陰極4の前
方付近に円筒状の磁気コイル8を設け、その内部に2段
のリング状のコア16を設け、これらによって磁気コイ
ル8の中心部付近に、即ち陰極4の前方付近に、磁力線
12の集束領域14を形成するようにしている。この集
束領域14での磁界の強さは、例えば890Oe(エル
ステッド)ないし1450Oeとかなり強く、その強い
磁界によって当該集束領域14にプラズマの集中が起こ
り、ドロップレットがこのプラズマ中でリサイクル(分
解・再利用)されることにより、陰極物質6に含まれる
ドロップレットが低減される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記アーク
式蒸発源2においては、陰極4の前方に磁力線12の集
束領域14が形成されていてプラズマが当該集束領域1
4に集束されるために、当該プラズマ中に含まれる陰極
物質イオンも集束を受けて比較的鋭い指向性を持ち、基
体18の設置位置では、陰極4の前方の小さい円形領域
に成膜領域が限定されるという課題がある。その結果、
膜厚均一性の高い成膜領域が狭く、従って例えば大量生
産を目的とする成膜においては、基体18を設置できる
領域が限られてしまい、生産性が向上しない。また、基
体18が大型の場合は、基体18中の部位によって膜厚
に大きな不均一が生じる。
【0009】また、図13に示すように、アーク放電2
0のアークスポット22は、陰極4の蒸発面5において
磁力線12が鋭角αに傾く方向Aに移動しやすい性質の
あることが知られており、この性質によって、この従来
技術の場合は、アークスポット22が蒸発面5の中心部
に局在するようになる。24は陰極4の中心軸である。
その結果、例えば図14に示すように、陰極4の中心部
のみが極端に消耗して、短い時間で陰極物質6の所定の
蒸発速度、ひいては基体18への所定の成膜速度が得ら
れなくなるので、陰極4の寿命が短いという課題もあ
る。その結果、陰極4を頻繁に交換しなければならず、
それによって成膜効率が低下すると共に、コストも嵩
む。
【0010】なお、陰極4の形状は、特定のものに限定
されるものではなく、図14(および図8、図9、図1
1)に示すような円錐台状の場合もあるし、それ以外の
図に示すような直方体状、立方体状、板状等の場合もあ
る。
【0011】そこでこの発明は、陰極から飛散するドロ
ップレットを低減することができ、しかも膜厚均一性の
高い成膜領域が広く、かつ陰極寿命の長いアーク式蒸発
源を提供することを主たる目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明のアーク式蒸発
源は、前記陰極の陰極物質を蒸発させる蒸発面を含む領
域に当該蒸発面での強さが700エルステッド以上の磁
界を形成する磁界形成手段を備えており、しかもこの磁
界形成手段は、前記陰極の蒸発面の前方において集束せ
ずに平行進行ないし発散する磁力線であって、当該蒸発
面内の任意の点に立てた法線と当該点における磁力線の
方向との成す角度が0度以上30度以下の磁力線を発生
するものであることを特徴としている。
【0013】上記構成によれば、磁界形成手段によっ
て、陰極の蒸発面での磁界の強さが700Oe以上の磁
界を形成するので、このかなり強い磁界によって、蒸発
面から飛び出した電子を当該蒸発面の前方付近に強力に
捕捉して、蒸発面の前方付近に高密度のプラズマを生成
することができる。この高密度のプラズマによって、陰
極から蒸発する陰極物質に含まれるドロップレットを効
率良く分解することができるので、陰極から飛散するド
ロップレットを低減することができる。
【0014】しかも、上記磁界形成手段は、陰極の蒸発
面の前方において集束せずに平行進行ないし発散する磁
力線を発生するので、陰極物質イオンは、この磁力線に
沿って放射されることになり、蒸発面の前方において集
束を受けない。その結果、陰極物質イオンの放射領域は
従来技術に比べて広くなり、従って膜厚均一性の高い成
膜領域も広くなる。
【0015】更に、上記磁界形成手段は、蒸発面内の任
意の点に立てた法線と当該点における磁力線の方向との
成す角度が0度以上30度以下の磁力線を発生するの
で、蒸発面でのアークスポットは、従来技術のように蒸
発面の中心部に集中することはなく、蒸発面内をランダ
ムに動くか(上記角度が0度の場合)、蒸発面のやや外
寄りを周回するようになる(上記角度が0度より大で3
0度以下の場合)。このようなアークスポットの動き
は、陰極の蒸発面全体をほぼ一様に消耗させるか、やや
外寄りに比重を置きながら蒸発面全体を消耗させること
になり、いずれにしても陰極の蒸発面を万遍無く使うの
で、陰極の寿命を長くすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】図1は、この発明に係るアーク式
蒸発源の一例を示す図である。図2は、図1のアーク式
蒸発源の蒸発面付近における磁力線の状態の例を拡大し
て示す図である。図12の従来例と同一または相当する
部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例と
の相違点を主に説明する。
【0017】このアーク式蒸発源2aは、前述したよう
な陰極4の蒸発面5を含む領域に、より具体的には少な
くとも当該蒸発面5からその前方にかけての領域に磁界
を形成する磁界形成手段の一例として、蒸発面5の周り
に巻かれた筒状(より具体的には円筒状)の磁気コイル
8aを備えている。この磁気コイル8aは、コイル電源
10によって励磁されて上記磁界を形成する。図中に、
この磁気コイル8aが作る磁力線12の例を模式的に示
す。
【0018】この磁気コイル8aは、陰極4の蒸発面5
での強さが700Oe(エルステッド)以上の磁界を形
成する。その場合、蒸発面5と磁気コイル8aとの位置
関係は、蒸発面5を仮想的に広げた平面26に磁気コイ
ル8aの一部が重なる位置とするのが好ましく、そのよ
うにすれば、磁気コイル8a内の磁界が強い領域に蒸発
面5が位置することになるので、蒸発面5に上記強さの
磁界を形成するのが容易になる。
【0019】この磁気コイル8aは、陰極4の蒸発面5
の前方において集束せずに平行進行ないし進行方向に向
かって外に発散する磁力線12を発生する。具体的には
この例では、この磁力線12の集束領域14は、蒸発面
5よりも後方(即ち陰極物質6の蒸発方向と逆)にあ
り、磁力線12は蒸発面5の前方において集束せずに、
幾分発散している。なお、磁力線12は、蒸発面5の前
方において幾分発散するものが好ましいけれども、要は
集束しなければ陰極物質イオンの放射領域を当該磁力線
12によって狭めることにはならないので、磁力線12
は蒸発面5の前方において平行に進むものでも良い。
【0020】しかも、この磁気コイル8aは、図2を参
照して、陰極4の蒸発面5内の任意の点Pに立てた法線
Nと当該点Pにおける磁力線12の方向H(これは当該
点Pにおける磁界の方向と同じ意味である)との成す角
度θが0度以上30度以下(即ち0°≦θ≦30°)の
磁力線12を発生する。
【0021】このアーク式蒸発源2aによれば、磁気コ
イル8aによって、上記のように陰極4の蒸発面5での
磁界の強さが700Oe以上の磁界を形成するので、こ
のかなり強い磁界によって、蒸発面5から飛び出した電
子を当該蒸発面5の前方付近に効率良く捕捉して、蒸発
面5の前方付近に高密度のプラズマ(アークプラズマ)
を生成することができる。この高密度のプラズマによっ
て、陰極4から蒸発する陰極物質6に含まれるドロップ
レットを効率良く分解することができるので、陰極4か
ら飛散するドロップレットを、ひいては基体18に到達
するドロップレットを低減することができる。その結
果、基体18の表面に形成される薄膜の平滑性を高める
(即ち面粗度を良好にする)ことができるので、当該薄
膜を被覆した工具や金型等の寿命を長くすることができ
る。また、当該薄膜の外観を、ひいては当該薄膜を被覆
した製品の外観を良好なものにすることができる。従っ
て、従来は面粗度が悪くて適用できなかった分野での成
膜にもこのアーク式蒸発源2aを適用することが可能に
なる。
【0022】例えば、図3を参照して、陰極4の蒸発面
5から距離Z=13cm離れた所の基体18に成膜を行
い、その蒸発面5の中心軸24上(即ち当該中心軸24
からの距離L=0cmの位置)における基体表面のドロ
ップレットを測定したところ、図4に示すように、蒸発
面5での磁界の強さを700Oe以上にすることによっ
て、基体表面に付着するドロップレット数を著しく低減
できることが確かめられた。
【0023】上記磁界の強さが60Oeの場合の基体表
面の電子顕微鏡写真を図5に示し、1200Oeの場合
のそれを図6に示す。両図中の丸いものがドロップレッ
トであり、図6ではドロップレットが著しく減少してい
ることが分かる。
【0024】なお、上記図4〜図6および後述する図7
の実施例は、Tiから成る陰極4を有する上記のような
アーク式蒸発源2aを真空容器に取り付け、当該真空容
器内にArガスを導入して当該容器内の圧力を約4mT
orrに保ち、アーク電流約60Aで基体表面にTi薄
膜を形成した場合の結果である。その場合の磁力線12
の上記角度θは約10度である。
【0025】しかも、このアーク式蒸発源2aは、上記
磁気コイル8aによって、蒸発面5の前方において集束
せずに平行進行ないし発散する磁力線12を発生するの
で、陰極物質6に含まれる陰極物質イオンは、この磁力
線12に沿って放射されることになり、蒸発面5の前方
において集束を受けない。なぜなら、イオンは磁力線1
2に捕捉された電子流に引き寄せられ磁力線12に沿っ
て進行するからである。その結果、陰極物質イオンの放
射領域は従来技術に比べて広くなり、従って均一性の高
い成膜領域も広くなる。
【0026】例えば、陰極4の蒸発面5から一定の距離
Z離れた基体18の面内における成膜速度の分布を測定
した結果を図7に示す。この図における距離ZおよびL
は、先に図3で説明したものであり、この例でもZ=1
3cmである。図7中の実施例は、上記アーク式蒸発源
2aによるものであり、その場合の磁力線12の上記角
度θは約10度である。図7中の比較例は、図12に示
した従来のアーク式蒸発源2によるものであり、その場
合の磁力線12の上記角度θは約−5度(この明細書で
は、上記角度θは発散方向を正としているから、負は集
束を意味している)である。
【0027】この図7から分かるように、実施例の場合
は、比較例に比べて、成膜速度分布の均一性が広い領域
において非常に高い。これは換言すれば、実施例の方
が、膜厚均一性の高い成膜領域が遙かに広いということ
である。その結果、このアーク式蒸発源2aによれば、
一度に大量の基体18に膜厚均一性良く成膜することが
可能になるので、あるいは大型の基体18に膜厚均一性
良く成膜することが可能になるので、成膜の生産性が向
上する。
【0028】更に、このアーク式蒸発源2aでは、磁力
線12の上記角度θを0度以上30度以下としているの
で、蒸発面5でのアークスポットは、従来技術のように
蒸発面5の中心部に集中することはなく、蒸発面5内を
ランダムに動くか(θ=0°の場合)、蒸発面5のやや
外寄りを周回するようになる(0°<θ≦30°の場
合)。このようなアークスポットの動きは、例えば図8
に示すように、陰極4の蒸発面5全体をほぼ一様に消耗
させるか、やや外寄りに比重を置きながら蒸発面5全体
を消耗させることになり、いずれにしても陰極4の蒸発
面5を万遍無く使うので、陰極4の寿命を長くすること
ができる。その結果、長時間の成膜でも陰極4の交換無
しに行うことが可能になり、成膜の生産性が向上する。
また、陰極4の交換頻度が減るのでコストも削減でき
る。
【0029】ちなみに、θ>30°の場合は、アークス
ポットが外側に寄り過ぎて、例えば図9に示すように、
蒸発面5の外側が極端に消耗するようになり、陰極4の
利用効率が悪化すると共に、陰極物質6の放射方向が広
がり過ぎて基体18への成膜速度が低下するので、好ま
しくない。
【0030】θが負の場合は、蒸発面5の前方において
磁力線12が集束することであり、前述した従来技術に
相当する。
【0031】なお、例えば図10に示す例のように、磁
気コイル8aの後方部付近に、陰極4の後方部付近の周
りを囲むように、例えば板状で環状の強磁性体30を設
けても良く、そのようにすれば、磁力線12がこの強磁
性体30中を通るようになるので、磁力線12の経路の
磁気抵抗が下がり蒸発面5での磁界を強めることがより
容易になると共に、他への漏れ磁束も減少する。
【0032】また、図1、図10のいずれのアーク式蒸
発源2aにおいても、磁力線12の向きは、図示例と逆
でも良い。そのようにしても、単に、磁力線12に巻き
付く電子の旋回方向が逆になるだけであり、その他の作
用は前記と同様である。
【0033】また、陰極4の材料は、特定のものに限定
されるものではなく、前述したTi以外の材料、例えば
Zr、Hf、TiAl、Al、Cu、Cr、Mo、W、
Ta、V、C等でも良い。例えば、Crを陰極4に用い
ることによって、ドロップレット数の少ないCr膜また
はCrN膜を形成することができる。
【0034】また、磁界形成手段としては、上記のよう
な磁気コイル8aおよびコイル電源10の代わりに、上
記のような磁界を発生させる永久磁石を用いても良い。
【0035】
【実施例】図11に示すアーク式イオンプレーティング
装置を用いて、複数本のステンレス製のシャフト(直径
10mm、長さ100mm)を基体18として、それら
の表面にTiN膜を形成した。
【0036】この装置は、真空排気装置34によって真
空排気される真空容器32を有しており、その中に、図
示しない駆動装置によって例えば矢印B方向に回転させ
られるホルダ40が設けられている。42は、電気絶縁
機能を有する軸受部である。このホルダ40に、複数本
の上記基体18を保持する。ホルダ40および基体18
には、直流のバイアス電源44から負のバイアス電圧が
印加される。真空容器32内には、ガス導入口36から
下記のようなガス38が導入される。
【0037】この真空容器32の壁面に、絶縁物46を
介して、かつホルダ40上の基体18に向けて、図1に
示したのと同様のアーク式蒸発源2aを1台取り付けて
いる。陰極4は、この例ではTiから成り、陰極ホルダ
50に保持されている。48は絶縁物である。この例で
は、真空容器32が陽極(アノード)を兼ねており、陰
極4と真空容器32との間に直流のアーク電源52から
アーク放電電圧が印加され、陰極4と真空容器32との
間にアーク放電が生じる。54はアーク点弧用のトリガ
である。磁気コイル8aは、この例では巻数が150回
であり、発熱による抵抗値増加を防ぐために水冷として
いる。
【0038】成膜に際しては、この実施例では、成膜工
程に先立ってボンバード工程を行った。
【0039】ボンバード工程では、ホルダ40に上記基
体18を保持して、まず真空排気装置34によって真空
容器32内を1×10-5Torr程度以下の圧力まで排
気した後、ガス導入口36からガス38としてArガス
を約50sccm導入し、真空容器32内の圧力を3m
Torr程度に保持する。基体18にはバイアス電源4
4から−1000Vのバイアス電圧を印加する。アーク
式蒸発源2aの磁気コイル8aにコイル電源10から1
00Aの電流を流すと、陰極4の蒸発面5には約120
0Oeの磁界が形成される。その状態で、陰極4にアー
ク電源52からアーク放電電圧を印加しておき、トリガ
54を陰極4の側面に短時間接触させると、それが種と
なって陰極4と真空容器32との間にアーク放電が発生
して持続し、陰極4の前方付近にはアークプラズマが生
成される。このときのアーク電流は60Aとする。この
アーク放電によって、陰極4が溶解してその蒸発面5か
ら陰極物質6が蒸発し、その一部がアークプラズマによ
ってイオン化され、このイオン化した陰極物質イオンが
負バイアス電圧によって基体18に向けて加速されて基
体18に衝突する。その状態を約3分間保持すると、陰
極物質イオンの衝突によって、各基体18が約380℃
まで加熱されると共に、各基体18がスパッタされてそ
の表面が清浄化される。
【0040】上記ボンバード工程に続いて、成膜工程に
入る。即ち、この実施例の場合は、ガス38を窒素ガス
に切り換え、それを約100sccm導入し、真空容器
32内の圧力を20mTorr程度に保持する。かつ、
基体18に印加するバイアス電圧を−200Vにし、陰
極4に流すアーク電流を80Aにする。その状態を約1
0分間保持すると、各基体18の側面に約3μm厚のT
iN膜が形成される。
【0041】上記のようにして成膜されたステンレスシ
ャフトの軸方向におけるTiN膜の膜厚のばらつきを表
1中に実施例として示す。また、上記のようなアーク式
蒸発源2aの代わりに、図12に示した従来のアーク式
蒸発源2を用いて同様にして成膜した場合の膜厚のばら
つきを表1中に比較例として示す。更に、上記実施例と
比較例とにおいて、陰極4が消耗して規定の成膜速度や
膜厚分布が得られなくなった時点を寿命としたときの陰
極4の寿命を同じく表1中に示す。
【0042】
【表1】
【0043】この表に示すように、この発明に係るアー
ク式蒸発源2aを用いた実施例の方が、従来のアーク式
蒸発源2を用いた比較例に比べて、膜厚の均一性が高
く、かつ陰極寿命が長い。ちなみに、基体表面でのドロ
ップレットについては、実施例および比較例の両方共に
良好であった。
【0044】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、磁界形
成手段によって、陰極の蒸発面での磁界の強さが700
Oe以上の磁界を形成するので、蒸発面の前方付近に高
密度のプラズマを生成して、この高密度のプラズマによ
って陰極物質に含まれるドロップレットを効率良く分解
することができる。その結果、陰極から飛散するドロッ
プレットを低減することができる。
【0045】しかも、上記磁界形成手段は、陰極の蒸発
面の前方において集束せずに平行進行ないし発散する磁
力線を発生するので、陰極物質イオンは、蒸発面の前方
において集束を受けなくなり、陰極物質イオンの放射領
域は広くなる。その結果、膜厚均一性の高い成膜領域も
広くなる。
【0046】更に、上記磁界形成手段は、蒸発面内の任
意の点に立てた法線と当該点における磁力線の方向との
成す角度が0度以上30以下の磁力線を発生するので、
蒸発面でのアークスポットは蒸発面内をランダムに動く
か、蒸発面のやや外寄りを周回するようになり、蒸発面
全体をほぼ一様に消耗させるか、やや外寄りに比重をお
きながら蒸発面全体を消耗させることになる。その結
果、陰極の蒸発面を万遍無く使うようになるので、陰極
の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るアーク式蒸発源の一例を示す図
である。
【図2】図1のアーク式蒸発源の蒸発面付近における磁
力線の状態の例を拡大して示す図である。
【図3】陰極の蒸発面と基体との位置関係を示す図であ
る。
【図4】陰極の蒸発面での磁界の強さを変えた場合の基
体表面でのドロップレット数の変化の例を示す図であ
る。
【図5】陰極の蒸発面での磁界の強さが60Oeの場合
の基体表面の電子顕微鏡写真であり、倍率は1000倍
である。
【図6】陰極の蒸発面での磁界の強さが1200Oeの
場合の基体表面の電子顕微鏡写真であり、倍率は100
0倍である。
【図7】陰極の蒸発面から一定の距離Z離れた基体表面
における成膜速度分布の例を示す図である。
【図8】陰極の蒸発面に立てた法線と磁力線の方向との
成す角度が0度以上30度以下の場合の陰極の消耗状態
の例を示す概略図である。
【図9】陰極の蒸発面に立てた法線と磁力線の方向との
成す角度が30度より大の場合の陰極の消耗状態の例を
示す概略図である。
【図10】この発明に係るアーク式蒸発源の他の例を示
す図である。
【図11】図1のアーク式蒸発源と同様のアーク式蒸発
源を備えるアーク式イオンプレーティング装置の一例を
示す図である。
【図12】従来のアーク式蒸発源の一例を示す図であ
る。
【図13】図12のアーク式蒸発源の蒸発面付近におけ
る磁力線の状態の例を拡大して模式的に示す図である。
【図14】図12のような磁力線の方向の場合の陰極の
消耗状態の例を示す概略図である。
【符号の説明】
2a アーク式蒸発源 4 陰極 5 蒸発面 6 陰極物質 8a 磁気コイル 10 コイル電源 12 磁力線 14 集束領域 18 基体 30 強磁性体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平塚 治男 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内 (72)発明者 緒方 潔 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地 日 新電機株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アーク放電によって陰極を溶解させて陰
    極物質を蒸発させるアーク式蒸発源において、前記陰極
    の陰極物質を蒸発させる蒸発面を含む領域に、当該蒸発
    面での強さが700エルステッド以上の磁界を形成する
    磁界形成手段を備えており、しかもこの磁界形成手段
    は、前記陰極の蒸発面の前方において集束せずに平行進
    行ないし発散する磁力線であって、当該蒸発面内の任意
    の点に立てた法線と当該点における磁力線の方向との成
    す角度が0度以上30度以下の磁力線を発生するもので
    あることを特徴とするアーク式蒸発源。
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